特許第6732057号(P6732057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6732057
(24)【登録日】2020年7月9日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/52 20100101AFI20200716BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20200716BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20200716BHJP
【FI】
   H01L33/52
   H01L33/62
   H01L33/48
【請求項の数】16
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2019-4384(P2019-4384)
(22)【出願日】2019年1月15日
(62)【分割の表示】特願2016-147157(P2016-147157)の分割
【原出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2019-71471(P2019-71471A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2019年1月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-68172(P2013-68172)
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-68173(P2013-68173)
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113322
【氏名又は名称】東芝ホクト電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】巻 圭一
【審査官】 高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−084855(JP,A)
【文献】 特開2011−134926(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/132589(WO,A1)
【文献】 特開2012−231018(JP,A)
【文献】 特開2008−141026(JP,A)
【文献】 特開2004−014993(JP,A)
【文献】 特開2011−096901(JP,A)
【文献】 特開2012−207195(JP,A)
【文献】 米国特許第05273608(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲性を有する第1の透光性絶縁体を備える第1の透光性支持基体と、屈曲性を有する第2の透光性絶縁体を備える第2の透光性支持基体とを用意する工程と、
前記第1の透光性絶縁体の第1の表面、および前記第2の透光性絶縁体の第2の表面の少なくとも一方に導電回路層を形成する工程と、
第1の面と第2の面とを有する発光ダイオード本体と、前記発光ダイオード本体の前記第1の面に設けられた第1の電極と、前記発光ダイオード本体の前記第1の面または前記第2の面に設けられた第2の電極とをそれぞれ備える複数の発光ダイオードを用意する工程と、
前記第1の透光性絶縁体の前記第1の表面および前記第2の透光性絶縁体の前記第2の表面の少なくとも一方に形成された前記導電回路層上に透光性絶縁樹脂シートを配置する工程と、
前記透光性絶縁性樹脂シート上に、前記第1の電極および前記第2の電極が前記導電回路層と対向するように、前記複数の発光ダイオードを最小距離dが500μm以上となるように配置する工程と、
少なくとも前記第1の透光性絶縁体と前記透光性絶縁樹脂シートと前記複数の発光ダイオードと前記第2の透光性絶縁体とを含む積層体を加熱しながら加圧することによって、前記複数の発光ダイオードの前記第1および第2の電極を前記導電回路層と電気的に接続しつつ、前記第1の透光性絶縁体と前記第2の透光性絶縁体との間の前記複数の発光ダイオードを除く領域に屈曲性を有する第3の透光性絶縁体を埋め込む工程とを具備し、
前記複数の発光ダイオードの高さをT1、前記第3の透光性絶縁体の前記複数の発光ダイオード間における最小厚さをT2としたとき、前記発光ダイオードの前記高さT1と前記第3の透光性絶縁体の前記最小厚さT2との差ΔT(T1−T2)が、前記差ΔT[単位:μm]を縦軸とし、前記複数の発光ダイオード間の前記最小距離d[単位:μm]を横軸としたグラフにおいて、ΔT=5で表される直線1と、d=500で表される直線2と、ΔT=0.09dで表される直線3と、ΔT=0.0267d+60で表される直線4と、ΔT=1/2T1で表される直線5とで囲われる範囲内になるように、前記第1の透光性絶縁体と前記第2の透光性絶縁体との間に前記第3の透光性絶縁体を埋め込む、発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記複数の発光ダイオードは、前記最小距離dが1500μm以下となるように配置される、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記第3の透光性絶縁体は、0℃以上100℃以下の範囲において0.01GPa以上10GPa以下の引張貯蔵弾性率を有するエラストマーからなる、請求項1または請求項2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記第3の透光性絶縁体は、80℃以上160℃以下のビカット軟化温度を有するエラストマーからなる、請求項3に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記第3の透光性絶縁体は、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、およびウレタン系エラストマーから選ばれる少なくとも1つからなる、請求項4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記第3の透光性絶縁体のガラス転移温度が−20℃以下である、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記第3の透光性絶縁体の融解温度は、180℃以上もしくは前記ビカット軟化温度より40℃以上高い、請求項4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3の透光性絶縁体の前記ビカット軟化温度における前記引張貯蔵弾性率が0.1MPa以上である、請求項4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の透光性支持基体は、前記第1の透光性絶縁体と、前記第1の透光性絶縁体の前記第1の表面に前記導電回路層として設けられた第1の導電回路層とを備え、
前記第2の透光性支持基体は、前記第2の透光性絶縁体と、前記第2の透光性絶縁体の前記第2の表面に前記導電回路層として設けられた第2の導電回路層とを備え、
前記発光ダイオードは、前記発光ダイオード本体の前記第1の面に設けられ、前記第1の導電回路層と電気的に接続された前記第1の電極と、前記発光ダイオード本体の前記第2の面に設けられ、前記第2の導電回路層と電気的に接続された前記第2の電極とを備える、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1の電極は、前記第1の面より小さい面積と前記第1の面から突出した形状とを有し、前記第1の面における前記第1の電極の非形成面と前記第1の導電回路層との間に前記第3の透光性絶縁体が充填されている、請求項9に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1の透光性支持基体は、前記第1の透光性絶縁体と、前記第1の透光性絶縁体の前記第1の表面に設けられた前記導電回路層とを備え、
前記発光ダイオードは、前記発光ダイオード本体の前記第1の面に設けられ、前記導電回路層と電気的に接続された前記第1の電極および前記第2の電極を備える、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1および第2の電極は、それぞれ前記発光ダイオード本体の前記第1の面より小さい面積と前記第1の面から突出した形状とを有し、前記第1の面における前記第1および第2の電極の非形成面と前記導電回路層との間に前記第3の透光性絶縁体が充填されている、請求項11に記載の発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1の電極または前記第2の電極と前記導電回路層との接触界面は、前記電極と前記導電回路層とが直接接触した電気的な接続領域と、前記電極と前記導電回路層との間に前記第3の透光性絶縁体が介在して結合された機械的な結合領域とを有する、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法
【請求項14】
前記電極の前記導電回路層との接触面は凹凸形状を有し、前記凹凸形状における凸部が前記導電回路層と直接接触して前記電気的な接続領域を構成していると共に、前記凹凸形状における凹部に前記第3の透光性絶縁体が充填されて前記機械的な結合領域を構成している、請求項13に記載の発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1および第2の透光性絶縁体は、それぞれポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンサクシネート、環状オレフィン樹脂、およびアクリル樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂材料からなり、かつ50μm以上300μm以下の厚さを有する、請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項16】
JIS C5016 8.6に記載の耐屈曲試験を通電状態で行い、前記発光装置を屈曲半径を40mmとして180°屈曲させたときに、点灯状態が維持される、請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)を用いた発光装置は、屋内用、屋外用、定置用、移動用等の表示装置、表示用ランプ、各種スイッチ類、信号装置、一般照明等の光学装置に幅広く利用されている。LEDを用いた発光装置のうち、各種の文字列、幾何学的な図形や模様等を表示する表示装置や表示用ランプに好適な装置として、2枚の透明基板間に複数のLEDを配置した透明発光装置が知られている。透明基板として透明樹脂製のフレキシブル基板を使用することによって、表示装置や表示用ランプとしての発光装置の取り付け面に対する制約が軽減されるため、透明発光装置の利便性や利用可能性が向上する。
【0003】
透明発光装置は、例えば第1の導電回路層を有する第1の透明絶縁基板と第2の導電回路層を有する第2の透明絶縁基板との間に、複数のLEDチップを配置した構造を有している。複数のLEDチップは、それぞれ一対の電極を有している。一方の電極は第1の導電回路層と電気的に接続され、他方の電極は第2の導電回路層と電気的に接続される。複数のLEDチップは、ある程度の間隔を開けて配置される。複数のLEDチップの配置間隔に基づいて生じる第1の透明絶縁基板と第2の透明絶縁基板との間の空間には、電気絶縁性や屈曲性を有する透明樹脂等からなる透明絶縁体が充填されている。言い換えると、LEDチップは透明絶縁体に設けられた貫通孔内に配置される。
【0004】
透明発光装置におけるLEDチップの電極と導電回路層との電気的な接続は、例えば第1の透明絶縁基板と貫通孔内にLEDチップが配置された透明絶縁樹脂シートと第2の透明絶縁基板との積層体を真空熱圧着することにより行われる場合がある。LEDチップの電極と導電回路層とは、導電性接着剤で接着する場合もある。LEDチップを固定したホットメルト接着剤シートを、導電回路層を有する上下の絶縁基板で挟んで熱圧着し、LEDチップを接着剤シートに埋め込むことによって、上下の絶縁基板間の接着とLEDチップの電極と導電回路層との電気的な接続とを同時に実施することも検討されている。
【0005】
しかしながら、いずれの場合にもLEDチップの電極と導電回路層との電気的な接続性やその信頼性を十分に高めることができない。例えば、第1の透明絶縁基板と透明絶縁樹脂シートと第2の透明絶縁基板との積層体を真空熱圧着する場合、熱圧着後の透明絶縁樹脂シートの厚さ(透明絶縁体の厚さ)をLEDチップの厚さより薄くすることによって、導電回路層をLEDチップの電極に押し付けて接触させることが検討されている。ただし、透明絶縁体の材質や厚さ、またLEDチップの配置間隔によっては、電極と導電回路層とを信頼性よく電気的に接続することができない。そこで、導電回路層とLEDチップの電極との電気的な接続性やその信頼性を再現性よく高める技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−177147号公報
【特許文献2】特表2007−531321号公報
【特許文献3】特表2009−512977号公報
【特許文献4】特開2012−084855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、透光性絶縁体の表面に設けられた導電回路層とLEDチップの電極との電気的な接続性やその信頼性を再現性よく高めることを可能にした発光装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の発光装置の製造方法は、屈曲性を有する第1の透光性絶縁体を備える第1の透光性支持基体と、屈曲性を有する第2の透光性絶縁体を備える第2の透光性支持基体とを用意する工程と、 前記第1の透光性絶縁体の第1の表面、および前記第2の透光性絶縁体の第2の表面の少なくとも一方に導電回路層を形成する工程と、第1の面と第2の面とを有する発光ダイオード本体と、前記発光ダイオード本体の前記第1の面に設けられた第1の電極と、前記発光ダイオード本体の前記第1の面または前記第2の面に設けられた第2の電極とをそれぞれ備える複数の発光ダイオードを用意する工程と、前記第1の透光性絶縁体の前記第1の表面および前記第2の透光性絶縁体の前記第2の表面の少なくとも一方に形成された前記導電回路層上に透光性絶縁樹脂シートを配置する工程と、前記透光性絶縁性樹脂シート上に、前記第1の電極および前記第2の電極が前記導電回路層と対向するように、前記複数の発光ダイオードを最小距離dが500μm以上となるように配置する工程と、少なくとも前記第1の透光性絶縁体と前記透光性絶縁樹脂シートと前記複数の発光ダイオードと前記第2の透光性絶縁体とを含む積層体を加熱しながら加圧することによって、前記複数の発光ダイオードの前記第1および第2の電極を前記導電回路層と電気的に接続しつつ、前記第1の透光性絶縁体と前記第2の透光性絶縁体との間の前記複数の発光ダイオードを除く領域に屈曲性を有する第3の透光性絶縁体を埋め込む工程とを具備し、前記複数の発光ダイオードの高さをT1、前記第3の透光性絶縁体の前記複数の発光ダイオード間における最小厚さをT2としたとき、前記発光ダイオードの前記高さT1と前記第3の透光性絶縁体の前記最小厚さT2との差ΔT(T1−T2)が、前記差ΔT[単位:μm]を縦軸とし、前記複数の発光ダイオード間の前記最小距離d[単位:μm]を横軸としたグラフにおいて、ΔT=5で表される直線1と、d=500で表される直線2と、ΔT=0.09dで表される直線3と、ΔT=0.0267d+60で表される直線4と、ΔT=1/2T1で表される直線5とで囲われる範囲内になるように、前記第1の透光性絶縁体と前記第2の透光性絶縁体との間に前記第3の透光性絶縁体を埋め込むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態による発光装置を示す断面図である。
図2図1に示す発光装置の一部を拡大して示す断面図である。
図3図1に示す発光装置の変形例の一部を拡大して示す断面図である。
図4】第1の実施形態による発光装置の一部を拡大して示すSEM像である。
図5】第1の実施形態による発光装置の製造工程を示す断面図である。
図6】第2の実施形態による発光装置を示す断面図である。
図7図6に示す発光装置の一部を拡大して示す断面図である。
図8図6に示す発光装置の変形例の一部を拡大して示す断面図である。
図9】第2の実施形態による発光装置の製造工程を示す断面図である。
図10】第3の実施形態による発光装置を示す断面図である。
図11図10に示す発光装置の一部を拡大して示す断面図である。
図12図10に示す発光装置の変形例の一部を拡大して示す断面図である。
図13】発光ダイオードの高さTと第3の透光性絶縁体の最小厚さTとの差ΔTと複数の発光ダイオード間の最小距離dとの関係を示す図である。
図14】第3の実施形態による発光装置の製造工程を示す断面図である。
図15】第4の実施形態による発光装置を示す断面図である。
図16図15に示す発光装置の一部を拡大して示す断面図である。
図17図15に示す発光装置の変形例の一部を拡大して示す断面図である。
図18】第4の実施形態による発光装置の製造工程を示す断面図である。
図19】実施形態による発光装置の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の発光装置とその製造方法について、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による発光装置の構成を示す断面図である。図1に示す発光装置1は、第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3とを具備している。第1の透光性支持基体2は、第1の透光性絶縁体4とその表面に形成された第1の導電回路層5とを備えている。第2の透光性支持基体3は第2の透光性絶縁体6とその表面に形成された第2の導電回路層7とを備えている。第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3とは、第1の導電回路層5と第2の導電回路層7とが対向するように、それらの間に所定の間隙を設けて配置されている。第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間隙には、複数の発光ダイオード8が配置されている。
【0012】
透光性絶縁体4、6には、例えば絶縁性と透光性とを有する樹脂材料が用いられ、さらに屈曲性を有する樹脂材料が好適に用いられる。このような絶縁樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンサクシネート(PES)、環状オレフィン樹脂(例えばJSR社製のアートン(商品名))、アクリル樹脂等が挙げられる。透光性絶縁体4、6の全光透過率(JIS K7105)は90%以上であることが好ましく、さらに95%以上であることがより好ましい。透光性絶縁体4、6の厚さは50〜300μmの範囲であることが好ましい。透光性絶縁体4、6の厚さが厚すぎると、透光性支持基体2、3に良好な屈曲性を付与することが困難となり、透光性も低下するおそれがある。
【0013】
透光性絶縁体4、6は、透光性を有する絶縁樹脂体(シート等)に限られるものではなく、例えばガラスのような絶縁性と透光性とを併せ持つ無機材料からなるものであってもよい。ただし、透光性絶縁体4、6としてガラス基板を用いた場合、第1および第2の透光性支持基体2、3に屈曲性を付与することができない。透光性支持基体2、3およびそれを用いた発光装置1に屈曲性を付与する場合には、透光性と屈曲性とを有する絶縁樹脂体からなる透光性絶縁体4、6を用いることが好ましい。第1および第2の透光性絶縁体4、6の一方を絶縁樹脂体のような屈曲性を有する材料で構成し、他方をガラス基板のようなリジッドな材料で構成してもよい。
【0014】
第1の透光性絶縁体4の表面には、第1の導電回路層5が形成されている。同様に、第2の透光性絶縁体6の表面には、第2の導電回路層7が形成されている。導電回路層5、7には、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の透明導電材料が用いられる。透明導電材料からなる導電回路層5、7としては、例えばスパッタ法や電子ビーム蒸着法等を適用して薄膜を形成し、得られた薄膜をレーザ加工やエッチング処理等でパターニングして回路を形成したものが挙げられる。導電回路層5、7は、透明導電材料の微粒子(例えば平均粒子径が10〜100nmの範囲の微粒子)と透明樹脂バインダとの混合物をスクリーン印刷等で回路形状に塗布したものや、上記混合物の塗布膜にレーザ加工やフォトリソグラフィによるパターニング処理を施して回路を形成したものであってもよい。
【0015】
導電回路層5、7は、透明導電材料からなるものに限らず、金や銀等の不透明導電材料の微粒子をメッシュ状に付着させたものであってもよい。例えば、ハロゲン化銀のような不透明導電材料の感光性化合物を塗布した後、露光・現像処理を施してメッシュ状の導電回路層5、7を形成する。不透明導電材料微粒子を含むスラリーをスクリーン印刷等でメッシュ状に塗布して導電回路層5、7を形成してもよい。導電回路層5、7は透光性絶縁体4、6の表面に形成したときに透光性を示し、透光性支持基体2、3が得られるものであればよい。導電回路層5、7は、透光性支持基体2、3の全光透過率(JIS K7105)が10%以上、さらに発光装置1全体としての全光透過率が1%以上となるような透光性を有していることが好ましい。発光装置1全体としての全光透過率が1%未満であると、発光点が輝点として認識されなくなる。導電回路層5、7自体の透光性は、その構成によっても異なるが、全光透過率が10〜85%の範囲であることが好ましい。導電回路層5、7の全光透過率がどちらも85%を超えると、配線パターンが肉眼で容易に認識できるようになり、発光装置1として不都合が生じる。
【0016】
第1の透光性支持基体2の第1の導電回路層5を有する表面と第2の透光性支持基体3の第2の導電回路層7を有する表面との間には、複数の発光ダイオード8が配置されている。発光ダイオードとしては、一般的にPN接合を有するダイオードチップ(以下ではLEDチップ8と記す)が用いられている。なお、ここで用いる発光ダイオードは、LEDチップ8に限られるものではなく、レーザダイオード(LD)チップ等であってもよい。LEDチップ8としては、例えばN型半導体基板上にP型半導体層を形成したもの、P型半導体基板上にN型半導体層を形成したもの、半導体基板上にN型半導体層とP型半導体層とを形成したもの、P型半導体基板上にP型ヘテロ半導体層とN型ヘテロ半導体層を形成したもの、N型半導体基板上にN型ヘテロ半導体層とP型ヘテロ半導体層を形成したもの等が知られており、いずれもLEDチップ8の上下両面に電極9、10が設けられる。
【0017】
第1の実施形態で用いるLEDチップ8は、図2に示すように、活性層(PN接合界面やダブルヘテロ接合構造の発光部位となる半導体層等)11を有するチップ本体(発光ダイオード本体)12と、チップ本体12の活性層11に近い第1の面に設けられた第1の電極9と、チップ本体12の活性層11から遠い第2の面に設けられた第2の電極10とを備えている。ここでは便宜的に活性層11に近い第1の面を発光面、活性層11から遠い第2の面を非発光面と記す場合があるが、これに限られない。第2の導電回路層7やチップ本体12等の構成材料によっては、両面を発光面とすることができる。第1の電極9は第1の導電回路層5と直接接触することで電気的に接続されており、第2の電極10は第2の導電回路層7と直接接触することで電気的に接続されている。第1の導電回路層5と第1の電極9とは、図3に示すように、第1の電極9上に設けられたバンプ電極9Bを介して電気的に接続してもよい。バンプ電極9Bは、例えば金ワイヤ等の導電性ワイヤの先端に形成したボールを第1の電極9に押し付けた後、ワイヤを切断することにより形成することができる。LEDチップ8は、第1および第2の電極9、10を介して印加される直流電圧により点灯する。
【0018】
チップ本体12の発光面に設けられた第1の電極9は、活性層11からの発光が外部へ放出されることを妨げないように、発光面より小さい面積を有している。チップ本体12の発光面は、第1の電極9の形成面と非形成面とを有している。さらに、第1の電極9は発光面から突出した形状、例えば0.1μm以上突出した形状を有している。第2の電極10は、チップ本体12の非発光面全体に設けられている。第2の電極10の表面(導電回路層7との接触面)は、第2の導電回路層7との電気的な接続信頼性等を高めるために、例えば1μm以上の凹凸形状を有していることが好ましく、さらに微細な凹凸が繰り返した形状を有することが好ましい。第1の電極9の表面(導電回路層5との接触面)も同様な凹凸形状を有していることが好ましい。なお、通常のLEDチップの電極の表面には、電気的な接続信頼性の向上用とは別に凹凸形状が形成されている場合がある。
【0019】
第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間における複数のLEDチップ8の配置部分を除く部分には、80〜160℃のビカット軟化温度、および0.01〜10GPaの引張貯蔵弾性率の少なくとも一方を有する第3の透光性絶縁体13が埋め込まれている。第3の透光性絶縁体13は上記したビカット軟化温度および引張貯蔵弾性率の両方を有することが好ましい。ここで言う引張貯蔵弾性率は、0℃から100℃の間の値を示すものである。第3の透光性絶縁体13は、さらにビカット軟化温度で溶融せず、ビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率が0.1MPa以上であることが好ましい。第3の透光性絶縁体13は、180℃以上の融解温度、もしくはビカット軟化温度より40℃以上高い融解温度を有することが好ましい。加えて、第3の透光性絶縁体13は−20℃以下のガラス転移温度を有することが好ましい。
【0020】
ビカット軟化温度は、試験荷重10N、昇温速度50℃/時間の条件で、JIS K7206(ISO 306:2004)に記載のA50条件で求めた値である。ガラス転移温度と融解温度は、JIS K7121(ISO 3146)に準拠した方法で、示差走査熱量計を用いて、5℃/分の昇温速度で、熱流束示差走査熱量測定により求めた値である。引張貯蔵弾性率は、JIS K7244−1(ISO 6721)に準拠して、動的粘弾性自動測定器を用いて、−100℃から200℃まで1℃/分で等速昇温し、周波数10Hzで求めた値である。
【0021】
第3の透光性絶縁体13は、上記したビカット軟化温度、引張貯蔵弾性率、融解温度、ガラス転移温度等の特性を満足する透光性絶縁樹脂、特にエラストマーで構成されていることが好ましい。エラストマーは、高分子材料の弾性体である。エラストマーとしては、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー等が知られている。上述した特性を満足するアクリル系エラストマーは、透光性、電気絶縁性、屈曲性等に加えて、軟化時の流動性、硬化後の接着性、耐候性等に優れることから、第3の透光性絶縁体13の構成材料として好適である。さらに、第3の透光性絶縁体13の構成材料としてのエラストマーは、それを用いて形成した透光性絶縁体13の導電回路層5、7に対する引き剥がし強度(JIS C5061 8.1.6の方法Aによる)が0.49N/mm以上であることがさらに好ましい。第3の透光性絶縁体13は、上記したようなエラストマーを主成分として含むものであればよく、必要に応じて他の樹脂成分、充填剤、添加剤等を含んでいてもよい。
【0022】
上述したビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率と融解温度とを有するエラストマー等を用いることによって、導電回路層5、7と複数のLEDチップ8の電極9、10との電気的な接続を良好に保ちつつ、複数のLEDチップ8に密着させた状態で第3の透光性絶縁体13を第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間に埋め込むことができる。言い換えると、導電回路層5、7と電極9、10との接触状態がLEDチップ8の周囲に密着した状態で配置された第3の透光性絶縁体13により維持される。従って、導電回路層5、7とLEDチップ8の電極9、10との電気的な接続信頼性、特に発光装置1に屈曲試験や熱サイクル試験(TCT)を施した際の導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続信頼性を高めることができる。
【0023】
例えば、前述した特許文献3、4に記載されているように、第1および第2の透光性絶縁体間に充填する第3の透光性絶縁体の厚さに基づいて、単に導電回路層をLEDチップの電極に押し付けて電気的な接続を行った場合、導電回路層と電極との電気的な接続性を十分に高めることができない。特に、発光装置を大きく屈曲させたり、熱サイクル試験を行った際に、導電回路層と電極との電気的な接続信頼性が低下しやすい。また、前述した特許文献3、4に記載されているように、LEDチップの電極と導電回路層とを導電性接着剤で接着した場合には、複数のLEDチップ間を十分に絶縁することが困難であり、このために接続工程の複雑化や工数の増大等を招いて製造コストが増加しやすい。実施形態の発光装置1は、これら従来装置の難点を改善したものである。
【0024】
第3の透光性絶縁体13のビカット軟化温度が160℃を超えると、後述する第3の透光性絶縁体13の形成工程で透光性絶縁樹脂シートを十分に変形させることができず、これにより導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続性が低下する。第3の透光性絶縁体13のビカット軟化温度が80℃未満であるとLEDチップ8の保持力が不足し、導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続信頼性が低下する。第3の透光性絶縁体13のビカット軟化温度は100℃以上であることがより好ましい。導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続信頼性をさらに高めることができる。第3の透光性絶縁体13のビカット軟化温度は140℃以下であることがより好ましい。導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続性を有効に高めることができる。
【0025】
第3の透光性絶縁体13の引張貯蔵弾性率が0.01GPa未満である場合にも、導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続性が低下する。LEDチップ8やその電極9、10は微細であるため、後述する真空熱圧着時に複数のLEDチップ8の電極9、10を正確に導電回路層5、7の所定の位置に接続するためには、室温から真空熱圧着工程の加熱温度付近に至るまで、透光性絶縁樹脂シートが比較的高い貯蔵弾性を維持する必要がある。真空熱圧着時に樹脂の弾性が低下すると、加工途中でLEDチップ8の傾きや横方向への微細な移動が起きて、電極9、10と導電回路層5、7とを電気的に接続することができなかったり、接続抵抗が増加する等の事象が発生しやすくなる。これは発光装置1の製造歩留りや信頼性を低下させる要因となる。これを防止するために、0.01GPa以上の引張貯蔵弾性率を有する第3の透光性絶縁体13を適用することが好ましい。ただし、貯蔵弾性が高すぎると発光装置1の耐屈曲性等が低下するため、10GPa以下の引張貯蔵弾性率を有する第3の透光性絶縁体13を適用することが好ましい。第3の透光性絶縁体13の0℃から100℃の間の引張貯蔵弾性率は0.1GPa以上であることがより好ましく、また7GPa以下であることがより好ましい。
【0026】
第3の透光性絶縁体13を構成するエラストマー等がビカット軟化温度で溶融せず、かつビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率が0.1MPa以上であると、真空熱圧着時における電極9、10と導電回路層5、7との位置精度をより一層高めることができる。このような点から、第3の透光性絶縁体13を構成するエラストマーは180℃以上の融解温度、もしくはビカット軟化温度より40℃以上高い融解温度を有することが好ましい。エラストマーのビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率は1MPa以上であることがより好ましい。また、エラストマーの融解温度は200℃以上、もしくはビカット軟化温度より60℃以上高いことがより好ましい。
【0027】
例えば、前述した特許文献2に記載されているホットメルト接着剤シートは、加熱溶融することにより流動化させて被着体に密着した後に、冷却固化させて接着力を発現させるものであり、熱で流動化と固化を制御する接着剤である。ホットメルト接着剤は加工温度で溶融しているのが通例である。加工温度で溶融体であったり、また溶融していなくても引張貯蔵弾性率が0.1MPa未満というような粘性体であると、ホットメルト接着剤シート上に配置されたLEDチップの位置や傾きを、加工温度まで所定の状態に維持することは困難である。このため、LEDチップの位置や傾きを所定の状態に維持することは難しく、設計通りの場所に所定の状態でLEDチップを実装することは困難である。実施形態の発光装置1は、このような従来装置の難点を改善したものである。
【0028】
さらに、第3の透光性絶縁体13は発光装置1の製造性のみならず、低温から高温に至る広い温度範囲で発光装置1の耐屈曲性や耐熱サイクル特性を向上させるために、上記したビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率とガラス転移温度の特性バランスが重要である。上述した引張貯蔵弾性率を有するエラストマーを使用することで、発光装置1の耐屈曲性や耐熱サイクル特性を高めることができる。ただし、屋外用途や屋内でも冬期の生活環境によっては、低温での耐屈曲性や耐熱サイクル特性が求められる。エラストマーのガラス転移温度が高すぎると、低温環境下における発光装置1の耐屈曲性や耐熱サイクル特性が低下するおそれがある。このため、ガラス転移温度が−20℃以下のエラストマーを使用することが好ましい。このようなガラス転移温度と引張貯蔵弾性率とに基づいて、発光装置1の低温から高温に至る広い温度範囲での耐屈曲性や耐熱サイクル特性を向上させることができる。エラストマーのガラス転移温度は−40℃以下であることがより好ましい。
【0029】
第3の透光性絶縁体13の厚さは、LEDチップ8の高さ(第1の電極9の表面から第2の電極10の表面までの高さ)に基づく第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間隙と同等であってもよいが、導電回路層5、7と電極9、10との接触性を高める上で、LEDチップ8の高さより薄いことが好ましい。さらに、第3の透光性絶縁体13の厚さ(T)は、LEDチップ8の高さ(H)との差(H−T)が5〜200μmの範囲になるように設定することがより好ましい。ただし、第3の透光性絶縁体13の厚さ(T)を薄くしすぎると、第3の透光性絶縁体13の形状を維持することが困難となったり、LEDチップ8に対する密着性等が低下するおそれがあるため、LEDチップ8の高さ(H)と第3の透光性絶縁体13の厚さ(T)との差(H−T)は、LEDチップ8の高さ(H)の1/2以下とすることが好ましい。なお、第1の電極9上にバンプ電極9Aを設ける場合には、LEDチップ8の高さ(H)はバンプ電極9Aの頂部から第2の電極10の表面までの高さを示すものとする。
【0030】
さらに、上述したビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率と融解温度を有する樹脂を用いることによって、第3の透光性絶縁体13を第1の電極9の周囲にまで配置することができる。すなわち、第1の電極9がチップ本体12の発光面より小さい面積と発光面から突出した形状とを有する場合、第1の電極9を第1の導電回路層5に接触させた状態で、発光面内における第1の電極9が形成されていない面(第1の電極9の非形成面)と第1の導電回路層5との間に空間が生じる。上述したビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率と融解温度を有する樹脂によれば、第1の電極9の非形成面と第1の導電回路層5との間の空間に第3の透光性絶縁体13の一部を良好に充填することができる。
【0031】
図4は発光装置1におけるLEDチップ8およびその周囲を拡大して示すSEM像である。図4から明らかなように、チップ本体12の発光面内における電極9の非形成面と導電回路層5との間に第3の透光性絶縁体13の一部が充填されている。このように、チップ本体12の発光面と導電回路層5との間に第3の透光性絶縁体13の一部を充填し、電極9の周囲に第3の透光性絶縁体13の一部を密着した状態で存在させることによって、電極9と導電回路層5との接触状態を第3の透光性絶縁体13で良好に維持することができる。すなわち、発光装置1を屈曲させたような場合においても、電極9と導電回路層5との接触状態が良好に維持される。従って、第1の導電回路層5とLEDチップ8の第1の電極9との電気的な接続信頼性をより再現性よく高めることが可能になる。
【0032】
第2の導電回路層7とLEDチップ8の第2の電極10との接触構造に関しては、第2の電極10の周囲に第3の透光性絶縁体13が密着した状態で存在するために接触状態が良好に維持される。さらに、第2の電極10の表面が凹凸形状を有している場合、凹凸形状における凸部を導電回路層7と直接接触させて電気的な接続領域を形成すると共に、凹凸形状における凹部に第3の透光性絶縁体13を充填して機械的な結合領域を形成することができる。すなわち、図4に示すように、導電回路層7と電極10との接触界面に、導電回路層7と電極10とが直接接触した電気的な接続領域と、導電回路層7と電極10との間に第3の透光性絶縁体13の一部が介在した機械的な結合領域とが形成される。これによって、導電回路層7と電極10との電気的な接続性を維持しつつ、機械的な結合性を高めることができる。すなわち、第2の導電回路層7とLEDチップ8の第2の電極10との電気的な接続信頼性をより再現性よく高めることが可能になる。
【0033】
上述した電気的な接続領域と機械的な結合領域とを有する接触界面は、第2の導電回路層7と第2の電極10との接触部分に限らず、第1の導電回路層5と第1の電極9との接触部分に対しても有効である。電気的な接続領域と機械的な結合領域とを有する接触界面は、電極9、10の表面が凹凸形状を有している場合に限らず、比較的平坦な表面を有している場合であっても、上述したビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率と融解温度を有する樹脂を用いると共に、後述する樹脂シートの真空熱圧着条件等を制御することにより得ることができる。すなわち、樹脂シートの真空熱圧着時における樹脂の延伸状態等を制御することによって、電気的な接続領域と機械的な結合領域とを有する導電回路層5、7と電極9、10との接触界面を得ることができる。これによって、導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続信頼性をさらに高めることができる。
【0034】
次に、第1の実施形態の発光装置1の製造方法について、図5を参照して述べる。まず、第1の透光性絶縁体4とその表面に形成された第1の導電回路層5とを有する第1の透光性支持基体2と、第2の透光性絶縁体6とその表面に形成された第2の導電回路層7とを有する第2の透光性支持基体3とを用意する。導電回路層5、7の構成材料や形成方法等は前述した通りである。次に、80〜160℃の範囲のビカット軟化温度を有する第1および第2の透光性絶縁樹脂シート14、15を用意する。透光性絶縁樹脂シート14、15は、上述したビカット軟化温度に加えて、0℃から100℃の間の引張貯蔵弾性率が0.01〜10GPaの範囲で、ビカット軟化温度で溶融していないと共に、ビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率が0.1MPa以上であり、融解温度が180℃以上もしくはビカット軟化温度より40℃以上高く、ガラス転移温度が−20℃以下である樹脂を主成分とすることが好ましい。透光性絶縁樹脂シート14、15としては、エラストマーシートが好ましく、さらにアクリル系エラストマーシートがより好ましい。
【0035】
第2の透光性支持基体3の第2の導電回路層7上に、導電回路層7全体を覆うように第2の透光性絶縁樹脂シート15を配置する(図5(a))。第2の透光性絶縁樹脂シート15は、導電回路層7上のLEDチップ8の配置位置となる部分を含めて、導電回路層7全体、さらに透光性絶縁体6全体を覆うことが可能な形状を有している。第2の透光性絶縁樹脂シート15上に複数のLEDチップ8を配置する(図5(b))。LEDチップ8は、第2の電極10が第2の透光性絶縁樹脂シート15側に位置するように、言い換えると第2の導電回路層7側に位置するように配置される。さらに、LEDチップ8上に第1の透光性絶縁樹脂シート14を配置し(図5(c))、その上に第1の透光性支持基体2を配置する(図5(d))。
【0036】
第1の透光性支持基体2は、第1の導電回路層5が第1の透光性絶縁樹脂シート14と対向するように配置される。第1の透光性絶縁樹脂シート14は、導電回路層5上のLEDチップ8の配置位置となる部分を含めて、導電回路層5全体、さらに透光性絶縁体4全体を覆うことが可能な形状を有している。従って、第1の透光性絶縁樹脂シート14上に配置された第1の透光性支持基体2において、第1の導電回路層5の全体が第1の透光性絶縁樹脂シート14で覆われることになる。図5(a)〜(d)に示す工程を実施することによって、LEDチップ8は第1の電極9が第1の透光性絶縁樹脂シート14側に位置し、かつ第2の電極10が第2の透光性絶縁樹脂シート15側に位置するように、第1の透光性絶縁樹脂シート14と第2の透光性絶縁樹脂シート15との間に配置される。
【0037】
第1および第2の透光性絶縁樹脂シート14、15は、以下に示す真空熱圧着工程で第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間の空間、すなわちLEDチップ8を配置することにより生じる第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間隙に基づく空間を十分に埋めることが可能な厚さを有していればよい。具体的には、第1および第2の透光性絶縁樹脂シート14、15の合計厚さは、前述したLEDチップ8の高さに基づく第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間隙を十分に埋めることが可能であれはよい。第3の透光性絶縁体13の厚さ(T)をLEDチップ8の高さ(H)より薄くする場合には、これらの差(H−T)に対応させて第1および第2の透光性絶縁樹脂シート14、15の合計厚さを設定すればよい。
【0038】
次に、図5(e)に示すように、第2の透光性支持基体3と第2の透光性絶縁樹脂シート15とLEDチップ8と第1の透光性絶縁樹脂シート14と第1の透光性支持基体2とが順に積層された積層体を真空雰囲気中で加熱しながら加圧する。真空雰囲気中における積層体の加熱・加圧工程(真空熱圧着工程)は、透光性絶縁樹脂シート14、15のビカット軟化温度Mp(℃)に対し、Mp−10(℃)≦T≦Mp+30(℃)の温度Tに加熱しながら加圧することが好ましい。より好ましい加熱温度はMp−10(℃)≦T≦Mp+20(℃)、さらに好ましくはMp−10(℃)≦T≦Mp+10(℃)である。
【0039】
このような加熱条件を適用することによって、透光性絶縁樹脂シート14、15を適度に軟化させた状態で積層体を加圧することができる。従って、透光性絶縁樹脂シート14を介して導電回路層5上に配置された第1の電極9を第1の導電回路層5の所定の位置に接続し、かつ透光性絶縁樹脂シート15を介して導電回路層7上に配置された第2の電極10を第2の導電回路層7の所定の位置に接続しつつ、第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間に軟化させた透光性絶縁樹脂シート14、15を埋め込んで第3の透光性絶縁体13を形成することができる。
【0040】
積層体の真空熱圧着時の加熱温度Tが透光性絶縁樹脂シート14、15のビカット軟化温度Mpより10(℃)低い温度未満(T<Mp−10)であると、透光性絶縁樹脂シート14、15の軟化が不十分となり、透光性絶縁樹脂シート14、15(ひいては第3の透光性絶縁体13)のLEDチップ8に対する密着性が低下するおそれがある。さらに、チップ本体12の発光面内における第1の電極9の非形成面と第1の導電回路層5との間の空間に透光性絶縁樹脂シート14、15(ひいては第3の透光性絶縁体13)の一部を良好に充填することができないおそれがある。加熱温度Tが透光性絶縁樹脂シート14、15のビカット軟化温度Mpより30(℃)高い温度を超える(Mp+30<T)と、透光性絶縁樹脂シート14、15が軟化しすぎて形状不良等が生じるおそれがある。
【0041】
透光性絶縁樹脂シート14、15に用いられるエラストマーの、ビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率は、0.1MPa以上が好ましく、より好ましくは1MPa以上、例えば1MPa〜1GPaである。透光性樹脂シート14、15に用いられるエラストマーの、加熱圧着温度における引張貯蔵弾性率は、0.1MPa以上が好ましく、より好ましくは1MPa以上、例えば1MPa〜1GPaである。透光性樹脂シート14、15に用いられるエラストマーの、例えば100℃より高く170℃以下の温度範囲での引張貯蔵弾性率は、0.1MPa以上が好ましく、例えば0.1MPa〜1GPaである。ただし、加熱圧着温度における引張貯蔵弾性率が1MPa以上の値を確保できるように、加熱圧着温度を設定するのが好ましい。なお、これらビカット軟化温度、加熱圧着温度、および100℃より高く170℃以下の温度範囲での引張貯蔵弾性率の好ましい範囲は、他のパラメータと同様に、他の実施形態についても同じである。
【0042】
積層体の真空雰囲気中での熱圧着工程は、以下のようにして実施することが好ましい。上述した積層体を予備加圧して各構成部材間を密着させる。次いで、予備加圧された積層体が配置された作業空間を真空引きした後、積層体を上記したような温度に加熱しながら加圧する。このように、予備加圧された積層体を真空雰囲気中で熱圧着することによって、第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間の空間に軟化させた透光性絶縁樹脂シート14、15を隙間なく埋め込むことができる。熱圧着時の真空雰囲気は5Pa以下とすることが好ましい。予備加圧工程を省くことも可能であるが、この場合には積層体に位置ずれ等が生じやすくなるため、予備加圧工程を実施することが好ましい。
【0043】
積層体の熱圧着工程を大気雰囲気下や低真空下で実施すると、熱圧着後の発光装置1内、とりわけLEDチップ8の周囲に気泡が残存しやすい。発光装置1内に残留する気泡は加圧されているため、熱圧着後の発光装置1の膨れやLEDチップ8の透光性支持基体2、3から剥離の発生原因となる。さらに、発光装置1の内部、とりわけLEDチップ8の近傍に気泡や膨れが存在していると、光が不均一に散乱されたりして、発光装置1の外観上の問題となるので好ましくない。第1の実施形態によれば、第3の透光性絶縁体13の各種特性や真空熱圧着条件等に基づいて、発光装置1内の気泡の発生を抑制することができる。実施形態の発光装置1内には、外径が500μm以上またはLEDチップ8の外形サイズ以上の大きさを有する気泡が存在していないことが好ましい。
【0044】
例えば、前述した特許文献2に記載されているホットメルト接着剤は、加熱時に溶融するため、接着工程(熱圧着工程)を真空下で実施することが難しい。このため、ホットメルト接着剤シートを介在させた積層体を熱圧着することにより作製した発光装置内には、残存空気による気泡が残りやすく、特にLEDチップの近傍に多数の気泡が残りやすい。残留気泡は加圧によって形成され、例えば内圧が0.1MPa以上であるため、時間が経つと気泡の膨れが生じる。このため、残留気泡を有する発光装置は、作製直後に点灯したとしても、時間の経過と共に生じる気泡の膨れで電気的な接続が損なわれ、不点灯になる製品が多発する。さらに、使用中の屈曲や熱履歴により不点灯になる製品が多発したり、また不点灯にならないまでも外観上の問題が生じるおそれが大きい。また、加熱時に溶融するホットメルト接着剤では、LEDチップの角部が導電回路層に当たってダメージが加わることを防止できない。実施形態の発光装置1およびその製造方法は、このような従来装置の製造工程における難点を改善したものである。
【0045】
積層体の真空熱圧着時に加える加圧力は、加熱温度、透光性絶縁樹脂シート14、15の材質、厚さ、最終的な第3の透光性絶縁体13の厚さ等によっても異なるが、通常0.5〜20MPaの範囲であり、さらに1〜12MPaの範囲とすることが好ましい。このような加圧力を適用することによって、第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間隙に対する軟化させた透光性絶縁樹脂シート14、15の埋め込み性を高めることができる。さらに、LEDチップ8の特性低下や破損等を抑制することができる。
【0046】
上述したように、第1の導電回路層5とLEDチップ8の第1の電極9との間に第1の透光性絶縁樹脂シート14を介在させ、かつ第2の導電回路層7とLEDチップ8の第2の電極10との間に第2の透光性絶縁樹脂シート15を介在させた状態で、真空熱圧着工程を実施することによって、第1の電極9と第1の導電回路層5および第2の電極10と第2の導電回路層7とを電気的に接続しつつ、LEDチップ8の周囲に密着させた第3の透光性絶縁体13が得られる。さらに、チップ本体12の発光面内における第1の電極9の非形成面と第1の導電回路層5との間の空間に第3の透光性絶縁体13の一部を良好に充填することができ、気泡の残留が抑制される。これらによって、導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続信頼性を高めた発光装置1を得ることが可能になる。
【0047】
さらに、積層体の真空熱圧着時における加熱温度や加圧力、また加圧体の形状や硬さ等を制御することによって、第1の電極9または第2の電極10と導電回路層5、7との接触界面(特に第2の電極10と導電回路層7との接触界面)に、電極9、10と導電回路層5、7とが直接接触した電気的な接続領域と、電極9、10と導電回路層5、7との間に第3の透光性絶縁体13の一部が介在して結合された機械的な結合領域とを形成することができる。このような構造を有する電極9、10と導電回路層5、7との接触界面を得ることによって、電気的な接続信頼性をさらに高めることが可能になる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の発光装置とその製造方法について、図6ないし図9を参照して説明する。これらの図において、第1の実施形態と同一部分については同一符号を付し、その説明の一部を省略する場合がある。第2の実施形態による発光装置21は、図6に示すように、所定の間隙を持って対向配置された第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3とを具備している。第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間には、複数のLEDチップ22が配置されている。LEDチップ22は、絶縁基板や半導体基板上に半導体層を形成したものであり、一方の面に一対の電極が配置されている。
【0049】
LEDチップ22は、例えば図6に示すように、サファイア基板のような絶縁基板23上に順に形成されたN型半導体層(例えばn−GaN層)24、活性層(例えばInGaN層)25、およびP型半導体層(例えばp−GaN層)26を有するチップ本体(発光ダイオード本体)27を備えている。N型半導体層とP型半導体層の配置位置は、逆であってもよい。このような素子構造を有するLEDチップ22では、第1の実施形態で用いたLEDチップ8のような両面電極構造を適用することができない。このため、チップ本体27の発光面側に第1および第2の電極28、29を設けた片面電極構造を適用している。半導体基板上に半導体層を形成したLEDチップ22においても、片面電極構造を適用する場合がある。LEDチップ22の第1および第2の電極28、29は、それぞれ第1の透光性支持基体2の導電回路層5と電気的に接続されている。導電回路層5と第1の電極28とは、図8に示すように、第1の電極28上に設けられたバンプ電極28Bを介して電気的に接続してもよい。同様に、導電回路層5と第2の電極29とは、第2の電極29上に設けられたバンプ電極29Bを介して電気的に接続してもよい。
【0050】
導電回路層5は、第1の透光性支持基体2を構成する第1の透光性絶縁体4の表面のみに設けられている。第2の透光性支持基体3は導電回路層を有しておらず、第2の透光性絶縁体6のみで構成されている。第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間の空間、すなわち複数のLEDチップ22の配置部分を除く空間には、第1の実施形態と同様に、前述したビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率とガラス転移温度と融解温度を有する第3の透光性絶縁体13が埋め込まれている。第3の透光性絶縁体13の構成材料は、第1の実施形態と同様に、透光性と電気絶縁性と屈曲性(柔軟性)に加えて、上述したビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率とガラス転移温度と融解温度を有するエラストマー等の樹脂であることが好ましい。エラストマーの具体例等は前述した通りである。第3の透光性絶縁体13の厚さは前述した第1の実施形態と同様である。
【0051】
上述したビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率とガラス転移温度と融解温度を有する樹脂(特にエラストマー)を用いることによって、導電回路層5と複数のLEDチップ22の電極28、29との電気的な接続を良好に保ちつつ、複数のLEDチップ22に密着させた状態で第3の透光性絶縁体13を第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間の空間に埋め込むことができる。すなわち、導電回路層5と電極28、29との接触状態がLEDチップ22の周囲に密着した状態で配置された第3の透光性絶縁体13により維持される。従って、導電回路層5とLEDチップ22の電極28、29との電気的な接続信頼性、特に発光装置21に屈曲試験や熱サイクル試験(TCT)等を施した際の導電回路層5と電極28、29との電気的な接続信頼性を高めることができる。
【0052】
さらに、上述したビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率と融解温度を有する樹脂を用いることによって、第3の透光性絶縁体13を第1および第2の電極28、29の周囲にまで配置することができる。すなわち、第1および第2の電極28、29がそれぞれチップ本体27の発光面より小さい面積と発光面から突出した形状とを有する場合、第1および第2の電極28、29を導電回路層5に接触させた状態で、発光面内における第1および第2の電極28、29が形成されていない面(第1および第2の電極28、29の非形成面)と導電回路層5との間に空間が生じる。上述したビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率と融解温度を有する樹脂によれば、このような第1および第2の電極28、29の非形成面と導電回路層5との間の空間に第3の透光性絶縁体13の一部を良好に充填することができる。電極28、29をチップ本体の裏面(非発光面)に形成する場合も同様である。従って、導電回路層5とLEDチップ22の第1および第2の電極28、29との電気的な接続信頼性をより再現性よく高めることが可能になる。
【0053】
また、導電回路層5とLEDチップ22の第1および第2の電極28、29との接触構造に関しては、第1の実施形態と同様な構造、すなわち導電回路層5と第1または第2の電極28、29との接触界面に、導電回路層5と電極28、29とが直接接触した電気的な接続領域と、導電回路層5と電極28、29との間に第3の透光性絶縁体13の一部が介在した機械的な結合領域とを形成した構造を適用することも有効である。これによって、導電回路層5と電極28、29との電気的な接続性を維持しつつ、機械的な結合性を高めることができる。すなわち、導電回路層5とLEDチップ22の第1および第2の電極28、29との電気的な接続信頼性をより再現性よく高めることが可能になる。
【0054】
次に、第2の実施形態の発光装置21の製造方法について、図9を参照して述べる。まず、第1の透光性絶縁体4とその表面に形成された導電回路層5とを有する第1の透光性支持基体2と、第2の透光性絶縁体6のみからなる第2の透光性支持基体3とを用意する。導電回路層5の構成材料や形成方法等は前述した通りである。次に、80〜160℃の範囲のビカット軟化温度を有する透光性絶縁樹脂シート30を用意する。透光性絶縁樹脂シート30は、前述したように0℃から100℃の間の引張貯蔵弾性率が0.1〜10GPaの範囲で、ビカット軟化温度で溶融しておらず、ビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率が0.1MPa以上であり、融解温度が180℃以上もしくはビカット軟化温度より40℃以上高く、ガラス転移温度が−20℃以下であるエラストマーを主成分とすることが好ましい。透光性絶縁樹脂シート30は、上述したビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率とガラス転移温度と融解温度を有するエラストマーシートが好ましく、さらにアクリル系エラストマーシートがより好ましい。
【0055】
第1の透光性支持基体2の導電回路層5上に、導電回路層5全体を覆うように透光性絶縁樹脂シート30を配置する(図9(a))。透光性絶縁樹脂シート30は、導電回路層5上のLEDチップ22の配置位置となる部分を含めて、導電回路層5全体、さらに透光性絶縁体4全体を覆うことが可能な形状を有している。透光性絶縁樹脂シート30上に複数のLEDチップ22を配置する(図9(b))。LEDチップ22は第1および第2の電極28、29が透光性絶縁樹脂シート30側に位置するように、言い換えると導電回路層5側に位置するように配置される。LEDチップ22上に第2の透光性支持基体3を配置する(図9(c))。図9(a)〜(c)に示す工程を実施することで、LEDチップ22は第1および第2の電極28、29が透光性絶縁樹脂シート30側に位置するように、第1の透光性絶縁樹脂シート30と第2の透光性支持基体3との間に配置される。
【0056】
透光性絶縁樹脂シート30は、以下に示す真空熱圧着工程で第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間の空間、すなわちLEDチップ22を配置することにより生じる第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間隙に基づく空間を十分に埋めることが可能な厚さを有していればよい。具体的には、透光性絶縁樹脂シート30の厚さは、LEDチップ22の高さに基づく第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間隙を十分に埋めることが可能であれはよい。第3の透光性絶縁体13の厚さ(T)をLEDチップ22の高さ(H)より薄くする場合には、これらの差(H−T)に対応させて透光性絶縁樹脂シート30の厚さを設定すればよい。
【0057】
次に、図9(d)に示すように、第1の透光性支持基体2と透光性絶縁樹脂シート30とLEDチップ22と第2の透光性支持基体3とが順に積層された積層体を真空雰囲気中で加熱しながら加圧する。積層体の真空雰囲気下での加熱・加圧工程(真空熱圧着工程)は、第1の実施形態と同様な条件下で実施することが好ましい。そして、導電回路層5とLEDチップ22の第1および第2の電極28、29との間に透光性絶縁樹脂シート30を介在させた状態で、真空熱圧着工程を実施することによって、第1および第2の電極28、29と導電回路層5とを電気的に接続しつつ、LEDチップ22の周囲に密着させた第3の透光性絶縁体13を形成する。さらに、チップ本体27の発光面内における第1および第2の電極28、29の非形成面と導電回路層5との間の空間に第3の透光性絶縁体13の一部を良好に充填することができる。これらによって、導電回路層5とLEDチップ22の第1および第2の電極28、29との電気的な接続性やその信頼性を高めた発光装置21を再現性よく得ることが可能になる。
【0058】
(第3の実施形態)
図10は第3の実施形態による発光装置の構成を示す断面図である。なお、前述した第1および第2の実施形態と同一部分については同一符号を付し、それらの説明を一部省略する場合がある。図10に示す発光装置31は、所定の間隙を持って対向配置された第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3とを具備している。第1の透光性支持基体2は、第1の透光性絶縁体4とその表面に形成された第1の導電回路層5とを備えている。第2の透光性支持基体3は、第2の透光性絶縁体6とその表面に形成された第2の導電回路層7とを備えている。第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3とは、第1の導電回路層5と第2の導電回路層7とが対向するように、それらの間に所定の間隙を設けて配置されている。第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間隙には、複数の発光ダイオード8が配置されている。
【0059】
透光性絶縁体4、6には、例えば絶縁性と透光性と屈曲性とを有する樹脂材料が用いられる。このような樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンサクシネート(PES)、環状オレフィン樹脂(例えばJSR社製のアートン(商品名))、アクリル樹脂等が挙げられる。透光性絶縁体4、6の全光透過率(JIS K7105)は90%以上であることが好ましく、さらに95%以上であることがより好ましい。透光性絶縁体4、6の厚さは50〜300μmの範囲であることが好ましい。透光性絶縁体4、6の厚さが厚すぎると、透光性支持基体2、3に良好な屈曲性を付与することが困難となり、また透光性も低下するおそれがある。透光性絶縁体4、6の厚さが薄すぎると、導電回路層5、7の形成基材としての特性等が十分に得られなくなるおそれがある。
【0060】
第1の透光性絶縁体4の表面には、第1の導電回路層5が形成されている。同様に、第2の透光性絶縁体6の表面には、第2の導電回路層7が形成されている。導電回路層5、7には、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の透明導電材料が用いられる。透明導電材料からなる導電回路層5、7としては、例えばスパッタ法や電子ビーム蒸着法等を適用して薄膜を形成し、得られた薄膜をレーザ加工やエッチング処理等でパターニングして回路を形成したものが挙げられる。また、透明導電材料の微粒子(例えば平均粒子径が10〜100nmの範囲の微粒子)と透明樹脂バインダとの混合物をスクリーン印刷等で回路形状に塗布したものや、上記混合物の塗布膜にレーザ加工やフォトリソグラフィによるパターニング処理を施して回路を形成したものであってもよい。
【0061】
導電回路層5、7は、透明導電材料からなるものに限らず、金や銀等の不透明導電材料の微粒子をメッシュ状に形成したものであってもよい。例えば、ハロゲン化銀のような不透明導電材料の感光性化合物を塗布した後、露光・現像処理を施してメッシュ状の導電回路層5、7を形成する。また、不透明導電材料微粒子を含むスラリーをスクリーン印刷等でメッシュ状に塗布して導電回路層5、7を形成してもよい。導電回路層5、7は透光性絶縁体4、6の表面に形成したときに透光性を示し、透光性支持基体2、3が得られるものであればよい。導電回路層5、7は、透光性支持基体2、3の全光透過率(JIS K7105)が10%以上、また発光装置31全体としての全光透過率が1%以上となるような透光性を有していることが好ましい。発光装置31全体としての全光透過率が1%未満であると、発光点が輝点として認識されなくなる。導電回路層5、7自体の透光性は、その構成によっても異なるが、全光透過率が10〜85%の範囲であることが好ましい。導電回路層5、7の全光透過率がどちらも85%を超えると、配線パターンが肉眼で容易に認識できるようになり、発光装置31として不都合が生じる。
【0062】
第1の透光性支持基体2の第1の導電回路層5を有する表面と第2の透光性支持基体3の第2の導電回路層6を有する表面との間には、複数の発光ダイオード8が配置されている。発光ダイオードとしては、一般的にPN接合を有するダイオードチップ(以下ではLEDチップ8と記す)が用いられている。ここで用いる発光ダイオードは、LEDチップ8に限られるものではなく、レーザダイオード(LD)チップ等であってもよい。複数のLEDチップ8は、チップ間の最小間隔である最小距離dが500μm以上となるように配置されている。複数のLEDチップ8の最小距離dは、1つのLEDチップ8の外周面から最も近い位置に配置されたLEDチップ8の外周面までの距離である。なお、LEDチップ8の最小距離dについては後に詳述する。
【0063】
LEDチップ8としては、例えばN型半導体基板上にP型半導体層を形成したもの、P型半導体基板上にN型半導体層を形成したもの、半導体基板上にN型半導体層とP型半導体層とを形成したもの、P型半導体基板上にP型ヘテロ半導体層とN型ヘテロ半導体層を形成したもの、N型半導体基板上にN型ヘテロ半導体層とP型ヘテロ半導体層を形成したもの等が知られており、いずれの場合にもLEDチップ8の上下両面に電極9、10が設けられている。第3の実施形態で用いるLEDチップ8は、図11に示すように、活性層(PN接合界面やダブルヘテロ接合構造の発光部位となる半導体層等)11を有するチップ本体(発光ダイオード本体)12と、チップ本体12の活性層11に近い側の表面(発光面)に設けられた第1の電極9と、チップ本体12の活性層11から遠い側の表面(非発光面)に設けられた第1の電極10とを備えている。
【0064】
第1の電極9は第1の導電回路層5と直接接触することで電気的に接続されている。後述するように、第1の導電回路層5を第1の電極9に押し付けることによって、第1の導電回路層5と第1の電極9とを電気的に接続させている。同様に、第2の電極10は第2の導電回路層7と直接接触することで電気的に接続されている。第2の導電回路層7を第2の電極10に押し付けることによって、第2の導電回路層7と第2の電極10とを電気的に接続させている。導電回路層5と第1の電極9とは、図12に示すように、第1の電極9上に設けられたバンプ電極9Bを介して電気的に接続してもよい。LEDチップ8は、第1および第2の電極9、10を介して印加される直流電圧により点灯する。
【0065】
チップ本体12の発光面に設けられた第1の電極9は、活性層11からの発光が外部へ放出されることを妨げないように、発光面より小さい面積を有している。チップ本体12の発光面は、第1の電極9の形成面と非形成面とを有している。さらに、第1の電極9は発光面から突出した形状、例えば0.1μm以上突出した形状を有している。第2の電極10は、チップ本体12の非発光面全体に設けられている。第2の電極10の表面(導電回路層7との接触面)は、第2の導電回路層7との電気的な接続信頼性等を高めるために、例えば1μm以上の凹凸形状を有していることが好ましく、さらに微細な凹凸が繰り返した形状を有することが好ましい。第1の電極9の表面(導電回路層5との接触面)も同様な凹凸形状を有していることが好ましい。なお、通常のLEDチップの電極の表面には、電気的な接続信頼性の向上用とは別に凹凸形状が形成されている場合がある。
【0066】
第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間における複数のLEDチップ8の配置部分を除く部分には、第3の透光性絶縁体13が埋め込まれている。第3の透光性絶縁体13は80〜160℃の範囲のビカット軟化温度を有することが好ましい。第3の透光性絶縁体13の0℃から100℃の間の引張貯蔵弾性率は、0.01〜10GPaの範囲であることが好ましい。第3の透光性絶縁体13のビカット軟化温度は100〜140℃の範囲であることがより好ましい。第3の透光性絶縁体13の0℃から100℃の間の引張貯蔵弾性率は0.1〜7GPaの範囲であることが好ましい。
【0067】
さらに、第3の透光性絶縁体13は、ビカット軟化温度で溶融しておらず、ビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率が0.1MPa以上であることが好ましい。第3の透光性絶縁体13は180℃以上の融解温度、もしくはビカット軟化温度より40℃以上高い融解温度を有することが好ましい。加えて、第3の透光性絶縁体13は−20℃以下のガラス転移温度を有することが好ましい。第3の透光性絶縁体13のガラス転移温度は−40℃以下であることがより好ましい。これら特性の測定方法は前述した通りである。
【0068】
第3の透光性絶縁体13は、上記したビカット軟化温度、引張貯蔵弾性率、融解温度、ガラス転移温度等の特性を満足する透光性絶縁樹脂、特にエラストマーで構成されていることが好ましい。エラストマーとしては、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー等が知られている。これらのうち、上述した特性を満足するアクリル系エラストマーは、透光性、電気絶縁性、屈曲性等に加えて、軟化時の流動性、硬化後の接着性、耐候性等に優れることから、第3の透光性絶縁体13の構成材料として好適である。第3の透光性絶縁体13は、上記したようなエラストマーを主成分として含む材料からなることが好ましく、また必要に応じて他の樹脂成分等を含んでいてもよい。
【0069】
第3の透光性絶縁体13は、導電回路層5、7と電極9、10との接触性を高める上で、LEDチップ8の高さT(第1の電極9の表面から第2の電極10の表面までの高さ)より薄い厚さを有している。なお、第1の電極9上にバンプ電極9Aを設ける場合には、LEDチップ8の高さTはバンプ電極9Aの頂部から第2の電極10の表面までの高さを示すものとする。第3の透光性絶縁体13と密着している透光性支持基体2、3は、LEDチップ8が配置されている部分から隣接するLEDチップ8間の中間部分に向けて内側に湾曲した形状を有している。第1および第2の透光性支持基体2、3は、それぞれ反対方向から内側に湾曲した形状を有している。従って、第1の透光性支持基体2は第1の導電回路層5を第1の電極9に押し付けており、第2の透光性支持基体3は第2の導電回路層7を第2の電極10に押し付けている。これらによって、導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続性やその信頼性を高めることができる。
【0070】
第3の透光性絶縁体13は、LEDチップ8の高さTより5μm以上1/2T以下の範囲で薄い最小厚さT、すなわち隣接するLEDチップ8間における最小厚さTを有している。言い換えると、LEDチップ8の高さTと第3の透光性絶縁体13の最小厚さTとの差ΔT(T−T)は、5μm以上1/2T以下の範囲とされている。厚さの差ΔTが5μm未満であると、導電回路層5、7を電極9、10に押し付ける力が不足し、導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続状態、特に耐屈曲試験や熱サイクル試験時に電気的な接続状態が不安定になる。厚さの差ΔTがLEDチップ8の高さTの1/2(1/2T)を超えると、第3の透光性絶縁体13の形状を維持することが困難となったり、またLEDチップ8に対する密着性等が低下するおそれがある。厚さの差ΔTは20〜80μmの範囲であることがより好ましい。
【0071】
第3の透光性絶縁体13の最小厚さTは、LEDチップ8の高さTに加えて、LEDチップ8の最小距離dを考慮して設定する必要がある。LEDチップ8の最小距離dが短い場合に、LEDチップ8の高さTと第3の透光性絶縁体13の最小厚さTとの差ΔT(T−T)を小さくしすぎると、導電回路層5、7の湾曲形状がきつくなりすぎて不具合を招くことがある。すなわち、第1の導電回路層5にLEDチップ8の発光面側の角部が食い込んで、例えばLEDチップ8のN型半導体層とP型半導体層とが導電回路層5によりショートするおそれがある。これはLEDチップ8の発光不良の発生原因となる。そこで、実施形態の発光装置31においては、第3の透光性絶縁体13の最小厚さTがLEDチップ8の高さTとLEDチップ8の最小距離dとに基づいて設定されている。
【0072】
第3の透光性絶縁体13の最小厚さTは、LEDチップ8の高さTとの差ΔT(T−T)が、図13に示すように厚さの差ΔT[単位:μm]を縦軸とし、LEDチップ8の最小距離d[単位:μm]を横軸としたグラフにおいて、ΔT=5で表される直線1と、d=500で表される直線2と、ΔT=0.09dで表される直線3と、ΔT=0.0267d+60で表される直線4と、ΔT=1/2Tで表される直線5とで囲われる範囲内となるように設定されている。LEDチップ8の最小距離dが500μm未満であると、厚さの差ΔTを設けることが困難であるため、導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続状態を良好に保つことができない。
【0073】
LEDチップ8の高さTと第3の透光性絶縁体13の最小厚さTとの差ΔTは5μm以上1/2T以下の範囲を基準とするものの、LEDチップ8の最小距離dが短い(おおよそ500〜1000μm程度)場合に、厚さの差ΔTを大きくしすぎると、上述した導電回路層5によるLEDチップ8のショートが発生しやすくなる。特に、耐屈曲試験や熱サイクル試験時にLEDチップ8のショートが発生しやすくなる。このため、厚さの差ΔTの上限は直線3(ΔT=0.09d)となる。LEDチップ8の最小距離dが十分に長い(おおよそ1500μm以上程度)場合には、厚さの差ΔTを大きくしてもLEDチップ8がショートするおそれがなくなるため、厚さの差ΔTの上限は直線5(ΔT=1/2T)となる。これらの中間領域(最小距離dがおおよそ1000〜1500μm程度)の場合には、厚さの差ΔTの上限は直線4となる。
【0074】
上述したように、第3の透光性絶縁体13の最小厚さTを、LEDチップ8の高さTとの差ΔT(T−T)が図13に示す直線1と直線2と直線3と直線4と直線5とで囲われる範囲内となるように設定することによって、導電回路層5、7とLEDチップ8の電極9、10との電気的な接続性やその信頼性を高めた上で、導電回路層5、7によるLEDチップ8のショート等の不具合の発生を再現性よく抑制することが可能になる。耐屈曲試験や熱サイクル試験時においても、LEDチップ8のショート等の不具合の発生を抑制することができる。従って、導電回路層5、7とLEDチップ8の電極9、10との電気的な接続信頼性やLEDチップ8自体の信頼性を再現性よく高めることができる。すなわち、耐屈曲試験や熱サイクル試験(TCT)等を施した場合においても、各LEDチップの発光信頼性に優れる発光装置31を提供することができる。LEDチップ8の最小距離dは特に限定されるものではないが、実施形態の発光装置31は複数のLEDチップ8を最小距離dが1500μm以下となるように高密度に実装する場合に有効である。
【0075】
ここで、前述した特許文献4に記載の発光装置、すなわち透光性絶縁体の貫通孔内にLEDチップを配置した積層体の熱圧着体からなる発光装置では、導電回路層をLEDチップの電極に押し付けて電気的に接続させているため、複数のLEDチップを高密度に実装しようとすると電気的な接触が不安定になりやすい。また、発光装置を曲率半径が100mm程度となるように屈曲させると、導電回路層と電極との間の接触が維持できなくなる。さらに、500サイクル程度の熱サイクルでLEDチップが点灯しなくなるおそれが大きい。前述した特許文献3、4に記載されているように、LEDチップの電極と導電回路層とを導電性接着剤で接着した場合、複数のLEDチップ間を十分に絶縁することが困難であり、このために接続工程の複雑化や工数の増大等を招いて製造コストが増加しやすい。実施形態の発光装置31は、これら従来装置の難点を改善したものである。
【0076】
さらに、前述した80〜160℃の範囲のビカット軟化温度を有するエラストマーを用いることによって、複数のLEDチップ8に密着させた状態で第3の透光性絶縁体13を第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間の空間に埋め込むことができる。導電回路層5、7と電極9、10との接触状態は、LEDチップ8の周囲に密着した状態で配置された第3の透光性絶縁体13により維持される。従って、導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続状態をより一層良好に保つことができる。エラストマーのビカット軟化温度が160℃を超えると、第3の透光性絶縁体13の形成工程でエラストマーを十分に軟化させることができず、これにより導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続性が低下するおそれがある。一方、エラストマーのビカット軟化温度が80℃未満であるとLEDチップ8の保持力が不足し、導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続信頼性が低下するおそれがある。
【0077】
第1の電極9の周囲の状態に関しては、第3の透光性絶縁体13を第1の電極9の周囲にまで配置することが好ましい。第1の電極9がチップ本体12の発光面より小さい面積と発光面から突出した形状とを有する場合、第1の電極9を第1の導電回路層5に接触させた状態で、発光面内における第1の電極9が形成されていない面(第1の電極9の非形成面)と第1の導電回路層5との間に空間が生じる。このような第1の電極9の非形成面と第1の導電回路層5との間の微小空間にも、第3の透光性絶縁体13が充填されていることが好ましい。第3の透光性絶縁体13の微小空間に対する充填状態は、ビカット軟化温度が80〜160℃の範囲のエラストマーを用いることで高めることができる。
【0078】
第2の導電回路層7とLEDチップ8の第2の電極10との接触構造に関しては、第2の電極10の周囲に第3の透光性絶縁体13が密着した状態で存在するために接触状態が良好に維持される。第2の電極10の表面が凹凸形状を有している場合、凹凸形状における凸部を導電回路層7と直接接触させて電気的な接続領域を形成すると共に、凹凸形状における凹部の少なくとも一部に第3の透光性絶縁体13を充填して機械的な結合領域を形成することができる。すなわち、導電回路層7と電極10との接触界面に、導電回路層7と電極10とが直接接触した電気的な接続領域と、導電回路層7と電極10との間に第3の透光性絶縁体13が介在した機械的な結合領域とが形成される。これによって、導電回路層7と電極10との電気的な接続性を維持しつつ、機械的な結合性を高めることができる。すなわち、第2の導電回路層7とLEDチップ8の第2の電極10との電気的な接続信頼性をより再現性よく高めることが可能になる。
【0079】
上述した電気的な接続領域と機械的な結合領域とを有する接触界面は、第2の導電回路層7と第2の電極10との接触部分に限らず、第1の導電回路層5と第1の電極9との接触部分に対しても有効である。電気的な接続領域と機械的な結合領域とを有する接触界面は、電極9、10の表面が凹凸形状を有している場合に限らず、比較的平坦な表面を有している場合であっても、後述する透光性絶縁樹脂シートの熱圧着条件等を制御することによっても得ることができる。すなわち、透光性絶縁樹脂シートの真空下での熱圧着時における樹脂シートの延伸状態等を制御することによって、電気的な接続領域と機械的な結合領域とを有する導電回路層5、7と電極9、10との接触界面を得ることができる。
【0080】
次に、第3の実施形態の発光装置31の製造方法について、図14を参照して述べる。まず、第1の透光性絶縁体4とその表面に形成された第1の導電回路層5とを有する第1の透光性支持基体2と、第2の透光性絶縁体6とその表面に形成された第2の導電回路層7とを有する第2の透光性支持基体3とを用意する。導電回路層5、7の構成材料や形成方法等は前述した通りである。次に、第1および第2の透光性絶縁樹脂シート14、15を用意する。透光性絶縁樹脂シート14、15は、前述したように80〜160℃の範囲のビカット軟化温度を有するエラストマーシートであることがより好ましく、アクリル系エラストマーシートであることがさらに好ましい。
【0081】
透光性絶縁樹脂シート14、15を構成するエラストマーシートの0℃から100℃の間における引張貯蔵弾性率は0.1〜7GPaの範囲であることが好ましい。さらに、エラストマーシートはビカット軟化温度で溶融しておらず、ビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率が0.1MPa以上であることが好ましい。エラストマーシートは180℃以上の融解温度、もしくはビカット軟化温度より40℃以上高い融解温度を有することが好ましい。エラストマーシートのガラス転移温度は−20℃以下であることが好ましい。
【0082】
第2の透光性支持基体3の第2の導電回路層7上に、導電回路層7全体を覆うように第2の透光性絶縁樹脂シート15を配置する(図14(a))。第2の透光性絶縁樹脂シート15は、導電回路層7上のLEDチップ8の配置位置となる部分を含めて、導電回路層7全体、さらに透光性絶縁体6全体を覆うことが可能な形状を有している。第2の透光性絶縁樹脂シート15上に複数のLEDチップ8を配置する(図14(b))。複数のLEDチップ8は、第2の電極10が第2の透光性絶縁樹脂シート15側に位置し、言い換えると第2の導電回路層7側に位置し、かつ最小距離dが500μm以上となるように配置される。さらに、複数のLEDチップ8上に第1の透光性絶縁樹脂シート14を配置し(図14(c))、その上に第1の透光性支持基体2を配置する(図14(d))。
【0083】
第1の透光性支持基体2は、第1の導電回路層5が第1の透光性絶縁樹脂シート15と対向するように配置される。第1の透光性絶縁樹脂シート14は、導電回路層5上のLEDチップ8の配置位置となる部分を含めて、導電回路層5全体、さらに透光性絶縁体4全体を覆うことが可能な形状を有している。従って、第1の透光性絶縁樹脂シート15上に配置された第1の透光性支持基体2において、第1の導電回路層5の全体が第1の透光性絶縁樹脂シート15で覆われることになる。図14(a)〜(d)に示す工程を実施することによって、LEDチップ8は第1の電極9が第1の透光性絶縁樹脂シート14側に位置し、かつ第2の電極10が第2の透光性絶縁樹脂シート15側に位置するように、第1の透光性絶縁樹脂シート14と第2の透光性絶縁樹脂シート15との間に配置される。
【0084】
第1および第2の透光性絶縁樹脂シート14、15は、以下に示す真空熱圧着工程で第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間の空間、すなわちLEDチップ8を配置することにより生じる第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間隙に基づく空間を十分に埋めることが可能な厚さを有していればよい。具体的には、第1および第2の透光性絶縁樹脂シート14、15の合計厚さは、前述したLEDチップ8の高さTと第3の透光性絶縁体13の最小厚さTとの差ΔT(T−T)に基づく形状を有する第3の透光性絶縁体13が形成されるのに十分な厚さであればよい。
【0085】
次に、図14(e)に示すように、第2の透光性支持基体3と第2の透光性絶縁樹脂シート15とLEDチップ8と第1の透光性絶縁樹脂シート14と第1の透光性支持基体2とが順に積層された積層体を真空雰囲気中で加熱しながら加圧する。積層体の加圧工程は、第3の透光性絶縁体13の最小厚さTがLEDチップ8の高さTより薄くするように、隣接するLEDチップ8間に局部的に圧力を加えることが可能な加圧装置、例えばゴムのような弾性体を表面に設けた加圧板を有する加圧装置を用いて実施することが好ましい。これによって、LEDチップ8の高さTと第3の透光性絶縁体13の最小厚さTとの差ΔT(T−T)を、図13に示す直線1と直線2と直線3と直線4と直線5とで囲われる範囲内にすることができる。
【0086】
積層体の真空雰囲気中での加熱・加圧工程(真空熱圧着工程)は、透光性絶縁樹脂シート14、15のビカット軟化温度Mp(℃)に対し、Mp−10(℃)≦T≦Mp+30(℃)の範囲の温度Tに加熱しながら加圧することにより実施することが好ましい。このような加熱条件を適用することによって、透光性絶縁樹脂シート14、15を適度に軟化させた状態で積層体を加圧することができる。従って、透光性絶縁樹脂シート14を介して導電回路層5上に配置された第1の電極9を第1の導電回路層5の所定の位置に接続し、かつ透光性絶縁樹脂シート15を介して導電回路層7上に配置された第2の電極10を第2の導電回路層7の所定の位置に接続しつつ、第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間の空間に軟化させた透光性絶縁樹脂シート14、15を隙間なく埋め込んで第3の透光性絶縁体13を形成することができる。
【0087】
積層体の熱圧着時の加熱温度Tが透光性絶縁樹脂シート14、15のビカット軟化温度Mpより10(℃)低い温度未満(T<Mp−10)であると、透光性絶縁樹脂シート14、15の軟化が不十分となり、透光性絶縁樹脂シート14、15(ひいては第3の透光性絶縁体13)のLEDチップ8に対する密着性が低下するおそれがある。さらに、チップ本体12の発光面内における第1の電極9の非形成面と第1の導電回路層5との間の空間に透光性絶縁樹脂シート14、15(ひいては第3の透光性絶縁体13)を良好に充填することができないおそれがある。加熱温度Tが透光性絶縁樹脂シート14、15のビカット軟化温度Mpより30(℃)高い温度を超える(Mp+30<T)と、透光性絶縁樹脂シート14、15が軟化しすぎて形状不良等が生じるおそれがある。
【0088】
積層体の真空雰囲気中での熱圧着工程は、以下のようにして実施することが好ましい。上述した積層体を予備加圧して各構成部材間を密着させる。次いで、予備加圧された積層体が配置された作業空間を真空引きした後、積層体を上記したような温度に加熱しながら加圧する。このように、予備加圧された積層体を真空雰囲気中で熱圧着することによって、第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間の空間に軟化させた透光性絶縁樹脂シート14、15を隙間なく埋め込むことができる。熱圧着時の真空雰囲気は5Pa以下とすることが好ましい。予備加圧工程を省くことも可能であるが、この場合には積層体に位置ずれ等が生じやすくなるため、予備加圧工程を実施することが好ましい。
【0089】
積層体の熱圧着工程を大気雰囲気下や低真空下で実施すると、熱圧着後の発光装置31内、とりわけLEDチップ8の周囲に気泡が残存しやすい。発光装置31内に残留する気泡は加圧されているため、熱圧着後の発光装置31の膨れやLEDチップ8の透光性支持基体2、3から剥離の発生原因となる。さらに、発光装置31の内部、とりわけLEDチップ8の近傍に気泡や膨れが存在していると、光が不均一に散乱されたりして、発光装置31の外観上の問題となるので好ましくない。第3の実施形態によれば、第3の透光性絶縁体13の各種特性や真空熱圧着条件等に基づいて、発光装置31内の気泡の発生を抑制することができる。実施形態の発光装置31内には、外径が500μm以上またはLEDチップ8の外形サイズ以上の大きさを有する気泡が存在していないことが好ましい。
【0090】
例えば、前述した特許文献2に記載されているホットメルト接着剤は、加熱時に溶融するため、接着工程(熱圧着工程)を真空下で実施することが難しい。このため、ホットメルト接着剤シートを介在させた積層体を熱圧着することにより作製した発光装置内には、残存空気による気泡が残りやすく、特にLEDチップの近傍に多数の気泡が残りやすい。残留気泡は加圧によって形成され、例えば内圧が0.1MPa以上であるため、時間が経つと気泡の膨れが生じる。このため、残留気泡を有する発光装置は、作製直後に点灯したとしても、時間の経過と共に生じる気泡の膨れで電気的な接続が損なわれ、不点灯になる製品が多発する。さらに、使用中の屈曲や熱履歴により不点灯になる製品が多発したり、また不点灯にならないまでも外観上の問題が生じるおそれが大きい。また、加熱時に溶融するホットメルト接着剤では、LEDチップの角部が導電回路層に当たってダメージが加わることを防止できない。実施形態の発光装置31およびその製造方法は、このような従来装置の製造工程における難点を改善したものである。
【0091】
積層体の熱圧着時に加える加圧力は、加熱温度、透光性絶縁樹脂シート14、15の材質、厚さ、最終的な第3の透光性絶縁体13の厚さ等によっても異なるが、通常0.5〜20MPaの範囲であり、さらに1〜12MPaの範囲とすることが好ましい。このような加圧力を適用することによって、第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間隙に対する軟化させた透光性絶縁樹脂シート14、15の埋め込み性を高めることができる。さらに、LEDチップ8の特性低下や破損等を抑制することができる。
【0092】
上述したように、第1の導電回路層5とLEDチップ8の第1の電極9との間に第1の透光性絶縁樹脂シート14を介在させ、かつ第2の導電回路層7とLEDチップ8の第2の電極10との間に第2の透光性絶縁樹脂シート15を介在させた状態で、真空熱圧着工程を実施することによって、第1の電極9と第1の導電回路層5および第2の電極10と第2の導電回路層7とを電気的に接続しつつ、第3の透光性絶縁体13の厚さを所望の範囲に制御することができる。さらに、第1の電極9の周囲を含むLEDチップ8の周囲に第3の透光性絶縁体13を密着させることができる。従って、導電回路層5、7と電極9、10との電気的な接続信頼性を高めた発光装置31を得ることが可能になる。
【0093】
さらに、積層体の真空熱圧着時における加熱温度や加圧力、また加圧体の形状や硬さ等を制御することによって、第1の電極9または第2の電極10と導電回路層5、7との接触界面(特に第2の電極10と導電回路層7との接触界面)に、電極9、10と導電回路層5、7とが直接接触した電気的な接続領域と、電極9、10と導電回路層5、7との間に第3の透光性絶縁体13が介在して結合された機械的な結合領域とを形成することができる。このような構造を有する電極9、10と導電回路層5、7との接触界面を得ることで電気的な接続信頼性をさらに高めることが可能になる。
【0094】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態の発光装置とその製造方法について、図15ないし図18を参照して説明する。これらの図において、第1ないし第3の実施形態と同一部分については同一符号を付し、その説明の一部を省略する場合がある。第4の実施形態による発光装置41は、図15に示すように、所定の間隙を持って対向配置された第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3とを具備している。第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間隙には、複数のLEDチップ22が配置されている。LEDチップ22は、絶縁基板や半導体基板上に半導体層を形成したものであり、一方の面(図15では上面)に一対の電極が配置されている。
【0095】
LEDチップ22は、図16に示すように、サファイア基板のような絶縁基板23上に順に形成されたN型半導体層(例えばn−GaN層)24、活性層(例えばInGaN層)25、およびP型半導体層(例えばp−GaN層)26を有するチップ本体(発光ダイオード本体)27を備えている。N型半導体層とP型半導体層の配置位置は、逆であってもよい。このような素子構造を有するLEDチップ22では、第3の実施形態で用いたLEDチップ8のような両面電極構造を適用することができない。このため、チップ本体27の一方の面側に第1および第2の電極28、29を設けた片面電極構造を適用している。半導体基板上に半導体層を形成したLEDチップ22においても、片面電極構造を適用する場合がある。このようなLEDチップ22の第1および第2の電極28、29は、それぞれ第1の透光性支持基体2の導電回路層5に電気的に接続されている。導電回路層5と第1の電極28とは、図17に示すように、第1の電極28上に設けられたバンプ電極28Bを介して電気的に接続してもよい。同様に、導電回路層5と第2の電極29とは、第2の電極29上に設けられたバンプ電極29Bを介して電気的に接続してもよい。
【0096】
導電回路層5は、第1の透光性支持基体2を構成する第1の透光性絶縁体4の表面のみに設けられている。第2の透光性支持基体3は導電回路層を有しておらず、第2の透光性絶縁体6のみで構成されている。第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間の空間、すなわち複数のLEDチップ22の配置部分を除く空間には、第3の実施形態と同様に第3の透光性絶縁体13が埋め込まれている。第3の透光性絶縁体13の構成材料は、第3の実施形態と同様なビカット軟化温度、引張貯蔵弾性率、融解温度、ガラス転移温度等の特性と共に、透光性と電気絶縁性と屈曲性(柔軟性)とを有することが好ましく、さらにエラストマーが好ましい。エラストマーの具体例等は前述した通りである。
【0097】
第3の透光性絶縁体13は、導電回路層5と第1および第2の電極28、29との接触性を高める上で、第3の実施形態と同様に、LEDチップ8の高さTより薄い厚さを有している。第3の透光性絶縁体13と密着している第1の透光性支持基体2は、LEDチップ8が配置されている部分から隣接するLEDチップ8間の中間部分に向けて内側に湾曲した形状を有している。従って、第1の透光性支持基体2は導電回路層5を第1および第2の電極28、29に押し付けている。これによって、導電回路層5と第1および第2の電極28、29との電気的な接続性やその信頼性を高めることができる。
【0098】
第3の透光性絶縁体13は、LEDチップ8の高さTより5μm以上1/2T以下の範囲で薄い最小厚さTを有している。言い換えると、LEDチップ8の高さTと第3の透光性絶縁体13の最小厚さTとの差ΔT(T−T)は、5μm以上1/2T以下の範囲とされている。さらに、第3の透光性絶縁体13の最小厚さTは、LEDチップ8の高さTとの差ΔT(T−T)が、図13に示すΔT=5で表される直線1と、d=500で表される直線2と、ΔT=0.09dで表される直線3と、ΔT=0.0267d+60で表される直線4と、ΔT=1/2Tで表される直線5とで囲われる範囲内となるように設定されている。第3の透光性絶縁体13の最小厚さTおよび厚さの差ΔTの規定理由は、第3の実施形態と同様である。
【0099】
上述したように、第3の透光性絶縁体13の最小厚さTを、LEDチップ8の高さTとの差ΔT(T−T)が図13に示す直線1と直線2と直線3と直線4と直線5とで囲われる範囲内とすることで、導電回路層5LEDチップ8の第1および第2の電極28、29との電気的な接続性やその信頼性を高めた上で、導電回路層5によるLEDチップ8のショート等の不具合の発生を再現性よく抑制することができる。耐屈曲試験や熱サイクル試験時においても、LEDチップ8のショート等の不具合の発生を抑制することができる。従って、導電回路層5とLEDチップ8の第1および第2の電極28、29との電気的な接続信頼性やLEDチップ8自体の信頼性を再現性よく高めることができる。すなわち、耐屈曲試験や熱サイクル試験(TCT)等を施した場合においても、各LEDチップの発光信頼性に優れる発光装置41を提供することが可能になる。LEDチップ8の最小距離dは特に限定されないが、実施形態の発光装置41は複数のLEDチップ8を最小距離dが1500μm以下となるように高密度に実装する場合に有効である。
【0100】
第1の透光性絶縁体4は、第1の透光性支持基体2を内側に湾曲させるために、透光性と屈曲性とを有する絶縁樹脂体(シート等)で形成されていることが好ましい。ただし、第2の透光性絶縁体6は絶縁樹脂体に限られるものではなく、例えばガラスのような絶縁性と透光性とを併せ持つ無機材料からなるものであってもよい。透光性絶縁体6としてガラス基板を用いた場合、発光装置41全体に屈曲性を付与することができない。発光装置41に屈曲性を付与する場合には、第1の透光性絶縁体4のみならず、第2の透光性絶縁体6も透光性と屈曲性とを有する絶縁樹脂体で形成することが好ましい。
【0101】
第3の透光性絶縁体13は、第3の実施形態と同様に、第1および第2の電極28、29の周囲にまで配置することができる。すなわち、第1および第2の電極28、29がそれぞれチップ本体27の電極形成面(例えば発光面)より小さい面積と電極形成面から突出した形状とを有する場合、第1および第2の電極28、29を導電回路層5に接触させた状態で、電極形成面内における第1および第2の電極28、29が形成されていない面(第1および第2の電極28、29の非形成面)と導電回路層5との間に空間が生じる。このような第1および第2の電極28、29の非形成面と導電回路層5との間の微小空間にも、第3の透光性絶縁体13を充填することが好ましい。
【0102】
また、導電回路層5とLEDチップ8の第1および第2の電極28、29との接触構造に関しては、第3の実施形態と同様な構造、すなわち導電回路層5と第1または第2の電極28、29との接触界面に、導電回路層5と電極28、29とが直接接触した電気的な接続領域と、導電回路層5と電極28、29との間に第3の透光性絶縁体13が介在した機械的な結合領域とを形成した構造を適用することが有効である。これによって、導電回路層5と電極28、29との電気的な接続性を維持しつつ、機械的な結合性を高めることができる。すなわち、導電回路層5とLEDチップ8の第1および第2の電極28、29との電気的な接続信頼性をより再現性よく高めることが可能になる。
【0103】
次に、第4の実施形態の発光装置41の製造方法について、図18を参照して述べる。まず、第1の透光性絶縁体4とその表面に形成された第1の導電回路層5とを有する第1の透光性支持基体2と、第2の透光性絶縁体6のみからなる第2の透光性支持基体3とを用意する。導電回路層5の構成材料や形成方法等は前述した通りである。次に、透光性絶縁樹脂シート30を用意する。透光性絶縁樹脂シート30は、第3の実施形態と同様なエラストマーシートであることが好ましく、さらにアクリル系エラストマーシートであることがより好ましい。エラストマーシートの特性は前述した通りである。
【0104】
第1の透光性支持基体2の導電回路層5上に、導電回路層5全体を覆うように透光性絶縁樹脂シート30を配置する(図18(a))。透光性絶縁樹脂シート30は、導電回路層5上のLEDチップ22の配置位置となる部分を含めて導電回路層5全体、さらには第1の透光性支持基体2全体を覆うことが可能な形状を有している。透光性絶縁樹脂シート30上に複数のLEDチップ22を配置する(図18(b))。LEDチップ22は第1および第2の電極28、29が透光性絶縁樹脂シート30側に位置するように、言い換えると導電回路層5側に位置するように配置される。さらに、LEDチップ22上に第2の透光性支持基体3を最小距離dが500μm以上となるように配置する(図18(c))。図18(a)〜(c)に示す工程を実施することによって、LEDチップ22は第1の透光性絶縁樹脂シート30と第2の透光性支持基体3との間に配置される。
【0105】
透光性絶縁樹脂シート30は、真空熱圧着工程で第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間の空間、すなわちLEDチップ22を配置することで生じる第1の透光性支持基体2と第2の透光性支持基体3との間隙に基づく空間を埋めることが可能な厚さを有していればよい。具体的には、透光性絶縁樹脂シート30の厚さは、前述したLEDチップ8の高さTと第3の透光性絶縁体13の最小厚さTとの差ΔT(T−T)に基づく形状を有する第3の透光性絶縁体13が形成されるのに十分な厚さであればよい。
【0106】
次に、図18(d)に示すように、第1の透光性支持基体2と透光性絶縁樹脂シート30とLEDチップ22と第2の透光性支持基体3とが順に積層された積層体を真空雰囲気中で加熱しながら加圧する。積層体の真空雰囲気中での加熱・加圧工程(真空熱圧着工程)は、第3の実施形態と同様な条件下で実施することが好ましい。導電回路層5とLEDチップ22の電極28、29との間に透光性絶縁樹脂シート30を介在させた状態で、真空熱圧着工程を実施することで、第1および第2の電極28、29と導電回路層5とを電気的に接続しつつ、第3の透光性絶縁体13の厚さを所望の範囲に制御することができる。さらに、電極28、29の周囲を含むLEDチップ22の周囲に第3の透光性絶縁体13を密着させることができる。従って、導電回路層5と第1および第2の電極28、29との電気的な接続信頼性を高めた発光装置41を得ることが可能になる。
【0107】
なお、第1ないし第4の実施形態においては、2枚の透光性絶縁体4、6で挟まれたLEDチップ8、22および第3の透光性絶縁体13を備える発光装置1、21、31、41について述べたが、これら発光装置の構成は本発明の基本的な構成を示したものであり、実施形態の基本構成を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。例えば、第1の透光性支持基体2を2枚の透光性絶縁体4で形成し、合計で3枚の透光性絶縁体で構成した発光装置、さらに透光性支持基体2、3の透光性絶縁体の枚数を種々に変更した発光装置等であっても、第1ないし第4の実施形態と同等の効果が得られる。これは透光性絶縁体の枚数を一例として挙げたものであり、他の構成についても実施形態の基本構成を逸脱しない範囲内で種々の変更や追加が可能である。
【0108】
(第5の実施形態)
第1ないし第4の実施形態の発光装置1、21、31、41は、LEDチップ8、22を挟持する支持基体2、3に透光性部材を用いているため、例えば店舗、ショールーム、事務所等の建築物のドアや窓に各種の文字列、幾何学的な図形や模様等を表示する表示装置、展示板や掲示板等の表示装置、ブレーキランプやウインカー用ランプ等の車輌用ランプ等に好適である。図19は実施形態の発光装置1、21、31、41の使用例として、実施形態の発光装置1(21、31、41)を取り付けた建築物のドア51を示している。図19に示すドア51は、ドア枠52内に設置されたガラス板53と、ガラス板53に取り付けられた発光装置1(21、31、41)とを備えている。発光装置1(21、31、41)は全体として透光性を有しているため、例えばドアであることの表示(図19ではENTRANCE)を可能にした上で、ドア51を構成するガラス板53の透明性を損なうことがない。このように、実施形態の発光装置1、21、31、41は、透明性が求められる各種の表示装置やランプに好適に使用されるものである。
【実施例】
【0109】
次に、具体的な実施例とその評価結果について述べる。
【0110】
(実施例1)
まず、第1および第2の透光性絶縁体として厚さが180μmのポリエチレンテレフタレートシートを用意した。第1の透光性絶縁体としてのポリエチレンテレフタレートシートの表面にITO微粒子を紫外線硬化型のアクリル系透明樹脂バインダ中に分散させたスラリーを印刷することによって、直線状に並ぶ6個のLEDチップを直列に接続する導電回路層を形成して第1の透光性支持基体を作製した。第2の透光性絶縁体としてのポリエチレンテレフタレートシートの表面にも、同様にして導電回路層を形成して第2の透光性支持基体を作製した。第1および第2の透光性絶縁樹脂シートとして、ビカット軟化温度が110℃、融解温度が220℃、ガラス転移温度が−40℃、0℃における引張貯蔵弾性率が1.1GPa、100℃における引張貯蔵弾性率が0.3GPa、ビカット軟化点である110℃における引張貯蔵弾性率が0.2GPaで、厚さが60μmのアクリル系エラストマーシートを用意した。
【0111】
ビカット軟化温度は、安田精機製作所社製のNo.148−HD−PCヒートディストーションテスタを用いて、試験加重10N、昇温速度50℃/時間の条件で、JIS K7206(ISO 306)記載のA50条件で求めた。ガラス転移温度と融解温度は、JIS K7121(ISO 3146)に準拠した方法で、島津製作所社製の示差走査熱量計DSC−60を用いて、5℃/分の昇温速度で、熱流束示差走査熱量測定により求めた。引張貯蔵弾性率はJIS K7244−4(ISO 6721−4)に準拠して、エー・アンド・ディ社製のDDV−01GP動的粘弾性自動測定器を用いて、−100℃から200℃まで、1℃/分の等速昇温、周波数10Hzで求めた。以下の実施例および比較例におけるエラストマーの特性値は、実施例1と同様の方法、条件で測定した。
【0112】
6個の赤色発光のAlGaAs/GaAs系LEDチップを用意した。用意したLEDチップは、チップ本体の発光面側に設けられた第1の電極と、チップ本体の非発光面側に設けられた第2の電極とを備えており、高さは175μmである。第1の電極は、チップ本体の発光面より小さい面積を有し、さらに発光面から突出した形状を有している。第1の電極の発光面からの突出量は3μmである。チップ本体の発光面に対する第1の電極の形成面の面積比率は約20%である。チップ本体の発光面の約80%(面積比率)が電極の非形成面とされている。第2の電極はチップ本体の非発光面全体に形成されており、その表面には微小な凹凸が設けられている。
【0113】
第2の透光性支持基体の導電回路層上に、導電回路層および透光性絶縁体の全体を覆うように第2の透光性絶縁樹脂シートを載せ、第2の透光性絶縁樹脂シート上の所定の位置に6個のLEDチップを配置した。6個のLEDチップは、それぞれ第2の電極が第2の透光性絶縁樹脂シート側に位置するように配置した。6個のLEDチップ上に第1の透光性絶縁樹脂シートと第1の透光性支持基体とを積層した。第1の透光性絶縁樹脂シートは、第1の透光性支持基体の導電回路層が第1の透光性絶縁樹脂シート側に位置するように配置した。第1の透光性絶縁樹脂シートは第1の透光性支持基体の導電回路層および透光性絶縁体の全体を覆う形状を有している。
【0114】
次に、第2の透光性支持基体と第2の透光性絶縁樹脂シートとLEDチップと第1の透光性絶縁樹脂シートと第1の透光性支持基体とを順に積層した積層体を0.1MPaの圧力で予備プレスした後、作業空間を0.1kPaまで真空引きした。5kPaの真空雰囲気中にて積層体を120℃に加熱しながら9.8MPaの圧力でプレスした。この加熱・加圧状態を10分間維持することによって、LEDチップの電極と導電回路層とを電気的に接続しつつ、第1の透光性支持基体と第2の透光性支持基体との間に第1および第2の透光性絶縁樹脂シートを埋め込んで第3の透光性絶縁体を形成した。この後、紫外線硬化樹脂により端面のシール処理を行って発光装置を作製した。得られた発光装置を後述する特性評価に供した。
【0115】
このようにして得た発光装置について、作製してから24時間放置後に、肉眼で目視して気泡とそれに起因する膨れの状況を確認した。その結果、目視できる気泡とそれに起因したと思われるような膨れは観察されなかった。気泡の評価は以下のようにして実施した。発光装置の表面または裏面を目視にて観察し、気泡の有無を一次確認した。一次確認で気泡の観察されなかった試料は、気泡なしと判定して検査を終了した。一次検査で気泡が観察された試料は、カメラ付きの顕微鏡を用いて、気泡の写真撮影を行った。写真を用いて、気泡の輪郭線上の任意の2点間距離を測定し、距離が最大となる長さを外径と定義した。そして、気泡の外径がLEDのチップサイズ以上、もしくは500μm以上である場合を気泡有りと判定し、それ以外の試料を気泡無しと判定した。
【0116】
次に、第3の透光性絶縁体の充填構造を確認するため、LEDチップとその周囲をSEMにより観察した。その結果、図4に示したように、LEDチップの発光面内における第1の電極の非形成面と導電回路層との間に、第3の透光性絶縁体の一部が良好に充填されていることが確認された。第2の電極と導電回路層との接触界面には、第2の電極と導電回路層とが直接接触した電気的な接続領域と、第2の電極と導電回路層との間に第3の透光性絶縁体の一部が介在した機械的な結合領域とが形成されていることが確認された。肉眼およびSEMによる観察結果は、実施例2、18においても同様な結果が得られた。
【0117】
(実施例2〜5)
透光性絶縁樹脂シートとして表2および表3に示すビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率とガラス転移温度と融解温度を有するアクリル系エラストマーシートを用いると共に、加圧時に表3に示す加熱温度を適用する以外は、実施例1と同様にして発光装置を作製した。これら発光装置を後述する特性評価に供した。
【0118】
(実施例6〜10)
導電回路層をITOのスパッタ膜で形成し、かつ透光性絶縁樹脂シートとして表2および表3に示すビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率とガラス転移温度と融解温度を有するアクリル系エラストマーシートを用いると共に、加圧時に表3に示す加熱温度を適用する以外は、実施例1と同様にして発光装置を作製した。これら発光装置を後述する特性評価に供した。
【0119】
(実施例11)
第1および第2の透光性絶縁体として厚さが180μmのポリエチレンテレフタレートシートを用意した。第1の透光性絶縁体としてのポリエチレンテレフタレートシートの表面に、実施例1と同様にして、直線状に並ぶ6個のLEDチップを直列に接続する導電回路層を形成して第1の透光性支持基体を作製した。第2の透光性絶縁体としてのポリエチレンテレフタレートシートは、そのまま第2の透光性支持基体として使用した。透光性絶縁樹脂シートとして、ビカット軟化温度が110℃、ガラス転移温度が−40℃、融解温度が220℃、0℃における引張貯蔵弾性率が1.1GPa、100℃における引張貯蔵弾性率が0.3GPa、ビカット軟化点である110℃における引張貯蔵弾性率が0.3GPaで、厚さが60μmのアクリル系エラストマーシートを用意した。
【0120】
6個の青色発光のGaN系LEDチップを用意した。用意したLEDチップは、チップ本体の発光面側に設けられた第1および第2の電極を備えており、高さは90μmである。第1および第2の電極は、それぞれチップ本体の発光面より小さい面積を有し、さらに発光面から突出した形状を有している。電極の発光面からの突出量は1μmである。チップ本体の発光面に対する第1および第2の電極の形成面の面積比率は約15%である。チップ本体の発光面の約85%(面積比率)が電極の非形成面とされている。
【0121】
第1の透光性支持基体の導電回路層上に、導電回路層全体を覆うように透光性絶縁樹脂シートを載せ、透光性絶縁樹脂シート上の所定の位置に6個のLEDチップを配置した。6個のLEDチップは、それぞれ第1および第2の電極が透光性絶縁樹脂シート側に位置するように配置した。6個のLEDチップ上に第2の透光性支持基体を積層した。次に、第1の透光性支持基体と透光性絶縁樹脂シートとLEDチップと第2の透光性支持基体とを順に積層した積層体を、実施例1と同一条件で真空下にて加熱・加圧処理した。紫外線硬化樹脂を用いて端面のシール処理を行って発光装置を作製した。得られた発光装置を後述する特性評価に供した。
【0122】
(実施例12)
導電回路層をITOのスパッタ膜で形成する以外は、実施例11と同様にして発光装置を作製した。得られた発光装置を後述する特性評価に供した。
【0123】
(実施例13)
第1および第2の透光性絶縁体として厚さが180μmのポリエチレンテレフタレートシートを用意した。第1の透光性絶縁体としてのポリエチレンテレフタレートシートの表面に、Ag微粒子をアクリル系透明樹脂バインダ中に分散させたスラリーを目開きが0.5mmのメッシュ状となるように印刷することによって、直線状に並ぶ6個のLEDチップを直列に接続する導電回路層を形成して第1の透光性支持基体を作製した。第2の透光性絶縁体としてのポリエチレンテレフタレートシートの表面にも、同様にして導電回路層を形成して第2の透光性支持基体を作製した。これら第1および第2の透光性支持基体を使用する以外は、実施例1と同様にして発光装置を作製した。得られた発光装置を後述する特性評価に供した。
【0124】
(実施例14〜17)
透光性絶縁樹脂シートとして表2および表3に示すビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率とガラス転移温度と融解温度を有するアクリル系エラストマーシートを用いると共に、加圧時に表3に示す加熱温度を適用する以外は、実施例13と同様にして発光装置を作製した。発光装置を後述する特性評価に供した。
【0125】
(実施例18)
実施例13と同様なメッシュ状の導電回路層を適用する以外は、実施例11と同様にして発光装置を作製した。得られた発光装置を後述する特性評価に供した。
【0126】
(比較例1〜6)
透光性絶縁樹脂シートとして表2および表3に示すビカット軟化温度と引張貯蔵弾性率とガラス転移温度と融解温度を有するアクリル系エラストマーシートを用いると共に、加圧時に表3に示す加熱温度を適用する以外は、実施例1と同様にして発光装置を作製した。これら発光装置を後述する特性評価に供した。
【0127】
(比較例7)
実施例1と同様にして第1および第2の透光性支持基体を作製した。厚さが100μmのアクリル系高粘性接着シートを用意し、これにLEDチップより僅かに大きい貫通孔を、6個のLEDチップが直線状に並ぶように形成した。第2の透光性支持基体上に貫通孔を有するアクリル系高粘性接着シートを載せた後、貫通孔内に実施例1と同様なLEDチップを配置した。その上に第1の透光性支持基体を積層した後、熱ドラムで挟むことにより160℃に加熱しながら9.8MPaの圧力でプレスした。この後、端面のシール処理を行って発光装置を作製した。得られた発光装置を後述する特性評価に供した。
【0128】
(比較例8)
実施例11と同様にして第1および第2の透光性支持基体を作製した。第2の透光性支持基体上の所定の位置に、実施例11と同様な6個の青色発光のGaN系LEDチップを配置した。LEDチップのサファイア基板側の表面を、第2の透光性支持基体に接着剤で固定した。LEDチップ上に第1の透光性支持基体を積層した後、第1の透光性支持基体と第2の透光性支持基体との間の隙間に真空雰囲気下でアクリル系粘着剤を充填した。アクリル系粘着剤に紫外線を照射し部分硬化させて発光装置を作製した。得られた発光装置を後述する特性評価に供した。
【0129】
(比較例9)
第1の透光性絶縁体となる厚さが180μmのポリエチレンテレフタレートシートの表面に、ITO微粒子を分散させたスラリーを印刷して第1の導電回路層を形成した。次に、第2の透光性絶縁体となる厚さが180μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ビカット軟化温度が110℃、ガラス転移温度が−10℃、融解温度が220℃、0℃における引張貯蔵弾性率が0.006GPa、100℃における引張貯蔵弾性率が0.003GPa、ビカット軟化点である110℃における引張貯蔵弾性率が0.2GPaで、厚さが60μmのアクリル系エラストマーシートを積層した。
【0130】
青色発光のGaN系LEDチップのサファイア基板側を、アクリル系エラストマーシートの所定の位置に配置した。第1の導電回路層がLEDチップの電極側に位置するように、第1の透光性支持基体をLEDチップ上に積層した。この積層体を真空雰囲気中にて160℃に加熱しながら9.8MPaの圧力でプレスした。この加熱・加圧状態を1時間維持して発光装置を作製した。得られた発光装置を後述する特性評価に供した。
【0131】
(比較例10)
ビカット軟化温度が110℃、ガラス転移温度が−40℃、融解温度が220℃、0℃における引張貯蔵弾性率が0.006GPa、100℃における引張貯蔵弾性率が0.003GPa、ビカット軟化点である110℃における引張貯蔵弾性率が0.002GPaで、厚さが60μmのアクリル系エラストマーシートを用いると共に、熱圧着を大気中で実施する以外は、実施例1と同様にして発光装置を作製した。得られた発光装置を後述する特性評価に供した。
【0132】
(比較例11)
アクリル系エラストマーシートに代えて、環球法による軟化点が145℃、厚さが60μmのオレフィン系ホットメルト接着剤シートを使用し、積層体を大気中にて160℃で20秒間の条件でホットロールプレスする以外は、実施例1と同様にして発光装置を作製した。この発光装置を後述する特性評価に供した。
【0133】
(比較例12)
厚さが87.5μmのオレフィン系ホットメルト接着剤シートを使用する以外は、比較例11と同様にして発光装置を作製した。この発光装置を後述する特性評価に供した。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
次に、実施例1〜18および比較例1〜12の各発光装置の特性を以下のようにして評価した。実施例1〜18および比較例1〜12でそれぞれ12個の試料を作製した。各例の12個の試料について、JIS C5016(IEC249−1およびIEC326−2)8.6に記載の耐屈曲試験を通電状態で行った。屈曲試験は全ての試料について、温度20±2℃、相対湿度60〜70%、気圧86〜106kPaの環境下で実施した。6個の試料はLEDチップの配列方向に屈曲させ、残りの6個の試料はLEDチップ列が屈曲部の中心にくるように、LEDチップの配列方向と直交する方向に屈曲させた。LEDチップの配列方向と直交する方向に屈曲させた試料の最小屈曲半径(点灯が維持される屈曲半径の最小値)を調べた。
【0138】
まず、半径が100mmから5mmまでの均一の直径を持つ、断面が真円状の測定用円柱を複数種類用意した。次に、得られた発光装置を、LEDチップの発光面の裏面が測定用円柱の表面の曲面に当たるようにセットした。発光装置を点灯させ、この状態で測定用円柱の表面の曲面に沿って180°屈曲させた。この屈曲試験を半径の大きい測定用円柱から半径の小さい測定用円柱まで順番に実施し、どの屈曲半径の測定用円柱まで点灯状態が維持されるかを測定した。また、屈曲させていない試料について、JIS C60068−14にしたがって−20℃と60℃との間で熱サイクル試験を実施し、点灯状態が維持可能なサイクル数を調べた。熱サイクル試験は、さらし時間30分、昇温速度3K/mimの条件で行った。これらの測定・評価結果を表4に示す。
【0139】
【表4】
【0140】
表4から明らかなように、実施例1〜18による発光装置は、いずれも耐屈曲試験において屈曲半径を小さくした状態でも点灯が維持されており、また熱サイクル試験において十分なサイクル数まで点灯状態が維持可能であることが確認された。従って、実施例1〜18による発光装置は、いずれも耐屈曲性および耐熱サイクル特性に優れていることが分かる。すなわち、導電回路層とLEDチップの電極との電気的な接続性信頼性を向上させた発光装置を提供することが可能になる。また、実施例1〜18の発光装置について、前述した方法で気泡とそれに起因する膨れの状態を観察および判定したところ、いずれも「気泡無し」であることが確認された。
【0141】
比較例1〜12の発光装置について、前述した方法で気泡とそれに起因する膨れの状態を観察および判定したところ、比較例1〜9の発光装置では気泡とそれに起因したと思われる膨れは観察されなかった。しかしながら、比較例10〜12の発光装置においては、ほとんどのLEDの周囲に気泡が観察され、その両側の透光性導電体の多くに膨らみが観察された。特に、比較例11は気泡の面積が大きく、また膨らみも多かった。次に、第3の透光性絶縁体の充填構造を確認するため、LEDチップおよびその周囲をSEMにより観察した。比較例11の発光装置においては、LEDチップの周辺を中心に広い領域で空隙が観察された。比較例7〜8の発光装置では、第2の電極と導電回路層との接触界面における第3の透光性絶縁体の存在は確認されなかった。
【0142】
また、比較例1〜6の発光装置は、第3の透光性絶縁体のビカット軟化温度、ガラス転移温度、引張貯蔵弾性率のいずれかが本発明の範囲から外れているため、耐屈曲性や耐熱サイクル特性に劣っていた。比較例7および比較例9の発光装置は、LEDチップを透光性絶縁樹脂シートの貫通孔内に配置しているため、LEDチップと第3の透光性絶縁体との密着性に劣ることから、良好な耐屈曲性や耐熱サイクル特性を得ることができなかった。比較例8の発光装置は、比較例7の発光装置とほぼ同様であり、耐屈曲性や耐熱サイクル特性に劣っていた。比較例10〜12の発光装置では残留した気泡が膨らんだために、LEDチップと第3の透光性絶縁体との接着が保てなくなり、耐屈曲性や耐熱サイクル特性に劣る結果になったものと推定される。
【0143】
(実施例19〜24、比較例13〜16)
まず、第1および第2の透光性絶縁体として厚さが180μmのポリエチレンテレフタレートシートを用意した。第1の透光性絶縁体としてのポリエチレンテレフタレートシートの表面にITO微粒子を紫外線硬化型のアクリル系透明樹脂バインダ中に分散させたスラリーを印刷することによって、直線状に並ぶ6個のLEDチップを直列に接続する導電回路層(厚さ:3μm)を形成して第1の透光性支持基体を作製した。第2の透光性絶縁体としてのポリエチレンテレフタレートシートの表面にも、同様にして導電回路層(厚さ:3μm)を形成して第2の透光性支持基体を作製した。第1および第2の透光性絶縁樹脂シートとして、ビカット軟化温度が110℃、融解温度が220℃、ガラス転移温度が−40℃、0℃における引張貯蔵弾性率が1.1GPa、100℃における引張貯蔵弾性率が0.3GPa、ビカット軟化点である110℃における引張貯蔵弾性率が0.2GPaで、表5に示す厚さを有するアクリル系エラストマーシートを用意した。
【0144】
6個の赤色発光のAlGaAs/GaAs系LEDチップを用意した。用意したLEDチップは、チップ本体の発光面側に設けられた第1の電極と、チップ本体の非発光面側に設けられた第2の電極とを備えており、高さTは175μmである。第1の電極は、チップ本体の発光面より小さい面積を有し、さらに発光面から突出した形状を有している。第1の電極の発光面からの突出量は3μmである。チップ本体の発光面に対する第1の電極の形成面の面積比率は約20%である。チップ本体の発光面の約80%(面積比率)が電極の非形成面とされている。第2の電極はチップ本体の非発光面全体に形成されており、その表面には微小な凹凸が設けられている。
【0145】
第2の透光性支持基体の導電回路層上に、導電回路層および透光性絶縁体の全体を覆うように第2の透光性絶縁樹脂シートを載せ、第2の透光性絶縁樹脂シート上の所定の位置にチップ間距離(最小距離d)が表5に示す値となるように6個のLEDチップを配置した。6個のLEDチップは、それぞれ第2の電極が第2の透光性絶縁樹脂シート側に位置するように配置した。次いで、6個のLEDチップ上に第1の透光性絶縁樹脂シートと第1の透光性支持基体とを積層した。第1の透光性絶縁樹脂シートは、第1の透光性支持基体の導電回路層が第1の透光性絶縁樹脂シート側に位置するように配置した。第1の透光性絶縁樹脂シートは第1の透光性支持基体の導電回路層および透光性絶縁体の全体を覆う形状を有している。
【0146】
次に、第2の透光性支持基体と第2の透光性絶縁樹脂シートとLEDチップと第1の透光性絶縁樹脂シートと第1の透光性支持基体とを順に積層した積層体を0.1MPaの圧力で予備プレスした後、作業空間を5kPaまで真空引きした。このような真空雰囲気中にて積層体を120℃に加熱しながら10MPaの圧力でプレスした。この加熱・加圧状態を10分間維持することによって、LEDチップの電極と導電回路層とを電気的に接続しつつ、第1の透光性支持基体と第2の透光性支持基体との間の空間に第1および第2の透光性絶縁樹脂シートを埋め込んで第3の透光性絶縁体を形成した。この後、紫外線硬化樹脂による端面のシール処理を行って発光装置を作製した。LEDチップ高さTと第3の透光性絶縁体の最小厚さTとの差ΔT(T−T)は、表5に示す通りである。なお、表5における比較例は、厚さの差ΔTを本発明の範囲外としたものである。
【0147】
このようにして得た実施例19〜24の発光装置について、発光装置内の気泡の有無を確認した。気泡の評価は以下のようにして実施した。発光装置の表面または裏面を目視にて観察し、気泡の有無を一次確認した。一次確認で気泡の観察されなかった試料は、気泡なしと判定して検査を終了した。一次検査で気泡が観察された試料は、カメラ付きの顕微鏡を用いて、気泡の写真撮影を行った。写真を用いて、気泡の輪郭線上の任意の2点間距離を測定し、距離が最大となる長さを外径と定義した。そして、気泡の外径がLEDのチップサイズ以上、もしくは500μm以上である場合を気泡有りと判定し、それ以外の試料を気泡無しと判定した。その結果、実施例19〜24の発光装置では、目視できる気泡は観察されなかった。一方、比較例13〜16では目視により発光装置内のLEDチップ間の一部に気泡のように見える領域が確認された。さらに、SEM観察の結果、LEDチップ間に第3の透光性絶縁体が充填されていない部分があることが確認された。
【0148】
第3の透光性絶縁体の充填構造を確認するために、LEDチップおよびその周囲をSEMにより観察した。その結果、実施例19〜24の発光装置においては、いずれもLEDチップの第1の電極の非形成面と導電回路層との間、およびLEDチップの第2の電極の非形成面と導電回路層との間に、第3の透光性絶縁体が良好に充填されていることが確認された。さらに、第1の電極と導電回路層との接触界面、および第2の電極と導電回路層との接触界面には、いずれの実施例においても、電極と導電回路層とが直接接触した電気的な接続領域と、電極と導電回路層との間に第3の透光性絶縁体が介在した機械的な結合領域とが形成されていることが確認された。
【0149】
次に、上述した発光装置の特性を以下のようにして評価した。表5に示す各例において、それぞれ18個の試料を作製した。各例の18個の試料について、JIS C5016(IEC249−1およびIEC326−2)8.6に記載の耐屈曲試験を通電状態で行った。6個の試料はLEDチップ列が屈曲部の中心にくるように、LEDチップの配列方向と直交する方向に屈曲させ、他の6個の試料はLEDチップの配列方向に屈曲させた。各試料を屈曲半径を40mmとして180°屈曲させ、その際にLEDチップの点灯状態が維持されている試料数を調べた。屈曲試験は全ての試料について、温度20±2℃、相対湿度60〜70%、気圧86〜106kPaの環境下で実施した。また、残りの6個の試料をJIS C60068−14にしたがって−20℃と60℃との間で熱サイクル試験を実施し、1000サイクル後および3000サイクル後にLEDチップの点灯状態が維持されている試料数を調べた。熱サイクル試験は、さらし時間30分、昇温速度3K/mimの条件で行った。これらの測定・評価結果を表5に示す。
【0150】
【表5】
【0151】
表5から明らかなように、実施例19〜24による発光装置は、いずれも耐屈曲試験において屈曲半径を小さくした状態でも点灯が維持されており、また熱サイクル試験において十分なサイクル数まで点灯状態が維持可能であることが確認された。従って、実施例19〜24による発光装置は、いずれも耐屈曲性および耐熱サイクル性に優れていることが分かる。すなわち、導電回路層とLEDチップの電極との電気的な接続性信頼性やLEDチップの信頼性を向上させた発光装置を提供することが可能であった。一方、比較例13〜16による発光装置においては、そのような特性を発揮させることができなかった。これは発光装置内のLEDチップの電極と導電回路層との間に、機械的および電気的に接続されていない部分が残っていたことが原因と考えられる。
【0152】
(実施例25〜27、比較例17〜19)
第1および第2の透光性絶縁体として厚さが180μmのポリエチレンテレフタレートシートを用意した。第1の透光性絶縁体としてのポリエチレンテレフタレートシートの表面に、実施例19と同様に厚さが3μmの導電回路層を形成して第1の透光性支持基体を作製した。第2の透光性絶縁体としてのポリエチレンテレフタレートシートはそのまま第2の透光性支持基体として使用した。透光性絶縁樹脂シートとして実施例19と同じ物性と表6に示す厚さとを有するアクリル系エラストマーシートを用意した。
【0153】
6個の青色発光のGaN系LEDチップを用意した。用意したLEDチップは、チップ本体の発光面側に設けられた第1および第2の電極を備えており、高さTは90μmである。第1および第2の電極は、それぞれチップ本体の発光面より小さい面積を有し、さらに発光面から突出した形状を有している。電極の発光面からの突出量は1μmである。チップ本体の発光面に対する第1および第2の電極の形成面の面積比率は約15%である。チップ本体の発光面の約70%(面積比率)が電極の非形成面とされている。
【0154】
第1の透光性支持基体の導電回路層上に、導電回路層および透光性絶縁体の全体を覆うように透光性絶縁樹脂シートを載せ、透光性絶縁樹脂シート上の所定の位置にチップ間距離(最小距離d)が表6に示す値となるように6個のLEDチップを配置した。6個のLEDチップは、それぞれ第1および第2の電極が透光性絶縁樹脂シート側に位置するように配置した。さらに、6個のLEDチップ上に第2の透光性支持基体を積層した。
【0155】
次に、第1の透光性支持基体と透光性絶縁樹脂シートとLEDチップと第2の透光性支持基体とを順に積層した積層体を0.1MPaの圧力で予備プレスした後、作業空間を5kPaまで真空引きした。このような真空雰囲気中にて積層体を120℃に加熱しながら30MPaの圧力でプレスした。この加熱・加圧状態を10分間維持することによって、LEDチップの電極と導電回路層とを電気的に接続しつつ、第1の透光性支持基体と第2の透光性支持基体との間の空間に第1および第2の透光性絶縁樹脂シートを埋め込んで第3の透光性絶縁体を形成した。この後、紫外線硬化樹脂による端面のシール処理を行って発光装置を作製した。LEDチップ高さTと第3の透光性絶縁体の最小厚さTとの差ΔT(T−T)は、表6に示す通りである。なお、表6における比較例は、厚さの差ΔTを本発明の範囲外としたものである。
【0156】
このようにして得た実施例25〜27および比較例17〜19の発光装置について、発光装置内の気泡の有無とLEDチップとその周囲の第3の透光性絶縁体の充填状態を、実施例19と同様にして観察した。その結果、実施例25〜27の発光装置では、目視できる気泡は観察されなかった。実施例25〜27の発光装置では、いずれもLEDチップの電極の非形成面と導電回路層との間に第3の透光性絶縁体が良好に充填されており、さらに電極と導電回路層との接触界面に、電極と導電回路層とが直接接触した電気的な接続領域と電極と導電回路層との間に第3の透光性絶縁体が介在した機械的な結合領域とが形成されていることが確認された。一方、比較例17〜19では目視により発光装置内のLEDチップ間の一部に気泡のように見える領域が確認され、さらにSEM観察の結果、LEDチップ間に第3の透光性絶縁体が充填されていない部分があることが確認された。
【0157】
次に、上述した発光装置の特性を以下のようにして評価した。表6に示す各例において、それぞれ18個の試料を作製した。各例の18個の試料について、JIS C5016(IEC249−1およびIEC326−2)8.6に記載の耐屈曲試験を通電状態で行った。6個の試料はLEDチップ列が屈曲部の中心にくるように、LEDチップの配列方向と直交する方向に屈曲させ、他の6個の試料はLEDチップの配列方向に屈曲させた。各試料を屈曲半径を40mmとして180°屈曲させ、その際にLEDチップの点灯状態が維持されている試料数を調べた。また、残りの6個の試料をJIS C60068−14にしたがって−20℃と60℃との間で熱サイクル試験を実施し、1000サイクル後および3000サイクル後にLEDチップの点灯状態が維持されている試料数を調べた。熱サイクル試験は、さらし時間30分、昇温速度3K/mimの条件で行った。これらの測定・評価結果を表6に示す。
【0158】
【表6】
【0159】
表6から明らかなように、実施例25〜27による発光装置は、いずれも耐屈曲試験において屈曲半径を小さくした状態でも点灯が維持されており、また熱サイクル試験において十分なサイクル数まで点灯状態が維持可能であることが確認された。従って、実施例25〜27による発光装置は、いずれも耐屈曲性および耐熱サイクル性に優れていることが分かる。すなわち、導電回路層とLEDチップの電極との電気的な接続性信頼性やLEDチップの信頼性を向上させた発光装置を提供することが可能になる。
【0160】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
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