(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ドレンは、例えばエンジンの駆動時に発生するブローバイガスからオイルを分離するオイルセパレータや、ボイラから供給された水蒸気の熱交換を行う熱交換器に対して一体的に、又は、隣接して設けられるものであり、分離されたオイルや凝縮水を回収して再利用する装置に送出したり、外部に排出したりするものである。なお、元来、生成された液体そのものを示す用語であるが、ここでは液体を回収するものとして定義する。また、液体そのものは、以下においてドレン液と記載する。以下に、ドレンを設けたオイルセパレータの一例について説明する。
【0003】
図7は、従来技術に係るオイルセパレータを示す断面図である。
図7において、100はベンチレータ、101はドレンユニット、102は逆止弁、103はドレンポート、104はフィルタ、105は流入ポート、106はフィルタホルダである。
【0004】
図7は、特開2014−046281号公報に開示された発明である。ベンチレータ100の内部には、フィルタホルダ106によって支持されたフィルタ104が設けられている。フィルタ104は、流入ポート105から流れ込んだブローバイガスに含まれているオイルを捕捉する。フィルタ104の下方には、ドレンユニット101が設けられている。ドレンユニット101は、ブローバイガスから分離されたオイルをドレンポート103からベンチレータ100の外部に排出する。また、ドレンユニット101には、逆止弁102が設けられており、オイルがドレンポート103から逆流してくることを防止する。以上の構成において、ベンチレータ100周辺の雰囲気の温度が大きく低下すると、ブローバイガスに含まれている水蒸気が凝縮水となり、ドレンユニット101の中で氷体となることがある。このような氷体ができると、逆止弁102が作動しなくなるので、ベンチレータ100も正常に機能しなくなる。そこで、この氷体を解凍するために以下のような発明が提案されている。
【0005】
図8は、従来技術に係る解凍装置を備えたPCVバルブを示す断面図である。
図8において、200はPCVバルブ、201は円筒部、202は弁体、203は弁座、204は発熱体、205は伝熱体、206は受熱部、207は放熱部、208はコイルバネ、209は隔壁である。
【0006】
図8は、特開2015−124611号公報に開示された発明である。PCVバルブ200は、ブローバイガスを吸気系に戻して混合気と共に再燃焼させるPCVシステムに設けられるものである。PCVバルブ200の円筒部201の内部に設けた弁体202を弁座203に対して接離することによって、円筒部201の内部を流れるブローバイガスの流量を調整する。また、PCVバルブ200には、板状の発熱体204がコイルバネ208によって隔壁209に押し付けられている。さらに、伝熱体205の受熱部206が隔壁209を介して発熱体204に対向するように設けられている。くわえて、伝熱体205の放熱部207には開口部が設けられており、この開口部に弁体202が挿通された状態に配置されている。以上の構成において、図示していない電源からの電流供給によって発熱体204及びコイルバネ208に通電すると、発熱体204が発熱する。発熱体204が発した熱は、隔壁209を介して伝熱体205の受熱部206に伝導し、さらに放熱部207まで伝導する。弁体202は、放熱部207によって加熱されて、弁体202の周辺に付着している氷体を解凍する。
【0007】
ところで、
図8に示したような解凍装置を既存のオイルセパレータに適用するためには、オイルセパレータの構成部品の少なくとも一部を新たなものに交換する必要がある。すなわち、少なくともドレンユニットと、ドレンユニットに対して一体不可分に設けられた構成部品は、発熱体及び伝熱体を設けた新たなものに交換する必要があり、既存のドレンユニット及びこれに対して一体不可分に設けられた構成部品は廃棄せざるを得ない。これは資源の有効活用という点では、好ましい解決策とは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、解凍装置のない既存のドレンに対して、追加して設けることが可能なドレン用解凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、下方に突出してドレン液が流れ込むように形成されたドレン本体部の内部に設けられると共に、一部又は全部が略筒状又は略錐台状に形成された加熱ターゲットと、前記ドレン本体部の外側面の一部を覆うように設けられると共に、高周波電流により磁界を発生する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波電流を印加する駆動回路を備えていることを特徴とするドレン用解凍装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、さらに、前記誘導加熱コイルに直列に接続され、前記誘導加熱コイルと共に共振回路を構成する共振コンデンサと、 前記共振回路が所定電圧となるタイミングを検出するタイミング検出回路と、前記タイミング検出回路からの出力に応じて高周波パルスを出力するパルス生成回路と、前記パルス生成回路と前記駆動回路との間に介在するスイッチ素子と、所定の条件を満たしたときに、前記スイッチ素子をオンさせて前記パルス生成回路から出力された高周波パルスを前記駆動回路に対して入力されるようにする加熱コントローラを備え、前記駆動回路は、前記高周波パルスに同期して前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を印加することを特徴とするドレン用解凍装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、さらに、前記ドレン本体部の前記加熱ターゲットが設けられた部位の外周面に貼り付けられると共に、検出した温度に対応する信号を前記加熱コントローラに送信する温度センサを備え、前記加熱コントローラは、前記温度センサが検出した温度が所定値になったときに前記スイッチ素子をオン又はオフさせることを特徴とするドレン用解凍装置である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記加熱ターゲットは、上下方向において前記誘導加熱コイルの上端部又は下端部よりも上方又は下方に延在し、前記温度センサは、前記ドレン本体部の前記外周面において、前記加熱ターゲットの前記誘導加熱コイルの上端部又は下端部よりも上方又は下方に延在している部分に対応する部位に貼り付けられていることを特徴とするドレン用解凍装置である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記誘導加熱コイルは、上下方向において上側に設けられた上段巻線部と、上下方向において下側に設けられた下段巻線部と、前記上段巻線部と前記下段巻線部との間に設けられると共に前記上段巻線部と前記下段巻線部とを接続する渡り線を備え、前記温度センサは、上下方向において、前記ドレン本体部の前記外周面の前記渡り線がある部位に貼り付けられていることを特徴とすることを特徴とする請求項3に記載のドレン用解凍装置。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、ドレン本体部の内部に設けた加熱ターゲットをドレン本体部の外側面を覆うように設けた誘導加熱コイルに高周波電流を印加することによって、加熱ターゲットを発熱させるので、既存の解凍装置のない既存のドレンに対して、追加して設けることが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、誘導加熱コイルと共振コンデンサとのLC回路の共振周波数に応じて高周波パルスを印加できるので、加熱ターゲットを効率的に加熱することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、氷体の解凍が完了したと推定されるタイミングでスイッチ素子をオフできるので、ドレンを過剰に加熱することを防止できる上に、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、加熱ターゲットに最も近いところで温度を測定するので、測定値が加熱ターゲットの実際の温度に近いものとなり、より適切なタイミングでスイッチ素子のオフ又はオンすることが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、氷体がドレン本体部の上端部近傍と下端部近傍の商法で発生しやすい構造である場合に、誘導加熱コイルを上下方向に2段に設け、2つのコイルの間の領域に温度センサを配置するので、誘導加熱コイルをより広い範囲に設けることと温度センサを貼り付けることを両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るドレン用解凍装置を備えたドレンとオイルセパレータの概略を示す断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係るドレン用解凍装置の近傍に氷体ができた状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係るドレン用解凍装置の加熱ターゲットを示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面面、(c)は断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係るドレン用解凍装置を備えたドレンとオイルセパレータの概略を示す断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施の形態に係るドレン用解凍装置を備えたドレンとオイルセパレータの概略を示す断面図である。
【
図6】本発明の各実施の形態に係るドレン用解凍装置の電源・制御ユニットの構成を示す回路図である。
【
図7】従来技術に係るオイルセパレータを示す断面図である。
【
図8】従来技術に係る解凍装置を備えたPCVバルブを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の実施の形態に係るドレン用解凍装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るドレン用解凍装置を備えたドレンとオイルセパレータの概略を示す断面図である。
図1において、10はオイルセパレータ、20はドレン構成部、21はドレン本体部、22は底面部、23はドレン液排出管、24は内周面、30はオイルセパレータ構成部、31は周側面部、32は上蓋部、33は底面部、34は内周面、35は容器、40はオイルフィルタ、41はフィルタホルダ、42はホルダ上部、43はホルダ下部、45は保持部材、46はダイヤフラム、50は弁体構成部材、51は弁体、52は支持ロッド、53はフロート、54は貫通孔、55は弁座構成部材、56はシート部、57は開口部、58は円筒状部、59は内周面、60は加熱ターゲット、61は円筒状部、62は底面部、63は排出管挿入部、64は内周面、70は誘導加熱コイル、75は温度センサ、80は電源・制御ユニットである。また、
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るドレン用解凍装置の近傍に氷体ができた状態を示す断面図である。
図2において、16、17及び18はオイル、19は氷体であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。さらに、
図6は、本発明の各実施の形態に係るドレン用解凍装置の電源・制御ユニットの構成を示す回路図である。
図6は、76は共振コンデンサ、81は加熱コントローラ、82はゲートドライバ、83は駆動回路、84はタイミング検出器、85はパルス生成回路、86はスイッチ素子、99はドレン用解凍装置であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0022】
まず、第1の実施の形態に係るドレン用解凍装置の全体構成について説明する。
図6に示すように、ドレン用解凍装置99は、ドレンの内部、又は、ドレンの周側面の近傍に配置される加熱ターゲット60、誘導加熱コイル70、温度センサ75及び共振コンデンサ76と、配置に関する特段の条件がない電源・制御ユニット80とを備えている。加熱ターゲット60は、後述するように、容器35の内部に設けられるが、誘導加熱コイル70、温度センサ75、共振コンデンサ76などは、容器35の周囲に設けられる。加熱ターゲット60は、容器35の内部にあるので、容器35の外部にある温度センサ75を直接貼り付けることができない。そこで、温度センサ75を容器35の加熱ターゲット60と接している部位の外周面に貼り付けることによって、加熱ターゲット60の実際の温度にできる限り近い温度の測定値が得られるようにしている。なお、ドレン用解凍装置99の構成は、これに限られるものではなく、例えば、電源・制御ユニット80の加熱コントローラ81が他の装置の制御部に含まれるものであってもよく、誘導加熱コイルや温度センサを複数備えている、あるいは、磁気センサなど他の構成部品を備えるものであってもよい。
【0023】
電源・制御ユニット80は、ゲートドライバ82、駆動回路83、タイミング検出器84、パルス生成回路85及びスイッチ素子86を備えている。タイミング検出器84は、誘導加熱コイル70と共振コンデンサ76によるLC回路の共振周波数から駆動電流の最大振幅をとる位相タイミングをパルス生成回路85に出力する。パルス生成回路85で生成されたパルスは、MOSFET又はIGBTからなるゲートドライバ82をオン又はオフさせて、インバータを備えた駆動回路83を所定周波数で駆動させる。駆動回路83は、誘導加熱コイル70を加熱させる高周波電流を生成する。また、加熱コントローラ81は、誘導加熱コイル70の近傍に設けた温度センサ75からの信号など応じて制御を行う。例えば、温度センサ75が許容限度を超えた急激な温度上昇を検出した場合に、スイッチ素子86をオフにして誘導加熱コイル70の発熱を停止させるなどの制御を行う。なお、
図6に示した電源・制御ユニット80はあくまでも本発明の実施の形態の一例であり、本発明における電源・制御ユニットの回路構成はこれに限られるものではない。
【0024】
さらに、第1の実施の形態に係るドレン用解凍装置を備えたドレンとオイルセパレータについて説明する。
図1に示すように、オイルセパレータ10は、ブローバイガスからオイルを分離するためのオイルセパレータ構成部30と、オイルセパレータ構成部30でブローバイガスから分離されたオイルを回収して外部に排出するためのドレン構成部20を備えている。また、オイルセパレータ構成部30とドレン構成部20とは、外殻となる樹脂製の容器35を共有しており、一体的に設けられている。オイルセパレータ構成部30は、容器35の周側面部31及び底面部33と上蓋部32とを分離可能な構造であり、内部にオイルフィルタ40及びフィルタホルダ41を備えている。くわえて、フィルタホルダ41のホルダ上部42は、周側面部31に支持され、ホルダ下部43は保持部材45によって支持されている。また、オイルフィルタ40で分離されて滴下したオイルは、底面部33の内周面34上に溜まって行く。溜まったオイルは、その表面が弁座構成部材55の円筒状部58の上端部を超えると、円筒状部58の中に流れ込み、さらにドレン構成部20のドレン本体部21に流れ落ちる。
【0025】
ドレン構成部20は、オイルセパレータ構成部30の底面部33の中央から垂直下方に延びるように、かつ、円筒形状に形成されたドレン本体部21、ドレン本体部21の底面を構成する底面部22、底面部22の中央からさらに垂直下方に延びるように形成されたドレン液排出管23を備えている。さらに、ドレン構成部20は、ドレン本体部21の内部に弁体構成部材50、弁体構成部材50を浮上させるフロート53を設け、底面部22とフロート53の間に介在するダイヤフラム46、ドレン本体部21の上端部の近傍部分に嵌入されると共に、オイルセパレータ構成部30側に突出した弁座構成部材55を設けている。ダイヤフラム46は、フロート53が底面部22に張り付くことを防止するものであり、開口部が形成されているので、オイル等の流れを妨げることはない。なお、この実施の形態の容器35は、オイルセパレータ構成部30とドレン構成部20とを一体のものとしているが、例えばドレン構成部20をオイルセパレータ構成部30に対してねじ込むことによって一体になるようにしてもよい。また、
図1に示していない外部装置に逆止弁を設けている場合、あるいは、逆止弁が必要ない場合には、弁体構成部材50を設けなくてもよい。
【0026】
ドレン本体部21は、外周面が円筒形状に形成され、内周面が下方に行くに従って径がわずかに小さくなるように形成されており、全体として円錐台状に形成されている。底面部22は、円板状に形成され中央にドレン液排出管23の上端部が開口している。ドレン液排出管23は、ドレン本体部21に流入してきたオイルや、結露等で発生した水をドレン構成部20の外部に排出するためのものであり、下端部に図示していないチューブが接続される。弁体構成部材50は、弁体51と支持ロッド52とを備えている。弁体51は、円板状に形成されており、弁座構成部材55の開口部57を閉止することによってオイルセパレータ構成部30にオイルや水が逆流することを防止する。支持ロッド52は、下側の部分がフロート53の貫通孔54に挿入された状態で設けられており、弁体51の上面が水平状態を保つように支持する機能を持つ。弁座構成部材55は、シート部56と円筒状部58とを備えている。シート部56は、下面が弁体51に当接したときに開口部57が完全に閉止されるように形成されており、前述のように逆止弁として機能する。円筒状部58は、ドレン構成部20のドレン本体部21にはめ込まれる部分である。また、円筒状部58には、円筒状に形成された保持部材45がはめ込まれており、保持部材45を支持する機能も持つ。
【0027】
続けて、加熱ターゲット60について説明する。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るドレン用解凍装置の加熱ターゲットを示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面面、(c)は断面図である。
図3において用いた符号は、すべて
図1と同じものを示す。
【0028】
加熱ターゲット60は、誘導加熱コイル70に高周波電流を流すことによって発熱するものであり、結露による水滴が氷結しやすい部位に設けている。容器35の周辺雰囲気の温度が低下すると、ドレン本体部21の内周面に付着した水滴はドレン液排出管23から排出されるが、さらに温度低下が進むと、
図2の氷体19に示すような状態に生る。氷体19はドレン液排出管23をふさぐので、オイル17はドレン液排出管23から外部に排出されずに氷体19の上に乗った状態で貯留されてゆく。貯留したオイル17はフロートを上昇させ、最後には弁体51がシート部56に接した状態となる。またオイル17に水が個混在する場合には、この水も氷結する場合がある。このままの状態で、オイルセパレータ10に接続された図示していないエンジンを始動すると、弁体51が閉止状態にあることから、オイル18に示すように円筒状部58にオイルが貯留される。さらには、円筒状部58をあふれ出てオイルフィルタ40までオイルに浸ることもある。また、オイルセパレータ構成部30側にも結露が発生する場合には、オイル18で示した部位にも氷体ができる。そこで、加熱ターゲット60は、氷体を速やかに解凍できるように、ドレン本体部21とドレン液排出管23との双方に設けている。
【0029】
すなわち、
図3に示すように、加熱ターゲット60は、円筒状部61と排出管挿入部63とを備えている。円筒状部61は、ドレン構成部20のドレン本体部21に挿入される部分である。また、挿入した状態において、円筒状部61とドレン本体部21とが接し、同時に底面部62とドレン構成部20の底面部22とが接している。排出管挿入部63は、ドレン構成部20のドレン液排出管23に挿入される部分であり、挿入した状態においてドレン液排出管23の内周面24に接している。また、加熱ターゲット60の材料は、黄銅、アルミ、銅などの金属が利用できるが、発明者が実験で得た知見によれば、鉄、ステンレス鋼が特に好ましいと言える。
【0030】
誘導加熱コイル70は、加熱ターゲット60の発熱効率を高めるために、コイルを覆う絶縁材と容器35とが接した状態に設けられる。また、加熱ターゲット60と誘導加熱コイル70の上下方向における配置関係は、
図3(c)に示す状態となっている。A領域は、誘導加熱コイル70が側方に存在するので、誘導加熱コイル70に高周波電流を流すと発熱する。これに対して、B及びC領域は直接発熱せず、B領域から伝導した熱によって温度が上昇する。したがって、加熱ターゲット60は、電磁誘導によって温度が上昇する発熱領域(A領域)と、伝熱によって温度が上昇する伝熱領域(B及びC領域)との性質が異なる2つの領域を備えていると言える。ドレン用解凍装置99の温度センサ75は、温度センサ75を容器35の加熱ターゲット60と接している部位の外周面に貼り付けるが、前述のように、容器35のA領域に対応する外周面には誘導加熱コイル70が外周面に接した状態で配置されている。したがって、温度センサ75は、容器35のB領域又はC領域に対応する外周面に貼り付けている。
【0031】
本発明では、上下方向において誘導加熱コイル70よりも長く形成されている。したがって、例えば
図2に示すように、上下方向において氷体19が誘導加熱コイル70から離れた位置まで拡がっている場合でも、加熱ターゲット60の伝熱領域(B及びC領域)から氷体19あるいはオイル17内の氷体に直接熱が伝わるので、オイルセパレータ10の機能を速やかに復活されることが可能である。また、この実施の形態における加熱ターゲット60は、上下方向において、ドレン構成部20のドレン本体部21の上端部の近傍から排出管挿入部63の下端部の近傍までの範囲に設けられているので、排出管挿入部63の内周面64の下端部近傍まで広範囲に氷体ができた場合でも、速やかに解凍できるという利点がある。
【0032】
続けて、本発明の第2の実施の形態に係るドレン用解凍装置について説明する。
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るドレン用解凍装置を備えたドレンとオイルセパレータの概略を示す断面図である。
図4において、11はオイルセパレータ、65は補助加熱ターゲット、71は誘導加熱コイル、72は円筒状部、73は円板状部であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0033】
本発明の第2の実施の形態に係るドレン用解凍装置では、第1の実施の形態のドレン用解凍装置と同じ加熱ターゲット60に加えて、容器35の底面部33上に補助加熱ターゲット65を設けている。さらに、補助加熱ターゲット65を発熱させるために誘導加熱コイル71を円筒状部72と円板状部73とで構成されるものとしている。円板状部73は、円筒状部72の上端部から円板状に拡がるらせん形状のコイルであり、全体として1つのコイルとして形成されている。また、温度センサ75は、誘導加熱コイル71が設けられる位置を避けるために、底面部33の外周面に貼り付けられている。なお、オイルセパレータ11のその他の部分の構成は、第1の実施の形態のオイルセパレータ10と全く同じである。また、誘導加熱コイルを、上下方向において上側に設けられる、つまり補助加熱ターゲット65を発熱させるための上段巻線部と、上下方向において下側に設けられる、つまり加熱ターゲット60を発熱させるための下段巻線部との2段の巻線部を備えるものとしてもよい。この場合に、独立した2個のコイルとすることが可能であるが、上段巻線部と下段巻線部との間に設けられると共に上段巻線部と下段巻線部とを接続する渡り線を備えるものとすることによって、全体で1個のコイルになるようにしてもよい。さらに、温度センサについては、上下方向において、ドレン本体部21の外周面の渡り線がある部位、つまり2つの巻線部の間に貼り付けると、加熱ターゲット60又は補助加熱ターゲット65の実際の温度に近い測定値を得ることができる。
【0034】
以上の第2の実施の形態に係るドレン用解凍装置の構成によれば、周辺雰囲気の温度が非常に低くなり、底面部33の内周面34上に滴下した結露まで凍結するような環境においても、ドレン構成部20及びオイルセパレータ構成部30の氷体を速やかに解凍することが可能となる。なお、加熱ターゲット60と補助加熱ターゲット65とを1つの加熱ターゲットで構成することも可能である。この場合、加熱ターゲットの肉厚を弁座構成部材55がはめ込むことが可能な程度に薄いものにする必要がある。また、誘導加熱コイルを、上下方向において2つの巻線部で構成されるようにすると、温度センサを貼り付ける領域を簡単に確保することができる。
【0035】
さらに、本発明の第3の実施の形態に係るドレン用解凍装置について説明する。
図5は、本発明の第3の実施の形態に係るドレン用解凍装置を備えたドレンとオイルセパレータの概略を示す断面図である。
図5において、12はオイルセパレータ、25はドレン構成部、26はドレン本体部、27はドレン構成部、47はダイヤフラム、48は保持部材、66は加熱ターゲット、67は円錐台状部、68は排出管挿入部、69は内周面、74は誘導加熱コイル、90はフロート、91は貫通孔、92は弁座構成部材、93はシート部、94は開口部、95は円筒状部、96は内周面であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0036】
本発明の第3の実施の形態に係るドレン用解凍装置は、オイルセパレータ12のドレン構成部25において、下方に向かって径が小さくなる円錐台形状に形成されたドレン本体部26と、ドレン本体部26の下端部からに延びるように形成されたドレン液排出管27とによって構成されている点が第1の実施の形態のオイルセパレータ10及び第2の実施の形態のオイルセパレータ11と異なっている。加熱ターゲット66もこれに対応して、同様の円錐台形状に形成された円錐台状部67と、円錐台状部67の下端部からに延びるように形成された排出管挿入部68とによって構成されている。また、円錐台状部67の内部には、同様の円錐台形状に形成されたフロート90と、フロート90と円錐台状部67との間に介在するダイヤフラム47とが設けられている。弁体51は、フロート90の貫通孔91に挿入された支持ロッド52によって支持されており、弁座構成部材92のシート部93に接することによって開口部94を閉止可能に設けられている。くわえて、誘導加熱コイル74も、加熱ターゲット66の形状に対応して、下方に向かって径が小さくなる円錐台形状に形成されている。また、オイルフィルタ40で分離されて滴下したオイルが円筒状部95の上端部を超えて内周面96側に流れ込み、さらにドレン本体部26に流れ落ちる構成に関しては、オイルセパレータ10及び11と同じである。
【0037】
以上の第3の実施の形態に係るドレン用解凍装置の構成によれば、ドレン構成部25を下方に向かって径が小さくなる円錐台形状に形成して小型化した場合においても、第1の実施の形態のオイルセパレータ10及び第2の実施の形態のオイルセパレータ11と同様の効果が得られる。
【0038】
以上のように、本発明の各実施の形態に係るドレン用解凍装置においては、ドレン本体部の内部に設けた加熱ターゲットをドレン本体部の外側面を覆うように設けた誘導加熱コイルに高周波電流を印加することによって、加熱ターゲットを発熱させるので、ドレン本体部などを別の部品に交換する必要がない。よって、既存の解凍装置のないオイルセパレータなどに対して、追加して設けることが極めて容易になる。また、誘導加熱コイルと共振コンデンサとのLC回路の共振周波数に応じて高周波パルスを印加できるので、加熱ターゲットを効率的に加熱することができる。くわえて、LC回路以外の回路を構成する部品は、比較的自由に配置することができるので、オイルセパレータなどの配管を変更する必要がほとんどない。また、氷体の解凍が完了したと推定されるタイミングでスイッチ素子をオフできるので、ドレンを過剰に加熱することを防止できる上に、無駄な電力消費を抑えることができる。加熱ターゲットに最も近いに配置し、その部位で温度を測定するので、測定値が加熱ターゲットの実際の温度に近いものとなり、より適切なタイミングでスイッチ素子のオフ又はオンすることが可能となる。また、氷体がドレン本体部の上端部近傍と下端部近傍の商法で発生しやすい構造である場合に、誘導加熱コイルを上下方向に2段に設け、2つのコイルの間の領域に温度センサを配置するので、誘導加熱コイルをより広い範囲に設けることと温度センサを貼り付けることを両立することが容易に実現できる。また、加熱ターゲットが上下方向において誘導加熱コイルよりも長く形成すれば、ドレン本体部の上方又は下方に向かって成長した氷体を容易に解凍できる。
【0039】
本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、例えば、ボイラから水蒸気を供給する管路に向けるドレンに適用してもよく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々のドレンに適用することが可能である。