特許第6732215号(P6732215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧

特許6732215樹脂組成物、プリプレグ、レジンシート、金属箔張積層板及びプリント配線板
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6732215
(24)【登録日】2020年7月10日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、レジンシート、金属箔張積層板及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/04 20060101AFI20200716BHJP
   C08L 57/00 20060101ALI20200716BHJP
   C08L 35/00 20060101ALI20200716BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20200716BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20200716BHJP
   C08K 5/3442 20060101ALI20200716BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20200716BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20200716BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20200716BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20200716BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20200716BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   C08L79/04 Z
   C08L57/00
   C08L35/00
   C08K5/3415
   C08K5/541
   C08K5/3442
   C08K3/00
   C08K3/013
   C08K5/29
   C08J5/24CFG
   C08F2/44 A
   C08F2/44 B
   H05K1/03 610H
【請求項の数】17
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-527444(P2017-527444)
(86)(22)【出願日】2016年7月4日
(86)【国際出願番号】JP2016069753
(87)【国際公開番号】WO2017006896
(87)【国際公開日】20170112
【審査請求日】2019年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-135212(P2015-135212)
(32)【優先日】2015年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】富澤 克哉
(72)【発明者】
【氏名】高野 与一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 環
(72)【発明者】
【氏名】志賀 英祐
【審査官】 堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−133414(JP,A)
【文献】 特開2008−291227(JP,A)
【文献】 特開2012−197336(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/047041(WO,A1)
【文献】 特開昭56−045948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
H05K 1/03
C08J 5/24
B32B 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミド化合物と、アルケニル置換ナジイミドと、スチレン骨格と加水分解性基又は水酸基とを有するシラン化合物と、無機充填材と、を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物中における前記アルケニル置換ナジイミドのアルケニル基の総数αと前記マレイミド化合物のマレイミド基の総数βとの比(β/α)が、0.9以上4.3以下である、樹脂組成物
【請求項2】
前記シラン化合物として、下記式(A)で表される化合物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式中、R8は加水分解性基又は水酸基を示し、R9は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R8又はR9が複数の場合は、複数のR8又はR9は、互いに同一であっても異なっていてもよく、kは1〜3の整数を示す。)
【請求項3】
前記アルケニル置換ナジイミドとして、下記式(1)で表される化合物を含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、R2は、炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は下記式(2)若しくは(3)で表される基を示す。)
【化3】
(式中、R3は、メチレン基、イソプロピリデン基、CO、O、S、又はSO2で表される置換基を示す。)
【化4】
(式中、R4は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数5〜8のシクロアルキレン基を示す。)
【請求項4】
前記アルケニル置換ナジイミドとして、下記式(4)及び/又は(5)で表される化合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化5】
【化6】
【請求項5】
前記マレイミド化合物として、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン及び下記式(6)で表されるマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化7】
(式中、R5は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、n1は1以上の整数を表す。)
【請求項6】
シアン酸エステル化合物を更に含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記シアン酸エステル化合物として、下記式(7)及び/又は(8)で表される化合物を含む、請求項に記載の樹脂組成物。
【化8】
(式中、R6は、各々独立して、水素原子又はメチル基を示し、n2は1以上の整数を示す。)
【化9】
(式中、R7は、各々独立して、水素原子又はメチル基を示し、n3は1以上の整数を示す。)
【請求項8】
前記無機充填材が前記シラン化合物により予め表面処理されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記シラン化合物の含有量が、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して、0.1〜15質量部である、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記無機充填材が、シリカ、アルミナ及び窒化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記無機充填材の含有量が、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して、100〜1100質量部である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
基材と、該基材に含浸又は塗布された請求項1〜11のいずれか1項に記載の樹脂組成物と、を備えるプリプレグ。
【請求項13】
前記基材が、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス及び有機繊維クロスからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載のプリプレグ。
【請求項14】
支持体と、該支持体に塗布された請求項1〜11のいずれか1項に記載の樹脂組成物と、を備えるレジンシート。
【請求項15】
請求項12及び13に記載のプリプレグ、並びに請求項14に記載のレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種を1枚以上重ねてなる積層板であって、前記プリプレグ及び前記レジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種に含まれる樹脂組成物の硬化物を含む、積層板。
【請求項16】
請求項12及び13に記載のプリプレグ、並びに請求項14に記載のレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種と、前記プリプレグ及び前記レジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種の片面又は両面に配された金属箔と、を有する金属箔張積層板であって、前記プリプレグ及び前記レジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種に含まれる樹脂組成物の硬化物を含む金属箔張積層板。
【請求項17】
絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、請求項1〜11のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含むプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、プリプレグ、レジンシート、金属箔張積層板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や通信機、パーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体パッケージの高機能化、小型化が進むに従い、半導体パッケージ用の各部品の高集積化や高密度実装化が近年益々加速している。それに伴い、半導体素子と半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板との熱膨張率の差によって生じる半導体プラスチックパッケージの反りが問題となっており、様々な対策が講じられてきている。
【0003】
その対策の一つとして、プリント配線板に用いられる絶縁層の低熱膨張化が挙げられる。これは、プリント配線板の熱膨張率を半導体素子の熱膨張率に近づけることで反りを抑制する手法であり、現在盛んに取り組まれている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
半導体プラスチックパッケージの反りを抑制する手法としては、プリント配線板の低熱膨張化以外にも、積層板の剛性を高くすること(高剛性化)や積層板のガラス転移温度を高くすること(高Tg化)が検討されている(例えば、特許文献4及び5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-216884号公報
【特許文献2】特許第3173332号公報
【特許文献3】特開2009−035728号公報
【特許文献4】特開2013−001807号公報
【特許文献5】特開2011−178992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体パッケージ用の各部品の高集積化や高密度実装化に伴う課題は上述のものだけではなく、その他にも検討すべき課題がある。例えば、従来の技術では、プリプレグを銅箔等の金属層と積層させる際には、エッチング工程、デスミア工程、メッキ工程等において積層板が薬液に曝されるので、積層板の耐薬品性が低いと製品の品質や生産性が悪くなるという問題がある。特に、デスミア工程では、メカニカルドリル加工やレーザードリル加工で生じるスミアを除去する目的で強アルカリ性の洗浄液が用いられる。そのため、積層板の耐薬品性が不十分であると、スミア以外のスルーホール内壁やその他の樹脂層の表面も溶出してしまう。その結果、穴径などの所望の加工が困難となったり、工程を汚染して薬液の寿命が短くなったり、絶縁層表面に形成されたアンカーが崩壊することで導体層との密着性の低下につながったりするという問題が顕著になる(耐デスミア性)。さらには、上述した高Tg化による手法は、架橋密度の上昇による吸湿耐熱性の悪化に伴い、非常に高い絶縁信頼性が必要とされる電子材料分野では実用上問題となることが多い。また、高Tg化の手法として、マレイミド化合物の比率を高める方法が好適に用いられているが、この場合、マレイミド基の加水分解性に由来する耐薬品性の悪化を抑制することが困難となる。このように、プリント配線板の作製においては、優れた耐薬品性、耐デスミア性及び絶縁信頼性が要求される。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐薬品性、耐デスミア性及び絶縁信頼性に優れた金属箔張積層板及びプリント配線板、並びにそれらの原材料となる樹脂組成物、プリプレグ及びレジンシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、プリント配線板の原材料となる樹脂組成物が特定の複数の成分を含有することにより、優れた耐薬品性、耐デスミア性及び絶縁信頼性の全てを成し遂げられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]マレイミド化合物と、アルケニル置換ナジイミドと、スチレン骨格と加水分解性基又は水酸基とを有するシラン化合物と、無機充填材と、を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物中における前記アルケニル置換ナジイミドのアルケニル基の総数αと前記マレイミド化合物のマレイミド基の総数βとの比(β/α)が、0.9以上4.3以下である、樹脂組成物
[2]前記シラン化合物として、下記式(A)で表される化合物を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式中、R8は加水分解性基又は水酸基を示し、R9は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R8又はR9が複数の場合は、複数のR8又はR9は、互いに同一であっても異なっていてもよく、kは1〜3の整数を示す。)
]前記アルケニル置換ナジイミドとして、下記式(1)で表される化合物を含む、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、R2は、炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は下記式(2)若しくは(3)で表される基を示す。)
【化3】
(式中、R3は、メチレン基、イソプロピリデン基、CO、O、S、又はSO2で表される置換基を示す。)
【化4】
(式中、R4は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数5〜8のシクロアルキレン基を示す。)
]前記アルケニル置換ナジイミドとして、下記式(4)及び/又は(5)で表される化合物を含む、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【化5】
【化6】
]前記マレイミド化合物として、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン及び下記式(6)で表されるマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]〜[]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【化7】
(式中、R5は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、n1は1以上の整数を表す。)
]シアン酸エステル化合物を更に含む、[1]〜[]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
]前記シアン酸エステル化合物として、下記式(7)及び/又は(8)で表される化合物を含む、[]に記載の樹脂組成物。
【化8】
(式中、R6は、各々独立して、水素原子又はメチル基を示し、n2は1以上の整数を示す。)
【化9】
(式中、R7は、各々独立して、水素原子又はメチル基を示し、n3は1以上の整数を示す。)
]前記無機充填材が前記シラン化合物により予め表面処理されている、[1]〜[]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
]前記シラン化合物の含有量が、前記樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して、0.1〜15質量部である、[1]〜[]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
10]前記無機充填材が、シリカ、アルミナ及び窒化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]〜[]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
11]前記無機充填材の含有量が、前記樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して、100〜1100質量部である、[1]〜[10]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
12]基材と、該基材に含浸又は塗布された[1]〜[11]のいずれか1つに記載の樹脂組成物と、を備えるプリプレグ。
13]前記基材が、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス及び有機繊維クロスからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[12]に記載のプリプレグ。
14]支持体と、該支持体に塗布された[1]〜[11]のいずれか1つに記載の樹脂組成物と、を備えるレジンシート。
15][12]及び[13]に記載のプリプレグ、並びに[14]に記載のレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種を1枚以上重ねてなる積層板であって、前記プリプレグ及び前記レジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種に含まれる樹脂組成物の硬化物を含む、積層板。
16][12]及び[13]に記載のプリプレグ、並びに[14]に記載のレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種と、前記プリプレグ及び前記レジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種の片面又は両面に配された金属箔と、を有する金属箔張積層板であって、前記プリプレグ及び前記レジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種に含まれる樹脂組成物の硬化物を含む金属箔張積層板。
17]絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、[1]〜[11]のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含むプリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐薬品性、耐デスミア性及び絶縁信頼性に優れた金属箔張積層板及びプリント配線板、並びにそれらの原材料となる樹脂組成物、プリプレグ及びレジンシートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
本実施形態の樹脂組成物は、マレイミド化合物と、スチレン骨格と加水分解性基又は水酸基とを有するシラン化合物(以下、「スチリル系シラン化合物」ともいう。)と、無機充填材とを含むものである。この樹脂組成物は、マレイミド化合物とスチリル系シラン化合物とを含むことにより、加水分解性基又は水酸基の部分で無機充填材に結合したスチリル系シラン化合物が、さらにスチレン骨格の部分でマレイミド化合物とも結合することで、無機充填材とマレイミド化合物との間での密着性が高いものとなる。特にスチリル系シラン化合物とマレイミド化合物との結合は、Diels−Alder付加による反応に起因するものと考えられ、これにより梯子形の架橋点が形成されるため、より強固な結合と推測される。その結果、本実施形態の樹脂組成物の薬品処理やデスミア処理に対する耐性が高まり、耐薬品性及び耐デスミア性に優れた金属箔張積層板及びプリント配線板を得ることができる。さらには、無機充填材とマレイミド化合物との間での高い密着性に加えて、スチリル系シラン化合物は通常極性基を有せず疎水性が高いことにも起因して、本実施形態の樹脂組成物を原材料として得られる金属箔張積層板及びプリント配線板は、絶縁信頼性に優れたものとなる。ただし、考えられる要因は上記に限定されない。
【0013】
本実施形態に用いるマレイミド化合物は、分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。その具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、下記式(6)で表されるマレイミド化合物、これらマレイミド化合物のプレポリマー、若しくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーが挙げられる。これらは1種若しくは2種以上を適宜混合して用いることができる。
【0014】
その中でも、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、下記式(6)で表されるマレイミド化合物が好ましく、とりわけ、下記式(6)で表されるマレイミド化合物が好ましい。このようなマレイミド化合物を含むことにより、得られる硬化物の耐熱性及び弾性率維持率がより優れる傾向にある。
【化10】
式(6)中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を表し、中でも水素原子が好ましい。また、式中、nは1以上の整数を表す。nの上限値は、好ましくは10、より好ましくは7である。
【0015】
本実施形態の樹脂組成物において、マレイミド化合物の含有量は、後述するように任意に含まれるアルケニル置換ナジイミドの官能基のひとつであるアルケニル基数(α)とマレイミド化合物のマレイミド基数(β)との官能基数の比(〔β/α〕)によって決定されることが好ましい。また、マレイミド化合物の含有量は、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分(重合により樹脂を形成する成分も含む。以下同様。)の合計100質量部に対して15〜70質量部とすることが好ましく、20〜45質量部とすることがより好ましい。マレイミド化合物の含有量をこのような範囲とすることで、無機充填材充填時においても成形性に優れ、硬化性、及び、硬化時の例えば250℃における曲げ弾性率や半田リフロー温度下での曲げ弾性率のような熱時弾性率に優れる樹脂組成物等を得ることができ、かつ、耐デスミア性及び耐薬品性に優れるプリント配線板等を得ることができる。
【0016】
本実施形態の樹脂組成物は、マレイミド化合物と無機充填材との密着性を高めるために、スチリル系シラン化合物を含む。スチリル系シラン化合物は、スチレン骨格と加水分解性基又は水酸基とを有するシラン化合物であれば特に限定されず、スチレン骨格と加水分解性基又は水酸基とを有するシランカップリング剤として用いられるもの(いわゆるスチリル系シランカップリング剤)であってもよい。スチリル系シラン化合物は、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、下記式(A)で表される化合物を含むと好ましい。
【化11】
ここで、式(A)中、Rは加水分解性基又は水酸基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R又はRが複数の場合は、複数のR又はRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、kは1〜3の整数を示す。加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等のアルコキシ基、並びに、塩素原子及びヨウ素原子などのハロゲン原子が挙げられる(以下同様。)。
【0017】
スチリル系シラン化合物の具体例としては、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルメチルジメトキシシラン、p−スチリルメチルジエトキシシラン、及びN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩が挙げられ、これらの中では、p−スチリルトリメトキシシラン、及びp−スチリルトリエトキシシランが好ましく、p−スチリルトリメトキシシランが更に好ましい。市販品としては、例えば、KBM−575、及びKBM−1403(いずれも信越化学工業社製製品名)が挙げられる。スチリル系シラン化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0018】
本実施形態の樹脂組成物において、スチリル系シラン化合物の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して、0.1〜15質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることが特に好ましい。スチリル系シラン化合物の含有量を上記の範囲にすることで、更なる耐デスミア性、耐薬品性及び絶縁信頼性の向上に繋がる一方で、成形性の低下をより抑制することが可能になる。
【0019】
本実施形態の樹脂組成物は、無機充填材を含む。無機充填材は、プリント配線板の低熱膨張化、弾性率、熱伝導率の向上に寄与する。無機充填材は絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ及び中空シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベーマイト、酸化モリブデン、酸化チタン、シリコーンゴム、シリコーン複合パウダー、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、ガラス短繊維(EガラスやDガラスなどのガラス微粉末類)、中空ガラス、並びに球状ガラスが挙げられる。無機充填材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、より低い熱膨張性を実現する観点からシリカが好ましく、より高い熱伝導性を実現する観点から、アルミナ及び窒化アルミニウムが好ましい。また、これらの無機充填材は、スチリル系シラン化合物で予め表面処理されているものであってもよい。その表面処理の方法は特に限定されない。例えば、直接処理法として乾式処理法及びスラリーを用いた処理法(湿式法)などが挙げられるが、処理の均一性の観点から湿式法が好ましい。また、無機充填材が、市販されている表面処理済みの無機充填材(フィラー)であってもよい。
【0020】
本実施形態の樹脂組成物において、無機充填材の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して、100〜1100質量部であると好ましく、100〜700質量部であるとより好ましい。無機充填材の含有量を上記の範囲にすることで、低熱膨張化、高弾性化、及び熱伝導率など無機充填材に特有の特性を更に良好に発現する一方で、成形性の低下をより抑制することが可能になる。
【0021】
無機充填材の平均粒子径(D50)は特に限定されないが、より微細な配線を形成できる観点から0.2〜10μmであると好ましく、2〜5μmであるとより好ましい。また、無機充填材の粒子の形状も特に限定されないが、成形性の観点から、球状又は略球状であることが好ましい。ここで、D50とは、メジアン径(メディアン径)であり、測定した粉体の粒度分布を2つに分けたときの大きい側と小さい側の質量が等量となる径である。一般的には湿式レーザー回折・散乱法により測定される。
【0022】
本実施形態の樹脂組成物は、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、アルケニル置換ナジイミドを含むことが好ましい。アルケニル置換ナジイミドは、分子中に1個以上のアルケニル置換ナジイミド基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。その具体例としては下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化12】
式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は下記式(2)若しくは(3)で表される基を示す。
【化13】
式(2)中、Rはメチレン基、イソプロピリデン基、CO、O、S、又はSOで表される置換基を示す。
【化14】
式(3)中、Rは、それぞれ独立に選ばれた、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数5〜8のシクロアルキレン基を示す。
【0023】
また、式(1)で表されるアルケニル置換ナジイミドは、市販のものを用いることもできる。市販されているものとしては、特に限定されないが、例えば、下記式(4)で表される化合物(BANI−M(丸善石油化学(株)製))、及び下記式(5)で表される化合物(BANI−X(丸善石油化学(株)製))が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化15】
【化16】
【0024】
本実施形態の樹脂組成物において、アルケニル置換ナジイミドの含有量は、後述するようにその官能基のひとつであるアルケニル基とマレイミド化合物のマレイミド基との官能基数の比によって決定されることが好ましい。また、アルケニル置換ナジイミドの含有量は、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して20〜50質量部とすることが好ましく25〜45質量部とすることがより好ましい。アルケニル置換ナジイミドの含有量をこのような範囲とすることで、無機充填材充填時においても成形性、硬化性、及び硬化時の熱時弾性率に優れる樹脂組成物等を得ることができ、かつ、耐デスミア性及び耐薬品性に優れるプリント配線板等を得ることができる。
【0025】
本実施形態の樹脂組成物において、アルケニル置換ナジイミド及びマレイミド化合物の含有量は各々に指定される官能基数の比によって決定されることが好ましい。ここで指定されるアルケニル置換ナジイミドの官能基は分子末端に結合しているアルケニル基で、マレイミド化合物の官能基はマレイミド基である。
【0026】
本実施形態の樹脂組成物は、アルケニル置換ナジイミドとマレイミド化合物とを、下記式(B)で表される関係を満たすように含むことが好ましく、下記式(B1)で表される関係を満たすように含むことがより好ましい。
0.9≦β/α≦4.3 (B)
1.5≦β/α≦4.0 (B1)
ここで、式中、αは樹脂組成物中のアルケニル置換ナジイミドが有するアルケニル基の総数を示し、βは樹脂組成物中のマレイミド化合物が有するマレイミド基の総数を示す。当該官能基の比(β/α)をこのような範囲とすることで、一層、硬化時の熱時弾性率及び易硬化性に優れる樹脂組成物等を得ることができ、かつ、低熱膨張、耐熱性、吸湿耐熱性、耐デスミア性及び耐薬品性に優れるプリント配線板等を得ることができる。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物は、上述の各成分に加えて、シアン酸エステル化合物を更に含むことが好ましい。シアン酸エステル化合物を用いることにより、成形性に優れた樹脂組成物、プリプレグ、レジンシート、金属箔張積層板及びプリント配線板を得ることができ、金属箔ピール強度に更に優れた金属箔張積層板及びプリント配線板を得ることができる。シアン酸エステル化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0028】
本実施形態に用いるシアン酸エステル化合物の種類としては特に限定されないが、例えば下記式(7)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル、下記式(8)で表されるノボラック型シアン酸エステル、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル、ビス(3,3−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2、7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4、4’−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、及び2、2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンが挙げられる。
【0029】
この中でも、下記式(7)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル、下記式(8)で表されるノボラック型シアン酸エステル、及びビフェニルアラルキル型シアン酸エステルが難燃性に優れ、硬化性が高く、かつ硬化物の熱膨張係数が低いことから特に好ましい。
【0030】
【化17】
ここで、式中、Rは、各々独立して、水素原子又はメチル基を示し、中でも水素原子が好ましい。また、式中、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、好ましくは10、より好ましくは6である。
【化18】
ここで、式中、Rは、各々独立して、水素原子又はメチル基を示し、中でも水素原子が好ましい。また、式中、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、好ましくは10、より好ましくは7である。
【0031】
これらのシアン酸エステル化合物の製法は、特に限定されず、シアン酸エステル合成法として現存するいかなる方法で製造してもよい。具体的に例示すると、下記式(9)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとを不活性有機溶媒中で、塩基性化合物存在下反応させることにより得ることができる。また、同様なナフトールアラルキル型フェノール樹脂と塩基性化合物による塩とを、水を含有する溶液中にて形成させ、その後、ハロゲン化シアンと2相系界面反応を行い、合成する方法を採ることもできる。
【0032】
【化19】
ここで、式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、中でも水素原子が好ましい。また、式中、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、好ましくは10、より好ましくは6である。
【0033】
また、ナフトールアラルキル型シアン酸エステルは、α−ナフトールあるいはβ−ナフトール等のナフトール類とp−キシリレングリコール、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン、1,4−ジ(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル樹脂とシアン酸とを縮合させて得られるものから選択することができる。
【0034】
本実施形態の樹脂組成物において、シアン酸エステル化合物の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して、0.01〜40質量部であることが好ましく、0.01〜25質量部であることがより好ましい。シアン酸エステル化合物の含有量をこのような範囲内とすることで、無機充填材の充填時における成形性に更に優れ、硬化時の熱時弾性率に優れる樹脂組成物、プリプレグ及びレジンシートを得ることができ、かつ、耐デスミア性及び耐薬品性に一層優れる金属箔張積層板及びプリント配線板を得ることができる。
【0035】
また、本実施形態の樹脂組成物においては、所期の特性が損なわない範囲において、上述以外の樹脂(以下、「その他の樹脂」ということがある。)を添加することも可能である。当該その他の樹脂の種類については絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン化合物、フェノール樹脂、熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの樹脂を適宜併用することで、プリプレグ及びレジンシートに金属密着性を付与することができ、かつプリント配線板等に応力緩和性を付与することができる。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物は、無機充填材の分散性、樹脂と無機充填材やガラスクロスとの接着強度を向上させるために、スチリル系シラン化合物以外の、有機基に対して化学結合する基と加水分解性基又は水酸基とを有するシラン化合物(以下、「その他のシラン化合物」という。)及び/又は湿潤分散剤を含んでもよい。その他のシラン化合物としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であってもよく、特に限定されるものではない。その他のシラン化合物の具体例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基と加水分解性基又は水酸基とを有するアミノ系シラン化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基と加水分解性基又は水酸基とを有するエポキシ系シラン化合物、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニル基と加水分解性基又は水酸基とを有するビニル系シラン化合物、カチオニック系シランカップリング剤が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0037】
上述のシラン化合物の中でも、成形性を更に高める観点から、エポキシ系シラン化合物が好ましい。エポキシ系シラン化合物としては、エポキシ基と加水分解性基又は水酸基とを有するエポキシ系シランカップリング剤であってもよく、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0038】
本実施形態の樹脂組成物において、その他のシラン化合物の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して、0.1〜15質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。その他のシラン化合物の含有量をこのような範囲内とすることで、無機充填材の充填時における成形性及び硬化時の熱時弾性率にも一層優れる樹脂組成物、プリプレグ及びレジンシートを得ることができ、かつ、耐デスミア性及び耐薬品性に更に優れる金属箔張積層板及びプリント配線板用を得ることができる。
【0039】
また、湿潤分散剤としては、塗料用に使用されている分散安定剤であれば特に限定されるものではない。湿潤防止剤の市販品としては、例えば、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk−110、111、118、180、161、2009、BYK−W996、W9010、W903(いずれも製品名)が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0040】
また、本実施形態の樹脂組成物は、所期の特性が損なわれない範囲において、硬化促進剤を併用することも可能である。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物;過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチル−ジ−パーフタレート等で例示される有機過酸化物;アゾビスニトリル当のアゾ化合物;N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、2−N−エチルアニリノエタノール、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、N−メチルピペリジンなどの第3級アミン類;フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどのフェノール類;ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オレイン酸錫、ジブチル錫マレート、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトン鉄などの有機金属塩;これら有機金属塩をフェノール、ビスフェノールなどの水酸基含有化合物に溶解してなるもの;塩化錫、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどの無機金属塩;ジオクチル錫オキサイド、その他のアルキル錫、アルキル錫オキサイドなどの有機錫化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0041】
本実施形態の樹脂組成物は、上記硬化促進剤の中でも、更にイミダゾール化合物を含むことが好ましい。イミダゾール化合物としては、特に限定されないが、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、下記式(11)で表されるイミダゾール化合物が好ましい。
【化20】
ここで、式中、Arはフェニル基、ナフタレン基、ビフェニル基若しくはアントラセン基又はそれらを水酸基で変性した1価の基を示すが、その中でもフェニル基が好適である。R11は水素原子又はアルキル基若しくはそれを水酸基で変性した1価の基、あるいはアリール基を示し、上記アリール基としては、例えば、置換若しくは無置換の、フェニル基、ナフタレン基、ビフェニル基又はアントラセン基が挙げられ、フェニル基が好ましく、Ar基及びR11基の両方がフェニル基であるとより好ましい。
【0042】
イミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、及び2−フェニル−4−メチルイミダゾールが挙げられる。これらの中でも、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、及び2−フェニル−4−メチルイミダゾールがより好ましく、2,4,5−トリフェニルイミダゾールが特に好ましい。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物において、イミダゾール化合物の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。イミダゾール化合物の含有量をこのような範囲内とすることで、硬化性と成形性に優れる樹脂組成物、プリプレグ及びレジンシート、並びにそれらを原材料とする金属箔張積層板及びプリント配線板を得ることができる。
【0044】
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、無機充填材などの固形分の分散性を向上させるなどの目的で、表面調整剤を含んでもよい。表面調整剤としては、従来、界面活性剤として、樹脂組成物に含まれているものであれば特に限定されず、例えば、ポリジメチルシロキサン系、及びアクリル系が挙げられる。その市販品としては、例えば、ビッグケミー・ジャパン(株)製のBYK−310、330、346が挙げられる。表面調整剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0045】
また、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて溶剤を含んでもよい。例えば、有機溶剤を用いると、樹脂組成物の調製時における粘度が低下し、ハンドリング性が向上すると共にガラスクロスへの含浸性が高められる。溶剤の種類は、樹脂組成物中の樹脂の一部又は全部を溶解可能なものであれば、特に限定されない。その具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルセルソルブなどのケトン類、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、並びに、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びそのアセテートなど挙げられるが、これらに特に限定されない。溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0046】
本実施形態の樹脂組成物は、常法に従って調製することができる。例えば、上述の各成分を均一に含有する樹脂組成物が得られる方法が好ましい。具体的には、例えば、上述の各成分を順次溶剤に配合し、十分に攪拌することで本実施形態の樹脂組成物を容易に調製することができる。また、スチリル系シラン化合物は樹脂組成物中に他の成分と同様に配合してもよく、それに代えて又はそれに加えて、無機充填材をスチリル系シラン化合物により表面処理した後に、スチリル系シラン化合物が表面に結合した無機充填材を他の成分と共に配合して樹脂組成物を調製してもよい。無機充填材をスチリル系シラン化合物により表面処理する方法は、特に限定されない。例えば、直接処理法として乾式処理法及びスラリーを用いた処理法(湿式法)などが挙げられるが、処理の均一性の観点から湿式法が好ましい。また、市販されている表面処理済みの無機充填材(フィラー)を用いることもできる。
【0047】
本実施形態の樹脂組成物の調製時において、必要に応じて有機溶剤を用いることも可能である。有機溶剤の種類は、樹脂組成物中の樹脂を溶解可能なものであれば、特に限定されない。その具体例は、上述したとおりである。樹脂組成物の調製時には、各成分を均一に溶解又は分散させるための公知の処理(攪拌、混合、混練処理など)を行うことができる。例えば、無機充填材を用いる場合、その均一分散にあたり、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことで、樹脂組成物に対する分散性が高められる。上記の攪拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミルなどの混合を目的とした装置、又は、公転又は自転型の混合装置などの公知の装置を用いて適宜行うことができる。
【0048】
本実施形態のプリプレグは、基材と、該基材に含浸又は塗布された上記の樹脂組成物とを備えるプリプレグである。プリプレグの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、本実施形態における樹脂成分を基材に含浸又は塗布させた後、100〜200℃の乾燥機中で1〜30分加熱するなどして半硬化(Bステ−ジ化)させることで、本実施形態のプリプレグを作製することができる。
【0049】
樹脂組成物(無機充填材を含む。)の含有量は、特に限定されないが、プリプレグの総量に対して、好ましくは30〜90質量%であり、より好ましくは35〜85質量%であり、更に好ましくは40〜80質量%である。樹脂組成物の含有量が上記範囲内であることにより、成形性がより向上する傾向にある。
【0050】
基材としては、特に限定されず、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。その具体例としては、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス、球状ガラス、NEガラス、Lガラス、Tガラスなどのガラス繊維;クォーツなどのガラス以外の無機繊維;ポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド(テクノーラ(登録商標)、帝人テクノプロダクツ株式会社製)などの全芳香族ポリアミド;2,6−ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸(ベクトラン(登録商標)、株式会社クラレ製)、ゼクシオン(登録商標、KBセーレン製)などのポリエステル;ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(ザイロン(登録商標)、東洋紡績株式会社製)、ポリイミドなどの有機繊維が挙げられる。これらのなかでも低熱膨張率の観点から、Eガラス、Tガラス、Sガラス、Qガラス及び有機繊維が好ましい。これら基材は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0051】
基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマットなどが挙げられる。織布の織り方としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤のようなシラン化合物などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01〜0.3mm程度のものが好適に用いられる。とりわけ、強度と吸水性との観点から、基材は、厚み200μm以下、質量250g/m以下のガラス織布が好ましく、Eガラス、Sガラス、Tガラス、及びQガラスのガラス繊維並びに有機繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維の織布(クロス)がより好ましい。
【0052】
本実施形態のレジンシートは、支持体(シート基材)と、該シート基材に塗布された上記樹脂組成物とを備え、上記樹脂組成物は、該シート基材の片面又は両面に積層されたものである。レジンシートとは、薄葉化の1つの手段として用いられるもので、例えば、金属箔やフィルムなどの支持体に、直接、プリプレグ等に用いられる熱硬化性樹脂(無機充填材を含む)を塗布及び乾燥して製造することができる。
【0053】
シート基材としては、特に限定されないが、各種プリント配線板材料に用いられている公知の物もの使用することができる。例えばポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、アルミニウム箔、銅箔、金箔など挙げられる。その中でも電解銅箔、PETフィルムが好ましい。
【0054】
塗布方法としては、例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等でシート基材上に塗布する方法が挙げられる。
【0055】
レジンシートは、上記樹脂組成物を支持体(シート基材)に塗布後、半硬化(Bステージ化)させたものであることが好ましい。具体的には、例えば、上記樹脂組成物を銅箔などのシート基材に塗布した後、100〜200℃の乾燥機中で、1〜60分加熱させる方法などにより半硬化させ、レジンシートを製造する方法などが挙げられる。支持体に対する樹脂組成物の付着量は、レジンシートの樹脂厚で1〜300μmの範囲が好ましい。本実施形態のレジンシートは、プリント配線板のビルドアップ材料として使用可能である。
【0056】
本実施形態の積層板は、上述のプリプレグ及びレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種を1枚以上重ねてなるものであって、上述のプリプレグ及びレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種に含まれる樹脂組成物の硬化物を含む。この積層板は、例えば、上述のプリプレグ及びレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種を1枚以上重ねて硬化して得ることができる。また、本実施形態の金属箔張積層板は、上述のプリプレグ及びレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種と、上述のプリプレグ及びレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種の片面又は両面に配された金属箔とを有する金属箔張積層板であって、上記プリプレグ及びレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種に含まれる樹脂組成物の硬化物を含むものである。この金属箔張積層板は、上述のプリプレグ及びレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種を1枚以上重ね、その片面若しくは両面に金属箔を配して積層成形することにより、得ることができる。より具体的には、前述のプリプレグ及び/又はレジンシートを1枚あるいは複数枚重ね、所望によりその片面若しくは両面に銅やアルミニウムなどの金属箔を配置した構成とし、これを必要に応じて積層成形することにより、金属箔張積層板を製造することができる。ここで使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔などの公知の銅箔が好ましい。また、金属箔の厚みは、特に限定されないが、1〜70μmが好ましく、より好ましくは1.5〜35μmである。金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件についても、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができる。また、金属箔張積層板の成形において、温度は100〜300℃、圧力は面圧2〜100kgf/cm、加熱時間は0.05〜5時間の範囲が一般的である。さらに、必要に応じて、150〜300℃の温度で後硬化を行うこともできる。また、上述のプリプレグと、別途作製した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることも可能である。
【0057】
本実施形態のプリント配線板は、絶縁層と、その絶縁層の表面に形成された導体層とを含むプリント配線板であって、上記絶縁層が、上述の樹脂組成物を含むものである。回路となる導体層は、上記の金属箔張積層板における金属箔から形成することができ、あるいは、絶縁層の表面に無電解めっきにより形成することもできる。このプリント配線板は、耐薬品性、耐デスミア性及び絶縁信頼性に優れるものであり、そのような性能が要求される半導体パッケージ用プリント配線板として、殊に有効に用いることができる。
【0058】
本実施形態のプリント配線板は、具体的には、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、上述の金属箔張積層板(銅張積層板等)を用意する。金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作成する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその内層回路表面に上述のプリプレグを所要枚数重ね、更にその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材及び熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、硬化物層に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアを除去するためデスミア処理が行われる。その後この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、更に外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成し、プリント配線板が製造される。
【0059】
例えば、上述のプリプレグ(基材及びこれに添着された上述の樹脂組成物)、金属箔張積層板の樹脂組成物層(上述の樹脂組成物からなる層)が、上述の樹脂組成物を含む絶縁層を構成することになる。
【0060】
本実施形態において、絶縁層は、25℃における曲げ弾性率に対する250℃における曲げ弾性率の割合(以下、「弾性率維持率」という。)が80〜100%であると、プリント配線板を加熱した時の反りを更に抑制できるので好ましい。弾性率維持率を80〜100%とするための手法は、特に限定されないが、例えば、絶縁層に用いられる樹脂組成物の各成分の種類及び含有量を、上記の範囲内で適宜調整する手法が挙げられる。弾性率維持率は、具体的には下記の方法により求められる。すなわち、JIS C 6481に規定される方法に準じて、オートグラフにて、それぞれ25℃、250℃で曲げ弾性率(曲げ強さ)を測定する。測定された25℃の曲げ弾性率(a)と250℃の熱時曲げ弾性率(b)とから、下記式によって弾性率維持率を算出する。
弾性率維持率=(b)/(a)×100
【0061】
当該手法の他にも、本発明の目的を阻害しなければ既存の方法を用いて、弾性率維持率を80〜100%にしてもよい。例えば、ナノフィラーの導入によって分子運動を拘束する手法や、絶縁層に用いられる樹脂の架橋点にゾル−ゲル法によってナノシリカをハイブリット化する手法、又は、絶縁層に用いられる樹脂自体の高Tg化や400℃以下の領域でのTgレス化などの手法が挙げられる。
【0062】
また、金属箔張積層板を用いない場合には、上記プリプレグ、又は上記レジンシートに、回路となる導体層を形成しプリント配線板を作製してもよい。この際、導体層の形成に無電解めっきの手法を用いることもできる。
【0063】
本実施形態のプリント配線板は、上述の絶縁層が半導体実装時のリフロー温度下においても優れた弾性率を維持することで、半導体プラスチックパッケージの反りを効果的に抑制することから、半導体パッケージ用プリント配線板として、殊に有効に用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
(合成例1)α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成
温度計、攪拌器、滴下漏斗及び還流冷却器を取りつけた反応器を予めブラインにより0〜5℃に冷却しておき、そこへ塩化シアン7.47g(0.122mol)、35%塩酸9.75g(0.0935mol)、水76mL、及び塩化メチレン44mLを仕込んだ。この反応器内の温度を−5〜+5℃、pHを1以下に保ちながら、撹拌下、上記式(9)におけるRがすべて水素原子であるα−ナフトールアラルキル型フェノール樹脂(SN485、OH基当量:214g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製)20g(0.0935mol)、及びトリエチルアミン14.16g(0.14mol)を塩化メチレン92mLに溶解した溶液を滴下漏斗により1時間かけて滴下し、滴下終了後、更にトリエチルアミン4.72g(0.047mol)を15分間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で15分間撹拌後、反応液を分液し、有機層を分取した。得られた有機層を水100mLで2回洗浄した後、エバポレーターにより減圧下で塩化メチレンを留去し、最終的に80℃で1時間濃縮乾固させて、α−ナフトールアラルキル型フェノール樹脂のシアン酸エステル化物(α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂、官能基当量:261g/eq.)、23.5gを得た。
【0066】
(実施例1)
合成例1により得られたα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂10質量部、ノボラック型マレイミド化合物(BMI−2300、大和化成工業(株)製、官能基当量:186g/eq.)45質量部、及びビスアリルナジイミド(BANI−M、丸善石油化学(株)製、官能基当量:286g/eq.)45質量部に、球状シリカ(SC−5050MOB、粒径1.6μm、アドマテックス(株)社製)150質量部、エポキシ系シラン化合物である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製)2.5質量部、スチリル系シラン化合物であるp−スチリルトリメトキシシラン(KBM−1403、信越化学工業(株)製)2.5質量部、及び湿潤分散剤(DISPERBYK−161、ビックケミージャパン(株)製)1質量部を混合し、メチルエチルケトンで希釈することでワニスを得た。このワニスをEガラス織布に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥して、樹脂組成物含有量49質量%のプリプレグを得た。この時、〔β/α〕は、1.54となった。ここで、〔β/α〕は、下記計算式で表される(以下同様。)。
〔β/α〕=(マレイミド化合物の質量部数/マレイミド化合物の官能基当量)/(アルケニル置換ナジイミドの質量部数/アルケニル置換ナジイミドの官能基当量)
【0067】
(実施例2)
エポキシ系シラン化合物である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製)2.5質量部、及びスチリル系シラン化合物であるp−スチリルトリメトキシシラン(KBM−1403、信越化学工業(株)製)2.5質量部に代えて、スチリル系シラン化合物であるp−スチリルトリメトキシシラン(KBM−1403、信越化学工業(株)製)5質量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてワニスを得、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0068】
(比較例1)
エポキシ系シラン化合物である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製)2.5質量部、及びスチリル系シラン化合物であるp−スチリルトリメトキシシラン(KBM−1403、信越化学工業(株)製)2.5質量部に代えて、エポキシ系シラン化合物である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製)5質量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてワニスを得、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0069】
(比較例2)
エポキシ系シラン化合物である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製)2.5質量部、及びスチリル系シラン化合物であるp−スチリルトリメトキシシラン(KBM−1403、信越化学工業(株)製)2.5質量部に代えて、アクリル系シラン化合物である3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)5質量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてワニスを得、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0070】
(比較例3)
エポキシ系シラン化合物である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製)2.5質量部、及びスチリル系シラン化合物であるp−スチリルトリメトキシシラン(KBM−1403、信越化学工業(株)製)2.5質量部に代えて、エポキシ系シラン化合物である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製)2.5質量部、及びアクリル系シラン化合物である3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)2.5質量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてワニスを得、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0071】
(比較例4)
エポキシ系シラン化合物である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製)2.5質量部、及びスチリル系シラン化合物であるp−スチリルトリメトキシシラン(KBM−1403、信越化学工業(株)製)2.5質量部に代えて、オレフィン系シラン化合物であるオクテニルトリメトキシシラン(KBM−1083、信越化学工業(株)製)5質量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてワニスを得、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0072】
(比較例5)
エポキシ系シラン化合物である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製)2.5質量部、及びスチリル系シラン化合物であるp−スチリルトリメトキシシラン(KBM−1403、信越化学工業(株)製)2.5質量部に代えて、アクリル系シラン化合物であるメタクリロキシオクチルトリメトキシシラン(KBM−5803、信越化学工業(株)製)5質量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてワニスを得、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0073】
[金属箔張積層板の作製]
上記で得られたプリプレグを、それぞれ1枚、4枚、8枚重ねて12μm厚の電解銅箔(3EC−III、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力30kgf/cm、温度220℃で120分間の積層成型を行い、金属箔張積層板として、絶縁層厚さ0.1mm、0.4mm、0.8mmの銅張積層板を得た。
【0074】
〔絶縁信頼性〕
絶縁信頼性はHAST(高度加速寿命試験)による線間絶縁信頼性試験により評価した。まず、上記で得られた銅張積層板(厚さ0.1mm)からサブトラクティブ法によりプリント配線板(L/S=100/100μm)を形成した。次に、配線に電源を接続し、温度130℃、湿度85%、印加電圧5VDCの条件で連続湿中絶縁抵抗を評価した。なお、抵抗値1.0×10Ω以下を故障とした。評価基準は下記のとおりとした。
○:500時間以上で故障なし
×:500時間未満で故障あり
結果を表1に示す。
【0075】
〔耐薬品性〕
銅張積層板(50mm×50mm×0.4mm)を、1Nに調整した70℃の水酸化ナトリウム水溶液に2時間浸漬した。浸漬前後の銅張積層板の質量から、重量減少量(質量%)を算出した。絶対値が低いほど、耐薬品性(耐アルカリ性)に優れることを示す。結果を表1に示す。
【0076】
〔耐デスミア性〕
銅張積層板(50mm×50mm×0.4mm)の両面の銅箔をエッチングにより除去した、膨潤液である、アトテックジャパン(株)のスウェリングディップセキュリガントPに80℃で10分間浸漬し、次に粗化液である、アトテックジャパン(株)のコンセントレートコンパクトCPに80℃で5分間浸漬し、最後に中和液である、アトテックジャパン(株)のリダクションコンディショナーセキュリガントP500に45℃で10分間浸漬した。この処理を繰り返し3回行った。処理前後の銅張積層板の質量から、質量減少量(質量%)を測定した。絶対値が低いほど、耐デスミア性に優れることを示す。結果を表1に示す。
【0077】
〔弾性率維持率〕
銅張積層板(50mm×25mm×0.8mm)の両面から銅箔を剥離して得られたサンプルを用いて、JIS C−6481に準じて、オートグラフ((株)島津製作所製AG−Xplus)にて、それぞれ25℃、250℃の曲げ弾性率を測定した。上記手法によって測定された25℃の曲げ弾性率(a)と250℃の曲げ弾性率(b)とから、下記式によって弾性率維持率を算出した。
弾性率維持率=(b)/(a)×100
【0078】
〔耐熱性〕
銅張積層板(50mm×25mm×0.4mm)を、280℃の半田に30分間フロートさせて、デラミネーションの有無を目視により確認し、耐熱性を評価した。評価基準は下記のとおりとした。
○:全く異常なし
×:0〜30分間フロートさせている間にデラミネーション発生
【0079】
【表1】
【0080】
本出願は、2015年7月6日出願の日本特許出願(特願2015−135212)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、耐薬品性、耐デスミア性及び絶縁信頼性に優れるだけでなく、耐熱性及び弾性率損失率にも優れたプリント配線板用絶縁層を提供することができるので、半導体プラスチックパッケージに用いられるプリント配線板等の分野に産業上の利用可能性がある。