(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記最終ディジタル信号は、前記メイン系ディジタル信号、前記第1バックアップ系ディジタル信号および前記第2バックアップ系ディジタル信号のうちから多数決の原理により選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  しかしながら、従来の技術では、回路の一部に故障が発生した場合に、継続して正確な角度を出力することができないという問題があった。たとえば特許文献1の構成では、2つの検出信号を加算して用いているので、いずれかに故障が発生した場合には正確な角度の出力が困難になる。
【0005】
  この発明はこのような問題点を解消するためになされたものであり、一部に故障が発生した場合でも正確な角度の出力を継続することができる、信号変換方法および装置を提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0006】
  この発明に係る方法は、2相励磁2相出力かつ位相変調方式の回転検出に係るアナログ信号をディジタル信号に変換する方法であって、
  第1相のアナログ信号および第2相のアナログ信号に基づき、メイン系ディジタル信号を生成するステップと、
  第1相のアナログ信号に基づき、第1バックアップ系ディジタル信号を生成するステップと、
  第2相のアナログ信号に基づき、第2バックアップ系ディジタル信号を生成するステップと、
  前記メイン系ディジタル信号、前記第1バックアップ系ディジタル信号および前記第2バックアップ系ディジタル信号に基づき、最終ディジタル信号を出力するステップと
を備える。
  特定の態様では、前記最終ディジタル信号は、前記メイン系ディジタル信号、前記第1バックアップ系ディジタル信号および前記第2バックアップ系ディジタル信号のうちから多数決の原理により選択される。
  特定の態様では、
  メイン系ディジタル信号を生成する前記ステップは負帰還制御を用いて実現され、
  前記負帰還制御は、
  第1相および第2相の各アナログ信号と、前記メイン系ディジタル信号の正弦および余弦を表す各信号とをそれぞれ乗算して、第1中間信号および第2中間信号を生成するステップと、
  前記第1中間信号および前記第2中間信号の差分信号が0となるかまたは0に近づくように、メイン系ディジタル信号を修正するステップと
を含む。
  特定の態様では、
  第1バックアップ系ディジタル信号は、第1相のアナログ信号と、第1相の励磁信号との位相差を表す信号であり、
  第2バックアップ系ディジタル信号は、第2相のアナログ信号と、第2相の励磁信号との位相差を表す信号である。
  また、この発明に係る装置は、
  前記メイン系ディジタル信号を生成するメイン系信号処理部と、
  前記第1バックアップ系ディジタル信号および前記第2バックアップ系ディジタル信号を生成するバックアップ系信号処理部と
を備え、上述の方法を実行することにより、アナログ信号をディジタル信号に変換する。
 
【発明の効果】
【0007】
  この発明によれば、回転検出に係るアナログ信号をディジタル信号に変換する際に、メイン系信号処理部と、2つのバックアップ系信号処理部とを用い、メイン系信号処理部は、2相のアナログ信号を2重冗長の信号として用いて精度の良い角度出力を得、バックアップ系信号処理部は、それぞれの相のアナログ信号に基づいて簡易的にそれぞれの角度出力を得、これら3つの角度出力に基づいて最終の角度信号が出力されるので、一部に故障が発生した場合でも正確な角度の出力を継続することができる。このため、回転検出器を扱うシステムの信頼性向上に貢献することができる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0009】
  以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
  
図1に、本発明の実施の形態1に係るディジタル変換部30を含む構成の例を示す。ディジタル変換部30は、本明細書に記載される方法を実行することにより、アナログ信号をディジタル信号に変換する装置である。ディジタル変換部30は回転検出器10に接続されて設けられる。回転検出器10は2相励磁2相出力かつ位相変調方式の回転検出器であり、ディジタル変換部30は回転検出器10の回転検出に係るアナログ信号をディジタル信号に変換する。
 
【0010】
  回転検出器10には励磁回路20が接続される。励磁回路20は、直交する2相の励磁信号を生成して回転検出器10に供給する。2相の励磁信号は、たとえば第1相の励磁信号E・cosωtおよび第2相の励磁信号E・sinωtとして表される。
 
【0011】
  回転検出器10は、入力された励磁信号を位相変調し、励磁信号に対して回転角度θに応じた位相を持ったアナログ信号を出力する。たとえば、第1相の励磁信号E・cosωtおよび第2相の励磁信号E・sinωtが入力されると、第1相のアナログ信号K・E・cos(ωt−θ)および第2相のアナログ信号K・E・sin(ωt−θ)を出力する。ただしKは変圧比である。
 
【0012】
  ディジタル変換部30は、メイン系信号処理部40と、バックアップ系信号処理部50と、バックアップ系信号処理部60とを備える3重系として構成される。以下、これらの処理部がすべて正常である場合の動作を説明する。
 
【0013】
  メイン系信号処理部40は、第1相のアナログ信号K・E・cos(ωt−θ)および第2相のアナログ信号K・E・sin(ωt−θ)に基づき、角度を表すメイン系ディジタル信号φ
Mを生成する。
 
【0014】
  メイン系ディジタル信号φ
Mの生成は、負帰還制御を用いて実現される。負帰還制御において、フィードバック信号がアナログ信号と乗算され、中間信号が生成される。本実施形態では、カウンタから出力される基準信号ωtからメイン系ディジタル信号φ
Mを減算した結果の正弦および余弦を表す信号として、2相のフィードバック信号が生成される。すなわち、フィードバック信号は、メイン系ディジタル信号φ
Mの正弦を表すフィードバック信号sin(ωt−φ
M)およびメイン系ディジタル信号φ
Mの余弦を表すフィードバック信号cos(ωt−φ
M)として表される。
 
【0015】
  正弦を表すフィードバック信号sin(ωt−φ
M)は、第1相のアナログ信号K・E・cos(ωt−θ)と乗算され、乗算の結果として第1中間信号K・E・cos(ωt−θ)・sin(ωt−φ
M)が生成される。同様に、余弦を表すフィードバック信号cos(ωt−φ
M)は、第2相のアナログ信号K・E・sin(ωt−θ)と乗算され、乗算の結果として第2中間信号K・E・sin(ωt−θ)・cos(ωt−φ
M)が生成される。
 
【0016】
  負帰還制御において、第1中間信号と第2中間信号との差分ε(すなわち、乗算出力の差分)を制御偏差とし、この制御偏差が0となるか、または0に近づくように、所定の制御則によってメイン系ディジタル信号φ
Mが修正される。この差分εは次のように表される。
  ε=  K・E・cos(ωt−θ)・sin(ωt−φ
M)
      −K・E・sin(ωt−θ)・cos(ωt−φ
M)
    =  K・E・sin(θ−φ
M)      …(式1)
この式から、負帰還制御系が正常に機能してε=0となると、K・E・sin(θ−φ
M)=0となり、すなわちφ
M=θとなる。このようにして、メイン系信号処理部40は、回転検出器10からのアナログ信号をディジタル角度出力に変換し、メイン系ディジタル信号φ
Mを生成する。
 
【0017】
  バックアップ系信号処理部50は、第1相のアナログ信号K・E・cos(ωt−θ)に基づき、第1バックアップ系ディジタル信号φ
Cを生成する。本実施形態では、第1バックアップ系ディジタル信号φ
Cは、第1相のアナログ信号K・E・cos(ωt−θ)と、第1相の励磁信号E・cosωtとの位相差を表す信号として生成される。バックアップ系信号処理部50が正常に機能すると、第1バックアップ系ディジタル信号φ
Cはωt−(ωt−θ)=θとなる。このようにして、バックアップ系信号処理部50は、回転検出器10からのアナログ信号をディジタル角度出力に変換し、第1バックアップ系ディジタル信号φ
Cを生成する。
 
【0018】
  同様に、バックアップ系信号処理部60は、第2相のアナログ信号K・E・sin(ωt−θ)に基づき、第2バックアップ系ディジタル信号φ
Sを生成する。本実施形態では、第2バックアップ系ディジタル信号φ
Sは、第2相のアナログ信号K・E・sin(ωt−θ)と、第2相の励磁信号E・sinωtとの位相差を表す信号として生成される。バックアップ系信号処理部60が正常に機能すると、第2バックアップ系ディジタル信号φ
Sはωt−(ωt−θ)=θとなる。このようにして、バックアップ系信号処理部60は、回転検出器10からのアナログ信号をディジタル角度出力に変換し、第2バックアップ系ディジタル信号φ
Sを生成する。
 
【0019】
  このようにして、3重の冗長系の角度出力として、メイン系ディジタル信号φ
Mと、第1バックアップ系ディジタル信号φ
Cと、第2バックアップ系ディジタル信号φ
Sとが生成される。ディジタル変換部30は、これら3つのディジタル信号φ
M,φ
C,φ
Sに基づき、最終的なディジタル出力信号(最終ディジタル信号φ)を出力する。このために、ディジタル変換部30は出力決定処理部(図示せず)を備えてもよい。
 
【0020】
  最終ディジタル信号φは、どのようなアルゴリズムまたは計算式により決定または算出されてもよいが、たとえば3つのディジタル信号φ
M,φ
C,φ
Sのうちから多数決の原理により選択される。多数決の原理の実現方法は任意に設計可能であるが、たとえば、3つのディジタル信号φ
M,φ
C,φ
Sのうち2つ以上が同一の値を示す場合には、その値を選択して最終ディジタル信号φとし、これを出力する。または、3つのディジタル信号φ
M,φ
C,φ
Sのうち2つからなる組(3通りの組が可能である)のそれぞれについて差を算出し、差の絶対値を最も小さくする組に基づいて最終ディジタル信号φを決定または算出してもよい(たとえばその組に含まれる2つの値の平均を取る等)。
 
【0021】
  次に、構成の一部において故障が発生した場合の動作を説明する。
  
図2に、第2相のアナログ信号K・E・sin(ωt−θ)が喪失した状態を示す。この場合には、制御偏差となる差分εは次のようになる。
  ε=K・E・cos(ωt−θ)・sin(ωt−φ
M)−0・cos(ωt−φ
M)
    =(1/2)・K・E・{sin(θ−φ
M)+sin(2ωt−θ−φ
M)}
              …(式2)
このような場合であっても、メイン系信号処理部40は、正常またはほぼ正常にφ
Mを出力するように構成することが可能である。ここで、「ほぼ正常」という用語の意味は、当業者が実施態様に応じて適切に定義または解釈可能であるが、たとえば、φ
Mの正常な値からのずれ(差分)の大きさが、最終ディジタル信号φの出力に影響を与えない程度ということができる。または、φ
Mのずれが最終ディジタル信号φに及ぼす影響が、ディジタル変換部30の出力としての許容範囲内に留まる程度ということもできる。このようなメイン系信号処理部40の具体的な構成は任意に設計可能であるが、以下に一例を示す。
 
【0022】
  上述の式2においてε=0とすると、φ
M≒θ+sin(2ωt−2θ)と近似できる。sin(2ωt−θ−φ
M)は通常およそ励磁周波数の2倍の周波数成分であるが、励磁周波数に対して負帰還制御系の周波数特性を適切に構成すれば、当該2倍の周波数成分を減衰または除去することができる。この場合には、φ
M=θとなるか、またはφ
Mはθを中心として微小振動する信号となる。すなわち、メイン系信号処理部40によるディジタル変換は、正常に行われるか、少なくとも誤差を持ちながらもほぼ正常に継続可能である。
 
【0023】
  図2の場合には、φ
Sについてはディジタル変換不能となるが、φ
Cについては故障の影響なく、正常な場合と同様に変換可能である。したがって、3つのディジタル信号φ
M,φ
C,φ
Sのうち2つ(この場合にはφ
Mおよびφ
C)について正常またはほぼ正常に出力が行われるので、最終ディジタル信号φの決定および出力も、正常またはほぼ正常に行うことが可能である。なお上述のように、最終ディジタル信号φの具体的な決定方法としてはたとえば多数決の原理を用いることが可能である。
 
【0024】
  なお、
図2は、第2相のアナログ信号K・E・sin(ωt−θ)が喪失した状態を示すが、第2相のアナログ信号K・E・sin(ωt−θ)が正常であって余弦を表すフィードバック信号cos(ωt−φ
M)が喪失した場合についても同様である。
 
【0025】
  図3に、第1相のアナログ信号K・E・cos(ωt−θ)が喪失した状態を示す。この場合には、制御偏差となる差分εは次のようになる。
  ε=0・sin(ωt−φ
M)−K・E・sin(ωt−θ)・cos(ωt−φ
M)
    =(1/2)・K・E・{sin(θ−φ
M)−sin(2ωt−θ−φ
M)}
              …(式3)
このような場合であっても、メイン系信号処理部40は、正常またはほぼ正常にφ
Mを出力するように構成することが可能である。具体的な構成は任意に設計可能であるが、以下に一例を示す。
 
【0026】
  上述の式3においてε=0とすると、φ
M≒θ−sin(2ωt−2θ)と近似でき、
図2の場合と同様の考え方で、sin(2ωt−θ−φ
M)を減衰または除去することができるので、メイン系信号処理部40によるディジタル変換は正常またはほぼ正常に行われる。また、
図3の場合には、φ
Cについてはディジタル変換不能となるが、φ
Sについては故障の影響なく、正常な場合と同様に変換可能である。したがって、3つのディジタル信号φ
M,φ
C,φ
Sのうち2つ(この場合にはφ
Mおよびφ
S)について正常またはほぼ正常に出力が行われるので、
図2の場合と同様に最終ディジタル信号φの決定および出力も、正常またはほぼ正常に行うことが可能である。
 
【0027】
  なお、
図3は、第1相のアナログ信号K・E・cos(ωt−θ)が喪失した状態を示すが、第1相のアナログ信号K・E・cos(ωt−θ)が正常であって正弦を表すフィードバック信号sin(ωt−φ
M)が喪失した場合についても同様である。
 
【0028】
  図4に、メイン系信号処理部40に故障が発生した場合の状態を示す。
図4の例は、制御偏差となる差分εが喪失した状態のものである。この状態では、メイン系信号処理部40はディジタル変換を行うことができず、φ
Mが正常に出力されない。また、差分εが喪失した状態に限らず、負帰還が機能しなくなる状況が発生した場合には、φ
Mが正常に出力されず、同様の結果となる。
 
【0029】
  しかしながら、この場合にはバックアップ系信号処理部50およびバックアップ系信号処理部60は正常に動作するので、3重の出力のうち2系統についてはディジタル変換が機能することになる。すなわち、3つのディジタル信号φ
M,φ
C,φ
Sのうち2つ(この場合にはφ
Cおよびφ
S)について正常に出力が行われるので、最終ディジタル信号φの決定および出力も正常に行うことが可能である。なお上述のように、最終ディジタル信号φの具体的な決定方法としてはたとえば多数決の原理を用いることが可能である。
 
【0030】
  以上説明するように、本発明に係るディジタル変換部30によれば、回転検出に係るアナログ信号をディジタル信号に変換する際に、メイン系信号処理部40と、バックアップ系信号処理部50と、バックアップ系信号処理部60とを用い、メイン系信号処理部40は、2相のアナログ信号を2重冗長の信号として用いて精度の良い角度出力を得、バックアップ系信号処理部50は、第1相のアナログ信号に基づいて簡易的に角度出力を得、バックアップ系信号処理部60は、第2相のアナログ信号に基づいて簡易的に角度出力を得、これら3つの角度出力に基づいて最終の角度信号が出力されるので、一部に故障が発生した場合でも正確な角度の出力を継続することができる。このため、回転検出器を扱うシステムの信頼性向上に貢献することができる。