(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マトリックスが、ステップb)の後に、免疫グロブリンのような標的タンパク質に対するその結合容量の少なくとも80%、例えば少なくとも90%を保持する;および/または
ステップb)において、生存細菌、栄養細菌および/または胞子の含量が少なくとも3log10、例えば少なくとも5log10または少なくとも6log10減少する、請求項1または2に記載の方法
i)前記細菌タンパク質が、ブドウ球菌プロテインA、ペプトストレプトコッカスプロテインLおよびストレプトコッカスプロテインGからなる群、例えばストレプトコッカスプロテインAおよびペプトストレプトコッカスプロテインLからなる群から選択される;
ii)前記リガンドが、細菌タンパク質に由来する免疫グロブリン結合ドメインのホモ多量体またはヘテロ多量体を含むか、または本質的にそれらからなる;および/または
iii)ステップb)の後の前記マトリックスのIgG結合容量が、ステップb)の前の前記マトリックスのIgG結合容量の少なくとも95%、例えば少なくとも97%である、請求項2または3に記載の方法。
ステップb)の前に、ステップa’)として、前記マトリックスと免疫グロブリンを含む溶液とを接触させ、前記免疫グロブリンを吸着させ、続いて前記マトリックスと溶出溶液とを接触させ、前記免疫グロブリンを脱着させるステップを含み、
場合により、ステップa’)がステップb)の前に少なくとも10回、例えば少なくとも25回繰り返される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一態様において、本発明は、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスの清浄化または衛生化のための方法を開示する。この方法は以下のステップを含む:
a)支持体に結合された耐酸化性タンパク質性リガンドを有するアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供するステップ。タンパク質性リガンドは、適切には、細菌タンパク質に由来する1または複数の免疫グロブリン結合ドメインを含むか、または本質的にそれらからなり得る。細菌免疫グロブリン結合タンパク質は当技術分野で周知であり(例えばEV Sidorin、TF Soloveva:Biochemistry Moscow 76(3)、295−308、2011を参照されたい)、特にグラム陽性細菌の免疫グロブリン結合タンパク質、例えば、ブドウ球菌プロテインA(SpA、配列番号17)、ペプトストレプトコッカスプロテインL(配列番号18)およびストレプトコッカスプロテインG(配列番号19)により例示される。これらのタンパク質は、3つの異なる領域:細胞質膜を横切るタンパク質の転位を担い、その後切り離されるシグナル伝達ペプチドを含むN末端領域;タンパク質の機能活性を決定するいくつかのドメインを含む機能領域;および細胞壁におけるタンパク質のアンカリングを担う選別シグナルとして示されるC末端領域、の分子内に存在することによって特徴付けられる共通の一本鎖構造を有する。機能領域は、1または複数のタイプのポリペプチドリピートを含むという単一の原則で構築される。同じタイプの相同性の高いリピートをタンデムとして編成することができる。リピートの数はさまざまであり、分子量および機能活性におけるタンパク質の異種性を決定することができる。親和性リガンドとして使用されるこれらのタンパク質の組換え変異体は、この目的のために必要とされないので、多くの場合C末端領域を欠いている。それらはまた、異なるN末端領域およびタンパク質のアルカリ安定性を改善するためなどの選択された点突然変異をドメイン内に有していてもよい。
【0019】
b)マトリックスと、式I、
R−O−O−H(I)
(式中、Rは水素またはアシル基R’−C(O)−であり、R’は水素またはメチル、エチルもしくはプロピル基である)
によって定義される少なくとも1つの酸化剤を含む衛生化溶液とを接触させるステップ。このような酸化剤には、過酸化水素H
2O
2、過ギ酸HCO
3H、過酢酸CH
3CO
3H、過プロピオン酸CH
3CH
2CO
3Hおよび過酪酸CH
3CH
2CH
2CO
3Hが含まれる。衛生化溶液のpHは、例えば、2〜12、例えば2〜4または2〜3であり、これは衛生化効果に有益であり、少なくとも1種の酸化剤の濃度は、例えば、0.01〜1.0mol/l、例えば0.02〜0.2mol/l、0.05〜0.5mol/lまたは0.03〜0.1mol/lであってよい。この溶液は、式Iによる単一の酸化剤または酸化剤の混合物、例えば、過酸化水素と、過ギ酸もしくは過酢酸との混合物を含有することができる。混合物の場合、式Iにより定義された酸化剤の総濃度は、適切には0.01〜1mol/l、例えば0.02〜0.2mol/l、0.05〜0.5mol/lまたは0.03〜0.1mol/lであってよい。この溶液は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸または酪酸のようなカルボン酸をさらに含んでよい。溶液が過酸を含む場合、カルボン酸は適切には対応するカルボン酸であり得、すなわち、過酸R’C(O)OOHと同じアシル基R’−C(O)を有するカルボン酸R’−C(O)−OHであり得る。接触ステップは、マトリックスと衛生化溶液とを、例えば1分〜24時間、例えば5分〜24時間または10分〜24時間インキュベートするステップを伴うか、または本質的にそれからなってよい。インキュベーションは、マトリックスが充填されたカラム中で、または別法として、非充填カラムからのマトリックスを有する別個の容器中で適切に行うことができ、インキュベーション温度は、例えば、室温または15〜30℃であってよい。カラムは、再使用可能なステンレス鋼カラムであってもよいが、単回使用カラム、例えば、熱可塑性およびエラストマー成分で作製されたカラムであってもよい。後者の場合、熱可塑性物質およびエラストマー物質は、酸化剤溶液によって著しく分解されないように適切に選択することができる。特に、適切な濃度とインキュベーション時間を見つけるためにいくつかの実験作業が行われた場合、15〜30℃の範囲外の温度も可能です。第1近似として、通常のアレニウス温度依存性を適用して、温度が10℃上昇した場合、インキュベーション時間を2〜3倍短縮できると仮定することができる。一定温度における適切な濃度とインキュベーション時間との間の関係は、ほぼ線形であると仮定することができる。
【0020】
特定の実施形態において、免疫グロブリン結合ドメインは、ブドウ球菌プロテインA、ペプトストレプトコッカスプロテインLおよびストレプトコッカスプロテインGからなる群、例えばブドウ球菌プロテインAおよびペプトストレプトコッカスプロテインLからなる群から選択される細菌タンパク質に由来してよい。免疫グロブリン結合ドメインは、例えば、ブドウ球菌プロテインAのドメインE、D、A、BもしくはCと、プロテインZ(プロテインAのドメインBの変異体)と、またはペプトストレプトコッカスプロテインLのドメイン1、2、3、4もしくは5と、少なくとも80%、例えば少なくとも90もしくは95%の相同性を有し得る。この文脈において、免疫グロブリン含有ドメインは、配列番号1−11からなる群より選択されるアミノ酸配列により定義することができるか、またはこれらと少なくとも80%、例えば、少なくとも90または95%の配列相同性を有することができる。
【0021】
配列番号1−プロテインAのドメインE
AQQ NAFYQVLNMP NLNADQRNGF IQSLKDDPSQ SANVLGEAQK LNDSQAPK
配列番号2−プロテインAのドメインD
ADA QQNKFNKDQQ SAFYEILNMP NLNEEQRNGF IQSLKDDPSQ STNVLGEAKK LNESQAPK
配列番号3−プロテインAのドメインA
A DNNFNKEQQ NAFYEILNMP NLNEEQRNGF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNESQAPK
配列番号4−プロテインAのドメインB
ADNKFNKEQQ NAFYEILHLP NLNEEQRNGF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号5−プロテインAのドメインC
ADNKFNKEQQ NAFYEILHLP NLTEEQRNGF IQSLKDDPSV SKEILAEAKK LNDAQAPK
配列番号6−プロテインZ
VDNKFNKEQQ NAFYEILHLP NLNEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号7−プロテインLのドメイン1
SEEEVTIKAN LIFANGSTQT AEFKGTFEKA TSEAYAYADT LKKDNGEYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE
配列番号8−プロテインLのドメイン2
PKEEVTIKAN LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADA LKKDNGEYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE
配列番号9−プロテインLのドメイン3
PKEEVTIKAN LIYADGKTQT AEFKGTFEEA TAEAYRYADL LAKENGKYTV DVADKGYTLN IKFAGKEKTPEE
配列番号10−プロテインLのドメイン4
PKEEVTIKAN LIYADGKTQT AEFKGTFAEA TAEAYRYADL LAKENGKYTA DLEDGGYTIN IRFAGKKVDEKPEE
配列番号11−プロテインLのドメイン5
EKEQVTIKEN IYFEDGTVQT ATFKGTFAEA TAEAYRYADL LSKEHGKYTA DLEDGGYTIN IRFAG
いくつかの実施形態において、免疫グロブリン結合ドメインは、国際公開第03080655号、国際公開第2008039141号、欧州特許第1992692号、欧州特許第2157099号、欧州特許第2202310号、欧州特許第2412809号、欧州特許第2557157号、欧州特許第2157099号および国際公開第2013109302号の1つまたは複数に記載されたドメインなど、配列番号1−11の天然ドメインの公知の変異体に由来することができ、これらはすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。免疫グロブリン結合ドメインは、例えば、配列番号12〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列によって定義することができるか、またはこれらと少なくとも90%、例えば少なくとも95もしくは98%の配列相同性を有することができる。
【0022】
配列番号12−プロテインZ変異体(国際公開第03080655号)
VDNKFNKEQQ NAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号13−プロテインZ変異体(国際公開第03080655号)
VDAKFDKEQQ NAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号14−ドメインC変異体(国際公開第2008039141号)
ADNKFNKEQQ NAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKEILAEAKK LNDAQAPK
配列番号15−ドメインC変異体(欧州特許第2557157号)
ADNKFNKEQQ NAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQELKDDPSV SKEILAEAKK LNDAQAPK
配列番号16−ドメインC変異体(国際公開3013109302号)
FNKEQQ NAFYEILHLP NLTEEQRNGF IQSLKDDPSV SKEILAEAKK LNDAQAPK
配列番号17−プロテインA
AQQ NAFYQVLNMP NLNADQRNGF IQSLKDDPSQ SANVLGEAQK LNDSQAPK
ADA QQNKFNKDQQ SAFYEILNMP NLNEEQRNGF IQSLKDDPSQ STNVLGEAKK LNESQAPK A DNNFNKEQQ NAFYEILNMP NLNEEQRNGF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNESQAPK ADNKFNKEQQ NAFYEILHLP NLNEEQRNGF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK ADNKFNKEQQ NAFYEILHLP NLTEEQRNGF IQSLKDDPSV SKEILAEAKK LNDAQAPK
配列番号18−プロテインL(米国特許第5965390号)
AVENKEETPETPETDSEEEVTIKANLIFANGSTQTAEFKGTFEKATSEAYAYADTLKKDNGEYTVDVADKGYTLNIKFAGKEKTPEEPKEEVTIKANLIYADGKTQTAEFKGTFEEATAEAYRYADALKKDNGEYTVDVADKGYTLNIKFAGKEKTPEEPKEEVTIKANLIYADGKTQTAEFKGTFEEATAEAYRYADLLAKENGKYTVDVADKGYTLNIKFAGKEKTPEEPKEEVTIKANLIYADGKTQTAEFKGTFAEATAEAYRYADLLAKENGKYTADLEDGGYTINIRFAGKKVDEKPEE
配列番号19−プロテインG
AQHDEAVDAN SRGSVDASEL TPAVTTYKLV INGKTLKGET TTEAVDAATA EKVFKQYAND NGVDGEWTYD DATKTFTVTE KPEVIDASEL TPAVTTYKLV INGKTLKGET TTKAVDAETA EKAFKQYAND NGVDGVWTYD DATKTFTVTE MVTEVPLEST A
本方法の特定の実施形態において、リガンドは、細菌タンパク質に由来する免疫グロブリン結合ドメインのホモ多量体またはヘテロ多量体を含むかまたは本質的にそれらからなる。これは、リガンドが上記の複数のドメインを含むことを意味する。リガンド中のドメインはすべて同じであってもよく(ホモ多量体)、またはそれらの1または複数が他のものと異なっていてもよい(ヘテロ多量体)。これらのドメインに加えて、リガンドは、ドメイン間のリンカー構造、N末端のリーダー配列またはシグナル配列、およびC末端のテール配列を含むことができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、リガンドは、ブドウ球菌プロテインAまたはブドウ球菌プロテインAのアルカリ安定化免疫グロブリン結合変異体を含む。上記のように、プロテインAは、5つのドメインE、D、A、B、Cをその順序で含む。ブドウ球菌プロテインAリガンドを含む市販のマトリックスの例としては、MabSelect(商標)およびMabSelect Xtra(GE Healthcare)、ProSep(商標)−AおよびProSep Ultra Plus(Merck−Millipore)、AbSolute(商標)(Novasep)、CaptivA(商標)PriMab(商標)(Repligen)ならびにProtein A Diamond(Bestchrom)が挙げられる。プロテインAのアルカリ安定化変異体は、典型的には、改変されたドメインCまたはプロテインZユニットのホモまたはヘテロ多量体であり、国際公開第03080655号、国際公開第2008039141号、欧州特許第1992692号、欧州特許第2157099号、欧州特許第2202310号、欧州特許第2412809号、欧州特許第2557157号、欧州特許第2157099号および国際公開第2013109302号に記載されている。ブドウ球菌プロテインAのアルカリ安定化免疫グロブリン結合変異体を含む市販のマトリックスの例としては、MabSelect SuReおよびMabSelect SuRe LX(GE Healthcare)、Eshmuno(商標)A(Merck−Millipore)、Toyopearl(商標)AF−rProtein A(Tosoh Bioscience)、Amsphere(商標)Protein A(JSR Life Sciences Inc.)ならびにKanCapA(商標)(Kaneka Corp.)が挙げられる。
【0024】
本方法の特定の実施形態において、リガンドは、ペプトストレプトコッカスプロテインLまたはペプトストレプトコッカスプロテインLのアルカリ安定化免疫グロブリン結合変異体を含む。プロテインLリガンドを有する市販のマトリックスは、Capto(商標)L(GE Healthcare)である。プロテインLのアルカリ安定化変異体は、同時係属中出願PCT欧州特許出願第2015/079387号およびPCT欧州特許出願第2015/079389号において論じられており、これらは両方とも、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。リガンドはまた、配列番号17〜19からなる群から選択されるアミノ酸配列によって定義されるアミノ酸配列か、またはこれらと少なくとも90%、例えば少なくとも95または98%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
【0025】
上述の細菌タンパク質由来リガンドとは対照的に、抗体由来のリガンドは、本発明の方法に使用される衛生化溶液に対して不安定であることが判明している。これは、例えば、国際公開第0144301号に記載されているように、一本鎖ラクダ抗体に由来するリガンドの場合に特に当てはまる。このようなリガンドを有するマトリックスの例としては、KappaSelect(商標)、LambdaFabSelect(商標)、VIIISelect(商標)およびVIISelect(商標)(すべてGE Healthcare)が挙げられる。
【0026】
いくつかの実施形態において、本方法は、ステップb)の前に、ステップa’)として、マトリックスと免疫グロブリンを含む溶液とを接触させ、免疫グロブリンを吸着させ、続いてマトリックスと溶出溶液とを接触させ、免疫グロブリンを脱着させるステップを含む。ステップa’)は、例えば、ステップb)が適用される前に少なくとも10回、例えば少なくとも25回繰り返されてもよいが、ステップb)は、ステップa’)の各段階の後に適用されてもよい。ステップa’)は、例えば、清浄化溶液として10〜500または10〜100mmol/lのアルカリ、例えばNaOHを使用する定置洗浄ステップをさらに含むことができる。する。
【0027】
特定の実施形態において、生存細菌、栄養細菌および/または胞子の含量は、ステップb)において少なくとも3log
10、例えば少なくとも5log
10または少なくとも6log
10減少する。
【0028】
いくつかの実施形態において、ステップb)後のマトリックスの免疫グロブリンまたはIgG結合容量は、ステップb)前のマトリックスの免疫グロブリンまたはIgG結合容量の少なくとも95%、例えば少なくとも97%である。
【0029】
マトリックスの支持体(ベースマトリックスとも呼ばれる)は、任意の適切な周知の種類の、特に耐酸化性支持体、例えば、0.03Mまたは0.1Mの過酢酸水溶液を用いて22±2℃においてインキュベートした24時間後に圧力−流量性能が20%超変化しない支持体などであってよい。従来のアフィニティー分離マトリックスは多くの場合有機性であり、使用する水性媒体に親水性表面を曝露している、すなわちヒドロキシ(−OH)、カルボキシ(−COOH)、カルボキシアミド(−CONH
2、N−置換型であってもよい)、アミノ(−NH
2、置換されていてもよい)、オリゴ−またはポリエチレンオキシ基をそれらの外部に曝露し、存在する場合にはその内部にも曝露しているポリマーに基づく。固体支持体は、適切には多孔質であり得る。空隙率は、Gel Filtration Principles and Methods,Pharmacia LKB Biotechnology 1991,pp6−13に記載の方法による逆サイズ排除クロマトグラフィーによって測定されたKavまたはKd値(特定のサイズのプローブ分子に利用可能な細孔容積の割合)として表すことができる。定義上、KdおよびKav値は両方とも常に0〜1の範囲内にある。有利には、分子量110kDaのデキストランをプローブ分子として用いて測定した場合、Kav値は0.6〜0.95、例えば、0.7〜0.90または0.6〜0.8であり得る。この利点は、支持体が、タンパク質性リガンドおよび該リガンドに結合する免疫グロブリンの両方を収容することができ、結合部位への、および結合部位からの免疫グロブリンの質量輸送を提供することができる細孔を大きな割合で有することである。
【0030】
タンパク質性リガンドは、支持体に共有結合させることができ、例えば、リガンド中に存在するチオール、アミノおよび/またはカルボキシ基を利用する既存のカップリング技術などを使用してそれらを支持体に付着させることができる。ビセポキシド、エピクロロヒドリン、CNBr、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)などは、周知のカップリング試薬である。支持体とリガンドとの間に、スペーサーとして知られている分子を導入することができ、リガンドの利用可能性が向上し、リガンドと支持体との化学的カップリングが促進される。
【0031】
いくつかの実施形態において、マトリックスは、5〜20、例えば5〜15mg/ml、5〜11mg/mlまたは8〜11mg/mlの支持体にカップリングされたリガンドを含む。カップリングされるリガンドの量は、カップリングプロセスに使用するリガンドの濃度、使用するカップリング条件および/または使用する支持体の細孔構造によって制御することができる。概して、マトリックスの絶対結合容量は、カップリングされたリガンドの量に伴い、少なくとも細孔がカップリングされたリガンドによって著しく狭窄される点まで増加する。カップリングされたリガンド1mg当たりの相対結合容量はカップリングレベルが高くなると減少し、上記の範囲内で最適な費用便益をもたらす。
【0032】
いくつかの実施形態において、タンパク質性リガンドは、多点結合を介して支持体にカップリングされる。これは、リガンド中の複数の反応性基が支持体中の反応性基と反応するようなカップリング条件を使用することによって適切に行うことができる。典型的には、多点結合は、配列中のアミノ酸残基のいくつかの固有の反応基、例えばリジン中のアミンと、支持体上の反応基、例えばエポキシド、シアネートエステル(例えば、CNBr活性化由来)、スクシンイミジルエステル(例えば、NHS活性化由来)との反応を伴うことができる。しかし、リガンド中の異なる位置に反応性基を故意に導入して、カップリング特性に影響を及ぼすことも可能である。リジンを介した多点カップリングを提供するために、カップリング反応は、リジンの一級アミンのかなりの部分が非プロトン化求核状態であるpHにおいて、例えば、8.0より高い、例えば10より高いpHにおいて適切に実施される。
【0033】
特定の実施形態において、リガンドは、チオエーテル結合を介して支持体にカップリングされる。このような結合を実施する方法は、この分野において周知であり、標準的な技術および装置を使用して当業者によって容易に実施される。チオエーテル結合は、柔軟で安定であり、一般的にアフィニティークロマトグラフィーでの使用に適している。特に、チオエーテル結合が、リガンド上の末端または近末端のシステイン残基を介している場合、カップリングされたリガンドの可動性が向上し、結合容量および結合反応速度が改善される。いくつかの実施形態において、リガンドは、上記のタンパク質に提供されるC末端システインを介してカップリングされる。このことは、システインチオールと支持体上の求電子基、例えばエポキシド基、ハロヒドリン基との効率的なカップリングを可能にし、チオエーテル架橋カップリングをもたらす。
【0034】
特定の実施形態において、支持体は、ポリヒドロキシポリマー、例えば多糖類を含む。多糖類の例としては、例えば、デキストラン、デンプン、セルロース、プルラン、寒天、アガロースなどが挙げられる。多糖類は本質的に親水性であり、非特異的相互作用の程度は低く、反応性(活性化可能な)ヒドロキシル基含量が高く、バイオプロセスに使用されるアルカリ清浄化液に対して一般に安定である。
【0035】
いくつかの実施形態において、支持体は、寒天またはアガロースを含む。本発明で使用する支持体は、標準的な方法、例えば逆懸濁ゲル化(S Hjerten:Biochim Biophys Acta 79(2),393−398(1964))により容易に調製することができる。または、塩基性マトリクッスは、SEPHAROSE(商標)FF(GE Healthcare)の名称で販売されている架橋アガロースビーズなどの市販品である。衛生化方法に特に有利な一実施形態において、支持体は剛性架橋アガロースである。このようなアガロース支持体は、米国特許第6602990号、米国特許第7396467号または米国特許第8309709号に記載の方法により高度に架橋されており、当該特許はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。球状ビーズの形態の、ベッド高さ20cm、内径2.6cmのカラムに充填した剛性架橋アガロース支持体は、3バールの背圧において少なくとも0.14×d
2(式中、dはビーズの体積加重メジアン径(d50、v)をマイクロメートルで表したものである)の水流速v(cm/h)をもたらす。剛性架橋アガロースは、本発明の方法に使用する酸化剤に対して著しく安定である。
【0036】
特定の実施形態において、多糖類またはアガロース支持体などの支持体は、ヒドロキシアルキルエーテル架橋などで架橋される。このような架橋を生成する架橋剤試薬は、例えば、エピクロロヒドリンのようなエピハロヒドリン、ブタンジオールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド、アリルハライドまたはアリルグリシジルエーテルのようなアリル化試薬であってよい。架橋は、支持体の剛性に有益であり、化学的安定性を改善する。ヒドロキシアルキルエーテル架橋はアルカリ安定性であり、著しい非特異的吸着を引き起こさない。
【0037】
または、固体支持体は、合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなどに基づく。ジビニルおよびモノビニル置換ベンゼンに基づくマトリックスなどの疎水性ポリマーの場合、マトリックス表面は、多くの場合親水化されて、上で定義した親水性基を周囲の水性液体に曝露する。このようなポリマーは、標準的な方法に従って容易に製造され、例えば、“Styrene based polymer supports developed by suspension polymerization”(R Arshady:Chimica e L’Industria 70(9),70−75(1988))を参照されたい。または、SOURCE(商標)(GE Healthcare)などの市販品が使用される。別の代替としては、本発明による固体支持体は、無機性の支持体、例えばシリカ、ガラス、酸化ジルコニウムなどを含む。
【0038】
さらに別の実施形態において、固体支持体は、表面、チップ、キャピラリー、またはフィルター(例えば、膜または深層フィルターマトリックス)などの別の形態である。
【0039】
本発明によるマトリックスの形状に関して、一実施形態において、マトリックスは多孔性膜の形態である。別の実施形態において、マトリックスは、適切に多孔性であり得るビーズまたは粒子の形態である。ビーズまたは粒子の形態のマトリックスは、充填床として、または懸濁形態で使用することができる。懸濁形態には、粒子またはビーズが自由に移動する膨張床および純粋な懸濁液として知られている形態が含まれる。
【0040】
第2の態様において、本発明は、式I、
R−O−O−H(I)
(式中、Rは水素またはアシル基R’−C(O)−であり、R’は、水素またはメチル、エチルもしくはプロピル基である)
によって定義される酸化剤を含む溶液の、支持体にカップリングされたタンパク質性リガンドを有するアフィニティークロマトグラフィーマトリックスの衛生化のための使用を開示する。タンパク質性リガンドは、上記の細菌タンパク質に由来する1または複数の免疫グロブリン結合ドメインを含むか、または本質的にそれらからなる。この使用は、上記の実施形態のいずれかの方法を含むことができる。
【0041】
さらに、本発明は、
a)剛性架橋アガロース支持体にカップリングされた耐酸化性リガンドを有するクロマトグラフィーマトリックスを提供するステップ、
b)該マトリックスと、式I、
R−O−O−H(I)
(式中、Rは水素またはアシル基R’−C(O)−であり、R’は、水素またはメチル、エチルもしくはプロピル基である)
によって定義される酸化剤を含む衛生化溶液とを接触させるステップ、
を含む、クロマトグラフィーマトリックスを衛生化する方法を開示する。リガンドは、上記のような耐酸化性タンパク質性リガンドであってもよいが、例えば、カチオン交換リガンド(例えば、スルホプロピル、スルホエチルまたはカルボキシメチル基を含むリガンド)、アニオン交換リガンド(例えばトリメチルアンモニウムまたはジエチルアミノエチル基を含むリガンド)、疎水性リガンド(例えばブチル、ヘキシル、オクチルまたはフェニル基を含むリガンド)またはマルチモーダル基(例えば、疎水性基と組み合わせたカチオンもしくはアニオン交換基を含むリガンド)であってもよい。リガンドは、マトリックス上に均一に分布していてもよく、またはマトリックスの1つの領域、例えばビーズ状マトリックスのコアまたはシェルに排他的または主要に位置していてよい。
【0042】
上述したように、前記衛生化溶液中の前記酸化剤の濃度は、例えば、0.01〜1mol/lであってよく、pHは、例えば、2−12、例えば2−4または2−3であってよい。ステップb)においてマトリックスは、衛生化溶液と共に1分〜24時間、例えば5分〜24時間または15分〜3時間インキュベートされ、マトリックスは、例えば、メジアン径(d50、v)10〜200マイクロメートル、例えば30〜100マイクロメートルの球形ビーズの形態であってよい。
【実施例】
【0043】
(すべて室温=22+/−2℃で実施)
【実施例1】
【0044】
(Capto Lの衛生化試験)
この調査の目的は、Capto L50%スラリーに添加した8種の消毒剤ならびに基準としてのPBSの、細菌胞子および細菌に対する殺菌および殺胞子効果を評価することであった。この効果を、接触時間0および15分ならびに1、4および24時間で試験した。
【0045】
この試験は、Capto L50%のスラリーおよび消毒剤で行った。微生物を約10
7cfu/mLの濃度で懸濁液に添加し、消毒剤を中和することによって所定の時間間隔後に減少効果を評価した。中和剤の有効性および接種した微生物を回収するその能力を、チャレンジ試験と並行してこの方法を検証することによって実証した。結果を、微生物バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)(胞子)およびシュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(栄養細菌)のlog10減少に関して評価した。
【0046】
10
7cfu/mLの微生物を10mLのCapto L50%スラリーに消毒剤と共に加えた。試料を混合し、50mLの中和剤(0.3%レシチン、3.0%Tween80、0.5%チオ硫酸ナトリウムおよび0.1%L−ヒスチジンを含む0.075Mリン酸緩衝液)に0.1mLの試料を二連に添加した。全溶液を、10回連続希釈に相当する画分を濾過することによって分析した。フィルターを100mLの0.9%NaClで3回すすいだ。陽性対照として、消毒剤チャレンジ試験と同じ量の各微生物を50mLの中和剤に加えた。全溶液を、10回連続希釈に相当する画分を濾過することによって分析した。フィルターを100mLの0.9%NaClで3回すすいだ。フィルターをTSA(トリプチケースソイ寒天)上で30〜35℃において2〜5日間インキュベートした。予備読み取りは1〜3日後に行った。微生物の減少を、陽性対照のlog
10と比較した生存微生物のlog
10として計算した。結果を、被験消毒剤の中で、0.1M過酢酸および3%過酸化水素を含む0.6%ギ酸のみがB.ズブチリス胞子を効率的に殺すことができることを示している。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【実施例2】
【0049】
(リガンドのインキュベーション、Biacoreによる試験)
この活動の目的は、0.1M過酢酸(PAA)による衛生化前後の結合能力保持の尺度として、異なるクロマトグラフィー媒体リガンドの結合動態を研究することであった。動態は、Biacore(商標)機器において表面プラズモン共鳴によって測定した。被験リガンドは、配列番号13の単量体(Z1)および四量体(Z4)、組換えプロテインA(rPrA)、組換えプロテインL(rPrL)およびIgGカッパ鎖に対する一本鎖ラクダ抗体(KappaSelectリガンド)であった。Z1、Z4およびrPrAを、Biacoreチップに固定化したモノクローナル抗体を用いて試験し、一方、rPrLおよびKappaSelectリガンドは固定化したFab抗体断片を用いて試験した。
【0050】
1. 1mlの10mg/mlのZ1、Z4およびrPrAを還元し、アルキル化し、緩衝液を10mMのNaClに交換し、質量分析計(MS)で分析して還元およびアルキル化を確認した。
【0051】
2. 1mlのrPrLおよびKappaSelectリガンドを10mg/mlに希釈した。
【0052】
3. 参照試料(0時間)100μlを採取し、緩衝液を50mM重炭酸アンモニウムに交換した。
【0053】
4. 10%の1M PAAを加え、インキュベーションを開始した。
【0054】
5. 1、2、4、8、16および24時間後に試料100μlを採取し、緩衝液を50mM重炭酸アンモニウムと交換して、酸化反応を停止させた。
【0055】
6. すべての試料において、276nmにおいてUV吸光度を測定することによって濃度を測定した。
【0056】
7. 次いで、この試料をLC−MSおよびBiacoreで分析した。
【0057】
0.1MのPAA中で0〜16時間インキュベートしたZ1リガンドは、SIPの前後で同様の親和性を有する。24時間のインキュベーション後のリガンドはオフレートでは変化しないが、オンレートで変化し、親和性のシフトももたらす。
【0058】
0.1MのPAA中で0〜24時間インキュベートしたZ4リガンドは、SIPの前後で同様の親和性を有する。
【0059】
0.1MのPAA中で0〜24時間インキュベートしたrPrAリガンドは、SIP処理の増加に伴っていくらか親和性を失う。このリガンドは、オンレートおよびオフレートの両方で変化し、親和性のシフトをもたらす
0.1MのPAA中で0〜24時間インキュベートしたrPrLリガンドは、SIPの前後で同様の親和性を有する。SIP前後のLCクロマトグラム(
図1aおよびb)は分解の兆候を示さない。
【0060】
KappaSelectリガンドは、0.1M PAA中で1時間後に既に著しく分解されており、それについての動態研究を行うことは不可能であった。SIP前後のLCクロマトグラム(
図2aおよびb)もまた、本質的に完全な分解を示す。
【実施例3】
【0061】
(マトリックスのインキュベーション)
これらの実験の目的は、異なるアフィニティークロマトグラフィー媒体の定置衛生化(SIP)適合性を試験することであった。この試験は、TECANロボットを用いてPreDictor RoboColumn 600μl中に充填された6種の異なるクロマトグラフィー媒体について、0.1M過酢酸におけるSIP後の10%ブレークスルーの動的結合容量(DBC)を計算することによって行った。最初のDBCは、SIPに供されなかった6種の対応する参照カラムにおいて測定した。媒体は、Capto L(組換えプロテインL)、KappaSelect(IgGカッパ鎖に対する一本鎖ラクダ抗体)、MabSelect(組換えプロテインA)、MabSelect SuRe(アスパラギンが置換されたプロテインZ変異体の多量体)、MabSelect SuRe LX(アスパラギンが置換されたプロテインZ変異体の多量体)およびMabSelect Xtra(組換えプロテインA)であった。これらすべての媒体の支持体は、剛性架橋アガロースである。
【0062】
方法
1. 洗浄/保存溶液の除去:10カラム容量(CV)(6×1000μl)の20mMリン酸塩、150mM NaCl、pH7.4
2. 20CV(12×1000μl)のSIP溶液(0.1M過酢酸)の添加
3. カラムプラグ、パラフィルムおよびアルミホイルによるミニカラムの底面と上面の密封。
【0063】
4. SIP溶液中で24時間の室温におけるインキュベーション
5. 24時間のSIPインキュベーション後、洗浄:10CV(6×1000μl)の20mMリン酸塩、150mM NaCl pH7.4
6. 試料の負荷:異なる濃度の12×600μlFab/Mab、滞留時間6分
7. UV−読み取り可能なプレートにおける未結合試料の収集および280(および300nm)におけるUV吸光度の測定
SIPに供されていないカラムのDBCについては、ポイント1、6、7を実行した。
【0064】
【表3】
【実施例4】
【0065】
(マトリックスのインキュベーション Capto L)
各ウェルに6マイクロリットルのCapto Lを含むPreDictor(商標)(GE Healthcare)96ウェルフィルタープレートを以下の手順に供した:
PreDictor保存溶液(20%エタノール)の除去
洗浄:3×200μlの20mMリン酸塩塩、150mM NaCl pH7.4
洗浄 3×200μlのMilliQ
600μlのSIP溶液および20mMのリン酸塩、150mMのNaCl pH7.4(対照)の添加(48溶液およびプレート中の2連)
パラフィルムでプレートの底面と上面を密封
450rpmで振盪しながら4時間または24時間、SIP溶液中でインキュベート。
【0066】
液体を遠心分離(500×g、1分)により除去。
【0067】
Fabの静的結合容量(SBC)を、
1.SIP溶液の除去
2.洗浄:1×600μlのMilliQ、1×600μlのPBS
3.平衡化:3×200μlの20mMリン酸塩、150mMのNaCl pH7.4
4.サンプル負荷:2.5mg/mLの濃度の200μlのFab、1100rpmで10分間および90分間のインキュベーション。
【0068】
5.UV−読み取り可能なプレートにおける未結合試料の収集および280(および254nm)におけるUV吸光度の測定
によって決定した。
【0069】
液体を遠心分離(500×g、1分)により除去した。
【0070】
フロースルー画分のUV吸光度から、280nmにおけるPBS緩衝液のUV吸光度(経路のチェックオン)を差し引いた(A280−ブランク280)。
【0071】
フロースルー画分中の濃度を、標準曲線を使用して計算した(A280−ブランク280)/1.2796
【0072】
SBCの計算:
【数1】
【0073】
Vsample=200μl
Vmedium=6μl
Vr=6+0.6×Vmedium=9.6
Vr:保持された体積、すなわち、フィルター体積(6μl)および樹脂中の液体体積(0.6×6)
【0074】
【表4】
【実施例5】
【0075】
(マトリックスのインキュベーションおよびMS分析)
200mgの湿潤マトリックスを水で洗浄し、0.1Mの過酢酸と一緒に24時間インキュベートした。マトリックスを濾過により除去し、インキュベーション溶液を、RPLC C
18 RPCカラムを備えたWaters AQUITY H−Class+Waters Xevo Q−TOFMS LC−MSシステムで分析した。インキュベーション溶液中のタンパク質断片の存在は、過酢酸によるリガンド分解の指標と見なした。
【0076】
異なるタンパク質性親和性リガンドを有する7種のマトリックスを試験した(すべてGE Healthcareから):
Kappa Select(IgGカッパ鎖に対する一本鎖ラクダ抗体)
LambdaFab Select(IgGラムダ鎖に対する一本鎖ラクダ抗体)
Factor VII Select(第VII因子に対する一本鎖ラクダ抗体)
Factor VIII Select(第VIII因子に対する一本鎖ラクダ抗体)
Capto L(組換えプロテインL)
MabSelect Xtra組換え体(プロテインA)
MabSelect SuRe(アスパラギンが置換されたプロテインZ変異体の多量体)
【0077】
【表5】
【実施例6】
【0078】
(ベースマトリックスの安定性)
酸化剤処理がアガロースベースマトリックスにどのような負の特性をもたらすかを見るために、剛性アガロースベースマトリックスの圧力−流量試験を、未処理のマトリックス試料および酸化剤と共にインキュベートした試料に対して行った。
【0079】
ベースマトリックス
使用したベースマトリックスは、米国特許第6602990号の方法に従って調製された、メジアン径88マイクロメートル(体積加重、d50V)の、Gel Filtration Principles and Methods,Pharmacia LKB Biotechnology 1991,pp6−13に記載されている方法にしたがって、逆ゲル濾過クロマトグラフィーのK
D値が分子量110kDaのデキストランに対して0.70に相当する細孔サイズを有する剛性架橋アガロースビーズである。
【0080】
インキュベーション
ベースマトリックスを30mM過酢酸水溶液中で室温において24時間インキュベートし、次いで蒸留水で洗浄した。
【0081】
カラムの充填:
300mlの沈降ゲルを蒸留水でスラリー化して620mlのスラリー量とし、内径35mmのFineLINE(商標)35/600カラム(GE Healthcare、Sweden)に充填した。充填圧力は0.10+/−0.02バールであり、ベッド高さは300±10mmであった。
【0082】
圧力−流量試験
蒸留水を、背圧を段階的に7.5バールまで上げてポンプによりカラムに通させた。各圧力上昇ステップ後、ポンプ速度を5分間一定に保ち、体積流量および背圧を測定した。線形流速(体積流量をカラムの内側断面積で割った値として計算される)を背圧に対してプロットし、最大流速を曲線から計算し、最大圧力を最大流速における背圧と見なした。
【0083】
結果
図5は、a)非インキュベートマトリックスおよびb)インキュベーション後のマトリックスについての流速対背圧の曲線を示す。最大流速は、インキュベーション前に1.30×10
3cm/hであり、インキュベーション後に1.18×10
3cm/hであったが、対応する最大圧力はインキュベーション前後で5.31および5.44バールであった。その差は、本方法の実験誤差限界内であり、過酢酸のインキュベーションがマトリックスの圧力−流量特性に影響しないことを示している。このことは、Coulter Counterにおいてビーズのメジアン径を測定することによってさらに確証され、d50Vメジアン径は、インキュベーション前には88.3マイクロメートルであり、インキュベーション後には88.5マイクロメートルであった(統計学的有意差なし)ことを示した。また、ビーズの細孔径は、Mw110kDaのデキストランのK
D値がインキュベーション前には0.696であり、インキュベーション後には0.692であることによって示されるように、影響を受けなかった。
【実施例7】
【0084】
(清浄化、MabSelect SuRe)
MabSelect SuReマトリックスのアリコートをモノクローナル抗体(mAb)供給物で汚染し、次いで異なる清浄化溶液と共にインキュベートした。清浄化後、マトリックスをSDS−DTT緩衝液中で煮沸してタンパク質を放出させ、上清をAmersham WBシステム(GE Healthcare、スウェーデン)で電気泳動ゲル上を流し、残留汚染タンパク質の量を決定した。
【0085】
ファウリング
各ウェルに20マイクロリットルのMabSelect SuReが入った96ウェルフィルタープレート(PreDictor MabSelect Sure、GE Healthcare、Sweden)を、3×200マイクロリットル/ウェルのPBS緩衝液で平衡化し、次いで、200マイクロリットルのmAb供給物(4g/lのmAbを含むCHO細胞上清)/ウェルを負荷し、30分間インキュベートした。200マイクロリットルのPBSで洗浄した後、これらのウェルを2×200マイクロリットルの50mM酢酸緩衝液、pH3.5で溶出した。平衡−負荷−洗浄−溶出サイクルを合計5サイクル繰り返し、次いでウェルを平衡化し、蒸留水を添加した。各ステップ(試料負荷、洗浄、溶出、清浄化)の後、液体を真空濾過または遠心分離によって除去した。
【0086】
清浄化
ウェルを3×200マイクロリットルの蒸留水で洗浄し、次いで300マイクロリットルのCIP溶液1と共に15分間インキュベートした。CIP1溶液を除去した後、これらを2×300マイクロリットルのPBSおよび2×300マイクロリットルの水で洗浄した。次にそれらを300マイクロリットルのCIP溶液2と共に15分間インキュベートし、上記のように洗浄した。CIP1およびCIP2溶液を表6に示す。
【0087】
【表6】
【0088】
分析
ウェル中のマトリックスを、Amersham WB Cy5標識キットを用いて、50マイクロリットルの標識緩衝液+5マイクロリットルのCy5を加え、30分間インキュベートすることにより、Cy5蛍光色素で予め標識した。次に、50マイクロリットルのSDS−DTT緩衝液を加え、マトリックスと共に5分間煮沸した。上清をAmersham WB Gel Cardに負荷し、予め標識したmAbおよびMabSelect SuReリガンド参照+分子量基準のセットとともに流しさせた。このGel Cardをスキャンし、スキャンしたシグナルを積分して、マトリックスから回収された残留汚染物質の量に対応する数値を得た。
【0089】
結果は、30mMの過酢酸が100mMのNaOHとほぼ同じくらい有効であり、100mMの過酢酸がより有効であることを示している。特に良好な結果は、酸化剤とアルカリの連続的な組み合わせで得られた。
【実施例8】
【0090】
(清浄化、Capto L)
これは、ウェル中にプロテインL機能性Capto Lマトリックスを有する20マイクロリットルのPreDictor Capto Lプレートを使用したこと、および汚染物質が、dAbのペリプラズム発現を伴う熱処理大腸菌(E.Coli)培養物の上清からなるドメイン抗体(dAb)供給物であることを除いて、実施例7と同様に実施した。
【0091】
【表7】
【0092】
ここでも、過酢酸はかなりの清浄化効果を有し、その効果は15mMのアルカリとの連続的な組み合わせによりさらに増強される。
【0093】
本明細書は、最良の様式を含む本発明を開示するため、およびどのような当業者も、任意の装置または系の作製および使用ならびに任意の組み込まれた方法の実行を含む本発明の実践を可能にするために、実施例を使用している。本発明の特許となり得る範囲は特許請求の範囲により規定され、当業者が思いつく他の実施例を含み得る。このような他の実施例は、特許請求の範囲の文面と異ならない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文面と非実質的な相違を有する等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内であることが意図される。本文に述べられたすべての特許および特許出願は、それらが個別に組み込まれたかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
[実施態様1]
a)支持体にカップリングされた耐酸化性タンパク質性リガンドを有するアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供するステップ、
b)前記マトリックスと、式I、
R−O−O−H(I)
(式中、Rは水素またはアシル基R’−C(O)−であり、R’は、水素またはメチル、エチルもしくはプロピル基である)
によって定義される少なくとも1種の酸化剤を含む衛生化溶液とを接触させるステップ、
を含む、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスを清浄化または衛生化する方法。
[実施態様2]
前記タンパク質性リガンドが、細菌タンパク質に由来する1または複数の免疫グロブリン結合ドメインを含むか、または本質的にそれからなる、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
前記衛生化溶液中の前記酸化剤の濃度が0.01〜1mol/lである、実施態様1または2に記載の方法。
[実施態様4]
前記衛生化溶液のpHが2〜12、例えば2〜4または2〜3である、実施態様1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様5]
前記酸化剤が、過酸化水素、過ギ酸および過酢酸からなる群から選択される、実施態様1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様6]
前記衛生化溶液が、式Iにより定義される少なくとも2種の酸化剤の混合物、例えば過酸化水素と、過ギ酸もしくは過酢酸との混合物を含む、実施態様1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様7]
式Iにより定義される酸化剤の総濃度が0.01〜1mol/lである、実施態様1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様8]
ステップb)において、前記マトリックスを前記衛生化溶液と共に1分〜24時間、例えば5分〜24時間または15分〜3時間インキュベートする、実施態様1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様9]
前記マトリックスが、ステップb)の後に、免疫グロブリンのような標的タンパク質に対するその結合容量の少なくとも80%、例えば少なくとも90%を保持する、実施態様1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様10]
前記細菌タンパク質が、ブドウ球菌プロテインA、ペプトストレプトコッカスプロテインLおよびストレプトコッカスプロテインGからなる群、例えばストレプトコッカスプロテインAおよびペプトストレプトコッカスプロテインLからなる群から選択される実施態様2乃至9のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様11]
前記リガンドが、細菌タンパク質に由来する免疫グロブリン結合ドメインのホモ多量体またはヘテロ多量体を含むか、または本質的にそれらからなる、実施態様2乃至10のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様12]
前記免疫グロブリン結合ドメインが、ブドウ球菌プロテインAのドメインE、D、A、BもしくはCと、プロテインZと、またはペプトストレプトコッカスプロテインLのドメイン1、2、3、4もしくは5と、少なくとも80%、例えば少なくとも90もしくは95%の相同性を有する、実施態様2乃至11のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様13]
前記免疫グロブリン結合ドメインが、配列番号1〜11からなる群から選択されるアミノ酸配列により定義されるか、またはこれらと少なくとも80%、例えば少なくとも90または95%の配列相同性を有する、実施態様2乃至12のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様14]
前記免疫グロブリン結合ドメインが、配列番号12〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列により定義されるか、またはこれらと少なくとも90%、例えば少なくとも95または98%の配列相同性を有する、実施態様2乃至13のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様15]
前記リガンドが、ブドウ球菌プロテインAまたはブドウ球菌プロテインAのアルカリ安定化免疫グロブリン結合変異体を含む、実施態様1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様16]
前記リガンドが、ペプトストレプトコッカスプロテインLまたはペプトストレプトコッカスプロテインLのアルカリ安定化免疫グロブリン結合変異体を含む、実施態様1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様17]
前記アフィニティークロマトグラフィーマトリックスが、Capto(商標)L、MabSelect(商標)、MabSelect Xtra、ProSep(商標)−A、ProSep Ultra Plus、AbSolute(商標)、CaptivA(商標)PriMab(商標)およびProtein A Diamondからなる群から選択されるか、またはMabSelect SuRe、MabSelect SuRe LX、Eshmuno(商標)A、Toyopearl(商標)AF−rProtein A、Amsphere(商標)Protein AおよびKanCapA(商標)からなる群から選択される、実施態様1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様18]
前記支持体が、多孔性粒子または多孔性膜を含む、実施態様1乃至17のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様19]
前記支持体が、シリカ、ガラスおよびヒドロキシ官能性ポリマーからなる群から選択される、実施態様1乃至18のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様20]
前記支持体が架橋多糖類である、実施態様1乃至19のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様21]
前記支持体が、架橋アガロース、例えば剛性架橋アガロースである、実施態様1乃至20のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様22]
ステップb)の前に、ステップa’)として、前記マトリックスと免疫グロブリンを含む溶液とを接触させ、前記免疫グロブリンを吸着させ、続いて前記マトリックスと溶出溶液とを接触させ、前記免疫グロブリンを脱着させるステップを含む、実施態様2乃至21のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様23]
ステップa’)がステップb)の前に少なくとも10回、例えば少なくとも25回繰り返される、実施態様22に記載の方法。
[実施態様24]
ステップb)において、生存細菌、栄養細菌および/または胞子の含量が少なくとも3log
10、例えば少なくとも5log
10または少なくとも6log
10減少する、実施態様1乃至23のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様25]
ステップb)の後の前記マトリックスのIgG結合容量が、ステップb)の前の前記マトリックスのIgG結合容量の少なくとも95%、例えば少なくとも97%である、実施態様2乃至24のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様26]
前記マトリックスがクロマトグラフィーカラムに充填される、実施態様1乃至25のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様27]
前記クロマトグラフィーが、単回使用カラムまたは熱可塑性およびエラストマー成分で製造されたカラムである、実施態様26に記載の方法。
[実施態様28]
式I、
R−O−O−H(I)
(式中、Rは水素またはアシル基R’−C(O)−であり、R’は、水素またはメチル、エチルもしくはプロピル基である)
によって定義される酸化剤を含む溶液の、支持体にカップリングされた、細菌タンパク質に由来する1または複数の免疫グロブリン結合ドメインを含むか、または本質的にそれらからなるタンパク質性リガンドを有するアフィニティークロマトグラフィーマトリックスの衛生化のための使用。
[実施態様29]
実施態様1乃至27のいずれか1項に記載の方法を含む、実施態様28に記載の使用。
[実施態様30]
前記衛生化が、生存細菌胞子濃度の少なくとも5または6log減少を提供する、実施態様28または29に記載の使用。
[実施態様31]
前記生存細菌胞子濃度の減少がバチルス・ズブチリス胞子を用いて評価される、実施態様30に記載の使用。
[実施態様32]
a)剛性架橋アガロース支持体にカップリングされた耐酸化性リガンドを有するクロマトグラフィーマトリックスを提供するステップ、
b)前記マトリックスと、式I、
R−O−O−H(I)
(式中、Rは水素またはアシル基R’−C(O)−であり、R’は、水素またはメチル、エチルもしくはプロピル基である)
によって定義される酸化剤を含む衛生化溶液とを接触させるステップ、
を含む、クロマトグラフィーマトリックスを衛生化する方法。
[実施態様33]
前記衛生化溶液中の前記酸化剤の濃度が0.01〜1mol/lである、実施態様32に記載の方法。
[実施態様34]
前記衛生化溶液のpHが2〜12、例えば2〜4または2〜3である、実施態様32または33に記載の方法。
[実施態様35]
ステップb)において、前記マトリックスを前記衛生化溶液と共に1分〜24時間、例えば5分〜24時間または15分〜3時間インキュベートする、実施態様32乃至34のいずれか1項に記載の方法。