(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6732611
(24)【登録日】2020年7月10日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】ワーククランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20200716BHJP
B23Q 3/04 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
B23Q3/06 301K
B23Q3/04
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-170096(P2016-170096)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-34266(P2018-34266A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】301069384
【氏名又は名称】クラレノリタケデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 紘之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−048409(JP,U)
【文献】
韓国登録特許第10−1589550(KR,B1)
【文献】
韓国登録特許第10−1314192(KR,B1)
【文献】
特開昭62−157743(JP,A)
【文献】
特開平10−263968(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0147225(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102009011443(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06
B23Q 3/04
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削加工設備に設けられて円盤状のワークを保持するクランプ装置であって、
前記切削加工設備の回転テーブルに回動自在に取り付けられたクランプ本体と、
前記クランプ本体に取り付けられたクランパユニットであって、ワークを挟持する第1クランパおよび第2クランパからなるクランパユニットと、
を備え、
前記第1クランパおよび前記第2クランパに、両クランパを貫通する複数のクランパ連結ねじ挿通孔が設けられており、前記第1クランパの前記クランパ連結ねじ挿通孔の端部に、クランパ連結ナットを回転不能に収容するナット凹所が設けられており、前記クランパ連結ねじ挿通孔に挿通させた第1ねじ体を前記クランパ連結ナットに螺合させることにより、前記第2クランパが前記第1クランパに連結されており、
前記第1クランパおよび前記第2クランパのいずれか一方が前記クランプ本体に第2ねじ体によって着脱自在に連結されていることにより、前記クランパユニットは、前記クランプ本体に着脱自在に連結されており、かつ、厚みの異なる前記ワークを加工する際に、前記第1クランパと前記第2クランパとの間の、前記円盤状のワークの中心点の位置である加工原点位置が変更されず、前記クランプ本体の回動軸心上に位置するように配置されている、
ワーククランプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワーククランプ装置において、前記第2クランパが、前記第1クランパに着脱自在に連結されているワーククランプ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のワーククランプ装置において、前記第1クランパが、鉛直方向下側に配置された下側クランパであり、前記第2クランパが、鉛直方向上側に配置された上側クランパであるワーククランプ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のワーククランプ装置において、前記ナットが六角ナットであり、前記ナット凹所が平面視で矩形に形成されているワーククランプ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のワーククランプ装置において、前記第1クランパが、鉛直方向下側に配置された下側クランパであり、前記第2クランパが、鉛直方向上側に配置された上側クランパであり、前記下側クランパが、前記クランプ本体の下面に形成されたねじ孔に下方からねじ込まれた前記第2ねじ体によって前記クランプ本体に連結されているワーククランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工工具に対してワークを所定の位置および角度に保持するワーククランプ装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、数値制御により所定のデータに基づいてワークを切削加工する切削設備において、加工工具に対して円盤状のワークを所定の位置および角度に保持するワーククランプ装置が使用されている。このようなワーククランプ装置では、一般的に、円盤状のワークの周縁部分を一対のクランパで挟持することによってワークを保持する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−120222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されたワーククランプ装置では、一対のクランパのうちの一方のクランパが回動部材本体に固定されているので、ワークを厚みの異なるものに変更した場合、これに伴って円盤状ワークの中心点である加工原点も上下方向に変更される。その場合、加工精度を維持するためには、数値制御に必要な複雑なパラメータの変更や、複雑な加工パスの計算が必要となる。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、厚みの異なる円盤状のワークに対して、加工原点を変更することなく保持することが可能なワーククランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するために、本発明に係るワーククランプ装置は、切削加工設備に設けられて円盤状のワークを保持するクランプ装置であって、前記切削加工設備の回転テーブルに回動自在に取り付けられたクランプ本体と、前記クランプ本体に取り付けられたクランパユニットであって、ワークを挟持する第1クランパおよび第2クランパからなるクランパユニットとを備え、前記クランパユニットは、前記クランプ本体に着脱自在に連結されており、かつ、前記第1クランパと前記第2クランパとの間のワークの加工原点位置が、前記クランプ本体の回動軸心上に位置するように配置されている。
【0007】
この構成によれば、ワークを直接挟持するクランパユニットがクランプ本体に着脱自在に連結されているから、厚みの異なるワークに対して、それらに応じた異なる寸法のクランパユニットを用意し、交換してクランプ本体に取り付けることができる。これにより、厚みの異なるワークを加工する際にも、加工原点位置を変更することなくワークをワーククランプ装置に固定することが可能となる。したがって、数値制御加工において複雑なパラメータ変更や加工パスの計算を回避しながら、厚みの異なるワークの加工精度を維持することが可能となる。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記第1クランパが、前記クランプ本体に着脱自在に連結されており、前記第2クランパが、前記第1クランパに着脱自在に連結されていてもよい。この構成によれば、クランパユニットのクランプ本体への着脱、およびワークの固定を含む1対のクランパ同士の着脱を、簡単な連結構造によって効率的に行うことができる。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記第1クランパが、鉛直方向下側に配置された下側クランパであり、前記第2クランパが、鉛直方向上側に配置された上側クランパであり、前記上側クランパおよび下側クランパに、両クランパを貫通する複数のねじ挿通孔が設けられており、前記下側クランパのねじ挿通孔の下端部に、ナットを回転不能に収容するナット凹所が設けられており、前記ねじ挿通孔に上側から挿通したねじ体を前記ナットに螺合させることにより、前記上側クランパが前記下側クランパに連結されていてもよい。この構成によれば、下側クランパに直接雌ねじ部を設けるのではなく、ナット凹所に収容したナットを用いた連結構造としたので、ねじ体およびナットを交換することによって、ねじ溝が金属加工粉の侵入によって摩耗することを容易に回避できる。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記ナットが六角ナットであり、前記ナット凹所が平面視で矩形に形成されていてもよい。この構成によれば、一般に入手が容易な六角ナットを使用し、かつナット凹所を容易に加工可能な形状としながら、確実にナット回転を防止できる。しかも、ナットとナット凹所の間に隙間ができるので、ナットの交換が容易になり、かつ、ナット凹所に溜まった金属加工粉を除去する作業が容易となる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記第1クランパが、鉛直方向下側に配置された下側クランパであり、前記第2クランパが、鉛直方向上側に配置された上側クランパであり、前記下側クランパが、前記クランプ本体の下面に形成されたねじ孔に下方からねじ込まれたねじ体によって前記クランプ本体に連結されていてもよい。この構成によれば、クランプ本体とクランパユニットとを連結するためのねじ孔をクランプ本体の下面に設けているので、このねじ孔への金属加工粉の侵入が抑制される。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係るワーククランプ装置によれば、厚みの異なる円盤状のワークに対して、加工原点を変更することなく保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るワーククランプ装置が適用される切削加工設備の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のワーククランプ装置を示す底面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図1のワーククランプ装置を示す平面図である。
【
図5】
図1のワーククランプ装置のナット凹所を拡大して模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るワーククランプ装置1(以下、単に「クランプ装置1」と称する。)が適用される切削加工設備Mの一例を模式的に示す斜視図である。この切削加工設備Mは、加工対象である円盤状のワークに対して切削加工を施すための設備であって、鉛直方向(Z軸方向)に移動自在に設けられた切削加工具(図示せず)と、切削加工具に対して水平方向(X軸方向およびY軸方向)に移動自在なXYステージ3と、XYステージ3上に載置された回転テーブル5と、回転テーブル5に回動自在に取り付けられてワークWを保持する前記クランプ装置1とを備えている。回転テーブル5は、X軸と平行な回動軸心C回りにクランプ装置1を回動させるとともに、Y軸と平行な傾斜軸心D回りにクランプ装置1を傾斜させる。切削加工設備Mは、XYステージ3による水平方向の位置決めおよび回転テーブル5による傾斜姿勢決めによって、切削加工具に対してワークを任意の位置、姿勢に制御可能に構成されている。
【0016】
図2に示すように、クランプ装置1は、クランプ本体11と、クランパユニット13とを備えている。クランプ本体11は、回転テーブル5に回動軸心C回りに回動自在に取り付けられている。クランパユニット13は、
図3に示すように、一対のクランパ、すなわち第1のクランパである下側クランパ15および第2のクランパである上側クランパ17とからなる。上側クランパ17および下側クランパ15は、それぞれ鉛直方向の上側および下側に配置されて、ワークWを直接挟持する。
【0017】
上側クランパ17および下側クランパ15は、それぞれ、ワークWの被加工部分に相当する円形のワーク開口17a,15aを有する円環状の部材として形成されている。上側クランパ17および下側クランパ15の、各合せ面側におけるワーク開口17a,15aの周縁部には、ワークWを嵌合させる嵌合段差部17b,15bが形成されている。
図2に示すように、クランプ本体11は、回転テーブル5に連結される基端部11aと、クランパユニット13を支持するクランパ支持部11bとを有する。クランプ本体11のクランパ支持部11bには、上側クランパ17および下側クランパ15を嵌合させる円形の嵌合開口11baが形成されている。
【0018】
本実施形態では、第1クランパである下側クランパ15がクランプ本体11に着脱自在に連結され、第2クランパである上側クランパ17が下側クランパ15に着脱自在に連結されることにより、クランパユニット13全体がクランプ本体11に着脱自在に連結されている。また、
図3に示すように、クランパユニット13は、第1クランパである下側クランパ15と第2クランパである上側クランパ17との間のワークWの加工原点位置Oが、クランプ本体11の回動軸心C上に位置するように配置されている。加工原点位置Oは、クランプ装置1を平面視で示す
図4において、クランパユニット13の中心に一致している。
【0019】
図2に示すように、下側クランパ15は、下方からねじ込まれたねじ体である本体連結ボルト21によってクランプ本体11に着脱自在に連結されている。具体的には、下側クランパ15のワーク開口15aの周縁部に、複数(この例では4つ)の本体連結ねじ挿通孔23が等間隔に設けられている。また、クランプ本体11の下面の、各本体連結ねじ挿通孔23に対応する部分に、本体連結ねじ孔25が設けられている。下側クランパ15の本体連結ねじ挿通孔23は、雌ねじ部を有しない単なる貫通孔として形成されており、本体連結ボルト21を、下側クランパ15の本体連結ねじ挿通孔23を挿通させた後に、クランプ本体11の本体連結ねじ孔25に螺合することにより、下側クランパ15がクランプ本体11に着脱自在に連結されている。
【0020】
このように、クランプ本体11とクランパユニット13とを連結するためのねじ孔である本体連結ねじ孔25をクランプ本体11の下面に設けているので、本体連結ねじ孔25への金属加工粉の侵入が抑制される。なお、本体連結ねじ孔25の数は、クランプ本体11にクランパユニット13を確実に固定することが可能な数、すなわち2個以上であれば、図示の例に限定されない。
【0021】
図3に示すように、上側クランパ17および下側クランパ15には、両クランパ17,15を貫通する複数(この例では4つ)のクランパ連結ねじ挿通孔27が設けられている。クランパ連結ねじ挿通孔27は、上側クランパ17に形成された上側ねじ挿通孔29および下側クランパ15に形成された下側ねじ挿通孔31からなる。上側ねじ挿通孔29および下側ねじ挿通孔31は、それぞれ、
図2,4に示すように、両クランパ17,15のワーク開口17a,15aの周縁部に等間隔に設けられている。クランパ連結ねじ挿通孔27に上側から挿通したねじ体であるクランパ連結ボルト33を介して、上側クランパ17が下側クランパ15に着脱自在に連結されている。なお、クランパ連結ねじ挿通孔27の数は、両クランパ15,17を確実に相互に固定することが可能な数、すなわち2個以上であれば、図示の例に限定されない。
【0022】
より具体的には、
図3に示すように、下側クランパ15の、クランパ連結ねじ挿通孔27の下端部に、クランパ連結ナット35を回転不能に収容するナット凹所37が設けられている。ねじ挿通孔に上側から挿通したクランパ連結ボルト33をクランパ連結ナット35に螺合させることにより、上側クランパ17が下側クランパ15に連結されている。このように、下側クランパ15に直接雌ねじ部を設けるのではなく、ナット凹所37に収容したナットを用いた連結構造としているので、ねじ体およびナットを交換することによって、ねじ溝が金属加工粉の侵入によって摩耗することを容易に回避できる。
【0023】
また、本実施形態においては、
図5に示すように、クランパ連結ナット35は六角ナットであり、ナット凹所37は平面視で矩形に形成されている。このように構成することにより、一般に入手が容易な六角ナットを使用し、かつナット凹所37を容易に加工可能な形状としながら、確実にナット回転を防止できる。しかも、クランパ連結ナット35とナット凹所37の間に隙間ができるので、クランパ連結ナット35の交換が容易になり、かつ、ナット凹所37に溜まった金属加工粉を除去する作業が容易となる。もっとも、クランパ連結ナット35の種類およびナット凹所37の形状は、図示の例に限定されず、クランパ連結ナット35を回転不能に収容可能であればどのような組合せであってもよい。
【0024】
以上説明した本実施形態に係るクランプ装置1によれば、
図3に示すように、ワークWを直接挟持するクランパユニット13がクランプ本体11に着脱自在に連結されているから、厚みの異なるワーク、例えば破線で示す厚みの小さいワークW1に対しても、それらに応じた異なる寸法のクランパユニット13を用意し、これらを交換してクランプ本体11に取り付けることができる。これにより、厚みの異なるワークW,W1を加工する際にも、加工原点位置Oを変更することなくワークW,W1をワーククランプ装置1に固定することが可能となる。したがって、数値制御加工において複雑なパラメータ変更や加工パスの計算を回避しながら、厚みの異なるワークW,W1の加工精度を維持することが可能となる。
【0025】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1 ワーククランプ装置
5 回転テーブル
11 クランプ本体
13 クランパユニット
15 下側クランパ(第1クランパ)
17 上側クランパ(第2クランパ)
C 回動軸心
M 切削加工設備
O 加工原点