【0011】
本発明で用いられる(a)グルテン(以下、「(a)成分」ともいう)は、全体量の約8割が分子量約20万〜数百万のグルテニンと、分子量約3万〜8万のグリアジンとからなるタンパク質であって、下記圧縮試験方法による破断応力(以下、単に「破断応力」ともいう。)が50g以上のものである。
<圧縮試験方法>
1)グルテン30gに非加熱の水45gを加えて混練し、混練物を得る。
2)1)の混練物を脱気してソーセージ用ケーシング(口径25mm)に充填し、90℃の水で30分間加熱する。
3)加熱した混練物を室温まで冷却し、5℃で12時間保存する。
4)保存した混練物をケーシングから取り出し、円柱状(直径25mm;厚さ30mm)に成形する。
5)円柱状に成形した混練物を、該混練物の底面が試料台の上面に接するように該試料台に置き、レオメーター(粘弾性測定装置:RT−2002J;レオテック社製)を用いて、該混練物の上面方向から毎秒1mmの速度でプランジャー(先端に直径5mmの球体が付いた直径2mmの円柱状:FUDOHレオメーター専用アダプター粘性用5φ;レオテック社製)が該混練物を圧縮することにより測定される破断応力を記録する。
【実施例】
【0030】
[グルテンの破断応力の測定]
焼き菓子用改良剤の原材料として用いられる後述のグルテンの破断応力は、下記1)〜5)の工程に従い測定した。
1)グルテン30gに非加熱の水45gを加えて表面に艶が出るまで混練し、混練物を得る。
2)1)の混練物を卓上真空包装機(型式:VMS53;吉川工業社製)にて1分間脱気してソーセージ用ケーシング(口径25mm)に充填し、90℃の水で30分間加熱する。
3)加熱した混練物を室温まで冷却し、5℃で12時間保存する。
4)保存した混練物をケーシングから取り出し包丁で30mm幅に輪切りにし、円柱状(直径25mm;厚さ30mm)に成形する。
5)円柱状に成形した混練物を、該混練物の底面が試料台の上面に接するように該試料台に置き、レオメーター(粘弾性測定装置:RT−2002J;レオテック社製)を用いて、該混練物の上面方向から毎秒1mmの速度でプランジャー(先端に直径5mmの球体が付いた直径2mmの円柱状:FUDOHレオメーター専用アダプター粘性用5φ;レオテック社製)が該混練物を圧縮することにより測定される破断応力を記録する。
【0031】
[焼き菓子用改良剤の原材料]
(1)グルテン(全て粉末状)
1)エマソフトEX−100(商品名;破断応力85.5g;理研ビタミン社製)
2)A−グルRS(商品名;破断応力62.9g;グリコ栄養食品社製)
3)A−グルWP(商品名;破断応力58.7g;グリコ栄養食品社製)
4)エマソフトA−2000(商品名;破断応力43.3g;理研ビタミン社製)
5)A−グルK(商品名;破断応力40.6g;グリコ栄養食品社製)
6)エマソフトEX−400(商品名;破断応力39.6g;理研ビタミン社製)
【0032】
(2)乳化剤
1)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW−90VP;粉末状;理研ビタミン社製)
2)グリセリンステアリン酸エステル(商品名:ポエムV−100;粉末状;モノグリセライド含有量約95%以上;理研ビタミン社製)
3)グリセリンステアリン酸エステル(商品名:ポエムV−200;粉末状;モノグリセライド含有量約50%;理研ビタミン社製)
4)グリセリンオレイン酸エステル(商品名:エマルジーOL−100H;粉末でない固体状;モノグリセライド含有量約95%以上;理研ビタミン社製)
5)ジグリセリンステアリン酸エステル(商品名:ポエムDS−100A;粉末でない固体状;モノエステル体含量:約80質量%;理研ビタミン社製)
6)デカグリセリンステアリン酸エステル(商品名:ポエムJ−0081HV;ペースト状;理研ビタミン社製)
7)ショ糖脂肪酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルS−1170;粉末状;三菱化学フーズ社製)
8)グリセリンクエン酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムK−30P;粉末状;理研ビタミン社製)
9)グリセリンコハク酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムB−30;粉末状;理研ビタミン社製)
(3)その他
1)油脂加工澱粉(商品名:日食ねりこみ澱粉YF;日本食品化工社製)
【0033】
[原材料の配合]
上記原材料を用いて作製した焼き菓子用改良剤1〜17の配合組成を表1に示した。この内、表1の焼き菓子用改良剤1〜4は本発明に係る実施例であり、表2の焼き菓子用改良剤5〜9及び表3の焼き菓子用改良剤10〜17は、それらに対する比較例である。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
[焼き菓子用改良剤の調製方法]
表1〜3に示した原材料の配合に基づき、焼き菓子用改良剤1〜17各50gを調製した。この内、焼き菓子用改良剤1〜7、10、11及び15〜17は、全ての原材料が粉末状であるため、これら原材料を均一に混合することにより、粉末状の焼き菓子用改良剤各50gを調製した。また、焼き菓子用改良剤8及び9は、粉末状の原材料が1種類のみであるため、当該原材料そのものを焼き菓子用改良剤とした。一方、粉末状の原材料(グルテン)と粉末状でない原材料(固体状又はペースト状の乳化剤)からなる焼き菓子用改良剤12〜14は、下記方法により調製した。
【0038】
即ち、先ず、粉砕機(型式:SM−1C;アズワン社製)の試料ケースを80℃の温水を循環させて加温した。該試料ケースに粉末状の原材料を投入してから粉末状でない原材料(固体状又はペースト状の乳化剤)を投入した。次に、該粉砕機の回転速度の目盛を「7」に設定し、該粉砕機にて原材料を5分間混合し、粉末状の焼き菓子用改良剤各50gを得た。
【0039】
[試験例]
[ビスケットの製造及び評価]
(1)原材料
1)薄力粉(製品名:バイオレット;日清製粉社製)
2)ショートニング(製品名:クスコロワイヤル;ミヨシ油脂社製)
3)起泡性乳化油脂(製品名:パティグラース−150;理研ビタミン社製)
4)上白糖(製品名:精製上白糖ST;大日本明治製糖社製)
5)食塩(製品名:精製塩微粒;日本食塩製造社製)
6)水
7)焼き菓子用改良剤1〜17
【0040】
(2)原材料の配合
上記原材料を用いて作製したビスケット1〜17の配合組成を表4に示した。また、対照として、焼き菓子用改良剤を添加せずにビスケット18を製造した。尚、ビスケット1〜18の製造に使用した小麦粉(薄力粉)の全量は150gとした。
【0041】
【表4】
【0042】
(3)ビスケットの製造方法
表4に示した原材料の配合割合に基づいて、原材料をホバートミキサー(型式:N50;ホバート社製)のボウルに入れ、低速で1分間、高速で3分間ミキシングし、生地を得た。得られた生地を約5℃の冷蔵庫(型式:503D;日立冷熱社製)で1時間静置した。静置後、生地を170℃に温めたホットプレートに流し、該生地の厚さが均一に3mmになるように整え、170℃で6分間焼成した。焼成後、得られたビスケットの粗熱をとり、厚さ1mmのビスケット1〜18を得た。
【0043】
(4)硬さの評価試験
ビスケット1〜18の硬さの評価試験を下記方法により実施した。
上記により得られた厚さ1mmのビスケットを1辺20mmの正方形に切り出し、該ビスケットをプランジャー(先端が尖った厚さ3.0mmのブレード状:BLADE SET HDP/BS;Stable Micro Systems社製)を備えたテクスチャーアナライザー(型式:TA.XTplus;Stable Micro Systems社製)の測定台の該プランジャーの真下中央位置に置き、該ビスケットの上面方向から該プランジャーが毎秒4mmの速度で該ビスケットを圧縮することにより測定される破断応力を測定した。上記測定台には、幅3.3mm、深さ5.0mm以上の溝が設けられており、プランジャーを降下すると、該プランジャーの一部が該溝に収納されるようになっている。
上記方法によりビスケット1〜18について破断応力(g)を測定し、実施例及び比較例のビスケット1〜17の破断応力について対照のビスケット18の破断応力を「1.00」としたときの相対値を求めた。また、この相対値を、下記基準に従って記号化した。結果を表5に示す。
○:良好 相対値が1.2以上
×:悪い 相対値が1.2未満
【0044】
【表5】
【0045】
表5の結果から明らかなように、実施例の焼き菓子用改良剤1〜4を添加したビスケット1〜4の破断応力は、対照のビスケット18の破断応力の1.2倍以上であり、十分な硬さが付与されていた。これに対し、比較例の焼き菓子用改良剤5〜17を添加したビスケット5〜17は、いずれも硬さが不十分であり実施例のものに比べて劣っていた。