特許第6732612号(P6732612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6732612
(24)【登録日】2020年7月10日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】焼き菓子用改良剤
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/26 20060101AFI20200716BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20200716BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   A21D2/26
   A21D13/80
   A21D2/16
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-173237(P2016-173237)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-38294(P2018-38294A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宇野 慎也
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0246318(US,A1)
【文献】 特開昭61−162127(JP,A)
【文献】 特開昭60−078549(JP,A)
【文献】 特開2016−067293(JP,A)
【文献】 特開平07−079687(JP,A)
【文献】 特表2009−534037(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/014234(WO,A1)
【文献】 特開2015−080442(JP,A)
【文献】 特開2015−023845(JP,A)
【文献】 倉賀野妙子,小麦粉製品の物性形成に関する総合的究研究,日本調理科学会誌,2005年,38巻(2号),107-113頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記圧縮試験方法による破断応力が50g以上のグルテン及び(b)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを有効成分とすることを特徴とする焼き菓子用改良剤。
<圧縮試験方法>
1)グルテン30gに非加熱の水45gを加えて混練し、混練物を得る。
2)1)の混練物を脱気してソーセージ用ケーシング(口径25mm)に充填し、90℃の水で30分間加熱する。
3)加熱した混練物を室温まで冷却し、5℃で12時間保存する。
4)保存した混練物をケーシングから取り出し、円柱状(直径25mm;厚さ30mm)に成形する。
5)円柱状に成形した混練物を、該混練物の底面が試料台の上面に接するように該試料台に置き、レオメーター(粘弾性測定装置:RT−2002J;レオテック社製)を用いて、該混練物の上面方向から毎秒1mmの速度でプランジャー(先端に直径5mmの球体が付いた直径2mmの円柱状:FUDOHレオメーター専用アダプター粘性用5φ;レオテック社製)が該混練物を圧縮することにより測定される破断応力を記録する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き菓子用改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
クッキー、ビスケット等の焼き菓子は、消費者にとって風味だけでなく食感が重要な要素である。焼き菓子の食感としては、例えば、ソフトでしっとりした食感、口どけが良くサクサクした食感等、食べやすさを重視したものがある一方、硬く歯ごたえのある食感が好まれる向きもある。そこで、焼き菓子に硬さを付与するために、様々な方法が検討されている。
【0003】
例えば、βデンプン、小麦粉、デキストリン、水不溶性食物繊維、油脂、糖類及び風味素材を含む焼き菓子であって、βデンプンを30〜55質量%含み、質量でβデンプン1に対し小麦粉を0.1〜0.7含む、焼き菓子(特許文献1)、ベースと風味原料を含む焼き菓子であって、前記ベースは、65〜97.5重量%のベータ澱粉(a)、1〜20重量%のアルファ澱粉(b)を含み、かつ、(a)/(b)重量比が4〜40である、焼き菓子(特許文献2)、小麦粉を含む焼き菓子の製造方法であって、該小麦粉に加水、加熱し糊化した生地を調製する工程と、卵白を添加する工程と、成形し焼成する工程と、水分0.5〜5%に乾燥する工程からなることを特徴とする焼き菓子の製造方法(特許文献3)、強力粉を35重量%以上含む生地を棒状に成形する工程、前記生地を前記成形工程の前又は後に減圧下で脱気する工程、得られた脱気成形生地を焼成する工程を有することを特徴とする棒状焼き菓子の製造方法(特許文献4)、グルテン形成能を有さない未糊化粉及び冷水糊化粉を含む生地を成型及び焼成して得られる、焼き菓子(特許文献5)等が検討されている。
【0004】
しかしながら、上記の方法は、焼き菓子の原料の種類・配合や製法等に制限があるため、これら方法を適用できるケースは限られている。
【0005】
このような状況から、焼き菓子の原料に配合することにより、焼き菓子に硬さを付与できる焼き菓子用改良剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−093112号公報
【特許文献2】特開2015−211656号公報
【特許文献3】特開2012−182996号公報
【特許文献4】特開2010−142177号公報
【特許文献5】特開2003−284501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、焼き菓子の原料に配合することにより、焼き菓子に硬さを付与できる焼き菓子用改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、特定の物性を有するグルテンと特定の乳化剤とを組合せた焼き菓子用改良剤により、上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(a)下記圧縮試験方法による破断応力が50g以上のグルテン及び(b)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを有効成分とすることを特徴とする焼き菓子用改良剤、から成っている。
<圧縮試験方法>
1)グルテン30gに非加熱の水45gを加えて混練し、混練物を得る。
2)1)の混練物を脱気してソーセージ用ケーシング(口径25mm)に充填し、90℃の水で30分間加熱する。
3)加熱した混練物を室温まで冷却し、5℃で12時間保存する。
4)保存した混練物をケーシングから取り出し、円柱状(直径25mm;厚さ30mm)に成形する。
5)円柱状に成形した混練物を、該混練物の底面が試料台の上面に接するように該試料台に置き、レオメーター(粘弾性測定装置:RT−2002J;レオテック社製)を用いて、該混練物の上面方向から毎秒1mmの速度でプランジャー(先端に直径5mmの球体が付いた直径2mmの円柱状:FUDOHレオメーター専用アダプター粘性用5φ;レオテック社製)が該混練物を圧縮することにより測定される破断応力を記録する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の焼き菓子用改良剤を焼き菓子の原料に配合することにより、適度な硬さが付与された焼き菓子を製造することができる。
本発明の焼き菓子用改良剤は、焼き菓子の原料に配合するだけで焼き菓子に硬さを付与できるため使用方法が簡便である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いられる(a)グルテン(以下、「(a)成分」ともいう)は、全体量の約8割が分子量約20万〜数百万のグルテニンと、分子量約3万〜8万のグリアジンとからなるタンパク質であって、下記圧縮試験方法による破断応力(以下、単に「破断応力」ともいう。)が50g以上のものである。
<圧縮試験方法>
1)グルテン30gに非加熱の水45gを加えて混練し、混練物を得る。
2)1)の混練物を脱気してソーセージ用ケーシング(口径25mm)に充填し、90℃の水で30分間加熱する。
3)加熱した混練物を室温まで冷却し、5℃で12時間保存する。
4)保存した混練物をケーシングから取り出し、円柱状(直径25mm;厚さ30mm)に成形する。
5)円柱状に成形した混練物を、該混練物の底面が試料台の上面に接するように該試料台に置き、レオメーター(粘弾性測定装置:RT−2002J;レオテック社製)を用いて、該混練物の上面方向から毎秒1mmの速度でプランジャー(先端に直径5mmの球体が付いた直径2mmの円柱状:FUDOHレオメーター専用アダプター粘性用5φ;レオテック社製)が該混練物を圧縮することにより測定される破断応力を記録する。
【0012】
本発明に用いるグルテンは、上記圧縮試験方法による破断応力が50g以上のものであればその由来、形態等に特に制限はないが、例えば、グルテンの由来に関しては、小麦グルテン、コーングルテンが挙げられ、小麦グルテンが好ましい。また、グルテンの形態としては、バイタルグルテンであることが好ましく、バイタルグルテンとしては、例えばフラッシュドライグルテン、凍結乾燥グルテン、真空乾燥グルテン及びウェットグルテン等が挙げられる。
【0013】
尚、グルテンとしてウェットグルテンを用いる場合、上記の圧縮試験は、ウェットグルテンを乾燥したものを用いるか、ウェットグルテンの水含有量に応じて、上記1)の工程で加えられる非加熱の水の量を45g未満に調整する。
【0014】
上記圧縮試験方法における混練方法としては、例えば、手で混練する方法や練製品の製造に使用される通常の混練機を使用する方法等が挙げられる。手で混練する場合、混練物の表面が滑らかになり、かつ、混練物の粘弾性が一定になるまで(例えば、みみたぶ状の硬さになるまで)、空気を抱き込まないように両手で混練することが好ましい。
【0015】
上記圧縮試験方法における脱気方法に特に制限はないが、例えば、真空ポンプ等を用いて混練物を減圧下に吸引処理する方法等が挙げられる。吸引処理の程度としては、常圧(760mmHg)よりも200〜750mmHg減圧して(即ち、10〜560mmHgの圧力下に)、30秒〜10分間吸引処理を行うことが好ましい。
【0016】
本発明に用いられるグルテンとしては、例えば、エマソフトEX−100(商品名;破断応力85.5g;理研ビタミン社製)、スーパーグル85H(商品名;破断応力82.8g;日本コロイド社製)、A−グルRS(商品名;破断応力62.9g;グリコ栄養食品社製)、A−グルWP(商品名;破断応力58.7g;グリコ栄養食品社製)、エマソフトM−6000(商品名;破断応力57.3g;理研ビタミン社製)、A−グルG(商品名;破断応力52.7g;グリコ栄養食品社製)、エマソフトM−1000(商品名;破断応力51.5g;理研ビタミン社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0017】
本発明で用いられる(b)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(以下、「(b)成分」ともいう)は、通常グリセリンモノ脂肪酸エステル(別称:モノグリセライド)とジアセチル酒石酸若しくはジアセチル酒石酸の酸無水物との反応、又はグリセリンとジアセチル酒石酸と脂肪酸との反応により得ることができる。
【0018】
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの製法の概略は以下の通りである。即ち、グリセリンモノ脂肪酸エステルを溶融し、これにジアセチル酒石酸の酸無水物を加え、温度120℃前後で約90分間反応する。グリセリンモノ脂肪酸エステルとジアセチル酒石酸の酸無水物との比率はモル比で1/1〜1/2が好ましい。さらに、反応中は生成物の着色、臭気を防止するために、反応器内を不活性ガスで置換する方が好ましい。得られたグリセリンモノ脂肪酸エステルとジアセチル酒石酸の酸無水物との反応物は、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの他に、ジアセチル酒石酸、未反応のグリセリンモノ脂肪酸エステル、その他を含む混合物である。
【0019】
上記グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸等の群から選ばれる1種あるいは2種以上の混合物が挙げられ、好ましくはステアリン酸を約50質量%以上含有する脂肪酸又は脂肪酸混合物である。
【0020】
本発明に用いられるグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムW−90VP(商品名;構成脂肪酸:ステアリン酸の含有量が50質量%;理研ビタミン社製)が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0021】
本発明の焼き菓子用改良剤は、上記(a)成分及び(b)成分を有効成分とする。該改良剤の使用方法としては、焼き菓子の製造の際に、(a)成分及び(b)成分を直接添加して用いても良く、又はこれら成分を自体公知の方法により予め混合し製剤化したもの(好ましくは粉末状に調製された製剤)を添加して用いても良い。本発明の焼き菓子用改良剤100質量%中の(a)成分及び(b)成分の含有量は、(a)成分が通常70〜95質量%、好ましくは80〜90質量%、(b)成分が通常5〜30質量%、好ましくは10〜20質量%となるように調整することができる。
【0022】
本発明の焼き菓子用改良剤中の(a)成分及び(b)成分の含有量の比率に特に制限はないが、例えば、(a)成分:(b)成分が通常70:30〜95:5(質量比)、好ましくは80:20〜90:10(質量比)とすることができる。
【0023】
また、本発明の焼き菓子用改良剤は、上記(a)成分及び(b)成分の他、澱粉類を含有することができる。澱粉類としては、特に制限はなく、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、サゴ澱粉又はこれらの加工澱粉が挙げられる。加工澱粉としては、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、アルファ化澱粉、酸処理澱粉、酸化澱粉、架橋澱粉、油脂加工澱粉等が挙げられる。上記澱粉類は、1種類で用いても良いし、2種類以上を任意に組み合わせて用いても良いが、中でも、本発明の効果が十分に発揮される観点から、油脂加工澱粉が好ましく用いられる。
【0024】
本発明の焼き菓子用改良剤の使用対象である焼き菓子の種類に特に制限はなく、例えば、ビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツエル、パイ(パフ)、ウエファース等が挙げられる。
【0025】
本発明に係る焼き菓子の原材料としては、焼き菓子の製造に通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、穀粉類を主体とする原料粉、砂糖等の糖類、ショートニング、マーガリン、バター等の油脂、食塩、及び水が基本の原料として含まれ、必要に応じて牛乳、濃縮乳、生クリーム、脱脂粉乳、練乳、チーズ等の乳製品、果実及び果実加工品、ココアやチョコレート類、ナッツ類、洋酒類、乳化剤、膨張剤、液卵、その他呈味原料、食品添加物等を用いることができる。
【0026】
ここで、穀粉類を主体とする原料粉とは、主原料である穀粉類に必要に応じて澱粉類を加えたものをいう。穀粉類としては、焼き菓子の製造に通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えば小麦粉、そば粉、大麦粉等が挙げられる。澱粉類としては、焼き菓子の製造に通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、サゴ澱粉又はこれらの加工澱粉が挙げられる。加工澱粉としては、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、アルファ化澱粉、酸処理澱粉、酸化澱粉、架橋澱粉、油脂加工澱粉等が挙げられる。
【0027】
本発明に係る焼き菓子の製造方法に特に制限はなく、慣用の装置を用いて、常法により製造することができる。例えば、上記原材料に本発明の焼き菓子用改良剤と水を加え、ミキサーで混合して生地を調製した後、成型(ロール、ワイヤーカット、ルートプレス、ロータリーモルダー、デポジッター、ステンシル等)し、その後焼成して製造することができる。
【0028】
焼き菓子に対する本発明の焼き菓子用改良剤の添加量に特に制限はないが、例えば、穀粉類を主体とする原料粉100質量部に対し、通常0.4〜13.0質量部、好ましくは0.7〜6.5質量部である。この添加量は、穀粉類を主体とする原料粉100質量部に対する(a)成分の添加量が通常0.3〜10.0質量部、好ましくは0.5〜5.0質量部、(b)成分の添加量が通常0.1〜3.0質量部、好ましくは0.2〜1.5質量部となるように調整するのが好ましい。
【0029】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
[グルテンの破断応力の測定]
焼き菓子用改良剤の原材料として用いられる後述のグルテンの破断応力は、下記1)〜5)の工程に従い測定した。
1)グルテン30gに非加熱の水45gを加えて表面に艶が出るまで混練し、混練物を得る。
2)1)の混練物を卓上真空包装機(型式:VMS53;吉川工業社製)にて1分間脱気してソーセージ用ケーシング(口径25mm)に充填し、90℃の水で30分間加熱する。
3)加熱した混練物を室温まで冷却し、5℃で12時間保存する。
4)保存した混練物をケーシングから取り出し包丁で30mm幅に輪切りにし、円柱状(直径25mm;厚さ30mm)に成形する。
5)円柱状に成形した混練物を、該混練物の底面が試料台の上面に接するように該試料台に置き、レオメーター(粘弾性測定装置:RT−2002J;レオテック社製)を用いて、該混練物の上面方向から毎秒1mmの速度でプランジャー(先端に直径5mmの球体が付いた直径2mmの円柱状:FUDOHレオメーター専用アダプター粘性用5φ;レオテック社製)が該混練物を圧縮することにより測定される破断応力を記録する。
【0031】
[焼き菓子用改良剤の原材料]
(1)グルテン(全て粉末状)
1)エマソフトEX−100(商品名;破断応力85.5g;理研ビタミン社製)
2)A−グルRS(商品名;破断応力62.9g;グリコ栄養食品社製)
3)A−グルWP(商品名;破断応力58.7g;グリコ栄養食品社製)
4)エマソフトA−2000(商品名;破断応力43.3g;理研ビタミン社製)
5)A−グルK(商品名;破断応力40.6g;グリコ栄養食品社製)
6)エマソフトEX−400(商品名;破断応力39.6g;理研ビタミン社製)
【0032】
(2)乳化剤
1)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW−90VP;粉末状;理研ビタミン社製)
2)グリセリンステアリン酸エステル(商品名:ポエムV−100;粉末状;モノグリセライド含有量約95%以上;理研ビタミン社製)
3)グリセリンステアリン酸エステル(商品名:ポエムV−200;粉末状;モノグリセライド含有量約50%;理研ビタミン社製)
4)グリセリンオレイン酸エステル(商品名:エマルジーOL−100H;粉末でない固体状;モノグリセライド含有量約95%以上;理研ビタミン社製)
5)ジグリセリンステアリン酸エステル(商品名:ポエムDS−100A;粉末でない固体状;モノエステル体含量:約80質量%;理研ビタミン社製)
6)デカグリセリンステアリン酸エステル(商品名:ポエムJ−0081HV;ペースト状;理研ビタミン社製)
7)ショ糖脂肪酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルS−1170;粉末状;三菱化学フーズ社製)
8)グリセリンクエン酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムK−30P;粉末状;理研ビタミン社製)
9)グリセリンコハク酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムB−30;粉末状;理研ビタミン社製)
(3)その他
1)油脂加工澱粉(商品名:日食ねりこみ澱粉YF;日本食品化工社製)
【0033】
[原材料の配合]
上記原材料を用いて作製した焼き菓子用改良剤1〜17の配合組成を表1に示した。この内、表1の焼き菓子用改良剤1〜4は本発明に係る実施例であり、表2の焼き菓子用改良剤5〜9及び表3の焼き菓子用改良剤10〜17は、それらに対する比較例である。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
[焼き菓子用改良剤の調製方法]
表1〜3に示した原材料の配合に基づき、焼き菓子用改良剤1〜17各50gを調製した。この内、焼き菓子用改良剤1〜7、10、11及び15〜17は、全ての原材料が粉末状であるため、これら原材料を均一に混合することにより、粉末状の焼き菓子用改良剤各50gを調製した。また、焼き菓子用改良剤8及び9は、粉末状の原材料が1種類のみであるため、当該原材料そのものを焼き菓子用改良剤とした。一方、粉末状の原材料(グルテン)と粉末状でない原材料(固体状又はペースト状の乳化剤)からなる焼き菓子用改良剤12〜14は、下記方法により調製した。
【0038】
即ち、先ず、粉砕機(型式:SM−1C;アズワン社製)の試料ケースを80℃の温水を循環させて加温した。該試料ケースに粉末状の原材料を投入してから粉末状でない原材料(固体状又はペースト状の乳化剤)を投入した。次に、該粉砕機の回転速度の目盛を「7」に設定し、該粉砕機にて原材料を5分間混合し、粉末状の焼き菓子用改良剤各50gを得た。
【0039】
[試験例]
[ビスケットの製造及び評価]
(1)原材料
1)薄力粉(製品名:バイオレット;日清製粉社製)
2)ショートニング(製品名:クスコロワイヤル;ミヨシ油脂社製)
3)起泡性乳化油脂(製品名:パティグラース−150;理研ビタミン社製)
4)上白糖(製品名:精製上白糖ST;大日本明治製糖社製)
5)食塩(製品名:精製塩微粒;日本食塩製造社製)
6)水
7)焼き菓子用改良剤1〜17
【0040】
(2)原材料の配合
上記原材料を用いて作製したビスケット1〜17の配合組成を表4に示した。また、対照として、焼き菓子用改良剤を添加せずにビスケット18を製造した。尚、ビスケット1〜18の製造に使用した小麦粉(薄力粉)の全量は150gとした。
【0041】
【表4】
【0042】
(3)ビスケットの製造方法
表4に示した原材料の配合割合に基づいて、原材料をホバートミキサー(型式:N50;ホバート社製)のボウルに入れ、低速で1分間、高速で3分間ミキシングし、生地を得た。得られた生地を約5℃の冷蔵庫(型式:503D;日立冷熱社製)で1時間静置した。静置後、生地を170℃に温めたホットプレートに流し、該生地の厚さが均一に3mmになるように整え、170℃で6分間焼成した。焼成後、得られたビスケットの粗熱をとり、厚さ1mmのビスケット1〜18を得た。
【0043】
(4)硬さの評価試験
ビスケット1〜18の硬さの評価試験を下記方法により実施した。
上記により得られた厚さ1mmのビスケットを1辺20mmの正方形に切り出し、該ビスケットをプランジャー(先端が尖った厚さ3.0mmのブレード状:BLADE SET HDP/BS;Stable Micro Systems社製)を備えたテクスチャーアナライザー(型式:TA.XTplus;Stable Micro Systems社製)の測定台の該プランジャーの真下中央位置に置き、該ビスケットの上面方向から該プランジャーが毎秒4mmの速度で該ビスケットを圧縮することにより測定される破断応力を測定した。上記測定台には、幅3.3mm、深さ5.0mm以上の溝が設けられており、プランジャーを降下すると、該プランジャーの一部が該溝に収納されるようになっている。
上記方法によりビスケット1〜18について破断応力(g)を測定し、実施例及び比較例のビスケット1〜17の破断応力について対照のビスケット18の破断応力を「1.00」としたときの相対値を求めた。また、この相対値を、下記基準に従って記号化した。結果を表5に示す。
○:良好 相対値が1.2以上
×:悪い 相対値が1.2未満
【0044】
【表5】
【0045】
表5の結果から明らかなように、実施例の焼き菓子用改良剤1〜4を添加したビスケット1〜4の破断応力は、対照のビスケット18の破断応力の1.2倍以上であり、十分な硬さが付与されていた。これに対し、比較例の焼き菓子用改良剤5〜17を添加したビスケット5〜17は、いずれも硬さが不十分であり実施例のものに比べて劣っていた。