(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の電動モータ装置において、前記周波数成分生成部で生成される前記周波数成分が、二相変換された直交座標系で定められた円形軌跡を描く電圧または電流であり、前記逆位相となる周波数成分が、前記直交座標系において互いに逆方向に回転する前記円形軌跡を描く電圧または電流として生成される電動モータ装置。
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電動モータ装置において、前記制御装置は、前記周波数成分の重畳によらずに前記回転子の角速度を推定する角速度推定機能部を有し、
前記制御装置は、前記角速度推定機能部で推定された角速度の絶対値が設定値より小さいとき、前記角度推定部によりモータ角度を推定し、前記角速度の絶対値が設定値以上のとき、前記周波数成分を重畳せずに、前記励磁機構の電圧と電流との定められた関係からモータ角度を推定する電動モータ装置。
ブレーキロータと、このブレーキロータに接触する摩擦部材と、この摩擦部材を前記ブレーキロータに接触させる摩擦部材操作手段と、固定子および回転子を有し前記摩擦部材操作手段を駆動する電動モータと、前記摩擦部材と前記ブレーキロータの接触により発生するブレーキ力を前記電動モータを制御することにより制御する制御装置と、を備えた電動ブレーキ装置において、
前記固定子は、独立して電力を供給可能な励磁機構を二系統以上有し、
前記制御装置は、前記固定子と前記回転子との相対位置であるモータ角度を推定する角度推定手段を有し、
この角度推定手段は、
前記励磁機構における電圧および電流のいずれか一方または両方に重畳させる互いに逆位相となる周波数成分を生成する周波数成分生成部と、
この周波数成分生成部で生成された前記周波数成分による複数の前記励磁機構の電圧および電流から、前記固定子と前記回転子との相対位置であるモータ角度を推定する角度推定部と、を有する電動ブレーキ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1のような、電動アクチュエータを使用した電動ブレーキ装置において、電動モータには極めて高い冗長性が求められる場合がある。例えば、モータコイルまたはセンサ等に異常が発生した場合においても、動作を継続する必要が生じる場合がある。
例えば、特許文献2のような、モータコイルを多重化した電動モータの場合、コイル断線等の異常に関しては、異常発生後も電動モータは動作を継続することができる。しかし、角度センサ等の異常発生後も動作を継続する必要がある場合、角度センサを複数搭載しなければならず、コストおよびスペースが問題となる。
【0005】
上記の対策として、例えば、角度センサを用いずにモータ角度を推定する、特許文献3に記載の角度センサレス制御が用いられる場合がある。その際、回転子磁束による誘起電圧等に依存した電圧と電流との関係から角度を推定する手法が一般に知られている。しかし、特許文献1のような電動ブレーキ装置において、ペダル操作に追従する、所定のブレーキ力に維持するといった零〜低速の角速度となる動作を行う場合、誘起電圧が極めて小さいことにより角度推定が困難となる場合がある。
【0006】
上記の場合でもモータ角度を推定可能な手法として、電動モータ駆動電圧に所定の周波数の電圧を重畳し、前記所定の周波数における電圧と電流との関係等から、インダクタンスおよび磁気飽和特性の突極性を利用してモータ角度を推定する、例えば、特許文献4,5に記載の手法が用いられる場合がある。
【0007】
しかしながら、例えば、前記の電動ブレーキ装置に用いられるようなモータは、搭載スペースが限られている、高速応答を実現するために慣性モーメントを極力小さくする、等の理由から極力小型に設計される場合が多い。このため、前記の高周波電流に同期して比較的大きな角速度変動が生じ、前記角速度変動による影響が前記高周波電圧と電流との関係に作用して、角度の推定が困難となる場合がある。
【0008】
この発明の目的は、コスト低減を図れ、モータ角度を安定して精度良く推定することができる電動モータ装置および電動ブレーキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の電動モータ装置Dmは、固定子4aおよび回転子4bを有する電動モータ4と、この電動モータ4を制御する制御装置2とを備えた電動モータ装置において、
前記固定子4aは、独立して電力を供給可能な励磁機構を二系統以上有し、
前記制御装置2は、前記固定子4aと前記回転子4bとの相対位置であるモータ角度を推定する角度推定手段22を有し、
この角度推定手段22は、
前記励磁機構における電圧および電流のいずれか一方または両方に重畳させる互いに逆位相となる周波数成分を生成する周波数成分生成部22bと、
この周波数成分生成部22bで生成された前記周波数成分による複数の前記励磁機構の電圧および電流から、前記固定子4aと前記回転子4bとの相対位置であるモータ角度を推定する角度推定部22aと、を有する。
【0010】
この構成によると、電動モータ4の固定子4aは、独立して電力を供給可能な励磁機構を二系統以上有するため、一系統の励磁機構に異常が発生しても異常が発生していない他の励磁機構により電動モータ4の動作を継続することができる。これにより電動モータ4の冗長性を高め得る。角度推定手段22における周波数成分生成部22bは、励磁機構における電圧および電流のいずれか一方または両方に重畳させる互いに逆位相となる周波数成分を生成する。前記互いに逆位相となる周波数成分により発生するトルク変動が概ね相殺され、周波数成分に同期した電動モータ4の角速度の変動が発生し難くなる。これによりモータ角度を推定する精度が向上する。したがって、慣性モーメントの小さい電動モータ4であっても、角度センサを用いずにモータ角度を安定して精度良く推定することができる。これにより電動モータ4を安定して精度良く制御することができる。また、角度センサを複数搭載する必要のある従来技術等よりもコスト低減を図れる。
【0011】
前記周波数成分生成部22bで生成される前記周波数成分が、二相変換された直交座標系で定められた円形軌跡を描く電圧または電流であり、前記逆位相となる周波数成分が、前記直交座標系において互いに逆方向に回転する前記円形軌跡を描く電圧または電流として生成されても良い。
前記定められた円形軌跡は、設計等によって任意に定める円形軌跡であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により適切な円形軌跡を求めて定められる。前記円形軌跡の円形は、真円、楕円のいずれも含む。
【0012】
前記周波数成分生成部22bでは、定数α,β、前記周波数成分と同期する角速度で推移する位相θとすると、
前記逆位相となる周波数成分のうち、
一方の位相の周波数成分が、第1の直交軸成分αcos(θ)および第2の直交軸成分βsin(θ)により生成され、
他方の位相の周波数成分が、第1の直交軸成分αcos(−θ)および第2の直交軸成分βsin(−θ)により生成されても良い。
【0013】
前記制御装置2は、前記周波数成分の重畳によらずに前記回転子の角速度を推定する角速度推定機能部32を有し、
前記制御装置2は、前記角速度推定機能部32で推定された角速度の絶対値が設定値より小さいとき、前記角度推定部22aによりモータ角度を推定し、前記角速度の絶対値が設定値以上のとき、前記周波数成分を重畳せずに、前記励磁機構の電圧と電流との定められた関係からモータ角度を推定しても良い。
前記設定値、前記定められた関係は、それぞれ設計等によって任意に定める設定値、定められた関係であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により適切な設定値、定められた関係を求めて定められる。
【0014】
重畳する周波数成分は、電動モータ4を駆動する駆動周波数に対して比較的高周波とする必要がある。すなわち、高速なモータ角速度を達成する場合において、高周波の周波数成分を生成することが困難となる場合がある。しかしながら、モータ角速度が十分に高ければ、回転子の磁束による誘起電圧が十分に得られるため、高周波の周波数成分を重畳することなくモータ角度が推定できる。
そこで、この構成では、推定された角速度の絶対値が設定値より小さいとき、前記角度推定部によりモータ角度を推定する。前記角速度の絶対値が設定値以上のとき、前記周波数成分を重畳せずに、前記励磁機構の電圧と電流との定められた関係からモータ角度を推定する。したがって、モータ角速度の高低によらずモータ角度を安定して精度良く推定することができる。また演算処理の負荷の軽減を図れる。
【0015】
この発明の電動ブレーキ装置は、ブレーキロータBrと、このブレーキロータBrに接触する摩擦部材9と、この摩擦部材9を前記ブレーキロータBrに接触させる摩擦部材操作手段6と、固定子4aおよび回転子4bを有し前記摩擦部材操作手段6を駆動する電動モータ4と、前記摩擦部材9と前記ブレーキロータBrの接触により発生するブレーキ力を前記電動モータ4を制御することにより制御する制御装置2と、を備えた電動ブレーキ装置において、
前記固定子4aは、独立して電力を供給可能な励磁機構を二系統以上有し、
前記制御装置2は、前記固定子4aと前記回転子4bとの相対位置であるモータ角度を推定する角度推定手段22を有し、
この角度推定手段22は、
前記励磁機構における電圧および電流のいずれか一方または両方に重畳させる互いに逆位相となる周波数成分を生成する周波数成分生成部22bと、
この周波数成分生成部22bで生成された前記周波数成分による複数の前記励磁機構の電圧および電流から、前記固定子4aと前記回転子4bとの相対位置であるモータ角度を推定する角度推定部22aと、を有する。
【0016】
この構成によると、電動モータ4の固定子4aは、独立して電力を供給可能な励磁機構を二系統以上有するため、一系統の励磁機構に異常が発生しても異常が発生していない他の励磁機構により電動モータ4の動作を継続することができる。これにより電動モータ4の冗長性を高め得る。角度推定手段22における周波数成分生成部22bは、励磁機構における電圧および電流のいずれか一方または両方に重畳させる互いに逆位相となる周波数成分を生成する。前記互いに逆位相となる周波数成分により発生するトルク変動が概ね相殺され、周波数成分に同期した電動モータ4の角速度の変動が発生し難くなる。これによりモータ角度を推定する精度が向上する。したがって、電動ブレーキ装置に適用される慣性モーメントの小さい電動モータ4であっても、角度センサを用いずにモータ角度を安定して精度良く推定することができる。これにより電動モータ4を安定して精度良く制御することができる。また、角度センサを複数搭載する必要のある従来技術等よりもコスト低減を図れる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の電動モータ装置は、固定子および回転子を有する電動モータと、この電動モータを制御する制御装置とを備えた電動モータ装置において、前記固定子は、独立して電力を供給可能な励磁機構を二系統以上有し、前記制御装置は、前記固定子と前記回転子との相対位置であるモータ角度を推定する角度推定手段を有し、この角度推定手段は、前記励磁機構における電圧および電流のいずれか一方または両方に重畳させる互いに逆位相となる周波数成分を生成する周波数成分生成部と、この周波数成分生成部で生成された前記周波数成分による複数の前記励磁機構の電圧および電流から、前記固定子と前記回転子との相対位置であるモータ角度を推定する角度推定部とを有する。このため、コスト低減を図れ、モータ角度を安定して精度良く推定することができる。
【0018】
この発明の電動ブレーキ装置は、ブレーキロータと、このブレーキロータに接触する摩擦部材と、この摩擦部材を前記ブレーキロータに接触させる摩擦部材操作手段と、固定子および回転子を有し前記摩擦部材操作手段を駆動する電動モータと、前記摩擦部材と前記ブレーキロータの接触により発生するブレーキ力を前記電動モータを制御することにより制御する制御装置と、を備えた電動ブレーキ装置において、前記固定子は、独立して電力を供給可能な励磁機構を二系統以上有し、前記制御装置は、前記固定子と前記回転子との相対位置であるモータ角度を推定する角度推定手段を有し、この角度推定手段は、前記励磁機構における電圧および電流のいずれか一方または両方に重畳させる互いに逆位相となる周波数成分を生成する周波数成分生成部と、この周波数成分生成部で生成された前記周波数成分による複数の前記励磁機構の電圧および電流から、前記固定子と前記回転子との相対位置であるモータ角度を推定する角度推定部とを有する。このため、コスト低減を図れ、モータ角度を安定して精度良く推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施形態に係る電動ブレーキ装置を
図1ないし
図5と共に説明する。この電動ブレーキ装置は例えば車両に搭載される。
図1に示すように、この電動ブレーキ装置は、電動モータ装置Dmと、ブレーキ操作手段18(
図4)と、電源装置3とを備えている。電動モータ装置Dmは、電動アクチュエータ1と、制御装置2とを有する。先ず、電動アクチュエータ1について説明する。
【0021】
<電動アクチュエータ1について>
電動アクチュエータ1は、電動モータ4と、減速機構5と、摩擦部材操作手段6と、パーキングブレーキ機構Pbと、ブレーキロータBrと、摩擦部材9と、後述する押圧力センサを有する。電動モータ4、減速機構5、および摩擦部材操作手段6は、例えば、図示外のハウジング等に組み込まれる。
【0022】
図4に示すように、電動モータ4は、固定子であるステータ4aと、回転子であるロータ4bとを有し、例えば永久磁石型の三相の同期モータとされる。この例の電動モータ4は、
図2に示すように、磁極が回転軸径方向と平行なラジアルギャップモータが適用される。ステータ4aは、ステータコイル7(7
1,7
2)と、ステータコア8とを有する。ステータコイル7は、この実施形態では、系統1と系統2との二系統の励磁機構として多重化されている。
図4では、系統1,2を区別する符号(1),(2)を、ステータコイル7
1,7
2を示す各ブロック内に付している。
【0023】
スタータコイル7の巻線の形態および多重化の形態は、例えば
図2、
図3にそれぞれ例示するいずれの形態であっても良い。
図2は、ステータコア8の同じスロット8bに複数の系統1,2に接続されたステータコイル7
1,7
2を配置する例を示す。なお、図中では簡単のため内外径方向に二分割されているよう図示するが、例えば各磁極8aの巻かれる部分の内周側と外周側とに別系統に接続されるステータコイル7
1,7
2を配置する構造としても良く、あるいはマグネットワイヤ(図示せず)を二本並べて保持したまま巻線し、別系統のステータコイル7
1,7
2を形成するマグネットワイヤが交互に隣接する構造としても良い。
【0024】
図3は、ステータコア8のスロット8bごとに接続系統1,2を分けてステータコイル7
1,7
2を設ける例を示す。なお、同図の例では、三相交流の相U,V,Wの配置順を円周方向に沿ってU1-V1-W1-U2-V2-W2として配置しているが、U1-U2-V1-V2-W1-W2のように配置しても良い。
【0025】
図1に示すように、減速機構5は、電動モータ4の回転を減速する機構であり、一次歯車12、中間歯車13、および三次歯車11を含む。この例では、減速機構5は、電動モータ4のロータ軸4cに取り付けられた一次歯車12の回転を、中間歯車13により減速して、回転軸10の端部に固定された三次歯車11に伝達可能としている。
【0026】
摩擦部材操作手段6として直動機構が適用される。摩擦部材操作手段6としての直動機構は、減速機構5で出力される回転運動を送りねじ機構により直動部14の直線運動に変換して、ブレーキロータBrに対して摩擦部材9を当接離隔させる機構である。直動部14は、回り止めされ且つ矢符A1にて表記する軸方向に移動自在に支持されている。直動部14のアウトボード側端に摩擦部材9が設けられる。電動モータ4の回転を減速機構5を介して摩擦部材操作手段6に伝達することで、回転運動が直線運動に変換され、それが摩擦部材9の押圧力に変換されることによりブレーキ力を発生させる。なお電動ブレーキ装置を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。
【0027】
パーキングブレーキ装置Pbのアクチュエータ16として、例えば、リニアソレノイドが適用される。アクチュエータ16によりロック部材15を進出させて中間歯車13に形成された係止孔(図示せず)に嵌まり込ませることで係止し、中間歯車13の回転を禁止することで、パーキングロック状態にする。ロック部材15を前記係止孔から離脱させることで中間歯車13の回転を許容し、アンロック状態にする。
【0028】
<制御系および電源系について>
前記電動アクチュエータ1に、制御装置2および電源装置3が接続されている。
図4は、この電動ブレーキ装置の制御系の概念構成を示すブロック図である。例えば、各車輪に対応する制御装置2および電動アクチュエータ1が設けられている。各制御装置2に電源装置3と、各制御装置2の上位制御手段である上位ECU17とが接続されている。上位ECU17として、例えば、車両全般を制御する電気制御ユニットが適用される。上位ECU17は、各制御装置2の統合制御機能を有する。上位ECUは「VCU」とも称される。
【0029】
電源装置3は、電動モータ4および制御装置2に電力を供給する。電動モータ4の各系統のステータコイル7
1,7
2は、電源装置3に、制御装置2のモータドライバ19
1,19
2を介して接続されている。電源装置3は、例えば、バッテリ、DC/DCコンバータ、キャパシタ等を用いることができ、あるいはこれらを併用しても良い。本
図4に示すように、二系統のステータコイル7
1,7
2に一系統から電力を供給しても良く、それぞれ独立した電源系統としても良い。
【0030】
上位ECU17は、ブレーキ操作手段18の操作量に応じて変化するセンサ出力に応じて、各制御装置2にブレーキ力指令値をそれぞれ出力する。ブレーキ操作手段18は、例えば、ブレーキペダル等を用いることができるが、その他ジョイスティックのような操作手段であっても良い。
【0031】
制御装置2は、マイクロコンピュータまたは各種の電子部品を搭載した回路基板等から成り、ブレーキ力制御器20、モータ制御部21、角度推定手段22、電流推定器23
1,23
2、および電圧推定器24
1,24
2等を備えている。ブレーキ力制御器20は、上位ECU17から与えられるブレーキ力指令値を達成するための制御演算を行う。
【0032】
ブレーキ力制御器20は、例えば、ブレーキ力指令値を電動アクチュエータ1の荷重であるアクチュエータ荷重に換算し、このアクチュエータ荷重に対して、押圧力センサ25のセンサ出力である荷重を追従制御する荷重フィードバック制御を行う。これにより高精度なブレーキ力制御を容易に実現し得る。ブレーキ力制御器20は、前記荷重フィードバック制御に加えて、モータ角度フィードバック制御または角速度フィードバック制御等を適宜用いても良い。最終的に、ブレーキ力制御器20は、ブレーキ力制御に必要なモータトルク指令値を求める。
【0033】
押圧力センサ25は、ブレーキ力として摩擦部材9(
図1)とブレーキロータBr(
図1)との押圧力を制御するために用いられ、例えば、変位を検出する磁気センサ、歪センサ、圧力センサ等を適用し得る。
押圧力センサ25を用いずに、電流、モータ角度、アクチュエータ剛性、トルク‐推力特性等からブレーキ力を推定することもできる。その他、ブレーキ力として、前記の荷重に代えて、この電動ブレーキ装置を実装する車輪のホイールトルクまたは前後力を検出するセンサ等を用いることも可能である。
【0034】
モータ制御部21は、電流変換器26、電流制御器27
1,27
2、およびモータドライバ19
1,19
2を有する。
電流変換器26は、ブレーキ力制御器20からのモータトルク指令値を二相変換した直交軸(直交座標系のd軸、q軸)の電流指令値に変換する構成とすることで、簡潔な制御系を構成できて好適である。その他電流変換器26は、例えば、三相交流電流の振幅と位相等を出力する構成であっても良い。
【0035】
電流制御器27
1,27
2は、それぞれ電流変換器26からの電流指令値に対して、電流推定器23
1,23
2から推定されるモータ電流を追従制御する電流フィードバック制御を行うと、高精度なトルク出力が実現できて好適である。もしくは、電動モータ4の電磁気特性等に基づきフィードフォワード制御を行っても良く、あるいはこれら電流フィードバック制御およびフィードフォワード制御を併用しても良い。また、ブレーキ力制御器20における運動方程式と電動モータ4の電磁気特性をまとめて、一つの制御演算ループとすることもできる。
前述の各種演算機能は、例えば、マイクロコンピュータ、FPGA、DSP等の演算器により実装すると、安価で高機能となり好適である。
【0036】
モータドライバ19
1,19
2は、例えば、FFT等のスイッチ素子を用いたハーフブリッジ回路を構成し、所定のデューティ比によりモータ印加電圧を決定するPWM制御を行う構成とすると安価で高性能となり好適である。あるいは、変圧回路等を設け、PAM制御を行う構成とすることもできる。
【0037】
電流推定器23
1,23
2は、送電線の磁界を検出する非接触式を用いても良く、送電線にシャント抵抗等を設けて両端の電圧により検出する方法を用いても良い。その場合、
図4中に示すように、電流推定器23
1,23
2を二次側の送電線に設けても良く、一次側の送電線に設けて二次側の送電線の二次側電流を推定する構成としても良い。また電流推定器23
1,23
2は、モータドライバ19
1,19
2の所定箇所の電圧等により検出する手法としても良い。電流検出は二相の電流と三相総和が零の関係から残り一相を推定しても良く、三相電流を検出しても良い。
【0038】
角度推定手段22は、電動モータ4のステータ4aとロータ4bとの相対位置であるモータ角度を推定する。この角度推定手段22は、角度推定部22aと、周波数成分生成部22bとを有する。周波数成分生成部22bは、角度推定部22aで推定に用いる電圧および電流を発生させるために制御信号に重畳する高周波信号を生成する。
【0039】
角度推定部22aは、高周波の電圧と電流との相関に基づき、モータ角度を推定する。但し、前記高周波とは、電動モータ4を駆動する通常の周波数と比較して高周波であることを意味する。前記電圧は電圧推定器24
1,24
2等から推定し得る。前記電流は電流推定器23
1,23
2から推定し得る。電動モータ4のステータ4aとロータ4bとの位置関係に応じて、前記高周波の電圧と前記電圧に同期する電流との相関が変化する。このため、角度推定部22aは前記相関に基づきモータ角度を推定することができる。
【0040】
周波数成分生成部22bは、電動モータ4の駆動信号に重畳する周波数成分(高周波指令)を生成する。周波数成分生成部22bで生成される前記高周波指令は、例えば、電流変換器26からの電流指令値に重畳する高周波電流指令である。この周波数成分生成部22bで生成される前記高周波指令は、二系統のステータコイル7
1,7
2に対応して高周波指令(1),(2)として出力される。それぞれの高周波指令(1),(2)が互いに逆位相となる例えば180°反転した高周波指令とすると、前記高周波指令により発生するトルク変動が概ね相殺され、高周波指令に同期した角速度の変動が発生し難くなるため、モータ角度の推定精度が向上し好適となる。
【0041】
電圧推定器24
1,24
2は、例えば、電動モータ4の三相線の電圧を適宜分圧し、PWMを平均化する図示外のフィルタ等を設け、アンプ(図示せず)等で測定し得る。あるいは電圧推定器24
1,24
2を設けずに、モータドライバ19
1,19
2に出力するPWMタイマ値等の電圧指令値をそのままモータ角度の推定に用いることもできる。
その他、本
図4の機能ブロックは、あくまで機能を説明するうえで便宜上設けているものであり、実装するうえで必ずしも本図の機能ごとに分割されている必要はなく、必要に応じて複数のブロックを統合あるいは一つのブロックを分割した機能として実装しても良い。
【0042】
図5は、角度推定手段22の構成例を示すブロック図である。
周波数成分生成部22bでは、高周波指令が二相変換された準同期高速直交座標系において生成される。高周波指令は、所定の角周波数ω
hで座標形状を円形に回転する円形軌跡を描く。前記円形は真円、楕円のいずれをも含む。この角度推定手段22では、前記角周波数ω
hが電動モータ4(
図4)を駆動する周波数に対して比較的高周波となるように選定され、例えば、周波数に換算して数百Hz〜数十KHz程度として与えても良い。
【0043】
この周波数成分生成部22bでは、生成される高周波指令(1),(2)が、円形軌跡を描く電流であり、前記準同期高速直交座標系において高周波指令(1),(2)が互いに逆方向に回転する前記円形軌跡を描く電流として生成される。
周波数成分生成部22bでは、定数α,β、時間t、前記所定の角周波数ω
hで推移する位相θ(=ω
ht)とすると、逆位相となる高周波指令(1),(2)のうち、
一方の位相の高周波指令(1)が、第1の直交軸成分i
γh1(=αcos(ω
ht))および第2の直交軸成分i
δh1(=βsin(ω
ht))により生成される。
他方の位相の高周波指令(2)が、第1の直交軸成分i
γh2(=αcos(−ω
ht))および第2の直交軸成分i
δh2(=βsin(−ω
ht))により生成される。
【0044】
前記準同期高速直交座標系において生成された高周波指令(1),(2)は、実際に電動モータ4(
図4)を駆動する準同期直交座標系28
1,28
2にそれぞれ座標変換され、励磁機構における電流である電流指令値に重畳される。角度推定部22aは、前記高周波指令(1),(2)に同期した電圧および電流の相関により、モータ角度を推定する。
【0045】
電流制御器27
1,27
2は、それぞれ電流制御演算部29と、3相/2相変換部30と、2相/3相変換部31とを有する。3相/2相変換部30は、各ステータコイルのU,V,W各相に流れる三相モータ電流を、電流推定器23
1,23
2から得られるステータ電流を用いて、二相電流に変換する。電流制御演算部29は、入力された電流と、3相/2相変換部30で計算された二相電流とから、例えばPI制御による電圧値による制御量を算出する。2相/3相変換部31は、電流制御演算部29から与えられた制御量に基づいて、三相のステータ駆動電圧に変換する。これにより、
図4に示すように、モータドライバ19
1,19
2は、三相のステータ駆動電圧に従ったPWM制御を実行し、電動モータ4を駆動する。
【0046】
<作用効果について>
以上説明した電動モータ装置Dmおよび電動ブレーキ装置によれば、電動モータ4のステータ4aは、独立して電力を供給可能な励磁機構を二系統有するため、一系統の励磁機構に異常が発生しても異常が発生していない他の励磁機構により電動モータ4の動作を継続することができる。これにより電動モータ4の冗長性を高め得る。角度推定手段22における周波数成分生成部22bは、励磁機構における電流に重畳させる互いに逆位相となる高周波指令を生成する。前記互いに逆位相となる高周波指令により発生するトルク変動が概ね相殺され、周波数成分に同期した電動モータ4の角速度の変動が発生し難くなる。これによりモータ角度を推定する精度が向上する。したがって、電動ブレーキ装置に適用される慣性モーメントの小さい電動モータ4であっても、角度センサを用いずにモータ角度を安定して精度良く推定することができる。これにより電動モータ4を安定して精度良く制御することができる。また、角度センサを複数搭載する必要のある従来技術等よりもコスト低減を図れる。
【0047】
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0048】
図5では、前記高周波指令を電流として重畳する例を示したが、
図6に示すように、高周波指令を電圧として重畳しても良い。
図6の例の周波数成分生成部22bでは、生成される高周波指令(1),(2)が、円形軌跡を描く電圧であり、前記準同期高速直交座標系において高周波指令(1),(2)が互いに逆方向に回転する前記円形軌跡を描く電圧として生成される。
【0049】
周波数成分生成部22bでは、定数α,β、時間t、前記所定の角周波数ω
hで推移する位相θ(=ω
ht)とすると、逆位相となる高周波指令(1),(2)のうち、
一方の位相の高周波指令(1)が、第1の直交軸成分v
γh1(=αcos(ω
ht))および第2の直交軸成分v
δh1(=βsin(ω
ht))により生成される。
他方の位相の高周波指令(2)が、第1の直交軸成分v
γh2(=αcos(−ω
ht))および第2の直交軸成分v
δh2(=βsin(−ω
ht))により生成される。
【0050】
図4に示すように、制御装置2は、前記高周波指令の重畳によらずにモータ4bの角速度を推定する角速度推定機能部32を有し、制御装置2は、角速度推定機能部32で推定された角速度の絶対値が設定値より小さいとき、角度推定部22aによりモータ角度を推定し、前記角速度の絶対値が設定値以上のとき、前記高周波指令を重畳せずに、励磁機構の電圧と電流との定められた関係からモータ角度を推定しても良い。
【0051】
重畳する高周波指令は、電動モータ4を駆動する周波数に対して比較的高周波とする必要がある。すなわち、高速なモータ角速度を達成する場合において、高周波の周波数成分である高周波指令を生成することが困難となる場合がある。しかしながら、モータ角速度が十分に高ければ、ロータ4bの磁束による誘起電圧が十分に得られるため、高周波の周波数成分を重畳することなくモータ角度が推定できる。
【0052】
そこで、この構成では、推定された角速度の絶対値が設定値より小さいとき、角度推定部22aによりモータ角度を推定する。前記角速度の絶対値が設定値以上のとき、前記高周波指令を重畳せずに、前記励磁機構の電圧と電流との定められた関係からモータ角度を推定する。したがって、モータ角速度の高低によらずモータ角度を安定して精度良く推定することができる。また演算処理の負荷の軽減を図れる。
【0053】
図7に示すように、電動モータ4は、磁極が回転軸方向と平行なアキシャルギャップモータであっても良い。この例は、ダブルステータ型アキシャルギャップモータにおいて、複数のステータ4a,4aをそれぞれ別の系統に接続する例を示す。ロータ4bは、磁性体から成るロータ本体4baと、永久磁石4bbとを有する。
電動モータは、その他アキシャルギャップモータにおいて、
図2または
図3に示す配線構造によって多重化されていてもよい。また、図示の各実施形態は巻線方式として集中巻の例を示すが、分布巻を用いても良い。
【0054】
電動モータ装置を、車両における電動シフト装置等に適用することも可能である。
直動機構の変換機構部として、遊星ローラ以外にボールねじ等の各種ねじ機構、ボールランプ等の傾斜を利用した機構等を用いることができる。
【0055】
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。