(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)による体重変動監視システムについて
図1から
図8を用いて説明する。
【0010】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による体重変動監視システムについて、
図1から
図6を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態による体重変動監視システム1は、通信機能を有する体重計3と、体重計3とインターネットを介して相互に通信可能に構成された体重変動監視装置5とを備えている。
【0011】
まず、体重計3の構成の一例を詳細に説明する。体重計3は、例えば体重計3の利用者(以降、「体重計利用者」と称する)の自宅で使用される。本発明における体重計利用者としては、慢性心不全等の心疾患の患者が想定されている。
【0012】
体重計3は、体重計利用者の体重データを測定する測定部31を有している。測定部31は、体重計利用者が体重計3上に載ることで体重データの測定を開始し、体重計利用者が体重計3上において立位状態を一定時間維持されたことを検知すると体重計利用者の体重データの測定を完了する。
【0013】
また、体重計3は、体重計3に設けられたメモリ等の記憶領域であるデータ蓄積部33を有している。データ蓄積部33は、測定部31による体重データの測定が完了したことを検知すると該体重データと該体重データの測定日(測定時刻(時分秒)を含んでいてもよい)とを紐づけた体重データ情報を記憶領域に登録する。体重データは、測定部31において測定される度にデータ蓄積部33に蓄積される。体重データ情報は、予め定められた数だけデータ蓄積部33に蓄積可能である。また、データ蓄積部33には、体重計利用者の識別情報が登録されている。体重計利用者の識別情報とは、例えば体重計利用者に一意に紐づけられた識別番号である。
【0014】
また、体重計3は、例えば体重計3の表面(天板)に設けられた液晶ディスプレイ装置であるデータ表示部35を有している。データ表示部35は、測定部31による体重データの測定が完了したことを検知すると、測定された体重データ値を所定期間に亘って表示する。また、例えば体重計3には所定のボタン等で構成された操作部(不図示)が設けられ、この操作部を体重計利用者が操作することで、体重計3は、過去の体重データの履歴をデータ蓄積部33から取得してデータ表示部35に表示することが可能に構成されていてもよい。
【0015】
また、体重計3は、測定部31で測定された体重データを送信する通信部37を有している。通信部37は、インターネットを介して体重変動監視装置5と相互にデータの送受信を行う。通信部37は、測定部31による体重データの測定が完了したことを検知すると体重データ情報(体重データ及び測定日)と体重計利用者の識別情報とを独自のフォーマットに変換し体重変動監視装置5に送信する。
【0016】
本実施形態による体重変動監視システム1には、体重計利用者、特に体重計利用者として想定される心疾患患者に多く含まれる高齢者による使い易さを考慮して外形的な工夫が施されている。例えば、体重計3は一般に販売されている体重計に比べて相対的に大きなサイズに形成されている。これにより、視力や足の筋力が減退した体重計利用者であっても体重計3の利用時に置いて例えば足を踏み外すことが防止でき、容易に体重データを測定することができる。また、体重計3の表面にはすべり止めや適切な測定位置に体重計利用者をガイドするマークが設けられていてもよい。これにより、体重計利用者が体重を測定する際に体重計3上の適切な位置に載ることができるので、体重計3上における体重計利用者の転倒等を防止するとともに容易に体重を測定することができる。
【0017】
また、本実施形態による体重変動監視システム1では、体重計利用者が体重データを測定した際に体重計3の通信部37によって自動的に体重データ情報が体重変動監視装置5に送信される。この際、例えば無線通信端末装置(例えばWi−Fiルータ等)を介して送信する場合もある。しかしながら、本実施形態による体重変動監視システム1では他の端末装置(例えばスマートフォンやタブレットコンピュータ等)を介さずに体重計3から体重変動監視装置5に体重データ情報が送信される。これにより、電子機器等の操作が困難な体重計利用者であっても、体重計3上に載って体重を測定するだけで容易に体重データ情報を体重変動監視装置5に送信することができる。
【0018】
次に、体重変動監視装置5の構成の一例を詳細に説明する。
体重変動監視装置5は、例えばサーバコンピュータである。サーバコンピュータは、例えば体重変動監視装置5の後述する各動作を行うソフトウェアが展開されることで体重変動監視装置5として機能する。また、体重変動監視装置5は外部の端末装置(不図示)とインターネットを介して交信可能に構成されている。体重変動監視装置5と接続される外部の端末装置としては、例えば体重計利用者のかかりつけの医師(以降、「担当医師」と称する場合がある)が勤務する病院等に設置されたコンピュータ(病院側コンピュータ)やファクシミリ装置等の通信機能を有する端末装置(病院側端末装置)が想定される。担当医師は、例えば病院側コンピュータを用いて後述する判定部57による処理結果や体重計利用者の体重データを随時取得、閲覧することができる。また、
図1では不図示であるが、体重変動監視装置5は、後述する判定部57による処理結果や体重計利用者の体重データを随時取得、表示(閲覧)可能な表示部を有していてもよい。
【0019】
体重変動監視装置5は、体重データと該体重データの測定日とを対応付けて記憶する記憶部51を有している。記憶部51は、体重変動監視装置5に設けられたメモリ等の所定の記憶領域である。また、記憶部51において体重データと該体重データの測定日とは体重計利用者の識別情報と紐づけられている。記憶部51には、複数の体重計利用者の体重データが記憶されている。また、記憶部51には、体重計利用者の識別情報と体重計利用者の氏名や年齢、病態等の詳細情報とが紐づけられて記憶されている。
【0020】
また、体重変動監視装置5は、体重計3における通信部37から送信された体重データを受信して該体重データの測定日と対応付けて記憶部51に登録する受信データ登録部53を有している。受信データ登録部53は体重データ情報(体重データと測定日)の登録時において、同じく通信部37から送信された体重計利用者の識別情報と体重データ情報とを紐づけて記憶部51に登録する。また、受信データ登録部53は、体重計3から送信された体重データ情報以外にも、体重変動監視装置5と接続された病院側コンピュータを用いて担当医師等が入力したデータ等を受信し、必要に応じて記憶部51に記憶する。
【0021】
また、体重変動監視装置5は、連続する所定日数の体重変動の範囲に基づいて生成され健康状態の悪化の傾向を示す悪化予測体重範囲を生成する悪化予測体重範囲生成部55を有する。上述のように体重計3の利用者としては心疾患患者が想定されるため、健康状態の悪化には、病態の悪化も含まれる。悪化予測体重範囲の詳細については後述する。
【0022】
また、体重変動監視装置5は、悪化予測体重範囲生成部55によって生成された悪化予測体重範囲を用いて体重計利用者に病態の悪化(健康状態の悪化)の傾向が生じているか否かを判定する判定部57を有する。判定部57の動作の詳細については後述する。
【0023】
また、体重変動監視装置5は、判定部57により体重計利用者に病態(健康状態)の悪化の傾向が生じていると判定された場合に、病院側端末装置(外部の端末装置の一例)に対して通知を行うデータ送信部59(通知部の一例)を有する。データ送信部59は、例えば記憶部51に記憶されている体重計利用者の詳細情報及び該体重計利用者に病態の悪化傾向が生じていること示す情報を少なくとも含む内容の電子メール(悪化傾向通知メール)を事前に設定した宛先へ送信する。また、さらにデータ送信部59は、悪化傾向通知メールと同内容の情報を病院側端末装置であるファクシミリへ送信する。事前に設定する宛先は、複数を設定してもよく、例えば担当医師が挙げられる。これにより、体重計利用者の病態に悪化傾向が生じていることが担当医師に通知される。病態の悪化傾向とは、病態が悪化状態(例えば、通院や往診で対応できずに入院する状態)に移行する前段階の状態を意味する。
【0024】
ここで、
図2を用いて体重計利用者として想定される心疾患患者の体重データの変動の具体例を示す。
図2は、慢性心不全の患者αの約3か月に亘る体重変動を表すグラフである。
図2の縦軸は体重計3で測定された体重の値(単位:kg)を表し、横軸は日数を表している。なお、
図2に示す基準体重線Sw、上限体重線Uw及び下限体重線Dwについては、後述する。
【0025】
図2には、測定22日目から30日目まで、測定40日目から48日目まで、及び56日目から64日目までの各9日間における体重変動が楕円形上の破線枠で囲まれている。
図3に示す3つの期間において破線枠が示す体重の変動傾向(ここでは、増加傾向)が表れた際に、患者αはかかりつけの医師の診察により慢性心不全の病態の悪化傾向が認められた。このことから、本発明の発明者は、過去に病態が悪化したと診断された際の体重変動の傾向に基づいて病態の悪化が予測される体重変動の範囲(悪化予測体重範囲)を生成し、悪化予測体重範囲に基づいて病態に悪化傾向が生じていることを検出し、担当医師に通知を行うシステムを発明するに至った。
【0026】
慢性心不全のような心疾患では、予後管理として体重の管理が重要であることが指摘されている。より具体的には、慢性心不全では心機能の低下に伴って血流量が低下し、尿量の減少がおこる。尿量が減少すると体内に水分が貯まり体重が増加するため、慢性心不全患者における体重増加は病態の悪化を示す傾向の1つである。こういったことからも、慢性心不全患者に特定の体重変動(主に、体重の増加傾向)が検出された場合に、担当医師に通知を行い、担当医師の介入(診察、生活指導等)を促すことは、慢性心不全患者の病態が悪化状態となることの防止に有効である。
【0027】
ここで、
図3を用いて、悪化予測体重範囲生成部55が生成する悪化予測体重範囲について説明する。
図3は、悪化予測体重範囲Prの一例を仮想的な座標軸に適用して模式的に表した図である。
図3に示す座標軸において縦軸は体重(単位:kg)を表し、横軸は日数を表している。悪化予測体重範囲Prを定義する場合、まず体重範囲始点Spと体重範囲終点Epとを定める。体重範囲始点Spは、例えば体重計利用者が過去に体重計利用者の病態が悪化したと診断された日(以上、「範囲始点日」と称する)における体重データの値を示す点である。範囲始点日は、例えば、体重計利用者が病態の悪化により通院又は入院した日である。また、体重範囲終点Epは、範囲始点日から所定期間遡った日(以降、「範囲終点日」と称する)における体重データの値を示す点である。本実施形態による体重変動監視装置5では、悪化予測体重範囲Prは連続する所定日数の体重変動の範囲に基づいて生成される、より具体的には、範囲始点日から範囲終点日までの期間(以降、「悪化予測期間」と称する)に亘る体重変動に基づいて悪化予測体重範囲Prが定義される。本例では、範囲始点日(0日)から9日遡った日(−9日)を範囲終点日としている。したがって、本例では悪化予測期間は10日間である。通常、慢性心不全患者の通院間隔は1カ月程度に設定されることが多い。本実施形態による体重変動監視装置5では、通院の間隔の期間に体重計利用者に生じた病態の悪化傾向を検出するため、悪化予測期間は1カ月よりも短い期間に設定される。
【0028】
体重範囲始点Sp及び体重範囲終点Epは、例えば担当医師が体重変動監視装置5と接続された病院側コンピュータ上で入力した情報であり、受信データ登録部53において受信されて記憶部51に記憶される。悪化予測体重範囲生成部55は、体重範囲始点Sp及び体重範囲終点Epの情報を記憶部51から取得すると、例えば
図3に示すような座標軸を仮想的に生成し、該座標軸上において体重範囲始点Spと体重範囲終点Epとを結んだ直線を悪化予測基準線Slとする。悪化予測基準線Slの傾きは、悪化予測期間における体重変動の傾向を表している。
【0029】
次に、悪化予測体重範囲生成部55は、悪化予測基準線Slを中心線として上下に体重値を一定範囲増減させた範囲を第1評価範囲r1とする。増減させる範囲の初期値としては、例えば10%としてもよい。この範囲は患者ごとに設定することもできる。より具体的には、悪化予測体重範囲生成部55は、範囲始点日において体重範囲始点Spが示す体重データの値(本例では55kg)を10%増大させた体重データの値(本例では、55kg×1.1=60.5kg)を増大点Up1とする。また、体重範囲終点Epが示す体重データの値(本例では50kg)を10%増大させた体重データの値(本例では50kg×1.1=55kg)を増大点Up2とし、仮想座標軸上において増大点Up1と増大点Up2とを結んだ直線を増大線Ul1とする。また、悪化予測体重範囲生成部55は、体重範囲始点Spが示す体重データの値を10%減少させた体重データの値(本例では、55kg×(1−0.1)=49.5kg)を減少点Dp1とし、体重範囲終点Epが示す体重データの値を10%減少させた体重データの値(本例では、50kg×(1−0.1)=45kg)を減少点Dp2とし、仮想座標軸上において減少点Dp1と減少点Dp2とを結んだ直線を減少線Dl1とする。
【0030】
悪化予測体重範囲生成部55は、増大点Up1、増大点Up2、減少Dp1及び減少点Dp2の4点を繋いて形成される平行四辺形形状の範囲を第1評価範囲r1として定義する。第1評価範囲r1は、悪化予測基準線Sl(中心線の一例)と増大線Ul1とで挟まれた領域である上側第1評価範囲r1aと、悪化予測基準線Slと減少線Dl1とで挟まれた領域である下側第1評価範囲r1bとで構成される。このように、第1評価範囲r1は、悪化予測基準線Slを囲む領域である。また、言い換えれば、第1評価範囲r1は、増大点Up1、増大点Up2、減少Dp1及び減少点Dp2の4点を繋いて形成される平行四辺形形状の範囲に含まれる体重データにより形成される。
【0031】
次に、悪化予測体重範囲生成部55は、悪化予測基準線Slを中心線として上下に体重値を一定範囲増減させた領域から第1評価範囲r1を除いた領域を第2評価範囲r2とする。増減させる範囲は、第1評価範囲r1で設定した値よりも大きく設定する。その初期値としては、例えば15%としてもよい。この範囲は患者ごとに設定することもできる。より具体的には、悪化予測体重範囲生成部55は、範囲始点日において体重範囲始点Spが示す体重データの値(本例では55kg)を15%増大させた体重データの値(本例では、55kg×1.15=63.25kg)を増大点Up3とする。また、体重範囲終点Epが示す体重データの値(本例では50kg)を15%増大させた体重データの値(本例では50kg×1.15=57.5kg)を増大点Up4とし、仮想座標軸上において増大点Up3と増大点Up4とを結んだ直線を増大線Ul2とする。また、悪化予測体重範囲生成部55は、体重範囲始点Spが示す体重データの値を15%減少させた体重データの値(本例では、55kg×(1−0.15)=46.75kg)を減少点Dp3とし、体重範囲終点Epが示す体重データの値を10%減少させた体重データの値(本例では、50kg×(1−0.15)=42.5kg)を減少点Dp4とし、仮想座標軸上において減少点Dp3と減少点Dp4とを結んだ直線を減少線Dl2とする。
【0032】
このように、悪化予測体重範囲生成部55は、増大点Up3、増大点Up4、減少点Dp3及び減少点Dp4の4点を繋いて形成される平行四辺形形状の悪化予測体重範囲Prから第1評価範囲r1を除いた領域を第2評価範囲r2として定義する。第2評価範囲r2は、増大線Ul1と増大線Ul2とで挟まれた範囲である上側第2評価範囲r2aと、減少線Dl1と減少線Dl2とで挟まれた範囲である下側第2評価範囲r2bとで構成される。上側第2評価範囲r2aは上側第1評価範囲r1aを体重データの増大方向にさらに5%分広げた範囲であり、下側第2評価範囲r2bは下側第1評価範囲r1bを体重データの減少方向にさらに5%分広げた範囲である。
【0033】
このようにして、悪化予測体重範囲生成部55は、第1評価範囲r1及び第2評価範囲r2で構成された範囲を悪化予測体重範囲Prとして生成する。悪化予測体重範囲Prは、第1評価範囲r1及び第2評価範囲r2を形成する複数の体重データ(悪化予測体重データ)で形成される。悪化予測体重範囲生成部55は悪化予測体重範囲Prを生成すると、悪化予測体重範囲Prを定義する各点(体重範囲始点Sp、体重範囲終点Ep、増大点Up1〜Up4、減少点Dp1〜Dp4)が示す体重データの値を記憶部51に記憶する。
【0034】
さらに、悪化予測体重範囲生成部55は、悪化予測体重範囲Prのうち悪化予測期間における各日に対応する範囲を形成する悪化予測体重データを示す情報を記憶部51に記憶する。具体的には、悪化予測基準線Sl上の点(各日基準点)、増大線Ul1上の点(各日第1増大点)、増大線Ul2上の点(各日第2増大点)、減少線Dl1上の点(各日第1減少点)、減少線Dl2上の点(各日第2減少点)を記憶する。各日基準点から各日第1減少点までの範囲に含まれる悪化予測体重データが悪化予測期間の各日における上側第1評価範囲r1aを形成し、各日基準点から各日第1減少点までの範囲に含まれる悪化予測体重データが悪化予測期間の各日における下側第1評価範囲r1bを形成し、各日第1増大点から各日第2増大点までの範囲に含まれる悪化予測体重データが悪化予測期間の各日における上側第2評価範囲r2aを形成し、各日第1減少点から各日第2減少点までの範囲に含まれる悪化予測体重データが悪化予測期間の各日における下側第2評価範囲r2bを形成する。
【0035】
図3に示すように、悪化予測基準線Slには傾きがあるため、悪化予測基準線Slを中心線とする悪化予測体重範囲Prを形成する悪化予測体重データの値は悪化予測期間における各日によって異なる。本例では、悪化予測期間の0日目において悪化予測体重範囲Prを形成する悪化予測体重データは増大点Up3の示す「63.25kg」から減少点Dp3の示す「46.75kg」までの悪化予測体重データである。また、悪化予測期間の−9日目において悪化予測体重範囲Prを形成する悪化予測体重データは増大点Up4の示す「57.5kg」から減少点Dp4の示す「42.5kg」までの悪化予測体重データである。このように、
図3に示す例では悪化予測期間の0日目に対応する悪化予測体重範囲Prに含まれる悪化予測体重データの値は、悪化予測期間の−9日目に向かって徐々に小さい値となる。
【0036】
このようにして、本実施形態における悪化予測体重範囲は、例えば過去に体重計利用者の病態が悪化したと診断された際の体重変動の傾向、特に体重の増加傾向に基づいて体重計利用者それぞれに対して生成される。したがって、記憶部51には、体重計利用者と一意に対応付けられた複数の悪化予測体重範囲の情報が記憶されている。悪化予測体重範囲生成部55による悪化予測体重範囲の生成処理は、体重計利用者の担当医師が病院側コンピュータから体重範囲始点Sp及び体重範囲終点Epの入力を行うことを契機として実行される。悪化予測体重範囲Prの生成処理は、例えば体重計利用者が体重計3の利用を開始する、すなわち担当医師による体重変動監視装置5を用いた患者の体重変動の監視(モニタリング)が開始されるタイミングで行われる。また、体重計利用者の生活環境の変化のタイミングや季節ごとに悪化予測体重範囲Prの見直しを行うようにしてもよい。
【0037】
次に、
図4から
図6を用いて本実施形態による体重変動監視装置5の判定部57により実行される判定処理から判定部57の判定結果に基づいてデータ送信部59によって実行される通知処理までの流れの一例を説明する。
図4は、判定処理及び判定処理の結果に基づいて実行される通知処理(判定通知処理)の流れの一例を示すフローチャートである。また、
図5は、判定部57における悪化傾向判定処理判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。悪化傾向判定処理については後述する。また、
図6は、悪化傾向判定処理の対象となる処理対象期間において測定された体重計利用者の体重データの変動と悪化予測体重範囲Prとの一致の度合を示す図である。まず
図4を用いて、判定通知処理の流れの一例を説明する。
【0038】
(ステップS1)
ステップS1において判定部57は、処理当日(以降、「本日」と称する場合がある)に測定された体重計利用者の体重データがあるか否かを判定する。判定部57は、記憶部51に記憶されている体重計利用者の体重データを検索し、本日の日付及び体重計利用者の識別情報に合致する体重データの件数が1件以上である場合に体重計利用者の本日の体重データがあると判定してステップS3の処理に移る。一方、判定部57は、記憶部51に記憶されている体重計利用者の体重データを検索し、本日の日付と体重計利用者の識別情報とに合致するデータが0件である場合に体重計利用者の本日の体重データがないと判定し、ステップS3以降の処理を実行せずに判定通知処理を終了する。
【0039】
(ステップS3)
ステップS3において判定部57は、本日の日付を処理対象日に設定してステップS5の処理に移る。具体的には、判定部57は、体重変動監視装置5における所定の記憶領域に本日の日付を処理対象日として一時的に記憶させる。
【0040】
(ステップS5)
ステップS5において判定部57は、悪化予測体重範囲Prを用いて体重計利用者に病態の悪化傾向が生じているかを判定する悪化傾向判定処理を実行してステップS7の処理に移る。悪化傾向判定処理において、判定部57は、処理対象期間における体重計利用者の体重データが悪化予測体重範囲Prと一致する度合によって体重計利用者の病態に悪化傾向が生じているか否かを判定する。悪化傾向判定処理の詳細については後述する。
【0041】
(ステップS7)
ステップS7においてデータ送信部59は、予測範囲適合フラグがオン状態であるか否かを判定する。予測範囲適合フラグは、判定部57による悪化傾向判定処理の結果を表すフラグであって、体重変動監視装置5における所定の記憶領域に記憶されている。予測範囲適合フラグがオン状態であることは、ステップ5の悪化傾向判定処理において判定部57が体重計利用者に病態の悪化傾向が生じていると判定したことを表す。また、予測範囲適合フラグがオフ状態であることは、ステップ5の悪化傾向判定処理において判定部57が体重計利用者に病態の悪化傾向が生じていると判定しなかったことを表す。データ送信部59は、予測範囲適合フラグがオン状態であると判定するとステップ9の処理に移る。一方、データ送信部59は、予測範囲適合フラグがオフ状態であると判定するとステップ9の処理を実行せずに判定通知処理を終了する。
【0042】
(ステップS9)
ステップS7においてデータ送信部59は、判定部57が体重計利用者に病態の悪化傾向が生じていると判定したことを示す予測範囲適合フラグがオン状態であることに基づいて、事前に設定した宛先に通知を行う通知処理を実行する。具体的には、データ送信部59は、悪化傾向通知メールを事前に設定した宛先に送信する。また、さらに悪化傾向通知メールと同内容の情報を病院側端末装置であるファクシミリ装置へ送信してもよい。事前に設定する宛先は、複数を設定してもよく、例えば担当医師が挙げられる。
【0043】
本実施形態による体重変動監視装置5において、
図4に示す判定通知処理は、1日につき1回予められた時刻に実行される。定められた時刻は、例えば12:00〜14:00の間の何れかの時刻である。体重計利用者には体重計3の利用の開始にあたり、例えば担当医師から朝起床した際に体重データの測定を行うことが指導される。12:00〜14:00であれば、病院の診療日において担当医師が病院内にいる確率が高い。このため、体重変動監視装置5において体重計利用者に病態悪化の傾向が生じていると判定されて通知が行われた場合に、担当医師や看護師が体重計利用者に連絡する等の対応を迅速に行うことができる。また、判定通知処理は、記憶部51に記憶された各体重計利用者についてそれぞれ実行される。
【0044】
次に、
図3を参照しつつ
図5及び
図6を用いて本実施形態における悪化傾向判定処理(
図4のステップS5)の流れの一例を説明する。本実施形態における悪化傾向判定処理は、本日を起点とし、悪化予測体重範囲Prを生成する際の悪化予測期間(例えば、10日間)と同一の日数を遡った期間(以降、「処理対象期間」と称する)における体重計利用者の体重変動と悪化予測体重範囲Prとの一致の度合から体重計利用者の病態の悪化傾向の有無を判定する処理である。このため、悪化傾向判定処理において、後述するステップS51からステップS55、ステップS63及びステップS65の処理は処理対象期間に応じた回数繰り返して実行される。
【0045】
(ステップS51)
ステップS51において判定部57は、体重計利用者についての処理対象日の体重データを全て取得する。具体的には、判定部57は、体重変動監視装置5の所定の記憶領域に記憶されている処理対象日を読み込んで記憶部51から処理対象日及び体重計利用者の識別情報に合致する体重データを全て取得する。悪化傾向判定処理の開始時において、処理対象日には、本日の日付が設定されている。繰り返し処理の2回目以降では、処理対象日には本日を起点として1から9日遡った日付が順次設定される。体重計利用者が1日のうちに複数回体重データを測定することもあるため、処理対象日の体重データは複数存在し得る。判定部57は、処理対象日の体重データを取得すると、ステップS53の処理に移る。
【0046】
(ステップS53)
ステップS53において判定部57は、処理対象日の体重データ件数(処理対象日データ件数)を取得して体重変動監視装置5の所定の記憶領域に記憶し、ステップS55の処理に移る。
【0047】
(ステップS55)
ステップS55において判定部57は、処理対象日の体重データ件数が1件以上か否かを判定する。判定部57は、処理対象日の体重データ件数が1件以上であると判定するとステップS57の処理に移る。一方、判定部57は、処理対象日の体重データ件数が0件であると判定すると現在の処理対象日には体重計利用者が体重データの測定を行わなかったと判定してステップS59の処理に移る。
【0048】
(ステップS57)
ステップS57において判定部57は、処理カウンタ値iに1を設定するとステップS59の処理に移る。処理カウンタ値iは体重変動監視装置5の所定の記憶領域に記憶されている。処理カウンタ値iは、処理対象日の体重データのうち後述するステップS59の予測範囲適合判定処理が行われた体重データの件数を計測するためのカウンタ値である。
【0049】
(ステップS59)
ステップS59において判定部57は、測定欠如日数カウンタ値mを1加算してステップS69の処理に移る。測定欠如日数カウンタ値mは体重変動監視装置5の所定の記憶領域に記憶されている。測定欠如日数カウンタ値mは、処理対象期間において体重計利用者が体重計3を用いた体重データの測定を行わずに体重データが欠如している日の日数を計測するためのカウンタ値である。
【0050】
(ステップS61)
ステップS61において判定部57は、処理対象日のi件目の体重データが処理対象日の悪化予測体重範囲Prの第1評価範囲r1に含まれるか否かを判定する。判定部57は、処理対象日のi件目の体重データが悪化予測体重範囲Prの第1評価範囲r1に含まれると判定するとステップS63の処理に移る。一方、判定部57は、処理対象日のi件目の体重データが悪化予測体重範囲Prの第1評価範囲r1に含まれないと判定するとステップS65の処理に移る。判定部57による悪化予測体重範囲Prに含まれる体重データの判定処理(予測範囲適合判定処理)については後述する。
【0051】
(ステップS63)
ステップS63において判定部57は、範囲適合カウンタ値kを1加算して現在の処理対象日についての処理を終了し、ステップS69の処理に移る。範囲適合カウンタ値kは体重変動監視装置5の所定の記憶領域に記憶されている。範囲適合カウンタ値kは、処理対象期間における体重データのうちステップS61において第1評価範囲r1に含まれると判定された体重データの数を計測するためのカウンタ値である。
【0052】
(ステップS65)
ステップS65において判定部57は、処理カウンタ値iを1加算してステップS67の処理に移る。
【0053】
(ステップS67)
ステップS67において判定部57は、処理カウンタ値iが処理対象日の体重データ件数を超過したか否かを判定する。判定部57は、処理カウンタ値iが処理対象日の体重データ件数を超過したと判定すると現在の処理対象日についての処理を終了し、ステップS69の処理に移る。一方、判定部57は、処理カウンタ値iが処理対象日の体重データ件数を超過していないと判定すると現在の処理対象日についての処理を繰り返すためステップS57の処理に戻る。このように、判定部57は、ステップS61の予測範囲適合判定処理において処理対象日の体重データが悪化予測体重範囲Prの第1評価範囲r1に含まれると判定されるまで、処理対象日の体重データについてステップS61の判定処理を繰り返す。
【0054】
(ステップS69)
ステップS69において判定部57は、現在の処理対象日から1日遡った日付けを新たな処理対象日として設定してステップS71の処理に移る。すなわち、判定部57は、体重変動監視装置5の所定の記憶領域に記憶されている処理対象日を現在の処理対象日−1日の日付に更新する。これにより、処理対象日1日分の処理が終了する。
【0055】
(ステップS71)
ステップS71において判定部57は、更新後の処理対象日が処理対象期間外か否かを判定する。具体的には、判定部57は、更新後の処理対象日が処理対象期間(本日を起点として10日間)よりも前の日付か否かを判定する。判定部57は、更新後の処理対象日が本日から−9日目よりも前の日付(本日から−10日目)であって処理対象期間外であると判定すると、処理対象期間に関する処理を終了してステップS73の処理に移る。一方、判定部57は、更新後の処理対象日が本日から−9日目までの日付であって処理対象期間内であると判定すると、ステップS51の処理に戻って処理対象日1日分の処理を繰り返す。
【0056】
(ステップS73)
ステップS73において判定部57は、範囲適合カウンタ値kが閾値以上であるか否かを判定する。ここで範囲適合カウンタ値kとの比較対象となる閾値は、処理対象期間において有効とされる体重計利用者の体重データ(有効体重データ)の個数の5割を示す値である。有効体重データ数とは、処理対象期間(10日間)において1日1回体重データを測定した場合の体重測定数(10個)から測定欠如日数カウンタ値mを減算した数をいう。例えば、測定欠如日数カウンタ値mが0であり、体重計利用者が処理対象期間において毎日体重データの測定を行った場合は、有効体重データ数は10個となる。また、測定欠如日数カウンタ値mが3であり、体重計利用者が処理対象期間において3日分の体重データの測定を行わなかった場合は、有効体重データ数は7回となる。
【0057】
判定部57は、例えば有効体重データ数が10回の場合は閾値を5(10個×50%=5)に設定する。また、閾値は小数点以下を切り捨てるので、有効体重データ数が7回の場合は閾値を3(7個×50%=3.5)に設定する。範囲適合カウンタ値kが閾値以上であることは、有効体重データ数のうち悪化予測体重範囲Prと一致する体重データの比率である適合率が5割以上であることを示す。したがって、ステップS73において、判定部57は、範囲適合カウンタ値kが閾値以上すなわち適合率が5割以上であると判定すると、体重計利用者に病態の悪化傾向が生じているとしてステップS75の処理に移る。一方、判定部57は、範囲適合カウンタ値kが閾値以上でないすなわち適合率が5割に満たないと判定すると体重計利用者に病態の悪化傾向が生じていないとして、ステップS77の処理に移る。
【0058】
(ステップS75)
ステップS75において判定部57は、予測範囲適合フラグをオン状態に設定してステップS77に処理を移す。予測範囲適合フラグをオン状態に設定されることで、データ送信部59は悪化傾向判定処理において判定部57が体重計利用者に病態の悪化傾向が生じていると判定したことを検知し、ステップS9(
図4参照)において通知処理が実行される。また、ステップS75において判定部57は、体重計利用者に病態の悪化傾向が生じている旨の判定結果と該判定結果が導出された日とを紐づけて記憶部51に登録してもよい。
【0059】
(ステップS77)
ステップS77において判定部57は、悪化傾向判定処理で用いられたカウンタ値(処理カウンタ値i、範囲適合カウンタ値k及び測定欠如日数カウンタ値)をクリアして悪化傾向判定処理を終了し、判定通知処理(
図4参照)に戻る。
【0060】
ここで、ステップS61の予測範囲適合処理において、判定部57が悪化予測体重範囲Prに含まれる体重データを判定する方法について
図6を用いて説明する。
図6に示すP1からP10は処理対象期間における体重計利用者の体重データを表している。
【0061】
図6に示すデータP10は、処理対象期間の最初の起点となる日(本日)の体重データであって、
図3に示す悪化予測体重範囲Prの悪化予測期間の0日目の体重データに対応する。また、データP9は、本日から1日遡った日の体重データであって、
図3に示す悪化予測期間の−1日目の体重データに対応する。同様に、データP8は本日から2日遡った日の体重データであって悪化予測期間の−2日目の体重データに対応し、データP7は本日から3日遡った日の体重データであって悪化予測期間の−3日目の体重データに対応し、データP6は本日から4日遡った日の体重データであって悪化予測期間の−4日目の体重データに対応し、データP5は本日から5日遡った日の体重データであって悪化予測期間の−5日目の体重データに対応し、データP4は本日から6日遡った日の体重データであって、悪化予測期間の−6日目の体重データに対応し、データP3は日から7日遡った日の体重データであって悪化予測期間の−7日目の体重データに対応し、データP2は本日から8日遡った日の体重データであって悪化予測期間の−8日目の体重データに対応し、データP1は本日から9日遡った日の体重データであって悪化予測期間の−9日目の体重データに対応する。
図6に示す例では、処理対象期間の各日において体重計利用者は各1回ずつ体重データを計測している。
【0062】
判定部57は、予測範囲適合処理において処理対象日の体重データが悪化予測期間において該当する日に対応する悪化予測体重範囲Prに含まれているか否かを判定する。具体的には、判定部57は、処理対象日が本日であれば、体重計利用者の本日の体重データが悪化予測期間の0日目に対応する悪化予測体重範囲Prを形成する複数の悪化予測体重データの何れかと一致するか否かを判定する。例えば、
図3に示す例では、悪化予測期間の0日目に対応する悪化予測体重範囲Prを形成する悪化体重予測データは、Dp3からUp3のp範囲すなわち、46.75kgから63.25kgまでの範囲のデータである。同様に、判定部57は、処理対象日が本日から−1日から−9日であれば悪化予測期間の−1日目から−9日目の各日に対応する悪化予測体重範囲Prを形成する悪化体重予測データの何れかと処理対象日の体重データの値が一致するか否かを判定する。
【0063】
図6に示す例では、判定部57は、ステップS61において、処理対象日=本日の体重データ(データP10)、処理対象日=本日−2日の体重データ(データP8)、処理対象日=本日−3日の体重データ(データP7)、処理対象日=本日−6日の体重データ(データP4)、処理対象日=本日−7日の体重データ(データP3)、処理対象日=本日−8日の体重データ(データP2)及び処理対象日=本日−9日の体重データ(データP1)の7つの体重データが第1評価範囲r1を形成する悪化体重予測データと一致する、すなわち第1評価範囲r1に含まれる(ステップS61のYES)と判定する。また、判定部57は、ステップS61において処理対象日=本日−1日の体重データ(データP9)は第2評価範囲r2を形成する悪化体重予測データと一致するため第1評価範囲r1に含まれない(ステップS61のNO)、処理対象日=本日−4日の体重データ(データP6)及び処理対象日=本日−5日の体重データ(データP5)が悪化予測体重範囲Pr範囲外であるため第1評価範囲r1に含まれない(ステップS61のNO)と判定する。したがって、ステップS73の処理時には範囲適合カウンタ値kは7となる。また、ステップS73において、判定部57は、範囲適合カウンタ値k=7が閾値5(測定回数10回×50%=5)以上であると判定指定(ステップS73のYes)、体重計利用者に病態の悪化傾向があると判定する(ステップS75)。
【0064】
以上説明したように、
図5に示す悪化傾向判定処理において判定部57は、悪化予測体重範囲を形成する体重データである複数の悪化予測体重データの測定期間(悪化予測期間)と同じ長さの期間(処理対象期間)分の体重データであって受信データ登録部53により記憶部51に登録された体重データのうち複数の悪化予測体重データの何れかと一致する体重データの個数が予め定められた閾値以上である場合に、体重計利用者に病態の悪化傾向が生じていると判定する。また、悪化予測体重範囲Prは、体重計利用者ごとに、例えば各体重計利用者の過去の体重データに基づいて生成される。これにより、本実施形態による体重変動監視装置5は、体重計利用者に病態の悪化傾向を生じていることを検出する精度を向上することができる。
【0065】
また、悪化傾向判定処理において、判定部57により体重計利用者の健康状態に悪化の傾向が生じていると判定されると、データ送信部59は、体重計利用者の病態に悪化傾向が生じている旨の通知を病院側端末装置に送信する。これにより、次の通院までの間において体重計利用者の病態が悪化状態となる前段階において、担当医師に体重計利用者の病態への注意喚起を行うことができるので、担当医師は、体重計利用者の病態が悪化状態となる前に電話の生活指導や診察等の適切な対応を行うことができる。したがって、体重変動監視システム1は、病態が悪化状態となる前に体重計利用者が早期に担当医師による適切な対応を受けることを促進できるので、体重計利用者の小康状態を維持し、生活の質の向上を図ることができる。
【0066】
また、判定部57は、上述のように悪化予測体重範囲Prを用いた所定期間における体重計利用者の体重データの変動(推移)によって体重計利用者に病態の悪化傾向が生じているかを判定する処理とは別に、1回の体重データの値が閾値(体重上限閾値又は体重下限閾値)を超えたか否かによって体重計利用者に病態の悪化傾向が生じているか否かを判定する処理(閾値超過判定処理)を行うように構成されていてもよい。ここで、
図2に戻って体重上限閾値及び体重下限閾値について説明する。
【0067】
図2には心疾患患者αの基準体重の値を示す基準体重線Sw、心疾患患者αの体重上限閾値を示す上限体重線Uw、心疾患患者αの体重下限閾値を示す下限体重線Dwが図示されている。基準体重線Swが示す基準体重値は、心疾患患者αの平常時(病態が安定している時期)の一定期間の体重から算出した体重である。心疾患患者においての体重が体重上限閾値又は体重下限閾値を超過したときは、当該患者に健康状態(病態)の悪化の傾向があると判定される。例えば、心疾患患者の体重が体重上限閾値を超過した場合は、心臓機能の低下の危険度が高い傾向にあること等が考えられる。また、心疾患患者の体重が体重下限閾値を超過した場合は、尿の排出を促進するために投薬された利尿剤等の影響による脱水症状等の危険度が高い傾向にあること等が考えられる。
【0068】
体重変動監視システム1では、判定部57が体重計利用者の基準体重値と基準体重値から算出された体重上限閾値及び体重下限閾値から、体重計利用者に病態の悪化傾向を含む健康状態の悪化傾向が生じているか否かの判定を行う。基準体重値は、体重計利用者による体重変動監視システム1に蓄積された、病態が安定している一定期間の体重を用いて自動的に算出されてもよいし、担当医師が病院側コンピュータを用いて入力してもよい。
【0069】
また、体重上限閾値は、体重計利用者の基準体重値に2〜3kg程度加算した値とする。本例で示す心疾患患者αでは、基準体重値が75kgであるため、上限体重線Uwが示す体重上限閾値は78kgに設定されている。また、体重下限閾値は、体重計利用者の基準体重値から2〜3kg程度減算した値とする。本例で示す心疾患患者αでは、基準体重値が75kgであるため、下限体重線Dwが示す体重下限閾値は72kgに設定されている。
【0070】
判定部57は、例えば1日に1回、閾値超過判定処理を実行する。また、データ送信部59は、判定部57が閾値超過判定処理により体重データの値が体重上限閾値又は体重下限閾値を超過していると判定したことに基づいて、事前に設定した宛先へ通知を行う。本実施形態による体重変動監視システム1は、上述の判定通知処理と合わせて閾値超過判定処理を行うことで、体重計利用者の病態に急な悪化傾向が生じた場合でもデータ送信部59により担当医師への通知を行うことができる。事前に設定する宛先は、複数を設定してもよく、例えば担当医師が挙げられる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による体重変動監視システムについて説明する。本実施形態による体重変動監視システムは、体重変動監視装置における判定部が実行する悪化傾向判定処理(ステップS5)が第1実施形態と異なる以外は、第1実施形態による体重変動監視システム1と同一の構成及び同一の作用効果を有する。このため、以下、本実施形態による体重変動監視システム及び体重変動監視システムの構成要素について、
図1に示す体重変動監視システム1及び体重変動監視システム1と同一の符号を用いて説明する。
【0072】
ここで、
図6を参照しつつ、
図7及び
図8を用いて本実施形態による体重変動監視装置5の判定部57による悪化傾向判定処理の一例を説明する。
図7は、本実施形態における悪化傾向判定処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
図7では、本実施形態における悪化傾向判定処理において上記第1実施形態と同様の処理を行うステップには
図5に示す悪化傾向判定処理のフローチャートと同一の符号を付し、説明は省略する。
【0073】
図7に示すように、悪化傾向判定処理が開始されると、判定部57は
図5に示すステップS51からステップS61の処理を実行し、ステップS61の判定結果がYESの場合ステップS62に処理を移し、ステップS61の判定結果がNOの場合ステップS64−1に処理を移す。
【0074】
(ステップS62)
ステップS62において判定部57は、ステップS61において処理対象日のi件目の体重データが悪化予測体重範囲Prの第1評価範囲r1に含まれると判定されたことに基づいて、対象日スコアに10点(以降、ポイントを「Pt」と略記する場合がある)を加算してステップS65の処理に移る。対象日スコアは、体重変動監視装置5の所定の記憶領域に記憶されている変数である。本実施形態において判定部57は、処理対象日における体重データが悪化予測体重範囲Pr(
図6参照)の第1評価範囲r1又は第2評価範囲r2の何れに一致しているか、あるいは体重データが悪化予測体重範囲Prの範囲外であるかによって対象日スコアに異なる点数が加算するようになっている。体重データの点数換算方法については後述する。
【0075】
(ステップS64−1)
ステップS64−1において判定部57は、処理対象日のi件目の体重データが悪化予測体重範囲Prの第2評価範囲r2に含まれるか否かを判定する。判定部57は、処理対象日のi件目の体重データが悪化予測体重範囲Prの第2評価範囲r2に含まれると判定するとステップS64−2の処理に移る。一方、判定部57は、処理対象日のi件目の体重データが悪化予測体重範囲Prの第2評価範囲r2に含まれないと判定するとステップS65の処理に移る。
【0076】
(ステップS64−2)
ステップS64−2において判定部57は、対象日スコアに5点を加算してステップS65の処理に移る。判定部57は、ステップS65の処理の実行後、ステップS67に処理を移し、ステップS67の判定結果がYESの場合ステップS68−1に処理を移し、ステップS67の判定結果がNOの場合ステップS68−3に処理を移す。
【0077】
ここで、
図8を用いて体重データの点数換算方法を説明する。
図8は、
図6に示す体重データP1からP10を例として、処理対象期間における体重データの点数換算方法を表形式で説明する図である。
図8に示すように、悪化予測体重範囲Prを形成する悪化予測体重データにはそれぞれ点数が対応付けられている。具体的には、悪化予測体重範囲Prにおける上側第2評価範囲r2aを形成する悪化予測体重データには5点(Pt)、上側第1評価範囲r1aを形成する悪化予測体重データ及び下側第1評価範囲r1bを形成する悪化予測体重データには10点、下側第2評価範囲r2bを形成する悪化予測体重データには5点が対応付けられている。また、悪化予測体重範囲Prの範囲外の体重データには0点が対応付けられている。したがって、判定部57は、第1評価範囲r1を形成する悪化予測体重データと一致する処理対象期間の体重データを10点に換算し、第2評価範囲r2を形成する悪化予測体重データと一致する体重データを5点に換算し、悪化予測体重範囲Prの範囲外の体重データと一致する処理対象期間の体重データは0点に換算する。
【0078】
このように、悪化予測体重データは、第1評価範囲r1を形成するデータと、第2評価範囲r2を形成するデータとで異なる点数が対応付けられている。すなわち、悪化予測体重範囲Prを構成する評価範囲(第1評価範囲r1、第2評価範囲r2)の何れを形成する悪化予測体重データと一致するかによって、処理対象期間の体重データが換算される点数に重み付けがされている。本実施形態では、悪化予測基準線Sl(
図3参照)を囲む第1評価範囲r1を形成する悪化予測体重データと一致する処理対象期間の体重データが、第2評価範囲r2を形成する悪化予測体重データと一致する処理対象期間の体重データよりも高い点数に換算されるように構成されている。なお、
図8に示す点数は一例であって、第1評価範囲r1及び第2評価範囲r2に対応付けられる点数はこれに限られず、第1評価範囲r1に対応付けられた点数が第2評価範囲r2に対応付けられた点数よりも高い点数に設定されていればよい。
【0079】
図6に示す処理対象期間における体重データの一例を上述の点数換算方法に当てはめると、ステップS61(
図7参照)では、処理対象期間の各体重データのうち処理対象日が本日−9日目及び−7日目における1件目の体重データであるデータP1,P2,と、処理対象日が本日−6日目及び−3日目における1件目の体重データであるデータP4,P7とは判定部57によって上側第1評価範囲r1aを形成する悪化予測体重データと一致すると判定され、10点に換算されてステップS62において対象日スコアに10点が加算される。同じくステップS61において、処理対象日が本日−7日目、−3日目及び本日における1件目の体重データであるデータP3,P8,P10は判定部57によって下側第1評価範囲r1bを形成する悪化予測体重データと一致すると判定され、10点に換算されてステップS62において対象日スコアに10点が加算される。また、ステップS64−1では、処理対象日が本日−1日目の1件目の体重データであるデータP9は判定部57によって下側第2評価範囲r2bを形成する悪化予測体重データと一致すると判定され、5点に換算されてステップS64−2において対象日スコアに5点が加算される。また、データP5,P6は第1評価範囲r1及び第2評価範囲r2の何れを形成する悪化予測体重データにも一致せず0点に換算されるため、対象日スコアに点数が加算されない。
【0080】
なお、
図6に示す例では各処理対象日につき体重データが1件であるが、処理対象日において一の体重計利用者に対して複数件の体重データが存在する場合もある。この場合は、各処理対象日における体重計利用者の全体重データについてステップS61又はステップS64−1の処理が実行され、該当する体重データから換算された点数が対象日スコアに累積されていく。
【0081】
(ステップS68−1)
図7に戻って、ステップS68−1において判定部57は、体重変動監視装置5の所定の記憶領域から処理対象日のデータ件数を読み込み、処理対象日のデータ件数が2以上であるか否かを判定する。判定部57は、処理対象日のデータ件数が2以上であると判定するとステップS68−2の処理に移る。一方、判定部57は、処理対象日のデータ件数が2以上でなく1件であると判定するとステップS68−3の処理に移る。
【0082】
(ステップS68−2)
ステップS68−2において判定部57は、対象日スコアの平均値を算出し、算出された平均値を累積スコアに加算してステップS68−4の処理に移る。累積スコアは、体重変動監視装置5の所定の記憶領域に記憶されている変数である。本実施形態では、処理対象日において体重計利用者の体重データが2件以上存在する、すなわち対象日スコアに2件以上の体重データを点数換算した値が含まれるときは、判定部57は、評価対象範囲(
図3に示す悪化予測体重範囲Prが形成する平行四辺形の内側)にある測定値(体重データ)のみを点数換算対象とし、点数換算対象の各測定値を点数化(スコア化)してその平均値を対象日スコアの値として累積スコアに加算する。
【0083】
(ステップS68−3)
ステップS68−3において判定部57は、対象日スコアの値を累積スコアに加算してステップS68−4の処理に移る。このようにして累積スコアには処理対象期間(本例では、10日間)における対象日スコアの値が累積される。
【0084】
(ステップS68−4)
ステップS68−4において判定部57は、対象日スコアの値をクリア、すなわち対象日スコアに0を代入してステップS69の処理に移る。判定部57はステップS69及びステップS71において第1実施形態における悪化傾向判定処理の同ステップと同じ処理を実行するとステップS72に処理を移す。
【0085】
(ステップS72)
ステップS72において判定部57は、累積スコアの値が閾値以上であるか否かを判定する。ここで、累積スコアとの比較対象となる閾値は、処理対象期間における体重データが換算され得る最も高い点数の積算値(満点)から算出される値である。例えば、積算値の5割を示す値としてもよい。本実施形態において、満点は有効体重データ数と体重データが換算されるうち最も高い点数との積算で算出される。本例では、有効体重データ数は悪化予測体重範囲Prの生成に用いられた体重データが測定された日数(悪化予測期間の日数)と同数の10個が有効体重データ数となる。このため有効体重データ数(10個)×(10点)=100点が満点となる。本実施形態において有効体重データ数は常に一定の値(10個)であるので、本実施形態における閾値も常に、満点(100点)の5割である50点に設定される。判定部57は、累積スコアが閾値以上、すなわち累積スコアが50点以上であると判定すると、ステップS75の処理に移る。これにより、ステップS75において予測範囲適合フラグがオン状態に設定され、累積スコアが50点以上であることに基づいて体重計利用者に病態の悪化傾向があると判定されたことがデータ送信部59に検知される。一方、判定部57は、累積スコアが閾値以上でない、すなわち累積スコアが50点未満であると、ステップS76の処理に移る。
【0086】
図6に示す例を用いて説明すると、ステップS72の処理時点において75点が累積スコアに累積されている。内訳としては、
図8に示すように悪化予測体重範囲Prの上側第1評価範囲r1aを形成する予測悪化体重データと一致する体重データが4つなので40点(10点×4)、下側第1評価範囲r1bを形成する予測悪化体重データと一致する体重データが3つなので30点(10点×3)、下側第2評価範囲r2bを形成する予測悪化体重データと一致する体重データが1つなので5点(5点×1)が累積スコアとして加算され、累計が75点となっている。したがって、本例では、累積スコアが50点以上であるため、判定部57は体重計利用者に病態の悪化傾向があると判定する。
【0087】
(ステップS76)
ステップS76において判定部57は、累積スコアの値に0を代入して累積スコアをクリアして悪化傾向判定処理を終了し、判定通知処理(
図4参照)に戻る。
【0088】
判定通知処理に戻って、データ送信部59により予測範囲適合フラグがオン状態であると判定される(ステップS7のYES)と、上記第1実施形態で説明したのと同様に通知送信処理において体重計利用者に病態の悪化の傾向が生じている旨が病院側端末へ送信される。また、本実施形態による体重変動監視システム1は、上記第1実施形態と同様に閾値超過判定処理を行うように構成されていてもよい。
【0089】
以上説明したように、本実施形態による体重変動監視システム1では、悪化予測体重範囲Prを形成する複数の悪化予測体重データにはそれぞれ点数が対応付けられており、判定部57は、複数の悪化予測体重データの測定期間(悪化予測期間)と同じ長さの期間(処理対象期間)分の体重データであって受信データ登録部53により記憶部51に登録された体重データの各々を複数の悪化予測体重データのうちの一致する悪化予測体重データに対応付けられた点数に換算し、換算した点数の合計が予め定められた閾値以上である場合に、体重計の利用者に病態の悪化傾向が生じていると判定する。
また、複数の悪化予測体重データは、第1評価範囲r1(第一の領域の一例)を形成するデータと、第2評価範囲r2(第二の領域の一例)を形成するデータとで異なる点数が対応付けられている。
【0090】
また、本実施形態による体重変動監視システム1において、処理対象期間の体重データが換算される点数は、悪化予測体重範囲Prを構成する第1評価範囲r1と一致する場合の方が第2評価範囲r2の何れを形成する悪化予測体重データと一致する場合よりも高い点数となるように重み付けがされている。これにより、体重変動監視システム1は、健康状態(病態)悪化の傾向の検出精度をより向上することができる。
【0091】
(変形例)
上記第1実施形態による体重変動監視システム1において判定部57は、ステップS5の悪化傾向判定処理(
図4参照)において、悪化予測体重範囲生成部55で生成された悪化予測体重範囲Prを用いて体重計利用者に病態の悪化傾向が生じているか否かを判定したが、本発明はこれに限られない。判定部57は、悪化傾向判定処理の実行時において、悪化予測体重範囲Prを体重計利用者の本日の体重データに基づいて補正し、補正後の悪化予測体重範囲Prを用いて悪化傾向判定処理を実行するように構成されていてもよい。
【0092】
図3を参照しつつ
図9から
図11を用いて、悪化予測体重範囲Prの補正及び補正後の悪化予測体重範囲Prを用いた悪化傾向判定処理について説明する。判定部57は、まず体重計利用者について悪化予測体重範囲生成部55で予め生成された悪化予測体重範囲Pr(補正前の悪化予測体重範囲Pr)における体重範囲始点Spと本日の体重データの差分(補正前の体重範囲始点Spが示す体重データの値−本日の体重データの値)を算出する。本例において、補正前の悪化予測体重範囲Prは
図3に示す悪化予測体重範囲Prであり、体重計利用者の本日の体重データが50kgであると仮定とする。この場合、上述の差分は5kg(=55kg−50kg)となる。次に、判定部57はこの差分(5kg)を体重範囲終点Ep、増大点Up1〜Up4、減少点Dp1〜Dp4の各点に適用して悪化予測体重範囲Prの補正を行う。これにより、
図9に示すように、補正前の悪化予測体重範囲Prに本日の体重データを反映した補正後の悪化予測体重範囲Prが設定される。
図9に示す補正後の悪化予測体重範囲Pを構成する体重範囲始点Sp、体重範囲終点Ep、増大点Up1〜Up4、減少点Dp1〜Dp4の各点は、
図3に示す補正前の悪化予測体重範囲Prの各点よりも5kg少ない体重データの値を示す位置に補正されている。
【0093】
図10は、第1実施形態の変形例における悪化傾向判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10に示すように、本変形例における悪化傾向判定処理では、悪化傾向判定処理が開始されると、まずステップS81において悪化予測体重範囲Prが補正され、ステップS51の処理に移る。ステップS81では、
図9を用いて説明したように悪化予測体重範囲Prが補正される。本変形例では、ステップS51以降の処理は、ステップS81で補正した悪化予測体重範囲Prを用いる点を除いて第1実施形態による体重変動監視システム1が実行する悪化傾向判定処理(
図5参照)と同一であるため説明は省略する。
【0094】
上述した悪化予測体重範囲Prの補正は、第2実施形態における悪化傾向判定処理においても適用できる。
図11は、第2実施形態の変形例における悪化傾向判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11に示すように、本変形例における悪化傾向判定処理では、悪化傾向判定処理が開始されると、まずステップS81において悪化予測体重範囲Prが補正され、ステップS51の処理に移る。ステップS81では、
図9を用いて説明したように悪化予測体重範囲Prが補正される。本変形例では、ステップS51以降の処理は、ステップS81で補正した悪化予測体重範囲Prを用いる点を除いて第2実施形態による体重変動監視システム1が実行する図悪化傾向判定処理(
図7参照)と同一であるため説明は省略する。
【0095】
このように、悪化傾向判定処理の開始時において悪化予測体重範囲Prの補正を行うことで、基準体重が変化したことによって悪化予測体重範囲生成部55で予め生成された悪化予測体重範囲が適用できない体重計利用者についても体重データの変化の傾向から病態の悪化傾向の有無を判定する事ができる。
【0096】
また、上記第1実施形態による体重変動監視システム1において、判定部57は、悪化予測体重範囲Prのうち第1評価範囲r1と一致する処理対象期間中の体重データの個数によって体重計利用者に病態の悪化傾向が生じているか否かを判定したが、本発明はこれに限られない。判定部57は、第1評価範囲r1に加えて第2評価範囲r2も含めた悪化予測体重範囲Prと一致する処理対象期間中の体重データの個数によって、体重計利用者に病態の悪化傾向が生じているか否かを判定してもよい。
【0097】
また、上記第1及び第2実施形態による体重変動監視システム1において、体重変動監視装置5では判定通知処理(
図4参照)を1日1回実行するとしたが、本発明はこれに限られない。体重変動監視装置5は、1日に複数回、判定通知処理を実行するように構成されていてもよい。また、体重変動監視装置5は受信データ登録部53が病院側コンピュータから判定通知処理の実行のリクエストを受信した場合に、判定通知処理を実行するように構成されていてもよい。これにより、体重変動監視装置5は担当医師の所望するタイミングで判定通知処理を実行し、体重計利用者に病態の悪化傾向が生じている場合に病院側コンピュータに通知を送信することができる。
【0098】
また、体重変動監視装置5のデータ送信部59は、体重計利用者が所定日数以上(例えば5日以上)体重データを計測していない場合に、その旨を病院側端末へ通知するように構成されていてもよい。これにより、体重変動監視システム1は、担当医師や看護師が体重計利用者やその家族へ連絡をして、体重計利用者に体重データの測定を促したり、体重計利用者に異変が発生しているか否かを確認したりする契機を生じさせることができる。
【0099】
また、体重変動監視装置5のデータ送信部59は、体重計利用者が通院するタイミングに合わせて、例えば記憶部51に記憶されている1か月間分の体重データの変動を示す体重変動レポートを病院側端末へ送信するように構成されていてもよい。体重計利用者が通院するタイミングは、病院側コンピュータから入力されて受信データ登録部53によって記憶部51に登録されていてもよいし、通院当日に体重計利用者が体重計3に設けられた所定のボタンを押下することで、体重計3の通信部37から体重変動監視装置5に送信されてもよい。体重計利用者が通院した際に、担当医師や看護師が体重変動レポートを見ながら体重計利用者にアドバイスや励ましを行うことで、体重計利用者の体重計3による体重データ測定のモチベーションを維持、向上させることができる。
【0100】
本発明の体重変動監視システム1の体重計3は、音声を出力する音声出力部を有していてもよい。音声出力部は、測定部31による体重データの測定が完了したことを検知すると、ブザー音やメロディ音を出力してもよいし、測定された体重データの値を含む音声メッセージ(例えば「体重は、○kgです。」等)を出力してもよい。
【0101】
また、体重計3には、天板に複数(例えば、3つ)のランプを有する点灯装置が設けられていてもよい。点灯装置は、例えば、ランプの点灯状態によって体重データの測定の進捗状況を表すように構成されていてもよい。この場合、例えば体重計利用者が体重計3による体重データの測定を開始すると、3つのランプが1つずつ点灯していき、最終的に3つ全てのランプが点灯すると体重データ測定が完了したことを示す。また、点灯装置のランプは、通信部37による体重変動監視装置5への体重データ情報等の送信状況を示すように構成されていてもよい。この場合、通信部37が体重変動監視装置5へのデータの送信を開始すると、3つのランプが1つずつ点灯していき、最終的に3つ全てのランプが点灯するとデータ送信が完了したことを示す。
【0102】
また、本発明の体重計3は、体重変動監視装置5以外の装置とも通信可能に構成されていてもよい。例えば、体重変動監視システム1は、体重計利用者が体調を入力する簡易入力装置をさらに備え、体重計利用者が入力した体調情報が体重計3を介して体重変動監視装置5に送信されるように構成されていてもよい。例えば簡易入力装置はそれぞれ体調が良好、普通、不良であることを示す3つのボタンを有し、体重計利用者がこの3つのボタンの何れかを押下することで、体重計3を介してその日の体調が体重変動監視装置5に送信されるように構成されていてもよい。これにより、担当医師は、例えば病院側コンピュータから体重計利用者の体重データに加えて体調の情報も閲覧することができる。また、体重変動監視システム1には簡易入力装置以外にも、体重計3と通信可能な所定の血圧計や血糖値計、活動量計、動脈血酸素飽和度(SpО2)測定器(パルスオキシメータ)といった多様な測定器が含まれていてもよい。これにより、担当医師は体重計利用者が罹患している心疾患以外の病気(糖尿病、高血圧症、慢性閉塞性肺疾患(COPD等)の状態も病院側コンピュータ等を用いて確認することができる。
【0103】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態とその変形例について説明したが、本発明はかかる実施形態等に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。