(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電流検出増幅回路の反転増幅回路のオペアンプの非反転入力端子及び前記基準増幅回路の反転増幅回路のオペアンプの非反転入力端子がグラウンドに接続された請求項1又は請求項2に記載の電流検出回路。
前記電流検出増幅回路の反転増幅回路のオペアンプの非反転入力端子及び前記基準増幅回路の反転増幅回路のオペアンプの非反転入力端子に、共通の電圧が供給される請求項1又は請求項2に記載の電流検出回路。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る電流検出回路1について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る電流検出回路1のブロック図である。本実施形態に係る電流検出回路1は温度補償機能を有し、
図1に示すように、電流検出回路1は、入力電流I1が流れる電流検出増幅回路2、入力電流I1が流れない基準増幅回路3、及び電流検出増幅回路2と基準増幅回路3から得られる各出力電圧に基づいて出力電圧V1を算出する演算部4を備える。
【0014】
図2は、本実施形態に係る電流検出増幅回路2及び基準増幅回路3の回路図である。
【0015】
電流検出増幅回路2は、非反転増幅回路21、反転増幅回路22、及び入力電流I1を入力電圧へ変換するシャント抵抗42aを備える。非反転増幅回路21の入力端子、反転増幅回路22の入力端子、及びシャント抵抗42aの一方の端子は電流検出増幅回路2の入力端子に接続されている。シャント抵抗42aの他方の端子は接地されている。
【0016】
基準増幅回路3は、電流検出増幅回路2と同一の回路構成であり、非反転増幅回路23、反転増幅回路24、及びシャント抵抗42cを備える。非反転増幅回路23の入力端子、反転増幅回路24の入力端子、及びシャント抵抗42cの一方の端子は互いに接続されている。シャント抵抗42cの他方の端子は接地されている。基準増幅回路3において、入力端子は設置されておらず、シャント抵抗42cに電流は流れない。換言すると、基準増幅回路3では、基準増幅回路3の入力がグラウンドに接続されており、このため、入力電流はゼロとなる。
【0017】
電流検出増幅回路2及び基準増幅回路3に用いられる非反転増幅回路21、23は、同一の回路構成であり、オペアンプ20a、20c、各々の端子がオペアンプ20a又は20cの反転入力端子とグラウンドに接続された抵抗41a、41c、及び各々の端子がオペアンプ20a又は20cの反転入力端子と出力端子に接続されたフィードバック抵抗40a、40cを備える。
【0018】
電流検出増幅回路2及び基準増幅回路3に用いられる反転増幅回路22、24は、同一の回路構成であり、オペアンプ20b、20d、各々の端子がオペアンプ20b又は20dの反転入力端子と、非反転増幅回路21のオペアンプ20a又は非反転増幅回路23のオペアンプ20cの非反転入力端子に接続された抵抗41b、41dと、各々の端子がオペアンプ20b又は20dの反転入力端子と出力端子に接続されたフィードバック抵抗40b、40dを備える。
電流検出増幅回路2及び基準増幅回路3に用いられる各素子は、各素子間のバラツキを抑えるために、製造ロットが同一の素子を、オペアンプ20a、20b、20c、20dについては同一パッケージのものを用いることが好ましい。
【0019】
演算部4は、例えばアナログ/デジタル変換器やCPU等を含む情報処理装置により構成される。演算部4は、電流検出増幅回路2の非反転増幅回路21の出力電圧Vo_n、電流検出増幅回路2の反転増幅回路22の出力電圧Vo_p、基準増幅回路3の非反転増幅回路23の出力電圧Vo_n0、及び基準増幅回路3の反転増幅回路24の出力電圧Vo_p0の4つの電圧が入力され、入力される4つの電圧に対して演算処理を行い、演算結果を出力する。
具体的には、演算部4は、電流検出増幅回路2の非反転増幅回路21の出力電圧Vo_nから基準増幅回路3の非反転増幅回路23の出力電圧Vo_n0を減算した第一電圧を算出する第一電圧算出部10と、電流検出増幅回路2の反転増幅回路22の出力電圧Vo_pから基準増幅回路3の反転増幅回路24の出力電圧Vo_p0を減算した第二電圧を算出する第二電圧算出部11と、第一電圧及び第二電圧を加算した電圧を算出する加算部12とを備えている。
【0020】
次に、本実施形態に係る電流検出回路1の動作について説明する。
なお、以下の説明において、シャント抵抗42a、42cの抵抗値をRsh、フィードバック抵抗40a、40b、40c、40dの抵抗値をRf、抵抗41a、41b、41c、41dの抵抗値をRs、オペアンプ20a、20b、20c、20dの入力オフセット電圧をVosとする。
【0021】
まず、電流検出増幅回路2の非反転増幅回路21において、シャント抵抗42aに入力電流I1が流れることにより発生した入力電圧がオペアンプ20aの非反転入力端子に供給される。オペアンプ20aの非反転入力端子に入力される入力電圧とオペアンプ20aの反転入力端子に入力される電圧との差分に、オペアンプ20aを構成する各回路素子の特性ばらつき等で生じる入力オフセット電圧を加味すると、電流検出増幅回路2の非反転増幅回路21の出力電圧Vo_nは下記式(1)で表される。式(1)は、電流検出増幅回路2の非反転増幅回路21からの出力電圧Vo_nが、オペアンプ20aの入力オフセット電圧、増幅回路を構成する抵抗41a、及びフィードバック抵抗40aの温度変動に依存することを示している。
【0023】
図3の(a)は、周期的に一定時間のみ電流が流れるパルス状の入力電流I1を示す。
図3の(b)は、
図3の(a)に示す電流を入力電流I1とした場合の、電流検出増幅回路2の非反転増幅回路21の出力電圧Vo_nを示している。入力電流I1が流れている間に電流検出増幅回路2の非反転増幅回路21から電圧が出力されるが、動作時の温度によって出力電圧が変動する。但し、図に示す例では温度の低下に従い出力電圧Vo_nが低下しているが、オペアンプ20aの入力オフセット電圧の向き等に依存するため、本実施形態は、
図3の結果を示すものに限らない。
【0024】
電流検出増幅回路2の反転増幅回路22において、シャント抵抗42aに入力電流I1が流れることにより発生した入力電圧が抵抗41bを介してオペアンプ20bの反転入力端子に供給される。オペアンプ20bの反転入力端子に入力される電圧と非反転入力端子に入力される電圧の差分に、オペアンプ20bを構成する各回路素子の特性ばらつき等で生じる入力オフセット電圧を加味すると、電流検出増幅回路2の反転増幅回路22の出力電圧Vo_pは下記式(2)で表される。式(2)は、電流検出増幅回路2の反転増幅回路22からの出力電圧Vo_pが、オペアンプ20bの入力オフセット電圧、増幅回路を構成する抵抗41b、及びフィードバック抵抗40bの温度変動に依存することを示している。
【0026】
図3の(c)は、
図3の(a)に示す電流を入力電流I1とした場合の、電流検出増幅回路2の反転増幅回路22の出力電圧Vo_pを示している。入力電流I1が流れている間に電流検出増幅回路2の反転増幅回路22から電圧が出力されるが、動作時の温度によって出力電圧Vo_pが変動する。但し、
図3の(c)に示す例では温度の低下に従い出力電圧が低下しているが、オペアンプ20bの入力オフセット電圧の向き等の要因により変化するため、本実施形態は、
図3の結果を示すものに限らない。
【0027】
基準増幅回路3の非反転増幅回路23において、シャント抵抗42cには入力電流が流れないためシャント抵抗42cに電圧は発生しない。オペアンプ20cの非反転入力端子に入力される電圧とオペアンプ20cの反転入力端子に入力される電圧の差分に、オペアンプ20cを構成する各回路素子の特性ばらつき等で生じる入力オフセット電圧を加味すると、基準増幅回路3の非反転増幅回路23の出力電圧Vo_n0は下記式(3)で表される。式(3)は、基準増幅回路3の非反転増幅回路23からの出力電圧Vo_n0が、オペアンプ20cの入力オフセット電圧、増幅回路を構成する抵抗41c、及びフィードバック抵抗40cの温度変動に依存することを示している。
【0029】
基準増幅回路3の反転増幅回路24において、シャント抵抗42cには入力電流が流れないためシャント抵抗42cに電圧は発生しない。オペアンプ20dの反転入力端子に入力される電圧と非反転入力端子に入力される電圧の差分に、オペアンプ20dを構成する各回路素子の特性ばらつき等で生じる入力オフセット電圧を加味すると、基準増幅回路3の反転増幅回路24の出力電圧Vo_p0は下記式(4)で表される。式(4)は、基準増幅回路3の反転増幅回路24からの出力電圧Vo_p0が、オペアンプ20dの入力オフセット電圧、増幅回路を構成する抵抗41d、及びフィードバック抵抗40dの温度変動に依存することを示している。
【0031】
演算部4には、電流検出増幅回路2の非反転増幅回路21の出力電圧Vo_n、電流検出増幅回路2の反転増幅回路22の出力電圧Vo_p、基準増幅回路3の非反転増幅回路23の出力電圧Vo_n0、及び基準増幅回路3の反転増幅回路24の出力電圧Vo_p0が入力され、演算処理を行う。
【0032】
第一電圧算出部10は、電流検出増幅回路2の非反転増幅回路21の出力電圧Vo_nから、基準増幅回路3の非反転増幅回路23の出力電圧Vo_n0を減算する。第一演算の演算結果は以下式(5)で表される。
【0034】
第二電圧算出部11は、電流検出増幅回路2の反転増幅回路22の出力電圧Vo_pから、基準増幅回路3の反転増幅回路24の出力電圧Vo_p0を減算する。第二演算の演算結果は以下式(6)で表される。
【0036】
加算部12は、第一電圧算出部10から出力される式(5)に表される第一電圧と、第二電圧算出部11から出力される式(6)に表される第二電圧とを加算することにより、式(7)に示す出力電圧V1を得る(第三演算)。
【0038】
出力電圧V1において、シャント抵抗42aの抵抗値は既知であるので、出力電圧V1から入力電流I1を得ることができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る電流検出回路1によれば、第一電圧算出部10及び第二電圧算出部11による演算によって、オペアンプの入力オフセット電圧Vosに係る項が無くなるため、オペアンプの入力オフセット電圧Vosの温度変動による影響を排除できる。さらに、加算部12による加算演算によって、抵抗41a、41b、41c、41d、及びフィードバック抵抗40a、40b、40c、40dに係る項が無くなるため、抵抗及びフィードバック抵抗の抵抗値Rf、Rsの温度変動による影響を排除することができる。
図3の(d)は、
図3の(a)に示す電流を入力電流I1とした場合の、電流検出回路1の出力電圧V1を示している。
【0040】
式(7)は、第一演算から第三演算を実行後に出力される出力電圧V1の値がシャント抵抗42a及び入力電流I1に依存することを示している。したがって、シャント抵抗42aとして抵抗温度係数の非常に低い抵抗を選定することで、本実施形態に係る電流検出回路1では、動作時の温度変動による影響を効果的に抑制することができる。シャント抵抗42cについてもシャント抵抗42aと同様の抵抗を選定することが好ましい。
【0041】
例えば、ばらつき等の補償に用いる情報をあらかじめ取得して記憶しておき、電流検出回路1の動作時に、取得しておいた情報を用いる補償方法では、あらかじめ情報を取得するときに想定していた動作温度と、実際の回路の動作温度が異なる可能性があり、補償の不確実さが残る。これに対し、本実施形態に係る電流検出回路1は、電流検出増幅回路2と基準増幅回路3が同時に動作しリアルタイムで補償を行っているため、より効果的に温度補償を行うことができる。
【0042】
なお、温度補償を正確に実現するために、抵抗41a、41b、41c、41d、フィードバック抵抗40a、40b、40c、40d、及びシャント抵抗42a、42cは同一条件のもとで製造された同一ロットのものを用い、オペアンプ20a、20b、20c、20dは同一ロットかつ同一パッケージのものを用いることが効果的である。この場合、同種類の回路素子は互いに等しい回路特性を持つため、同一種の素子間において等しく変動するような変動特性であれば、温度変動以外であっても、正確に補正を行うことができる。
【0043】
本実施形態の変形例として、基準増幅回路3に代わり、動作温度変動に対して基準増幅回路3の非反転増幅回路23及び反転増幅回路24の出力電圧Vo_no及びVo_p0をあらかじめデータベース化して記憶しておき、補正時には、動作温度から対応付けられた電圧値を読み出し、補正に用いることとしてもよい。
【0044】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態に係る温度補償回路を備えた電流検出回路1について、図面を参照して説明する。
第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付すとともに説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0045】
図4は、本実施形態に係る電流検出増幅回路2´及び基準増幅回路3´の回路図である。本実施形態では、
図1の電流検出増幅回路2及び基準増幅回路3に代えて、
図4に示す電流検出増幅回路2´及び基準増幅回路3´を用いる。
【0046】
電流検出増幅回路2´は、反転増幅回路31、非反転増幅回路32、及び入力電流I1を入力電圧へ変換するシャント抵抗42eを備える。非反転増幅回路32の入力端子、反転増幅回路31の入力端子、及びシャント抵抗42eの一方の端子は電流検出増幅回路2´の入力端子に接続されている。シャント抵抗42eの他方の端子は接地されている。
【0047】
基準増幅回路3´は、電流検出増幅回路2´と同一の回路構成であり、反転増幅回路33、非反転増幅回路34、及びシャント抵抗42gを備える。非反転増幅回路34の入力端子、反転増幅回路33の入力端子、及びシャント抵抗42gの一方の端子は互いに接続されている。シャント抵抗42gの他方の端子は接地されている。基準増幅回路3´において、入力端子は設置されておらず、シャント抵抗42gに電流は流れない。換言すると、基準増幅回路3´では、基準増幅回路3´の入力端子がグラウンドに接続されており、このため、入力電流はゼロとなる。
【0048】
電流検出増幅回路2´及び基準増幅回路3´に用いられる反転増幅回路31、33は、同一の回路構成であり、オペアンプ20e、20g、各々の端子がオペアンプ20e又は20gの反転入力端子と非反転増幅回路32のオペアンプ20f又は非反転増幅回路34のオペアンプ20hの非反転入力端子に接続された抵抗43e、43g、各々の端子がオペアンプ20e又は20gの反転入力端子と出力端子に接続されたフィードバック抵抗40e、40g、各々の端子がオペアンプ20e又は20gの非反転入力端子とグラウンドに接続された抵抗44e、44g、各々の端子がオペアンプ20e又は20gの非反転入力端子とリファレンス電圧Vref入力端子に接続された抵抗45e、45g、及び各々の端子がオペアンプ20e又は20gの出力端子とグラウンドに接続された抵抗とを備える。
【0049】
電流検出増幅回路2´及び基準増幅回路3´に用いられる非反転増幅回路32、34は、同一の回路構成であり、オペアンプ20f、20h、各々の端子がオペアンプ20f又は20hの反転入力端子とグラウンドに接続された抵抗43f、43h、各々の端子がオペアンプ20f又は20hの反転入力端子と出力端子に接続されたフィードバック抵抗40f、40h、及び各々の端子がオペアンプ20f又は20hの出力端子とグラウンドに接続された抵抗とを備える。
電流検出増幅回路2´及び基準増幅回路3´に用いられる各素子は、各素子間のバラツキを抑えるために、製造ロットが同一の素子を、オペアンプ20e、20f、20g、20hについては同一パッケージのものを用いることが好ましい。
【0050】
次に、本実施形態に係る電流検出回路1の動作について説明する。
なお、以下の説明において、シャント抵抗42e、42gの抵抗値をRsh、非反転増幅回路32、34及び反転増幅回路31、33に用いられるフィードバック抵抗40e、40f、40g、40hの抵抗値をそれぞれRf、抵抗43e、43f、43g、43hの抵抗値をRg、抵抗44e、44g、及び抵抗45e、45gの抵抗値をそれぞれR1、R2、電流検出増幅回路2´の非反転増幅回路32の出力電圧Vo_n´、電流検出増幅回路2´の反転増幅回路31の出力電圧Vo_p´、基準増幅回路3´の非反転増幅回路34の出力電圧Vo_n0´、及び基準増幅回路3´の反転増幅回路33の出力電圧Vo_p0´、リファレンス電圧Vrefの電圧値をVref、オペアンプの入力オフセット電圧の電圧値をVosとする。
【0051】
まず、電流検出増幅回路2´の反転増幅回路31において、シャント抵抗42eに入力電流I1が流れることにより入力電圧が発生する。オペアンプ20eの非反転入力端子に入力される電圧とオペアンプ20eの反転入力端子に入力されるリファレンス電圧Vrefが分圧された電圧との差分に、オペアンプ20eを構成する各回路素子の特性ばらつき等で生じる入力オフセット電圧を加味すると、電流検出増幅回路2´の反転増幅回路31の出力電圧Vo_p´は下記式(8)で表される。式(8)は、電流検出増幅回路2´の反転増幅回路31からの出力電圧Vo_p´が、オペアンプ20eの入力オフセット電圧、増幅回路を構成するフィードバック抵抗40e、抵抗43e、抵抗44e及び抵抗45e、及びリファレンス電圧Vrefの温度変動に依存することを示している。
【0053】
図5の(a)は、周期的に一定時間のみ電流が流れるパルス状の入力電流I1を示す。
図5の(c)は、
図5の(a)に示す電流を入力電流I1とした場合の、電流検出増幅回路2´の反転増幅回路31の出力電圧Vo_p´を示している。入力電流I1が流れている間に電流検出増幅回路2´の反転増幅回路31から電圧が出力されるが、動作時の温度によって出力電圧Vo_p´が変動する。但し、
図5の(c)に示す例では温度の低下に従い出力電圧が低下しているが、オペアンプ20eの入力オフセット電圧の向き等の要因により変化するため、本実施形態は、
図5の結果を示すものに限らない。
【0054】
電流検出増幅回路2´の非反転増幅回路32において、シャント抵抗42eに入力電流I1が流れることにより発生した入力電圧がオペアンプ20fの非反転入力端子に供給される。オペアンプ20fの反転入力端子に入力される電圧と非反転入力端子に入力される入力電圧の差分に、オペアンプ20fを構成する各回路素子の特性ばらつき等で生じる入力オフセット電圧を加味すると、電流検出増幅回路2´の非反転増幅回路32の出力電圧Vo_n´は下記式(9)で表される。式(9)は、電流検出増幅回路2´の非反転増幅回路32からの出力電圧Vo_n´がオペアンプ20fの入力オフセット電圧及び増幅回路を構成するフィードバック抵抗40f、抵抗43fの抵抗値の温度変動に依存することを示している。
【0056】
図5の(b)は、
図5の(a)に示す電流を入力電流I1とした場合の、電流検出増幅回路2´の非反転増幅回路32の出力電圧Vo_n´を示している。入力電流I1が流れている間に電流検出増幅回路2´の非反転増幅回路32から電圧が出力されるが、動作時の温度によって出力電圧Vo_n´が変動する。但し、
図5の(b)に示す例では温度の低下に従い出力電圧が低下しているが、オペアンプ20fの入力オフセット電圧の向き等に依存するため、本実施形態は、
図5の結果を示すものに限らない。
【0057】
基準増幅回路3´の反転増幅回路33において、シャント抵抗42gには入力電流I1が流れないためシャント抵抗42gに電圧は発生しない。オペアンプ20gの反転入力端子に入力される電圧とオペアンプ20gの非反転入力端子に入力されるリファレンス電圧Vrefが分圧された電圧の差分に、オペアンプ20gを構成する各回路素子の特性ばらつき等で生じる入力オフセット電圧を加味すると、基準増幅回路3´の反転増幅回路33の出力電圧Vo_p0´は下記式(10)で表される。式(10)は、基準増幅回路3´の反転増幅回路33からの出力電圧Vo_p0´がオペアンプ20gの入力オフセット電圧、増幅回路を構成するフィードバック抵抗40g、抵抗43g、抵抗44g、抵抗45g、及びリファレンス電圧Vrefの温度変動に依存することを示している。
【0059】
基準増幅回路3´の非反転増幅回路34において、シャント抵抗42gには入力電流I1が流れないためシャント抵抗42gに電圧は発生しない。オペアンプ20hの反転入力端子に入力される電圧と非反転入力端子に入力される入力電圧の差分に、オペアンプ20hを構成する各回路素子の特性ばらつき等で生じる入力オフセット電圧を加味すると、基準増幅回路3´の非反転増幅回路34の出力電圧Vo_n0´は下記式(11)で表される。式(11)は、基準増幅回路3´の非反転増幅回路34からの出力電圧Vo_n0´がオペアンプ20hの入力オフセット電圧及び増幅回路を構成するフィードバック抵抗40h、抵抗43hの抵抗値の温度変動に依存することを示している。
【0061】
演算部4には、電流検出増幅回路2´の非反転増幅回路32の出力電圧Vo_n´、電流検出増幅回路2´の反転増幅回路31の出力電圧Vo_p´、基準増幅回路3´の非反転増幅回路34の出力電圧Vo_n0´、及び基準増幅回路3´の反転増幅回路33の出力電圧Vo_p0´が入力され、演算処理を行う。
【0062】
第一電圧算出部10は、電流検出増幅回路2´の非反転増幅回路32の出力電圧Vo_n´から、基準増幅回路3´の非反転増幅回路34の出力電圧Vo_n0´を減算する。第一演算の演算結果は以下式(12)で表される。
【0064】
第二電圧算出部11は、電流検出増幅回路2´の反転増幅回路31の出力電圧Vo_p´から、基準増幅回路3´の反転増幅回路33の出力電圧Vo_p0´を減算する。第二演算の演算結果は以下式(13)で表される。
【0066】
加算部12は、式(12)に表される電圧と式(13)に表される電圧を加算することにより、式(14)に示す出力電圧V1を得る。
【0068】
したがって、第一電圧算出部10及び第二電圧算出部11による演算によって、オペアンプの入力オフセット電圧Vos及びリファレンス電圧Vrefに係る項が無くなるため、オペアンプの入力オフセット電圧及びリファレンス電圧Vrefの温度変動による影響を排除できる。さらに、第三演算を行うことによって、抵抗43e、43f、43g、43h、抵抗44e、44g、抵抗45e、45g、及びフィードバック抵抗40e、40f、40g、40hに係る項が無くなるため、各抵抗の抵抗値Rs、R1、R2及びフィードバック抵抗の抵抗値Rfの温度変動による影響を排除することができる。
図5の(d)は、
図5の(a)に示す電流を入力電流I1とした場合の、電流検出回路1の出力電圧V1を示している。
【0069】
式(14)は、第一演算から第三演算を実行後に出力される出力電圧V1の値がシャント抵抗42e及び入力電流I1に依存することを示している。したがって、シャント抵抗42eとして抵抗温度係数の非常に低い抵抗を選定することで、本実施形態に係る電流検出回路1では、動作時の温度変動による影響を効果的に抑制することができる。シャント抵抗42gについてもシャント抵抗42eと同様の抵抗を選定することが好ましい。
【0070】
例えば、ばらつき等の補償に用いる情報をあらかじめ取得して記憶しておき、電流検出回路1の動作時に、取得しておいた情報を用いる補償方法では、あらかじめ情報を取得するときに想定していた動作温度と、実際の回路の動作温度が異なる可能性があり、補償の不確実さが残る。これに対し、本実施形態に係る電流検出回路1は、電流検出増幅回路2´と基準増幅回路3´が同時に動作しリアルタイムで補償を行っているため、より効果的に温度補償を行うことができる。
【0071】
なお、温度補償を正確に実現するために、抵抗43e、43f、43g、43h、抵抗44e、44g、抵抗45e、45g、フィードバック抵抗40e、40f、40g、40h、及びシャント抵抗42e、42gは同一条件のもとで製造された同一ロットのものを用い、オペアンプ20e、20f、20g、20hは同一ロットかつ同一パッケージのものを用いることが効果的である。この場合、同種類の回路素子は互いに等しい回路特性を持つため、同一種の素子間において等しく変動するような変動特性であれば、温度変動以外であっても、正確に補正を行うことができる。
【0072】
本実施形態の変形例として、基準増幅回路3´に代わり、動作温度変動に対して基準増幅回路3´の非反転増幅回路34及び反転増幅回路33の出力電圧Vo_n0´及びVo_p0´をあらかじめデータベース化して記憶しておき、補正時には、動作温度から対応付けられた電圧値を読み出し、補正に用いることとしてもよい。
【0073】
上記各実施形態では、基準電流をゼロとする場合を例示して説明したが、所定の電流を基準電流として基準増幅回路3又は3´に入力することとしてもよい。この場合、入力電流と基準電流の差を差電流とすると、電流検出回路の出力電圧は、シャント抵抗と差電流の積で表される。但し、この場合の入力電流を求めるためには、別途計算として基準電流を加算しなければならないが、基準電流を生成するための電流生成回路を構成する回路素子の温度変動で基準電流が変動するため、別途計算時に用いる基準電流に対して温度変動を加味しないと誤差が生じる可能性がある。しかしこの場合においても、演算部において、オペアンプの入力オフセット電圧、使用する抵抗及びリファレンス電圧の温度変動による影響は排除され、加えて、基準電流の温度変動による影響についても排除される。