(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記超音波探触子は、前記補修部材接触部及び前記補修対象部材接触部から、前記補修部材の前記一面に対して傾斜する方向に超音波を送信可能な送信用超音波探触子を含んでいる請求項1または請求項2に記載の補修部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のパッチは、パッチで覆われた領域のひずみの変化を監視しているので、ひずみの変化が生じない損傷(例えば、腐食減肉や微小なクラック等)の検出は行えない可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、補修部材及び補修対象部材に発生した損傷を精度よく検出することができる補修部材及び補修構造並びに損傷検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の補修部材及び補修構造並びに損傷検出方法は以下の手段を採用する。
本発明の一態様に係る補修部材は、補修対象部材に固定され、前記補修対象部材に形成された開口を覆う板状の補修部材であって、前記補修対象部材と接触する前記補修部材の一面側に配置される超音波探触子を備え、前記超音波探触子は、前記一面と接触する補修部材接触部及び、前記補修対象部材と接触可能な補修対象部材接触部を有
、前記開口に沿って配置されている。
【0009】
上記構成では、補修部材接触部から送信された超音波は、補修部材の内部を伝搬する。これにより、補修部材の内部の腐食、クラック等の損傷を検出することができる。
また、超音波探触子と補修対象部材とが接触している場合には、補修対象部材接触部から送信された超音波は、補修対象部材の内部を伝搬する。これにより、補修対象部材の内部の腐食、クラック等の損傷を検出することができる。
したがって、補修部材の一面側に配置される超音波探触子のみで、補修部材と補修対象部材との双方の損傷を検出することができる。また、超音波によって損傷等を検出しているので、微小な損傷も検出することができる。
また、補修部材及び補修対象部材の各々に対して、他の部材を介さずに超音波を伝搬させている。これにより、各部材を伝搬する超音波が、補修部材と補修対象部材との接触面(界面)を通過しない。よって、伝搬する超音波の減衰を抑えることができる。したがって、より精度よく各部材の損傷を検出することができる。
なお、超音波探触子は、油等を介して補修対象物または補修部材と接触していてもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る補修部材は、前記超音波探触子は、複数設けられ、前記複数の超音波探触子は、前記開口を囲うように配置されてもよい。
【0011】
開口周辺の領域では、応力集中等によって損傷が発生し易い。上記構成では、複数の超音波探触子が、開口を囲うように配置されているので、損傷が発生し易い開口周辺の領域を複数の超音波探触子によって、検出対象領域とすることができる。したがって、開口周辺の領域で発生した損傷を好適に検出することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る補修部材は、前記超音波探触子は、前記補修部材接触部及び前記補修対象部材接触部から、前記補修部材の前記一面に対して傾斜する方向に超音波を送信可能な送信用超音波探触子を含んでいてもよい。
【0013】
上記構成では、傾斜する方向に超音波を送信可能であるので、水平方向に超音波を送信する場合と比較して、補修部材及び補修対象部材に対して、板厚方向に広範囲に超音波を送信することができる。また、垂直方向に超音波を送信する場合と比較して、補修部材及び補修対象部材に対して、面内方向に広範囲に超音波を送信することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る補修部材は、前記補修対象部材と接触する一面側にて凹状に形成された凹部を有し、前記超音波探触子は、前記凹部の内部に配置されていてもよい。
【0015】
上記構成では、補修部材に凹部を設け、その凹部に超音波探触子を配置しているので、補修対象物に超音波探触子を設置する加工を施すことなく、超音波探触子を設けた補修構造とすることができる。このように、補修対象物に加工を施さないので、補修対象物の強度等を減少させずに補修構造を適用することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る補修構造は、開口が形成された補修対象部材と、前記補修対象部材に固定され、前記開口を覆う板状の補修部材と、前記補修対象部材と接触する補修部材接触部及び、前記補修対象部材と接触する補修対象部材接触部を有し、前記補修対象部材と前記補修部材との接触面に配置される超音波探触子と、を備え
、前記超音波探触子は、前記開口に沿って配置されている。
【0017】
上記構成では、補修部材接触部から送信された超音波は、補修部材の内部を伝搬する。これにより、補修部材の内部の腐食、クラック等の損傷を検出することができる。
また、補修対象部材接触部から送信された超音波は、補修対象部材の内部を伝搬する。これにより、補修対象部材の内部の腐食、クラック等の損傷を検出することができる。
したがって、補修対象部材と前記補修部材との接触面に配置される超音波探触子のみで、補修部材と補修対象部材との双方の損傷を検出することができる。また、超音波によって損傷等を検出しているので、微小な損傷も検出することができる。
また、補修部材及び補修対象部材の各々に対して、他の部材を介さずに超音波を伝搬させている。これにより、各部材を伝搬する超音波が、補修部材と補修対象部材との接触面(界面)を通過しない。よって、伝搬する超音波の減衰を抑えることができる。したがって、より精度よく各部材の損傷を検出することができる。
なお、超音波探触子は、油等を介して補修対象物または補修部材と接触していてもよい。
【0018】
本発明の一態様に係る補修構造は、前記補修部材は、前記補修対象部材と接触する一面側にて凹状に形成された凹部を有し、前記超音波探触子は、前記凹部の内部に配置されていてもよい。
【0019】
上記構成では、補修部材に凹部を設け、その凹部に超音波探触子を配置しているので、補修対象物に超音波探触子を設置する加工を施すことなく、超音波探触子を設けた補修構造とすることができる。このように、補修対象物に加工を施さないので、補修対象物の強度等を減少させずに補修構造を適用することができる。
また、補修部材側に超音波探触子を設けているので、例えば、予め工場等で補修部材に超音波探触子を設けておけば、補修を行う現場では超音波探触子を設置する作業を省略することができる。したがって、現場での作業工程を低減することができる。
【0020】
本発明の一態様に係る損傷検出方法は、上述の補修部材を用いた損傷検出方法であって、前記超音波探触子から超音波を送信するステップと、前記超音波の送受信状態に基づいて前記補修部材及び前記補修対象部材の少なくとも一方の損傷を検出するステップと、を有する。
【0021】
また、本発明の一態様に係る損傷検出方法は、上述の補修構造において、超音波探触子から前記超音波を送信するステップと、前記超音波の送受信状態に基づいて前記補修部材及び前記補修対象部材の少なくとも一方の損傷を検出するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、補修部材及び補修対象部材に発生した損傷を精度よく検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る補修部材及び補修構造並びに損傷検出方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
補修構造1は、例えば、金属製の板材などに損傷が発生した場合に、当該損傷部分を補修する際に適用される。本実施形態では、航空機の外板2に損傷(例えば、腐食やクラック)が発生した場合について説明する。本実施形態では、当該損傷部分を切り取ることで補修を行うため、外板に開口3を形成する。
【0025】
本実施形態に係る補修構造1は、損傷部分を切り取ることで形成された開口3を有する外板(補修対象部材)2と、外板2の外側方向から開口3の全部を覆う補修部材4と、補修部材4に埋め込まれるように設けられる超音波探触子7と、外板2と補修部材4とを固定するファスナ5及びカラー6と、を備える。
【0026】
外板2は、アルミニウム合金等の金属で形成され、内部に航空機における内部空間8を形成している。外板2には、損傷部分を切り取ったことで開口3が形成されている。開口3は、略正方形形状に形成され、四隅に応力が集中しないように、四隅が湾曲するように形成されている。また、開口3は、外板2に発生したクラック等の損傷の残存の恐れがないように、損傷部分に対して比較的大きく形成される。外板2の開口3の周辺領域には、外板2を貫通するファスナ孔2aが複数形成される。複数のファスナ孔2aは、開口3の四辺を形成する縁と平行となるように、等間隔に配置されている。
【0027】
補修部材4は、略正方形状の金属製の板状部材であって、外部に露出する露出面4bと、露出面4bと反対側の面であって外板2と接触する接触面4cとを有する。補修部材4は、開口3よりも大きく形成され、開口3のすべてを覆うように外板2に固定されている。すなわち、補修部材4は、開口3を覆う領域である中央部分と、中央部分を囲む領域であって外板2に固定される固定部分とを有し、固定部分における接触面4cが外板2と接触している。補修部材4は、開口3からのクラックの発生の恐れがないように、開口3に対して比較的大きく形成されている。
【0028】
固定部分には、複数のファスナ孔4aが形成される。複数のファスナ孔4aは、それぞれ、外板2に形成された複数のファスナ孔2aと対応する位置に形成されている。外板2に形成されたファスナ孔2aと、補修部材4に形成されたファスナ孔4aとは、連通することでファスナ貫通孔10を形成する。すなわち、ファスナ貫通孔10は、補修部材4及び外板2を貫通する孔であって、複数形成されている。複数のファスナ貫通孔10の各々には、ファスナ5が挿通する。複数のファスナ貫通孔10の各々にファスナ5が挿通することで、外板2と補修部材4とは固定されている。
固定部分における接触面4cには、露出面4b側に向かって凹む凹部11が複数形成されている。本実施形態では、
図1に示すように、開口3の四隅の近傍であって、かつ、ファスナ孔4aから所定距離だけ離れた位置に凹部11が形成されている。すなわち、開口3を囲うように4つの凹部11が形成されている。各凹部11は、各々、接触面4cから垂直に露出面4b方向に延びる円柱状の側面11aと、側面11aの露出面4b側の端部から接触面4cと並行方向に延びる底面11bとを有する。
【0029】
本実施形態に係る超音波探触子7は、超音波を送信する送信用超音波探触子7tと、送信用超音波探触子7tが送信した超音波を受信する受信用超音波探触子7rとの2種類存在する。いずれの超音波探触子7も、補修部材4に形成された凹部11の内部に配置される。1つの凹部11には、送信用超音波探触子7tまたは受信用超音波探触子7rのどちらかが配置される。本実施形態では、開口3に沿って隣接する凹部11同士には、同種類の超音波探触子7は配置されない。すなわち、送信用超音波探触子7tと受信用超音波探触子7rとは、開口3に沿って、交互に配置されている。
【0030】
送信用超音波探触子7t及び受信用超音波探触子7rは、厚さは1〜2mm、直径5〜6mmの円盤状の部材であって、円形に形成された面のうちの一面(補修部材接触部)7aが凹部11の底面11bと接触するように凹部11内に配置されている。また、同時に、円形の他面(補修対象部材接触部)7bが補修部材4の接触面4cと面一となるように、凹部11内に配置されている。すなわち、外板2と補修部材4とが接触すると、超音波探触子7(送信用超音波探触子7t及び受信用超音波探触子7r)の他面7bも外板2と接触する。なお、送信用超音波探触子7t及び受信用超音波探触子7rと、凹部11の底面とは、直接接触せずに、オイル等を介して接触していてもよい。また、送信用超音波探触子7t及び受信用超音波探触子7rと、外板2とも、直接接触せずに、オイル等を介して接触していてもよい。
【0031】
送信用超音波探触子7t及び受信用超音波探触子7rには、信号線(図示省略)が接続されている。信号線は、送信用超音波探触子7tまたは受信用超音波探触子7rと、航空機の内部空間8に配置された制御装置(図示省略)とを接続する。送信用超音波探触子7t及び受信用超音波探触子7rは、この信号線を介して、制御装置と信号の送受信を行う。制御装置から超音波送信指令信号が信号線を介して送信用超音波探触子7tに送信されると、送信用超音波探触子7tから超音波が送信される。受信用超音波探触子7rが超音波を受信すると、信号線を介して信号が制御装置に送信される。信号線は、外板2に形成された信号線用の挿通穴を介して、航空機の内部空間8まで延び、制御装置と接続されている。
【0032】
送信用超音波探触子7tは、検査対象となる外板2及び補修部材4の内部に向けて超音波を送信するためのもので、制御装置から信号線を介して高電圧(上述の超音波送信指令信号)を印加されることで超音波を送信する。本実施形態では、送信用超音波探触子7tは、
図2に示すように、送信用超音波探触子7tの一面7aから、該一面7aに対して傾斜する方向に超音波を送信する。一面7aから送信された超音波は、補修部材の内部を伝搬する。また、送信用超音波探触子7tは、送信用超音波探触子7tの他面7bから、該他面7bに対して傾斜する方向に超音波を送信する。他面7bから送信された超音波は、外板2の内部を伝搬する。受信用超音波探触子7rは、送信用超音波探触子7tから送信された超音波を受信するためのものであり、受信用超音波探触子7rの両端の電圧を測定するとことで、受信状態を測定する。
【0033】
制御装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
【0034】
ファスナ5は、複数設けられ、
図1に示すように、複数形成されたファスナ貫通孔10のそれぞれに挿通されている。また、ファスナ5は、それぞれ、
図2に示されているように、略円錐台形状の頭部5aと、頭部5aの一端から所定方向に延びる円柱状の軸部5bとを有する。頭部5aは、補修部材4の露出面4bから突出しないように、全体が補修部材4に形成されたファスナ孔4a内に配置される。軸部5bの先端は、外板2から内部空間8に突出するように設けられ、この突出部5cに環状のカラー6が係合することで、外板2と補修部材4とが固定される。
【0035】
次に、本実施形態に係る補修構造1が適用される外板2の補修方法について説明する。
まず、外板2に発生した損傷部分及び損傷部分に隣接する領域を加工装置(図示省略)によって切り取ることで、外板2に開口3を形成する。このとき、損傷の残存の恐れがないように、損傷部分に対して比較的大きめに開口3を形成する。次に、開口3を外側から覆うように補修部材4を外板2に対して配置する。このとき、補修部材4には、予め工場等において、凹部11を形成するとともに、凹部11の内部に超音波探触子7を設置しているので、補修現場では、超音波探触子7を設置する作業は行わない。次に、外板2及び補修部材4に形成されたファスナ貫通孔10にファスナ5を挿通し、ファスナ5の突出部5cとカラー6とを係合させ、外板2と補修部材4とを固定する。なお、補修部材4を外板2に配置する際に、補修部材4と外板2とが接触する面にシーラントを塗布してもよい。
【0036】
次に、本実施形態に係る補修構造1による損傷の検出方法について
図2及び
図3を用いて説明する。なお、
図2及び
図3において黒塗りの矢印は超音波を模式的に示したものである。本実施形態では、いわゆる透過方式の損傷検出方法を用いて損傷を検出する。
図2に示すように、補修部材4の凹部11に配置された送信用超音波探触子7tは、送信用超音波探触子7tの一面7aから、該一面7aに対して傾斜する方向に超音波を送信する。すなわち、送信用超音波探触子7tの一面7aから送信された超音波は、補修部材4の内部を伝搬する。また、同時に、送信用超音波探触子7tは、送信用超音波探触子7tの他面7bから、該他面7bに対して傾斜する方向に超音波を送信する。すなわち、送信用超音波探触子7tの他面7bから送信された超音波は、外板2の内部を伝搬する。
補修部材4及び外板2の内部を伝搬する超音波は、受信用超音波探触子7rによって受信される。受信用超音波探触子7rは、超音波を受信すると受信状態を制御部に送信する。
【0037】
図3(A)に示すように、補修部材4及び外板2に損傷が存在しない場合には、送信用超音波探触子7tから送信された超音波は、損傷に遮られることなく、受信用超音波探触子7rによって受信される。
一方、
図2(A)及び
図3(B)に示すように、補修部材4において、送信用超音波探触子7tと受信用超音波探触子7rとの間にクラック等の損傷Dが存在している場合には、補修部材4の内部を伝搬する超音波の一部は、損傷Dによって遮られる。遮られた超音波は、受信用超音波探触子7rまで至らない。また、
図2(B)及び
図3(B)に示すように、外板2において、送信用超音波探触子7tと受信用超音波探触子7rとの間に損傷Dが存在している場合には、外板2の内部を伝搬する超音波は、損傷Dによって遮られる。遮られた超音波は、受信用超音波探触子7rまで至らない。
【0038】
このように、補修部材4または外板2のどちらかにおいて、送信用超音波探触子7tと受信用超音波探触子7rとの間に損傷Dが存在している場合には、損傷Dによって超音波の少なくとも一部が遮られるので、遮られた超音波については、受信用超音波探触子7rが受信しない。これにより、損傷Dが存在する場合には、損傷が存在しない場合と比較して、受信用超音波探触子7rが受信する超音波の送受信状態が異なる。
したがって、制御部に送信されてきた送受信状態の情報が、送信用超音波探触子7tと受信用超音波探触子7rとの間に損傷がない場合と比較して、異なっている場合には、補修部材4または外板2のどちらかにおいて、送信用超音波探触子7tと受信用超音波探触子7rとの間に損傷が存在していると判断することができる。よって、損傷を検出することができる。
なお、損傷が存在しない場合の送受信状態としては、例えば、補修部材4及び外板2の製造時や修理完了時等の健全性が担保できる状態で取得された送受信状態を用いることができる。
【0039】
この損傷検出方法は、航空機の運転中に行われてもよいし、航空機の運転停止中に行われてもよい。また、常時行われていてもよいし、所定時間ごとに自動的に行われてもよい。また、例えば、メンテナンス時等の特定の時期に、行われてもよい。
【0040】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
補修部材4の接触面4c側に配置される超音波探触子7のみで、補修部材4と外板2との双方の損傷を検出することができる。また、超音波によって損傷等を検出しているので、微小な損傷も検出することができる。
【0041】
補修部材4及び外板2の損傷を超音波探触子によって検出する方法としては、
図6に符号20aで示すように、補修部材4の露出面4bに超音波探触子20aを設置する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、外板2に対して超音波を送信した場合に、送信した超音波が補修部材4を通過し、さらに、補修部材4と外板2との界面を通過することとなる。このように、多くの部材や界面を通過することとなるので、超音波が減衰してしまい、損傷を好適に検出することができない可能性がある。
また、外板2の損傷を超音波探触子によって検出する方法としては、
図6に符号20bで示すように、外板2の内部空間8側の面に超音波探触子20bを設置する方法も考えられる。しかしながら、外板2の内部空間8側の面は、航空機の内部空間8を規定する面となるので、外板2の内部空間8側の面には、様々な部材、装置等が設置されている。具体的には、外板2が航空機の胴体部分を構成する場合には、内部空間8側の面には内装が設けられていて、外板2が航空機の翼部分を構成する場合には、内部空間8側の面には燃料シール等が施されている。したがって、外板2の内部空間8側の面には、好適に超音波探触子を設置することができない可能性がある。また、航空機の翼部分の先端等の狭隘部等では、外板2の内部空間8側の面にアクセスできないので、超音波探触子を設置することができない。
【0042】
これに対し、本実施形態では、補修部材4及び外板2の各々に対して、他の部材を介さずに直接的に超音波を伝搬させている。これにより、各部材を伝搬して損傷の有無を検出する超音波が、補修部材4と外板2との接触面(界面)を通過しない。よって、伝搬する超音波の減衰を抑えることができる。したがって、より精度よく各部材の損傷を検出することができる。特に、超音波探触子を露出面側に設ける構成(
図6参照)と比較して、より精度よく外板2の損傷を検出することができる。
また、補修部材4の接触面4c側に配置される超音波探触子7のみで、補修部材4と外板2との双方の損傷を検出することができるので、外板2の内部空間8側の面に超音波探触子を設けることなく、補修部材4及び外板2の損傷を検出することができる。
【0043】
また、開口3周辺の領域では、応力集中等によって損傷が発生し易い。本実施形態では、複数の超音波探触子7が、開口3を囲うように配置されているので、損傷が発生し易い開口3周辺の領域を複数の超音波探触子7によって、検出対象領域とすることができる。したがって、開口3周辺の領域で発生した損傷をより好適に検出することができる。
【0044】
また、傾斜する方向に超音波を送信するので、水平方向に超音波を送信する場合と比較して、補修部材5及び外板2に対して、板厚方向に広範囲に超音波を送信することができる。また、垂直方向に超音波を送信する場合と比較して、補修部材5及び外板2に対して、面内方向に広範囲に超音波を送信することができる。
【0045】
また、本実施形態では、補修部材4に凹部11を設け、その凹部11に超音波探触子7を配置しているので、航空機を構成する部材である外板2に対して、超音波探触子7を設置するための加工を施すことなく、超音波探触子7を設けた補修構造1とすることができる。このように、外板2に加工を施さないので、外板2の強度等を低減させずに補修構造1を適用することができる。
また、予め工場等で補修部材4に超音波探触子7を設けているので、補修を行う現場では超音波探触子7を設置する作業を省略することができる。したがって、現場での作業工程を低減することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、超音波の送信を行う超音波探触子(送信用超音波探触子7t)と超音波の受信を行う超音波探触子(受信用超音波探触子7r)とを別々に設ける例について説明したが、超音波の送信及び受信のどちらも行える送受信用超音波探触子7trを用いて、いわゆる反射方式の損傷検出方法を用いて損傷を検出してもよい。
この例では、
図4(A)に示すように、損傷がない場合には、送受信用超音波探触子7trから送信された超音波は、そのまま進み続けるので、送受信用超音波探触子7trは超音波を受信しない。一方、
図4(B)に示すように、送受信用超音波探触子7trの周辺に損傷が存在する場合には、損傷により送信した超音波が反射し、反射した超音波を送受信用超音波探触子7trが受信する。したがって、送受信用超音波探触子7trが超音波を受信した場合には、損傷が存在していると判断することができる。
【0048】
また、超音波探触子7を設ける位置は上記実施形態の例に限定されない。損傷が発生した場合に損傷を検出したい箇所であるならば、どこでもよい。例えば、上記実施形態では、開口3の四隅に1つずつ超音波探触子7を配置した例について説明したが、超音波探触子7の配置はこれに限定されない。例えば、
図5に示すように、開口3の四隅に送信用超音波探触子7tと受信用超音波探触子7rとをそれぞれ1つずつ配置してもよい。この場合、送信用超音波探触子7tと受信用超音波探触子7rとは、開口3の角部を挟むように配置される。詳細には、送信用超音波探触子7tと受信用超音波探触子7rとを結ぶ仮想線L1が角部の近傍を通過するように配置される。
このように、送信用超音波探触子7tと受信用超音波探触子7rとを配置することで、開口3周辺の領域のなかでも、応力集中等によって特に損傷が発生し易い開口3の四隅の近傍を検出対象領域とすることができる。したがって、開口3の四隅の近傍の領域で発生した損傷をより好適に検出することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、各凹部11に対して1つの超音波探触子7を配置した例について説明したが、各凹部11に対して2つの超音波探触子を配置してもよい。この場合には、凹部11内で、2つの超音波探触子の円形の面を重ねるように配置することで、補修部材の凹部11の底面11bと接触する超音波探触子と、外板2と接触する超音波探触子とを別の超音波探触子とすることができる。このように、補修部材4と接触する超音波探触子と、外板2と接触する超音波探触子とを別の超音波探触子とすることで、損傷を検出した際に、その損傷が、補修部材4に生じているか、外板2に生じているかを判断することができる。
【0050】
また、信号線の接続経路は、上記実施形態の経路に限られない。例えば、外板2に形成されたファスナ孔2aに、信号線用の溝を形成し、この溝内に信号線を通してもよい。詳細には、超音波探触子7から、ファスナ孔2aまでの区間は、信号線を外板2と補修部材4との間にシーラントとともにはさみ、ファスナ孔2aからはファスナ孔2aに形成された溝内を通してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、補修部材4の接触面4cに凹部11を形成し、凹部11の内部に超音波探触子7を配置しているが、超音波探触子7の配置位置はこれに限定されない。外板2の補修部材4と接触する側の面に凹部を形成し、この凹部内に超音波探触子7を配置してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、補修構造1を航空機の外板2に適用する例について説明したが、補修の対象となる部材(補修対象部材)は航空機の外板2に限定されない。また、上記実施形態では、補修対象部材として金属の部材とする例について説明したが、補修対象部材は金属製に限定されない。例えば、補修対象部材は複合材等であってもよい。