(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0032】
鋭意検討の結果、発明者らは、一切の精製プロセスなしに複合粒子を容易に且つ安全に調製することができて複合粒子の表面活性特性を容易に且つ精密に調整することができる新規な方法によって、安定なピッケリングエマルションを調製する上で十分な表面活性特性を有することができて長時間に亘り表面活性特性を維持することができる新規な複合粒子を調製することが可能であることを発見した。
【0033】
本発明による新規な複合粒子は、少なくとも1つの親水性コア粒子と複数の疎水性粒子とを含む複合粒子であって、親水性コア粒子の表面が、疎水性粒子によって実質的に不連続に被覆され、好ましくは疎水性粒子によって不連続に被覆されている複合粒子を含む。
【0034】
本発明の特定の一実施形態によれば、新規な複合粒子は、少なくとも1つの親水性コア粒子と2種の疎水性粒子とを含み、親水性コア粒子の表面は、疎水性粒子によって実質的に不連続に被覆され、好ましくは疎水性粒子によって不連続に被覆されている。用語「実質的に不連続に被覆されている」は、親水性コア粒子の表面のうちの少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも50%、更により好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも90%、特に少なくとも95%が、疎水性粒子によって被覆されていないことを意味する。
【0035】
本発明による複合粒子を調製する新規な方法は、少なくとも1つの親水性コア粒子と複数の疎水性粒子とを、機械化学的融合法、好ましくはハイブリダイザー法に供する工程を含む。好ましくは、親水性コア粒子の疎水性粒子に対する質量比は、70:30〜80:20、より好ましくは80:20〜90:10、更により好ましくは90:10〜99.9:0.1である。
【0036】
好ましい一実施形態では、本発明による複合粒子を調製する新規な方法は、少なくとも1つの親水性コア粒子と2種の疎水性粒子とを、機械化学的融合法、好ましくはハイブリダイザー法に供する工程を含む。好ましくは、親水性コア粒子の疎水性粒子に対する質量比は、70:30〜80:20、より好ましくは80:20〜90:10、更により好ましくは90:10〜99.9:0.1である。
【0037】
別の好ましい実施形態では、親水性コア粒子の2種の疎水性粒子に対する質量比は、10:90〜70:30、好ましくは15:85〜50:50、更により好ましくは20:80〜30:70とすることができる。
【0038】
本発明によれば、疎水性粒子は、親水性コア粒子の表面へ強力に付着し、したがって、疎水性粒子が親水性コア粒子から脱離することは難しい。疎水性粒子は、親水性コア粒子に付着した状態で維持されることが可能であり、したがって、本発明による複合粒子は、長時間に亘り両親媒性であることができ且つ表面活性特性を有することができる。
【0039】
本発明では、用語「両親媒性複合粒子」は、前記複合粒子が、親水性部分と疎水性部分とを有し、前記親水性部分と疎水性部分とが、油と水とを含有する組成物の、油と水との間の界面で複合粒子が集まることを可能にする異なる極性を有することを意味する。
【0040】
本発明の複合粒子の親水性粒子及び疎水性粒子の極性は、化合物4-(2,4,6-トリフェニルピリジニウム)-2,6-ジフェニルフェノキシド(Reichard色素)を材料と接触させた際の色素のソルバトクロミック効果を測定することによって、スケールE
T(30)で決定することができる。この方法は、この原理について、Dimrothら、「Justus Liebigs Annalen der Chemie」、661(1)、1〜37頁、(1963)の刊行物に開示されている。種々の材料のET(30)値は、Spangeら、「Langmuir」、15(6)、2103〜2111頁(1999)、「J. Phys. Chem. B」、104(27)、6417〜6428頁(2000)、「Natural Fibre Reinforced Polymer Composites from Macro to Nanoscales」、Old City Publishing、初版、2009、47〜72頁、及び「Macromol.Rapid Commun.21」、643〜659頁(2000)により定義された。
【0041】
パラメータE
T(30)(kcal.mol-1で表す)は、テトラメチルシランでの30.7から、水での63.1までである。
【0042】
ΔEが、スケールE
T(30)に従う親水性コア粒子と疎水性シェル粒子との間の極性差であると考える場合、ΔEは、次式:
ΔE=E
T(30)親水性コア粒子-E
T(30)疎水性シェル粒子
によって決定されることになる。
【0043】
好ましくは、親水性コア粒子と疎水性粒子とは、ΔEが2より大きく、より好ましくは5より大きくなるように選択されることになる。
【0044】
親水性コア粒子と疎水性シェル粒子との組合せによって十分な表面活性特性がもたらされるので、本発明による複合粒子を使用して、安定なO/Wピッケリングエマルションを調製することができる。本発明による複合粒子を使用して調製されたO/Wピッケリングエマルションは、経時的に安定でありうる。
【0045】
親水性コア粒子の表面修飾の程度は、例えば走査電子顕微鏡によって容易に調べることができる。
【0046】
本発明によれば、機械化学的融合法は容易に実施することができ且つ有害でありうる一切の試薬又は一切の精製プロセスを必要としないので、上記の複合粒子は、容易に且つ安全に調製することができる。加えて、本発明による方法は、例えば疎水性粒子の量によって複合粒子の両親媒性の性質を容易に且つ精密に調整することができる。
【0047】
そのため、本発明による方法は、単純であり、少なくとも1つの親水性コア粒子と、複数の疎水性粒子、好ましくは異なる2種の疎水性粒子とを含む複合粒子を容易に調製することができ、親水性コア粒子の表面は、疎水性粒子によって実質的に不連続に、好ましくは不連続に被覆され、且つ疎水性粒子は、好ましくは、共有結合以外の化学的及び又は物理的結合により、親水性コア粒子上にしっかりと固定される。複合粒子は、両親媒性であることができ、長時間に亘り表面活性特性を有することができ、且つ安定な水中油ピッケリングエマルションを調製する上で十分な表面活性特性を有することができる。
【0048】
本明細書で以下に、本発明による複合粒子及び方法を構成している要素のそれぞれが、詳細に記載される。
【0049】
[親水性コア粒子]
本発明による複合粒子は、少なくとも1つの親水性コア粒子を含む。コア粒子の種類は、それが親水性である限り、限定されない。そのため、単一の種類の親水性粒子、又は異なる種類の親水性粒子の組合せを使用することができる。本発明の好ましい実施形態によれば、複合粒子は、1つの親水性コア粒子を含む。
【0050】
本発明では、用語「親水性粒子」は、全ての前記粒子が、それらが凝集体を形成しないように水性相中で個別に分散していることを意味する。
【0051】
親水性コア粒子の直径は限定されないが、10nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更により好ましくは200nm以上、一層より好ましくは500nm以上、更に一層より好ましくは1000nm以上の平均粒径を有することができる。親水性コア粒子の平均粒径は、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、更により好ましくは200μm以下、一層より好ましくは50μm以下、更に一層より好ましくは10μm以下とすることができる。したがって、親水性コア粒子は、平均粒径が100nm〜200μm、好ましくは500nm〜50μm、より好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜20μm、より好ましくは1〜10μm、更により好ましくは0.1〜1μmとすることが可能である。
【0052】
親水性コア粒子の最長径/最短径の比が、1.0〜2.5、好ましくは1.0〜2.0、より好ましくは1.0〜1.5の範囲であることが好ましい。
【0053】
親水性コア粒子の90体積%以上が、2〜7μm、好ましくは2〜6μm、より好ましくは2〜5μmの範囲の平均一次粒径を有することが好ましい。コア粒子の90体積%以上が、2〜7μmの範囲の平均一次粒径を有する場合、該コア粒子に起因する光学的効果もまた達成されうる。
【0054】
平均(一次)粒径は、例えば、レーザー回折粒径アナライザー等の粒径アナライザーを使用して、SEM等によって得られる写真画像を測定することにより測定されうる。レーザー回折粒径アナライザー等の粒径アナライザーを使用することが好ましい。
【0055】
親水性コア粒子は、無機材料若しくは有機材料又はこれらの混合物から作製することができる。
【0056】
例えば、親水性無機コア粒子は、金属酸化物、特に遷移金属酸化物、例えば酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化鉄及び二酸化チタン;タルク;天然又は合成マイカ;アルミナ;アルミノシリケート;シリカ(又は二酸化ケイ素);中空シリカ微小球、例えばMaprecos社からの「Silica Beads SB 700(登録商標)」、旭硝子株式会社からの「Sunspheres H-33(登録商標)」及び「Sunspheres H-51(登録商標)」;カオリン;クレイ等のシリケート;炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム;炭酸水素マグネシウム;ガラス及びガラスマイクロカプセル;並びにこれらの混合物から作製することができる。
【0057】
例えば、親水性有機コア粒子は、天然又は半合成ポリマー、例えばデンプン及び多糖類、並びにこれらの混合物から作製することができる。
【0058】
親水性コア粒子として、例えばその表面が化学的処理によって親水性となった疎水性粒子が使用されてもよい。疎水性粒子として挙げることができるのは、疎水性シェル粒子として以下に示すものである。
【0059】
親水性コア粒子が少なくとも1種の多糖を含むことが好ましい。親水性コア粒子が少なくとも1種の多糖からなることが、より好ましい。
【0060】
多糖は、デンプン、セルロース及びその誘導体、並びにこれらの混合物から選択することができる。セルロース及びその誘導体が好ましい。本発明の好ましい実施形態では、多糖は、セルロースとすることができる。
【0061】
本発明による複合粒子中の親水性コア粒子のための1つ又は複数の材料として使用されうるセルロース及びその誘導体は、多孔質であっても無孔質であってもよい。しかしながら、セルロース及びその誘導体が多孔質であることが好ましい。
【0062】
セルロース及びその誘導体の多孔度は、BET法に従って、比表面積が0.05m
2/g〜1,500m
2/g、より好ましくは0.1m
2/g〜1,000m
2/g、更により好ましくは0.2m
2/g〜500m
2/gであることによって特徴付けることができる。
【0063】
本発明において、使用されうるセルロースは、セルロースI、セルロースII等のようなセルロースの種類によって限定されることはない。本発明による複合粒子中のコア粒子のための材料として使用されうるセルロースとして、II型セルロースが好ましい。
【0064】
本発明による複合粒子中の親水性コア粒子のための材料として使用されうるセルロースは、粒子の形態、特に球状粒子の形態にあることが好ましい。
【0065】
セルロース粒子、好ましくは球状セルロース粒子は、例えば以下のようにして調製することができる。
(1)凝集阻害剤として炭酸カルシウムのスラリーを、アルカリ性の水溶性アニオン性ポリマー水溶液に加え、撹拌する。
(2)ビスコースと、上の(1)で得られた水溶液とを混合して、ビスコース微粒子の分散体を形成する。
(3)上の(2)で得られたビスコース微粒子の分散体を加熱して該分散体中のビスコースを凝集させ、酸で中和してセルロース微粒子を生成する。
(4)該セルロース微粒子を、上の(3)で得られた母液から分離し、必要に応じて洗浄して乾燥させる。
【0066】
ビスコースは、セルロースの原料である。ガンマ価が30〜100質量%で、アルカリ濃度が4〜10質量%のビスコースを使用することが好ましい。上記の水溶性アニオン性ポリマーとして挙げることができるのは、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩等である。上記の炭酸カルシウムは、分散体中のビスコース微粒子の凝集を防止するために、且つセルロース粒子の粒径を小さくするために使用される。炭酸カルシウムスラリーとして挙げることができるのは、日本の奥多摩工業株式会社によって市販されているTama Pearl TP-221 GSである。
【0067】
親水性コア粒子は、予め被覆されていてもいなくてもよい。
【0068】
特定の一実施形態では、親水性コア粒子は、コーティングを有していてもよい。親水性コア粒子のコーティングの材料は、材料が親水性である限り、限定されない。コーティングの材料の例として挙げることができるのは、モノ若しくはジカルボン酸又はその塩、アミノ酸、N-アシルアミノ酸、及びアミド化合物である。コーティングの材料として、コハク酸カリウム及びラウロイルリジンが好ましくてもよい。特定の一実施形態では、親水性コア粒子は、金属酸化物、好ましくは二酸化チタンを含むコーティングを有することができる。
【0069】
換言すると、親水性コア粒子は、表面処理されていてもよい。表面処理の例として挙げることができるのは、
(a)N-アシル化リジン処理
(b)ポリアクリル酸処理
(c)金属石けん処理、例えばステアリン酸塩又はミリスチン酸塩を含む金属石けん処理
(d)アクリル樹脂処理、及び
(e)金属酸化物処理
である。
【0070】
上記の複数の表面処理を組み合わせて実施することが可能である。
【0071】
一実施形態によれば、セルロース誘導体は、セルロースエステル及びエーテルから選択することができる。
【0072】
なお、用語「セルロースエステル」は、本明細書中の上記及び下記の文章中で、α(1〜4)配列の部分的に又は全体的にエステル化された無水グルコース環からなるポリマーを意味し、このエステル化は、前記無水グルコース環の遊離ヒドロキシル官能基の全て又はそのうちの幾つかのみが、1〜4個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状カルボン酸又はカルボン酸誘導体(酸塩化物又は酸無水物)と反応することによって得られる。
【0073】
好ましくは、セルロースエステルは、前記環の遊離ヒドロキシル官能基の幾つかと、1〜4個の炭素原子を含有するカルボン酸との反応の結果生じる。
【0074】
有利には、セルロースエステルは、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、イソ酪酸セルロース、アセト酪酸セルロース及びアセトプロピオン酸セルロース、並びにこれらの混合物から選択される。
【0075】
これらのセルロースエステルは、3,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは15,000〜300,000の範囲の質量平均分子量を有することができる。
【0076】
本明細書中の上記及び下記の文章中で、用語「セルロースエーテル」は、α(1〜4)配列の部分的にエーテル化された無水グルコース環からなるポリマーであって、前記環の遊離ヒドロキシル官能基のうちの幾つかが、-OR基で置換されており、Rが、好ましくは、1〜4個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状アルキル基であるポリマーを意味する。
【0077】
したがって、セルロースエーテルは、好ましくは、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基を有するセルロースアルキルエーテル、例えばセルロースメチルエーテル、セルロースプロピルエーテル、セルロースイソプロピルエーテル、セルロースブチルエーテル及びセルロースイソブチルエーテルから選択される。
【0078】
これらのセルロースエーテルは、3,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは15,000〜300,000の範囲の質量平均分子量を有することができる。
【0079】
本発明による複合粒子に使用される親水性コア粒子のための多糖類は、好ましくは、
少なくとも25ml/100g、好ましくは35〜600ml/100g、より好ましくは40〜500ml/100gの油の湿潤点を有することができ、且つ
少なくとも50ml/100g、好ましくは100〜600ml/100g、更により好ましくは150〜500ml/100gの水の湿潤点を有することができる。
【0080】
本明細書における用語「油の湿潤点」は、特に、目的の粉末でのペーストの形成よって認識されうる、目的の粉末を完全に濡らす上で必要な油の分量又は量を意味する。
【0081】
油の湿潤点は、以下のプロトコルによって決定することができる:
(1)油、特に直鎖状エステル油、例えば、9cPの粘度及び0.853g/mlの密度を有するイソノナン酸イソノニルを加えながら、スパチュラでガラス板上の目的の粉末2gを練る。
(2)目的の粉末が完全に濡れて、ペーストを形成し始めたら、加えた油の質量を湿潤点の質量として決定する。
(3)油の湿潤点を、式:油の湿潤点(ml/100g)={(湿潤点の質量)/2g}×100/油の密度、から計算する。
【0082】
同様に、本明細書における用語「水の湿潤点」は、特に、目的の粉末でのペーストの形成によって認識されうる、目的の粉末を完全に濡らす上で必要な水の分量又は量を意味する。
【0083】
水の湿潤点は、以下のプロトコルによって決定することができる:
(1)0.998g/mlの密度を有する水を加えながら、スパチュラでガラス板上の目的の粉末2gを練る。
(2)目的の粉末が完全に濡れて、ペーストを形成し始めたら、加えた水の質量を湿潤点の質量として決定する。
(3)水の湿潤点を、式:水の湿潤点(ml/100g)={(湿潤点の質量)/2g}×100/水の密度、から計算する。
【0084】
本発明による複合粒子中の親水性コア粒子の水の湿潤点/油の湿潤点の比が、5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更により好ましくは2以下であることが好ましい。
【0085】
本発明による複合粒子中の親水性コア粒子として挙げることができるのは、例えば、日本の大東化成工業株式会社により市販されている以下の球状セルロース粒子である:
粒径が4μmのCellulobeads USF(油の湿潤点は296.0ml/100gであり、水の湿潤点は400.8ml/100gであり、水の湿潤点/油の湿潤点の比は1.4である)(多孔質セルロース)、
粒径が10μmのCellulobeads D-5(油の湿潤点は49.8ml/100gであり、水の湿潤点は205.0ml/100gであり、水の湿潤点/油の湿潤点の比は4.1である)、
粒径が15μmのCellulobeads D-10(油の湿潤点は44.0ml/100gであり、水の湿潤点は164.0ml/100gであり、水の湿潤点/油の湿潤点の比は3.7である)、
粒径が10μmのMOISCELL PW D-5 XP(油の湿潤点は58.6ml/100gであり、水の湿潤点は281.5ml/100gであり、水の湿潤点/油の湿潤点の比は4.8である)(コハク酸セルロースカリウム)、及び
粒径が50μmのMOISCELL PW D-50 XP(油の湿潤点は39.9ml/100gであり、水の湿潤点は160.0ml/100gであり、水の湿潤点/油の湿潤点の比は4である)(コハク酸セルロースカリウム)。
【0086】
Cellulobeads USF及びCellulobeads D-5が好ましい。Cellulobeads USFが最も好ましい。
【0087】
[疎水性粒子]
本発明による複合粒子中の親水性コア粒子の表面は、疎水性粒子によって実質的に不連続に、好ましくは不連続に被覆されている。換言すれば、親水性コア粒子の表面の全てが疎水性粒子によって被覆若しくはコーティングされているわけではないか、又は全てが疎水性粒子によって被覆若しくはコーティングされている。疎水性粒子は、コア粒子の周りのシェル粒子と称されうる。
【0088】
親水性コア粒子の表面のうちの10〜90%、好ましくは10〜70%、より好ましくは30〜50%が、疎水性粒子によって被覆されていることが好ましいことがある。
【0089】
疎水性シェル粒子は親水性コア粒子の表面上に存在し且つ親水性コア粒子の被覆されていない親水性表面が存在するため、本発明による複合粒子は、両親媒性であることができ、且つ表面活性効果を有することができる。
【0090】
シェル粒子の種類は、それが疎水性である限り、限定されない。そのため、単一の種類の疎水性粒子、又は異なる種類の疎水性粒子の組合せを使用することができる。本発明の好ましい一実施形態によれば、複合粒子は、親水性コア粒子、好ましくは1つのコア粒子と、異なる少なくとも2種の疎水性粒子、好ましくは異なる2種の疎水性粒子とを含む。
【0091】
本発明では、用語「疎水性粒子」は、全ての前記粒子が、それらが凝集体を形成しないように油性相中で個別に分散していることを意味する。
【0092】
疎水性シェル粒子の直径は限定されないが、10nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上の平均粒径を有することができる。疎水性シェル粒子の平均粒径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更により好ましくは20μm以下、一層より好ましくは5μm以下、更に一層より好ましくは1μm以下とすることができる。そのため、疎水性シェル粒子は、10nm〜100μm、好ましくは10nm〜20μm、より好ましくは50nm〜10μm、更により好ましくは0.1〜1μmの平均粒径を有することが可能である。
【0093】
本発明の特定の一実施形態では、複合粒子は、少なくとも1つの親水性コア粒子と、平均粒径が異なる少なくとも2種の疎水性粒子とを含む。好ましくは、複合粒子は、それらの平均粒径の比が1:2〜1:10000、好ましくは1:10〜1:1500であることによって特徴付けられる、1つの親水性コア粒子と、異なる2種の疎水性粒子とを含む。より好ましくは、1種の疎水性シェル粒子は50nm〜1μmの平均粒径を有することができ、他の疎水性シェル粒子は1μm〜50μmの平均粒径を有することができる。
【0094】
疎水性シェル粒子の最長径/最短径の比が、1.0〜2.5、好ましくは1.0〜2.0、より好ましくは1.0〜1.5の範囲であることが好ましい。
【0095】
平均(一次)粒径は、例えば、レーザー回折粒径アナライザー等の粒径アナライザーを使用して、SEM等によって得られる写真画像を測定することにより測定されうる。レーザー回折粒径アナライザー等の粒径アナライザーを使用することが好ましい。
【0096】
疎水性シェル粒子は、無色又は白色の粉末であってもよい。例えば、疎水性シェル粒子は、化粧料において従来使用されてきたフィラー及び/又は光学的材料から選択することができる。
【0097】
疎水性シェル粒子は、中空であってもそうでなくてもよく、又はこれらの混合物であってもよい。
【0098】
疎水性シェル粒子は、無機材料若しくは有機材料又はこれらの混合物から作製することができる。
【0099】
例えば、疎水性有機シェル粒子は、ポリアミド[Nylon(登録商標)]、poly-β-アラニン及びポリエチレン粉末等の合成ポリマー;テトラフルオロエチレンポリマー[Teflon(登録商標)]粉末;シリコーン樹脂マイクロビーズ、例としては株式会社東芝からの「Tospearls(登録商標)」;アクリレートポリマー微小球、例えばR.P.Scherrer社からの架橋アクリレートコポリマー「Polytrap 6603(登録商標)」から作製されるもの、及びSEPPIC社からのポリメタクリル酸メチル「Micropearl M100(登録商標)」から作製されるもの;ポリ尿素粉末;ポリウレタン粉末、例えば東色ピグメント株式会社により名称「Plastic Powder D-400(登録商標)」で販売されているヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールヘキシルラクトンのコポリマー粉末;アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルのポリマー又はコポリマーのマイクロカプセル、或いは塩化ビニリデンとアクリロニトリルのコポリマーのマイクロカプセル、例としてはExpancel社からの「Expancel(登録商標)」;信越化学工業株式会社により名称「KSP100(登録商標)」で販売されているもの等のエラストマー性架橋オルガノポリシロキサン粉末;並びにこれらの混合物から作製することができる。
【0100】
疎水性シェル粒子が、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、及びスチレン/アクリレートコポリマーから選択され、好ましくはポリ(メタ)アクリル酸アルキル及び架橋スチレン/アクリレートコポリマーから選択され、より好ましくはポリ(メタ)アクリル酸メチル及び架橋スチレン/メタクリル酸メチルコポリマーから選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。疎水性シェル粒子が、ポリ(メタ)アクリレート及びポリ(メタ)アクリル酸アルキル、架橋スチレン/アクリレートコポリマーから選択され、更により好ましくはポリ(メタ)アクリル酸アルキルから選択され、更に一層より好ましくはポリ(メタ)アクリル酸メチル又は架橋スチレン/メタクリル酸メチルから選択される少なくとも1つからなることがより好ましい。好ましい一実施形態では、疎水性シェル粒子は、ポリ(メタ)アクリル酸メチルからなる。別の好ましい実施形態では、疎水性シェル粒子は、架橋スチレン/メタクリル酸メチルからなる。
【0101】
疎水性シェル粒子の例として挙げることができるのは、
日本の綜研化学株式会社により市販されているMP-2200等のポリメタクリル酸メチル、
PAC-M810等の架橋ポリメタクリル酸メチル多孔質粒子、及びDow社により市販されているSUNSPHERES等の架橋スチレン/アクリレートコポリマー中空コア粒子
である。
【0102】
疎水性シェル粒子として、日本の綜研化学株式会社により市販されているMP-2200等のポリメタクリル酸メチル、及びDow社により市販されている架橋スチレン/アクリレートコポリマー中空コア粒子SUNSPHERESが特に好ましい。
【0103】
親水性コア粒子の疎水性粒子に対する質量比が、70:30〜80:20、好ましくは80:20〜90:10、より好ましくは90:10〜99.9:0.1であることが好ましい。
【0104】
別の好ましい一実施形態では、親水性コア粒子の疎水性粒子に対する質量比は、10:90〜70:30、好ましくは15:85〜50:50、更により好ましくは20:80〜30:70とすることができる。
【0105】
(疎水性シェル粒子としての粒状無機UVフィルター)
疎水性シェル粒子として、粒状無機UVフィルターを使用することができる。2種以上の粒状無機UVフィルターを使用する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。用語「UVフィルター」は、「UV遮蔽剤」と言い換えることができる。
【0106】
無機UVフィルターは、無機UVフィルターの表面が疎水性であるか又は疎水性に修飾されている限り、疎水性シェル粒子として使用することができる。2種以上の無機UVフィルターを使用する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0107】
本発明のために使用される無機UVフィルターは、UV-A及び/又はUV-B領域において、好ましくはUV-B領域において、又はUV-A領域とUV-B領域とにおいて活性なものとすることができる。無機UVフィルターの活性UVフィルター領域と、粒状有機UVフィルターの活性UVフィルター領域とが、包括的なUV保護を実現するために、互いに相補的であることが好ましい。例えば、無機UVフィルターが少なくともUV-B領域において活性であり、粒状有機UVフィルターが少なくともUV-A領域において活性であることが好ましい。無機UVフィルターは、親水性及び/又は親油性であってもよい。無機UVフィルターは、化粧料で汎用される水及びエタノール等の溶媒に完全に不溶性である。
【0108】
無機UVフィルターは、有機UVフィルターによってコーティングされることが可能であり、且つ無機UVフィルターの活性UVフィルター領域と、有機UVフィルターの活性UVフィルター領域とが、包括的なUV保護を実現するために、互いに相補的であることが好ましい。
【0109】
無機UVフィルターが、その平均(一次)粒子直径が1nm〜50nm、好ましくは5nm〜40nm、より好ましくは10nm〜30nmの範囲であるような微粒子の形態にあることが好ましい。平均(一次)粒径又は平均(一次)粒子直径は、本明細書では、算術平均直径である。
【0110】
無機UVフィルターは、炭化ケイ素、コーティングされた金属酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0111】
好ましくは、無機UVフィルターは、金属酸化物で形成された顔料(平均一次粒径:概して5nm〜50nm、好ましくは10nm〜50nm)、例えば、全てそれ自体周知のUV光防護剤である、酸化チタン(非晶質又はルチル型及び/若しくはアナターゼ型の結晶質)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム又は酸化セリウムで形成された顔料から選択される。好ましくは、無機UVフィルターは、酸化チタン、酸化亜鉛から、より好ましくは酸化チタンから選択される。
【0112】
無機UVフィルターが親水性である場合、無機UVフィルターの表面は、疎水性であるように修飾されるべきである。無機UVフィルターは、少なくとも1つの疎水性コーティングを有していてもよい。コーティングは、シリコーン、シラン、脂肪酸又はその塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、鉄塩又はアルミニウム塩)、脂肪アルコール、ビーズワックス等のワックス、(メタ)アクリレートポリマー及び(ペル)フルオロ化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含むことができる。
【0113】
コーティングがシリコーンを含む場合、コーティング中のシリコーンは、様々な分子量の、直鎖状又は環状で、分枝状又は架橋した構造を含む有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーであって、好適な官能性シランの重合及び/又は重縮合によって得られ、ケイ素原子が酸素原子を介して互いに結合(シロキサン結合)し、任意選択で置換炭化水素基が炭素原子を介して前記ケイ素原子に直接結合している主単位の繰返しから本質的に構成される有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーとしてもよい。
【0114】
用語「シリコーン」はまた、それらの調製に必要なシラン、特にアルキルシランも包含する。
【0115】
コーティングに使用されるシリコーンは、好ましくは、アルキルシラン、ポリジアルキルシロキサン及びポリアルキルヒドロシロキサンからなる群から選択することができる。更により好ましくは、シリコーンは、オクチルトリメチルシラン、ポリジメチルシロキサン及びポリメチルヒドロシロキサンからなる群から選択される。
【0116】
当然ながら、金属酸化物で作製される無機UVフィルターは、シリコーンで処理される前に、他の表面処理剤、特に酸化セリウム、アルミナ、シリカ、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、又はこれらの混合物で処理されていてもよい。
【0117】
コーティングされた無機UVフィルターは、無機UVフィルターを、上に記載した化合物のいずれかを用いた、1つ又は複数の化学的、電気的、機械化学的及び/又は機械的性質の表面処理に供することによって、調製することができる。
【0118】
コーティングされた無機UVフィルターは、その表面上にコーティングを有する酸化チタン顔料とすることができる。
【0119】
シリコーンで処理された酸化チタン顔料は、オクチルトリメチルシランで処理され、その個々の粒子の平均粒径が25〜40nmであるTiO
2、例えば、Degussa Silices社により商標「T 805」で市販されているもの、ポリジメチルシロキサンで処理され、その個々の粒子の平均粒径が21nmであるTiO
2、例えばCardre社により商標「70250 Cardre UF TiO
2Si
3」で市販されているもの、ポリジメチルヒドロシロキサンで処理され、その個々の粒子の平均粒径が25nmであるアナターゼ/ルチルTiO
2、例えばColor Techniques社により商標「Microtitanium Dioxide USP Grade Hydrophobic」で市販されているものであることが好ましい。
【0120】
好ましくは、コーティングされた無機UVフィルターとして、以下のコーティングされたTiO
2を使用することができる:
ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO
2、例えば平均一次粒子直径がそれぞれ15nm及び10nmである、テイカ株式会社からの製品「MT-100 TV」及び/又は「MT-10 EX」、
ジメチコン(及び)ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO
2、例えば平均一次粒子直径が15nmである、三好化成株式会社からの製品「SA-TTO-S4」、
シリカ(及び)TiO
2、例えば平均一次粒子直径が15nmであるテイカ株式会社からの製品「MT-100 WP」、
ジメチコン(及び)シリカ(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO
2、例えば平均一次粒子直径が10nmである、テイカ株式会社からの製品「MT-Y02」及び「MT-Y-110 M3S」、
ジメチコン(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO
2、例えば平均一次粒子直径が15nmである、三好化成株式会社からの製品「SA-TTO-S3」、
ジメチコン(及び)アルミナ(及び)TiO
2、例えば平均一次粒子直径が15nmである、Sachtleben社からの製品「UV TITAN M170」、並びに
シリカ(及び)水酸化アルミニウム(及び)アルギン酸(及び)TiO
2、例えば平均一次粒子直径が15nmである、テイカ株式会社からの製品「MT-100 AQ」。
【0121】
UVフィルター能の観点から、少なくとも1つの有機UVフィルターでコーティングされたTiO
2が、より好ましい。例えば、平均一次粒子直径が15nmである、テイカ株式会社からの製品「HXMT-100ZA」等の、アボベンゾン(及び)ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO
2を使用することができる。
【0122】
コーティングされた酸化亜鉛顔料は、例えば
株式会社東芝により商標「Oxide Zinc CS-5」で市販されているもの(ポリメチルヒドロシロキサンでコーティングされたZnO)、
Nanophase Technologies社により商標「Nanogard Zinc Oxide FN」で市販されているもの(Finsolv TNの40%分散体、安息香酸C
12〜C
15アルキル);
大東化成工業株式会社により商標「Daitopersion Zn-30」及び「Daitopersion Zn-50」で市販されているもの(シリカ及びポリメチルヒドロシロキサンでコーティングされた亜鉛ナノオキシドを30%又は50%含む、オキシエチレン化ポリジメチルシロキサン/シクロポリメチルシロキサン分散体);
Daikin社により商標「NFD Ultrafine ZnO」で市販されているもの(ペルフルオロアルキルのリン酸エステル及びペルフルオロアルキルエチルをベースとしたコポリマーでコーティングされたZnO、シクロペンタシロキサン中の分散体);
信越化学工業株式会社により商標「SPD-Z1」で市販されているもの(シクロジメチルシロキサンに分散させた、シリコーングラフト化アクリルポリマーでコーティングされたZnO);
ISP社により商標「Escalol Z100」で市販されているもの(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル/PVP-ヘキサデセンコポリマー/メチコンの混合物に分散させたアルミナ処理ZnO);並びに
冨士色素株式会社により商標「Fuji ZnO-SMS-10」で市販されているもの(シリカ及びポリメチルシルセスキオキサンでコーティングされたZnO);
Elementis社により商標「Nanox Gel TN」で市販されているもの(ヒドロキシステアリン酸重縮合物を有する安息香酸C
12〜C
15アルキルに55%で分散させたZnO)
である。
【0123】
コーティングされた酸化鉄顔料は、例えば、Arnaud社により商標「Nanogard WCD 2008 (FE 45B FN)」、「Nanogard WCD 2009 (FE 45B 556)」、「Nanogard FE 45 BL 345」及び「Nanogard FE 45 BL」で、又はBASF社により商標「Oxyde de fer transparent」で市販されている。
【0124】
本発明による複合粒子が無機UVフィルターの疎水性シェル粒子を有する場合、複合粒子は、表面活性効果だけでなくUVシールド効果も有することができる。その上、複合粒子は、粒状無機UVフィルターの微粒子が凝集せずにコア粒子上に広がるので、透明又はクリアな外観を与える効果を有することができる。
【0125】
本発明による好ましい一実施形態では、複合粒子は、1つの親水性コア粒子と、少なくとも1つの有機材料を含む第1の疎水性シェル粒子、及び第2の疎水性シェル粒子としての粒状無機UVフィルターとを含む。好ましくは、複合粒子は、多糖又は多糖誘導体からなる1つの親水性コア粒子と、少なくとも1つの合成ポリマー材料を含む第1の疎水性シェル粒子、及び第2の疎水性シェル粒子としての二酸化チタンを含む粒状無機UVフィルターとを含む。更により好ましくは、複合粒子は、セルロース及び/又はセルロースエステル誘導体及び/又はセルロースエーテル誘導体からなる1つのコア粒子と、架橋スチレン/メタクリレートコポリマーを含む第1の疎水性シェル粒子、及び第2の疎水性シェル粒子としての二酸化チタンを含む粒状無機UVフィルターとを含む。特に、複合粒子は、セルロース及び/又はセルロースエステル誘導体及び/又はセルロースエーテル誘導体からなる1つのコア粒子と、架橋スチレン/メタクリレートコポリマーを含む第1の疎水性シェル粒子、及び第2の疎水性シェル粒子としてのステアリン酸水酸化アルミニウムでコーティングされた二酸化チタンからなる粒状無機UVフィルターとを含む。
【0126】
(複合粒子を調製する方法)
本発明による複合粒子は、
少なくとも1つの親水性コア粒子と、
複数の疎水性粒子、好ましくは異なる2種の疎水性粒子と
を、機械化学的融合法に供することによって調製することができ、
親水性コア粒子の疎水性粒子に対する質量比は、好ましくは70:30〜80:20、より好ましくは80:20〜90:10、更により好ましくは90:10〜99.9:0.1である。
【0127】
別の好ましい実施形態では、親水性コア粒子の疎水性粒子に対する質量比は、10:90〜70:30、好ましくは15:85〜50:50、更により好ましくは20:80〜30:70とすることができる。
【0128】
親水性コア粒子として、上で説明したものを使用することができる。疎水性粒子として、上で説明したもの、並びに上で説明した粒状無機UVフィルターを使用することができる。
【0129】
機械化学的融合法は、衝撃力、摩擦力又は剪断力等の機械的力を、複数の対象に加えて、対象間の融合を引き起こす方法を意味する。
【0130】
機械化学的融合法は、例えば、日本のホソカワミクロン株式会社により市販されているメカノフュージョンシステム等の、回転するチャンバと、掻き板を有する固定された内部部品とを含む装置によって実施することができる。機械化学的融合法は、更に、日本のホソカワミクロン株式会社により市販されているメカノフュージョンプロセス等の、乾燥条件下にあるチャンバ内に複数の刃を有する高速ローターを備えた装置を使用して実施することもできる。
【0131】
機械化学的融合法としてハイブリダイザー法を使用することが好ましい。
【0132】
ハイブリダイザー法は、1980年代に開発された。ハイブリダイザー法は、多数の粒子に機械的な強い力をかけて機械化学的反応を引き起こし、複合粒子を形成する機械化学的融合法の一部類である。
【0133】
ハイブリダイザー法によれば、機械的力は、10cm〜1mの直径を有することができ、1,000rpm〜100,000rpmの速度で回転することができる高速ローターによって付与される。したがって、ハイブリダイザー法は、そのような高速ローターを使用する機械化学的融合法であると定義することができる。ハイブリダイザー法は、空気中又は乾燥条件下で実施される。そのため、ローターの高速回転によって、ローター付近に高速空気流が発生しうる。しかしながら、幾つかの液体材料は、固体材料と一緒にハイブリダイザー法に供することができる。用語「ハイブリダイザー法」は、技術用語として使用される。
【0134】
本発明の別の実施形態によれば、機械的力は、10〜1000m/秒、好ましくは20〜100m/秒の線速度で回転することができる高速ローターによって付与されうる。
【0135】
ハイブリダイザー法は、例えば日本の株式会社奈良機械製作所により市販されているハイブリダイゼーションシステムを使用することによって実施することができ、このシステムでは、少なくとも2種の粒子、通常はコア粒子と微粒子とを、乾燥条件下にあるチャンバ内に複数の刃を有する高速ローターを備えたハイブリダイザーに供給し、粒子をチャンバ内に分散させ、粒子に機械及び熱エネルギー(例えば、圧縮、摩擦及び剪断応力)を、1〜60分、好ましくは1〜30分、更により好ましくは1〜10分、特に1〜5分等の比較的短い時間付与する。結果として、一方の種類の粒子(例えばシェル粒子)が他方の種類の粒子(例えばコア粒子)上に包埋又は固定されて、複合粒子が形成される。粒子が振盪等の静電処理に供されて、一方の種類の粒子が広がって他方の種類の粒子を被覆している「オーダードミクスチャー」を形成させておくことが好ましい。ハイブリダイザー法は、日本の徳寿工作所により市販されているシータコンポーザを使用して実施することもできる。
【0136】
ハイブリダイザー法は、日本コークス工業株式会社によって市販されているComposi Hybrid又はMechano Hybridを使用して実施することもできる。
【0137】
本発明の一実施形態によれば、例えば、親水性コア粒子と疎水性シェル粒子とがこのようなハイブリダイザー中へ供給されて、複合粒子が形成されうる。ハイブリダイザー法は、約8,000rpm(100m/秒)で回転するローターを約3分間使用することによって実施することができる。
【0138】
本発明の別の実施形態では、機械化学的融合法は、約32.5m/秒で約20分間回転するローターを使用して実施することができる。
【0139】
機械化学的融合法、特にハイブリダイザー法は、コア粒子が、上に説明したものを含み且つ上に説明した少なくとも1つの疎水性無機UVフィルターを任意選択で含んでいてもよい疎水性粒子によって部分的に又は実質的に不連続に被覆されている、複合粒子を提供することができる。
【0140】
好ましい一実施形態では、本発明による複合粒子は、1つの親水性コア粒子と、少なくとも1つの有機材料を含む第1の疎水性シェル粒子、及び第2の疎水性シェル粒子としての粒状無機UVフィルターとを供することによって調製することができる。好ましくは、複合粒子は、多糖又は多糖誘導体からなる1つの親水性コア粒子と、少なくとも1つの合成ポリマー材料を含む第1の疎水性シェル粒子、及び第2の疎水性シェル粒子としての二酸化チタンを含む粒状無機UVフィルターとを供することによって調製することができる。更により好ましくは、複合粒子は、セルロース及び/又はセルロースエステル誘導体及び/又はセルロースエーテル誘導体からなる1つのコア粒子と、架橋スチレン/メタクリレートコポリマーを含む第1の疎水性シェル粒子、及び第2の疎水性シェル粒子としての二酸化チタンを含む粒状無機UVフィルターとを供することによって調製することができる。特に、複合粒子は、セルロース及び/又はセルロースエステル誘導体及び/又はセルロースエーテル誘導体からなる1つのコア粒子と、架橋スチレン/メタクリレートコポリマーを含む第1の疎水性シェル粒子、及び第2の疎水性シェル粒子としてのステアリン酸水酸化アルミニウムでコーティングされた二酸化チタンからなる粒状無機UVフィルターとを含む。
【0141】
更に、機械化学的融合法、特にハイブリダイザー法は、親水性コア粒子と疎水性粒子との表面間の強力な結合又は強力な相互作用をもたらすことができる。
【0142】
必要に応じて、コア粒子の平均粒径より大きい平均粒径を有する大型粒子を、親水性コア粒子と組み合わせて追加することが可能である。
【0143】
大径粒子を親水性コア粒子と組み合わせて使用する場合、疎水性シェル粒子は、大径粒子の、親水性コア粒子への衝突によるアンカー効果に起因して、親水性コア粒子の表面上で相互作用するか、又は効果的に結合することができる。したがって、表面活性効果、及び任意選択でUVフィルター効果及び/又は光学的効果が更に高められうる。
【0144】
機械化学的融合法、特にハイブリダイザー法が、例えばビーズミル及びジェットミルを使用する他の方法とは全く異なることに留意されたい。実際に、ビーズミルはコア粒子の微粉砕又は凝集を引き起こし、ジェットミルはコア粒子の微粉砕を引き起こし、微粒子によるコア粒子の均一なコーティングの形成が難しくなる。
【0145】
[組成物]
本発明は、上に記載した、本発明による少なくとも1つの複合粒子を含む組成物に関する。
【0146】
好ましくは、本発明による組成物は、上に記載した少なくとも1つの本発明による複合粒子を、生理学的に許容される媒体中に含むことができる。本発明による組成物が化粧用組成物であることが好ましい。
【0147】
用語「生理学的に許容できる媒体」は、本発明による組成物をケラチン物質へ適用する上で特に好適である媒体を示すことが企図される。
【0148】
生理的に許容される媒体は、一般に、組成物が適用される支持体の性質、更には組成物が包装される形態に適合されている。
【0149】
本発明による複合粒子は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して、0.01質量%〜99質量%、好ましくは0.1質量%〜50質量%、より好ましくは1質量%〜30質量%、更により好ましくは1質量%〜10質量%の範囲の量で存在することができる。
【0150】
複合粒子は疎水性粒子と親水性曝露表面との共存に起因する良好な表面活性機能を呈することができるので、好ましくは、本発明による複合粒子は、皮膚、唇、毛髪及び爪等のケラチン物質へ適用されることになる組成物中で使用されて、優れた表面活性効果並びに任意選択でUVシールド効果及び/又は光学的効果をもたらし、且つ任意選択で強化されたUVフィルター効果、及び/又は透明若しくはクリアな外観、及び/又は良好な光学的効果、例えばより透明若しくはマットな効果を、ケラチン物質に影響を及ぼすリスクなしにもたらすことができる。その上、本発明による複合粒子は、化粧用組成物中へ容易に配合されることが可能であり、且つ化粧用組成物を安定化させることができる。
【0151】
本発明の好ましい一実施形態によれば、複合粒子は、体、顔、唇、手及びデコルテの皮膚へ適用されることになる組成物中で使用されて優れた表面活性効果、並びにUVシールド効果及び/又は光学的効果をもたらし、好ましくは優れた表面活性効果、並びにUVシールド効果及び光学的効果をもたらすことができる。
【0152】
特定の一実施形態では、複合粒子は、体、顔、唇、手及びデコルテの皮膚へ適用されることになる組成物中で使用されて優れた表面活性効果及びUVシールド効果をもたらすことができる。
【0153】
別の特定の実施形態では、複合粒子は、顔及び/又は唇の皮膚へ適用されることになる組成物中で使用されて優れた表面活性効果及び光学的効果をもたらすことができる。
【0154】
本発明による組成物は、多種の形態、例えばサスペンション、分散体、溶液、ゲル、水中油(O/W)等のエマルション、クリーム、フォーム、乳液、スティック、リップバーム、小胞分散体、例としてはイオン性及び/又は非イオン性脂質の小胞分散体、2相及び多相ローション、スプレー、粉末並びにペーストとすることができる。該組成物は、水性相又は水を含んでいてもよい。
【0155】
(水性相)
本発明による組成物は、水性相を含んでいてもよい。
【0156】
水性相は、水を含む。本発明における使用に好適な水は、フローラルウォーター、例えばコーンフラワーウォーター、及び/又はミネラルウォーター、例えば、Vittel水、Lucas水若しくはLa Roche Posay水、及び/又は湧き水とすることができる。
【0157】
水性相はまた、(室温:25℃で)水混和性有機溶媒、例としてはエタノール又はイソプロパノール等の、2〜6個の炭素原子を含むモノアルコール;特に2〜20個の炭素原子を含む、好ましくは2〜10個の炭素原子を含む、優先的には2〜6個の炭素原子を含むポリオール、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール又はジエチレングリコール;モノ、ジ又はトリプロピレングリコール(C
1〜C
4)アルキルエーテル、モノ、ジ又はトリエチレングリコール(C
1〜C
4)アルキルエーテル等の(特に3〜16個の炭素原子を含む)グリコールエーテル、並びにこれらの混合物も含むことができる。
【0158】
水性相はまた、安定剤、例えば塩化ナトリウム、二塩化マグネシウム又は硫酸マグネシウムも含むことができる。
【0159】
水性相はまた、水性相と相溶性である任意の水溶性又は水分散性化合物、例えばゲル化剤、皮膜形成性ポリマー、増粘剤又は界面活性剤、及びこれらの混合物も含むことができる。
【0160】
特に、本発明による組成物は、水性相を、組成物の総質量に対して、1〜80質量%、特に5〜50質量%、より詳細には10〜45質量%の範囲の含有量で含むことができる。
【0161】
(脂肪相)
本発明による組成物は、少なくとも1つの液体及び/又は固体脂肪相を含んでいてもよい。
【0162】
一実施形態によれば、本発明による組成物は、エマルションの形態にある。
【0163】
詳細には、本発明による組成物は、少なくとも1つの液体脂肪相、特に以下に挙げる少なくとも1つの油を含むことができる。
【0164】
別の実施形態では、本発明による組成物は、少なくとも1つの固体脂肪相、特に少なくとも1つのワックス、例えば天然ワックス及び合成ワックスを含むことができる。天然ワックスの例には、石油ワックス、植物ワックス及び動物ワックスが挙げられる。石油ワックスの例には、パラフィンワックス、微結晶ワックス及びワセリンが挙げられる。植物ワックスの例には、コメヌカワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、オーリキュリーワックス、木ろう、カカオ脂、コルク繊維ワックス及びサトウキビワックスが挙げられる。動物ワックスの例には、ラノリンワックス、ラノリン誘導体及びビーズワックスが挙げられる。合成ワックスの例には、合成炭化水素ワックス及び変性ワックスが挙げられる。合成炭化水素ワックスの例には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びフィッシャー-トロプシュワックスが挙げられる。変性ワックスの例には、パラフィンワックス誘導体、モンタンワックス誘導体及び微結晶ワックス誘導体が挙げられる。
【0165】
用語「油」は、室温(25℃)で液体である脂肪物質を意味すると理解される。
【0166】
本発明による組成物は、液体脂肪相を、組成物の総質量に対して、1〜90質量%、好ましくは5〜80質量%、特に10〜70質量%、より詳細には20〜50質量%の範囲の含有量で含むことができる。
【0167】
本発明による組成物を調製する上で好適な脂肪相は、炭化水素系油、シリコーン油、フルオロ油若しくは非フルオロ油、又はこれらの混合物を含むことができる。
【0168】
油は、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0169】
油は、動物、植物、鉱物又は合成由来のものであってもよい。
【0170】
用語「不揮発性油」は、皮膚又はケラチン繊維上に、室温(25℃)及び大気圧で残存する油を意味する。より詳細には、不揮発性油は、厳密に0.01mg/cm
2/分未満の蒸発速度を有する。
【0171】
この蒸発速度を測定するために、試験されることになる油又は油混合物15gを直径7cmの結晶皿に入れ、これを、25℃の温度に温度制御されて50%の相対湿度に湿度測定で制御された約0.3m
3の大型チャンバ内の天秤に載せる。液体は、撹拌せずに自由に蒸発させ、一方で、前記油又は前記混合物を含有する結晶皿の上の垂直位置に配置した送風機(Papst-Motoren社、参照名8550N、2700rpmで回転)で換気を行い、羽根は、結晶皿の底部から20cm離して結晶皿の方に向ける。結晶皿に残存する油の質量を、一定の間隔をおいて測定する。蒸発速度は、単位面積(cm
2)及び単位時間(分)当たりの蒸発した油のmgで表す。
【0172】
用語「揮発性油」は、室温(25℃)及び大気圧で皮膚又は唇に接触して、1時間未満で蒸発することができる任意の非水性媒体を意味する。揮発性油は、室温(25℃)で液体である化粧用揮発性油である。より詳細には、揮発性油は、両端を含めて0.01から200mg/cm
2/分の間の蒸発速度を有する。
【0173】
本発明では、用語「シリコーン油」は、少なくとも1個のケイ素原子、特に少なくとも1つのSi-O基を含む油を意味する。
【0174】
用語「フルオロ油」は、少なくとも1個のフッ素原子を含む油を意味する。
【0175】
用語「炭化水素系油」は、主に水素原子及び炭素原子を含有する油を意味する。
【0176】
油は、例えばヒドロキシル基又は酸基の形態で、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び/又はリン原子を任意選択で含んでいてもよい。
【0177】
(揮発性油)
揮発性油は、8〜16個の炭素原子を含有する炭化水素系油、特にC
8〜C
16分枝状アルカン(イソパラフィンとしても知られる)、例としてはイソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとしても知られる)、イソデカン及びイソヘキサデカン[例としては商品名Isopar(登録商標)又はPermethyl(登録商標)で販売されている油]から選択することができる。
【0178】
更に使用されうる揮発性油としては、揮発性シリコーン、例としては直鎖状又は環状の揮発性シリコーン油、特に8センチストーク(cSt)(8×10
-6m
2/秒)以下の粘度を有し、特に2〜10個のケイ素原子、特に2〜7個のケイ素原子を含有するものが挙げられ、これらのシリコーンは、任意選択で1〜10個の炭素原子を含有するアルキル基又はアルコキシ基を含む。本発明で使用されうる揮発性シリコーン油として特に挙げることができるのは、5cSt及び6cStの粘度のジメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン及びドデカメチルペンタシロキサン、並びにこれらの混合物である。
【0179】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、揮発性油を、組成物の総質量に対して、1〜80質量%、又は更には5〜70質量%、又は更には10〜60質量%、特に15〜50質量%含むことができる。
【0180】
(不揮発性油)
不揮発性油は、特に不揮発性炭化水素系のフルオロ油及び/又はシリコーン油から選択することができる。
【0181】
特に挙げることができる不揮発性炭化水素系油には、
- 動物由来の炭化水素系油、例えばペルヒドロスクアレン、
- 植物由来の炭化水素系油、例えばフィトステアリルエステル、例えばオレイン酸フィトステアリル、イソステアリン酸フィトステアリル及びグルタミン酸ラウロイル/オクチルドデシル/フィトステアリル(味の素株式会社、Eldew PS203)、グリセロールの脂肪酸エステル、特に脂肪酸がC
4〜C
36、特にC
18〜C
36の範囲の鎖長を有することができるものから形成されたトリグリセリドであり、これらの油は、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和である可能性があり、これらの油は、特にヘプタン酸又はオクタン酸トリグリセリド、シア油、アルファルファ油、ケシ油、冬カボチャ油、キビ油、オオムギ油、キノア油、ライムギ油、ククイ油、トケイソウ油、シア脂、アロエベラ油、甘扁桃油、桃核油、落花生油、アルガン油、アボカド油、バオバブ油、ルリヂサ油、ブロッコリ油、キンセンカ油、椿油、キャノーラ油、ニンジン油、ベニバナ油、亜麻油、ナタネ油、綿実油、ココナツ油、髄種子油、コムギ胚芽油、ホホバ油、ユリ油、マカダミア油、トウモロコシ油、メドフォーム油、セイヨウオトギリソウ油、モノイ油、ヘーゼルナッツ油、杏仁油、クルミ油、オリーブ油、月見草油、パーム油、ブラックカラント種油、キーウィ種子油、ブドウ種子油、ピスタチオ油、冬カボチャ油、カボチャ油、ジャコウバラ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、ヒマシ油及びスイカ種子油、及びこれらの混合物、或いはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えばStearineries Dubois社により販売されているもの又はDynamit Nobel社により名称Miglyol 810(登録商標)、812(登録商標)及び818(登録商標)で販売されているものであってもよい、
- 鉱物又は合成由来の直鎖状又は分枝状炭化水素、例えば流動パラフィン及びその誘導体、ワセリン、ポリデセン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、例えばParleam、並びにスクアラン、
- 10〜40個の炭素原子を含有する合成エーテル、
- 合成エステル、例としては式R
1COOR
2(式中、R
1は1〜40個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の脂肪酸残基を表し、R
2は1〜40個の炭素原子を含有する、特に分枝状である炭化水素系鎖を表し、但し条件としてR
1鎖及びR
2鎖中の炭素原子数の和は10以上である)の油である。エステルは、特にアルコールの脂肪酸エステル、例としてはオクタン酸セトステアリル、イソプロピルアルコールエステル、例えばミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、ステアリン酸オクチル、ヒドロキシル化エステル、例としては乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、アジピン酸ジイソプロピル、ヘプタン酸エステル、特にヘプタン酸イソステアリル、アルコール又は多価アルコールとオクタン酸、デカン酸又はリシノール酸のエステル、例としてはジオクタン酸プロピレングリコール、オクタン酸セチル、オクタン酸トリデシル、2-エチルヘキシル4-ジヘプタノエート、パルミチン酸2-エチルヘキシル、安息香酸アルキル、ジヘプタン酸ポリエチレングリコール、プロピレングリコール2-ジエチルヘキサノエート及びこれらの混合物、安息香酸C
12〜C
15アルコール、ラウリン酸ヘキシル、ネオペンタン酸エステル、例としてはネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、イソノナン酸エステル、例としてはイソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸オクチル、ヒドロキシル化エステル、例としては乳酸イソステアリル及びリンゴ酸ジイソステアリルから選択することができる、
- ポリオールエステル及びペンタエリスリトールエステル、例としてはテトラヒドロキシステアリン酸/テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、
- ジオールダイマーと二塩基酸ダイマーとのエステル、例えば日本精化株式会社により販売され、米国特許出願公開第2004-175338号に記載されているLusplan DD-DA5(登録商標)及びLusplan DD-DA7(登録商標)、
- ポリオールと二塩基酸ダイマーとのコポリマー、及びそれらのエステル、例えばHailuscent ISDA又はジリノール酸/ブタンジオールコポリマー、
- 室温(25℃)で液体であり、12〜26個の炭素原子を含有する、分枝状及び/又は不飽和炭素系鎖を有する脂肪アルコール、例としては2-オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール、2-ブチルオクタノール及び2-ウンデシルペンタデカノール、
- C
12〜C
22高級脂肪酸、例えばオレイン酸、リノール酸又はリノレン酸、及びこれらの混合物、
- 2つのアルキル鎖がおそらくは同一である又は異なる炭酸ジアルキル、例えばCognis社により名称Cetiol CC(登録商標)で販売されている炭酸ジカプリリル、
- 高モル質量の油、特に、モル質量が約400〜約10000g/mol、特に約650〜約10000g/mol、特に約750〜約7500g/molの範囲、より詳細には約1000〜約5000g/molの範囲の油。本発明において使用されうる高モル質量の油として特に挙げることができるのは、
親油性ポリマー、
総炭素数が35〜70の範囲の直鎖状脂肪酸エステル、
ヒドロキシル化エステル、
芳香族エステル、
C
24〜C
28分枝状脂肪酸又は脂肪アルコールエステル、
シリコーン油、
植物由来の油、及び
これらの混合物
から選択される油であり、
- 任意選択で部分的に炭化水素系である及び/又はシリコーンフルオロである油、例としては文献EP-A-847752に記載されているフルオロシリコーン油、フルオロポリエーテル及びフルオロシリコーン、
- シリコーン油、例としては不揮発性直鎖状又は環状ポリジメチルシロキサン(PDMS);ペンダントであり又はシリコーン鎖の末端にあり、2〜24個の炭素原子を含有する、アルキル、アルコキシ又はフェニルの各基を含む、ポリジメチルシロキサン;フェニルシリコーン、例としてはフェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン及び2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケート、並びに
- これらの混合物
がある。
【0182】
特定の一実施形態によれば、本発明による組成物の脂肪相は、揮発性化合物のみを含有することができる。
【0183】
(添加剤)
本発明による組成物はまた、検討中の分野において汎用される任意の添加剤を含んでいてもよく、それは、例えば、溶媒、ガム、アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、樹脂、増粘剤、ワックス等の構造化剤、分散剤、抗酸化剤、精油、保存剤、芳香剤、中和剤、防腐剤、UV遮蔽剤、顔料、染料、抗老化剤、化粧用活性剤、例えばビタミン、保湿剤、皮膚軟化剤又はコラーゲン保護剤、及びこれらの混合物から選択される。
【0184】
本発明による組成物中に存在する添加剤の性質及び量を、所望の化粧特性が影響を受けないよう調節することは、当業者にとって常法である。
【0185】
本発明による組成物は、いわゆるピッケリングエマルションの形態にあってもよく、油相と水相とは、本発明による複合粒子によって安定化される。ピッケリングエマルションは、一般にO/Wエマルションの形態にある。O/Wピッケリングエマルションは、一切の従来型界面活性剤なしでエマルションの形態を維持することができ、したがって、それは、従来型の液体界面活性剤を含まなくてもよい。
【0186】
本発明による複合粒子は、十分な表面活性効果を有し、したがって、それは、安定なO/Wピッケリングエマルションを調製するために使用されうる。本発明による複合粒子を使用して調製されたO/Wピッケリングエマルションは、経時的に安定であることができる。
【0187】
本発明による組成物は、疎水性粒子が無機UVフィルターを含む場合、より良好なUVフィルター効果及びより良好な光学的効果等の更なる化粧効果を有することができる。
【0188】
別の実施形態によれば、本発明による組成物は、フォームの形態にあってもよい。
【0189】
この実施形態によれば、本発明による組成物は、フォームディスペンサーに詰めることができる。これは、噴射剤ガスによって加圧容器から分注され、このようにしてその分注時にフォームを形成する「エアロゾル」と称される製品、又は分注ヘッドに接続された機械式ポンプによって容器から分注される製品であって、組成物を分注ヘッドに通過させることにより、遅くともそのようなヘッドの出口開口部の領域でフォームに転換する製品のいずれかを必要としうる。
【0190】
第1の変形形態によれば、ディスペンサーは、本発明による組成物と、噴射剤ガスとを更に含有するエアロゾルとすることができる。本発明では、用語「噴射剤」は、20℃の温度及び大気圧でガス状であり、エアロゾル容器中に液体又はガス状形態で圧力下で保存することができる任意の化合物を意味する。噴射剤は、任意選択でハロゲン化された揮発性炭化水素、例えばn-ブタン、プロパン、イソブタン、ペンタン又はハロゲン化炭化水素、及びこれらの混合物から選択することができる。二酸化炭素、亜酸化窒素、ジメチルエーテル(DME)、窒素又は圧縮空気もまた、噴射剤として使用することができる。噴射剤の混合物もまた使用することができる。ジメチルエーテル及び/又は非ハロゲン化揮発性炭化水素が、好ましくは使用される。
【0191】
使用されうる噴射剤ガスは、先に挙げたガスの中から、特に二酸化炭素、窒素、窒素酸化物、ジメチルエーテル、揮発性炭化水素、例えばブタン、イソブタン、プロパン及びペンタン、並びにこれらの混合物の中から選択することができる。
【0192】
別の変形形態によれば、本発明による組成物は、「ポンプボトル」タイプのフォームディスペンサーとすることができる。これらのディスペンサーは、組成物を送出するための分注ヘッドと、ポンプと、製品を分注するために組成物を容器からヘッド中に移送するためのプランジャーチューブとを含む。フォームは、組成物を、多孔性物質を含む材料、例えば焼結材料、プラスチック若しくは金属の濾過格子、又は類似の構造体に通過させることにより、形成される。
【0193】
こうしたディスペンサーは、当業者に公知であり、米国特許第3709437号(Wright)、米国特許第3937364号(Wright)、米国特許第4022351号(Wright)、米国特許第4147306号(Bennett)、米国特許第4184615号(Wright)、米国特許第4598862号(Rice)、米国特許第4615467号(Groganら)及び米国特許第5364031号(谷口ら)の特許に記載されている。
【0194】
[美容方法]
本発明による組成物、特に化粧用組成物は、ケラチン物質をケアする及び/又はメイクアップする非治療的化粧方法において使用されることが可能であり、該方法は、少なくとも1つの本発明による組成物のケラチン材料の表面への適用を含む。
【0195】
ケラチン物質は、本明細書において、主要構成要素としてケラチンを含有する材料を意味し、その例には、皮膚、爪、唇、眉毛、まつ毛、毛髪等が挙げられる。
【0196】
ケラチン物質をケアするために、本発明による化粧用組成物は、ローション、クリーム、ヘアートニック、ヘアーコンディショナー、日焼け止め剤等として使用することができる。ケラチン物質をメイクアップするために、本発明による化粧用組成物は、ファンデーション、マスカラ、リップスティック、リップグロス、ブラッシャー、アイシャドウ、爪のワニス等として使用することができる。
【0197】
当業者であれば、使用する成分の性質、例えばビヒクル中でのそれらの溶解性、及び想定される組成物の用途を考慮に入れながら、自身の一般知識に基づき、適切な体裁並びにその調製方法を選択できることを、理解されたい。
【実施例】
【0198】
本発明を、実施例によってより詳細に記述するが、これは本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0199】
(実施例1〜3)
日本の株式会社奈良機械製作所により市販されている、乾燥条件にあるチャンバ内に複数の刃を有する高速ローターを備えたハイブリダイザーを使用して、表1及び表2に示す成分をハイブリダイザー法に供して、実施例1〜3による複合粒子を得た。
【0200】
詳しくは、実施例1〜3のそれぞれについて、表1及び表2に示す成分を、表1及び表2に示す混合比[表1及び表2)の数字は質量部に基づく]にて、プラスチック製袋に入れて、短時間、手で振盪することにより混合した。混合物をハイブリダイザー中に投入し、ローターを8,000rpm(線速度100m/s)で3分間回転させて、実施例1〜3のそれぞれによる複合粒子を得た。
【0201】
【表1】
【0202】
[顕微鏡による観察]
実施例1〜3のそれぞれによる複合粒子を走査電子顕微鏡により目視で観察し、シェル粒子がコア粒子の表面上に付着していること、及びコア粒子の表面の一部が曝露されていること(コア粒子の表面全体がシェル粒子によって被覆されているのではないこと)を確認した。遊離シェル粒子は見出されなかった。
【0203】
[O/W界面の安定化]
試験例1〜3及び対照1〜3のそれぞれについて、以下に示す表3の各粉末0.1gを水8gと混合した。得られた混合物を手で振盪した。次に、水添ポリイソブテン2gを該混合物へ加えた。得られた混合物を更に手で振盪した。
【0204】
【表2】
【0205】
こうして得た試験例1〜3及び対照1〜3による混合物を、室温にて2か月間置いた。それぞれの混合物の態様を目視で評価した。
【0206】
試験例1〜3の事例では、O/Wエマルション相が混合物中で形成した。試験例1〜3のそれぞれにおけるO/Wエマルション相は、2か月後でさえ変化せず、したがって、O/Wエマルション相が安定であることを見出した。
【0207】
他方、対照1及び2の事例における混合物中では、O/Wエマルション相は形成しなかった。
【0208】
対照3の事例では、O/Wエマルション相が混合物中で形成した。しかしながら、2か月後に、油の一部が分離してエマルション相の頂部に見出された。そのため、O/Wエマルション相が不安定であることを見出した。
【0209】
上記の試験結果(試験例1〜3)は、複合粒子の表面が親水性領域と疎水性領域とを有している実施例1〜3による複合粒子が、親水性コア粒子(セルロース)と疎水性シェル粒子(PMMA)との組合せに起因して、O/W界面を安定化させることができることを示す。
【0210】
上記の試験結果はまた、親水性コア粒子が、単独ではO/W界面(対照1及び2)を安定化させる両親媒性特性をもたないこと、及び親水性粒子の表面の少なくとも一部がポリメチルヒドロゲンシロキサンとの共有結合の使用によって化学的に疎水性化された(親水性粒子の表面が疎水性粒子で部分的に覆われていない)親水性粒子(シリカ)が、親水性コア粒子と疎水性シェル粒子との組合せに基づく複合粒子[親水性コア粒子の表面は、疎水性粒子で部分的に覆われている(実施例1〜3)]に比べて劣るO/W界面(対照3)の安定化効果しか示せないことも、示す。
【0211】
(実施例4〜5)
下表4に示す成分を、乾燥条件にあるチャンバ内に複数の刃を有する高速ローターを備えた機械化学的融合装置を使用する機械化学的融合法に供して複合粒子を得た。
【0212】
詳しくは、実施例4〜5のそれぞれについて、表4に示す成分を、表4に示す混合比[表4の数字は質量部に基づく]にて、プラスチック製袋に入れて、短時間、手で振盪することにより混合した。該混合物を、機械化学的融合装置中に投入し、ローターを32.5m/秒(線速度)で20分間回転させて、実施例4〜5のそれぞれによる複合粒子を得た。
【0213】
【表3】
【0214】
[顕微鏡による観察]
実施例4〜5のそれぞれによる複合粒子を、走査電子顕微鏡により目視で観察し、疎水性粒子が親水性粒子の表面上に付着していること、及び親水性粒子の表面の一部が曝露されていることを確認した。
【0215】
[光学的効果の測定:ヘーズ及び透明度]
光散乱及び透明度は、メイクアップブラーリング配合物中での可能な成分についての2つの重要な特性である。これらの性質は、ヘーズメーターを使用して測定することがきわめて多い。この装置により、多種の試料の、透明度T、ヘーズ値H(散乱又は拡散透過とも呼ばれる)の測定が可能になる。化粧用調製物の光学的可能性を説明する目的で、実施例4〜5の材料を以下のプロトコルを使用して分析した:従来型O/Wスキンケア配合物10gを、表4中の各粉末0.3gと、以下に詳述する組成物を含むベース(従来型O/Wスキンケアベース配合物)9.7gとを混合することによって調製した。
【0216】
【表4】
【0217】
実施例4〜5を含む配合物での測定値を、複合粒子を含まない配合物(対照)での測定値と比較した。以下の結果[表6]は、実施例4〜5による複合粒子が、透明度の変化がきわめて限定的である対照よりも優れたヘーズ効果をもたらしうることを明示している。
【0218】
【表5】