(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該シーリング構造がエッジ領域においてシーリングフラップを含み、該シーリングフラップは使用中に少なくとも該患者の鼻の側面に対してシールするように形成されかつ位置決めされた請求項1から4のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
該固定具が使用中に患者の上顎の前頭突起に近位で位置決めされるように、固定具が、該シーリング構造の該第1の内表面領域と第2の内表面領域の間に延在する請求項1から9のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
該シーリング構造が、使用中にオトガイ隆起領域の下に延在しないように構成され、該プレナムチャンバーが使用中に患者の眼を覆うことのないよう構成された請求項1から11のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
【背景技術】
【0003】
2.2.1 ヒトの呼吸器系とその疾患
身体の呼吸器系はガス交換を促進する。鼻と口が患者の気道の入口を形成する。
【0004】
気道は一連の枝管を含み、それらは肺に深く入るにつれて狭く、短くそしておびただしくなる。肺の主要機能はガス交換であり、酸素は吸引された空気から静脈血に入り、二酸化炭素が反対向きに運ばれる。気管は左右の主気管支に分かれ、さらに分岐して最後に終末細気管支となる。気管支は誘導気道を構成し、ガス交換には関与しない。気道をさらに分割すると呼吸細気管支となり、最終的に肺胞となる。ガス交換が行われる肺の胞状の領域は、呼吸領域と呼ばれる。John B.West著「呼吸生理学」Lippoincott Williams&Wilkins、9版、2012年発行を参照。
【0005】
一連の呼吸器疾患が存在する。ある疾患は、例えば無呼吸、呼吸低下及び過呼吸などの特定のイベントで特徴付けることができる。
【0006】
呼吸障害の例には、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、チェーン・ストークス呼吸(CSR)、呼吸不全、肥満過呼吸症候群(OHS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、神経筋疾患(NMD)及び胸壁疾患が含まれる。
【0007】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は睡眠呼吸障害(SDB)の1つで、睡眠時の上部気道の閉鎖または閉塞を含むイベントで特徴付けられる。これは異常に小さい上気道と、舌の領域の筋緊張の通常の喪失、睡眠時の軟口蓋及び後口咽頭壁の正常損失の組み合わせの結果である。この条件で罹患患者は典型的には30から120秒の間呼吸が停止し、場合によっては一晩で200から300回呼吸停止が起こる。昼間に過剰な眠気を生じることがたびたびあり、これは心臓血管疾患と脳損傷を起こすことがある。この症候群は特に太りすぎの中年男性に共通する障害であるが、罹患者はこの問題に気付いていないことがある。米国特許第4、944、310号明細書(Sullivan)を参照。
【0008】
チェーン・ストークス呼吸(CSR)は睡眠呼吸障害のもう1つの形態である。CSRは患者の呼吸調整器の障害で、この場合CSRサイクルとして知られる呼吸の漸増と漸減が交互に律動的に生じる。CSRの特徴は、動脈血の脱酸素化と再酸素化が繰り返し生じる。反復低酸素症のため、CSRは有害であり得る。患者によっては、CSRは睡眠中の反復覚醒に関連しており、これは重篤な睡眠障害、交感神経系活動の増悪及び後負荷の増加を生じる。米国特許第6、532、959号明細書(Benrthon−Jones)を参照。
【0009】
呼吸不全は、患者のニーズに応えるために肺が充分な酸素を吸入し、十分なCO
2を吐き出すことができなくなる呼吸障害の包括的用語である。呼吸不全は下記の幾つかまたはすべてを包含する。
【0010】
呼吸不全(呼吸気不全の一形態)の患者は、労作時に呼吸の異常な息切れを経験することがある。
【0011】
肥満過呼吸症候群(OHS)は、低呼吸の既知の原因がない場合、重症の肥満と覚醒時慢性高炭酸ガス血症の組み合わせと定義される。症状には呼吸困難、起床時の頭痛と過剰な日中の眠気が含まれる。
【0012】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、共通してある特徴を有する下気道疾患の任意のグループを含む。これには空気の動きに対する抵抗の増加、呼吸の呼気相の延長及び肺における正常な弾性の減少が含まれる。COPDの例は肺気腫と慢性気管支炎である。COPDは常時喫煙(第一危険因子)、職業的暴露、大気汚染及び遺伝因子で発症する。症状には:労作時呼吸困難、慢性咳及び痰が出ることが含まれる。
【0013】
神経筋疾患(NMD)は、内在筋肉病変を経て直接的に、または神経病変を経て間接的に筋肉の機能を損なう多くの疾病と病気を包含する広義語である。NMD患者の一部は、歩行の喪失にいたる進行性筋障害が特徴で、車椅子に束縛され、嚥下障害があり、呼吸筋力低下を生じ最後には呼吸不全により死に至る。神経筋疾患は急速進行性と緩徐進行性に分けられる:(i)急速進行性疾患は数か月にわたる筋肉の機能障害があり、数年以内に死に至るのが特徴である(例:筋萎縮性側索硬化症(ALS)と10代のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD));(ii)可変または緩徐進行性疾患:数年にわたって増悪し、平均寿命を少し短縮するのが特徴である(例、肢帯、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー及び筋強直性ジストロフィー)。NMDにおける呼吸不全の症候には:全身衰弱の進行、嚥下障害、労作時及び安静時呼吸困難、疲労、眠気、起床時の頭痛、集中することの困難及び気分転換の困難が含まれる。
【0014】
胸壁疾患は、呼吸筋と胸郭間の不十分な結合にいたる胸郭変形のグループである。これらの疾患は、通常拘束性障害によって特徴づけられ、長期高炭酸ガス性呼吸不全の可能性がある。脊柱側弯症及び/または後側弯症は、重篤な呼吸不全を発症することがある。呼吸不全の症候には:労作時呼吸困難、末梢浮腫、起座呼吸、反復肺感染症、起床時の頭痛、疲労、睡眠の質不良及び食欲不振が含まれる。
【0015】
このような状態を治療または改善するために、さまざまな治療が行われてきた。さらに別の面では、健常な個人はこのような治療の利点を生かして、呼吸疾患の発症を防止することができる。しかしこれらには多くの欠点がある。
【0016】
2.2.2 治療
1つまたはそれ以上の上記の呼吸障害の治療に、持続的気道陽圧(CPAP)治療、非侵襲的換気(NIV)及び侵襲的換気(IV)のような種々の治療法が用いられてきた。
【0017】
鼻持続的気道陽圧(CPAP)療法は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療に用いられてきた。この作用機序は、持続的気道陽圧が空気的副子として作用し、軟口蓋と舌を前方に押して、後口咽頭壁から離すなどして、上気道の閉塞が防止できると言うものである。CPAP療法によるOSAの治療は、自由意思によるもので、患者はこのような治療を提供する装置が心地よくない:使用が困難、高価及び審美的に魅力がないの1つまたはそれ以上があれば、この治療を選択しなくてよい。
【0018】
非侵襲的換気(NIV)は、患者が呼吸し及び/または適切な酸素レベルを体内に維持するのを支援するために、呼吸作業の一部またはすべてを行って、上気道を通して患者に換気補助を提供する。換気補助は非侵襲患者インタフェースを経由して提供される。NIVは、OHS、COPD、NMD及び胸壁疾患のような形態のCSR及び呼吸不全の治療に使用されてきた。いくつかの形態において、これらの治療の快適さと有効性が改善できる。
【0019】
侵襲的換気(IV)は、もはや自分で効果的に呼吸できない患者に換気補助を提供し、気管切開チューブを使用して提供される。いくつかの形態において、これらの治療の快適さと有効性が改善できる。
【0020】
2.2.3 治療システム
これらの治療は、治療システムまたは装置によって提供される。このようなシステムと装置は、それを使用しないで状態の診断にも使用できる。
【0021】
治療システムは呼吸圧力治療装置(RPT装置)装置、空気回路、加湿器、患者インタフェース及びデータ管理からなる。
【0022】
治療システムのもう1つの形態は、下顎再配置装置である。
【0023】
2.2.3.1 患者インタフェース
患者インタフェースは、例えば空気の流れを気道の入口に提供することによって、呼吸装置をそのユーザにインタフェースするのに使用できる。空気の流れは、鼻おおび/または口へのマスク、口へのチューブまたは患者の気管への気管開口チューブを経由して提供される。適用する治療法次第で、患者インタフェースはシールを形成してよく、例えば患者の顔の部分、治療が効果をもたらすように、周囲圧力と十分に相違した圧力で、例えば周囲圧力に関して約10cmH
2Oの陽圧で、ガスを送出する。酸素の送出のようなほかの形態では、約10cmH
2Oの陽圧で、ガスの気道への供給ができるシールを患者のインタフェースに含めなくてよい。
【0024】
その他のマスクのあるものは、この分野に機能的に不適かもしれない。例えば、全く装飾的なマスクは適切な圧力を維持することができない。水中水泳または潜水に使用するマスクシステムは、外部の高圧からの水の侵入に対して保護するように構成できるが、内部を周囲圧力より高く維持するよう構成できない。
【0025】
あるマスクは現在の技術に対して臨床的に不向きである。例えば鼻を経由した流れがブロックされると、口経由のみとなってしまう。
【0026】
あるマスクは、患者の唇にシールを創りそれを維持するのに、自分の口にマスク構造の一部を挿入する必要がある場合には、現在の技術には不快または非現実的である。
【0027】
あるマスクは、例えば患者が枕に頭を乗せてベッドで横向きで就寝している時など、睡眠中に使用するのが非現実的である。
【0028】
患者インタフェースのデザインにはいろいろな難問がある。顔面は複雑な3次元の形状をしている。鼻の大きさと形は個人間でかなり異なる。頭部には骨、軟骨と軟組織があり、顔面の異なる領域は機械的な力に対して異なる反応をする。顎または下顎は頭蓋のほかの骨に関連して動くことがある。頭全体が呼吸治療の間に動くことがある。
【0029】
これらの難問のために、マスクによっては閉塞性である、審美的に好ましくない、コストが高い、装着が不十分、使用困難の1つまたはそれ以上の問題に悩み、長期間使用すると摩耗してまたは患者がシステムに不慣れだと不愉快である。間違ったサイズのマスクは、コンプライアンスを下げ、快適さが減少し、患者の転帰不良となる。飛行士専用にデザインされたマスク、個人の保護装置(例えば、フィルターマスク)の一部としてデザインされたマスク、SCUBAマスク、または麻酔薬投与のためのマスクは本来の適用には耐えるが、長期間、例えば数時間着用するのは好ましくないほど不愉快である。この不快感は、治療に対するする患者のコンプライアンスの低下につながる。睡眠中にマスクを着用しなければならない場合は特にそうである。
【0030】
患者が治療に従う限り、CPAP治療はある呼吸器疾患の治療に特に効果的である。マスクが不愉快であるか使用困難であれば、患者は治療に従わないかもしれない。患者は自分のマスクを定期的に洗浄するようしばしば推奨されているので、マスクの洗浄が困難であれば(例えば、組立または分解が困難)、患者は自分のマスクを洗浄しないかもしれず、これは患者のコンプライアンスに影響する。
【0031】
その他の適用(例えば、飛行士)のためのマスクを睡眠呼吸障害の治療に使用するのは適切ではないかもしれないが、睡眠呼吸障害の治療に使用するようデザインされたマスクはその他の適用に適しているかもしれない。
【0032】
これらの理由により、睡眠中のCPAPの送出のための患者インタフェースは独特な分野である。
【0033】
2.2.3.1.1 シール形成部
患者インタフェースはシール形成部を含む。これは患者の顔面と直接接触するので、シール形成部の形状と形態は患者インタフェースの有効性と快適さに直接影響を与えることがある。
【0034】
患者インタフェースは、シール形成部が使用中に顔面のどこで係合するかのデザイン意図によって部分的に特徴付けることができる。患者インタフェースの1つの形態において、シール形成部は、左鼻孔の周りにシールを形成する第1の準部分と、右鼻孔の周りにシールを形成する第2の準部分を含むことができる。患者インタフェースの1形態において、シール形成部分は、使用中に両方の鼻孔を囲む単一の要素を含むことができる。このような単一の要素は、例えば顔面の上唇領域と鼻堤領域を覆うようにデザインすることができる。患者インタフェースの1形態において、顔面の下唇領域にシールを形成するなどして、使用中に口の領域を囲む要素を含むことができる。患者インタフェースの1形態において、シール形成部分は、使用中に両鼻孔と口の領域を囲む単一の要素を含むことができる。患者インタフェースのこれらの異なるタイプは、鼻マスク、フルフェース・マスク、鼻枕、鼻パフ及び口鼻マスクを含め、それらの製造者のさまざまな名称で知られている。
【0035】
患者の顔の1領域で効果的なシール形成部分は、例えば、患者の顔の形状、構造、ばらつき及び敏感な部分が異なるので、別の領域には適していないことがある。例えば、患者の額を覆う水中メガネのシールを患者の鼻に使用するには適当ではない。
【0036】
さまざまな異なる顔の形状及び大きさに適し、快適で効果的な1つのデザインのように、大量生産用にあるシール形成部をデザインすることができる。患者の顔の形状と大量生産された患者のインタフェースのシール形成部の間で不整合ができるまで、1つまたは両方を適合させてシールを形成しなければならない。
【0037】
シール形成部分の1つのタイプは、患者インタフェースの周辺附近に伸び、シール形成部分が患者の顔に係合しようとしており、力が患者インタフェースに加えられた時に患者の顔に抗してシールするように意図される。シール形成部分は、空気または液体で充満されたクッション、またはゴムのようなエラストマーでできた弾力性のあるシールエレメントの成形または形成面を含むことができる。このタイプのシール形成では、適合が適切でなければ、シール形成部分と顔の間にギャップがあり、シールを形成するために顔に抗して患者インタフェースに追加の力を加える必要がある。
【0038】
シール形成部のもう1つタイプは、マスクの周辺近辺に位置した薄い材料でできたフラップシールを含み、マスク内に陽圧がかかると患者の顔に抗してセルフシーリングを行う。シール形成部分の以前のタイプのように、顔面とマスク間の適合が良好ではないと、シールを形成するのに追加の力が必要になるかまたはマスクから漏れが生じる。さらに、シール形成部分の形状が患者のそれに適合しない場合、使用中にしわが生じたり曲がったりすることがあり、漏れが発生する。
【0039】
シール形成部分のもう1つのタイプは、例えば、鼻孔への挿入のような摺合せエレメントを含むことができるが、患者によってはこれを不快と感じる。
【0040】
シール形成部分のもう1つの形態は、接着剤を使ってシールを達成する。顔面に接着剤を絶えず適用しこれを除去するのが不便と感じる患者もいる。
【0041】
ResMed limitedに譲渡された以下の特許出願に、さまざまな患者インタフェース・シール形成部の技術が開示されている:国際公開第1998/004、310号;国際公開第2006/074、513号; 国際公開第2010/135、785号。
【0042】
鼻枕の1形態がPuritan Bennettが製造するAdam Circuitに見出される。鼻枕または鼻噴霧は、Puritan−Bennett Corporationに譲渡された米国特許4、782、832号明細書(Trimbleほか)の題目である。
【0043】
ResMed Limitedは、鼻噴霧を組み込んだ以下の製品を製造した:SWIFT(商標)鼻枕マスク、SWIFT(商標)II鼻枕マスク、SWIFT(商標)LT鼻枕マスク、SWIFT(商標)FX鼻枕マスク及びMIRAGE LIBERTY(商標)フルフェース・マスク。ResMed Limited に譲渡された以下の特許出願に、鼻枕マスクの例が記述されている:国際公開第2004/073、778号(とりわけResMed Limited SWIFT(商標)鼻枕の特徴を記載)、米国特許出願公開第2009/0044808号明細書(とりわけRed Med Limited SWIFT
T(商標)LT鼻枕の特徴を記載);国際公開第2005/063、328号と国際公開第2006/130、903号(とりわけResMed Limited MIRAGE LIBERTY(商標)フルフェース・マスクの特徴を記載);国際公開第2009/052、560号(とりわけResMed Limited SWIFT(商標)FX鼻枕の特徴を記載)。
【0044】
2.2.3.1.2 位置決めと安定化
陽圧空気治療に使用する患者インタフェースのシール形成部は、シールを崩壊しようとする空気圧の力の影響を受ける。このように、シール形成部を位置決めし、顔面の適当な部分とシーリングの関係を保つために種々な技術が使用されてきた。
【0045】
1つの技術に接着剤の使用がある。例えば米国特許出願公開第2010/0000534号明細書を参照。しかし接着剤の使用は患者によっては不快となることがある。
【0046】
もう1つの技術として、1つまたはそれ以上のストラップ及び/または安定化装着帯の使用がある。このような装着帯の多くは、1つまたはそれ以上の不適合、かさばる、不快及び使用がぎこちないという問題に悩まされる。
【0047】
2.2.3.2 呼吸圧力治療(RPT)装置
呼吸圧力治療(RPT)装置は、気道の入口に送達する空気の流れを作るなどして、1つまたはそれ以上の上記の治療を行うのに使用することができる。空気の流れは加圧できる。RPT装置の例にはCPAP装置と人工呼吸器が含まれる。
【0048】
空気圧力発生器は、例えば産業スケールの換気システムのような様々な適用で知られている。しかし医療用の空気圧力発生器には、信頼性、サイズ及び重量のようなより汎用の空気圧力発生器で達成されない特定の要件がある。さらに、医療用にデザインされた装置でも:快適さ、騒音、使い易さ、効率、サイズ、重量、製造可能性、コスト及び信頼性の1つまたはそれ以上に関する欠点に悩まされている。
【0049】
あるRPT装置の特殊要件の例は音響騒音である。
【0050】
以前のRPT装置の騒音出力の表(試料1つのみ、10cmH
2OにおけるCRAPモードにおけるISO3744に規定の試験方法で測定)。
【0051】
【表1】
【0052】
睡眠呼吸障害の治療に使用する1つの既知のRPT装置は、ResMed Limitedが製造するS9 Sleep Theapy Systemである。RPT装置のもう1つの例は、人工呼吸器である。成人及び小児用人工呼吸器のResMed Stellar(商標)シリーズのような人工呼吸器は、NMD、OHS及びCOPDのような(ただしこれらに限定されない)多数の状態を治療する様々な患者に、侵襲及び非侵襲非依存人工呼吸器に対するサポートを提供することができる。
【0053】
ResMed Elisee(商標)150人工呼吸器とResMed VS III(商標)人工呼吸器は、多数の状態を治療する成人または小児患者に適した、侵襲及び非侵襲依存換気に対するサポートを提供することができる。これらの人工呼吸器は、単一のまたは二重肢回路の付いた容量呼吸お及び気圧呼吸を提供する。RPT装置は、典型的にはモータ駆動の送風機または圧縮ガスリザーバのような圧力発生器から成り、患者の気道に空気の流れを供給するように構成される。場合によっては、空気流を陽圧で患者の気道に供給することができる。RPT装置の出口は、空気回路を経由して上記の患者のインタフェースに接続される。
【0054】
装置の設計者には、無限の選択が提供される。設計基準はしばしば矛盾しており、ある設計の選択は、ルーチンまたはお決まりからほど遠いことを意味している。さらにある局面の快適さと有効性は、1つまたはそれ以上のパラメータの小さい、微妙な変化にきわめて敏感である。
【0055】
2.2.3.3 加湿器
加湿なしに空気流を送出すると、気道が乾燥することがある。RPT装置と患者インタフェースと共に加湿器を使用すると、加湿されたガスが生じ、これが鼻粘膜の乾燥を最小限に抑え、患者の気道の快適さが増す。さらに涼しい気候では、暖かい空気が患者インタフェースの中及びその周りの顔面に広く当たると、冷たい空気よりずっと快適である。
【0056】
さまざまな人工加湿器とシステムが知られているが、それらは医療用加湿器の特別な要件を満たしていないことがある。
【0057】
典型的には、患者が睡眠中または休息中に(例えば病院において)、必要があれば医療用加湿器を使用して、周囲空気に対して空気流の湿度及び/または温度を上げる。ベッドのそばに置く医療用加湿器は、小さくてよい。医療用加湿器は、患者の周りを加湿及び/または加熱することなしに、患者に供給される空気流をただ加湿及び/または加熱するように構成されてよい。例えば、部屋をベースにしたシステム(例えば、サウナ、空調装置または蒸発冷却器)も、患者が呼吸する空気を加湿できるが、これらのシステムは部屋全体を加湿及び/または加熱することになり、居住者に不快をもたらすことがある。さらに医療用加湿器は、産業用加湿器より厳しい安全に関する制約事項がある。
【0058】
多くの医療用加湿器が知られているが、これらは1つまたはそれ以上の欠点に悩まされることがある。ある加湿器は不適切な加湿を行い、ある加湿器は患者が使用するのに困難または不便である。
【0059】
2.2.3.4 データ管理
例えば患者が自分のRPT装置をある「コンプライアンス・ルール」に従って使用したなど、呼吸治療を処方された患者が「コンプライアント」であったかどうかを決めるデータを得るための臨床的な理由がある。CPAP治療のコンプライアンス・ルールの1例は、患者がコンプラインアントであると見なされるには、30日連続のうち少なくとも21日間、一晩に少なくとも4時間RPT装置を使用するよう要求される。患者のコンプライアンスを決めるために、ヘルスケア・プロバイダーのようなRPT装置のプロバイダーは、RPT装置を使用する患者のセラピーを記述したデータを手作業で入手し、所定の期間における使用を計算し、コンプライアンス・ルールと比較する。患者が自分のRPT装置をコンプライアンス・ルールに従って使用したとヘルスプロバイダーが決定すれば、その患者はコンプライアントであったと第三者に通告する。
【0060】
治療データを第三者または外部システムと交信することから恩恵を受ける患者セラピーのその他の局面がある。
【0061】
このようなデータを更新し管理する現在のプロセスは、コストがかかる、時間がかかる及び間違いを起こしやすいということのうちの1つまたはそれ以上であり得る。
【0062】
2.2.3.5 下顎の再配置
下顎再配置装置(MRD)または下顎前進装置(MAD)は睡眠時無呼吸といびきの治療オプションの1つである。これは歯科医または他のサプライヤーから入手できる調整可能な口腔歯列矯正器具で、睡眠中に下顎(下顎)を前方位置に保持する。MRDは取り外しのできる装置で、患者は就寝前に自分の口に挿入し、睡眠の後で取り外す。このようにMRDはいつでも摩耗するようにデザインされていない。MRDはオーダーメイドまたは標準形で製造され、患者の歯にフィットするようにデザインされた咬合印象部を含む。下顎のこの機械的突起は、舌の後部のスペースに拡張し、咽頭壁に張力を加えて気道の閉塞を低減し、口蓋の振動を減らす。
【0063】
ある実施例では、下顎前進装置は上顎または上顎の歯に係合するかまたはフィットする上スプリントと、上顎または下顎の歯に係合するかまたはフィットする下スプリントを含むことができる。上下スプリントは一対の連接棒を経由して共に横方向に互いに接続される。連接棒の対は上スプリントと下スプリントに組織的に固定される。
【0064】
このようなデザインにおいて、連接棒の長さは、MRDが患者の口にある時、下顎が前進位置に保持されるように選択される。連接棒の長さを調整して下顎の突起のレベルが変更できる。歯科医が下顎の突起のレベルを決め、これが連接棒の長さを決めることになる。
【0065】
あるMRDは下顎を上顎に関して前方に押すように構築され、一方ResMed Narval CC(商標)MRDのようなその他のMADは下顎を前方位置に保持するようにデザインされる。この装置も歯と顎関節(TMJ)の副作用を低減するかまたは最小限に抑える。このように、1つまたはそれ以上の歯の任意の動きを最小限にするかまたは防止するように構成される。
【0066】
2.2.3.6 ベント技術
治療システムのいくつかの形態は、吐き出した二酸化炭素の洗浄のためにベントを含むことがある。このベントは、患者インタフェース内部空間から、例えば、プレナムチャンバー、患者インタフェースの外部へ、例えば、大気へのガスの流れを作ることができる。
【0067】
ベントはオリフィスを含み、マスクの使用中にガスはこのオリフィスを通る。このようなベントの多くは騒々しい。そのほかのベントは使用中に閉塞し、洗浄が不十分となる。あるベントは、例えば、騒音または空気流の集束のために、患者1000のベッドパートナー1100の睡眠の邪魔になる。
【0068】
ResMed Limitedは多数の改良型マスクベント技術を開発した。国際公開第1998/034、665号;国際公開第2000/078、381号;米国特許第6、581、594号明細書;米国特許出願公開第2009/0050156号明細書;米国特許出願公開第2009/0044808号明細書を参照。
【0069】
以前のマスクの騒音の表(ISO 17510−2:2007、1mにおける圧力10cmH
2O)
【0070】
【表2】
【0071】
種々の対象物の音圧を以下に列記する。
【0072】
【表3】
【0073】
2.2.4 診断とモニタリングシステム
睡眠ポリグラフ計(PSG)は、心肺疾患の診断と予後診断のための従来のシステムで、このシステムを使用するには典型的には専門の臨床スタッフが関与する。PSGは典型的には患者に15から20の接触センサーを付けて、脳波記録(EEG)、心電図(ECG)、電気眼球図記録(EOG)、筋電図(EMG)などの種々の人体信号を記録する。睡眠障害呼吸のためのPSGには、病院において患者を二晩観察する。一晩は診断で、二晩目には臨床医による治療パラメータの滴定である。従ってPSGは高価で、不便であり、家庭での睡眠中のテストには適していない。
【0074】
臨床専門家はPSG信号の目視観測に基づいて患者を適切に診断しまたはモニターする。しかし臨床専門家がいない場合または臨床専門家が不足している場合がある。異なる臨床専門家は患者の状態に同意できない場合がある。さらにある臨床専門家は異なる基準を異なる時間に適用することがある。
【発明を実施するための形態】
【0118】
本技術をさらに詳細に説明する前に、本技術は本明細書に記載された変わることのある特定の実施例に限定されないことを理解されたい。またこの開示で使用されている専門用語は、本明細書中で議論される特定の実施例のみを記述するのが目的であり、限定する意図のないことを理解すべきである。
【0119】
以下の記述は、1つまたはそれ以上の特性及び/または特徴を共有するさまざまな実施例に関して提供されている。任意の1つの実施の1つまたはそれ以上の特徴は、もう1つの実施例またはその他の実施例の1つまたはそれ以上の特徴と組み合わせ可能であることを理解されたい。さらに、任意の実施例の単一の特徴または特徴の組み合わせは、さらなる実施例を構成することができる。
【0120】
5.1 治療
一形態において、本技術は陽圧を患者1000の気道入り口に適用するステップから成る呼吸障害の治療の方法から成る。
【0121】
本技術のある実施例において、陽圧の空気が患者の1つまたは両方の鼻孔を通して鼻腔に供給される。
【0122】
本技術のある実施例において、口呼吸は制限され、禁止されまたは防止される。
【0123】
5.2 治療システム
1つの形態において、本技術は呼吸器疾患を治療する器具または装置から成る。該器具または装置は、患者インタフェース3000への空気回路4170を経由して加圧された空気を患者1000に供給するRPT装置4000を含む。
【0124】
5.3 患者インタフェース
本技術の一態様による非侵襲患者インタフェース3000は、下記の機能面を有している:シール形成構造3100、プレナムチャンバー3200、位置決め及び安定化構造3300及び空気回路4170へ接続するための接続口3600、ベント3400、空気回路4170に接続するための接続ポート3600の一形態及び額支持3700。いくつかの形態では、機能面は1つまたはそれ以上の物理的コンポーネントによって提供されてよい。いくつかの形態では、1つの物理的コンポーネントが1つまたはそれ以上の機能的態様を提供することができる。使用中は、気道への空気の供給が陽圧になるようにシール形成構造3100は患者の気道入り口を囲むように配置される。
【0125】
発明者たちは、もし患者インタフェース3000が最小レベルの陽圧を気道に快適に送達することができなければ、その治療は効果のないことを見出した。
【0126】
本技術の一形態による患者インタフェース3000は、周囲に対して少なくとも6cmH
2O陽圧の空気の供給を提供できるように構築されかつ配置される。
【0127】
本技術の一形態による患者インタフェース3000は、周囲に対して少なくとも10cmH
2O陽圧の空気の供給を提供できるように構築されかつ配置される。
【0128】
本技術の一形態による患者インタフェース3000は、周囲に対して少なくとも20cmH
2O陽圧の空気の供給を提供できるように構築されかつ配置される。
【0129】
5.3.1 シール形成構造
本技術の一形態において、シール形成構造3100はシール形成面を提供し、さらにクッション機能が提供できる。
【0130】
本技術によるシール形成構造3100は、シリコンのような柔らかくて、柔軟性があり弾力性のある材料で構築できる。
【0131】
1つの形態において非侵襲シール形成部3000は、使用中に患者の顔の上唇(これがLipSuperiorである)上にシールを形成するシール形成部を含む。
【0132】
1つの形態において、非侵襲患者インタフェース3000は、使用中に患者の顔の顎の部分にシールを形成するシール形成部を含む。
【0133】
本技術のある形態において、1つ以上のシール形成構造3100を含み、それぞれが異なるサイズ及び/または形状の範囲に対応するように構成されているシステムが提供される。例えば、該システムは、大きいサイズの頭に適しているが、小さいサイズの頭には適していない、及び小さいサイズの頭に適しているが、大きいサイズの頭には適していないシール形成構造3100の一形態を含む。
【0134】
本技術のある形態において、シール形成構造3100は、例えば、シリコーンゴムのような生体適合性のある材料から構築される。
【0135】
図4は、患者インタフェース3000の残余から切り離されたシール形成構造3100の透視図を示す。該シール形成構造は、患者の気道の周辺の周りにシールを形成するように構成されたシーリング表面3105を含む。シールは、患者の鼻または患者の鼻と口の周りに形成できる。
【0136】
シール形成構造3100は固定具、接続部またはシーリング構造3100をシーリング構造3100の外周辺3115の内側に折り畳む(例えば、使用中に患者の顔に向けて)ループ3110を含む。該外周辺3115は、シーリング表面3105を支持する及び/またはそれと連続して形成される壁として概して画定できる。このように、固定具3110は、固定具3110が、シーリング表面3105及び外周辺3115と連続構造を形成するように(例えば、連続した円周)、実質的に管形状の構造3120を形成できる。このように、固定具3110は、シーリング表面3105、外周辺3115の部分及びシーリング表面3105でも外周辺3115でもない部分を含むことができる。シーリング表面3105でも外周辺3115でもない部分は、フラップの形状またはシーリング表面への1端及び外周辺3115との他端に取付けられるかまたはそれと連続したシートでよい。固定具3110は、患者の鼻に沿って、例えば、鼻翼に沿って、鼻骨の上にまたはその間の何処かに位置することができる。固定具3110は、患者の鼻の反対側に提供できる。固定具3110は、1端またはそれ以上の端を含み内部的にオープンで、固定具3110が、使用中に患者の治療圧力で内部的に加圧される(例えば、流体連結において)。
【0137】
本技術の一形態において、固定具3110は、シール形成構造3100の周辺の周りに部分的にのみ延在できる。
【0138】
一形態において、固定具3110とシール形成構造3100は、クローズしており、加圧できる構造(例えば、袋)を形成せず、固定具3110とシール形成構造3100間のスペースが、患者インタフェース3000の内部の圧力にオープンである。
【0139】
一形態において、シール形成構造3100は端を有し、固定具3110はこの端を保持して、端におけるブローアウトを防止する。
【0140】
固定具3110以外のシーリング表面3105の部分は、シーリング構造3100の内周辺に向けて内側に突き出たシーリングフラップ3125を含む。該シーリングフラップ3125は、シーリング表面3105の半径方向の内部でまたはその近くで、未接続の端を有することができる。シーリングフラップ3125は、患者の鼻骨の上の鼻の側面に抗して、シールを形成するように構成された部分3125aを含むことができる。該シーリングフラップ3125は、例えば、鼻翼に関して十分に半径方向外側に離間させて、鼻翼との接触を避けまたは最小限に抑えて、鼻翼に対するシーリングを避けるように構築することができる。
【0141】
図5は、
図4に示すシール形成構造3100の実質的に反対側の透視図である。実質的に管形状の構造3120は、この図を見ればすぐに分かる。
図5Aは、閉端3111のある固定具3110を示す。この図は、下にあるクッションの付いていないシール形成構造3100も示す。このようにシール形成構造3100は単一層のクッションと言うことができる。
【0142】
図6は、シール形成構造3100の平面図で、
図7と
図8に例示した2つのセクションのベースとなるものである。
【0143】
図7は、固定具3110を通して見た断面図である。実質的に管形状の構造3120は、この図を見ればすぐに分かる。固定具3110は、比較的厚い部分3130と比較的薄い部分3135を含む。比較的厚い部分3130は、1mmから2mmの厚さで、1.3mmから1.7mm、または約1.5mmの厚さである。比較的薄い部分3135は、0.2mmから0.8mmの厚さで、または0.4mmから0.6mm、または約0.5mmの厚さである。代案として、比較的厚い部分3130は、比較的薄い部分3135の厚さの約2.5から5倍の厚さ、または比較的薄い部分3135の2.8倍から3.3倍または比較的薄い部分3135の3倍の厚さである。比較的厚い部分3130は、外周辺3115と固定具3110におけるシーリング表面3105のほとんどを含めて例示されている。比較的薄い部分3135は、シーリング構造を内側に折り曲げ、ヒンジ構造3140にあるまたはその近くにある接続点3165において、裏面(back)をシール形成構造3100に接続する。ヒンジ構造3140は、所定の位置において、優先的な曲げまたは屈曲を提供することのできる、局所的な、比較的薄い、細長い一片として例示されており、これがシール形成構造3100に柔軟性を持たせて患者の顔面と一致させる。比較的厚い部分3130は十分な復元力を発揮することができ、患者の顔面に効果的なシールを提供する。比較的薄い部分3135は、圧力下において、シーリング表面3105のブローアウトに抵抗を与えることができ、一方シーリング表面3105は、効果的なシールを形成するのに堅い剛性を持つ必要はなく、堅くする必要はない。代案として、比較的厚い部分3130と比較的薄い部分3135の厚さは、
図7の例示と反対になることがある。または比較的薄い部分3135は、延在してシーリング表面3105を包含することができる。シーリング能力とブローアウトに対する抵抗の所望の組み合わせを達成するのに、厚さの任意の組み合わせを採用できる。
【0144】
接続点3165は、固定具3110に適用する所望の力またはその所望の復元力に基づいて決定できる。例えば、
図7Aに示すように、比較的薄い部分3135で形成される角度3170は変えることができる。角度3170を変えると、比較的薄い部分3135における張力も変動する。このように角度3170を最適化してブローアウトを防止し、及び/または患者の快適さを増す。
【0145】
角度3170はいろいろな方法で事前に決定できる。例えば、シール形成構造3100が単一の成形片であれば、シール形成構造3100を形成するのに使用する金型が角度3170を決定することになる。異なる金型を使って、異なる金型を得ることができる。代案として、比較的薄い部分3135は、未接続の状態で製造でき、接続点3165を後の組立ステップで形成する。接続点3165は、機械的な接続または接着ボンドとすることができる。接着ボンドを使用した場合、取り付けの容認できる範囲内で、接続点3165を連続して変えることができる。代案として、機械的取り付けを使用できる。
図7B−7Iは典型的な機械的取り付けを例示したものである。
図7B−7Eにおいて、単一の接続点3165において異なる角度が達成できるように、接続点3165をキーとする。
図7Bと7Cは、キーとした接続の第1の接続方向を例示し、
図7Dと7Eは、キーとした接続の第2の接続方向を例示している。
図7F−7Iにおいて、複数の離散的接続点3165が提供されている。選択した接続点3165が、角度3170を決定する。
図7Fと7Gは、離散的接続ポイントの第1の離散的接続を例示し、
図7Hと7Iは、離散的接続ポイントの第2の離散的接続を例示している。
図7B−7Iに例示した特定の配置は、例としてのみ示したもので、限定すると考えてはならない。その他のキーとなるまたは離散的接続の配置も使用できる。
【0146】
図7から分かるように、固定具3110は、鼻翼を含む鼻の側壁と接触するように位置してよい。固定具3110は、患者の鼻骨の上の鼻の側面との接触を維持するために連続した表面を提供することもできる。
【0147】
図8Aは、
図6における垂直面から見た断面図である。
図8で容易に分かるように、固定具3110は、取付け部3145において外周辺3115を形成する壁に取り付けられる。例示のように、取付け部3145は、取付け具3110の連続した部分であり、これはシール形成構造3100を一片の部品に成形することによって達成できる。しかし、取付け部3145は、例えば、機械的または接着剤のような化学的ないくつかの形態を使用して、固定具3110の自由端を締め付けるなどして、その他の任意の便利な態様で達成することもできる。取付け部3145は、固定具3110の全長に沿って、治療圧力のような圧力が固定具3110の内表面に作用し、シール形成構造3100が患者の顔面から引っ張られる場合及び/またはヘッドギアの張力が不十分な場合、シーリング表面3105のブローアウトに抗するために、十分な張力が固定具3110提供されるように選択できる。
【0148】
シーリング表面3105のいくつかまたはすべては、(比較的)摩擦が低減した領域である。これは所謂すりガラスの表面を提供することによって達成できる。摩擦が低減した領域があれば、ない場合より、シーリング表面の患者の顔面への付着が少なくなる。摩擦が低減した領域は、固定具3110の一部として提供でき、患者の鼻の側面(複数)が、シーリング表面3105及び/または固定具3110に沿って自由に滑ることができる。
【0149】
図8A−8Gは、
図6のいろいろな断面も示しており、断面の交差点が、シール形成構造3100がいろいろなサドルとドームを含むことを示している。説明を簡単にするために、いろいろな断面の交差点はここでは、それらの2文字の組み合わせで参照される。例えば、線8A−8Aで見た断面の交点と、線8B−8Bに沿って見た断面は、交点ABと言う。
【0150】
交点ABは、患者のセリオン(sellion)の下の患者の鼻堤と接触するように構成された第1のドーム領域と考える。交点ACは、交点ABの下にある位置における患者の鼻堤と接触するように構成された第1のサドル領域と考える。交点ADは、患者の下唇及び/またはスプラメントン(supramenton)と接触するように構成された第2のサドル領域と解釈される。交点EFは、患者の外側、ただし患者の口、ケイリオンに接触するように構成された第2のドーム領域と解釈される。交点EGは、患者の鼻翼に隣接した、患者の頬に接触するように構成された第3のサドル領域と解釈される。相互の関連で、第1の領域は、両方の交点に沿って比較的大きい湾曲を有し、第2のドーム領域は、両方の交点に沿って比較的小さい湾曲を有する。第1のサドル領域は、両方の交点に沿って比較的大きい湾曲を有し、第3のサドル領域は、線8E−8Eに沿って比較的小さい湾曲を有し、線8G−8Gに沿って比較的大きい湾曲を有する。第2のサドル領域は、線8D−8Dに沿って第1のサドル領域と第3のサドル領域の間にある湾曲を有し、線8A−8Aは、線8G−8Gに沿ったものに類似している。
【0151】
図9は、本技術の追加の局面を例示している。例えば、シーリング表面3105と連続している固定具3110に代えて、
図9はシーリング表面3105の下に位置する固定具3110を例示している。固定具3110は、大部分が点線で例示されている。この構成は、シーリング表面3105の下の材料の細長い一片またはチューブを取り付けまたは形成して達成することができる。下にある固定具3110は
図10でよく分かる。
【0152】
図9は、通常は固定具3110及び/または患者の鼻の近くのシーリング表面3105から延在するフラップ3150を示している。このようなフラップ3150は、シーリングに役立ち、及び/または上顎の上にあり、エンドカチオンに隣接した患者の鼻に関連した快適さを支援する。患者の顔面のこの領域を、いくつかの既知の装置でシールするのは困難なことがる。代案として、フラップ3150は固定具3110から延在してよく、これにより固定具3110に関してフラップ3150の位置を固定することができる。
図11は、フラップ3150がそこから延在している、実質的に管形状の構造3120として固定具3110を簡略化した説明である。
【0153】
図12は、
図11に説明した、シール形成構造3100に取付けられた実質的に管形状の構造3120の簡略化した説明である。
図12によれば、実質的に管形状の構造3120は別途組み立て、シール形成構造3100に取付けることができる。
【0154】
図13は、実質的に管形状の構造3120が、シール形成構造3100が患者の顔面に適合できるのにどのようにコンプライアンスを提供するかを説明したものである。本技術はコンプライアントの間でもブローアウトを防止できる。
【0155】
ブローアウトは、治療中に圧力がかかることに起因する差圧によって、シーリング表面3105が、患者の顔面とのシーリング接触から変位するように、少なくとも部分的に引き起こされるシール形成構造3100の変形を意味する。例えば、患者は治療中に患者インタフェース3000を顔面から引っ張ることがあり(即ち、圧力がかかっている間)、患者インタフェース3000が、患者によって患者の顔面から変位すると、治療圧力の力によってシール形成構造3100が変形することがある。次いで患者インタフェース3000を患者が患者の顔面に再び取付けると、効果の無いシールが形成され、加圧されたガスがシール形成構造3100から漏洩するなどして、シール形成構造3100のシーリング表面3105が変形により変位することがある。シール形成構造3100のこのような再位置決めの間、プレナムチャンバー3200の内部加圧が乱れ、シーリングフラップ3125の近位に圧力勾配が生じることがある。この圧力勾配は力を生じ、これにより終局的にはシーリングフラップのブローアウトに至ることがある。ブローアウトの間にシーリングフラップが変位すると、シーリング構造を再度顔面に位置決めした時、漏洩のパスが形成されることにより、シーリングフラップが、シールを妨害する位置に移動することがある。患者の眼に近位の領域でシール形成構造3100のブローアウトが発生すると(例えば、上顎の前頭突起に近位のシーリング表面3105が変位すると)、加圧されたガスが患者に向けて流れ、これは患者にとって非常に破壊的でかつ面倒である。従って、ブローアウトを低減することが有利である。
【0156】
ブローアウトによってシール形成構造3100が変形するのは、例えば患者の顔から離れる外向きの方向である。実際に、内部圧力が高い極端な条件では、ブローアウトによってシール形成構造3100がその後方に折り畳まれる。
【0157】
鼻骨の上を含む、上顎の前頭突起に近位の鼻の側面、及び外側軟骨は、ユーザ間でその輪郭に非常に違いがある。さらにこの領域でシールすることは、シーリングフラップ3125の内端が内側に曲がり(例えば、プレナムチャンバーの中へ、フランクフルト水平面に直角)、鼻の側面の輪郭に沿って変形することがある。このように、この部分ではブローアウトに続くシールの中断が極めて生じ易い。即ち、ブローアウト時に、もしシーリングフラップ3125が外側に変位すると(例えば、患者の顔面から離れる)、加圧されたガスの力の抵抗で、シーリングフラップをシーリング位置に戻すのは往々にして困難である。
【0158】
しかしながら、ブローアウトは、シールの中断が生じ難い頬の部分または上唇または下唇のような他の部分で起こることがあるが、これらの領域は、実質的に前頭面に沿って概してより平らな輪郭を有している。ブローアウトの間、シーリングフラップは、この面に沿ってシールが必要な位置から有意に動くことはなく、シーリングフラップを、シールを取り戻すのに必要な方向にシーリングフラップを再位置決めするのに、多くの場合ヘッドギアベクトルで提供されるシーリング力で十分である。
【0159】
鼻の領域の側面とシーリングフラップの底部コーナーの下の後部表面は、大きな表面積を提供し、ここは内部圧力下において、より変位を起こし易い。
【0160】
二重壁シール形成構造3100はブローアウトを起こし易いが、本技術の実施例で開示されたような単一壁シール形成構造3100は、特にブローアウトを起こし易い。外側シーリング壁を支持する追加のアンダークッション構造が無ければ、シーリング壁は、外側のシーリング壁が簡単に変形し、撓むと理解できる。さらに、二重壁クッションにおけるアンダークッションは、患者インタフェース3000を再位置決めする場合、外側のシーリング壁を患者の顔面に対して再位置決めするのに役立つが、この支援は単一壁クッションにはない。
【0161】
図34Aと34Bは、ブローアウトが生じた関連技術の患者インタフェース3000の実施例を説明したものである。
図34Aにおいて、シール形成構造3100が、ブローアウト領域BR1におけるシーリング表面3105が、患者の鼻から変位しているように、変形しているのが見える。さらにシール形成構造3100が、もう1つのブローアウト領域BR2におけるシーリング表面3105が、患者の鼻の側面から変位しているように、例えば、上顎の前頭突起の近位(
図2Hを参照)、変形しているのが見える。同様に
図34Bは、患者の鼻の側面、例えば、上顎の前頭突起に近位、におけるブローアウト領域BR2におけるシール形成構造3200のシーリング表面3105の変位を説明している。
【0162】
上記ブローアウトの両方の実施例において、患者インタフェース3000は、鼻と口の周りをシールするフルフェース患者インタフェースである。このような患者インタフェースは、比較的細長い横の部分の中間領域での支持が少なく、この領域でブローアウトが生じるので、特にブローアウトを生じ易い。加えて、位置決めと安定化構造3300の力ベクトルは、フランクフルト水平面または矢状面に対して該して平行に向けられる。したがって、これらの力ベクトルは、内方向への上顎の前頭突起に概して垂直で、従ってブローアウトに至るシール形成構造3100の変形に抗してシール形成構造3100に力を与えない。換言すれば、シール形成構造3100の変形を引き起こす治療圧力の力は、位置決めと安定化構造3100からの力ベクトルで適切に対応できない大きさと方向を有している。ブローアウトの現象は、フルフェ−ス患者インタフェースに特に関連があり、鼻患者インタフェースも同じ原理に基づくブローアウトを生じ易いことを理解すべきである。従って、本明細書で開示する固定具3110は、ブローアウトに抗するための鼻及びフルフェース患者インタフェースを組み込むことができる。
【0163】
さらに、シーリング表面3105の関連で、関連した特徴もある。シーリング表面3105は、シールが生じるように意図されるシール形成構造3100の領域を広く参照すると理解できる。それぞれの患者の頭部と顔面の人体測定学は異なるので、シール形成構造3100は、さまざまな患者に対して、快適な適合と効果的なシールを提供する形状と寸法とすることができる。従って、シールはシール形成構造3100のいろいろな部分で生じるように意図され、シーリング表面3105は、このような部分を広く参照することを理解されたい。シール形成構造3100が、使用中に特定の患者に実際に適用されると、シールが生じるように意図された広い領域の特定の部分にシールが形成される。シールが使用中に実際に生じるその領域は、シーリング表面3105と理解することもできる。シーリング表面3105の特別な意味は、上記のように、その語が使用される特定の文脈によると理解できる。
【0164】
上記のブローアウトの検討に戻ると、ブローアウトの発生は、シールが発生すると意図されたシーリング表面3105が患者の顔面から変位した状態を指すと理解できる。このような変位が生じると、少なくとも効果的なシールが妨げられ、さらに厳しい場合、シーリング接触が全く生じない。
【0165】
図14は、シール形成構造3100がブローアウトするのを避けることのできる、本技術のもう1つの局面を説明したものである。ここで、2つのリブ3155が例示されているが、任意の数のリブを提供できる。例えば、単一のリブまたは3つまたはそれ以上のリブを提供できる。固定具3110と同じで、各リブ3155は、シール形成構造3100、例えばシーリング表面3105、がブローアウトするのを防止する傾向がる。このリブは、同じ厚さまたは異なる厚さであってよい。例えば、1つまたは両方のリブ3155は約1mm厚さで、1つまたは両方のリブ3155は約0.5mmの厚さでよい。または、該リブは可変の厚さを有してよい。リブ3155が取り付けられているところは、シーリング表面3105は凸で、リブ3155が取り付けられている反対側は凹でよい。このように凹凸の表面がその領域の材料の厚さを画定する。リブ3155は、患者の鼻に隣接して提供できる。
【0166】
図15は、リブ3155の面に垂直に見たシール形成構造3100の断面である。リブ3155は、圧縮に比較的適合し、またはシーリング負荷のもとで簡単に破壊し、したがってシール形成構造3100及び/またはシーリング表面3105は患者の顔面に適合できる。これは
図16に例示されている。しかし
図17に例示したように、リブ3155は、引張り時に比較的大きい抵抗を示し、これはシール形成構造3100の内側、例えば、シーリング表面3105の反対側の表面3105a、が加圧された時に生じる。このように、リブ3155は、シール形成構造3100のブローアウトに耐える傾向があり、例えば、リブ3155が引っ張り部材となる。例えば、リブ3155は、「成形された」状態で、シール形成構造3100のシールを維持する傾向にあり、またはブローアウトの条件下で形状を維持する。
【0167】
図18と19は、鼻の側面とシーリングフラップ間の距離が変動する場合の顔面の変動に対応するために、大きな距離のD1vsD2を許容する延長フラップ3160を示している。延長フラップ3160のシーリング表面3105は、頬に対しても効果的なシールを提供する。矢印は、起こり得る患者との接触部分を示す。このタイプの構造は、従来のシリコーンマスク上の薄膜を使用してシールされており、マスクの位置を再調整する場合にブローアウトする傾向がある。固定具3110またはリブ3155は、ブローアウトの発生を防止し、それでも効果的にシールすべき顔面の差異による距離の変動を持たせている。
【0168】
図20は、パターンがシール形成構造3100上に含まれていることを除き、
図6と類似の図面である。パターンは、シール形成構造3100の類似の厚さの領域3175を指定する。
【0169】
領域3175Aは、例えば、約0.3mmの比較的薄い領域である。この領域は、鼻堤における快適さとコンプライアンスのために薄くてよい。
【0170】
領域3175Bは、例えば、約0.2mmの非常に薄い領域である。領域3175Aに関連して厚さのこの低減は、張力を有意に低減し、その結果、鼻梁における顔面マーキングが最少から無しとなる。ほとんどの患者にとって鼻梁は極めて骨質で、したがってマーキング及び/または不快を生じ易い。
【0171】
領域3175Cは、例えば、約1mmの準薄い領域である。この領域は準薄で、鼻の側面におけるピンチングを防止するために、この領域は準薄とすることができる。
【0172】
領域3175Dは、例えば約1.5mmと準厚い領域である。この領域は、鼻に沿った頬の上でシールする。顔面上のこの部分は、典型的には鼻の側面または鼻堤より脂肪質で、不快さを伴わずに比較的大きなシール力を出す。準厚い領域は、薄い領域より多くの構造剛性を提供できる。
【0173】
領域3175Eは、例えば約2.0mmの厚い領域である。周辺領域がこの厚さであればより剛体の外壁となり、クッションの内部に支持を提供する。領域3175Eは、例えば、領域3175Eが、患者の顔面に接触するシール形成構造3100の部分(複数)を支持する、以前の二重層クッションデザインのアンダークッションのように作動する。例えば、領域3175Eは、領域3175D及び/または3175F(以下に述べる)に支持を提供できる。クッションの全体的な断面形状は湾曲していて、シール対して空気(圧力)支援スプリングとコンプライアンスを提供する。この厚い領域を有する開示された構成は、それでも圧縮してシールの形成を支持するコンプライアンスのレベルを提供することができるので、この構成は、以前のマスクの厚いアンダークッションに対して利点を提供する。以前の二重層デザインと比較した場合、クッションが圧縮できる全体的な距離の範囲を増すことができる。
【0174】
領域3175Fは、例えば約0.3−0.5mmの薄い薄膜領域である。下唇の下をシールする部分は、下顎の動きを考慮して例えば約0.3mmのように薄くてよい。このような薄い薄膜領域は、快適さのために患者の歯肉に対して軽い負荷を提供することができる。領域3175Dに隣接する領域3175Fの部分には固定具3110がある。領域3175Fのこの部分は、固定具3110の圧縮を考慮して、例えば約0.5mmと薄い。患者の口の側面に接触するように構成された領域3175Fの部分は約0.5mmで、顔の輪郭の僅かの変動と睡眠中の動きに対してシールを維持するために、二重層クッションのシーリング薄膜層のように作用することができる。
【0175】
領域3175間に明確な線が描かれているが、この領域は、領域から領域へ相対的な厚さでスムーズに推移することができ、よって領域間の境界は近似である。これは、厚い領域と薄い領域を裸眼で識別する能力を制限するので有利で、これは審美的にも好ましい。しかし明確な推移も提供できる。
【0176】
国際公開第2006/074513号にクッションが開示されており、その全開示を参照により本明細書に包含する。このクッションでは、厚いアンダークッションと薄い薄膜が開示されている。薄い薄膜は、圧力下(即ち、膨らんでいる)で、顔面に軽いシールを提供し、一方アンダークッションは、シーリングを支持するために構造的支持を提供する。湾曲断面は、圧力支援ばねを提供して、ヘッドギアの張力下でシールを支持する。
【0177】
対照的に、上記の1つまたはそれ以上の領域3175のあるシール形成構造3100は僅か1層しか有しておらず、これは薄膜の機能と国際公開第2006/074513号のアンダークッションを組み合わせることができる。領域3175(例えば、領域3175E)の断面の最大厚さは、国際公開第2006/074513号のアンダークッションの最大厚さより薄くすることができる。しかしアンダークッションと薄膜を1つの層に組み合わせると、クッションの形状を保持し、シーリング作用を支持するのに十分な構造的剛性ができる。さらに、最大厚さを低減すると、シール形成構造3100の単一層が、以前の二重層デザインと比較して距離が長くなることにより圧縮可能となり、それにより底を打つ前にコンプライアンスが追加される。
【0178】
国際公開第2014/117227号にマスクの付いたシステムが開示されており、ここでは泡クッションが、第2の、より硬いクリップに取付けられた柔軟性のあるクリップで支持されており、それぞれの全開示を参照により本明細書に包含する。
図21は類似のシステムを開示しており、2つのリブ3155が組み込まれており、リブは患者の鼻の反対側にあるように構成されている。
図21では1つのリブのみ可視である。これらのリブは、柔軟性のあるクリップと取り付けられた泡シールがブローアウトするのを防止する固定具として作用する。リブ3155が例示されているが、固定具3110がリブ3155を代用することができる。
【0179】
このように、本技術のもう1つの実施例において、シール形成構造3100は、泡でできたクッション3810を含む。クッションは、鼻マスクの場合、患者の鼻を周辺で覆う単一部分を画定し、フルフェース・マスクの場合、鼻と口を覆う単一部分を画定する。泡クッションは、例えば、1つまたはそれ以上の以下の例の材料のような適切な材料で作ることができる:ポリエチレン、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニール(EVA)。ある場合には、泡クッションは、ポリウレタンでできた半開閉細胞泡でよい。半開細胞泡は、国際公開第2014/117227号により詳細に記述されている範囲のように制限された透水性を有し、その透水性を参照により本明細書に包含する。
【0180】
該クッション3810は、患者の顔面の輪郭に従うシーリング表面のある実質的に三角形またはナシ状の形状を有する。泡クッションは、それ自身が第2の、より剛体のクリップ3814(
図22に示す)に取り付けられるかまたはマスクシェル3816に直接取り付けられる第1のサポート(例えば、柔軟性のある)クリップ3812に取付けるようにデザインされている。1実施態様において、第1のサポートクリップ3812は、泡クッションより硬いが第2のクリップ3814より柔らかくまたはより柔軟性のあるクリップであり得る。全体のシーリング表面の物理的特性を画定するのは、泡と柔軟性のあるクリップの組み合わせである。柔軟性のあるクリップは、インタフェースに主要な変動を収容させ、患者の顔面の輪郭に首尾よく一致させる。泡クッションのコンプライアントな性質により、微調整ができ、患者の皮膚に接触する快適なインタフェース層を形成する。
【0181】
第1のサポートクリップ3812は、柔軟性がありコンプライアントな性質のためにブローアウトしがちである。
図21は、第1のサポートクリップ3812と取り付けられたクッション3810のブローアウトを防止できる本技術のもう1つの局面を例示している。ここで、例示した構成は、2つのリブ3155(対称性と図の方向により1つのみ可視である)を含むが、任意の数のリブを提供できる。例えば、単一のリブまたは3つまたはそれ以上のリブを提供できる。固定具3110と同様に各リブ3155は、第1の支持クリップ3812と取り付けられたクッション3810が、引張部材として機能することによって、ブローアウトを防止する傾向がある。リブは、同じ厚さまたは異なる厚さを有することができる。例えば、1つまたは両方のリブ3155は約1mm厚さで、1つまたは両方のリブは3155は約0.5mmの厚さとすることができる。もう1つの方法として、リブは可変の厚さを有することができる。リブ3155は、患者の鼻に隣接して提供できる。
【0182】
図21は、マスクシェル3816、永久に取り付けられた柔軟性のある第1の支持クリップ3812及び泡クッション3810を含み、シール形成構造3100を含むクッションアセンブリ3800の側面図である。例示のように、柔軟性のある第1の支持クリップは、ブローアウトを防止する固定具として作用する一対のリブ3155を経由してマスクシェル3816に固定できる。該リブ3155は、圧縮下で比較的コンプライアントでまたはシーリング負荷がかかると容易に潰れ、シール形成構造3100は患者の顔面に適合される。リブ3155が提供する張力は、その材料組成、配置またはリブ3155の位置の1つまたはそれ以上を変更することによって調整できる。
【0183】
図23は、泡クッション3810と柔軟性のある第1の支持クリップ3812を示したもので、ここでは患者接触表面が可視である。
図23Aは、
図23を通した垂直の対称面に沿った見た断面図で、泡クッション、柔軟性のある第1の支持クリップ3812とリブ3155を示している。
【0184】
本技術のもう1つの実施例において、シール形成構造3100は第1の支持クリップ3812のブローアウトを防止する一対の固定具3110を含む。各固定具3110は、接続ポイント3165を形成する、外周辺の柔軟性のある支持クリップ3812の内方への折り畳みによって形成される。この態様で、固定具3110は、実質的に管形状の構造3120を形成する。プレナムチャンバーの内部加圧によるブローアウトに抵抗するために、該固定具は固定具を形成する。該リブ3155で提供される張力は、その材料の組成、配置または固定具3110の位置の接続ポイント3165のいずれか1つまたはそれ以上を変更することによって調整できる。
【0185】
図24−27は、シール形成構造3100に類似のシール形成構造6000を示したもので、以下の点が異なる。シール形成構造3100に関して、同じ参照番号は上記と同じで、さらに記述を繰り返すことはない。
図24−27に例示したシール形成構造6000は、鼻マスクと使用するのに概して適した特徴を有している。
【0186】
図25B−25Gは、
図25Aのいろいろな断面を例示したもので、断面の交点はシール形成構造6000がいろいろなサドルとドームを含んであることを示している。説明を簡単にするために、いろいろな断面の交点は、それらの2文字の組み合わせによって参照される。例えば、線25B−25Bに沿って見た断面の交点と線25C−25Cに沿って見た断面の交点は、交点BCと参照される。
【0187】
交点BCは、患者のセリオンの下の患者の鼻堤と接触するように構成された第1のサドル領域と考える。線25B−25Bに沿って、湾曲は比較的小さく、線25C−25Cに沿って、湾曲は比較的大きい。線25B−25Bに沿った湾曲は、第1のサドル領域が円筒領域に近づくほど十分に大きい。第1のサドル領域は、所望であれば円筒領域でよい。交点BDは、患者の上唇と接触するように構成された第2のサドル領域と解釈する。線25B―25Bに沿った湾曲は、線25D−25Dに沿ったものより比較的小さい。交点CFは、鼻堤に隣接した患者の鼻に接触するように構成された第1のドーム領域と解釈する。線25F−25F及び線25C−25Cに沿って、湾曲は比較的類似している。交点FGは、患者の鼻に沿って接触するように構成された固定具3110によって形成された第3のサドル領域と解釈する。線25F−25Fに沿った湾曲は、比較的小さく、ゼロ湾曲に近づいている。線25G−25Gに沿った湾曲は、線25F−25Fのそれと比較して比較的大きい。このように、第3のサドル領域が円筒領域に近づいており、所望により円筒領域とすることができる。交点EFは、患者の鼻翼に沿って患者に接触するように構成された第2のドーム領域と解釈する。線22E−22Dと、線22F−22Fに沿った湾曲は比較的似ている。
【0188】
図27は、シール形成構造6000にパターンが含まれていることを除き、シール形成構造6000を例示した図である。該パターンは、類似の特性の領域6005及び/またはシール形成構造6000の厚さを指定する。
【0189】
領域6005Aは、ここでは鼻領域と参照され、約0.5mmの厚さを有し、これがこの領域におけるシール形成構造6000のしわ寄せ及び/またはしわの発生を防止する。
【0190】
領域6005Bは、ここではベース領域と呼ばれ、約2.9mmから3.45mmの間の厚さを有する。例えば、厚さは6005B2において2.9mm、6005B1と6005B3において3.0mm、6005B4において3.45mmである。領域6005Bは、シーリングフラップ3125に対して支持またはベースを提供し、シール形成構造6000の全体の形状を提供しかつ維持できる。
【0191】
領域6005Cは、ここではアンダークッションゾーンと参照され、0.95mmから2.1mmの範囲の厚さを有する。例示したように、この領域はクッションの主要領域である。例えば、領域6005Cは、クッションの約50%である。領域6005C1の上部の厚さは、0.95mmから1.6mmの間で、一方領域6005C2の下部の厚さは、1.25mmと2.1mmの間である。該厚さはこれらの値の間で連続して変動し、スムーズな外観を提供する。
【0192】
領域6005Dは、ここでは薄膜領域と参照され、シール形成構造6000の約1/3を形成し、固定具3110を含む。該厚さは約0.35mmである。この領域は、患者の顔面に対して励起された(例えば、圧力励起)シールとして機能できるように比較的薄くてよい。側面断面6005D1は患者の顔面に実質的に平行で、しわ寄せのそして漏れの発生の可能性を低減する。このようなしわは、動的な状態、例えば、シールが動いていることで発生する可能性が高い。
【0193】
領域6005Fは、ここではスプリングゾーンと参照され、1.1mmから1.8mmの範囲の厚さを有する。このゾーンは、スプリングとして機能し、上唇に圧縮を与えてそこへの圧力を低減する。この領域は、上唇の中央から鼻の中央(例えば、鼻翼クレストポイント)にかけて次第に固くなり、ここが領域6005Fの最も固いところである。
【0194】
領域6005Gは、ここでは鼻のくぼみ領域と参照され、比較的高い鼻堤を有する患者をうまく収容するために比較的深く、及び/またはより快適なシールを提供する。この領域は、領域6005Dと類似の厚さ(例えば、約0.35mm)を有し、領域6005Dの準領域となる。
【0195】
「柔らかい」と「柔軟性がある」ならびにその派生語の表現は、本明細書で第1の支持クリップ3812を記述するのに使用する場合、「患者インタフェースに関連して使用される語句」で具体的に定義されているように、「弾力性のある(resilient)」の表現の意味を持つと意図される。換言すれば、柔軟性のある支持クリップは、十分に弾力的に変形可能で、負荷を外せばすべてのエネルギーを速やかにまた実質的に解放する。
【0196】
シール形成構造3100は、本技術の1つまたはそれ以上の形態の利点を有することができる。例えば、ヒトの顔面構造はそれぞれ違いがあり、多くの顔面の違いがあるシールのデザインは厄介である。この違いは、顔面構造の形状の違い(例えば、形状の異なる鼻及び/または頬の湾曲の違い)及び/または組織の内容物の違い(例えば、脂肪組織の多/少)を含む。これらの違いは、ある人には非常に合っているが、他の人にはそうでない以前のシール形成構造をもたらす。また、知覚される快適さも、顔面の構造には関係なく人によってまちまちである。本明細書に記載のシール形成構造3100は、以前のシール形成構造と比較して、高パーセンテージのユーザがシール形成構造3100を有効に使用している(例えば、高パーセンテージのユーザが、シール形成構造3100が効果的で、及び/または高パーセンテージのユーザが、シール形成構造3100が快適だと知覚している)。
【0197】
図28Aから28Mは、固定具3110を含む典型的なフルフェースシール形成構造3100を示す。
図28Kで分かるように、例えば固定具3110は、第1の内表面領域3180と第2の内表面領域3185の間に延在している。第1の内表面領域3180は、シール形成構造のシーリング表面3105の反対にあると理解できる。第2の内表面領域3185は、何処に位置してもよいと理解できる。
図28Kに描写された実施例において、第2の内表面領域3185は、シール形成構造3100の内部に位置している。その他の実施例において、第2の内表面領域3185は、固定具3110がシール形成構造3100とプレナムチャンバー3200の間に延在するように、プレナムチャンバー3200の内部に位置してよい。第2の内表面領域3185の位置は、ブローアウトの力に耐える固定具3100の張力ベクトルの所望の方向のコンポーネントに基づいて選択できる。
【0198】
図28Lと28Mは詳細な断面図で、とりわけ固定具3110が第2の内表面領域3165から延在する接続ポイント3165を示している。この実施例における接続ポイント3165は、この領域において湾曲して応力集中を低減し、それにより固定具3110が裂ける傾向を低減している。さらに固定具3110は、シール形成構造3100が製造中にプレナムチャンバー3200に接着される接着領域3190から少し離れて、第2の内表面領域3185から延在している。これは、シール形成構造3100がプレナムチャンバー3200に接着される場合、固定具3110の損傷を防止する。
図29CからC29Eは、固定具3110が、接着領域3190とプレナムチャンバー3200から少し離れて第2の内表面領域3185からどのように延在するかも示している。
【0199】
図28Jから28Lの断面図は、固定具3110が第1の内表面領域3180から延在する箇所を示している。これらの実施例から分かるように、固定具3110は、シーリングフラップ3125ではないがそれに近い第1の内表面領域3110から延在している。しかし代案の実施例において、固定具3110はシーリングフラップ3125に近いかまたはその端の第1の内表面領域3180から延在することができる。
【0200】
図30Aと30Bは、本技術の特徴を有する、ただし描写されている位置決めと安定化構造3300の無い、シール形成構造3100を含むフルフェース患者インタフェース3000の実施例を示している。
【0201】
図31Aから31Mは、鼻シール形成構造3100である本技術のもう1つの実施例を示している。例えば、
図31Kにおいて分かるように、固定具3110はシーリングフラップ3125から隣接して延在している。従って、この領域には画定された端はない。さらに、このような配置における固定具3110の少なくとも一部は、使用中にシーリング表面3105の一部を、患者の顔面の人体測定学に応じて、形成することも理解されたい。
【0202】
図32Cから32Eは、鼻患者インタフェース3000において、固定具3110が第2の内表面領域3185から、フルフェース患者インタフェース3000と比較して、接着領域3190からさらに離れた第2の内表面領域3185から延在してよいことを示している。
【0203】
5.3.2 プレナムチャンバー
プレナムチャンバー3200は、使用中にシールが形成される領域における平均的なヒトの顔面の表面のでこぼこに補完的になるように形作られる周辺を有している。使用中は、プレナムチャンバー3200の周縁エッジは、顔面の隣接する表面に近接するよう位置決めされる。顔との実際の接触はシール形成構造3100によって行われる。シール形成構造3100は、使用中はプレナムチャンバー3200の周辺全体に伸びることができる。
【0204】
本技術のある形態において、プレナムチャンバー3200は、例えば透明なポリカーボネートのような、透明な材料から構築される。透明な材料の使用は、患者インタフェースの押し付けがましさを低減でき、治療とのコンプライアンスを改善するのに役立つ。透明な材料の使用は、患者インタフェースがどのように取りつけられそして機能しているかを臨床医が観察するのに役立つ。
【0205】
本技術のある形態において、プレナムチャンバー3200は半透明の材料から構築される。半透明の材料の使用は、患者インタフェースの押し付けがましさを低減でき、治療とのコンプライアンスを改善するのに役立つ。
【0206】
5.3.3 位置決めと安定化構造
本技術の患者インタフェース3000のシール形成構造3100は、位置決めと安定化構造3300によって使用中はシーリング位置に保持される。
【0207】
一形態において、位置決めと安定化構造3300は、顔面を持ち上げるための、プレナムチャンバー3200における陽圧の影響に打ち勝つのに少なくとも十分な保持力を提供する。
【0208】
一形態において、位置決めと安定化構造3300は、患者インタフェース3000にかかる重力の影響に打ち勝つための保持力を提供する。
【0209】
一形態において、位置決めと安定化構造3300は、チューブの引張りまたは患者インタフェースとの予想外の干渉などの、患者インタフェース3000にかかる摂動力の可能性のある影響に打ち勝つための安全マージンとして保持力を提供する。
【0210】
本技術の一形態において、位置決めと安定化構造3300は、睡眠中の患者による着用にふさわしいように構成される。一実施例において位置決めと安定化構造3300は、把握しているまたは実際の器具の容積を減らすために、薄型または断面厚さを有する。一実施例において、位置決めと安定化構造3300は長方形の断面を有する少なくとも1つのストラップを有する。一実施例において、位置決めと安定化構造3300は少なくとも1つの平らなストラップを含む。
【0211】
本技術の一形態において、患者が頭部の後方領域を枕に載せて、仰臥位で横たわるのに、大きすぎないようまたかさばらないように構成された位置決めと安定化構造3300が提供される。
【0212】
本技術の一形態において、患者が頭部の側面領域を枕に載せて、横臥位で横たわるのに、大きすぎないようまたかさばらないように構成された位置決めと安定化構造3300が提供される。
【0213】
本技術の一形態において、位置決めと安定化構造3300は織物の患者接触層、発泡体体の内層及び織物の外層の積層で作られたストラップを含む。一形態において、発泡体体は水分(例えば、汗)がストラップ透過できるように多孔質である。一形態において織物の外層は、フックの材料部に係合するために、固定具材料を含む。
【0214】
本技術のある形態において、位置決めと安定化構造3300は伸張性の、例えば弾性的に伸びることのできるストラップから成る。例えば、使用中はストラップが伸張しているように構成され、クッションを引き込んで患者の顔の部分とシーリング接触するように力を向ける。実施例において、ストラップはネクタイのように構成される。
【0215】
本技術のある形態において、位置決めと安定化構造3300は曲げることのできる、例えば、非剛体のストラップから成る。この態様の利点は、患者が睡眠中に横たわるのによりくつろぐことである。
【0216】
本技術のある形態において、位置決めと安定化構造3300は、水蒸気がストラップを通って伝達されるために、呼吸できるように構築されたストラップを含む。
【0217】
本技術のある形態において、1つ以上の位置決めと安定化構造3300を含み、それぞれが異なるサイズ及び/または形状範囲に対応した保持力を提供するように構成されたシステムが提供される。例えば、該システムは、大きなサイズの頭部には適しているが、小さいサイズの頭部には適していない、もう1つは小さいサイズの頭部には適しているが、大きなサイズの頭部には適していない、一形態の位置決めと安定化構造3300を含む。
【0218】
5.3.4 ベント
一形態において、患者インタフェース3000は吐き出したガス、例えば二酸化炭素を洗浄するように構築されかつ配置されたベント3400を含む。
【0219】
本技術による上記ベント3400の1つの形態は、例えば約20から約80または約40から約60または約45から約55の複数の穴を含む。
【0220】
ベント3400はプレナムチャンバー3200内に置くことができる。代案として、ベント3400は分離構造、例えば、スイベルの中に置くことができる。
【0221】
5.3.5 分離構造(複数)
患者インタフェース3000の一形態は、少なくとも1つの分離構造、例えば、スイベルまたはボールとソケットを含む。
【0222】
5.3.6 接続ポート
接続ポート3600から空気回路4170への接続ができる。
【0223】
5.3.7 額支持
一形態において、患者インタフェース3000は額支持3700を含む。
【0224】
5.3.8 窒息防止弁
一形態において、患者インタフェース3000は窒息防止弁を含む。
【0225】
5.3.9 ポート(複数)
本技術の一形態において患者インタフェース3000は、プレナムチャンバー3200内の容積にアクセスできる1つまたはそれ以上のポート(複数)を含む。この形態の1つにおいて臨床医は酸素が補充できる。一形態において、プレナムチャンバー3200内のガスの特性、例えば、圧力が直接測定できる。
【0226】
5.4 RPT装置
本技術の1局面によるRPT装置4000は、機械的、空気的及び/または電気的コンポーネンツを含み、1つまたはそれ以上のアルゴリズム4300を実行するように構成されている。RPT装置4000は、本明細書の他の場所に記述されている1つまたはそれ以上の呼吸状態を治療するために、患者の気道に送達する空気の流れを発生するように構成できる。
【0227】
RPT装置は、2つの部分に形成された、上部4012と下部4014、外部ハウジング4010を有する。さらに外部ハウジング4010は1つまたはそれ以上のパネル(複数)4015を含むことができる。RPT装置4000は、RPT装置4000の1つまたはそれ以上の内部コンポーネントを支持するシャーシ4016を含んでよい。RPT装置4000はハンドル4018を含んでよい。
【0228】
RPT装置4000の空気路は、入口フィルター4112、入り口マフラー4122、陽圧で空気が供給できる圧力発生器4140(例えば、送風機4142)及び出口マフラー4124と圧力センサー4272及び流量センサー4274のような1つまたはそれ以上の変換器4270のような1つまたはそれ以上の空気路アイテムを含んでよい。
【0229】
1つまたはそれ以上の空気路アイテムは、空気ブロック4020と称する取外し可能な単一の構造内に位置できる。空気ブロック4020は外部ハウジング4010内に位置できる。一形態において、空気ブロック4020はシャーシ4016で支持されるかまたはその一部を形成する。
【0230】
RPT装置4000は、電源4210、1つまたはそれ以上の入力装置4220、中央コントローラ4230、治療装置コントローラ4240、圧力発生器4140、1つまたはそれ以上の保護回路4250、メモリー4260、変換器4270、データ通信インタフェース4280及び1つまたはそれ以上の出力装置4290から成ることができる。電気コンポーネント4200は単一のプリント基板ユニット(PCBA)4202上に置くことができる。代案として、RPT装置4000は1つ以上のPCBA4202を含んでよい。
【0231】
5.4.1 RPT装置の機械的及び空気的コンポーネンツ
RPT装置は、1つまたはそれ以上の下記のコンポーネンツを一体ユニットの中に含むことができる。代案の形態で、1つまたはそれ以上の次のコンポーネンツが、それぞれ別のユニットとして位置することができる。
【0232】
5.4.1.1 空気フィルター(複数)
本技術の一形態によるRPT装置は、空気フィルター4110または複数の空気フィルター4110を含むことができる。
【0233】
1つの形態において、入口空気フィルター4112は、圧力発生器4140の上流の空気路の先頭に位置している。
【0234】
1つの形態において、例えば抗菌性フィルターのような出口空気フィルター4114は空気ブロックの出口4020と患者インタフェース3000の間に位置している。
【0235】
5.4.1.2 マフラー(複数)
本技術の1つの形態によるRPT装置は、マフラー4120または複数のマフラー4120を含むことができる。
【0236】
本技術の一形態において、入口マフラー4122は圧力発生器4140の上流の空気路に位置している。
【0237】
本技術の一形態において、出口マフラー4124は圧力発生器4140と患者インタフェース3000の間の空気路に位置している。
【0238】
5.4.1.3 圧力発生器
本技術の一形態において、陽圧の流れを生成する、または供給する、圧力装置4140は制御可能な送風機4142である。例えば、送風機4142は、ボリュートの中に収めた一つまたはそれ以上のインペラーを有するブラシレスDCモータ4144を含む。送風機は、例えば、約120リッター/分の陽圧を、約4cmH
2Oから約20cmH
2Oの範囲またはそのほかの形態で約30cmH
2Oまでの範囲で吐出できる。送風機は、その開示をここに参考のため包含する下記の任意の1つ特許または特許出願に記載されている送風機であってよい:米国特許第7、866、944号明細書;米国特許第8、638、014号明細書;米国特許第8、636、479号明細書;及び国際公開第2013/020167号。
【0239】
圧力発生器4140は、治療送値コントローラ4240の制御下にある。
【0240】
その他の形態において、圧力発生器4140はピストン駆動のポンプ、高圧源(例えば、圧縮空気リザーバ)に接続された圧力調整器またはベローズであってよい。
【0241】
5.4.1.4 変換器(複数)
変換器はRPT装置の内部でも外部でもよい。外部変換器は例えば空気回路に置かれまたは患者インタフェースのような空気回路の一部を形成する。外部変換器はデータをRPT装置に送信または移送するドップラーレーダ動きセンサーのような非接触センサーの形態であってよい。
【0242】
5.4.2 RPT装置の電気コンポーネンツ
5.4.2.1 電源
電源4210は、RPT装置4000の外部ハウジング4010の中または外に置くことができる。
【0243】
本技術の一形態において、電源4210はRPT装置4000にのみ電気を提供する。本技術のもう1つの形態において、電源4210はRPT装置4000と加湿器5000の両方に電気を提供する。
【0244】
5.4.2.2 入力装置
本技術の一形態において、RPT装置4000は作業者が装置と交流できるように、ボタン、スイッチまたはダイアルの形態の1つまたはそれ以上の入力装置4220を含む。ボタン、スイッチまたはダイアルは物理的装置またはタッチスクリーンからアクセスできるソフトウエア装置であってよい。1つの形態において、ボタン、スイッチまたはダイアルはハウジング4010に物理的に接続するかまたはもう1つの形態では、中央コントローラと電気的接続にあるレシーバとの無線通信であってよい。
【0245】
5.4.2.3 オプションのディスプレイ、警報を含む出力装置
本技術による出力装置は、視覚、オーディオ及び触覚ユニットの一つまたはそれ以上の形態をとることができる。視覚ディスプレイは液晶表示装置(LCD)または発光ダイオード(LED)ディスプレイであってよい。
【0246】
5.5 空気回路
本技術の態様による空気回路4170は、空気の流れが、例えば、RPT装置4000と患者インタフェース3000のような2つのコンポーネンツ間を使用中に行き来できるように構築されかつ配置される導管またはチューブである。
【0247】
具体的には、空気回路4170は空気ブロック4020の出口と患者インタフェースと流体接続としてよい。空気回路は、空気吐出チューブと称することができる。場合によっては、吸入と呼気のための回路の別の肢があってよい。そのほかの場合には、単一の肢が使用される。
【0248】
ある形態では空気回路4170は、例えば空気の温度を維持または上げるための、空気回路中の空気を加熱するように構成された1つまたはそれ以上の加熱エレメントを含むことができる。加熱エレメントは、加熱された有線回路の形態であってよく、温度センサーのような1つまたはそれ以上の変換器を含むことができる。一形態において、加熱された有線回路は、空気回路4170の軸の周りにらせん状に巻くことができる。加熱エレメントは、中央コントローラのようなコントローラと相互通信できる。加熱された有線回路を含む空気回路4170の1例が米国特許8、733、349に記載されており、その全開示を参照により本明細書に包含する。
【0249】
5.6 加湿器
5.6.1 加湿器の概要
本技術の一形態において、患者に送達する空気またはガスの絶対湿度を、周囲空気に関して変更するための加湿器5000(例えば、
図3Vと3Wに示す)が提供される。典型的には、該加湿器5000は、空気の流れを患者に送達する前に、(周囲空気に関して)その絶対湿度を上げ、温度を上げるのに使用する。
【0250】
加湿器5000は、加湿器リザーバ5110、空気の流れを受け取る加湿器入口5002、及び加湿した空気の流れを吐出する加湿器出口5004を含む。ある形態において、
図3Vと3Wに示すように加湿器リザーバの5110の入口と出口は、それぞれ加湿器入口5002と加湿器出口5004でよい。加湿器5000は、さらに加湿器ベース5006を含み、これは加湿器リザーバ5110を受けるように適合され、加熱エレメント5240を含む。
【0251】
5.6.2 加湿器コンポーネンツ
5.6.2.1 水リザーバ
1つの配置によれば、加湿器5000は、空気の流れを加湿するために蒸発させる液体(例えば、水)のある容量を保持しまたは保有するように構成された水リザーバ5110を含むことができる。水リザーバ5110は水の所定の最大容量を保持するように構成され、例えば、少なくとも一晩の睡眠のような呼吸治療セッションの間、適切な加湿を提供する。典型的にはリザーバ5110は、数百ミリリットル、例えば300ミリリットル(ml)、325ml、350mlまたは400mlの水を保持するように構成される。そのほかの形態では加湿器5000は、建物の水道システムのような外部の水源から水の供給を受けるように構成できる。
【0252】
1つの態様によれば水リザーバ5110は、RPT装置4000からの空気の流れがそこを通るときに湿気を加えるように構成できる。1つの態様において、水リザーバ5110は空気の流れがリザーバ5110の中の水と接触している時、そこを通って曲がりくねった流路を通過するのを助長するように構成できる。
【0253】
1つの形態によれば、リザーバ5110を
図3Vと3Wに示すよう加湿器5000から横方向に取り外すことができる。
【0254】
リザーバ5110は、その通常位置で、リザーバ5110が作動方向から移動する及び/または回転する時、任意の開口及び/またはそのサブコンポーネンツを通って液体の流出が生じないように構成できる。加湿器5000で加湿する空気の流れは典型的には加圧されているので、リザーバ5110は漏れ及び/または障害物を通して空気圧が低下しないよう構成することができる。
【0255】
5.6.2.2 伝導部分
1つの配置によればリザーバ5110は、加熱エレメント5240からリザーバ5110の中の多量の水への熱の効果的な伝導ができるように構成された伝導部分5120を含む。一形態において、伝導部分5120はプレート形状とできるが、その他の形状も適している。伝導部分5120のすべてまたは一部は、アルミニウム(例えば、1mm、1.5mm、2.5mmまたは3mmのような約2mm厚さ)、その他の伝導金属またはあるプラスチックのような熱的に伝導性の材料で作ることができる。いくつかの場合には、適切な形状のより伝導的ではない材料で達成できる。
【0256】
5.6.2.3 加湿器リザーバ・ドック
一形態において加湿器5000は、加湿器リザーバ5110を受けるように構成された加湿器リザーバ・ドック5130(
図3Vに示す)を含むことができる。いくつかの配置において加湿器リザーバ・ドック5130は、リザーバ5110を加湿器リザーバ・ドック5130に保持するように構成されたロッキングレバー5135のようなロッキング機能を含むことができる。
【0257】
5.6.2.4 水位指示計
加湿器リザーバ5110は、
図3V−3Wに示すような水位指示計5150を含むことができる。いくつかの形態において水位指示計5150は、患者1000または介護者のようなユーザに、加湿器リザーバ5110中の水量に関して1つまたはそれ以上の指示が提供できる。水位指示計5150が提供する1つまたはそれ以上の指示には、最大の水量、所定の水量、その間の25%、50%または75%または200ml、300mlまたは400mlのような量が含まれる。
【0258】
5.6.2.5 加熱エレメント
加熱エレメント5240はある場合には、加湿器リザーバ5110の中の1つまたはそれ以上の水分量及び/または空気の流れに熱入力を提供するために加湿器5000に提供される。加熱エレメント5240は、電気的に抵抗性の加熱トラックのような熱発生コンポーネントを含んでよい。加熱エレメント5240の適切な例は、PCT特許出願番号WO2012/171072などに記載されている積層加熱エレメントで、その全開示を参照により本明細書に包含する。
【0259】
いくつかの形態では、加熱エレメント5240は、
図5Bに示すように熱が主として伝導で加湿器リザーバ5110に提供される加湿器のベース5006の中に提供できる。
【0260】
5.7 用語解説
本技術の公開の目的で、本技術のある形式において、1つまたはそれ以上の以下の定義を適用してよい。本技術のそのほかの形態において、代案の定義が適用できる。
【0261】
5.7.1 一般
空気:本技術のある形態において、空気は大気の空気を意味し、本技術のそのほかの形態では、空気は、例えば、酸素の多い大気の空気のような呼吸できるガスのいくつかのそのほかの組み合わせを意味する。
【0262】
周囲:本技術のある形態において、周囲の用語は、(i)治療システムまたは患者の外部、及び(ii)治療システムまたは患者を直接取り巻いていることを意味する。
【0263】
例えば、加湿器に関する周囲
湿度は、例えば、患者が睡眠中の部屋の湿度ように、加湿器を直接取り巻いている湿度である。このような周囲湿度は、患者が睡眠中の部屋の外の湿度と異なる。
【0264】
もう1つの実施例において、周囲
圧力は身体を直接取り巻いているまたはその外の圧力である。
【0265】
ある形態では、周囲騒音(例えば、音響)は、例えばRPT装置が発生する騒音またはマスクまたは患者のインタフェースから出る騒音以外の、患者の居る部屋の暗騒音と考えてよい。周囲騒音は、部屋の外の源で発生する。
【0266】
自動陽圧気道(APAP)治療:SDBイベントの有無に依存して、最小限と最大限の間で、例えば、吸い込みから吸い込みへ、治療圧力が自動で調整可能な、CPAP治療。
【0267】
連続陽圧気道(CPAP)治療:患者の呼吸サイクルを通じて、治療圧力がほぼ一定である呼吸圧力治療。ある形態では、気道への入口における圧力は呼気中にわずか高く、吸入中にわずか低い。ある形態では、圧力は患者の異なる呼吸サイクル間で変動する。例えば、上気道の部分的閉塞の兆候を検出すると増加し、部分的上気道閉塞の兆候がないと低下する。
【0268】
流量:単位時間当たりに送出される空気の容量(または質量)。流量は瞬時量を言う。場合によっては、流量への言及はスカラー量への言及となる。即ち、大きさのみを有する量となる。そのほかの場合、流量への言及はベクトル量への言及となる。即ち、大きさと方向の両方を有する量である。流量は記号Qで与えられる。「量」は単に「流れ」と短縮される。
【0269】
患者の呼吸の例において、流量は患者の呼吸周期の吸気の部分に対して名目上正で、それによって流量は患者の呼吸周期の呼気の部分に対して負である。合計流量Qtは、RPT装置を出る空気の流量である。ベント流量Qvは、吐き出したガスの洗浄のためにベントを出る空気の流量である。漏れ流量、Qlは、患者インタフェースまたは他からの漏れの流量である。呼吸流量Qrは、患者の呼吸システムが受け取った空気に流量である。
【0270】
加湿器:加湿器の語は、治療的に有益な量の水(H
2O)蒸気を、患者の医療呼吸状態を改善するために、空気の流れに提供することのできるように物理的構造で構築され、配置されまたは構成された加湿装置を意味する。
【0271】
漏れ:漏れの語は、意図しない空気の流れと解釈される。一実施例において漏れは、マスクと患者の顔間のシールが不完全な結果生じる。もう1つの実施例において、漏れは周囲への旋回エルボー内で発生する。
【0272】
騒音、伝導性(音響):本明細書で伝導騒音は、例えば空気回路と患者インタフェース及びその中の空気のような空気路で患者に伝わる騒音を指す。一形態において伝導騒音は、空気回路の終端における音圧を測定することによって定量される。
【0273】
ノイズ、放射(音響):本明細書で放射ノイズは、周囲空気によって患者にもたらされたノイズを指す。一形態において放射ノイズは、問題の対象の音響パワー/圧力レベルをISO3744に従って測定することによって定量される。
【0274】
ノイズ、ベント(音響):本明細書でベントノイズは、患者インタフェースのベント穴のような任意のベントを通る空気の流れで生成されたノイズを指す。
【0275】
患者:呼吸状態を患っているかどうかに関係なく、ヒト。
【0276】
圧力:単位面積にかかる力。圧力は、cmH
2O、g−f/cm
2、ヘクトパスカルなど様々な単位で測定される。1cmH
2Oは1g−f/cm
2に等しく、約0.98ヘクトパスカルである。特記のない限り、本明細書において圧力はcmH
2Oで与えられる。
【0277】
患者インタフェースにおける圧力は記号Pmで与えられ、現在の時間におけるマスク圧力Pmで達成される目標値を示す治療圧力はPtで与えられる。
【0278】
呼吸圧力治療(RPT):大気に関して典型的に正である治療圧力において、気道の入口への空気の供給。
【0279】
換気装置:患者に圧力サポートを提供して、呼吸の仕事の一部またはすべてを実行する機械的装置。
【0280】
5.7.1.1 材料
シリコンまたはシリコン・エラストマー:合成ゴム。本明細書において、シリコンは液体シリコンゴム(LSR)または圧縮形成シリコンゴム(CMSR)を指す。市販のLSRの一形態は、Dow Corningが製造しているSILASTIC(この商標で販売されている製品範囲に含まれている)である。LSRを製造しているもう1社はWACKERである。特に明記のない限り、LSRの例示的形態は、ASTM D2240に従って測定された約35から45の範囲のショアA(またはタイプA)圧入硬度を有している。
【0281】
ポリカーボネート:ビスフェノール−Aカーボネートの熱可塑性ポリマー。
【0282】
5.7.1.2 機械的特性
弾力:弾性的に変形した時、エネルギーを吸収する及び負荷を除いた時にエルギーを開放する材料の能力。
【0283】
弾力性がある:負荷を除くと、実質的にすべてのエネルギーを開放する。例えば、あるシリコン及び熱可塑性エラストマーを含む。
【0284】
硬度:変形に抗する材料それ自身の能力(例えば、ヤング率で表すまたは標準化したサンプルのサイズで測定した押し込み硬度スケール)。
・「柔らかい」材料にはシリコンまたは熱可塑性エラストマー(TPE)が含まれ、例えば、指圧で簡単に変形する。
・「硬い」材料にはポリカーボネート、ポリプロピレン、鋼またはアルミニウムが含まれ、例えば、指圧で簡単に変形しない。
【0285】
構造またはコンポーネントの剛性(または剛性):加えた負荷に対応して、変形に抗する構造またはコンポーネントの能力。負荷は、例えば圧縮、引張り、曲げまたは捩じりのような力またはモーメントである。構造またはコンポーネントは、異なる方向に異なる抵抗を示す。
【0286】
フロッピーな構造またはコンポーネント:自重を支えるようになった時、例えば1秒のような比較的短い時間内に、例えば、曲げなどのように形状を変える構造またはコンポーネント。
【0287】
剛体の構造またはコンポーネント:典型的に使用中に遭遇する負荷をかけた時、形状を実質的に変えない構造またはコンポーネント。このような使用の例は、セットアップ時及び患者インタフェースを、例えば約20から30cmH
2Oの圧力の負荷で、患者の気道への入口とシーリングの関係に維持する場合である。
【0288】
一例としてI−ビームは、第2の直交方向と比較して、第1の方向に異なる曲げ剛性(曲げ負荷に対する抵抗)を含む。もう1つの例において、構造またはコンポーネントは、第1の方向へフロッピーでよく、第2の方向へ剛体でよい。
【0289】
5.7.2 呼吸サイクル
無呼吸:一部の定義によれば、無呼吸は流れがある期間、例えば、10秒、所定の閾値以下に低下すると起こると言われる。閉塞性無呼吸は、患者の努力にもかかわらず気道の閉塞により空気が流れないときに発生したと言われる。中枢性無呼吸は、気道が開いているにもかかわらず、呼吸努力の低下によって無呼吸が検出されたときまたは呼吸努力がなされない時発生したと言われる。混合性無呼吸は、呼吸努力の低下または欠如が気道の閉塞と同時に生じたときに発生したと言われる。
【0290】
呼吸数:患者の自発呼吸の率で、通常1分当たりの呼吸で測定される。
【0291】
負荷サイクル:合計呼吸時間Ttotに対する吸入時間とTiの比率。
【0292】
努力(呼吸):呼吸努力は、呼吸を試みる患者の自発呼吸によってなされた仕事。
【0293】
呼吸サイクルの呼気の部分:呼気の流れの開始から吸気の流れの開始の期間。
【0294】
流れ制限:流れ制限は、患者の努力の結果が対応する流れの増加を生じない、患者の呼吸作用における事態と解釈される。呼吸サイクルの吸気部分で流れ制限が生じると、吸気流れの制限と記述される。呼吸サイクルの呼気部分で流れ制限が発生すると、呼気流れの制限と記述される。
【0295】
流れ制限のある吸気の波形のタイプ:
(i)扁平した:上昇があり、比較的平らな部分が続き、降下が続く。
(ii)M−型:2つのローカルピークがあり、1つは前縁、1つは後縁、2つのピーク間は比較的平らである。
(iii)椅子状:単一のローカルピークがあり、このピークは前縁にあり、比較的平らな部分が続く。
(iv)逆椅子形状:比較的平らな部分があり、単一のローカルピークが続き、このピークは後縁にある。
【0296】
呼吸低下:一部の定義によれば、好ましくは呼吸低下は流れにおける減少と言い、流れの中断ではない。一つの形態において、閾値以下の流れの低下がある期間あれば、呼吸低下が生じたと言う。呼吸努力の低減により呼吸低下が発生した時、中枢性無呼吸が生じたという。成人における一形態において、以下のいずれも呼吸低下と言える:
(i)患者の呼吸が少なくとも10秒間30%低下し、さらに4%の関連した脱飽和がある;または
(ii)患者の呼吸が少なくとも10秒間低下し(50%以下)、さらに少なくとも3%の関連した脱飽和または覚醒がある。
【0297】
過呼吸:通常の流量より高いレベルへの流れの増加。
【0298】
呼吸サイクルの吸気部分:吸気流れの開始から呼気流れの開始までの期間を呼吸サイクルの吸気部分と言う。
【0299】
開通性(気道):開いている気道の程度または気道が開いている度合。開通性の気道が開いている。気道の開通性は、(1)の値で開そしてゼロ(0)の値で閉塞と定量化される。
【0300】
呼吸終末陽圧(PEEP):肺における気圧以上の圧力で、呼気の終りに存在する。
【0301】
ピーク流量(Qpeak):呼吸気流量の波形の吸気部分の間の流量の最大値。
【0302】
呼吸流量、空気流量、患者の空気流量、呼吸空気流量(Qr):これらの同義語は、RPT装置の呼吸流量の推定を参照すると理解してよい。これに対して、患者が経験する実際の呼吸流量「真の呼吸流量」または「真の呼吸空気流」があり通常1分あたりのリッターで表す。
【0303】
1回換気量(Vt):余分の努力をしない時、通常の呼吸の間に吸気するまたは呼気する空気量。
【0304】
(吸気)時間(Ti):呼吸気流量波形の吸気部分の期間。
【0305】
(呼気)時間(Te):呼吸気流量波形の呼吸部分の期間。
【0306】
(合計)時間(Ttot):一つの呼吸気流量波形の吸気部分の開始と、続く呼吸気流量波形の吸気部分の開始間の合計期間。
【0307】
典型的な最近の換気:ある所定の時間の尺度にわたって最近の値Ventがその周りにクラスターする傾向にある換気の値。即ち換気の最近の値の中心傾向の測定。
【0308】
上部気道閉塞(UAO):は部分的及び全上気道閉塞のいずれを含む。これは流量制限の状態に関連しており、上気道を横切る圧力差が増加すると、流量が僅か増加するかまたは低下することさえある(スターリング・レジスター行動)。
【0309】
換気(Vent):患者の呼吸器系で交換されるガス量の測定値。換気の測定値は、単位時間当たりの吸気流と呼気流の1つまたは両方を含む。1分当たりの容量で示すと、この量はしばしば「分換気」と呼ばれる。分換気は場合によっては単に容量として与えられ、1分当たりの容量と理解される。
【0310】
5.7.3 換気
適応サーボ換気装置(ASV):固定の目標換気よりむしろ変更可能な換気を持ったサーボ換気装置。変更可能な目標換気は、例えば、患者の呼吸特性のような患者のいくつかの特性から学ぶことができる。
【0311】
バックアップ率:自発的な呼吸努力でトリガーされなければ、換気装置が患者に送達する最少呼吸数を決める換気装置のパラメータ(典型的には1分あたりの呼吸数)。
【0312】
サイクルド:換気装置の吸気相の終了。自発呼吸している患者に換気装置が呼吸を提供している時、呼吸サイクルの吸気部分の終りにおいて、換気装置は呼吸の提供を停止するようサイクルしたと言う。
【0313】
呼気陽圧(EPAP):呼吸の間に変動している圧力が加えられるベース圧力で、換気装置はある時間に達成しようと試みる所望のマスク圧力を生成する。
【0314】
呼気終末圧力(EEP):所望のマスク圧力で、換気装置が呼吸の呼気部分の終りに達成しようと試みる。呼気の終りに圧力波形テンプレートII(Φ)がゼロ値であれば、即ちΦ=1の時、II(Φ)=0であれば、EEPはEPAPに等しい。
【0315】
吸気陽圧(IPAP):呼吸の吸気部分の間に換気装置が達成しようとする所望のマスク圧力。
【0316】
圧力サポート:換気装置の呼気の間の数値を上回っている、換気装置の吸気の間の圧力の増加を示す数で、一般に吸気中の最大値とベース圧力間の差圧(例えば、PS=IPAP−EPAP)を意味する。ある文脈において、圧力サポートは、換気装置が実際に達成したと言うよりはむしろ達成しようと意図する差を意味する。
【0317】
サーボ・ベンチレータ:患者の換気を測定するベンチレータで目標の換気を持ち、これが圧力サポートのレベルを調整して患者の換気を目標の換気に向ける。
【0318】
自発/時限(S/T):自発呼吸する患者の呼吸の開始を検出しようと試みる換気装置またはその他の装置のあるモード。しかし装置が所定の時間内に呼吸が検知できない場合は、装置は呼吸の送達を自動的に開始する。
【0319】
スイング:圧力サポートの同等の用語。
【0320】
トリガーした:換気装置が空気の呼吸を自発呼吸している患者に送達した時、患者努力による呼吸サイクルの呼気部分の開始においてトリガーされたと言う。
【0321】
典型的な最近の換気:典型的な最近の換気Vtypは、ある所定の時間スケールにおける換気の最近の測定値が、その周りにクラスターする傾向にある値である。例えば、最近の履歴における換気の測定値の中心傾向の測定値は、典型的な最近の換気の適切な値となる。
【0322】
5.7.4 解剖学
5.7.4.1 顔の解剖学
翼:それぞれの鼻孔(複数:alar)の外部の外壁または「ウイング」。
【0323】
翼状の:鼻の翼の最も側面のポイント。
【0324】
翼状の湾曲(または翼状の頂点)ポイント:それぞれの翼の湾曲ベースラインにおける最後部ポイントで、翼と頬の結合で形成されるひだの中に見出される。
【0326】
(鼻)骨組:鼻の骨組みは、鼻骨、上顎の前頭突起及び前頭骨の鼻の部分から成る。
【0327】
(鼻)軟骨結合骨格:鼻の軟骨結合骨格は、中間隔、側部、主要及びマイナー軟骨から成る。
【0328】
軸柱:鼻孔を分け、前方の鼻から上唇まで走る皮膚の細長い一片。
【0329】
軸柱角:鼻孔開口の中間を通る線と、鼻下を横断するフランクフルト水平線に垂直な線間の角度。
【0330】
フランクフルト水平面:眼窩縁の最下部から左耳点に伸長する線。耳点は心耳の耳珠の上にあるノッチにおける最深ポイントである。
【0331】
眉間:軟組織にあり、額の正中矢状面におけるもっとも突き出したポイント。
【0332】
外側鼻軟骨:軟骨の概して三角形の板。その上縁は鼻骨と上顎の前頭突起に付いており、その下縁は大鼻翼軟骨に接続されている。
【0333】
大鼻翼軟骨:外側鼻軟骨の下に横たわる軟骨の面。鼻孔の前部の周りに湾曲している。その後端は、翼の3つまたは4つのマイナー軟骨を含む丈夫な線維膜によって軟骨の前頭突起に接続されている。
【0334】
鼻孔(鼻孔):鼻腔の入口を形成するほぼ楕円状の開口。鼻孔の単数形は鼻孔である。鼻孔は鼻中隔で分けられている。
【0335】
鼻唇溝または鼻唇ひだ:鼻の各側面から口角に走る、皮膚のひだまたは皮膚小溝で、頬を上唇から分けている。
【0336】
鼻−唇の角度:軸柱と上唇間の角度で鼻下を横断している。
【0337】
下耳底点:顔の皮膚への耳介の取り付けの最下点。
【0338】
上耳底点:顔の皮膚への耳介の取り付けの最上点。
【0339】
鼻前方:鼻の最も突出したポイントまたは先端、頭部の残りの部分の側面図で識別できる。
【0340】
鼻の下にあるくぼみ:鼻の隔壁の下部境界から上唇領域の唇の頂部まで走る正中溝。
【0341】
下顎点:軟組織にあり、顎の最も前方の中点。
【0342】
突起部(鼻の):鼻の突起部は鼻の正中線隆起で、セリオンからプロナザーレに伸びている。
【0343】
矢状面:前部(前方)から後部(後方)に走り、人体を右半分と左半分に分けている垂直面。
【0344】
セリオン:軟組織にあり、前頭縫合の領域を覆っている最も凹んだポイント。
【0345】
鼻中隔軟骨(鼻の):鼻中隔軟骨は隔壁の一部を形成し、鼻腔の前部を分離する。
【0346】
翼下:翼ベースの下部縁におけるポイントで、ここで翼ベースが上唇(上部)の皮膚とつながる。
【0347】
鼻棘点:軟組織にあり、このポイントでが正中矢状面における上唇と出会う。
【0348】
スプラメンターレ:上唇歯と軟組織ポゴニオン間の下唇の正中線における最大の凹面のポイント。
【0349】
5.7.4.2 頭蓋骨の解剖学
前頭骨:前頭骨は、額として知られる領域に対応して、大きな垂直部、前頭鱗を含む。
【0350】
下顎:下顎骨は下顎を形成する。オトガイ隆起は、顎を形成する顎の骨突起である。
【0351】
上顎:上顎は上顎を形成し、下顎の上で眼窩の下にある。上顎の前頭突起は鼻の横を上方に突出し、その側面境界の前方部を形成する。
【0352】
鼻骨:鼻骨は2つの小さな楕円形の骨で、個人によってその大きさと形状が異なる;顔の中央部と上部で並んで配置され、それらの接合によって鼻の「突起部」を形成する。
【0353】
鼻根点:前頭骨と2つの鼻骨の交差点で、眼と眼の間で、鼻の突起部の上の間にあるくぼみである。
【0354】
後頭骨:後頭骨は頭蓋の後方と下部に位置している。楕円形の開口、大後頭孔を含み、ここを通して頭蓋腔が脊柱管と通じる。大後頭孔の後ろの湾曲面は後頭鱗である。
【0355】
眼窩:眼球を包含する頭蓋骨内の骨の空洞。
【0356】
頭頂骨:結合すると頭蓋の頂部と側面を形成する骨である。
【0357】
側頭骨:側頭骨は頭蓋骨の基部と側面に位置しており、こめかみとして知られる
顔の一部を支える。
【0358】
頬骨:顔は、顔の上部と側面に位置し、頬の突起を形成する2つの頬骨を含む。
【0359】
5.7.4.3 呼吸システムの解剖学
横隔膜:胸郭の底部を横切って伸びる筋肉のシート。横隔膜は、心臓、肺及び肋骨を含む胸腔を腹腔から分離する。横隔膜が収縮すると、胸郭の容声帯を積が増し、空気が肺に引き込まれる。
【0360】
喉頭:喉頭即ち喉頭は声帯を収納し、咽頭(下咽頭)の下部を気管に接続する。
【0361】
肺:ヒトにおける呼吸器官。肺の伝導帯は、気管、細気管支及び終末細気管支を含む。呼吸ゾーンは気管、気管支、細気管支及び終末細気管支を含む。呼吸ゾーンは、呼吸細気管支、肺胞管及び肺胞を含む。
【0362】
鼻腔:鼻腔(または鼻窩)は、顔の中央で鼻の上及び後部にある空気で満たされた空間である。鼻腔は鼻中隔と呼ばれる垂直のフィンで2つに分けられる。鼻腔側には、鼻甲介(単数は「concha」)または鼻甲介と呼ばれる3つの水平の増生がある。鼻腔の前面に鼻があり、後鼻孔を経て後部が鼻咽頭に溶け込んでいる。
【0363】
咽頭:鼻腔の直下(下)にあり、食道と咽頭の上部に位置している部分である。咽頭は通常:鼻咽頭(鼻咽頭)(咽頭の鼻の部分)、中咽頭(中咽頭)(咽頭の口腔の部分)及び咽喉頭(下咽頭)の3つのセクションに分けられる。
【0364】
5.7.5 患者インタフェース
抗呼吸停止バルブ(AAV):マスクシステムのコンポーネントまたはサブアセンブリで、フェールセーフの態様で大気に開放すると、患者の過剰なCO
2再呼吸のリスクを低減する。
【0365】
エルボー:エルボーは、そこを通る空気の流れの軸を案内して、アングルを通る方向変える構造の1例である。一形態において、アングルは約90度でよい。もう1つの形態において、アングルは90度以上または以下でよい。エルボーはほぼ円形の断面を有している。もう1つの形態において、エルボーは楕円形または長方形の断面を有することができる。ある形態において、エルボーは相手方コンポーネントに関して例えば360度回転できる。ある形態において、エルボーは相手方コンポーネントから、例えばスナップ接続を経て、取り外すことができる。ある形態においてエルボーは、製造中に1回限りのスナップを経て組み込むことができるが、患者が取り外すことはできない。
【0366】
フレーム:フレームは、ヘッドギアとの2つまたはそれ以上の接続ポイント間の張力の負荷に耐えるマスク構造を意味する。マスクのフレームは、マスクにおいて非機密耐加重構造であってよい。しかしいくつかの形態のマスクフレームも気密であってよい。
【0367】
ヘッドギア:ヘッドギアは、頭に使用するようにデザインされた位置決めと安定化構造の形態を意味すると解釈してよい。例えば、ヘッドギアは1つまたはそれ以上の筋かいの集まり、患者インタフェースを呼吸治療の送達のために患者の顔の適切な場所に位置に置きかつ保持するように構成された、固定具とスティフナーを含む。いくつかの固定具は、発泡体と織物の積層複合材のような柔らかく、柔軟な弾性材で形成される。
【0368】
メンブレン:好ましくは、曲げに対して実質的に耐性を示さないが、伸ばすことには耐性を持った、典型的には薄いエレメントを意味すると解釈される。
【0369】
プレナムチャンバー:マスク・プレナムチャンバーは、容量のある空間を少なくとも部分的に囲む壁を有する患者インタフェースの一部を意味すると解釈され、この容量はその中に使用中は大気以上に加圧された空気を有する。シェルはマスク・プレナムチャンバーの一部を形成してよい。
【0370】
シール:構造を意味する名詞形(「a seal」)または効果を意味する動詞形(「to seal」)。2つのエレメントが別の「シール」エレメントそれ自身を要することなくその間に「シール」または「シーリング」効果を出すように構築及び/または配置される。
【0371】
シェル:シェルは、曲げ、引張り及び圧縮剛性を有する、湾曲した、相対的に薄い構造を意味すると解釈される。例えば、マスクの湾曲した構造壁はシェルとすることができる。いくつかの形態において、シェルはファセットされてよい。いくつかの場合において、シェルは気密性であってよい。いくつかの場合において、シェルは気密性でなくてよい。
【0372】
スティフナー:スティフナーは、もう1つのコンポーネントの少なくとも1方向への曲げ耐性を増すようにデザインされた構造成分を意味すると解釈される。
【0373】
筋かい:筋かいは、もう1つのコンポーネントの少なくとも1方向への圧縮耐性を増すようにデザインされた構造成分を意味すると解釈される。
【0374】
旋回台(名詞):好ましくは独立して、好ましくは低トルク下で、共通軸の周りを回転するように構成されたコンポーネンツのアセンブリ。一形態において旋回台は、少なくとも360度回転するように構築してよい。もう1つの形態において、旋回台は360度以下の角度で回転するように構築してよい。空気送達コンジットの状況で使用する場合は、コンポーネンツのサブアセンブリは好ましくは円筒コンジットのマッチドペアを含む。使用中は、旋回台からの空気の漏れは、ほとんどないかまたは全くない。
【0375】
固定具(名詞):固定具は張力に抗するようにデザインされた構造である。
【0376】
ベント(名詞):例えば、吐き出したガスの臨床での効果的な洗浄のために、マスクまたはコンジットの内部から周囲への空気の流れを起こす構造。例えば、臨床的に有効な洗浄は、マスクのデザインと治療圧力次第で、1分当たり10リッターから1分当たり100リッターの流量が関与する。
【0377】
5.7.6 構造の形状
本技術による製品は、例えば、マスククッションまたはインペラーのような1つまたはそれ以上の三次元の機械的構造を含む。三次元構造は二次元の面で境界を示すことができる。これらの面は、関連の面の方向、位置、機能またはいくつかのそのほかの特性を記載したラベルで識別できる。例えば、構造は1つまたはそれ以上の前面、後面、内面及び外面を含む。もう1つの実施例においてクッション構造は、顔−接触(例えば、外側)面及び別の顔非接触(例えば、下側または内部)面を含む。もう1つの実施例において、ある構造は第1の面と第2の面を含む。
【0378】
三次元構造と面の形状を記述するのに、ポイントPにおける構造の面を通して断面を考える。面上のポイントpにおける断面とその結果生じる平面曲線の例を示した
図3Bから
図3Fを参照。
図3Bから3Fは、ポイントpにおける外向きの法線ベクトルを示す。ポイントpにおける外向きの法線ベクトルは該面から離れる。いくつかの実施例において、面上に直立している仮想の小柄な人の観点からその面を記述する。
【0379】
5.7.6.1 同一方向への曲率
pにおける平面曲線の曲率は、符号(例えば、正、負)及び大きさ(例えば、pにおいて曲線に触れる円の1/半径)を有しているとして記述できる。
【0380】
正の曲率:pにおける曲線が外向きの法線に向かうと、そのポイントにおける曲率は正と考えられる(もし仮想の小人がポイントpを離れると、上り坂を登らなければならない。
図3B(
図3Cに比べて比較的大きい正の曲率)と
図3C(
図3Bに比べて比較的小さい正の曲率)を参照。このような曲線は、しばしば凹面と言う。
【0381】
ゼロ曲率:pにおける曲線が直線なら、曲率はゼロとなる(仮想の小人がポイントpを離れると、アップダウンの無い平地を歩くことができる)。
図3Dを参照。
【0382】
負の曲率:もしpにおける曲線が外向き法線から外れると、そのポイントにおけるその方向への曲率は負と考えられる(仮想の小人がポイントpを離れると、下り坂を歩かなければならない)。
図3E(
図3Fと比較して比較的小さい負の曲率)及び
図3F(
図3Eと比較して比較的大きい曲率)を参照。このような曲線はしばしば凸面と言う。
【0383】
5.7.6.2 二次元表面の曲率
本技術による二次元表面上のあるポイントにおける形状の記述は、複数の通常の断面を含む。複数の断面は、外向き法線(「法平面」)を含む面内の表面を切断し、それぞれの断面は異なる方向にあると考えられる。それぞれの断面は、対応する曲率を有する平面曲線となる。そのポイントにおける異なる曲率は、同じ符号、または異なる符号を持っている。そのポイントにおける曲率のそれぞれは、例えば比較的小さい大きさを有している。
図3Bから
図3Fにおける平面曲線は、特定のポイントにおけるこのような複数の断面の例となり得る。
【0384】
主曲率と方向:曲線の曲率がその最大値と最小値となるところの法平面の方向は、主方向と言う。
図3Bから
図3Fの例において、最大曲率は
図3Bで生じ、最少曲率は
図3Fで生じる。よって
図3Bと
図3Fは主方向における断面である。pにおける主曲率が主方向における曲率である。
【0385】
表面の領域:表面におけるポイントの連結されたセット。ある領域におけるポイントのセットは、例えば、曲率または符号などの類似の特性を有する。
【0386】
サドル域:それぞれのポイント、主曲率が反対の符号を有する領域、即ち(仮想の小人が向きを変える方向次第で、上り坂または下り坂を歩く)一つは正で、もう一つは負である。
【0387】
ドーム域:それぞれのポイントにおいて、主曲率が同じ符号を有する領域、例えば両方が正(「凹面ドーム」)または両方が負(「凸ドーム」)。
【0388】
円筒域:ある主曲率がゼロ(または、例えば、製造許容内でゼロ)で、ほかの主曲率が非ゼロの領域。
【0389】
平面領域:両方の主曲率がゼロ(または、例えば、製造許容内でゼロ)である表面の領域。
【0390】
表面の端:表面または領域の境界または限度。
【0391】
パス:本技術のある形態において、「パス」は数学的な−位相的なセンスのパスで、例えば、表面上でf(0)からf(1)への連続空間を意味する。本技術のある形態において「パス」は、例えば表面上のポイントのセットを含み、ルートまたはコースと記述される。(想像上の人物に対するパスは、その人が表面上を歩くところで、庭園の小道と類似している)。
【0392】
パス長さ:本技術のある形態において、「パス長さ」はf(0)からf(1)への表面に沿った距離を意味すると理解されている。即ち、表面上のパスに沿った距離である。表面上の2点間には1つ以上のパスがあり、このようなパスはパス長さが異なる。(想像上の人物に対するパス長さは、その人がパスに沿って表面上を歩かなければならない距離である)。
【0393】
直線距離:直線距離は表面上の2つのポイント間の距離であるが、表面とは無関係である。平面領域において、表面上の2点間の直線距離と同じ長さのパスが表面にある。非平面領域上には、表面上の2点間の直線距離と同じ長さのパスはない。(想像上の人物にとって、直線距離は「一直線の」距離に対応する。)
【0394】
5.7.6.3 空間曲線
空間曲線:平面曲線と異なり、空間曲線は必ずしも任意の特定の平面に位置していない。空間曲線は、三次元空間の一次元の一片と考えることができる。DNAらせんのストランド上を歩く想像上の人物は空間曲線に沿って歩く。典型的なヒトの左耳は、左ねじれらせんであるらせんを含む。
図3Qを参照。典型的なヒトの右耳は、右ねじれらせんであるらせんを含む。
図3Rを参照。
図3Sは右らせんを示す。構造の端、例えば、薄膜またはインペラーの端のような構造の端は、空間曲線に従う。一般に空間曲線は、空間曲線上のそれぞれのポイントにおける曲率とねじれによって記述される。ねじれは、曲線がどのように面から外れるかの測定である。ねじれは符号と大きさを有している。空間曲線上のポイントにおけるねじれは、そのポイントにおける正接、法線及び従法線ベクトルに関して特徴付けられる。
【0395】
接線単位ベクトル(または単位接線ベクトル):曲線上のそれぞれのポイントに対して、そのポイントのベクトルは、そのポイントからの方向ならびに大きさを規定する。接線単位ベクトルは、そのポイントにおける曲線と同じ方向を指す単位ベクトルである。想像上の女性が曲線に沿って飛んでおり、特定のポイントで彼女が乗り物から落下したとすると、接線ベクトルの方向は、彼女が飛んでいる方向である。
【0396】
単位法線ベクトル:想像上の人物が曲線に沿って移動すると、この接線ベクトルそのものが変化する。接線ベクトルが変化しているのと同じ方向を指す単位ベクトルは、単位主法線ベクトルと言う。それは接線ベクトルに垂直である。
【0397】
従法線単位ベクトル:従法線単位ベクトルは、接線ベクトルと主法線ベクトルの両方に垂直である。その方向は、右手の法則(例えば、
図3P参照)、あるいは左手の法則(
図3O)で決めることができる。
【0398】
接触平面:単位接線ベクトル及び単位主法線ベクトルを含む平面。
図3Oと3Pを参照。
【0399】
空間曲線のねじれ:空間曲線のあるポイントにおけるねじれは、そのポイントにおける従法線単位ベクトルの変化率の大きさである。これは曲線が接触平面からどれだけ外れているかを測定する。平面に位置する空間曲線のねじれはゼロである。接触平面からの外れが比較的小さい空間曲線のねじれの大きさは比較的小さい(例えば、緩やかに傾斜したらせんパス)。接触平面からの外れが比較的大きい空間曲線のねじれの大きさは比較的大きい(例えば、傾斜の急ならせんパス)。
図3Sを参照すると、T2>T1であるから、
図3Sのらせんの頂部コイルに近いねじれの大きさは、
図3Sのらせんの底部コイルのねじれの大きさより大きい。
【0400】
図3Pの右手の法則に関して、右手の従法線の方向に向けて方向を変える空間曲線は、右手の正のねじり(例えば、
図3Sに示す右ねじれ)を有していると考えられる。右手の従法線の方向から外れる空間曲線は、右手の負のねじり(例えば、左ねじり)を有していると考えられる。
【0401】
同等に、そして左手の法則に関して(
図3O参照)、左手の従法線の方向に向けて向きを変える空間曲線は、左手の正のねじり(例えば、左手らせん)を有していると考えられる。従って、左手の正は右の負と同等である。
図3T参照。
【0402】
5.7.6.4 穴(複数)
表面は、例えば平面曲線または空間曲線で境界を示す穴のような一次元の穴を有する。穴のある薄い構造(例えば、メンブレン)は、一元の穴を有すると記述される。平面曲線で境界を付けた
図3Iに示す構造の面における一次元の穴を参照。
【0403】
構造は二次元の穴、例えば、表面で結合された穴である。例えば、膨らませることのできるタイヤは、タイヤの内表面で結合された二次元の穴を有している。もう1つの実施例では、空気またはゲル用に空洞を持った袋は、二次元の穴を持つことができる。例えば、
図3Lに示すクッション及び内表面が、示された二次元の穴を結合する
図3Mと
図3Nにおけるそこを通る実施例の断面を参照。さらにもう1つの実施例では、導管は一次元の穴(例えば、その入口またはその出口)と導管の内表面で結合された二次元の穴を備えている。図示のように表面で結合されている、
図3Kに示す構造を通した二次元の穴も参照。
【0404】
5.8 その他の注記
本特許文献の開示の一部は、著作権保護にあたる事項を含んでいる。著作権の所有者は、特許庁の特許ファイルまたは記録にそれが載っている限り、誰かが特許文献または特許の開示をフクシミリ複製することについて異議を唱えることはない。載っていなければ、何であれ著作権を留保する。
【0405】
文脈で明確に記載されていなければ、また値の範囲が記載されていなければ、それぞれの介在する値は、その範囲の上限と下限の間で、下限の単位の1/10まで、及びその記述された範囲の任意のそのほかの記述されたまたは介在する値は、該技術に包含される。これらの介在範囲の上限と下限は、記載された範囲における任意の具体的に除外される限界を条件として、介在範囲に独立に含めてよく、本技術の範囲内に包含される。記述した範囲が一つまたは両方の制限を含む場合、これらの含まれた制限のいずれかまたは両方を除いた範囲も該技術に含まれる。
【0406】
更に、一つまたはそれ以上の値が、技術の一部としてここに組み込まれていると記載されている場合、特記のない限り、このような値は近似することができ、実際的な技術の実装が許容するまたは必要とする範囲まで、このような値は、任意の適当な有意桁まで利用できることを理解されたい。
【0407】
特に定義されていない限り、本明細書で使用するすべての技術的用語及び科学的用語は、この技術が属する当業者の一人によって共通して理解されるのと同じ意味を有している。ここに記載のものに類似したまたは同等な任意の方法また材料も、本技術の実践またはテストで使用できるが、限られた数の例示的方法と材料がここに記載されている。
【0408】
特定の材料がコンポーネントを構築するのに使用されると確認された場合、同様の特性を有する明らかに代替の材料を代替えとして使用できる。さらに、それとは反対に特記のない限り、ここに記載の任意のそしてすべてのコンポーネンツは製造が可能と理解され、よって一緒にまたは別に製造することができる。
【0409】
本明細書と付属の請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈で明確にそうではないと記述されていない限り、複数形を含むことに留意すべきである。
【0410】
ここで言及したすべての刊行物は、これら刊行物の主題である方法及び/または材料を開示しかつ記述するために参照のため取り入れられた。ここで議論する刊行物は、それらの開示の目的で、本出願の出願日に先立ち提供された。ここに記載のいずれも、本技術が先行発明の理由でこのような刊行物に先行する権利を与えられたと解釈できない。さらに記載の公開日が実際の刊行日と異なるかもしれず、それぞれ単独で確認する必要がある。
【0411】
語句「comprises」と「comprising」は、エレメントツ、コンポーネンツまたはステップを参照すると非独占の態様で解釈して、参照したエレメントツ、コンポーネンツまたはステップが、存在するかまたは利用されるかまたは明示的に参照されていないそのほかのエレメントツ、コンポーネンツまたはステップと組み合わされるとすべきである。
【0412】
詳細な説明で使用される件名は、読者の参照を容易にするためにのみ含まれており、開示または特許請求の範囲にわたって見出される主題を制限するために使用してはならない。主題の見出しは請求項または請求項の制限の範囲を解釈するのに使用してはならない。
【0413】
本明細書に記載の技術は特定の実施例を参照して記述してきたが、これらの実施例は該技術の原理と適用の単なる例示であることを理解されたい。場合によっては、用語及び記号は、該技術を実践するのに要求されない特定の詳細を暗示することがある。例えば、「第1の」及び「第2の」という語句が特記のない限り使用されるが、それらは任意の順序を示すことを意図せず、はっきりと異なるエレメンツを区別するために使用できる。さらに方法論におけるプロセス・ステップは順に記述または例示されてもよいが、このような順序は必要とされない。当業者は、このような順序が修正されてもよいこと及び/またはそれらの特徴が同時にまたは同期的に実施されてもよいことを認識するであろう。
【0414】
従って、例示的な実施例に多数の変更が行われてもよく、該技術の趣旨及び範囲から逸脱することなくそのほかの配置が考案され得ることを理解されたい。