(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
[車両構成]
図1は本発明の一実施の形態である車両用制御装置10が搭載された車両11の構成例を示す概略図である。
図1に示すように、車両11には、エンジン12およびトランスミッション13からなるパワートレイン14が搭載されている。エンジン12のクランク軸15には、ベルト機構16を介してスタータジェネレータ(発電機)17が連結されている。また、エンジン12に連結されるトランスミッション13には、プロペラ軸18、リヤデファレンシャル機構19および後輪駆動軸20を介して後輪(車輪)21が連結されており、前輪駆動軸22を介して前輪(車輪)23が連結されている。
【0011】
図2はトランスミッション13の内部構造の一例を示す図である。
図2に示すように、トランスミッション13には、ロックアップクラッチ24を備えたトルクコンバータ25が設けられている。また、トランスミッション13には、前後進切替機構26および無段変速機構(変速機構)27が設けられている。無段変速機構27は、プライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32を有している。これらのプーリ31,32には油圧室31a,32aが区画されており、油圧制御によってプーリ溝幅を変化させることが可能である。また、プライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32には、動力を伝達する駆動チェーン33が巻き掛けられている。さらに、プライマリプーリ31にはプライマリ軸34が接続されており、セカンダリプーリ32にはセカンダリ軸35が接続されている。
【0012】
プライマリプーリ31には、プライマリ軸34、前後進切替機構26およびトルクコンバータ25を介してエンジン12が連結されている。つまり、エンジン12と無段変速機構27との間には、プライマリ軸34、前後進切替機構26およびトルクコンバータ25等からなる入力側動力伝達径路(動力伝達径路)36が設けられている。すなわち、プライマリ軸34、前後進切替機構26およびトルクコンバータ25等のそれぞれは、入力側動力伝達径路36に設けられる入力側回転要素である。
【0013】
また、セカンダリプーリ32には、セカンダリ軸35およびギヤ列37を介して前輪出力軸38が連結されている。さらに、前輪出力軸38には、フロントデファレンシャル機構39および前述した前輪駆動軸22を介して前輪23が連結されている。つまり、無段変速機構27と前輪23との間には、セカンダリ軸35、ギヤ列37、前輪出力軸38、フロントデファレンシャル機構39および前輪駆動軸22等からなる出力側動力伝達径路(動力伝達径路)40が設けられている。すなわち、セカンダリ軸35、ギヤ列37、前輪出力軸38、フロントデファレンシャル機構39および前輪駆動軸22等のそれぞれは、出力側動力伝達径路40に設けられる出力側回転要素である。
【0014】
また、前輪出力軸38には、ギヤ列41およびトランスファクラッチ42を介して後輪出力軸43が連結されている。さらに、後輪出力軸43には、前述したプロペラ軸18、リヤデファレンシャル機構19および後輪駆動軸20を介して後輪21が連結されている。つまり、無段変速機構27と後輪21との間には、セカンダリ軸35、ギヤ列37、前輪出力軸38、ギヤ列41、トランスファクラッチ42、後輪出力軸43、プロペラ軸18、リヤデファレンシャル機構19および後輪駆動軸20等からなる出力側動力伝達径路(動力伝達径路)44が設けられている。すなわち、セカンダリ軸35、ギヤ列37、前輪出力軸38、ギヤ列41、トランスファクラッチ42、後輪出力軸43、プロペラ軸18、リヤデファレンシャル機構19および後輪駆動軸20等のそれぞれは、出力側動力伝達径路44に設けられる出力側回転要素である。
【0015】
トランスミッション13には、プライマリ軸34の回転速度を検出するプライマリ回転センサ45が設けられており、セカンダリ軸35の回転速度を検出するセカンダリ回転センサ46が設けられている。また、
図1に示すように、トランスミッション13に設けられる無段変速機構27やトルクコンバータ25等を油圧制御するため、トランスミッション13には電磁バルブや油路等からなるバルブユニット47が接続されている。さらに、バルブユニット47には、マイコン等からなるミッションコントローラ48が接続されている。ミッションコントローラ48によってバルブユニット47の作動状態を制御することにより、無段変速機構27の変速比やトルクコンバータ25の作動状態等を制御することができる。
【0016】
エンジン12に連結されるスタータジェネレータ17は、発電機および電動機として機能する所謂ISG(Integrated Starter Generator)である。スタータジェネレータ17は、クランク軸15に駆動される発電機として機能するだけでなく、クランク軸15を駆動する電動機として機能する。例えば、アイドリングストップ制御においてエンジン12を再始動させる場合や、発進時や加速時においてエンジン12を補助する場合に、スタータジェネレータ17は力行状態に制御され、スタータジェネレータ17は電動機として駆動される。
【0017】
スタータジェネレータ17は、ステータコイルを備えたステータ50と、フィールドコイルを備えたロータ51と、を有している。また、スタータジェネレータ17には、ステータコイルやフィールドコイルの通電状態を制御するため、インバータ、レギュレータ、マイコンおよび各種センサ等からなるISGコントローラ52が設けられている。ISGコントローラ52によってフィールドコイルやステータコイルの通電状態を制御することにより、スタータジェネレータ17の発電電圧、発電トルク、力行トルク等を制御することができる。
【0018】
エンジン12の吸気系53を構成する吸気マニホールド54には、吸入空気量を調整するスロットルバルブ55が設けられている。このスロットルバルブ55を開くことにより、エンジン12の吸入空気量を増やすことができる一方、スロットルバルブ55を閉じることにより、エンジン12の吸入空気量を減らすことができる。また、エンジン12には、吸気ポートやシリンダ内に燃料を噴射するインジェクタ56が設けられている。インジェクタ56から燃料を噴射させることにより、エンジン12は燃料噴射状態に制御される一方、インジェクタ56からの燃料噴射を停止させることにより、エンジン12は燃料カット状態に制御される。さらに、エンジン12には、イグナイタや点火プラグ等からなる点火装置57が設けられている。点火装置57によってエンジン12の点火時期を制御することにより、エンジン12のトルクや燃焼温度等を制御することができる。なお、スロットルバルブ55、インジェクタ56および点火装置57には、マイコン等からなるエンジンコントローラ58が接続されている。
【0019】
[電源回路]
車両11に搭載される電源回路60について説明する。
図3は電源回路60の一例を簡単に示した回路図である。
図3に示すように、電源回路60は、スタータジェネレータ17に電気的に接続される鉛バッテリ61と、これと並列にスタータジェネレータ17に電気的に接続されるリチウムイオンバッテリ62と、を備えている。なお、リチウムイオンバッテリ62を積極的に放電させるため、リチウムイオンバッテリ62の端子電圧は、鉛バッテリ61の端子電圧よりも高く設計されている。また、リチウムイオンバッテリ62を積極的に充放電させるため、リチウムイオンバッテリ62の内部抵抗は、鉛バッテリ61の内部抵抗よりも小さく設計されている。
【0020】
スタータジェネレータ17の正極端子17aには正極ライン63が接続され、リチウムイオンバッテリ62の正極端子62aには正極ライン64が接続され、鉛バッテリ61の正極端子61aには正極ライン65を介して正極ライン66が接続される。これらの正極ライン63,64,66は、接続点67を介して互いに接続されている。また、スタータジェネレータ17の負極端子17bには負極ライン68が接続され、リチウムイオンバッテリ62の負極端子62bには負極ライン69が接続され、鉛バッテリ61の負極端子61bには負極ライン70が接続される。これらの負極ライン68,69,70は、基準電位点71を介して互いに接続されている。
【0021】
図1に示すように、鉛バッテリ61の正極ライン65には、正極ライン72が接続されている。この正極ライン72には、各種アクチュエータや各種コントローラ等の電気機器73からなる電気機器群74が接続されている。また、鉛バッテリ61の負極ライン70には、バッテリセンサ75が設けられている。バッテリセンサ75は、鉛バッテリ61の充放電電流や端子電圧を検出する機能を有するとともに、充放電電流等から鉛バッテリ61の充電状態であるSOC(State Of Charge)を検出する機能を有している。なお、バッテリセンサ75は、図示しない通電ラインを介して鉛バッテリ61の正極端子61aにも接続されている。
【0022】
電源回路60には、鉛バッテリ61および電気機器73からなる第1電源系81が設けられており、リチウムイオンバッテリ62およびスタータジェネレータ17からなる第2電源系82が設けられている。そして、第1電源系81と第2電源系82との間に設けられる正極ライン66を介して、鉛バッテリ61とリチウムイオンバッテリ62とは互いに並列接続されている。この正極ライン66には、過大電流によって溶断する電力ヒューズ83が設けられるとともに、オン状態とオフ状態とに制御される第1スイッチSW1が設けられている。また、リチウムイオンバッテリ62の正極ライン64には、オン状態とオフ状態とに制御される第2スイッチSW2が設けられている。
【0023】
スイッチSW1をオン状態に制御することにより、第1電源系81と第2電源系82とを互いに接続することができる一方、スイッチSW1をオフ状態に制御することにより、第1電源系81と第2電源系82とを互いに切り離すことができる。また、スイッチSW2をオン状態に制御することにより、スタータジェネレータ17とリチウムイオンバッテリ62とを互いに接続することができる一方、スイッチSW2をオフ状態に制御することにより、スタータジェネレータ17とリチウムイオンバッテリ62とを互いに切り離すことができる。
【0024】
これらのスイッチSW1,SW2は、MOSFET等の半導体素子によって構成されるスイッチであっても良く、電磁力等を用いて接点を機械的に開閉させるスイッチであっても良い。また、スイッチSW1,SW2のオン状態とは、電気的に接続される通電状態や導通状態を意味しており、スイッチSW1,SW2のオフ状態とは、電気的に切断される非通電状態や遮断状態を意味している。なお、スイッチSW1,SW2は、リレーやコンタクタ等とも呼ばれている。
【0025】
図1に示すように、電源回路60には、バッテリモジュール84が設けられている。このバッテリモジュール84は、リチウムイオンバッテリ62を有するとともに、スイッチSW1,SW2を有している。また、バッテリモジュール84は、マイコンや各種センサ等からなるバッテリコントローラ85を有している。さらに、バッテリモジュール84には、リチウムイオンバッテリ62の充放電電流、端子電圧および温度等を検出するバッテリセンサ86が設けられている。また、バッテリコントローラ85は、バッテリセンサ86から送信される充放電電流等に基づいて、リチウムイオンバッテリ62の充電状態であるSOC(State Of Charge)を算出する機能を有している。また、バッテリコントローラ85は、リチウムイオンバッテリ62のSOC等に基づいて、スイッチSW1,SW2を制御する機能を有している。
【0026】
なお、リチウムイオンバッテリ62や鉛バッテリ61のSOCとは、リチウムイオンバッテリ62や鉛バッテリ61の電気残量を示す比率であり、リチウムイオンバッテリ62や鉛バッテリ61の満充電容量に対する蓄電量の比率である。例えば、リチウムイオンバッテリ62や鉛バッテリ61が上限容量まで充電された場合には、SOCが100%として算出され、リチウムイオンバッテリ62や鉛バッテリ61が下限容量まで放電した場合には、SOCが0%として算出される。
【0027】
[制御系]
図4は車両用制御装置10が備える制御系の一例を示す概略図である。
図1および
図4に示すように、車両用制御装置10は、パワートレイン14や電源回路60等を互いに協調させて制御するため、マイコン等からなるメインコントローラ90を有している。メインコントローラ90は、エンジン12の運転状態を制御するため、インジェクタ56を制御する燃料噴射制御部91、点火装置57を制御する点火時期制御部92、およびスロットルバルブ55を制御するスロットル制御部93、を有している。また、メインコントローラ90は、トランスミッション13のバルブユニット47を制御する変速制御部94を有している。さらに、メインコントローラ90は、スタータジェネレータ17を制御するISG制御部(発電制御部)95、およびスイッチSW1,SW2を制御するスイッチ制御部96を有している。
【0028】
メインコントローラ90や前述した各コントローラ48,52,58,85は、CANやLIN等の車載ネットワーク97を介して互いに通信自在に接続されている。また、メインコントローラ90には、車載ネットワーク97を介して各種センサが接続されている。メインコントローラ90に接続されるセンサとしては、前述したプライマリ回転センサ45およびセカンダリ回転センサ46がある。また、メインコントローラ90に接続されるセンサとしては、アクセルペダルの操作状況を検出するアクセルセンサ100、ブレーキペダルの操作状況を検出するブレーキセンサ101、スロットルバルブ55の開度を検出するスロットル開度センサ102、エンジン回転数を検出するエンジン回転センサ103、および車両11の走行速度を検出する車速センサ104等がある。
【0029】
メインコントローラ90は、各種コントローラや各種センサからの情報に基づいて、パワートレイン14や電源回路60等を制御する。なお、メインコントローラ90は、ISGコントローラ52を介してスタータジェネレータ17を制御し、バッテリコントローラ85を介してスイッチSW1,SW2を制御する。また、メインコントローラ90は、エンジンコントローラ58を介してインジェクタ56、点火装置57およびスロットルバルブ55を制御する。
【0030】
[スタータジェネレータ発電制御]
続いて、スタータジェネレータ17の発電制御について説明する。メインコントローラ90のISG制御部95は、ISGコントローラ52に制御信号を出力し、スタータジェネレータ17を発電状態に制御する。例えば、ISG制御部95は、リチウムイオンバッテリ62の充電状態SOCが低下すると、スタータジェネレータ17の発電電圧を上げて燃焼発電状態に制御する一方、リチウムイオンバッテリ62の充電状態SOCが上昇すると、スタータジェネレータ17の発電電圧を下げて発電休止状態に制御する。
【0031】
図5はスタータジェネレータ17を燃焼発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。なお、スタータジェネレータ17の燃焼発電状態とは、エンジン動力によってスタータジェネレータ17を発電させる状態、つまりエンジン12内で燃料を燃焼させてスタータジェネレータ17を発電させる状態である。例えば、リチウムイオンバッテリ62の充電状態SOCが所定値を下回る場合には、リチウムイオンバッテリ62を充電するため、エンジン動力によってスタータジェネレータ17を発電させる。このように、スタータジェネレータ17を燃焼発電状態に制御する際には、スタータジェネレータ17の発電電圧が、鉛バッテリ61およびリチウムイオンバッテリ62の端子電圧よりも上げられる。これにより、
図5に黒塗りの矢印で示すように、スタータジェネレータ17から、リチウムイオンバッテリ62、電気機器群74および鉛バッテリ61等に対して電流が供給され、リチウムイオンバッテリ62や鉛バッテリ61が緩やかに充電される。
【0032】
図6はスタータジェネレータ17を発電休止状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。例えば、リチウムイオンバッテリ62の充電状態SOCが所定値を上回る場合には、リチウムイオンバッテリ62を積極的に放電させるため、エンジン動力を用いたスタータジェネレータ17の発電が休止される。このように、スタータジェネレータ17を発電休止状態に制御する際には、スタータジェネレータ17の発電電圧が、鉛バッテリ61およびリチウムイオンバッテリ62の端子電圧よりも下げられる。これにより、
図6に黒塗りの矢印で示すように、リチウムイオンバッテリ62から電気機器群74に電流が供給されるため、スタータジェネレータ17の発電を停止させることができ、エンジン負荷を軽減することができる。なお、発電休止状態におけるスタータジェネレータ17の発電電圧としては、リチウムイオンバッテリ62を放電させる発電電圧であれば良い。例えば、スタータジェネレータ17の発電電圧を0Vに制御しても良く、スタータジェネレータ17の発電電圧を0Vよりも高く制御しても良い。
【0033】
前述したように、メインコントローラ90のISG制御部95は、充電状態SOCに基づきスタータジェネレータ17を燃焼発電状態や発電休止状態に制御しているが、車両減速時には多くの運動エネルギーを回収して燃費性能を高めることが求められる。そこで、車両減速時には、スタータジェネレータ17の発電電圧が引き上げられ、スタータジェネレータ17は回生発電状態に制御される。これにより、スタータジェネレータ17の発電電力を増加させることができるため、運動エネルギーを積極的に電気エネルギーに変換して回収することができ、車両11のエネルギー効率を高めて燃費性能を向上させることができる。このような回生発電を実行するか否かについては、アクセルペダルやブレーキペダルの操作状況等に基づき決定される。つまり、アクセルペダルの踏み込みが解除される減速走行時や、ブレーキペダルが踏み込まれる減速走行時には、スタータジェネレータ17が回生発電状態に制御される。
【0034】
ここで、
図7はスタータジェネレータ17を回生発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。スタータジェネレータ17を回生発電状態に制御する際には、前述した燃焼発電状態よりもスタータジェネレータ17の発電電圧が上げられる。これにより、
図7に黒塗りの矢印で示すように、スタータジェネレータ17から、リチウムイオンバッテリ62や鉛バッテリ61に対して大きな電流が供給されるため、リチウムイオンバッテリ62や鉛バッテリ61は急速に充電される。また、リチウムイオンバッテリ62の内部抵抗は、鉛バッテリ61の内部抵抗よりも小さいことから、発電電流の大部分はリチウムイオンバッテリ62に供給される。
【0035】
なお、
図5〜
図7に示すように、スタータジェネレータ17を燃焼発電状態、回生発電状態および発電休止状態に制御する際に、スイッチSW1,SW2はオン状態に保持されている。つまり、車両用制御装置10においては、スイッチSW1,SW2の切替制御を行うことなく、スタータジェネレータ17の発電電圧を制御するだけで、リチウムイオンバッテリ62の充放電を制御することが可能である。これにより、簡単にリチウムイオンバッテリ62の充放電を制御することができるだけでなく、スイッチSW1,SW2の耐久性を向上させることができる。
【0036】
[スタータジェネレータ力行制御]
続いて、スタータジェネレータ17の力行制御について説明する。メインコントローラ90のISG制御部95は、例えば、アイドリングストップ制御においてエンジン12を再始動させる場合に、スタータジェネレータ17を力行状態に制御する。ここで、
図8はスタータジェネレータ17を力行状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。
図8に示すように、アイドリングストップ制御におけるエンジン再始動時に、スタータジェネレータ17を力行状態に制御する際には、スイッチSW1がオン状態からオフ状態に切り替えられる。これにより、リチウムイオンバッテリ62からスタータジェネレータ17に大電流が供給される場合であっても、電気機器群74に対する瞬間的な電圧低下を防止することができ、電気機器群74等を正常に機能させることができる。
【0037】
なお、
図8に示した例では、スタータジェネレータ17を力行状態に制御する際に、スイッチSW1をオフ状態に切り替えているが、これに限られることはなく、スイッチSW1をオン状態に保持したままスタータジェネレータ17を力行状態に制御しても良い。例えば、発進時や加速時にエンジン12を補助するモータアシスト制御においては、前述したエンジン再始動時に比べてスタータジェネレータ17の消費電力が小さいため、スタータジェネレータ17の力行時にはスイッチSW1がオン状態に保持される。このように、消費電力の小さなモータアシスト制御においては、スイッチSW1をオン状態に保持したとしても、鉛バッテリ61からスタータジェネレータ17に大電流が流れることはなく、電気機器群74の電源電圧を安定させることができる。
【0038】
[回生発電制御]
続いて、回生発電制御について詳細に説明する。前述したように、車両11の減速走行時には、スタータジェネレータ17が回生発電状態に制御される。なお、以下の説明では、前輪23および後輪21をまとめて車輪Wと記載する。
図9は回生発電制御におけるパワートレイン14の作動状態を示す概略図である。
図9に示すように、アクセルペダルの踏み込みが解除される減速走行時には、エンジン12が燃料カット状態に制御され、スタータジェネレータ17が回生発電状態に制御され、ロックアップクラッチ24が締結状態に制御される。このように、減速走行時にロックアップクラッチ24を締結することにより、矢印α1で示すように、車輪Wからスタータジェネレータ17に向けて効率良く動力を伝達することができる。これにより、スタータジェネレータ17の回生トルク、つまりスタータジェネレータ17の発電トルクを高めることができ、減速走行時の発電電力を増加させることができる。
【0039】
また、回生発電が行われる減速走行時には、スロットルバルブ55が全閉状態に制御されるのではなく、スロットルバルブ55は所定の開度閾値を上回る開き側に制御される。このように、スロットルバルブ55を開き側に制御することにより、白抜きの矢印で示すように、エンジン12の吸入空気量を増加させることができ、エンジン12のポンプ損失を減少させることができる。これにより、車両減速時のエンジンブレーキを減らすことができるため、車両減速度を過度に増加させずに発電トルクを増やすことができ、発電電力を増やして多くの運動エネルギーを回収することができる。なお、スロットルバルブ55を開き側で制御する際には、図示しないバキュームブースタ等の負圧が不足しないようにスロットル開度が調整される。
【0040】
[リタード解除制御]
ところで、車両11の減速走行時にアクセル操作が実施された場合、つまり減速走行時にアクセルペダルが踏み込まれた場合には、エンジントルクを出力して車両11を加速させる必要があるため、エンジン12は燃料カット状態から燃料噴射状態に制御される。ここで、減速走行時の状況としては、前述したように、スロットルバルブ55が開き側に制御される状況であり、エンジン12の吸入空気量が増加している状況である。このように、吸入空気量が増加した状況のもとで燃料噴射を再開することは、エンジントルクを過度に出力させてしまう要因であるため、エンジントルクの出力を抑制する観点から点火時期を遅らせる点火リタード制御が実行される。これにより、エンジントルクを下げることができ、燃料噴射再開に伴うショックを抑制することができる。
【0041】
また、減速走行時にアクセルペダルが踏み込まれる状況としては、運転手から加速走行が要求される状況であるため、点火リタード制御の実施後には点火時期を素早く進角させて通常制御に戻すことが必要である。しかしながら、点火時期を急速に変化させることは、エンジン12のトルク変動を招いてショックを発生させる要因であるため、ショックの発生を抑制しつつ点火時期を素早く進角させることが求められる。そこで、メインコントローラ90の点火時期制御部92は、点火リタード制御の実施後において点火時期を進角させる際に、セカンダリ軸35の回転加速度Saに基づき点火時期の変化速度を切り替えるリタード解除制御を実行する。
【0042】
(タイミングチャート)
図10はリタード解除制御における点火時期の推移の一例を示すタイミングチャートである。なお、
図10に示した「Sa」とは、セカンダリ軸35の回転加速度つまり出力側回転要素の回転加速度である。この角加速度である回転加速度Saは、セカンダリ回転センサ46の検出信号に基づきメインコントローラ90によって演算される。また、
図10に示すように、アクセルセンサ100が「OFF」である状態とは、運転手によってアクセルペダルが踏まれていない状態であり、アクセルセンサ100が「ON」である状態とは、運転手によってアクセルペダルが所定量を超えて踏まれる状態である。
【0043】
図10に時刻t1で示すように、アクセルペダルの踏み込みが解除される減速走行時には、エンジン12が燃料カット状態に制御される(符号a1)。続いて、時刻t2で示すように、減速走行時にアクセルペダル踏み込まれると(符号b1)、エンジン12が燃料噴射状態に切り替えられる(符号a2)。このように、エンジン12の燃料噴射が再開される際には、点火時期を第1時期it1に制御する点火リタード制御が実行される(符号c1)。この第1時期it1は、クランク角が「0°」の上死点TDCよりも遅角側に設定されている。このように、点火時期を遅角側の第1時期it1に制御することにより、エンジントルクを下げることができ、燃料噴射再開に伴うショックの発生を抑制することができる。
【0044】
前述したように、点火リタード制御を実行した後には、点火時期を素早く進角させて通常制御に戻すことが必要である。しかしながら、エンジン12の点火時期を急速に変化させることは、エンジン12のトルク変動を招いてショックを発生させる要因である。このため、メインコントローラ90の点火時期制御部92は、セカンダリ軸35の回転加速度Saに基づき点火時期の変化速度を切り替えている。すなわち、
図10に時刻t2〜t3の区間で示すように、セカンダリ軸35の回転加速度Saが所定の閾値Nxに達する迄は、符号c2で示すように、点火時期を第2時期it2に向けて第1変化速度で進角させている。そして、時刻t3〜t4の区間で示すように、セカンダリ軸35の回転加速度Saが所定の閾値Nxに達した後には、符号c3で示すように、点火時期を第2時期it2に向けて第1変化速度よりも遅い第2変化速度で進角させている。このように、リタード解除制御においては、セカンダリ軸35の回転加速度Saが所定の閾値Nxに達すると(符号d1)、点火時期を第2時期it2に向けて進角させる際の変化速度が、速い第1変化速度から遅い第2変化速度に切り替えられる。なお、
図10に示すように、第2時期it2は、クランク角が「0°」の上死点TDCよりも進角側に設定されている。
【0045】
ここで、セカンダリ軸35の回転加速度Saが閾値Nxに到達する迄の状況とは、動力伝達系110の遊びつまりバックラッシュが詰まっていない状況である。これに対し、セカンダリ軸35の回転加速度Saが閾値Nxに到達した後の状況とは、動力伝達系110のバックラッシュが詰まっている状況である。このため、セカンダリ軸35の回転加速度Saが閾値Nxに達する迄、つまり動力伝達系110のバックラッシュが詰まる迄は、エンジン12のトルク変動が車輪Wに伝達され難いことから、速い第1変化速度で点火時期を急速に変化させている。一方、セカンダリ軸35の回転加速度Saが閾値Nxに達した後、つまり動力伝達系110のバックラッシュが詰まった後には、エンジン12のトルク変動が車輪Wに伝達され易いことから、遅い第2変化速度で点火時期を緩やかに変化させている。このように、セカンダリ軸35の回転加速度Saに基づき点火時期の変化速度を切り替えることにより、ショックの発生を抑制しつつ点火時期を素早く進角させることができる。なお、動力伝達系110とは、エンジン12から車輪Wまでの動力伝達径路を意味している。つまり、動力伝達系110には、前述した入力側動力伝達径路36、無段変速機構27および出力側動力伝達径路40,44が含まれている。
【0046】
(パワートレインの作動状況)
続いて、リタード解除制御におけるパワートレイン14の作動状況について説明する。
図11(A)〜(C)は、リタード解除制御におけるパワートレイン14の作動状況の一例を示す模式図である。
図11(A)〜(C)には、動力伝達系110の一部を構成するギヤ列Xが示されている。また、
図11(A)には
図10に示した時刻t1の状況が示され、
図11(B)には
図10に示した時刻t2〜t3の状況が示され、
図11(C)には
図8にした時刻t3〜t4の状況が示されている。なお、
図11(B)には符号c2を用いて
図10に示した点火時期が示され、
図11(C)には符号c3を用いて
図10に示した点火時期が示されている。
【0047】
図11(A)に示すように、アクセルペダルの踏み込みが解除される減速走行時には、エンジン12が燃料カット状態に制御されるため、矢印α1で示すように、車輪Wからエンジン12に向けて動力が伝達される。このとき、動力伝達系110の一部を構成するギヤ列Xについてはコースト側の歯面C1,C2が互いに噛み合っており、動力伝達系110のバックラッシュはコースト側に詰まった状態である。
【0048】
続いて、
図11(B)に示すように、アクセルペダルの踏み込みによってエンジン12が燃料噴射状態に制御されると、矢印β1で示すように、車輪Wに向けてエンジントルクが伝達され始める。このように、燃料噴射再開によってエンジントルクが出力された直後においては、ギヤ列Xについてはコースト側の歯面C1,C2からドライブ側の歯面D1,D2に噛み合いが切り替わる過程であり、動力伝達系110のバックラッシュはドライブ側に詰まっていない状態である。このように、動力伝達系110のバックラッシュが詰まっていない状況では、エンジン12のトルク変動が車輪Wに伝達され難いことから、符号d2で示すように、点火時期を第1変化速度で急速に変化させている。
【0049】
続いて、
図11(C)に示すように、エンジン12が燃料噴射状態に制御されてから所定時間が経過すると、矢印β2で示すように、エンジントルクが車輪Wに伝達される。このように、エンジントルクが出力されてから所定時間が経過すると、ギヤ列Xについてはドライブ側の歯面D1,D2が互いに噛み合っており、動力伝達系110のバックラッシュはドライブ側に詰まった状態である。このように、動力伝達系110のバックラッシュが詰まった状況では、エンジン12のトルク変動が車輪Wに伝達され易いことから、符号d2で示すように、点火時期を第2変化速度で緩やかに変化させている。
【0050】
これまで説明したように、セカンダリ軸35の回転加速度Saが閾値Nxに達する迄、つまり動力伝達系110のバックラッシュが詰まる迄は、エンジン12のトルク変動が車輪Wに伝達され難いことから、点火時期を第1変化速度で急速に変化させている。一方、セカンダリ軸35の回転加速度Saが閾値Nxに達した後、つまり動力伝達系110のバックラッシュが詰まった後には、エンジン12のトルク変動が車輪Wに伝達され易いことから、点火時期を第2変化速度で緩やかに変化させている。このように、セカンダリ軸35の回転加速度Saに基づき点火時期の変化速度を切り替えることにより、ショックの発生を抑制しつつ点火時期を素早く進角させることができる。
【0051】
前述の説明では、車両11の減速走行時に、スタータジェネレータ17を回生発電状態(発電状態)に制御しているが、これに限られることはない。例えば、スタータジェネレータ17が発電休止状態や力行状態に制御される減速走行時であっても、アクセル操作によってエンジン12が燃料噴射状態に切り替えられる場合に、点火リタード制御を実行してから前述したリタード解除制御を実行しても良い。また、前述の説明では、車両11の減速走行時に、スロットルバルブ55を開き側に制御しているが、これに限られることはない。例えば、スロットルバルブ55が全閉状態に制御される減速走行時であっても、アクセル操作によってエンジン12が燃料噴射状態に切り替えられる場合に、点火リタード制御を実行してから前述したリタード解除制御を実行しても良い。
【0052】
セカンダリ軸35の回転加速度Saと比較される閾値Nxとしては、セカンダリ軸35の回転加速度が、減速側から加速側に転じたことを検出可能であれば良いため、
図10に示すように、0以上に設定されていれば良い。また、回転加速度Saは角加速度[rad/s
2]であるが、回転加速度Saを前進方向の車両加速度[m/s
2]に置き換えて使用しても良い。なお、回転加速度Saを車両加速度[m/s
2]に置き換えた場合には、閾値Nxとして、例えば0.3[m/s
2]を用いることができる。また、出力側回転要素の回転加速度として、セカンダリ軸35の回転加速度Saを用いているが、これに限られることはなく、出力側動力伝達径路40,44に設けられる他の出力側回転要素の回転加速度を使用しても良い。例えば、出力側回転要素である前輪駆動軸22や後輪駆動軸20の回転加速度を使用しても良く、出力側回転要素である前輪出力軸38や後輪出力軸43の回転加速度を使用しても良い。
【0053】
図10に示した例では、点火時期の変化速度を2段階に切り替えているが、これに限られることはなく、点火時期の変化速度を3段階以上に切り替えても良い。この場合には、点火時期が第2時期it2に近づくにつれて、点火時期の変化速度が遅く設定される。また、点火時期の制御目標である第1時期it1や第2時期it2については、吸入空気量やエンジン回転数等に応じて設定される変動値であっても良く、予め設定される固定値であっても良い。
【0054】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、変速機構として無段変速機構27を例示しているが、変速機構としては、遊星歯車式や平行軸式の自動変速機構であっても良く、平行軸式の手動変速機構であっても良い。また、図示する車両11は、前輪23および後輪21の双方を駆動する全輪駆動車であるが、これに限られることはなく、前輪23を駆動する前輪駆動車であっても良く、後輪21を駆動する後輪駆動車であっても良い。
【0055】
前述の説明では、エンジン12に連結される発電機として、電動機としても機能するスタータジェネレータ17を設けているが、これに限られることはない。例えば、エンジン12に連結される発電機として、電動機として機能しないオルタネータを採用しても良い。また、前述の説明では、メインコントローラ90に、燃料噴射制御部91、点火時期制御部92、ISG制御部95、およびスロットル制御部93等を設けているが、これに限られることはない。他のコントローラに、燃料噴射制御部91、点火時期制御部92、ISG制御部95、およびスロットル制御部93等を設けても良い。
【0056】
前述の説明では、スタータジェネレータ17に対して2つの蓄電体を接続しているが、これに限られることはなく、スタータジェネレータ17に対して1つの蓄電体を接続しても良い。また、前述の説明では、リチウムイオンバッテリ62および鉛バッテリ61を採用しているが、これに限られることはなく、他の種類のバッテリやキャパシタを採用しても良い。また、
図1および
図3に示した例では、リチウムイオンバッテリ62の正極ライン64にスイッチSW2を設けているが、これに限られることはない。例えば、
図2に一点鎖線で示すように、リチウムイオンバッテリ62の負極ライン69にスイッチSW2を設けても良い。