【文献】
KAACK, K., et al.,"Application of by-products from industrial processing of potato flour and yellow peas as ingredients in low-fat high-fibre sausage.",EUROPEAN FOOD RESEARCH & TECHNOLOGY,2005年 8月,Vol.221, No.3/4,pp.313-319
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
畜肉製品における前記油脂加工澱粉の含有量を、畜肉100質量部に対して1.50〜15.00質量部とするとともに、畜肉製品における前記植物性食物繊維の含有量を、畜肉100質量部に対して0.05〜1.50質量部とすることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の畜肉製品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る畜肉製品、及び畜肉製品の製造方法を実施するための形態(以下、適宜「実施形態」という)について説明する。
【0013】
[畜肉製品]
本実施形態に係る畜肉製品は、植物性食物繊維と、油脂加工澱粉と、を含有することを特徴とする。
ここで、「畜肉製品」とは、食用となる鳥獣の肉を加工した製品であり、ソーセージ(ウインナー、フランクフルト、ボロニアソーセージ等)、ハンバーグ、ミートボール、ハム、ベーコン、唐揚げ、チキンナゲット、つくね、焼売、餃子の具、たれ(調味液)に漬け込んだ味付き肉等を例示することができる。そして、これらの中でも、優れた保水性、保油性、結着性が要求されるソーセージに対して、本発明を好適に適用することができる。
【0014】
(植物性食物繊維)
植物性食物繊維とは、各種植物に由来する食物繊維である。
植物性食物繊維は、畜肉製品内において油脂加工澱粉と併存させることによって、当該油脂加工澱粉との相乗効果として、畜肉製品の保水性、保油性、結着性を向上させる。
【0015】
植物性食物繊維としては、食物に由来する食物繊維であれば特に限定されないが、植物の細胞壁を構成するセルロース、ヘミセルロース、リグニン、ペクチン等の不溶性(非水溶性)の食物繊維を用いるのが、前記した効果をより良く発揮できる点において好ましい。
植物性食物繊維の原料となる植物としては、馬鈴薯、エンドウ豆、オート麦、小麦フスマ、ビート、大豆等を例示することができる。そして、これらの中でも、吸水力に非常に優れる馬鈴薯由来の食物繊維を用いるのが、前記した効果をより良く発揮できる点において好ましい。
なお、キチン、キトサンといった動物性食物繊維では、前記した効果を発揮することはできない。
【0016】
植物性食物繊維の含有量は、畜肉100質量部に対して0.05〜1.50質量部であることが好ましく、畜肉100質量部に対して0.50〜1.00質量部であることがより好ましい。
植物性食物繊維の含有量が0.05質量部以上であることにより、前記した効果をより良く発揮させることができる。一方、植物性食物繊維の含有量が1.50質量部を超えると、前記した効果が飽和するとともに、畜肉製品が必要以上に軟らかくなり過ぎるおそれがある。
なお、畜肉製品に含まれる植物性食物繊維の含有量は、対象とする畜肉製品(以下「対象製品」とする)をミキサーで細かくして、プロスキー改変法(和光純薬工業株式会社 食物繊維測定キット)により測定することができる。ただし、ケーシングを備えるものはケーシングを除き中身をミキサーにかける。コントロールとして食物繊維を添加していない畜肉製品も同じ操作を行って食物繊維の含有量を測定し、対象製品の食物繊維の含有量からコントロールの食物繊維の含有量を差し引くことにより、対象製品に含まれる食物繊維の含有量を算出することができる。
【0017】
(油脂加工澱粉)
油脂加工澱粉とは、油脂によって表面をコーティング加工された澱粉である。
油脂加工澱粉は、畜肉製品内において植物性食物繊維と併存させることによって、当該植物性食物繊維との相乗効果として、畜肉製品の保水性、保油性、結着性を向上させる。加えて、油脂加工澱粉は、肉同様の食感を発揮することから、畜肉製品に混ぜ込むことによって肉の使用量を減らすことができ、コスト低減の効果も発揮する。
【0018】
油脂加工澱粉に用いる澱粉としては、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘薯澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉等を例示することができる。そして、澱粉は、架橋された澱粉、例えば、架橋タピオカ澱粉を用いるのが好ましい。
油脂加工澱粉に用いる油脂としては、ハイリノールサフラワー油、ナタネ油、大豆油、ひまわり油、コーン油、エゴマ油、アマニ油、落花生油、綿実油、オリーブ油、パーム油などを例示することができる。ここで、ヨウ素価の高い油脂は加熱による酸化を受けやすく澱粉の改良効果が高く、畜肉製品の食感改良効果が期待できる。よって、油脂加工澱粉に用いる油脂としては、ヨウ素価が140以上の油脂として、ハイリノールサフラワー油を用いるのが好ましい。なお、油脂加工澱粉における油脂の添加量は、澱粉100質量部に対して0.02〜5質量部であればよく、0.05〜1.0質量部が好ましく、0.05〜0.3質量部がより好ましい。
【0019】
油脂加工澱粉の含有量は、畜肉100質量部に対して1.50〜15.00質量部であることが好ましく、畜肉100質量部に対して1.50〜10.00質量部がより好ましく、畜肉100質量部に対して2.00〜7.00質量部がさらに好ましい。
油脂加工澱粉の含有量が1.50質量部以上であることにより、前記した効果をより良く発揮させることができる。一方、油脂加工澱粉の含有量が15.00質量部を超えると、前記した効果が飽和するとともに、畜肉製品の色が必要以上に白っぽくなってしまうおそれがある。
【0020】
油脂加工澱粉は、畜肉製品をヨウ素染色し顕微鏡で観察することにより添加の有無を確認することができる。
また、畜肉製品に含まれる油脂加工澱粉の含有量は、次の方法により測定することができる。対象製品に水を加えミキサーにかけ遠心分離後に上澄み液を捨てる水洗いを2回程繰り返し行い、次に約70℃の恒温浴槽内で30分間加熱後に遠心分離し上澄み液を捨てる。そして、沈澱物にネオスピターゼ(αアミラーゼ酵素)を加え60℃で18hr反応させ遠心分離して上澄みに含まれる全糖量をフェノール硫酸法で測定することにより求める。ただし、ケーシングを備えるものはケーシングを除き中身をミキサーにかける。そして、コントロールとして澱粉を添加していない畜肉製品も同じ操作を行って全糖量を測定し、対象製品の全糖量からコントロールの全糖量を差し引くことにより、対象製品に含まれる油脂加工澱粉の含有量を算出することができる。
【0021】
(リン酸塩)
リン酸塩とは、ポリリン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩といった重合リン酸塩であり、従来、畜肉製品の保水性等を向上させるために使用されていた物質である。
本実施形態に係る畜肉製品は、前記のとおり、植物性食物繊維と油脂加工澱粉を含有することにより、畜肉製品の保水性、保油性、結着性を向上させることができるため、リン酸塩を使用する必要がない。つまり、本実施形態に係る畜肉製品は、リン酸塩の使用を除外するものではないが、リン酸塩の含有量を低く抑えることができる。
そして、リン酸塩の含有量は、近年の食に対する健康志向の高まりに対応できるように、畜肉100質量部に対して0.40質量部以下とするのが好ましく、畜肉100質量部に対して0.40質量部未満とするのがより好ましい。特に、リン酸塩の含有量を0質量部とすることにより、「リン酸塩フリーの製品」(リン酸塩を含まない製品)として畜肉製品を消費者に提供することができる。
なお、畜肉製品に含まれるリン酸塩の含有量は、五訂日本食品標準成分表に記載されたバナドモリブデン酸吸光光度法により測定することができる。ただし、ケーシングを備えるものはケーシングを除きサンプリングする。コントロールとしてリン酸塩を添加していない畜肉製品も同じ操作を行ってリン酸塩の含有量を測定し、対象製品のリン酸塩の含有量からコントロールのリン酸塩の含有量を差し引くことにより、対象製品に含まれるリン酸塩の含有量を算出することができる。
【0022】
(その他)
本実施形態に係る畜肉製品は、主原料となる畜肉、植物性食物繊維、油脂加工澱粉、リン酸塩(含有しなくともよい)の他、畜肉製品に一般的に添加され得る添加剤が含有されていてもよい。
ここで、主原料となる畜肉としては、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、家兎肉、家禽肉等、及びこれらを組み合わせたものであり、その品種または部位を問わないが、牛や豚のもも肉、脂身を使用するのが好ましい。また、添加剤としては、pH調整剤、酸化防止剤、発色剤、発色助剤、香辛料、調味料、防腐剤、保存料等を例示することができる。
なお、本実施形態に係る畜肉製品がソーセージの場合は、前記した畜肉等を充填するために、天然ケーシング(羊腸、豚腸、牛腸、馬腸等)や人工ケーシング(コラーゲンケーシング、プラスチックケーシング、セルロースケーシング等)を備える。
【0023】
[畜肉製品の製造方法]
次に、本実施形態に係る畜肉製品の製造方法を説明する。
本実施形態に係る畜肉製品の製造方法は、基本的には、各畜肉製品の一般的な製造方法を適用すればよい。
ただし、塩積処理を施して製造する畜肉製品(例えば、ソーセージ)に関しては、以下の製造工程によって製造するのが好ましい。
【0024】
本実施形態に係る畜肉製品の製造方法は、塩積工程S1と、混合工程S2と、を含む。
(塩積工程)
塩積工程S1では、畜肉製品の原料を塩積する。
塩積工程S1で塩積する原料は、前記した畜肉、添加剤等であり、植物性食物繊維、油脂加工澱粉は含まれない。
なお、塩積工程S1での処理条件(塩積時間、塩積温度、食塩の量等)は、各畜肉製品の塩積処理において一般的に用いられる条件を適用すればよい。
【0025】
(混合工程)
混合工程S2では、塩積工程S1後の原料に、植物性食物繊維と、油脂加工澱粉と、を混合する。
塩積工程S1において塩積する原料に対してではなく、塩積工程S1後の原料に対して植物性食物繊維と油脂加工澱粉を混合することにより、畜肉製品の保水性、保油性、結着性の向上という効果をより良く発揮させることができる。
なお、混合工程S2では、植物性食物繊維と油脂加工澱粉だけでなく、香辛料、調味料等を混合してもよい。
【0026】
混合工程S2の後は、一般的な処理、例えば、ケーシングに充填する充填処理、煙で燻す燻煙処理、湯煮や蒸煮を施す加熱処理、冷却した後に所定のパッケージに包装する包装処理を行えばよい。
【0027】
(植物性食物繊維、油脂加工澱粉の製造方法)
本実施形態に係る畜肉製品の製造方法で使用する植物性食物繊維と油脂加工澱粉については、以下のような方法で製造することができる。
植物性食物繊維については、対象植物(例えば、馬鈴薯)から皮を取得するために磨砕処理を施し、得られた皮から水溶性の物質や不純物等を除外する精製処理等を行った後、乾燥・粉砕することによって製造することができる。
油脂加工澱粉については、大気中において気流を用いて均一に分散させた澱粉に対し、油脂をスプレー噴霧させることによって、澱粉の表面に油脂を吸着させた後、加熱熟成することによって製造することができる。
なお、植物性食物繊維、油脂加工澱粉は、上記の方法で製造したものの他、公知の製造方法により製造したものを用いてもよいし、市販されているものを用いてもよい。
【0028】
以上、本実施形態に係る畜肉製品、及び畜肉製品の製造方法について説明したが、明示していない特性や条件については、従来公知のものであればよく、前記特性や条件によって得られる効果を奏する限りにおいて、限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0029】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係る畜肉製品、及び畜肉製品の製造方法について説明する。
【0030】
[実施例1]
実施例1では、「植物性食物繊維」、「油脂加工澱粉」の添加が、「保水性、保油性」、「結着性」等の評価に与える影響について確認する。
【0031】
(サンプルの準備)
表1に示す配合量となるように、原料A(12℃以下)を準備した。なお、表1の中挽き豚もも肉、中挽き脂身は、大きさが3〜10mm程度のミンチ状のものであった。
そして、2〜5℃の冷蔵状態で24〜48時間塩積を行った後、表1に示す配合量となるように、原料Bを混合した。その後、人工ケーシング(#270、ニッピコラーゲン工業株式会社製)に充填し、乾燥(50〜60℃、1〜1.5時間)、燻煙(50〜60℃、1〜2時間)、蒸煮(中心温度63℃、30分)、水冷を行い、サンプルであるソーセージを製造した。
なお、表1のポテックスクラウンはLyckbyStarchAB社製のものであり、ミルフィックスFは王子コーンスターチ株式会社製のものであった。
【0032】
(保水性、保油性評価)
前記の方法により製造したサンプルの質量を計測し、その後、ケーシング内部において分離してしまった水と油をサンプルから抜き取り、再度、質量を計測した。そして、「(水と油を抜き取った後のサンプルの質量)/(水と油を抜き取る前のサンプルの質量)×100」を算出した。
この算出値が高い方が、サンプルの保水性、保油性が優れていると判断することができる。また、この算出値が高い方が、歩留まりが良いと判断することができる。
【0033】
(官能評価:結着性・弾力性・風味・ジューシー感・硬さ)
前記の方法により製造したサンプルについて、専門のパネル6名がサンプルを食して官能評価を行った。なお、サンプルは、製造から3日後のものを電子レンジ(500W)で30秒間加熱し使用した。
官能評価の詳細な内容は、以下のとおりである。
【0034】
(結着性)
結着性の評価は、コントロール(サンプル1)を0点として、挽き肉同士が結合していると感じられる程度を以下の基準に則ってパネルが各々点数を付け、その点数の平均値を算出することにより実施した。
そして、算出した値が1.0以上を「〇」、1.0未満−1.0を超えるものを「△」、−1.0以下のものを「×」とし、「○」と「△」を合格と判断した。
【0035】
(結着性:評価基準)
+3点:非常に結着性がよい。
+2点:かなり結着性がよい。
+1点:やや結着性がよい。
0点:コントロールと同じである。
−1点:やや結着性が悪い。
−2点:かなり結着性が悪い。
−3点:非常に結着性が悪い。
【0036】
なお、評価基準における「やや」とは、数回試食を行い、ようやく差が認められる場合であり、「かなり」とは、明確な差が認められる場合であり、「非常に」とは、明確な差が認められるとともに、その差の程度が大きい場合である。この点については、以下の評価基準についても同様である。
【0037】
(弾力性)
弾力性の評価は、コントロール(サンプル1)を0点として、歯で噛んで離したときに歪みが回復する程度を以下の基準に則ってパネルが各々点数を付け、その点数の平均値を算出することにより実施した。
そして、算出した値が1.0以上を「〇」、1.0未満−1.0を超えるものを「△」、−1.0以下のものを「×」とし、「○」と「△」を合格と判断した。
【0038】
(弾力性:評価基準)
+3点:非常に弾力性がある。
+2点:かなり弾力性がある。
+1点:やや弾力性がある。
0点:コントロールと同じである。
−1点:やや弾力性がない。
−2点:かなり弾力性がない。
−3点:非常に弾力性がない。
【0039】
(風味)
風味の評価は、コントロール(サンプル1)を0点として、澱粉臭や味に違和感がなくソーセージとして好適な風味の程度を以下の基準に則ってパネルが各々点数を付け、その点数の平均値を算出することにより実施した。
そして、算出した値が1.0以上を「〇」、1.0未満−1.0を超えるものを「△」、−1.0以下のものを「×」とし、「○」と「△」を合格と判断した。
【0040】
(風味:評価基準)
+3点:非常に風味がよい。
+2点:かなり風味がよい。
+1点:やや風味がよい。
0点:コントロールと同じである。
−1点:やや風味が悪い。
−2点:かなり風味が悪い。
−3点:非常に風味が悪い。
【0041】
(ジューシー感)
ジューシー感の評価は、コントロール(サンプル1)を0点として、肉汁(旨味)の量の程度を以下の基準に則ってパネルが各々点数を付け、その点数の平均値を算出することにより実施した。
そして、算出した値が1.0以上を「〇」、1.0未満−1.0を超えるものを「△」、−1.0以下のものを「×」とし、「○」と「△」を合格と判断した。
【0042】
(ジューシー感:評価基準)
+3点:非常にジューシー感がある。
+2点:かなりジューシー感がある。
+1点:ややジューシー感がある。
0点:コントロールと同じである。
−1点:ややジューシー感がない。
−2点:かなりジューシー感がない。
−3点:非常にジューシー感がない。
【0043】
(硬さ)
硬さの評価は、コントロール(サンプル1)を0点として、歯で噛み一定量変形させるのに必要な力の大きさの程度を以下の基準に則ってパネルが各々点数を付け、その点数の平均値を算出することにより実施した。
そして、算出した値が1.0以上を「〇」、1.0未満−1.0を超えるものを「△」、−1.0以下のものを「×」とし、「○」と「△」を合格と判断した。
【0044】
(硬さ:評価基準)
+3点:非常に硬い。
+2点:かなり硬い。
+1点:やや硬い。
0点:コントロールと同じである。
−1点:やや軟らかい。
−2点:かなり軟らかい。
−3点:非常に軟らかい。
【0045】
表1に、各サンプルの原料を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
(結果の検討)
実施例であるサンプル5、6は、「植物性食物繊維」と「油脂加工澱粉」を含有していたことから、保水性、保油性評価において95%という好ましい結果となるとともに、結着性評価についても「△」(合格)という結果となった。さらに、サンプル5、6は、弾力性評価、風味評価、ジューシー感評価、硬さ評価が「△」(合格)又は「○」(合格)という結果となった。
また、サンプル5、6は、「油脂加工澱粉」を含有していたことから、中挽き豚もも肉の含有割合を減少させることができたため、コストを低減することもできた。
なお、サンプル5、6は、サンプル1(コントロール)よりもジューシー感の評価が良かったが、これは「油脂加工澱粉」が水を適切に保持したためであると考える。
【0048】
一方、比較例であるサンプル2は、「植物性食物繊維」、「油脂加工澱粉」のいずれも含有していなかったことから、保水性、保油性評価において75%という好ましくない結果となるとともに、結着性評価についても「×」(不合格)という結果となった。なお、サンプル2は、その他の評価も全て「×」(不合格)という結果となった。
【0049】
比較例であるサンプル3は、「油脂加工澱粉」を含有していたものの「植物性食物繊維」を含有していなかったことから、保水性、保油性評価において76%という好ましくない結果となるとともに、結着性評価についても「×」(不合格)という結果となった。なお、サンプル3は、その他の評価も全て「×」(不合格)という結果となった。
比較例であるサンプル4は、「植物性食物繊維」を含有していたものの「油脂加工澱粉」を含有していなかったことから、保水性、保油性評価において81%というあまり好ましくない結果となるとともに、結着性評価についても「×」(不合格)という結果となった。なお、サンプル4は、風味、ジューシー感の評価は「△」(合格)であったものの、その他の評価は「×」(不合格)という結果となった。
サンプル3、4の結果を考察すると、「植物性食物繊維」だけでも「油脂加工澱粉」だけでも良い結果が得られず、サンプル5、6のように両者を併存させることによってはじめて、所望の効果(保水性、保油性、結着性の向上という効果)が得られることがわかった。
【0050】
参考例であるサンプル1(コントロール)は、リン酸塩(ポリリン酸Na)を含有する従来の製品である。全ての評価において合格との結果ではあったが、リン酸塩を含有するため、近年の食に対する健康志向の高まりには応えられない。
【0051】
[実施例2]
次に、実施例2では、製造工程が「保水性、保油性」、「結着性」等の評価に与える影響について確認する。
【0052】
(サンプルの準備)
表2に示す配合量となるように、原料A(12℃以下)を準備した。なお、表2の中挽き豚もも肉、中挽き脂身は、大きさが3〜10mm程度のミンチ状のものであった。
そして、2〜5℃の冷蔵状態で24〜48時間塩積を行った後、表2に示す配合量となるように、原料Bを混合した。その後、人工ケーシング(#270、ニッピコラーゲン工業株式会社製)に充填し、乾燥(50〜60℃、1〜1.5時間)、燻煙(50〜60℃、1〜2時間)、蒸煮(中心温度63℃、30分)、水冷を行い、サンプルであるソーセージを製造した。
なお、表2のポテックスクラウンはLyckbyStarchAB社製のものであり、ミルフィックスFは王子コーンスターチ株式会社製のものであった。
【0053】
(各評価)
各評価に関する評価方法や評価基準は、実施例1と同じであった。
【0054】
表2に、各サンプルの原料を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0055】
【表2】
【0056】
(結果の検討)
サンプル5Aとサンプル5Bとは、いずれも「植物性食物繊維」と「油脂加工澱粉」を含有していたことから、保水性、保油性評価、結着性評価のいずれもが合格という結果となった。
しかしながら、サンプル5Bよりもサンプル5Aの方が、塩積工程後の原料に、植物性食物繊維と油脂加工澱粉を混合していたことから、保水性、保油性、結着性の評価において好ましい結果となった(結着性の評価は同じ「△」ではあるものの、サンプル5Bの結着性の点数は「−0.8点」であるのに対して、サンプル5Aの結着性の点数は「0.5点」であった)。