特許第6733172号(P6733172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6733172
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】車両走行支援制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20200716BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20200716BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   B60W50/14
   B60R16/02 640K
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-250391(P2015-250391)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-117117(P2017-117117A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】彭 志遠
(72)【発明者】
【氏名】八幡 忠孝
(72)【発明者】
【氏名】杉山 大輔
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−305319(JP,A)
【文献】 特開2015−207253(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/067811(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0088375(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0061943(KR,A)
【文献】 独国特許出願公開第102010009133(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102012202551(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 〜 1/16
B60W 50/12 〜 50/16
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行環境を判定する走行環境判定部と、
前記走行環境判定部で判定された走行環境に応じて、前記車両に搭載されている少なくとも1つの走行支援装置から使用可能な走行支援装置を確定する支援装置確定部と、
前記使用可能な走行支援装置の支援案内を提示する提示部と、
前記支援装置確定部で確定された前記使用可能な走行支援装置における運転者の使用頻度に基づき、前記使用可能な走行支援装置の支援案内を前記提示部が提示するように制御する制御部を備え
前記使用頻度が高い場合の前記支援案内は、前記使用頻度が低い場合に比して簡易とすることを特徴とする車両走行支援制御装置。
【請求項2】
前記車両の走行距離を検出する走行距離検出部を有し、
前記制御部は、前記走行距離検出部で検出された走行距離が、所定距離を経過している場合、前記使用可能な走行支援装置の支援案内を前記提示部に提示するように制御することを特徴とする請求項1に記載の車両走行支援制御装置。
【請求項3】
前記走行支援装置の使用頻度を判定する使用頻度判定部を有し、
前記制御部は、前記使用頻度判定部で判定された判定結果に基づき、前記提示部で提示する支援案内を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両走行支援制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記支援装置確定部で確定された使用可能な走行支援装置の使用回数が予め設定された設定回数以上の場合、前記支援装置確定部で確定された使用可能な走行支援装置の使用の是非を問う内容を、前記支援案内として前記提示部に提示するように制御することを特徴とする請求項3に記載の車両走行支援制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記支援装置確定部で確定された使用可能な走行支援装置の使用回数が予め設定された設定回数に満たない場合、少なくとも前記支援装置確定部で確定された使用可能な走行支援装置の使用を促す内容を、前記支援案内として前記提示部に提示するように制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の車両走行支援制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行支援制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、走行環境に応じて走行を支援するための走行支援装置が搭載されたものがある。走行支援装置は、少なくとも1つは搭載されていて、運転者が自ら設定操作をすることで作動するように構成されているものが多い。
このように走行支援装置が搭載された車両を運転する場合、どのような走行支援装置を運転する車両が備えているのか、運転者が理解しきれないことも多い。そこで、走行環境に適した走行支援装置を適宜案内するように制御する発明が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−305319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、走行環境に適した走行支援装置を適宜案内してはいるが、運転者によっては案内されても使用しない走行支援装置(走行支援機能)があるとともに、案内されなくても自らが選択して使用する走行支援装置もあるため、単に走行環境に適した案内だけでは運転者の使用頻度に応じた案内とはなり難い。

本発明は、走行環境に適しているとともに、運転者の使用頻度も考慮して走行支援装置を案内することでドライバビリティの向上を図ることを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両走行支援制御装置は、車両に搭載されていて、車両の走行環境を判定する走行環境判定部と、走行環境判定部で判定された走行環境に応じて、車両に搭載されている少なくとも1つの走行支援装置から使用可能な走行支援装置を確定する支援装置確定部と、使用可能な走行支援装置の支援案内を提示する提示部と、支援装置確定部で確定された使用可能な走行支援装置における運転者の使用頻度に基づき、使用可能な走行支援装置の支援案内を提示部が提示するように制御する制御部を備え、使用頻度が高い場合の支援案内は、使用頻度が低い場合に比して簡易とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、支援装置確定部で確定された使用可能な走行支援装置の使用頻度に基づき、使用可能な走行支援装置の支援案内が提示部で提示されるため、走行環境に適しているとともに、運転者の使用頻度も考慮した走行支援装置を案内することができ、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る車両走行支援制御装置の機能構成を示すブロック図。
図2】(a)は車両の走行環境判定条件の一例を示す図、(b)は検出された走行条件と使用可能な走行支援装置を示す図。
図3】走行支援装置の一形態の概略を説明するブロック図。
図4】走行支援装置を設定するための操作部の一形態を示す図。
図5】走行支援装置の支援案内を提示する制御の一形態を示すフローチャート。
図6】習熟度が高い場合に提示される支援案内としての画面の一例を示す図。
図7】(a)〜(c)は、習熟度が低い場合に提示される支援案内としての画面の一例を示す図。
図8】(a)〜(d)は、習熟度が低く、使用経験がない場合に提示される支援案内としての画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、車両走行支援制御装置10の機能構成を示すブロック図である。車両走行支援制御装置10は、車両1に搭載されている少なくとも1つの走行支援装置11の支援案内を、車両1の走行環境と運転者の使用頻度に合わせて運転者に提示するものである。
このため、車両走行支援制御装置10は、車両1の走行環境を判定する走行環境判定部12と、走行環境判定部12で判定された走行環境に応じて、車両1に搭載されている少なくとも1つの走行支援装置11から使用可能な走行支援装置を確定する支援装置確定部13と、走行支援装置11の使用頻度を判定する使用頻度判定部14と、支援案内を提示する提示部としての液晶タッチパネルディスプレイ等の表示装置15と、表示装置15の表示内容を制御する制御部30を備えている。
制御部30は、支援装置確定部13で確定された使用可能な走行支援装置の使用頻度に基づき、使用可能な走行支援装置の支援案内を表示装置15が提示するように制御する機能を備えている。
【0009】
本実施形態において、制御部30は、CPU31、RAM32、ROM33を備えたコンピュータで構成されていて、表示装置15の表示内容を制御する。具体的には、使用頻度判定部14で判定された使用頻度に応じて、表示装置15で提示する支援案内を変更する。走行支援装置11は、運転者の設定操作を伴うものである。表示装置15に提示される支援案内は、走行支援装置11を使用する際に、使用可能な走行支援装置の使用の是非を問う内容、使用可能な走行支援装置の使用を促す内容、操作手順等を示すものであり、ここでは、画像と文字で表示される。つまり、本実施形態において、支援案内を提示部に提示するとは、表示装置15に操作手順等を画像や文字で表示することを示す。
【0010】
このような車両走行支援制御装置10を備えた車両1では、走行環境判定部12で車両1の走行環境を判定し、判定された走行環境に応じて使用可能な走行支援装置11を支援装置確定部13で判定し、判定された使用可能な走行支援装置11の使用頻度に基づき、使用可能な走行支援装置11の支援案内が、運転者の使用頻度に相関する習熟度に応じて異なる内容で表示装置15を介して提示される。
このように、本実施形態では、運転者には、走行環境に適しているとともに、その思考や使用頻度も考慮された走行支援装置11が案内されるので、運転の負荷を低減して、ドライバビリティの向上を図ることができるとともに、予防安全に貢献することができる。
【0011】
次に車両走行支援制御装置10に関する具体的な構成について説明する。
車両1は、走行距離Tを検出する走行距離検出部26を有している。制御部30は、走行距離検出部26で検出された走行距離Tが、予めROM33に記憶設定された所定距離T1を経過している場合、使用可能な走行支援装置11の支援案内を表示装置15に表示することで、運転者に提示する。これは、例えば新車購入時から車両1を運転する場合、車両1に搭載されている走行支援装置11の利用頻度は低く、操作の習熟度も低いことが想定される。このため、例えば所定距離T1を1000kmとして設定した場合、走行距離Tが1000km走行後に支援案内を運転者に提示して知らせる方が、運転者の負担にならないと考えたためである。
【0012】
本実施形態において、運転者の趣向(好み)や走行支援装置11の使用や操作などに対する習熟度は、使用頻度判定部14で判定する。制御部30は、使用頻度判定部14で判定された判定結果に基づき、表示装置15に表示する支援案内を変更する機能を備えている。制御部30は、支援装置確定部13で確定された使用可能な走行支援装置11の使用回数Nを、走行支援装置11が使用される毎にROM33に記憶する。支援装置確定部13では、記憶された使用回数Nが、ROM33に予め記憶設定されている所定回数以上(N1以上)の場合、支援装置確定部13で確定された使用可能な走行支援装置11の使用の是非を問う内容(例えば図6)を、支援案内として表示装置15に表示するように制御する。また、制御部30は、支援装置確定部13で確定された使用可能な走行支援装置11の使用回数Nが予め設定された設定回数N1に満たない場合、少なくとも支援装置確定部13で確定された使用可能な走行支援装置11の使用を促す内容(例えば図7図8)を、支援案内として表示装置15に表示するように制御する。
つまり、本実施形態では、走行支援装置11の使用回数Nが多い場合には、走行支援装置11の操作手順等に対する習熟度が高ものとし、走行支援装置11の使用回数Nが少ないあるいは0の場合には、走行支援装置11の操作手順等に対する習熟度が低いものとしている。
【0013】
車両1は、ナビゲーションシステム60を備えている。ナビゲーションシステム60は、記録媒体に記憶されている地図情報を電子地図として表示装置15に表示する機能と、表示された電子地図上に、GPS衛星からの電波の到達時間に基づき得られる自車両の位置や、目的地までの走行ルートを表示する周知のものである。ナビゲーションシステム60は、GPS衛星から得られた自車両の位置と地図情報とから、自車両が有料道路を走行しているか否かを判定することができる。
車両走行支援制御装置10は、ナビゲーションシステム60の位置情報から自車両が有料道路を走行しているか否かを、走行環境判定部12で用いる判定条件の1つとして利用する。ここでは、表示装置15をナビゲーションシステム60の表示装置としても利用するが、個別にナビ用の表示装置を設けても良い。
【0014】
車両1には、ETCカードを利用するためのETC通信装置70を備えている場合もある。ETC通信装置70は、有料道路の入口と出口に設置されたETCアンテナと交信して料金を自動収受する周知のものである。車両走行支援制御装置10は、ETC通信装置70の交信情報の有無から有料道路を走行しているか否かを走行環境判定部12で用いる判定条件の1つとして利用するようにしても良い。
車両1は、道路交通情報通信システム(通称「VICS(登録商標)」)と交信するためのアンテナ27を備えていて、アンテナ27から道路の渋滞情報を取得可能とされている。制御部30は、このアンテナ27とナビゲーションシステム60とを連動させて電子地図上に渋滞情報を表示するように、表示装置15を制御する。無論、アンテナ27から道路の渋滞情報を単独で表示装置15に表示するように制御しても良い。車両走行支援制御装置10は、アンテナ27から道路の渋滞情報を走行環境判定部12で用いる判定条件の1つとして利用する。
車両1は、天候情報検出部28を備えている。天候情報検出部28は雨粒を検出する雨滴センサや降雪センサである。天候情報としては、雨滴センサからの出力ではなく、車両1に搭載されているウインドワイパーの作動信号を用いても良い。車両走行支援制御装置10は、天候情報検出部28から出力を走行環境判定部12で用いる判定条件の1つとして利用する。
つまり、アンテナ27、天候情報検出部28、ナビゲーションシステム60、ETC通信装置70等は、車両1の走行環境を検出する走行環境検出部16として機能する。
【0015】
走行環境判定部12は、走行環境検出部16で検出された情報から車両1の走行環境を判定するものである。本実施形態において、走行環境とは、走行支援装置11が利用可能か否かを判定するための判定条件である。このため走行環境判定部12は、走行支援装置11の使用条件判定部でもある。
走行環境(判定条件)とは、図2(a)に示すように、車両1の走行場所、走行する道路環境、道路形状、渋滞情報、天候情報等である。
走行場所とは、有料道路と市街地を判定項目としている。有料道路を走行しているか否かは、ナビゲーションシステム60からの有料道路情報に基づき判定できる。市街地を走行しているか否かは、ナビゲーションシステム60の自車位置情報と地図情報から判定しても良いし、有料道路情報の有無から判定することができる。
道路環境とは、国道、県道、市町村道を判定項目としている。これらの判定は、ナビゲーションシステム60の自車位置情報と地図情報から、国道、県道、市町村道の何れかを走行しているかを判定する。道路形状とは、直線、カーブ、分岐、トンネルを判定項目としている。これらの判定は、ナビゲーションシステム60の自車位置情報と地図情報から判定する。また、車両1の車輪の向きやステアリングの回転角と、地図情報などから直線、カーブ、分岐、トンネルを走行しているか否かを判定することもできる。
渋滞状況は、発生しているか否かを判定項目としており、アンテナ27から道路の渋滞情報に基づいて判定する。また、車車間通信等により渋滞状況を把握する手法を採用してもよい。
天候情報は、晴れ、雨、雪を判定項目としている。雨天走行か晴天走行かの判定は、天候情報検出部28から出力の有無で判定することができる。例えば天候情報検出部28から出力が無い場合には晴天走行とし、出力がある場合には雨天走行と判定する。
雪道走行か否かは、天候情報検出部28として降雪センサからの出力の有無で判定することができる。このような走行環境判定条件となる判定項目は、ROM33に予め記憶されている。
【0016】
走行環境(判定条件)は、利用する走行支援装置11によっても異なる。このため、走行支援装置11の種類に対応させた走行環境(判定条件)を、ROM33に追加して記憶するようにしても良いし、想定される走行支援装置11に対応した走行環境(判定条件)を予め記憶しておいても良い。
ROM33には、これら情報の他に、案内支援となる操作方法を示す画面や文字のデータが記憶されている。ROM33とは個別に記憶部を設け、記憶部に案内支援となる操作方法を示す画面や文字のデータを記憶しておき、当該データを利用しても良い。
走行支援装置11の使用頻度は、一回使用されるとカウンタで計測しROM33に、使用された走行支援装置11と使用回数とを関係づけて記憶する。
【0017】
表示装置15には、車両1の各種情報が文字や画像で表示されるとともに、ACC制御装置51の操作手順などが表示される。表示装置15に表示される内容としては、ACC制御のオン/オフ状態、制御状況(先行車の有無、設定車間距離、速度)等が挙げられる。本実施形態において、支援案内とは、表示装置15に、ACC制御装置51の操作手順を表示して運転者に視覚的に報知することである。また、表示装置15に表示される内容は、運転者の習熟度(利用頻度)に応じて異なるように制御部30によって制御される。
【0018】
走行支援装置11としては、例えば、走行速度を一定に保ちまた先行車両に追従して走行する周知のACC(Adaptive Cruise Control)制御装置51や、走行車線を維持するよう操舵力を付加するLKA(Lane Keeping Assist)制御装置52などが周知のシステムとして挙げられる。
ここで走行支援装置11の1つであるACC制御装置51について説明する。ACC制御装置51は、既に知られているものであり、その機能の概略について説明する。図3は、ACC制御装置51の概略構成を示す図である。ACC制御装置51はミリ波レーダ装置501を備えている。ミリ波レーダ装置501は周知のものであり、車両1の例えばフロントグリル内に設置されていて、車両前方に向けてミリ波を送信すると共に先行車両で反射したミリ波を受信するレーダ装置である。ミリ波レーダ装置501は、送信したミリ波が受信されるまでの時間で先行車両との相対距離を、送信波と受信波の周波数の差に基づき相対速度をそれぞれ検出する。なお、先行車両との相対距離・相対速度は、ミリ波レーダ装置501ではなく、複数のカメラで構成されたステレオカメラ等により検出してもよい。
【0019】
ACC制御装置51は、車間制御ECU502を備えている。車間制御ECU502は、ミリ波レーダ装置501の検出結果と、車速情報検出部としての車速センサ22が検出する車速情報、自車両の操舵角(カーブ半径)等に基づいて、追従すべき先行車両が自車線に存在するか否かを判定し、先行車両が存在すれば追従走行を、先行車両が存在しなければ、設定された車速で走行する定速走行を行うACC制御を実行する。車間制御ECU502は、車両1が定速走行の場合、車速情報と運転者が設定した車速とを比較して、目標加速度及び減速度勾配を決定する。
車間制御ECU502は、追従走行の場合、車間制御すべき先行車両に対し、ミリ波レーダ装置501が検出した相対距離、車速情報、及び、予め3段階程度からユーザにより設定されている設定車間距離(距離大、距離中、距離小)とを比較して、先行車両との目標車間距離を決定する。なお、設定車間距離が同じであっても、目標車間距離は車速に応じて異なるように決定される。
【0020】
車間制御ECU502は、目標車間距離になるように、目標加速度(車間を詰める場合)、減速度勾配(車間を広げる場合)、ブレーキ制御要求(減速度が大きい場合)を決定する。また、悪天候などの場合に車間制御が困難であれば警告表示要求を生成する。以下、目標加速度、減速度勾配、ブレーキ制御要求、及び、警告表示要求を距離制御情報という。距離制御情報は車両1に搭載されている通信線であるCAN通信線等に送信され、制御部30が必要に応じて受信する。
【0021】
車間制御ECU502には、自車両の車速を検出する車速センサ22、ブレーキ操作の有無を検出するストップランプスイッチ23、ACC制御装置51の作動や解除時に、運転者が操作するクルーズコントロールスイッチ24が接続されている。
制御部30は、車間制御ECU502から距離制御情報を受信すると、距離制御情報から判断する運転状態に応じて、車両1に搭載されているエンジンのスロットル開度やトランスミッションのアクチュエータ駆動手段に対して駆動命令を出力する。これらのアクチュエータにより、エンジン出力、制動力(エンジンブレーキ)又は変速シフトを制御することが可能となり、目標加減速度又は減速度勾配が実現される。
【0022】
制御部30は、車間制御ECU502から距離制御情報、特にブレーキ制御要求を受信すると、油圧回路に備えられた制御弁の開閉を制御するブレーキアクチュエータを制御して、目標車間距離が得られるよう車両1の制動を要求する。すなわち、スロットル制御やシフトダウンでは十分な目標減速度が得られない場合、車両1制動させる制御を行う
【0023】
操作部としてのクルーズコントロールスイッチ24は、例えば図4に示すように、ステアリングホイール25に設置された複数の押しボタン式のスイッチで構成されている。すなわち、クルーズコントロールスイッチ24は、ACC制御装置51を起動するスイッチ241と、車間距離を設定するスイッチ242と、クルーズ車速を設定するスイッチ243、ACC制御装置51の設定や作動をキャンセルするスイッチ244と、各種操作を確定するスイッチ245等を備えている。クルーズコントロールスイッチ24は、運転者が手動操作するものである。クルーズコントロールスイッチ24は、操作手順がある程度定められていて、運転者は操作手順をマニュアルなどで学習する必要がある。
クルーズコントロールスイッチ24としては、押しボタン式のものに限定するものではなく、レバー式のものもあるが、いずれの場合も、ACC制御装置51の作動や設定をするには操作手順を学ぶ必要がある。このため、ACC制御装置51を頻繁に利用する運転者は、操作手順を覚えられて習熟度は高いといえる。ACC制御装置51を頻繁に利用しない運転者は、操作手順がうる覚えのことも多く、習熟度は低いといえる。さらに運転者によってはACC制御装置51が車両1に搭載されていることを知らず、このためクルーズコントロールスイッチ24の設置位置や操作手順を知らないこともあり、習熟度は大変低いといえる。
【0024】
次に、車両走行支援制御装置10の制御内容を図5に示すフローチャートを基に説明する。
車両走行支援制御装置10の制御部30は、ステップST1において、走行距離検出部26で検出された走行距離Tが、所定距離T1以上であるか否かを判定し、所定距離以上の場合には、支援案内をするには適切な時期であるとしてステップST2に進む。制御部30は、ステップST2において、走行環境検出部16により各種走行環境情報を検出し、ステップST3に進む。制御部30は、ステップST3において、走行環境判定部12により走行支援装置11を使用するのに適切な走行環境であるか否かの走行環境適正判定処理を実行する。この走行環境適正判定処理の内容は、図2(a)で説明したとおりである。制御部30は、これら走行環境条件を走行環境判定部12で判定後、ステップST4において判定された走行条件で使用可能な走行支援装置11を選択して確定しステップST5に進む。ここでは、例えば図2(b)に示すように、ACC制御装置51が確定されたものとする。
【0025】
車両走行支援制御装置10は、ステップST5において、使用可能な走行支援装置11であるACC制御装置51の使用頻度をROM33に記憶した使用回数NとROM33に記憶されている所定回数N1とを使用頻度判定部14によって比較することで判定する。使用頻度判定部14では、使用回数Nが所定回数N1以上の場合には、使用頻度が多いものとしてステップST6に進み、使用回数Nが所定回数N1に満たない場合には、使用頻度が少ないものとしてステップST7に進む。
すなわち、ステップST5において、使用回数Nが所定回数N1以上の場合には、運転者は確定された走行支援装置11であるACC制御装置51のクルーズコントロールスイッチ24の操作を、使用に支障を来さない程度覚えている習熟度の高い運転者であると見做し、ステップST6に進む。一方、使用回数Nが所定回数N1に満たない場合には、運転者は選択された走行支援装置11であるACC制御装置51の操作部であるクルーズコントロールスイッチ24の操作をあまり知らないあるいはまったく知らない習熟度の低い運転者あるものと見做しステップST7に進む。
【0026】
制御部30は、ステッフST6において、使用頻度に応じた支援案内を提示するが、この場合、操作手順ではなく、図6に示すように、利用可能な走行支援装置の使用の是非を問う案内画像を選択し、ステップST10において表示装置15に表示して運転者に視覚的に提示する。
【0027】
制御部30は、ステップST7において、使用回数Nが0回であるか否かを使用頻度判定部14で判定する。ここで使用回数Nが0回でなければ、走行支援装置11の使用頻度少なく習熟度の低い運転者と見做し、ステップST9において、図7(a)〜図7(c)に示すように、利用可能な走行支援装置11であるACC制御装置51の操作内容を示す画像を選択し、ステップST10において表示装置15に各画面で指示した操作がされる度に画面を変更して運転者に視覚的に提示する。
一方、ステップST7において、使用回数Nが0回の場合には、運転者が一度も走行支援装置11を使用していない、あるいは使用方法がわからない運転者であるものと見做し、ステップST8において、図8(a)〜図8(d)に示すように、使用可能な走行支援装置11であるACC制御装置51の使用を促す内容と、その操作内容を示す画像を選択し、ステップST10において表示装置15に各画面で指示した操作がされる度に画面を変更して運転者に視覚的に提示する。
【0028】
本実施形態によると、支援装置確定部13で確定された使用可能な走行支援装置11の使用頻度に基づき、使用可能な走行支援装置(例えばACC制御装置51)に関する支援案内を運転者に提示することができるので、運転者には、走行環境に適しているとともに、その指向や使用頻度も考慮された走行支援装置を案内することができ、運転の負荷を低減して、ドライバビリティの向上を図ることができるとともに、予防安全に貢献することができる。
【0029】
本実施形態では、走行距離検出部26で検出された車両1の走行距離Tが所定距離T1以上の場合(経過している場合)に、使用可能な走行支援装置の支援案内を運転者に提示するので、運転者が走行支援装置の種類や操作部であるクルーズコントロールスイッチ24の位置などを把握した上で支援案内を見ることができ、より運転の負荷を低減して、ドライバビリティの向上を図ることができるとともに、予防安全に貢献することができる。
【0030】
本実施形態では、使用頻度判定部14で判定された使用頻度に応じて、表示装置15に表示される支援案内が変更されるので、運転者の設定操作に対する習熟度に応じた適切な支援案内を行なえる。すなわち、使用頻度を判定するのに、使用回数Nをカウントして記憶し、記憶した使用回数Nが予め設定された設定回数N1以上の場合には、習熟度の高い運転者であるものとして、操作手順ではなく、より簡素な内容である使用可能な走行支援装置の使用の是非を問う内容を表示する。このため、習熟度の高い運転者にとっては煩わしさがなく、かつ走行支援装置11の設定忘れの防止にもつながり、ドライバビリティの一層の向上を図ることができるとともに、より予防安全に貢献することができる。
【0031】
また、使用回数Nが予め設定された設定回数Nに満たない場合、習熟度の低い運転者であるものとして、使用可能な走行支援装置の使用を促す内容や操作手順を、支援案内として表示装置15に表示する。このため、操作が解らず使用することを躊躇っていた習熟度の低い運転者にとっては、安心して走行支援装置を使用するための操作や設定を行うことができ、ドライバビリティの一層の向上を図ることができるとともに、予防安全に貢献することができる。
【0032】
上記実施形態では、走行支援装置としてACC制御装置51を例示したが、走行支援装置としては、走行車線を維持するよう操舵力を付加するLKA(Lane Keeping Assist)制御装置52なども挙げられる。LKA制御装置52も運転者の操作や設定を行う走行支援装置の1つである。LKA制御装置52に対応した支援画面や使用可能であるか否かは判定する条件をROM33に記憶しておくことで、車両の走行環境がLKA制御装置52を使用可能な場合にはLKA制御装置52が使用可能な走行支援装置として判定され、このLKA制御装置52の使用頻度に応じてLKA制御装置52に対応した支援画面を表示装置15に表示して運転者に提示することもできる。
また、走行支援装置11の中には工場出荷時ではなく、ディーラーなどでオプション装着されることも想定されることから、これら追加される走行支援装置に対応した支援画面や使用可能であるか否かは判定する条件を、ROM33に予め設定したり、これらをROM33に後から追記するようにしても良い。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、提示部としては表示装置15を例示し、支援案内として画像を表示することで、運転者に提示するようにしたが、画像の表示ではなく、音声を発生して提示する音声提示システムを用いて支援案内するようにしても良い。
音声提示システムとしては、例えば、運転者の音声を入力する音声入力部と、音声入力部で入力された音声を認識する自動音声認識部(ASR)と、自動音声認識部で認識された音声の意味を判断する自然言語理解(NLU)などの言語理解部と、合成音声部等の周知の構成を備えたものを用いる。そして、この音声提示部と制御部30とを信号線で接続して連携させることで、使用可能な走行支援装置11や、走行支援装置11の操作方法などを音声により運転者に案内するとともに、手動で操作部を操作した場合と同様の信号を運転者の音声指令によって出力するようにしても良い。また、音声提示システムによる音声による支援案内と表示装置15による表示の双方を用いて、運転者に走行支援装置11の使用の可否や操作内容などを提示するようにしても良い。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
1・・・車両、10・・・車両走行支援制御装置、11・・・走行支援装置、12・・・走行環境判定部、13・・・支援装置確定部、14・・・使用頻度判定部、15・・・提示部、26・・・走行距離検出部、30・・・制御部、50・・・使用可能な走行支援装置、N・・・使用回数、N1・・・所定回数、T・・・走行距離、T1・・・所定距離
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