(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1種液体燃料、前記第1種液体燃料とは粘度または比重の異なる第2種液体燃料、或いは、これらの混合液体燃料を燃料として稼働する負荷への燃料供給系に備えられる燃料補助タンクであって、
前記燃料供給系は、前記第1種液体燃料または前記第2種液体燃料を当該燃料補助タンクの送入口に圧送する第1送液手段と、当該燃料補助タンクの送出口から送出される燃料を前記負荷に圧送する第2送液手段と、を有し、
当該燃料補助タンクの底部に固定され、当該燃料補助タンクの送入口を介して前記第1送液手段から圧送される燃料の噴射流を、当該燃料補助タンクの側周内壁面に沿った上昇旋回流に変換する邪魔部材、を有し、
前記邪魔部材は、前記燃料の噴射流に対して凹状に湾曲し、前記上昇旋回流の方向側の曲率半径よりも前記上昇旋回流の逆方向側の曲率半径の方が大きい湾曲面を備える、
ことを特徴とする燃料補助タンク。
当該燃料補助タンクの側周内壁面に固定され、前記邪魔部材により流向が変えられた燃料の噴射流を当該燃料補助タンクの側周内壁面に沿った上昇旋回流となるよう誘導する第1誘導部材を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の燃料補助タンク。
【背景技術】
【0002】
従来、高粘度油(原油)および低粘度油(重油)など複数種の油を燃料とする火力発電所では、例えば
図5に示すように、これらの燃料を貯蔵する複数の燃料貯蔵タンク61,62と、重原油補助タンク(燃料補助タンク)40とを備えて燃料供給系が構成されている。このような燃料供給系では、燃料貯蔵タンク61,62からの燃料は、一旦送油ポンプ53により重原油補助タンク40へ供給され、さらに重原油噴燃ポンプ54により圧力をバーナー燃焼の適正圧力まで上げた後、ボイラ用燃料として供給されることになる。
【0003】
ここで、使用する燃料は燃料貯蔵基地より定期的に納入されているが、常に同種の燃料が調達されるとは限らず、使用燃料の種別は、ユニットの経済的な運用に基づいて日々決定されるものである。すなわち、燃料貯蔵タンク61,62のそれぞれに異種燃料(重油、原油など)を受け入れ、経済的な運用や排出ガス環境規制値(NOx,SOx等)を考慮して使い分けている。
【0004】
したがって、燃料供給系の運用上、重原油補助タンク40内で燃料種別を切り替える場合があるが、重原油補助タンク40に攪拌機が設置されていないため、
図5に示すように、比重の軽い燃料101と比重の重い燃料102とが分離してしまうことがある。例えば、比重の軽い低粘度燃料(重油)から比重の重い高粘度燃料(原油)に燃料種別を切り替える場合、比重の軽い燃料に重い燃料が供給されることになるが、重原油補助タンク40内で燃料が均一に混合することなく、重原油補助タンク40上部に比重の軽い燃料が残留してしまう。
【0005】
通常、重原油補助タンク40の底部にはタンク内の燃料を加熱するヒータが設置されているが、比重の軽い燃料101と比重の重い燃料102とが分離した状態では、重原油補助タンク40上部(比重の軽い燃料101の上層部)まで熱が伝わらず凝固してしまい、燃料計(フロート式レベル計)11のフロートを押し下げて、燃料計11が正確なタンク内燃料レベルを示さなくなるという問題があった。これを解決するために,現状では給電へ発電出力を一定とする要求をした後に,重原油補助タンク40のレベルスイングを実施している。ここでレベルスイングとは、燃料切替を行うとき(或いは定期的)に、運転状態のタンク内燃料レベルを噴燃ポンプ54の必要ヘッド圧力限界まで下げては、またタンク内燃料レベルを上昇させるという一連の動作を繰り返し、物理的に重原油補助タンク40内部の燃料の混合を行うというものである。なお、このレベルスイングを実施するためには、中央制御室と現場に監視・操作員を1名ずつ配置し、万全の状態で行う必要があり、操作に約半日程度の時間と労力を要している。
【0006】
他方で、相対的に高粘度の燃料の相分離に対処する手法としては、例えば特許文献1がある。この特許文献1は、比較的長期にわたり石炭と液相との分離を抑制することを可能にする石炭のスラリー化方法として、撹拌部を備えた貯水タンクを使用するものであり、タンク本体部の上方に配設されたモータが回転すると、モータ軸が回転してタンク下部に設けられた撹拌部の撹拌翼が回転してスラリー状の石炭液状物を撹拌し、石炭液状物が分離することを防止する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、重原油補助タンク40のレベルスイングを実施してタンク内の異種燃料を混合する手法では、操作に時間と労力を要するという事情があった。また、特許文献1のように、重原油補助タンク40に撹拌部を設置してタンク内全域を攪拌する手法では、装置コストが増大し、また既設の重原油補助タンク40に撹拌部を付設するために大掛かりな改修工事が必要となるという問題がある。
【0009】
そこでこの発明は、装置コスト増を抑制しつつ、相対的に短時間・低労力で燃料攪拌が可能な燃料補助タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、第1種液体燃料、前記第1種液体燃料とは粘度または比重の異なる第2種液体燃料、或いは、これらの混合液体燃料を燃料として稼働する負荷への燃料供給系に備えられる燃料補助タンクであって、前記燃料供給系は、前記第1種液体燃料または前記第2種液体燃料を当該燃料補助タンクの送入口に圧送する第1送液手段と、当該燃料補助タンクの送出口から送出される燃料を前記負荷に圧送する第2送液手段と、を有し、当該燃料補助タンクの底部に固定され、当該燃料補助タンクの送入口を介して前記第1送液手段から圧送される燃料の噴射流を、当該燃料補助タンクの側周内壁面に沿った上昇旋回流に変換する邪魔部材、を有
し、前記邪魔部材は、前記燃料の噴射流に対して凹状に湾曲し、前記上昇旋回流の方向側の曲率半径よりも前記上昇旋回流の逆方向側の曲率半径の方が大きい湾曲面を備える、ことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、
第1種液体燃料、前記第1種液体燃料とは粘度または比重の異なる第2種液体燃料、或いは、これらの混合液体燃料を燃料として稼働する負荷への燃料供給系に備えられる燃料補助タンクであって、前記燃料供給系は、前記第1種液体燃料または前記第2種液体燃料を当該燃料補助タンクの送入口に圧送する第1送液手段と、当該燃料補助タンクの送出口から送出される燃料を前記負荷に圧送する第2送液手段と、を有し、当該燃料補助タンクの底部に固定され、当該燃料補助タンクの送入口を介して前記第1送液手段から圧送される燃料の噴射流を、当該燃料補助タンクの側周内壁面に沿った上昇旋回流に変換する邪魔部材、を有し、前記邪魔部材は、前記燃料の噴射流に対して凹状に湾曲する湾曲面を備えて、当該燃料補助タンクの前記送出口近傍の底部に固定され、前記湾曲面が前記送出口側に傾いて形成され、前記燃料の噴射流方向に前記湾曲面を見たときに、該湾曲面が前記送出口を覆うように形成されている
、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、
第1種液体燃料、前記第1種液体燃料とは粘度または比重の異なる第2種液体燃料、或いは、これらの混合液体燃料を燃料として稼働する負荷への燃料供給系に備えられる燃料補助タンクであって、前記燃料供給系は、前記第1種液体燃料または前記第2種液体燃料を当該燃料補助タンクの送入口に圧送する第1送液手段と、当該燃料補助タンクの送出口から送出される燃料を前記負荷に圧送する第2送液手段と、を有し、当該燃料補助タンクの底部に固定され、当該燃料補助タンクの送入口を介して前記第1送液手段から圧送される燃料の噴射流を、当該燃料補助タンクの側周内壁面に沿った上昇旋回流に変換する邪魔部材、を有し、前記邪魔部材は、前記燃料の噴射流に対して凹状に湾曲する第1湾曲面と、当該燃料補助タンクの側周面と略並行して凸状に湾曲する第2湾曲面とが、水平方向の断面形状が略逆S字状となるように連結された部材を、当該燃料補助タンクの前記送入口近傍の底部に固定して形成され、前記第1湾曲面または前記第2湾曲面が当該燃料補助タンクの側周内壁面とは逆の側に傾いて形成されている
、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の燃料補助タンクにおいて、当該燃料補助タンクの側周内壁面に固定され、前記邪魔部材により流向が変えられた燃料の噴射流を当該燃料補助タンクの側周内壁面に沿った上昇旋回流となるよう誘導する第1誘導部材を有することを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項
2に記載の燃料補助タンクにおいて、前記邪魔部材の前記湾曲
面に固定され、前記邪魔部材により流向が変えられた燃料の噴射流を当該燃料補助タンクの側周内壁面に沿った上昇旋回流となるよう誘導する第2誘導部材を有することを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項3に記載の燃料補助タンクにおいて、前記邪魔部材の前記第1湾曲面または前記第2湾曲面に固定され、前記邪魔部材により流向が変えられた燃料の噴射流を当該燃料補助タンクの側周内壁面に沿った上昇旋回流となるよう誘導する第2誘導部材を有することを特徴とする。
【0015】
請求項
7の発明は、請求項1乃至請求項
6の何れか1項に記載の燃料補助タンクにおいて、当該燃料補助タンクの側周内壁面に設置され、当該燃料補助タンクの側周内壁面に沿った上昇旋回流を加速する加速手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、底部に固定され、送入口を介して第1送液手段から圧送される燃料の噴射流を当該燃料補助タンクの側周の内壁面に沿った上昇旋回流に変換する邪魔部材を備えているので、燃料補助タンクに燃料を供給するときには、常時、燃料補助タンク内の燃料に上昇旋回流が誘起され、第1送液手段から圧送される燃料が自然攪拌するので、燃料補助タンク内の燃料の均一化を図ることができる。特に、異種燃料間で燃料切替を行う場合に、従来行っていた特別な操作を必要とせずに、燃料転換を行うことができる。また、燃料切替時の発電機出力抑制等の制約も一切無く、何時でも燃料切替を実施できることから、燃料運用の幅を広げることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、邪魔部材に燃料の噴射流に対して凹状に湾曲する湾曲面を備えて、邪魔部材が送出口近傍の底部に固定され、湾曲面が送出口側に傾いて形成され、燃料の噴射流方向に湾曲面を見たときに、該湾曲面が送出口を覆うように形成されているので、邪魔部材の湾曲面で旋回流が誘起され、該湾曲面の傾斜角度で上昇流が誘起されることとなり、圧送される燃料の噴射流を、効率的に側周内壁面に沿った上昇旋回流に変換することが可能となり、効率的な燃料の自然攪拌を行うことができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、邪魔部材は、燃料の噴射流に対して凹状に湾曲する第1湾曲面と、側周面と略並行して凸状に湾曲する第2湾曲面とが、水平方向の断面形状が略逆S字状となるように連結された部材を、送入口近傍の底部に固定して形成され、第1湾曲面または第2湾曲面が側周内壁面とは逆の側に傾いて形成されているので、第1湾曲面で向きが変えられた燃料の噴射流が側周内壁面に沿った上昇旋回流となるように、第2湾曲面により誘導されることとなり、圧送される燃料の噴射流を、効率的に側周内壁面に沿った上昇旋回流に変換することが可能となり、効率的な燃料の自然攪拌を行うことができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、燃料補助タンクの側周内壁面に固定される第1誘導部材により、邪魔部材によって流向が変えられた燃料の噴射流を側周内壁面に沿った上昇旋回流となるよう誘導するので、側周内壁面に沿った上昇旋回流の流路における損失を低減して、効率的な燃料の自然攪拌を実現することができる。
【0020】
請求項5
や請求項6の発明によれば、邪魔部材の湾曲面、第1湾曲面または第2湾曲面に固定される第2誘導部材により、邪魔部材によって流向が変えられた燃料の噴射流を側周内壁面に沿った上昇旋回流となるよう誘導するので、邪魔部材で誘起される上昇旋回流の流路損失を低減して、効率的な燃料の自然攪拌を実現することができる。
【0021】
請求項
7の発明によれば、例えば、第1送液手段による燃料の噴射流だけでは、上昇旋回流が燃料の上層部まで到達し得ない場合であっても、燃料補助タンクの側周内壁面に設置される加速手段により、側周内壁面に沿った上昇旋回流を加速することができるので、燃料の攪拌を確実に行うことができる
。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1はこの発明の実施の形態1に係る燃料補助タンク10の説明図であり、
図1(a)は上方から見た燃料補助タンク10の断面図でタンク内の構造および燃料の流れを例示し、
図1(b)は燃料供給系における燃料補助タンク10およびその周辺の装置構成を示すと共に、側方から見た燃料補助タンク10の断面図でタンク内の構造および燃料の流れを例示する。
【0025】
この実施の形態1における燃料供給系は、
図5と同様に燃料貯蔵タンク61,62および調整弁63,64(図示せず)を備えて、異種液体燃料が貯蔵されている燃料貯蔵タンク61,62が切替可能に接続されている。また、燃料供給系は、
図1(b)に示すように、燃料補助タンク10、送油ポンプ(第1送液手段)53、噴燃ポンプ(第2送液手段)54および調整弁51,52を備えている。
【0026】
なお、燃料貯蔵タンク61,62には、第1種液体燃料、或いは該第1種液体燃料とは粘度または比重の異なる第2種液体燃料が貯蔵されており、燃料貯蔵タンク61,62からの燃料は、一旦送油ポンプ53により補助タンク10へ供給され、さらに噴燃ポンプ54により適正圧力まで上げた後にボイラ用燃料として供給されることになる。ここで、粘度または比重の異なる異種液体燃料(第1種液体燃料および第2種液体燃料)には、原油および重油(A重油、B重油またはC重油)が含まれる。
【0027】
燃料補助タンク10は、底面10aに固定され、送入口13を介して送油ポンプ53から圧送される燃料の噴射流(Q1a)を当該燃料補助タンク10の側周10cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q1b)に変換する邪魔部材15と、側周10cの内壁面に固定され、邪魔部材15により流向が変えられた燃料の噴射流(Q1a)を側周10cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q1b)となるよう誘導する第1誘導部材16,17と、を備えている。なお、
図1中、10bは燃料補助タンク10の上面、11は燃料補助タンク10内の燃料100の燃料レベルを計測する燃料計(フロート式レベル計)、12はヒータの加熱管、14は送出口であり、12aは加熱管12内に流れる加熱蒸気の方向を示す。
【0028】
邪魔部材15は、燃料の噴射流(Q1a)に対して凹状に湾曲する湾曲面を備えて、送出口14近傍の底面10aに取り付け部材(不図示)を介して固定されている。なお、
図1(a)に示すように、燃料補助タンク10の底面10a近傍(底面10aから所定高さの位置)にはヒータの加熱管12が張り巡らされており、邪魔部材15は、該加熱管12を避けて、或いは該加熱管12を跨いで取り付けられることになる。ここで、加熱管12を跨いで取り付ける場合には、邪魔部材15の該当箇所に切り欠き部を形成するようにすれば良い。また、邪魔部材15の取り付けは、燃料補助タンク10の底部であればよく、邪魔部材15を底面10aから浮いた構造として、該底部の側周10cの内壁面に固定されて邪魔部材15まで延びて形成される取り付け部材を介して固定されるようにしても良い。
【0029】
より具体的に、邪魔部材15は略直角三角形状の平板を湾曲させた部材で形成され、燃料の噴射流方向(Q1a)に湾曲面を見たときに、該湾曲面が一定の距離を隔てて送出口14を覆う位置に固定される。略直角三角形状の平板を湾曲させることで、邪魔部材15の上辺を立体的に上向き螺旋形状として上昇旋回流を誘起させ、また、邪魔部材15の湾曲面が一定の距離を隔てて送出口14を覆うようにすることで、燃料の噴射流(Q1a)が直接的に送出口14に流れるのを防ぐようにしたものである。
【0030】
また、邪魔部材15の湾曲面が送出口14側に(全体としては邪魔部材15の湾曲面が側周10cの内壁面側に)、一定の傾斜角度で傾くように取り付けられている。すなわち、邪魔部材15の湾曲面で旋回流を誘起させ、邪魔部材15の湾曲面の傾斜角度で上昇流を誘起させるものである。
【0031】
また、
図1(a)に示すように、邪魔部材15の湾曲面は、旋回流の方向側と逆方向側とで異なる曲率(即ち、「旋回流の方向側の曲率半径<旋回流の逆方向側の曲率半径」)を持つように形成されている。燃料の噴射流(Q1a)が邪魔部材15の湾曲面に衝突した後に、旋回流の方向側と逆方向側とにそれぞれ流れが誘起されるが、燃料の噴射流(Q1a)を上昇旋回流(Q1b)に変換することを主目的とする邪魔部材15にとって、旋回流の逆方向側に誘起される流れは変換損失に相当し、旋回流の逆方向側に誘起される流れを極力少なくするためである。
【0032】
なお、邪魔部材15の湾曲面の曲率および傾斜角度は、経験的な知見またはシミュレーション実験によって予め設定される。特に、湾曲面の傾斜角度は上昇旋回流(Q1b)の上昇角度をほぼ決定付けることから、予めシミュレーション実験を行うのが望ましく、燃料補助タンク10の形状寸法、送油ポンプ53の最大定格送圧、燃料の粘度、温度等を所定のモデル式にパラメータとして与えて、最も適正な上昇旋回流(Q1b)の上昇角度(例えば、上昇旋回流(Q1b)が最も高くまで到達するときの上昇角度)を求め、該上昇角度に基づき湾曲面の傾斜角度を設定することになる。
【0033】
また、邪魔部材15により燃料の噴射流(Q1a)を直接的に受け止める構造であることから、邪魔部材15およびその固定には燃料の連続的な噴射流によっても変形しないだけの強度が必要であり、邪魔部材15および取り付け部材の材料は、燃料補助タンク10の壁面と同等の材料とするのが望ましい。なお、邪魔部材15の固定手法として、一端が底面10aまたは側周10cに固定された支え部材で邪魔部材15を補強する構造としても良い。
【0034】
また、第1誘導部材16,17は、長手方向の側面が側周10cの内壁面と同一の曲率を持つ板状部材で形成され、長手方向に所定の傾斜角度を付けて、側周10cの内壁面に取り付け部材(不図示)を介して固定されている。第1誘導部材16,17の傾斜角度は、邪魔部材15の湾曲面の傾斜角度とほぼ同等の角度に設定され、第1誘導部材16,17の取り付け位置は、邪魔部材15の寸法形状および取り付け位置に応じて予め設定される。なお、第1誘導部材16,17の材料は邪魔部材15と同等である。
【0035】
以上説明したように、この実施の形態1の燃料補助タンク10では、底面10aに固定され、送入口13を介して送油ポンプ53から圧送される燃料の噴射流(Q1a)を当該燃料補助タンク10の側周10cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q1b)に変換する邪魔部材15を備えた構造であるので、燃料補助タンク10に燃料を供給するときには、常時、燃料補助タンク10内の燃料100に上昇旋回流が誘起され、送油ポンプ53から圧送される燃料が自然攪拌するので、燃料補助タンク10内の燃料100の均一化を図ることができる。特に、異種燃料間で燃料切替を行う場合に、従来行っていた特別な操作(レベルスイング)を必要とせずに、燃料転換を行うことができる。また、燃料切替時の発電機出力抑制等の制約も一切無く、何時でも燃料切替を実施できることから、燃料運用の幅を広げることができる。
【0036】
また、この実施の形態1では、邪魔部材15は、燃料の噴射流(Q1a)に対して凹状に湾曲する湾曲面を備えて、燃料の噴射流方向(Q1a)に湾曲面を見たときに、該湾曲面が送出口14を覆う位置の底面10aに固定され、湾曲面が送出口14側に一定の傾斜角度で傾くように取り付けられているので、邪魔部材15の湾曲面で旋回流が誘起され、該湾曲面の傾斜角度で上昇流が誘起されることから、圧送される燃料の噴射流(Q1a)を、効率的に側周10cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q1b)に変換することが可能となる。
【0037】
さらに、この実施の形態1では、側周10cの内壁面に固定され、邪魔部材15により流向が変えられた燃料の噴射流(Q1a)を側周10cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q1b)となるよう誘導する第1誘導部材16,17と、を備えているので、側周10cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q1b)の流路における損失を低減して、効率的な燃料の自然攪拌を実現することができる。
【0038】
また、このように構造のシンプルな邪魔部材15および第1誘導部材16,17の取り付けのみにより、タンク貯蔵量に影響を与えることなく効率的な燃料の自然攪拌を実現することができるので、装置コスト増を抑制しつつ、相対的に短時間・低労力で燃料攪拌が可能な燃料補助タンクを実現できる。さらに、既設の燃料補助タンクに邪魔部材15および第1誘導部材16,17を付設する場合でも、簡単な改修工事で済み、装置コスト増を抑制することができる。
【0039】
(変形例)
図2(a)は、実施の形態1の燃料補助タンク10における邪魔部材15の変形例1を例示する斜視図である。変形例1の邪魔部材15Aは、燃料の噴射流(Q1a)が側周10cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q1b)となるよう誘導する第2誘導部材15Aa〜15Acを、湾曲面に取り付けた構成である。第2誘導部材15Aa〜15Acは、長手方向の側面が邪魔部材15Aの湾曲面と同一の曲率を持つ板状部材で形成され、長手方向に所定の傾斜角度を付けて、湾曲面に固定されている。ここで、第2誘導部材15Aa〜15Acの傾斜角度は、邪魔部材15Aの上辺の傾斜角度とほぼ同等の角度に設定される。このように、邪魔部材15Aに第2誘導部材15Aa〜15Acを取り付けた構造とすることにより、邪魔部材15Aで誘起される上昇旋回流の流路損失を低減して、効率的な燃料の自然攪拌を実現することができる。
【0040】
また、
図2(b)は、実施の形態1の燃料補助タンク10における邪魔部材15の変形例2を例示する斜視図である。変形例2の邪魔部材15Bは、湾曲面に、邪魔部材15Aの上辺の傾斜に沿った山部15Ba,15Bbおよび谷部を設けて、燃料の噴射流(Q1a)が側周10cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q1b)となるよう誘導するものである。これにより、邪魔部材15Bで誘起される上昇旋回流の流路損失を低減して、効率的な燃料の自然攪拌を実現することができる。
【0041】
さらに、
図2(c)は、実施の形態1の燃料補助タンク10における邪魔部材15の変形例3を例示する斜視図である。実施の形態1の邪魔部材15では、湾曲面の水平方向の曲率で旋回流を誘起させ、湾曲面の傾斜角度で上昇流を誘起させるようにしたが、変形例3の邪魔部材15Cでは、湾曲面15Caに対して水平方向の曲率および垂直方向の曲率を持たせた構造とし、湾曲面の水平方向の曲率で旋回流を誘起させ、湾曲面の垂直方向の曲率および邪魔部材15Cの傾斜角度で上昇流を誘起させるようにしている。これにより、邪魔部材15Cで誘起される上昇旋回流の流路損失を低減して、効率的な燃料の自然攪拌を実現することができる。
【0042】
(実施の形態2)
次に、
図3はこの発明の実施の形態2に係る燃料補助タンク20の説明図であり、
図3(a)は上方から見た燃料補助タンク20の断面図でタンク内の構造および燃料の流れを例示し、
図3(b)は燃料供給系における燃料補助タンク20およびその周辺の装置構成を示すと共に、側方から見た燃料補助タンク20の断面図でタンク内の構造および燃料の流れを例示する。この実施の形態2の燃料補助タンク20は、邪魔部材の構造および取り付け位置、並びに、第1誘導部材の構造および取り付け位置について、実施の形態1の燃料補助タンク10と異なり、それら以外については実施の形態1と同等である。
【0043】
燃料補助タンク20は、底面20aに固定され、送入口23を介して送油ポンプ53から圧送される燃料の噴射流(Q2a)を当該燃料補助タンク20の側周20cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q2b)に変換する邪魔部材25と、側周20cの内壁面に固定され、邪魔部材25により流向が変えられた燃料の噴射流(Q2a)を側周20cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q2b)となるよう誘導する第1誘導部材26,27と、を備えている。
【0044】
邪魔部材25は、燃料の噴射流(Q2a)に対して凹状に湾曲する第1湾曲面と、側周20cの内壁面と略並行して凸状に湾曲する第2湾曲面とが、水平方向の断面形状が略逆S字状となるように連結された部材を、送入口23近傍の底面20aに固定して形成され、第1湾曲面および第2湾曲面が側周20cの内壁面とは逆の側に傾いて形成されている。
【0045】
なお、邪魔部材25は取り付け部材(不図示)を介して底面20aに固定されるが、
図2(a)に示すように、燃料補助タンク20の底面20a近傍(底面20aから所定高さの位置)にはヒータの加熱管12が張り巡らされており、邪魔部材25は、該加熱管12を避けて、或いは該加熱管12を跨いで取り付けられることになる。ここで、加熱管12を跨いで取り付ける場合には、邪魔部材25の該当箇所に切り欠き部を形成するようにすれば良い。また、邪魔部材25の取り付けは、燃料補助タンク20の底部であればよく、邪魔部材25を底面20aから浮いた構造として、該底部の側周20cの内壁面に固定されて邪魔部材25まで延びて形成される取り付け部材を介して固定されるようにしても良い。
【0046】
また、邪魔部材25の第1湾曲面は、主として燃料の噴射流(Q2a)の流れの向きを側周10cの内壁面と略並行する流れに変える機能を持ち、第1湾曲面で向きが変えられた燃料の噴射流(Q2a)が側周20cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q2b)となるように、第2湾曲面により誘導する構造である。したがって、第1湾曲面および第2湾曲面の傾斜角度については、「第1湾曲面の傾斜角度<第2湾曲面の傾斜角度」とし、主として第2湾曲面に傾斜角度を持たせるようにするのが望ましい。
【0047】
なお、邪魔部材25の第1湾曲面および第2湾曲面それぞれの曲率および傾斜角度は、経験的な知見またはシミュレーション実験によって予め設定される。特に、第2湾曲面の傾斜角度は上昇旋回流(Q2b)の上昇角度をほぼ決定付けることから、予めシミュレーション実験を行うのが望ましく、燃料補助タンク20の形状寸法、送油ポンプ53の最大定格送圧、燃料の粘度、温度等を所定のモデル式にパラメータとして与えて、最も適正な上昇旋回流(Q2b)の上昇角度(例えば、上昇旋回流(Q2b)が最も高くまで到達するときの上昇角度)を求め、該上昇角度に基づき第2湾曲面の傾斜角度を設定することになる。
【0048】
また、邪魔部材25の第1湾曲面により燃料の噴射流(Q2a)を直接的に受け止める構造であることから、邪魔部材15およびその固定には燃料の連続的な噴射流によっても変形しないだけの強度が必要であり、邪魔部材25および取り付け部材の材料は、燃料補助タンク20の壁面と同等の材料とするのが望ましい。なお、邪魔部材25の固定手法として、一端が底面20aまたは側周20cに固定された支え部材で邪魔部材25を補強する構造としても良い。
【0049】
また、第1誘導部材26,27は、長手方向の側面が側周20cの内壁面と同一の曲率を持つ板状部材で形成され、長手方向に所定の傾斜角度を付けて、側周20cの内壁面に取り付け部材(不図示)を介して固定されている。第1誘導部材26,27の傾斜角度は、邪魔部材25の第2湾曲面の傾斜角度とほぼ同等の角度に設定され、第1誘導部材26,27の取り付け位置は、邪魔部材25の寸法形状および取り付け位置に応じて予め設定される。なお、第1誘導部材26,27の材料は邪魔部材25と同等である。
【0050】
以上説明したように、この実施の形態2の燃料補助タンク20では、底面20aに固定され、送入口23を介して送油ポンプ53から圧送される燃料の噴射流(Q2a)を当該燃料補助タンク20の側周20cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q2b)に変換する邪魔部材25を備えた構造であるので、燃料補助タンク20に燃料を供給するときには、常時、燃料補助タンク20内の燃料100に上昇旋回流が誘起され、送油ポンプ53から圧送される燃料が自然攪拌するので、燃料補助タンク20内の燃料100の均一化を図ることができる。特に、異種燃料間で燃料切替を行う場合に、従来行っていた特別な操作(レベルスイング)を必要とせずに、燃料転換を行うことができる。また、燃料切替時の発電機出力抑制等の制約も一切無く、何時でも燃料切替を実施できることから、燃料運用の幅を広げることができる。
【0051】
また、この実施の形態2では、邪魔部材25は、燃料の噴射流(Q2a)に対して凹状に湾曲する第1湾曲面と、側周20cの内壁面と略並行して凸状に湾曲する第2湾曲面とが、水平方向の断面形状が略逆S字状となるように連結された部材を、送入口23近傍の底面20aに固定して形成され、第1湾曲面および第2湾曲面が側周20cの内壁面とは逆の側に傾いて形成されており、第1湾曲面で向きが変えられた燃料の噴射流(Q2a)が側周20cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q2b)となるように、第2湾曲面により誘導されることから、圧送される燃料の噴射流(Q2a)を、効率的に側周20cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q2b)に変換することが可能となる。
【0052】
さらに、この実施の形態2では、側周20cの内壁面に固定され、邪魔部材25により流向が変えられた燃料の噴射流(Q2a)を側周20cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q2b)となるよう誘導する第1誘導部材26,27と、を備えているので、側周20cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q2b)の流路における損失を低減して、効率的な燃料の自然攪拌を実現することができる。
【0053】
また、このように構造のシンプルな邪魔部材25および第1誘導部材26,27の取り付けのみにより、タンク貯蔵量に影響を与えることなく効率的な燃料の自然攪拌を実現することができるので、装置コスト増を抑制しつつ、相対的に短時間・低労力で燃料攪拌が可能な燃料補助タンクを実現できる。さらに、既設の燃料補助タンクに邪魔部材25および第1誘導部材26,27を付設する場合でも、簡単な改修工事で済み、装置コスト増を抑制することができる。
【0054】
(実施の形態3)
図4はこの発明の実施の形態3に係る燃料補助タンク20の説明図であり、
図4(a)は上方から見た燃料補助タンク20の断面図でタンク内の構造および燃料の流れを例示し、
図4(b)は燃料供給系における燃料補助タンク20およびその周辺の装置構成を示すと共に、側方から見た燃料補助タンク20の断面図でタンク内の構造および燃料の流れを例示する。この実施の形態3の燃料補助タンク20は、邪魔部材25の第2湾曲面に第2誘導部材25Aa,25Abを備える点、並びに、燃料補助タンク20の側周10cに加速手段28,29を備える点について、実施の形態2の燃料補助タンク20と異なり、それら以外については実施の形態2と同等である。
【0055】
まず、邪魔部材25の第2湾曲面には第2誘導部材25Aa,25Abが取り付けられ、第1湾曲面で向きが変えられた燃料の噴射流(Q2a)が側周20cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q2b)となるように、第2湾曲面および第2誘導部材25Aa,25Abにより誘導されることから、圧送される燃料の噴射流(Q2a)を、より効率的に側周20cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q2b)に変換することが可能となる。
【0056】
また、燃料補助タンク20の側周10cの内壁面に、モータ29の駆動により回転するプロペラ28が取り付けられている。なお、加速手段(プロペラ28およびモータ29)の取り付け位置は、プロペラ28の回転によって発生する流れの向きが側周20cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q2b)の流れに重なるように設定するのが望ましい。これにより、側周20cの内壁面に沿った上昇旋回流(Q2b)の流れを加速することができる。
【0057】
燃料補助タンク20の貯蔵容量が大きく、高粘度燃料の場合などでは、送油ポンプ53の最大定格送圧による燃料の噴射流だけでは、上昇旋回流(Q2b)が燃料100の上層部まで到達し得ないケースも想定される。このような場合であっても、補助的に加速手段(プロペラ28およびモータ29)を活用することで、上昇旋回流(Q2b)を加速して燃料100の上層部まで到達させることができれば、燃料の攪拌を確実に行うことができるようになる。
【0058】
なお、実施の形態2に加速手段(プロペラ28およびモータ29)を追加する変形は、上記実施の形態1に対しても行うことが可能である。
【0059】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記実施の形態1では、邪魔部材15を送出口14近傍の底面10aに固定したが、同一構造の邪魔部材15を底面10aの略中央位置に固定し、第1誘導部材16の長さを短くした構造にしても、上記実施の形態1とほぼ同様の効果を奏することができる。
【0060】
また、上記実施の形態2では、邪魔部材25を送入口23近傍の底面20aに固定したが、同一構造の邪魔部材25を底面20aの略中央位置に固定し、第1誘導部材26の長さを短くした構造にしても、上記実施の形態2とほぼ同様の効果を奏することができる。