特許第6733260号(P6733260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6733260
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】二酸化炭素の分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20200716BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20200716BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20200716BHJP
【FI】
   B01D53/22
   B01D71/64
   C01B32/50
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-66949(P2016-66949)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-176986(P2017-176986A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】叶木 朝則
(72)【発明者】
【氏名】福永 謙二
(72)【発明者】
【氏名】吉永 利宗
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06565626(US,B1)
【文献】 特開平04−180812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22、61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含む混合ガスを芳香族ポリイミドから構成されている高分子ガス分離膜の一方の面に接触させ、該ガス分離膜を透過した二酸化炭素を、該ガス分離膜の他方の面から分離する、二酸化炭素の分離方法であって、
二酸化炭素を含む前記混合ガスが、水蒸気を0.005体積%以上0.021体積%以下含む二酸化炭素の分離方法。
【請求項2】
前記混合ガスが、二酸化炭素及び炭化水素ガスを含むものである請求項1に記載の二酸化炭素の分離方法。
【請求項3】
水蒸気を0.2体積%以上含み、且つ二酸化炭素を含む混合ガスを除湿して水蒸気を0.005体積%以上0.021体積%以下に制御した後、前記高分子ガス分離膜に供給する請求項1又は2に記載の二酸化炭素の分離方法
【請求項4】
水蒸気の濃度が0.001体積%以下であり、且つ二酸化炭素を含む混合ガスを加湿して水蒸気を0.005体積%以上0.021体積%以下に制御した後、前記高分子ガス分離膜に供給する請求項1又は2に記載の二酸化炭素の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含む混合ガスからの分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる2種類以上のガスを含む混合ガスを各ガスに分離する方法として、膜に対するガスの透過速度の差を利用した膜分離法が知られている。この方法では、透過ガス及び/又は非透過ガスを回収することにより、目的ガスである高純度の高透過性ガス及び/又は高純度の低透過性ガスを得ることができる。
【0003】
特許文献1には、所定の主成分ガスに、二酸化炭素及び水蒸気が含まれている原料ガスから二酸化炭素を選択的に分離する装置が記載されている。この装置においては、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体ゲル膜に2,3−ジアミノプロピオン酸を添加して形成されたCO促進輸送膜を、分離膜として用いている。そして原料ガスを100℃以上の温度に加熱した状態で、該原料ガスの圧力を、該原料ガス中の水蒸気飽和度が特定の範囲になるように調整して前記装置に供給している。
【0004】
ところで二酸化炭素の分離に関し、非特許文献1には、ポリイミド膜を二酸化炭素の分離膜として使用した場合、該ポリイミド膜の二酸化炭素透過性能が、2年間で20%低下すると報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−036464号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Y. Iwakami, Abstracts (Oral Presentations) of International Congress on Membranes, and Membrane Processes (August, 1993, Heiderberg).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、CO促進輸送膜を用いたガス分離法である。一般的にCO促進輸送膜は、膜へ導入する原料ガスに水蒸気を同伴させるが、これは、促進輸送膜のキャリアとCO、更には水蒸気が反応し、透過が促進されるためであり、通常水蒸気濃度が高いほど透過が促進される。特許文献1では、100℃以上の高温で、50%と多量の水蒸気を原料ガスに同伴させており、本発明の思想とは大きく異なる。また、原料ガスの供給圧力を精密に調整する必要があり、しかも供給温度も調整する必要がある。このように、同文献に記載の技術は、工業的規模で長期間にわたる実施を行うには経済的に有利とは言えない。また、非特許文献1に記載のとおり、ガス分離膜としてポリイミドからなるものを用いた場合には、二酸化炭素の透過性能を長期間にわたって維持することが容易でない。
【0008】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る二酸化炭素の分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決すべく本発明者は鋭意検討した結果、意外にも、分離対象となる混合ガス中に、特定量の水蒸気を共存させておくと、ガス分離膜の二酸化炭素透過性が長期間にわたり維持されることを知見した。
【0010】
本発明は前記の知見に基づきなされたものであり、二酸化炭素を含む混合ガスを高分子ガス分離膜の一方の面に接触させ、該ガス分離膜を透過した二酸化炭素を、該ガス分離膜の他方の面から分離する、二酸化炭素の分離方法であって、
二酸化炭素を含む前記混合ガスが、水蒸気を0.001体積%以上0.2体積%以下含む二酸化炭素の分離方法を提供することにより前記の課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長期間にわたる使用でも二酸化炭素の分離透過能の低下が抑制され、実使用上非常に有用な二酸化炭素の分離方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例及び比較例における二酸化炭素の透過速度と処理時間との関係を示すグラフである。
図2図2は、実施例及び比較例における分離係数(P’CO2/P’CH4)と処理時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明のガス分離方法においては、分離の対象となる混合ガスとして、二酸化炭素を含むガスを用いる。この混合ガスに含まれる二酸化炭素以外のガスとしては、種々のもの(ただし水蒸気は除く)を用いることができる。例えばメタン等の炭化水素ガス、窒素ガス、空気などを用いることができる。これら二酸化炭素以外のガスは、混合ガス中に1種又は2種以上含まれ得る。混合ガスが例えば天然ガスやバイオガス等である場合には、該混合ガスはメタン等の炭化水素ガスと二酸化炭素を含むものであることが好ましい。
【0014】
混合ガスの分離には、例えば高分子材料からなるガス分離膜が用いられる。ガス分離膜は、例えばフィルム状の平膜や、中空繊維状の中空糸膜等の形態で用いることができる。特に、ガス分離膜として中空糸膜を用いて、これを複数本束ねた中空糸膜エレメントに構成して用いることが、処理量を高める点から好ましい。
【0015】
ガス分離膜を構成する高分子材料としては、二酸化炭素の選択的な透過能を有するものが好ましく用いられる。そのような高分子材料としては、例えばポリイミド、ポリアミド、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、シリコンゴム、パーフルオロシリコンゴムなどが挙げられる。特に、合成時に脱水縮合反応を伴い、脱水縮合による結合を有する高分子材料をガス分離膜として用いた場合に、本発明の効果が一層顕著なものとなる。この観点から、ガス分離膜としてポリイミドを用いることが好ましい。
【0016】
ガス分離膜としてポリイミドを用いる場合には、テトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とを用いてポリアミド酸を合成し、このポリアミド酸を熱処理して脱水・イミド化することで得ることができる。
【0017】
テトラカルボン酸成分としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物や芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いることができる。一方、ジアミン成分としては、脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンを用いることができる。
【0018】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,3’,4,4’ −テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸−1,2:4,5−二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3;5,6−テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。芳香族テトラカルボン酸二無水物は、好ましくは2〜3個の芳香族環を有するものが好ましく、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ビス(無水フタル酸)(なお、この化合物は2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物ともいう。)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0019】
脂肪族ジアミンとしては、trans−1,4−ジアミノシクロへキサン、cis−1,4−ジアミノシクロへキサン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、重量平均分子量が500以下のポリオキシプロピレンジアミンなどが挙げられる。一方、芳香族ジアミンとしては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4−トルエンジアミン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メタン、2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,7−ジアミノ−2,8−ジメチルジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシドを主成分とし、メチル基の位置が異なる異性体3,7−ジアミノ−2,6−ジメチルジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、3,7−ジアミノ−4,6−ジメチルジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシドを含む混合物などが挙げられる。
【0020】
本発明においては、ポリイミドとして、特に芳香族ポリイミドを用いることが特に好ましい。芳香族ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミン成分とを用いて得ることができる。
【0021】
ポリイミドからなるガス分離膜を用いる場合には、該ガス分離膜として非対称膜を用いてもよい。非対称膜は一般に、目的とするガスの分離を行う緻密な構造のスキン層と、それを支える多孔質層の2層構造を有している。
【0022】
本発明は、ガス分離膜を用いて、二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に分離するときに、該混合ガス中に水蒸気を含有させる点に特徴の一つを有する。脱水縮合による結合を有する高分子材料をガス分離膜として用いた場合、一般に、処理対象となる混合ガス中に水蒸気が存在していると、その水蒸気によって前記の結合が加水分解で開裂してしまい、高分子材料の各種の特性が低下してしまうと考えられてきた。したがって、処理対象となる混合ガス中には水蒸気を極力含めないようにすることが通常であった。このような従来の技術常識に対して、本発明者らは意外にも、処理対象となる混合ガス中に、特定の量の水蒸気を共存させると、高分子材料の特性の低下を伴わずに、長期間にわたる使用でも二酸化炭素の分離透過能の低下が抑制されることを知見した。この理由は、次のとおりであると本発明者は考えている。二酸化炭素は高分子材料に対して溶解性の高いガスであることが知られている。ガス分離膜を用いた混合ガスからの二酸化炭素の選択的透過分離においては、効率を高めるために、ガス分離膜に対して混合ガスが高圧で作用する。このことと、二酸化炭素が溶解性の高いガスであることとに起因して、高分子材料が可塑化ないしそれに近い現象が起こり、ガス分離膜の分離層の構造が変化してしまう。これが原因で、長期間にわたり二酸化炭素の分離を行うと、ガス分離膜の二酸化炭素分離透過能が漸次低下すると考えられる。これに対して、本発明に従い、混合ガス中に二酸化炭素とともに水蒸気を存在させると、二酸化炭素に起因する分離層の構造変化が水蒸気によって抑制され、その結果、ガス分離膜の二酸化炭素分離透過能の低下が抑制されると考えられる。
【0023】
上述の利点を更に顕著なものとする観点から、混合ガス中に存在させる水蒸気の割合は、0.001体積%以上0.2体積%以下とすることが好ましく、0.005体積%以上0.2体積%以下とすることが更に好ましく、0.01体積%以上0.2体積%以下とすることが一層好ましい。
【0024】
混合ガスにおける水蒸気の割合は種々の方法で調整することができる。例えば、(a)水蒸気を0.2体積%以上含み、且つ二酸化炭素を含む混合ガスを除湿して、水蒸気を0.001体積%以上0.2体積%以下に制御することができる。あるいは(b)水蒸気の濃度が0.001体積%以下であり、且つ二酸化炭素を含む混合ガスを加湿して水蒸気を0.001体積%以上0.2体積%以下に制御することができる。なお「水蒸気の濃度が0.001体積%以下」とは、混合ガスが水蒸気を実質的に含まない場合も包含する。このようにして水蒸気の割合が調整された混合ガスを、上述したガス分離膜に供給して二酸化炭素の分離を行えばよい。(a)の場合、除湿方法に特に制限はなく、これまで知られている方法を適宜採用することができる。(b)の場合、加湿方法に特に制限はなく、これまで知られている方法を適宜採用することができる。
【0025】
二酸化炭素を含む混合ガスを高分子ガス分離膜の一方の面に接触させるときの該混合ガスの温度に特に制限はない。一般には、−30℃以上100℃以下、特に0℃以上80℃以下の温度範囲の混合ガスを接触させることができる。
【0026】
二酸化炭素を含む混合ガスを高分子ガス分離膜の一方の面に接触させるときの該混合ガスの圧力にも特に制限はない。一般には、ゲージ圧で表して0.1MPaG以上20MPaG以下、特に1MPaG以上10MPaG以下の圧力範囲の混合ガスを接触させることができる。
【0027】
以上のとおり、本発明によれば、ガス分離膜を用いて、二酸化炭素を含む混合ガスを長期間にわたり分離しても、二酸化炭素の分離透過能の低下が抑制される。本発明者が更に検討した結果、本発明に従い混合ガス中に特定の割合で水蒸気を含有させた場合であっても、分離係数α(つまり二酸化炭素と、混合ガス中に含まれる他のガスとの透過速度の比)も低下しないことが判明した。このことは、二酸化炭素の分離透過を長期間にわたって安定的に行えることを意味している。
【0028】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず、本発明の効果が損なわれない範囲において種々の実施形態が可能である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0030】
〔実施例1〕
(1)中空糸膜エレメントの準備
中空糸膜として、芳香族ポリイミドを材質とする非対称膜を用いた。この芳香族ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸成分としてs−BPDAを60mol%,6FDAを40mol%を用い、芳香族ジアミン成分としてTSNを60mol%,DABAを40mol%を用い、常法に従い合成されたものである。中空糸膜は、その内径が130μmであり、外形が280μmであった。また、この中空糸膜は非対称構造を有するものであった。この中空糸膜を3本束にし、その両端をエポキシ樹脂で固定して、長さ5mmの中空糸エレメントを得た。
なお、前記の略称の正式名称は以下のとおりである。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ビス(無水フタル酸)(なお、この化合物は2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物ともいう。)
TSN:3,7−ジアミノ−2,8−ジメチルジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシドを主成分とし、メチル基の位置が異なる異性体3,7−ジアミノ−2,6−ジメチルジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、3,7−ジアミノ−4,6−ジメチルジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシドを含む混合物
DABA:3,5−ジアミノ安息香酸
【0031】
(2)混合ガスからの二酸化炭素の分離
前記の(1)で得られた中空糸膜エレメントをケーシング内に収容し、中空糸膜モジュールとした。この中空糸膜モジュールを用いて、二酸化炭素及びメタンを含む混合ガスからの二酸化炭素の分離を行った。混合ガス中の二酸化炭素とメタンとの体積比は40vol%:60vol%に設定した。この混合ガスに、15℃の飽和水蒸気を接触させて、混合ガス中に水蒸気を含有させた。混合ガス中の水蒸気の割合は0.021vol%であった。この混合ガスを、60℃、8MPaGの条件で中空糸膜モジュールに供給し、中空糸膜の外側から内側に向けてガスを透過させた。混合ガスの供給量は75ml/minとした。中空糸膜を透過してきたガスの透過流量、供給圧、及び有効面積から二酸化炭素及びメタンそれぞれについて透過速度P’CO2,P’CH4を算出した。また、分離係数α、すなわちP’CO2/P’CH4を算出した。測定は、1000時間にわたって行った。その結果を図1及び図2に示す。なお、図1に示す透過速度P’CO2のグラフにおいては、本実施例の結果と、後述する各比較例の結果との対比を行いやすくするために、透過速度P’CO2を規格化してある。
【0032】
〔比較例1〕
本比較例においては、二酸化炭素及びメタンを含む混合ガスに水蒸気を含有させなかった。これ以外は実施例1と同様にして二酸化炭素の分離を行った。その結果を図1及び図2に示す。
【0033】
〔比較例2〕
本比較例においては、二酸化炭素及びメタンを含む混合ガスに、60℃の飽和水蒸気を接触させて、混合ガス中に水蒸気を含有させた。混合ガス中の水蒸気の割合は0.24vol%であった。これ以外は実施例1と同様にして二酸化炭素の分離を行った。その結果を図1及び図2に示す。
【0034】
〔考察〕
図1に示す実施例1と比較例1との結果の対比から明らかなとおり、分離の初期段階においては、実施例1よりも比較例1の方が、透過速度P’CO2が若干高いことが判る。これに対して分離処理が600時間を超えると、比較例1の透過速度P’CO2が低下し始め、実施例1の透過速度P’CO2を下回るようになることが判る。特筆すべきは、実施例1の透過速度P’CO2が、処理時間が1000時間を経過しても変化がないことである。比較例2は、処理の初期段階において、透過速度P’CO2の急激な低下が観察された。また、処理時間が1000時間に達する前に、膜の劣化が生じて測定を継続できなかった。
【0035】
一方、図2に示す結果から明らかなとおり、実施例1及び各比較例のいずれにおいても、二酸化炭素とメタンとの分離係数は、1000時間を経過しても変化がないことが判る。
図1
図2