(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6733263
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/123 20060101AFI20200716BHJP
F16D 13/64 20060101ALI20200716BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20200716BHJP
F16H 45/02 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
F16F15/123 A
F16D13/64 A
F16D7/02 A
F16H45/02 Y
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-70176(P2016-70176)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-180713(P2017-180713A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】今井 保介
(72)【発明者】
【氏名】山住 淳志
(72)【発明者】
【氏名】曽我 義孝
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−117595(JP,A)
【文献】
特開2011−226572(JP,A)
【文献】
特開2014−181753(JP,A)
【文献】
特開2013−024364(JP,A)
【文献】
特開2009−085318(JP,A)
【文献】
特開2012−193766(JP,A)
【文献】
実開昭51−066653(JP,U)
【文献】
実開昭53−090163(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/123
F16D 7/02
F16D 13/64
F16H 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材から伝達されるトルク変動を吸収するダンパ部材と、
前記入力部材と出力部材との間で伝達されるトルクを制限するトルクリミッタと、
を備え、
前記トルクリミッタは、
前記入力部材と一体回転するライニングプレートと、
前記ライニングプレートを覆うリミッタカバーと、
前記ライニングプレートと前記リミッタカバーとの間に配置される摩擦材プレートと、
を備え、
前記摩擦材プレートの外周には、係止凹部が設けられ、
前記リミッタカバーには、前記摩擦材プレートの外周に対応する位置において前記係止凹部を露出させる切欠きが設けられ、前記切欠きの縁部に前記係止凹部に係止する爪部が設けられている、ダンパ装置。
【請求項2】
入力部材から伝達されるトルク変動を吸収するダンパ部材と、
前記入力部材と出力部材との間で伝達されるトルクを制限するトルクリミッタと、
を備え、
前記トルクリミッタは、
前記入力部材と一体回転するライニングプレートと、
前記ライニングプレートを覆うリミッタカバーと、
前記ライニングプレートと前記リミッタカバーとの間に配置される摩擦材プレートと、
を備え、
前記摩擦材プレートの外周には、係止凹部が設けられ、
前記リミッタカバーには、前記係止凹部に係止する爪部が設けられ、
前記リミッタカバーの外周部には、前記リミッタカバーの径方向内側に向けて凹んだ逃げ凹部が形成され、前記逃げ凹部に、前記リミッタカバーを固定するためのボルトが挿通されるボルト挿通孔が設けられている、ダンパ装置。
【請求項3】
前記トルクリミッタは、
前記ライニングプレートを挟んで前記リミッタカバーと反対側に配置され、前記リミッタカバーに固定されるサポートプレートと、
前記サポートプレートと前記ライニングプレートとの間に配置される第2の摩擦材プレートと、
前記サポートプレートと前記第2の摩擦材プレートとの間に配置されるプレッシャプレートと、
前記サポートプレートと前記プレッシャプレートとの間に配置され、前記プレッシャプレートを前記リミッタカバーに向けて付勢する付勢部材と、
を備え、
前記第2の摩擦材プレートの外周には、第2の係止凹部が設けられ、
前記プレッシャプレートには、前記第2の係止凹部に係止する第2の爪部が設けられている、請求項1または請求項2に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクリミッタ付きのダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トルクリミッタ付きダンパ装置は、例えば、原動機の出力軸と伝動装置の動力伝達軸との間に介装される。トルクリミッタ付きダンパ装置は、原動機の出力軸と伝動装置の動力伝達軸との間で伝達されるトルクを制限するトルクリミッタとしての機能と、原動機の出力軸と伝動装置の動力伝達軸との間の捻り振動を吸収するダンパとしての機能を備えている。
【0003】
従来、トルクリミッタは、ダンパの入力側部材に連結されるとともにトルクリミッタの出力側部材として機能する摩擦ディスクと、摩擦ディスクをはさんでその両側に配置されてトルクリミッタの入力側部材として機能する相対回転不能な一対の挟持プレートと、一対の挟持プレートを摩擦ディスクに押し付ける付勢手段と、付勢手段にセット荷重を負荷した状態でその状態を一方の挟持プレートとともに自己保持していて、フライホイールに対する取付面として機能するバックアッププレートを備えている。そして、摩擦ディスクには、円環プレート状の摩擦材(摩擦材プレート)がリベットで固定される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−226572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のトルクリミッタ付きダンパ装置においては、摩擦材プレートを固定するためのリベットの挿通孔(リベット挿通孔)を摩擦材プレートと摩擦ディスクに形成する必要があり、このようなリベット挿通孔を形成するためには高い加工精度(孔の径や位置の精度)が必要である。したがって、摩擦材プレートを製造するときに同時加工でリベット挿通孔を形成することは困難であり、リベット挿通孔を形成するための追加工程が必要になる。すなわち、摩擦材プレートの加工性や生産性が低いという問題があった。
【0006】
また、摩擦材プレートにリベット挿通孔が設けられている場合、作業者は摩擦材プレートを正面から見ないとリベット挿通孔の位置を確認することができない。したがって、作業者は、摩擦材プレートを組み付けるたびに、摩擦材プレートを目の前までもってきて、正面から摩擦材プレートを見て、リベット挿通孔の位置を確認する必要があった。すなわち、摩擦材プレートの組付けの作業性が低いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、摩擦材プレートの加工性や生産性を向上するとともに、摩擦材プレートの組付けの作業性を向上することのできるダンパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダンパ装置は、入力部材から伝達されるトルク変動を吸収するダンパ部材と、前記入力部材と出力部材との間で伝達されるトルクを制限するトルクリミッタと、を備え、前記トルクリミッタは、前記入力部材と一体回転するライニングプレートと、前記ライニングプレートを覆うリミッタカバーと、前記ライニングプレートと前記リミッタカバーとの間に配置される摩擦材プレートと、を備え、前記摩擦材プレートの外周には、係止凹部が設けられ、前記リミッタカバーには、前記係止凹部に係止する爪部が設けられている。
【0009】
この構成によれば、摩擦材プレートの外周に係止凹部が設けられているので、作業者は摩擦材プレートの外周を手で撫でることで係止凹部の位置を確認することができる。また、摩擦材プレートの外周に係止凹部が設けられているので、作業者は摩擦材プレートを正面以外の方向から見ることでも係止凹部の位置を確認することができる。したがって、係止凹部は、従来のようにリベット挿通孔を探す場合に比べて位置の確認が容易であり、摩擦材プレートの組付けの作業性が向上する。また、係止凹部を形成する場合には、従来のリベット挿通孔を形成する場合のような高い加工精度が必要ではない(同時加工が可能であり、追加工程が不要である)ため、摩擦材プレートの加工性や生産性が向上する。
【0010】
そのうえ、この場合には、摩擦材プレートの外周の係止凹部にリミッタカバーの爪部を係止させることによって、リミッタカバーに対する摩擦材プレートの位置決めを行うことができる。したがって、リミッタカバーに対する摩擦材プレートの位置決めが容易であり、摩擦材プレートをリミッタカバーに組付けるときの組付性(摩擦材プレートの組付性)が向上する。
【0011】
また、本発明のダンパ装置では、前記トルクリミッタは、前記ライニングプレートを挟んで前記リミッタカバーと反対側に配置され、前記リミッタカバーに固定されるサポートプレートと、前記サポートプレートと前記ライニングプレートとの間に配置される第2の摩擦材プレートと、前記サポートプレートと前記第2の摩擦材プレートとの間に配置されるプレッシャプレートと、前記サポートプレートと前記プレッシャプレートとの間に配置され、前記プレッシャプレートを前記リミッタカバーに向けて付勢する付勢部材と、を備え、前記第2の摩擦材プレートの外周には、第2の係止凹部が設けられ、前記プレッシャプレートには、前記第2の係止凹部に係止する第2の爪部が設けられてもよい。
【0012】
この構成によれば、第2の摩擦材プレートの外周に第2の係止凹部が設けられているので、作業者は第2の摩擦材プレートの外周を手で撫でることで第2の係止凹部の位置を確認することができる。また、第2の摩擦材プレートの外周に第2の係止凹部が設けられているので、作業者は第2の摩擦材プレートを正面以外の方向から見ることでも第2の係止凹部の位置を確認することができる。したがって、第2の係止凹部は、従来のようにリベット挿通孔を探す場合に比べて位置の確認が容易であり、組付けの作業性が向上する。また、第2の係止凹部を形成する場合には、従来のリベット挿通孔を形成する場合のような高い加工精度が必要ではない(同時加工が可能であり、追加工程が不要である)ため、第2の摩擦材プレートの加工性や生産性が向上する。
【0013】
そのうえ、この場合には、第2の摩擦材プレートの外周の第2の係止凹部にプレッシャプレートの第2の爪部を係止させることによって、プレッシャプレートに対する第2の摩擦材プレートの位置決めを行うことができる。したがって、プレッシャプレートに対する第2の摩擦材プレートの位置決めが容易であり、第2の摩擦材プレートをプレッシャプレートに組付けるときの組付性(第2の摩擦材プレートの組付性)が向上する。
【0014】
また、本発明のダンパ装置では、前記リミッタカバーには、前記摩擦材プレートの外周に対応する位置において前記係止凹部を露出させる切欠きが設けられ、前記切欠きの縁部に前記爪部が設けられてもよい。
【0015】
この構成によれば、摩擦材プレートをリミッタカバーに組付けるときに、リミッタカバーの切欠きから摩擦材プレートの係止凹部が露出する。そして、この切欠きの縁部に爪部が設けられているので、作業者は係止凹部を見ながら爪部を係止する作業を行うことができ、組付けの作業性が向上する。
【0016】
また、本発明のダンパ装置では、前記リミッタカバーの外周部には、前記リミッタカバーの径方向内側に向けて凹んだ逃げ凹部が形成され、前記逃げ凹部に、前記リミッタカバーを固定するためのボルトが挿通されるボルト挿通孔が設けられてもよい。
【0017】
この構成によれば、リミッタカバーの外周部に逃げ凹部が設けられ、その逃げ凹部に設けられたボルト挿通孔にボルトが挿通されて、リミッタカバーが固定される。逃げ凹部はリミッタカバーの径方向内側に向けて凹むように形成されており、ボルトを締めるための工具が干渉するのを回避することができる。逃げ凹部を設けない場合には、ボルトを締めるための工具が干渉するのを回避するためのスペースを径方向外側にとる必要があり、その分、トルクリミッタが径方向外側に大きくなる。これに対して、リミッタカバーの外周部に逃げ凹部を設けた場合には、そのようなスペースを径方向外側にとる必要がない。したがって、逃げ凹部を設けない場合に比べて、トルクリミッタの径を縮小することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、摩擦材プレートの加工性や生産性を向上するとともに、摩擦材プレートの組付けの作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態におけるダンパ装置の断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態におけるダンパ装置の正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態におけるダンパ装置の背面図である。
【
図4】本発明の実施の形態におけるダンパ装置の要部の拡大斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態におけるダンパ装置の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態のダンパ装置について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、車両用のダンパ装置等として用いられるダンパ装置の場合を例示する。車両用のダンパ装置は、原動機の出力軸と伝動装置の動力伝達軸との間に介装される。また、本実施の形態のダンパ装置は、原動機の出力軸と伝動装置の動力伝達軸との間で伝達されるトルクを制限するトルクリミッタとしての機能と、原動機の出力軸と伝動装置の動力伝達軸との間の捻り振動を吸収するダンパとしての機能を備えている。すなわち、本実施の形態のダンパ装置は、トルクリミッタ付きダンパ装置である。
【0021】
図1は、本実施の形態のダンパ装置の断面図(
図2におけるI−I断面図)である。
図2は、本実施の形態のダンパ装置の正面図であり、
図3は、本実施の形態のダンパ装置の背面図である。また、
図4は、本実施の形態のダンパ装置の要部の拡大斜視図であり、
図5は、本実施の形態のダンパ装置の要部の拡大断面図である。
【0022】
まず、
図1〜
図3を参照しながら、本実施の形態のダンパ装置の全体構成について説明する。
図1〜
図3に示すように、ダンパ装置1は、入力部材から伝達されるトルク変動を吸収するダンパ部材2と、入力部材と出力部材との間で伝達されるトルクを制限するトルクリミッタ3を備えている。入力部材は、エンジンの出力軸に接続されるフライホイール(図示せず)である。出力部材は、変速機の動力伝達軸(図示せず)である。
【0023】
トルクリミッタ3は、入力部材と一体回転するライニングプレート4と、ライニングプレート4の片側(
図1における右側、変速機側)を覆うリミッタカバー5と、ライニングプレート4とリミッタカバー5との間に配置される第1の摩擦材プレート6と、ライニングプレート4を挟んでリミッタカバー5と反対側(
図1における左側、エンジン側)に配置されるサポートプレート7と、サポートプレート7とライニングプレート4との間に配置される第2の摩擦材プレート8と、サポートプレート7と第2の摩擦材プレート8との間に配置されるプレッシャプレート9と、サポートプレート7とプレッシャプレート9との間に配置される皿バネ10を備えている。皿バネ10の付勢力によってプレッシャプレート9がリミッタカバー5に向けて付勢され、ライニングプレート4がプレッシャプレート9とリミッタカバー5で両側(
図1における左右両側)から挟まれている。
【0024】
ライニングプレート4は、一対のサイドプレート11によって両側から保持されている。一対のサイドプレート11は、リベット12によって互いに固定されている。一対のサイドプレート11には、窓部13が設けられており、この窓部13にダンパ部材2が収容されている。ダンパ部材2は、サイドプレート11から伝達されるトルク変動を吸収する機能を備えている。例えば、ダンパ部材2は、コイルスプリングで構成されており、ライニングプレート4からサイドプレート11に伝達された変動トルクに応じて弾縮することにより、サイドプレート11から伝達されるトルク変動を吸収する。
【0025】
また、一対のサイドプレート11の間には、ハブ部材14が収納されている。ハブ部材14は、フランジ部15とボス部16を有している。ボス部16の内周面は、出力部材である変速機の動力伝達軸(図示せず)にスプライン嵌合しており、ハブ部材14は、変速機の動力伝達軸と一体回転するように構成されている。なお、変速機の動力伝達軸は、エンジンの出力軸と同軸である。
【0026】
つぎに、
図4および
図5をあわせて参照しながら、本実施の形態のダンパ装置1の要部について説明する。
図1〜
図5に示すように、第1の摩擦材プレート6の外周には、第1の係止凹部17が設けられており、リミッタカバー5には、第1の係止凹部17に係止する第1の爪部18が設けられている。第1の係止凹部17は、第1の摩擦材プレート6の径方向内側に向けて凹んだ形状に形成されており、第1の爪部18は、リミッタカバー5の端部を第1の摩擦プレートの側へ向けて屈曲させることにより形成されている。
【0027】
また、第2の摩擦材プレート8の外周には、径方向内側に向けて凹んだ形状の第2の係止凹部19が設けられ、プレッシャプレート9には、第2の係止凹部19に係止する第2の爪部20が設けられている。第2の係止凹部19は、第2の摩擦材プレート8の径方向内側に向けて凹んだ形状に形成されており、第2の爪部20は、プレッシャプレート9の端部を第2の摩擦プレートの側へ向けて屈曲させることにより形成されている。
【0028】
図2および
図4に示すように、リミッタカバー5には、第1の摩擦材プレート6の外周に対応する位置において第1の係止凹部17を露出させる切欠き21(開口部)が設けられている。そして、この切欠き21の縁部(内径側の縁部)の中央部に、第1の爪部18が設けられている。第1の爪部18が第1係止凹部に係止することにより、第1の摩擦材プレート6は、ライニングプレート4に回転不能に固定される。また、第2の爪部20が第2係止凹部に係止することにより、第2の摩擦材プレート8は、プレッシャプレート9に回転不能に固定される。これにより、プレッシャプレート9に固定された第1の摩擦材プレート6と、プレッシャプレート9に固定された第2の摩擦材プレート8との間で、ライニングプレート4が両側から挟まれた状態で(皿バネ10の付勢力で挟まれた状態で)回転可能とされている。
【0029】
また、リミッタカバー5とサポートプレート7は、フライホイールにボルト22で固定される。サポートプレート7とリミッタカバー5の外周部には、ボルト22を挿通するためのボルト挿通孔23が設けられている。この場合、
図4に示すように、リミッタカバー5の外周部には、リミッタカバー5の径方向内側に向けて凹んだ逃げ凹部24が形成されており、逃げ凹部24に、リミッタカバー5を固定するためのボルト22が挿通されるボルト挿通孔23が設けられている。このような逃げ凹部24を設けることにより、
図5に示すように、ボルト22を締めるための工具Tがリミッタカバー5の外周部に干渉するのを避けることが可能になる。
【0030】
このような本実施の形態のダンパ装置1によれば、摩擦材プレートの外周に係止凹部が設けられているので、作業者は摩擦材プレートの外周を手で撫でることで係止凹部の位置を確認することができる。また、摩擦材プレートの外周に係止凹部が設けられているので、作業者は摩擦材プレートを正面以外の方向から見ることでも係止凹部の位置を確認することができる。したがって、係止凹部は、従来のようにリベット挿通孔を探す場合に比べて位置の確認が容易であり、摩擦材プレートの組付けの作業性が向上する。また、係止凹部を形成する場合には、従来のリベット挿通孔を形成する場合のような高い加工精度が必要ではない(同時加工が可能であり、追加工程が不要である)ため、摩擦材プレートの加工性や生産性が向上する。
【0031】
さらに、本実施の形態では、摩擦材プレートの外周の係止凹部にリミッタカバー5の爪部を係止させることによって、リミッタカバー5に対する摩擦材プレートの位置決めを行うことができる。したがって、リミッタカバー5に対する摩擦材プレートの位置決めが容易であり、摩擦材プレートをリミッタカバー5に組付けるときの組付性(摩擦材プレートの組付性)が向上する。
【0032】
また、本実施の形態では、第2の摩擦材プレート8の外周に第2の係止凹部19が設けられているので、作業者は第2の摩擦材プレート8の外周を手で撫でることで第2の係止凹部19の位置を確認することができる。また、第2の摩擦材プレート8の外周に第2の係止凹部19が設けられているので、作業者は第2の摩擦材プレート8を正面以外の方向から見ることでも第2の係止凹部19の位置を確認することができる。したがって、第2の係止凹部19は、従来のようにリベット挿通孔を探す場合に比べて位置の確認が容易であり、組付けの作業性が向上する。また、第2の係止凹部19を形成する場合には、従来のリベット挿通孔を形成する場合のような高い加工精度が必要ではない(同時加工が可能であり、追加工程が不要である)ため、第2の摩擦材プレート8の加工性や生産性が向上する。
【0033】
さらに、本実施の形態では、第2の摩擦材プレート8の外周の第2の係止凹部19にプレッシャプレート9の第2の爪部20を係止させることによって、プレッシャプレート9に対する第2の摩擦材プレート8の位置決めを行うことができる。したがって、プレッシャプレート9に対する第2の摩擦材プレート8の位置決めが容易であり、第2の摩擦材プレート8をプレッシャプレート9に組付けるときの組付性(第2の摩擦材プレート8の組付性)が向上する。
【0034】
また、本実施の形態では、摩擦材プレートをリミッタカバー5に組付けるときに、リミッタカバー5の切欠き21から摩擦材プレートの係止凹部が露出する。そして、この切欠き21の縁部に爪部が設けられているので、作業者は係止凹部を見ながら爪部を係止する作業を行うことができ、組付けの作業性が向上する。
【0035】
また、本実施の形態では、リミッタカバー5の外周部に逃げ凹部24が設けられ、その逃げ凹部24に設けられたボルト挿通孔23にボルト22が挿通されて、リミッタカバー5が固定される。逃げ凹部24はリミッタカバー5の径方向内側に向けて凹むように形成されており、ボルト22を締めるための工具Tが干渉するのを回避することができる。逃げ凹部24を設けない場合には、ボルト22を締めるための工具Tが干渉するのを回避するためのスペースを径方向外側にとる必要があり、その分、トルクリミッタ3が径方向外側に大きくなる。これに対して、リミッタカバー5の外周部に逃げ凹部24を設けた場合には、そのようなスペースを径方向外側にとる必要がない。したがって、逃げ凹部24を設けない場合に比べて、トルクリミッタ3の径を縮小することができる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかるダンパ装置は、摩擦材プレートの加工性や生産性を向上するとともに、摩擦材プレートの組付けの作業性を向上することができるという効果を有し、車両用のダンパ装置等として有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 ダンパ装置
2 ダンパ部材
3 トルクリミッタ
4 ライニングプレート
5 リミッタカバー
6 第1の摩擦材プレート
7 サポートプレート
8 第2の摩擦材プレート
9 プレッシャプレート
10 皿バネ
11 サイドプレート
12 リベット
13 窓部
14 ハブ部材
15 フランジ部
16 ボス部
17 第1の係止凹部
18 第1の爪部
19 第2の係止凹部
20 第2の爪部
21 切欠き
22 ボルト
23 ボルト挿通孔
24 逃げ凹部
T 工具