(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、ナノインプリント用テンプレートの表面に付着したレジスト残渣を除去するための光洗浄装置として、
図4に示されるように、被処理物Wに紫外線ランプ51からの紫外線が紫外線を透過する窓部材55を介して照射される構成のものが提案されている(特許文献1参照。)。
この光洗浄装置においては、被処理物Wであるナノインプリント用テンプレートは、当該被処理物Wの被処理領域WAが窓部材55に間隙を介して対向するよう図示しない保持部材によって保持されて配置される。
ナノインプリント用テンプレートの光洗浄処理においては、ナノインプリント用テンプレートのスタンプ部に光硬化性樹脂などのレジスト残渣が付着することから、このスタンプ部を被処理領域WAとしてこの領域のみに紫外線が照射することができればよい。従って、紫外線ランプ51からの紫外線が通過する窓部材55の当該ナノインプリント用テンプレートに対向する紫外線透過部55Aは、スタンプ部と略同一またはナノインプリント用テンプレートの外形と略同一の形状に形成される。
【0003】
窓部材55は、紫外線ランプ51が収容される筺体56の天板56Aを支持台として、この天板56Aと枠部材57との間に当該窓部材55の周縁部55Bが挟持されることにより当該天板56Aに固定されている。窓部材55の周縁部55Bは紫外線透過部55Aよりも薄く形成されており、従って、枠部材57の開口の内周壁と紫外線透過部55Aの側周壁とが隣接されているところ、紫外線透過部55Aと枠部材57との間には間隙が設けられている。従って、窓部材55の紫外線透過部55Aの側周壁に沿って溝が不可避的に形成される。これは、窓部材55を構成するガラスと、枠部材57を構成する金属との干渉を防止するためである。
なお、
図4において、58はガス流路部材であり、59はガス流通路である。
【0004】
しかしながら、紫外線透過部55Aと枠部材57との間の溝には塵埃が溜まり易い、という問題がある。このような塵埃がナノインプリント用テンプレートの表面のスタンプ部に移行して付着されると、これを用いて得られるパターンに欠陥が生じてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、被処理物の被処理領域の表面に塵埃が付着することを抑制することができる紫外線処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紫外線処理装置は、紫外線を放射する紫外線ランプと、
平板状の被処理物の下面に接して当該被処理物を支持する保持部材と、
前記被処理物の下面における被処理領域に紫外線を照射する紫外線照射口を有する支持台と、
前記紫外線照射口を覆う紫外線透過性窓部材とを備える紫外線処理装置であって、
前記紫外線透過性窓部材が周縁部を有し、当該周縁部が前記支持台と枠部材とに挟持されることにより紫外線透過性窓部材が当該支持台に固定され、
当該周縁部が前記被処理物の被処理領域より外方に位置
し、
前記紫外線透過性窓部材は、
前記周縁部以外の平面部を有し、当該平面部に設けられた、被処理物の被処理領域に対応する領域を包含する矩形の平面領域の一辺およびこれに連続する二辺に沿って、当該平面領域より突出した状態で伸びる平板部分と、
前記平面領域の前記一辺に沿って設けられた処理ガス供給口と、
前記平面領域の前記一辺と対向する他辺に、前記被処理物が載置されることにより形成される処理ガス排出口とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の紫外線処理装置は、紫外線透過性窓部材の周縁部が被処理物の被処理領域より外方に位置する構成を有する。従って、紫外線透過性窓部材と枠部材との間に不可避的に形成される溝が、当該被処理物の被処理領域の直下に対応する領域には位置されずにこれより外方に位置することとなるので、当該溝に塵埃が溜まったとしても、被処理物の被処理領域の表面に塵埃が付着することを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の紫外線処理装置の一例における構成を示す平面図、
図2は、
図1に示す紫外線処理装置のA−A線断面を、被処理物が載置された状態で示す断面図、
図3は、
図1に示す紫外線処理装置のB−B線断面を、被処理物が載置された状態で示す断面図である。
この紫外線処理装置は、例えばナノインプリント用テンプレートを被処理物Wとしてこれの表面を光洗浄処理するために用いられるものである。この紫外線処理装置においては、平板状の被処理物Wが、当該被処理物Wの被処理領域WAが平板状の紫外線透過性窓部材(以下、単に「窓部材」ともいう。)11と間隙を介して対向するよう配置されて光洗浄処理が行われる。
【0012】
この紫外線処理装置は、被処理物Wの被処理領域WAに紫外線を照射する紫外線照射口21を有する支持台22を天板として有する筺体20を備え、当該筺体20内における紫外線照射口21と対向する位置に、紫外線を放射する紫外線ランプ30が収容されている。
【0013】
紫外線ランプ30としては、例えばエキシマランプを使用することができる。紫外線ランプ30としてキセノンのエキシマ発光を利用するランプを用いる場合、筺体20内は、172nmの紫外光の減衰を防止するために窒素雰囲気に置換されることが好ましい。
【0014】
この筺体20の天板である支持台22の上面には、窓部材11が紫外線照射口21を覆う状態に設けられている。
具体的には、窓部材11は、被処理物Wの被処理領域WAの直下に対応する領域を包含する略矩形の平面部(以下、「中央平面部」ともいう。)11Aと、当該中央平面部11Aよりも厚みが小さい周縁部11Bとを有する。そして、略矩形の開口25Hが形成された枠状の枠部材25によって、中央平面部11Aが枠部材25の開口25H内に当該開口25Hと接触しないよう嵌合された状態において、周縁部11Bが支持台22と枠部材25とに挟持されることにより、窓部材11が当該支持台22に固定されている。枠部材25と支持台22との間において窓部材11の周縁部11Bが介在されない部分には、金属の緩衝材27が介在されていてもよい。窓部材11を構成する中央平面部11Aおよび周縁部11Bのそれぞれ下面は連続した平面とされている。この紫外線処理装置において、枠部材25の上面と窓部材11の中央平面部11Aの上面とは、略同一平面上に位置されることが好ましい。
そして、本発明の紫外線処理装置においては、窓部材11の周縁部11Bが、被処理物Wの被処理領域WAより外方に位置されている。従って、窓部材11の中央平面部11Aの側周壁と枠部材25の内周壁との間に不可避的に形成される溝Gが、被処理物Wの被処理領域WAの直下に対応する領域には位置されずにこれより外方に位置される。
【0015】
被処理物Wの被処理領域WAと、窓部材11の周縁部11Bとの距離、すなわち被処理領域WAと溝Gとの距離は、45mm以上であることが好ましく、特に好ましくは60mmである。
被処理領域WAと溝Gとの距離が45mm以上であることにより、当該溝Gに塵埃が溜まったとしても、被処理物Wの被処理領域WAの表面に塵埃が付着することを確実に抑制することができる。
【0016】
枠部材25における開口25Hの四隅に近接する角部の各々には、被処理物Wが載置されたときに窓部材11の中央平面部11Aの表面との間に間隙が形成される状態に、当該被処理物Wの下面に接してこれを保持する突起23Aが形成された保持部材23が、当該枠部材25から内方に突出して設けられている。
なお、本実施例では、枠部材25における開口25Hの四隅に近接する角部の各々に保持部材23が設けられた構造を示しているが、被処理物Wの裏面(上面)を吸着部材で吸着して保持するよう構成されていてもよい。
【0017】
枠部材25における開口25Hの対向する二辺には、被処理物Wを保持部材23上に載置させるよう当該被処理物Wを搬送する搬送つめに対応する形状の切り欠き25Aが2つずつ形成されている。
【0018】
筺体20の材料としては、耐紫外線性および耐オゾン性を有する材料を用いればよく、例えば硬質アルマイト処理されたアルミ材やSUSを用いることができる。
また、枠部材25の材料としては、例えばSUSを用いることができる。
また、保持部材23の材料としては、例えばポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)などを用いることができる。
【0019】
この紫外線処理装置の窓部材11の中央平面部11Aにおいては、被処理物Wの被処理領域WAの直下に対応する領域を包含する矩形の平面領域(以下、「矩形領域」ともいう。)12を有し、この矩形領域12に処理ガス供給口15が設けられている。そして、窓部材11の中央平面部11Aには、矩形領域12の一辺(
図1における左辺)12xおよびこれに連続する二辺(
図1における上辺および下辺)12y,12zに沿って、当該矩形領域12より突出した状態で伸びる平面視においてコの字形状の平板土手部分14が設けられている。具体的には、矩形領域12の一辺12xから連続して伸びる縦土手部分14Xと、当該一辺12xに連続する二辺12yおよび12zからそれぞれ連続して伸びる横土手部分14Y,14Zとを有し、これらが一体的に連続されることによりコの字形状が形成されている。さらに、窓部材11の中央平面部11Aにおける矩形領域12の一辺12xと対向する他辺(
図1における右辺)12vは、被処理物Wが載置されることにより矩形領域12の上部(
図3において上部)が塞がれて処理ガス排出口19が形成されるよう、閉塞されずに開放されている。
これにより、窓部材11の中央平面部11Aにおける被処理物Wの被処理領域WAの直下に対応する領域を包含するようガス流通路が位置される。
【0020】
処理ガス供給口15は、矩形領域12の一辺12xに沿って設けられており、例えば複数個のガス供給孔(
図1においては13個)が当該一辺12xに沿って並んだ構成とされている。
【0021】
窓部材11の中央平面部11Aと被処理物Wとの間に形成される間隙の大きさ、すなわち平板土手部分14の表面と被処理物Wとの間に形成される間隙の大きさは、例えば0.1〜3mmの範囲とされることが好ましい。この間隙の大きさが過大であると、処理ガス供給口15から供給された処理ガスが、当該間隙から外部に漏れ、その結果、矩形領域12上において当該処理ガスを高い均一性で流通させることができなくなるおそれがある。
【0022】
また、矩形領域12からの平板土手部分14の突出高さ(
図3における上下方向の高さ)は、例えば0.8mm以下とされる。
【0023】
窓部材11は、真空紫外線を透過する材料からなり、一体的に形成されたものであって、例えば石英ガラスからなるものを用いることができる。
この窓部材11の対向する二辺には、被処理物Wを保持部材23上に載置させるよう当該被処理物Wを搬送する搬送つめに対応する形状の切り欠き11Cが2つずつ形成されている。また、窓部材11の中央平面部11Aの四隅には、被処理物Wを保持する保持部材23の形状に適合する形状の切り欠き11Dが形成されている。
【0024】
紫外線処理装置の寸法の一例を示すと、支持台22の大きさが250mm×250mm、紫外線照射口21の大きさが65mm×65mm、窓部材11の大きさが165mm×165mm、中央平面部11Aの大きさが155mm×155mm、中央平面部11Aの厚さが5mm、周縁部11Bの厚さが3mm、枠部材25の大きさが250mm×250mm、開口25Hの大きさが157mm×157mm、厚みが1.5mmである。被処理領域WAと窓部材11の周縁部11Bとの距離は45mmである。
また、平板土手部分14の表面と被処理物Wとの間に形成される間隙の大きさが0.3mm、矩形領域12と平板土手部分14の高さ(
図3における上下方向の高さ)が0.7mm、平板土手部分14の縦土手部分14Xの幅(
図1における左右方向の長さ)が15mm、横土手部分14Y,14Zの幅(
図1における上下方向の長さ)がそれぞれ35mm、矩形領域12の幅(
図1における上下方向の長さ)が70mmである。
【0025】
このような紫外線処理装置においては、まず、被処理物Wが保持部材23上に載置され、これにより矩形領域12の他辺12vと被処理物Wの一辺とに囲われた処理ガス排出口19が形成される。このとき、窓部材11の中央平面部11Aと枠部材25との間に形成される溝Gは、中央平面部11Aの被処理物Wの被処理領域WAの直下に対応する領域の外側に位置される。
この状態において、処理ガスが処理ガス供給口15から窓部材11と被処理物Wとの間に形成される被処理空間に供給されると、矩形領域12と被処理物Wとの距離が、平板土手部分14と被処理物Wとの距離よりも大きいので、当該処理ガスは、平板土手部分14と被処理物Wとの間隙から僅かずつ漏洩しながら、全体的には処理ガス排出口19に向かって安定的に流通する。平板土手部分14と被処理物Wとの間隙から処理ガスが僅かずつ漏洩することによって外部からのガスに対する流れ抵抗が生じ、外部のガスの被処理空間への流入が抑制される。そして、この状態で、紫外線ランプ30を点灯させることにより、紫外線ランプ30からの紫外線が窓部材11を介して被処理空間および被処理物Wの被処理領域WAに照射され、これにより、当該被処理物Wの被処理領域WAの光洗浄処理が行われる。
【0026】
以上において、窓部材11と被処理物Wとの間の間隙に流通される処理ガスの供給量は、例えば0.1〜10L/minである。
また、被処理物Wに対する紫外線の照射時間は、例えば3〜3600秒間である。
【0027】
処理ガスとしては、紫外線を照射することによりオゾンを発生させるガスであればよく、例えばCDA(Clean Dry Air)を用いることができる。
【0028】
上記の紫外線処理装置によれば、窓部材11の周縁部11Bが被処理物Wの被処理領域WAより外方に位置する構成を有する。従って、窓部材11と枠部材25との間に不可避的に形成される溝Gが、当該被処理物Wの被処理領域WAの直下に対応する領域には位置されずにこれより外方に位置することとなるので、当該溝Gに塵埃が溜まったとしても、被処理物Wの被処理領域WAの表面に塵埃が付着することを抑制することができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明においては、処理ガス供給口15は、矩形領域12の一辺12xに沿って伸びるスリットから構成されていてもよい。
また例えば、本発明の紫外線処理装置の被処理物は、ナノインプリント用テンプレートに限定されず、紫外線照射処理が必要とされる種々のものに適用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〕
図1に示される紫外線処理装置を作製した。紫外線処理装置の各寸法は以下の通りとした。これを紫外線処理装置〔1〕とする。
・支持台の大きさ:250mm×250mm
・紫外線照射口の大きさ:65mm×65mm
・窓部材の大きさ:165mm×165mm
・中央平面部の大きさ:155mm×155mm
・中央平面部の厚さ:5mm
・周縁部の厚さ:2mm
・枠部材の大きさ:250mm×250mm
・枠部材の開口の大きさ:157mm×157mm
(・被処理領域と窓部材の周縁部との距離:45mm)
・矩形領域からの平板土手部分の高さ:0.7mm
・縦土手部分の幅:15mm
・横土手部分の幅:35mm
・矩形領域の幅:70mm
・窓部材と被処理物との距離:1mm
【0032】
上記の紫外線処理装置〔1〕を用いて、
・処理ガス種:CDA
・処理ガスの供給量:0.5L/min
・窓部材における紫外線照度:70mW/cm
2
・紫外線の照射時間:600秒間
の光洗浄処理条件(処理ガスの供給条件および紫外線の照射条件)で被処理物(テンプレート)の光洗浄処理を行った後、溝に溜まった塵埃を収集し、その大きさ(最大径)と個数を測定した。結果を
図5(a)のヒストグラムに示す。
【0033】
〔比較例1〕
実施例1に用いた紫外線処理装置において、窓部材に平板土手部分が形成されておらず、枠部材に平板土手部分が形成され、各寸法は以下の通りとした比較用の紫外線処理装置〔2〕を作製した。
・支持台の大きさ:250mm×250mm
・紫外線照射口の大きさ:65mm×65mm
・窓部材の大きさ:78mm×78mm
・中央平面部の大きさ:58mm×58mm
・中央平面部の厚さ:5mm
・周縁部の厚さ:2mm
・枠部材の大きさ:250mm×250mm
・枠部材の開口の大きさ:60mm×60mm
(・被処理領域と窓部材の周縁部との距離:1mm)
・窓部材からの平板土手部分の高さ:0.7mm
・縦土手部分の幅:15mm
・横土手部分の幅:35mm
・矩形領域の幅:70mm
・窓部材と被処理物との距離:1mm
これを用いて、上記の紫外線処理装置〔1〕と同様の光洗浄処理条件で被処理物(テンプレート)の光洗浄処理を行った後、溝に溜まった塵埃を収集し、その大きさ(最大径)と個数を測定した。結果を
図5(b)のヒストグラムに示す。