【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術/維持管理ロボット・災害対応ロボットの開発/無人化施工の新展開〜遠隔操作による半水中作業システムの実現〜」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0026】
図1は建設機械の実施形態を示す概略正面図、
図2は概略側面図である。
図3は、
図1の建設機械におけるエンジンルームの部分を拡大して示す切断側面図である。
図4は、建設機械における吸気用シュノーケルの
図2のA位置での断面を示す図である。
図5(a)(b)はそれぞれ吸気用シュノーケルの断面形状の別の例を示す図である。
【0027】
なお、本実施形態では、建設機械を、
図1、
図2に示すような不整地運搬車1とする場合の例について示してある。
【0028】
本実施形態の建設機械としての不整地運搬車1は、
図1、
図2に示すように、下部走行体として、たとえば、履帯(クローラ)式の下部走行体2を備えた構成とされている。
【0029】
更に、不整地運搬車1は、下部走行体2のエンジン4およびラジエータ5を収納するエンジンルーム3と、エンジンルーム3の前端側に接続された吸気用シュノーケル6と、吸気用シュノーケル6の上端側に設けられた吸気口7と、エンジンルーム3の後端側で吸気用シュノーケル6より離れた個所に接続された排気用シュノーケル8と、排気用シュノーケル8の上端側で且つ吸気口7よりも高所となる位置に設けられた排気口9とを備えた構成とされている。
【0030】
下部走行体2は、前後方向に延びるラダー型のメインフレーム10と、メインフレーム10の左右両側に取り付けられた左右一対の履帯(クローラ)11とを備えた構成とされている。
【0031】
メインフレーム10の前端寄りには、上側にエンジンルーム3が設けられている。なお、エンジンルーム3は、メインフレーム10によって支持される構成としてあれば、エンジンルーム3全体がメインフレーム10よりも上方に配置されている必要はなく、エンジンルーム3の一部がメインフレーム10の内側に配置されていたり、メインフレーム10よりも下方に突出して配置されていたりしてもよい。また、エンジンルーム3は、メインフレーム10の真上となる位置から、左右のいずれか一方または双方にはみ出して配置されていてもよいことは勿論である。このエンジンルーム3の具体的な構成は後述する。
【0032】
メインフレーム10の前端寄りの左右両側には、各履帯11の上方で左右方向に張り出すデッキ12,13が設けられている。左右のデッキ12,13のうちのいずれか一方の上側には、運転室14が設けられている。本実施形態では、運転室14は、左側のデッキ12の上側に設けられている。運転室14が設けられていない側となる右側のデッキ13には、吸気や排気の必要がない機器を収納した防水型のケーシングや、水没しても影響のない機器などが適宜設けられている。
【0033】
メインフレーム10の後端寄りの上側には、ダンプ式の荷台15が設けられている。荷台15は、たとえば、下部走行体2、あるいは、不整地運搬車1の左右幅寸法に対応する幅寸法を備えた構成とされている。
【0034】
エンジンルーム3は、
図3に示すように、隔壁16a,16b,16c,16dによって水密に形成された箱形の構造を備えている。
【0035】
本実施形態では、エンジンルーム3は、下部走行体2の前端側から後方に延びる配置とされている。また、エンジンルーム3の前端部には、前方に向けて開口する吸気用開口部17が形成されている。よって、本実施形態のエンジンルーム3は、左右一対の隔壁16aと、上部の隔壁16bと底部の隔壁16cとで形成された前後方向に延びる筒状の構造を有し、その筒状構造の後端側が、後部の隔壁16dで閉塞された構成を備えている。
【0036】
なお、図示しないが、エンジンルーム3は、前部の隔壁を備えると共に、その前部の隔壁に設けた開口を吸気用開口部とする構成としてもよいことは勿論である。
【0037】
ラジエータ5は、エンジンルーム3の前端側における吸気用開口部17の内側となる位置に、ラジエータ5の前面が下部走行体2の前方を向くように取り付けられている。本実施形態では、ラジエータ5の前面の面積は、吸気用開口部17の開口面積とほぼ同様とされている。
【0038】
この構成では、ラジエータ5は、下部走行体2の前端側に前方からの空気の流れを受ける姿勢で設けられていることになり、このラジエータ5の配置は、陸上走行用の不整地運搬車のような建設機械と同様となる。このため、本実施形態におけるラジエータ5としては、陸上用の建設機械と同様のラジエータを使用することが可能になる。
【0039】
エンジンルーム3の吸気用開口部17の前側には、吸気用シュノーケル6が接続されている。
【0040】
このため、吸気用シュノーケル6は、下端側の後側壁に後向きの出口19を備えた構成とされ、この出口19が、エンジンルーム3の吸気用開口部17の前側に連通接続されている。吸気用シュノーケル6のエンジンルーム3に対する接続は、たとえば、エンジンルーム3における吸気用開口部17の周囲に備えた図示しないフランジと、吸気用シュノーケル6における出口19の周囲に備えた図示しないフランジとを、ボルトとナット(図示せず)を用いて固定するようにすればよい。なお、吸気用シュノーケル6の出口19をエンジンルーム3の吸気用開口部17に接続することができれば、前記した以外の任意の構成の接続手段を用いてもよいことは勿論である。
【0041】
本実施形態の不整地運搬車1には、使用可能な水深Wが設定される。吸気用シュノーケル6は、上端側が設定された水深Wよりも上方となる高さ位置に配置されるように、上下方向に延びる形状を備えている。
【0042】
本実施形態では、吸気用シュノーケル6がエンジンルーム3の前方に取り付けられているので、吸気用シュノーケル6は、下部走行体2の前方に突出した配置となる。このため、本実施形態の不整地運搬車1を使用する際に、吸気用シュノーケル6にて水中に没した配置となる部分は、周囲に存在している水による冷却を受ける。また、水面より出ている部分、すなわち、空気中に配置されている部分は、風や、対流による空気の流れや、走行風による冷却が行われる。特に、本実施形態の不整地運搬車1を走行させているときには、相対的に前方から吹く走行風や、相対的に前方からの流れとなる水の流れを、吸気用シュノーケル6に効率よく当てることができる。
【0043】
よって、吸気用シュノーケル6は、エンジンルーム3に接続されていることに起因して、エンジンルーム3からの熱伝導により昇温することが考えられるが、その場合であっても、本実施形態では、吸気用シュノーケル6を冷却することができるため、吸気用シュノーケル6を通してエンジンルーム3に導かれる冷却用の空気20の温度の低下を図ることができる。
【0044】
更に、吸気用シュノーケル6は、ラジエータ5の前面の面積以上のスロート面積を備えた構成とされている。これにより、吸気口7から吸気用シュノーケル6を通してエンジンルーム3の吸気用開口部17まで導かれる空気20の流路の断面積は、吸気用開口部17に備えられたラジエータ5の前面の面積よりも絞られることがない。よって、ラジエータ5に導かれる空気20については、吸気用シュノーケル6を流通する際の圧力損失を抑制することができる。
【0045】
吸気口7は、吸気用シュノーケル6の上端側で且つ設定された水深Wよりも上方となる高さ位置に設けられる。この際、吸気口7の上方には、蓋21を備えることが好ましい。これは、吸気口7を通して吸気用シュノーケル6へ雨水が進入することを抑制するためである。
【0046】
この場合、吸気用シュノーケル6は、上端側における設定された水深Wよりも上方となる位置に、横向きの吸気口7を備え、その吸気口7の上側に、吸気口7の上方を覆う配置で蓋21を備える構成とすればよい。
【0047】
更に、吸気口7は、吸気用シュノーケル6の上端側に、全周方向に横向きに開口させて設けることが好ましい。本実施形態では、吸気用シュノーケル6は、設定された水深Wよりも上方となる上端側の部分が、上下に延びる角筒形状とされ、この角筒形状を形成している前後左右の各側壁部に、前後左右に向けて吸気口7が設けられている。
【0048】
このように、吸気口7が吸気用シュノーケル6の全周方向に開口して設けられた構成では、吸気口7を、たとえば、ラジエータ5の前面の面積以上などというように予め設定される開口面積で設ける場合に、吸気口7の上下方向寸法をできるだけ小さくすることができる。
【0049】
そのため、吸気用シュノーケル6では、設定された水深Wよりも上方に吸気口7を設定された開口面積で設ける場合に、吸気口7の上端側の高さ位置を、設定された水深Wに近付けることができる。なお、吸気口7の開口面積の設定は、ラジエータ5の前面の面積以上という設定以外の設定であってもよいことは勿論である。
【0050】
また、吸気口7の上端側の高さ位置を設定された水深Wに近付けることは、吸気用シュノーケル6の高さを抑えることにつながる。そのため、運転室14で運転する運転員(図示せず)の視界に対して吸気用シュノーケル6が占める割合の低減化を図ることができる。このため、運転員による本実施形態の不整地運搬車1の周囲の視界確保に有利な構成とすることができる。
【0051】
更に、排気口9は、排気用シュノーケル8の上端側に、吸気口7よりも高所となる配置で設ける必要があるが、吸気口7の上端側の高さ位置を設定された水深Wに近付けることで、排気口9と吸気口7の高さに差を設けやすくすることができる。
【0052】
したがって、たとえば、本実施形態の不整地運搬車1をトレーラに載せて現場まで搬送する場合は、不整地運搬車1に装備可能な排気用シュノーケル8の高さに、道路法の車両制限令に基づく制限が生じるが、その場合であっても、排気用シュノーケル8の上端側の排気口9と、吸気口7の高さに差を設けやすくすることができる。
【0053】
吸気口7には、ごみなどの異物やしぶきのような水滴の進入を防ぐために、メッシュ状あるいはルーバー状などのスクリーン部材22を備えることが好ましい。
【0054】
スクリーン部材22が蓋21を支持可能な剛性を有している場合は、吸気用シュノーケル6の上端側には、吸気口7の上下方向寸法に対応する上下方向寸法を備えたスクリーン部材22を取り付け、そのスクリーン部材22の上側に、蓋21を取り付けた構成とすればよい。
【0055】
一方、スクリーン部材22の剛性が小さい場合は、蓋21は、上下に延びる図示しない支柱部材を介して吸気用シュノーケル6の上端側に取り付け、蓋21の下方に開口している吸気口7に、スクリーン部材22を取り付ける構成とすればよい。
【0056】
更に、蓋21は、
図3に示すように、上下方向に連通する開口24を備えて吸気用シュノーケル6の上端側に取り付けられた下段の蓋部材23と、下段の蓋部材23よりも小さい平面形状を備えて開口24の上方に上下方向の隙間を隔てて配置された上段の蓋部材25とを備える構成とすることが好ましい。
【0057】
この構成によれば、蓋21における上段の蓋部材25と下段の蓋部材23との隙間は、開口24を通して吸気用シュノーケル6に連通しているので、この隙間も、横向きの吸気口7aとして用いることができる。
【0058】
このため、吸気用シュノーケル6に備える吸気口7,7aの上端側の高さ位置を、設定された水深Wにできるだけ近付けて配置する状態で、吸気用シュノーケル6の上端側の外形を、下段の蓋部材23と上段の蓋部材25によって形成される形状、すなわち、上方に行くにしたがって細くなる形状とすることができる。よって、この2段式の蓋21を採用すれば、前記した運転員による本実施形態の不整地運搬車1の周囲の視界確保にさらに有利な構成とすることができる。
【0059】
なお、蓋21自体に備える吸気口7aにも、前記したと同様のスクリーン部材22を備える構成とすればよい。この場合、下段の蓋部材23の上側に上段の蓋部材25を取り付ける構成は、前記した吸気用シュノーケル6の上端側に蓋21を取り付ける場合の構成と同様に、スクリーン部材22または図示しない支柱部材を介した取り付け構造を採用すればよい。
【0060】
更に、吸気用シュノーケル6は、設定された水深W以下となる部分に、
図4に
図2のA位置での断面を拡大して示すように、前端側に比して後端寄りの左右方向寸法が大となる水平断面形状を有する部分を備えることが好ましい。この構成によれば、下部走行体2の前方に突出した配置となっている吸気用シュノーケル6は、設定された水深W以下となる部分に、左右に水を切る外形となる部分を備えたものとなる。そのため、この構成によれば、本実施形態の不整地運搬車1は、水中走行させるときに水から受ける抵抗についての軽減化を図ることができる。また、本実施形態の不整地運搬車1は、前方から波を受けるときの衝撃を緩和することができる。
【0061】
なお、吸気用シュノーケル6にて、前端側に比して後端寄りの左右方向寸法が大となる部分の水平断面形状は、製造の容易性の点から考えると、前端寄りを、
図4に示した等脚台形のような、平板を組み合わせて形成可能な形状とすることが好ましいが、
図5(a)に示すように、前端寄りを円弧や楕円弧のような曲線とする形状としてもよい。また、吸気用シュノーケル6の前記水平断面形状は、
図5(b)に示すように、前端寄りを先細りの形状としてもよい。
【0062】
更に、吸気用シュノーケル6は、設定された水深W以下となる部分の一部が、前端側に比して後端寄りの左右方向寸法が大となる水平断面形状を有する部分である構成例を示したが、吸気用シュノーケル6における設定された水深W以下となる部分の全体が、前端側に比して後端寄りの左右方向寸法が大となる水平断面形状を有していてもよい。
【0063】
これらの構成によっても、本実施形態の不整地運搬車1は、水中走行させるときに水から受ける抵抗についての軽減化を図ることができるという効果、および、前方から波を受けるときの衝撃を緩和できるという効果を得ることができる。
【0064】
エンジンルーム3は、上部の隔壁16bにおける後端側に、排気用開口部26が設けられている。これにより、エンジンルーム3は、上流側となる吸気用開口部17から流入する空気20が下流側となる排気用開口部26まで流通する空気20の流路となっている。また、この流路の外壁となる各隔壁16a,16b,16c,16dは、メインフレーム10との接続個所および左右の各デッキ12,13や運転室14が直接取り付けられている部分以外の部分が、外部に露出した構成となっている。
【0065】
排気用シュノーケル8は、吸気口7が配置された高さよりも上方となる高さ位置に上端側が配置されるように、上下方向に延びる形状を備えている。なお、排気用シュノーケル8の上端側の高さは、前記した道路法の車両制限令に基づく制限などによって規定される範囲内で、できるだけ高く設定されることが好ましい。
【0066】
本実施形態では、排気用シュノーケル8は、上下に延びる角筒形状とされ、下端側の入口27が、エンジンルーム3の排気用開口部26に連通接続されている。排気用シュノーケル8のエンジンルーム3に対する接続は、たとえば、エンジンルーム3における排気用開口部26の周囲に備えた図示しないフランジと、排気用シュノーケル8における入口27の周囲に備えた図示しないフランジとを、ボルトとナット(図示せず)を用いて固定するようにすればよい。なお、排気用シュノーケル8の入口27をエンジンルーム3の排気用開口部26に接続することができれば、前記した以外の任意の構成の接続手段を用いてもよいことは勿論である。
【0067】
排気口9は、排気用シュノーケル8の上端側で且つ吸気口7よりも高所に設けられるが、この際、排気口9の上方には、蓋28を備えることが好ましい。これは、排気口9を通して排気用シュノーケル8へ雨水が進入することを抑制するためである。
【0068】
したがって、排気用シュノーケル8は、上端側の所定の高さ位置に、横向きの排気口9を備え、その排気口9の上側に、排気口9の上方を覆う配置で蓋28を備える構成とすればよい。
【0069】
更に、排気口9は、吸気用シュノーケル6が設けられている方向とは異なる方向に向けて設けられている。なお、ここでいう吸気用シュノーケル6が設けられている方向とは、上下方向の概念は含まずに、平面視で吸気用シュノーケル6が設けられている方向を意味する。
【0070】
本実施形態では、吸気用シュノーケル6は、排気用シュノーケル8の前方に設けられているので、排気口9は、排気用シュノーケル8の左右と後方の各側壁部の上端側に、左右方向と後方に向けて設けられている。
【0071】
また、排気用シュノーケル8は、吸気用シュノーケル6が設けられている方向である前方の側壁部が、遮熱壁とされた構成を備えることが好ましい。これは、排気用シュノーケル8がエンジンルーム3からの排気20aの保有する熱により加熱されるので、この排気用シュノーケル8の保有する熱が、対流によって、吸気用シュノーケル6や、吸気口7の周辺に存在している空気に伝わることを抑制するためである。したがって、この構成によれば、吸気用シュノーケル6や、吸気口7から吸気される空気20が、排気用シュノーケル8からの対流により昇温することが抑制されるため、吸気用シュノーケル6を通してエンジンルーム3に導かれる空気20の温度の低下を図ることができる。
【0072】
排気口9には、ごみなどの異物やしぶきのような水滴の進入を防ぐために、吸気口7と同様にスクリーン部材22を備えることが好ましい。
【0073】
エンジンルーム3には、ラジエータ5の後側に、通風用のファン29と、エンジン4とが前方より順に配置されて収納されている。この際、エンジン4は、排気用開口部26よりも前方に配置されるか、あるいは、エンジン4の後部側が排気用開口部26にかかる配置で収納されていることが好ましい。これは、吸気用開口部17からエンジンルーム3内に流入し、エンジンルーム3内を排気用開口部26まで流通する空気20の流れの中にエンジン4を配置することができるようにするためである。
【0074】
ファン29は、たとえば、エンジン4の動力の一部を取り出す回転軸30に接続されている。なお、図示しないが、エンジン4の動力の一部で発電機を駆動して発電し、発電された電力により電動のファンを駆動する構成としてもよいことは勿論である。
【0075】
エンジンルーム3における後端側には、エンジン4によって駆動される油圧モータ31が収納されている。油圧モータ31は、左右の履帯11の図示しない駆動部や、荷台15の図示しないダンプ機構に油圧を供給する機能を備えている。
【0076】
エンジンルーム3を形成している各隔壁16a,16b,16c,16dには、吸気用シュノーケル6の取付位置、および、排気用シュノーケル8の取付位置の双方に干渉しない個所に、メンテナンス口32を備えることが好ましい。なお、メンテナンス口32は、密閉可能な開閉扉を備えるものとする。これにより、メンテナンス口32を開くことで、エンジンルーム3の内部に配置されている機器の整備性を高めることができる。
【0077】
特に、
図3に示すように、隔壁16bにおけるエンジン4の上方となる個所や、隔壁16cにおけるエンジン4の下方に位置する個所にメンテナンス口32を設けることで、エンジン4の整備性を高めることができる。この際、隔壁16bに設けるメンテナンス口32をエンジン4の積み降ろし作業が可能なサイズとしておけば、エンジン4の整備性を更に高めることができる。
【0078】
また、隔壁16bにおける油圧モータ31の上方となる個所や、隔壁16cにおける油圧モータ31の下方となる個所にメンテナンス口32を設けることで、油圧モータ31の整備性を高めることができる。
【0079】
以上の構成としてある本実施形態の不整地運搬車1は、エンジン4を運転するときには、ファン29を駆動する。
【0080】
これにより、ファン29の吸入側となる上流側には、ファン29による空気20の誘引作用が生じる。このため、吸気口7の周辺に存在している空気が、吸気口7を通して吸気用シュノーケル6に吸気され、吸気された空気20は、吸気用シュノーケル6を介して吸気用開口部17まで導かれてエンジンルーム3に流入する。
【0081】
エンジンルーム3に流入した空気20は、先ず、吸気用開口部17の内側に設けられているラジエータ5を通過することで、ラジエータ5の冷却に使用される。この際、空気20は、ラジエータ5との熱交換によって昇温する。
【0082】
次に、ラジエータ5を通過した空気20は、ファン29に到達する。ファン29に達した空気20は、ファン29の吐出側となる下流側へ順次送り出される。
【0083】
このファン29による送出作用により、エンジンルーム3内におけるファン29の下流側には、排気用開口部26に向かう空気20の流れが形成される。
【0084】
エンジン4は、このエンジンルーム3内に形成される空気20の流れが当たることで冷却される。この際、エンジン4と熱交換により、空気20は加熱される。
【0085】
また、エンジンルーム3内にて、ファン29の下流側に形成される空気20の流れの一部は、エンジンルーム3の後端側に配置された油圧モータ31の周囲を迂回してから排気用開口部26へ向かうようになるため、油圧モータ31の空気20による冷却も行われる。この油圧モータ31の冷却に使用された空気20は、油圧モータ31との熱交換により加熱される。
【0086】
このように、エンジンルーム3内の機器の冷却に供された後の加熱された空気20は、排気用開口部26に達すると、排気20aとして、排気用シュノーケル8へ排出される。
【0087】
これにより、排気20aは、排気用シュノーケル8を通して下方から上方へと導かれた後、排気用シュノーケル8の上端側の排気口9から大気中へ放出される。
【0088】
この際、排気20aは、エンジンルーム3内の機器との熱交換によって加熱されているため、外気に比して温度が高くなっている。そのため、排気口9から大気中へ放出された排気20aは、対流により主として上昇する流れを形成する。
【0089】
したがって、本実施形態の不整地運搬車1では、排気口9が吸気口7よりも高所に設けてあるので、排気口9より放出される排気20aが、外気よりも温度が高いまま吸気口7の付近に移動することを防ぐことができる。
【0090】
よって、本実施形態の不整地運搬車1は、排気口9からの排気20aが吸気口7から吸気する空気20に含まれることを抑制することができるため、吸気口7から吸気してエンジン4の冷却に用いる空気20の温度の低下を図ることができる。
【0091】
また、本実施形態では、吸気用シュノーケル6は、エンジンルーム3の前端側の吸気用開口部17に接続されている一方、排気用シュノーケル8は、エンジンルーム3の後端側で吸気用開口部17から離れた位置に設けられた排気用開口部26に接続されている。したがって、吸気口7から、吸気用シュノーケル6と、エンジンルーム3と、排気用シュノーケル8とを経て排気口9に至る空気20や排気20aの流れの経路は、隔壁を挟んで折り返すことはなく、下部走行体2の前方から後方へ向けて配置された一連の経路となる。
【0092】
これにより、本実施形態の不整地運搬車1では、エンジンルーム3に導かれる空気20と、エンジンルーム3からの排気20aとが隔壁を介して熱交換することはない。このことによっても、本実施形態の不整地運搬車1では、エンジン4の冷却に用いる空気20の温度の低下を図ることができる。
【0093】
更に、本実施形態では、排気口9は、吸気用シュノーケル6の配置された方向には向かないように設けられているので、排気口9から放出される排気20aが吸気口7の方向へ移動することは、より抑制される。このため、吸気口7から吸気する空気20に排気20aが含まれることをより抑制することができて、吸気口7から吸気してエンジン4の冷却に用いる空気20の温度の更なる低下を図ることができる。
【0094】
なお、本発明は、前記各実施形態にのみ限定されるものではなく、各図に示した各構成部材の寸法や各構成部材同士の寸法比は、図示するための便宜上のものであり、実際の寸法や寸法比を反映したものではない。
【0095】
吸気用シュノーケル6は、エンジンルーム3の前端側であれば、エンジンルーム3の前端部以外の個所に接続された構成であってもよい。たとえば、吸気用シュノーケル6は、エンジンルーム3の前端側における上部や左右の側部に接続されていてもよい。この場合、エンジンルーム3は、吸気用シュノーケル6を接続する個所に吸気用開口部17を備える構成とすればよい。ラジエータ5は、エンジンルーム3における吸気用開口部17の配置に応じて設置位置を適宜変更してよい。
【0096】
排気用シュノーケル8は、エンジンルーム3における吸気用シュノーケル6の接続位置から離れた後端側であれば、エンジンルーム3の上部以外の個所に接続された構成であってもよい。たとえば、エンジンルーム3の後端側の内外の機器の配置にもよるが、排気用シュノーケル8は、エンジンルーム3の後端部や、後端側の左右の側部に接続されていてもよい。この場合、エンジンルーム3は、排気用シュノーケル8を接続する個所に排気用開口部26を備える構成とすればよい。
【0097】
図3に示したエンジンルーム3の形状や、エンジンルーム3内の機器の配置は、図示するための便宜上のものであり、実際のエンジンルーム3の形状や機器の配置を反映したものではない。たとえば、ファン29は、ラジエータ5よりも空気20の流通方向の上流側に配置されていてもよい。エンジンルーム3内に油圧モータ31を備えた構成を例示したが、下部走行体2の駆動方式などに応じて、油圧モータ31に代えて油圧ポンプを備える構成としたり、発電機を備える構成としてもよい。更に、エンジンルーム3内には、図示した以外の機器を収納するようにしてもよいことは勿論である。
【0098】
吸気用シュノーケル6は、上端側が角筒形状となる構成を例示したが、上端側の断面形状は、たとえば、四角以外の多角形や、円、楕円など、任意の形状であってもよい。
【0099】
排気用シュノーケル8は、角筒形状のものを例示したが、四角以外の多角形の筒や、円筒、楕円筒、その他、任意の断面形状の筒であってもよい。また、上下方向の全長に亘って同じ断面形状を備えていなくてもよい。
【0100】
吸気口7よりも高所となる位置に排気口9を設けることができるようにしてあれば、吸気用シュノーケル6と排気用シュノーケル8の高さや、高さの差は自在に設定してよい。
【0101】
吸気口7は吸気用シュノーケル6の上端側に全周方向からの吸気が可能なように設けることが望ましいが、吸気口7の向きは特定の方向を向くように設定してもよい。
【0102】
たとえば、排気用シュノーケル8と吸気用シュノーケル6との高さの差や、排気用シュノーケル8から吸気用シュノーケル6までの距離が、排気口9から放出される通常の排気20aの勢いでは吸気口7まで到達できない程度に大きく設定されている場合は、排気口9は、排気用シュノーケル8の上端側に、吸気用シュノーケル6が設けられている方向に向けて設けられていてもよい。
【0103】
吸気用シュノーケル6は、吸気口7からの雨水の進入を防ぐ蓋21を備えることが好ましいが、雨水の進入を防ぐ別の手段を備える場合や、進入した雨水の排出手段を備える場合は、蓋21を備えない構成としてもよい。
【0104】
同様に、排気用シュノーケル8は、排気口9からの雨水の進入を防ぐ蓋28を備えることが好ましいが、雨水の進入を防ぐ別の手段を備える場合や、進入した雨水の排出手段を備える場合は、蓋28を備えない構成としてもよい。
【0105】
吸気用シュノーケル6の蓋21は、
図3に示したような2段の蓋部材23,25を備える構成とすることが好ましいが、図示した以外の任意の構成の蓋を採用してもよい。排気用シュノーケル8の蓋28も、図示した以外の任意の構成としてもよい。
【0106】
吸気用シュノーケル6は、
図4、
図5(a)(b)に示したような前端側に比して後端寄りの左右方向寸法が大となる断面形状の部分を備えることが好ましいが、備えていなくてもよい。
【0107】
本発明は、下部走行体2が履帯11に代えて車輪を備える形式の建設機械や、下部走行体2が履帯と車輪を併用する形式の建設機械に適用してもよい。
【0108】
また、本発明は、設定された水深Wでの走行を行う場合がある水陸両用の建設機械であれば、不整地運搬車1以外のいかなる種類、形式の建設機械に適用してもよいことは勿論である。
【0109】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。