(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電流遮断の過程で固定接触子から可動接触子を離間動作させる際に生じるアークに対し、駆動コイルの励磁により生じる磁力にて前記アークをガス中で移動させ前記アークに対して相対的にガスを吹き付ける磁気駆動作用と、前記アークによるガスの加熱により熱パッファ室内にてガスの蓄圧を行いこの蓄圧したガスを前記アークに対して吹き付ける熱パッファ作用との両者のアーク消弧作用を併用するガス遮断器であって、
前記可動接触子の離間動作によって前記固定接触子と前記可動接触子との間に生じるアーク発生箇所にガスを供給し、前記アーク発生箇所のガス密度を他の箇所よりも高くする機械式のパッファ機構を更に備え、
前記パッファ機構は、前記可動接触子を有する可動接触子側ユニットに設けられ、前記可動接触子を筒状としたその内側通路と前記パッファ機構内の機械パッファ室とを連通させて前記アーク発生箇所へのガスの供給を行うように構成されており、
前記可動接触子が離間動作する過程で前記熱パッファ作用が生じる位置に対応して前記可動接触子の内側通路の前記パッファ機構側の開口が前記パッファ機構外に配置され、前記熱パッファ作用によるガス放出の一部が前記内側通路を用いて行われるように構成されていることを特徴とするガス遮断器。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、ガス遮断器の第1実施形態について説明する。
図1に示す本実施形態のガス遮断器G1は、磁気駆動併用熱パッファ形のガス遮断器である。ガス遮断器G1は、ガス絶縁開閉装置(図示略)の一構成要素として用いられ、SF
6ガス等の絶縁ガスが収容されるタンク(図示略)内に組み込まれている。つまり、ガス遮断器G1は、絶縁ガスの雰囲気中に配置されている。
【0020】
ガス遮断器G1は、固定接触子11を有する固定接触子側ユニット10と、可動接触子21を有する可動接触子側ユニット20とを備える。固定接触子側ユニット10の固定接触子11と、可動接触子側ユニット20の可動接触子21とは同軸上に配置され、固定接触子11に対して可動接触子21が接離動作を行うように構成されている。因みに、
図1におけるガス遮断器G1の中心線から左側の状態は、ガス遮断器G1の閉状態(投入状態)であり、固定接触子11側の電路と可動接触子21側の電路とを接続した状態である。また、
図1におけるガス遮断器G1の中心線から右側の状態は、ガス遮断器G1の開状態(遮断状態)であり、固定接触子11側の電路と可動接触子21側の電路とを遮断した状態である。
【0021】
固定接触子側ユニット10において、固定接触子11は略円筒状に構成されており、その外側には同じく略円筒状のコイル支持部12が同軸状に設けられ、互いの基端部(
図1において上端部)が連結状態となっている。コイル支持部12は、軸方向長さが固定接触子11と略同等に構成されている。コイル支持部12の先端部(
図1において下端部)には、その先端周縁に沿って自身の中心軸周りに周回する巻回形状をなす駆動コイル13が取り付けられている。駆動コイル13のコイル支持部12とは反対側(
図1において下側)には、円環板状のアークランナ14が取り付けられている。アークランナ14の内径は固定接触子11の内径よりも若干大径であり、軸方向においてアークランナ14と固定接触子11とは所定距離を有して離間している。
【0022】
ここで、固定接触子11及びコイル支持部12は、固定接触子側ユニット10のベース部15に一体的に設けられており、これら部材及びアークランナ14は導体製である。そして、アークランナ14と駆動コイル13の一端とは電気的に接続され、駆動コイル13の他端とコイル支持部12の先端部とは電気的に接続されている。つまり、可動接触子21が固定接触子11から後退する際に可動接触子21とアークランナ14との間にアークが生じると、このアークに基づく電流がコイル支持部12(固定接触子11)、駆動コイル13及びアークランナ14を含む経路上で流れ、駆動コイル13が励磁されるようになっている。
【0023】
ベース部15には、固定接触子11、コイル支持部12、駆動コイル13及びアークランナ14の周囲を囲むように絶縁製のノズル部材16が取り付けられている。ノズル部材16は略円筒状をなし、基端部(
図1において上端部)がベース部15の周縁部に一体に連結されている。ノズル部材16の周壁部16aは、アークランナ14が設けられる位置よりも軸方向に十分に長く延設されている。また、ノズル部材16の周壁部16aは、コイル支持部12や駆動コイル13、アークランナ14と径方向に所定距離を有して離間している。
【0024】
ノズル部材16の周壁部16aの先端部(
図1において下端部)は、折り返されるようにして中心軸方向に向けて斜めに延びる形状をなすノズル部16bとして構成されている。ノズル部16bの先端部は、アークランナ14の内周縁近くまで延設されている。ノズル部16bの先端部の内径は、固定接触子11の内径と略同等に設定されている。
【0025】
ベース部15、ノズル部材16の周壁部16a、ノズル部16b、コイル支持部12、駆動コイル13及びアークランナ14で囲まれるようにして形成される略円筒状の空間は、熱パッファ室(蓄圧室)17としている。また、ノズル部16bの先端部はアークランナ14の近くまで延設されるものの、そのアークランナ14に対しては軸方向に所定距離を有して離間している。つまり、ノズル部16bの先端部とアークランナ14との間に形成される幅狭の開口は、熱パッファ室17内で蓄圧されたガスの噴射口17aとして機能する。このように固定接触子側ユニット10は、熱パッファ室17を含む熱パッファ部P1を備える。
【0026】
可動接触子側ユニット20において、可動接触子21は、導体製で略円筒状に構成されている。可動接触子21は、可動接触子側ユニット20のベース部22に対して固定接触子11と同軸上に支持され、また不動部材であるベース部22に対して軸方向に移動可能に支持されている。可動接触子21は、その外径が固定接触子11の内径と略同じに設定され、固定接触子11に対して内嵌にて嵌挿可能に構成されている。そして、可動接触子21は、駆動機構(図示略)により中心軸に沿った往復直線動作(
図1において上下動)、即ち固定接触子11に対して接離動作を行うようになっている。可動接触子21は、
図1の左側の閉状態(投入状態)では最も突出位置に配置され、
図1の右側の開状態(遮断状態)では最も後退位置に配置される。また、可動接触子21は、その動作過程で、アークランナ14の内縁部やノズル部16bの内縁部を通過する際に各内縁部に対して近接状態となる。
【0027】
円筒状をなす可動接触子21の内側部分は、ガスを流通させる内側通路21aとして機能する。可動接触子21と固定接触子11との接触時においては、可動接触子21の先端開口部(
図1において上端開口部)、即ち内側通路21aの一端が固定接触子11の内側空間18と連通する。可動接触子21の基端部には、内側通路21aの他端側と連通し径方向外側にて開口する接続通路21bが設けられている。
【0028】
また、固定接触子側ユニット10に熱パッファ部P1を備えるのに対し、可動接触子側ユニット20は機械パッファ部P2を備える。即ち、可動接触子側ユニット20のベース部22には、機械的なパッファ動作を行うべくシリンダ構造をなすパッファ機構23が組み込まれている。パッファ機構23は、ベース部22において固定接触子側ユニット10とは反対側に配置され、可動接触子21を取り囲むように設けられている。
【0029】
パッファ機構23は、パッファケース24、押圧板25及び付勢スプリング26を備えている。パッファケース24は、ベース部22に固定され、内側にパッファ室(機械パッファ室とする)27を有する中空構造をなしている。パッファケース24は、一対の挿通孔24a,24bを有し、各挿通孔24a,24bを可動接触子21が挿通している。パッファケース24内の機械パッファ室27は、その挿通する可動接触子21側が開口、即ち可動接触子21の外側面を含めた環状の略閉塞空間として構成される。
【0030】
機械パッファ室27内には、押圧板25が可動接触子21の軸方向(動作方向)と同方向に可動可能に収容されている。この場合、押圧板25は、その主平面が可動接触子21の軸方向に対向する状態(軸直交方向と平行な状態)を維持しながら、可動接触子21の軸方向に動作できるように設けられている。また、可動接触子21における接続通路21bより先端寄り部位には、自身の突出側への動作時に押圧板25と係止する係止部21cが設けられている。また、機械パッファ室27内の押圧板25の背面側には、付勢スプリング26が介装されている。押圧板25と可動接触子21の係止部21cとが係止可能な範囲においては、付勢スプリング26の付勢力にて押圧板25と可動接触子21の係止部21cとの係止状態が維持されるようになっている。
【0031】
ここで、可動接触子21の軸方向への突出・後退動作過程において、
図1左に示すガス遮断器G1の閉状態(投入状態)では、可動接触子21は最突出位置にあり固定接触子11に嵌入状態となっている。この状態では、可動接触子21の係止部21cとの係止により押圧板25が押し込まれ、付勢スプリング26が収縮状態にある。またこの場合、押圧板25の正面側(付勢スプリング26が設置された側とは反対側)の機械パッファ室27の容積が最大であり、機械パッファ室27と可動接触子21の接続通路21bとが連通状態にある。
【0032】
次いで、
図2(a)に示すように可動接触子21が固定接触子11に対して接触か離間かの境界状態では、付勢スプリング26の付勢力を受けて係止部21cに当接する状態が維持された押圧板25がその可動接触子21の後退動作に伴い機械パッファ室27の容積を小さくするように動作し、その容積は最大時の約半分となる。またこの場合も、機械パッファ室27と接続通路21bとが連通状態にある。
【0033】
次いで、
図2(b)に示すように可動接触子21の先端部が固定接触子11の先端部及びノズル部16bの先端部間の略中間部に位置してアークランナ14に近接する状態では、押圧板25がパッファケース24の内側面に当接してそれ以上の動作が規制され、可動接触子21の係止部21cとの係止が解除される。またこの状態では、押圧板25により機械パッファ室27の容積が零であり、可動接触子21の接続通路21bの開口がパッファケース24の挿通孔24bから外側位置、即ちガス絶縁開閉装置の図示略のタンク内空間に対して開放状態となる。
【0034】
そして、
図1右に示すガス遮断器G1の開状態(遮断状態)では、可動接触子21は最後退位置にあり固定接触子11から十分に離間、この場合ノズル部16bからも十分に離間した状態である。押圧板25と可動接触子21の係止部21cとはより離間した状態となり、機械パッファ室27の容積も零のままである。
【0035】
尚、パッファケース24において押圧板25の背面側の部位には、押圧板25にかかる背圧を軽減する貫通孔24cが設けられている。また、パッファケース24において押圧板25の正面側の部位には、パッファケース24の外部から内部(機械パッファ室27)への絶縁ガスの導入の際に開弁、その逆では閉弁する逆止弁28が設けられている。つまり、逆止弁28は、可動接触子21の突出動作に伴い押圧板25が機械パッファ室27の容積を大きくするように動作(
図2(b)から
図2(a)への変化)する際に自身が開弁して、押圧板25の動作負荷を軽減する。
【0036】
次に、ガス遮断器G1の動作、特に遮断動作を説明する。
図1左に示すガス遮断器G1の閉状態(投入状態)では、固定接触子11に可動接触子21の先端部が嵌入された状態となっており、固定接触子11側の電路と可動接触子21側の電路とが電気的な接続状態にある。
【0037】
このようなガス遮断器G1の閉状態から可動接触子21が後退動作し、
図1右に示す完全な開状態(遮断状態)に移行するまでの過程において、先ず、可動接触子21が若干後退し固定接触子11に対して可動接触子21の先端部が
図2(a)に示す接続・離間の境界位置付近となるまでは、パッファ機構23の押圧板25が付勢スプリング26の付勢力を受けていることで可動接触子21の後退動作に伴って機械パッファ室27の容積を小さくする。すると、機械パッファ室27内に存在する絶縁ガスが
図2(a)のa矢印のように接続通路21b及び内側通路21aを介して固定接触子11の内側空間18に放出され、初期のアークAが発生し得る固定接触子11の先端部及びその周囲の絶縁ガス密度が予め高められる。
【0038】
これにより、固定接触子11の先端部と可動接触子21の先端部との間は高密度の絶縁ガス雰囲気となることから、更に可動接触子21が後退動作する過程で固定接触子11と可動接触子21との各先端部間にてアークAの発生(アークAの電流零点消弧後の再発生等)がより生じ難い状況となる。尚、パッファ機構23によるガス放出動作は、可動接触子21が
図2(a)よりも更に後退動作しても接続通路21bが機械パッファ室27との接続が維持されている間継続する。
【0039】
次いで、固定接触子11の先端部と可動接触子21の先端部との間にアークAが生じた場合、可動接触子21が更に後退して
図2(b)の位置付近まで来ると、固定接触子11と可動接触子21との先端部間で継続して生じているアークAは固定接触子11からアークランナ14側に移行する。すると、このアークAに基づく電流がコイル支持部12、駆動コイル13及びアークランナ14を含む経路上で流れ、駆動コイル13が励磁状態になる。
【0040】
これにより、可動接触子21の先端部とアークランナ14の内縁部との間に生じているアークAがそれぞれ先端部及び内縁部に沿って
図2(b)のb矢印のように周回駆動し、アークAが高速でガス内を移動する。換言すれば、アークAに対して相対的にガスを吹き付けることに相当するアーク消弧作用が生じるようになっている(磁気駆動作用)。因みに、円筒状をなす可動接触子21の先端部に沿うようにしてアークAが周回することから、可動接触子21の先端部のアークAによる摩耗は局部的でなく平均的となる。
【0041】
また、可動接触子21の先端部とアークランナ14の内縁部との間のアークAは、熱パッファ室17の開口部であるノズル部16b近傍であるため、アークAが周回駆動することで熱パッファ室17のガスの温度が上昇し、このガスの温度上昇に伴う体積膨張により熱パッファ室17内にガスの蓄圧がなされる。
【0042】
これと並行して、固定接触子11周りやノズル部16b等から絶縁ガスが
図2(b)のc矢印のように勢い良く可動接触子21の内側通路21aと接続通路21bとを介してガス絶縁開閉装置のタンク内(
図1及び
図2のガス遮断器G1の周囲空間)に放出される。つまり、可動接触子21の先端部とアークランナ14の内縁部との間のアークAに対して絶縁ガスが吹き付けられ、これによるアーク消弧作用が生じる(熱パッファ作用)。この場合、熱パッファ室17内等のガス圧力が過度に上昇することも抑制可能である。
【0043】
また、可動接触子21の更なる後退動作により、
図1右に示す完全な開状態(遮断状態)となるまでに可動接触子21の先端部がノズル部16bの内縁部から離間すると、
図1のd矢印のように熱パッファ室17内等に蓄圧された絶縁ガスがその可動接触子21の先端部とノズル部16bの内縁部との隙間から勢い良く放出される。つまりこの場合でも、可動接触子21の先端部とアークランナ14の内縁部との間で継続して生じているアークAに絶縁ガスを吹き付けることになり、これによってもアーク消弧作用が生じるようになっている(熱パッファ作用)。
【0044】
このように本実施形態のガス遮断器G1の遮断動作では、先ず機械パッファ部P2が動作して固定接触子11と可動接触子21との間のアークAの発生箇所に向けて直接的なガス供給が行われてガス雰囲気が高密度とされ、初期のアークAの発生(アークAの電流零点消弧後の再発生等)が生じ難くなっている。また、アークAが生じた場合でもその後に駆動コイル13による磁気駆動や熱パッファ部P1の動作が行われてより確実なアーク消弧が行われるため、遮断性能の向上が期待できるものとなっている。
【0045】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)可動接触子21の離間動作によってガスの供給動作を行う機械式のパッファ機構23が備えられて、固定接触子11と可動接触子21との間に生じるアークAの発生箇所にガスが供給され、そのアークAの発生箇所でのガス密度が他の箇所よりも高くされる。つまり、固定接触子11と可動接触子21との間が高密度のガス雰囲気となることでアークAの発生(アークAの電流零点消弧後の再発生等)が生じ難くなり、ガス遮断器G1の遮断性能の向上を図ることができる。
【0046】
(2)固定接触子11と可動接触子21との間のアークAの発生箇所へのガス供給を、筒状をなす可動接触子21の内側通路21aを用いる構成としたため、アークAの発生箇所への直接的な(ノズル部16bよりも近い位置からの)ガス供給を好適に行うことができる。また、可動接触子21の内側スペースを用いることでその内側通路21aに相当する通路を別途設ける場合等と比べて省スペース化、構造の簡素化等が期待できる。
【0047】
(3)可動接触子21が離間動作する過程で熱パッファ作用が生じる位置付近になると(
図2(b)参照)、可動接触子21の内側通路21aと連通するパッファ機構23側の接続通路21bの開口がパッファ機構23外に配置される。つまり、熱パッファ作用によるガス放出の一部が可動接触子21の内側通路21aを通じて行われることで、熱パッファ作用を生じさせることの他、熱パッファによるガス圧力の過度な上昇を抑制することができる。また、熱パッファによるガス圧力が過度に上昇した時等、そのガスはパッファ機構23内に放出されないため、パッファ機構23の破損を防止することができる。
【0048】
(第2実施形態)
以下、ガス遮断器の第2実施形態について説明する。
図3に示す本実施形態のガス遮断器G2は、磁気駆動併用熱パッファ形のガス遮断器である。ガス遮断器G2は、ガス絶縁開閉装置(図示略)の一構成要素として用いられ、SF
6ガス等の絶縁ガスが収容されるタンク(図示略)内に組み込まれている。つまり、ガス遮断器G2は、絶縁ガスの雰囲気中に配置されている。
【0049】
ガス遮断器G2は、固定接触子31を有する固定接触子側ユニット30と、可動接触子41を有する可動接触子側ユニット40とを備える。固定接触子側ユニット30の固定接触子31と、可動接触子側ユニット40の可動接触子41とは同軸上に配置され、固定接触子31に対して可動接触子41が接離動作を行うように構成されている。因みに、
図3におけるガス遮断器G2の中心線から左側の状態は、ガス遮断器G2の閉状態(投入状態)であり、固定接触子31側の電路と可動接触子41側の電路とを接続した状態である。また、
図3におけるガス遮断器G2の中心線から右側の状態は、ガス遮断器G2の開状態(遮断状態)であり、固定接触子31側の電路と可動接触子41側の電路とを遮断した状態である。
【0050】
固定接触子側ユニット30において、固定接触子31は、導体製の第1固定接触子31aと第2固定接触子31bとを有し、第1固定接触子31aが径方向外側、第2固定接触子31bが径方向内側で共に同心円の略円筒状をなしている。第1及び第2固定接触子31a,31bは、図示しない箇所にて互いに電気的に接続状態となっている。因みに、本実施形態の固定接触子側ユニット30には熱パッファ動作や磁気駆動を行う機能は備えられておらず、可動接触子側ユニット40の方に機械パッファ動作を行う機能に加えて熱パッファ動作や磁気駆動を行う機能が備えられている。
【0051】
可動接触子側ユニット40において、可動接触子41は、導体製の第1可動接触子41aと第2可動接触子41bとを有し、第1可動接触子41aが径方向外側、第2可動接触子41bが径方向内側で共に同心円の略円筒状をなしている。第1及び第2可動接触子41a,41bは、可動接触子側ユニット40のベース部42を介して互いに電気的に接続状態となっている。可動接触子41(第1及び第2可動接触子41a,41b)は、固定接触子31(第1及び第2固定接触子31a,31b)と同軸上に配置され、軸方向に移動可能に支持されている。
【0052】
また、第1可動接触子41aは、その外径が第1固定接触子31aの内径と略同じに設定され、第1固定接触子31aに対して内嵌にて嵌挿可能に構成されている。第2可動接触子41bは、その内径が第2固定接触子31bの外径と略同じに設定され、第2固定接触子31bに対して外嵌にて嵌挿可能に構成されている。そして、可動接触子41は、駆動機構(図示略)により中心軸に沿った往復直線動作(
図3において上下動)、即ち固定接触子31に対して接離動作を行うようになっている。可動接触子41は、
図3の左側の閉状態(投入状態)では最も突出位置に配置され、
図3の右側の開状態(遮断状態)では最も後退位置に配置される。また、可動接触子41と一体動作する後述のアークランナ45やノズル部46bの各内縁部は、その動作過程で第2固定接触子31bに対して近接状態となる。
【0053】
尚、第1可動接触子41aと上記の第1固定接触子31aとは、外周側に位置して主として電路接続を図るために設けられている。これに対し、第2可動接触子41bと上記の第2固定接触子31bとは、内周側に位置して主としてアークを切るために設けられている。つまり、第1及び第2可動接触子41a,41bは共に軸方向の突出位置が同じである一方、上記の第1及び第2固定接触子31a,31bは第2固定接触子31b側が相対的に軸方向に突出している。
【0054】
そのため、可動接触子41が固定接触子31に対して離間動作する際、第1可動接触子41aと第1固定接触子31aとが先に離間し、第2可動接触子41bと第2固定接触子31bとの離間は後に行われ、アークが第2可動接触子41bと第2固定接触子31bとの間で生じるようにしている。一方、接続動作については、第2可動接触子41bと第2固定接触子31bとが先に接続し、第1可動接触子41aと第1固定接触子31aとの接続が後に行われる。
【0055】
ベース部42における第1及び第2可動接触子41a,41bの間には、略円筒状のコイル支持部43が同軸状に設けられている。コイル支持部43の先端部には、その先端周縁に沿って自身の中心軸周りに周回する巻回形状をなす駆動コイル44が取り付けられている。駆動コイル44のコイル支持部43とは反対側には、円環板状のアークランナ45が取り付けられている。アークランナ45の内径は第2可動接触子41bの内径よりも若干大径であり、軸方向においてアークランナ45と第2可動接触子41bとは所定距離を有して離間している。
【0056】
ここで、可動接触子41(第1及び第2可動接触子41a,41b)及びコイル支持部43は、可動接触子側ユニット40のベース部42に一体的に設けられており、これら部材及びアークランナ45は導体製である。そして、アークランナ45と駆動コイル44の一端とは電気的に接続され、駆動コイル44の他端とコイル支持部43の先端部とは電気的に接続されている。つまり、第2可動接触子41bが第2固定接触子31bから後退する際に可動接触子41と一体で動作するアークランナ45と第2固定接触子31bの間にアークが生じると、このアークに基づく電流がコイル支持部43、駆動コイル44及びアークランナ45を含む経路上で流れ、駆動コイル44が励磁されるようになっている。
【0057】
ベース部42には、第2可動接触子41b、コイル支持部43、駆動コイル44及びアークランナ45の周囲を囲むように絶縁製のノズル部材46が取り付けられている。ノズル部材46は略円筒状をなし、基端部(
図3において下端部)が第1可動接触子41aの先端内側面に一体に連結されている。ノズル部材46の周壁部46aは、アークランナ45が設けられる位置よりも軸方向に十分に長く延設されている。また、ノズル部材46の周壁部46aは、コイル支持部43や駆動コイル44、アークランナ45と径方向に所定距離を有して離間している。
【0058】
ノズル部材46の周壁部46aの先端部(
図3において上端部)は、折り返されるようにして中心軸方向に向けて斜めに延びる形状をなすノズル部46bとして構成されている。ノズル部46bの先端部は、アークランナ45の内周縁近くまで延設されている。ノズル部46bの先端部の内径は、第2可動接触子41bの内径と略同等に設定されている。
【0059】
ベース部42、ノズル部材46の周壁部46a、ノズル部46b、コイル支持部43、駆動コイル44及びアークランナ45で囲まれるようにして形成される略円筒状の空間は、熱パッファ室(蓄圧室)47としている。また、ノズル部46bの先端部はアークランナ45の近くまで延設されるものの、そのアークランナ45に対しては軸方向に所定距離を有して離間している。つまり、ノズル部46bの先端部とアークランナ45との間に形成される幅狭の開口は、熱パッファ室47内で蓄圧されたガスの噴射口47aとして機能する。このように可動接触子側ユニット40は、熱パッファ室47を含む熱パッファ部P1を備える。尚、熱パッファ室47は、コイル支持部43に設けた径方向に貫通する貫通孔43aにて、ベース部42、コイル支持部43及び第2可動接触子41b等で形成される導入通路48とも連通している。
【0060】
また、可動接触子側ユニット40においては、熱パッファ部P1に加えて機械パッファ部P2を備える。即ち、可動接触子側ユニット40には、機械的なパッファ動作を行うべくシリンダ構造をなすパッファ機構50が組み込まれている。パッファ機構50は、ベース部42の一部が中空構造をなしその空間を機械パッファ室51とし、その機械パッファ室51内に不動押圧部52が配置されてなる。つまり、パッファ機構50は、不動押圧部52に対する可動接触子41の軸方向への突出・後退動作に伴い機械パッファ室51の容積を変化させることで、導入通路48等を通じた機械パッファ動作を行うものである。
【0061】
ここで、可動接触子41の軸方向への突出・後退動作過程において、
図3左に示すガス遮断器G2の閉状態(投入状態)では、可動接触子41は最突出位置にあり固定接触子31に対して嵌合状態となっている。またこの状態では、機械パッファ室51内での不動押圧部52の相対位置は、その機械パッファ室51の容積を最大とする位置となっている。
【0062】
次いで、
図4(a)に示すように可動接触子41が固定接触子31に対して接触か離間かの境界状態では、可動接触子41が後退動作したことで不動押圧部52の相対位置が機械パッファ室51内で奥側に相対移動し、機械パッファ室51の容積は小さくなる。
【0063】
次いで、
図4(b)に示すように固定接触子31の先端部が可動接触子41のノズル部46bの先端部付近でアークランナ45に近接する状態では、可動接触子41が更に後退動作したことで不動押圧部52の相対位置が機械パッファ室51内で更に奥側に相対移動し、機械パッファ室51の容積は更に小さくなる。
【0064】
そして、
図3右に示すガス遮断器G2の開状態(遮断状態)では、可動接触子41は最後退位置にあり、固定接触子31が可動接触子41のノズル部46bからも十分に離間した状態である。またこの状態では、可動接触子41が最も後退動作したことで不動押圧部52の相対位置が機械パッファ室51内で最も奥側に相対移動し、機械パッファ室51の容積は最小となる。
【0065】
また、機械パッファ室51には、第2可動接触子41b側の導入通路48との間に逆止弁53が設けられている。この逆止弁53は、機械パッファ室51から導入通路48側への絶縁ガスの導入の際には開弁、その逆では閉弁動作する。また、不動押圧部52には、外部から機械パッファ室51内にガスを導入する際には開弁、その逆では閉弁動作する逆止弁54が設けられている。この逆止弁54は、可動接触子41の突出動作に伴い機械パッファ室51の容積が大きくなる際にその機械パッファ室51内が大きく負圧となることを抑制し、可動接触子41の動作負荷を軽減する。更に、不動押圧部52には、機械パッファ室51内のガス圧の上限を制限する圧力調整弁55が設けられている。この圧力調整弁55は、機械パッファ室51内のガス圧が設定圧以上になると開弁して外部に放出可能とし、機械パッファ室51内がそれ以上高圧となることを防止する。
【0066】
次に、ガス遮断器G2の動作、特に遮断動作を説明する。
図3左に示すガス遮断器G2の閉状態(投入状態)では、固定接触子31(第1及び第2固定接触子31a,31b)の先端部と可動接触子41(第1及び第2可動接触子41a,41b)の先端部とが嵌合状態となっており、固定接触子31側の電路と可動接触子41側の電路とが電気的な接続状態にある。
【0067】
このようなガス遮断器G2の閉状態から可動接触子41が後退動作し、
図3右に示す完全な開状態(遮断状態)に移行するまでの過程において、先ず、可動接触子41が若干後退し第2可動接触子41bと第2固定接触子31bとの各先端部同士が
図4(a)に示す接続・離間の境界位置付近となる状態では、この状態となるのに先だって第1可動接触子41aと第1固定接触子31aとが既に所定距離を以て離間状態となっている。つまり、第2可動接触子41bと第2固定接触子31bとの接続が確立されている状態で先に第1可動接触子41aと第1固定接触子31aとの離間を図り、後で離間する第2可動接触子41bと第2固定接触子31bとの間でアークAが生じるようにしている。
【0068】
また、可動接触子41の後退動作に伴い、不動押圧部52が機械パッファ室51の奥側に相対的に移動して機械パッファ室51の容積を小さくする。すると、機械パッファ室51内に存在する絶縁ガスが
図4(a)のa矢印のように逆止弁53及び導入通路48に放出され、初期のアークAが発生し得る第2可動接触子41bの先端部及びその周囲の絶縁ガス密度が予め高められる。因みにこの場合、コイル支持部43の貫通孔43a、熱パッファ室47等を経ても絶縁ガスが第2固定接触子31b付近にも放出される。つまり、第2可動接触子41bと第2固定接触子31bとの間に生じ得るアークAに備え、その付近を高密度の絶縁ガス雰囲気とすることで、更に可動接触子41(第2可動接触子41b)が後退動作する過程で固定接触子31(第2固定接触子31b)との各先端部間にてアークAの発生(アークAの電流零点消弧後の再発生等)がより生じ難い状況となる。尚、パッファ機構50によるガス放出動作は、可動接触子41が
図3右に示す最後退位置まで動作する間継続する。
【0069】
次いで、第2固定接触子31bの先端部と第2可動接触子41bの先端部との間にアークAが生じた場合、可動接触子41が更に後退して
図4(b)の位置付近まで来ると、第2固定接触子31bと第2可動接触子41bとの先端部間で継続して生じているアークAは第2可動接触子41bからアークランナ45側に移行する。すると、このアークAに基づく電流がコイル支持部43、駆動コイル44及びアークランナ45を含む経路上で流れ、駆動コイル44が励磁状態になる。
【0070】
これにより、第2固定接触子31bの先端部とアークランナ45の内縁部との間に生じているアークAがそれぞれ先端部及び内縁部に沿って
図4(b)のb矢印のように周回駆動し、アークAが高速でガス内を移動する。換言すれば、アークAに対して相対的にガスを吹き付けることに相当するアーク消弧作用が生じるようになっている(磁気駆動作用)。因みに、円筒状をなす第2固定接触子31bの先端部に沿うようにしてアークAが周回することから、第2固定接触子31bの先端部のアークAによる摩耗は局部的でなく平均的となる。
【0071】
また、第2固定接触子31bの先端部とアークランナ45の内縁部との間のアークAは、熱パッファ室47の開口部であるノズル部46b近傍であるため、アークAが周回駆動することで熱パッファ室47のガスの温度が上昇し、このガスの温度上昇に伴う体積膨張により熱パッファ室47内にガスの蓄圧がなされる。因みに、
図4等で熱パッファ室47と連通する導入通路48におけるアークランナ45と第2可動接触子41bとの間の開口からガスが漏れることが懸念されるが、作図上の問題で実際は閉塞状態となっており(図示略)、熱パッファ室47内のガス圧は高まる。
【0072】
尚、可動接触子41の後退動作中はパッファ機構50によるガス放出動作が継続するため逆止弁53が連続して開弁状態となっている。そのため、熱パッファ室47のガス圧が高くなって
図4(b)のc矢印のように機械パッファ室51内にガスが逆流した場合等、その機械パッファ室51内のガス圧が設定圧以上にならないように圧力調整弁55が動作する。
【0073】
そして、可動接触子41の更なる後退動作により、
図3右に示す完全な開状態(遮断状態)となるまでに第2固定接触子31bの先端部がノズル部46bの内縁部から離間すると、僅かに離間した段階で
図3のd矢印のように熱パッファ室47内等に蓄圧された絶縁ガスがその第2固定接触子31bの先端部とノズル部46bの内縁部との隙間から勢い良く放出される。つまり、第2固定接触子31bの先端部とアークランナ45の内縁部との間で継続して生じているアークAに対して絶縁ガスが勢い良く吹き付けられ、これによりアーク消弧作用が生じる(熱パッファ作用)。
【0074】
このように本実施形態のガス遮断器G2の遮断動作においても、先ず機械パッファ部P2が動作して第2固定接触子31bと第2可動接触子41bとの間のアークAの発生箇所に向けて直接的なガス供給が行われてガス雰囲気が高密度とされ、初期のアークAの発生(アークAの電流零点消弧後の再発生等)が生じ難くなっている。また、アークAが生じた場合でもその後に駆動コイル44による磁気駆動や熱パッファ部P1の動作が行われてより確実なアーク消弧が行われるため、遮断性能の向上が期待できるものとなっている。
【0075】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)可動接触子41の離間動作によってガスの供給動作を行う機械式のパッファ機構50が備えられて、第2固定接触子31bと第2可動接触子41bとの間に生じるアークAの発生箇所にガスが供給され、そのアークAの発生箇所でのガス密度が他の箇所よりも高くされる。つまり、第2固定接触子31bと第2可動接触子41bとの間が高密度のガス雰囲気となることでアークAの発生(アークAの電流零点消弧後の再発生等)が生じ難くなり、ガス遮断器G2の遮断性能の向上を図ることができる。
【0076】
(2)可動接触子側ユニット40において、アークAの発生箇所にパッファ機構50にてガス供給を行うための導入通路48が熱パッファ室47と別に設けられるため、パッファ機構50の機能に即した導入通路48を個別に設定することができる。本実施形態の導入通路48は、コイル支持部43、駆動コイル44及びアークランナ45の内側で第2可動接触子41b周りに設けられるため、アークAの発生箇所への直接的な(ノズル部46bよりも近い位置からの)ガス供給を好適に行うことができる。
【0077】
(3)第1固定接触子31aに内嵌する第1可動接触子41aと第2固定接触子31bに外嵌する第2可動接触子41bとの間に熱パッファ室47、駆動コイル44及び導入通路48等を配置することで、効率的な配置構成とすることが期待できる。
【0078】
尚、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第1実施形態では、筒状の可動接触子21の内側通路21aをガス流路として使用したが、内側通路以外のガス流路を別途用いる態様としてもよい。この場合、可動接触子21を柱状とすることも可能である。
【0079】
・上記第1実施形態では、パッファ機構23をパッファケース24(機械パッファ室27)、押圧板25及び付勢スプリング26等にて構成したが、これに限定されるものではない。例えば、パッファケース24(機械パッファ室27)に相当する空間を可動接触子側ユニット20のベース部22に一体に構成してもよい。また、押圧板25を可動接触子21に一体に設けて、付勢スプリング26を省略してもよい。また、可動接触子21の往復動の中で、その内側通路21aと連通する接続通路21bの開口がパッファ機構23内に収まるように、例えばパッファケース24(機械パッファ室27)を大きく設定してもよい。
【0080】
・上記第2実施形態では、第1及び第2固定接触子31a,31bと第1及び第2可動接触子41a,41bというように各接触子を2つずつ用いる態様としたが、1つの固定接触子及び可動接触子を用いる態様としてもよい。
【0081】
・上記第2実施形態では、パッファ機構50を可動接触子側ユニット40のベース部42に一体に構成した機械パッファ室51及び不動押圧部52等にて構成したが、これに限定されるものではない。例えば、機械パッファ室51を有するケース部材をベース部42とは別に設けてもよい。
【0082】
・また、上記した各変更例以外で、ガス遮断器G1,G2の構成を適宜変更してもよい。絶縁ガスは、SF
6ガス以外を用いてもよい。