(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明では、リフトデータ(オリジナルリフトデータ)から求めたプロフィールデータ(カム回転角度に応じた砥石の進退位置)を補正して加工精度(カムの外周形状の精度)を向上させているが、加工面(カムの外周面)の加工品質(加工面の粗さ)の低下を防止するものではない。つまり、リフトデータ(オリジナルリフトデータ)から求めたプロフィールデータを補正することで、カムの外周形状(輪郭形状)の誤差の低減には効果があるが、カム外周面の各加工位置において、加工条件の変化が大きくなる個所の形状は、ほぼそのまま残されるので、カムの外周面の加工品質(加工面の粗さ)の低下を防止する効果は期待できない。
【0008】
一部の加工面における加工品質の低下を防止するには、加工条件の変化が大きくなる個所で、カムの輪郭形状を適切に補正する必要がある。しかし、加工条件の変化が大きくなる個所の形状を不用意に補正すると、カムの輪郭形状の精度を要求された許容誤差範囲内に収めることができなくなる可能性がある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、カムのオリジナルリフトデータにおける加工条件の変化が大きくなる個所のデータを適切に補正してカムの加工面の加工品質の低下を防止するとともに、カムの輪郭形状の誤差を許容誤差範囲内に収めることができる、カム加工面のリフトデータの補正方法及びカム加工面の加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係るカム加工面のリフトデータの補正方法及びカム加工面の加工方法は、次の手段をとる。まず、本発明の第1の発明は、カムの外周面を加工する際のカム加工面のリフトデータの補正方法であって、オリジナルリフトデータには、カム回転軸線回りのカム回転角度に対するタペットのリフト量であるオリジナルリフト量が示されており、補正演算手段を用いて、前記カム回転角度に対する前記オリジナルリフト量に基づいた前記カムの外周面の各加工位置における加工条件の変化率が、予め設定した変化率閾値以下となるように前記オリジナルリフトデータの前記オリジナルリフト量を仮補正し、前記各加工位置における前記仮補正したリフト量と前記オリジナルリフト量との差である仮リフト誤差と予め設定したリフト誤差閾値、及び前記加工条件の前記変化率と前記変化率閾値、に基づいて、前記カム回転角度に対する前記オリジナルリフト量を最終補正リフト量へと補正する、カム加工面のリフトデータの補正方法である。
【0011】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るカム加工面のリフトデータの補正方法であって、前記加工条件には、前記オリジナルリフトデータの前記オリジナルリフト量を前記カム回転角度で2回微分したリフト量加速度と、前記カム回転軸線の方向から見た場合において、前記カム回転軸線に直交する仮想平面上の直線であって前記カム回転軸線を通り前記カムと一体となって回転して前記カムの回転角度を示す直線であるカム回転角度仮想直線と、前記仮想平面上の直線であって前記カムと前記タペットとの接点における接線である仮想接線と、が成す角度である接線角度と、が有り、前記リフト量加速度に対する前記変化率閾値として、前記リフト量加速度を前記カム回転角度で1回微分した前記リフト量加速度の変化率であるリフト量加加速度の上限として加加速度閾値が予め設定されており、前記接線角度に対する前記変化率閾値として、前記接線角度を前記カム回転角度で1回微分した前記接線角度の変化率である接線角度変化率の上限として接線角度変化率閾値が予め設定されており、前記補正演算手段を用いて、前記カム回転角度に対する前記オリジナルリフト量に基づいて前記リフト量加加速度を求め、前記カム回転角度に対する前記オリジナルリフト量に基づいて前記接線角度変化率を求め、求めた前記リフト量加加速度が前記加加速度閾値以下となるように、かつ求めた前記接線角度変化率が前記接線角度変化率閾値以下となるように、前記オリジナルリフト量を前記仮補正する、カム加工面のリフトデータの補正方法である。
【0012】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係るカム加工面のリフトデータの補正方法であって、前記補正演算手段にて、前記カム回転角度に対する前記オリジナルリフト量を前記カム回転角度で3回微分した前記リフト量加加速度を求める、加加速度演算ステップと、前記補正演算手段にて、最大となる前記リフト量加加速度である最大加加速度を求め、求めた前記最大加加速度を前記加加速度閾値に縮小する補正率である加加速度補正率を求める、加加速度補正率演算ステップと、前記補正演算手段にて、前記カム回転角度に対する前記接線角度を求め、求めた前記接線角度を前記カム回転角度で1回微分した前記接線角度変化率を求める、接線角度変化率演算ステップと、前記補正演算手段にて、最大となる前記接線角度変化率である最大接線角度変化率を求め、求めた前記最大接線角度変化率を前記接線角度変化率閾値に縮小する補正率である接線角度補正率を求める、接線角度補正率演算ステップと、前記補正演算手段にて、前記加加速度補正率と前記接線角度補正率とに基づいて第1仮リフト補正率を求める、第1仮リフト補正率演算ステップと、前記補正演算手段にて、前記第1仮リフト補正率に基づいて前記リフト量加加速度を補正した仮補正リフト量加加速度と、前記第1仮リフト補正率に基づいて前記接線角度変化率を補正した仮補正接線角度変化率と、に基づいて前記カム回転角度に対する前記オリジナルリフト量を仮補正リフト量へと前記仮補正した仮補正リフトデータを作成する、仮補正リフトデータ作成ステップと、前記補正演算手段にて、前記カム回転角度に対して、前記仮補正リフト量と前記オリジナルリフト量との差である前記仮リフト誤差を求める、仮リフト誤差演算ステップと、前記補正演算手段にて、最大となる前記仮リフト誤差である最大仮リフト誤差を求め、求めた前記最大仮リフト誤差を前記リフト誤差閾値に縮小する補正率である第2仮リフト補正率を求める、第2仮リフト補正率演算ステップと、前記補正演算手段にて、前記第1仮リフト補正率と前記第2仮リフト補正率とに基づいて最終リフト補正率を求める、最終リフト補正率演算ステップと、前記補正演算手段にて、前記最終リフト補正率に基づいて、前記カム回転角度に対する前記オリジナルリフト量を前記最終補正リフト量へと補正した最終補正リフトデータを作成する、最終補正リフトデータ作成ステップと、を有する、カム加工面のリフトデータの補正方法である。
【0013】
次に、本発明の第4の発明は、上記第3の発明に係るカム加工面のリフトデータの補正方法を、対象とするカムの外周面の全周あるいは外周面の一部、に適用する、カム加工面のリフトデータの補正方法である。
【0014】
次に、本発明の第5の発明は、上記第3の発明または第4の発明に係るカム加工面のリフトデータの補正方法であって、前記第1仮リフト補正率演算ステップでは、前記加加速度補正率と前記接線角度補正率の小さな方の値、かつ同じ値の場合はいずれか一方の値、を前記第1仮リフト補正率とするとともに前記第1仮リフト補正率を1/3以上かつ1以下の値にガードする、カム加工面のリフトデータの補正方法である。
【0015】
次に、本発明の第6の発明は、上記第3の発明〜第5の発明のいずれか1つに係るカム加工面のリフトデータの補正方法であって、前記最終リフト補正率演算ステップでは、前記第1仮リフト補正率と前記第2仮リフト補正率の大きな方の値、かつ同じ値の場合はいずれか一方の値、を前記最終リフト補正率とするとともに前記最終リフト補正率を1/3以上かつ1以下の値にガードする、カム加工面のリフトデータの補正方法である。
【0016】
次に、本発明の第7の発明は、上記第3の発明〜第6の発明のいずれか1つに係るカム加工面のリフトデータの補正方法にて得られた最終補正リフトデータを用いて、対象カムの加工面を研削盤にて研削加工する、カム加工面の加工方法である。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、カムの外周面の各加工位置における加工条件の変化率が、変化率閾値以下となるようにオリジナルリフト量を仮補正することで、カムの加工面の加工品質の低下を防止することができる。かつ、仮補正したリフト量とオリジナルリフト量との差である仮リフト誤差と、リフト誤差閾値と、前記加工条件の前記変化率と、前記変化率閾値と、に基づいてオリジナルリフト量を最終補正リフト量へと補正することで、カムの輪郭形状の誤差を許容誤差範囲内に収めることができる。
【0018】
第2の発明によれば、加工条件としてリフト量加速度と接線角度を用い、リフト量加速度の変化率(加加速度)が加加速度閾値以下となるように、かつ接線角度の変化率が接線角度変化率閾値以下となるように、オリジナルリフト量を仮補正する。これにより、カムのオリジナルリフトデータにおける加工条件の変化が大きくなる個所のデータを適切に補正してカムの加工面の加工品質の低下を防止することができる。
【0019】
第3の発明によれば、オリジナルリフトデータと、リフト量加加速度と、加加速度閾値と、接線角度変化率と、接線角度変化率閾値と、リフト誤差閾値と、に基づいて最終リフト補正率を求め、最終リフト補正率と、オリジナルリフトデータと、から最終補正リフトデータを作成する。これにより、カムの加工面の加工品質の低下を防止するとともにカムの輪郭形状の誤差を許容誤差範囲内に収めることができるカム加工面のリフトデータの補正方法を、適切かつ具体的に実現することができる。
【0020】
第4の発明によれば、カム外周面の全面に適用する場合では、カム加工面の加工品質の低下を全周にわたって防止することができる。またカム外周面の一部に適用する場合では、オリジナルリフトデータにおける加工条件の変化が大きくなる個所に適用することで、当該個所の加工品質の低下を適切に防止することができる。
【0021】
第5の発明によれば、第1仮リフト補正率を適切に求めることが可能であり、適切な仮補正リフトデータを得ることができる。
【0022】
第6の発明によれば、最終リフト補正率を適切に求めることが可能であり、適切な最終補正リフトデータを得ることができる。
【0023】
第7の発明によれば、研削盤にてカム加工面を研削する際、オリジナルリフトデータにおいてカムの外周面の各加工位置における加工条件の変化率が比較的大きな個所にてリフト誤差閾値以内で形状を補正し、カム加工面の加工品質(加工面の粗さ)と、カムの輪郭形状の精度と、を両立させた加工を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。まず、本発明のカム加工面のリフトデータの補正方法にて得られた最終補正リフトデータを用いて、対象カムの加工面を研削加工する研削盤2(研削盤システム1)の全体構成について、
図1〜
図4を用いて説明する。
【0026】
●[研削盤システム1の外観(
図1)]
図1に研削盤システム1の外観の例を示す。研削盤システム1は、内部に
図2〜
図4に示す研削盤2を収容しており、カバー1A、可動扉1B、微調整ハンドル1C、1D、制御装置80等を有している。なお制御装置80は、操作盤内に配置されていてもよいし、研削盤システム1の内部の制御盤内に配置されていてもよい。
【0027】
●[研削盤2の全体構成(
図2〜
図4)]
図2〜
図4は、
図1に示した研削盤システム1に収容されている研削盤2の全体構成の例を示している。研削盤2は、基台10、テーブル20、主軸台30、心押台40、砥石台50等を有している。なお、X軸とY軸とZ軸が記載されている図では、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Y軸方向は鉛直上方を示し、Z軸方向は砥石55がワークW(この場合、カムシャフト)に切り込む水平方向を示し、X軸方向は主軸31の回転軸線31Jと平行な水平方向を示している。この例ではワークWはカムシャフトであり、当該ワークWには、カムC1〜C4が形成されている。そして研削盤2は、カムC1〜C4を研削加工する。
【0028】
基台10は、平面視において略T字状に構成されており、X軸方向に沿って延びるX軸案内レール12が設けられ、X軸方向に沿って延びるX軸スリット12Kが設けられている。また基台10には、Z軸方向に沿って延びるZ軸案内レール15が設けられ、Z軸方向に沿って延びるZ軸スリット15Kが設けられている。
【0029】
砥石台50は、基台10に載置され、Z軸案内レール15に案内されて、Z軸方向に沿って往復移動可能である。砥石台駆動モータ50Mは、制御装置80からの制御信号に基づいて、ボールネジ50B(
図3参照)を回転させる。制御装置80は、エンコーダ50E(回転検出手段)からの検出信号に基づいた砥石台50のZ軸方向の位置を検出しながら砥石台駆動モータ50Mを制御して砥石台50のZ軸方向の位置を制御する。なお、
図3に示すように、ボールネジ50Bにはナット50Nが嵌合されており、当該ナット50Nはスリット15K(
図2参照)に挿通されたアーム50Aを介して砥石台50に接続されている。従って、砥石台駆動モータ50Mがボールネジ50Bを回転駆動するとナット50NのZ軸方向の位置が移動し、アーム50Aを介してナット50Nに接続された砥石台50がZ軸案内レール15に沿ってZ軸方向に移動する。
【0030】
砥石台50には、X軸方向に平行な砥石回転軸線55J回りに回転自在に支持された砥石軸54、砥石モータ55M、が設けられている。なお、
図4に示すように砥石回転軸線55Jと主軸回転軸線31JはどちらもX軸に平行であり、
図3に示すように砥石回転軸線55Jと主軸回転軸線31Jは、同一の仮想水平面VM上にある。
【0031】
砥石モータ55Mには大径プーリ51が取り付けられている。また砥石軸54の一方端には砥石55が取り付けられ、砥石軸54の他方端には小径プーリ52が取り付けられている。そして大径プーリ51と小径プーリ52には、動力伝達用のベルト53が掛けられている。砥石軸54の近傍には、砥石55の回転数を検出可能な回転検出手段55Sが設けられている。制御装置80は、回転検出手段55Sからの検出信号に基づいて砥石55の回転数を検出しながら砥石モータ55Mを制御して砥石55の回転数を制御する。
【0032】
砥石55は砥石軸54に直交する平面で切断した断面が円形であり、砥石55の外周面にはCBN砥粒等が接着剤や電着等にて固められており、砥石軸54と一体となって砥石回転軸線55J回りに回転する。また砥石55は、ワークWを研削する研削点55Pの周囲を除く大半が砥石カバー55Cにて覆われている。砥石カバー55Cの上部には、砥石55の研削点55Pに向けて、冷却及び潤滑用のクーラントを吐出するクーラントノズル55Nが設けられている。当該クーラントノズル55Nには、図示省略したクーラントタンクからクーラントが供給され、研削点55P(砥石回転軸線55Jと主軸回転軸線31Jとを含む仮想水平面VMと、ワークWに対向する側の砥石55の外周面と、の交点)の冷却及び潤滑に使用されたクーラントは図示省略した流路にて回収され、不純物がろ過等された後、クーラントタンクに戻される。
【0033】
テーブル20は、基台10に載置され、X軸案内レール12に案内されて、X軸方向に沿って往復移動可能である。テーブル駆動モータ20Mは、制御装置80からの制御信号に基づいて、ボールネジ(図示省略)を回転させる。制御装置80は、エンコーダ20E(回転検出手段)からの検出信号に基づいたテーブル20のX軸方向の位置を検出しながらテーブル駆動モータ20Mを制御してテーブル20のX軸方向の位置を制御する。なお、ボールネジにはナット(図示省略)が嵌合されており、当該ナットはスリット12Kに挿通されたアーム(図示省略)を介してテーブル20と接続されている。従って、テーブル駆動モータ20Mがボールネジを回転駆動するとナットのX軸方向の位置が移動し、アームを介してナットに接続されたテーブル20がX軸案内レール12に沿ってX軸方向に移動する。そしてテーブル20上のX軸方向における一方端には主軸台30が固定され、他方端には心押台40が固定されている。本実施の形態では、テーブル20がX軸方向に沿って往復移動可能な例を示しているが、テーブル20がX軸方向に移動せず砥石台50がZ軸方向に加えてX軸方向にも往復移動可能としてもよい。
【0034】
主軸台30は、X軸方向に平行な主軸回転軸線31J回りに回転する主軸31と、主軸回転軸線31Jを中心軸線とするセンタ32と、主軸31を回転駆動する主軸モータ31Mと、エンコーダ31E等を有している。主軸31には、主軸31とワークWとを接続する駆動金具33が取り付けられている。駆動金具33は、ワークWを把持する把持部33Aと、把持部33Aと主軸31とを接続する接続部33Bとを有しており、主軸31と一体となって主軸回転軸線31J回りに回転してワークWを回転させる。制御装置80は、エンコーダ31E(回転検出手段)からの検出信号に基づいて主軸31の回転角度や回転数を検出しながら主軸モータ31Mを制御して主軸31の回転角度や回転数(すなわち、ワークWの回転角度や回転数)を制御する。また、駆動金具33は、上記の把持部33Aと接続部33Bを有しているが、ワークWを最適に加工できるように把持できるのであれば把持部33Aのみでもよい(例えばチャックでもよい)。
【0035】
心押台40は、主軸回転軸線31Jを中心軸線とするセンタ42と、センタ42を収容して主軸台30に向かう方向に付勢されたラム41とを有している。心押台40のセンタ42の中心軸線と、主軸台30のセンタ32の中心軸線は、どちらも主軸回転軸線31Jと一致している。センタ32とセンタ42とで挟持されたワークWは、センタ42によって主軸台30の側に押し付けられ、主軸31及び駆動金具33の回転によって主軸回転軸線31J回りに回転する。また、センタ42は、バネなどの弾性部材や油圧シリンダなどによる圧力によって、ワークWを主軸台30の側に押し付けている。
【0036】
●[オリジナルリフトデータの作成方法と、プロフィールデータの作成方法(
図5、
図6)]
オリジナルリフトデータは、カム回転角度(
図5、
図6中のθ)に対するタペットのリフト量(
図5、
図6中のタペットの移動量であるL)が記録されたデータである。一般的には、
図5に示すように、基準仮想直線VL1を用意し、基準仮想直線VL1に直交するカム回転軸線CJ(
図2〜
図4における主軸回転軸線31Jに相当)回りに回転するカムC1と、基準仮想直線VL1に沿って移動する半径RP1を有するタペットP1を用意し、タペットP1をカムC1の方向に付勢してタペットP1をカムC1に接触させる。そしてカムC1とタペットP1との接点を接点S1とする。なお、仮想直線VL2は、カム回転角度θを表現するためのカム基準線であり、例えばカム先端部C1Cとカム回転軸線CJとを結ぶように仮想的に設定した直線である。仮想直線VL2(カム回転角度仮想直線に相当)は、カム回転軸線CJに直交する仮想平面(
図5、
図6では紙面が相当)上の直線であってカム回転軸線CJを通りカムC1と一体となって回転してカムC1の回転角度(カム回転角度θ)を示す直線である。そして基準仮想直線VL1と仮想直線VL2との成す角度をカム回転角度θとする。
【0037】
カムC1は、カムC1の中心であるカム回転軸線CJからの距離(半径RC1)が一定である真円部C1Aと、カム回転軸線CJからの距離が一定でないカム部C1Bとを有している。そしてカム回転軸線CJから最も遠いカム部C1Bの位置をカム先端部C1Cとする。タペットP1がカムC1の真円部C1Aと接触している場合は、カム回転角度θが変化しても基準仮想直線VL1上におけるタペットP1の位置の変化はなく、この位置をタペット基準位置(PJs)とする。タペットP1がカムC1のカム部C1Bと接触している場合は、カム回転角度θに応じて、基準仮想直線VL1上におけるタペットP1の位置が変化する。そして、カム回転角度θに対するタペットP1におけるタペット基準位置(PJs)からの移動距離であるリフト量は、L(L(θ))で示される。オリジナルリフトデータには、各カム回転角度θと、各カム回転角度θに対するリフト量L(L(θ))が記録されている。
【0038】
また、カム回転角度がθである
図5に示す状態において、仮想直線VL2に対して平行かつタペット中心PJを通る直線を仮想直線VL3とする。また、前記仮想平面(カム回転軸線CJに直交する仮想平面)上の直線であってカムC1とタペットP1との接点S1における接線を接線SSとして、接線SSに対して平行かつタペット中心PJを通る直線を仮想接線V(接線ベクトルV)とする。そして、仮想直線VL3と仮想接線Vとが成す角度を接線角度δ(δ(θ))とする。従って接線角度δは、仮想直線VL2(カム回転角度仮想直線に相当)と接線SSとが成す角度と同じである。カム回転角度θに応じて、接点S1の位置が変化し、接線角度δも変化する。
【0039】
図6は、
図5に対して、半径R55の砥石55を用意し、接点S1を砥石55の外周面で研削するように、接点S1に砥石55の外周面を接触させた状態を示している。このとき、接点S1とタペット中心PJとを仮想直線VL4で結んだ場合、砥石55の中心である砥石回転軸線55Jは仮想直線VL4上にある。また
図6において、カム回転軸線CJと砥石回転軸線55Jとを仮想直線VL5にて結ぶ。また、仮想直線VL5と仮想直線VL2とが成す角度を、主軸回転角度CAとして、カム回転軸線CJと砥石回転軸線55Jとの間の距離を距離XAとする。すると、
図6に示す仮想直線VL5は、
図3に示す仮想水平面VMと一致する。そしてプロフィールデータには、各主軸回転角度CAと、各主軸回転角度CAに対する距離XA(XA(CA))が記録される。
【0040】
例えばカムを製造する場合、カムの納入先から受領したオリジナルリフトデータから、コンピュータ等の補正演算手段(制御装置80内に備えられるCNC(Computerized Numerical Control)やPLC(Programmable Logic Controller)の制御システム内の補正演算装置やパーソナルコンピュータ等の補正演算装置)を用いてプロフィールデータを作成し、作成したプロフィールデータから制御プログラムを作成し、当該制御プログラムにて研削盤2を制御してカムを研削する。近年では、カム部の外周の輪郭形状は、単純な凸形状(円弧)ではなく、内燃機関の燃焼効率や出力特性の向上等の観点から緩やかな凹部を有している場合があり、外周の輪郭形状が複雑化される傾向にある。複雑化された外周の輪郭形状では、カム外周面の各加工位置において、カム回転角度に対するリフト量の変化に基づいた加速度の変化率が大きな個所や凹形状と凸形状をつなぐ個所等、加工条件の変化が大きくなる個所がある。加工条件の変化が大きくなる個所では、加工面の品質を均一に仕上げることが困難であり、加工品質が低下して微細なスジ等が残る場合がある。以下の説明にて、カムのオリジナルリフトデータにおける加工条件の変化が大きくなる個所のデータを適切に補正してオリジナルリフトデータを補正した最終補正リフトデータを得る、カム加工面のリフトデータの補正方法の処理手順、及びカム加工面の加工方法の処理手順、について説明する。以下に説明する最終補正リフトデータに基づいたプロフィールデータを用いて加工することで、カムの加工面の加工品質の部分的な低下を防止し、微細なスジ等の発生を防止し、かつ、カムの輪郭形状の誤差を許容誤差範囲内に収めることができる。
【0041】
●[カム加工面のリフトデータの補正方法の処理手順、及びカム加工面の加工方法の処理手順(
図7〜
図10)]
例えばCAD/CAM装置等の補正演算手段(制御装置80内に備えられるCNC(Computerized Numerical Control)やPLC(Programmable Logic Controller)の制御システム内の補正演算装置やパーソナルコンピュータ等の補正演算装置)は、作業者から処理の実行が指示されると、
図7のフローチャートにて示すステップS10へと処理を進める。なお、
図8〜
図10に示したグラフ形状は一例であり、このグラフ形状に限定されるものではない。
【0042】
ステップS10にて補正演算手段は、オリジナルリフトデータを読み込み、カム回転角度θに対するオリジナルリフト量Lを設定し、ステップS15に進む。例えばオリジナルリフトデータには、離散的な(サンプリングされた)カム回転角度θと、当該カム回転角度θに対するオリジナルリフト量が記録されているので、これらを用いて、カム回転角度θを0°〜360°に連続的に変化させ、0°〜360°へと等間隔で連続的に変化するカム回転角度θに応じて連続的に変化するオリジナルリフト量Lを求め、
図8に示すオリジナルリフト量特性を作成する。また、リフトデータについては、部分的に補間してもよい。
【0043】
ステップS15にて補正演算手段は、オリジナルリフト量Lをカム回転角度θで3回微分して、カム回転角度θに対するリフト量加速度の変化率であるリフト量加加速度L´´´を算出し、ステップS20に進む。具体的には、補正演算手段は、オリジナルリフト量Lをカム回転角度θで(1回)微分した、カム回転角度θに対するオリジナルリフト量の変化率である速度L´を示すオリジナル速度特性を求める(
図8参照)。さらに補正演算手段は、オリジナルリフト量の速度L´をカム回転角度θで(1回)微分した、カム回転角度θに対するオリジナルリフト量の速度L´の変化率である加速度L´´を示すオリジナル加速度特性を求める(
図8参照)。そして補正演算手段は、オリジナルリフト量の加速度L´´をカム回転角度θで(1回)微分した、カム回転角度θに対するオリジナルリフト量の加速度L´´の変化率である加加速度L´´´を示すオリジナル加加速度特性を求める(
図8参照)。ステップS15の処理は、補正演算手段にて、カム回転角度θに対するオリジナルリフト量をカム回転角度θで3回微分したリフト量加加速度L´´´(オリジナル加加速度特性)を求める、加加速度演算ステップに相当する。
【0044】
ステップS20にて補正演算手段は、最大となるリフト量加加速度L´´´である最大加加速度を求め、求めた最大加加速度と予め設定した加加速度閾値とに基づいて加加速度補正率βを算出し、ステップS25に進む。加加速度閾値は、カムの加工面の加工品質を確保できるように予め種々の実験等を行って、リフト量加加速度の上限として設定されている。そして最大加加速度が加加速度閾値以上となった場合に、後述する(式1)を用いて、最大加加速度となるカム回転角度などにより、加加速度補正率βを求める。また
図8に示すように、最大加加速度をβmax、加加速度閾値をβsとした場合、加加速度補正率β=βs/βmaxとしてもよい。加加速度補正率βは、最大加加速度βmaxを加加速度閾値βsへと縮小する補正率である。なお、例えば最大加加速度βmax<加加速度閾値βsの場合は、縮小する必要が無いので、加加速度補正率β=1とする(つまり、β≦1となる)。ステップS20の処理は、補正演算手段にて、最大加加速度βmaxを求め、求めた最大加加速度βmaxを、加加速度閾値βsに縮小する加加速度補正率βを求める、加加速度補正率演算ステップに相当する。
【0045】
下記の(式1)を用いて加加速度補正率βを求める手順について説明する。βs>βmaxとなった場合、(式1)でα=βとして、L
n(n=0、1、・・・、m)から加加速度を算出し、β=βmaxとなるβを求める(繰り返し演算で算出する)。
L
n(θ
n)
=[(1−α)L
n-1(θ
n-1)+2αL
n(θ
n)+(1−α)L
n+1(θ
n+1)]/2 (式1)
【0046】
ステップS25にて補正演算手段は、オリジナルリフトデータに基づいて、
図5の例に示すように、カム回転角度θに対する接線角度δを算出し、ステップS30に進む。具体的には、補正演算手段は、
図5の例に示すようにして、0°〜360°へと連続的に変化するカム回転角度θに応じて連続的に変化する接線角度δを求め、
図9に示すオリジナル接線角度特性を求める。
【0047】
ステップS30にて補正演算手段は、接線角度δをカム回転角度θで(1回)微分した、カム回転角度θに対する接線角度の変化率である接線角度変化率δ´を示すオリジナル接線角度変化率特性を求め(
図9参照)、ステップS35に進む。ステップS25、S30の処理は、補正演算手段にて、接線角度δを求め、接線角度δをカム回転角度θで1回微分した接線角度変化率δ´を求める(タペット中心における接線角度δの変化率を求める)、接線角度変化率演算ステップに相当する。
【0048】
ステップS35にて補正演算手段は、最大となる接線角度変化率δ´である最大接線角度変化率を求め、求めた最大接線角度変化率と予め設定した接線角度変化率閾値とに基づいて接線角度補正率γを算出し、ステップS40に進む。接線角度変化率閾値は、カムの加工面の加工品質を確保できるように予め種々の実験等を行って、接線角度変化率の上限として設定されている。そして、最大接線角度変化率が接線角度変化率閾値以上となった場合に、上述した(式1)を用いて、最大接線角度変化率となるカム回転角度などにより、接線角度補正率γを求める。また
図9に示すように、最大接線角度変化率をγmax、接線角度変化率閾値をγsとした場合、接線角度補正率γ=γs/γmaxとしてもよい。接線角度補正率γは、最大接線角度変化率γmaxを接線角度変化率閾値γsへと縮小する補正率である。なお、例えば最大接線角度変化率γmax<接線角度変化率閾値γsの場合は、縮小する必要が無いので、接線角度補正率γ=1とする(つまり、γ≦1となる)。ステップS35の処理は、補正演算手段にて、最大接線角度変化率γmaxを求め、求めた最大接線角度変化率γmaxを、接線角度変化率閾値γsに縮小する接線角度補正率γを求める、接線角度補正率演算ステップに相当する。
【0049】
上記の(式1)を用いて接線角度補正率γを求める手順について説明する。γs>γmaxとなった場合、(式1)でα=γとして、L
n(n=0、1、・・・、m)から接線角度を算出し、γ=γmaxとなるγを求める(繰り返し演算で算出する)。
【0050】
ステップS40にて補正演算手段は、加加速度補正率βと、接線角度補正率γとに基づいて第1仮リフト補正率α1を求め、ステップS45に進む。具体的には、補正演算手段は、α1=min(β、γ)にて、加加速度補正率βと接線角度補正率γの小さな方の値(かつ、同じ値の場合はいずれか一方の値)を第1仮リフト補正率α1として求める。小さな方の値とすることで、リフト量加加速度と接線角度変化率の双方を、それぞれの閾値以下に抑えることができる。そして求めたα1を、1/3以上かつ1以下の値にガードする。α1のガードは、0<α1≦1とすればよいが、後述するように、最終補正リフト量を求める際、カム回転角度がθ
n-1、θ
n、θ
n+1の3点のリフト量の移動平均を演算することになるので、1/3≦α1≦1にガードすると、より好ましい。ステップS40の処理は、補正演算手段にて、加加速度補正率βと、接線角度補正率γとに基づいて第1仮リフト補正率α1を求める、第1仮リフト補正率演算ステップに相当する。
【0051】
ステップS45にて補正演算手段は、第1仮リフト補正率α1に基づいて、カム回転角度θに対応するオリジナルリフト量を、カム回転角度θに対応する仮補正リフト量に補正した、仮補正リフトデータを作成し、ステップS50に進む。具体的には、補正演算手段は、リフト量加加速度L´´´に第1仮リフト補正率α1を乗算した仮補正加加速度(
図10の仮補正加加速度特性を参照)を求め、接線角度変化率δ´に第1仮リフト補正率α1を乗算した仮補正接線角度変化率(
図10の仮補正接線角度変化率特性を参照)を求める。そして補正演算手段は、仮補正加加速度と仮補正接線角度変化率とに基づいて、カム回転角度θに対するオリジナルリフト量を仮補正リフト量へと仮補正した仮補正リフトデータを作成する。ステップS45の処理は、補正演算手段にて、仮補正加加速度と仮補正接線角度変化率とに基づいて、カム回転角度θに対するオリジナルリフト量を仮補正リフト量へと仮補正した仮補正リフトデータを作成する、仮補正リフトデータ作成ステップに相当する。なお、仮補正リフトデータを作成する際、後述する[最終補正リフト量の算出手順]を利用し、最終リフト補正率αの代わりに第1仮リフト補正率α1を用いて算出するようにしてもよい。
【0052】
ステップS50にて補正演算手段は、カム回転角度θに対して、仮補正リフト量とオリジナルリフト量との差である仮リフト誤差を求め、ステップS55に進む。なお、カム回転角度に対する仮リフト誤差を示す仮リフト誤差特性の例を
図10に示す。ステップS50の処理は、補正演算手段にて、カム回転角度θに対して、仮補正リフト量とオリジナルリフト量との差である仮リフト誤差を求める、仮リフト誤差演算ステップに相当する。
【0053】
ステップS55にて補正演算手段は、最大となる仮リフト誤差である最大仮リフト誤差を求め、求めた最大仮リフト誤差と予め設定したリフト誤差閾値とに基づいて第2仮リフト補正率α2を算出し、ステップS60に進む。リフト誤差閾値は、カムの外周(輪郭)の形状誤差の許容範囲として予め設定されている。また
図10に示すように、最大仮リフト誤差をΔmax、リフト誤差閾値を±Δsとした場合、第2仮リフト補正率α2=Δs/Δmaxとする。つまり、第2仮リフト補正率α2は、最大仮リフト誤差Δmaxをリフト誤差閾値Δsへと縮小する補正率である。なお、例えば最大仮リフト誤差Δmax<リフト誤差閾値Δsの場合は、縮小する必要が無いので、第2仮リフト補正率α2=1とする。ステップS55の処理は、補正演算手段にて、最大仮リフト誤差Δmaxを求め、求めた最大仮リフト誤差Δmaxを、リフト誤差閾値Δsに縮小する第2仮リフト補正率α2を求める、第2仮リフト補正率演算ステップに相当する。
【0054】
ステップS60にて補正演算手段は、第1仮リフト補正率α1と第2仮リフト補正率α2とに基づいて最終リフト補正率αを求め、ステップS65に進む。具体的には、補正演算手段は、α=max(α1、α2)にて、第1仮リフト補正率α1と第2仮リフト補正率α2の大きな方の値(かつ、同じ値の場合はいずれか一方の値)を最終リフト補正率αとして求める。そして求めたαを1/3以上かつ1以下の値にガードする。αのガードは、0<α≦1とすればよいが、後述するように、最終補正リフト量を求める際、カム回転角度がθ
n-1、θ
n、θ
n+1の3点のリフト量の移動平均を演算することになるので、1/3≦α≦1にガードすると、より好ましい。ステップ60の処理は、補正演算手段にて、第1仮リフト補正率α1と、第2仮リフト補正率α2とに基づいて最終リフト補正率αを求める、最終リフト補正率演算ステップに相当する。
【0055】
なお、1/3以上かつ1以下の区間では、小さい方が形状が滑らかになるため、接線角度補正率γと加加速度補正率βからは、小さい方を選択[min(β、γ)]して形状をより滑らかにしている。最終段階の補正では、形状誤差から求められる補正率は、補正の限界値と捉え、大きい値を選択[max(α1、α2)]する(形状誤差から求めた補正率よりも小さいと、形状誤差が許容値を超えるため)。
【0056】
ステップS65にて補正演算手段は、最終リフト補正率αに基づいて、カム回転角度θに対するオリジナルリフト量を最終補正リフト量へと補正した最終補正リフトデータを作成し、ステップS70に進む。具体的には補正演算手段は、以下に示すように、カム回転角度θに対する最終補正リフト量を求める。ステップS65の処理は、補正演算手段にて、最終リフト補正率に基づいて、オリジナルリフト量を最終補正リフト量へと補正した最終補正リフトデータを作成する、最終補正リフトデータ作成ステップに相当する。また、第1仮リフト補正率α1、第2仮リフト補正率α2に基づいて(比較して)、最終リフト補正率αを求める場合、ステップS45での仮補正リフトデータの作成を行わなくてもよい。
【0057】
[最終補正リフト量の算出手順]
次に、
図11及び
図12を用いて、最終補正リフト量の算出手順について説明する。以下、下記のように定義して説明する。
θ
n:カム回転軸線回りのカム回転角度
L
n(θ
n):カム回転角度θ
nに対するオリジナルリフト量
θ
n-1:カム回転角度θ
nに対して微小角度Δθだけ小さなカム回転角度
L
n-1(θ
n-1):カム回転角度θ
n-1に対するオリジナルリフト量
θ
n+1:カム回転角度θ
nに対して微小角度Δθだけ大きなカム回転角度
L
n+1(θ
n+1):カム回転角度θ
n+1に対するオリジナルリフト量
α:最終リフト補正率
L
f(θ
n):カム回転角度θ
nに対する最終補正リフト量
【0058】
上記のように定義し、以下の(式2)を用いて最終補正リフト量L
f(θ
n)を算出する。そして0°〜360°のカム回転角度θ
nに対して、最終補正リフト量L
f(θ
n)を求め、最終補正リフトデータを作成する。
L
f(θ
n)
=[(1−α)L
n-1(θ
n-1)+2αL
n(θ
n)+(1−α)L
n+1(θ
n+1)]/2 (式2)
【0059】
そして、ステップS70にて補正演算手段は、最終補正リフトデータに基づいて、研削盤を制御するためのプロフィールデータを作成し、ステップS75に進む。リフトデータからプロフィールデータを作成する手順やソフトウェア等は、既存のものを用いることができる。
【0060】
ステップS75にて補正演算手段は、プロフィールデータに基づいて、研削盤の制御プログラムを作成し、処理を終了する。プロフィールデータから研削盤の制御プログラムを作成する手順やソフトウェア等は、既存のものを用いることができる。
【0061】
そして
図2〜
図4に示す研削盤2の制御装置80に、ステップS75にて作成した制御プログラムを記憶させ、当該制御プログラムにて研削盤2を制御してカムを研削加工する。つまり、オリジナルリフトデータを補正した最終補正リフトデータを用いて、プロフィールデータ及び制御プログラムを作成し、当該制御プログラムにて研削盤を制御して、対象とするカムを研削加工する、というカム加工面の加工方法を実施する。また従来では、凹形状と凸形状をつなぐ個所等、加工条件の変化が大きくなる個所において、微細なスジ等が残る場合があったが、本発明では、カム加工面の加工品質が部分的に低下することを防止しており、このスジ等の発生を防止することができる。このように、オリジナルリフトデータに、加工条件の変化が大きく加工品質の低下を招くようなデータが隠れている場合であっても、該当する個所のデータを適切に補正してカムの加工面の加工品質をより向上させることができる。またこの補正を行う際、カムの外周形状(輪郭)の誤差を許容誤差範囲内に収めながら適切に補正することができる。
【0062】
本発明のカム加工面のリフトデータの補正方法及びカム加工面の加工方法の処理手順、演算式等は、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0063】
本実施の形態にて説明した加工面のリフトデータの補正方法及びカム加工面の加工方法は、内燃機関で用いるカム等、種々の装置や種々の用途のカムに適用することができる。
【0064】
本実施の形態の説明では、カム加工面のリフトデータの補正方法を、対象とするカムの全周にわたって適用する例を説明したが、加工条件の変化が大きくなる個所(例えば凹形状と凸形状をつなぐ個所)を狙って、カムの外周面の一部に適用するようにしてもよい。
【0065】
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。また、
図8〜
図12に示したグラフ形状は一例であり、この形状に限定されるものではない。