特許第6733413号(P6733413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6733413
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】電磁クラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 27/10 20060101AFI20200716BHJP
   F16D 27/112 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   F16D27/10 E
   F16D27/112 X
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-159265(P2016-159265)
(22)【出願日】2016年8月15日
(65)【公開番号】特開2018-28331(P2018-28331A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】村上 俊明
【審査官】 西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−180267(JP,A)
【文献】 特開2009−250383(JP,A)
【文献】 特開2007−127257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 27/00−27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁コイルと、
環状の内周リングと、前記内周リングの外周側に隙間を空けて配置される環状の外周リングと、前記内周リングと前記外周リングとを接続する複数のリブとを有するリング部が前記電磁コイルに対して軸方向に隙間を空けて配置されたロータと、
前記電磁コイルとの間に前記リング部を挟み込むように配置され、軸方向移動可能なアーマチャと、
前記リブに埋め込まれる態様で固定された永久磁石とを備えた電磁クラッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁クラッチにおいて、
前記電磁コイルは、該電磁コイルで発生する磁束が前記内周リングから前記アーマチャを経て前記外周リングへ流れるように駆動電流が供給されるものである電磁クラッチ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電磁クラッチにおいて、
前記永久磁石は、前記リブにおける前記内周リング側に配置された第1磁石と、前記リブにおける前記外周リング側に配置された第2磁石とを含み、
前記第1磁石は、着磁方向が前記リング部の径方向に沿うとともに、前記内周リング側に第1の極性が現れるように着磁され、
前記第2磁石は、着磁方向が前記リング部の径方向に沿うとともに、前記外周リング側に第1の極性が現れるように着磁された電磁クラッチ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電磁クラッチにおいて、
前記永久磁石は、前記リング部の周方向に並んで配置された第1及び第2磁石を含み、
前記第1及び第2磁石は、着磁方向が前記リング部の周方向に沿うとともに、前記リング部の周方向において同一の極性が対向するように着磁された電磁クラッチ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の電磁クラッチにおいて、
前記永久磁石は、着磁方向が前記リング部の周方向に沿うように着磁された電磁クラッチ。
【請求項6】
請求項2に記載の電磁クラッチにおいて、
前記永久磁石は、着磁方向が前記リング部の径方向に沿うとともに、前記内周リング側にN極が現れ、前記外周リング側にS極が現れるように着磁された電磁クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1回転体と第2回転体との間で回転駆動力の伝達/切断を切換え可能な電磁クラッチがある。一般にこうした電磁クラッチは、電磁コイルと、電磁コイルと軸方向に隙間を空けて配置されるリング部を有するロータと、電磁コイルとの間にリング部を挟むようにして軸方向移動可能に設けられるアーマチャとを備えている。
【0003】
例えば特許文献1の電磁クラッチでは、ロータのリング部は、内周リングと、内周リングの外周側に隙間を空けて配置される外周リングと、これら内周リングと外周リングとを連結するリブとを有している。そして、電磁コイルへの通電により、ロータの内周リング又は外周リングからアーマチャを経て外周リング又は内周リングを通過する磁気回路が形成され、アーマチャを吸引することで、第1回転体と第2回転体との間で回転駆動力の伝達/切断を切り換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−114153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の構成では、内周リングと外周リングとがリブによって連結されているため、電磁コイルで発生した磁束の一部がアーマチャを通過せずにリブを介して外周リング及び内周リング間を流れる。このようにアーマチャの吸引に寄与しない磁束が生じる結果、アーマチャの吸引力を確保するために、例えば電磁コイルの巻き線数を多くする等の対策が必要となり、電磁クラッチの小型化が困難であった。
【0006】
本発明の目的は、アーマチャの吸引力を確保しつつ小型化を図ることのできる電磁クラッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電磁クラッチは、電磁コイルと、環状の内周リングと、前記内周リングの外周側に隙間を空けて配置される環状の外周リングと、前記内周リングと前記外周リングとを接続する複数のリブとを有するリング部が前記電磁コイルに対して軸方向に隙間を空けて配置されたロータと、前記電磁コイルとの間に前記リング部を挟み込むように配置され、軸方向移動可能なアーマチャと、前記リブに埋め込まれる態様で固定された永久磁石とを備える。
【0008】
上記構成によれば、永久磁石が埋め込まれることでリブの磁気抵抗が高くなるとともに、永久磁石の磁束によりリブが磁気飽和し易くなるため、電磁コイルの磁束がリブを通過し難くなる。これにより、内周リング又は外周リングからアーマチャを経て外周リング又は内周リングを通過する電磁コイルの磁束が減少することが抑制されるため、アーマチャの吸引力を確保しつつ、電磁コイルの小型化を図ることができる。
【0009】
具体的には、上記電磁クラッチにおいて、前記電磁コイルは、該電磁コイルで発生する磁束が前記内周リングから前記アーマチャを経て前記外周リングへ流れるように駆動電流が供給されるものとすることができる。
【0010】
上記電磁クラッチにおいて、前記永久磁石は、前記リブにおける前記内周リング側に配置された第1磁石と、前記リブにおける前記外周リング側に配置された第2磁石とを含み、前記第1磁石は、着磁方向が前記リング部の径方向に沿うとともに、前記内周リング側に第1の極性が現れるように着磁され、前記第2磁石は、着磁方向が前記リング部の径方向に沿うとともに、前記外周リング側に第1の極性が現れるように着磁されることが好ましい。
【0011】
上記電磁クラッチにおいて、前記永久磁石は、前記リング部の周方向に並んで配置された第1及び第2磁石を含み、前記第1及び第2磁石は、着磁方向が前記リング部の周方向に沿うとともに、前記リング部の周方向において同一の極性が対向するように着磁されることが好ましい。
【0012】
上記電磁クラッチにおいて、前記永久磁石は、着磁方向が前記リング部の周方向に沿うように着磁されることが好ましい。
上記電磁クラッチにおいて、前記永久磁石は、着磁方向が前記リング部の径方向に沿うとともに、前記内周リング側にN極が現れ、前記外周リング側にS極が現れるように着磁されることが好ましい。
【0013】
上記各構成によれば、永久磁石で発生する磁束と電磁コイルで発生する磁束とが互いに反発することで、電磁コイルで発生した磁束がリブをより通過し難くなる。これにより、アーマチャの吸引力を確保しつつ、電磁コイルのより一層の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アーマチャの吸引力を確保しつつ小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電磁クラッチの概略構成を示す断面図。
図2】第1実施形態のロータのリング部を軸方向から見た側面図。
図3】第1実施形態のリブ近傍での磁束の流れを示す模式図。
図4】第2実施形態のロータのリング部におけるリブ近傍の部分側面図。
図5】第2実施形態のリブ近傍での磁束の流れを示す模式図。
図6】第3実施形態のロータのリング部におけるリブ近傍の部分側面図。
図7】第3実施形態のリブ近傍での磁束の流れを示す模式図。
図8】第4実施形態のロータのリング部におけるリブ近傍の部分側面図。
図9】第4実施形態のリブ近傍での磁束の流れを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、電磁クラッチの第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す駆動力伝達装置1は、ステアバイワイヤシステムが搭載されたステアリング装置に設けられるものである。駆動力伝達装置1は、ステアリング操作により回転する入力軸と転舵機構に回転を伝達する出力軸との間に設けられ、ステアバイワイヤシステムが有効となる通常時には入力軸から出力軸への回転駆動力の伝達を切断し、ステアバイワイヤシステムが無効となる異常時には入力軸から出力軸へ回転駆動力を伝達する。
【0017】
駆動力伝達装置1は、入力軸に連結される第1回転体としての第1回転軸2と、出力軸に連結される第2回転体としての第2回転軸3と、ハウジング4と、電磁クラッチ5と、クラッチ機構6と、電磁クラッチ5の作動を制御する制御装置7とを備えている。クラッチ機構6は、電磁クラッチ5の作動に応じて第1回転軸2と第2回転軸3との間で回転駆動力を伝達/切断するものであり、本実施形態では電磁クラッチ5への通電時に回転駆動力の伝達が切断される上記特許文献1に記載のツーウェイクラッチが用いられている。なお、説明の便宜上、クラッチ機構6の詳細な構成は省略するが、クラッチ機構としては、種々の構成を採用可能であり、例えば特開2013−92191号公報に記載のツーウェイクラッチを用いることも可能である。また、電磁クラッチ5への通電時に回転駆動力を伝達するものでもよく、例えば特開2009−250383号公報に記載の多板クラッチを用いることも可能である。
【0018】
第1回転軸2は、非磁性材料からなり、第2回転軸3側(図1中、左側)に大径部11を有する軸状に形成されている。第2回転軸3は、第1回転軸2側(図1中、右側)に大径部11を収容する筒状部12を有する軸状に形成されている。そして、大径部11と筒状部12との間にクラッチ機構6が設けられている。
【0019】
ハウジング4は、非磁性材料からなる有底円筒状のハウジング本体21と、磁性材料からなる円板状のヨーク22とを備えている。ハウジング本体21の底部には、軸方向に貫通した貫通孔23が形成されており、貫通孔23を介して第2回転軸3の一部が外部に突出している。ハウジング本体21は、貫通孔23に設けられた軸受24を介して第2回転軸3を回転可能に支持している。ヨーク22は、円板状の蓋部25、及び円筒状の外筒部26を有している。ヨーク22は、外筒部26がハウジング本体21の内周に嵌合した状態で、ハウジング本体21の開口端に固定されている。蓋部25の中央には、軸方向に貫通した貫通孔27が形成されており、貫通孔27を介して第1回転軸2の一部が外部に突出している。ヨーク22は、貫通孔27に設けられた軸受28を介して第1回転軸2を回転可能に支持している。
【0020】
電磁クラッチ5は、電磁コイル31と、ロータ32と、アーマチャ33とを備えている。電磁コイル31は、円筒状の形状をなしており、外筒部26の内周に固定されている。電磁コイル31の巻き始め及び巻き終わりの接続端部の一方は、スイッチSWを介して電源(バッテリ)Bに接続されるとともに、他方はグランドに接続されており、図1において破線で示す方向の磁束φcが発生するように電流が流れる。スイッチSWには、制御装置7が接続されており、その開閉が制御される。
【0021】
ロータ32は、磁性材料からなり、円筒状の内筒部34、及び内筒部34の端部から径方向外側に延出される円環状のリング部35を有している。図2に示すように、リング部35は、内筒部34に連続する円環状の内周リング36と、内周リング36の外周側に隙間を空けて配置される円環状の外周リング37と、内周リング36と外周リング37とを接続する複数(本実施形態では、3つ)のリブ38とを有している。図1に示すように、ロータ32は、内筒部34と電磁コイル31との間に径方向の隙間を空けるとともに、リング部35と電磁コイル31との間に軸方向の隙間を空けた状態で、第1回転軸2に一体回転可能に固定されている。アーマチャ33は、磁性材料からなり、円環状に形成されている。アーマチャ33は、電磁コイル31との間にリング部35を挟み込むように配置され、第1回転軸2の外周に軸方向移動可能に設けられている。
【0022】
このように構成された電磁クラッチ5では、制御装置7によりスイッチSWが閉じられて電源Bから駆動電力が供給されると、破線で示すように、ヨーク22の外筒部26から、蓋部25、ロータ32の内筒部34、内周リング36、アーマチャ33、外周リング37を経て再び外筒部26を通過する磁気回路が形成される。そして、この磁気回路を通る電磁コイル31の磁束φcによりアーマチャ33がリング部35(ロータ32)に吸引される。その結果、クラッチ機構6によって、第1回転軸2と第2回転軸3との間の回転駆動力の伝達が切断される。一方、制御装置7によりスイッチSWが開かれて電源Bからの駆動電力の供給が停止されると、アーマチャ33の吸引が解除される。その結果、クラッチ機構6によって、第1回転軸2と第2回転軸3との間で回転駆動力が伝達される。
【0023】
(磁束漏れ抑制構造)
ここで、本実施形態の電磁クラッチ5では、電磁コイル31で発生した磁束φcの一部がアーマチャ33を通過せずにリブ38を介して内周リング36及び外周リング37間を流れることを抑制すべく、各リブ38に永久磁石としての第1及び第2磁石41,42を埋め込む態様で固定している。
【0024】
詳しくは、図2に示すように、各リブ38には、軸方向視で四角形状の挿入孔43,44が径方向に並んで形成されている。第1磁石41は、軸方向視で挿入孔43に対応した四角形状に形成されており、挿入孔43に挿入されている。第2磁石42は、軸方向視で挿入孔44に対応した四角形状に形成されており、挿入孔44に挿入されている。そして、第1磁石41は、着磁方向がリング部35の径方向に沿うとともに、内周リング36側に第1の極性としてN極が現れ、外周リング37側に第2の極性としてのS極が現れるように着磁されている。また、第2磁石42は、着磁方向がリング部35の径方向に沿うとともに、外周リング37側にN極が現れ、内周リング36側にS極が現れるように着磁されている。なお、本明細書において、着磁方向が径方向に沿うとは、着磁方向が径方向と平行である場合以外に、径方向に対して多少交差する場合も含む。
【0025】
これにより、図3のシミュレーション結果に示すように、第1磁石41の磁束φm1及び第2磁石42の磁束φm2がリブ38及びその周辺を流れる。その結果、電磁コイル31の磁束φcがリブ38を介して内周リング36及び外周リング37間を通過しようとすると、第1及び第2磁石41,42の磁束φm1,φm2と反発するため、電磁コイル31の磁束φcがリブ38を通過し難くなる。また、同図に示すように、第1及び第2磁石41,42の磁束φm1,φm2は、リブ38内を通過し、アーマチャ33へはほとんど流れないため、アーマチャ33の吸引には寄与せず、クラッチ機構6の作動に影響を与えない。つまり、電磁クラッチ5の非通電時には、クラッチ機構6により第1回転軸2から第2回転軸3へ確実に回転駆動力が伝達される。
【0026】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)リブ38に第1及び第2磁石41,42(永久磁石)を埋め込んだため、リブ38の磁気抵抗が高くなるとともに、第1及び第2磁石41,42の磁束φm1,φm2によりリブ38が磁気飽和し易くなり、電磁コイル31の磁束φcがリブ38を通過し難くなる。これにより、内周リング36又は外周リング37からアーマチャ33を経て外周リング37又は内周リング36を通過する電磁コイル31の磁束φcが減少することが抑制されるため、アーマチャ33の吸引力を確保しつつ、電磁コイル31の小型化を図ることができる。
【0027】
(2)上記のように第1及び第2磁石41,42(永久磁石)で発生する磁束φm1,φm2と電磁コイル31で発生する磁束φcとが反発することで、磁束φcがリブ38をより通過し難くなる。これにより、アーマチャ33の吸引力を確保しつつ、電磁コイル31のより一層の小型化を図ることができる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、電磁クラッチの第2実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
本実施形態では、図4に示すように、各リブ38には、軸方向視で径方向に長い四角形状の挿入孔53,54が周方向に並んで形成されている。第1磁石51は、軸方向視で挿入孔53に対応した四角形状に形成されており、周方向一方側(図4中、上側)に配置された挿入孔53に挿入されている。第2磁石52は、軸方向視で挿入孔54に対応した四角形状に形成されており、周方向他方側(図4中、下側)に配置された挿入孔54に挿入されている。そして、第1及び第2磁石51,52は、着磁方向が周方向に沿うとともに、周方向においてS極が対向するように着磁されている。なお、本明細書において、着磁方向が周方向に沿うとは、着磁方向が周方向と平行である場合以外に、周方向に対して多少交差する場合も含む。
【0030】
これにより、図5のシミュレーション結果に示すように、第1磁石51の磁束φm1及び第2磁石52の磁束φm2がリブ38及びその周辺を流れる。その結果、電磁コイル31の磁束φcがリブ38を介して内周リング36及び外周リング37間を通過しようとすると、第1及び第2磁石51,52の磁束φm1,φm2と反発するため、電磁コイル31の磁束φcがリブ38を通過し難くなる。また、同図に示すように、第1及び第2磁石51,52の磁束φm1,φm2は、リブ38内を通過し、アーマチャ33へはほとんど流れない。
【0031】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2)と同様の作用効果を奏することができる。
(第3実施形態)
次に、電磁クラッチの第3実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0032】
本実施形態では、図6に示すように、各リブ38には、軸方向視で径方向に長い四角形状の挿入孔62が形成されている。永久磁石61は、軸方向視で挿入孔62に対応した四角形状に形成されており、挿入孔62に挿入されている。そして、永久磁石61は、着磁方向が周方向に沿うとともに、周方向一方側(図6中、上側)にS極が現れ、周方向他方側(図6中、下側)にN極が現れるように着磁されている。
【0033】
これにより、図7のシミュレーション結果に示すように、永久磁石61の磁束φmがリブ38及びその周辺を流れる。その結果、電磁コイル31の磁束φcがリブ38を介して内周リング36及び外周リング37間を通過しようとすると、永久磁石61の磁束φmと反発するため、電磁コイル31の磁束φcがリブ38を通過し難くなる。また、同図に示すように、永久磁石61の磁束φmは、リブ38内を通過し、アーマチャ33へはほとんど流れない。
【0034】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2)と同様の作用効果を奏することができる。
(第4実施形態)
次に、電磁クラッチの第4実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0035】
本実施形態では、図8に示すように、各リブ38には、軸方向視で径方向に長い四角形状の挿入孔72が形成されている。永久磁石71は、軸方向視で挿入孔72に対応した四角形状に形成されており、挿入孔72に挿入されている。そして、永久磁石71は、着磁方向が径方向に沿うとともに、内周リング36側にN極が現れ、外周リング37側にS極が現れるように着磁されている。また、電磁コイル31には、上記のように電磁コイル31で発生する磁束φcが内周リング36からアーマチャ33を経由し、外周リング37へ流れるように制御装置7を介して駆動電流が供給される。
【0036】
これにより、図9のシミュレーション結果に示すように、永久磁石71の磁束φmがリブ38及びその周辺を流れるため、電磁コイル31の磁束φcが永久磁石71の磁束φmと反発し、電磁コイル31の磁束φcがリブ38を通過し難くなる。また、同図に示すように、永久磁石71の磁束φmは、リブ38内を通過し、アーマチャ33へはほとんど流れない。
【0037】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2)と同様の作用効果を奏することができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
【0038】
・上記第1実施形態では、第1の極性をN極としたが、これに限らず、第1の極性をS極とし、内周リング36側にS極が現れるように第1磁石41を着磁し、外周リング37側にS極が現れるように第2磁石42を着磁してもよい。このように構成しても、上記第1実施形態の(1),(2)と同様の作用効果を奏することができる。
【0039】
・上記第2実施形態では、周方向においてS極が対向するように第1及び第2磁石51,52を着磁したが、これに限らず、周方向においてN極が対向するように着磁してもよい。このように構成しても、上記第1実施形態の(1),(2)と同様の作用効果を奏することができる。
【0040】
・上記第3実施形態において、永久磁石61を、周方向一方側にN極が現れ、周方向他方側にS極が現れるように着磁してもよい。このように構成しても、上記第1実施形態の(1),(2)と同様の作用効果を奏することができる。
【0041】
・上記第1〜第3実施形態において、電磁コイル31に、電磁コイル31で発生する磁束φcが外周リング37からアーマチャ33を経て内周リング36へ流れるように駆動電流を供給してもよい。
【0042】
・上記第4実施形態において、永久磁石71を、内周リング36側にS極が現れ、外周リング37側にN極が現れるように着磁してもよい。また、永久磁石71を、内周リング36側にN極が現れ、外周リング37側にS極が現れるように着磁し、電磁コイル31に、電磁コイル31で発生する磁束φcが外周リング37からアーマチャ33を経由し、内周リング36へ流れるように駆動電流が供給してもよい。いずれの構成も、永久磁石71の磁束φmによりリブ38の磁気抵抗が高くなるとともに、永久磁石71の磁束φmにより磁気飽和し易くなるため、上記第1実施形態の(1)と同様の作用効果を奏することができる。
【0043】
・上記第1実施形態において、各リブ38に、例えば複数の第1磁石41を周方向に並べて設け、それぞれ内周リング36側にN極が現れるように着磁してもよい。また、第1及び第2磁石41,42を、例えば軸方向視でそれぞれ六角形状に形成してもよい。要は、第1磁石41を内周リング36側に第1の極性が現れるように着磁し、第2磁石42を外周リング37側に第1の極性が現れるように着磁すればよく、第1及び第2磁石41,42の数や形状は適宜変更可能である。同様に、上記第2〜第4実施形態において、第1及び第2磁石51,52、永久磁石61,71の数や形状は適宜変更可能である。
【0044】
・上記各実施形態では、電磁クラッチ5をステアリング装置に設けられる駆動力伝達装置1に用いたが、他の装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…駆動力伝達装置、5…電磁クラッチ、7…制御装置、21…ハウジング本体、22…ヨーク、25…蓋部、26…外筒部、31…電磁コイル、32…ロータ、33…アーマチャ、34…内筒部、35…リング部、36…内周リング、37…外周リング、38…リブ、41,51…第1磁石(永久磁石)、42,52…第2磁石(永久磁石)、43,44,53,54,62,72…挿入孔、61,71…永久磁石、φm1,φm2,φc…磁束。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9