(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6733475
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】半導体素子の洗浄用液体組成物および半導体素子の洗浄方法、並びに半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20200716BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
H01L21/308 F
H01L21/304 647Z
H01L21/308 G
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-195770(P2016-195770)
(22)【出願日】2016年10月3日
(65)【公開番号】特開2017-73545(P2017-73545A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2019年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-199887(P2015-199887)
(32)【優先日】2015年10月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】青山 公洋
(72)【発明者】
【氏名】田島 恒夫
【審査官】
加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−527707(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/087925(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/114616(WO,A1)
【文献】
特表2004−502980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト元素を含む材料および銅元素を含む材料からなる群より選ばれる1種以上の材料の腐食を抑制しつつ、窒化チタンハードマスクを除去する洗浄用液体組成物であって、過酸化水素を1〜30質量%、水酸化カリウムを0.01〜1質量%、アミノポリメチレンホスホン酸を0.0001〜0.05質量%、13族元素を有する化合物を0.00005〜0.5質量%および水を含む洗浄用液体組成物。
【請求項2】
前記13族元素を有する化合物が、アルミニウムの塩およびガリウムの塩からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の洗浄用液体組成物。
【請求項3】
前記13族元素を有する化合物が、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、乳酸アルミニウム、および硝酸ガリウムからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の洗浄用液体組成物。
【請求項4】
前記アミノポリメチレンホスホン酸が、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、および1,2−プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の洗浄用液体組成物。
【請求項5】
前記コバルト元素を含む材料がコバルトまたはコバルト合金であり、前記銅元素を含む材料が銅または銅合金である、請求項1に記載の洗浄用液体組成物。
【請求項6】
コバルト元素を含む材料および銅元素を含む材料からなる群より選ばれる1種以上の材料と窒化チタンハードマスクとを少なくとも有する半導体素子において、コバルト元素を含む材料および銅元素を含む材料からなる群より選ばれる1種以上の材料の腐食を抑制しつつ、窒化チタンハードマスクを除去する半導体素子の洗浄方法であって、
過酸化水素を1〜30質量%、水酸化カリウムを0.01〜1質量%、アミノポリメチレンホスホン酸を0.0001〜0.05質量%、13族元素を有する化合物を0.00005〜0.5質量%および水を含む洗浄用液体組成物を、前記半導体素子と接触させることを含む、洗浄方法。
【請求項7】
前記13族元素を有する化合物が、アルミニウムの塩およびガリウムの塩からなる群より選ばれる1種以上である、請求項6に記載の洗浄方法。
【請求項8】
前記13族元素を有する化合物が、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、乳酸アルミニウム、および硝酸ガリウムからなる群より選ばれる1種以上である、請求項6に記載の洗浄方法。
【請求項9】
前記アミノポリメチレンホスホン酸が、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、および1,2−プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)からなる群より選ばれる1種以上である、請求項6に記載の洗浄方法。
【請求項10】
前記コバルト元素を含む材料がコバルトまたはコバルト合金であり、前記銅元素を含む材料が銅または銅合金である、請求項6に記載の洗浄方法。
【請求項11】
コバルト元素を含む材料および銅元素を含む材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を有する半導体素子の製造方法であって、
過酸化水素を1〜30質量%、水酸化カリウムを0.01〜1質量%、アミノポリメチレンホスホン酸を0.0001〜0.05質量%、13族元素を有する化合物を0.00005〜0.5質量%および水を含む洗浄用液体組成物を用いて、前記コバルト元素を含む材料および銅元素を含む材料からなる群より選ばれる1種以上の材料の腐食を抑制しつつ、窒化チタンハードマスクを除去することを含む、半導体素子の製造方法。
【請求項12】
前記13族元素を有する化合物が、アルミニウムの塩およびガリウムの塩からなる群より選ばれる1種以上である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記13族元素を有する化合物が、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、乳酸アルミニウム、および硝酸ガリウムからなる群より選ばれる1種以上である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記アミノポリメチレンホスホン酸が、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、および1,2−プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)からなる群より選ばれる1種以上である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項15】
前記コバルト元素を含む材料がコバルトまたはコバルト合金であり、前記銅元素を含む材料が銅または銅合金である、請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の製造工程において使用される半導体素子の洗浄用液体組成物と、それを用いる半導体素子の洗浄方法並びに半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高集積化された半導体素子の製造においては、通常、シリコンウェハなどの素子上に、導電用配線素材となる金属膜などの導電薄膜や、導電薄膜間の絶縁を行う目的の層間絶縁膜を形成した後、その表面にフォトレジストを均質に塗布して感光層を設け、これに選択的露光および現像処理を実施し所望のフォトレジストパターンを作成する。次いでこのフォトレジストパターンをマスクとして層間絶縁膜にドライエッチング処理を施すことにより該薄膜に所望のパターンを形成する。そして、フォトレジストパターンおよびドライエッチング処理により発生した残渣物(以下、「ドライエッチング残渣」と称す)を酸素プラズマによるアッシングや洗浄液などにより完全に除去するという一連の工程が一般的にとられている。
【0003】
近年、デザインルールの微細化が進み、信号伝送遅延が高速度演算処理の限界を支配するようになってきた。そのため、層間絶縁膜はシリコン酸化膜から低誘電率層間絶縁膜(比誘電率が3より小さい膜。以下、「低誘電率層間絶縁膜」と称す)への移行が進んでいる。また、0.2μm以下のパターンを形成する場合、膜厚1μmのフォトレジストではパターンのアスペクト比(フォトレジスト膜厚をフォトレジスト線幅で割った比)が大きくなりすぎ、パターンが倒壊するなどの問題が生じている。これを解決するために、実際に形成したいパターンとフォトレジスト膜の間にチタン(Ti)系やシリコン(Si)系の膜(以下、「ハードマスク」と称す)を挿入し、一旦フォトレジストパターンをハードマスクにドライエッチングで転写してフォトレジストを除去した後、このハードマスクをエッチングマスクとして、ドライエッチングにより実際に形成したい膜にパターンを転写するハードマスク法が使われることがある。この方法は、ハードマスクをエッチングするときのガスと、実際に形成したい膜をエッチングするときのガスを換えることができ、ハードマスクをエッチングするときはフォトレジストとハードマスクの選択比がとれ、実際の膜をエッチングするときにはハードマスクと実際にエッチングする膜との選択比が確保されるガスを選ぶことができるので、実際の膜に与えるダメージを極力少なくして、パターンを形成できるという利点がある。
【0004】
さらに、デザインルールの微細化の進展により金属配線の電流密度は増大しているため、金属配線材料に電流が流れたときに金属配線材料が移動して金属配線に穴ができるエレクトロマイグレーションへの対策がより強く求められている。その対策として、銅配線の上にキャップメタルとしてコバルトやコバルト合金を形成する方法や、特許文献1に記載されているように、金属配線材料としてコバルトやコバルト合金を用いる方法がある。故に従来の銅配線に加え、コバルトやコバルト合金もダメージ抑制の対象となっている。
【0005】
従って、半導体素子製造においては、銅または銅合金およびコバルトまたはコバルト合金のダメージを抑制しつつ、ハードマスクを除去する方法が求められている。これに対し、様々な技術が提案されてきた。
【0006】
特許文献2には、過酸化水素、アミノポリメチレンホスホン酸類、水酸化カリウムおよび水を含む洗浄用組成物による洗浄方法が提案されている。
【0007】
特許文献3には、アンモニア、アミノ基をもつ化合物および窒素原子を含む環状構造をもつ化合物からなる群から選択された少なくとも1種と過酸化水素とを水性媒体中に含有し、pHが8.5を超えるエッチング用組成物が提案されている。
【0008】
特許文献4には、ジメチルピペリドン、スルホン類およびスルホラン類等からなる群から選択される極性有機溶媒;テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、水酸化コリン、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等からなる群から選択されるアルカリ塩基;水;およびトランス−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸塩およびエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)等からなる群より選択されるキレート化または金属錯体化剤を含む洗浄用組成物が提案されている。
【0009】
特許文献5には、70℃以上の硫酸水溶液で洗浄することによって、窒化チタン(TiN)膜を除去し、コバルト(Co)シリサイドをエッチングしない半導体素子の洗浄方法が提案されている。
【0010】
特許文献6には、ヘキサフルオロケイ酸化合物と酸化剤とを含むエッチング液が提案されている。
【0011】
特許文献7には、塩酸などのハロゲン化合物と、酸化剤と、含窒素複素芳香族化合物および第四級オニウム化合物などから選ばれる金属層防食剤とを含むエッチング液が提案されている。
【0012】
特許文献8には、フッ酸などのフッ素化合物と酸化剤とを含むエッチング液を適用して、窒化チタン(TiN)を含む層を除去し、遷移金属層を除去しないエッチング方法が提案されている。
【0013】
特許文献9には、有機オニウム化合物と酸化剤とを含むエッチング液を適用して、窒化チタン(TiN)を含む層を除去し、遷移金属層を除去しないエッチング方法が提案されている。
【0014】
特許文献10には、フッ化水素酸の金属塩およびフッ化水素酸のアンモニウム塩からなる群から選ばれる特定のフッ素化合物と酸化剤とを含むpH1以上のエッチング液を用いることにより、遷移金属を含む層に対して窒化チタン(TiN)を含む層を優先的に除去するエッチング方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2013−187350号公報
【特許文献2】国際公開第2008/114616号
【特許文献3】特開2010−232486号公報
【特許文献4】特表2005−529363号公報
【特許文献5】特開2003−234307号公報
【特許文献6】特開2014−84489号公報
【特許文献7】特開2014−93407号公報
【特許文献8】特開2014−99498号公報
【特許文献9】特開2014−99559号公報
【特許文献10】特開2014−146623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、近年、更にデザインルールの微細化が進み、金属配線材料へのダメージ抑制に対する要求もより厳しくなっている。このような要求に対して、本願発明者が鋭意検討した結果、特許文献2〜10に記載の組成物または方法では以下に記すように種々の技術的課題および問題点を有することがわかった。
特許文献2に記載の洗浄用液体組成物(過酸化水素、アミノポリメチレンホスホン酸類、水酸化カリウムおよび水を含む洗浄用組成物)では銅およびコバルトのダメージを十分に抑制することができず、本目的には使用できない(比較例1参照)。
特許文献3に記載のエッチング用組成物(アンモニア、アミノ基をもつ化合物および窒素原子を含む環状構造をもつ化合物からなる群から選択された少なくとも1種と過酸化水素とを水性媒体中に含有し、pHが8.5を超えるエッチング用組成物)ではTiNハードマスクの除去性が不十分であり、銅のダメージを十分に抑制することができず、本目的には使用できない(比較例2参照)。
特許文献4に記載の洗浄用組成物(ジメチルピペリドン、スルホン類およびスルホラン類等からなる群から選択される極性有機溶媒;テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、水酸化コリン、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等からなる群から選択されるアルカリ塩基;水;およびトランス−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸塩およびエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)等からなる群より選択されるキレート化または金属錯体化剤を含む洗浄用組成物)では銅およびコバルトのダメージを十分に抑制することができず、本目的には使用できない(比較例3参照)。
特許文献5に記載の硫酸水溶液(70℃以上の硫酸水溶液)ではTiNハードマスクの除去性が不十分であり、銅およびコバルトのダメージを十分に抑制することができず、本目的には使用できない(比較例4参照)。
特許文献6に記載のエッチング液(ヘキサフルオロケイ酸化合物と酸化剤とを含むエッチング液)ではTiNハードマスクの除去性が不十分であり、銅およびコバルトのダメージを十分に抑制することができず、本目的には使用できない(比較例5参照)。
特許文献7に記載のエッチング液(塩酸などのハロゲン化合物と酸化剤と含窒素複素芳香族化合物、第四級オニウム化合物などから選ばれる金属層防食剤とを含むエッチング液)ではTiNハードマスクの除去性が不十分であり、銅およびコバルトのダメージを十分に抑制することができず、本目的には使用できない(比較例6参照)。
特許文献8に記載のエッチング方法(フッ酸などのフッ素化合物と酸化剤とを含むエッチング液を使用)では銅およびコバルトのダメージを十分に抑制することができず、本目的には使用できない(比較例7参照)。
特許文献9に記載のエッチング方法(有機オニウム化合物と酸化剤とを含むエッチング液を使用)では銅およびコバルトのダメージを十分に抑制することができず、本目的には使用できない(比較例8参照)。
特許文献10に記載のエッチング液(フッ化水素酸の金属塩およびフッ化水素酸のアンモニウム塩からなる群から選ばれる特定のフッ素化合物と酸化剤とを含むpH1以上のエッチング液)ではTiNハードマスクの除去性が不十分であり、本目的には使用できない(比較例9参照)。
【0017】
本発明の目的は、半導体素子製造において、銅または銅合金またはコバルトまたはコバルト合金のダメージを抑制しつつ、TiNハードマスクを除去する洗浄用液体組成物およびそれを用いた洗浄方法並びに該方法を用いて得られる半導体素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決する方法を提供する。本発明は以下の通りである。
1. コバルト元素を含む材料および銅元素を含む材料からなる群より選ばれる1種以上の材料の腐食を抑制しつつ、窒化チタンハードマスクを除去する洗浄用液体組成物であって、過酸化水素を1〜30質量%、水酸化カリウムを0.01〜1質量%、アミノポリメチレンホスホン酸を0.0001〜0.05質量%、13族元素を有する化合物を0.00005〜0.5質量%および水を含む洗浄用液体組成物。
2. 前記13族元素を有する化合物が、アルミニウムの塩およびガリウムの塩からなる群より選ばれる1種以上である第1項に記載の洗浄用液体組成物。
3. 前記13族元素を有する化合物が、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、乳酸アルミニウム、および硝酸ガリウムからなる群より選ばれる1種以上である第1項に記載の洗浄用液体組成物。
4. 前記アミノポリメチレンホスホン酸が、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、および1,2−プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)からなる群より選ばれる1種以上である第1項に記載の洗浄用液体組成物。
5. 前記コバルト元素を含む材料がコバルトまたはコバルト合金であり、前記銅元素を含む材料が銅または銅合金である第1項に記載の洗浄用液体組成物。
6. 洗浄用液体組成物を用いて、コバルト元素を含む材料と銅元素を含む材料の内の1つ以上の材料の腐食を抑制しつつ、窒化チタンハードマスクを除去する洗浄方法であって、前記洗浄用液体組成物が、過酸化水素を1〜30質量%、水酸化カリウムを0.01〜1質量%、アミノポリメチレンホスホン酸を0.0001〜0.05質量%、13族元素を有する化合物を0.00005〜0.5質量%および水を含む洗浄用液体組成物である洗浄方法。すなわち、コバルト元素を含む材料および銅元素を含む材料からなる群より選ばれる1種以上の材料と窒化チタンハードマスクとを少なくとも有する半導体素子において、コバルト元素を含む材料および銅元素を含む材料からなる群より選ばれる1種以上の材料の腐食を抑制しつつ、窒化チタンハードマスクを除去する半導体素子の洗浄方法であって、過酸化水素を1〜30質量%、水酸化カリウムを0.01〜1質量%、アミノポリメチレンホスホン酸を0.0001〜0.05質量%、13族元素を有する化合物を0.00005〜0.5質量%および水を含む洗浄用液体組成物を、前記半導体素子と接触させることを含む、洗浄方法。
7. 前記13族元素を有する化合物が、アルミニウムの塩およびガリウムの塩からなる群より選ばれる1種以上である第6項に記載の洗浄方法。
8. 前記13族元素を有する化合物が、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、乳酸アルミニウム、および硝酸ガリウムからなる群より選ばれる1種以上である第6項に記載の洗浄方法。
9. 前記アミノポリメチレンホスホン酸が、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、および1,2−プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)からなる群より選ばれる1種以上である第6項に記載の洗浄方法。
10. 前記コバルト元素を含む材料がコバルトまたはコバルト合金であり、前記銅元素を含む材料が銅または銅合金である第6項に記載の洗浄方法。
11. コバルト元素を含む材料および銅元素を含む材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を有する半導体素子の製造方法であって、
過酸化水素を1〜30質量%、水酸化カリウムを0.01〜1質量%、アミノポリメチレンホスホン酸を0.0001〜0.05質量%、13族元素を有する化合物を0.00005〜0.5質量%および水を含む洗浄用液体組成物を用いて、前記コバルト元素を含む材料および銅元素を含む材料からなる群より選ばれる1種以上の材料の腐食を抑制しつつ、窒化チタンハードマスクを除去することを含む、半導体素子の製造方法。
12. 前記13族元素を有する化合物が、アルミニウムの塩およびガリウムの塩からなる群より選ばれる1種以上である、第11項に記載の製造方法。
13. 前記13族元素を有する化合物が、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、乳酸アルミニウム、および硝酸ガリウムからなる群より選ばれる1種以上である、第11項に記載の製造方法。
14. 前記アミノポリメチレンホスホン酸が、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、および1,2−プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)からなる群より選ばれる1種以上である、第11項に記載の製造方法。
15. 前記コバルト元素を含む材料がコバルトまたはコバルト合金であり、前記銅元素を含む材料が銅または銅合金である、第11項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の洗浄用液体組成物および洗浄方法を使用することにより、半導体素子の製造工程において、金属配線およびコバルト(Co)からなるキャップメタルのダメージを抑制しつつ、被処理物表面の窒化チタン(TiN)からなるハードマスクを除去することが可能となり、高精度、高品質の半導体素子を歩留まりよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】バリアメタル、金属配線、キャップメタル、バリア絶縁膜、低誘電率層間絶縁膜およびハードマスクを含んだ半導体素子の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の洗浄用液体組成物(以下、単に「洗浄液」ということがある)は、過酸化水素と、水酸化カリウムと、アミノポリメチレンホスホン酸と、13族元素を有する化合物と、水とを含むものである。
【0022】
本発明におけるTiNハードマスクを除去するための半導体素子の洗浄用液体組成物は半導体素子を作る工程で使用されるものであるため、金属配線のダメージを抑制しなければならない。
【0023】
本発明に使用される過酸化水素の濃度範囲は、1〜30質量%であり、好ましくは3〜25質量%であり、特に好ましくは10〜25質量%である。上記範囲内であれば効果的にTiNハードマスクを除去し、金属配線のダメージを抑制できる。
【0024】
本発明に使用される水酸化カリウムの濃度範囲は、0.01〜1質量%であり、好ましくは0.05〜0.7質量%で、特に好ましくは0.07〜0.5質量%である。上記範囲内であれば効果的にTiNハードマスクを除去し、金属配線のダメージを抑制できる。
【0025】
本発明に使用されるアミノポリメチレンホスホン酸の例としては、例えば、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、1,2−プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)などが挙げられる。これらのアミノポリメチレンホスホン酸は、単独または2種類以上を組み合わせて配合できる。
【0026】
本発明に使用されるアミノポリメチレンホスホン酸の濃度範囲は、0.0001〜0.05質量%であり、好ましくは0.0003〜0.01質量%であり、特に好ましくは0.0005〜0.005質量%である。上記範囲内であれば効果的に金属配線のダメージを抑制できる。
【0027】
本発明に使用される13族元素を有する化合物の例としては、例えば、アルミニウムまたはガリウムの硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、または乳酸塩などが挙げられ、好ましくは硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、乳酸アルミニウム、または硝酸ガリウムである。これらの13族元素を有する化合物は、単独または2種類以上を組み合わせて配合できる。
【0028】
本発明に使用される13族元素を有する化合物の濃度範囲は、0.00005〜0.5質量%であり、好ましくは0.0001〜0.1質量%であり、特に好ましくは0.01〜0.07質量%である。上記範囲内であれば効果的に金属配線のダメージを抑制できる。
【0029】
本発明の洗浄用液体組成物には、所望により本発明の目的を損なわない範囲で従来から半導体素子の洗浄用液体組成物に使用されている添加剤を配合してもよい。例えば、添加剤として、界面活性剤、消泡剤等を添加することができる。
【0030】
本発明の洗浄用液体組成物には、所望により本発明の目的を損なわない範囲でアゾール類を配合してもよい。
アゾール類として特に、1−メチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−イミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール、ピラゾール、4−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、および1H−テトラゾールの内から選ばれる1種類以上のアゾールが好ましく、3,5−ジメチルピラゾールが特に好ましいが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の洗浄方法は、コバルト元素を含む材料および銅元素を含む材料からなる群より選ばれる1種以上の材料と、窒化チタンハードマスクとを少なくとも有する半導体素子において、コバルト元素を含む材料および銅元素を含む材料からなる群より選ばれる材料の腐食を抑制しつつ、窒化チタンハードマスクを除去するものであり、本発明の洗浄用液体組成物を、前記半導体素子と接触させることを含む。ここで「コバルト元素を含む材料および銅元素を含む材料からなる群より選ばれる材料の腐食を抑制する」とは、前記材料のエッチングレートが0.1Å/min(0.01nm/min)以下であることを意味する。
本発明の洗浄用液体組成物を半導体素子と接触させる方法は特に制限されない。例えば、半導体素子を本発明の洗浄用液体組成物に浸漬させる方法や、滴下やスプレーなどにより洗浄用液体組成物と接触させる方法などを採用することができる。
本発明の洗浄用液体組成物を使用する温度は、好ましくは20〜80℃、より好ましくは25〜70℃、特に好ましくは40〜60℃の範囲であり、エッチングの条件や使用される半導体基体により適宜選択すればよい。
本発明の洗浄方法は、必要に応じて超音波を併用することができる。
本発明の洗浄用液体組成物を使用する時間は、好ましくは0.3〜30分、より好ましくは0.5〜20分、特に好ましくは1〜10分の範囲であり、エッチングの条件や使用される半導体基体により適宜選択すればよい。
本発明の洗浄用液体組成物を使用した後のリンス液としては、アルコールのような有機溶剤を使用することもできるが、水でリンスするだけでも十分である。
【0032】
図1は、バリアメタル1、金属配線2、キャップメタル3、バリア絶縁膜4、低誘電率層間絶縁膜5およびハードマスク6を有する半導体素子の概略断面図であり、本発明の洗浄用液体組成物によって洗浄される半導体素子の一例を示したものである。ここでは、バリアメタル1と金属配線2とキャップメタル3と低誘電率層間絶縁膜5とを有する基板上に、バリア絶縁膜4、低誘電率層間絶縁膜5、ハードマスク6がこの順に積層し、所定のパターンが形成されている。
【0033】
一般的に半導体素子および表示素子は、シリコン、非晶質シリコン、ポリシリコン、ガラスなどの基板材料、
酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコンおよびこれらの誘導体などの絶縁材料、
タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、酸化ルテニウムなどのバリア材料、
銅、銅合金、コバルト、コバルト合金などの配線材料、
ガリウム−砒素、ガリウム−リン、インジウム−リン、インジウム−ガリウム−砒素、インジウム−アルミニウム−砒素等の化合物半導体、
および、クロム酸化物などの酸化物半導体などを含む。
【0034】
一般的に低誘電率層間絶縁膜として、ヒドロキシシルセスキオキサン(HSQ)系やメチルシルセスキオキサン(MSQ)系のOCD(商品名、東京応化工業社製)、炭素ドープ酸化シリコン(SiOC)系のBlack Diamond(商品名、Applied Materials社製)、Aurora(商品名、ASM International社製)、Coral(商品名、Novellus Systems社製)などが使用される。低誘電率層間絶縁膜はこれらに限定されるものではない。
【0035】
一般的にバリアメタルとして、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、マンガン、マグネシウム、コバルト並びにこれらの酸化物などが使用される。バリアメタルはこれらに限定されるものではない。
【0036】
一般的にバリア絶縁膜として、窒化シリコン、炭化シリコン、窒化炭化シリコンなどが使用される。バリア絶縁膜はこれらに限定されるものではない。
【0037】
本発明が適用できるハードマスクとして、チタンや窒化チタンなどが使用される。本発明においては特に窒化チタンが用いられる。
【0038】
本発明が適用できる金属配線として、銅または銅合金、銅または銅合金の上にキャップメタルとしてコバルトまたはコバルト合金を形成したもの、コバルトまたはコバルト合金などが使用される。ここで「銅合金」とは、質量基準で、銅を50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上含む合金を意味する。「コバルト合金」とは、質量基準で、コバルトを50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上含む合金を意味する。
【0039】
半導体素子の製造工程の一例においては、まず、バリアメタル、金属配線、低誘電率層間絶縁膜、必要に応じてキャップメタルを有する基板上に、バリア絶縁膜、低誘電率層間絶縁膜、ハードマスクおよびフォトレジストを積層した後、該フォトレジストに選択的露光および現像処理を施し、フォトレジストパターンを形成する。次いで、このフォトレジストパターンをドライエッチングによりハードマスク上に転写する。その後、フォトレジストパターンを除去し、該ハードマスクをエッチングマスクとして低誘電率層間絶縁膜およびバリア絶縁膜にドライエッチング処理を施す。次いで、ハードマスクを除去して所望の金属配線パターンを有する半導体素子を得ることができる。本発明の洗浄用液体組成物は、このようにして所望の金属配線パターンを形成した後、不要となったハードマスクを除去する際に好適に用いられるものである。
本発明の好ましい態様によれば、本発明の洗浄用液体組成物を用いて半導体素子を洗浄することにより、金属配線のダメージを抑制しつつ、窒化チタンハードマスクを除去することができるので、高精度、高品質の半導体素子を歩留まりよく製造することができる。
【実施例】
【0040】
次に実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0041】
使用ウェハ
本実施例では、シリコンウェハ上に窒化チタン層を有する「窒化チタン膜付きウェハ」(表中でTiNと表記。アドバンテック社製。)、および、シリコンウェハ上に銅層を有する「銅膜付きウェハ」(表中でCuと表記。アドバンテック社製。)、および、シリコンウェハ上にコバルト層を有する「コバルト膜付きウェハ」(表中でCoと表記。アドバンテック社製。)を用いた。
【0042】
窒化チタン膜厚測定
窒化チタン膜付きウェハの窒化チタン膜厚は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製蛍光X線装置SEA1200VXを用いて測定した。
【0043】
窒化チタンのエッチングレートの測定と判定
窒化チタンのエッチングレートの評価は、窒化チタン膜付きウェハの洗浄液処理前後の膜厚差を処理時間で除した値をエッチングレートと定義し算出した。窒化チタンのエッチングレート100Å/min(10nm/min)以上を合格とした。
【0044】
銅およびコバルトのエッチングレートの測定と判定
銅またはコバルト膜付きウェハ処理後の洗浄液中の銅またはコバルト濃度を、Thermo Scientific社製誘導結合プラズマ発光分光分析装置iCAP6300を用いて測定した。測定結果の濃度と使用した洗浄液量から溶解した銅またはコバルト量を算出し、この溶解した銅またはコバルト量を密度で除して溶解した銅またはコバルトの体積を算出した。この溶解した銅またはコバルトの体積を処理した膜付きウェハの面積と処理時間で除した値をエッチングレートと定義し算出した。銅またはコバルトのエッチングレート0.1Å/min(0.01nm/min)以下を合格とした。
【0045】
実施例1〜15
窒化チタン膜付きウェハを使用し、窒化チタンの除去性を調べた。表1に記した1A〜1Oの洗浄用液体組成物を用いて、表2に示した温度で3分間浸漬し、その後、超純水によるリンス、乾燥窒素ガス噴射による乾燥を行った。浸漬前後の膜厚を蛍光X線装置で求め、エッチングレートを算出し、結果を表2にまとめた。
【0046】
次に、銅およびコバルト膜付きウェハを使用し、表1に記した1A〜1Oの洗浄用液体組成物を用いて、銅およびコバルトの防食性を調べた。表2に示した温度で30分間浸漬し、その後、超純水によるリンス、乾燥窒素ガス噴射による乾燥を行った。浸漬後の洗浄液中の銅またはコバルト濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析装置で求め、エッチングレートを算出し、結果を表2にまとめた。
【0047】
実施例1の洗浄用液体組成物1A(過酸化水素15質量%、水酸化カリウム0.1質量%、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPP)0.05質量%、硫酸アルミニウム0.01質量%の水溶液)を用いた場合、窒化チタンのエッチングレートが220Å/min(22nm/min)で合格であり、銅およびコバルトのエッチングレートが0.1Å/min(0.01nm/min)以下で、判定は合格であった。
実施例2〜15の表2に示した本発明の洗浄用液体組成物を適用した場合、窒化チタンのエッチングレートが100Å/min(10nm/min)以上で合格であり、窒化チタンを良好に除去できることがわかる。また、銅およびコバルトのエッチングレートが0.1Å/min(0.01nm/min)以下であり、銅およびコバルトのダメージを抑制できることもわかる。
【0048】
比較例1〜21
表3に記した洗浄液2A〜2Uを用い、表4に示した温度で窒化チタン、銅、コバルト膜付きウェハを浸漬した以外は実施例1〜15と同様の操作を行い、窒化チタン、銅、コバルトのそれぞれのエッチングレートを算出した。
比較例1、3、7、8、10〜12、15〜21は窒化チタンのエッチングレートが100Å/min(10nm/min)以上であったが、銅およびコバルトのエッチングレートが0.1Å/min(0.01nm/min)を超えた。洗浄液2A、2C、2G、2H、2J、2K、2L、2O、2P、2Q、2R、2S、2T、2Uを用いる洗浄方法は、窒化チタンを良好に除去できるが、銅およびコバルトにダメージを与えるため、本願目的には使用できない。
比較例2、4、5、6、9、13、14は窒化チタンのエッチングレートが100Å/min(10nm/min)未満であった。洗浄液2B、2D、2E、2F、2I、2M、2Nを用いる洗浄方法は、窒化チタンを良好に除去できないため、本願目的には使用できない。
【0049】
【表1】
なお、表中でDTPPはジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)を、PDTPは1,2−プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)を、ATPはアミノトリ(メチレンホスホン酸)を、EDTPはエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)を意味する。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
なお、表中でDTPPはジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)を、PDTPは1,2−プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)を、ATPはアミノトリ(メチレンホスホン酸)を、EDTPはエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)を、TMAHは水酸化テトラメチルアンモニウムを、EDTAはエチレンジアミン四酢酸を、DGMEはジエチレングリコールモノメチルエーテルを意味する。
【0052】
【表4】
【符号の説明】
【0053】
1:バリアメタル
2:金属配線
3:キャップメタル
4:バリア絶縁膜
5:低誘電率層間絶縁膜
6:ハードマスク