特許第6733554号(P6733554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6733554沈殿促進剤およびそれを用いる沈殿化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6733554
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】沈殿促進剤およびそれを用いる沈殿化方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/02 20060101AFI20200728BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20200728BHJP
   C07K 1/30 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   C07H21/02
   C07H21/04 A
   C07K1/30
【請求項の数】28
【全頁数】86
(21)【出願番号】特願2016-570709(P2016-570709)
(86)(22)【出願日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】JP2016051757
(87)【国際公開番号】WO2016117663
(87)【国際公開日】20160728
【審査請求日】2018年11月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-9720(P2015-9720)
(32)【優先日】2015年1月21日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(72)【発明者】
【氏名】平井 邦博
(72)【発明者】
【氏名】片山 智
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 直子
(72)【発明者】
【氏名】山下 健
(72)【発明者】
【氏名】市丸 泰介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大輔
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−238101(JP,A)
【文献】 特開平06−192190(JP,A)
【文献】 特開平06−157388(JP,A)
【文献】 特表2012−513450(JP,A)
【文献】 特表2001−526182(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/157723(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/104169(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/113939(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/165546(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/165545(WO,A1)
【文献】 国際公開第97/007207(WO,A1)
【文献】 Biotechniques,2009年,47,1019−1022
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 21/02
C07H 21/04
C07K 1/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機基で保護された有機化合物を、溶媒から沈殿させるための沈殿促進剤であって、
前記沈殿促進剤が、
(1) 式(II):
【化1】

[式中、
は、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基を示し;
は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC3−14炭化水素環を示し;
は、それぞれ独立して、−(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−C(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)O−(CH−、−(CH−OC(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)NH−(CH−または−(CH−NHC(=O)−(CH−(pおよびqは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)を示し;
は、単結合、−(CH−O−、−(CH−C(=O)−、−(CH−C(=O)O−、−(CH−OC(=O)−、−(CH−C(=O)NH−または−(CH−NHC(=O)−(rは、0〜3の整数を示す。)を示し;
は、水素原子、置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基、置換されていてもよいC6−14アリール基、置換されていてもよい単環式複素環基またはトリ(C1−6アルキル)シリル基を示し;
mは、1〜4の整数を示し;
m’は、mが1の場合、0または1を示し、mが2、3または4の場合、1を示す。]で表される化合物であるか、あるいは
(2) −O−、−C(=O)−、−C(=O)O−および−OC(=O)−からなる群から選択される基を介して、直鎖状のC10−30アルキル基を〜6個有し、且つさらに置換されていてもよいC1−8アルカン
であり;
前記有機基が、式(III):
【化2】

[式中、
**は、保護される基との結合位置を示し;
Lは、単結合、または式(a1)若しくは(a1’):
【化3】

(式中、
は、Yとの結合位置を示し;
**は、前記と同義であり;
およびRは、それぞれ独立して、C1−22炭化水素基を示し;
は、2価のC1−22炭化水素基を示し;且つ
は、単結合を示すか、または**C(=O)N(R2’)−R1’−N(R***(式中、**は、Lとの結合位置を示し、***は、C=Oとの結合位置を示し、R1’は、C1−22アルキレン基を示し、R2’およびRは、それぞれ独立して、水素原子もしくはC1−22アルキル基を示すか、またはR2’およびRが一緒になって、環を形成していてもよい。)で表される基を示す。)で表される基を示し、
Yは、単結合、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)を示し、並びに
Zは、式(a2)、式(a2’)または式(a2”):
【化4】

[式中、
は、結合位置を示し;
は、水素原子であるか、あるいはRが、下記式(a3)で表される基である場合には、環CのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;
k個のQは、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
k個のRは、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基を示し;
kは、〜4の整数を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、k個のQRに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
は、水素原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を示し;並びに
は、水素原子、または式(a3):
【化5】

(式中、は、結合位置を示し;
jは、0〜4の整数を示し;
j個のQは、それぞれ独立して、前記と同意義を示し;
j個のRは、それぞれ独立して、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示し;
は、水素原子を示すか、或いは環Aまたは環BのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;且つ
環Cは、j個のORに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示すか、或いは
およびRが、一緒になってオキソ基を形成する。]で表される基であり;かつ
前記有機化合物が、さらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、ヌクレオシド、ヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオチド、またはさらにペプチド合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、アミノ酸若しくはペプチドである、
沈殿促進剤。
【請求項2】
が、水素原子、置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基、置換されていてもよいC6−14アリール基または置換されていてもよい単環式複素環基である、請求項1に記載の沈殿促進剤。
【請求項3】
3−14炭化水素環が、ベンゼン環およびシクロヘキサン環から選ばれる、請求項1または2に記載の沈殿促進剤。
【請求項4】
Zが、式(a2)または式(a2’)で表される基であり、縮合環が、フルオレン環またはキサンテン環であり、k個のRが、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基であり、j個のRが、それぞれ独立して、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基であり、且つRが、水素原子であるか、またはRおよびRが、一緒になってオキソ基を形成する請求項1〜3のいずれか一項に記載の沈殿促進剤。
【請求項5】
Lが、式(a1)で表される基であって、Lが、2価のC1−22炭化水素基を示し、且つLが、単結合を示す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の沈殿促進剤。
【請求項6】
Lが、式(a1’)で表される基であって、Lが、フェニレン基を示し、且つLが、単結合を示す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の沈殿促進剤。
【請求項7】
Yが、酸素原子である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の沈殿促進剤。
【請求項8】
Zが、式(a2)で表される基であって、Rが、水素原子である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の沈殿促進剤。
【請求項9】
Zが、式(a2)で表される基であって、RおよびRが、水素原子である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の沈殿促進剤。
【請求項10】
LおよびYが、単結合であり、Zが、式(a2)で表される基であって、Rが、水素原子であり、且つRおよびRが、一緒になってオキソ基を形成する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の沈殿促進剤。
【請求項11】
有機基で保護された有機化合物が、さらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の沈殿促進剤。
【請求項12】
有機基で保護された有機化合物が、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位および3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも1個の基が、有機基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の沈殿促進剤。
【請求項13】
溶媒が、極性溶媒を含む溶媒である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の沈殿促進剤。
【請求項14】
極性溶媒を含む溶媒が、極性溶媒と非極性溶媒の混合溶媒である、請求項13に記載の沈殿促進剤。
【請求項15】
極性溶媒が、アセトニトリルである、請求項13または14に記載の沈殿促進剤。
【請求項16】
有機基で保護された有機化合物に対して、0.1モル当量以上使用して、有機基で保護された有機化合物を沈殿させる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の沈殿促進剤。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の沈殿促進剤、および
式(III):
【化6】

[式中、
**は、保護される基との結合位置を示し;
Lは、単結合、または式(a1)若しくは(a1’):
【化7】

(式中、
は、Yとの結合位置を示し;
**は、前記と同義であり;
およびRは、それぞれ独立して、C1−22炭化水素基を示し;
は、2価のC1−22炭化水素基を示し;且つ
は、単結合を示すか、または**C(=O)N(R2’)−R1’−N(R***(式中、**は、Lとの結合位置を示し、***は、C=Oとの結合位置を示し、R1’は、C1−22アルキレン基を示し、R2’およびRは、それぞれ独立して、水素原子もしくはC1−22アルキル基を示すか、またはR2’およびRが一緒になって、環を形成していてもよい。)で表される基を示す。)で表される基を示し、
Yは、単結合、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)を示し、並びに
Zは、式(a2)、式(a2’)または式(a2”):
【化8】

[式中、
は、結合位置を示し;
は、水素原子であるか、あるいはRが、下記式(a3)で表される基である場合には、環CのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;
k個のQは、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
k個のRは、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基を示し;
kは、〜4の整数を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、k個のQRに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
は、水素原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を示し;並びに
は、水素原子、または式(a3):
【化9】

(式中、は、結合位置を示し;
jは、0〜4の整数を示し;
j個のQは、それぞれ独立して、前記と同意義を示し;
j個のRは、それぞれ独立して、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示し;
は、水素原子を示すか、或いは環Aまたは環BのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;且つ
環Cは、j個のORに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示すか、或いは
およびRが、一緒になってオキソ基を形成する。]で表される基で保護され、さらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、ヌクレオシド、ヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオチド、またはさらにペプチド合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、アミノ酸若しくはペプチド、
を含む、沈殿混合物。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の沈殿促進剤を用いて、溶媒から、
式(III):
【化10】

[式中、
**は、保護される基との結合位置を示し;
Lは、単結合、または式(a1)若しくは(a1’):
【化11】

(式中、
は、Yとの結合位置を示し;
**は、前記と同義であり;
およびRは、それぞれ独立して、C1−22炭化水素基を示し;
は、2価のC1−22炭化水素基を示し;且つ
は、単結合を示すか、または**C(=O)N(R2’)−R1’−N(R***(式中、**は、Lとの結合位置を示し、***は、C=Oとの結合位置を示し、R1’は、C1−22アルキレン基を示し、R2’およびRは、それぞれ独立して、水素原子もしくはC1−22アルキル基を示すか、またはR2’およびRが一緒になって、環を形成していてもよい。)で表される基を示す。)で表される基を示し、
Yは、単結合、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)を示し、並びに
Zは、式(a2)、式(a2’)または式(a2”):
【化12】

[式中、
は、結合位置を示し;
は、水素原子であるか、あるいはRが、下記式(a3)で表される基である場合には、環CのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;
k個のQは、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
k個のRは、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基を示し;
kは、〜4の整数を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、k個のQRに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
は、水素原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を示し;並びに
は、水素原子、または式(a3):
【化13】

(式中、は、結合位置を示し;
jは、0〜4の整数を示し;
j個のQは、それぞれ独立して、前記と同意義を示し;
j個のRは、それぞれ独立して、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示し;
は、水素原子を示すか、或いは環Aまたは環BのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;且つ
環Cは、j個のORに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示すか、或いは
およびRが、一緒になってオキソ基を形成する。]で表される基で保護され、さらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、ヌクレオシド、ヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオチド、またはさらにペプチド合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、アミノ酸若しくはペプチド
を沈殿させる方法。
【請求項19】
溶媒が、極性溶媒を含む溶媒である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
極性溶媒が、アセトニトリルである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
非極性溶媒中、少なくとも1個の基が、式(III):
【化14】

[式中、
**は、保護される基との結合位置を示し;
Lは、単結合、または式(a1)若しくは(a1’):
【化15】

(式中、
は、Yとの結合位置を示し;
**は、前記と同義であり;
およびRは、それぞれ独立して、C1−22炭化水素基を示し;
は、2価のC1−22炭化水素基を示し;且つ
は、単結合を示すか、または**C(=O)N(R2’)−R1’−N(R***(式中、**は、Lとの結合位置を示し、***は、C=Oとの結合位置を示し、R1’は、C1−22アルキレン基を示し、R2’およびRは、それぞれ独立して、水素原子もしくはC1−22アルキル基を示すか、またはR2’およびRが一緒になって、環を形成していてもよい。)で表される基を示す。)で表される基を示し、
Yは、単結合、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)を示し、並びに
Zは、式(a2)、式(a2’)または式(a2”):
【化16】

[式中、
は、結合位置を示し;
は、水素原子であるか、あるいはRが、下記式(a3)で表される基である場合には、環CのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;
k個のQは、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
k個のRは、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基を示し;
kは、〜4の整数を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、k個のQRに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
は、水素原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を示し;並びに
は、水素原子、または式(a3):
【化17】

(式中、は、結合位置を示し;
jは、0〜4の整数を示し;
j個のQは、それぞれ独立して、前記と同意義を示し;
j個のRは、それぞれ独立して、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示し;
は、水素原子を示すか、或いは環Aまたは環BのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;且つ
環Cは、j個のORに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示すか、或いは
およびRが、一緒になってオキソ基を形成する。]で表される基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいオリゴヌクレオチド、および請求項1〜16のいずれか一項に記載の沈殿促進剤を含む反応液に、極性溶媒を添加し、反応液からオリゴヌクレオチドと沈殿促進剤を含む沈殿混合物を分離する工程を含むオリゴヌクレオチドの製造方法。
【請求項22】
極性溶媒が、アセトニトリルである、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
ホスホロアミダイト法により行われる請求項21または22に記載の製造方法。
【請求項24】
下記工程(1)〜(3)からなる製造サイクルを1回行うか、或いは複数回繰り返すホスホロアミダイト法によるオリゴヌクレオチドの製造方法であって、1サイクル目に下記工程(4)を含み、各サイクルに下記工程(5)を含み、且つ最終サイクルを除く各サイクルに下記工程(6)を含むオリゴヌクレオチドの製造方法:
(1)非極性溶媒中、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位および3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも1個の基が、式(III):
【化18】

[式中、
**は、保護される基との結合位置を示し;
Lは、単結合、または式(a1)若しくは(a1’):
【化19】

(式中、
は、Yとの結合位置を示し;
**は、前記と同義であり;
およびRは、それぞれ独立して、C1−22炭化水素基を示し;
は、2価のC1−22炭化水素基を示し;且つ
は、単結合を示すか、または**C(=O)N(R2’)−R1’−N(R***(式中、**は、Lとの結合位置を示し、***は、C=Oとの結合位置を示し、R1’は、C1−22アルキレン基を示し、R2’およびRは、それぞれ独立して、水素原子もしくはC1−22アルキル基を示すか、またはR2’およびRが一緒になって、環を形成していてもよい。)で表される基を示す。)で表される基を示し、
Yは、単結合、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)を示し、並びに
Zは、式(a2)、式(a2’)または式(a2”):
【化20】

[式中、
は、結合位置を示し;
は、水素原子であるか、あるいはRが、下記式(a3)で表される基である場合には、環CのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;
k個のQは、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
k個のRは、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基を示し;
kは、〜4の整数を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、k個のQRに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
は、水素原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を示し;並びに
は、水素原子、または式(a3):
【化21】

(式中、は、結合位置を示し;
jは、0〜4の整数を示し;
j個のQは、それぞれ独立して、前記と同意義を示し;
j個のRは、それぞれ独立して、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示し;
は、水素原子を示すか、或いは環Aまたは環BのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;且つ
環Cは、j個のORに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示すか、或いは
およびRが、一緒になってオキソ基を形成する。]で表される基で保護され、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドを含む反応液に、酸を加えて5’位水酸基の一時保護基を脱保護し、塩基により中和し、5’位水酸基遊離体を含む反応液を得る工程;
(2)非極性溶媒中、5’位水酸基遊離体を含む反応液に、3’位水酸基がホスホロアミダイト化され、且つ5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドを添加してホスファイトトリエステル体を含む反応液を得る工程;
(3)非極性溶媒中、ホスファイトトリエステル体を含む反応液に、酸化剤または硫化剤を添加して、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位および3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも1個の基が式(III)で表される基で保護され、且つ5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいオリゴヌクレオチドを含む反応液を得る工程;
(4)工程(1)の前、工程(1)と(2)の間、工程(2)と(3)の間および工程(3)の後のいずれかにおいて、反応液に請求項1〜16のいずれか一項に記載の沈殿促進剤を加える工程;
(5)工程(4)の後であって、工程(1)と(2)の間、工程(2)と(3)の間および工程(3)の後のいずれかにおいて、沈殿促進剤を含む反応液に極性溶媒を添加し、反応液から、5’位水酸基遊離体、ホスファイトトリエステル体またはオリゴヌクレオチドと、沈殿促進剤とを含む沈殿混合物を分離する工程;
(6)工程(5)で得られた沈殿混合物に非極性溶媒を加えて反応液とする工程。
【請求項25】
極性溶媒が、アセトニトリルである、請求項24に記載の製造方法。
【請求項26】
工程(5)および(6)を、工程(3)の後に実行する、請求項24または25に記載の製造方法。
【請求項27】
さらに、下記工程(7)を含む、請求項24〜26のいずれか一項に記載の製造方法:
(7)オリゴヌクレオチドの保護基を全て除去し、オリゴヌクレオチドを単離する工程。
【請求項28】
非極性溶媒が、ハロゲン系溶媒、芳香族系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族系溶媒、およびこれらの組合せからなる群より選択される溶媒である、請求項24〜27のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中の有機化合物(例えばオリゴヌクレオチド、ペプチド等)を沈殿させる際に有用な沈殿促進剤、およびそれを用いる沈殿化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチドの合成方法には、リン酸トリエステル法、H−ホスホネート法、ホスホロアミダイト法などがあり、現在ではホスホロアミダイト法を用いた固相合成(固相法)が最も汎用されている。またペプチドの合成方法としても、固相合成が汎用されている。固相法はプロセス最適化がなされ自動化も進んでおり、スピード面で有利であるが、設備制約上スケールアップに制限があり、試薬・原料を過剰に使用し、途中段階での反応の進行状況の確認、中間体構造解析等も困難という欠点がある。一方、液相法によるオリゴヌクレオチドおよびペプチドの合成方法も検討されてきたが、操作が煩雑であり収率も低いため、多重合度のオリゴヌクレオチドおよびペプチドを大量且つ迅速に合成することは困難であった。
【0003】
近年、固相法と液相法のそれぞれの欠点を解消しようとする試みとして、液相法において、長鎖の脂肪族炭化水素基を1個以上有する有機基(擬似固相保護基)で保護されたヌクレオシドを用いた、オリゴヌクレオチドの合成方法(特許文献1および2)、および擬似固相保護基を有するペプチドを用いた、ペプチドの合成方法(特許文献3、4および5)が報告されている。これらの合成方法では、例えば、非極性溶媒中に溶解した疎水性の擬似固相保護基を有するオリゴヌクレオチドまたはペプチドに、極性溶媒を添加し、該非極性溶媒と極性溶媒の混合溶媒中からこれら化合物を沈殿(固液分離)させることによって、目的物を回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/157723号
【特許文献2】国際公開第2014/189142号
【特許文献3】国際公開第2010/104169号
【特許文献4】国際公開第2010/113939号
【特許文献5】国際公開第2011/078295号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような擬似固相保護基を使用したオリゴヌクレオチド、ペプチド等の有機化合物の液相合成において、溶媒中からこれら化合物をさらに効率的に沈殿させ、該化合物の回収率を向上させることが望まれていた。
【0006】
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、擬似固相保護基を有する有機化合物を溶媒から沈殿させる際に、該有機化合物の回収率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特定の沈殿促進剤を用いれば、疎水性基または擬似固相保護基を有する有機化合物の沈殿を促進させることができ、その回収率を向上させ得ることを見出した。この知見に基づく本発明は、以下の通りである。
【0008】
[1] 炭素数10以上の脂肪族炭化水素基を1個以上有する有機基で保護された有機化合物を、溶媒から沈殿させるための沈殿促進剤であって、前記沈殿促進剤が、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を1個以上有し、且つ前記沈殿促進剤が有する前記脂肪族炭化水素基の炭素数合計が20以上である有機化合物である、沈殿促進剤。
[2] 沈殿促進剤が有する炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が、直鎖状のC10−40アルキル基および直鎖状のC10−40アルケニル基から選ばれる基である、前記[1]に記載の沈殿促進剤。
[3] 有機基が有する炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が、直鎖状である、前記[1]または[2]に記載の沈殿促進剤。
[4] 有機基が有する炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が、直鎖状のC10−40アルキル基および直鎖状のC10−40アルケニル基から選ばれる基である、前記[1]または[2]に記載の沈殿促進剤。
[5] (1)式(G):
【0009】
【化1】
【0010】
[式中、
は、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基を示し;
は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
環Aは、置換されていてもよいC3−14炭化水素環を示し;
nは、1〜4の整数を示す。]
で表される構造を1個以上有する有機化合物、または
(2)−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−および−NHC(=O)−からなる群から選択される基を介して、直鎖状のC10−40アルキル基を1個以上有し、且つさらに置換されていてもよいC1−10アルカン
である、前記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤。
[6] (1)式(I):
【0011】
【化2】
【0012】
[式中、
は、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基を示し;
は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC3−14炭化水素環を示し;
は、それぞれ独立して、−(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−C(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)O−(CH−、−(CH−OC(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)NH−(CH−または−(CH−NHC(=O)−(CH−(pおよびqは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)を示し;
は、単結合、−(CH−O−、−(CH−C(=O)−、−(CH−C(=O)O−、−(CH−OC(=O)−、−(CH−C(=O)NH−または−(CH−NHC(=O)−(rは、0〜3の整数を示す。)を示し;
は、水素原子、置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基、置換されていてもよいC6−14アリール基、置換されていてもよい単環式複素環基またはトリ(C1−6アルキル)シリル基を示し;
nおよびmは、それぞれ独立して、1〜4の整数を示し;
m’は、mが1の場合、0または1を示し、mが2、3または4の場合、1を示す。]で表される化合物、または
(2)−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−および−NHC(=O)−からなる群から選択される基を介して、直鎖状のC10−40アルキル基を1個以上有し、且つさらに置換されていてもよいC1−10アルカン
である、前記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤。
[7] Rが、水素原子、置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基、置換されていてもよいC6−14アリール基または置換されていてもよい単環式複素環基である、前記[6]に記載の沈殿促進剤。
[8] 式(II):
【0013】
【化3】
【0014】
[式中、
は、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基を示し;
は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC3−14炭化水素環を示し;
は、それぞれ独立して、−(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−C(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)O−(CH−、−(CH−OC(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)NH−(CH−または−(CH−NHC(=O)−(CH−(pおよびqは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)を示し;
は、単結合、−(CH−O−、−(CH−C(=O)−、−(CH−C(=O)O−、−(CH−OC(=O)−、−(CH−C(=O)NH−または−(CH−NHC(=O)−(rは、0〜3の整数を示す。)を示し;
は、水素原子、置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基、置換されていてもよいC6−14アリール基、置換されていてもよい単環式複素環基またはトリ(C1−6アルキル)シリル基を示し;
mは、1〜4の整数を示し;
m’は、mが1の場合、0または1を示し、mが2、3または4の場合、1を示す。]で表される化合物である、前記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤。
[9] Rが、水素原子、置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基、置換されていてもよいC6−14アリール基または置換されていてもよい単環式複素環である、前記[8]に記載の沈殿促進剤。
[10] C3−14炭化水素環が、ベンゼン環およびシクロヘキサン環から選ばれる、前記[5]〜[9]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤。
[11] 有機基が、式(III):
【0015】
【化4】
【0016】
[式中、
**は、保護される基との結合位置を示し;
Lは、単結合、または式(a1)若しくは(a1’):
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、
は、Yとの結合位置を示し;
**は、前記と同義であり;
およびRは、それぞれ独立して、C1−22炭化水素基を示し;
は、2価のC1−22炭化水素基を示し;且つ
は、単結合を示すか、または**C(=O)N(R2’)−R1’−N(R***(式中、**は、Lとの結合位置を示し、***は、C=Oとの結合位置を示し、R1’は、C1−22アルキレン基を示し、R2’およびRは、それぞれ独立して、水素原子もしくはC1−22アルキル基を示すか、またはR2’およびRが一緒になって、環を形成していてもよい。)で表される基を示す。)で表される基を示し、
Yは、単結合、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)を示し、並びに
Zは、式(a2)、式(a2’)または式(a2”):
【0019】
【化6】
【0020】
[式中、
は、結合位置を示し;
は、水素原子であるか、あるいはRが、下記式(a3)で表される基である場合には、環CのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;
k個のQは、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
k個のRは、それぞれ独立して、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示し;
kは、1〜4の整数を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、k個のQRに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
は、水素原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を示し;並びに
は、水素原子、または式(a3):
【0021】
【化7】
【0022】
(式中、は、結合位置を示し;
jは、0〜4の整数を示し;
j個のQは、それぞれ独立して、前記と同意義を示し;
j個のRは、それぞれ独立して、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示し;
は、水素原子を示すか、或いは環Aまたは環BのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;且つ
環Cは、j個のORに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示すか、或いは
およびRが、一緒になってオキソ基を形成する。]で表される基を示す、前記[1]〜[10]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤。
[12] Zが、式(a2)または式(a2’)で表される基であり、縮合環が、フルオレン環またはキサンテン環であり、k個のRが、それぞれ独立して、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基であり、j個のRが、それぞれ独立して、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基であり、且つRが、水素原子であるか、またはRおよびRが、一緒になってオキソ基を形成する前記[11]に記載の沈殿促進剤。
[13] Lが、式(a1)で表される基であって、Lが、2価のC1−22炭化水素基を示し、且つLが、単結合を示す、前記[11]または[12]に記載の沈殿促進剤。
[14] Lが、式(a1’)で表される基であって、Lが、フェニレン基を示し、且つLが、単結合を示す、前記[11]または[12]に記載の沈殿促進剤。
[15] Yが、酸素原子である、前記[11]〜[14]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤。
[16] Zが、式(a2)で表される基であって、Rが、水素原子である、前記[11]〜[15]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤。
[17] Zが、式(a2)で表される基であって、RおよびRが、水素原子である、前記[11]〜[16]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤。
[18] LおよびYが、単結合であり、Zが、式(a2)で表される基であって、Rが、水素原子であり、且つRおよびRが、一緒になってオキソ基を形成する、前記[11]または[12]に記載の沈殿促進剤。
[19] 有機基で保護された有機化合物が、さらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、ヌクレオシド、ヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオチド、またはさらにペプチド合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、アミノ酸若しくはペプチドである、前記[1]〜[18]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤。
[20] 有機基で保護された有機化合物が、さらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである、前記[1]〜[18]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤。
[21] 有機基で保護された有機化合物が、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位および3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも1個の基が、有機基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドである、前記[1]〜[18]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤。
[22] 溶媒が、極性溶媒を含む溶媒である、前記[1]〜[21]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤。
[23] 極性溶媒を含む溶媒が、極性溶媒と非極性溶媒の混合溶媒である、前記[22]に記載の沈殿促進剤。
[24] 極性溶媒が、アセトニトリルである、前記[22]または[23]に記載の沈殿促進剤。
[25] 有機基で保護された有機化合物に対して、0.1モル当量以上使用して、有機基で保護された有機化合物を沈殿させる、前記[1]〜[24]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤。
[26] 前記[1]〜[25]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤、および炭素数10以上の脂肪族炭化水素基を1個以上有する有機基で保護された有機化合物を含む、沈殿混合物。
[27] 有機基が有する炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が、直鎖状である、前記[26]に記載の沈殿混合物。
[28] 前記[1]〜[25]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤を用いて、溶媒から、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基を1個以上有する有機基で保護された有機化合物を沈殿させる方法。
[29] 溶媒が、極性溶媒を含む溶媒である、前記[28]に記載の方法。
[30] 極性溶媒が、アセトニトリルである、前記[29]に記載の方法。
[31] 有機基が有する炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が、直鎖状である、前記[28]〜[30]のいずれか一つに記載の方法。
[32] 非極性溶媒中、少なくとも1個の基が炭素数10以上の脂肪族炭化水素基を1個以上有する有機基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいオリゴヌクレオチド、および前記[1]〜[25]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤を含む反応液に、極性溶媒を添加し、反応液からオリゴヌクレオチドと沈殿促進剤を含む沈殿混合物を分離する工程を含むオリゴヌクレオチドの製造方法。
[33] 極性溶媒が、アセトニトリルである、前記[32]に記載の製造方法。
[34] 有機基が有する炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が、直鎖状である、前記[32]または[33]に記載の製造方法。
[35] ホスホロアミダイト法により行われる前記[32]〜[34]のいずれか一つに記載の製造方法。
[36] 下記工程(1)〜(3)からなる製造サイクルを1回行うか、或いは複数回繰り返すホスホロアミダイト法によるオリゴヌクレオチドの製造方法であって、1サイクル目に下記工程(4)を含み、各サイクルに下記工程(5)を含み、且つ最終サイクルを除く各サイクルに下記工程(6)を含むオリゴヌクレオチドの製造方法:
(1)非極性溶媒中、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位および3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも1個の基が炭素数10以上の脂肪族炭化水素基を1個以上有する有機基で保護され、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドを含む反応液に、酸を加えて5’位水酸基の一時保護基を脱保護し、塩基により中和し、5’位水酸基遊離体を含む反応液を得る工程;
(2)非極性溶媒中、5’位水酸基遊離体を含む反応液に、3’位水酸基がホスホロアミダイト化され、且つ5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドを添加してホスファイトトリエステル体を含む反応液を得る工程;
(3)非極性溶媒中、ホスファイトトリエステル体を含む反応液に、酸化剤または硫化剤を添加して、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位および3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも1個の基が炭素数10以上の脂肪族炭化水素基を1個以上有する有機基で保護され、且つ5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいオリゴヌクレオチドを含む反応液を得る工程;
(4)工程(1)の前、工程(1)と(2)の間、工程(2)と(3)の間および工程(3)の後のいずれかにおいて、反応液に前記[1]〜[25]のいずれか一つに記載の沈殿促進剤を加える工程;
(5)工程(4)の後であって、工程(1)と(2)の間、工程(2)と(3)の間および工程(3)の後のいずれかにおいて、沈殿促進剤を含む反応液に極性溶媒を添加し、反応液から、5’位水酸基遊離体、ホスファイトトリエステル体またはオリゴヌクレオチドと、沈殿促進剤とを含む沈殿混合物を分離する工程;
(6)工程(5)で得られた沈殿混合物に非極性溶媒を加えて反応液とする工程。
[37] 極性溶媒が、アセトニトリルである、前記[36]に記載の製造方法。
[38] 有機基が有する炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が、直鎖状である、前記[36]または[37]に記載の製造方法。
[39] 工程(5)および(6)を、工程(3)の後に実行する、前記[36]〜[38]のいずれか一つに記載の製造方法。
[40] さらに、下記工程(7)を含む、前記[36]〜[39]のいずれか一つに記載の製造方法:
(7)オリゴヌクレオチドの保護基を全て除去し、オリゴヌクレオチドを単離する工程。
[41] 非極性溶媒が、ハロゲン系溶媒、芳香族系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族系溶媒、およびこれらの組合せからなる群より選択される溶媒である、前記[36]〜[40]のいずれか一つに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の沈殿促進剤を用いれば、疎水性基である擬似固相保護基を有する有機化合物の溶媒からの沈殿を促進させることができ、その回収率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[用語]
文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと同様または同等の任意の方法および材料は、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及したすべての刊行物および特許は、例えば、記載された発明に関連して使用されうる刊行物に記載されている、構築物および方法論を記載および開示する目的で、参照として本明細書に組み入れられる。
【0025】
本明細書において、オリゴヌクレオチドの構成単位となる「ヌクレオシド」とは、核酸塩基が糖(例えば、2−デオキシリボース、リボース、リボース環またはデオキシリボース環の2位炭素原子および4位炭素原子が2価の有機基により結合されたリボースまたはデオキシリボースなど)の1’位にN−グリコシド化により結合された化合物を意味する。リボース環またはデオキシリボース環の2位炭素原子および4位炭素原子が2価の有機基により結合されたリボースまたはデオキシリボースとしては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0026】
【化8】
【0027】
本明細書中、「ヌクレオチド」とは、ヌクレオシドにリン酸基が結合した化合物を意味する。
本明細書中、「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオシドにヌクレオチドが1個以上連結した化合物を意味する。本発明におけるオリゴヌクレオチドのヌクレオシドの数は特に限定されないが、好ましくは3〜50、より好ましくは5〜30である。
【0028】
本明細書中、「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」には、それぞれ、リボース残基またはデオキリボース残基の代わりにモルフォリン残基を有するモルフォリノヌクレオシドおよびモルフォリノヌクレオシドが包含される。
本明細書中、「モルフォリノヌクレオシド」とは、下記式(1)で表される化合物である。本明細書では、式(1)で表されるモルフォリノヌクレオシドをモルフォリノヌクレオシド(1)と称する。他の式で表される化合物も同様に称することがある。
【0029】
【化9】
【0030】
(式中、Baseは、保護されていてもよい核酸塩基を示す)
モルフォリノヌクレオシド(1)は、自体公知の方法(例えば、WO91/09033A1に記載の方法)、またはそれに準ずる方法に従い調製することができる。具体的には、下記スキームに示すように、対応するリボヌクレオシド(2)を過ヨウ素酸ナトリウム等で酸化開環して対応する2’,3’−ジアルデヒド(3)とし、ジアルデヒド(3)をアンモニアで閉環して2’,3’−ジヒドロキシモルフォリノヌクレオシド(4)とし、ジヒドロキシモルフォリノヌクレオシド(4)を還元剤(例、水素化シアノホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムなど)で還元することにより、モルフォリノヌクレオシド(1)を得ることができる。
【0031】
【化10】
【0032】
本明細書中、モルフォリノヌクレオシドの位置番号(1’、2’など)は、原料であるリボヌクレオシド(2)のリボースの炭素原子の位置番号に対応したものを使用するものとする。また、本明細書中、核酸化学の慣例に倣い、モルフォリノオリゴヌクレオチドの5’位の遊離水酸基を有する側の末端のモルフォリノヌクレオシドを「5’−末端」、反対側の末端のモルフォリノヌクレオシドを「3’−末端」と称する。
【0033】
本明細書中、「核酸塩基」とは、核酸の合成に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、シトシル基、ウラシル基、チミニル基等のピリミジン塩基、アデニル基、グアニル基等のプリン塩基を挙げることができる。また、「保護されていてもよい核酸塩基」とは、例えば、アミノ基を有する核酸塩基であるアデニル基、グアニル基、またはシトシル基において、アミノ基が保護されていてもよいことを意味し、核酸塩基のアミノ基が、ヌクレオチドの5’位の脱保護条件またはモルフォリノヌクレオチドのモルフォリン環窒素原子の脱保護条件に耐え得る保護基により保護されている核酸塩基が好ましい。かかる「アミノ基の保護基」としては、特に限定されず、例えば、グリーンズ・プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Greene’s PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS)、第4版、ウィリー・インターサイエンス(Wiley−Interscience)出版(2006年)等に記載されている保護基を挙げることができる。かかる「アミノ基の保護基」の具体例としては、例えば、ピバロイル基、ピバロイロキシメチル基、トリフルオロアセチル基、フェノキシアセチル基、4−イソプロピルフェノキシアセチル基、4−tert−ブチルフェノキシアセチル基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、ジメチルホルムアミジニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基等を挙げることができる。これらの中でも、フェノキシアセチル基、4−イソプロピルフェノキシアセチル基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基およびジメチルホルムアミジニル基が好ましい。また、核酸塩基のカルボニル基が保護されていてもよく、例えば、フェノール、2,5−ジクロロフェノール、3−クロロフェノール、3,5−ジクロロフェノール、2−ホルミルフェノール、2−ナフトール、4−メトキシフェノール、4−クロロフェノール、2−ニトロフェノール、4−ニトロフェノール、4−アセチルアミノフェノール、ペンタフルオロフェノール、4−ピバロイロキシベンジルアルコール、4−ニトロフェネチルアルコール、2−(メチルスルフォニル)エタノール、2−(フェニルスルフォニル)エタノール、2−シアノエタノール、2−(トリメチルシリル)エタノール、ジメチルカルバミン酸クロライド、ジエチルカルバミン酸クロライド、エチルフェニルカルバミン酸クロライド、1−ピロリジンカルボン酸クロライド、4−モルフォリンカルボン酸クロライド、ジフェニルカルバミン酸クロライド等を反応させて、カルボニル基を保護することが出来る。ここで、カルボニル基の保護基については、特に導入しなくてもよい場合がある。また、該「核酸塩基」には、上記した基の他に、核酸塩基が任意の置換基(例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシ、シアノ、ニトロ等)により任意の位置に1〜3個置換されている修飾核酸塩基(例えば、8−ブロモアデニル基、8−ブロモグアニル基、5−ブロモシトシル基、5−ヨードシトシル基、5−ブロモウラシル基、5−ヨードウラシル基、5−フルオロウラシル基、5−メチルシトシル基、8−オキソグアニル基、ヒポキサンチニル基等)も包含される。
【0034】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子である。
【0035】
本明細書中、「アルキル(基)」としては、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1以上のアルキル基が挙げられ、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくはC1−10アルキル基であり、より好ましくはC1−6アルキル基である。炭素数範囲の限定がない場合の好適な具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられ、特にメチル、エチルが好ましい。
本明細書中、「Ca−b」とは、炭素数がa以上b以下(a、bは整数を示す)を意味する。
【0036】
本明細書中、「アラルキル(基)」としては、C7−20アラルキル基が挙げられ、好ましくはC7−16アラルキル基(C6−10アリール−C1−6アルキル基)である。好適な具体例としては、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、ナフチルメチル、1−ナフチルエチル、1−ナフチルプロピル等が挙げられ、特にベンジルが好ましい。
【0037】
本明細書中、「アルコキシ(基)」としては、炭素数1以上のアルコキシ基が挙げられ、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくはC1−10アルコキシ基であり、より好ましくはC1−6アルコキシ基である。炭素数範囲の限定がない場合の好適な具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられ、特にメトキシ、エトキシが好ましい。
【0038】
本明細書中、「アシル(基)」としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状のC1−6アルカノイル基、C7−13アロイル基等が挙げられる。具体的には、例えば、ホルミル、アセチル、n−プロピオニル、イソプロピオニル、n−ブチリル、イソブチリル、ピバロイル、バレリル、ヘキサノイル、ベンゾイル、ナフトイル、レブリニル等が挙げられ、これらはそれぞれ置換されていてもよい。
【0039】
本明細書中、「アルケニル(基)」としては、直鎖状または分岐鎖状のC2−6アルケニル基等が好ましく、例えば、ビニル、1−プロペニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル等が挙げられる。中でも、C2−4アルケニル基が好ましい。
【0040】
本明細書中、「アルキニル(基)」としては、C2−6アルキニル基等が好ましく、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル等が挙げられる。中でも、C2−4アルキニル基が好ましい。
【0041】
本明細書中、「シクロアルキル(基)」は、環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。中でも、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC3−6シクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシルが特に好ましい。
【0042】
本明細書中、「アリール(基)」は、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭化水素基を意味し、具体的には、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、2−アンスリル等のC6−14アリール基等が挙げられる。中でもC6−10アリール基がより好ましく、フェニルが特に好ましい。
【0043】
本明細書中、「炭化水素基」としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香脂肪族炭化水素基、単環式飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基等が挙げられ、具体的には、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価基およびそれらから誘導される2価基である。
【0044】
本明細書中、「トリアルキルシリル(基)」中の三つのアルキル基は、互いに同一でもよく、異なっていてもよい。また該アルキル基は、それぞれ独立に、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。「トリアルキルシリル(基)」としては、トリ(C1−6アルキル)シリル基が好ましく、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基が挙げられる。
【0045】
本明細書中、「アルキレン(基)」は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよい。「アルキレン(基)」としては、炭素数1以上のアルキレン基が挙げられ、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくはC1−10アルキレン基であり、より好ましくはC1−6アルキレン基である。好適な具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレンが挙げられ、特にメチレン、エチレンが好ましい。
【0046】
本明細書中、「リンカー」としては、例えば、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−、−NHC(=O)−、−S−、−SO−、−SO−、−Si(R)(R’)O−、−Si(R)(R’)−(R、R’は、それぞれ独立して、水素原子またはC1−22炭化水素基を示す。)等が挙げられる。
【0047】
本明細書中、「置換されていてもよい」における「置換基」には、前記のハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基の他、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、グアニジル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(アルコキシ部は前記アルコキシ基と同様)、スルホ基、ホスホ基、アルキルチオ基(アルキル部は前記アルキル基と同様)、アルキルスルフィニル基(アルキル部は前記アルキル基と同様)、アルキルスルフォニル基(アルキル部は前記アルキル基と同様)、アミノ基、モノアルキルアミノ基(アルキル部は前記アルキル基と同様)、ジアルキルアミノ基(アルキル部は前記アルキル基と同様)、オキソ基、アシルアミノ基(アシル部は前記アルキル基と同様)などが包含される。
【0048】
本明細書中、「C3−14炭化水素環」(「置換されていてもよいC3−14炭化水素環」における「C3−14炭化水素環」を含む)としては、例えば、C3−10シクロアルカン、C3−10シクロアルケン、C6−14芳香族炭化水素環が挙げられる。
該「C3−10シクロアルカン」としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンが挙げられる。
該「C3−10シクロアルケン」としては、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンが挙げられる。
該「C6−14芳香族炭化水素環」としては、例えば、ベンゼン、ナフタレンが挙げられる。
【0049】
本明細書中、「単環式複素環基」(「置換されていてもよい単環式複素環基」における「単環式複素環基」を含む)としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1〜4個のヘテロ原子をそれぞれ含有する、単環式芳香族複素環基および単環式非芳香族複素環基が挙げられる。
該「単環式芳香族複素環基」としては、例えば、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニルなどの5〜6員単環式芳香族複素環基が挙げられる。
該「単環式非芳香族複素環基」としては、例えば、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロフラニル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、テトラヒドロイソチアゾリル、テトラヒドロオキサゾリル、テトラヒドロイソオキサゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピリジニル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロピリダジニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、モルホリニル(例、モルホリン−4−イル)、チオモルホリニル、アゼパニル、ジアゼパニル、アゼピニル、オキセパニル、アゾカニル、ジアゾカニルなどの3〜8員単環式非芳香族複素環基が挙げられる。
【0050】
[沈殿促進剤]
本発明の沈殿促進剤は、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基を1個以上有する有機基(以下「本発明の擬似固相保護基」と称することがある)で保護された有機化合物を、溶媒から沈殿させるために用いられる、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を1個以上有し、前記脂肪族炭化水素基の炭素数合計が20以上である有機化合物である。本発明の沈殿促進剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記溶媒は、好ましくは極性溶媒を含む溶媒であり、より好ましくは極性溶媒と非極性溶媒の混合溶媒である。前記極性溶媒は、好ましくはアセトニトリルである。
【0052】
本発明の沈殿促進剤が有する炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基の炭素数合計は、20以上であることが必要であり、好ましくは22以上である。この炭素数合計が20未満であると、液相中の擬似固相保護基で保護された有機化合物を充分に沈殿させることができず、該有機化合物の回収率が低下する。この上限に特に限定はないが、この炭素数合計は、好ましくは220以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは70以下である。
【0053】
本発明の沈殿促進剤が有する炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基は、好ましくは直鎖状のC10−40アルキル基および直鎖状のC10−40アルケニル基から選ばれる基であり、より好ましくは直鎖状のC10−40アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC10−30アルキル基であり、特に好ましくは直鎖状のC12−28アルキル基であり、最も好ましくは直鎖状のC14−26アルキル基である。本発明の沈殿促進剤が有する炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基の数は、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜9である。
【0054】
本発明の沈殿促進剤の一態様としては、下記式(G)で表される構造を1個以上有する有機化合物が挙げられる。
【0055】
【化11】
【0056】
[式中、
は、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基を示し;
は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
環Aは、置換されていてもよいC3−14炭化水素環を示し;
nは、1〜4の整数を示す。]
【0057】
式(G)におけるXの結合方向は、上記化学式の方向に対応する。例えば、Xが−C(=O)O−である場合、−C(=O)O−の左側でRと結合し、−C(=O)O−の右側で環Aと結合する。
【0058】
式(G)においてRが複数存在する場合、それらは互いに同じでもよく、異なっていてもよい。Xも同様である。
【0059】
本発明の沈殿促進剤の好ましい一態様としては、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。なお、「式(I)で表される化合物」を「化合物(I)」と略称することがある。他の式で表される化合物も同様に略称することがある。
【0060】
【化12】
【0061】
[式中、
は、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基を示し;
は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC3−14炭化水素環を示し;
は、それぞれ独立して、−(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−C(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)O−(CH−、−(CH−OC(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)NH−(CH−または−(CH−NHC(=O)−(CH−(pおよびqは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)を示し;
は、単結合、−(CH−O−、−(CH−C(=O)−、−(CH−C(=O)O−、−(CH−OC(=O)−、−(CH−C(=O)NH−または−(CH−NHC(=O)−(rは、0〜3の整数を示す。)を示し;
は、水素原子、置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基、置換されていてもよいC6−14アリール基、置換されていてもよい単環式複素環基またはトリ(C1−6アルキル)シリル基(好ましくは水素原子、置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基、置換されていてもよいC6−14アリール基または置換されていてもよい単環式複素環基)を示し;
nおよびmは、それぞれ独立して、1〜4の整数を示し;
m’は、mが1の場合、0または1を示し、mが2、3または4の場合、1を示す。]
【0062】
式(I)におけるX、XおよびXの結合方向は、それぞれ、上記化学式の方向に対応する。例えば、Xが−(CH−O−である場合、−(CH−O−の左側で環Bと結合し、−(CH−O−の右側でRと結合する。
【0063】
式(I)においてRが複数存在する場合、それらは互いに同じでもよく、異なっていてもよい。X、環A、およびXも同様である。
【0064】
本発明の沈殿促進剤のより好ましい一態様としては、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0065】
【化13】
【0066】
[式中、
は、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基を示し;
は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC3−14炭化水素環を示し;
は、それぞれ独立して、−(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−C(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)O−(CH−、−(CH−OC(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)NH−(CH−または−(CH−NHC(=O)−(CH−(pおよびqは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)を示し;
は、単結合、−(CH−O−、−(CH−C(=O)−、−(CH−C(=O)O−、−(CH−OC(=O)−、−(CH−C(=O)NH−または−(CH−NHC(=O)−(rは、0〜3の整数を示す。)を示し;
は、水素原子、置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基、置換されていてもよいC6−14アリール基、置換されていてもよい単環式複素環基またはトリ(C1−6アルキル)シリル基(好ましくは水素原子、置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基、置換されていてもよいC6−14アリール基または置換されていてもよい単環式複素環基)を示し;
mは、1〜4の整数を示し;
m’は、mが1の場合、0または1を示し、mが2、3または4の場合、1を示す。]
【0067】
式(II)におけるX、XおよびXの結合方向は、それぞれ、上記化学式の方向に対応する。例えば、Xが−(CH−O−である場合、−(CH−O−の左側で環Bと結合し、−(CH−O−の右側でRと結合する。
【0068】
式(II)において複数存在するRは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。Xも同様である。また、式(II)において環Aが複数存在する場合、それらは互いに同じでもよく、異なっていてもよい。Xも同様である。
【0069】
が複数存在する場合、それらは互いに同じものでもよく、異なっていてもよい。Rは、それぞれ独立して、好ましくは直鎖状のC10−30アルキル基であり、より好ましくは直鎖状のC12−28アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC14−26アルキル基である。
【0070】
本発明の一態様において、Rは、好ましくは水素原子、置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基、置換されていてもよいC6−14アリール基または置換されていてもよい単環式複素環基であり、より好ましくは水素原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基または置換されていてもよいC6−14アリール基であり、さらに好ましくは水素原子または置換されていてもよいC1−6アルキル基であり、特に好ましくは水素原子またはC1−6アルキル基である。
【0071】
本発明の別の態様において、Rは、好ましくは水素原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基または置換されていてもよいC6−14アリール基、置換されていてもよい3〜8員単環式非芳香族複素環基またはトリ(C1−6アルキル)シリル基であり、より好ましくは水素原子または置換されていてもよいC1−6アルキル基または3〜8員単環式非芳香族複素環基またはトリ(C1−6アルキル)シリル基であり、さらに好ましくは水素原子、C1−6アルカノイルアミノ基(例、アセチルアミノ基)で置換されていてもよいC1−6アルキル基または3〜8員単環式非芳香族複素環基(例、モルホリン−4−イル基)またはトリ(C1−6アルキル)シリル基(例、トリイソプロピルシリル基)である。
【0072】
は、それぞれ独立して、好ましくは単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−または−OC(=O)−であり、より好ましくは−O−、−C(=O)O−または−OC(=O)−、さらに好ましくは−O−である。
【0073】
は、それぞれ独立して、好ましくは−(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−C(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(CH−(pおよびqは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)であり、より好ましくは−(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−C(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(CH−(pおよびqは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)であり、さらに好ましくは単結合、−(CH−O−(CH−、−C(=O)−、−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(pおよびqは、それぞれ独立して、0または1の整数を示す。)である。
【0074】
は、好ましくは単結合、−(CH−O−、−(CH−C(=O)−、−(CH−C(=O)O−または−(CH−OC(=O)−(rは、0〜3の整数を示す。)であり、より好ましくは単結合、−(CH−C(=O)−、−(CH−C(=O)O−または−(CH−OC(=O)−(rは、0〜3の整数を示す。)であり、さらに好ましくは単結合、−C(=O)−、−C(=O)O−または−OC(=O)−である。
【0075】
nは、好ましくは1〜3の整数である。
mは、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1または3である。
【0076】
3−14炭化水素環は、好ましくはベンゼン環およびシクロヘキサン環から選ばれ、より好ましくはベンゼン環である。
【0077】
好ましい化合物(I)としては、
が、それぞれ独立して、直鎖状のC10−30アルキル基であり;
が、それぞれ独立して、単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−または−OC(=O)−であり;
環Aおよび環Bが、それぞれ独立して、ベンゼン環またはシクロヘキサン環であり;
が、それぞれ独立して、−(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−C(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(CH−(pおよびqは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)であり;
が、単結合、−(CH−O−、−(CH−C(=O)−、−(CH−C(=O)O−または−(CH−OC(=O)−(rは、0〜3の整数を示す。)であり;
が、水素原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基、置換されていてもよいC6−14アリール基、置換されていてもよい3〜8員単環式非芳香族複素環基またはトリ(C1−6アルキル)シリル基であり;
nが、1〜3の整数であり;
mが、1〜3の整数であり;
m’は、mが1の場合、0または1であり、mが2または3の場合、1である
化合物が挙げられる。この態様において、Rが、水素原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基または置換されていてもよいC6−14アリール基であることが一層好ましい。
【0078】
より好ましい化合物(I)としては、
が、それぞれ独立して、直鎖状のC12−28アルキル基であり;
が、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)O−または−OC(=O)−であり;
環Aおよび環Bが、それぞれ独立して、ベンゼン環またはシクロヘキサン環であり;
が、それぞれ独立して、−(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−C(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(CH−(pおよびqは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)であり;
が、単結合、−(CH−C(=O)−、−(CH−C(=O)O−または−(CH−OC(=O)−(rは、0〜3の整数を示す。)であり;
が、水素原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基または3〜8員単環式非芳香族複素環基またはトリ(C1−6アルキル)シリル基であり;
nが、1〜3の整数であり;
mは、1〜3の整数であり;
m’は、mが1の場合、0または1であり、mが2または3の場合、1である
化合物が挙げられる。この態様において、Rが、水素原子または置換されていてもよいC1−6アルキル基であることが一層好ましい。
【0079】
より一層好ましい化合物(I)としては、
が、それぞれ独立して、直鎖状のC12−28アルキル基であり;
が、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)O−または−OC(=O)−であり;
環Aおよび環Bが、それぞれ独立して、ベンゼン環またはシクロヘキサン環であり;
が、それぞれ独立して、−(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−C(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(CH−(pおよびqは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)であり;
が、単結合、−(CH−C(=O)−、−(CH−C(=O)O−または−(CH−OC(=O)−(rは、0〜3の整数を示す。)であり;
が、水素原子、C1−6アルカノイルアミノ基(例、アセチルアミノ基)で置換されていてもよいC1−6アルキル基または3〜8員単環式非芳香族複素環基(例、モルホリン−4−イル基)またはトリ(C1−6アルキル)シリル基(例、トリイソプロピルシリル基)であり;
nが、1〜3の整数であり;
mは、1〜3の整数であり;
m’は、mが1の場合、0または1であり、mが2または3の場合、1である
化合物が挙げられる。
【0080】
さらに好ましい化合物(I)としては、
が、それぞれ独立して、直鎖状のC14−26アルキル基であり;
が、−O−であり;
環Aおよび環Bが、それぞれ独立して、ベンゼン環またはシクロヘキサン環であり;
が、それぞれ独立して、単結合、−(CH−O−(CH−、−C(=O)−、−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(pおよびqは、それぞれ独立して、0または1の整数を示す。)であり;
が、単結合、−C(=O)−、−C(=O)O−または−OC(=O)−であり;
が、水素原子、C1−6アルカノイルアミノ基(例、アセチルアミノ基)で置換されていてもよいC1−6アルキル基または3〜8員単環式非芳香族複素環基(例、モルホリン−4−イル基)またはトリ(C1−6アルキル)シリル基(例、トリイソプロピルシリル基)であり;
nが、1〜3の整数であり;
mが、1または3であり;
m’は、mが1の場合、0または1であり、mが3の場合、1である
化合物が挙げられる。
【0081】
上述のさらに好ましい化合物(I)において、Rが、水素原子またはC1−6アルキル基であることが一層好ましい。
【0082】
上述のさらに好ましい化合物(I)において、mが1であり、且つm’が0である場合、Xが、それぞれ独立して、単結合、−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(pおよびqは、それぞれ独立して、0または1の整数を示す。)であり、Rが、C1−6アルキル基であることがさらに一層好ましい。
【0083】
上述のさらに好ましい化合物(I)において、mが1または3であり、且つm’が1である場合、Xが、それぞれ独立して、−(CH−O−(CH−または−C(=O)−(pおよびqは、それぞれ独立して、0または1の整数を示す。)であり、Xが、単結合または−C(=O)O−であり、Rが、水素原子またはC1−6アルキル基であることがさらに一層好ましい。
【0084】
特に好ましい化合物(I)としては、
が、それぞれ独立して、直鎖状のC14−26アルキル基であり;
が、−O−であり;
環Aおよび環Bが、ベンゼン環であり;
が、それぞれ独立して、単結合、−(CH−O−(CH−、−C(=O)−、−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(pおよびqは、それぞれ独立して、0または1の整数を示す。)であり;
が、単結合、−C(=O)−、−C(=O)O−または−OC(=O)−であり;
が、水素原子またはC1−6アルキル基であり;
nが、1〜3の整数であり;
mが、1または3であり;
m’は、mが1の場合、0または1であり、mが3の場合、1である
化合物が挙げられる。
【0085】
上述の特に好ましい化合物(I)において、mが1であり、且つm’が0である場合、Xが、単結合、−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(pおよびqは、それぞれ独立して、0または1の整数を示す。)であり、Rが、C1−6アルキル基であることが一層好ましい。
【0086】
上述の特に好ましい化合物(I)において、mが1または3であり、且つm’が1である場合、Xが、−(CH−O−(CH−または−C(=O)−(pおよびqは、それぞれ独立して、0または1の整数を示す。)であり、Xが、単結合または−C(=O)O−であることが一層好ましい。
【0087】
好ましい化合物(II)としては、
が、それぞれ独立して、直鎖状のC10−30アルキル基であり;
が、それぞれ独立して、単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−または−OC(=O)−であり;
環Aおよび環Bが、それぞれ独立して、ベンゼン環またはシクロヘキサン環であり;
が、それぞれ独立して、−(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−C(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(CH−(pおよびqは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)であり;
が、単結合、−(CH−O−、−(CH−C(=O)−、−(CH−C(=O)O−または−(CH−OC(=O)−(rは、0〜3の整数を示す。)であり;
が、水素原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基、置換されていてもよいC6−14アリール基、置換されていてもよい3〜8員単環式非芳香族複素環基またはトリ(C1−6アルキル)シリル基であり;
mが、1〜3の整数であり;
m’は、mが1の場合、0または1であり、mが2または3の場合、1である
化合物が挙げられる。この態様において、Rが、水素原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、置換されていてもよいC2−6アルケニル基、置換されていてもよいC2−6アルキニル基または置換されていてもよいC6−14アリール基であることが一層好ましい。
【0088】
より好ましい化合物(II)としては、
が、それぞれ独立して、直鎖状のC12−28アルキル基であり;
が、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)O−または−OC(=O)−であり;
環Aおよび環Bが、それぞれ独立して、ベンゼン環またはシクロヘキサン環であり;
が、それぞれ独立して、−(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−C(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(CH−(pおよびqは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)であり;
が、単結合、−(CH−C(=O)−、−(CH−C(=O)O−または−(CH−OC(=O)−(rは、0〜3の整数を示す。)であり;
が、水素原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基または3〜8員単環式非芳香族複素環基またはトリ(C1−6アルキル)シリル基であり;
mが、1〜3の整数であり;
m’は、mが1の場合、0または1であり、mが2または3の場合、1である
化合物が挙げられる。この態様において、Rが、水素原子または置換されていてもよいC1−6アルキル基であることが一層好ましい。
【0089】
より一層好ましい化合物(II)としては、
が、それぞれ独立して、直鎖状のC12−28アルキル基であり;
が、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)O−または−OC(=O)−であり;
環Aおよび環Bが、それぞれ独立して、ベンゼン環またはシクロヘキサン環であり;
が、それぞれ独立して、−(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−C(=O)−(CH−、−(CH−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(CH−(pおよびqは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)であり;
が、単結合、−(CH−C(=O)−、−(CH−C(=O)O−または−(CH−OC(=O)−(rは、0〜3の整数を示す。)であり;
が、水素原子、C1−6アルカノイルアミノ基(例、アセチルアミノ基)で置換されていてもよいC1−6アルキル基または3〜8員単環式非芳香族複素環基(例、モルホリン−4−イル基)またはトリ(C1−6アルキル)シリル基(例、トリイソプロピルシリル基)であり;
mは、1〜3の整数であり;
m’は、mが1の場合、0または1であり、mが2または3の場合、1である
化合物が挙げられる。
【0090】
さらに好ましい化合物(II)としては、
が、それぞれ独立して、直鎖状のC14−26アルキル基であり;
が、−O−であり;
環Aおよび環Bが、ベンゼン環またはシクロヘキサン環であり;
が、それぞれ独立して、単結合、−(CH−O−(CH−、−C(=O)−、−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(pおよびqは、それぞれ独立して、0または1の整数を示す。)であり;
が、単結合、−C(=O)−、−C(=O)O−または−OC(=O)−であり;
が、水素原子、C1−6アルカノイルアミノ基(例、アセチルアミノ基)で置換されていてもよいC1−6アルキル基または3〜8員単環式非芳香族複素環基(例、モルホリン−4−イル基)またはトリ(C1−6アルキル)シリル基(例、トリイソプロピルシリル基)であり;
mが、1または3であり;
m’は、mが1の場合、0または1であり、mが3の場合、1である
化合物が挙げられる。
【0091】
上述のさらに好ましい化合物(II)において、Rが、水素原子またはC1−6アルキル基であることが一層好ましい。
【0092】
上述のさらに好ましい化合物(II)において、mが1であり、且つm’が0である場合、Xが、それぞれ独立して、単結合、−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(pおよびqは、それぞれ独立して、0または1の整数を示す。)であり、Rが、C1−6アルキル基であることがさらに一層好ましい。
【0093】
上述のさらに好ましい化合物(II)において、mが1または3であり、且つm’が1である場合、Xが、それぞれ独立して、−(CH−O−(CH−または−C(=O)−(pおよびqは、それぞれ独立して、0または1の整数を示す。)であり、Xが、単結合または−C(=O)O−であり、Rが、水素原子またはC1−6アルキル基であることがさらに一層好ましい。
【0094】
特に好ましい化合物(II)としては、
が、それぞれ独立して、直鎖状のC14−26アルキル基であり;
が、−O−であり;
環Aおよび環Bが、ベンゼン環であり;
が、それぞれ独立して、単結合、−(CH−O−(CH−、−C(=O)−、−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(pおよびqは、それぞれ独立して、0または1の整数を示す。)であり;
が、単結合、−C(=O)−、−C(=O)O−または−OC(=O)−であり;
が、水素原子またはC1−6アルキル基であり;
mが、1または3であり;
m’は、mが1の場合、0または1であり、mが3の場合、1である
化合物が挙げられる。
【0095】
上述の特に好ましい化合物(II)において、mが1であり、且つm’が0である場合、Xが、単結合、−C(=O)O−(CH−または−(CH−OC(=O)−(pおよびqは、それぞれ独立して、0または1の整数を示す。)であり、Rが、C1−6アルキル基であることが一層好ましい。
【0096】
上述の特に好ましい化合物(II)において、mが1または3であり、且つm’が1である場合、Xが、−(CH−O−(CH−または−C(=O)−(pおよびqは、それぞれ独立して、0または1の整数を示す。)であり、Xが、単結合または−C(=O)O−であることが一層好ましい。
【0097】
上述の化合物(I)に包含される具体例としては、下記式(IV−a)〜(IV−n)のいずれかで表される化合物が挙げられる。これら具体例の中では、化合物(IV−a)〜化合物(IV−l)が好ましく、化合物(IV−a)〜化合物(IV−j)がより好ましく、化合物(IV−a)〜化合物(IV−g)がさらに好ましく、化合物(IV−a)〜化合物(IV−e)が特に好ましく、化合物(IV−a)および化合物(IV−b)が最も好ましい。
【0098】
【化14】
【0099】
【化15】
【0100】
【化16】
【0101】
【化17】
【0102】
【化18】
【0103】
【化19】
【0104】
本発明の沈殿促進剤の別の態様としては、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−および−NHC(=O)−からなる群から選択される基を介して、直鎖状のC10−40アルキル基を1個以上有し、且つさらに置換されていてもよいC1−10アルカン(以下「アルカン化合物」と称することがある。)が挙げられる。
【0105】
1−10アルカンは直鎖状でもよく、分枝鎖状でもよい。C1−10アルカンの炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは3〜6である。
アルカン化合物が有する直鎖状のC10−40アルキル基は、好ましくは直鎖状のC10−30アルキル基、より好ましくは直鎖状のC12−28アルキル基、さらに好ましくは直鎖状のC14−26アルキル基である。アルカン化合物が有する直鎖状のC10−40アルキル基の数は、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜4、さらに好ましくは3または4である。
直鎖状のC10−40アルキル基とC1−10アルカンとを結合する基は、好ましくは−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−および−OC(=O)−からなる群から選択される基であり、より好ましくは−O−である。
【0106】
好ましいアルカン化合物としては、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−および−OC(=O)−からなる群から選択される基を介して、直鎖状のC10−30アルキル基を2〜6個有し、且つさらに置換されていてもよいC1−8アルカンが挙げられる。より好ましいアルカン化合物としては、−O−を介して、直鎖状のC10−30アルキル基を2〜4個有し、且つさらに置換されていてもよいC2−6アルカンが挙げられる。さらに好ましいアルカン化合物としては、−O−を介して、直鎖状のC14−26アルキル基を3または4個有し、且つさらに置換されていてもよいC3−6アルカンが挙げられる。
【0107】
アルカン化合物の具体例としては、下記式(V−a)または(V−b)で表される化合物が挙げられる。
【0108】
【化20】
【0109】
[本発明の沈殿促進剤の製造方法]
例えば、Xが−O−であり、mが1であり、m’が0である化合物(I)は、次式のように、ハロゲン原子(X)を有する化合物(IA−1)を用いる、化合物(IA−2)の水酸基のアルキル化によって製造することができる。アルキル化は、有機合成の分野で周知であり、当業者は、その条件を適宜設定して行うことができる。
【0110】
【化21】
【0111】
(式中、Xは、ハロゲン原子(好ましくは塩素原子または臭素原子)を表し、その他の記号は前記と同義である。)
また、例えば、Xが−CH−O−であり、m’が1である化合物(I)は、次式のように、ハロゲン原子(X)を有する化合物(IA−3)を用いる、化合物(IB)の水酸基のアルキル化によって製造することができる。
【0112】
【化22】
【0113】
(式中、各記号は前記と同義である。)
その他の本発明の沈殿促進剤も、自体公知の方法(例えば、アルキル化、エステル化、アミド化等)またはこれに準ずる方法に従って原料化合物から製造することができる。また、原料化合物は、市販品を使用してもよく、自体公知の方法またはこれに準ずる方法に従って製造した化合物を使用してもよい。
【0114】
[本発明の擬似固相保護基]
本発明の沈殿促進剤は、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基を1個以上有する有機基(即ち、本発明の擬似固相保護基)で保護された有機化合物を含む溶媒から、該化合物を沈殿させるために用いられる。本発明の擬似固相保護基および擬似固相保護基で保護された有機化合物の具体例としては、ヌクレオシド、ヌクレオチド等については、国際公開第2012/157723号、国際公開第2012/157723号、国際公開第2014/189142号、特開2010−116418号公報等に開示されているもの、アミノ酸、ペプチド等については国際公開第2010/104169号、国際公開第2010/113939号、国際公開第2011/078295号、国際公開第2012/029794号、特開2009−185063号公報、特開2010−275254号公報等に開示されているものを挙げることができる。本発明の擬似固相保護基は、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な有機基であることが好ましい。
【0115】
本発明の擬似固相保護基の一態様としては、例えば、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基がリンカーを介して結合したC6−14芳香族炭化水素環を有する有機基が挙げられる。前記炭化水素基としては、上述したものが挙げられ、脂肪族炭化水素基、芳香脂肪族炭化水素基(例えば、ベンジル基)および単環式飽和炭化水素基と脂肪族炭化水素基とが結合した基(例えば、シクロへキシルメチル基)が好ましい。なお、「炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基」には、「炭素数10以上の脂肪族炭化水素基」自体(即ち、「脂肪族炭化水素基が単結合を介して結合した脂肪族炭化水素基」)も含まれる。
【0116】
本発明の擬似固相保護基が有する炭素数10以上の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよいが、本発明の沈殿促進剤の効果を充分に発揮させる上では、直鎖状であることが好ましい。炭素数10以上の脂肪族炭化水素基は、より好ましくは直鎖状のC10−40アルキル基および直鎖状のC10−40アルケニル基から選ばれる基であり、より一層好ましくは直鎖状のC10−40アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC10−30アルキル基であり、特に好ましくは直鎖状のC12−28アルキル基であり、最も好ましくは直鎖状のC14−26アルキル基である。
【0117】
前記リンカーは、好ましくは−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−、−NHC(=O)−、−S−、−SO−、−SO−、−Si(R)(R’)O−、−Si(R)(R’)−(R、R’は、それぞれ独立して、水素原子またはC1−22炭化水素基を示す。)から選ばれ、より好ましくは−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−および−NHC(=O)−から選ばれ、より好ましくは−O−である。
【0118】
前記C6−14芳香族炭化水素環は、好ましくはベンゼン環およびナフタレン環から選ばれ、より好ましくはベンゼン環である。
【0119】
前記「炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基がリンカーを介して結合したC6−14芳香族炭化水素環」は、好ましくは「炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基がリンカーを介して結合したC6−14芳香族炭化水素環」であり、より好ましくは「直鎖状のC10−40アルキル基および直鎖状のC10−40アルケニル基から選ばれる基がリンカーを介して結合したC6−14芳香族炭化水素環」であり、より一層好ましくは「直鎖状のC10−40アルキル基がリンカーを介して結合したC6−14芳香族炭化水素環」であり、さらに好ましくは「直鎖状のC10−30アルキル基がリンカーを介して結合したC6−14芳香族炭化水素環」であり、特に好ましくは「直鎖状のC12−28アルキル基がリンカーを介して結合したC6−14芳香族炭化水素環」であり、最も好ましくは「直鎖状のC14−26アルキル基がリンカーを介して結合したC6−14芳香族炭化水素環」である。これらの基では、リンカーが−O−であることが好ましい。また、これらの基では、C6−14芳香族炭化水素環がベンゼン環であることが好ましい。
【0120】
前記擬似固相保護基は、好ましくは「直鎖状のC10−40アルキル基が単結合または−O−を介して結合した炭化水素基が−O−を介して結合したベンゼン環を有する有機基」であり、より好ましくは「直鎖状のC10−40アルキル基が−O−を介して結合したベンゼン環を有する有機基」であり、さらに好ましくは「直鎖状のC10−30アルキル基が−O−を介して結合したベンゼン環を有する有機基」であり、特に好ましくは「直鎖状のC12−28アルキル基が−O−を介して結合したベンゼン環を有する有機基」であり、最も好ましくは「直鎖状のC14−26アルキル基が−O−を介して結合したベンゼン環を有する有機基」である。
【0121】
本発明の擬似固相保護基としては、下記式(III)で表される基(以下「擬似固相保護基(III)」と称する。)が挙げられる。
【0122】
【化23】
【0123】
[式中、
**は、保護される基との結合位置を示し;
Lは、単結合、または式(a1)若しくは(a1’):
【0124】
【化24】
【0125】
(式中、
は、Yとの結合位置を示し;
**は、前記と同義であり;
およびRは、それぞれ独立して、C1−22炭化水素基を示し;
は、2価のC1−22炭化水素基を示し;且つ
は、単結合を示すか、または**C(=O)N(R2’)−R1’−N(R***(式中、**は、Lとの結合位置を示し、***は、C=Oとの結合位置を示し、R1’は、C1−22アルキレン基を示し、R2’およびRは、それぞれ独立して、水素原子もしくはC1−22アルキル基を示すか、またはR2’およびRが一緒になって、環を形成していてもよい。)で表される基を示す。)で表される基を示し、
Yは、単結合、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)を示し、並びに
Zは、式(a2)、式(a2’)または式(a2”){好ましくは式(a2)または式(a2’)}:
【0126】
【化25】
【0127】
[式中、
は、結合位置を示し;
は、水素原子であるか、あるいはRが、下記式(a3)で表される基である場合には、環CのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環(好ましくはフルオレン環またはキサンテン環)を形成していてもよく;
k個のQは、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−を示し;
k個のRは、それぞれ独立して、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基(好ましくは炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基)を示し;
kは、1〜4の整数を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、k個のQRに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
は、水素原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基(好ましくは、水素原子)を示し;並びに
は、水素原子、または式(a3):
【0128】
【化26】
【0129】
(式中、は、結合位置を示し;
jは、0〜4の整数を示し;
j個のQは、それぞれ独立して、前記と同意義を示し;
j個のRは、それぞれ独立して、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基(好ましくは、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基)を示し;
は、水素原子を示すか、或いは環Aまたは環BのRと一緒になって単結合または−O−を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環(好ましくはフルオレン環またはキサンテン環)を形成していてもよく;且つ
環Cは、j個のORに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示すか、或いは
およびRが、一緒になってオキソ基を形成する。]
【0130】
擬似固相保護基(III)により保護される基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシ基が挙げられる。
【0131】
式(a2)、式(a2’)および式(a2”)中のR、並びに式(a3)中のRが有する炭素数10以上の脂肪族炭化水素基は、それぞれ独立して、好ましくは直鎖状のC10−40アルキル基および直鎖状のC10−40アルケニル基から選ばれる基であり、より好ましくは直鎖状のC10−40アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC10−30アルキル基であり、特に好ましくは直鎖状のC12−28アルキル基であり、最も好ましくは直鎖状のC14−26アルキル基である。
【0132】
式(a2)、式(a2’)および式(a2”)中のR、並びに式(a3)中のRが有するリンカーは、それぞれ独立して、好ましくは−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NH−または−NHC(=O)−であり、より好ましくは−O−である。
【0133】
式(a2)、式(a2’)および式(a2”)中のR、並びに式(a3)中のR(即ち、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基)は、それぞれ独立して、好ましくは直鎖状のC10−40アルキル基および直鎖状のC10−40アルケニル基から選ばれる基であり、より好ましくは直鎖状のC10−40アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC10−30アルキル基であり、特に好ましくは直鎖状のC12−28アルキル基であり、最も好ましくは直鎖状のC14−26アルキル基である。
【0134】
式(a2)、式(a2’)、式(a2”)および式(a3)中のQは、好ましくは−O−である。
【0135】
式(III)において、式(a1)で表されるLの好ましい態様は、
が、2価のC1−22炭化水素基、またはCH−O−1,4−フェニレン−O−CHであり;且つ
が、単結合であるか、または**C(=O)N(R2’)−R1’−N(R***(式中、**は、Lとの結合位置を示し、***は、C=Oとの結合位置を示し、R1’は、C1−6アルキレン基を示し、R2’およびRは、それぞれ独立して水素原子、もしくは置換されていてもよいC1−6アルキル基を示すか、またはR2’およびRが一緒になって、置換されていてもよいC1−6アルキレン結合を形成していてもよい。)で表される基である、
基である。
【0136】
式(a1)で表されるLの別の好ましい態様は、
が、2価のC1−22炭化水素基であり;且つ
が単結合である
基である。
【0137】
式(a1)で表されるLの別の好ましい態様は、
が、エチレン基であり;且つ
が、**C(=O)N(R2’)−R1’−N(R***(式中、**は、Lとの結合位置を示し、***は、C=Oとの結合位置を示し、R1’は、C1−22アルキレン基を示し、R2’およびRは、それぞれ独立して、水素原子もしくはC1−22アルキル基を示すか、またはR2’およびRが一緒になって、環を形成していてもよい。)で表される基を示す。)で表される基である
基である。
【0138】
式(a1)で表されるLの別の好ましい態様は、
が、エチレン基であり;且つ
が、**C(=O)N(R2’)−R1’−N(R***(式中、**は、Lとの結合位置を示し、***は、C=Oとの結合位置を示し、N(R2’)−R1’−N(R)部分が、ピペラジンジイル基(例、1,4−ピペラジンジイル基)を形成する。)で表される基である
基である。
【0139】
式(a1)で表されるLの別の好ましい態様は、
が、エチレン基であり;且つ
が、**C(=O)N(R2’)−R1’−N(R***(式中、**は、Lとの結合位置を示し、***は、C=Oとの結合位置を示し、R1’は、ペンチレン基、またはヘキシレン基を示し、R2’およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示す。)で表される基である
基である。
【0140】
式(a1)で表されるLの特に好ましい態様としては、入手が容易で安価なスクシニル基である。
【0141】
次に、式(III)において式(a1’)で表されるLについて説明する。
式(a1’)中のLは、好ましくは2価のC6−10芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニレン基である。
式(a1’)中のLは、好ましくは単結合である。
式(a1’)中のLおよびLの好ましい組合せとしては、Lが2価のC6−10芳香族炭化水素基であり、Lが単結合である、組合せである。式(a1’)中のLおよびLのより好ましい組合せとしては、Lがフェニレン基であり、Lが単結合である、組合せである。
式(a1’)中のRおよびRは、それぞれ独立して、好ましくはC1−22アルキル基であり、より好ましくはC1−10アルキル基である。
【0142】
式(a1’)で表されるLの好ましい態様は、
およびRが、それぞれ独立して、C1−22アルキル基であり;
が、2価のC6−10芳香族炭化水素基であり;且つ
が、単結合である
基である。
【0143】
式(a1’)で表されるLの別の好ましい態様は、
およびRが、それぞれ独立して、C1−10アルキル基であり;
が、フェニレン基であり;且つ
が、単結合である
基である。
【0144】
式(III)におけるYは、単結合、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)を示す。Yが単結合である場合、Lが単結合であり、Zが、式(a2)で表される基であって、Rが、水素原子であり、且つRおよびRが、一緒になってオキソ基を形成することが好ましい。
【0145】
式(III)におけるYは、好ましくは酸素原子、またはNR(Rは、水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)であり、Rは、好ましくは、水素原子、C1−6アルキル基またはC7−16アラルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル、エチルまたはベンジルであり、特に好ましくは水素原子である。Yは、特に好ましくは酸素原子である。
【0146】
式(III)におけるZは、好ましくは式(a2)または式(a2’)で表される基であり、より好ましくは式(a2)で表される基である。式(a2)において、Rが水素原子であることが好ましい。また、式(a2)において、RおよびRが水素原子であることが好ましい。
【0147】
式(a2)で表されるZの好ましい態様は、
およびRが、共に水素原子であり;
が、水素原子であり;
kが、1〜3の整数である;
k個のQが、−O−であり;且つ
k個のRが、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基である、
基である。
Zがこの態様である場合、Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、RおよびRが、それぞれ独立して、C1−10アルキル基であり、Lが、2価のフェニレン基であり、Lが、単結合である。)であり、且つYが酸素原子であるか、或いはL−Yが、単結合であることが一層好ましく、Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、RおよびRが、それぞれ独立して、C1−10アルキル基であり、Lが、2価のフェニレン基であり、Lが、単結合である。)であり、且つYが酸素原子であることがさらに一層好ましい。
【0148】
式(a2)で表されるZの別の好ましい態様は、
およびRが、共に水素原子であり;
が、水素原子であり;
kが、1〜3の整数であり;
k個のQが、−O−であり;
k個のRが、それぞれ独立して、1〜3個の直鎖状のC10−40アルキル基が−O−を介して結合したベンジル基、または1〜3個の直鎖状のC10−40アルキル基が−O−を介して結合したシクロヘキシルメチル基であり;且つ
環Aが、k個のQRに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい、
基である。
Zがこの態様である場合、Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、RおよびRが、それぞれ独立して、C1−10アルキル基であり、Lが、2価のフェニレン基であり、Lが、単結合である。)であり、且つYが酸素原子であるか、或いはL−Yが、単結合であることが一層好ましく、Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、RおよびRが、それぞれ独立して、C1−10アルキル基であり、Lが、2価のフェニレン基であり、Lが、単結合である。)であり、且つYが酸素原子であることがさらに一層好ましい。
【0149】
式(a2)で表されるZの別の好ましい態様は、
およびRが、水素原子であり;
が、式(a3)(式中、は結合位置であり、jが、0〜3の整数であり、j個のQが、−O−であり、j個のRが、それぞれ独立して、C10−40アルキル基であり、Rが、水素原子である。)で表される基である、
基である。
Zがこの態様である場合、Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、RおよびRが、それぞれ独立して、C1−10アルキル基であり、Lが、2価のフェニレン基であり、Lが、単結合である。)であり、且つYが酸素原子であるか、或いはL−Yが、単結合であることが一層好ましく、Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、RおよびRが、それぞれ独立して、C1−10アルキル基であり、Lが、2価のフェニレン基であり、Lが、単結合である。)であり、且つYが酸素原子であることがさらに一層好ましい。
【0150】
式(a2)で表されるZのさらに別の好ましい態様は、
が、水素原子であり;
が、式(a3)(式中、は結合位置であり、jが、0〜3の整数であり、j個のQが、−O−であり、j個のRが、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基であり、Rは、環AのRと一緒になって単結合または−O−を形成し、それにより環Aと環Cは一緒になってフルオレン環またはキサンテン環を形成する。)で表される基である、
基である。
Zがこの態様である場合、Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、RおよびRが、それぞれ独立して、C1−10アルキル基であり、Lが、2価のフェニレン基であり、Lが、単結合である。)であり、且つYが酸素原子であるか、或いはL−Yが、単結合であることが一層好ましく、Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、RおよびRが、それぞれ独立して、C1−10アルキル基であり、Lが、2価のフェニレン基であり、Lが、単結合である。)であり、且つYが酸素原子であることがさらに一層好ましい。
【0151】
式(a2)で表されるZの別の好ましい態様は、
およびRが、一緒になってオキソ基を形成し;
が、水素原子であり;
kが、1〜3の整数であり;
k個のQが、−O−であり;且つ
k個のRが、それぞれ独立して、直鎖状のC10−40アルキル基である、
基である。
Zがこの態様である場合、L−Yが、単結合またはスクシニル−1,4−ピペラジンジイル基であることが一層好ましく、L−Yが、単結合であることがさらに一層好ましい。
【0152】
式(a2)で表されるZの別の好ましい態様は、
およびRが、一緒になってオキソ基を形成し;
が、水素原子であり;
kが、1〜3の整数であり;
k個のQが、−O−であり;
k個のRが、それぞれ独立して、1〜3個の直鎖状のC10−40アルキル基が−O−を介して結合したベンジル基、または1〜3個の直鎖状のC10−40アルキル基が−O−を介して結合したシクロヘキシルメチル基であり;且つ
環Aが、k個のQRに加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい、
基である。
Zがこの態様である場合、L−Yが、単結合またはスクシニル−1,4−ピペラジンジイル基であることが一層好ましく、L−Yが、単結合であることがさらに一層好ましい。
【0153】
擬似固相保護基(III)としては、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な基が好ましい。
【0154】
水酸基を保護するための、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有する擬似固相保護基(III)の具体例1としては、
Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、RおよびRが、それぞれ独立して、C1−10アルキル基であり、Lが、2価のフェニレン基であり、Lが、単結合である。)であり、且つY−Zが、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、2,4−ジ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアミノ基、2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、ビス(4−ドコシルオキシフェニル)メチルアミノ基、4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアミノ基、2,4−ビス(ドデシルオキシ)ベンジルアミノ基、フェニル(2,3,4−トリ(オクタデシルオキシ)フェニル)メチルアミノ基、ビス[4−(12−ドコシルオキシドデシルオキシ)フェニル]メチルアミノ基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4−ジ(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、ビス(4−ドコシルオキシフェニル)メチルアミノ基、4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4−ビス(ドデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、フェニル(2,3,4−トリ(オクタデシルオキシ)フェニル)メチルアミノ基、ビス[4−(12−ドコシルオキシドデシルオキシ)フェニル]メチルアミノ基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、または3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基である基、
L−Yが、スクシニル−1,4−ピペラジンジイル基であり、且つZが、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基、2,4−ジ(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基、2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンゾイル基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンゾイル基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基、または3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基である基、および
L−Yが、単結合であり、且つZが、(3,5−ジドコシルオキシフェニル)ジフェニルメチル基またはビス(4−クロロフェニル)(3,5−ジドコシルオキシフェニル)メチル基である基
が挙げられる。
【0155】
アミノ基またはイミノ基を保護するための、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有する擬似固相保護基(III)の具体例2としては、L−Yが、単結合であり、且つZが、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基、2,4−ジ(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基、2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンゾイル基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンゾイル基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基、3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基、(3,5−ジドコシルオキシフェニル)ジフェニルメチル基、またはビス(4−クロロフェニル)(3,5−ジドコシルオキシフェニル)メチル基である基が挙げられる。
【0156】
カルボキシ基を保護するための、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有する擬似固相保護基(III)の具体例3としては、L−Yが、単結合であり、且つZが、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル基、2,4−ジ(オクタデシルオキシ)ベンジル基、2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンジル基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンジル基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジル基、3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジル基、(3,5−ジドコシルオキシフェニル)ジフェニルメチル基、またはビス(4−クロロフェニル)(3,5−ジドコシルオキシフェニル)メチル基である基が挙げられる。
【0157】
水酸基を保護するための、炭素数10以上の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基を有する擬似固相保護基(III)の具体例4としては、Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、RおよびRが、それぞれ独立して、C1−10アルキル基であり、Lが、2価のフェニレン基であり、Lが、単結合である。)であり、且つY−Zが、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ基、4−(3,7,11−トリメチルドデシルオキシ)ベンジルオキシ基、4−[2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカノイルアミノ]ベンジルオキシ基、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルオキシ基、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メトキシベンジルオキシ基、2,4−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ基、2−[3’,4’,5’−トリ(2”,3”−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]−4−メトキシベンジルオキシ基、3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ基、3,4,5−トリス[3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、2,4−ジ(2−デシルテトラデシルオキシ)ベンジルオキシ基、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノ基、4−(3,7,11−トリメチルドデシルオキシ)ベンジルアミノ基、4−[2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカノイルアミノ]ベンジルアミノ基、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアミノ基、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メトキシベンジルアミノ基、2,4−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノ基、3,5−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノ基、2−[3’,4’,5’−トリ(2”,3”−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]−4−メトキシベンジルアミノ基、3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノ基、3,4,5−トリス[3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、{[(2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)]フェニルメチル}アミノ基、{[2,3,4−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル]フェニルメチル}アミノ基、または{ビス[4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル]メチル}アミノ基である基、が挙げられる。
ここで、2,3−ジヒドロフィチルとは、3,7,11,15−テトラメチルヘキサデシルを意味する。2’,3’−ジヒドロフィチルおよび2”,3”−ジヒドロフィチルも同様である。
【0158】
アミノ基またはイミノ基を保護するための、炭素数10以上の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基を有する擬似固相保護基(III)の具体例5としては、L−Yが、単結合であり、且つZが、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンゾイル基、4−(3,7,11−トリメチルドデシルオキシ)ベンゾイル基、4−[2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカノイルアミノ]ベンゾイル基、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンゾイル基、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メトキシベンゾイル基、2,4−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンゾイル基、3,5−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンゾイル基、2−[3’,4’,5’−トリ(2”,3”−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]−4−メトキシベンゾイル基、3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンゾイル基、3,4,5−トリス[3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基、または2,4−ジ(2−デシルテトラデシルオキシ)ベンゾイル基である基が挙げられる。
【0159】
カルボキシ基を保護するための、炭素数10以上の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基を有する擬似固相保護基(III)の具体例6としては、L−Yが、単結合であり、且つZが、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジル基、4−(3,7,11−トリメチルドデシルオキシ)ベンジル基、4−[2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカノイルアミノ]ベンジル基、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジル基、4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メトキシベンジル基、2,4−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジル基、3,5−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジル基、2−[3’,4’,5’−トリ(2”,3”−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]−4−メトキシベンジル基、3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジル基、3,4,5−トリス[3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジル基、または2,4−ジ(2−デシルテトラデシルオキシ)ベンジル基である基が挙げられる。
【0160】
擬似固相保護基(III)は、好ましくは上述の擬似固相保護基(III)の具体例1〜具体例6のいずれかであり、より好ましくは具体例1〜具体例3のいずれかである。
【0161】
擬似固相保護基(III)は、より一層好ましくは、
Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、RおよびRが、それぞれ独立して、C1−10アルキル基であり、Lが、2価のフェニレン基であり、Lが、単結合である。)であり、且つY−Zが、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、2,4−ジ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアミノ基、2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、ジ(4−ドコシルオキシフェニル)メチルアミノ基、4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアミノ基、2,4−ジ(ドデシルオキシ)ベンジルアミノ基、フェニル(2,3,4−トリ(オクタデシルオキシ)フェニル)メチルアミノ基、ビス[4−(12−ドコシルオキシドデシルオキシ)フェニル]メチルアミノ基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、または3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基である基、
L−Yが、スクシニル−1,4−ピペラジンジイル基であり、且つZが、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基、2,4−ジ(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基、2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンゾイル基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンゾイル基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基、または3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基である基、或いは
L−Yが、単結合であり、且つZが、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基、2,4−ジ(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基、2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンゾイル基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンゾイル基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基、または3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基である基、
である。
【0162】
擬似固相保護基(III)は、さらに好ましくは
Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、RおよびRが、それぞれ独立して、C1−10アルキル基であり、Lが、2価のフェニレン基であり、Lが、単結合である。)であり、且つY−Zが、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアミノ基、2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、ジ(4−ドコシルオキシフェニル)メチルアミノ基、4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアミノ基、2,4−ジ(ドデシルオキシ)ベンジルアミノ基、フェニル(2,3,4−トリ(オクタデシルオキシ)フェニル)メチルアミノ基、ビス[4−(12−ドコシルオキシドデシルオキシ)フェニル]メチルアミノ基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、または3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基である基、或いは
L−Yが、単結合であり、且つZが、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基である基
である。
【0163】
擬似固相保護基(III)は、特に好ましくは
Lが、スクシニル基であり、且つY−Zが、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアミノ基、2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、ジ(4−ドコシルオキシフェニル)メチルアミノ基、4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアミノ基、2,4−ジ(ドデシルオキシ)ベンジルアミノ基、フェニル(2,3,4−トリ(オクタデシルオキシ)フェニル)メチルアミノ基、ビス[4−(12−ドコシルオキシドデシルオキシ)フェニル]メチルアミノ基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、または3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基である基、或いは
L−Yが、単結合であり、且つZが、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基である基、
である。
【0164】
擬似固相保護基(III)は、最も好ましくは、Lが、スクシニル基であり、且つY−Zが、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアミノ基、2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、3,5−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、ジ(4−ドコシルオキシフェニル)メチルアミノ基、4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアミノ基、2,4−ジ(ドデシルオキシ)ベンジルアミノ基、フェニル(2,3,4−トリ(オクタデシルオキシ)フェニル)メチルアミノ基、ビス[4−(12−ドコシルオキシドデシルオキシ)フェニル]メチルアミノ基、3,5−ビス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、または3,4,5−トリス[3’,4’,5’−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基である基である。
【0165】
擬似固相保護基を形成するために用いられる化合物は、自体公知の方法(例えば、上述の特許文献1または2に記載されている方法、エステル化、シリル化等)またはこれに準ずる方法によって製造することができる。例えば、擬似固相保護基を形成するために用いられる式:Z−Y−Hで表されるアルコール化合物またはアミン化合物は、以下の工程またはそれに準じた工程によって製造することができる。
【0166】
【化27】
【0167】
[式中のQ’は、−O−、−S−、−C(=O)O−または−NH−を示し、Rは、水素原子、OR基(ここで、RはC1−6アルキル基等のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基等を示す。)または式(a3):
【0168】
【化28】
【0169】
(式中の各記号は、前記と同意義である。)
で表される基を示し、Yはハロゲン原子等の脱離基を示し、他の記号は、前記と同義である。]
【0170】
工程(a)
本工程は、式(X)で表される化合物のQ’H(ここで、Q’は、−O−、−S−、−C(=O)O−または−NH−を示す。)にRを導入することにより、式(X−a)で表される化合物を製造する工程である。この反応は、Q’が、−O−、−S−または−NH−の場合、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基の存在下または非存在下で、Rに対応するハロゲン化物(塩化物、臭化物またはヨウ化物)、Rに対応するカルボン酸若しくは酸ハロゲン化物またはRに対応するアルキルスルホニルオキシ化物(例えば、メタンスルホニルオキシ化物等)若しくはアリールスルホニルオキシ化物(例えば、p−トルエンスルホニルオキシ化物等)を用いて行われる。また、Q’が−O−の場合、化合物(X)とRに対応する水酸化物をトリフェニルホスフィンおよびアゾジカルボン酸ジイソプロピル存在下で反応させる光延反応条件下で、この反応を行うこともできる。さらにQ’が−C(=O)O−の場合、例えば、化合物(X)とRに対応するアミン若しくは水酸化物を縮合剤の存在下で反応させることにより化合物(X−a)を合成することができる。
【0171】
塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、カリウム tert−ブトキシド等のアルカリ金属塩;水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物;ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等のアミン類等が挙げられ、中でも炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム等が好ましい。
【0172】
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類、N−メチルピロリドン等あるいはそれらの混合物が挙げられ、中でも、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、N−メチルピロリドン等が好ましい。
【0173】
反応温度は、50〜150℃が好ましく、60〜130℃がより好ましい。反応時間は、2〜30時間が好ましく、3〜10時間がより好ましい。
【0174】
工程(b)
本工程は、化合物(X−a)を還元することにより、式(XI−a)で表される化合物を製造する工程である。この還元反応は、還元剤を用いる方法により行うことができる。
【0175】
この還元反応に用いる還元剤としては、例えば、金属水素化物(水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ジブチルアルミニウム、水素化アルミニウム、水素化アルミニウムリチウム等)等が挙げられ、中でも、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ジブチルアルミニウム等が好ましい。
【0176】
この反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;あるいはそれらの混合物が挙げられ、中でもテトラヒドロフラン、トルエン等が好ましい。反応温度は、0〜100℃が好ましく、30〜70℃がより好ましい。反応時間は、1〜24時間が好ましく、2〜5時間がより好ましい。
【0177】
工程(c)
本工程は、Rが水素原子またはOR基ではない化合物(X−a)を、上記工程(b)と同様の方法により還元する工程である。
【0178】
工程(d−1)
本工程は、Rが水素原子である化合物(X−a)を、オキシム化することにより、式(XI’−a)で表される化合物を製造する工程である。
【0179】
このオキシム化反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基存在下で化合物(X−a)とヒドロキシルアミンの酸付加塩とを反応させることにより行われる。
【0180】
ヒドロキシルアミンの酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の鉱酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられるが、塩酸塩が特に好ましい。
【0181】
かかる塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属塩;ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンなどの有機アミン類等が挙げられ、中でも、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が好ましい。
【0182】
溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;および/または、それらの混合物が挙げられ、中でも、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン等が好ましい。反応温度は、10〜100℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。反応時間は、0.5〜30時間が好ましく、2〜20時間がより好ましい。
【0183】
工程(d−2)
本工程は、化合物(XI’−a)を、パラジウム−炭素、ラネーニッケル等の金属触媒存在下の接触水素添加反応、または前記工程(b)と同様の金属水素化物等の還元剤により還元することにより、式(XI−b)で表される化合物を製造する工程である。
【0184】
化合物(XI−b)は、工程(d−3)、工程(d−4)および工程(d−5)を経て製造することもできる。
【0185】
工程(d−3)
本工程は、化合物(XI−a)を、例えば塩化アセチル、塩化チオニル等のクロル化剤、または、例えば臭化アセチル、三臭化リン、ジフェニルホスフィン/臭素等のブロム化剤を用いてハロゲン化することにより、式(XI’−b)で表される化合物を製造する工程である。
【0186】
溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;それらの混合物が挙げられ、中でも、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン等が好ましい。反応温度は、10〜150℃が好ましく、30〜80℃がより好ましい。反応時間は、0.5〜30時間が好ましく、2〜20時間がより好ましい。
【0187】
工程(d−4)
本工程は、化合物(XI’−b)をアジ化ナトリウム等のアジド化剤を用いてアジド化することにより、式(XI’−c)で表される化合物を製造する工程である。この反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、化合物(XI’−b)をアジド化剤と反応させることにより行われる。
【0188】
溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;それらの混合物が挙げられ、中でも、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド等が好ましい。反応温度は、10〜150℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。反応時間は、0.5〜30時間が好ましく、2〜20時間がより好ましい。
【0189】
工程(d−5)
本工程は、化合物(XI’−c)をアミノ化することにより、化合物(XI−b)を製造する工程である。この反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、水存在下、化合物(XI’−c)をトリフェニルホスフィンと反応させるか、接触水素化還元により行われる。
【0190】
トリフェニルホスフィンの使用量としては、化合物(XI’−c)1モルに対して、好ましくは1〜10モル、特に好ましくは1〜5モルである。水の使用量は、化合物(XI’−c)1モルに対して、好ましくは1〜10モル、特に好ましくは1〜5モルである。
【0191】
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;および、それらの混合物が挙げられ、中でも、トルエン、テトラヒドロフラン等が好ましい。反応温度は、10〜150℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。反応時間は、0.5〜30時間が好ましく、2〜20時間がより好ましい。
【0192】
工程(d−6)
本工程は、化合物(XI’−b)をRNH(Rは前記と同義である)と反応させることにより、Yが−NHR基である式(XI−c)で表される化合物を製造する工程である。本工程は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、必要により、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の第3級アミン等の塩基の存在下、化合物(XI’−b)をR−NHで表されるアミンと反応させることにより行われる。
【0193】
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;および、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類または、それらの混合物が挙げられ、中でも、トルエン、テトラヒドロフラン、クロロホルム等が好ましい。反応温度は、10〜100℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。反応時間は、0.5〜30時間が好ましく、2〜20時間がより好ましい。
【0194】
工程(d−7)
本工程は、化合物(XI−d)を−CONH基または−OCONH基を有する化合物と反応させた後、塩基で処理することにより、化合物(XI−e)を製造する工程である。化合物(XI−d)と−CONH基または−OCONH基を有する化合物との反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、酸触媒下で行われる。
【0195】
酸触媒としては、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等が挙げられ、中でもメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸が好ましい。酸触媒の使用量は、化合物(XI−d)1モルに対して、好ましくは0.05〜0.5モル、特に好ましくは0.1〜0.3モルである。
【0196】
−CONH基または−OCONH基を有する化合物としては、例えば、Fmoc−NH、HCONH、CFCONH、AcNH、EtOCONH、Cbz−NH等が挙げられ、中でもFmoc−NH、EtOCONH等が好ましい。ここで、「Fmoc−」とは、9−フルオレニルメトキシカルボニル基(以下、Fmoc基ともいう。)を意味し、「Cbz−」は、ベンジルオキシカルボニル基(以下、Cbz基ともいう。)を意味する。
【0197】
なお、工程(a)の原料として使用する試薬[即ち、Rに対応する水酸化物、ハロゲン化物、アルキルスルホニルオキシ化物(例えば、メタンスルホニルオキシ化物等)またはアリールスルホニルオキシ化物(例えば、p−トルエンスルホニルオキシ化物等)、以下「工程(a)の試薬」と略称する。]は、市販品を用いることができる。また、工程(a)の試薬は、例えば、
(1)Rに対応する水酸化物のハロゲン化、アルキルスルホニルオキシ化またはアリールスルホニルオキシ化により、或いは
(2)Rに対応する不飽和水酸化物の還元反応(例えば、白金−炭素(Pt/C)、パラジウム−炭素(Pd/C)、ロジウム−炭素(Rh/C)、ラネーニッケル等の金属触媒の存在下での接触水素添加反応等)、およびそれに続くハロゲン化、アルキルスルホニルオキシ化またはアリールスルホニルオキシ化により、
製造することができる。
【0198】
工程(a)の試薬の製造において、ヒドロキシル基から脱離基への変換に用いる試薬としては、例えば、塩化チオニル、N−クロロスクシンイミド(NCS)等のクロロ化剤、臭化水素酸、臭化アセチル、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、三臭化リン、ジフェニルホスフィン/臭素等のブロモ化剤等のハロゲン化剤の他、塩化メタンスルホニル、塩化トリフルオロメタンスルホニル等のアルキルスルホニル化剤、塩化ベンゼンスルホニル、塩化p−トルエンスルホニル等のアリールスルホニル化剤等が挙げられ、中でも、ハロゲン化剤である塩化チオニル、臭化水素酸等が好ましい。
【0199】
この反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われ、溶媒としては、例えば、水;クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類が挙げられ、中でも水、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類が好ましい。反応温度は、10〜120℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。反応時間は、1〜72時間が好ましく、3〜24時間がより好ましい。
【0200】
Q’が単結合である式:Z−Y−Hで表される化合物は、例えば、以下の方法によっても製造することができる。即ち、ベンゼン環上へのRの導入は、
(1)Rに対応するハロゲン化物(塩化物、臭化物、またはヨウ化物)、Rに対応するカルボン酸若しくは酸ハロゲン化物を用いるフリーデルクラフツ反応、
(2)上記化合物(X)に対応する化合物(但し、Q’Hが−CHO基に置き換わった化合物)をWittig反応により増炭させた後に、接触水素添加等する方法、または
(3)金属触媒を使用したクロスカップリング等の慣用の有機合成反応
によって行うことができる。
【0201】
なお、上記各スキーム中の反応試薬等は便宜上示されたものであって、上記した定義の範囲内で適宜変更することができる。
【0202】
[本発明の擬似固相保護基で保護された有機化合物]
炭素数10以上の脂肪族炭化水素基を1個以上有する有機基(本発明の擬似固相保護基)で保護された有機化合物は、溶媒から沈殿させることができれば特に限定はなく、水酸基(−OH)、スルファニル基(−SH)、カルボキシ基(−COOH)、アミノ基(−NHR)、イミノ基(−NH−)、カルボキサミド基(−CONHR”)(前記式中、R”は、水素原子または炭化水素基を示す。)等の官能基を有し、該官能基が本発明の擬似固相保護基で保護された有機化合物(以下「保護された有機化合物」と称することがある。)を使用することができる。保護された有機化合物は、さらに、擬似固相保護基とは異なる保護基(例えば、核酸合成に用いられる保護基)で保護されていてもよい。保護された有機化合物としては、例えば、国際公開第2012/157723号、国際公開第2012/157723号、国際公開第2014/189142号、特開2010−116418号公報、国際公開第2010/104169号、国際公開第2010/113939号、国際公開第2011/078295号、国際公開第2012/029794号、特開2009−185063号公報、特開2010−275254号公報等に開示されているヌクレオシド、ヌクレオチド、アミノ酸、ペプチド等を挙げることができる。
【0203】
好ましい保護された有機化合物は、さらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、ヌクレオシド、ヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオチド、またはさらにペプチド合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、アミノ酸若しくはペプチドである。前記ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位および3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも1個の基が本発明の擬似固相保護基で保護されていることが好ましい。前記ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが、モルフォリノヌクレオシド、モルフォリノヌクレオチドまたはモルフォリノオリゴヌクレオチドである場合、前記水酸基ではなく、モルフォリン残基の5’位水酸基が擬似固相保護基で保護されていてもよい。
【0204】
より好ましい保護された有機化合物は、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位および3’位水酸基、デオキシリボース残基の3’位水酸基、並びにモルフォリン残基の5’位水酸基から選ばれる少なくとも1個の基が、本発明の擬似固相保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドである。
【0205】
さらに好ましい保護された有機化合物は、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位および3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも1個の基が、本発明の擬似固相保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドである。
【0206】
特に好ましい保護された有機化合物は、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも1個の基が、本発明の擬似固相保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドである。
【0207】
最も好ましい保護された有機化合物は、リボース残基の3’位水酸基またはデオキシリボース残基の3’位水酸基が、本発明の擬似固相保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドである。
【0208】
[沈殿化]
本発明は、本発明の沈殿促進剤を用いて、溶媒から保護された有機化合物を沈殿させる方法(以下「本発明の沈殿化方法」と称することがある。)、そのような方法によって得られる沈殿促進剤および保護される有機化合物を含む沈殿混合物も提供する。前記溶媒は、好ましくは極性溶媒を含む溶媒であり、より好ましくは極性溶媒と非極性溶媒との混合溶媒である。
【0209】
本発明の擬似固相保護基で保護された有機化合物は、疎水性基である擬似固相保護基によって、非極性溶媒に対する溶解性が向上すると共に、極性溶媒に対する溶解性が低下する。このような擬似固相保護基で保護された有機化合物は、例えば、該有機化合物が非極性溶媒に溶解した溶液に、極性溶媒を添加することで沈殿させて、固液分離することができる。本発明の沈殿促進剤は、擬似固相保護基で保護された有機化合物の溶媒からの沈殿を促進させることができ、その回収率を向上させることができる。また目的物(即ち、擬似固相保護基で保護された有機化合物)を得た後、擬似固相保護基を除去することにより、脱保護された有機化合物を得ることもできる。
【0210】
極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;アセトン、2−ブタノン等のケトン系溶媒;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の極性エーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピペリドン等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;水等が挙げられる。極性溶媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。極性溶媒としては、特にアセトニトリルが好ましい。オリゴヌクレオチドの合成においては、沈殿効率の観点からは、極性溶媒としてメタノールを使用すると回収率が高くなる傾向にあるが、メタノールは、ホスホロアミダイト法におけるカップリング反応を阻害するため、析出させたオリゴヌクレオチドからメタノールを完全に除去する必要があるが、乾燥に多くの時間を要したり、系中にメタノールが残存しているか否かを評価することが難しいという問題がある。一方、アセトニトリルは、沈殿効率が低下する傾向にあるが、ホスホロアミダイト法におけるカップリング反応を阻害することはない。そのため、アセトニトリルを用いて析出させたオリゴヌクレオチドでは、厳密な乾燥や残存溶媒の評価が不要である。本発明の沈殿促進剤を使用すれば、アセトニトリルを使用した場合でも、高収率で目的物を沈殿、回収することができる。
【0211】
非極性溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロヘキサン等の脂肪族系溶媒;ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等の非極性エーテル系溶媒が挙げられる。非極性溶媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。非極性溶媒としては、ハロゲン系溶媒、芳香族系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族系溶媒、およびこれらの組合せが好ましく;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、ノナン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよびこれらの組合せがより好ましく;クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、およびこれらの組合せがさらに好ましい。
【0212】
保護された有機化合物を充分に沈殿させるために、本発明の沈殿促進剤の使用量は、保護された有機化合物に対して、好ましくは0.1モル当量以上、より好ましくは0.5モル当量以上、さらに好ましくは1モル当量以上である。この上限に特に限定はないが、コストの観点から、本発明の沈殿促進剤の使用量は、保護された有機化合物に対して、好ましくは10モル当量以下、より好ましくは5モル当量以下、さらに好ましくは2.5モル当量以下である。
【0213】
極性溶媒(好ましくはアセトニトリル)を含む溶媒における極性溶媒量は、保護された有機化合物の回収率を高めるために、極性溶媒以外の溶媒1mLに対して、好ましくは0.5mL以上、より好ましくは1mL以上、さらに好ましくは2mL以上であり、好ましくは20mL以下、より好ましくは10mL以下、さらに好ましくは8mL以下である。この極性溶媒量は、保護された有機化合物を沈殿させる際の好適な範囲である。例えば、保護された有機化合物および極性溶媒以外の溶媒を含む溶液を濃縮した後に、上述の範囲となるように極性溶媒を添加して、有機化合物を沈殿させてもよい。また、極性溶媒量が上述の下限未満となるように、保護された有機化合物、極性溶媒以外の溶媒および極性溶媒を含む溶液を調製し、これを濃縮して、極性溶媒量を上述の下限以上に調整することによって、有機化合物を沈殿させてもよい。
【0214】
保護された有機化合物の沈殿化における温度は、好ましくは−10℃以上、より好ましくは0℃以上、さらに好ましくは5℃以上であり、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは25℃以下である。
【0215】
上述の好ましい温度に調整した後の保護された有機化合物の懸濁液の放置時間(即ち、沈殿化のための時間)は、好ましくは5分間以上、より好ましくは15間分以上、さらに好ましくは30分間以上であり、好ましくは72時間以下、より好ましくは16時間以下、さらに好ましくは3時間以下である。
【0216】
[オリゴヌクレオチドの製造方法]
本発明の沈殿化方法は、特にオリゴヌクレオチドの製造方法に有用である。そのため、本発明は、本発明の沈殿化方法を含むオリゴヌクレオチドの製造方法も提供する。そのような製造方法としては、例えば、少なくとも1個の基が本発明の擬似固相保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいオリゴヌクレオチド、および本発明の沈殿促進剤を含む反応液に、極性溶媒(好ましくはアセトニトリル)を添加し、反応液からオリゴヌクレオチドと沈殿促進剤を含む沈殿混合物を分離する工程を含む方法が挙げられる。本発明のオリゴヌクレオチドの製造方法は、ホスホロアミダイト法により行われることが好ましい。
【0217】
本発明のオリゴヌクレオチドの製造方法の好ましい態様は、下記工程(1)〜(3)からなる製造サイクルを1回行うか、或いは複数回繰り返すホスホロアミダイト法によるオリゴヌクレオチドの製造方法であって、1サイクル目に下記工程(4)を含み、各サイクルに下記工程(5)を含み、且つ最終サイクルを除く各サイクルに下記工程(6)を含む方法である:
(1)非極性溶媒中、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位および3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも1個の基が本発明の擬似固相保護基で保護され、5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド(以下「一時保護基含有ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド」と称することがある。)を含む反応液に、酸を加えて5’位水酸基の一時保護基を脱保護し、塩基により中和し、5’位水酸基遊離体を含む反応液を得る工程(脱保護工程);
(2)非極性溶媒中、5’位水酸基遊離体を含む反応液に、3’位水酸基がホスホロアミダイト化され、且つ5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド(以下「ホスホロアミダイト化されたヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド」と称することがある。)を添加して、ホスファイトトリエステル体を含む反応液を得る工程(縮合工程);
(3)非極性溶媒中、ホスファイトトリエステル体を含む反応液に、酸化剤または硫化剤を添加して、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位および3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも1個の基が本発明の擬似固相保護基で保護され、且つ5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、且つその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいオリゴヌクレオチド(以下「生成オリゴヌクレオチド」と称することがある。)を含む反応液を得る工程(酸化または硫化工程);
(4)工程(1)の前、工程(1)と(2)の間、工程(2)と(3)の間および工程(3)の後のいずれかにおいて、反応液に本発明の沈殿促進剤を加える工程(沈殿促進剤の添加工程);
(5)工程(4)の後であって、工程(1)と(2)の間、工程(2)と(3)の間および工程(3)の後のいずれかにおいて、沈殿促進剤を含む反応液に極性溶媒(好ましくはアセトニトリル)を添加し、反応液から、5’位水酸基遊離体、ホスファイトトリエステル体またはオリゴヌクレオチドと、沈殿促進剤とを含む沈殿混合物を分離する工程(沈殿化および固液分離工程);
(6)工程(5)で得られた沈殿混合物に非極性溶媒を加えて反応液とする工程(溶解工程)。
以下、各工程について順に説明する。
【0218】
工程(1)(脱保護工程)
本工程は、一時保護基含有ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドから、酸の添加により一時保護基を脱保護し、5’位水酸基遊離体を得る工程である。ここで一時保護基とは、本発明の擬似固相保護基が除去されない酸性条件下で、除去される保護基を意味する。
【0219】
本工程は、非極性溶媒中で行われる。非極性溶媒としては、前述の非極性溶媒が挙げられる。本工程以降の工程で用いられる非極性溶媒も同様である。
【0220】
本工程における一時保護基含有ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドの溶液中の濃度は、それらが溶媒に溶解していれば特に限定されないが、好ましくは1〜30重量%である。
【0221】
本工程に使用する酸としては、良好な脱保護が達成できさえすれば特に限定されないが、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、塩酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸等を使用することが好ましい。良好な反応を達成できるという観点で、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸がより好ましく、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸がさらに好ましく、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸がさらに一層好ましく、トリフルオロ酢酸が特に好ましい。これら酸は、上記非極性溶媒で希釈しても構わない。また、前記酸を使用する際には、特定の塩基を組み合わせて、酸性度を適宜調整して使用しても構わない。本工程における酸の使用量は、一時保護基含有ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド1モルに対し、例えば1〜100モル、好ましくは1〜40モルである。
【0222】
本工程の反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、−10℃〜50℃が好ましく、0℃〜40℃がより好ましい。反応時間は、使用する一時保護基含有ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド、酸の種類および非極性溶媒の種類、反応温度等により異なるが、例えば5分〜5時間である。
【0223】
本工程、それに続く縮合工程、および酸化または硫化工程を液中で連続して行うためには、本工程において、一時保護基含有ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドの5’位水酸基の一時保護基の除去反応中、または除去反応後に、カチオン捕捉剤を使用することが好ましい。
【0224】
カチオン捕捉剤としては、除去された一時保護基による再保護(原料戻り)や脱保護された官能基への副反応が進行しなければ、特に限定されないが、ピロール、2−メチルピロール、3−メチルピロール、2,3−ジメチルピロール、2,4−ジメチルピロール等のピロール誘導体;インドール、4−メチルインドール、5−メチルインドール、6−メチルインドール、7−メチルインドール、5,6−ジメチルインドール、6,7−ジメチルインドール等のインドール誘導体を使用することができる。良好なカチオン捕捉効果が得られるという観点で、ピロール、3−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、インドール、4−メチルインドール、5−メチルインドール、6−メチルインドール、7−メチルインドール、5,6−ジメチルインドール、6,7−ジメチルインドールが好ましく、ピロール、3−メチルピロール、インドールがより好ましく、ピロール、インドールがさらに好ましく、ピロールが特に好ましい。本工程におけるカチオン捕捉剤の使用量は、一時保護基含有ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド1モルに対し、例えば1〜50モル、好ましくは5〜20モルである。
【0225】
脱保護剤として使用される酸は次工程の縮合工程中に存在すると、工程(2)で使用するホスホロアミダイト化されたヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドの一時保護基の脱保護を誘発するため、中和して除去することが必要である。
【0226】
本工程では、酸の中和のために有機塩基を使用することが好ましい。有機塩基としては、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ベンズイミダゾール、1,2,4−トリアゾール、N−フェニルイミダゾール、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、1,10−フェナントロリン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−クロロベンズイミダゾール、2−ブロモベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、N−フェニルベンズイミダゾール、5−ニトロベンズイミダゾールが好ましく、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ベンズイミダゾール、1,2,4−トリアゾール、N−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、1,10−フェナントロリンがより好ましく、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ベンズイミダゾール、1,2,4−トリアゾール、N−フェニルイミダゾールがさらに好ましく、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ベンズイミダゾール、1,2,4−トリアゾールが特に好ましく、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ベンズイミダゾールが最も好ましい。
【0227】
本工程における塩基の使用量は、酸1モルに対し、例えば1〜10モルであり、好ましくは1〜3モルである。
【0228】
本工程において、特に好ましい酸と塩基との組合せは、トリフルオロ酢酸とピリジン、トリフルオロ酢酸と2,4,6−トリメチルピリジンまたはトリフルオロメタンスルホン酸とベンズイミダゾールである。
【0229】
本工程で使用する一時保護基含有ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドに含まれる一時保護基としては、酸性条件下で脱保護が可能であり、且つ水酸基の保護基として用いられるものであれば、特に限定はされないが、例えば、トリチル基、9−(9−フェニル)キサンテニル基、9−フェニルチオキサンテニル基、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−1−フェニルメチル基(ジメトキシトリチル基)等のジ(C1−6アルコキシ)トリチル基、1−(4−メトキシフェニル)−1,1−ジフェニルメチル基(モノメトキシトリチル基)等のモノ(C1−18アルコキシ)トリチル基等を挙げることができる。これらの中でも、脱保護のしやすさ、入手の容易さの観点から、一時保護基は、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基であることが好ましく、ジメトキシトリチル基であることがより好ましい。
【0230】
本工程で使用する一時保護基含有ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドは、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の3’位水酸基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基から選ばれる少なくとも1個の基が本発明の擬似固相保護基で保護されていることが好ましく、リボース残基の3’位水酸基またはデオキシリボース残基の3’位水酸基が本発明の擬似固相保護基で保護されていることがより好ましい。
【0231】
本工程で使用する一時保護基含有ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドは、さらに好ましくは下記式(VI)で表される化合物である。
【0232】
【化29】
【0233】
[式中、
m”は、0以上の整数を示し、
m”+1個のBaseは、それぞれ独立して、保護されていてもよい核酸塩基を示し、
Q’は、酸性条件下で除去可能な一時保護基を示し、
m”+1個のXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、或いはリボース環またはデオキシリボース環の2位炭素原子および4位炭素原子と結合する2価の有機基(好ましくは水素原子、ハロゲン原子または保護されていてもよい水酸基)を示し、
m”個のR10は、それぞれ独立して、酸素原子または硫黄原子を示し、
m”個のWGは、それぞれ独立して、電子吸引性基を示し、
L−Y−Zは、前記と同義である。]
【0234】
m”が0である場合、化合物(VI)は一時保護基含有ヌクレオシドであり、m”が1以上である場合、化合物(VI)は一時保護基含有オリゴヌクレオチドである。式(VI)において、m”は、49以下が好ましく、29以下がより好ましく、19以下がさらに好ましく、4以下が特に好ましく、2以下が最も好ましい。
【0235】
式(VI)におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0236】
式(VI)における「保護されていてもよい水酸基」の保護基としては、特に限定されず、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている任意の保護基を挙げることができる。具体的には、メチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、tert−ブチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、2−テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、シアノエチル基、シアノエトキシメチル基、フェニルカルバモイル基、1,1−ジオキソチオモルホリン−4−チオカルバモイル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル(Tom)基、1−(4−クロロフェニル)−4−エトキシピペリジン−4−イル(Cpep)基等を挙げることができる。これらの中でも、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、またはtert−ブチルジメチルシリル基であることが好ましく、経済性および入手の容易さの観点から、tert−ブチルジメチルシリル基であることが特に好ましい。
【0237】
式(VI)における「リボース環またはデオキシリボース環の2位炭素原子および4位炭素原子と結合する2価の有機基」としては、同一のリボース環またはデオキシリボース環上の2位炭素原子および4位炭素原子と結合するものである限り、特に限定はない。この2価の有機基としては、例えば、置換されていてもよいC2−7アルキレン基、並びに−O−、−NR13−(R13は水素原子またはC1−6アルキル基を示す)、−S−、−CO−、−COO−、−OCONR14−(R14は水素原子またはC1−6アルキル基を示す)および−CONR15−(R15は水素原子またはC1−6アルキル基を示す)から選ばれる2価のリンカーと、置換されていてもよいC1−7アルキレン基とから構成される2価の有機基等が挙げられる。C1−7アルキレン基およびC2−7アルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチリデン基(CH=)が挙げられる。
【0238】
「2位炭素原子および4位炭素原子と結合する2価の有機基」としては、置換されていてもよいC2−7アルキレン基、−ORi−(Riは4位炭素原子と結合するC1−6アルキレン基を示す)、−O−NR13−Rj−(Rjは4位炭素原子と結合するC1−6アルキレン基を示し、R13は前記と同義を示す)、−O−Rk−O−Rl−(RkはC1−6アルキレン基を示し、Rlは4位炭素原子と結合架橋するC1−6アルキレン基を示す)が好ましく、−ORi−(Riは前記と同義を示す)、−O−NR13−Rj−(RjおよびR13は前記と同義を示す)、−O−Rk−O−Rl−(RkおよびRlは前記と同義を示す)がより好ましい。Ri、Rj、RkおよびRlで示されるC1−6アルキレン基としては、それぞれ独立して、メチレン基またはエチレン基が好ましい。
【0239】
「2位炭素原子および4位炭素原子と結合する2価の有機基」としては、−O−CH−、−O−CH−CH−、−O−NR13−CH−(R13は前記と同義を示す)、−O−CH−O−CH−がより好ましく、−O−CH−、−O−CH−CH−、−O−NH−CH−、−O−N(CH)−CH−、−O−CH−O−CH−(それぞれ、左側が2位炭素原子に結合し、右側が4位炭素原子に結合する。)がさらに好ましい。
【0240】
式(VI)中のm”+1個のXは、それぞれ独立して、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、または保護されていてもよい水酸基であり、より好ましくは水素原子または保護されていてもよい水酸基である。
【0241】
m”個のR10は、好ましくは酸素原子である。
WGの電子吸引性基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基等が挙げられ、好ましくはシアノ基である。
【0242】
化合物(VI)は、自体公知の方法(例えば、上述の特許文献1または2に記載されている方法、エステル化、シリル化等)またはこれに準ずる方法で合成することができる。例えば、m”が0であり、Lがスクシニル基である化合物(VI)は、例えば、次式のように、5’位水酸基が一時保護基により保護されたヌクレオシド(a)を、塩基存在下、コハク酸無水物と反応させることにより、3’位水酸基にコハク酸が導入された化合物(b)を得、次いで得られた化合物(b)を、縮合剤の存在下、Z−Y−Hと脱水縮合させることにより合成することができる。
【0243】
【化30】
【0244】
ヌクレオシド(a)から化合物(b)の変換反応は、反応に不活性な溶媒中で行うのが有利である。このような溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、またはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族系溶媒、またはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、およびこれらの混合溶媒が好ましい。中でもジクロロメタン、またはクロロホルムが特に好ましい。
【0245】
化合物(VI)合成に使用される塩基としては、特に限定されないが、有機塩基が好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。
【0246】
化合物(VI)合成のための脱水縮合反応は、反応に不活性な溶媒中で行うのが有利である。このような溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族系溶媒、またはこれらの組合せが好ましい。中でもジクロロメタン、クロロホルムが特に好ましい。
【0247】
化合物(b)とZ−Y−Hとの縮合反応に使用する縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびその塩酸塩(EDC・HCl)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBop)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5−クロロ−1H−ベンゾトリアゾリウム−3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)等が挙げられる。中でもHBTU、HCTU、N−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびその塩酸塩(EDC・HCl)が好ましい。
【0248】
縮合剤の使用量は、化合物(b)1モルに対して、例えば1〜10モル、好ましくは1〜5モルである。また、Z−Y−Hの使用量は、化合物(b)1モルに対して1〜10モル使用することができ、好ましくは1〜5モルである。反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、−10℃〜50℃が好ましく、0℃〜30℃がより好ましい。反応時間は、例えば30分〜70時間である。
【0249】
Lがスクシニル基以外である化合物(VI)も、上記合成方法におけるコハク酸無水物に代えて、対応する酸無水物、対応するジカルボン酸ハライド、対応するジカルボン酸の活性エステル等を用いて、同様の反応を行うことにより合成することができる。また、m”が1以上である化合物(VI)は、m”が0である化合物(VI)を出発原料として用いて5’末端伸長プロセスを繰り返すことによって合成することができる。
【0250】
工程(2)(縮合工程)
本工程は、工程(1)で得られた5’位水酸基遊離体と、ホスホロアミダイト化されたヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドとを縮合させて、ホスファイトトリエステル体を得る工程である。
【0251】
本工程で使用するホスホロアミダイト化されたヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドは、ホスホロアミダイト化試薬を反応させる公知の方法(M.H.Caruthers et al.,Method in Enzymology 1987,154,287−313;S.L.Beaucage and M.H.Caruthers,Tetrahedron Letters 1981,22,1859−1862.)に従い合成することができる。ホスホロアミダイト化試薬は市販されており、容易に入手することができる。
【0252】
本工程で使用されるホスホロアミダイト化されたヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドは、好ましくは下記式(VII)で表される化合物である。
【0253】
【化31】
【0254】
[式中、
q’は、0以上の整数を示し、
11およびR12は、それぞれ独立して、アルキル基を示すか、または隣接する窒素原子と一緒になって形成する5または6員の飽和環状アミノ基を示し、かかる飽和環状アミノ基は、窒素原子の他に環構成原子として酸素原子または硫黄原子を1個有していてもよく、
他の記号は前記と同義である。]
【0255】
q’が0である場合、化合物(VII)はホスホロアミダイト化されたヌクレオシドであり、q’が1以上である場合、化合物(VII)はホスホロアミダイト化されたオリゴヌクレオチドである。本工程で使用する化合物(VII)において、q’は、49以下が好ましく、29以下がより好ましく、19以下がさらに好ましく、4以下が特に好ましく、2以下が最も好ましい。
【0256】
本工程の縮合反応の進行が遅い場合には、縮合剤(例えば、ピリジン・トリフルオロ酢酸塩、テトラゾール、5−ベンジルチオ−1H−テトラゾール、4,5−ジシアノイミダゾール等)を添加してもよい。
【0257】
本工程においては、反応液の酸性度が高くなると、一時保護基が脱離する副反応が生じることがあるので、反応液の酸性化を抑える目的でN−メチルイミダゾールを添加することが好ましい。酸性度の調整のために添加するN−メチルイミダゾールの使用量は、中和の際に使用する塩基1モルに対し、好ましくは0.1〜1モル、より好ましくは0.5モル程度である。
【0258】
本工程は、工程(1)と同様に、非極性溶媒中で行われる。非極性溶媒の説明は、工程(1)における説明と同じである。
【0259】
本工程におけるホスホロアミダイト化されたヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドの使用量は、工程(1)で得られた5’位水酸基遊離体1モルに対して、例えば1〜10モル、好ましくは1〜5モルである。
【0260】
本工程における反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、0℃〜100℃が好ましく、20℃〜50℃がより好ましい。反応時間は、使用する原料の種類、反応温度等によって異なるが、例えば5分〜24時間である。
【0261】
工程(3)(酸化または硫化工程)
本工程は、工程(2)で得られたホスファイトトリエステル体に酸化剤または硫化剤を反応させることにより、そのホスファイトトリエステル結合をホスフェートトリエステル結合またはチオホスフェートトリエステル結合へと変換させて、生成オリゴヌクレオチドを得る工程である。
【0262】
本工程で使用する酸化剤としては、他の部位を酸化することなく、ホスファイトトリエステル結合を、ホスフェートトリエステル結合に酸化する能力がありさえすれば、特に限定されないが、ヨウ素、(1S)−(+)−(10−カンファニルスルフォニル)オキサジリジン、tert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、2−ブタノンペルオキシド、1,1−ジヒドロペルオキシシクロドデカン、ビス(トリメチルシリル)ペルオキシド、m−クロロ過安息香酸を使用することが好ましい。良好な酸化反応が達成できるという観点から、ヨウ素、(1S)−(+)−(10−カンファニルスルフォニル)オキサジリジン、tert−ブチルヒドロペルオキシド、2−ブタノンペルオキシド、1,1−ジヒドロペルオキシシクロドデカンがより好ましく、ヨウ素、(1S)−(+)−(10−カンファニルスルフォニル)オキサジリジン、tert−ブチルヒドロペルオキシド、2−ブタノンペルオキシドがさらに好ましく、ヨウ素、tert−ブチルヒドロペルオキシドがさらに一層好ましく、ヨウ素が特に好ましい。かかる酸化剤は、0.05〜2Mの濃度になるように適当な溶媒で希釈して使用することができる。かかる希釈溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、ピリジン、THF、ジクロロメタン、水、またはこれらの組合せを挙げることができる。中でも、例えば、ヨウ素/水/ピリジン―THFあるいはヨウ素/ピリジン―酢酸、過酸化剤(TBHP)/ジクロロメタンまたはtert−ブチルヒドロペルオキシド/ノナンを用いるのが好ましい。
【0263】
本工程に使用する硫化剤としては、ホスファイトトリエステル結合を、チオホスフェートトリエステル結合に変換しうる能力がありさえすれば、特に限定されないが、3−[(N,N−ジメチルアミノメチリデン)アミノ]−3H−1,2,4−ジチアゾール−5−チオン(DDTT)、3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシド(Beaucage試薬)、3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン、フェニルアセチルジスルフィド(PADS)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、3−アミノ−1,2,4−ジチアゾール−5−チオン(ADTT)、硫黄を使用することが好ましい。良好な反応が進行しうるという観点で、3−[(N,N−ジメチルアミノメチリデン)アミノ]−3H−1,2,4−ジチアゾール−5−チオン(DDTT)、3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシド(Beaucage試薬)、3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン、フェニルアセチルジスルフィド(PADS)がより好ましく、3−[(N,N−ジメチルアミノメチリデン)アミノ]−3H−1,2,4−ジチアゾール−5−チオン、3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシドがさらに好ましく、3−[(N,N−ジメチルアミノメチリデン)アミノ]−3H−1,2,4−ジチアゾール−5−チオンが特に好ましい。かかる硫化剤は、0.05〜2Mの濃度になるように適当な溶媒で希釈して使用することができる。かかる希釈溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、ピリジンまたはこれら任意の混合溶媒が挙げられる。
【0264】
酸化剤または硫化剤の使用量は、工程(2)で得られたホスファイトトリエステル体1モルに対し、例えば1〜50モル、好ましくは1〜5モルである。
【0265】
反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、0℃〜100℃が好ましく、20℃〜50℃がより好ましい。反応時間は、ホスファイトトリエステル体の種類、使用する酸化剤または硫化剤の種類、反応温度等によって異なるが、例えば1分〜3時間である。
【0266】
工程(4)(沈殿促進剤の添加工程)
本工程は、工程(1)(脱保護工程)と工程(2)(縮合工程)の間、工程(2)と工程(3)(酸化または硫化工程)の間、工程(3)の後のいずれかにおいて、反応液に極性溶媒(好ましくはアセトニトリル)を添加して反応液から、沈殿したオリゴヌクレオチドを分離する工程(5)(沈殿化および固液分離工程)での沈殿を促進するために、工程(5)の前であって、工程(1)の前、工程(1)と工程(2)の間、工程(2)と工程(3)の間および工程(3)の後のいずれかにおいて、反応液に本発明の沈殿促進剤を加える工程である。
【0267】
本工程において、本発明の沈殿促進剤は1種のみを添加してもよく、2種以上を添加してもよい。本工程における本発明の沈殿促進剤の使用量は、最初の工程(1)で使用される一時保護基含有ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドに対して、好ましくは0.1モル当量以上、より好ましくは0.5モル当量以上、さらに好ましくは1モル当量以上である。この上限に特に限定はないが、コストの観点から、本発明の沈殿促進剤の使用量は、最初の工程(1)で使用される一時保護基含有ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドに対して、好ましくは10モル当量以下、より好ましくは5モル当量以下、さらに好ましくは2.5モル当量以下である。
【0268】
工程(5)(沈殿化および固液分離工程)
本工程は、工程(4)(沈殿促進剤の添加工程)の後であって、工程(1)(脱保護工程)と工程(2)(縮合工程)の間、工程(2)と工程(3)(酸化または硫化工程)の間、工程(3)の後のいずれかにおいて、沈殿促進剤を含む反応液に極性溶媒(好ましくはアセトニトリル)を添加し、反応液から、工程(1)で得られた5’位水酸基遊離体、工程(2)で得られたホスファイトトリエステル体、または工程(3)で得られた生成オリゴヌクレオチド(以下、5’位水酸基遊離体、ホスファイトトリエステル体および生成オリゴヌクレオチドをまとめて「目的物」と称することがある。)と、沈殿促進剤とを含む沈殿混合物を分離する工程である。
【0269】
極性溶媒としては、前述の極性溶媒が挙げられる。本工程で用いる極性溶媒としては、特にアセトニトリルが好ましい。
【0270】
目的物の回収率を高めるために、本工程における極性溶媒(好ましくはアセトニトリル)の添加量は、目的物を含有する反応液中に含まれる非極性溶媒1mLに対して、好ましくは0.5mL以上、より好ましくは1mL以上、さらに好ましくは2mL以上であり、好ましくは20mL以下、より好ましくは10mL以下、さらに好ましくは8mL以下である。
【0271】
アセトニトリルを使用する場合、目的物のアセトニトリル中へのロスを最小限とするために水を含んでいてもよい。この場合、アセトニトリル中の水の含有量は、1〜10%(v/v)が好ましく、3〜8%(v/v)がより好ましい。水の含有量が低すぎる場合は、目的物のアセトニトリル中へのロスが増える場合があり、水の含有量が高すぎる場合は、不要物のアセトニトリル中への除去が不十分となる傾向がある。
【0272】
工程(6)(溶解工程)
本工程は、工程(5)(沈殿化および固液分離工程)で得られた沈殿混合物に非極性溶媒を加えて反応液とする工程であり、本工程によって、上記工程(1)〜(3)からなる製造サイクルを繰り返すことができる。
【0273】
本工程で使用し得る非極性溶媒の説明は、工程(1)の説明と同じである。本工程で得られる反応液中の沈殿混合物の濃度は、沈殿混合物が非極性溶媒に溶解していれば特に限定されないが、好ましくは1〜30重量%である。
【0274】
本発明のオリゴヌクレオチドの製造方法では、工程(5)(沈殿化および固液分離工程)および工程(6)(溶解工程)を、工程(3)(酸化または硫化工程)の後に実行することが好ましい。
【0275】
本発明のオリゴヌクレオチドの製造方法は、下記工程(7)を含んでいてもよい:
(7)オリゴヌクレオチドの保護基を全て除去し、オリゴヌクレオチド(以下「非保護オリゴヌクレオチド」と称することがある。)を単離する工程(脱保護および単離工程)。
【0276】
工程(7)(脱保護および単離工程)
本発明のオリゴヌクレオチドの製造方法においては、好ましくは工程(5)の後に、保護基の種類・性質に応じて、脱保護を行い、オリゴヌクレオチドを単離することができる。脱保護の方法としては、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている脱保護方法に従い、オリゴヌクレオチドの全ての保護基を除去する工程を行うことができる。具体的には、本発明の擬似固相保護基、および核酸塩基の保護基であるフェノキシアセチル基、アセチル基等、リン酸骨格を保護しているシアノエチル基等は、アンモニア水、アンモニア水/エタノール溶液、またはアンモニア水とメチルアミン水溶液の混合液で処理することにより、全て除去することができる。また、5’水酸基の保護基は、工程(1)で使用される酸またはそれらを適宜希釈した溶液で処理することにより除去することができる。保護基を有しない、オリゴヌクレオチドは酵素により容易に分解されやすいため、空気清浄度管理下でオリゴヌクレオチドを単離することが好ましい。
【0277】
上記各工程における反応の進行の確認は、いずれも一般的な液相有機合成反応と同様の方法を適用できる。即ち、薄層シリカゲルクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を用いて反応を追跡することができる。
【0278】
工程(5)(沈殿化および固液分離工程)により得られた5’位水酸基遊離体、ホスファイトトリエステル体または生成オリゴヌクレオチド、あるいは工程(7)(脱保護および単離工程)により得られた非保護オリゴヌクレオチドは、さらに有機合成反応を施すことにより、所望の誘導体へと導くこともできる。本発明によって製造されたオリゴヌクレオチド等は、各種人体用または動物用の医薬品(RNA、DNA、オリゴ核酸医薬等)、食品(機能性食品、特定保健用食品等)、化成品、生体用や工業用の高分子材料等の各種用途に使用することができる。
【実施例】
【0279】
以下、実施例等に沿って本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例等は本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、以下に記載の溶媒比は、特段の記載が無い限り、体積比を表す。また、本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。また、本明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、各表示は特に言及しない限り、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。
【0280】
実施例等で使用される基および化合物の略号は、以下のとおりである。
Me:メチル基
DMTr:4,4’−ジメトキシトリチル基
TBDMS:t−ブチルジメチルシリル基
Boc:t−ブトキシカルボニル基
Pbf:2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル
Trt:トリチル基
TOB:3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル基
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
HBTU:O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート
【0281】
参考例1:ホスホロチオエート2量体の液中連続合成
【0282】
【化32】
【0283】
アルゴン雰囲気下、5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)デオキシチミジン−3’−イル [3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート(504mg,327μmol)をジクロロメタン(7.5mL)に溶解し、ピロール(213μL,3.27mmol)、トリフルオロ酢酸(292μL,3.93mmol)を加えて室温で15分間攪拌し、反応の完結を薄層クロマトグラフィーにより確認した。反応混合液をピリジン(316μL,3.93mmol)、1−メチルイミダゾール(156μL,1.96mmol)で中和した後、4,5−ジシアノイミダゾール(116mg,982mmol)、5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)デオキシチミジン−3’−[O−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト(609mg,818μmol)のアセトニトリル溶液を加え、室温で60分間攪拌し、薄層クロマトグラフィーにより反応の完結を確認した。さらに、3−[(N,N−ジメチルアミノメチリデン)アミノ]−3H−1,2,4−ジチアゾール−5−チオン(184mg,898μmol)を加えて室温で30分間攪拌した後、反応液中にメタノール(100mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗を用いた吸引濾過後、乾燥して5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)デオキシチミジン−3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン−3’−イル [3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル] スクシネート(567mg,収率91%)を白色固体として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,9H,J=6.8Hz,Ar−C),1.28(br,s,90H,(C15),1.30(s,3H,N−C),1.46(s,3H,N−C),1.73(m,6H,Ar−OCH),2.28(m,2H,2’),2.41(m,2H,2’),2.68(m,2H,5’ and m,4H,succinyl−C),3.44(m,2H,5’),3.79(s,6H,DMTr−OC),3.95(m,6H,Ar−OC),4.10(m,1H,4’),4.31(m,4H,cyanoethyl−C and m,1H,4’),5.01(s,2H,Ar−C−succinyl),5.26(m,1H,3’),5.32(m,1H,3’),6.27(m,1H、1’),6.38(m,1H、1’),6.53(s,2H,Ar−),6.84−7.29(m,13H,DMTr−Ar−),7.29(m,1H,N),7.56(m,1H,N
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,9H,Ar−C),1.28(br,s,90H,(C15),1.30(s,3H,N−C),1.46(s,3H,N−C),1.73(m,6H,Ar−OCH),2.41(m,2H,2’),2.68(m,2H,2’ and m,4H,succinyl−C),2.77(m,2H,5’),3.44(m,2H,5’),3.79(s,6H,DMTr−OC),3.95(m,6H,Ar−OC),4.17(m,1H,4’),4.31(m,4H,cyanoethyl−C and m,1H,4’),5.01(s,2H,Ar−C−succinyl),5.33(m,1H,3’ and m,1H,3’),6.27(m,1H、1’),6.38(m,1H、1’),6.53(s,2H,Ar−),6.84−7.29(m,13H,DMTr−Ar−),7.29(m,1H,N),7.56(m,1H,N
【0284】
参考例2:ホスホロチオエート5量体の液中連続合成
参考例1同様の操作を4回繰り返して、5’−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−N−イソブチリル−デオキシグアノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシアデノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン−3’−イル [3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル] スクシネート(1.94g)を得た。
【0285】
参考例3:ホスホロチオエート10量体の液中連続合成
参考例1と同様の操作を9回繰り返して、5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−N−イソブチリル−デオキシグアノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシアデノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシアデノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−イソブチリル−デオキシグアノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシアデノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−イル 3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル スクシネート(1.41g)を得た。
【0286】
参考例4:ホスホロチオエート20量体の液中連続合成
参考例1と同様の操作を19回繰り返して、5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−デオキシチミジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−イソブチリル−デオキシグアノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−イソブチリル−デオキシグアノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−イソブチリル−デオキシグアノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシアデノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシアデノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−イソブチリル−デオキシグアノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシアデノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−イル 3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル スクシネート(1.61g)を得た。
【0287】
比較例1:メチル 3,4,5−トリ(16−メチルヘプタデカン−1−イルオキシ)ベンゾエートの合成
(1)16−メチルヘプタデカン−1−イルブロミドの合成
【0288】
【化33】
【0289】
16−メチルヘプタデカン−1−イルアルコール(5.00g,18.5mmol)を臭化水素酸(50mL)に溶解し、濃硫酸(84μL,1.59mmol)を添加して100℃で16時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより反応の完結を確認した後、反応液を室温まで冷却し、ヘキサン(150mL)を加えた。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で2回、飽和食塩水(50mL)で1回洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、目的の化合物(5.56g,収率90%)を得た。
【0290】
(2)メチル 3,4,5−トリ(16−メチルヘプタデカン−1−イルオキシ)ベンゾエートの合成
【0291】
【化34】
【0292】
メチル 3,4,5−トリヒドロキシベンゾエート(1.03g,5.57mmol)、16−メチル−ヘプタデカニルブロミド(5.56g,16.7mmol)、炭酸カリウム(3.85g,27.9mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(50.0mL)に溶解し、110℃で16時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより反応の完結を確認後、反応液を室温まで冷却し、酢酸エチル(200mL)を加えた。有機層を、水(100mL)で2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で1回、飽和食塩水(100mL)で1回洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮することで目的の化合物(4.66g,収率88%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.83−0.90(m,18H,−C),1.05−1.51(m,81H,−O−CH−CH2−(C13−C(CH),1.70−1.84(m,6H,−O−CH−C(CH13−CH(CH),3.88(s,3H,C(O)OC),3.99−4.02(m,6H,Ar−OC),7.25(s,2H,Ar−
【0293】
比較例2:メチル 4−オクタデシルオキシベンゾエートの合成
【0294】
【化35】
【0295】
アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(2.72g,19.7mmol)、メチル 4−ヒドロキシベンゾエート(1.00g,6.57mmol)、1−ブロモオクタデカン(2.63g,7.88mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(60mL)に溶解し、90℃で16時間攪拌した。薄層クロマトグラフィーで反応の完結を確認した後、反応液に酢酸エチル(100mL)とテトラヒドロフラン(20mL)を加え、有機層を、水(100mL)で3回、飽和食塩水(100mL)で1回で洗浄後、有機層を減圧留去した。濃縮残渣に酢酸エチル(50mL)を加え、70℃に加温し溶解させた後、5℃まで冷却し、目的の化合物(2.61g,収率98%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,3H,J=6.8Hz,−CHCH(CH15),1.26−1.49(m,30H,−CHCH(C15CH),1.76−1.83(m,2H,−CH(CH15CH),3.88(s,3H,−C(O)OC),4.00(t,2H,J=6.4Hz,−CCH(CH15CH),6.90(d,2H,J=9.2Hz,Ar−H),7.98(d,2H,J=9.2Hz,Ar−H)
【0296】
実施例1:メチル 3,5−ビス(オクタデシルオキシ)ベンゾエートの合成
【0297】
【化36】
【0298】
アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(19.9g,144mmol)、メチル 3,5−ジヒドロキシベンゾエート(3.60g,21.4mmol)、1−ブロモオクタデカン(15.5g,46.7mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(200mL)に溶解し、70℃で16時間攪拌した。薄層クロマトグラフィーで反応の完結を確認した後、反応液を水(800mL)中に注ぎ込み沈殿化し、固体を得た。得られた固体をジクロロメタン(200mL)に溶解し、メタノール(400mL)で固体を析出させた後、ろ取し、乾燥して、目的の化合物(13.9g,収率97%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,6H,J=6.6Hz,−OCHCH(CH15),1.25−1.55(m,76H,−OCHCH(C15CH),1.77(m,4H,−OCH(CH15CH),3.89(s,3H,C(O)O−C),3.96(t,4H,J=6.6Hz,−OCCH(CH15CH),6.63(s,1H,Ar−H),7.15(s,2H,Ar−H)
【0299】
実施例2:メチル 3,5−ビス(ドコシルオキシ)ベンゾエートの合成
【0300】
【化37】
【0301】
アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(20.0g,145mmol)、メチル 3,5−ジヒドロキシベンゾエート(3.60g,21.4mmol)、1−ブロモドコサン(17.9g,46.0mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(200mL)に溶解し、70℃で16時間攪拌した。薄層クロマトグラフィーで反応の完結を確認した後、反応液を水(1.00L)中に注ぎ込み沈殿化し、固体を得た。得られた固体をジクロロメタン(500mL)に溶解し、メタノール(400mL)で固体を析出させた後、ろ取し、乾燥して、目的の化合物(16.1g,収率96%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,6H,J=6.6Hz,−C),1.25−1.55(m,76H,−OCHCH(C19CH),1.77(m,4H,−OCH(CH19CH),3.89(s,3H,C(O)O−C),3.96(t,4H,J=6.6Hz,−OCCH(CH19CH),6.63(s,1H,Ar−H),7.15(s,2H,Ar−H)
【0302】
実施例3:2,3,4−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゾフェノン
【0303】
【化38】
【0304】
アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(4.35g,31.5mmol)、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン(1.61g,7.00mmol)、1−ブロモオクタデカン(7.32g,22.0mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)に溶解し、80℃で16時間攪拌した。薄層クロマトグラフィーで反応の完結を確認した後、反応液を水(200mL)中に注ぎ込み沈殿化し、固体を得た。得られた固体をジクロロメタン(200mL)に溶解し、メタノール(300mL)で固体を析出させた後、ろ取し、乾燥して、目的の化合物(6.31g,収率91%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,9H,J=6.7Hz,−C),1.11−1.55(m,90H,−O−CHCH(C15CH),1.74−1.87(m,4H,−O−CH(CH15CH),3.88(t,2H,J=6.6Hz,−O−CCH(CH15CH),3.99(t,2H,J=6.6Hz,−O−CCH(CH15CH),4.02(t,2H,J=6.6Hz,−O−CCH(CH15CH),6.69(d,1H,J=8.6Hz,Ar−H),7.12(d,1H,J=8.6Hz,Ar−H),7.41(m,2H,Ar−H),7.53(m,1H,Ar−H),7.77(m,2H,Ar−H)
【0305】
実施例4:3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)トルエンの合成
【0306】
【化39】
【0307】
水素雰囲気下、2−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ−4−メトキシ−ベンズアルドキシム(487mg,470μmol)をTHF(40mL)とメタノール(10mL)の混合溶媒に溶解し、10重量%Pd/C(53.3mg)を加えた後、室温で64時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより反応の完結を確認後、反応液をセライトろ過し、濾液にアセトニトリル(200mL)を加え、固体を析出させた。固体をろ取し、乾燥して、目的の化合物(391mg,収率93%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,9H,J=6.6Hz,−OCHCH(CH19),1.26−1.80(m,96H,−OCH(C19CH),2.27(s,3H,Ar−Me),3.89−3.96(m,6H,−OCCH(CH19CH),6.35(s,2H,Ar−H)
【0308】
実施例5:メチル 3,4,5−トリス[3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾエートの合成
【0309】
【化40】
【0310】
アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(1.39g,10.1mmol)、メチル 3,5−ヒドロキシベンゾエート(181mg,1.00mmol)、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルクロリド(2.81g,3.01mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)に溶解し、70℃で18時間攪拌した。薄層クロマトグラフィーで反応の完結を確認した後、反応液を水(50mL)中に注ぎ込み沈殿化し固体を得た。得られた固体をジクロロメタン(50mL)に溶解し、アセトニトリル(200mL)で固体を析出させた後、ろ取し、乾燥して、目的物の粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサン(体積比)=1/2〜1/1)にて精製し、目的の化合物(2.31g,81%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,9H,J=7.0Hz,−O(CH2)17),1.25−1.74(m,291H,−OCH(C+N−C16CH),3.75(m,6H,−OC(CH16CH),3.90(s,3H,−C(O)OC),3.86−3.94(2m,12H,−OC(CH16CH),5.02(s,6H,3×−C−Ar),6.59(s,2H,Ar−),6.62(s,4H,Ar−),7.38(s,2H,Ar−H)
【0311】
実施例6:メチル 3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゾエートの合成
【0312】
【化41】
【0313】
1−ブロモオクタデカン(64.0g,192mmol)、炭酸カリウム(79.6g,576mmol)、3,4,5−トリヒドロキシメチルベンゾエート(11.0g,60.0mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(600mL)に溶解し、90℃で16時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン(体積比)=2/1およびジクロロメタン/メタノール(体積比)=9/1)により反応の完結を確認後、反応液を水(2.00L)中に注ぎ込み、固体を析出させた後、濾過乾燥した。乾燥した固体をジクロロメタン(500mL)に溶解し、アセトニトリル(1.50L)を加えて固体を析出させ、ろ取し、乾燥して、目的の化合物(56.7g,100%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,9H,J=6.8Hz,−OCH(CH16),1.21−1.51(m,90H,−O−CHCH(C15CH),1.70−,6H,−O−CH−C(CH15−CH),3.89(s,3H,C(O)OC),3.99−4.03(m,6H,Ar−OC),4.99(s,2H,Ar−H),7.25(s,2H,Ar−H)
【0314】
実施例7:3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル アセテートの合成
(1)3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアルコールの合成
【0315】
【化42】
【0316】
アルゴン雰囲気下、メチル 3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゾエート(10.0g,10.6mmol)をテトラヒドロフラン(150mL)に溶解し、水素化アルミニウムリチウム(810mg,21.3mmol)を添加し、室温で30分間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより反応の完結を確認し、4M水酸化ナトリウム水溶液(6.0mL)によりクエンチし、反応液を濾過した。濾液にメタノール(500mL)を加えて固体を析出させ、ろ取し、乾燥して、目的の化合物(9.65g,収率99%)を得た。
【0317】
(2)3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル アセテートの合成
【0318】
【化43】
【0319】
3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアルコール(10.0g,10.5mmol)、無水酢酸(9.90mL,105mmol)、ピリジン(8.40mL,105mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(128mg,1.05mmol)をジクロロメタン(100mL)に溶解し、室温で5分間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより反応の完結を確認し、アセトニトリル(500mL)を加えて、固体を析出させ、ろ取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=2/1−1/1)により精製し、目的の化合物(10.4g)を白色固体として定量的に得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,9H,J=6.8Hz,−C),1.26−1.50(m,90H,−O−CH−CH−(C15CH),1.70−1.83(m,6H,−O−CH−C(CH15−CH),2.10(s,3H,C(O)C),3.92−3.98(m,6H,Ar−OC),4.99(s,2H,Ar−C),6.54(s,2H,Ar−H)
【0320】
実施例8:1,2,3−トリ(オクタデシルオキシ)プロパンの合成
【0321】
【化44】
【0322】
アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(12.4g,90.0mmol)、グリセロール(921mg,10.0mmol)、1−ブロモオクタデカン(11.0g,33.0mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(100mL)に溶解し、110℃で16時間攪拌した。薄層クロマトグラフィーで反応の完結を確認した後、反応液を水(400mL)中に注ぎ込み沈殿させ、固体を得た。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン)で精製し、目的の化合物(4.30g,51%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,9H,J=6.8Hz,−CH(CH16),1.18−1.36(m,95H,−CHCH(C15CHC(C),1.53−1.62(m,6H,−CH(CH15CH),3.62−3.66(m,6H,−C(CH16CH
【0323】
実施例9:1,3−ジ(オクタデシルオキシ)−2,2−ジ(オクタデシルオキシメチル)プロパンの合成
【0324】
【化45】
【0325】
アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(6.10g,44.1mmol)、ペンタエリトリトール(501mg,3.67mmol)、1−ブロモオクタデカン(5.50g,16.5mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(35mL)に溶解し、110℃で16時間攪拌した。薄層クロマトグラフィーで反応の完結を確認した後、反応液を水(400mL)中に注ぎ込み沈殿化し、固体を得た。得られた固体をジクロロメタン(200mL)に溶解し、メタノール(300mL)で固体を析出させた後、ろ取し、乾燥して、目的の化合物(3.57g,85%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,J=6.8Hz,12H,−CH(CH16),1.17−1.36(m,128H,−CHCH(C16CH),1.53−1.60(m,8H,−C(C),3.62−3.66(m,8H,−C(CH16CH
【0326】
実施例10:メチル 4−ドコシルオキシベンゾエートの合成
【0327】
【化46】
【0328】
アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(1.36g,9.85mmol)、メチル 4−ヒドロキシベンゾエート(500mg,3.29mmol)、1−ブロモオクタデカン(1.28g,3.62mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)に溶解し、90℃で16時間攪拌した。薄層クロマトグラフィーで反応の完結を確認した後、反応液を水(400mL)中に注ぎ込み沈殿化し、固体を得た。得られた固体を70℃で酢酸エチル(50mL)に溶解後、室温まで冷却して、結晶を析出させた後、ろ取し、乾燥して、目的の化合物(1.37g,91%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,3H,J=6.8Hz,−CHCH(CH15),1.26−1.58(m,38H,−CHCH(C19CH),1.76−1.83(m,2H,−CH(CH19CH),3.88(s,3H,−C(O)OC),4.00(t,2H,J=6.4Hz,−CCH(CH15CH),6.90(d,2H,J=9.5Hz,Ar−H),7.98(d,2H,J=9.5Hz,Ar−H)
【0329】
実施例11:メチル 3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)シクロヘキサンカルボキシレートの合成
【0330】
【化47】
【0331】
メチル 3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゾエート(1.00g,10.6mmol)にシクロヘキサンを加え、5%ロジウム−炭素(0.8g)を添加し、80℃および10気圧にて16時間、水素還元を実施した。水素還元後の混合物にテトラヒドロフラン(10mL)を加えて、触媒を濾過し、濾液を濃縮し、濃縮液にメタノール(8mL)を加えて、撹拌した。得られた沈殿物をろ取し、乾燥して、目的の化合物(820mg,収率82%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.89(9H,t,J=6.9Hz,C1734−Me),1.25−1.44(90H,m),1.52−1.60(6H,m),1.86−1.94(4H,m),2.23(1H,m),3.09−3.14(2H,m),3,41−3.47(4H,m),3.64−3.68(5H,m),3.86(1H,s)
【0332】
実施例12:メチル 2,4−ジ(ドコシルオキシ)ベンゾエートの合成
【0333】
【化48】
【0334】
アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(29.9g,217mmol)、メチル 2,4−ジヒドロキシベンゾエート(3.65g,21.7mmol)、1−ブロモドコサン(17.33g,44.5mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(150mL)に溶解し、70℃で16時間攪拌した。薄層クロマトグラフィーで反応の完結を確認した後、反応液を水(1.00L)中に注ぎ込み沈殿化し、固体を得た。得られた固体をジクロロメタン(500mL)に溶解し、メタノール(400mL)で固体を析出させた後、ろ取し、乾燥して、目的の化合物(16.7g,収率98%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,6H,J=6.6Hz,−C),1.13−1.56(m,76H,−OCHCH(C19CH),1.81(m,4H,−OCH(CH19CH),3.89(s,3H,C(O)O−C),4.02(dd,4H,J=6.6,14.8Hz,−OCCH(CH19CH),6.63(s,1H,Ar−H),7.15(s,2H,Ar−H)
【0335】
実施例13:ピバロイルオキシメチル−3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゼンの合成
【0336】
【化49】
【0337】
アルゴン雰囲気下、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアルコール(2.73g,2.99mmol)をジクロロメタン(25mL)に溶解後、トリエチルアミン(1.67mL,12.0mmol)、ピバロイルクロリド(781μL,6.00mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(7.32mg,600μmol)を順次加え、室温で7時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより反応の完結を確認し、反応液にアセトニトリル(125mL)を加えて固体を析出させ、ろ取した。得られた固体を減圧乾燥し、目的の化合物(2.80g)を白色固体として定量的に得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.879(t,J=7.06Hz,9H),1.23(s,9H),1.24−1.40(m,84H),1.40−1.52(m,6H),1.70−1.81(m,6H),3.92(t,J=6.8Hz,2H),3.95(t,J=6.8Hz,4H),5.01(s,2H),6.51(s,2H)
【0338】
実施例14:(2S)−2−(アセチルアミノ)−4−メチルペンタノイルオキシメチル−3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゼンの合成
【0339】
【化50】
【0340】
3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアルコール(1.83g,2.00mmol)、N−アセチルロイシン(700mg,4.09mmol)、2,6−ジメチルアミノピリジン(2.58mg,20.0μmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解後、ジイソプロピルエチルアミン(1.16mL,6.79mmol)とHBTU(1.90g,5.00mmol)を加えて、室温で15時間撹拌後、さらに40℃で21時間撹拌した。反応液をろ過後、ろ液にアセトニトリル(100mL)を加えて固体を析出させ、ろ取した。得られた固体を減圧乾燥し、目的の化合物(1.97g)を白色固体として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.879(t,J=7.06Hz,9H),0.913(d,J=3.2Hz,3H),0.929(d,J=3.2Hz,3H),1.22−1.40(m,84H),1.40−1.52(m,7H),2.02(s,3H),1.60−1.82(m,8H),3.94(t,J=6.4Hz,2H),3.95(t,J=6.8Hz,4H),4.684(ddd,J=13.6,4.8,4.8Hz,1H),5.024(d,12.4Hz),5.082(d,12.4Hz),5.817(d,8.4Hz),6.52(s,2H)
【0341】
実施例15:トリイソプロピルシリルオキシメチル−3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゼンの合成
【0342】
【化51】
【0343】
アルゴン雰囲気下、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアルコール(4.57g,5.00mmol)とイミダゾール(1.36g,20.0mmol)をジクロロメタン(40mL)とN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)の混合溶媒に溶解し、トリイソプロピルシリルクロリド(2.12mL,10.0mmol)を加えて40℃で6時間撹拌した。室温に冷却後、反応液にアセトニトリル(250mL)を添加して固体を析出させ、ろ取した。得られた固体を減圧乾燥し、目的の化合物(5.23g)を白色固体として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.879(t,J=7.06Hz,9H),1.09(d,18H,6.0Hz),1.12−1.20(m,3H),1.22−1.40(m,84H),1.40−1.52(m,6H),1.70−1.82(m,6H),3.91(t,J=6.8Hz,2H),3.97(t,J=6.8Hz,4H),4.75(s,2H),6.56(s,2H)
【0344】
実施例16:4−(3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゾイル)−モルホリンの合成
【0345】
【化52】
【0346】
アルゴン雰囲気下、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)安息香酸(5.00g,5.39mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶解後、HBTU(6.13g,16.2mmol)、モルホリン(1.31mL,16.2mmol)、およびジイソプロピルエチルアミン(2.90mL,16.2mmol)を順次加え、室温で18時間撹拌した。反応の終点を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン/酢酸エチル=25/50/25)で確認後、反応液にアセトニトリル(250mL)を添加して固体を析出させ、ろ取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=100/0〜95/5)で精製し、目的の化合物(5.18g)を白色固体として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.879(t,J=6.8Hz,9H),1.26−1.47(m,84H),1.42−1.53(m,6H),1.71−1.80(m,6H),3.69(m,8H)、3.95(m,6H),6.51(s,2H)
【0347】
試験例1
被沈殿物として、参考例2で合成した5量体または参考例4で合成した20量体を使用し、沈殿促進剤の添加量と被沈殿物の回収率との関係を検討した。表1および2に示す量で被沈殿物および実施例6で合成した沈殿促進剤(メチル 3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゾエート)をジクロロメタン(2mL)に溶解させた後、表1および2に示す量のアセトニトリルにより固体を析出させ、得られた固体を桐山ロート(21m/m)とろ紙(No−5A)を用いてろ取し、アセトニトリル(20mL)により固体を洗浄した後に減圧乾燥した。使用した被沈殿物(即ち、参考例2の5量体または参考例4の20量体)の量および使用した沈殿促進剤の量と、回収した乾燥後の被沈殿物および沈殿促進剤の混合物の量とから算出した回収率(=100×(回収した乾燥後の被沈殿物および沈殿促進剤の混合物の量(mg))/(使用した被沈殿物の量(mg)+使用した沈殿促進剤の量(mg)))を表1および2に示す。
【0348】
【表1】
【0349】
【表2】
【0350】
試験例2
被沈殿物として、参考例3で合成した10量体を使用し、沈殿促進剤の種類と被沈殿物の回収率との関係を検討した。表3に示す量で参考例3の10量体と比較例1および2並びに実施例1〜12で合成した沈殿促進剤のいずれかとをジクロロメタン(0.5mL)に溶解させた後、アセトニトリル(2.5mL)により固体を析出させ、得られた固体を桐山ロート(21m/m)とろ紙(No−5A)を用いてろ取し、アセトニトリル(2.0mL)により固体を洗浄した後に減圧乾燥した。使用した被沈殿物(即ち、参考例3の10量体)の量および使用した沈殿促進剤の量と、回収した乾燥後の被沈殿物および沈殿促進剤の量とから算出した回収率(=100×(回収した乾燥後の被沈殿物および沈殿促進剤の混合物の量(mg))/(使用した被沈殿物の量(mg)+使用した沈殿促進剤の量(mg)))を表3に示す。
【0351】
【表3】
【0352】
表3で示されるように、実施例1〜12の沈殿促進剤を使用することによって、参考例3の10量体の沈殿化を促進し、その回収率を向上させることができる。一方、分岐鎖の脂肪族炭化水素基を有する比較例1の沈殿促進剤、および直鎖の脂肪族炭化水素基を有するが、該基の炭素数合計が20未満である比較例2の沈殿促進剤を使用すると、これらを使用しない場合に比べて、参考例3の10量体の回収率が却って低下した。
【0353】
試験例3
被沈殿物として、参考例2で合成した5量体を使用し、沈殿促進剤の種類と被沈殿物の回収率との関係を検討した。表4に示す量で、参考例2の5量体と実施例13〜15で合成した沈殿促進剤のいずれかとを、ジクロロメタンに溶解させた。得られた溶液に、撹拌しながら、表4に示す量のアセトニトリルを24℃において3分間かけて滴下し、固体を析出させて、スラリーを得た。得られたスラリーを氷浴中10分間静置し、25Φ桐山ロートおよび5Cろ紙を用いて析出した固体をろ取し、得られた固体を、表4に示す量のアセトニトリルで洗浄した。得られた固体を、終夜、減圧乾燥した。使用した被沈殿物(即ち、参考例2の5量体)の量および使用した沈殿促進剤の量と、回収した乾燥後の被沈殿物および沈殿促進剤の混合物の量とから算出した回収率(=100×(回収した乾燥後の被沈殿物および沈殿促進剤の混合物の量(mg))/(使用した被沈殿物の量(mg)+使用した沈殿促進剤の量(mg)))を表4に示す。
【0354】
【表4】
【0355】
試験例4
被沈殿物として、参考例4で合成した20量体を使用し、沈殿促進剤の種類と被沈殿物の回収率との関係を検討した。表5に示す量で、参考例2の5量体と実施例13〜15で合成した沈殿促進剤のいずれかとを、ジクロロメタンに溶解させた。得られた溶液に、撹拌しながら、アセトニトリル(10.5mL)を24℃において3分間かけて滴下し、固体を析出させ、スラリーを得た。得られたスラリーを氷浴中10分間静置し、25Φ桐山ロートおよび5Cろ紙を用いて析出した固体をろ取し、得られた固体をアセトニトリル(5.0mL)で洗浄した。得られた固体を、終夜、減圧乾燥した。使用した被沈殿物(即ち、参考例4の20量体)の量および使用した沈殿促進剤の量と、回収した乾燥後の被沈殿物および沈殿促進剤の混合物の量とから算出した回収率(=100×(回収した乾燥後の被沈殿物および沈殿促進剤の混合物の量)/(使用した被沈殿物の量(mg)+使用した沈殿促進剤の量(mg)))を表5に示す。
【0356】
【表5】
【0357】
試験例5
まず、沈殿促進剤を使用せずにペプチドの回収試験を行った。詳しくは、カルボキシ基が3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル基(TOB)で保護されたペプチド(H−Lys(Boc)−Pro−Pro−Ala−Lys(Boc)−Leu−Gln(Trt)−Pro−Arg(Pbf)−OTOB,435mg,0.166mmol)をクロロホルム(10mL)に溶解させた。得られた溶液を減圧濃縮して、溶液から約5mLのクロロホルムを除去し、濃縮物を得た。濃縮物にアセトニトリル(20mL)を加え、固体を析出させた。析出物をろ取し、減圧乾燥して、乾燥したペプチドを得た。使用したペプチドの量および回収した乾燥後のペプチドの量から算出した回収率(=100×(回収した乾燥後のペプチドの量(mg))/(使用したペプチドの量(mg)))は71%であった。
【0358】
次に、沈殿促進剤として3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアルコールを使用したこと以外は前記と同様にして、ペプチドの回収試験を行った。詳しくは、3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル基(TOB)で保護されたペプチド(H−Lys(Boc)−Pro−Pro−Ala−Lys(Boc)−Leu−Gln(Trt)−Pro−Arg(Pbf)−OTOB,435mg,0.166mmol)および3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルアルコール(200mg,0.22mmol)をクロロホルム(10mL)に溶解させた。得られた溶液を、減圧濃縮して、溶液から約5mLのクロロホルムを除去し、濃縮物を得た。濃縮物にアセトニトリル(20mL)を加え、固体を析出させた。析出物をろ取し、減圧乾燥して、乾燥したペプチドおよび沈殿促進剤の混合物を得た。使用したペプチドの量および使用した沈殿促進剤の量と、回収した乾燥後のペプチドおよび沈殿促進剤の混合物の量とから算出した回収率(=100×(回収した乾燥後のペプチドおよび沈殿促進剤の混合物の量(mg))/(使用したペプチドの量(mg)+使用した沈殿促進剤の量(mg)))は97%であった。
【0359】
実施例17:沈殿促進剤を用いたホスホロチオエート2量体の液中連続合成
アルゴン雰囲気下、5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)デオキシチミジン−3’−イル [3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル] スクシネート(1.85g,1.2mmol)、実施例7で合成した沈殿促進剤である3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル アセテート(1.86g,1.20mmol)をジクロロメタン(40mL)に溶解し、インドール(1.40g,12.0mmol)、トリフルオロ酢酸(88.9μL,1.20mmol)を加えて室温で2時間攪拌し、反応の完結を薄層クロマトグラフィーにより確認した。反応混合液を1−メチルイミダゾール(99.7μL,1.26mmol)で中和した後、4,5−ジシアノイミダゾール(476mg,4.03mmol)、5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)デオキシチミジン−3’−[O−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト(2.00g,2.69mmol)のアセトニトリル溶液を加え、室温で60分間攪拌し、薄層クロマトグラフィーにより反応の完結を確認した。さらに、3−[(N,N−ジメチルアミノメチリデン)アミノ]−3H−1,2,4−ジチアゾール−5−チオン(608mg,2.96mmol)を加えて室温で30分間攪拌した後、無水酢酸(56.6μL、0.60mmol)、2,4,6−トリメチルピリジン(79.1μL,0.60mmol)、1−メチルイミダゾール(47.5μL,0.60mmol)を加えて室温で15分間撹拌し、反応液中にアセトニトリル(200mL)を添加し、析出した固体を、キリヤマ漏斗を用いた吸引ろ取後、乾燥して5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−デオキシチミジン−3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン−3’−イル [3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル] スクシネート(4.150g,収率99.8%)を白色固体として得た。
【0360】
実施例18:沈殿促進剤を用いたホスホロチオエート20量体(配列:5’−TCCCGCCTGTGACATGCATT−3’)の液中連続合成
(1)擬似固相保護基が結合したホスホロチオエート20量体の合成
実施例17と同様の操作を19回繰り返して、5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−デオキシチミジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−イソブチリル−デオキシグアノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−イソブチリル−デオキシグアノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−イソブチリル−デオキシグアノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシアデノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシアデノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−イソブチリル−デオキシグアノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシシチジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−N−ベンゾイル−デオキシアデノシン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル−デオキシチミジン 3’−イル 3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル スクシネート(8.55g)を得た。
【0361】
(2)ホスホロチオエート20量体の合成(脱保護)および精製
上記(1)で合成した化合物(100mg、10.3μmol)と30重量%アンモニア水(5.00mL)をオートクレーブに入れて65℃で4時間加熱した後、シリンジフィルター(WHATMAN 25mm GD/X PTFE 0.45μm)により不溶物をろ過した。さらに0.1M酢酸アンモニウム水溶液(50mL)で希釈し、C−18カートリッジ精製を行い、得られた溶出液を凍結乾燥し、目的物である デオキシチミジニル−[3’→5’]−デオキシシチジニル−[3’→5’]−デオキシシチジニル−[3’→5’]−デオキシシチジニル−[3’→5’]−デオキシグアニジル−[3’→5’]−デオキシシチジニル−[3’→5’]−デオキシシチジニル−[3’→5’]−デオキシチミジニル−[3’→5’]−デオキシグアニジル−[3’→5’]−デオキシチミジニル−[3’→5’]−デオキシグアニジル−[3’→5’]−デオキシアデニリル−[3’→5’]−デオキシシチジニル−[3’→5’]−デオキシアデニリル−[3’→5’]−デオキシチミジニル−[3’→5’]−デオキシグアニジル−[3’→5’]−デオキシシチジニル−[3’→5’]−デオキシアデニリル−[3’→5’]−デオキシチミジニル−[3’→5’]−デオキシチミジンを得た。
HPLC(shodex ODP(4.6φ×150mm)、flow rate 0.5mL/min、15mM TEA+20mM HFIP/MeOH=95/5、15mM TEA+20mM HFIP/MeOH=50/50 gradient:0−7.4min;0 to 60%、7.5 to 11min;100%、λ=254nm):Rt=6.26min(73%);
TOF/MS:6344.59[M−H]
【0362】
実施例19:沈殿促進剤を用いたホスホロチオエート2量体の液中連続合成
【0363】
【化53】
【0364】
アルゴン雰囲気下、5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)デオキシチミジン−3’−イル−ジイソプロピル−4−[3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシカルボニル]フェニル シラン(330mg,200μmol)、実施例7で合成した沈殿促進剤である3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル アセテート(290mg,303μmol)をジクロロメタン(5.0mL)に溶解し、インドール(469mg,4.00mmol)、トリフルオロ酢酸(30.6μL,400μmol)を加えて室温で2時間攪拌し、反応の完結を薄層クロマトグラフィーにより確認した。反応混合液を1−メチルイミダゾール(34.8μL,439μmol)で中和した後、5−ベンジルチオ−1H−テトラゾール(115mg,600μmol)、5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)デオキシチミジン−3’−[O−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト(447mg,600μmol)のアセトニトリル溶液を加え、室温で60分間攪拌し、薄層クロマトグラフィーにより反応の完結を確認した。さらに、3−[(N,N−ジメチルアミノメチリデン)アミノ]−3H−1,2,4−ジチアゾール−5−チオン(136mg,662μmol)を加えて室温で30分間攪拌した後、反応液中にアセトニトリル(30mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗を用いた吸引ろ取後、乾燥して5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−デオキシチミジン−3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン−3’−イル [3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル] スクシネート(398mg,収率98%)を白色固体として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=0.88(t,9H,J=6.6Hz,−CH),1.00−1.07(m,12H,−Si−CH−(C),1.21−2.00(m,96H,−OCH(C15CH),2.35−2.50(m,3H,2’−H),2.56−2.60(m,2H,2’−H+5’−H),2.71(m,1H,5’−H),3.41−3.46(m,2H,5’−H),3.78(s,6H,DMTr−OC),3.93−3.99(m,6H,−OC(CH15CH),4.11−4.30(m,6H,3’−H,4’−H,−CCN),4.51−4.60(m,1H,4’−H),5.24(s,2H,Ar−CH−O−),5.32(m,1H,3’−H),6.28(m,1H,1H’−H),6.36(m,1H,1H’−H),6.64(s,2H,Ar−H),6.84(m,4H,DMTr−H),7.22−7.63(m,11H,−Si−Ar,DMTr−H),8.05−8.08(m,2H,−Si−Ar),8.58−8.95(m,2H,N−H)
【0365】
実施例20:沈殿促進剤を用いたホスホロチオエート2量体の液中連続合成
【0366】
【化54】
【0367】
アルゴン雰囲気下、5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−N3−3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンゾイル−デオキシチミジン−3’−イル−t−ブチル−ジメチルシラン(312mg,199μmol)、実施例7で合成した沈殿促進剤である3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル アセテート(287mg,300μmol)をジクロロメタン(5.0mL)に溶解し、インドール(466mg,3.98mmol)、トリフルオロ酢酸(30.6μL,398μmol)を加えて室温で2時間攪拌し、反応の完結を薄層クロマトグラフィーにより確認した。反応混合液を1−メチルイミダゾール(34.8μL,439μmol)で中和した後、5−ベンジルチオ−1H−テトラゾール(115mg,600μmol)、5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)デオキシチミジン−3’−[O−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト(447g,600μmol)のアセトニトリル溶液を加え、室温で60分間攪拌し、薄層クロマトグラフィーにより反応の完結を確認した。さらに、3−[(N,N−ジメチルアミノメチリデン)アミノ]−3H−1,2,4−ジチアゾール−5−チオン(136mg,662μmol)を加えて室温で30分間攪拌した後、反応液中にアセトニトリル(30mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗を用いて吸引ろ取した後、乾燥して5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−デオキシチミジン−3’−[O−(2−シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン−3’−イル [3,4,5−トリ(オクタデシルオキシ)ベンジル] スクシネート(382mg,収率99%)を白色固体として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=−0.01(S,3H,Si−CH),0.00(S,3H,Si−CH),0.75−0.81(m,18H,−OCH(CH15+Si−C(C),1.05−1.73(m,90H,−OCH(C15CH),2.08(m,1H,2’−H),2.22(m,1H,2’−H),2.34(m,1H,2’−H),2.53−2.62(m,2H,2’−H+5’−H),2.70(t,1H,J=6.0Hz,5’−H),3.25−3.51(m,2H,5’−H),3.71(d,6H,J=1.3Hz,DMTr−OCH),3.87−3.98(m,7H,−OC(CH15CH+3’−H),4.10−4.33(m,6H,−CCN+2×4’−H),5.25(dt,1H,J=7.9,15.3Hz,3’−H),6.17(td,1H,J=2.2,6.6Hz,1’−H),6.30(dd,J=5.4,8.8,23.6Hz,1’−H),6.76(s,2H,Ar−H),6.78(s,2H,DMTr−H),7.05−7.39(m,11H,DMTr−Ar−),7.39(s,1H,N6−H),7.47(d,1H,J=8.0Hz,N6−H),8.45(m,1H,N3−H)
【産業上の利用可能性】
【0368】
本発明の沈殿促進剤を用いれば、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基を1個以上有する有機基で保護された有機化合物を溶媒から沈殿させる際に、該有機化合物の回収率を向上させることができるため、本発明の沈殿促進剤は、該有機化合物の合成、特にオリゴヌクレオチドの合成に有用である。
【0369】
本願は、日本で出願された特願2015−009720を基礎としており、その内容は本願明細書に全て包含される。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]