特許第6733595号(P6733595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6733595フィルタ再生制御装置およびフィルタ再生制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6733595
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】フィルタ再生制御装置およびフィルタ再生制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/025 20060101AFI20200728BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   F01N3/025 101
   F01N3/035 E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-85341(P2017-85341)
(22)【出願日】2017年4月24日
(65)【公開番号】特開2018-184841(P2018-184841A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】景山 遊大
(72)【発明者】
【氏名】大石 和貴
【審査官】 坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−293340(JP,A)
【文献】 特開2007−32366(JP,A)
【文献】 特開2007−247595(JP,A)
【文献】 特開2011−153537(JP,A)
【文献】 特開2008−121629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/025,3/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関の排ガスの流路において触媒の下流側に設けられ、前記排ガスに含まれるPMを捕集するフィルタを、燃料の噴射により強制的に再生させるフィルタ再生の実行を制御するフィルタ再生制御装置であって、
前記車両が定常走行中である場合、前記フィルタ再生が終了してから次のフィルタ再生が開始されるまでの間に、所定時間の間、所定量の前記燃料を噴射する温度判定用噴射を実行するように燃料噴射装置を制御する制御部と、
前記温度判定用噴射の実行後の前記フィルタの上流側の温度が予め定められた基準温度より低いか否かを判定する判定部と、
を有し、
前記制御部は、
前記温度が前記基準温度以上である場合、通常フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御する一方、前記温度が前記基準温度より低い場合、特別フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御し、
前記通常フィルタ再生は、
第1の時間の間、第1の量の前記燃料を噴射する動作であり、
前記温度判定用噴射は、
前記第1の時間よりも短い第2の時間の間、前記第1の量より少ない第2の量の前記燃料を噴射する動作であり、
前記特別フィルタ再生は、
前記第1の時間よりも長い第3の時間の間、前記第1の量の前記燃料を噴射する動作、前記第1の時間の間、前記第1の量よりも多い第3の量の前記燃料を噴射する動作、または、前記第3の時間の間、前記第3の量の前記燃料を噴射する動作、のいずれかである、
フィルタ再生制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記温度が前記基準温度より低い場合、前記特別フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御する代わりに、または、前記特別フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御するとともに、前記フィルタ再生が終了してから次のフィルタ再生が開始されるまでの間隔を短縮する間隔短縮制御を実行する、
請求項1に記載のフィルタ再生制御装置。
【請求項3】
前記触媒は、酸化触媒または吸蔵型窒素酸化物還元触媒である、
請求項1または2に記載のフィルタ再生制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関は、ディーゼルエンジンであり、
前記フィルタは、DPFである、
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルタ再生制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関は、ガソリンエンジンであり、
前記フィルタは、GPFである、
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルタ再生制御装置。
【請求項6】
車両の内燃機関の排ガスの流路において触媒の下流側に設けられ、前記排ガスに含まれるPMを捕集するフィルタを、燃料の噴射により強制的に再生させるフィルタ再生の実行を制御するフィルタ再生制御方法であって、
前記車両が定常走行中である場合、前記フィルタ再生が終了してから次のフィルタ再生が開始されるまでの間に、所定時間の間、所定量の前記燃料を噴射する温度判定用噴射を実行するように燃料噴射装置を制御するステップと、
前記温度判定用噴射の実行後の前記フィルタの上流側の温度が予め定められた基準温度より低いか否かを判定するステップと、
前記温度が前記基準温度以上である場合、通常フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御する一方、前記温度が前記基準温度より低い場合、特別フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御するステップと、を有し、
前記通常フィルタ再生は、
第1の時間の間、第1の量の前記燃料を噴射する動作であり、
前記温度判定用噴射は、
前記第1の時間よりも短い第2の時間の間、前記第1の量より少ない第2の量の前記燃料を噴射する動作であり、
前記特別フィルタ再生は、
前記第1の時間よりも長い第3の時間の間、前記第1の量の前記燃料を噴射する動作、前記第1の時間の間、前記第1の量よりも多い第3の量の前記燃料を噴射する動作、または、前記第3の時間の間、前記第3の量の前記燃料を噴射する動作、のいずれかである、
フィルタ再生制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタの再生を制御するフィルタ再生制御装置およびフィルタ再生制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter:以下、PMという)を捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)が知られている。
【0003】
DPFで捕集されたPMのうち、一部は、ディーゼルエンジンから排出される高温の排ガスによって燃焼し(パッシブ再生、または、連続再生と呼ばれる)、残りは、DPFに堆積する。そして、PMの堆積量が一定量を超えると、例えば、ディーゼルエンジンの出力の低下、燃費の低下、および、PMの異常燃焼によるDPFの損傷などが発生する。
【0004】
そこで、DPFに堆積したPMを、燃料噴射(例えば、ポスト噴射または排気管噴射)により強制的に燃焼させることで、フィルタを再生させるフィルタ再生(強制再生ともいう)を実行することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−54631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、硫黄濃度が高い燃料を使用した場合、DPFが硫黄被毒し、DPFの性能が著しく低下するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、フィルタの硫黄被毒を防止できるフィルタ再生制御装置およびフィルタ再生制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフィルタ再生制御装置は、車両の内燃機関の排ガスの流路において触媒の下流側に設けられ、前記排ガスに含まれるPMを捕集するフィルタを、燃料の噴射により強制的に再生させるフィルタ再生の実行を制御するフィルタ再生制御装置であって、前記車両が定常走行中である場合、前記フィルタ再生が終了してから次のフィルタ再生が開始されるまでの間に、所定時間の間、所定量の前記燃料を噴射する温度判定用噴射を実行するように燃料噴射装置を制御する制御部と、前記温度判定用噴射の実行後の前記フィルタの上流側の温度が予め定められた基準温度より低いか否かを判定する判定部と、を有し、前記制御部は、前記温度が前記基準温度以上である場合、通常フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御する一方、前記温度が前記基準温度より低い場合、特別フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御し、前記通常フィルタ再生は、第1の時間の間、第1の量の前記燃料を噴射する動作であり、前記温度判定用噴射は、前記第1の時間よりも短い第2の時間の間、前記第1の量より少ない第2の量の前記燃料を噴射する動作であり、前記特別フィルタ再生は、前記第1の時間よりも長い第3の時間の間、前記第1の量の前記燃料を噴射する動作、前記第1の時間の間、前記第1の量よりも多い第3の量の前記燃料を噴射する動作、または、前記第3の時間の間、前記第3の量の前記燃料を噴射する動作、のいずれかである。
【0009】
本発明のフィルタ再生制御方法は、車両の内燃機関の排ガスの流路において触媒の下流側に設けられ、前記排ガスに含まれるPMを捕集するフィルタを、燃料の噴射により強制的に再生させるフィルタ再生の実行を制御するフィルタ再生制御方法であって、前記車両が定常走行中である場合、前記フィルタ再生が終了してから次のフィルタ再生が開始されるまでの間に、所定時間の間、所定量の前記燃料を噴射する温度判定用噴射を実行するように燃料噴射装置を制御するステップと、前記温度判定用噴射の実行後の前記フィルタの上流側の温度が予め定められた基準温度より低いか否かを判定するステップと、前記温度が前記基準温度以上である場合、通常フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御する一方、前記温度が前記基準温度より低い場合、特別フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御するステップと、を有し、前記通常フィルタ再生は、第1の時間の間、第1の量の前記燃料を噴射する動作であり、前記温度判定用噴射は、前記第1の時間よりも短い第2の時間の間、前記第1の量より少ない第2の量の前記燃料を噴射する動作であり、前記特別フィルタ再生は、前記第1の時間よりも長い第3の時間の間、前記第1の量の前記燃料を噴射する動作、前記第1の時間の間、前記第1の量よりも多い第3の量の前記燃料を噴射する動作、または、前記第3の時間の間、前記第3の量の前記燃料を噴射する動作、のいずれかである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フィルタの硫黄被毒を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る後処理装置とその周辺構成の一例を示す概念図
図2】本発明の実施の形態に係るECUの構成例を示すブロック図
図3】本発明の実施の形態に係るECUの動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
まず、本発明の実施の形態に係る後処理装置とその周辺構成について、図1を用いて説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る後処理装置とその周辺構成の一例を示す概念図である。図1において、実線の矢印は気体の流れを示し、破線の矢印は信号の流れを示している。
【0015】
図1に示す各構成要素は、例えば、車両に搭載される。
【0016】
ディーゼルエンジン(内燃機関の一例。以下、エンジンという)1の上流側には、車両の外部から取り込まれた空気が流れる吸気通路2が接続されている。また、エンジン1の下流側には、排ガスが流れる排気通路3が接続されている。
【0017】
吸気通路2と排気通路3との間には、ターボチャージャ(過給機)4が設けられている。ターボチャージャ4は、吸気通路2に配置されたコンプレッサ4aと、排気通路3に配置された排気タービン4bとを有する。コンプレッサ4aは、排気タービン4bによって同軸駆動される。
【0018】
吸気通路2には、インタークーラ5が設けられている。コンプレッサ4aから吐出された空気は、インタークーラ5で冷却され、エンジン1の各シリンダ(図示略)内の燃焼室(図示略)に流入する。
【0019】
エンジン1には、各シリンダ内の燃焼室に燃料を噴射するコモンレール燃料噴射装置(以下、燃料噴射装置という)6が設けられている。燃料噴射装置6は、ポンプ6a、コモンレール6b、および燃料噴射弁(インジェクタ)6cを有する。
【0020】
例えば、燃料噴射装置6において、ポンプ6aは、ECU7(詳細は図2を用いて後述)からの制御信号に基づいて、燃料が貯留されている燃料タンク8から所定のタイミングで所定量の燃料を汲み上げ、コモンレール6bを介して燃料噴射弁6cに供給する。燃料噴射弁6cは、供給された燃料を、燃焼室に噴射する。
【0021】
排気通路3には、後処理装置として、酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst:以下、DOCという)10およびDPF11が設けられている。DOC10は、DPF11の上流側に設けられている。
【0022】
DOC10は、排ガス中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化除去するとともに、排ガス中の一酸化窒素(NO)を酸化して二酸化窒素(NO)を生成する。
【0023】
DPF11は、上述したとおり、排ガス中に含まれるススなどのPMを捕集し、排ガスから除去する。
【0024】
エンジン1から排出された排ガスは、排気通路3を通って、排気タービン4bを駆動してコンプレッサ4aを同軸駆動させる。その後、排ガスは、DOC10、DPF11の順に流れる。
【0025】
DOC10の下流側かつDPF11の上流側には、DPF11の入口(換言すれば、DOC10の出口)における排ガスの温度を検出する温度センサ12が設けられている。温度センサ12は、検出した温度(以下、検出温度という)を示す信号を、適宜、ECU7へ出力する。
【0026】
以上、本実施の形態に係る後処理装置とその周辺構成について説明した。
【0027】
次に、本実施の形態に係るECU7(フィルタ再生制御装置の一例)の構成について、図2を用いて説明する。
【0028】
ECU7は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、RAM(Random Access Memory)等の作業用メモリ、および通信回路を有する。以下に説明する図2の各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
【0029】
ECU7は、DPF11を強制的に再生させるフィルタ再生の実行を制御する。具体的には、ECU7は、燃料噴射装置6の燃料噴射(例えば、ポスト噴射)の実行を制御する。
【0030】
フィルタ再生は、所定の実行条件が満たされたときに実行される。実行条件は、例えば、車両の走行距離が予め定められた距離を超えること、または、DPF11に堆積したPMの推定量が予め定められた量を超えること、などである。
【0031】
本実施の形態では、ECU7の制御により、上記フィルタ再生として、通常フィルタ再生または特別フィルタ再生のいずれかが実行される。通常フィルタ再生および特別フィルタ再生の詳細については、後述する。
【0032】
図2に示すように、ECU7は、判定部110および制御部120を有する。
【0033】
判定部110は、以下の車速判定および温度判定を行う。
【0034】
[車速判定]
判定部110は、車両が一定速度で走行しているか(定常走行中であるか)否かを判定する。例えば、判定部110は、車速センサ(図示略)により検出された車速が所定時間継続した場合、定常走行中であると判定する。
【0035】
[温度判定]
判定部110は、温度センサ12より検出された検出温度が予め定められた基準温度より低いか否かを判定する。
【0036】
上記基準温度は、例えば予め実施された実験やシミュレーションで得られた値であり、燃料噴射量毎に定められている。
【0037】
制御部120は、以下の通常制御、温度判定用制御、および特別制御を行う。
【0038】
[通常制御]
制御部120は、上記実行条件が満たされた場合、燃料噴射装置6に対し、通常フィルタ再生の実行を指示する通常制御信号を出力する。
【0039】
通常フィルタ再生とは、所定時間(以下、第1の時間という)の間、所定量(以下、第1の量という)の燃料を噴射する動作である。
【0040】
燃料噴射装置6は、通常制御信号を受け取った場合、通常フィルタ再生を実行する。
【0041】
[温度判定用制御]
制御部120は、判定部110によって車両が定常走行中であると判定された場合、通常フィルタ再生または特別フィルタ再生(詳細は後述)のいずれかが終了してから次の通常フィルタ再生または特別フィルタ再生が開始されるまでの間に温度判定用噴射の実行を指示する温度判定用制御信号を燃料噴射装置6へ出力する。
【0042】
温度判定用噴射とは、第1の時間よりも短い時間(以下、第2の時間という)の間、第1の量より少ない量(以下、第2の量という)の燃料を噴射する動作である。
【0043】
燃料噴射装置6は、温度判定用制御信号を受け取った場合、温度判定用噴射を実行する。
【0044】
[特別制御]
制御部120は、判定部110によって温度判定用噴射が実行された後(例えば、直後)の検出温度が基準温度(第2の量の燃料が噴射されたときに本来あるべき温度)より低いと判定された場合、DPF11の性能が低下しているとみなす。
【0045】
そして、制御部120は、上記実行条件が満たされた場合、燃料噴射装置6に対し、特別フィルタ再生の実行を指示する特別制御信号を出力する。
【0046】
特別フィルタ再生とは、第1の時間よりも長い時間(以下、第3の時間という)の間、第1の量の燃料を噴射する動作、第1の時間の間、第1の量よりも多い量(以下、第3の量という)の燃料を噴射する動作(通常フィルタ再生時よりも排ガスの温度を高くする動作)、または、第3の時間の間、第3の量の燃料を噴射する動作、のいずれかである。これらの動作のうちどの動作を特別フィルタ再生とするかは、例えば、ECU7の製造時に設定されてもよいし、車両のユーザ等により設定されてもよい。また、その設定を適宜変更できるようにしてもよい。
【0047】
燃料噴射装置6は、特別制御信号を受け取った場合、特別フィルタ再生を実行する。
【0048】
なお、制御部120は、判定部110によって温度判定用噴射が実行された後(例えば、直後)の検出温度が基準温度以上であると判定された場合、DPF11の性能が低下していないとみなす。この場合、制御部120は、上記実行条件が満たされた場合、燃料噴射装置6に対し、通常フィルタ再生の実行を指示する通常制御信号を出力する。
【0049】
以上、本実施の形態に係るECU7の構成について説明した。
【0050】
次に、本実施の形態に係るECU7(フィルタ再生制御方法の一例)の動作について、図3を用いて説明する。図3のフローは、車両の走行中、繰り返し行われる。
【0051】
まず、判定部110は、車両が定常走行中であるか否かを判定する(ステップS101)。
【0052】
車両が定常走行中ではない場合(ステップS101:NO)、フローは、後述のステップS104へ進む。
【0053】
一方、車両が定常走行中である場合(ステップS101:YES)、制御部120は、通常フィルタ再生または特別フィルタ再生のいずれかが終了してから次の通常フィルタ再生または特別フィルタ再生が開始されるまでの間に温度判定用噴射を実行するように燃料噴射装置6を制御する(ステップS102)。これにより、燃料噴射装置6は、温度判定用噴射を実行する。
【0054】
判定部110は、温度判定用噴射が実行されたときの検出温度が基準温度より低いか否かを判定する(ステップS103)。
【0055】
検出温度が基準温度以上である場合(ステップS103:NO)、または、車両が定常走行中ではない場合(ステップS101:NO)、制御部120は、次に実行すべきフィルタ再生を通常フィルタ再生に決定する(ステップS104)。
【0056】
そして、制御部120は、実行条件が満たされると、通常フィルタ再生を実行するように燃料噴射装置6を制御する(ステップS105)。これにより、燃料噴射装置6は、通常フィルタ再生を実行する。
【0057】
一方、検出温度が基準温度より低い場合(ステップS103:YES)、制御部120は、次に実行すべきフィルタ再生を特別フィルタ再生に決定する(ステップS106)。
【0058】
そして、制御部120は、実行条件が満たされると、特別フィルタ再生を実行するように燃料噴射装置6を制御する(ステップS107)。これにより、燃料噴射装置6は、特別フィルタ再生を実行する。
【0059】
以上、本実施の形態に係るECU7の動作について説明した。
【0060】
詳述してきたように、本実施の形態によれば、車両が定常走行中に、所定のフィルタ再生の終了時から次のフィルタ再生の開始時までの間に温度判定用噴射を実行し、そのときの検出温度が基準温度よりも低い場合、通常フィルタ再生に比べて、燃料噴射時間および燃料噴射量のうち少なくとも一方の値が大きい特別フィルタ再生を実行することを特徴とする。
【0061】
これにより、所定のフィルタ再生の終了時から次のフィルタ再生の開始時までの間に生じうるDPF11の硫黄被毒を防止することができる。また、DOC10の硫黄被毒も防止できる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。以下、各変形例について説明する。
【0063】
[変形例1]
上記実施の形態では、判定部110によって温度判定用噴射が実行されたときの検出温度が基準温度より低いと判定された場合、特別フィルタ再生が行われる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0064】
例えば、判定部110によって温度判定用噴射が実行されたときの検出温度が基準温度より低いと判定された場合、制御部120は、上述した特別制御(特別フィルタ再生を燃料噴射装置6に実行させる制御)の代わりに、間隔短縮制御を行ってもよい。
【0065】
間隔短縮制御とは、所定のフィルタ再生の終了時から次のフィルタ再生の開始時までの間隔(以下、フィルタ再生間隔という)を短縮する制御である。
【0066】
間隔短縮制御を行う場合、制御部120は、例えば、実行条件が満たされたか否かに係わらず、判定部110によって温度判定用噴射が実行されたときの検出温度が基準温度より低いと判定された時点で、次に実行すべきフィルタ再生を通常フィルタ再生に決定し、通常フィルタ再生を実行するように燃料噴射装置6を制御してもよい。
【0067】
なお、上記説明では、特別制御の代わりに間隔短縮制御を行う場合を例に挙げたが、それら2つの制御を組み合わせてもよい。その場合、制御部120は、例えば、実行条件が満たされたか否かに係わらず、判定部110によって温度判定用噴射が実行されたときの検出温度が基準温度より低いと判定された時点で、次に実行すべきフィルタ再生を特別フィルタ再生に決定し、特別フィルタ再生を実行するように燃料噴射装置6を制御してもよい。
【0068】
[変形例2]
上記実施の形態では、フィルタ再生時の燃料噴射がポスト噴射である場合を例に挙げて説明したが、排気通路3に設けられた燃料噴射弁(図示略)により燃料噴射(いわゆる排気管噴射)を行ってもよい。
【0069】
[変形例3]
上記実施の形態では、DPF11の上流側にDOC10が備えられる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、図1において、DOC10の代わりに、吸蔵型窒素酸化物還元触媒(LNT)が備えられてもよい。その場合、LNTの硫黄被毒を防止できる。
【0070】
[変形例4]
上記実施の形態では、内燃機関がディーゼルエンジンである場合を例に挙げて説明したが、内燃機関はガソリンエンジンであってもよい。その場合、図1において、DPF11の代わりに、ガソリンエンジンの排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するGPF(Gasoline Particulate Filter)が備えられる。よって、GPFの硫黄被毒を防止できる。
【0071】
<本開示のまとめ>
本発明のフィルタ再生制御装置は、車両の内燃機関の排ガスの流路において触媒の下流側に設けられ、前記排ガスに含まれるPMを捕集するフィルタを、燃料の噴射により強制的に再生させるフィルタ再生の実行を制御するフィルタ再生制御装置であって、前記車両が定常走行中である場合、前記フィルタ再生が終了してから次のフィルタ再生が開始されるまでの間に、所定時間の間、所定量の前記燃料を噴射する温度判定用噴射を実行するように燃料噴射装置を制御する制御部と、前記温度判定用噴射の実行後の前記フィルタの上流側の温度が予め定められた基準温度より低いか否かを判定する判定部と、を有し、前記制御部は、前記温度が前記基準温度以上である場合、通常フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御する一方、前記温度が前記基準温度より低い場合、特別フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御し、前記通常フィルタ再生は、第1の時間の間、第1の量の前記燃料を噴射する動作であり、前記温度判定用噴射は、前記第1の時間よりも短い第2の時間の間、前記第1の量より少ない第2の量の前記燃料を噴射する動作であり、前記特別フィルタ再生は、前記第1の時間よりも長い第3の時間の間、前記第1の量の前記燃料を噴射する動作、前記第1の時間の間、前記第1の量よりも多い第3の量の前記燃料を噴射する動作、または、前記第3の時間の間、前記第3の量の前記燃料を噴射する動作、のいずれかである。
【0072】
なお、上記フィルタ再生制御装置において、前記制御部は、前記温度が前記基準温度より低い場合、前記特別フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御する代わりに、または、前記特別フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御するとともに、前記フィルタ再生が終了してから次のフィルタ再生が開始されるまでの間隔を短縮する間隔短縮制御を実行してもよい。
【0073】
また、上記フィルタ再生制御装置において、前記触媒は、酸化触媒または吸蔵型窒素酸化物還元触媒であってもよい。
【0074】
また、上記フィルタ再生制御装置において、前記内燃機関は、ディーゼルエンジンであり、前記フィルタは、DPFであってもよい。
【0075】
また、上記フィルタ再生制御装置において、前記内燃機関は、ガソリンエンジンであり、前記フィルタは、GPFであってもよい。
【0076】
本発明のフィルタ再生制御方法は、車両の内燃機関の排ガスの流路において触媒の下流側に設けられ、前記排ガスに含まれるPMを捕集するフィルタを、燃料の噴射により強制的に再生させるフィルタ再生の実行を制御するフィルタ再生制御方法であって、前記車両が定常走行中である場合、前記フィルタ再生が終了してから次のフィルタ再生が開始されるまでの間に、所定時間の間、所定量の前記燃料を噴射する温度判定用噴射を実行するように燃料噴射装置を制御するステップと、前記温度判定用噴射の実行後の前記フィルタの上流側の温度が予め定められた基準温度より低いか否かを判定するステップと、前記温度が前記基準温度以上である場合、通常フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御する一方、前記温度が前記基準温度より低い場合、特別フィルタ再生を実行するように前記燃料噴射装置を制御するステップと、を有し、前記通常フィルタ再生は、第1の時間の間、第1の量の前記燃料を噴射する動作であり、前記温度判定用噴射は、前記第1の時間よりも短い第2の時間の間、前記第1の量より少ない第2の量の前記燃料を噴射する動作であり、前記特別フィルタ再生は、前記第1の時間よりも長い第3の時間の間、前記第1の量の前記燃料を噴射する動作、前記第1の時間の間、前記第1の量よりも多い第3の量の前記燃料を噴射する動作、または、前記第3の時間の間、前記第3の量の前記燃料を噴射する動作、のいずれかである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、排ガスに含まれるPMを捕集するフィルタの強制再生を制御するフィルタ再生制御装置およびフィルタ再生制御方法に適用できる。
【符号の説明】
【0078】
1 ディーゼルエンジン(内燃機関の一例)
2 吸気通路
3 排気通路
4 ターボチャージャ
4a コンプレッサ
4b 排気タービン
5 インタークーラ
6 燃料噴射装置
6a ポンプ
6b コモンレール
6c 燃料噴射弁
7 ECU(フィルタ再生制御装置の一例)
8 燃料タンク
10 DOC(触媒の一例)
11 DPF(フィルタの一例)
12 温度センサ
110 判定部
120 制御部
図1
図2
図3