(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
幅25mm・長さ70mmの大きさの前記積層体を用意し、当該積層体の前記接着層と厚さ50μmのポリイミドフィルムとを150℃、1MPa、30分の条件で熱圧着した試料について、23℃、50%RHの雰囲気下で、剥離速度50mm/分、剥離角度90°で、前記接着層と前記ポリイミドフィルムとの界面を剥離したときの接着力が4N/25mm以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の電磁波シールド性配線回路基板。
前記接着層の熱圧着前の厚みを15μmとし、且つ前記積層体に直径5mmの貫通穴を形成した後に、当該積層体の前記接着層とポリイミドフィルムとを150℃、2MPa、30分の条件で熱圧着して室温に冷却した試料において、前記貫通穴の内側への当該接着層のはみ出し量が2.0mm未満である請求項1〜8のいずれか1項に記載の電磁波シールド性配線回路基板。
幅15mm、長さ120mmの大きさの前記積層体を用意し、当該積層体の前記接着層とポリイミドフィルムとを150℃、2MPa、30分の条件で熱圧着して室温に冷却した試料について、JIS C6471に準拠して、曲率半径0.38mm、荷重500g、速度180回/分の条件でMIT試験機を使用して耐折性を測定したときに、断線までの屈曲回数が2500回以上である請求項1〜9のいずれか1項に記載の電磁波シールド性配線回路基板。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。尚、以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、これに限定されるものではない。また、本明細書において「任意の数A〜任意の数B」なる記載は、当該範囲に数Aが下限値として、数Bが上限値として含まれる。また、本明細書における「シート」とは、JISにおいて定義される「シート」のみならず、「フィルム」も含むものとする。また、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。
【0017】
本発明に係る電磁波シールドシート10は、
図2に示すように、接着層1、導電層2、絶縁層3が少なくともこの順に積層された積層体からなる。電磁波シールドシート10は、部品(不図示)上に接着層1を配置し、接合処理により当該部品と接合することができる。接合処理は、接合できればよいが、熱処理または熱圧着処理が好適である。絶縁層3は、電磁波シールドシート10を保護する役割を担い、導電層2より表層側に配置される。導電層2は、絶縁層3と接着層1の間に挟持された層であり、主として電磁波をシールドする役割を担う。プリント配線板においては、部品内部の信号配線等から発生する電磁ノイズをシールドしたり、外部からの信号を遮蔽する役割を担う。
【0018】
電磁波シールドシート10は、更に他の層を備えていてもよい。例えば、絶縁層3の表層に耐擦傷性、水蒸気バリア性、酸素バリア性フィルム等の他の層や、接着層1と導電層2および/または導電層2と絶縁層3の間に磁界カットを強化するフィルム等を積層してもよい。
【0019】
本発明の電磁波シールドシートは、電磁波(電界波および磁界波)を放出する部品の輻射電磁波防止および外部からの磁場や電波による誤動作防止に好適なものである。部品としては、パーソナルコンピュータ、モバイル機器或いはデジタルカメラ等に内蔵されるハードディスク、ケーブルおよびプリント配線板等が例示できる。また、カードリーダ等にも好適である。以下、各層について詳述する。
【0020】
[導電層] 導電層2は、層内において導電性を示す層であればよく特に限定されないが、金属層およびバインダー樹脂中に導電性フィラーが含有された層が例示できる。導電層の製造方法は、公知の方法を用いることができる。金属層の製造方法は、金属箔を用いる方法の他、真空蒸着、スパッタリング、CVD法、MO(メタルオーガニック)、メッキ等で形成することができる。これらの中でも量産性を考慮すれば真空蒸着またはメッキが好ましい。バインダー樹脂中に導電性フィラーが含有された層の製造方法は、例えば、絶縁膜上に導電性フィラーを含有した樹脂組成物を塗工・乾燥することにより得ることができる。導電層2は、単層でもよいし、同一または異なる種類を複数層積したものでもよい。
【0021】
金属箔の好適な例として、アルミニウム、銅、銀、金等が例示できる。シールド性、接続信頼性およびコストの面から銅、銀、アルミニウムがより好ましく、銅が更に好ましい。銅は、例えば、圧延銅箔または電解銅箔を使用することが好ましく、電解銅箔を使用すると導電層をより薄くできるためより好ましい。また、金属箔はメッキで形成したものでもよい。金属箔の厚みの下限は0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。一方、金属箔の厚みの上限は、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0022】
真空蒸着により得られる金属層の好適な例として、アルミニウム、銅、銀、金が例示できる。これらのうち、銅、銀がより好ましい。また、スパッタにより得られる金属層の好適な例として、アルミニウム、銅、銀、クロム、金、鉄、パラジウム、ニッケル、白金、銀、亜鉛、酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫が例示できる。これらのうち、銅、銀がより好ましい。真空蒸着およびスパッタにより得られる金属層の厚みの下限は、0.005μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、上限は、3μm以下が好ましい。
【0023】
[絶縁層] 絶縁層は、絶縁性樹脂組成物を成形した絶縁性シートであり、導電層を保護する役割および表層の絶縁性を確保する役割を担う。絶縁性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、後述する接着層で例示できる樹脂を好適に用いることができる。また、絶縁層はポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂フィルムを使用することができる。
【0024】
絶縁性樹脂組成物には、樹脂に加えてシランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤などを配合できる。
【0025】
絶縁層の厚みは用途により変動し得るが、2〜10μmが好ましい。前記厚みとすることにより電磁波シールドシートの諸物性のバランスが取りやすくなる。
【0026】
[接着層] 接着層1は、
(I)熱可塑性樹脂(A)、および
(II)熱硬化性樹脂(B)および熱硬化性樹脂(B)に対する硬化性化合物(C)の少なくとも一方を含むものであり、(I)、(II)或いは(I)と(II)の混合物を熱圧着した後の被膜(X)が、以下の(i)および(ii)を満たすものを用いる。
(i)比誘電率が、周波数1GHz、23℃において1〜3である。
(ii)誘電正接が、周波数1GHz、23℃において0.0001〜0.02である。
尚、熱硬化性樹脂(B)とは、硬化性化合物(C)と硬化反応する部位が少なくとも一部に含まれている樹脂全般を含むものとする。
【0027】
尚、本願明細書の比誘電率および誘電正接は、以下の方法により求めた値をいう。即ち、剥離処理されたポリエステルフィルム上に、(I)、(II)或いは(I)と(II)の混合物を塗工し、乾燥後の膜厚が70μmになるように均一に塗工して乾燥させ、塗膜を得る。そして、得られた塗膜を積層して真空ラミネートし、180℃、2.0MPaの条件で1時間熱硬化させた。次いで、両面の剥離フィルムを剥がして評価用試験片を作製した。この試験片について、エー・イー・ティー社製の比誘電率測定装置(空洞共振器タイプADMS01Oc)を用いて、測定温度23℃、測定周波数1GHzにおける比誘電率および誘電正接を求めた。
【0028】
上記比誘電率の下限は、1以上がより好ましく、2以上が更に好ましく、上限は3以下がより好ましく、2.8以下が更に好ましい。また、上記誘電正接は、0が好ましいが技術的には困難であるため、かかる観点から誘電正接の下限は0.0001以上が好ましい。一方、その上限は0.02以下がより好ましく、0.01以下が更に好ましい。
【0029】
尚、後述するように、本発明における接着層においては、バインダー成分に導電性フィラーを含有させることができる。導電性フィラーを含有させると、比誘電率および誘電正接の値は、導電性フィラーを含有させる前よりも値が大きくなるが、本発明者らが検討を重ねたところ、(I)、(II)或いは(I)と(II)の混合物を熱圧着した後の被膜(X)が、上記(i)および(ii)を満たすことにより、導電性フィラーを加えた場合であっても驚くべきことに本願発明の課題を解決できることがわかった。これは、接着層の(I)、(II)或いは(I)と(II)の混合物の誘電特性を制御することで、導電性フィラーを添加した導電層において、シールド性を高める効果と、バインダーである樹脂の低誘電効果との相乗効果により、本願発明の課題を解決できたものと考えられる。
【0030】
導電フィラーを含ませた接着層、即ち、異方導電性を示す接着層の場合、接着層に導電性フィラーを混合させた後の比誘電率の下限は、1以上がより好ましく、2以上が更に好ましく、上限は10以下がより好ましく、9以下が更に好ましい。また、接着層に導電フィラーを混合させた後の誘電正接は、0が好ましいが技術的には困難であるため、かかる観点から誘電正接の下限は0.0001以上が好ましい。一方、その上限は0.05以下がより好ましく、0.03以下が更に好ましい。
【0031】
接着層1の厚みは、電磁波シールドシートをフレキシブルプリント配線板に用いる場合には、フレキシブル性を確保する観点から、50μm以下とすることが好ましく、20μm以下とすることがより好ましい。また、接着力を確保する観点から、3μm以上とすることが好ましく、6μm以上とすることがより好ましい。
【0032】
硬化性化合物(C)は、熱硬化性樹脂(B)100質量部に対して0.2質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることが更に好ましい。また、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましい。硬化性化合物(C)を0.2〜50質量部の範囲にすることにより、架橋密度を適切にし、吸湿性や接着性を良好に保つことができる。また、硬化物の弾性率を適切に保ち、耐折性を良好にすることができる。
【0033】
電磁波シールドシートをプリント配線板等の部品と接合する場合には、ハンダリフロー炉等の加熱に耐え得る積層体であることが求められる。かかる観点から、接着層1の5%重量熱分解温度が240℃以上であることが好ましく、260℃以上であることがより好ましく、280℃以上であることが更に好ましい。
【0034】
熱可塑性樹脂(A)としては、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ブタジエンゴム、エステルアミド、イソプレンゴム、セルロース、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂等が例示できる。熱可塑性樹脂(A)は、1種を単独でまたは複数種を併用して用いることができる。
【0035】
熱硬化性樹脂(B)としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環オレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミドベンズオキサゾール樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフマレート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂およびシリコン樹脂が例示できる。熱硬化性樹脂(B)は、1種を単独でまたは複数種を併用して用いることができる。
【0036】
硬化性化合物(C)は,硬化性樹脂(B)に対して硬化に寄与することができる化合物全般をいう。熱硬化性樹脂(B)の硬化性化合物(C)との反応部位は限定されないが、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、シアノ基、イソシアネート基、アリル基、ビニル基などが挙げられる。導電層2との接着性を良好に発揮させる観点、および部品、例えば、プリント配線基板のカバーレイフィルム(例えば、ポリイミド樹脂)との接着性を発現させる観点からは、水酸基およびカルボキシル基を少なくとも1種含む硬化性樹脂(B)が好ましい。硬化性樹脂(B)中の硬化性官能基の種類は、1または複数とすることができる。
【0037】
硬化性化合物(C)は、熱硬化性樹脂(B)の官能基と反応可能な部位を2つ以上有しているものであればよく、特に限定されない。好適な硬化性化合物(C)として、エポキシ化合物、有機金属化合物(金属キレート化合物)、酸無水物基含有化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、アミン化合物、ポリオール化合物、メラミン化合物、シラン系化合物、カルボジイミド系化合物、フェノール化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、β―ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物等が例示できる。これらの中でも、接着性および耐熱性の両立を図る観点から、エポキシ化合物、有機金属化合物、アジリジン化合物、イソシアネート化合物が好ましい。硬化性化合物(C)は、1種を単独でまたは複数種を併用して用いることができる。
【0038】
熱硬化性樹脂(B)の硬化性官能基が水酸基の場合、硬化性化合物(C)は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、有機金属化合物(金属キレート化合物)が好ましい。また、硬化性官能基(B)がアミノ基の場合、硬化性化合物(C)は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、有機金属化合物が好ましい。更に、硬化性樹脂(B)の硬化性官能基がカルボキシル基の場合、硬化性化合物(C)は、エポキシ化合物、有機金属化合物が好ましい。
【0039】
接着層は、これらのうちでも特に、熱硬化性樹脂(B)がカルボキシル基含有樹脂を含み、硬化性化合物(C)として、エポキシ化合物を含み、更に、有機金属化合物およびイソシアネート化合物の少なくとも一方を含むものが好ましい。エポキシ化合物は、カルボン酸1当量に対して好ましくは0.5〜10倍、より好ましくは1〜5倍のエポキシ当量を配合する。有機金属化合物およびイソシア
ネート化合物のトータルの硬化剤当量は、カルボン酸1当量に対して0.1〜5倍で配合することが好ましく、0.5〜3倍の範囲で配合することがより好ましい。上述したように硬化性化合物(C)を使用することで、熱硬化後の未反応官能基数を抑制できるため、誘電率および誘電正接がより低下する。
【0040】
好適な組み合わせとして、カルボキシル基を有する熱硬化性樹脂(B)とエポキシ化合物および有機金属化合物を含む硬化性化合物(C)との組み合わせや、フェノール性水酸基を有する熱硬化性樹脂(B)とポリイソシアネート基とを有する硬化性化合物(C)との組み合わせ、エポキシ基を有する熱可塑性樹脂(B)と有機金属化合物を含む硬化性化合物(C)との組み合わせ等が挙げられる。
【0041】
硬化性化合物(C)は、単独もしくは併用して用いることができる。併用して用いる場合の好ましい組み合わせとしては、エポキシ化合物と有機金属化合物、エポキシ化合物とアジリジン化合物と有機金属化合物等が例示できる。併用して用いることにより、架橋密度を上げ、加熱圧着時の接着層の層外へのはみ出しや耐熱性を効果的に向上できる。
【0042】
前記イソシアネート化合物は、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物およびこれらポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体、更にはこれらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。
【0043】
前記エポキシ化合物は、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン等が挙げられる。
【0044】
前記ポリカルボジイミドは、日清紡績社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01、03、05、07、09は、有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0045】
前記アジリジン化合物は、例えば、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0046】
前記有機金属化合物は、金属と有機物からなる化合物であり、硬化性樹脂(B)の官能基と反応して架橋を形成するものである。有機金属化合物の種類は特に限定されないが、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物などが挙げられる。また、金属と有機物の結合は金属−酸素結合でもよく、金属−炭素結合に限定されるものではない。加えて、金属と有機物の結合様式は化学結合、配位結合、イオン結合のいずれであってもよい
【0047】
前記有機アルミニウム化合物はアルミニウムキレート化合物が好ましい。アルミニウムキレート化合物は、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジイソブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジ−sec−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム−sec−ブチレート、アルミニウムエチレート等が挙げられる。
【0048】
前記有機チタン化合物はチタンキレート化合物が好ましい。チタンキレート化合物は、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタン−1.3−プロパンジオキシビス(エチルアセトアセテート)、ポリチタンアセチルアセチルアセトナート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、ダーシャリーアミルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、チタンイソステアレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物はジルコニウムキレート化合物が好ましい。ジルコニウムキレート化合物は、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも有機チタン化合物が熱硬化反応性と硬化後の耐熱性の点から好ましい。
【0049】
上記(I)または(II)に用いる樹脂は、上記(i)(ii)を満たすものであれば特に限定されないが、耐熱性の観点からは、(II)の熱硬化性樹脂(B)および硬化性化合物(C)を用いることが好ましい。
【0050】
上記(II)を含む接着層において、高周波用途の部品に用いる場合においても良好な伝送特性を維持しつつ、より優れた接着性能を発揮できる電磁波シールドシートを提供する観点から、接着層の熱硬化後の被膜(Y)が、以下の(a)、(b)の少なくとも一方を満たすものを用いることが好ましい。
【0051】
(a)炭素原子数に対する窒素原子数の割合(以下、[N]とも表記する)が1〜10%であり、且つ炭素原子数に対する酸素原子数の割合(以下、[O]とも表記する)が3〜20%である。
(b)接着層の熱硬化後の被膜(Y)において、カルボキシル基および水酸基から選択される少なくともいずれかの基を含み、カルボキシル基を含む場合には、炭素数に対するカルボキシル基数の割合(以下、[COOH]とも表記する)が0.01〜15%であり、水酸基を含む場合には、炭素数に対する水酸基数の割合(以下、[OH]とも表記する)が0.5〜20%の範囲である。ここで、接着層の熱硬化後の被膜(Y)とは、熱硬化性樹脂(B)が硬化性化合物(C)により充分に硬化せしめられている被膜(Y)をいう。但し、[COOH]と[OH]の合計が35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることが
さらに好ましい。
【0052】
上記(a)の範囲の被膜(Y)を用いることにより、接着性をより良好に保つことができる。上記[N]および[O]は、X線光電子分光分析(ESCA)による1S軌道スペクトルのピーク面積より求めた値であり、後述する実施例に記載の方法で求める。[N]の下限は、1.5%以上がより好ましく、2%以上が更に好ましく、上限は8%以下がより好ましく、7%以下が更に好ましい。また、[O]の下限は、3.5%以上がより好ましく、4%以上が更に好ましく、上限は18%以下がより好ましく、15%以下が更に好ましい。
【0053】
上記(b)の範囲の被膜(Y)を用いることにより、接着層の接着力を維持しつつ吸水率を低下させ、耐湿性の高い接着層を提供できる。
[OH]の下限は0.7%以上がより好ましく、1%以上が更に好ましく、上限は18%以下がより好ましく、15%以下が更に好ましい。また、[COOH]の下限は、0.05%以上がより好ましく、0.1%以上が更に好ましく、上限は13%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましい。
【0054】
接着層1は、導電性フィラーを含有させることにより異方導電性を有する接着層とすることができる。ここで、異方導電性とは、厚み方向に電気的な導電状態が確保された層であり、面内方向にも導通が図られている等方導電性とは異なるものである。導電性を付与する手法として、等方導電性を有する接着層を用いる態様も考えられるが、等方導電層の場合、高周波信号が流れた際に信号回路と等方導電層間の水平方向に電流が流れて伝送損失が増加するため、異方導電性を有する接着層を用いることが好ましい。
【0055】
導電性フィラーの平均粒子径は、異方性を充分に確保する観点から、2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、7μm以上とすることが更に好ましい。一方、接着層の薄さと両立させる観点からは、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下とすることが更に好ましい。導電性フィラーの含有量は、接着層の全体量に対して以下の範囲とすることが好ましい、即ち、フレキシブル性と接着力を確保する観点からは、接着剤の固形分中50質量%以下が好ましく、30質量%以下とすることがより好ましい。また、導電性を確保する観点からは1質量%以上とすることが好ましく、10質量%以上とすることがより好ましい。
【0056】
尚、平均粒子径はD50平均粒子径であり、D50平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS13320(ベックマン・コールター社製)を使用し、トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、導電性微粒子を測定して得た数値であり、粒子径累積分布における累積値が50%の粒子径である。また、屈折率の設定は1.6とした。
【0057】
また、導電性フィラーのアスペクト比は、1〜3であることが好ましい。ここでアスペクト比とは、導電性フィラーの粒子の長径と短径の比率(長径/短径)をいう。アスペクト比は、電子顕微鏡を用いて接着層の厚み方向の切断面に表れる粒子の長径と短径を測長し、長径/短径の比率を求めることにより求められる。本願においては、粒子100個の長径/短径の平均値をアスペクト比とする。長径とは、当該粒子の切断面の最大距離となる値とし、短径とは、長径に対する直角方向における最短距離と定義する。
【0058】
導電性フィラーは特に限定されないが、金属フィラー、カーボンフィラーおよびそれらの混合物が挙げられる。金属フィラーとしては、銀、銅、ニッケル等の金属粉、ハンダ等の合金粉、銀コート銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、金コートニッケル粉等がある。銀を含有することにより、より優れた導電性が得られる。これらのうちでは、コストの観点から、銀コート銅粉が特に好ましい。金属粉に対するコート層の被覆率は、表面に対して80%以上被覆していることが好ましい。
【0059】
導電性フィラーにおいて、核体を被覆する場合の被覆層は、核体の少なくとも一部を被覆していればよいが、より優れた導電特性を得るためには、被覆率が高い方が好ましい。導電特性を良好に保つ観点からは、被覆層による平均被覆率を60%以上とすることが好ましく、70%以上とすることがより好ましく、80%以上とすることがさらに好ましい。尚、本明細書における平均被覆率は、ESCAによる紛体の測定により求めた値をいう。詳細な条件は、AXIS−HS(島津製作所社製/Kratos)、X線源:Dual(Mg)15kV,10mA Pass energy 80eV、Step:0.1 eV/Step、Speed:120秒/元素、Dell:300、積算回数:8の条件でAg3d:2とCu2P:1のピーク面積から銀と銅の質量濃度を求め、銀の質量濃度の割合を被覆率とした。
【0060】
塗液安定性、即ち、フィラー同士の凝集が防げ、導電性樹脂組成物を塗工する際に、塗面にスジやムラの発生を効果的に防止する観点からは、ガラス繊維やカーボンフィラーなどの核体に金属メッキを施す方法が好ましい。これら導電性フィラーは、樹脂に分散させた状態で塗布・乾燥して用いられる。粒子形状は、異方導電性が確保できればよく特に限定されない。例えば、球状、樹枝状(デンドライト状)、針状、繊維状等が例示できる。異方導電性を良好に確保する観点からは、球状、樹枝状(デンドライト状)粒子が好ましい。
【0061】
接着層を形成する樹脂組成物には、他に任意成分としてシランカップリング剤、防錆剤、還元剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤などを配合できる。
【0062】
電磁波シールドシート10の製造方法は特に限定されないが、一例として以下の製法で作製することができる。まず、接着層1を構成する組成物を、剥離基材上に公知の方法により塗膜を形成することができる。例えば、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビア印刷、フレキソ印刷、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等で組成物を塗布後、通常40〜150℃で乾燥することにより製造できる。
【0063】
部品に接合した後の接着層の厚みは、用途により変動し得るが、充分な接着性を得るために、更に導電性フィラーを混合する異方導電性の接着層とする場合には、良好な異方導電特性を得るために、3〜50μmであることが好ましい。当該接着層1の厚みの下限は、4μm以上であることがより好ましく、6μm以上であることが更に好ましい。また、当該接着層1の厚みの上限は、30μm以下であることがより好ましい。
【0064】
接着層、導電層および絶縁層を積層する方法は公知の方法を使用できる。例えば、剥離性シート上に接着層を形成し、導電層の銅キャリア付電解銅箔の電解銅箔面側に接着層を重ねてラミネートした後に、銅キャリアを剥がす。そして、銅キャリアを剥がした面と、別途剥離性シート上に形成した絶縁層とを重ねてラミネートする方法がある。また、剥離性シート上に接着層を形成し、その表面に無電解メッキ処理により導電層を形成し、別途剥離性シート上に形成した絶縁層と前記導電層とを重ねてラミネートする方法等が挙げられる。
【0065】
次に、本発明の電磁波シールドシートを配線回路基板に接合した電磁波シールド性配線回路基板について説明する。
図3に、プリント配線板に電磁波シールドシートを接合した模式的説明図の一例を示す。電磁波シールドシート10は、部品であるプリント配線板20の表層に接合されている。プリント配線板20は、ポリイミド等からなる基板21、配線パターン25、グランドパターン24、およびこれらを被覆する絶縁性接着剤層22、ポリイミドフィルム23からなるカバーレイ層を有する。電磁波シールドシート10は、プリント配線板20上に熱圧着等の接合処理により貼り付けられる。プリント配線板20には、ポリイミドフィルム23の表面からグランドパターン24の表面まで貫通するコンタクトホールが設けられ、コンタクトホールに形成されたビア31を介してグランドパターン24と電磁波シールドシート1の異方導電性を示す接着層1とが電気的に導通するようになっている。電磁波シールドシート10をプリント配線板20に貼り付けるのみで導通を図ることができ、製造が簡便であるため、特にフレキシブルプリント回路基板等において好適である。
【0066】
図4は、第1変形例に係る電磁波シールド性配線回路基板の模式的断面図である。この例においては、ビア31の代わりに、導電層2の接着層1側主面上にバンプ32を設け、これとグランドパターン24とを電気的に接続するようにしたものである。バンプ32は、例えば、導電層を形成した後に、グランドパターン24に対応する導電層2上に配置し、その後に接着層1を形成することにより得ることができる。この方法によれば、プリント配線板20に対して電磁波シールドシート10の接合処理を行うことにより、グランドパターン24と導電層2の導通を図ることができる。
【0067】
図5は、第2変形例に係る電磁波シールド性配線回路基板の模式的断面図である。この例においては、バンプ33をグランドパターン24上に予め形成しておき、電磁波シールドシート10と接合する際に、導電層2と電気的に接続させることができる。
【0068】
図6は、第3変形例に係る電磁波シールド性配線回路基板の模式的断面図である。この例においては、電磁波シールドシート10とプリント配線板20とを接合した後に、絶縁層3の表層側から、外部の接地部品を用いて導電層2と導通を図るものである。
【0069】
図7は、第4変形例に係る電磁波シールド性配線回路基板の模式的断面図である。この例においては、絶縁層3の表層からグランドパターン24まで貫通するグランドビア41を設け、ここに導電性ペースト35を充填することにより、電磁波シールドシート10とグランド回路との導通を図ることができる。絶縁層3の表層に露出した導電性ペースト35は、更に、外部で接地されていてもよい。
【0070】
ところで、高周波回路の場合の特性インピーダンス(Z
0)は、以下の式1および式2により表される。
【数1】
【数2】
ここで、Z
0は特性インピーダンスであり、Dkはフレキシブルプリント配線板(以下FPCともいう)のカバーレイの誘電率、dはFPCのカバーレイの厚み、Sは電磁波シールドシートの導電層と伝送回路の重なっている面積、Cはキャパシタンスである。Rは導体抵抗値(Ω/m)、Lはインダクタンス(H/m)、Gは絶縁層(基材)のコンダクタンス(Ω/m)、fは周波数、jは虚数記号であり、高周波数になるとLとCが支配的になる。一般的にシールドフィルムを被着すると特性インピーダンス(Z
0)は低下するため、インピーダンス整合を取るために特性インピーダンスZ
0を上げることが必要である。ここで、キャパシタンスCの値は、式2により表される。キャパシタンスCの値を小さくすることにより、特性インピーダンス(Z
0)の値を上げることができる。
式2より、キャパシタンスCの値を小さくするためには、配線25幅w(
図1参照)を調整する方法、カバーレイ層(絶縁性接着剤層22+ポリイミドフィルム23)(
図1参照)の厚みを調整する方法、カバーレイ層の比誘電率を下げる方法が考えられる。しかしながら、回路幅を細線化する方法は生産効率が悪く、コストアップとなるため好ましくなく、カバーレイ層を厚膜化する方法は、軽薄短小化のニーズに逆行するため望ましくない。特に、フレキシブルプリント配線板等においては、フレキシブル性が低下するので好ましくない。接着層として、上記(i)を満たす材料を用いたことで、式2のDkが下がり、フレキシブルプリント基板のカバーレイ層を薄くすることも可能となる。なお、カバーレイ層を構成するポリイミドフィルム23は一例であり、回路基板を保護する機能を有する保護層であればよく、他の材料に変えてもよい。
【0071】
電磁波シールドシートを部品に加熱圧着する際に、接着層の熱硬化が充分でないと、電磁波シールドシートの側部から接着層がはみ出し外観不良となることがある。このため、熱圧着工程により電磁波シールドシートを貼り付ける際のはみ出し性が無いもしくは少ないことが求められる。
【0072】
本発明に係る電磁波シールドシートによれば、上記(i)および(ii)を満たす接着層を用いることにより、電磁波等のシールド性を確保しつつ、高周波用途の部品に用いる場合においても良好な伝送特性を維持できる。これは、上記(i)および(ii)を満たす接着層を用いることにより、誘電体の電気分極が電場の変化に追従できなくなってエネルギーの一部が熱になってしまう現象を抑制することができ、その結果、誘電体損失を低減することができるためと考えられる。上記(i)を満たすことにより特性インピーダンス整合を改善することができる。また、上記(i)および(ii)を満たすことにより、高周波信号の伝送損失を改善することができる。このため、幅広い周波数帯域で好適に利用できる。特にインピーダンス不整合と伝送損失が生じやすい高周波(10MHz以上、好ましくは1GHz以上)の信号を伝送する信号伝送系に対する電磁波シールドフィルムの用途において好適である。
【0073】
また、上記(i)および(ii)を満たすバインダー成分と、導電性フィラーを組み合わせることにより、部品との導通の簡便化を図るのみならず、良好な接着性を引き出しつつ、伝送特性を改善し、特性インピーダンスを低下させることができる。
【0074】
また、上記(i)および(ii)を満たす材料を用いた電磁波シールドシートを用いることにより、式(1)、(2)で示される特性インピーダンスZ
0を下げることができるので、特性インピーダンスZ
0を整合させる際に信号回路の配線幅wまたは/およびカバーレイの厚みの設計マージンを広くとることができる。このため、歩留まりを改善し、生産コストを抑えることができる。このため、回路の生産性を高めることができる。
本発明の電磁波シールドシートは、配線回路基板のみならず、電磁波を放出する若しくは遮蔽が必要な部品・各種電子機器に接合して広く適用できる。
【0075】
≪実施例≫
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」を其々表すものとする。
【0076】
まず、実施例で使用した原料を以下に示す。
<樹脂>
R1(ポリアミド樹脂):熱硬化性ポリアミド樹脂 酸価20[mgKOH/g](トーヨーケム社製)
R2(ポリエステル樹脂):付加型ポリエステル樹脂 酸価19[mgKOH/g](トーヨーケム社製)
R3(ウレタン樹脂):ウレタンウレア樹脂 酸価5[mgKOH/g](トーヨーケム社製)
<導電性フィラー>
F1(銀コート銅粉):「核体に銅、被覆層に銀を使用した樹枝状粒子 D50平均粒子径=11.0μm」(福田金属箔粉工業社製)
<銅箔>
キャリア付き電解銅箔:「MT18SD−H(18μmのキャリア銅箔に3μmの電解銅箔)」(三井金属社製)
<硬化性化合物>
H1(テトラフェノールエタン型エポキシ硬化剤):「jER1031S」(三菱化学社製)
H2(フェノールノボラック型エポキシ硬化剤):「jER152」(三菱化学社製)
H3(チタンキレート化合物):「TC401」(マツモトファインケミカル社製)
H4(アルミキレート化合物):「ALCH」(川研ファインケミカル社製)
H5(イソシアヌレート型ブロックイソシアネート):「BL3175」(住化バイエルウレタン社製)
H6(アジリジン化合物):「ケミタイトPZ−33」(日本触媒社製)
【0077】
<電磁波シールドシートの作製>
[実施例1] 樹脂R1(ポリアミド樹脂)100部、導電性フィラーF1(銀コート銅粉)50部を容器に仕込み、不揮発分濃度が40%になるようトルエンとイソプロピルアルコールの混合溶剤(トルエン100部に対してイソプロピルアルコール50部)を加えて混合した。次いで、硬化性化合物H1(テトラフェノールエタン型エポキシ硬化剤)15部および硬化性化合物H3(チタンキレート化合物)3部を加え、ディスパーで10分攪拌して樹脂組成物を得た。更に、得られた樹脂組成物を、バーコーターを使用して乾燥厚みが15μmになるように剥離性シート上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで接着層を得た。
【0078】
別途、樹脂R3(ウレタン樹脂)100部、硬化性化合物H1(テトラフェノールエタン型エポキシ硬化剤)10部および硬化性化合物H6(アジリジン化合物)10部を加えディスパーで10分攪拌することで絶縁性樹脂組成物を得た。次いで得られた絶縁性樹脂組成物を、バーコーターを使用して乾燥厚みが10μmになるように剥離性シート上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで絶縁層を得た。
【0079】
絶縁層をキャリア付き電解銅箔の電解銅箔側に貼り合せた後、キャリア銅箔を剥がし、絶縁層上に電
解銅箔を積層した。次に、電解銅箔面に接着層を貼り合わせることで、「剥離性シート/絶縁層/電解銅箔/接着層/剥離性シート」からなる電磁波シールドシートを得た。電解銅箔と接着層の貼り合せは、温度は90℃、圧力は3kgf/cm
2で、熱ラミネーターにより貼り合わせた。
【0080】
[実施例2〜15、比較例1〜5]
実施例1の接着層の組成と、加熱圧着後の接着層の厚みを表1に記載した通りに変更した以外は、実施例1と同様に行うことで実施例2〜15、比較例1〜5の電磁波シールドシートを得た。
【表1】
【0081】
(接着層の膜厚) 電磁波シールドシートの膜厚は、部品に加熱圧着した後の接着層の厚みであり、以下の方法により測定した。まず、電磁波シールドシートの接着層の剥離性シートを剥がし、露出した接着層とポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製「カプトン200EN」)を貼り合わせ、2MPa、150℃の条件で30分加熱圧着した。これを幅5mm・長さ5mm程度の大きさに切断した後、エポキシ樹脂(ペトロポキシ154、マルトー社製)をスライドガラス上に0.05g滴下し、電磁波シールドシートを接着させ、スライドガラス/電磁波シールドシート/ポリイミドフィルムの構成の積層体を得た。得られた積層体をクロスセクションポリッシャー(日本電子社製、SM−09010)を用いてポリイミドフィルム側からイオンビーム照射により切断加工して、加熱圧着後の電磁波シールドシートの測定試料を得た。
【0082】
得られた測定試料の断面をレーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、VK−X100)を使用し、観察した拡大画像から接着層の厚みを測定した。倍率は、500〜2000倍とした。接着層の塗工・乾燥後の厚み、および加熱圧着後の接着層の厚みを表1に示す。
【0083】
[比誘電率および誘電正接]
接着層に用いる(I)熱可塑性樹脂(A)、および(II)熱硬化性樹脂(B)と硬化性化合物(C)の被膜(X)(以下、単に「皮膜(X)」ともいう)の少なくとも一方を含む比誘電率および誘電正接を、以下の手順により作製した。
<実施例1の測定被膜>
容器に、樹脂R1を100部、硬化性化合物H1を15部および硬化性化合物H3を3部仕込み、トルエン100部に対してイソプロピルアルコールを50部配合した混合溶剤を加え不揮発分を45%にした。更に溶液をディスパーで10分攪拌した後、真空脱泡処理することで試料溶液を得た。得られた試料溶液を、乾燥厚みが30μmになるように剥離性シートに均一に塗工して乾燥させることでプレ被膜を得た。
【0084】
<実施例2〜15および比較例1〜5の測定用被膜>
表1に示す原料および配合量に変更する以外は、実施例1の測定用被膜と同様の方法にて、其々実施例2〜15および比較例1〜5の接着層のプレ被膜を得た。
【0085】
上記被膜(X)を、日本電子回路工業会のフレキシブルプリント配線板およびフレキシブルプリント配線板用材料―その2統合規格―(JPCA−DG03)に準拠して以下の手順で比誘電率、誘電正接を測定した。
実施例および比較例で作製した被膜(X)を所望の厚みとなるように複数層積層し、これを真空ラミネートし、180℃、2.0MPaの条件で1時間熱硬化させ、皮膜(X)を得た。被膜(X)を幅3mm・縦100mmの大きさに切り取り、両面の離形シートを剥がし、厚みが80μmの硬化被膜を評価用試験片とした。エー・イー・ティー社製の比誘電率測定装置「ADMS01Oc」に、試験片を3つセットし、空洞共振器法により、測定温度23℃、測定周波数が1GHzにおける比誘電率および誘電正接を求めた。結果を表3に示す。
【0086】
[硬化後の接着層の[N]、[O]の定量]
容器に、樹脂R1を100部,硬化性化合物H1を15部,硬化性化合物H3を3部加えて、更に導電性フィラーを50部加えて仕込んだ以外は、比誘電率および誘電正接の測定被膜と同様の方法によりプレ接着層を得、180℃のオーブンで60分処理することで熱硬化後の被膜(Y)を得た。得られた被膜(Y)の表面についてESCA分析を次の条件で行い、窒素原子数、炭素原子数、酸素原子数から[N]および[O]を測定した。下記に測定条件を示す。
装置 : AXIS−HS(島津製作所社製/Kratos)
試料チャンバー内真空度:1×10
−8Torr以下
X線源:Dual(Mg)15kV,5mA Pass energy 80eV
Step:0.1 eV/Step
Speed:120秒/元素
Dell:300、積算回数:5
光電子取り出し角:試料表面に対して90度
結合エネルギー:C1s主ピークを284.6eVとしてシフト補正
C(1s)ピーク領域:280〜296eV
O(1s)ピーク領域:530〜534eV
N(1s)ピーク領域:395〜405eV
上記ピーク領域に出現したピークを直線法にてベースラインを引き、各原子の原子濃度「Atomic Conc」から炭素原子数に対する窒素原子数の割合と酸素原子数の割合を算出した。
[N]=N(1s)の原子数/C(1s)の原子数×100
[O]=O(1s)の原子数/C(1s)の原子数×100
上記測定を3箇所、場所を変えて測定し、その平均値を硬化後の接着層の[N]、[O]とした。
【0087】
[硬化後の接着層の残存官能基の定量]
次に、接着層の硬化後の被膜(Y)表面において、[OH]および[COOH]を測定した。樹脂は、主に炭素、水素、酸素原子から構成されるため、通常ESCAにて水酸基やカルボキシル基を識別できず定量分析が難しい。しかし、カルボン酸や水酸基と選択的に結合するフッ素試薬を処理することで、カルボキシル基または水酸基のみがフッ素修飾され、ESCAで官能基を識別することが可能となる。また、フッ素結合はESCAの検出感度が高いことから、
高感度な表面の官能基定量分析が可能となる。本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、被膜(Y)において、炭素数に対するカルボキシル基数の割合[COOH]が0.01〜15%、炭素数に対する水酸基数の割合[OH]が0.5〜20%の範囲であることにより、部品に対する高い接着性を維持しながら、プリント配線板等の高周波用途の部品に本発明の電磁波シールドシートを貼り付けた場合に、良好な伝送特性を維持できることを突き止めた。
【0088】
上記と同様の方法により得た被膜(Y)を、幅30mm・長さ30mmにカットしたものをガラス板に貼り試料とした。バイアル瓶中、密閉状態にし、55℃で24時間、フッ素修飾試薬と試料を非接触で気相反応させた。気相反応が終了後、試料を反応容器から取り出して窒素気流中で乾燥し、残留試薬を除去した。残留試薬の除去は、N(1s)ピーク面積の変動がなくなるまで、温度と時間を適宜調整して行った。
フッ素修飾した試料を、前述の[N]、[O]の定量と同様の条件でESCA分析し、接着層の[OH]および[COOH]を定量した。測定試料は3つ作製し、其々の算出した値の平均値を出した。
【0089】
<[OH]の測定方法>
無水トリフルオロ酢酸により水酸基の気相修飾反応を行った後、残留試薬を除去し、ESCA測定により水酸基数の割合を算出した。反応式と算出式は以下のとおりである。
R-OH+(CF
3CO)
2O → R-COOCF
3+CF
3OCOH
[OH]は、下式により算出した値で表される。
<式> [OH]={[F(1s)]/(3k[C(1s)]-2[F(1s)])r}×100(%)
【0090】
[C(1s)]はC(1s)のピーク面積で、280〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、F(1s)のピーク面積[F(1s)]は、682〜695eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。また、反応率rは1とした。尚、kは装置固有のC(1s)ピーク面積に対するF(1s)ピーク面積の感度補正値であり、AXIS−HS(島津製作所社製/Kratos)を用いる場合、上記装置固有の感度補正値は3.6とした。
【0091】
<[COOH]の測定方法>
トリフルオロエタノール、ピリジン、ジシクロヘキシルカルボジイミド混合溶液によりカルボキシル基の修飾反応を行った後、残留試薬を除去し、ESCA測定によりカルボキシル基の割合を算出した。反応式と算出式は以下のとおりである。
R-COOH+CF
3CH
2-OH C
6H
11-NCN-C
6H
11/C
5H
5N → R-COOCH
2CF
3+C
6H
11NCONC
6H
11
【0092】
[COOH]は、下式により算出した値で表した。
<式> [COOH]={[F(1s)]/(3k[C(1s)]-(2[F(1s)])r}×100(%)
【0093】
[C(1s)]はC(1s)のピーク面積で、280〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、F(1s)ピーク面積[F(1s)]は、682〜695eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。また、前述と同様に、反応率rは1、kは3.6とした。
【0095】
[吸湿性] 吸湿性は、電磁波シールドシートと溶融半田とを接触させた後、接着層の外観変化の有無により評価した。吸湿性が低い試料は、外観が変化しないが、吸湿性が高い試料は、発泡や剥がれが発生する。
まず、幅25mm・長さ70mmの電磁波シールドシートの接着層の剥離性シートを剥がし、露出した接着層と、総厚64μmの金メッキ処理された銅張積層板(金メッキ0.3μm/ニッケルメッキ1μm/銅箔18μm/接着剤20μm/ポリイミドフィルム25μm)の金メッキ面を150℃、2.0MPa、30分の条件で圧着し、熱硬化させて積層体を得た。得られた積層体を幅10mm・縦65mmの大きさに切り取り試料を作製した。得られた試料を40℃、90%RHの雰囲気下で72時間放置した。その後、試料のポリイミドフィルム面を下にして250℃の溶融半田上に1分間浮かべ、次いで試料を取り出し、その外観を目視で観察し、接着層の発泡、浮き、剥がれ等の異常の有無を次に基準で評価した。
優(Excellent):外観変化全く無し。
良(Good):小さな発泡がわずかに観察される。
可(Acceptable):前記良未満、以下の不適越え。
不適(Poor):激しい発泡や剥がれが観察される。
【0096】
[接着力] 電磁波シールドシートを幅25mm・長さ70mmに準備し試料とした。接着層上に設けられた剥離性シートを剥がし、露出した接着層に厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製「カプトン200EN」)を150℃、2.0MPa、30分の条件で圧着し、熱硬化させた。次いで接着力測定のために試料を補強する目的で絶縁層側の剥離性シートを剥がし、露出した絶縁層に、トーヨーケム社製の接着シートを用い、厚さ50μmのポリイミドフィルムを、150℃、1MPa、30分の条件で圧着することで「ポリイミドフィルム/接着シート/電磁波シールドシート/ポリイミドフィルム」の構成の積層体を得た。この積層体を、引張試験機(島津製作所社製)を使用して23℃、50%RHの雰囲気下、剥離速度50mm/分、剥離角度90°で、電磁波シールドシートの
接着層とポリイミドフィルムとの界面を剥離することで接着力を測定した。評価基準は以下の通りである。
優(Excellent):6N/25mm以上。
良(Good):4N/25mm以上、6N/25mm未満で、実用上問題ない。
不適(Poor):4N/25mm未満。
【0097】
[はみ出し性]
以下のサンプルにより、はみ出し性を評価した。幅50mm・長さ50mmの電磁波シールドシートを準備し、中央部に穴あけ機で直径5mmの貫通穴を形成した。次いで、接着層の剥離性シートを剥がし、接着層とポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製「カプトン200EN」)を150℃、2MPa、30分の条件で加熱圧着した。室温に冷却後、電磁波シールドシートの穴部分を拡大鏡で観察し、穴の内側に接着層がはみ出した長さを測定した。はみ出した長さは、最もはみ出している部位を選択した。評価基準は以下の通りである。
優(Excellent):はみ出した長さが0.1mm未満。
良(Good):はみ出した長さが0.2mm以上、2.0未満で、実用上問題ない。
不適(Poor):はみ出した長さが2mm以上。
【0098】
[耐折性]
電磁波シールドシートの耐折性をJIS C6471に準拠してMIT試験により評価した。まず電磁波シールドシートを幅15mm、長さ120mmの大きさに準備した。別途、電磁波シールドフィルムを貼り付ける被着体として、ポリイミドフィルム(厚さ12.5μm「カプトン50EN」 東レ・デュポン社製)と銅箔(厚さ18μm)とを積層した2層CCLを元に、JIS C6471に基づく形状に配線を形成し、厚さ12.5μmのポリイミドフィルムと厚さ15μmの熱硬化性接着剤とで構成されるカバーレイ「CISV1215(ニッカン工業社製)」を貼り合わせてカバーコート層を形成した。更に、電磁波シールドシートの導電層側の剥離性シートを剥離して露出した導電層をカバーコート層に対して、150℃、30分間、2.0MPaの条件で圧着することで試料を得た。得られた試料について、温度25℃、湿度50%雰囲気下で、曲率半径0.38mm、荷重500g、速度180回/分の条件でMIT試験機を使用して耐折性を測定した。評価は、屈曲を3000回行い、配線が断線するまでの屈曲回数を測定した。評価基準は以下の通りである。
優(Excellent):屈曲回数を3000回行っても断線しなかった。
良(Good):断線までの屈曲回数が2500回以上、3000回未満で、実用上問題ない。
不適(Poor):2500回未満で断線した。
【0099】
[高周波用途適正評価]
高周波用途適性について、以下の測定用試料を用いて評価した。
図8に、測定に用いたコプレーナ構造のフレキシブルプリント配線板(以下、プリント配線板ともいう)7の主面側の模式的平面図を、
図9に、裏面側の模式的平面図を示す。まず、厚さ50μmのポリイミドフィルム50の両面に、厚さ12μmの圧延銅箔を積層した両面CCL「R−F775」(パナソニック社製)を用意した。そして、矩形状の4つのコーナー部近傍に、其々6か所のスルーホール51(直径0.1mm)を設けた。尚、図中においては、図示の便宜上、各コーナー部にスルーホール51を2つのみ示している。次いで、無電解メッキ処理を行った後に、電解メッキ処理を行って10μmの銅メッキ膜52を形成し、スルーホール51を介して両主面間の導通を確保した。その後、
図8に示すように、ポリイミドフィルム50の主面に長さが10cmの2本の信号配線53、およびその外側に信号配線53と並行なグランド配線54、およびグランド配線54から延在され、ポリイミドフィルム50短手方向のスルーホール51を含む領域に形成されたグランドパターン55を形成した。
【0100】
その後、ポリイミドフィルム50の裏面に形成された銅箔をエッチングして、グランドパターン55に対応する位置に、
図9に示すような裏面側グランドパターン56を得た。回路の外観、公差の検査仕様はJPCA規格(JPCA−DG02)とした。次に、ポリイミドフィルム50の主面側に、ポリイミドフィルム57a(厚さ12.5μm)と絶縁性接着剤層57b(厚さ15μm)とで構成されるカバーレイ57「CISV1215(ニッカン工業社製)」を貼り付けた(
図8参照)。尚、
図8においては、信号配線53等の構造がわかるように、カバーレイ57を透視図で示した。その後、カバーレイ57から露出した銅箔パターンにニッケルメッキ(不図示)を行い、次いで金メッキ(不図示)処理を行った。
【0101】
図10に、上記プリント配線板7の主面側に電磁波シールドシートを貼り付けた電磁波シールド付きプリント配線板8の模式的平面図を示す。また、
図11に
図10のXI−XI切断部断面図を、
図12に
図10のXII−XII切断部断面図を示す。
図10において、説明の便宜上、電磁波シールドシート61を透視図で表した。2枚の電磁波シールドシート61,62を用意し、電磁波シールドシート61,62の接着層71上に設けられた剥離処理シート(不図示)を剥がした。そして、電磁波シールドシート61,62の其々の接着層71を内側としてプリント配線板7を挟持し、150℃、2.0MPa、30分の条件で圧着することにより電磁波シールドシート付きプリント配線板8を得た。電磁波シールドシート61、62としては、接着層71、導電層72および絶縁層73がこの順に積層されたシートを用いた。
【0102】
プリント配線板7の主面側に設けられた電磁波シールドシート61は、
図10に示すように、2つの開口部60が設けられている。其々の開口部60からは、2つのグランドパターン55から延在された突出部58および2つの信号配線53の端部が露出される。これらの露出したグランドパターン55と信号配線53にスペクトルアナライザーを接続させ、試験を行う。プリント配線板7の裏面側には、電磁波シールドシート61と略同一形状で開口部が設けられていない電磁波シールドシート62が、プリント配線板7を介して重畳する領域に設けられている。ネットワークアナライザE5071C(アジレント・ジャパン社製)を用いて、1MHzから20GHzの範囲の信号を信号配線53に送り、電磁波シールドシート付きプリント配線板8の特性インピーダンスと伝送損失を測定した。尚、実施例1〜15および比較例1〜4は、信号回路のL/S(ライン/スペース)を30/100μmとし、式(1)から求められる特性インピーダンスが100mΩ±5mΩの範囲内となるようカバーレイとシールドシートの接着剤層の厚みを適宜調整した。一方、比較例5は、カバーレイとシールドシートの接着剤層の合計厚みを50.5μmとし、特性インピーダンスが100mΩ±5mΩの範囲内となるよう信号回路の配線幅を調整した。尚、実施例1〜15および比較例1〜5においてグランド配線54の幅は100μm、グランド配線54と信号配線53の間の距離は1mmとした。
【0103】
(カバーレイと接着層の厚み)電磁波シールド付きプリント配線板8を幅5mm・長さ5mm程度の大きさに切断した後、スライドガラス上に、エポキシ樹脂(ペトロポキシ154、マルトー社製)を0.05g滴下し、電磁波シールド付きプリント配線板8とスライドガラスを接着させ、スライドガラス/電磁波シールド付きプリント配線板8の積層体を得た。得られた積層体をクロスセクションポリッシャー(日本電子社製、SM−09010)を用いてプリント配線板8側からイオンビーム照射により切断加工して、電磁波シールド付きプリント配線板8の測定試料を得た。
【0104】
得られた測定試料の断面をレーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、VK−X100)を使用し、観察した拡大画像から、
図12中の矢印Tで示した位置(回路が形成されていない位置)における接着層71、ポリイミドフィルム57aおよび絶縁性接着剤層57bの厚み(以下、本明細書において、上記カバーレイと接着層の厚みの合計をFPCの厚みと定義する)を測定した。倍率を500〜2000倍としてFPCの厚みを測定し、以下のように評価した。結果を表3に示す。
優(Excellent):カバーレイと電磁波シールドシートの接着層の合計厚みが48.5μm未満。
良(Good):カバーレイと電磁波シールドシートの接着層の合計厚みが48.5μm以上、52.5μm未満。
不適(Poor):カバーレイと電磁波シールドシートの接着層の合計厚みが52.5μm以上。
【0105】
[伝送損失]高周波信号における伝送損失は10GHzおよび20GHzの伝送損失を測定することで評価した。評価基準は、以下の通りとした。得られた結果を表3に示す。
[10GHz]
優(Excellent):4.5dB未満
良(Good):4.5dB以上、5.0dB未満
不適(Poor):5.0dB以上
[20GHz]
優(Excellent):7dB未満
良(Good):7dB以上、7.5dB未満
不適(Poor):7.5dB以上
【0107】
接着層として、上記(i)および(ii)を満たす材料を用いることにより、表3に示すように、回路のL/Sを狭めることなく、高周波信号における伝送損失を効果的に抑制できることがわかった。導電性フィラーを含有しない、即ち、導電性を示さない接着層を用いた実施例14が伝送損失を効果的に抑制できるのみならず、実施例14と同一の熱硬化性樹脂および硬化剤をバインダー成分とし、これに導電性フィラーを加えた実施例12、13においても、高周波用途における伝送特性を良好にできる(伝送損失を効果的に抑制できる)という結果を得た。比較例2と比較例5の組成は共通であるが、FPCの厚みを実施例と同様に50.5μmとした比較例5においては、L/Sを狭める必要が生じ、その結果、生産性が低下してしまう。