【文献】
鎌倉友之 他,小口径シールドの包含による大断面拡幅工法(SR-J工法)の開発,土木学会第60回年次学術講演会,2005年 9月,URL,http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2005/60-6/60-6-0083.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記止水工程で設置される止水装置は、凍結管と被覆材との間に被覆材の内部において凍結管の伸縮を許容する低摩擦材が介在する、請求項1に記載の地中拡幅部の施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トンネルの分岐・合流部など、地中拡幅部の施工では、地山の安定を確保すること、施工時の止水を実現すること、地表面の沈下を最小限に抑えること、地下水環境への影響を最小化することが求められる。また、特に都市部など、地理的条件により、開削できない場合も多く、非開削で分岐合流部を施工できることが求められる。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑み、非開削で施工でき、かつ、安全性に優れた地中拡幅部の施工方法に関する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、シールドトンネルのセグメントを取り外し、当該シールドトンネル回りに地中拡幅部を構築するためのシールドの発進基地を構築し、当該発進基地からシールド機を発進させ、切削可能なセグメントが配置された先行シールドを間隔を空けて環状に複数構築し、前記発進基地からシールド機を発進させ、先行シールドの一部を切削しながら、後行シールドを環状に複数構築し、シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する環状の外殻シールドを構築することとした。
【0010】
詳細には、本発明は、地中拡幅部の施工方法であって、シールドトンネルのセグメントを取り外し、当該シールドトンネル回りに地中拡幅部を構築するためのシールド機の発進基地を構築する発進基地の構築工程と、前記発進基地から先行シールド機を発進させ、切削可能なセグメントが配置された先行シールドを間隔を空けて環状に複数構築する先行シールドの構築工程と、前記発進基地から後行シールド機を発進させ、前記先行シールドの一部を切削しながら、後行シールドを環状に複数構築する後行シールドの構築工程と、前記先行シールド、及び前記後行シールドの外周に止水領域を構築する止水工程と、前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとを連結し、シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する環状の外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程と、前記外殻シールドの構築後、前記外殻シールドの内側を掘削する掘削工程と、を備える。
【0011】
本発明に係る地中拡幅部の施工方法によれば、シールドトンネルのセグメントを取り外し、当該シールドトンネル回りに地中拡幅部を構築するためのシールドの発進基地を構築することで、非開削で地中拡幅部を施工することができる。また、先行シールド、及び前記後行シールドの外周に止水領域を構築することで、地山が安定し、また、先行シールド、及び後行シールドの内側への水の浸入を抑制できる。その結果、地下水環境への影響を最小限に抑えることができる。また、外殻シールドの構築後に外殻シールドの内側を掘削し、地中拡幅部を構築することで、地表面の沈下を最小限に抑えることができる。これにより、十分に安全性を確保した上で、地中拡幅部の施工を行うことができる。止水領域は、先行シールド及び後行シールドの外周に凍土を造成することで構築することができる。また、止水領域は、先行シールド及び後行シールドの外周に薬液注入等による地盤改良を行うことで構築してもよい。外殻シールドの構築工程は、鉄筋の組み立て、コンクリートの打設により、RCリング覆工体を構築する工程を含むものとすることができる。
【0012】
ここで、前記止水工程では、前記発進基地の反対側の褄部を止水することができる。これにより、先行シールド、及び後行シールドの内側への水の浸入を抑制できる。発進基地の反対側の褄部は、凍土を造成することで止水することができる。また、発進基地の反対側の褄部は、例えば到達立坑を設けたり、地盤改良するなどして止水することができる。
【0013】
また、本発明に係る地中拡幅部の施工方法は、前記先行シールド内に埋め戻し材を充填する充填工程を更に備えるものでもよい。これにより、シールド機で切削する際、地山部分と先行シールド部分の抵抗の差を抑えることができる。その結果、後行シールドの切削をより安定的に行うことができる。埋め戻し材は、周囲の地山と同程度の強度とすることが好ましい。埋め戻し材には、エアモルタル、流動化処理土が例示される。
【0014】
前記外殻シールドの構築工程では、後行シールドを構成するセグメントの一部を撤去して前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとが連通する連通部を構築し、前記連通部を構成する前記後行シールドの端部の外周面に前記先行シールドの端部を接続し、かつ、当該先行シールドの端部の内側と前記後行シールドの端部の外周面を跨ぐようにシートを設置するようにしてもよい。セグメントの一部には、セグメントを構成するスキンプレートの一部が例示される。
【0015】
先行シールドの端部の内側と後行シールドの端部の外周面を跨ぐようにシートを設置す
ることで、先行シールド、及び後行シールドの内側への水の浸入を更に抑制できる。
【0016】
ここで、本発明は、外殻シールドとして特定することができる。例えば、本発明は、先行シールドと後行シールドが交互に環状に配置されることで形成される外殻シールドであって、先行シールドと後行シールドが連通する連通部と、前記連通部を構成する先行シールドと後行シールドの接続部分を覆う防水部と、を備え、前記連通部を構成する後行シールドの端部の外周面に前記連通部を構成する先行シールドの端部が接続され、前記防水部は、前記先行シールドの端部の内側と前記後行シールドの端部の外周面を跨ぐように配置される。
【0017】
先行シールドよりも強度が高い後行シールドのセグメントの外周面に先行シールドの端部が接続されることで、先行シールドと後行シールドとの接続部分の強度を向上することができる。また、先行シールドの端部の内側と後行シールドの端部の外周面を跨ぐように防水部が配置されることで、先行シールド、及び後行シールドの内側への水の浸入を更に抑制できる。防水部は、地山からの水の浸入を抑制するもので、吹付防水による層や膜、又はシート等により形成することができる。
【0018】
また、本発明は、上述した止水工程に用いることができる止水装置として特定することができる。例えば、先行シールドと後行シールドが交互に環状に配置されることで形成される外殻シールドの外周に凍土を構築する止水装置であって、前記先行シールドと前記後行シールドのセグメントの内側に設けられ、冷却媒体が流れる凍結管と、前記凍結管を覆う被覆材と、を備える。
【0019】
凍結管を設けることで、先行シールドと後行シールドのセグメントの外周、換言すると、外殻シールドの外周に凍土を構築することができる。また、凍結管を被覆材で覆うことで、冷却性能が向上し、効率よく凍土を構築することができる。
【0020】
また、本発明に係る止水装置は、前記被覆材を覆う断熱材を更に備える構成とすることができる。これにより、より冷却性能が向上し、更に効率よく凍土を構築することができる。
【0021】
また、本発明に係る止水装置において、前記先行シールドと前記後行シールドのセグメントは、内部に中詰めコンクリートを含むものでもよい。これにより、凍結管を流れる冷却媒体の冷熱が効率よく外殻シールドの外周の地山に伝達される。その結果、効率よく凍土を構築することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、非開削で施工でき、かつ、安全性に優れた地中拡幅部の施工方法に関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】
図1Aは、第1実施形態に係る地中拡幅部の施工方法によって構築される地中拡幅部の概要を示す。
【
図1B】
図1Bは、第1実施形態に係る地中拡幅部の施工方法によって構築される地中拡幅部の発進基地側の断面図を示す。
【
図1C】
図1Cは、第1実施形態に係る地中拡幅部の施工方法によって構築される地中拡幅部の到達点側の断面図を示す。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る地中拡幅部の施工フローを示す。
【
図8】
図8は、先行シールドにエアモルタルが充填された状態を示す。
【
図13】
図13は、外殻シールドの外周に凍土が造成された状態を示す。
【
図14】
図14は、外殻シールドの外周に凍土が造成された状態を示す。
【
図15】
図15は、内部にRCリング覆工体を構築する場合の外殻シールドの外観を示す。
【
図16】
図16は、セグメント、エアモルタルの撤去状況を示す。
【
図17】
図17は、先行シールドと後行シールドが水平方向に連なる箇所における防水シートの設置状況を示す。
【
図18】
図18は、先行シールドと後行シールドが垂直方向に連なる箇所における防水シートの設置状況を示す。
【
図19】
図19は、先行シールドと後行シールドが水平方向に連なる箇所におけるRCリング覆工体の構築状況を示す。
【
図20】
図20は、先行シールドと後行シールドが垂直方向に連なる箇所におけるRCリング覆工体の構築状況を示す。
【
図21】
図21は、RCリング覆工体が構築された外殻シールドを示す。
【
図22】
図22は、外殻シールドの外周の凍土が解凍された状態を示す。
【
図25】
図25は、第2実施形態に係る地中拡幅部の施工方法によって構築される地中拡幅部の概要を示す。
【
図26】
図26は、第2実施形態に係る地中拡幅部の施工フローを示す。
【
図27】
図27は、第2実施形態に係る立坑の構築状況を示す。
【
図28】
図28は、第2実施形態に係る円周シールドの構築状況を示す。
【
図29】
図29は、第2実施形態に係る円周シールドの完成状態を示す。
【
図30】
図30は、第2実施形態に係る先行シールドの構築状況を示す。
【
図31】
図31は、第2実施形態に係る先行シールド内の構築状況を示す。
【
図32】
図32は、第2実施形態に係る後行シールドの構築状況を示す。
【
図33】
図33は、第2実施形態に係る外殻シールドの外周に凍土が造成された状態を示す。
【
図34】
図34は、第2実施形態に係る先行シールドと後行シールドが水平方向に連なる箇所における防水シートの設置状況を示す。
【
図35】
図35は、シールドを凍結する場合のシールドの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、本発明に係る地中拡幅部1の施工方法として、本線シールド2(トンネル)とランプシールド3(トンネル)が分岐・合流する地中拡幅部1を施工する場合を一例として説明する。但し、以下で説明する実施形態は本発明を実施するための例示であり、本発明は以下で説明する態様に限定されない。
【0025】
<第1実施形態>
<全体構成>
図1Aは、第1実施形態に係る地中拡幅部の施工方法によって構築される地中拡幅部の概要を示す。
図1Bは、第1実施形態に係る地中拡幅部の施工方法によって構築される地中拡幅部の発進基地側の断面図を示す。
図1Cは、第1実施形態に係る地中拡幅部の施工方法によって構築される地中拡幅部の到達点側の断面図を示す。第1実施形態に係る地中拡幅部1は、本線シールド2とランプシールド3が分岐・合流する分岐合流部を拡幅するものであり、外殻シールド4を備える。外殻シールド4は、断面視環状であり、本線(本線シールド2)の単独側(
図1Aでは、紙面奥側)に発進基地7が設けられ、発進基地7から分岐合流部側(
図1Aでは、紙面手前側)に向けて延びる、先行シールド5及び後行シールド6が環状に交互に配置されることで形成されている。外殻シールド4の内部には、発進基地7側では本線シールド2が設けられ、発進基地7の反対側の到達点側では本線シールド2とランプシールド3が並んで設けられている。なお、ランプシールド3の端部は、外殻シールド4の内部、かつ、到達点側の褄部の近傍に位置している。外殻シールド4の内部では、ランプシールド3の道路線形と本線シールド2の道路線形とが分岐合流する。
【0026】
<施工方法>
図2は、第1実施形態に係る地中拡幅部の施工フローを示す。また、
図3から
図24は、施工フローに対応した説明図を示す。ステップS01からステップS03では、シールド機の発進基地7が構築される。ステップS01からステップS03は、本発明の発進基地の構築工程に相当する。
【0027】
まず、ステップS01では、
図3に示すように、本線シールド2の任意の位置に地中立坑82が構築される。より詳細には、本線シールド2の下部にブライン(本発明の冷却媒体に相当する)が流れる凍結管(水平管、垂直管)が埋設され、立坑82よりも広い領域について立坑用の凍土81が造成される。立坑用の凍土81の造成は、既存の地盤凍結工法を用いることができる。立坑用の凍土81が造成されることで、立坑82の周囲の地山が保持され、また、立坑82内への水の浸入を抑制することができる。立坑用の凍土81が造成されると、本線シールド2を構成するセグメントの一部が取り外され、本線シールド2の下部に立坑82が構築される。なお、立坑用の凍土81の造成に代えて、薬液注入等による地盤改良を行うようにしてもよい。
【0028】
ステップS02では、
図4に示すように、円周シールドを構築する密閉式シールド機により掘進が開始される。より詳細には、立坑82内で密閉式シールド機が本線シールド2の外周に設けられたガイドリングに設置され、密閉式シールド機が本線シールド2の周りを掘進する。第1実施形態では、立坑82を基点として、本線シールド2の周囲に、本線シールド2よりも径が大きい第1円周シールド83aが徐々に構築される。
図4の点線は、円周シールドの未構築部分を示す。第1円周シールド83aが構築されると、第1円周シールド83aよりも更に径が大きい第2円周シールド83bが徐々に構築される。第2円周シールド83bの径は、外殻シールド7の径とほぼ一致している。つまり、第1実施形態では、径方向に2回に分けて円周シールド83が構築される。
【0029】
ステップS03では、
図5に示すように、円周シールド83が完成する。円周シールド83は、先行シールド5及び後行シールド6を構築するシールド機の発進基地7として機能する。また、円周シールド83は、地中拡幅部1の本線(本線シールド)の単独側の褄壁としても機能する。
【0030】
ステップS04からステップS14では、外殻シールド4が構築される。まず、ステッ
プS04では、
図6に示すように、先行シールド5が構築される。ステップS04は、本発明の先行シールドの構築工程に相当する。より詳細には、発進基地7にシールド機(SM)(先行シールド機)が設置され、順次、複数の先行シールド5が構築される。発進基地7から掘進するシールド機(SM)は、地中拡幅部の到達点まで掘進すると、褄部にカッター及びスキンプレートを残して発進基地7に戻され、次の先行シールド5の掘進を開始する。先行シールド5と先行シールド5との間には、後行シールド6が構築される。最終的に環状になるように、先行シールド5同士が所定の間隔を空けて配置され、順次複数の先行シールド5が構築される。先行シールド5は、切削可能なセグメント52と鋼製セグメント51によって構成される。先行シールド5と後行シールド6は、これらのシールドの軸方向と直交する断面において、一部が重なるように構築される。そのため、切削可能なセグメント52は、後行シールド6と重なる領域に主に用いられる。切削可能なセグメント52には、軽量骨材コンクリート、炭素繊維補強筋、炭素繊維補強筋等を用いることができる。
【0031】
ステップS05では、
図7に示すように、先行シールド5が完成する。完成した複数の先行シールド5は、隣接する先行シールド5同士が所定の間隔を空けて、全体として環状に構築される。なお、
図7では、図示を省略するが、到達点側では先行シールド2と並んでランプシールド3が設けられている。
【0032】
ステップS06では、
図8に示すように、先行シールド5にエアモルタル(AM)が充填される。ステップS06は、本発明のエアモルタル(AM)の充填工程に相当する。エアモルタル(AM)が充填されることで、シールド機(SM)で後行シールド6を切削する際の安定性が向上する。エアモルタル(AM)に代えて、流動化処理土を充填してもよい。
【0033】
ステップS07では、
図9に示すように、後行シールド6が構築される。ステップS07は、本発明の後行シールドの構築工程に相当する。より詳細には、発進基地7にシールド機(SM)(後行シールド機)が設置され、先行シールド5の一部を切削しながら、順次、複数の後行シールド6が構築される。発進基地7から掘進するシールド機(SM)は、地中拡幅部の到達点まで掘進すると、褄部にカッター及びスキンプレートを残して発進基地7に戻され、次の後行シールド6の掘進を開始する。
【0034】
ここで、
図10は、後行シールドの構築状況を示す。
図10に示すように、先行シールド5と後行シールド6は、交互に配置され、シールドの軸方向と直交する断面において一部が重なっている。先行シールド5のうち、後行シールド6と重なる領域は、切削可能なセグメント52で構成され、それ以外の領域は、鋼製セグメント51で構成されている。また、先行シールド5には、エアモルタル(AM)が充填されている。一方、後行シールド6は、全て鋼製セグメント61で構成されている。
【0035】
ステップS08では、
図11に示すように、後行シールド6が完成する。その結果、エアモルタル(AM)が充填された先行シールド5と後行シールド6が交互に配置され、環状の外殻シールド4が形成される。
【0036】
ステップS09では、
図12に示すように、発進基地7と反対側の褄部に褄部の凍土41が造成される。ステップS09は、本発明の止水工程の一部に相当する。より詳細には、発進基地7と反対側の褄部にブラインが流れる凍結管(水平管、垂直管)が埋設され、外殻シールド4の内側のうち、本線シールド2及び本線シールド2に分岐合流するランプシールド3(
図12では図示せず)を除く領域に褄部の凍土41が造成される。例えば、褄部の凍土41は、3mの厚さとすることができる。これにより、褄部から外殻シールド4内への水の浸入を抑制することができる。褄部の凍土41の厚さは、上記に限定される
もではなく、地中拡幅部1の周囲の土圧、水圧、深度、土質、及び先行シールド6や後行シールド6の径などに基づいて適宜決定することができる。なお、褄部の凍土41に代えて到達立坑を設けて、止水するようにしてもよい。
【0037】
ステップS10では、
図13に示すように、外殻シールド4の外周に外周の凍土42が造成される。ステップS10は、本発明の止水工程の一部に相当する。ここで、
図14は、外殻シールドの外周に凍土が造成された状態を示す。
図14は、外殻シールド4の部分拡大図であり、他の先行セグメント5や後行セグメント6は省略されている。先行シールド5及び後行シールド6の上部に、これらのシールドの軸方向に延びる凍結管85(水平管)が設置され、先行シールド5及び後行シールド6の外側、換言すると外殻シールドの外周に例えば厚さ0.8mの外周の凍土42が造成される。これにより、外殻シールド4内への水の浸入を抑制することができる。外周の凍土42の厚さは、上記に限定されるもではなく、地中拡幅部1の周囲の土圧、水圧、深度、土質、及び先行シールド6や後行シールド6の径などに基づいて適宜決定することができる。なお、地山に埋設する凍結管(垂直管)を用いて外周の凍土42を造成してもよい。
【0038】
ステップS11では、外殻シールド4の内部にRCリング覆工体9が構築される。
図15は、内部にRCリング覆工体を構築する場合の外殻シールドの外観を示す。ステップS11は、本発明の外殻シールドの構築工程の一部に相当する。ここで、
図16は、セグメント、エアモルタルの撤去状況を示す。
図16は、外殻シールド4の部分拡大図であり、他の先行セグメント5や後行セグメント6は省略されている。
図16に示すように、後行シールド6と先行シールド5とを連通させて連通部を形成するため、後行シールド6の側方のセグメント、より詳細にはセグメントのスキンプレートが撤去される。また、先行シールド5に充填されたエアモルタル(AM)が撤去される。エアモルタル(AM)の撤去には、バックホウなどの重機が用いられる。また、撤去したセグメントやエアモルタル(AM)は、搬出車輛を用いて排出することができる。
【0039】
図17は、先行シールド5と後行シールド6が水平方向に連なる箇所における防水シートの設置状況を示す。また、
図18は、先行シールド5と後行シールド6が垂直方向に連なる箇所における防水シートの設置状況を示す。
図17、
図18は、外殻シールド4の部分拡大図であり、他の先行セグメント5や後行セグメント6は省略されている。
図17、
図18に示すように、連通部を構成する後行シールド6の端部の外周面に先行シールド5の端部が接続されている。連通部を構成する後行シールド6の端部は、切削可能なセグメント52と比較して止水性の高い鋼製セグメント61によって構成されている。連通部を構成する先行シールド5の端部は、鋼製セグメント51の端部に連なる、一部が切削された切削可能なセグメント52によって構成されている。防水シート86は、上記のような切削可能なセグメント52からなる先行シールド5の端部の内側と鋼製セグメント61からなる後行シールド6の端部の外周面を跨ぐように設置されている。防水シート86は、固定部材87(ナット87a、プレート87d、ネオプレンゴム87e、プチルゴムワッシャー87c、ワッシャー87b)によって固定されている。
【0040】
図19は、先行シールドと後行シールドが水平方向に連なる箇所におけるRCリング覆工体の構築状況を示す。また、
図20は、先行シールドと後行シールドが垂直方向に連なる箇所におけるRCリング覆工体の構築状況を示す。
図19、
図20は、外殻シールド4の部分拡大図であり、他の先行セグメント5や後行セグメント6は省略されている。
図19、
図20に示すように、外殻シールド4の内部にRCリング覆工体を構成する鉄筋が組み立てられる。鉄筋の組立が完了すると、
図21に示すように、コンクリートが打設されRCリング覆工体9が完成する。なお、鉄筋の周囲に型枠を組み立てるようにしてもよい。
【0041】
ステップS12では、
図22に示すように、外殻シールド4の外周の凍土が解凍される。
【0042】
ステップS13では、
図23に示すように、外殻シールド4内が掘削される。ステップS13は、本発明の掘削工程に相当する。外殻シールド4内部の掘削は、上部から階段状になるように複数段に分けて掘削される。その際、本線シールド2の上部のセグメントが取り外される。外殻シールド4内部の掘削は、既存のベンチカット工法によって行うことができる。また、発進基地7と反対側の褄部においては、掘削と平行してコンクリートが打設される。換言すると、上部から順に複数回に分けて、コンクリートが打設され、褄壁が構築される。発進基地7と反対側の褄壁は、既存の逆巻き工法によって構築することができる。
【0043】
ステップS14では、褄部の凍土41が解凍される。また、ランプシールド3の道路線形と本線シールド2の道路線形とが分岐合流するように道路が構築され、地中拡幅部の施工が完了する(
図24参照)。
【0044】
<効果>
以上説明した地中拡幅部1の施工フローによれば、本線シールド2のセグメントを取り外し、本線シールド2の回りに地中拡幅部1を構築するためのシールドの発進基地7を構築することで、非開削で地中拡幅部1を施工することができる。また、先行シールド5、及び後行シールド6の外周に外周の凍土42を造成することで、地山が安定し、また、先行シールド5、及び後行シールド6の内側への水の浸入を抑制できる。その結果、地下水環境への影響を最小限に抑えることができる。また、発進基地7の反対側の褄部に褄部の凍土41を造成することで、先行シールド5、及び後行シールド6の内側への水の浸入をより効果的に抑制できる。また、先行シールド5内にエアモルタル(AM)を充填することで、後行シールド6での切削をより安定的に行うことができる。
【0045】
また、後行シールド6を構成する鋼製セグメント61の一部(スキンプレート)を撤去して先行シールド5と隣接する後行シールド6とが連通する連通部を構築し、連通部を構成する後行シールド6の端部の外周面に先行シールド5の端部を接続し、かつ、先行シールド5の端部の内側と後行シールド6の端部の外周面を跨ぐように防水シート86を設置することで、先行シールド5、及び後行シールド6の内側への水の浸入を更に抑制できる。
【0046】
また、鉄筋を組み立て、コンクリートを打設し、RCリング覆工体9を完成させて外殻シールド4を構築し、その後、外殻シールド4の内側を掘削することで、地表面の沈下を最小限に抑えることができる。これにより、十分に安全性を確保した上で、地中拡幅部1の施工を行うことができる。
【0047】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る地中拡幅部の施工方法、及び当該地中拡幅部の施工方法によって構築される地中拡幅部について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成、同様の工程には同一符号を付し、説明を割愛する。
【0048】
<全体構成>
図25は、第2実施形態に係る地中拡幅部の施工方法によって構築される地中拡幅部の概要を示す。第2実施形態に係る地中拡幅部1の構成は、第2実施形態に係る地中拡幅部1と基本的に同じであり、本線シールド2とランプシールド3が分岐・合流する分岐合流部を拡幅するものであり、外殻シールド4を備える。但し、第2実施形態に係る地中拡幅部1では、第1実施形態と異なり、発進基地7がランプシールド3に設けられる。そのた
め、
図25では、本線(本線シールド2)の単独側が紙面手前側であり、本線シールド2とランプシールド3が分岐・合流する分岐合流部側が紙面奥側となっている。
【0049】
<施工方法>
図26は、第2実施形態に係る地中拡幅部の施工フローを示す。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0050】
まず、ステップS01では、
図27に示すように、ランプシールド3の任意の位置に地中立坑82が構築される。より詳細には、ランプシールド3の側部のうち本線シールド2と隣接する側部と反対側の側部にブライン(本発明の冷却媒体に相当する)が流れる凍結管(水平管、垂直管)が埋設され、立坑82よりも広い領域について立坑用の凍土81が造成される。立坑用の凍土81の造成は、既存の地盤凍結工法を用いることができる。立坑用の凍土81が造成されることで、立坑82の周囲の地山が保持され、また、立坑82内への水の浸入を抑制することができる。立坑用の凍土81が造成されると、ランプシールド3を構成するセグメントの一部が取り外され、ランプシールド3の側部に立坑82が構築される。なお、立坑用の凍土81の造成に代えて、薬液注入等による地盤改良を行うようにしてもよい。
【0051】
ステップS02では、
図28に示すように、円周シールドを構築する密閉式シールド機により掘進が開始される。より詳細には、立坑82内で密閉式シールド機が本線シールド2及びランプシールド3の外周に設けられたガイドリングに設置され、密閉式シールド機が本線シールド2及びランプシールド3の周りを掘進する。
図28の点線は、円周シールドの未構築部分を示す。
【0052】
ステップS03では、
図29に示すように、ドーナツ形状の円周シールド83が完成する。円周シールド83は、先行シールド5及び後行シールド6を構築するシールド機の発進基地7、及び地中拡幅部1の分岐・合流部側の褄壁として機能する。
【0053】
ステップS04からステップS14では、外殻シールド4が構築される。まず、ステップS04では、
図30に示すように、先行シールド5が構築される。第1実施形態と異なり、分岐・合流部側から本線シールド2の単独側に向けて先行シールド5が構築される。
【0054】
ステップS05では、先行シールド5が完成する(
図7参照)。ステップS06−1では、先行シールド5にエアモルタル(AM)が充填され、更に、第2実施形態では、先行シールド5内に、凍結管85、RCリング覆工体9が構築される。
図31は、第2実施形態に係る先行シールド内の構築状況を示す。エアモルタル(AM)は、後に構築される後行シールド6と重なる部分(以下、切削部ともいう)に充填される。エアモルタル(AM)は、施工誤差を許容するため、切削部よりもやや大きい範囲に充填される。換言すると、後行シールド6の最外周面よりも外側の位置にエアモルタル(AM)用の型枠が組み立てられ、エアモルタル(AM)が充填される。また、エアモルタル(AM)とエアモルタル(AM)の間には、RCリング覆工体9が構築される。更に、
図31に示す例では、先行シールド5の上部2カ所に、先行シールドの軸方向に延びる凍結管85が設置される。凍結管85は、例えば所謂Uバンドにより先行シールド5の上部(鋼製セグメントの内側面)に固定される。また、凍結管85を覆うようにモルタル88(コンクリートでもよい)が打設され、更にそのモルタル88を覆うように断熱材(例えば、発泡ウレタン)が吹き付けられる。
【0055】
ステップS07では、後行シールド6が構築される(
図9参照)。ここで、
図32は、第2実施形態に係る後行シールドの構築状況を示す。
図32に示すように、先行シールド5と後行シールド6は、交互に配置され、シールドの軸方向と直交する断面において一部
が重なっている。先行シールド5のうち、後行シールド6と重なる領域は、切削可能なセグメント52で構成され、それ以外の領域は、鋼製セグメント51で構成されている。なお、後行シールド6は、全て鋼製セグメント61で構成されている。また、先行シールド5には、切削部及び切削部よりも大きい領域にエアモルタル(AM)が充填されるが、後行シールド6が構築されることで、切削部のエアモルタル(AM)が撤去され、施工誤差を許容するために充填された切削部の外側のエアモルタル(AM)が残る。
【0056】
ステップS08では、後行シールド6が完成する(
図11参照)。その結果、施工誤差を許容するために充填された切削部の外側のエアモルタル(AM)が残され、RCリング覆工体9が構築され、凍結管85が設置された先行シールド5と後行シールド6が交互に配置され、環状の外殻シールド4が形成される。
【0057】
ステップS09では、発進基地7と反対側の褄部に褄部の凍土41が造成される(
図12参照)。ステップS10では、外殻シールド4の外周に外周の凍土42が造成される(
図13参照)。ここで、
図33は、第2実施形態に係る外殻シールドの外周に凍土が造成された状態を示す。
図33は、外殻シールド4の部分拡大図であり、他の先行セグメント5や後行セグメント6は省略されている。後行シールド6の上部にも、先行シールド5と同じく、凍結管85(水平管)が設置され、凍結管85を覆うようにモルタル88が打設され、モルタル88を覆うように断熱材が吹き付けられる。その結果、先行シールド5及び後行シールド6の外側、換言すると外殻シールドの外周に例えば厚さ0.8mの外周の凍土42が造成される。
【0058】
ステップS11では、外殻シールド4の内部にRCリング覆工体9が構築される(
図15参照)。具体的には、まず、後行シールド6と先行シールド5とを連通させて連通部を形成するため、後行シールド6の側方のセグメント、より詳細にはセグメントのスキンプレートが撤去される。その際、施工誤差を許容するために充填された切削部の外側のエアモルタル(AM)が撤去される。また、
図34に示すように、先行シールド5と後行シールド6が水平方向に連なる箇所には、吹付防水として、例えば硬質ウレタンの層86aが設けられる。そして、第2実施形態では、先行シールド5内に、先行してRCリング覆工体9が構築されているため、後行シールド6内にRCリング覆工体9が構築され、先行シールド5内のRCリング覆工体9と後行シールド6内のRCリング覆工体9が鉄筋継手などにより接続される。
【0059】
ステップS12では、外殻シールド4の外周の凍土が解凍される(
図22参照)。次に、ステップS13では、外殻シールド4内が掘削される(
図23参照)。また、外殻シールド4の内側に耐火モルタル等が吹き付けられる。ステップS14では、褄部の凍土41が解凍される。また、ランプシールド3の道路線形と本線シールド2の道路線形とが分岐合流するように道路が構築され、地中拡幅部の施工が完了する(
図25参照)。
【0060】
<効果>
以上説明した第2実施形態に係る地中拡幅部1の施工フローによれば、第1実施形態と同じく、本線シールド2のセグメントを取り外し、本線シールド2の回りに地中拡幅部1を構築するためのシールドの発進基地7を構築することで、非開削で地中拡幅部1を施工することができる。また、先行シールド5、及び後行シールド6の外周に外周の凍土42を造成することで、地山が安定し、また、先行シールド5、及び後行シールド6の内側への水の浸入を抑制できる。その結果、地下水環境への影響を最小限に抑えることができる。また、発進基地7の反対側の褄部に褄部の凍土41を造成することで、先行シールド5、及び後行シールド6の内側への水の浸入をより効果的に抑制できる。また、先行シールド5内にエアモルタル(AM)を充填することで、後行シールド6での切削をより安定的に行うことができる。
【0061】
また、凍結管85をモルタル88、及び断熱材89で覆うことで冷却性能が向上する。そのため、より効率よく凍土42を造成することができ、地山が安定する。
【0062】
<止水装置>
凍結工法に用いる止水装置の一例について、説明する。以下に説明する止水装置は、例えば、ステップS06、ステップS06−1、ステップS07等における先行シールド5や後行シールド6の周囲の凍土42の造成に用いることができる。
【0063】
図35は、シールドを凍結する場合のシールドの断面図を示す。
図35は、シールドの一例として先行シールド5を示す。
図36は、
図35のA−A断面図を示す。
図35、
図36に示すように、止水装置は、凍結管85、被覆材88、断熱材89を含む。先行シールド5を構成する鋼製セグメント51の内側に凍結管85が設置されている。鋼製セグメント51は、コンクリートを中詰めした鋼製セグメントからなる。凍結管85は、図示しない所謂Uバンドで鋼製セグメント51に固定されている。また、凍結管85は、被覆材88(コンクリート又はモルタル等)で被覆されている。また、被覆材88は、断熱材89(例えば、発泡ウレタン)で被覆されている。
【0064】
ここで、
図37は、凍結管が被覆材で被覆された場合を示す。
図37に示す例では、凍結管85の表面に、被覆材88の内部において凍結管85の伸縮を許容するための低摩擦材(例えば、シリコン、グリースなど)が塗布され、凍結管85と被覆材との間に低摩擦材が介在している。これにより、凍結管85の内部にブラインが流れ、凍結管85が温度低下により縮んだ場合でも凍結管85の縮みが許容される。
【0065】
図38は、凍結管の一例を示す。
図38に示す例では、2本の凍結管85が、凍結管85の軸方向の伸縮を許容する継手851(例えば、所謂フレキシブル管)によって接続されている。継手851は、内径が凍結管85の外径よりも僅かに大きく形成された筒状部材からなり、両端部の内側に環状の止水部材852が設けられている。凍結管85の内部にブラインが流れ、凍結管85が温度低下により縮んだ場合(
図37の矢印参照)でも、継手851が凍結管85の接続部を覆うことで、ブラインの漏れを抑制することができる。なお、継手851は、外径を凍結管85の内径よりも小さくし、凍結管85の内側に設置するようにしてもよい。この場合、筒状部材からなる継手851の両端部の外側に止水部材852が設けられる。また継手851は、樹脂によって構成するとともに形状を蛇腹状として伸縮を許容するようにしてもよい。
【0066】
図39は、凍結管の他の例を示す。
図39に示す凍結管85は、ブラインの流れ方向において上流側の凍結管の接続口85aが、下流側の凍結管の接続口85bに内包できるよう、下流側の凍結管の接続口85bよりも細く形成されている。下流側の凍結管の接続口85bの径は、他の部分(本体部)の径と同じである。より詳細には、上流側の凍結管の接続口85aは、テーパ部85a1を介して本体部より径が細く形成されており、端部に外側に突出し、下流側の凍結管の接続口85bに内包された際に、下流側の凍結管の接続口85bの内面と接する環状の突出部85a2が形成されている。一方で、下流側の凍結管の接続口85bは、端部に、突出部85a2の移動を規制する規制部85b1が形成されている。規制部85b1は、傾斜面85b2を有している。上流側の凍結管の接続口85aが下流側の凍結管の接続口85bに挿入されると、突出部85a2が規制部85b1の傾斜面85b2と接する。突出部85a2が規制部85b1の傾斜面85b2を乗り越えると、突出部85a1の軸方向の移動が規制される。なお、上記構成に代えて、上流側の凍結管の接続口85a、及び下流側の凍結管の接続口85bに互いに螺合する螺旋溝を形成し、ネジ構造により両者を接続できるようにしてもよい。また、パッキンなど、ブラインの漏れを抑制する止水部を形成してもよい。
図39に示す凍結管85によれば、外側
の突出がないため、鋼管セグメント51との密着性が向上する。その結果、凍結管85からの冷熱をより効率よく地山側に伝達することができる。また、
図39に示す凍結管85によれば、別部材としての継手が不要となる。そのため、部品点数を削減することができる。
【0067】
凍結工法に、上述した止水装置を用いることで、鋼製セグメント51を凍結することができ、そのエネルギー(冷熱)を鋼製セグメント51と接する地山に効率よく伝達することができる。また、凍土42を構築する際の作業効率が向上し、より効率よく凍土42を造成することができる。
【0068】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は、可能な限り実施形態を組み合わせて実施することができる。