【文献】
INOUE Atsuharu, et al.,Switchable dispersivity and molecular-trapping performance of mesostructured CaCO3-thermosensitive polymer composite microspheres,Journal of Materials Chemistry B,2015年,Vol.3,pp.3604-3608
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平均粒径が0.15μm以上95μm以下である炭酸カルシウム粒子と、該炭酸カルシウム粒子の表面に形成されたポリマーからなる膜とを含有する分離用担体の製造方法であって、
重合性モノマーと平均粒径が0.15μm以上95μm以下である炭酸カルシウム粒子とを含有する第1の溶媒を調製する工程と、
前記第1の溶媒を揮発させ、前記炭酸カルシウム粒子と前記重合性モノマーとの混合物の塊を得る工程と、
前記混合物の塊を含有する第2の溶媒を調製する工程と、
前記第2の溶媒中の前記重合性モノマーを重合させる重合工程と、を有し、
前記第1の溶媒は、前記重合性モノマーに対する良溶媒であり、かつ、前記炭酸カルシウム粒子に対する貧溶媒であり、
前記第2の溶媒は、前記重合性モノマー及び前記炭酸カルシウム粒子に対する貧溶媒であり、
前記炭酸カルシウム粒子と前記ポリマーとの質量比が1:0.01〜1:0.3である、
方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シリカは、塩基条件下での耐久性が低いため、塩基性条件下における使用には適していないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、塩基性条件下における使用に適した分離用担体、分離用担体の製造方法、並びにこのような分離用担体を備えるカラム、及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、所定の平均粒径の炭酸カルシウムが、分離用担体として使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供することを目的とする。
【0007】
(1) 平均粒径が0.15μm以上95μm以下である炭酸カルシウム粒子を含有する、分離用担体。
【0008】
(2) 前記炭酸カルシウム粒子の表面に形成されたポリマーからなる膜をさらに含有する、(1)に記載の分離用担体。
【0009】
(3) 前記ポリマーが温度応答性ポリマーである、(2)に記載の分離用担体。
【0010】
(4) 前記炭酸カルシウム粒子と前記ポリマーとの質量比が1:0.01〜1:0.3である、(2)又は(3)に記載の分離用担体。
【0011】
(5) 前記炭酸カルシウム粒子の比表面積が、25m
2/g以上600m
2/g以下である(1)から(4)のいずれかに記載の分離用担体。
【0012】
(6) 液体クロマトグラフィー用又は固相抽出用である、(1)から(5)のいずれかに記載の分離用担体。
【0013】
(7) 塩基性条件下における分離に用いられる、(1)から(6)のいずれかに記載の分離用担体。
【0014】
(8) (1)から(7)のいずれかに記載の分離用担体を備える、液体クロマトグラフィー用又は固相抽出用カラム。
【0015】
(9) (8)に記載のカラムを備える、液体クロマトグラフィー用又は固相抽出用装置。
【0016】
(10) 平均粒径が0.15μm以上95μm以下である炭酸カルシウム粒子と、該炭酸カルシウム粒子の表面に形成されたポリマーからなる膜とを含有する分離用担体の製造方法であって、
重合性モノマーと平均粒径が0.15μm以上95μm以下である炭酸カルシウム粒子とを含有する第1の溶媒を調製する工程と、
前記第1の溶媒を揮発させ、前記炭酸カルシウム粒子と前記重合性モノマーとの混合物の塊を得る工程と、
前記混合物の塊を含有する第2の溶媒を調製する工程と、
前記第2の溶媒中の前記重合性モノマーを重合させる重合工程と、を有し、
前記第1の溶媒は、前記重合性モノマーに対する良溶媒であり、かつ、前記炭酸カルシウム粒子に対する貧溶媒であり、
前記第2の溶媒は、前記重合性モノマー及び前記炭酸カルシウム粒子に対する貧溶媒である、方法。
【0017】
(11) 前記重合工程における重合を、光重合により行う、(10)に記載の方法。
【0018】
(12) 前記第1の溶媒を調製する工程において、前記炭酸カルシウム粒子と前記重合性モノマーとを1:0.010〜1:0.3の質量比で前記第1の溶媒に含有させる、(10)又は(11)に記載の方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、塩基性条件下における使用に適した分離用担体、分離用担体の製造方法、並びにこのような分離用担体を備えるカラム、及び装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに特に限定されない。
【0022】
<分離用担体>
本発明の分離用担体は、平均粒径が0.15μm以上95μm以下である炭酸カルシウム粒子を含有する。
【0023】
本発明において、「分離用担体」とは、物質の分離に用いられる担体を意味する。「物質の分離に用いられる」とは、例えば、複数の物質が混在する液体等の系において、1つの物質又は2つ以上の物質を検出、定量又は分取可能な程度にまで分離することを目的として用いられることを意味する。分離対象の物質は、化合物(低分子、高分子、ペプチド、たんぱく質、DNA、RNA等)のいずれであってもよく、特に限定されない。
【0024】
(炭酸カルシウム粒子)
炭酸カルシウムは、その特性上、シリカよりも塩基性条件における耐久性があるため、炭酸カルシウム粒子を分離用担体として使用できれば、シリカよりも塩基性条件における使用に適した分離用担体として使用できることが期待される。ここで、炭酸カルシウムは、液体クロマトグラフィーの歴史の初期段階では分離用担体として使用されていた(例えば、http://www.wakayama−edc.big−u.jp/kankyo/ekikuro/ekikuro.pdfの「1(1)クロマトグラフィーの歴史」)という経緯がある。しかしながら、炭酸カルシウム粒子は、液体クロマトグラフィー等の精密な分離解析の分離用担体としては使用できないと考えられており(例えば、http://www.gelifesciences.co.jp/newsletter/biodirect_mail/technical_tips/tips48.htmlを参照)、現在は、炭酸カルシウムは分離用担体としては使用されておらず、もっぱらシリカが使用されている。
【0025】
このように、炭酸カルシウムは、長年にわたって、分離用担体として使用できないとされていたが、本発明者らは、平均粒径が0.15μm以上95μm以下の炭酸カルシウム粒子が、液体クロマトグラフィー等における分離用担体として機能することを見出した。さらには、上述のとおり、炭酸カルシウム粒子は、シリカよりも塩基性条件における耐久性があるため、本発明は、塩基性条件下における使用に適した分離用担体を提供する。
【0026】
本発明の炭酸カルシウム粒子は、平均粒径が0.15μm以上95μm以下である粒子であれば特に限定されず、上記範囲において、目的に応じて、適宜平均粒径を調整することができる。例えば、本発明の分離用担体を、精製等の分取を目的として使用する場合は、炭酸カルシウム粒子の平均粒径は15μm以上85μm以下であることが好ましく、20μm以上82μm以下であることがより好ましく、30μm以上80μm以下であることがより一層好ましく、38μm以上75μm以下であることさらに好ましい。また、本発明の分離用担体を分析に用いる場合は、炭酸カルシウム粒子の平均粒径は0.20μm以上25μm以下であることが好ましく、0.35μm以上20μm以下であることがより好ましく、0.50μm以上15μm以下であることがより一層好ましく、1.0μm以上10μm以下であることがさらに好ましく、2.5μm以上7.0μm以下であることが特に好ましい。なお、炭酸カルシウム粒子の平均粒径は、SEM像より測定する。
【0027】
炭酸カルシウムの結晶構造は、カルサイト、アラゴナイト、バテライト、アモルファスの4つの形態のものが知られているが、炭酸カルシウム粒子の平均粒径を上記範囲内に制御しやすく、分離能の高い分離用担体が得られやすく、さらには塩基性下での耐久性がより優れるという観点から、本発明の炭酸カルシウム粒子はバテライトの結晶形であることが好ましい。本発明の炭酸カルシウム粒子は、単一の結晶構造から構成されていてもよいが、複数種の結晶構造が混在してもよい。複数種の結晶構造が混在する場合、全炭酸カルシウムのうち、80質量%以上がバテライトであることが好ましく、85質量%以上がバテライトであることがより好ましく、90質量%以上がバテライトであることがより一層好ましく、95質量%以上がバテライトであることがさらに好ましく、99%以上がバテライトであることが特に好ましい。
【0028】
バテライトの結晶形であって、平均粒径が0.15μm以上95μm以下の範囲に制御された炭酸カルシウム粒子は、以下のような方法で製造することができる。
【0029】
まず、炭酸源(Na
2Co
3等)を含む水溶液と、カルシウム源(CaCl
2等)を含む水溶液と、ポリスチレンスルホン酸等の親水性ポリマーとを溶解させた水溶液とを混合し、(例えば、500rpmで)撹拌して混合液を得る。この混合液を、24時間程度静置した後、濾過(吸引濾過等)してから、乾燥することで(乾燥条件は、例えば、10〜60℃、30分〜3時間である。)、得ることができる。なお、0.15μm以上95μm以下の範囲内での平均粒径の制御は、平均粒径を小さくする場合は、攪拌速度を速くすることにより行うことができ、平均粒径を大きくする場合は、攪拌子を小さくすることにより行うことができる。また、炭酸カルシウムのバテライトの結晶形は、安定性が低く、カルサイトに転移しやすいので、安定性を高く保つために、後述する膜形成ポリマーにより表面を膜で覆うことが好ましい。膜形成ポリマーとして親水性ポリマーを用いることで、炭酸カルシウム粒子の表面が親水性ポリマーにより覆われ、平均粒径を制御しやすくなる。
【0030】
本発明における炭酸カルシウムの比表面積は、特に限定されないが、大きいほど分離能が高くなる傾向にあることから、その下限は5m
2/g以上であることが好ましく、10m
2/g以上であることがより好ましく、15m
2/g以上であることがより一層好ましく、20m
2/g以上であることがさらに一層好ましく、25m
2/g以上であることが特に好ましい。本発明における炭酸カルシウムの比表面積の上限は1300m
2/g以下であることが好ましく、1100m
2/g以下であることがより好ましく、900m
2/g以下であることがより一層好ましく、700m
2/g以下であることがさらに一層好ましく、600m
2/g以下であることが特に好ましい。なお、本発明における炭酸カルシウムの比表面積は、BET法により測定する。
【0031】
(膜形成ポリマー)
本発明の分離用担体は、炭酸カルシウム粒子の表面に形成されたポリマー(以下、本明細書において「膜形成ポリマー」と略称する場合がある。)からなる膜をさらに含有することが好ましい。これにより、膜形成ポリマーの種類に応じて分離用担体に様々な特性を与えることができ、また、炭酸カルシウム中のバテライトをより安定させることができる。
【0032】
本発明の膜形成ポリマーとしては、従来の分離用担体として使用されているようなポリマーを使用でき、分離対象の物性等に応じて、適宜選択できる。具体的には、温度応答性ポリマー、親水性ポリマー、疎水性ポリマー、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー等のポリマーを使用できる。膜形成ポリマーは、重合性モノマーの重合により得られ、例えば、以下の式(1)、式(2)で表されるようなモノマーの重合体であってもよい。
【0034】
式(1)、(2)中、R
1は、置換基を表すが、式(1)、(2)で表されるモノマーは、例えば、以下の、式(3)で表されるアクリルアミド系モノマー、式(4)で表されるメタクリルアミド系モノマー、式(5)で表されるメタアクリレート系モノマー、式(6)で表されるアクリレート系モノマー、式(7)で表されるビニルエステル系モノマー、式(8)で表されるビニルアミド系モノマー、式(9)で表されるスチレン系モノマーが挙げられる。式(3)〜(9)中のR
2としては、炭化水素基、水素原子、アミノ基(脂肪族基を置換基として有してもよい)等が挙げられる。
【0041】
【化08】
式(9)中のR
2は、ベンゼン環のいずれの箇所(ただし、既に置換されている箇所は除く)が置換されていてもよいことを示す。
【0042】
温度応答性ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(又はN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエーテル誘導体等を構成モノマーとして構成されたポリマーや、これらのうちの2種類以上のモノマーの共重合体であってもよい。また、これらのモノマー以外のモノマーとの共重合、ポリマー同士のグラフト重合又は共重合を行ったものを用いてもよく、あるいはこれらモノマーの単独重合体と共重合体の混合物を用いてもよい。
【0043】
具体的な温度応答性ポリマーを構成するモノマーとしては、例えば、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリルアミド、N,N−エチルメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。温度応答性ポリマーは、これらのモノマーの単独重合体であってもよく、2種以上の共重合体であってもよい。また、これらのモノマーとさらに共重合してもよいモノマーとしては、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、エチレンオキシド、(メタ)アクリル酸及びその塩、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、セルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらのうち、温度応答性ポリマーとしては、特に、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド(NIPAAm)の重合体、又は、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド(NIPAAm)と他の重合性モノマーの共重合体であることが好ましい。
【0044】
疎水性ポリマーを構成するモノマーとしては、例えば、以下の式(10)で示されるブチルメタクリレート、式(11)で表されるオクタデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0047】
カチオン性ポリマーを構成するモノマーとしては、例えば、以下の式(12)で示されるN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
【0049】
親水性ポリマーを構成するモノマーとしては、例えば、以下の式(13)で示される2−(メタクリロイルオキシ)エチル2−(トリメチルアンモニオ)エチルリン酸等が挙げられる。
【0051】
アニオン性ポリマーを構成するモノマーとしては、例えば、以下の式(14)で示されるメタクリル酸等が挙げられる。
【0053】
上記ポリマーは、安定して膜を形成するためには、架橋されていることが好ましい。架橋剤は、二重結合を2つ以上有する公知の架橋剤であれば特に限定されないが、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールジアクリレートモノステアレート、ジビニルベンゼン、N,N’−ジアリル−L−酒石酸ジアミド、N,N’−ジアリル−酒石酸ジアミド、ピペラジンジアクリルアミド等が挙げられる。架橋剤の添加量は、膜形成ポリマーを構成する重合性モノマーの量に応じて、適宜設定することができ、例えば、重合性モノマーと架橋剤との質量比が、1:0.001〜1:1であることが好ましく、1:0.01〜1:0.5であることがより好ましく、1:0.04〜1:0.2であることがさらに好ましい。
【0054】
本発明の分離用担体が膜形成ポリマーを含有する場合、膜形成ポリマーの含有量が過大であると、膜が厚くなりすぎて、均一な膜が得られにくくなり、分離能が低下する恐れがある。他方、膜形成ポリマーの含有量が少なすぎると、膜で炭酸カルシウム粒子の表面全体を覆いにくくなり、炭酸カルシウム粒子中のバテライトが安定せず、分離能が低下する恐れがある。このことから、炭酸カルシウム粒子と膜形成ポリマーとの質量比は、1:0.0001〜1:1であることが好ましく、1:0005〜1:0.5であることがより好ましく、1:0.010〜1:0.30であることがさらに好ましく、0.015〜1:0.040であることが特に好ましい。
【0055】
本発明の分離用担体が、炭酸カルシウム粒子と上記膜形成ポリマーとから構成される場合、その平均粒径は、目的に応じて適宜決定されてもよい。例えば、本発明の分離用担体を、精製等の分取を目的として使用する場合は、炭酸カルシウムの分離用担体の平均粒径は15μm以上85μm以下であることが好ましく、20μm以上82μm以下であることがより好ましく、30μm以上80μm以下であることがより一層好ましく、38μm以上75μm以下であることさらに好ましい。また、本発明の分離用担体を分析に用いる場合は、本発明の分離用担体の平均粒径は0.20μm以上25μm以下であることが好ましく、0.35μm以上20μm以下であることがより好ましく、0.50μm以上15μm以下であることがより一層好ましく、1.0μm以上10μm以下であることがさらに好ましく、2.5μm以上7μm以下であることが特に好ましい。なお、膜形成ポリマーを含有する態様の本発明の分離用担体の平均粒径は、炭酸カルシウム粒子の測定と同様の方法で測定される。
【0056】
本発明の炭酸カルシウムの表面において、上記の膜形成ポリマーからなる膜の平均膜厚は、10.0nm以上500nm以下であることが好ましく、20.0nm以上400nm以下であることがより好ましく、30.0nm以上300nm以下であることがさらに好ましく、50.0nm以上250nm以下であることが特に好ましい。また、炭酸カルシウムの表面の略全面(好ましくは、表面の90%以上の面積、より好ましくは表面の99%以上の面積)が覆われていることが好ましい。
【0057】
本発明における膜形成ポリマーの分子量は、膜形成ポリマーによる所望の性質を得られるように、適宜設定してもよい。
【0058】
本発明の炭酸カルシウム粒子の表面に膜形成ポリマーが形成された分離用担体の製造方法の詳細は後述する。
【0059】
(用途)
本発明の分離用担体の用途としては、分離対象物質と接触させて用いられる、従来の、検出、測定、分取等を目的とした用途であれば、特に限定されないが、液体クロマトグラフィー用又は固相抽出用であることが好ましく、液体クロマトグラフィー用であることが特に好ましい。また、上述のとおり、本発明の分離用担体は、炭酸カルシウムを用いることから、塩基性条件下における分離に適している。このことから、塩基性条件下における分離に用いられることが好ましい。
【0060】
また、本発明の分離用担体が分取を目的として用いられる場合において、分離対象物質を最終的に回収する方法は、目的や膜形成ポリマーの種類等に応じて、適宜選択できる。例えば、分離対象物質と本発明の分離用担体とを混合した後に、遠心分離を行い、沈殿した分離用担体を回収することで分取が可能である。あるいは、低温で親水性となり、かつ、高温で疎水性となる温度応答性ポリマーを膜形成ポリマーとして用いる場合は、疎水性の有機溶媒(トルエン、ニトロベンゼン等)と、分離対象物質を吸着した分離用担体を含む水と、を低温で混合した後、加温することで、分離用担体を疎水性の有機溶媒の層に移動させることができ、この有機溶媒に含まれる分離用担体を回収することで分取が可能である。
【0061】
<カラム>
本発明は、上述の分離用担体を備える、液体クロマトグラフィー用又は固相抽出用カラムを包含する。上述のとおり、液体クロマトグラフィー、固相抽出に適しているため、上述の分離用担体をカラムに充填することで、液体クロマトグラフィー用カラム、固相抽出用カラムとして使用できる。
【0062】
カラムの種類は、従来の液体クロマトグラフィーや、固相抽出に用いられるものであれば、特に限定されない。
【0063】
<装置>
本発明は、さらに、上記のカラムを備える、液体クロマトグラフィー用又は固相抽出用装置を包含する。
【0064】
液体クロマトグラフィー用装置、固相抽出用装置の種類は、従来の液体クロマトグラフィー用装置、固相抽出用装置に用いられるものであれば、特に限定されない。
【0065】
<分離用担体の製造方法>
本発明の上述の分離用担体のうち、平均粒径が0.15μm以上95μm以下である炭酸カルシウム粒子と、該炭酸カルシウム粒子の表面に形成されたポリマー(上述の膜形成ポリマーからなる膜)とを含有する分離用担体は、例えば、重合性モノマーと、平均粒径が0.15μm以上95μm以下である炭酸カルシウム粒子とを含有する第1の溶媒を調製する工程と、該第1の溶媒を揮発させ、炭酸カルシウム粒子と重合性モノマーとの混合物の塊を得る工程と、該混合物の塊を含有する第2の溶媒を調製する工程と、該第2の溶媒中の重合性モノマーを重合させる重合工程と、を有する方法で製造できる。以下に、かかる本発明の好ましい製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略称する。)について、詳細に説明する。
【0066】
本発明の製造方法における重合性モノマー、炭酸カルシウム粒子は、上述のものと同様のものを例示できる。
【0067】
第1の溶媒は、重合性モノマーに対する良溶媒であり、かつ、炭酸カルシウム粒子に対する貧溶媒である。このような溶媒であれば、特に限定されず、重合性モノマーの種類に応じて適宜変更することができる。例えば、重合性モノマーがN−イソプロピル(メタ)アクリルアミド(NIPAAm)、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドである場合、第1の溶媒としては、クロロホルム、酢酸エチル、THF(テトラヒドロフラン)、メタノール、エタノール等を用いることができる。あるいは、重合性モノマーがオクタデシルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレートである場合、第1の溶媒としては、ヘキサン、ペンタン、ヘプタンを用いることができる。また、本発明において、「良溶媒」とは、20℃における溶媒1mLに対する対象物質(第1の溶媒においては重合性モノマー)の溶解量が0.01g以上である溶媒のことを意味する。また、「貧溶媒」とは、20℃における溶媒1mLに対する対象物質(第1の溶媒においては炭酸カルシウム粒子、第2の溶媒においては炭酸カルシウム粒子及び重合性モノマー)の溶解量が0.001g以下である溶媒のことを意味する。
【0068】
第2の溶媒は、炭酸カルシウム粒子及び重合性モノマーに対する貧溶媒である。このような溶媒であれば、特に限定されず、重合性モノマーの種類に応じて適宜変更することができる。例えば、重合性モノマーがN−イソプロピル(メタ)アクリルアミド(NIPAAm)、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドである場合、第2の溶媒としてはヘキサン、ペンタン、ヘプタンを用いることができる。あるいは、重合性モノマーがオクタデシルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレートである場合、第2の溶媒としては、メタノール、エタノール、水を用いることができる。
【0069】
本発明において、重合性モノマーと平均粒径が0.15μm以上95μm以下である炭酸カルシウム粒子とを含有する第1の溶媒を調製する工程は、第1の溶媒に、重合性モノマーと平均粒径が0.15μm以上95μm以下である炭酸カルシウム粒子とを含有させることにより行う。このように、第1の溶媒に、重合性モノマーと炭酸カルシウム粒子とが含有させることで、重合性モノマーは第1の溶媒に溶解するが、炭酸カルシウムは、溶解しない。このような状態にすることで、炭酸カルシウム粒子の隙間に、重合性モノマーが入り込みやすくなり、均一な膜を得やすい。第1の溶媒に、重合性モノマーと炭酸カルシウム粒子とを含有させる手段であれば、どのような手段であってもよいが、まず、重合性モノマーを第1の溶媒に含有させて溶解させた後に、炭酸カルシウムを第1の溶媒に含有させることが好ましい。これにより、重合性モノマーが溶解した状態の第1の溶媒が、炭酸カルシウム粒子の隙間に浸透させやすくなり、均一な重合工程後に均一な膜を炭酸カルシウム粒子の表面に形成しやすくなる。
【0070】
本発明の製造方法において、使用する重合性モノマーの量が過大であると、重合工程後の膜が厚くなりすぎて、均一な膜が得られにくなり、製造される分離用担体の分離能が低下する恐れがある。他方、重合性モノマーの量が少なすぎると、膜で炭酸カルシウム粒子の表面全体を覆いにくくなり、分離能が低下する恐れがある。このことから、第1の溶媒に含有させる炭酸カルシウム粒子と重合性モノマーとの質量比は、1:0.0001〜1:1であることが好ましく、1:0005〜1:0.5であることがより好ましく、1:0.010〜1:0.30であることがさらに好ましく、0.015〜1:0.040であることが特に好ましい。
【0071】
また、第1の溶媒には、必要に応じて添加剤(架橋剤)を加えてもよい。また、重合性モノマーを第1の溶媒に溶解させ、炭酸カルシウム粒子をこの第1の溶媒とは異なる別の液体に分散させておき、該液体と第1の溶媒とを混合してもよい。また、第1の溶媒中に、炭酸カルシウム粒子と重合性モノマーとを含有させた後、後述の揮発を行う前に、撹拌を行ってもよい。
【0072】
本発明の製造方法は、第1の溶媒中に、炭酸カルシウム粒子と重合性モノマーとを含有させた後、第1の溶媒を揮発させ、炭酸カルシウム粒子と重合性モノマーとの混合物の塊を得る工程を有する。
【0073】
揮発は、従来の公知のいずれの方法に行ってよく、第1の溶媒の揮発性に応じて適宜選択することができる。
【0074】
本発明の製造方法は、上記混合物の塊を得た後、混合物の塊を含有する第2の溶媒を調製する工程を有する。この混合物の塊は炭酸カルシウム粒子と重合性モノマーからなるものである。第2の溶媒中に含有させた状態であれば、炭酸カルシウム粒子も重合性モノマーも溶解しないため、後述の重合を行った際に、そのまま炭酸カルシウム粒子の表面で重合性モノマーが重合するため、その表面に膜を形成可能となる。
【0075】
本発明の製造方法は、第2の溶媒中に上記混合物の塊を含有させた後、第2の溶媒中の重合性モノマーを重合させる重合工程を有する。上述のとおり、かかる工程で炭酸カルシウム粒子の表面に重合性モノマーの重合体からなるポリマーにより膜を形成できる。重合性モノマーの重合は、重合性モノマーの種類に応じて、公知の重合方法で行うことができるが、加熱により重合を加えると、均一な膜を形成しにくくなることから、光重合であることが好ましい。この場合、光重合開始剤を、第2の溶媒に含有させて、光重合を行うことが好ましい。あるいは、第1の溶媒に光重合開始剤を予め含有させておき、その後、上述の混合物の塊を得ることで、光重合開始剤と重合性モノマーを共存させて、光重合を行ってもよい。
【0076】
上記の第2の溶媒に、混合物の塊を含有させている間や、重合を行っているときに、超音波処理、及び/又は撹拌を行うことが好ましい。これにより、より均一な膜を形成しやすくなる。
【0077】
重合後、得られた分離用単体は、平均粒径が0.15μm以上95μm以下である炭酸カルシウム粒子と、該炭酸カルシウム粒子の表面に形成されたポリマー(上述の膜形成ポリマーからなる膜)とを含有する分離用担体である。
【0078】
重合後の分離用単体は、遠心分離、乾燥を行うことで回収できる。
【0079】
なお、上記で述べた方法は、好ましい製造方法であって、他の方法(融液法)によっても、本発明の分離用単体は製造可能である。
【実施例】
【0080】
<炭酸カルシウム粒子の作製>
(実施例1)
16mMのNa
2CO
3水溶液0.5dm
3に終濃度1.0g/dm
3となるようにPSS(ポリスチレンスルホン酸)を溶解させ500rpmで1分間撹拌しながら(撹拌子サイズ:200mm x 7mm)1MのCaCl
2水溶液16mLを混合し、混合後に25℃で24時間静置した。その後、60℃で3時間乾燥することで平均粒径5.0μmのバテライト型炭酸カルシウム/PSSの複合粒子を得た。PSSの除去得られた粒子を5%NaClO水溶液(50mL)に浸漬し、1分間超音波処理を行った後、25℃で48時間静置し、その後400℃で2時間焼成することで、PSSを除去し、平均粒径5.0μmのバテライト型炭酸カルシウムを作製し、このバテライト型炭酸カルシウムを実施例1に係る分離用担体とした。
【0081】
(実施例2)
炭酸カルシウム粒子の平均粒径が2.5μmとなるように制御した点以外は、実施例1と同様の手順で実施例2に係る分離用担体を作製した。
【0082】
<炭酸カルシウムの表面におけるポリマーからなる膜の形成>
(実施例3:融液法による膜の形成)
ポリマーを形成する重合性モノマーとして、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)(0.50g)を、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)(0.044g)を20cm
3のスクリュー管に入れホットスターラーで60℃に加熱した。NIPAAm、BISが完全に溶解した後に、ナノスペースの拡張をした、実施例1の分離用担体である平均粒径2.5μmの炭酸カルシウムを1.0g加え、6時間撹拌した。その後放冷し、光重合開始剤である2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(BDK)(0.01g)が溶解したヘキサン15cm
3を加え、撹拌しながらキセノンランプを3時間照射し、光重合を行った。重合後、4000rpmで遠心分離を3回行い洗浄し、凍結乾燥により回収し、炭酸カルシウムの表面にNIPAAmのポリマー(以下、「PNIPAAm」と略称する。)からなる膜が形成された、実施例3に係る分離用担体を作製した。
【0083】
(実施例4:溶媒揮発法による膜の形成)
NIPAAm0.05g、BIS0.0441gをクロロホルムに溶かした溶液に、実施例1のバテライト型の炭酸カルシウムの粒子を浸漬させた。クロロホルムが全て揮発した後、0.01gのBDKが溶解したヘキサン15cm
3を加え、撹拌しながらキセノンランプを3時間照射し、光重合を行った。重合後、4000rpmで3回遠心分離を行い洗浄し、凍結乾燥により回収し、実施例4に係る分離用担体を作製した。
【0084】
(実施例5:溶媒揮発法による膜の形成)
NIPAAmの量を、0.025gに変更した点以外は、実施例4と同様の手順で、実施例5に係る分離用担体を作製した。
【0085】
<比表面積、積算細孔容積、平均細孔直径の測定>
実施例1の平均粒径5μmの炭酸カルシウム粒子、実施例2の平均粒径2.5μmの炭酸カルシウム粒子、実施例3の炭酸カルシウム/PNIPAAm粒子について、比表面積、細孔容積、平均細孔直径の測定を測定した。また、参考例1として、シリカ粒子を、参考例2として、SiO
2/PNIPAAm粒子(SiO
2粒子の表面にPNIPAAmの膜が形成)を準備し、これらについても、比表面積、細孔容積、平均細孔直径の測定を測定した。
【0086】
比表面積は、BET法により測定し、積算細孔容積は、平均細孔直径(ポアサイズ)BJH法により測定した。その結果を以下の表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示す結果から、実施例1〜3の分離用担体は、カラムとしての分離能を発揮できるための十分な多孔性を有することがわかった。
【0089】
<カラムの作製>
(実施例6)
PSS除去後の実施例1のバテライト型炭酸カルシウムを、カーボンテトラクロライド/テトラブロモエタン(1:1)(13mL)に懸濁させ、HPLCポンプ(日立ハイテクノロジーズ社製:L−6200 Intelligent Pump)を用いてクロロホルム(グラジエント条件:60min)、メタノール(グラジエント条件:20min)、50%メタノール.aq(グラジエント条件:20min)、メタノール(グラジエント条件:5min)を移動相としてカラム(φ2.1mm×100mm)に充填(25MPa、105min)させることで、実施例1の分離用担体が充填された実施例6に係る順相カラムを作製した。
【0090】
(実施例7)
PNIPAAmによる膜形成後の実施例3のバテライト型炭酸カルシウムをメタノール/水(1:1)(10mL)に懸濁させ、HPLCポンプ(日立ハイテクノロジーズ社製:L−6200 Intelligent Pump)を用いてメタノール/水(1:1)を移動相としてカラム(φ2.1mm×100mm)に充填(25MPa,90min)させることで、実施例3の分離用担体が充填された実施例7に係るカラムを作製した。
【0091】
(実施例8)
実施例3のバテライト型炭酸カルシウムの代わりに実施例4のバテライト型炭酸カルシウムを用いた点以外は、実施例7と同様の手順により実施例8に係るカラムを作製した。
【0092】
(実施例9)
実施例4のバテライト型炭酸カルシウムの代わりに実施例5のバテライト型炭酸カルシウムを用いた点以外は、実施例8と同様の手順により実施例9に係るカラムを作製した。
【0093】
<試験1>
実施例6の順相カラムを用いて、液体クロマトグラフィーのカラムとして機能するかを試験するために、以下の測定試料・分析条件で、液体クロマトグラフィーによる測定試験を行った。
【0094】
(測定試料)
テストステロンの0.1mg/mL酢酸エチル/THF(テトラヒドロフラン)(9/1)溶液をフィルター(0.2μm)に通したものを測定試料とした。
【0095】
(分析条件)
移動相;ヘキサン、酢酸エチル
流速;0.5mL/min
温度;25℃
検出波長;254nm
カラム;炭酸カルシウム・カラム(実施例6のカラム)(φ2.1 mm×100 mm)
【0096】
移動相であるヘキサンと酢酸エチルの溶媒比については、50:50、60:40、70:30と変化させて分析を行った。その結果を、
図1に示す。
図1に示すように、移動相の極性が高くなること(酢酸エチルの量の割合が多いほど)で保持時間が短くなった。このことから、バテライト型炭酸カルシウム粒子を充填したカラムは、順相カラムとして機能することがわかった。また、シャープなピーク形状が得られたことから、実施例1の平均粒径5μmのバテライト型炭酸カルシウムからなる分離用担体は、液体クロマトグラフィー用のカラムに充填される分離用担体として十分に使用可能なことがわかった。
【0097】
<試験2>
カラムの耐久性を試験するために、実施例6の順相カラムを用いて、作製後の初回の測定から、5か月後に25回の測定試験を行い、保持時間の変化を評価した。測定試料・分析条件は、上記の試験1と同様のものを用いた。ただし、移動相のヘキサン、酢酸エチルは、ヘキサン:酢酸エチル=60:40の比とした。その結果を、
図2に示す。
【0098】
図2に示すように、5か月後も使用可能であり繰り返し使用しても保持時間が変化しなかったことから、25回の測定でほぼ一定の保持時間であることから、カラムの耐久性が十分であることがわかった。
【0099】
<SEM画像観察>
実施例3及び4に係る分離用担体(炭酸カルシウム/PNIPAAm)について、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて画像観察を行った。まず、それぞれの分離用担体を導電性テープでアルミニウムの試料台に貼り付け、オスミウム真空蒸着を10秒行いコーティングをした。その後、SEMを用いて結晶形態の観察を行った。実施例3の分離用担体についてのSEM画像を
図3に、実施例4の分離用担体についてのSEM画像を
図4に示す。
【0100】
図3に示すように、融液法により作製した実施例3の分離用担体は、粒子周辺に余分な有機物が存在することがわかった。一方、所定の溶媒揮発法により作製した実施例4の分離用担体は、粒子周辺に余分な有機物が存在していなかった。この結果から、実施例4の所定の溶媒分離法により作製した分離用担体の方が、実施例3の融液法により作製された分離用担体より分散性が非常に良く、粒子表面に均一にPNIPAAmの膜が形成されることがわかった。
【0101】
<試験3>
実施例8、実施例9のカラムを用いて、液体クロマトグラフィーによる測定試験を行った。それぞれ、以下の測定試料・分析条件で、条件を行った。
【0102】
(実施例8についての測定試料)
テストステロンの0.1mg/mL H
2O/THF(9/1)溶液をフィルター(0.2μm)に通したものを測定試料とした。
【0103】
(実施例8についての分析条件)
移動相;水
流速;0.5mL/min
温度;25℃、35℃、40℃
検出波長;254nm
カラム;炭酸カルシウム/PNIPAAm・カラム(実施例8のカラム)(φ2.1mm×100mm)
【0104】
(実施例9についての測定試料)
実施例8と同様の測定試料を用いた。
【0105】
(実施例9についての分析条件)
移動相;水/メタノール(95:5)
流速;0.2mL/min
温度;30℃、40℃
検出波長;254nm
カラム;炭酸カルシウム/PNIPAAm・カラム(実施例9のカラム)(φ2.1mm×100mm)
【0106】
実施例8についての分析結果を、
図5に示す。実施例9についての分析結果を、
図6に示す。
【0107】
NIPAAmのモノマー量が0.025g(炭酸カルシウムの質量に対して0.0025)の実施例9のクロマトグラムはピークは、NIPAAmのモノマー量が0.05g(炭酸カルシウムの質量に対して0.05)である実施例8のものよりもシャープなピーク形状が得られた。このことは、NIPAAmの量を減らすことで、炭酸カルシウム粒子の表面に薄いPNIPAAmの膜を形成でき、サンプルの膜の奥への潜り込みが抑えられたためだと考えられる。この結果から、PNIPAAmの膜が薄い方が、シャープなピーク形状を得られやすいことがわかった。
【0108】
<試験4>
作製した炭酸カルシウム/PNIPAAmのカラム(実施例4)について、塩基性条件下での溶出挙動を確認するために、移動相をpH8に設定し、塩基性化合物であるアミトリプチリンを測定試料として、以下の条件で分析を行った。
【0109】
(測定試料)
アミトリプチリンの0.1mg/mLH
2O/THF(9/1)溶液をフィルター(0.2μm)に通したものを測定試料とした。
【0110】
(分析条件)
移動相;10mM酢酸緩衝液 pH8.0
流速;0.2mL/min
温度;30℃
検出波長;254nm
カラム;炭酸カルシウム/PNIPAAm・カラム(実施例4のカラム)(φ2.1mm×100mm)
【0111】
分析結果を、
図7に示す。
【0112】
図7に示すように、塩基性条件下においてピークが確認されたことから、塩基性条件下における分析に使用できることが確認された。また、図には示さないが、温度を40℃に変更した以外は上記と同じ条件で分析を行ったところ、ピークの保持時間が長くなったことが確認された。