(54)【発明の名称】複数の物質を識別する装置、複数の物質を識別するコンピュータシステム、複数の物質を識別するための複数の命令をコンピュータに実行させるプログラムおよびサンプル流体混合物中を流れる複数の物質を識別する方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記メイン流体チャネルから導かれる少なくとも1つの流出チャネルを更に備え、前記少なくとも1つの流出チャネルは、前記マイクロ流体チップから前記複数の物質を除去する、請求項3から5のいずれか1項に記載の装置。
前記メイン流体チャネルから導かれる複数の側面流出チャネルを更に備え、前記複数の側面流出チャネルは前記少なくとも1つの流出チャネルのいずれかの側に配置され、前記複数の側面流出チャネルは前記マイクロ流体チップから前記複数のシース流体を取り除く、請求項6または7に記載の装置。
前記複数のシース流体チャネルは、前記複数の物質を流体力学的集束することによって、前記複数の物質は、予め定められた方向に方向付けされ、前記複数の物質が前記メイン流体チャネルを流れるときに、制限されたコア体積に配置される、請求項1に記載の装置。
前記メイン流体チャネル及び前記複数のシース流体チャネルのうちの少なくとも1つは、前記マイクロ流体チップの前記複数の構造層又は前記複数の平面の間に配置される、請求項16または17に記載の装置。
前記作用チャンバは、前記マイクロ流体チップにおける前記複数の構造層、又は、前記複数の平面の少なくとも1つを通じて切り込まれた第1の開口部を有し、前記第1の開口部は、第1の透過性のカバーを受け入れる、請求項16から19のいずれか1項に記載の装置。
前記作用チャンバは、前記マイクロ流体チップの前記第1の開口部とは反対側における前記複数の構造層、又は、前記複数の平面の前記少なくとも1つを通じて切り込まれた第2の開口部を有し、前記第2の開口部は第2の透過性のカバーを受け入れる請求項20に記載の装置。
前記マイクロ流体チップは、前記複数のシース流体チャネル及び前記メイン流体チャネルを有する少なくとも1つの機能層と、前記少なくとも1つの機能層にアクセスするための、複数の孔を含む上層とを有する、請求項16から21のいずれか1項に記載の装置。
前記集束エネルギー装置によって作用を受けるべき前記複数の細胞は、非生存又は非運動性の精子からの生存又は運動性の精子、又は性別又は他の性判別の多様性により判別された精子のうちの少なくとも1つを含む、請求項34に記載の装置。
前記レーザは、前記複数の物質に毎秒1,000パルスを超えるレートで15ns又はより短い、複数のエネルギーパルスを供給することが可能なパルスQスイッチレーザである、請求項15に記載の装置。
前記ポンピング装置は、外部管を使用して、前記マイクロ流体チップへと前記サンプル流体混合物、又は前記複数のシース流体の前記少なくとも1つをポンピングする、請求項45に記載の装置。
前記マイクロ流体チップが設置されるマイクロ流体チップホルダを更に備え、前記マイクロ流体チップホルダは、複数の開口部を有し、前記複数の開口部を通じて前記少なくとも1つの外部リザーバから前記マイクロ流体チップに前記外部管がアクセスする、請求項47に記載の装置。
複数のサンプル流体混合物を包含する、平行に配置された複数のマイクロ流体チップを更に備え、単独の検査装置が、前記複数のマイクロ流体チップの各々のために使用される、請求項49に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0114】
複数の例示的な実施形態を詳細に示す複数の図を参照する前に、本開示は、記載において説明され、又は複数の図に示される複数の詳細又は方法論に限定されないことが理解されるべきである。また、用語は、説明のみの目的のためのものであり、限定するものとしてみなされるべきものではないことも理解されたい。複数の同一又は同様の部分を指すために、複数の図面全体に渡って同一又は同様の参照番号を使用する努力がなされている。
【0115】
本発明は、サンプル流体混合物中の複数の物質を検出し、検査する検査装置を有するマイクロ流体チップと、複数の物質へ、又は複数の物質の周囲の領域への作用を実行する集束エネルギー装置と、に関する。一実施形態において、複数の物質を識別し、その複数の物質が集束エネルギー装置により対象とされるべきかどうかを判断すべく、検査装置は複数の物質を検査する。一実施形態において、対象とされる物質は、不必要な、対象とされる物質である。
【0116】
一実施形態において、集束エネルギー装置は、対象とされる物質を損傷し、殺し、変更し、無効にし、又は破壊することによって、対象とされる物質と、対象とされない物質との間を判別する判別装置である。複数の物質が、流体力学的集束、配置、及び方向付けにさらされる、マイクロ流体ネットワーク内に流れている、連続流体ストリームにおいて、本発明は、実施される。集束エネルギー装置によって、複数の対象とされない物質は影響を受けずに、マイクロ流体チップを通じて流れることが可能とされ、集束エネルギー装置によって、対象とされる物質は光による損傷を受け、殺され、変更され、無効化され、又は破壊されることを含む作用を受け得る。
【0117】
[用途] 本発明の様々な実施形態は、例えば、非生存又は非運動性の精子から生存又は運動性の精子を選択すること、性別、及び他の性選択の多様性によって精子を選択すること、集団細胞から複数の幹細胞を分離すること、所望の/望ましくない特性を区別して、未標識細胞から1又は複数の標識細胞を選択すること、複数の所望の特性について複数の細胞を選択すること、特定の特性に従って、複数の細胞中の核DNAにおける複数の遺伝子を選択すること、表面マーカに基づいて複数の細胞を選択すること、膜の完全性(生存性)、可能な又は予測される生殖ステータス(受精率)、凍結状態での生存能力等に基づいて、複数の細胞を選択すること、複数の混入物質又は複数の残屑から複数の細胞を選択すること、複数の損傷細胞(即ち、癌性細胞)から(骨髄抽出におけるように)複数の健康な細胞を選択すること、血漿混合物における複数の白血球細胞、及び複数の血小板から赤血球細胞を選択すること、及び、任意の複数の細胞を任意の他の複数の細胞物質から対応する断片へと選択すること、複数の損傷細胞、又は複数の混入物質若しくは複数の残屑、又は、判別されることが望ましい、任意の複数の他の生物学的材料を選択すること、のように流体混合物における複数の物質を選択することを提供する。複数の物質は、リンカ分子により、処理若しくは被覆され、又は、蛍光若しくは発光標識分子と共に組み込まれた、複数の細胞又はビーズであり得る。複数の物質は、サイズ、形状、材料、構造等のような様々な物理的又は化学的特性を有し得る。
【0118】
一実施形態において、複数の物質の異種集団は、測定されてもよい、ここで、各物質は、同様の量において異なる量又はレジームについて検査され(例えば、多重化測定)、又は複数の物質は標識(例えば、蛍光)、画像(サイズ、形状、異なる吸収、散乱、蛍光、発光特性、蛍光又は発光を発するプロファイル、蛍光又は発光の減衰期間に起因する)、及び/又は、粒子の位置等に基づいて検査及び区別されてもよい。
【0119】
更に、本開示の主題は、同様に他の医療用途にも、適する。例えば、後述の様々な層流は、全血が複数の老廃物を除去されて患者に戻される腎臓透析処理の一部として利用され得る。更に、本開示の様々な実施形態は、複数の細胞、複数のウィルス、バクテリア、複数の細胞小器官又は複数のサブパート、複数の球形構造、複数のコロイド懸濁液、複数の脂質及び複数の脂質球、複数のゲル、複数の非混和性粒子、複数の割球、複数の細胞の複数の凝集、複数の微生物、及び他の生物学的材料の選択のような、他の複数の生物学的、又は医療分野への更なる適用可能性を有し得る。例えば、本開示に係る物質の選択は、(バクテリアのような)複数の混入物質が細胞懸濁液から除去される細胞の「洗浄」を含んでもよく、これは、医療及び食品産業の用途において特に有用であり得る。更に、本発明は、運動性の細胞物質から非運動性の細胞物質を選ぶことに適用可能性を有する。
【0120】
本開示の主題は、種を1つの溶液から別の溶液へと移送することにもまた、利用可能であり、ここでは、ろ過又は遠心分離による分離は、非実用的であるか又は望ましくはない。上述された複数の用途に加えて、追加的な複数の用途は、例えば、(複数の研究又は商業的用途のために)他の複数のサイズの複数のコロイドから所与のサイズの複数のコロイドを選択することと、複数の細胞、複数の卵子細胞等のような複数の粒子の洗浄をする(それらが包含される培養基を有効に置換し、複数の混入物質を除去する)こと、又は、異なる塩濃度の若しくは界面活性剤なしの複数の塩及び界面活性剤の溶液から、ナノチューブのような複数の粒子を洗浄することとを含む。
【0121】
複数の種の選択の作用は、自己運動性、自己拡散性、自由落下速度を含む、複数の物質の多数の物理的特性、又は、アクチュエータ、電磁場、若しくはホログラフィック光学トラップのような外力下の作用に依存し得る。選択され得る特性は、例えば、細胞運動性、細胞生存性、物質のサイズ、物質の質量、物質の濃度、複数の物質の互いに若しくは流れの中の他の複数の物質を引き付ける又はこれらと反発する傾向、物質の電荷、物質の界面化学、及び、特定の他の複数の物質(即ち、分子)がその物質に付着する傾向を含む。
【0122】
以下の説明は、非生存若しくは非運動性の精子から生存若しくは運動性の精子を識別及び選択すること、又は、性別及び他の性選択の多様性によって精子を選択すること、又は、望ましい/望ましくない特性等を区別して、1若しくは複数の標識細胞を複数の未標識細胞から選択すること等を中心とするが、本発明の装置、複数の方法及び複数のシステムは、流体流内の蛍光技術による検査が可能であるか、又は、1若しくは複数の流出への異なる複数の流体流の間で操作可能な、他のタイプの粒子状物質、生物学的又は細胞物質に拡張されてよい。
【0123】
[サンプルの準備] 一実施形態において、複数の細胞(即ち、加工していない精液)のような、複数の物質160の濃度は、Nucleocounterのような細胞計数デバイスを使用して決定される。一実施形態において、適切な染色体積(staining volume)を得て(即ち、算出ワークシートの染色を使用して)、予め定められた細胞の濃度(即ち、200×106/mlの精子濃度)のために加えられることが必要な染色TALP及び複数の物質160(即ち、純粋な精液)の体積を算出する。例えば、純粋な精液の濃度=1500×106/mlの場合に、1mlの量の染色されたサンプルは、準備される。従って、200×106/ml/1500×106/ml=0.133mlの純粋な精液を、200×106/mlの精子濃度の1mlの合計染色体積に等しくするために、(順番に)0.012mlのヘキスト33342(5mg/mlの原液)及び0.855染色TALP(pH7.4)に加えられる。
【0124】
一実施形態において、染色TALPは、合計の所望の体積の2/3をミリQの水でコンテナ(即ち、ビーカー)を満たすことで準備される。撹拌棒、及び撹拌プレートが、化学物質が加えられる際に、溶液を混合するのに使用される。列挙された順序(後に加えられる、ゲンタマイシンまで)で加えられる化学物質は、以下のものを含む。
【表1】
【0125】
一実施形態において、複数の化学物質の適切な混合の後、NaOHを使用して、pHは、7.4に調整される。追加のミリQ水は、溶液をコンテナ(即ち体積フラスコ)中で最終的な体積に至らせるために、使用される。殺菌フィルタ(即ち、0.22殺菌フィルタ)は体積をフィルタ/殺菌するのに使用される。抗生物質(即ち、ゲンタマイシン溶液)は、ろ過後に加えられ、染色TALPの体積は、5℃で貯蔵され、7から10日間使用され得る。
【0126】
従って、サンプルの体積が、染色TALPによって染色された後、一実施形態において、複数の染色されたサンプル120は、34℃から35℃に設定された水浴中へと複数のコンテナ(即ち、複数の管)に配置され、予め定められた時間(即ち、45分)培養される。一実施形態において、培養の後、染色されたサンプルは、水浴から除去され、34℃から35℃に設定された水浴で暖められてきた、等体積の赤色食用色素を有する4.0%卵黄TALPを加えられる。
【0127】
赤色食用色素を有する4%卵黄TALPを得るために、上述のような染色TALPが準備され、所望の体積の最終溶液が決定される。4%卵黄溶液を準備するために必要な染色TALP及び卵黄の体積は以下のように算出される。
【0128】
所望の体積:4%溶液のために必要となる、(250ml)×0.04=10mlの卵黄。240mlの染色TALPが、計量コンテナ(即ち、シリンダ)に加えられ、10mlの卵黄が加えられる。0.261ml/100mlの溶液を得るべく、FD&C40号食用色素は、コンテナ(即ち、シリンダ)に加えられる。所望の250mlの全体積として、0.261ml×250ml/100=0.653mlの赤色食用色素となる。コンテナ(即ち、シリンダ)は、パラフィルムでカバーされ、体積が徹底的に混合されるまで、注意深く逆さにされる。体積コンテナは、次に、一晩おいておかれ、冷却室で冷却されることが可能とされる。体積コンテナは、次に、あらゆる沈殿物を体積コンテナの底に残して、滅菌コンテナへと注意深くデカンテーションされる。体積は、次に、0.22μmボトルトップフィルタを通じてろ過/殺菌され、適切な量の抗生物質溶液が加えられる(即ち、0.250mlのゲンタマイシン/100mlの卵黄TALP)。
【0129】
従って、赤色食用色素を有する4%卵黄TALP等体積を染色されたサンプル120に加えた後に、複数の染色されたサンプル120は、サンプル120を20−ミクロンフィルタ(即ち、CellTricsフィルタ)へと注ぎ込むことにより、ろ過される。これは、別の滅菌5ml培養コンテナへと流出する。予め定められた時間の染色(即ち、45分)の後に、等体積の4%卵黄TALPは加えられる。染色されたサンプル120(即ち、細胞)は、フィルタ(即ち、50ミクロン(50μm)のメッシュを有するPartec(商標)フィルタ)を通じて流れて、マイクロ流体チップ100への導入のためにサンプルはサンプルホルダ又はリザーバ233へと配置される(
図19から
図21参照)。
【0130】
一実施形態において、最終精子濃度=100×10
6/mlであり、最終の卵黄の割合=2%である。新たなサンプルアリコート120は、準備され得て、望むのであれば、1時間毎に使用され得る。
【0131】
[マイクロ流体チップシステム] 様々な実施形態のマイクロ流体チップは、後述されるように、1又は複数のフローチャネルを利用し、これらは複数の実質的に層流を有し、1又は複数の物質が検査装置による識別のために検査され、集束エネルギー装置により作用を受けることを可能とし、複数の物質がマイクロ流体チップから1又は複数の流出チャネルへと抜け出る。一実施形態において、集束エネルギー装置によって対象とされない複数の物質は影響を受けず、集束エネルギー装置は、複数の対象とされる物質に光による損傷を与え、変更し、無効化し、殺し、破壊する。
【0132】
本発明の様々な実施形態は、これにより、複数の物質を、連続的な、閉システム内で、先行技術の方法のように損傷及び混入の可能性なしに、具体的には精子分離において定められるように、連続的に選択することを実現する。本発明の連続的な処理は、複数の物質を選択及び判別する際に、大幅な時間の節約もまた実現する。
【0133】
図1Aから
図2に示されるマイクロ流体チップ100、及び
図20から
図21に示されるマイクロ流体チップホルダ200に対して、本主題は詳細に説明される一方で、この説明は、本明細書に説明される様々な他の実施形態、又はそれらの任意の変形形態に等しく適用するものと理解されるべきである。
【0134】
[マイクロ流体チップ]
図1Aは、マイクロ流体チップ100の例示的な実施形態である。マイクロ流体チップ100は、当業者に周知のように、ガラス、又はサーモプラスチック(例えば、低自家蛍光ポリマ等)、又は複数の材料の組み合わせのような適した材料から、エンボス処理、ソフト光リソグラフィ、又は、射出成形加工を通して製造され、適したサイズである。各層は、任意の適した厚さであり得る。例えば、厚さは約300μmから約400μmの範囲内であり得て、より好ましくは、厚さは、約400μmであり得る。
【0135】
マイクロ流体チップ100は、1又は複数の構造層を含み、ここには、サンプル流入チャネル、シース又はバッファ流体チャネル、流出チャネル等として機能する複数のマイクロチャネルが配置される。複数のマイクロチャネルは、複数の物質を含有する複数の層流のストリームを収容するのに適したサイズであり、チップ100の任意の複数の層のいずれかにおいて、本発明の目的が実現される限りにおける適切な長さに配置され得る。一実施形態において、マイクロ流体チャネルの寸法は、50ミクロン(50μm)から500ミクロン(500μm)の範囲であって、詰まりを防止するために、100ミクロンから300ミクロン(100μmから300μm)のものが使用されることが好ましい。
【0136】
外部流体をチップ100へとポンピングするポンピングメカニズムにより、及び、複数のマイクロチャネルの様々な位置に狭小部、若しくはテーパ部を設けることによって、及び/又は、複数のマイクロチャネル内に複数の障害物、複数の傾斜、若しくは複数のしきりを設けることによって、マイクロ流体チップ100を通る所望のフローレートは、チップ100内の適切なマイクロチャネルの寸法を維持しつつ、チップ100への予め定められた導入フローレートによって制御されてよい(以下で更に詳しく説明される)。
【0137】
より具体的には、複数の流入部は、マイクロ流体チップ100へと設けられる。この複数の流入部は、複数のマイクロチャネル/チャネルへのアクセスを提供する。一実施形態において、
図1Aから
図2に示されるように、サンプル流入部106は、サンプル流体混合物120の複数の粒子又は複数の物質(即ち、複数の細胞)160のサンプルを、少なくとも1つのリザーバ源(
図19参照)からマイクロ流体チップ100のメイン流体チャネル164へと導入するために用いられる。
【0138】
マイクロ流体チップ100もまた、シース又はバッファ流体の導入のために、シース又はバッファ流入部の少なくとも1つも含む。一実施形態において、シース又はバッファ流入部107と、シース又はバッファ流入部108とを含む2つのシース又はバッファ流入部がマイクロ流体チップ100にあり、これらは両方とも、サンプル流入部106近傍に配置され、これらは両方とも、シース又はバッファ流体163をマイクロ流体チップ100へと導入する(
図1Aから
図3Bを参照)。
【0139】
一実施形態において、シース又はバッファ流体をマイクロ流体チップ100のチャネル164へと導入する、3つのシース又はバッファ流入部107、108及び172が存在する(
図1A及び
図3Bを参照)。シース又はバッファ流入107、108、172の位置は、異なってよく、同一又は異なる構造層において、チップ100における複数のチャネルにアクセスし得る。一実施形態において、共通のリザーバから(
図20から
図21参照)、又は、別の実施形態においては、分離された複数のリザーバから(
図19参照)、シース又はバッファ流体163は、流入部107、108、172へと導入される。
【0140】
シース又はバッファ流体は、マイクロ流体の技術分野において周知であり、一実施形態において、流体混合物の複数の物質160(即ち、複数の精子細胞)の生存性を維持するために、当技術分野において周知の栄養素を含有してもよい。Chata Biosystems社により販売されているような、商業的に利用可能なTrisが一例であり、シース又はバッファ流体163は、以下を含むように処方され得る。即ち、水0.9712L、Tris23.88gg、クエン酸一水和物11.63g、D−フルクトース8.55g。pHは、塩酸によって、6.80±0.05に調整され、オスモル濃度は、必要であれば、高純度のフルクトースによって270から276mOsmに調整される。混合物は、0.22ミクロン(0.22μm)フィルタを使用してろ過される。
【0141】
マイクロ流体チップ100は、複数のマイクロチャネルが配置される1又は複数の構造層を有するとしてよい。複数のチャネルは、1又は複数の層に、又は複数の層の間に配置されてよい。以下の複数の実施形態は、接着処理を記述する。しかし、当業者であれば、射出成形加工を使用することにより、様々な特徴を実現する方法を知っているだろう。例えば、射出成形において、2層を形成する代わりに、2つの型を作成し、一緒に接合することで、空洞に対して射出して本発明のチップを得る。
【0142】
一実施形態において、
図1Aに示されるように、1つの構造層101がマイクロ流体チップにおいて含まれ、その上に上部「ブランク」プラスチック層104が配置される。上部「ブランク」層104は、閉じたマイクロ流体ネットワークを形成すべく機能層101と接合し、チップ100の下部層へのアクセスを提供すべく複数の孔を有してよい。例えば、上部「ブランク」層104は、流入部106、107、108、172等に対応する複数の孔を有してよく、又は、チップ100の層101、102、104等を一緒に固定すべく、複数のピンに対し複数の孔145を提供してよい。一実施形態において、マイクロ流体チップ100の上層104は、マイクロ流体チップホルダ200上のフィッティングと整列するよう構成された複数の開口部を含む(更に以下で説明される)。
【0143】
別の実施形態において、
図1Bに示されるように、2つの機能的構造的プラスチック層101から102が、上部「ブランク」層を有さないマイクロ流体チップ100に含まれる。この実施形態において、上層102の機能面は層102の下側に配置され、その結果、複数の層が一緒に配置される場合、チャネル114、115、116、117が形成される(
図1C参照)。
【0144】
更に別の実施形態において、
図1Cに示されるように、3つの機能的、構造層101、102、103がマイクロ流体チップ100において使用される。
図1Bと同様に、層102、103は、層102、103の下側に機能面を有し、層101及び102は、一緒に配置される場合チャネル116及び117を形成する。層103は、層103の下側に配置されるチャネル114、115を有する(
図1E参照)。
【0145】
更に別の実施形態において、
図1Fに示されるように、構造的プラスチック層101から103、及び、上部「ブランク」層104の4層が、マイクロ流体チップ100で使用される。この実施形態において、層102は、チャネル114、115を含み、層101及び103の各々はチャネル117、116のうちの1つを含む。
【0146】
しかしながら、本発明の目的が実現される限り、機能面を有し、複数の「ブランク」層を有する、若しくは有さない、より多くの又はより少ない構造層が使用されてよく、複数のチャネルは、上部「ブランク」層を通じてアクセスを有する、複数の構造層のいずれかに、又は、複数の異なる構造層に、任意の構成において、配置されてよいことを当業者であれば知っているであろう。
【0147】
一実施形態において、複数の物質160を有するサンプル流体混合物120は、サンプル流入部106へと導入され、流体混合物120は、メインチャネル164を通じて、作用チャンバ129に向けて流れる(
図1Aから
図2参照)。ほとんどの実施形態において、シース又はバッファ流体163は、シース又はバッファ流入部107、108へと導入され(
図1Aから
図2参照)、別の実施形態において、シース又はバッファ流入部107、108、及び172へと導入される(
図1A参照)。シース又はバッファ流体163は、層流で、少なくとも流出チャネル140及び142を通って流れ出る前に、チャネル114、115及び116、117を通り、メインチャネル164へと、作用チャンバ129に向けて流れる。
【0148】
一実施形態において、メインチャネル164からの流体混合物120は、チャネル114、115からのシース又はバッファ流体163と、マイクロ流体チップ100の交点161において合流する。一実施形態において、チャネル116、117からのバッファ流体163は、混ぜ合わされた流体混合物120、及び第2の交点162の下流側にある(
図1Aから
図2参照)第1の交点161からのシース又はバッファ流体163と合流する。一実施形態において、シース又はバッファ流体163は、流入部172を介して、第2の交点162から下流側のメイン流体チャネル164へと流入される(
図1A及び
図3B参照)。
【0149】
一実施形態において、本発明の目的の達成をすべく所望のフローレートを実現する限りにおいて、チャネル114、115は、チャネル116、117と実質的に同一の寸法である。しかし、当業者であれば、複数の所望の結果を達成する限りにおいて、複数の寸法は異なってよい(更に下で説明される)ことを知っているであろう。
【0150】
一実施形態において、チャネル114から117、及び140から142は、実質的に同一の寸法を有してよい。しかしながら、当業者であれば、本発明の目的を達成するために所望のフローレートが実現される限りにおいて、マイクロ流体チップ100におけるいずれか、又は全てのチャネルのサイズが、寸法において異なってよい(例えば、50ミクロン(50μm)と500ミクロン(500μm)との間で)ことを知っているであろう。
【0151】
例示的な一実施形態において、チャネル114、115又は116、117は、チャネル164が配置される層又は平面に対して(例えば、
図1A参照)、マイクロ流体チップ100の同一の構造層又は平面に配置され、又は、異なる構造層若しくは平面に配置されてよい(例えば、
図1B参照)。別の実施形態において、流入チャネル164、及び、シースチャネル114、115又は116、117は、チップ100の複数の構造層又は複数の平面の間に配置され得る。従って、当業者であれば、チャネル114から117、164、及び140から142等は、任意の一つの層に、又は任意の2つの層の間に配置されることができることを知っているであろう。更に、チャネル114から117、164、及び140から142等は、複数の図に示されるように、例示的な実施形態において説明されるが、当業者であれば、説明される本発明の特徴が実現される限りにおいて、チップ100上の複数のチャネルの特定の構成、又はレイアウトは、任意の所望の構成であってよいことを知っているであろう。
【0152】
一実施形態において、チャネル116、117は、層101を通じて切り込まれ(
図1A及び
図2参照)、複数の層を通じて切り込まれる複数の孔を介して、同じ平面におけるチャネル164において流体混合物120と合流する。一実施形態において、チャネル116、117は、流入チャネル164に実質的に平行になり、各々は、チャネル164から斜めに交点161に合流する(
図2から
図3参照)。チャネル116、117からのシース又はバッファ流体は、側面から水平に、又は、横方向に流体混合物120の流れを圧縮する。その結果、流体混合物120における複数の物質160は、押し潰され、及び/又は、選択された若しくは所望の方向に方向付けられ、一方でチャネル164において層流をなお維持する(即ち、更に以下で説明するように、流体力学的集束の2つの段階における第1の段階)。
【0153】
更に、一実施形態において、チャネル114、115は、交点162においてチャネル164内の、流体混合物120に合流する。各々のチャネル114、115は、チャネル164からの角度をなしている(
図1A参照)。チャネル114、115からのシース又はバッファ流体は、チャネル164に対して、流体混合物120の流れを圧縮する(
図14参照)。その結果、流体混合物120における複数の物質160は、更に押し潰され、及び/又は、選択された又は所望の方向に方向付けされる。一方でチャネル164において層流をなお維持する(即ち、下に更に説明されるように、流体力学的集束の2つの段階における第2の段階)。
【0154】
この実施形態において更に、第3のシース又はバッファ流体流入部172が、交点162から下流側に配置され(
図3B参照)、これは第3の流体力学的集束段階が起こることを可能とする。ここで、サンプル流体混合物120は、内部に導入されるシース又はバッファ流体163によって、チャネル164の上方から圧縮される。
【0155】
代替的な実施形態において、上述される第1の流体力学的集束段階の後に、チャネル164内の複数の物質160を更に押し潰し及び/又は方向付ける(即ち、第2の流体力学的集束段階)ため、鉛直方向から流体混合物120を圧縮すべく、チャネル114、115は、上方から斜めに交点162で、流体混合物120に合流する(
図3A参照)。チャネル164の上方及び下方からであってもよい(
図12A参照)。
【0156】
しかしながら、当業者であれば、マイクロ流体チップ100のシース又はバッファ流入部、サンプル流入部、並びにサンプル流入チャネル、及び、シース又はバッファチャネル、並びに流体力学的集束段階に図示される複数の構成、複数の角度、及び複数の構造的構成は、それらが本発明の所望の特徴を実現する限りにおいて異なってよいことを理解するであろう。
【0157】
一実施形態において、
図2に示されるように、チャネル114、115及び116、117は、互いに部分的に同軸となり、サンプル流入部106によって画定された中央のポイントを有するように図示される。従って、一実施形態において、チャネル114、115及び116、117は、実質的に平行な構成で配置され、チャネル114、115及び116、117は、メインチャネル164に等距離である。しかしながら、当業者であれば、図示された構成はそれが本発明の所望の特徴を実現する限りにおいて異なってよいことを認識するであろう。
【0158】
一実施形態において、複数の孔及び複数のピン/ポスト145は、チップ100の製造中に複数の層を固定及び整列させるべく、層101、102、103、104等において様々な便利な位置に配置される。
【0159】
一実施形態において、マイクロ流体チップ100と、マイクロ流体チップホルダ200(例えば、
図1F及び
図21から
図22参照)との間に密封を維持すべく、任意の所望の形状のガスケット105、又は複数のO−リングが、設けられてよい。ガスケット105の場合に、望まれるように、任意の構成又は材料(即ち、ゴム、シリコン等)の単一のシート又は複数の物体であってよい。一実施形態において、
図1Fに示されるように、第1のガスケット105は、マイクロ流体チップ100の1つの端部に配置され、層104と繋がれるか、又は層104に接着される。複数の孔144は、第1のガスケット105に設けられ、サンプル流入部106、シース/バッファ流入部107、及びシース/バッファ流入部108と整列するように構成される。
【0160】
一実施形態において、第2のガスケット143は、第1のガスケット105の反対側のマイクロ流体チップ100の別の端部に配置され得て(例えば、
図1F参照)、上部構造層104と繋がれ、又は(エポキシを使用して)これに接着されてよい(
図1F及び
図21から
図22参照)。
【0161】
一実施形態において、チップホルダ200におけるマイクロ流体チップ100の安定化だけでなく封止の補助をすべく、複数のガスケットの代わりに、複数のO−リングが、使用される。
【0162】
しかしながら、当業者であれば、1又は複数のガスケット又はO−リングは、それらの動作中に、チップホルダ200におけるチップ100の保護を目的としてチップ100の外層に加えられてよいことを知っているであろう。
【0163】
一実施形態において、マイクロ流体チップ100のチャネル114から117及びチャネル140から142は、寸法が異なってよいだけでなく、複数のチャネルを通る流体の流れを制御すべく、チップ100における他のチャネルへのエントリポイントにおいてテーパ状の形状を有してもよい。例えば、メインチャネル164は、交点161へのサンプル120の流れを制御し、加速させるべく、及び、チャネル116、117又は114、115それぞれからのシース又はバッファ流体163に、全ての側面(流体チャネル164が交点161に入る場所に依存して)でない場合、少なくとも2つの側面上で、第1の方向に(即ち、水平方向又は横方向に)、及び第2の方向に(即ち、鉛直方向に)サンプル流体混合物120を圧縮することを許容すべく(
図3Aから
図3B、
図4Aから
図4B、及びテーパ166Aを参照)、交点161へのエントリポイントにおいて(
図4A参照、テーパ166A)、又は、交点162へのエントリポイントにおいて(
図4B参照、テーパ166A)テーパ状となり得る。
【0164】
別の実施形態において、チャネルを流れるサンプル流の制御、及び加速の効果を実現すべく、複数の傾斜はチャネル164、又は複数のチャネル114から117に配置されてよい。複数の傾斜は、複数のテーパ部に加えて、又はその代わりに存在してよい。
【0165】
例えば、傾斜166Bは、サンプル流が交点161及び162それぞれへ接近する前に、又は、作用チャンバ129に入る前にチャネル164において、配置され得る(
図4A及び
図4B参照)。
【0166】
従って、サンプル流体混合物120は、シース又はバッファ流体163によって拘束され又は囲まれる、相対的により小さく、より細いストリームになり、一方でチャネル164における層流を維持する。しかしながら、本発明の目的が取得される限りにおいて、メインチャネル164、又はバッファチャネル114から117は、複数のテーパ、複数の傾斜、又は他の複数の内部の特徴を備える、長方形又は円形チャネルのような任意の物理的構成であってよいことを、当業者であれば、知っているであろう。
【0167】
一実施形態において、任意の複数の対象とされる物質又は複数の対象とされない物質160及び/又はシース若しくはバッファ流体163を含む、マイクロ流体チップ100を通じて流れる流体の除去のために、メインチャネル164から延びる複数の流出チャネル(
図2参照)は設けられる。一実施形態において、
図1Aから
図2に示されるように、左側流出チャネル140と、中央流出チャネル141と、右側流出チャネル142とを含む3つの流出チャネル140から142が存在する。左側流出チャネル140は、第1の流出部111において終端し、中央流出チャネル141は、第2の流出部112において終端し、右側流出チャネル142は、第3の流出部113において終端する。しかしながら、一つの流出チャネル141及び流出部112のみを有することが可能である。
【0168】
一実施形態において、流出チャネル140から142は、チャンバ129内のチャネル164から発して、流出部111から113に至る。一実施形態において、流出チャネル140から142の断面積、及び長さは、流出チャネル140から142の所望の油圧抵抗を得るべく、予め定められた体積率(即ち、2:1:2又は1:2:1等)に維持されなければならない。
【0169】
一実施形態において、流出チャネル140から142は、寸法がチャネル164から増大し、チャンバ129を離れる。その結果、複数の物質160についての流出率は、関連するチャネル141を通じて増大される。
【0170】
一実施形態において、直線状の端部の代わりに、必要な場合には、複数のノッチ又は凹部146は、複数の流出部(即ち、流出部111から113)を分離し、コンテナ及び外部管等を(シース又はバッファ流体163をリサイクルするために。
図19から
図21参照)取り付けるために、マイクロ流体チップ100の下端に配置されてよい。第1の流出部111、第2の流出部112、及び第3の流出部113は、作用チャンバ129(
図2参照)を発する流出チャネル140から142を介して到達される。
【0171】
一実施形態において、コンテナ188は、第2の流出部112からの複数の物質160を収集するが、他の複数のコンテナは、第1の流出部111及び第3の流出部113からの流出を収集し得る(
図6Aから
図6Dを参照)。一実施形態において、第1、第2、及び第3の流出部111から113の一部は、複数の物質160の濃度、pH測定、細胞160のカウント、電解質濃度等を検出するべく、電子的に特徴付けられてもよい。
【0172】
一実施形態において、複数の対象とされる物質160は、集束エネルギー装置157により作用を受け、それらの物質160、並びに複数の対象とされない物質160は、第2の流出部112から生成物165として収集されてよい。
【0173】
一実施形態において、複数の対象とされる物質及び複数の対象とされない物質160の生成物165は、貯蔵のため、更なる分離のため、又は、凍結保存のような処理のため(以下で更に説明される)に、処理され続けてよい。
【0174】
一実施形態において、公知の方法により、マイクロ流体チップ100から排液することによって、又はマイクロ流体チップ100を通じてシース又はバッファ流体153若しくは他の溶液を流すことのいずれかによって、マイクロ流体チップ100は、滅菌状態で提供され、1又は複数の溶液(即ち、シース又はバッファ流体163)を含んで用意されてもよく、任意の流体又は材料を除去するとしてもよい。
【0175】
[作用チャンバ] 一実施形態において、交点162の下流側では、流体混合物120の流れの中の複数の物質160は、チャネル164を通じて作用チャンバ129へと流れる。ここで、複数の物質160は、検査され、作用を受ける。一実施形態において、チャネル164は、チャンバ129へとテーパ状となる(
図4B参照)。これはチャンバ129を通じる流体混合物の流れを加速する。しかしながら、当業者であれば、チャネル164はテーパ状である必要がなく、本発明が所望の要件に従って実行される限り、任意の寸法及びサイズであり得るであろうことを知っているであろう。
【0176】
一実施形態において、検査装置147は、チャネル164において、チャンバ129を通過する流体混合物中の複数の物質160を検査及び特定すべく使用される。更に、一実施形態において、集束エネルギーデバイス157もまた、チャンバ129を通過して、複数の物質160に作用する。
【0177】
一実施形態において、チャンバ129は、マイクロ流体チップ100及び層101から102を通じて切り込まれた比較的小さな直径の開口部又は窓150を有し(
図5参照)、これを通じて、複数の物質160は、チャネル164を通過するときに、見ることが出来る。
【0178】
更に、比較的大きな直径の奥行きのない開口部が、上窓として層104において切り込まれ、下窓として層101において切り込まれる。一実施形態において、上窓は、第1の透過性のカバー133を受容するように構成され、下窓152は、第2の透過性のカバー132を受容するように構成される。カバー133、132は、プラスチック、ガラスのような所望の透過要件を有する任意の材料で作成されてよく、更にはレンズであってもよい。別の実施形態において、複数のカバーを有する窓の代わりに、連続的なプラスチックシートが使用され得る。カバー132、133及び開口部150の相対的な直径が
図5に示されるが、これらは、設計又は製造の考慮事項に従って異なってもよいことに留意されたい。
【0179】
一実施形態において、上述の第1及び第2のカバー133、132は、チャンバ129を包囲するよう構成される。窓及びカバー133、132(
図5参照)は、チャンバ129を通ってチャネル164において流体混合物120を流れる複数の物質160が、開口部150を通じて見られ、適した光源147及び集束エネルギー装置167により(後述される)作用を受けることを可能とする。
【0180】
一実施形態において、チップの層の構造(即ち、ガラス)、及び/又はそれらの構成に起因して、複数の窓、及び/又は開口部は必要でなく、あるいは、集束エネルギーデバイス157及び光源147の波長及び出力レベルは、チップ100への損傷が生じないであろうというものとされる。
【0181】
[検査装置] 本発明の検査装置は、流体混合物120中の励起可能な複数の物質に適合する任意の波長を有する高強度ビーム148を発するように構成された光源147を含む(
図5参照)。レーザ147が好ましいが、発光ダイオード(LED)、アーク灯等のような、複数の物質を励起するビームを発する任意の適した他の光源147が使用され得る。
【0182】
一実施形態において、予め選択された波長の適切なレーザ147、例えば、349nm又は355nm連続波(CW)、又は準CWのパルスレーザ147からのそのような高強度レーザービーム148は、流体混合物中の複数の物質160(即ち、複数の精子細胞)を励起するために必要とされる。別の実施形態において、532nmの緑色レーザ147が利用される。
【0183】
一実施形態において、レーザ147(
図5参照)は、チップ100の最上部のカバー133を通過するように開口部150を通ってレーザービーム148を発し、チップ100のチャンバ129におけるチャネル164を通じて流れる複数の物質160を照射し、それから、チップ100の層101におけるカバー132を通る。
【0184】
一実施形態において、光線148は、開口部150においてマイクロ流体チップ100に組み込まれる光ファイバによって、複数の物質160に供給されてもよい。
【0185】
高強度ビーム148は、複数の物質160と相互作用し(以下の詳細な説明を参照)、第1のカバー133を通過し、下窓におけるカバー132から出て行く。その結果、ビーム148により誘導された発せられた光151は、対物レンズ153又は他の集光光学素子により受光される。対物レンズ153、又は他の集光光学素子は、マイクロ流体チップ100に対して任意の適した位置、例えば、メインチャネルに平行に、サンプル流体流120に垂直な光軸を有して配置されるとしてよい。チャンバ129は、第1及び第2のカバー133、132により封止されるので、高強度ビーム148は、マイクロ流体チップ100に作用せず、層101、104(
図1A参照)に損傷を与えない。従って、第1及び第2のカバー133、132は、高強度ビーム148及びマイクロ流体チップ100の材料(即ち、プラスチック)から誘導される光子ノイズによるマイクロ流体チップ100への損傷を回避する助けとなる。
【0186】
一実施形態において、光線148は、チップ100を通過し、対物レンズ153、又は他の集光光学素子により受光された発せられた光151は、検出器154により検出され、光電子増倍管(PMT)、又はフォトダイオード等のような光学センサ154により電子信号へと変換される。電子信号は、アナログ・ツー・デジタルコンバータ(ADC)155によりデジタル化され、又は処理されることが出来、デジタル信号プロセッサ(DSP)ベースのコントローラ156、又はコンピュータに送信されることが出来る。電子コントローラ156は、DSP、マイクロコントローラユニット(MCU)、フィールドプログラマブルゲートアレー(FPGA)、又、更には中央処理装置(CPU)のような、適切な処理パワーを有する任意の電子プロセッサであり得る。
【0187】
一実施形態において、DSPベースのコントローラ156は、電子信号を監視し、対象とされる物質160が検出される場合、予め定められた基準に基づいて、集束エネルギー装置157は、使用されるとしてよい。
【0188】
しかしながら、別の実施形態において、検査装置は、特定のために、サンプル流体流120中の複数の物質160を単に検査する。そして、検査装置は、集束エネルギー装置157(
図6C参照)の装着部に接続されない。
【0189】
[集束エネルギー装置] 一実施形態において、複数の物質160に所望のエネルギーレベルを供給すべく、集束エネルギー装置157は、複数の物質160に複数の集束エネルギーパルスを供給するのに使用される。集束エネルギー装置157は、熱的、電気的、光学的、電磁気的デバイス157であり得る。デバイス157は、所望の波長を有するであろうし、複数の対象の物質160に、非常に高い反復率(又はパルス周波数)を有する高い最大出力を供給するであろう。
【0190】
一実施形態において、集束エネルギー装置157は、コントローラ156による起動後予め定められた時間(即ち、数ミリ秒)で、トリガされ(タイミングは、チャネル164を流れる複数の物質160の移動速度に基づいて設定され、以下で更に説明される)、選択され又は対象とされる(即ち、不必要な)物質160へパルスを発する。
【0191】
パルスレーザ157の複数の例は、モードロッキング及びQスイッチ技術の両方を使用するレーザと同様に、モードロックされた、Qスイッチレーザを含む。例えば、(カリフォルニア州サンタクララのCoherent,Inc.によって製造された)Avia 355−5−100、又はSpectra−Physics Inc.からの複数のExplorer(商標) XP レーザQスイッチレーザのような集束エネルギーデバイス157は、パルスオンデマンドモードで動作可能であり、15ns又はそれより短いエネルギーパルスを、毎秒1000パルスを超えるレートで、複数の対象の物質160に供給出来る。
【0192】
一実施形態において、0.5から8.0μJのパルスエネルギーレベルが使用され、望ましい実施形態において、1.3μJから2.3μJの個々のパルスの範囲を有する、1.8μJの平均パルスエネルギーを供給するために、パルスオンデマンドモードにおけるQスイッチレーザ157が使用される。一実施形態においては、パルス幅は、3ナノ秒から1マイクロ秒の範囲であり、5ナノ秒から9ナノ秒の範囲であることが好ましい。しかしながら、当業者であれば、適切な高エネルギーパルス及び適切な高パルス周波数を有する、現在存在する、又は後に開発される任意の高出力レーザが、所望の目標精度及び/又は効果を実現するために本発明に適しているであろうことを知っているであろう。
【0193】
一実施形態において、集束エネルギー装置157から複数の対象の物質160、又はそれらの周囲の領域へとパルスエネルギーを供給するためにタイトな作用領域(即ち、チャンバ129、又は、チップ100とコンテナ188との間のスペース)の必要性として、複数の対象とされる物質160又は領域の外部への、別の言い方では、選択されていない又は対象とされない物質160への、エネルギーの供給の潜在的な影響を最小化することが重要である。例えば、Explorer(商標) XP 355−1Qスイッチレーザのような集束エネルギー装置157は、通常の均一な間隔で発せられる場合、4%rmsより小さいものを供給し、高いパルス間の安定性を提供することが可能である。
【0194】
しかしながら、複数の物質160又は複数の細胞が、作用領域に(即ち、チャンバ129、又は、チップ100及びコンテナ188の間のスペース、
図6Aから
図6Dを参照)一様でない間隔で入るフローサイトメトリーの解析及び作用システムに対して、対象とされる複数の物質160若しくは複数の細胞、又はそれらの周囲の領域にのみ作用する均一なパルスエネルギー158を供給すべく、追加の手段が用いられる。そのような手段として、本発明のシステムが所望の目標精度(即ち、一実施形態において、複数の対象の物質160への95%の光による損傷若しくは殺傷率、又はそれより高い衝突率)を実現することを可能とすべく、パルスの長さ、及び最大出力レベルのようなレーザ157の複数の性能パラメータを適合させることを含む。
【0195】
加えて、一様でない間隔で発された場合に、極めて高いパルス間安定性を供給すべく、レーザ157のパルスオンデマンドの動作及び性能を更に調整することは、パルス158が衝突する領域における空間変動を大幅に低減する。従って、集束エネルギーデバイス157におけるパルス毎の変動を低減することにより、複数の対象とされない物質160又は複数の細胞の意図されていない作用、損傷、又は破壊は、大幅に低減され、例えば、複数の生きている、対象とされない物質160又は複数の細胞の85%又はそれより高いレートの生存性を実現する。
【0196】
一実施形態において、集束エネルギー装置157は、検査装置157による検査の前に、チャンバ129のような、作用領域129において利用され(
図6D参照)、別の実施形態において、集束エネルギー装置157は、検査装置157による検査の後に、作用領域(即ち、チャンバ129)において利用される(
図6A参照)。更に別の実施形態において、サンプル流体がチップ100を離れコンテナ188に入る後に、コンテナ188に入る前に、流出部112において、又は切断された液滴形状187においてのいずれかで、集束エネルギー装置157は、複数の物質160を有するサンプル流体に作用する(
図6Bから
図6Cを参照)。
【0197】
作用領域129(即ち、チャンバ129)において検査装置147により複数の物質160の検査がされた後で、集束エネルギー装置157が複数の物質160に作用する実施形態において、集束エネルギー装置157は、複数の物質160が対象とされるべきであるとの判断に応じて、チャネル164を通じて流れる複数の物質160に作用する集束エネルギービーム158を発する(例えば、
図5及び
図6Aから
図6Cを参照)。
【0198】
実施形態において、作用領域129における検査の後で、かつ、流出チャネル141を複数の物質160が流れる後であるが、サンプル流体120がコンテナ188により収集される前に、集束エネルギー装置157は、複数の物質160に作用する。この実施形態において、集束エネルギー装置157は、上のように利用されるが、チップ100とコンテナ188との間にビームを発するように配置される。一実施形態において、サンプル流体120は、液滴形状187で、流出部112から空気中を通ってコンテナ188へと単に落下し、別の実施形態において、チップ100とコンテナ188との間に、透過性を有する筐体が存在してよい。
【0199】
集束エネルギー装置157は、サンプル流体120中の対象とされる若しくは不必要な物質160をパルスにより損傷し、変更し、無効化し、殺し、若しくは破壊するように、又は、細胞が損傷若しくは細胞の死が起こるよう物質160若しくは細胞における幾つかのメカニズムのうちの1つを活性化するよう設定されることが出来る。
【0200】
しかしながら、所望の構成に応じて(様々な実施形態に対して以下を更に参照)、複数の対象とされる又は選択された物質160は、必要な複数の物質160であってよく、この場合、集束エネルギー装置157は起動されないか、又はトリガされない。あるいは、複数の対象とされる又は選択された物質160は不必要な複数の物質160であってよく、この場合、集束エネルギー装置167は、選択された、望ましくない複数の物質160を損傷し、変更し、無効化し、殺し、又は破壊するような、複数の物質160への作用をすべく起動される。しかしながら、これらは、唯一の実施形態でなく、様々な実施形態が以下では更に説明される。
【0201】
一実施形態において、選択された物質160が、集束エネルギーデバイス157により、損傷を受け、変更され、無効化され、殺され、又は破壊される場合、物質160は、複数の対象とされない物質160と共に、メインチャネル164を通って中央流出チャネル141へ、及び第2の流出部112へ、及びコンテナ188へと流れ続ける。シース又はバッファ流体163は、それぞれ、流出チャネル140、142を通じて、流出部111、112へ、層流で進む。
【0202】
しかしながら、一実施形態において、上述のように、チャネル164における複数の物質160は、チップ100から流出チャネル141及び単一の流出部112を通じて、流出し得る。
【0203】
従って、一実施形態において、本方法及び装置は、コンテナ188中に複数の物質160の判別された生成物165を生成可能である(
図6Aから
図6Dを参照)。生成物165は、対象とされない又は必要な複数の物質160又は複数の細胞の高い生存性、及び、高い割合の光による損傷を受け、変更され、無効化され、破壊され、又は死んだ複数の対象の物質160を含む。
【0204】
[ビーム成形及び光学素子] 十分な信号の反復、及び複数の物質160の効率的な損傷、変更、無効化、殺傷、又は破壊を実現すべく、検査ビーム148及び集束エネルギービーム158の両方に対してビーム成形光学素子を使用することが有利である(
図16から
図17参照)。本明細書に使用されるように、「ビームスポット」という語句は、ビーム148、又はビーム158のいずれかの断面を指す。
【0205】
一実施形態において、集束エネルギー装置157は、光源147から下流側に配置され、光源147と同じ側に配置される(
図17参照)。しかし、集束エネルギー装置157はまた、光源147の下流側に、反対側に配置されてもよい(例えば、
図16参照)。
【0206】
図16の実施形態において、検査ビーム148のためのビーム成形光学素子は、チップ100の片側に配置される。光源147からの検査ビーム148は、作用領域(即ち、チャンバ129)を通過し、対物レンズ153により受光される。
【0207】
一実施形態において、ビーム148は、ビーム成形光学素子181によって拡張される。光学素子181は、複数のレンズを含んでもよく、レンズの構成は、当業者にとって周知であろう。例えば、ビーム成形光学素子181は、適切な焦点距離を有する一対のプリズムと一対の円筒レンズとを含んでもよく、又は、プリズムを有する、若しくは有さない他の複数のレンズを含んでもよい。これらは、当業者に利用可能であろう。ビームの拡張は、検査領域129において、焦点での最終スポットサイズを可能とする。一実施形態において、円のビーム148のスポットは、ビームエキスパンダ180を使用して、拡張される。ビームの拡張は、また、下流側の光学素子への影響を減少し、損傷を限定し、寿命を延ばす。しかしながら、一実施形態において、ビームエキスパンダは利用されない。代わりに、ソースビームが、大き過ぎる直径を有する場合、光学素子は、適したサイズへその直径を減少するのに使用されることが可能であろう。
【0208】
一実施形態において、ビーム成形光学素子181は、それらの中央に集束される場合、ビーム形状148を、サンプル流体120の流れの方向に垂直な方向と、サンプル流体120の流れの方向に沿った方向との楕円形へと変更すべく、2つの直交する円筒レンズを有する。楕円ビーム148のスポットは、マイクロ流体チップ100のチャネル164を通過する複数の物質160を励起するよう機能し、チャネル164を通じる複数の物質160の流れの微小変動を補うべく、ビーム148のスポットの中央の領域において最大の均一な照明を提供する。更に、一実施形態において、サンプル流体120の流れに垂直な方向により広い寸法を有する楕円形のビーム形状は、サンプル流体120のフローストリーム内で完全に中央に揃えられていない複数の物質160(即ち、複数の精子細胞)からの、蛍光信号における変化を低減するのに役立つ。狭い寸法は、複数の物質160(即ち、精子細胞)の検査のために、蛍光色素を適切に励起するのに十分に高い強度にビーム148を保持する。楕円ビーム148のスポットが好ましい一方、本発明の他の実施形態において、異なる形状のビームが利用され得る。検査ビームの出力もまた、検査される複数の物質への影響を限定するようにも、検査の助けとなるようにも、調整されることが出来る。
【0209】
一実施形態において、集束エネルギービーム158もまた、ビーム成形光学素子180により成形される。集束エネルギー装置157の集束されたビーム158のスポットの形状は、所望の目標精度、及びチャネル164における複数の対象とされない物質160への衝突の可能性に影響し、用途の必要に応じて、様々なビーム形状であることが可能である。フローベースのシステムにおいて、サンプル流体120の流れの方向に沿ったビーム幅は、複数の対象の物質160のみが影響を受け、十分なビーム強度の集中が実現されるように、十分に狭くなるよう調整されるべきである。流体チャネル164に渡るビーム158のスポットの長さは、サンプル流体の集束された流れ120におけるどんなにわずかな不安定性及び変動をも補うべく、意図的に調整され得る。所望のビーム成形は、当業者によって容易に実現されることが出来る。
【0210】
一実施形態において、
図16に示されるように、集束エネルギービーム158のためのビーム成形光学素子180は、ビーム158をはるかにより小さなサイズへ集束し、作用領域129におけるレーザの流束を増大するのに利用される。一実施形態において、ビーム158は、ビームエキスパンダ光学素子180により拡張される(
図16参照)。光学素子180は、適切な焦点距離を有する複数のレンズ又はプリズムを含んでもよい。これは、当業者に容易に公知になるであろう。
【0211】
一実施形態において、ビーム158は、例えば、ビーム158を成形すべく、一対のアナモルフィックプリズムを通過する。ビーム158は、ガウシアンビーム特性に起因して、光学的対象により水平方向及び鉛直方向に更に集束及び圧縮される。一実施形態において、光学的対象は、例えば、短い焦点距離を有する対物レンズ又は集光レンズのような検出器光学素子153であり得る。ビームスポットは、効率的な作用(即ち、殺傷等)のためのエネルギー集中と、マイクロ流体チャネル164を通じた複数の物質160の流れにおける微小変動を補うのに十分な幅との組み合わせを提供する。一実施形態において、短径2μm及び長径20μmの楕円のビームスポットに、ビームを集束すべく球状の集光レンズ又は対物レンズが使用される前に、一対の円筒レンズが、鉛直方向の寸法においてビームを拡張するのに使用される。
【0212】
代替的な実施形態において、異なる形状及び/又は寸法が、ビーム158に使用されてよい。他の長径及び短径が、当業者により達成可能であり、同じ処理に適用されることが出来ることに留意されたい。
【0213】
別の実施形態において、集束エネルギーデバイス157は、
図17に示されるように検査ビーム148とは反対側から実装される。示される構成は、容易に実装され、システムの光検出器側における自由空間を効率的に使用するので、有利である。
【0214】
一実施形態において、ダイクロイックミラーは、特定の複数の波長を分離し、又は、特定の複数の波長を光学的経路へと統合するよう使用される。更に、ミラー及びダイクロイックミラー/ビームスプリッタが使用されてよいが、当業者であれば、1つより多くのミラー及び/又はダイクロイックミラー/ビームスプリッタが本システムにおいて利用されてよいことを知っているであろう。
【0215】
一実施形態において、対物レンズを含む集光光学素子153は、チップ100における複数の物質160からの蛍光放射を集め、ダイクロイックミラーは、集光光学素子153から光学信号検知器154へと蛍光放射を渡す。一実施形態において、集束エネルギーデバイス157は、ビーム158を発する。ビーム158は、ビーム成形光学素子180を通過し(上述されたように)、ミラーにより方向付けられ、また、チップ100上へと集光光学素子153を通じてダイクロイックミラーにより反射もされる。具体的には、一実施形態において、集光光学素子153の対物レンズは、対物レンズの後方開口部に入る集束エネルギービーム158を、作用領域129における検査/励起ポイントからごくわずかに下流側の、複数の物質160上のタイトスポットへと集束する。しかしながら、当業者であれば、集束エネルギービーム158は、チップ100の流出部112の下方、又は、検査/励起領域129からわずかに上流側に配置されてよいことを知っているだろう。
【0216】
一実施形態において、検査ビーム148のビームスポットと、集束エネルギービーム158のビームスポットとの間の距離は、調整できる。
【0217】
一実施形態において、ダイクロイックミラー又は任意のビーム分離デバイスは、光の小さな部分をカメラ182へ分離してよく(
図5参照)、ユーザが視覚的に位置合わせを実行することを可能とする。
【0218】
一実施形態において、カメラ182は、汎用の位置合わせの目的のためのマイクロ流体流環境の視覚イメージを提供する。カメラは、集束エネルギーデバイス157が照射する位置及びタイミングを判断すべく使用されることができる。
【0219】
別の実施形態において、集束エネルギービーム158は、検査ビーム148と同じ側から実装される(
図17参照)。このアプローチによって、集束エネルギー装置157のための集光レンズは、検出側と共有されないので、ビーム成形のためにより柔軟性があり、このアプローチは作用(即ち、光による損傷、殺傷)波長の高出力に対して定格である、対物レンズの必要性を取り除く。これは、システムのコストを低減することが出来る。
【0220】
この実施形態において、集束エネルギーデバイス157は、検査装置147と同じ側からビーム158を発する。ビーム158は、ミラー及びダイクロイックミラーにより方向付けられ、整列されて、チップ100のチャネル164における複数の物質160上に集束されるべく、ビーム成形光学素子180により(上述したように)成形される。一実施形態において、ビーム158を集束すべく、ビーム集束光学素子181は(上述されたように)、ダイクロイックミラーと、チップ100との間に配置される。
【0221】
上述されたように、実施形態において、ビーム158は、作用領域129における検査/励起ポイントからごくわずかに下流側の複数の物質160上のタイトスポットへと集束される。しかしながら、当業者であれば、集束エネルギービーム158は、チップ100の流出部112の下に、又は、検査/励起領域129からわずかに上流側に配置されてよい(
図6Aから
図6Dを参照)ことを知っているであろう。
【0222】
更に、上述されたように、実施形態において、検査ビーム148のビームスポットと、集束エネルギービーム158のビームスポットとの間の距離は調整できる。
【0223】
[物質の集束及び方向付け] 従来のフローサイトメトリーシステムにおいて、特に非対称な形状を有する、複数の物質、又は複数の細胞は、固体表面近くを流れる際に方向付けされる傾向があるので、物質又は細胞の方向付けの機能及び改善は、方向付けバッフル、又はノズルの内側のオフセット構造のような、複数の複雑なノズルの設計に依存する。複数のノズルベースのフローサイトメトリーシステムの複雑な設計、及び、それらの高い製造コストを避けるために、本発明のマイクロ流体チップ100の設計では、その分析能力を最適化するように、複数の物質160を集束、位置付け、及び方向付けする。従って、一実施形態において、非球状の形状を有する複数の物質160(即ち、複数の細胞)が、チャネル164において制限されたコア体積へと整列させられ、検査/検出ビーム148を通過する場合、同様の所望の方向に維持される。結果として、より均一な分散及び検出信号が取得されるであろう。従って、システム100の感度及び安定性を増大するのに役立つ。
【0224】
一実施形態において、流体力学的集束を使用して、チャネル164の断面の中央平面の中心に対してオフセットするようサンプルコアストリーム120を位置決めすることにより、複数の物質160の方向は、実現されることができる。
【0225】
[2つの段階の流体力学的集束] 以下では、マイクロ流体チップ100の一実施形態において、流体流に起こる2つの段階の流体力学的集束を記述する(
図1Bから
図1F参照)。
【0226】
一実施形態において、本発明の第1の流体力学的集束段階は、サンプル流入部106を通した、複数の精子細胞160等のような複数の生物学的サンプルを含む複数の物質160を含有する流体サンプル120の流入、及びシース又はバッファ流入部107、108を通じたシース又はバッファ流体163の流入により達成される。一実施形態において、複数の物質160は、それらの蛍光及び画像分析を可能とするため、公知の方法による色素(例えば、ヘキスト色素)によって予め着色される。
【0227】
一実施形態において、メインチャネル164を通じるサンプル流体混合物120の流れにおける複数の物質160は、流体流により囲まれ、成形され、ランダムな方向及び位置を有する(
図3A及び
図6A参照)。交点161において、メインチャネル164内を流れるサンプル混合物120は、シース又はバッファ流体163がサンプル混合物120と合流する場合、チャネル116、117からのシース又はバッファ流体163により囲まれ、及び成形され、第1の方向において(即ち、メインチャネル164が交点161に入る位置に応じて、全ての側面でなければ、少なくとも流れの両側の面上の、少なくとも水平方向において)圧縮される。この圧縮は、(3次元の(3−D))流体力学的集束と称され、チャネル164内の複数の物質160を一列編成に近づき得る制限されたコア体積へと整列すべく使用される。流体力学的集束段階は、平面状のマイクロ流体チャネル164を流れる複数の物質160の移動速度を加速すべく、チャネル164において有意に大きなシース又はバッファ流を利用する。一実施形態において、チャネル164のジャンクション161及び第1の段階のシース又はバッファチャネル116、117の前にある、チャネル164における傾斜166B又はテーパ166A構造により、サンプルコアストリーム120もまた、中心平面からオフセットされ得る。
【0228】
結果として、複数の物質160は加速され、マイクロ流体チャネル164における複数の物質160の間の間隔もまた、伸ばすことができる。複数の物質160の速度は、サンプル120のフローレート、及び、シース又はバッファ163全体のフローレートに対するその値の比率に依存する。この機能は、目詰りの問題、及び高く濃縮された物質サンプル120で物質160が集塊となることを防止するのに有用である。
【0229】
しかしながら、
図8Aに示されるように、このステージにおいて、メインチャネル164に渡って結果として得られるサンプル120のコアストリームは、チャネル164の深さ方向、又は鉛直軸に沿って、重なりあった複数の物質160又は複数の細胞をなお示す。特に、複数の物質160は、チャネル164の中央の周囲に集束され、チャネル164の深さ方向に延在する薄片へと圧縮され得る。従って、交点161において、サンプル流体120が、チャネル114、115からのシース又はバッファ流体163により、チャネル164の中央へ、圧縮されている際に、複数の物質160(即ち、複数の精子細胞)は、チャネル164の幅の中央へ移動する。
【0230】
一実施形態において、本発明は、第2の集束段階を含み、ここで複数の物質160を含むサンプル混合物120は、交点162においてチャネル114、115から入る(
図14参照)、第2の方向(即ち、上方及び下方からの鉛直方向)からのシース又はバッファ流体163によって、更に圧縮される。チャネル164Bへと至る交点162は、第2の集束領域である。チャネル114、115からの交点162への複数の入口は、長方形として示されるが、当業者であれば、任意の他の適切な構成(即ち、テーパ形状、円形)が使用されてよいことを理解するであろうことに留意されたい。
【0231】
一実施形態において、複数の物質160がチャネル164Bに沿って流れる際に、幅及び深さの両方に(即ち、水平方向及び鉛直方向に)関して、複数の物質160をチャネル164Bの中央に整列すべく、チャネル114、115におけるシース又はバッファ流体163は、同じ平面から(
図3A及び
図6A参照)、又は異なる平面からチャネル164へと入る(
図15参照。チャネル114、115は、メインチャネル164の上部及び下部に配置され、チャネル164に鉛直に入る)。次に、メインチャネル164において結果として得られる流れは、続いて、マイクロ流体チャネル114、115の、第2段階のシース流によって圧縮され、再配置される。
【0232】
従って、本発明の第2の集束段階において、サンプル混合物120は、チャネル114、115に入る鉛直方向のシース又はバッファ流体163により、再び圧縮される。
図8Bに図示されるように、サンプル120のストリームはチャネル164の深さの中心に集束される。複数の物質160は、特定の方向の一列編成に近づき得る、制限されたコア体積で、チャネル164の中央に沿って流れる。
【0233】
従って、これら2つの後続の流体力学的集束段階の後で、複数の物質160又は複数の細胞の制限されたコア体積が取得され、また、ストリームの位置も、鉛直軸に沿って所望の位置へ調整されることが出来る(
図8B参照)。従って、サンプル流入部106へと導入される複数の物質160は、2つの段階の流体力学的集束を受ける。これは、複数の物質160が、より一様な方向における(複数の物質160の種類に依存する)一列編成に近づき得る、制限されたコア体積でチャネル164Bを通じて移動することを可能とする。これは、複数の物質160のより容易な検査を可能とする。
【0234】
[3つの段階の流体力学的集束] 一実施形態において、3つの段階の流体力学的集束は、チップ100における複数の物質160に実行される。この実施形態において、
図1A及び
図3Bに示されるように、初めの2つの流体力学的集束段階は、交点161及び162においてサンプル流体ストリーム120を水平方向に圧縮することにより達成され、次に第3の段階において、サンプル流体ストリーム120を、チャネル164において鉛直方向に圧縮する。シース又はバッファチャネル114、115及び116、117は、各々のチャネルに対して45度又はそれより小さい角度で、水平方向からチャネル164に入る。
【0235】
より具体的には、第1の流体力学的集束段階において、サンプル120の流れは、第1の交点161へと入り、チャネル116、117からのシース又はバッファ流体163は、サンプル120の流れを取り囲み、それをチャネル164における薄いサンプル120のストリームへと直ちに圧縮する。一実施形態において、サンプル流体チャネル164は、交点161の前に内部傾斜によってテーパ状にされる。交点161で、シース又はバッファ流体チャネル116、117は、チャネル164に入る(
図3B参照)。一方、チャネル164は、第1のシースチャネル116、117より浅い(即ち、寸法において小さい)ので、サンプル120のストリームは、メインチャネル164の上部へ流れるべく、シース又はバッファ流体163によって、チャネル116,117から持ち上げられる。
【0236】
第2の流体力学的集束段階において、シース又はバッファ流体163は、チャネル114、115からチャネル164へと導入される。チャネル114、115は、メインチャネル164の上部の近くに配置される(
図3B参照)。一実施形態において、
図3Bに示されるように、シース又はバッファチャネル114、115は、チャネル164に水平に合流し、シース又はバッファチャネル116、117の寸法からより小さな寸法であり得る。従って、チャネル114、115の深さは、メインチャネル164より浅いので、シース又はバッファ流体163は、サンプル120のストリームの幅を制限すべく、チャネル164の幅に沿ってサンプル120のストリームを更に圧縮する。このようなシース又はバッファ流体163の流れは、信号測定感度を大幅に改善させる。
【0237】
第3の流体力学的集束段階なしで、交点161及び162における鉛直方向の圧縮が無いことは、特に、高スループットのフローサイトメトリーの用途に対して、複数の物質160又は複数の細胞が、同時に検出領域129に入り、従って、検出感度を低減させ、又は測定誤差を生じさせるとしてよい。
【0238】
しかしながら、3次元の流体力学的集束は、複数の物質160を、チャネル164において一列編成に近づき得る制限されたコア体積に整列させるための効果的な手法である。更に、チャネル164における物質160の一貫した位置決めは、放物線状の流れにおける物質間の速度における最小の変動をもたらす。
【0239】
マイクロ流体ベースのフローサイトメトリーにおいて、フロー速度のプロファイルは、マイクロチャネルの長方形断面に沿った放物線状である。
図7は、マイクロ流体チャネル164の断面におけるせん断力のプロファイルを示す。
図7に示されるせん断力の勾配は、テーパ形状の先端部において、最小のせん断力を有し、後方の大きな領域は、最大のせん断力の値を有する。従って、流体力学的なせん断力の勾配が、チャネル164の断面に渡って形成される。チャネル164の壁近くの大きなせん断力は、非対称の複数の物質160を方向付けるのに役立つ。
【0240】
本実施形態において、流体力学的集束のはじめの2つの段階の後で、サンプル120の流れは、水平方向及び鉛直方向の両方に非常に薄いストリームへと縮む。チャネル116、117及び114、115からの独立に制御されたシース又はバッファ流体163の比率は、チャネル164において結果としてもたらされるサンプル120のストリームのサイズを各々決定する。チャネル114、115からのシース又はバッファ流体163によって引き起こされた圧縮の後で、複数の物質160は、チャネル164の深さに沿って少し広がり得る。しかしながら、複数の物質160はサンプル120のストリームになおも従い、サンプル120のストリームはメインチャネル164の最上の天井部に非常に近い(分かり易いよう、説明されるチップは水平方向に配置されたものとしてであることに留意されたい)。従って、鉛直方向に沿って、サンプル120のストリームを更に圧縮し、薄い、サンプル120のストリームの内側に複数の物質160をよく閉じ込めるために、チャネル172からの第3のシース又はバッファ流体163の流れを有することが必要である。
【0241】
加えて、シース又はバッファ流体163の流れは、シース又はバッファチャネル172からの予め閉じ込められたサンプル120のストリームに垂直に導入されるので、サンプル120のストリームをチャネル164の断面に沿った位置に位置合わせするのに役立つ(即ち、
図8Bに示されるように最終結果を実現する)。チャネル172からのシース又はバッファ流体163のフローレートの微調整により、複数の物質160の位置は、検出領域129を通過する場合に、正確に制御されることが出来る。
【0242】
一実施形態において、シース又はバッファ流体163は、マイクロ流体チップ100を通る複数のマイクロチャネルによる代わりに、外部シース管(
図20参照)からチャネル172によって、導入される。従って、外部流コントローラが、流入チャネル172を通じて一定の、安定したフローレートを提供するために必要とされる(
図19から
図21参照)。
【0243】
本発明の設計は、コアサンプルストリーム120が、平坦形状の複数の物質を方向付け、均一性に近付く物理的構成で、チャネル164において複数の物質160を位置付けることを可能とする。これらの全ては、集束エネルギー装置157の下流側の正確な作用を改善する。
【0244】
3つの流体力学的集束段階が上に記載されているが、当業者であれば、それらが本発明の複数の所望の特徴を実現する限り、サンプル流体120における複数の物質の方向及び集束に関して、シース又はバッファチャネルの構成及び数を変更し得ることを知っているであろう。
【0245】
[フロー制御方法] 上述された複数の例示的な3次元の流体力学的集束の方法を実現すべく、一定の流れが、マイクロ流体チップ100を通じて流されることが可能となるように、サンプル流体120、及びシース又はバッファ流体163の両方が、正確に供給されることが必要とされる。シース又はバッファ流体流163により圧縮された後、複数の物質160又は複数の細胞は、加速され、サンプル120のコアストリームにおける複数の物質160又は複数の細胞の間の平均の間隔もまた、大幅に元の間隔から延ばされる。合計のシース又はバッファ流体163のフローレート及びサンプル120のフローレートの比は、100:1と1000:1との間に調整されることが出来る。好ましくは、本発明のマイクロ流体チップ100において、200から400対1の比が使用される。マイクロ流体チップ100における全体的な流体のフローレートは、毎分約2から4mlである。検査及び信号検出の間、及び、検出/検査位置と、集束エネルギー装置157の作用の位置との間で(
図6A参照)、複数の物質160の安定した移動速度を保証すべく、導入されたシース又はバッファ流体流163は、定常的で、パルスに影響されないものである必要がある。これは、正確な信号読み取り及び集束エネルギー装置157による複数の対象の物質160への作用を容易にする。メインチャネル164を通る流体流の正確な制御によって、全体的なフローレートの変化は設定されたフローレートの1%よりも小さく、集束エネルギー装置157による可能な作用を受ける予定の複数の対象の物質160の移動速度は、複数の物質160の検査及び検出が行われる位置から、集束エネルギー装置157が複数の物質160に作用する位置で(
図6A参照)、1%より小さく変化する。
【0246】
[複数の物質の方向付け] 平坦形状の複数の物質160(即ち、複数の精子細胞)の検出における難しい問題のうちの1つは、検査ビーム148を通過するときに、一様な方向に複数の物質160を制約することである。従って、複数の物質160のおよそ均一な位置決め、及びチャネル164における複数の物質160の対応する方向付けは、システムの感度を増大させるために役立つ。前述の流体力学的集束の方策によって、チャネル164に沿った複数の物質160の位置は、制御された方法で操作されることが出来る。従って、チャネル116、117及び114、115及び172からのシース又はバッファ流体163の流れの間の比率の調整によって、チャネル164の中央から約5から20ミクロン(約5μmから20μm)オフセットの集束サンプル120のストリームでの(例えば、150ミクロン(150μm)の幅及び100ミクロン(100μm)の高さのチャネル164の断面積に基づいて)位置は、平坦形状の複数の物質160の検出のために好ましい。一般的に、複数の物質160の偏り位置の0から100ミクロン(100μm)の調整が実現出来る。
【0247】
具体的には、複数の物質160の方向を改善すべく、チャネル164において複数の物質160を整列させることを目的として、マイクロ流体チャネル164の高アスペクト比は、物質160(即ち、精子細胞)の平坦面を回転し、チャネル164の壁面に向けるためのせん断力を誘導するために利用される。更に、シース又はバッファ流体163の流れは、チャネル164において複数の物質160を圧縮及び位置決めすべく、能動的に用いられる。これらの方法は、より詳細に後述される。
【0248】
i)受動的方法 一実施形態において、a)サンプル流120を持ち上げるべくサンプルメインチャネル164において非対称的な傾斜166Bを配置すること(
図4Aに関する上記の説明参照)、及び、b)集束されたサンプルストリーム120を持ち上げるべく作用チャンバ129の前にメインチャネル164において非対称的な傾斜166Bを配置すること(
図4Bに関する上記の説明参照)のうちの1つにより、チャネル164における集束された複数の物質160を位置付けすべく、非対称的な形状の構造が利用されてよい。上記の複数の非対称的な特徴は、個別に使用され、又は2以上のものを適切な組み合わせで使用されることが可能である。しかしながら、当業者であれば、これらの特徴は、チャネル164における複数の物質160の位置付けの達成に必要のないことを知っているであろう。
【0249】
一実施形態において、上述のように、必要ではないが、サンプル流120を持ち上げるために、チャネル114から117に複数の傾斜が使用されてよい。複数のチャネルにおける複数の傾斜の配置は、複数の物質160又は細胞の方向付けを改善するために、サンプルコアストリーム120の複数の物質160が中央部からオフセットされることが必要な方向に依存する。しかしながら、上の受動的方法は、メインチャネル164における物質160の位置を変えることについて、より低い柔軟性を有する。
【0250】
ii)能動的方法 チャネル164におけるサンプル120のコアストリームのオフセットにするための代替的方法において、非対称的なシース流163は、チャネル164における複数の物質160又は複数の細胞の位置を調整するために導入される。非対称的なシース又はバッファ流体流163を実現する幾つかの方法が存在するが、これらのうちの2つの実施形態が後述される。
【0251】
一実施形態は、(2つの段階の流体力学的集束の方法において)
図3A又は(3つの段階の流体力学的集束の方法において)
図3Bに示されるように、メインチャネル164の壁面と90度の角度をなす単一のシース又はバッファ流体流163を導入することである。2つの段階の流体力学的集束の実施形態において、第2の段階の流体力学的集束の交点162における導入されたシース又はバッファ流体流163は、交点161における第1の段階の流体力学的集束に引き続いて、サンプルコアストリーム120を更に圧縮する。
【0252】
代替的な3つの段階の流体力学的集束の実施形態において、サンプルコアストリーム120のこの圧縮は、チャネル172がメインチャネル164と合流する、第3の段階の流体力学的集束の交点において生じる。従って、最後の流体力学的集束段階は、複数の物質160又は複数の細胞を、鉛直軸に沿った所望の位置に位置合わせする。流体力学的集束フローレートの比率の制御により、最適な方向を実現すべく複数の物質160の所望の位置は、取得することが出来る。
【0253】
2つの段階の流体力学的集束の方法を使用する第2の実施形態において、2つの第2の段階のシース又はバッファチャネル114、115は、
図12Aから
図12Bに示されるように、メインチャネル164の壁部へ斜めに合流し、上部及び下部からメインチャネル164と平行になる。第2の段階の流体力学的集束チャネル114、115、及びメインチャネル164の角度は異なってよく、製造方法に依存する。好ましくは、90度の角度が選択される(
図12Aから
図12B参照)。異なるフローレートのシース又はバッファ流体163は、2つのチャネル114、115を介して流れてよい。流体163は、メインチャネル164におけるサンプルコアストリーム120を再配置することが可能である。複数の物質160がチャネル164の中心平面からオフセットされた後で、複数の物質160の方向付けは改善される。複数の精子細胞160のような特定の実施形態において、複数の精子細胞160は、自身の平坦面を鉛直軸において、チャネル164の壁側に回転させる傾向がある。
【0254】
図12Bの実施形態から分かるように、チャネル114、115の寸法は、異なる油圧抵抗を得るべく、必ずしも同一ではない(
図12Aに示されるように)。従って、チャネル114、115における第2の段階のシース又はバッファ流体流163の同一のフローレートは、バイアス流体流もまた、生成するであろう。
【0255】
まとめると、上記の受動的方法及び能動的方法の両方が、複数の物質160を最適に位置付けし、チャネル164におけるそれらの方向付けを改善するのに役立つことができる。
【0256】
一実施形態において、パンケーキ型形状の複数の精子細胞160は、複数の物質160の例と見なされる。複数の精子細胞のパンケーキ型、又は押し潰された涙状の形状の頭部のために、(実施形態に応じて)第2、又は第3の集束の段階を受ける際に、精子細胞160は、自身を予め定められた方向に再度、即ち、光線148の方向に垂直なそれらの平坦面によって方向付けるであろう(
図6を参照)。従って、精子細胞160は、流体力学的集束の処理を受ける間に、体の向きに優先傾向を確立する。具体的には、複数の精子細胞160は、これらの平坦な体が圧縮方向に垂直であることによって、より安定する傾向がある。従って、シース又はバッファ流体163の制御によって、ランダムな方向で開始する複数の精子細胞160は、ここで一様な方向付けを実現する。従って、複数の精子細胞160は、チャネル164Bの中央に制限されたコア体積に配置されるだけでなく、最後の流体力学的集束段階における圧縮の方向に直交するそれらの平坦面に対し一様な方向もまた実現する。
【0257】
上記の方法は、複数の精子細胞160の方向、及びX及びY精子の染色体のDNA含有物を区別する(従って、X精子とY精子との間の区別をする)能力を改善する。
図13A及び
図13Bのヒストグラムは、それぞれ、チャネル164の中央における複数の精子細胞160、及びチャネル164の中央からオフセットされた精子細胞160を示す。
図13Aにおけるヒストグラムの左及び右の複数の円は、悪く方向付けられた複数の精子細胞160の複数の集団を示す。主要集団の左のこぶは、X及びY精子の集団を区別するための能力を弱め、X及びY精子の集団の非対称な分布に寄与する。
【0258】
マイクロ流体チップシステムの動作 [複数の物質の検査] 一実施形態において、検査光源147は、350mWの出力と、355nmの波長と、12psのパルス幅とを有する励起レーザ147(
図16参照)である。
【0259】
一実施形態において、流体力学的集束段階から更に下流側で、チャネル164において、複数の物質160は、光源147を使用して、カバー133を介して開口部150において作用チャンバ129内で検出される。光源147は、光線148を発し(光ファイバを介してもよい)、光線148は開口部150においてチャネル164の中央に集束される。
【0260】
一実施形態において、複数の物質160は、複数の精子細胞160である。これらは、複数の流体力学的集束段階により方向付けられ、その結果、複数の精子細胞160の複数の平坦面は、光線148の方へ面するようになる。加えて、全ての物質160又は精子細胞160は、それらが光線148の下を通過する際に、複数の流体力学的集束段階によって、一列編成に近づき得る制限されたコア体積中へと移行させる。複数の物質160は光源147の下を通過し、光線148の作用を受けるので、複数の物質160は、所望の複数の物質160の正体を示す蛍光を発する。
【0261】
光源147は、作用領域129において複数の物質160の検出のための蛍光励起エネルギーを提供する。複数の物質160が複数の精子細胞160であるものに関する例示的な一実施形態において、X染色体細胞は、(当技術分野において周知なように、DNA含有物に基づいて)Y染色体細胞と異なる強度で蛍光する(355nmが、DNAにヘキスト33342色素が使用されるときに選択されることに留意されたい)。更に、他の実施形態において、1つの特性を持っている複数の細胞である複数の物質160は、異なる一群の特性を持っている複数の細胞と異なる強度又は波長で蛍光し得る。更に、複数の物質160は、形状、サイズ、又は、任意の他の複数の区別するためのインジケータに対して見られ得る。
【0262】
従って、複数の精子細胞160の実施形態において、細胞160の平坦面及び端部への照度は、他の複数の細胞と比べて、精子細胞160によって全く異なる。精子細胞160の端部から来る蛍光信号は、平坦面から来るものより際立ってより強く、これは、デジタルプロセッサ156が、端部からのより強い信号、並びに、細胞160のX及びYの平坦面からの通常のより低い信号に対処することの困難性を増大する。従って、精子細胞160の平坦面をレーザの照明(即ち、光線148)へ向き合うように回転することは、方向付けの変動を減少させ、複数のX又はY精子細胞160を区別するシステムの能力を増大するのに役立つ。
【0263】
ビームに誘導された蛍光の実施形態において、(
図5における)発せられた光線151は、次に、対物レンズ153によって集光され、続いて、光学センサ154によって電子信号に変換される。電子信号は、次に、アナログデジタルコンバータ(ADC)155によってデジタル化され、信号処理のために電子コントローラ156に送信される。
【0264】
上述のように、一実施形態において、DSPベースのコントローラ156は電子信号を監視し、特定の信号が参照された場合、集束エネルギー装置157は、対象の物質160に作用するよう用いられ得る(
図6Aから
図6Cを参照)。しかしながら、代替的な実施形態において、検査装置は、集束エネルギーデバイス157により作用を受けた後に、複数の物質160を検査する(
図6D参照)。
【0265】
一実施形態において、複数の物質160(即ち、生物学的材料)を含むサンプル120の検査は、他の複数の方法によって達成される。従って、マイクロ流体チップ100の一部又はその複数の出口は、光学的に又は視覚的に検査されてもよい。概して、検査のための方法は、カメラ等による直接の視覚的画像分析を含んでもよく、直接の高輝度の光の画像分析若しくは蛍光画像分析を利用してもよく、あるいは、分光法、透過分光法、スペクトル画像分析、又は、動的光散乱若しくは拡散波分光法のような散乱等の複数のより高度な技術が使用されてもよい。
【0266】
幾つかの場合において、光学的検査領域129は、サンプル混合物120の複数の物質160に結合する若しくは影響を与える化学物質、又は、特定の材料若しくは疾病の存在する場合に結合するように及び/若しくは蛍光を発するように機能化される複数のビーズのような、複数の添加物と併せて使用されてもよい。これらの技術は、複数の疾病を検出するべく、又は、複数の物質160を特徴付ける複数の他のパラメータを検出するべく、複数の細胞濃度を測定するために用いられてもよい。
【0267】
しかしながら、別の実施形態において、蛍光が使用されない場合、偏光後方散乱の方法もまた、使用されてもよい。分光法を使用して、複数の物質160は上述されたように検査される。陽性結果を有して蛍光を発したそれらの物質160(即ち、標識によって反応したそれらの物質160)のスペクトルは、集束エネルギー装置157による選択のために識別される。
【0268】
一実施形態において、複数の添加物若しくはシース又はバッファ流体163に対する当該物質160の反応若しくは結合に基づいて、あるいは、複数の物質160の自然蛍光若しくは複数の物質160に関連付けられた物質の蛍光を識別タグ若しくはバックグラウンドタグとして使用することによって、又は、選択されたサイズ、寸法若しくは表面特徴等を満たすことによって、複数の物質160は、検査及び識別されてよい。
【0269】
一実施形態において、アッセイの完了に応答して、(電子信号を監視し、集束エネルギー装置157を採用する)コンピュータ182及び/又はオペレータを介して、破棄及び収集されるべき複数の物質160の選択がなされてもよい。
【0270】
[集束エネルギー装置の適用] 本発明の集束エネルギー装置157は、チャネル164において、又は、チップ100と、コンテナ188との間で複数の物質160に多数の作用を実行し得る。
【0271】
一実施形態において、集束エネルギーデバイス157は、多数の手法によって複数の物質160に光による損傷を与え、又は、破壊すべく、作用する。
【0272】
具体的には、集束エネルギー装置157は、複数の物質160(即ち、複数の細胞)を殺すべく作用する。例えば、複数の対象の物質160が、不必要な複数の細胞160であり得、集束エネルギー装置167による作用に応答して、細胞内環境の過熱により細胞死が引き起こされ得る。これは、タンパク質の変性又は酵素の活動の減少を促進し得るが、それに限定されない。
【0273】
別の方法において、集束エネルギー装置157からのエネルギー適用量158の作用は、細胞膜の破断、及び細胞160の外へ、及び周囲の環境(即ち、シース又はバッファ流体163)への細胞含有物の漏出を引き起こすのに十分に強い。
【0274】
別の方法において、物質160又は細胞の死は、集束エネルギー装置157からの集束エネルギーパルス158のエネルギーの吸収に起因する、活性酸素(ROS)の形成により引き起こされ得る。これは、何よりも、DNA及びタンパク質の損傷を引き起こすであろう。
【0275】
別の実施形態において、集束エネルギー装置157からの集束エネルギーパルス158を使用して、集束エネルギー装置157は、複数の細胞160のような複数の対象の物質160を一時的、又は永続的に無効化し得る。
【0276】
例えば、レーザ又はLED157によって生成されたパルスのような集束エネルギーパルス158に精子細胞160をさらすことは、複数の細胞160内の光活性化を生成し、精子160の運動性を担う細胞メカニズムの一時的又は永続的な無効化をもたらす。複数の対象の精子細胞160の無効化の後で、結果としてもたらされるサンプル120は、運動性の精子160と、非運動性の(対象とされる)精子160とを含有する。この場合、非運動性精子は、自然に卵母細胞を受精させることが不可能となる。
【0277】
別の実施形態において、DNAにおけるヌクレオチドの二量体化によって、精子160を生殖力のないようにすべく、集束エネルギーパルス158を使用することが望ましいことであり得る。複数の精子細胞160のような複数の細胞160が、紫外光にさらされ、ピリミジン塩基の間に複数の結合を引き起こし、修復されない場合に複写と転写とを抑制する一種の「架橋結合」をもたらす場合に、二量体化が生じる。従って、複数の対象の精子細胞160は、運動性により明らかなように、なおも生存するが、複数の対象とされる精子細胞160の受精率は、大幅に減少する。
【0278】
複数の精子細胞160に加えて、予め定められたレベルの蛍光を発現する複数の細胞又は複数のコロイド160のような複数の物質160中の蛍光を光退色すべく、複数のLED又は複数のレーザ157のような高出力の集束エネルギー源157を使用することが可能である。例えば、多くの自己組織化物質形成において、互いから分離するのが困難な広範囲にわたるサイズを持つ複数の物質160は、形成される。所望のサイズを有する複数の物質160の強化されたサンプル120を生成すべく、当技術分野において公知の複数の方法を使用して、全物質160に蛍光標識を付けることが出来る。そして、物質160のサイズを判断し、予め定められたレベルの蛍光を有する複数の物質160を光退色させるべく、光学的検査を使用することが出来る。
【0279】
具体例において、精液サンプル120は、光退色の対象となる細菌又はウィルス細胞のような複数の混入物質を含み得る。別の例は、細胞160又はDNAの所与の特性を含み、量的及び/又は質的な測定のためにフルオロフォアによって標識が付けられた精子細胞160を含み得る。 その特性を含有する精子細胞160は、集束エネルギー装置157によって、対象とされてよい。別の実施形態において、その特性を含有しない複数の精子細胞160は、光退色に対する対象とされてもよい。血液のような他の細胞混合物における複数の特定の細胞160も、生存性を減少させるべく光退色処理に対する候補となる。更に別の実施形態において、光退色させた複数の細胞/複数の物質160は、下流側で検出不可能であり得て、従って、後に続く複数の処理段階の影響を受けない(即ち、後に続く複数の処理段階をバイパスする)。
【0280】
別の実施形態において、複数の物質160の無効化と対照的に、集束エネルギーパルス158は、複数の物質160内のケージド分子又はケージド化合物のような、複数の材料を活性化するのに使用されることが出来る。
【0281】
1つの用途において、ケージド化合物は、蛍光マーカ、又は複数の細胞反応分子を表すが、それに限定されない。これらの用途において、集束エネルギーパルス158は、複数の体外治療のために細胞160のシグナリングキネティクスを変更する、ケージド分子又はケージド化合物の光活性化を引き起こすべく使用される。
【0282】
別の実施形態において、集束エネルギーパルス158は、物質160の複数の内部特性を変更することにより、複数の細胞又は複数のコロイド160を無効化する、複数の光重合事象を活性化することが出来る。
【0283】
別の実施形態において、細胞内シグナリング経路に対して、集束エネルギーパルス158は、細胞の生存性及び機能性を高めるべく、生殖細胞を含む複数の物質160又は複数の細胞内に、複数の熱ショックタンパク質を活性化し、又はミトコンドリア生合成若しくは活性化を誘起すべく使用される。検査/検出デバイス147、又は、列挙をするにはあまりにも多過ぎる、数多くの他の要素(即ち、環境的、熱的、化学的要素等)のいずれかによりなされた損傷を修復すべく、追加の細胞内の複数の経路もまた、活性化されてよい。
【0284】
一実施形態において、複数の対象の物質160又は細胞のカプセル化を促進する多分岐PEGアクリレート/PEGビニル/等を使用して、複数の対象の細胞160、複数のコロイド、又は他の複数の物質を一時的にカプセル化又は永続的に包含すべく、当業者であれば、集束エネルギーパルス158によって光重合を生成可能である。商業上の貯蔵及び配送処理を通しての生存性及び受精率の維持を増進すべく、複数の精子細胞160は、カプセル化されることが可能である。
【0285】
別の実施形態において、複数の集束エネルギーパルス158は、対象とされる複数の細胞又は複数の物質160の表面上に複数の光重合事象を引き起こすべく使用される。これは、複数の対象の物質160のサイズ又は密度を変更すべく、又は、カプセル化物質の複数の特性及び複数の性質を改善すべく、カプセル化物質のサイズ又は密度を増大させる。
【0286】
別の実施形態において、ベシクルの疎水性部分における光重合シーケンスは、その中でのカプセル化によって、所望の分子又は物質160を永続的に封入するよう使用されてもよい。
【0287】
別の方法において、集束エネルギー装置157は、複数の対象の物質160に外部から作用すべく、又はそれらの周囲の環境を変更すべく、使用されてもよい。
【0288】
1つの方法において、集束エネルギーパルス158は、複数の対象の細胞又は複数の物質160の周囲の局所的な環境を加熱するのに使用される。その結果、熱の増大が、複数の対象の細胞160に毒性を引き起こすのに十分となる。
【0289】
別の実施形態において、集束エネルギーパルス158は、複数の対象の細胞160にごく近接した(複数のベシクルのような)複数の送達媒体を含有する検体の破裂を促進すべく使用される。送達媒体は、精子細胞160の一時的な不動性を引き起こすフッ化ナトリウム(NaF)、又は複数の精子160の受精能獲得を促進するヘパリンのような複数の分子を運ぶ。検体又は活性化物質の濃度が局所的に増大する場合、複数の対象の精子細胞160又は他の複数の物質は、複数の対象でない細胞160における同様の反応を活性化させることなしに、複数の局所的な信号に反応する。
【0290】
別の実施形態において、複数の物質160又は複数の細胞が表面に取り付けられた場合、周囲の環境は、表面弾性係数を変化させるべく、又は、複数の物質160若しくは複数の細胞を囲む表面から、複数の細胞反応化学物質を放出すべく、集束エネルギーパルス158によって変更される。
【0291】
一実施形態において、光/EM波158の吸収による熱の生成は、温度変化を引き起こし、複数の物質160又は複数の細胞を殺す。
【0292】
別の実施形態において、集束エネルギーパルス158は、予め定められた化学結合を形成すべく、又は取り付け材料における化学結合を破壊すべく使用される。従って、複数の幹細胞160のような複数の物質160の複数の区別された細胞株への区別を管理する。
【0293】
一実施形態において、幾つかの用途について、細胞吸収又は複数の対象の物質160への細胞の付着を促進すべく、複数の集束エネルギーパルス158を使用することが望ましい。
【0294】
一実施形態において、複数の抗体、複数の細胞プローブ、又はDNAの細胞吸収は、局所的な加熱によって強められる。
【0295】
一実施形態において、上記の局所的な加熱によって、物質160又は細胞生存性を維持するためにもまた、温度上昇が最適化される場合、複数の物質160の複数の対象の生存細胞160への内在化は、選択的に促進される。
【0296】
一実施形態において、供給されるべき物質160は、物質に取り付けられ、これは、光源147によって対象とされた場合、短寿命の微小気泡をもたらし得る。例えば、オリゴヌクレオチドは、金のナノ粒子に接合されてよい。金が、最適化された波長で光源147によって加熱される場合、微小気泡が、短寿命で形成される。微小気泡のキャビテーションに応答して、金のナノ粒子は、破壊されて離れ、ナノ粒子の破片及びそれに取り付けられた物質は、細胞膜を通すように透過処理される。
【0297】
別の実施形態において、対象の物質160の温度上昇は、微小気泡の形成を引き起こすのに十分ではない。局所化した温度上昇は、細胞生存性を維持するべく、複数の対象の生存細胞への複数の物質160の内在化を選択的に促進するのに最適化される。
【0298】
同様に、別の実施形態において、複数のコロイド又は複数の物質に材料を付着させるべく集束エネルギーパルス158を使用することによって、物質160の形状又は物質160の複数の特性は、変更され、従って、磁場又は電場のような複数の追加の分離技術に、通常はそのような複数の力の影響を受けにくい複数の材料を分離させることを可能とする。
【0299】
[集束エネルギー装置の動作] 一般的に、フローサイトメトリーの解析、及び集束エネルギー装置157又はレーザのような電磁的放射源を使用する複数の作用システムは、複数の選択された物質160に作用すべく、制御されたエネルギーレベルを個々の複数の物質160に供給することを要求するのが普通である。一実施形態において、そのようなシステムは、集束エネルギー装置157を使用して、対象とされる複数の物質160若しくは複数の細胞を殺し、変更し、損傷を与え、又は破壊するとしてよい。他の実施形態において、上述されたように、他の複数の方法の中でも特にそのようなシステムが、選択された複数の物質160若しくは複数の細胞中の、又は複数の選択された物質160を取り囲む流体、媒質、又は基質中の複数の対象を活性化し得る。
【0300】
複数の集束エネルギーパルス158を利用する上記の方法において、標的型照射又は連続的除去のいずれかの複数の方法により、放射が適用され得る。その結果、所望の複数の物質160は影響されず、不必要な、変更され、殺され、破壊され、又は損傷を受けた複数の物質160は、サンプル120から判別される。上述のようなものと同様の考慮が、標的型照射モード及び連続的照射モードに対するレーザ波長及びレーザ出力の選択をする場合に与えられる。
【0301】
[a.標的型照射] より具体的には、標的型照射において、集束エネルギー装置157は、対象とされる物質160に対して用いられる。具体的には、サンプル120の流体混合物中の物質160は、例えば、上記の方法の1つ又は複数により、物質160の特定の特性が評価されるチャンバ129中の検査/検出領域を通過し得る。
【0302】
従って、フローベースのシステムにおいて、例えば、集束エネルギー装置157の作用領域129は、検査のために光源147を使用する光学的検査領域から下流側である。代わりに、集束エネルギー装置157は、更に下流側において、検査の前に利用される。一実施形態において、集束エネルギー装置157は、作用チャンバ129において複数の物質に作用する。光学的検査領域と作用領域との間の距離は、異なるタイミングを許容すべく調整されてよい。
【0303】
予め定められた基準に基づいて、選択された物質160を保持するか、破棄するか、又は作用するかのいずれかの決定がなされる。作用のために標識が付された複数の物質160は、集束エネルギー装置157からのエネルギーのトリガされたパルス158により衝突される(例えば、
図6Aから
図6C参照)。
【0304】
物質160又は細胞は、対象とされない場合、影響を受けずに、チャンバ129を通って、チャネル164を介して、流出チャネル141及びコンテナ188へ流れる。コンテナ188は、複数の対象の物質及び複数の対象とされない物質160を判別された生成物165として収集する。
【0305】
一実施形態において、レーザパルス158は、短い持続時間を有し、個々の複数の物質160又は複数の細胞を選択的に対象とし得る。一方で、近傍にあり得る、複数の対象とされない物質160又は複数の細胞に意図されていない影響を及ぼす。従って、複数の対象とされない物質160又は複数の細胞への「オーバースプレー」を避ける。パルスエネルギーは、所望の効果を実現するよう選択され、その一方で、周囲の媒質、又は、例えば、流れのシステムにおいて、望ましくない乱れを回避することは、意図されていないキャビテーション又は泡の形成を引き起こさない。様々なレーザ波長が使用され得る。しかしながら、流束の要件は、対象の物質160、色素、及び環境の特性に依存して異なり得る。
【0306】
レーザユニット157は、限定された出力を有し、特に複数の小型のモデルは、高いパルス周波数(>100kHz、典型的には)で動作する。必要とされる流束を最小化するレーザ波長を選択することが好ましいことであり得る。例えば、作用処理に使用される色素、他の複数の対象、又は複数の物質160(即ち、複数の分子)の吸光度に、レーザ157の波長を適合させることは、効率及び有効性を大幅に改善する。加えて、パルスエネルギー158は、所望の効果を実現するよう選択され、その一方で、周囲の媒質、又は、例えば、流れのシステムにおいて、望ましくない乱れを回避することは、意図されていないキャビテーション又は泡の形成を引き起こさない。
【0307】
複数の物質160として、精子細胞160に関連付けられた一具体例において、355nmレーザ157は、細胞を染色する処理に対して使用された色素(即ち、ヘキスト33342色素)を利用すべく使用された。同様の例において、349nmレーザ157が使用され得る。そのような例において、複数の不必要な精子細胞160が光による損傷を受け、破壊され、又は殺される場合、0.5から8.0pJのパルスエネルギーレベルが使用される。
【0308】
[b.連続的照射] フローベースのシステムのような、連続的照射において、集束エネルギーパルス158は、常に用いられ、複数の対象とされない物質160(即ち、損傷を受け、破壊され、変更され、又は殺されるべきでない必要な複数の物質160)、又は、作用することを必要としない残屑又は混入物質の横断のためにのみ遮られる。
【0309】
上述されたように、予め定められた基準に基づいて、物質160を保持するか、若しくは破棄するか、又は、物質160に光による損傷を与え、殺し、変更し、無効化し、若しくは破壊することを含む作用をするかのいずれかの決定がなされる。連続波(CW)若しくは急速パルスレーザ又はLEDのような、集束エネルギー装置157は、複数の物質160に集束エネルギー158の連続的なストリームを供給し、例示のフローシステムにおいて、サンプル120の流体流のフローストリームにおける特定の位置を通過する全ての物質160に作用(即ち、光による損傷を与え、変更し、無効化し、破壊し、又は殺すことを含む)するべく、使用される。作用領域において複数の対象とされない物質160が発見された場合、複数の対象とされない物質160(即ち、幾つかの場合において、複数の破棄されるもの)が、影響されずに通過することを可能にすべく、レーザービーム158は、切断され、偏向され、又はそうでなければ、短い時間の間、遮断される。対象の又は非対象のいずれであっても複数の物質160は、チャネル141を通りコンテナ188へと流れる。
【0310】
ビーム158を遮断又は拡散するための方法は、機械的(シャッタ、チョッパ、ガルバノミラー)、光学的(音響光学デフレクタ、音響光学変調器、空間光変調器、デジタルマイクロミラーデバイス、偏光修正、液晶ディスプレイ)、電子的(Qスイッチレーザのパルス調整、低下、又は変更)、又は音響的なものを含む。任意の他の公知、又は将来の適した複数の方法、又は複数の技術が、集束エネルギービーム158を遮断するために利用されてよい。
【0311】
標的型又は連続的な方法のいずれかによって、エネルギーパルス158は、短い持続時間を有し、集束エネルギー装置157は、単独の物質160のみを選択的に標的とし、サンプル120の流体流において近傍にある他の複数の物質160に影響を与えないとしてよい(即ち、「付帯的な損傷」を制限し得る)。エネルギーパルス158は、ユーザの必要性に応じて、物質160への所望の作用(即ち、物質160を損傷し、変更し、殺し、又は破壊する)を実現するのに十分に選択される。集束エネルギー装置157からのパルスエネルギー158は、キャビテーション、泡形成、又はエネルギー吸収の方法に起因して、サンプル120の流体への乱れを引き起こさないであろう範囲内に収まるべきである。
【0312】
複数の対象とされない物質160への意図されていない作用、損傷、及び破壊を低減するための他の複数の技術は、パルスエネルギー158の大部分を吸収し、ビーム158の方向を変更し、又は、複数のパルス158をフローストリーム120へと照射することにより過剰なエネルギーを放つものを含む。これらの技術は、具体的には、複数の過剰なレーザパルス158をエネルギー吸収デバイスへと焦点を外す又は偏向することを目的とするよう、機械的にミラー又はレンズを移動させることと、レーザ157の伝播角度を変更することを目的として、電子的に変更された複数のレンズと、目下のフローストリームにおける複数の物質160の物質間のタイミングに関するデータによって、レーザ157からのパルスエネルギーデータを調整する洗練されたトリガ技術とを、含むことが可能である。
【0313】
[c.パルスタイミング] 集束エネルギーデバイス157による複数の物質160への複数の作用の間のタイミングは、均一ではなく、多くの短い間隔及び極めて長い間隔が生じるポアソン分布に従う。レーザベースの作用システム157は、複数の固有の限定要素を有するので、レーザパルス158の間に短い「再充電時間」を有することが好ましい。(集束エネルギー装置157に固有の)レイテンシ時間に、「充電/再充電」時間を加えた時間は、集束エネルギー装置157が、対象とされる物質160に反応(パルスを供給)しつつ、必要とされるエネルギーレベルを供給することの可能な最小の時間である。
【0314】
一実施形態において、充電時間は、0.1μsから1sの範囲であるべきであり、好ましくは、0.1μsから4msの間であるべきである。複数のエネルギーレベルにおけるパルス毎の変動は、複数の対象の物質160又は複数の細胞への所望の効果の生成レート、及び複数の対象とされない物質160又は複数の細胞の衝突に対する可能性に影響を与える。一様でない間隔で発せられた場合、パルス毎の安定性は高くすべきである。一例において、パルスオンデマンドモードにおけるQスイッチレーザ157は、個々のパルスを1.3μJから2.3μJの範囲にセットされ、1.8μJの平均パルスエネルギーを供給するよう使用された。
【0315】
フローベースのシステムにおいて、作用領域129は、チャンバ129における光学的検査領域から下流側に、又はその上流側に、配置されてよい。光学的検査領域と作用領域との間の距離は、異なるタイミングを許容するように調整されてよい。パルスレーザ157に対する十分な充電時間を許容すべく、複数の物質160又は複数の細胞の検査と、選択された複数の物質160又は複数の細胞への作用との間の最小のタイミングは、1μs以上とすべきである。
【0316】
集束エネルギー装置157は、相当な期間に対し、例えば、75から95%に選択されることが出来、その範囲であることが出来る精度で、最大5,600物質/秒までの作用レートで問題なく動作する。フローストリームにおける複数の物質160の間のスペースが制御されるシステムにおいて、システム157は、最大でレーザ157の反復レートまでの作用レートで動作することが可能である。
【0317】
[d.複数の物質の選択] 一実施形態において、物質160の検査の前に、集束エネルギー装置157が用いられる。しかしながら、別の実施形態において、集束エネルギー装置157による作用のために、どの物質160が選択されるかを判断することを目的として、上述のように、複数の物質160の集団へのエネルギー装置157の作用のための決定をすべく、検査の後の複数の物質160の複数の測定される/算出される特性のヒストグラム又は任意の図表による表現が、使用されることが可能である。一実施形態において、検査が達成された後に、スパン(即ち、チャンバ129の検査領域を通る通過時間)のプロットは、異なるフロー条件のサンプル120のコアストリームの相対的なサイズと、メインチャネル164にわたる物質160又は細胞の分布と、物質160の移動速度、並びに特定のチップ100の設計内の物質160の速度の変化とを反映することが可能である。
【0318】
上述のように、メインチャネル164の高アスペクト比は、物質160又は細胞の流体力学的集束、移動、及び方向付けに重要である。一実施形態において、マイクロ流体チャネル164に対して1より小さい高アスペクト比が、本発明において使用される。好ましくは、2/3の高アスペクト比が、メインチャネル164のために使用される。スパンの値は、それ自体で、物質160の速度をほぼ示す。大きなスパンの値は、複数の物質160が検査光線148を低速で通過することを示す。タイトサイズのスパンは、サンプル120のコアストリームは、チャネル164の中央平面により近く、物質160の速度変化がより小さいことを示す。
【0319】
一実施形態において、チップ100を流れていようと、流出部112から流れ出ていようと、複数の選択された物質160に正確に作用するために、集束エネルギー装置157が、選択された複数の物質160又は複数の細胞を正確に対象とすることを確実にすべく、複数の物質160のより少ない速度変化が許容される。従って、上述の位置付け及び方向付けの複数の方法(即ち、能動的、受動的方法)に基づいて、複数の物質160は、複数の物質160の速度変化を減少すべく、チャネル164の断面の中央近くに配置される。
【0320】
一実施形態において、生きている複数の精子細胞160のような、平坦形状の物質160又は複数の細胞のために、方向及び速度変化の両方が考慮に入れられることが必要である。従って、鉛直軸に沿ったチャネル164の中央平面から押されてオフセットされた複数の精子細胞160(
図8B参照)は、より良い分解能(例えば、検査の後に得られるヒストグラムでは、X精子細胞160と、Y精子細胞160との区別において50%以上分離された)と、方向付けが上手くいっていない細胞160の集団をより少なく取得する傾向がある。従って、例示的な一実施形態において、好ましくは、流体力学的集束段階の制御によって、サンプル120のコアストリームが、チャンバ129の検査/検出領域におけるメインチャネル164の断面積にわたって、メインチャネル164の幅において約10ミクロン(10μm)、及び高さにおいて5ミクロン(5μm)から10ミクロン(10μm)に、好ましくは形成され、メインチャネル164の中心平面から約2ミクロン(2μm)から10ミクロン(10μm)のオフセットをし、分解能及びターゲット(即ち、光による損傷を与え、殺す)効率は、バランスがとられる。
【0321】
複数の物質160が精子細胞である一実施形態において、対象の精子細胞160は、雄性保有の精子細胞(即ち、Y染色体保有の精子細胞)であってよく、対象とされない精子細胞160は、雌性保有の精子細胞(即ち、X染色体保有の精子細胞)であってよい。別の実施形態において、対象の精子細胞160は、雌性保有の精子細胞(即ち、X染色体保有の精子細胞)であってよく、対象とされない精子細胞160は、雄性保有の精子細胞(即ち、Y染色体保有の精子細胞)であってよい。
【0322】
一実施形態において、保護的な外層を通じて、複数の物質へと、即ち、複数の保護膜を通じて、複数の細胞へと(
図6D参照)DNAのような分子、又は他の複数のプローブを組み込むべく、局所化された熱ショックを利用することにより、複数の物質160は、検査の前に作用を受ける。高い細胞の死亡率により明らかなように、複数の膜で透過処理する問題のないエレクトロポレーションのために必要な高電圧を使用して、分子を組み込むための従来の方法は、望ましいものであり得る。局所化された熱ショックは、より穏やかな処理となり、従って、複数の細胞の生存性を維持するためにより望ましいものであり得る。集束エネルギー装置157は、温度の局所化された上昇を生成するよう使用され、従って、熱ショックを達成する。局所化された熱ショックは、複数の物質160の透過処理をもたらし、従って、所望の分子の組み込みを容易にする。検査装置147は、複数の物質160を検出及び検査すべく、その後使用される。そこから、検査装置147が、そのために分子の組み込みが達成される、複数の物質160の数又は割合を判断する。この方法は、バイオ検出、細胞工学、標的治療、及び、薬品/遺伝子供給において、特に望ましいものであり得る。
【0323】
[e.作用ゾーン] 一実施形態において、検査が実行された後で、許容可能なヒストグラムが取得された(即ち、許容可能な分解能及び比較的小さなスパンの分布を有する)後に、選択された複数の物質160又は複数の細胞に作用すべく、集束エネルギー装置157を用いるべく決定がなされる。より重要なパラメータのうちの1つは、集束エネルギー装置157からのパルスのためのタイミング設定(即ち、検査/検出ビーム148と、集束エネルギービーム158との間の物質160についての遅延又は時間間隔)である。
【0324】
集束エネルギー装置157の作用ゾーンは、メインチャネル164の断面内の領域である。ここで、
図16に示されるように、選択された複数の物質160又は複数の細胞は、有効に作用を受ける(即ち、光による損傷を受け、変更され、無効化され、殺され、破壊される等)ことが出来る。集束エネルギー装置157の予め定められたエネルギーレベル及びビーム形状、並びに、マイクロ流体チャネル164の設計及びフロー条件に基づいて、作用ゾーンは、作用率(例えば、<97%)によって推定されることが出来る。集束エネルギー装置157のエネルギーレベルは、集束エネルギー装置157の電流及び充電時間に依存する。メインチャネル164における全体的なフローレートがより大きくなることは、複数の物質160がより速く移動することを意味する。従って、集束エネルギービーム158を通る複数の物質160の通過時間は、より短くなる。例えば、特定のビーム形状(例えば、2.5ミクロン(2.5μm)×15ミクロン(15μm))を有する2.3μJの集束エネルギー装置157のエネルギーレベル、及び約7.5m/sの物質160の移動速度に対して、集束エネルギー装置157の作用ゾーンは、Y軸方向において約20ミクロン(20μm)、及び、鉛直方向において約16ミクロン(16μm)であると推定される。
【0325】
作用ゾーン内で、影響を受けた(即ち、損傷を受け、変更され、又は殺された)、複数の対象の物質160の割合もまた、サンプル120のコアストリームの形状及び位置に依存する。複数のシース又はバッファ流体力学的集束フローの複数のフローレートの調整によって、サンプル120のコアストリームのサイズ及び位置を、水平方向及び鉛直方向において、作用ゾーンを収容出来るよう調整し得る。 結局、集束エネルギー装置157の所望のエネルギーレベルにおいて、本マイクロ流体チップ100のためのフロー条件は、決定されることが可能である。従って、サンプル120のストリームの形状は、好ましくは、例示的には、約10ミクロン(10μm)の幅、及び5ミクロン(5μm)から10ミクロン(10μm)の高さにし得る。
【0326】
他の実施形態において、実質的に上述されたような作用ゾーンは、検査の前に、又はサンプル流体120が、コンテナ188に向かってチップ100を離れた後に(
図6Bから
図6Dを参照)配置される。
【0327】
[f.精子細胞への処理] 上述されたように、複数の物質160として複数の精子細胞160を使用する例示的な一実施形態において、生きている精子細胞160(即ち、約50−50の複数のX染色体細胞及び複数のY染色体細胞を有するウシの精子細胞)は、サンプル流入部106へと導入され、流体力学的集束段階を通過して、検査領域129に達する。検査領域129において、色素(即ち、ヘキスト33342色素)は、レーザ147のような光源147からの検査ビーム148により励起される。これは、対物レンズ153を通過した後に光学信号検知器154によって捕捉される蛍光を複数の細胞160内に生成する。
【0328】
例えば、複数の反射特性における差のような蛍光信号の特性に基づいて、コントローラ156は、複数の対象とされない精子細胞160から複数の対象の精子細胞160を個別に特定及び区別することが出来る。精子細胞160が必要な精子細胞である(即ち、X染色体の精子細胞又はY染色体の精子細胞のうちの1つ)場合、必要な又は対象とされない精子細胞160にマイクロ流体チャネル164を収集装置188へと影響されずに通過することを許可する判断がなされる。しかしながら、精子細胞が不必要な精子細胞である(即ち、X染色体の精子細胞又はY染色体の精子細胞のうちの他方)場合、不必要な/対象の精子細胞が作用ゾーン(チャンバ129内に存在してもよいし、又は、流出部112と、収集装置との間に存在してもよい)に達することを許容するべく、集束エネルギー装置157は、予め定められた遅延時間後に対象の精子細胞160に作用するよう用いられるであろう。
【0329】
予め定められた遅延時間後に、作用ゾーンにおける集束エネルギーデバイス157の最も効果的な動作を有するべく、本発明は、本発明のシステムにおいてジッタを許容する。対象の精子細胞160の移動速度に依存して、対象の精子細胞160は、約2μsの間、作用ゾーンに存在するであろう。集束エネルギービーム148は複数の対象の精子細胞160の中央部を狙う場合、最も効果的である。従って、ジッタを1又はそれより小さい範囲内に制限するのが好ましい。
【0330】
上述のように、複数の対象の精子細胞160は、集束エネルギー装置157の、1)標的型の、若しくは、「パルスオンデマンド」モード、又は、2)「連続的照射」モードのいずれかにより、変更され、光による損傷を受け、殺され、変更され、無効化され、又は破壊され得る。上述のように、必要とされる流束を最小化する、集束エネルギーデバイス157のためのレーザ波長を選択することが望ましい。例えば、レーザ波長を精子細胞の染色に使用される色素の吸光度に適合させることは、効率及び有効性を改善することが可能である。例えば、ヘキスト33342色素が染色処理のために使用される場合、集束エネルギー装置157に対する355nmのレーザ波長が最適である。
【0331】
一実施形態において、複数の対象の精子細胞は、殺され、又は破壊される。別の実施形態において、複数の対象の精子細胞160は、十分に無効化され、その結果、それらは、規定の機能を実行することがもはや可能でなくなる。例えば、対象の精子細胞160の尾部は、無効化されてよく、その結果、もはや前進運動性を示さない。従って、対象の、無効化された精子細胞160は、卵子を受精させることが阻止されるであろう。
【0332】
一実施形態において、コントローラ156についての高度なソフトウェアは、複数の単独のレーザパルス158が照射されることを許容する、上述の要件を満たす高出力レーザ157のために設計されることが可能である。従って、標的型照射モード又は「パルスオンデマンド」モードは、集束エネルギー装置157により要求される場合はいつも、一貫したレーザパルス158を供給する。標的型照射モードは、好ましくは、複数の対象とされない精子細胞160が大部分であり、除去される必要のある、対象の精子細胞160を比較的少数のみで含有する、複数のサンプル120に対して使用される。しかしながら、商業的に利用可能な高速度パルスオンデマンドシステムによって、複数の対象とされない精子細胞と、複数の対象の精子細胞との他の比率を有する複数のサンプルに対しても、標的型照射モードは、実装されることが可能である。
【0333】
代替的な実施形態において、複数の対象の精子細胞160が、複数の対象とされない精子細胞160を大きく数で上回る場合、集束エネルギー装置157は、複数の対象の精子細胞160の全てに作用する(即ち、殺し又は無効化する)のに十分速く、複数のレーザパルス158を生成することが不可能であり得る。従って、標的型照射モードは、より効果的でなくなる。この場合、「連続的照射」モードがより有利になる。
【0334】
上述された連続的照射モードにおいて、集束エネルギー装置157は、複数の対象の精子細胞と複数の対象とされない精子細胞160とを区別することなく、マイクロ流体チャネル164中の特定の位置を通過する、全ての精子細胞160に作用(即ち、殺し又は無効化する)すべく使用される、連続波(CW)レーザ又は準CWレーザ又は急速パルスレーザ157となる。複数の対象とされない精子細胞160のグループが識別された場合、複数の対象とされない精子細胞(即ち、複数のX染色体細胞又は複数のY染色体細胞のうちの一方)が、影響されずに通過することを許容すべく、集束エネルギービーム158は、切断され、偏向され、又はそうでなければ短い時間の間、遮断される。そのグループは、任意の予め定められた数の対象とされない精子細胞160であることが可能である。複数の対象とされない精子細胞160が作用ゾーンを通過した後、連続的照射モードは再始動される。
【0335】
標的型及び連続的照射モードの動作モードの両方において、たとえ複数の精子細胞160のうちの1つが、対象の精子細胞160の代わりに対象とされない精子細胞160である場合にも、サンプル流体120ストリーム内の相互に重なり合う、又は、互いに近過ぎる複数の精子細胞160は、両方殺され、又は、両方無効化される。本明細書で使用されるように、用語「近過ぎる」とは、集束エネルギービーム158の範囲内の2以上の精子細胞の存在を指す。その結果、両方の物質160が、集束エネルギービーム158により十分に作用を受ける結果、所望の作用が両方の細胞に生じる。加えて、判別された生成物165のために全体的なサンプル純度を確実にすべく、対象とされない細胞160又は対象の精子細胞160のいずれかとして、有効に識別されることが不可能な精子細胞160は、集束エネルギービーム158により殺され、又は無効化される。本発明の判別するシステムが、複数の対象とされない精子細胞160を有効に識別することが不可能であり得る理由は、マイクロ流体チャネル164内に生じる流れの問題、染色の問題、ダブレット等に起因し得る。本発明のシステムは、複数の対象の精子細胞160、又は、対象の精子細胞若しくは対象とされない精子細胞のいずれかとして、有効に識別されることが不可能である、複数の任意の精子細胞160の殺傷又は無効化する方に誤るので、サンプル129内に存在する実際の、複数の対象とされる精子細胞160の総数より多くのパルス158が使用され得る。
【0336】
一実施形態において、上述のように、集束エネルギー装置157の複数のレーザパルス158の間に短い「再充電/充電時間」を含むことが好ましい。第1に、2つの連続する精子細胞160の間のスペースは、均一ではなく、代わりに、ポアソン分布に従う。サンプル流体流120において、一定の割合の、互いに比較的近い複数の精子細胞160が存在する。より近い間隔(即ち、より短い経過時間)を有する複数の事象に集束エネルギー装置157を用いるべく、集束度が低いエネルギービーム158の「再充電/充電時間」が許容されるであろう。更に、2つの精子細胞160が、互いに近過ぎ、その結果、蛍光信号が互いに干渉し、精子細胞160が対象とする細胞であるか、又は対象とされない細胞であるかの明確な識別がない場合、サンプルの純度を最大化することを目的として、全ての特定不可能な精子細胞160を殺傷又は無効化すべく、集束エネルギー装置157は、短い期間の時間に複数のレーザパルス158を照射する必要があるであろう。従って、高スループットを実現すべく、一般的に、複数のパルス158の間にはより短い平均経過時間が必要とされる。
【0337】
上述のように、判別されたサンプル120は、集束エネルギー装置157によって作用を受けた後に、収集デバイス188内に収集される。従って、一実施形態において、収集された生成物165は、元のサンプル120となお同一の性別比で、対象とされない精子細胞160及び対象とされる(即ち、殺され、変更され、破壊され、無効化された)精子細胞160の両方を、包含する。単一のコンテナ188内の収集は、全体的なサンプル120の質に影響を与えない。従って、一実施形態において、結果として受精のために使用される最終生成物165は、複数の対象とされない精子細胞160及び複数の対象の精子細胞160の両方を含む。代わりに、それに続く生成物165の分離技術(即ち、フローサイトメトリー、静電プレート、ホログラフィック光学的トラッピング等)を、例えば、生きている又は死んだ/無効化された精子細胞160を生成物165の複数の精子細胞160から分離すべく、利用してよい。あるいは、遠心分離を、複数の殺され、又は無効化された対象の精子細胞160の残留物のような、不必要な残屑を除去するために、利用してよい。
【0338】
一実施形態において、本発明のマイクロ流体チップシステムは、2013年7月16日に出願された係属中の米国特許出願番号13/943,322に説明される、例示的な圧電アクチュエータアセンブリデバイス、若しくは米国特許番号第7,241,988号、第7,402,131号、第7,482,577号、第7,545,491号、第7,699,767号、第8,158,927号及び第8,653,442号に例えば説明される、光学的トラッピングシステムのような、分離又は隔離機構に合わされて使用される。これらの出願の全ての内容は、参照により、それらの全体において本明細書に組み込まれる。
【0339】
一実施形態において、
図6Bから
図6Cに示されるように、メインチャネル164は、判別された複数の物質160が収集装置188に向かって流れ落ちる前に、液滴187の形で流出チャネル141及び流出部112を離れるように、作用チャンバ129の後短くされる。流出チャネル112の出口から出るとき(
図6Bを参照)、又は切断された液滴187が落ちるとき(
図6Cを参照)、及び、収集装置188に入る前に、複数の物質160が作用を受けることを除いて、集束エネルギー装置157の動作は同じである。
【0340】
[判別された生成物の収集後] 一実施形態において、判別された複数の物質160は、20%のTris(Chata Biosystem社により販売されるもののように、商業的に利用可能であることに留意)を有する、コンテナ188内に収集される。コンテナ188は、チップ100の流出部112の下に配置される。一実施形態において、コンテナ188の内容物は、予め定められた間隔で循環され、生成物165の混合を確実にする。一実施形態において、コンテナ188が予め定められた体積(即ち、18ml)に達する場合、コンテナ188は、新たなコンテナ188によって置換されてよい。
【0341】
一実施形態において、抗生物質は、充填されたコンテナ188に(即ち、0.5mlのCSS抗生物質が30mlの生成物165に)加えられる。時間が記録され、製品165を有する複数のコンテナ188は、大きなコンテナの中に収集され、冷却される。一例において、抗生物質を含む生成物165を有する3つのコンテナ188を一度に、400mlのプラスチックコンテナ内に配置し、冷却室に設置する。
【0342】
一実施形態において、予め定められた冷却期間(即ち、2時間)の後に、TrisBエクステンダ(14%グリセロールTris)が、2つのアリコートにおいて、予め定められた時間(即ち、15分)放置されて、それぞれの管に加えられる。最終サンプル120が予め定められた時間の間(即ち、2時間)冷却され、Bエクステンダが加えられた後に、複数のサンプル120は、5℃に冷やされた遠心分離器内で、850×Gの強さで20分の間、遠心分離にかけられる。上清は、各々の管から吸引され、ペレットに0.2mlを残す。全てのペレットは、単一の、予め秤量されたコンテナ(即ち、管)へと混ぜ合わされ、商業的に利用可能な計量プロトコル(即ち、SpermVision)を使用して、混ぜ合わされたペレットの濃度は決定され、最終濃度が、11.35×10
6細胞数/mlと算出される。最終的な体積は、完全なTris A+B+CSS抗生物質エクステンダ(即ち、50:50の比の20%卵黄Tris+14%グリセロールTris)によって調整される。
【0343】
複数の精子細胞160の例示的な実施形態において、プリントされた精液のストローは、充填され、封止され、ストローは液体窒素を使用して凍結される。
【0344】
一実施形態において、凍結後の品質管理手段は、細菌混入段階を含む。ここで、凍結されたストローは、水浴中で融解され、融解されたストローは、それを消毒すべく、アルコールにより拭き取られる。ストローの内容物が、血液寒天プレート(5%の羊の血液)上に配置され、細菌の内容物を判断すべく、24時間の間、37℃で培養される。
【0345】
一実施形態において、前進運動性のための品質管理手段は、1つの凍結されたストローを水浴で融解すること、及び、ストローの内容物を、管を温めるステージ内に配置された小さな管へと追い出すことを含む。Motility Analysis、又はSpermVisionのような商業上の方法は、ストロー毎に運動性の細胞の数を判断すべく使用される。
【0346】
一実施形態において、純度をサンプリングするための品質管理手段は、1つの凍結されたストローを水浴で融解すること、及びグラスウールを通じて生きている複数の細胞を処理することによりそれらの細胞を分離することを含む。次に、性染色体の比率を判断すべく、生きている細胞集団に、FISH分析が実行される。
【0347】
[多重システム] 一実施形態において、複数のマイクロ流体チップ100、複数の光学的検査装置及び複数の集束エネルギー装置が、スループットを増大すべく並列にセットアップされる。ここで
図18を参照すると、一実施形態において、例えば、「n個の」システム401、402等を有し、各々が集束エネルギー装置157を具備する多重システムレイアウト400が図示される。一実施形態において、多重システムレイアウト400は、例えば、精子DNA含有物のような複数の物質160の検出のために蛍光励起エネルギーを提供するように構成された、単独の検査装置147及び単独の検査ビーム148を含む。
【0348】
一実施形態において、多重システムレイアウト400は、一連のビームスプリッタ189と共にビーム成形光学素子181を更に含み、それぞれのビームスプリッタは、入力パワーの50/50の分割を提供する。これは、多重システム401、402等の各々に対して、ほぼ等しい出力のビーム158をもたらす。
【0349】
[外部デバイス] 分離装置 一実施形態において、集束エネルギー装置157がマイクロ流体チップ100を通じて流れる複数の物質160に作用する後で、流出チャネル141へと流れる代わりに、分離機構(即ち、(外部又は内部の)圧電アクチュエータアセンブリデバイス)、光学的トラッピングアセンブリ、静電プレート、又は、他の当業者に周知の分離機構が、複数の対象とされる物質160又は複数の対象とされない物質160を分離してよい。(例えば、2013年7月16日に出願された米国特許出願番号第13/943,322号、又は米国特許番号第7,241,988号、第7,402,131号、第7,482,577号、第7,545,491号、第7,699,767号、第8,158,927号及び第8,653,442号を参照。これらの出願の全ての内容は、本明細書にそれらの全体の参照によって組み込まれる。)
【0350】
従って、例示的な一実施形態において、複数の対象とされる物質を流出チャネル140から142のうちの1つへと、及び複数の対象とされない物質160を流出チャネル140から142のうちの別のものへと分離する分離機構によって、集束エネルギー装置157によって損傷を受け、殺され、無効化され、破壊され、又は変更された、複数の対象とされる物質160は、複数の対象とされない物質160から分離されることが可能である。
【0351】
別の実施形態において、複数の対象とされる物質は、流出部112から抜け出した後、例えば、当技術分野において周知の静電プレートの使用により分離機構を使用して分離される。
【0352】
更に別の実施形態において、集束エネルギー装置157は、複数の物質160が流出部112から抜け出る又は落ちる際に、複数の物質160に作用し、分離機構はまたその後、複数の対象とされない物質から、又は生成物165から複数の対象とされる物質160を分離する。
【0353】
[ポンピングメカニズム]
図19から
図21に示されるように、一実施形態において、ポンピングメカニズムは、リザーバ233(又はサンプル管233)から管242を介してマイクロ流体チップ100のサンプル流入部106へとサンプル流体混合物120をポンピングするための圧力を提供する加圧ガス235を有するシステムを、備える。
【0354】
1つの中央リザーバ240(
図20から
図21を参照)、又は複数の別個のリザーバ241(
図19を参照)は、シース又はバッファ流体163を包含し、シース又はバッファ流体163を導入すべく、管を介してマイクロ流体チップ100のそれぞれのシース又はバッファ流入部107、108、172へ連結される。一実施形態において、複数のリザーバは、折り畳みコンテナ237である(
図20から
図21を参照)。これらは加圧管240内に配置され、加圧ガス235は、シース又はバッファ流体163をマイクロ流体チップ100へ押す。一実施形態において、加圧管240は、シース又はバッファ流体163を、複数の異なる流出部を有するマニホルド238へ押す(
図21を参照)。その結果、シース又はバッファ流体163は、管231a、231b、又は231cを介して、チップ100のシース又はバッファ流入部107、108、又は172へそれぞれ供給される。3つのシース又はバッファ流体流入部の構成が示される(即ち、
図1F)が、当業者であれば、シース又はバッファ流体をマイクロ流体チップ100に供給する、より少ない、又はより多い管が可能であることを知っているであろう。加えて、管は、
図18から
図21においてマイクロ流体チップ100に入るものとして示されているが、チップ100上の複数の流入部に対する管の配置は、正確な順序で示されていない。更に、当業者であれば、管は、チップホルダ200を介してチップ100に入ることを知っているであろう(後述される)。
【0355】
一実施形態において、個々のリザーバ241又は中央リザーバ240のそれぞれは、リザーバ241、240内の気体235の圧力を調整する圧力調整器234を含む(
図19から
図21を参照)。一実施形態において、圧力調整器239は、サンプル管233内の気体235の圧力を調整する。流量計243及びフローバルブ244は、それぞれ、管231a、231b、又は231cを介して、(ホルダ200を介して)それぞれシース又はバッファ流入部107、108、又は172へとポンピングされるシース又はバッファ流体163を制御する。従って、管230、231a、231b、231cは、複数のシース又はバッファ流体120をチップ100へと最初に充填するために使用され、チップ100の動作全体にわたって、サンプル流体120をサンプル流入部106又はシース若しくはバッファ流入部107、108(及び172)へと充填するために使用されてもよい。
【0356】
一実施形態において、複数のマイクロ流体チャネルにおいて一定のフローレートで安定した流れを実現すべく、シース流の経路に配置されたフローバルブ244(
図19から
図20を参照)へフィードバックを提供すべく、流量計243が使用される。流れの正確な制御によって、検出の間、及び、検査/検出スポットと、作用スポットとの間で、全体的なフローレートの変化は、設定されたフローレートの1%より小さく、複数の対象の物質160への移動速度の変化は、1%より小さい。
【0357】
一実施形態において、シース又はバッファ流体中の溶解した気体を除去すべく、圧力円筒容器とマニホルドとの中間に配置される真空チャンバ(不図示)を介して、シース又はバッファ流体163はポンピングされる。真空チャンバの内側に、気体透過性の管のセグメントが、流入ポートと流出ポートとの間に配置される。シース又はバッファ流体は、気体透過性の管を介して真空チャンバの内部を移動する一方、溶解した気体は管の壁を通過する。他方、液体は管の内側に残留する。適用された真空は、管の壁の気体の浸透に役立つ。一実施形態において、気体透過性の管は、液体に対し高い水浸入圧を有するが、気体に対して透過性のある、例えば、延伸ポリテトラフルオロエチレン(EPTFE)のような疎水性の多孔質材料により作成される。
【0358】
[コンピュータ制御] 一実施形態において、コンピュータシステム156のユーザインタフェースは、コンピュータスクリーンを含む。コンピュータスクリーンは、マイクロ流体チップ100の上のCCDカメラ182によって得られる視野内の複数の物質160を表示する。
【0359】
一実施形態において、任意のサンプル流体120、シース又はバッファ流体163をマイクロ流体チップ100へとポンピングするためのポンプ(即ち、
図19から
図20のポンピングメカニズム)のような任意の外部デバイスを使用される場合には、コンピュータ156又はコントローラ156は制御し、マイクロ流体チップ100へと流入される流体120、163の温度を設定する任意の加熱デバイスもまた、制御する。
【0360】
例示的な実施形態によれば、複数の動作、複数の段階、複数の制御オプション等のいずれかは、コンピュータメモリ、データベース等のようなコンピュータ可読媒体に格納される複数の命令により実装されてもよい。コンピュータ可読媒体に格納された複数の命令の実行に応答して、複数の命令は、コンピューティングデバイス156に、本明細書で説明される任意の複数の動作、複数の段階、複数の制御オプション等のいずれかを実行をさせることが可能である。
【0361】
本明細書に説明される複数の動作は、1又は複数のコンピュータ可読記憶デバイスに格納される、又は他の複数のソースから受信されるデータに対して、データ処理装置若しくはデータ処理回路により実行される複数の動作として実装されてよい。コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、又はコードとしてもまた公知である)は、コンパイラ言語、若しくはインタプリタ言語、宣言型若しくは、手続き型言語を含む、任意の形式のプログラミング言語で書かれることが可能である。これは、スタンドアロンプログラムとして、又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、オブジェクト、又はコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとしての形式を含む任意の形式で配置されることが可能である。コンピュータプログラムは、必要ではないが、ファイルシステム内のファイルに対応してもよい。プログラムは、他の複数のプログラム又はデータ(例えば、マークアップ言語のドキュメントに格納された1又は複数のスクリプト)を保持するファイルの一部に、当該プログラムに専用の単一のファイルに、又は、複数の連携されたファイル(例えば、1又は複数のモジュール、サブプログラム、若しくは、コードの一部を格納する複数のファイル)に、格納されることが出来る。コンピュータプログラムは、1つのサイトに配置される、若しくは複数のサイトに渡って分散され、通信ネットワークによって相互接続される1つのコンピュータ又は複数のコンピュータ上で実行されるように、配置されることが出来る。コンピュータプログラムの実行に適した処理回路は、例として、複数の汎用及び特定用途用のマイクロプロセッサの両方、及び任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1又は複数のプロセッサを含む。
【0362】
[マイクロ流体チップホルダ] 一実施形態において、マイクロ流体チップ100は、チップホルダ200に搭載される(
図22Aから
図23Bを参照)。チップホルダ200は、検査装置及び集束エネルギー装置に対するホルダ200の位置決めを可能とすべく、並進移動ステージ(不図示)に設置される。上述の態様において、開口部150で、検査装置からの光線148が複数の物質160をインターセプトし得る、及び、集束エネルギー装置157が複数の物質160に作用し得るような位置に、マイクロ流体チップホルダ200は、マイクロ流体チップ100を保持するように構成される。
【0363】
ホルダ200へのチップ100の取り付けのための機構は、それらの動作の方法と共に後述される。しかし、当業者であれば、本発明の目的が満たされる限りにおいて、これらのデバイスは、マイクロ流体チップ100を収容する任意の構成であってよいことを知っているであろう。
【0364】
図22Aから
図23Bに示されるように、一実施形態において、マイクロ流体チップホルダ200は、アルミニウム合金、又は他の適切な金属/ポリマ材料のような適した材料で作成され、メインプレート201及びフィッティングプレート202を含む。メインプレート201及びフィッティングプレート202は、任意の適した形状であってよいが、それらの構成はチップ100のレイアウト及びチップ100へのアクセスのための要件に依存する。
【0365】
一実施形態において、メインプレート201は、実質的にL字形状を有するが、ホルダ200の形状は、チップ100のレイアウトに依存する(
図22Aから
図23Bを参照)。L字型のメインプレート201の一つの脚部は、設置ねじ219を受け入れるよう構成された複数のスロットを含む。設置ねじ219は、並進移動ステージ上のホルダ200に設置するのに使用される。任意の適した形状及びサイズの任意の数のスロットは、メインプレート201に含まれ得る。一実施形態において、4つのねじ219が、平行移動ステージ上にホルダ200を設置し、ホルダ200の位置を調整するのに使用される。しかしながら、当業者であれば、任意の数の任意のサイズのスロット及び設置ねじが使用され得ることを知っているであろう。
【0366】
一実施形態において、スイッチバルブ220は、L型のメインプレート201の1つの脚部上に、設置ねじ219の上方でメインプレート201に取り付けられる(
図22Aから
図23Bを参照)。更に、L型のメインプレート201の他の脚部において、空気圧シリンダアクチュエータ207A及び207Bのような、一対のリニアアクチュエータは、スイッチバルブ220とメインプレート201の同じ側面上に配置される(
図22Aから
図23Bを参照)。
【0367】
一実施形態において、L型のメインプレート201の他の側面上で及び他の脚部に沿って、フィッティングプレート202は、メインプレート201に取り付けられる(
図22Aから
図23Bを参照)。フィッティングプレート202は、複数の流体/サンプルをマイクロ流体チップ100に連通させるために、外部管を受け入れ、外部管と係合するよう構成された(
図19から
図23Bを参照)、複数のフィッティング204から206を(例えば、
図22Aから
図22Bを参照)収容する複数の開口部を含む。一実施形態において、フィッティングプレート202は、シース又はバッファ流入107、108、及びサンプル流入部106それぞれを整列すべく使用される、3つのフィッティング204から206を含む(
図1B及び
図22Aから
図22Bを参照)。別の実施形態において、4つのフィッティング204から206、及び216は、シース又はバッファ流入部107、108、サンプル流入部106、及びシース又はバッファ流入部172のそれぞれと整列すべく使用される(
図1A及び
図23Aから
図23Bを参照)。しかしながら、当業者であれば、複数のフィッティングは、マイクロ流体チップ100の流入部の数と一致し、管を介して1又は複数のリザーバから流体の透過を許容すべく、数及び位置に関して任意のやり方で配置されるであろう(
図19から
図21を参照)ことを知っているであろう。
【0368】
一実施形態において、一対のスロットウォッシャ203A、203Bは、フィッティングプレート202及び空気圧シリンダアクチュエータ207A、207Bを、メインプレート201に固定する(
図22Aから
図23Bを参照)。従って、メインプレート202からスイッチバルブ220及び空気圧シリンダアクチュエータ207A、207Bを分解することなく、フィッティングプレート202は、メインプレート201から容易に除去される。
【0369】
一実施形態において、空気圧シリンダアクチュエータ207A、207Bの各々は、それに連結され、円筒体の部分に対して伸縮可能なピストンロッドを有するピストン(不図示)を含む。一実施形態において、空気圧シリンダアクチュエータ207Aにおいて、空気は、ポート209を通ってスイッチバルブ208へと供給され、ポート210、211を通じてポート212、213にそれぞれ抜け出る。空気は、空気圧シリンダアクチュエータ207Aのポート214A、214Bから、空気圧シリンダアクチュエータ208Aのポート215A、215Bそれぞれに、更に供給される。
【0370】
空気が、空気供給部からポート209を通じて、空気圧シリンダアクチュエータ207A、207Bへ入ってくることを、それぞれ許容又は防止すべく、スイッチバルブ208のトグルスイッチ220は、開閉する。空気が、空気圧シリンダアクチュエータ207A、207Bに提供される場合、ユーザがマイクロ流体チップ100を搭載する(又は、降ろす)ことを可能にすべく(
図22Aから
図23Bを参照)、空気圧シリンダアクチュエータ207A、207Bの複数のピストンロッドは、開位置へと外側に伸び(不図示)、フィッティングプレート202は、マイクロ流体チップ100から離れて、開位置へと外側に押される。空気供給が閉じられた場合、空気圧シリンダアクチュエータ207A、207Bのピストンロッドは、閉位置へと内側に後退し(
図22Aから
図23Bに図示されるように)、フィッティングプレート202はチップ100に向けて引かれ、チップ100に対して押されることで、チップ100とシース又はバッファ及びサンプル流体のための管への連結部との間の液体封止を形成する。
【0371】
一実施形態において、マイクロ流体チップ100が閉位置にある場合、フィッティングプレート202の表面上で、フィッティングプレート202とチップ110との間に配置されるO−リングは、マイクロ流体チップ100を損傷から保護すべく、実質的に漏れのない封止を形成する。しかしながら、当業者であれば、任意の数及び構成のO−リング又はガスケットが使用されてよいことを知っているであろう。
【0372】
一実施形態において、チップ100が、チップ100の下方に配置される少なくとも1つの収集管188を収容するのに十分な高さになるよう、ホルダ200は配置される。別の実施形態において、複数の収集管は各流出部111から113の間に配置される。
【0373】
集束エネルギーデバイスを有するマイクロ流体チップシステムの構成及び複数の配置は、様々な例示的実施形態に示されるように、例示の目的のみである。様々な要素の方向は、他の複数の例示的な実施形態に従って異なってよく、そのような複数の変形形態は本開示に包含されることが意図されることに留意されるべきである。本開示において、幾つかの実施形態のみが詳細に説明されているが、本明細書に説明される主題の新規な教示及び利点から実質的に逸脱することなく、多くの修正形態が可能(例えば、複数のサイズ、複数の寸法、複数の構造、様々な要素の複数の形状及び複数の割合、複数のパラメータの値、設置の構成、材料の使用、色、方向、等の変更)である。一体的に形成されるものとして示される幾つかの要素は、複数の部分又は複数の要素で構成されてもよい。複数の要素の位置は反対にされてもよく、又は、さもなければ異なってもよい。個別の要素の性質若しくは数、又は位置は、変更されてもよく、又は異なってもよい。任意の処理、論理アルゴリズム、又は方法の段階の順序又は順番は、複数の代替的な実施形態に従って、異なり、又は順番を変更されてもよい。様々な例示的実施形態の設計、動作条件及び、構成において、本開示の範囲を逸脱することなく、他の複数の置換、修正、変更及び省略もまた、なされてもよい。そのような修正形態、及び、変形形態の全ては、本明細書において、発明の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。