(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記推定部は、前記超音波スキャンにおける走査領域に対してCFAR(Contrast False Alarm Rate)処理を実行することにより、前記走査領域における前記構造物の位置を推定する、
請求項1又は2に記載の医用診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる医用診断装置について説明する。本実施形態に係る医用診断装置は、例えば、非侵襲性を有する医用診断装置(例えば、磁気共鳴イメージング(magnetic Resonance imaging:MRI)装置など)であれば、いかなる装置であってもよい。説明を具体的にするために、本実施形態に係る医用診断装置は、超音波診断装置として説明する。なお、以下の説明において、略同一の構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0019】
図1は、本実施形態に係る医用診断装置としての超音波診断装置1の構成を示す構成図である。同図に示すように、超音波診断装置1は、超音波プローブ3、入力装置5、モニタ7、装置本体9を有する。加えて、本超音波診断装置1には、心電計、心音計、脈波計、呼吸センサに代表される図示していない生体信号計測器、不図示の外部記憶装置およびネットワークが、インターフェース回路27を介して接続されてもよい。
【0020】
超音波プローブ3は、複数の圧電振動子と、整合層と、複数の圧電振動子の背面側に設けられるバッキング材とを有する。複数の圧電振動子は、圧電セラミックス等の音響/電気可逆的変換素子である。複数の圧電振動子は並列され、超音波プローブ3の先端に装備される。以下、一つの圧電振動子が一チャンネルを構成するものとして説明する。圧電振動子は、後述する超音波送信回路11から供給される駆動信号に応答して超音波を発生する。超音波プローブ3を介して被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波(以下、送信超音波と呼ぶ)は、被検体内の生体組織における音響インピーダンスの不連続面で反射される。
【0021】
圧電振動子は、反射された超音波を受信し、エコー信号を発生する。エコー信号の振幅は、超音波の反射に関する不連続面を境界とする音響インピーダンスの差に依存する。また、送信超音波が移動している血流、および心臓壁等の表面で反射された場合のエコー信号の周波数は、ドプラ効果により、移動体(血流および心臓壁の表面)の超音波送信方向の速度成分に依存して偏移する。
【0022】
以下、超音波プローブ3は、1次元的に配列された圧電振動子により構成される1次元アレイにより、被走査領域を2次元的に走査するプローブとして説明する。なお、超音波プローブ3は、1次元アレイを複数の圧電振動子の配列方向と直交する方向に揺動させて3次元走査を実行するメカニカル4次元プローブであってもよい。また、超音波プローブ3は、メカニカル4次元プローブに限定されず、2次元アレイプローブであってもよい。
【0023】
整合層は、被検体Pに対する超音波の送受信を効率よくするために、複数の圧電振動子の超音波放射面側に設けられる。バッキング材は、圧電振動子の後方への超音波の伝搬を防止する。
【0024】
入力装置5は、インターフェース回路27を介して装置本体9に接続される。入力装置は、操作者からの各種指示、各種条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件、および設定指示等を装置本体9にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボールの他、マウス、キーボード等を有する。なお、入力装置5は、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、および表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ、マイク等を有していてもよい。入力装置5は、入力部や入力インターフェース回路に相当する。
【0025】
入力装置5は、後述する設定機能291、および後述する推定機能293を包括的に実行させる機能(以下、構造物推定機能と呼ぶ)に続いて、後述するゲイン逆補正機能295、後述する音場特性補正機能297、および後述する解析機能299等を包括的に実行させる機能(以下、組織性状解析機能と呼ぶ)を実行するための開始指示(以下、減衰定量開始指示と呼ぶ)を入力する。このとき、減衰定量開始指示の入力に関する信号は、後述する制御回路29に出力される。
【0026】
なお、入力装置5は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限らない。例えば、超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路も入力装置5の例に含まれる。
【0027】
モニタ7は、後述する画像生成回路19、画像合成回路等23から出力されたビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報などを画像として表示する。また、モニタ7は、解析機能299による解析結果を表示する。モニタとしては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。モニタ7は、表示部や表示回路に相当する。
【0028】
装置本体9は、超音波送信回路11と、超音波受信回路13と、Bモード処理回路15と、ドプラ処理回路17と、画像生成回路19と、画像メモリ21と、画像合成回路23と、記憶回路25と、インターフェース回路27と、制御回路(中央演算処理装置:Central Processing Unit)29とを有する。
【0029】
超音波送信回路11は、パルス発生器111と、送信遅延回路113と、パルサ回路115とを有する。超音波送信回路11は、超音波送信部の一例であって、プロセッサを有していてもよい。パルス発生器111は、所定のレート周波数fr Hz(周期:1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。発生されたレートパルスは、チャンネル数に分配され、送信遅延回路113に送られる。
【0030】
送信遅延回路113は、複数のチャンネルごとに、送信超音波をビーム状に収束し、かつ送信指向性を決定するために必要な遅延時間(以下、送信遅延時間と呼ぶ)を、各レートパルスに与える。送信超音波の送信方向または送信方向に関する送信遅延時間(以下、送信遅延パターンと呼ぶ)は、記憶回路25に記憶される。記憶回路25に記憶された送信遅延パターンは、制御回路29により超音波の送信時に参照される。
【0031】
パルサ回路115は、このレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ3の振動子ごとに電圧パルス(駆動信号)を印加する。これにより、超音波ビームが被検体Pに送信される。
【0032】
超音波送信回路11は、1フレームに対応する後述のBモードデータの生成を契機として、減衰定量条件に基づいて、被検体Pに超音波(以下、減衰定量用超音波と呼ぶ)を送信する。減衰定量条件とは、減衰定量用超音波を発生させるための送信条件、減衰定量用超音波を受信するための受信条件である。送信条件は、例えば、減衰定量用超音波の送信中心周波数と減衰定量用超音波の送信帯域幅である。受信条件は、例えば、減衰定量用超音波の受信中心周波数と受信帯域幅である。減衰定量条件は、記憶回路25に記憶される。
【0033】
なお、送信条件は、上記2種類に限定されず、例えば、周波数が異なる複数の減衰定量用超音波を、一つの走査線に対して送信する条件であってもよい。また、送信条件は、例えば、位相を反転させた2つの減衰定量用超音波を、一つの走査線に対して送信する条件であってもよい。送信条件における送信中心周波数は、例えば、Bモード用超音波の送信中心周波数より高い送信中心周波数である。また、送信条件における帯域幅は、Bモード用超音波の帯域幅より狭い帯域幅(以下、狭帯域と呼ぶ)である。
【0034】
入力装置5を介した操作者の減衰定量開始指示により、減衰定量条件は、記憶回路25から制御回路29に読み出される。超音波送信回路11は、減衰定量条件における送信条件にしたがって、制御回路29により制御される。例えば、超音波送信回路11は、超音波スキャンにおいて、送信条件にしたがって、周波数が異なる複数の超音波を、超音波プローブ3を介して被検体Pに送信する。なお、超音波送信回路11は、超音波スキャンにおいて、送信条件にしたがって、Bモードに関する超音波送信における周波数帯域より狭帯域の超音波を、超音波プローブ3を介して被検体Pに送信する。
【0035】
超音波受信回路13は、プリアンプ131、図示していないアナログディジタル(analog to digital(以下、A/Dと呼ぶ))変換器、受信遅延回路133、加算器135を有する。超音波受信回路は、超音波受信部の一例であって、プロセッサを有していてもよい。プリアンプ131は、超音波プローブ3を介して取り込まれた被検体Pからのエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された受信エコー信号をディジタル信号に変換する。A/D変換される前のアナログ信号に対して、アナログゲインが、STC(sensitive time control)またはTGC(time gain control)として与えられる。
【0036】
受信遅延回路133は、ディジタル信号に変換された受信エコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間(以下、受信遅延時間と呼ぶ)を与える。受信遅延回路133は、例えば、ディジタルビームフォーマである。受信遅延回路133から出力されたディジタル信号に対して、ディジタルゲインが、STCまたはTGCとして与えられる。エコー信号の受信方向または受信方向に関する受信遅延時間(以下、受信遅延パターンと呼ぶ)は、後述する記憶回路25に記憶される。記憶回路25に記憶された受信遅延パターンは、送信時と同様に、制御回路29により参照される。
【0037】
被検体内における超音波の減衰によって、被検体内の深部ほど反射波による信号は、微弱になる。このため、アナログゲインおよびディジタルゲインは、この減衰を補うために、被検体内の深部において反射された超音波に起因する信号ほど、この信号の振幅を増幅するゲインである。
【0038】
加算器135は、遅延時間が与えられた複数のエコー信号を加算する。この加算により、超音波受信回路13は、受信指向性に応じた方向からの反射成分を強調した受信信号を発生する。この送信指向性と受信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性が決定される。この総合的な指向性により、超音波ビーム(いわゆる「超音波走査線」)が決まる。
【0039】
超音波受信回路13は、減衰定量条件における受信条件にしたがって、減衰定量用超音波を受信する。受信条件における受信中心周波数は、減衰定量用超音波の送信中心周波数と略同一の周波数であって、被走査領域の深さ方向に対して変化させずに一定である。また、受信条件における受信帯域幅は、狭帯域と略同一な帯域幅である。超音波受信回路13は、減衰定量条件における受信条件にしたがって、制御回路29により制御される。
【0040】
具体的には、超音波受信回路13は、1フレームに対応する後述のBモードデータの生成を契機として、被検体Pに送信された減衰定量用超音波の反射波を、受信条件にしたがって受信する。超音波受信回路13は、減衰定量用超音波の反射波の受信により、減衰定量用受信データを生成する。超音波送信回路11は、減衰定量用受信データを、Bモード処理回路15に出力する。なお、超音波送信回路11は、減衰定量用受信データを、制御回路29および記憶回路25に出力してもよい。
【0041】
Bモード処理回路15は、図示していない包絡線検波器、対数変換器などを有する。Bモード処理回路15は、Bモード処理部の一例であって、プロセッサを有する。包絡線検波器は、超音波受信回路13から出力された受信信号に対して包絡線検波を実行する。包絡線検波器は、包絡線検波された信号を、後述する対数変換器に出力する。対数変換器は、包絡線検波された信号に対して対数変換して弱い信号を相対的に強調する。Bモード処理回路15は、対数変換器により強調された信号に基づいて、各走査線および各超音波送受信における深さごとの信号値(Bモードデータ)を生成する。
【0042】
Bモードデータは、対数変換器から出力された信号の強度を輝度の明るさとして表現されたデータに相当する。Bモード処理回路15からの出力は、画像生成回路19に出力される。Bモード処理回路15からの出力は、反射波の強度を輝度で表したBモード画像として、モニタ7に表示される。Bモード処理回路15は、減衰定量用受信データに基づいて、上記処理手順により、減衰定量用Bモードデータを生成する。Bモード処理回路15は、減衰定量用Bモードデータを、制御回路29および記憶回路25に出力する。
【0043】
超音波プローブ3がメカニカル4次元プローブである場合や2次元アレイプローブである場合、Bモード処理回路15は、被走査領域におけるアジマス(Azimuth)方向、エレベーション(Elevation)方向、深さ方向(レンジ(Range)方向)にそれぞれ対応付けて配列された複数の信号値からなる3次元Bモードデータを発生してもよい。レンジ方向とは、走査線上の深さ方向である。アジマス方向とは、例えば、1次元アレイにおける圧電振動子の配列方向に沿った電子走査方向である。エレベーション方向とは、例えば、1次元アレイの機械的揺動方向である。
【0044】
なお、3次元Bモードデータは、複数の画素値または複数の輝度値などを、走査線に沿って、アジマス方向、エレベーション方向、レンジ方向にそれぞれ対応付けて配列させたデータであってもよい。また、3次元Bモードデータは、被走査領域において予め設定されたROIに関するデータであってもよい。また、Bモード処理回路15は、3次元Bモードデータの代わりにボリュームデータを発生してもよい。以下、Bモード処理回路15で発生されるデータをまとめて、Bモードデータと呼ぶ。
【0045】
ドプラ処理回路17は、超音波受信回路13から受け取ったエコー信号に対して速度情報を周波数解析する。ドプラ処理回路17は、ドプラ処理部の一例であって、プロセッサを有する。ドプラ処理回路17は、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を、超音波受信回路13から受け取ったエコー信号から抽出する。ドプラ処理回路17は、平均速度、分散、パワー等の血流情報を、走査線上の多点について求める。ドプラ処理回路17は、得られた血流情報を画像生成回路19に出力する。ドプラ処理回路17からの出力は、ドプラ波形画像、平均速度画像、分散画像、パワー画像、およびこれらの組み合わせ画像として、モニタ7にカラー表示される。
【0046】
例えば、ドプラ処理回路17は、図示していないミキサー、低域通過フィルタ(Low Pass Filter:以下、LPFと呼ぶ)、速度/分散/Power演算回路等を有する。ミキサーは、超音波受信回路13から出力された受信信号に、送信周波数と同じ周波数f
0を有する基準信号を掛け合わせる。この掛け合わせにより、ドプラ偏移周波数f
dの成分の信号と(2f
0+f
d)の周波数成分を有する信号とが得られる。LPFは、ミキサーからの2種の周波数成分を有する信号のうち、高い周波数成分(2f
0+f
d)の信号を取り除く。ドプラ処理回路17は、高い周波数成分(2f
0+f
d)の信号を取り除くことにより、ドプラ偏移周波数f
dの成分を有するドプラ信号を発生する。
【0047】
なお、ドプラ処理回路17は、ドプラ信号を発生するために、直交検波方式を用いてもよい。このとき、受信信号(RF信号)は、直交検波されIQ信号に変換される。ドプラ処理ユニット142は、IQ信号を複素フーリエ変換することにより、ドプラ偏移周波数f
dの成分を有するドプラ信号を発生する。ドプラ信号は、例えば、血流、組織、造影剤によるドプラ成分である。
【0048】
速度/分散/Power演算回路は、図示していないMTI(Moving Target Indicator)フィルタ、LPFフィルタ、自己相関演算器等を有する。なお、自己相関演算器の代わりに相互相関演算器を有していてもよい。MTIフィルタは、発生されたドプラ信号に対して、臓器の呼吸性移動や拍動性移動などに起因するドプラ成分(クラッタ成分)を除去する。MTIフィルタは、ドプラ信号から血流に関するドプラ成分(以下、血流ドプラ成分と呼ぶ)を抽出するために用いられる。LPFは、ドプラ信号から組織の移動に関するドプラ成分(以下、組織ドプラ成分と呼ぶ)を抽出するために用いられる。
【0049】
自己相関演算器は、血流ドプラ成分及び組織ドプラ成分に対して自己相関値を算出する。自己相関演算器は、算出された自己相関値に基づいて、血流および組織の平均速度値、分散値、ドプラ信号の反射強度(パワー)等を算出する。速度/分散/Power演算回路は、複数のドプラ信号に基づく血流および組織の平均速度値、分散値、ドプラ信号の反射強度等に基づいて、所定領域の各位置におけるカラードプラデータを発生する。以下、ドプラ信号とカラードプラデータとをまとめて、ドプラデータと呼ぶ。
【0050】
画像生成回路19は、図示していないディジタルスキャンコンバータ(Digital Scan Converter:以下、DSCと呼ぶ)等を有する。画像生成回路19は、画像生成部の一例であって、プロセッサを有する。画像生成回路19は、DSCに対して、座標変換処理(リサンプリング)を実行する。座標変換処理とは、例えば、Bモードデータ、およびドプラデータからなる超音波スキャンの走査線の信号列を、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換する処理である。
【0051】
画像生成回路19は、座標変換処理により、表示画像としての超音波画像を生成する。具体的には、画像生成回路19は、Bモードデータに基づいてBモード画像を生成する。画像生成回路19は、減衰定量用Bモードデータに基づいて、減衰Bモード画像を生成する。Bモード画像および減衰Bモード画像は、音波の集束などの超音波プローブの特性や超音波ビーム(例えば、送受信ビーム)の音場特性などが反映された画素値(輝度値)を有する。例えば、Bモード画像において、被走査領域において超音波のフォーカス付近では、非フォーカス部分よりも相対的に高輝度となる。
【0052】
画像生成回路19は、ドプラデータに基づいて、平均速度画像、分散画像、パワー画像などのドプラ画像を生成する。また、画像生成回路19は、解析機能299により解析された解析結果に基づいて、被走査領域における一部領域の各位置における超音波の減衰量を示す減衰定量画像を生成する。
【0053】
画像メモリ21は、発生された超音波画像(Bモード画像、平均速度画像、分散画像、パワー画像、減衰定量画像)に対応するデータ(以下、画像データと呼ぶ)を記憶する。画像メモリ21に記憶された画像データは、入力装置5を介した操作者の指示により、読み出される。画像メモリ21は、例えば、フリーズする直前の複数のフレームに対応する超音波画像を保存するメモリである。このシネメモリに記憶されている画像を所定のフレームレートで連続表示(シネ表示)することで、超音波動画像が、モニタ7に動画表示される。
【0054】
画像メモリ21は、例えば、集積回路記憶装置(RAM(Random Access Memory)、ROM(Read−Only Memory)等)により実現される。なお、画像メモリ21の実現は、上記集積回路記憶装置に限定されず、任意の記憶装置であってもよい。
【0055】
画像合成回路23は、超音波画像に、種々のパラメータの文字情報および目盛等を合成する。画像合成回路23は、画像合成部の一例であって、プロセッサを有する。画像合成回路23は、合成された超音波画像を後述するモニタ7に出力する。画像合成回路23は、Bモード画像に減衰定量画像を位置合わせして重畳した減衰重畳画像を生成する。画像合成回路23は、発生した減衰重畳画像を、モニタ7に出力する。
【0056】
記憶回路25は、種々の情報を記憶するHDD(hard disk drive:ハードディスクドライブ)やSSD(solid state drive:ソリッドステートドライブ)、集積回路記憶装置(RAM、ROM等)などの記憶装置である。記憶回路25は、記憶部に相当する。また、記憶回路25は、CD−ROMドライブやDVDドライブ等との間で、種々の情報を読み書きする駆動装置で実現されてもよい。また、記憶回路25は、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVD、MOなど)、半導体メモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置で実現されてもよい。
【0057】
記憶回路25は、フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、および複数の送信遅延パターンを記憶する。記憶回路25は、本超音波診断装置1の制御プログラム、診断プロトコル、および後述する医用解析プログラムを記憶する。記憶回路25は、超音波の送受信条件等の各種データ群、診断情報(患者ID、医師の所見等)を記憶する。記憶回路25は、超音波受信回路13により発生された受信信号、Bモード処理回路15により発生されたBモードデータ、ドプラ処理回路17により発生されたドプラデータ、および解析機能299による解析結果を示す解析データを記憶する。
【0058】
また、記憶回路25は、減衰定量用Bモードデータの収集に関する被走査領域(減衰Bモード画像)に設定される複数の領域の大きさおよび設定位置、構造物推定機能の実行に関するプログラム(以下、構造物推定プログラムと呼ぶ)等を記憶する。記憶回路25は、構造物推定機能において参照される閾値(以下、構造物判定閾値と呼ぶ)を記憶する。記憶回路25は、ゲイン逆補正機能295で用いられる逆補正データ、音場特性補正機能297で用いられる音場特性補正データ、組織性状解析機能の実行に関するプログラム(以下、組織性状解析プログラムと呼ぶ)等を記憶する。以下、構造物推定プログラムと組織性状解析プログラムとをまとめて、医用解析プログラムと呼ぶ。
【0059】
なお、記憶回路25は、逆補正データの代わりに、対応表(以下、逆補正対応表と呼ぶ)を記憶してもよい。また、記憶回路25は、音場特性補正データの代わりに、対応表(以下、音場特性補正対応表と呼ぶ)を記憶してもよい。
【0060】
逆補正データは、超音波スキャンにより得られたデータ(受信信号、受信データ)に対してSTCまたはTGCにより付与されたアナログゲインおよびディジタルゲインをキャンセルするためのデータである。具体的には、逆補正データは、超音波スキャンにより得られたデータに付与されるゲイン(利得)の深さ方向の応答を示すデータである。すなわち、逆補正データをBモードデータに適用することにより、ゲイン補正されたBモードデータは、ゲイン補正前のBモードデータに変換される。
【0061】
逆補正対応表とは、STCまたはTGCによるゲイン補正をキャンセルするための対応表である。具体的には、逆補正対応表は、超音波スキャンにより得られたデータに付与されるゲイン(利得)の深さ方向の応答を示す対応表であって、ゲイン補正後のBモードデータを、ゲイン補正前のBモードデータに変換するための対応表である。
【0062】
音場特性補正データは、ゲイン補正前のBモードデータにおける音場特性の依存性をキャンセルするためのデータである。すなわち、音場特性補正データをBモードデータに適用することにより、音場特性に依存するBモードデータは、音場特性に依存しないBモードデータに変換される。音場特性補正対応表とは、Bモードデータにおける音場特性の依存性をキャンセルするための対応表である。具体的には、音場特性補正対応表は、音場特性に依存するBモードデータを、音場特性に依存しないBモードデータに変換するための対応表である。
【0063】
音場特性補正データおよび音場特性補正対応表は、例えば、超音波が無減衰であってかつ一様な散乱体を有する物体に対して超音波スキャンを実行したときに得られる深さ方向の画素値(または輝度値)の分布に対応する。音場特性補正データおよび音場特性補正対応表は、超音波が無減衰であってかつ一様なファントムに対して超音波スキャンを実行することにより取得された実測データに基づいて予め生成される。
【0064】
なお、音場特性補正データおよび音場特性補正対応表は、超音波に対して一定の減衰を有するファントムに対する超音波スキャンにより実測された実測データからこのファントムによる超音波の減衰分を差分することにより生成されてもよい。また、音場特性補正データおよび音場特性補正対応表は、シミュレーションなどの他の手段により生成されてもよい。
【0065】
記憶回路25は、Bモード画像、平均速度画像、分散画像、パワー画像、減衰定量画像、減衰重畳画像等の各種画像を記憶する。記憶回路25は、後述する複数の減衰定数にそれぞれ対応する複数の色相を記憶する。記憶回路25は、減衰定量画像に関する所定の不透明度または透明度を記憶する。記憶回路25は、後述する分散比の値に応じた色相を記憶する。なお、上述した画像メモリ21は、記憶回路25に設けられてもよい。また、構造物推定機能としてCFAR(Contrast False Alarm Rate)処理を実行する場合、記憶回路25は、CFAR処理に関するプログラムを記憶してもよい。
【0066】
インターフェース回路27は、入力装置5、不図示の操作パネル、ネットワーク、図示していない外部記憶装置および生体信号計測器に関するインターフェースである。装置本体9によって得られた超音波画像等のデータおよび解析結果等は、インターフェース回路27とネットワークとを介して他の装置に転送可能である。なお、インターフェース回路27は、ネットワークを介して、図示していない他の医用画像診断装置で取得された被検体に関する医用画像を、ダウンロードすることも可能である。インターフェース回路27は、インターフェース部に対応し、プロセッサを有していてもよい。
【0067】
制御回路29は、情報処理装置(計算機)としての機能を有し、本超音波診断装置1の装置本体9の動作を制御する制御手段(プロセッサ)である。制御回路29は、記憶回路25から画像生成・表示等を実行するための制御プログラムを読み出して各種処理に関する演算・制御等を実行する。制御回路29は、制御部に相当する。
【0068】
制御回路29は、減衰定量開始指示に応答して、記憶回路25から減衰定量条件を読み出す。制御回路29は、読み出した減衰定量条件にしたがって、超音波送信回路11と超音波受信回路13とを制御する。具体的には、制御回路29は、読み出した送信条件にしたがって超音波送信回路11を制御する。これにより、超音波送信回路11は、1フレームに対応するBモードデータの生成後に、減衰定量用超音波を、被検体Pに送信する。また、制御回路29は、読み出した受信条件にしたがって超音波受信回路13を制御する。これにより、超音波受信回路13は、受信条件にしたがって、被検体Pに送信された減衰定量用超音波の反射波を受信する。
【0069】
本実施形態では、設定機能291、推定機能293、ゲイン逆補正機能295、音場特性補正機能297、解析機能299にて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路25へ記憶されている。制御回路29は、これら機能に対応するプログラムを記憶回路25から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の制御回路29は、
図1の制御回路29内に示された各機能を有することになる。
【0070】
なお、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの制御回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、推定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、制御回路29が有する設定機能291、推定機能293、ゲイン逆補正機能295、音場特性補正機能297、解析機能299は、それぞれ、設定部、推定部、ゲイン逆補正部、音場特性補正部、解析部の一例である。また、このとき、構造物推定機能を実現するプロセッサは、構造物推定部として機能してもよい。また、組織性状解析機能を実現するプロセッサは、組織性状解析部として機能してもよい。
【0071】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0072】
プロセッサは、記憶回路123に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路123にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、超音波送信回路11、超音波受信回路13、Bモード処理回路15、ドプラ処理回路17、画像生成回路19、画像合成回路23、インターフェース回路27等の他の回路も同様に、上記のプロセッサなどの電子回路により構成される。
【0073】
制御回路29は、減衰定量開始指示に応答して、医用解析プログラムを記憶回路25から読み出す。制御回路29は、読み出した医用解析プログラムを実行することにより、構造物推定機能および組織性状解析機能を実現する。具体的には、制御回路29は、構造物推定プログラムおよび組織性状解析プログラムを、記憶回路25から読み出す。制御回路29は、読み出した構造物推定プログラムを実行することにより、減衰定量用超音波を用いた超音波スキャンにより得られた減衰定量用Bモードデータに基づいて、被検体内の構造物の位置を推定する。
【0074】
制御回路29は、例えば、構造物の位置の推定を契機として、読み出した組織性状解析プログラムを実行することにより、減衰定量用Bモードデータに対応する被走査領域において、組織性状を解析する。以下、被検体内の構造物の位置の推定に関する各種機能、および組織性状の解析に関する各種機能について、具体的に説明する。
【0075】
以下の説明においては、単一の制御回路29において、設定機能291、推定機能293、ゲイン逆補正機能295、音場特性補正機能297、および解析機能299等が実行されるものとして説明しているが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各種機能を実現するものとしても構わない。また、設定機能291、推定機能293、ゲイン逆補正機能295、音場特性補正機能297、および解析機能299等は、それぞれ異なる処理回路またはそれぞれ異なるプロセッサで実現されてもよい。
【0076】
(構造物推定機能)
構造物推定機能とは、例えば、被検体Pに対する超音波スキャンにより得られた減衰定量用Bモードデータに基づいて、被検体内の複数の位置について不均一さを評価することにより構造物の位置を推定する機能を含む。構造物推定機能として構造物を推定する方法には様々な方法があるが、以下、一例として減衰Bモード画像に設定された複数の領域各々に含まれる複数の画素にそれぞれ対応する複数の画素値(または輝度値)の平均値、および分散値を利用した方法を説明する。
【0077】
この方法は、一般に、例えば肝臓の実質のような一様な散乱体を有する領域において、減衰定量用Bモードデータの度数分布(ヒストグラム)がレイリー分布を示すことを利用している。一様な散乱体を有する領域において、減衰定量用Bモードデータの度数分布がレイリー分布に従う場合、この領域における複数の画素値による平均値(μ)と分散値(σ
2)とは、以下のような関係となる。
【0078】
σ
2=(4/π−1)×μ
2 ・・・(1)
平均値と分散値との計算に関する領域に構造物が含まれている場合、散乱体は非一様であるため、減衰定量用Bモードデータの度数分布の分散値は、レイリー分布で計算される分散値より大きくなる。加えて、構造物の特性が周囲と顕著に異なるほど(例えば、構造物の領域が石灰化している領域に対応する場合など)、分散値は大きくなる。このため、被走査領域で設定された複数の領域各々において分差値を算出することにより、領域を代表する画素各々における構造物の有無を判定することができる。
【0079】
しかしながら、画素値の大きさが大きいほど分散値が大きくなるため、分散値そのものを算出するだけでは、構造物の有無、すなわち一様な散乱体の場合に得られるレイリー分布からの逸脱の有無を判定することはできない。そこで、本実施形態では、設定された領域における画素値の平均値と同じ平均値を有するレイリー分布を、設定された領域に対して仮定する。この仮定のもとで、設定された領域における画素値の平均値と式(1)とを用いて計算された分散値{(4/π−1)×μ
2}に対する、設定された領域における画素値の分散値σ
2の比(以下、分散比R
σと呼ぶ)が計算される。具体的には、分散比R
σは、以下のような式となる。
R
σ=σ
2/{(4/π−1)×μ
2} ・・・(2)
式(2)の右辺における分子(σ
2)は、設定された領域に包含される複数の画素にそれぞれ対応する複数の画素値から計算された実測の分散値である。式(2)の右辺における分母{(4/π−1)×μ
2}は、設定された領域に包含される複数の画素にそれぞれ対応する分散の画素値から計算された平均値μと式(1)とを用いて、設定された領域における複数の画素値がレイリー分布を形成すると仮定した場合の分散値である。
【0080】
分散比R
σが1に近い場合、設定された領域における画素値の分布は、レイリー分布とみなすことができる。また、分散比R
σが1より大きな値である場合、設定された領域に含まれる複数の画像地の分布は、レイリー分布から乖離しており、設定された領域には、一様な散乱体から逸脱した構造物が含まれていると推定される。すなわち、分散比R
σは、設定された領域における構造物の有無の判断の指標に相当する。
【0081】
設定機能291を実現する制御回路29は、減衰定量用Bモードデータが収集された被走査領域(減衰Bモード画像)、すなわち減衰定量用超音波による超音波スキャンにおける走査領域において、複数の領域を設定する。設定された複数の領域は、減衰Bモード画像における複数の画素各々を中心(以下、中心画素と呼ぶ)または重心として、所定の大きさを有する。減衰Bモード画像に設定される領域の大きさは、入力装置5を介した操作者の指示により適宜変更されてもよい。なお、制御回路29は、所定の画素の幅ごとに一つの領域をスイープさせることで、減衰Bモード画像において複数の領域を設定してもよい。
【0082】
推定機能293を実現する制御回路29は、設定された複数の領域各々に含まれる複数の画素各々に対応する画素値(または輝度値)に基づいて、構造物の位置を推定する。このとき、画素値は、減衰定量用Bモードデータにおける画素値に対応する。なお、推定機能293により用いられる画素値は、通常のBモードデータにおける画素値が用いられてもよい。具体的には、制御回路29は、複数の領域各々において、画素値(または輝度値)の平均値と、分散値とを計算する。制御回路29は、平均値と分散値とに基づいて、分散比R
σを計算する。計算された分散比R
σは、記憶回路25に記憶されてもよい。また、分散比R
σは、分散比R
σの値に応じた色相で、分散比R
σに関する被走査領域と同一被走査領域におけるBモード画像に重畳されて、モニタ7に表示されてもよい。
【0083】
図2は、分散比R
σの値に応じた色相で分散比R
σが重畳されるBモード画像である。
図2に示すBモード画像は、被検体Pの肝臓の断面を示している。
図3は、分散比R
σの計算に関する同一被走査領域における
図2のBモード画像に、分散比R
σを、分散比R
σの値に応じた色相で重畳した分散比重畳画像の一例を示す図である。
図3におけるハッチングの違いは、色相の違いに相当する。なお、
図3においては、分散比R
σの色相は、分散比重畳画像を図示しやすいように3種類としているが、実際には、略連続的な色相として、分散比R
σの色相を示す凡例とともにモニタ7に表示される。
【0084】
図3におけるハッチングLRは、分散比R
σが大きい領域を示している。
図3に示すように、例えば、血管、腹壁、横隔膜などの構造物および構造物の周辺の領域では、均一なスペックルを有している肝臓の実質と比べて分散比R
σが大きくなっている。すなわち、
図3から明らかなように、構造物および構造物の周辺の領域は、超音波の散乱特性が不均一である。このため、構造物および構造物の周辺の領域は、超音波の減衰量の解析対象としては不適である。
【0085】
制御回路29は、計算した分散比R
σを、設定機能291により設定された領域を代表する位置、例えば中心画素の位置に対応付ける。制御回路29は、構造物判定閾値を、記憶回路25から読み出す。構造物判定閾値は、1以上の数値である。なお、構造物判定閾値は、入力装置5を介した操作者の指示により適宜変更されてもよい。制御回路29は、読み出した構造物判定閾値と分散比R
σとを比較する。制御回路29は、構造物判定閾値より大きい分散比R
σを、構造物の位置として推定する。
【0086】
推定機能293を実現する制御回路29は、減衰Bモード画像に対応する被走査領域において推定された構造物の位置、すなわち構造物の領域を、記憶回路25に出力してもよい。推定された構造物の位置は、後述する組織性状解析機能において用いられる。推定された構造物の領域は、例えば、
図3に示すように、例えば、ハッチングLRで示す領域に対応する。
【0087】
なお、受信信号や減衰定量用Bモードデータを用いた構造物の推定の手法は、上述した方法に限定されない。例えば、構造物推定機能は、CFAR処理と称される推定的な信号(または画像)の抽出技術を用いてもよい。CFAR処理という用語は、レーダー分野に用いられるものである。本実施形態では、その関連性により説明を具体的にするために、便宜上「CFAR」という語句を用いている。しかしながら、レーダー分野で用いられる方法、あるいは統計量を厳密に使用したものに拘泥されない。
【0088】
CFAR処理は、例えば次の(1) 〜(3)の手順によって実行される。
(1)設定機能291を実現する制御回路29は、減衰Bモード画像において、注目画素Pi毎に、当該画素Piの近傍画素を有する領域を設定する。制御回路29により近傍画素として設定される領域は、減衰Bモード画像において十字型に設けられる。しかしながら、設定される領域における近傍画素の配列は、十字型に拘泥されず、例えば演算処理に要する時間が問題とならない場合には、注目画素に隣接する8画素を除く任意の大きさの領域であってもよい。
【0089】
推定機能293を実現する制御回路29は、設定された領域における輝度平均値(または画素平均値)を計算する。このとき、制御回路29は、注目画素の輝度値(または画素値)が平均値に影響しないようにするため、注目画素Pi自体を、輝度平均計算に含めないようにしてもよい。
【0090】
(2)次に、制御回路29は、注目画素Piの画素値から平均値を減算する。制御回路29は、この減算値を、当該注目画素Piの位置に対する演算結果Kiとして定義し、記憶回路25に記憶させる。制御回路29は、この演算処理を、全ての注目画素Piについて実行する。
【0091】
(3)制御回路29は、予め設定された閾値Tを記憶回路25から読み出す。このとき、閾値Tは、構造物判定閾値に対応し、一般的には分散比R
σに対応する構造物判定閾値とは異なる値である。制御回路29は、演算結果Kiと閾値Tとを比較する。Ki≧Tの場合には,元の輝度を用いて当該注目画素Piを表示する(構造物の抽出)。一方、Ki<Tである場合、当該注目画素Piの輝度値はゼロとすることで表示しない(構造物の除去)。これらの処理を全ての注目画素Piについて実行することで、当該画像に関するCFAR処理を実行することができる。
【0092】
なお、上記(3)の判定においては、Ki≧Tの場合には輝度をKiとして当該注目画素Piを表示し、Ki<Tである場合、当該注目画素Piの輝度値はゼロとすることで表示しない様にしてもよい。
【0093】
また、構造物推定機能は、より単純には、通常のBモード画像において設定された複数の領域における輝度値(または画素値)の平均値、および分散値、標準偏差値等と、これらの値各々に対応する構造物判定のための閾値とを比較することにより、構造物の位置を推定してもよい。
【0094】
(組織性状解析機能)
組織性状解析機能は、組織性状解析プログラムにしたがって制御回路29により実行される機能である。具体的には、組織性状解析機能は、減衰定量用Bモードデータに基づいて、減衰Bモード画像において推定された構造物の位置を除く複数の位置に対して組織性状を解析する。組織性状解析機能は、ゲイン逆補正機能295と音場特性補正機能297と、解析機能299と、不図示の表示機能とを有する。以下、組織性状解析機能における各機能について詳述する。組織性状とは、例えば、被検体内を伝搬する減衰定量用超音波の減衰の程度を示す減衰量に関する特徴量である。
【0095】
なお、組織性状は、減衰量に限定されず、例えば、弾性率(ヤング率)、粘性率、歪みなどの診断対象組織の性状を示す量であってもよい。このとき、組織性状は、例えば、超音波エラストグラフィー法により取得される。解析機能299は、静的または動的なエラストグラフィー法に関する各種解析機能を有する。このとき、解析機能299を実現する制御回路29は、組織性状として、被検体内の組織の粘性と弾性とのうち少なくとも一つに関する指標値(粘性パラメータ、弾性パラメータ)を計算する。
【0096】
代表的な一つの超音波エラストグラフィー法とは、超音波プローブ3により被検体内の組織を体表から圧迫・解放することにより、圧迫・解放時に観測される断面内の各点の歪みの大きさから、被検体内の組織の相対的な硬さを可視化する方法である。
【0097】
代表的な別の超音波エラストグラフィー法とは、音響放射力や機械的振動を被検体Pの体表から被検体内の組織に与えることにより、断面内の各点における組織の変位(歪み)を経時的に観測する方法である。具体的には、動的な超音波エラストグラフィー法は、音響放射力や機械的振動により発生させたせん断波(シア・ウェーブ(shear wave))の伝播速度を求めることにより、診断対象組織の弾性率や粘性率等を求める方法である。静的または動的な超音波エラストグラフィー法により送受信される超音波は、減衰定量用超音波に対応する。このとき、構造物推定機能において用いられるデータは、例えば、Bモード画像の生成に関するBモードデータが用いられる。また、超音波エラストグラフィー法により生成される画像(弾性画像、粘性画像、歪み画像など)は、減衰定量画像に対応する。
【0098】
以下、組織性状解析機能は、組織性状として減衰量を計算するものとして説明する。ゲイン逆補正機能295の実行に先立って、制御回路29は、減衰定量用Bモードデータにおいて、減衰Bモード画像に対応する被走査領域に推定された構造物の位置を除く複数の位置に対応するデータ(以下、減衰定量用部分データと呼ぶ)を推定する。
【0099】
ゲイン逆補正機能295を実現する制御回路29は、記憶回路25から逆補正データを読み出す。制御回路29は、被走査領域において推定された構造物の位置を除く複数の位置に対応する減衰定量用部分データから逆補正データを減算する。これにより、制御回路29は、ゲイン補正前の減衰定量用部分データを生成する。なお、制御回路29は、記憶回路25から逆補正対応表を読み出してもよい。このとき、制御回路29は、逆補正対応表にしたがって、減衰定量用部分データをゲイン補正前の減衰定量用部分データに変換する。すなわち、ゲイン逆補正機能295は、減衰定量用部分データに対するゲイン補正をキャンセルする。
【0100】
ゲイン逆補正機能295により、制御回路29は、超音波プローブ3が減衰定量用超音波の反射波を受信した時点における受信データ、すなわち深さ方向に沿った深さ方向の超音波信号の純粋な強度を復元する。なお、超音波受信回路13からゲイン未補正の減衰定量用部分データ(ローデータ)を出力することが可能であれば、上記ゲイン逆補正機能295は不要となる。
【0101】
音場特性補正機能297を実現する制御回路29は、記憶回路25から音場特性補正データを読み出す。制御回路29は、ゲイン補正前の減衰定量用部分データから音場特性補正データを減算する。これにより、制御回路29は、音場特性に依存せず、かつゲイン補正前の減衰定量用部分データ(以下、減衰データと呼ぶ)を生成する。なお、制御回路29は、記憶回路25から音場特性補正対応表を読み出してもよい。このとき、制御回路29は、音場特性補正対応表にしたがって、ゲイン補正前の減衰定量用部分データを、減衰データに変換する。すなわち、制御回路29は、超音波スキャンにおける音場特性に基づいて、ゲイン補正前の減衰定量用部分データにおける音場特性の依存性をキャンセルする。
【0102】
音場特性補正機能297により、制御回路29は、超音波ビームの形状、および超音波プローブ3の形状に特有な画素値(または輝度値)の変化量を、ゲイン補正前の減衰定量用Bモードデータから排除する。この排除により、制御回路29は、被検体内の組織により超音波が純粋に減衰する程度を反映した画素値(または輝度値)を有する減衰データを生成する。減衰データは、ゲイン逆補正機能295および音場特性補正機能297により補正された補正データに対応する。
【0103】
解析機能299を実行する制御回路29は、被検体Pに対する超音波スキャンにより得られた上記減衰データに基づいて、推定された構造物の位置を除く被検体内の複数の位置(以下、非構造物領域と呼ぶ)における組織性状を解析する。すなわち、解析機能299を実現する制御回路29は、被検体内を伝搬する減衰定量用超音波の減衰量を計算する。
【0104】
具体的には、制御回路29は、減衰データにおいて、非構造物領域における画素値(または輝度値)において、深さ方向に沿った微分値を計算する。上記微分値は、例えば、非構造物領域における複数の画素各々において、深さ方向に沿って隣接する2つの画素の画素値の差分値を、この2つの画素の間隔(距離)で除した値に相当する。
【0105】
次いで、制御回路29は、計算した微分値に対して、超音波の往復分を加味して、1/2を乗算する。これにより、制御回路29は、減衰定量用超音波の送信中心周波数に関する超音波の減衰量(dB/cm)を、非構造物領域に含まれる複数の画素(位置)について計算する。さらに、制御回路29は、計算した減衰量を減衰定量用超音波の送信中心周波数で除算する。この除算により、制御回路29は、非構造物領域に含まれる複数の画素(位置)における減衰定数(dB/cm/Hz)を計算する。
【0106】
減衰定数は、減衰定量用超音波の送信中心周波数に依存しない。また、減衰定数は、非構造物領域に含まれる複数の画素(位置)ごとにほぼ一定の値となる。減衰定数は、診断対象となる組織の性状を表す数値である。上記各種計算により、制御回路29は、非構造物領域に含まれる複数の位置において減衰定数を示す解析データ(以下、減衰定数データと呼ぶ)を生成する。制御回路29は、減衰定数データを、画像生成回路19および記憶回路25等に出力する。
【0107】
組織性状は、輝度値または画素値の解析による減衰定数に限定されず、他の解析により減衰量を反映した量であってもよい。例えば、周波数が異なる複数の減衰定量用超音波が一つの走査線に対して送受信された場合、解析機能299を実現する制御回路29は、非構造物領域に含まれる複数の位置におけるドプラデータに基づいて周波数解析を実行することにより、非構造物領域に含まれる複数の位置における組織性状を示すパラメータを計算してもよい。具体的には、制御回路29は、複数の減衰定量用超音波各々に対応するドプラデータを用いて、周波数の違いに起因する減衰量の差を、組織性状として計算する。
【0108】
また、Bモードに関する超音波送信における周波数帯域より狭帯域の超音波が減衰定量用超音波として被検体Pに送信された場合、制御回路29は、狭帯域の減衰定量用超音波の受信により取得されたデータに対して周波数解析を実行する。次いで、制御回路29は、周波数解析における周波数特性に基づいて、組織性状として減衰量を計算する。
【0109】
表示機能を実現する制御回路29は、解析結果である組織性状を、モニタ7に表示させる。具体的には、制御回路29は、減衰定数データを画像生成回路19に出力する。画像生成回路19は、減衰定数データに基づいて減衰定量画像を生成する。このとき、制御回路29は、減衰定量画像における減衰定数に応じた色相を付与するために、画像生成回路19を制御する。この制御により、減衰定量画像は、減衰定数に応じた色相を有する。
【0110】
なお、構造物の位置に対応する領域において、減衰定量画像は、欠落した状態となる。すなわち、構造物の位置に対応する領域に対応する減衰定量画像は、存在しない。画像生成回路19は、減衰定量画像を画像合成回路23に出力する。
【0111】
画像合成回路23は、制御回路29による制御のもとで、減衰定量用Bモードデータの収集に関する被走査領域と略同一の被走査領域に関するBモード画像と、減衰定量画像との位置合わせ(registration)を実行する。画像合成回路23は、制御回路29による制御のもとで、減衰定量画像を所定の不透明度または透明度に変換する。
【0112】
画像合成回路23は、Bモード画像に、所定の不透明度または透明度を有する減衰定量画像を重畳させた減衰重畳画像を生成する。画像合成回路23は、減衰重畳画像に、減衰定数の色相に応じた凡例等を合成する。画像合成回路23は、凡例等を合成した減衰重畳画像を、モニタ7に出力する。
【0113】
モニタ7は、構造物の位置を除く被検体内の複数位置各々において、解析結果としての減衰量を表示する。具体的には、モニタ7は、凡例等を合成した減衰重畳画像を表示する。
【0114】
図4は、モニタ7に表示された減衰重畳画像を凡例とともに示す図である。
図4に示すように、減衰重畳画像において、減衰定量画像は、所定の不透明度または透明度でBモード画像に重畳された状態で表示される。
図4に示すように、減衰重畳画像において、推定された構造物の位置を含む領域は、
図3に示すように大きい分散比を有し、減衰定数が計算されない領域、すなわち減衰定量画像が存在しない領域である。この領域には背面のBモード画像が表示される。すなわち、
図4において推定された構造物の位置を含む領域は、血管、腹膜、横隔膜等の構造物およびこれらの構造物の付近であって、減衰定数を示す減衰定量画像(カラー画像)が非表示となる領域である。
【0115】
以下、構造物推定機能および組織性状解析機能に関する処理手順について説明する。
図5は、構造物推定機能および組織性状解析機能に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0116】
減衰定量開始指示が入力装置5により入力される(ステップSa1)。減衰定量開始指示の入力を契機として、Bモード用超音波が、被検体Pに対して送受信される(ステップSa2)。なお、ステップSa1の処理は、ステップSa2の処理の後に実行されてもよい。このとき、操作者は、被検体Pに対して減衰定数の解析に関するBモード画像が表示されると、減衰定量開始指示を入力する。加えて、ステップSa2の処理に関連して発生された、
図2に示すようなBモード画像は、記憶回路25に記憶されてもよい。
【0117】
1フレーム分、すなわち1被走査領域に対応するBモードデータが収集されると、減衰定量用超音波が、被検体Pに対して送受信される(ステップSa3)。次いで、減衰定量用Bモードデータが発生される。減衰定量用Bモードデータに基づいて、構造物の位置が推定される(ステップSa4)。なお、構造物の位置の推定は、ステップSa2の処理の後に発生されたBモードデータに基づいて推定されてもよい。このとき、構造物の位置の推定に用いられた分散比をBモード画像に重畳させた分散比重畳画像(
図3参照)が、モニタ7に表示されてもよい。
【0118】
推定された構造物の位置を除く複数位置の組織性状(例えば、減衰定数)が、減衰定量用Bモードデータに基づいて計算される(ステップSa5)。ステップSa5の処理により、Bモード画像に関する被走査領域と略同一の被走査領域における減衰定数データが発生される。構造物の位置を除く複数の位置各々における減衰定数を示す減衰定数データに基づいて、減衰定量画像が生成される(ステップSa6)。ステップSa2の処理において受信された受信信号に基づいてBモードデータが発生される。次いで、Bモードデータに基づいてBモード画像が発生される(ステップSa7)。
【0119】
Bモード画像と減衰定量画像とが位置合わせされる。加えて、減衰定量画像に対して所定の不透明度または透明度が付与される。所定の不透明度または透明度を有する減衰定量画像をBモード画像に重畳した減衰重畳画像が生成される。減衰重畳画像がモニタ7に表示される(ステップSa8)。
【0120】
(変形例)
上記実施形態との相違は、減衰定量用Bモードデータの収集に関する被走査領域に対応する減衰定量画像を生成し、被走査領域において推定された構造物の位置における減衰定量画像を減衰重畳画像において非表示とすることにある。本変形例では、減衰定量用Bモードデータにおいて、減衰定量用部分データを推定する処理は不要となる。
【0121】
(組織性状解析機能)
ゲイン逆補正機能295を実現する制御回路29は、減衰定量用Bモードデータから、逆補正データを減算する。これにより、制御回路29は、被走査領域全域に亘るゲイン補正前の減衰定量用Bモードデータを生成する。
【0122】
音場特性補正機能297を実現する制御回路29は、ゲイン補正前の減衰定量用Bモードデータから音場特性補正データを減算する。これにより、制御回路29は、音場特性に依存せず、かつゲイン補正前の減衰定量用Bモードデータ(以下、減衰Bモードデータと呼ぶ)を生成する。
【0123】
解析機能299を実行する制御回路29は、減衰Bモードデータに基づいて、被走査領域全域における組織性状を解析する。具体的には、制御回路29は、減衰Bモードデータにおける画素値(または輝度値)において、深さ方向に沿った微分値を計算する。制御回路29は、計算した微分値に対して超音波の往復分を加味して1/2を乗算した値(減衰量)を減衰定量用超音波の送信中心周波数で除算する。この除算により、制御回路29は、収集領域における複数の画素(位置)各々における減衰定数を計算する。
【0124】
上記各種計算により、制御回路29は、被走査領域全域において減衰定数を示す解析データ(減衰定数データ)を生成する。制御回路29は、減衰定数データを、画像生成回路19および記憶回路25に出力する。
【0125】
表示機能を実現する制御回路29は、減衰定数データを画像生成回路19に出力する。画像生成回路19は、減衰定数データに基づいて、減衰定量画像における減衰定数に応じた色相を付与した減衰定量画像を生成する。本変形例における減衰定量画像の大きさは、被走査領域の大きさに略一致する。
【0126】
画像合成回路23は、制御回路29による制御のもとで、減衰定量画像を所定の不透明度または透明度に変換する。画像合成回路23は、Bモード画像に、所定の不透明度または透明度を有する減衰定量画像を重畳させた減衰重畳画像を生成する。制御回路29は、減衰重畳画像の表示において、被走査領域において推定された構造物の位置に対応する減衰定量画像の一部領域を非表示とするように、画像合成回路23またはモニタ7を制御する。このとき、モニタ7は、例えば
図4に示すような態様で、減衰重畳画像を表示する。すなわち、モニタ7は、推定機能293により推定された構造物の位置を除く被検体内の複数位置について、解析機能299による解析結果を表示する。
【0127】
なお、制御回路29は、上記一部領域を所定の色相でマスクして減衰定量画像を表示するように、画像合成回路23またはモニタ7を制御してもよい。このとき、モニタ7は、上記一部領域を所定の色相でマスクして、減衰定量画像を表示する。
【0128】
なお、画像生成回路19は、制御回路29による制御のもとで、被走査領域において推定された構造物の位置に対応する減衰定量画像の一部領域を、減衰定量画像から取り除いた部分減衰画像を生成してもよい。このとき、画像合成回路23は、制御回路29による制御のもとで、部分減衰画像を所定の不透明度または透明度に変換する。画像合成回路23は、Bモード画像に、所定の不透明度または透明度を有する部分減衰画像を重畳させた減衰重畳画像を生成する。モニタ7は、減衰重畳画像を表示する。
【0129】
以下、本変形例に係る構造物推定機能および組織性状解析機能に関する処理手順について説明する。
図6は、本変形例に係る構造物推定機能および組織性状解析機能に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。ステップSb1乃至ステップSb4、およびステップSb7の処理は、
図5におけるステップSa1乃至ステップSa4、およびステップSa7の処理とそれぞれ同様なため、説明は省略する。
【0130】
減衰定数が、減衰定量用Bモードデータに基づいて、収集領域にわたって計算される(ステップSb5)。ステップSb5の処理により、Bモード画像に関する被走査領域と略同一の被走査領域における減衰定数データが発生される。収集領域における減衰定数データに基づいて、減衰定量画像が生成される(ステップSb6)。
【0131】
所定の不透明度または透明度を有する減衰定量画像をBモード画像に重畳した減衰重畳画像が生成される(ステップSb8)。減衰重畳画像における減衰定量画像において構造物の位置に対応する領域を非表示で、または所定の色相でマスクして、減衰重畳画像が、モニタ7に表示される(ステップSb9)。
【0132】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態および本変形例に係る超音波診断装置1によれば、構造物の有無を判定することにより、組織性状(例えば、減衰定数などの減衰量、弾性率、粘性率、硬さなど)を非構造物領域に関して表示することができる。すなわち、本超音波診断装置1によれば、組織性状をカラー画像として表示する際、構造物ありと判定された領域ではカラー非表示となり、背景のBモード画像を表示することができる。あるいは、本超音波診断装置1によれば、組織性状をカラー画像として表示する際、構造物ありと判定された領域では、カラー画像とは異なる所定の色相でマスクして組織性状を表示することができる。
【0133】
例えば、本実施形態および本変形例においてモニタ7に表示される
図4における減衰重畳画像と従来技術における
図11における画像とを比較すると、
図11における画像においては、構造物の有無によらず全域で減衰定数を算出した結果として、減衰定数が低い値から高い値まで様々な部分が表示される、このため、
図11における画像では、操作者が着目する組織の減衰定数がどの程度なのか判断しにくい状態となっている。一方、本実施形態および本変形例においてモニタ7に表示される
図4における減衰重畳画像では、構造物の位置に対応する領域における組織性状は非表示となるため、操作者は、一見して組織性状を示す減衰の程度を把握することが可能となる。
【0134】
以上のことから、本実施形態および本変形例に係る超音波診断装置1によれば、表示された画像や組織性状の解析結果の数値が妥当であるか否かを操作者が判断することなく、推定された構造物の位置を除く領域において信頼性のある解析結果が表示されるため、得られた解析結果の精度や再現性などが向上させることができる。加えて、本実施形態および本変形例に係る超音波診断装置1によれば、解析結果の表示画像において、表示された画像が妥当であるか否かという判断を操作者が判断する必要がないため、操作者にとって、時間的・精神的な負担を軽減させることでき、診断精度を向上させることができる。
【0135】
(第1の応用例)
本実施形態および本変形例との相違は、モニタ7に表示された減衰重畳画像に設定されたROI(以下、計測ROIと呼ぶ)における減衰定数の代表値の信頼性を判定し、判定結果に応じて代表値を計算して表示することにある。計測ROIは、計測ROIにおける代表値の計算、および代表値に対する信頼性の判定に関する領域である。
【0136】
設定機能291は、モニタ7に表示された減衰重畳画像上に、計測ROIを設定する機能を有する。なお、減衰定量画像がモニタ7に表示されている場合、設定機能291は、減衰定量画像上に計測ROIを設定してもよい。また、Bモード画像がモニタ7に表示されている場合、設定機能291は、Bモード画像上に計測ROIを設定してもよい。
【0137】
解析機能299は、計測ROIに含まれる複数の減衰定数を代表する代表値に対する信頼度を計算する機能と、信頼度と信頼性判定閾値とを比較することにより代表値に対する信頼性を判定する機能と、信頼度が信頼性判定閾値より大きい場合、計測ROIに関する代表値を計算する機能等とを有する。
【0138】
表示機能は、入力装置5を介した計測開始の指示(以下、計測開始指示と呼ぶ)の入力に応答して減衰重畳画像上に計測ROIをモニタ7に表示させる機能と、解析機能299による判定結果に応じて代表値または所定の通知をモニタ7に表示させる機能等とを有する。
【0139】
記憶回路25は、本応用例に係る各種機能に関するプログラムを記憶する。記憶回路25は、信頼性判閾値および所定の通知を記憶する。信頼性判定閾値とは、解析機能299により計算される代表値の信頼性を判定する閾値である。所定の通知とは、例えば、信頼度が信頼性判定閾値以下である場合、代表値が信頼性を有さないこと、代表値が適切でないこと、および代表値の計測が不可であることなどを、モニタ7を介して操作者等に通知するための文字列等である。
【0140】
入力装置5は、操作者の指示により計測開始指示を入力する。入力装置5は、トラックボールやパネルボタンなどのインターフェースを介した操作者の操作にしたがって、モニタ7に表示された減衰重畳画像上に計測ROIの位置の確定指示を入力する。
【0141】
表示機能を実現する制御回路29は、入力装置5を介した操作者の計測開始指示に応答して、モニタ7に表示された減衰重畳画像上に、計測ROIを表示させる。設定機能291を実現する制御回路29は、入力装置5を介した操作者の確定指示に応答して、減衰重畳画像上に、計測ROIを設定する。
【0142】
解析機能299を実現する制御回路29は、計測ROIに含まれる画素値に基づいて、計測ROIに含まれる複数の減衰定数を代表する代表値に対する信頼度を計算する。代表値は、例えば、減衰定量画像上の計測ROIに含まれる複数の減衰定数の平均値、中央値、最頻値などである。
【0143】
具体的には、制御回路29は、計測ROIに含まれる画素数(以下、計測画素数と呼ぶ)を、計測ROIの面積として決定する。制御回路29は、計測ROIに含まれる複数の分散比と構造物判定閾値とを比較し、構造物判定閾値より大きい分散比に対応する画素数を、計測ROIにおける構造物の面積として決定する。制御回路29は、計測ROIの面積に対する構造物の面積の割合(以下、構造物面積比と呼ぶ)を計算する。このとき、信頼度は、例えば、1から面積比を差分した差分値となる。
【0144】
なお、制御回路29は、計測ROIの面積に対する非構造物領域の面積の割合(以下、非構造物面積比と呼ぶ)を計算してもよい。信頼度は、非構造物面積比に相当する。このとき、制御回路29は、計測ROIに含まれる複数の分散比と構造物判定閾値とを比較し、構造物判定閾値より小さい分散比に対応する画素数を、計測ROIにおける非構造物の面積として決定する。
【0145】
また、信頼度は、分散比を用いて計算された構造物面積比または非構造物面積比に基づくことに限定されない。すなわち、信頼度は、計測画素数に対する、減衰定数を示す色相を有する画素数の割合であってもよい。また、信頼度は、式(2)で計算された分散比を、信頼度としてもよい。
【0146】
なお、信頼度は、計測画素数に対するBモード画像上の計測ROIに含まれる領域において所定の輝度値より高い輝度値に関する画素数を、構造物面積比として計算されてもよい。このとき、所定の輝度値は、記憶回路25に記憶される。所定の輝度値とは、例えば、血管壁などの構造物を代表する輝度値である。
【0147】
また、信頼度は、計測画素数に対するBモード画像上の計測ROIに含まれる領域において所定の輝度値より低い輝度値に関する画素数を、非構造物面積比として計算されてもよい。Bモードデータを用いて信頼度を計算した場合、制御回路29は、信頼度の計算に用いられたBモードデータを用いて、ゲイン逆補正機能295、音場特性補正機能297および解析機能299により、減衰定数データを生成する。
【0148】
制御回路29は、信頼度と信頼性判定閾値とを比較することにより、計測ROIに関する代表値に対する信頼性を判定する。具体的には、制御回路29は、信頼度が信頼性判定閾値より大きい場合、計測ROIにおける代表値の計測が適切であると判定する。制御回路29は、信頼度が信頼性判定閾値以下である場合、計測ROIにおける代表値の計測が不適であると判定する。
【0149】
計測ROIにおける代表値の計測が適切であると判定された場合、制御回路29は、計測ROI内の複数の位置各々における減衰量に基づいて、計測ROI内における減衰量の代表値を計算する。具体的には、制御回路29は、計測ROIに含まれる複数の減衰定数に基づいて、減衰定数の平均値、中央値、最頻値等の代表値を計算する。なお、制御回路29は、減衰データにおける計測ROIの平均値を深さ方向に沿って微分した微分値(以下、平均微分値と呼ぶ)を用いて、代表値を計算してもよい。このとき、例えば、以下のような計算手順となる。
【0150】
まず、制御回路29は、減衰データにおいて計測ROIに含まれる複数の走査線(以下、計測走査線と呼ぶ)に沿った複数の画素値を平均することにより、計測平均値を生成する。次いで、制御回路29は、超音波プローブ3が被検体Pの体表面に当接された当接面と計測ROIとの間における計測走査線に沿った複数の画素値を平均することにより、ROI上方平均値を生成する。制御回路29は、ROI上方平均値から計測平均値を差分した値を、計測走査線の中心線に沿った計測ROIの厚みで除算する。この除算による値が、上記平均微分値に相当する。最後に、制御回路29は、平均微分値に対して超音波の往復分を加味して1/2を乗算した値を減衰定量用超音波の送信中心周波数で除算することにより、代表値を算出する。
【0151】
なお、制御回路29は、計測ROIより深部の領域であって計測走査線に沿った複数の画素値を平均することにより、ROI下方平均値を生成してもよい。このとき、制御回路29は、計測平均値からROI下方平均値を差分した値を、計測走査線の中心線に沿った計測ROIの厚みで除算する。この除算による値が、上記平均微分値に相当する。
【0152】
制御回路29は、モニタ7における計測結果表示領域に代表値を表示させるように、画像合成回路23またはモニタ7を制御する。計測結果表示領域とは、モニタ7における画像の表示領域のうち、計測ROIが重畳された減衰重畳画像の表示領域とは異なる領域である。モニタ7は、計測ROIが重畳された減衰重畳画像の表示に加えて、代表値と計測ROIの名称とを、計測結果表示領域に表示する。
【0153】
計測ROIにおける代表値の計測が不適であると判定された場合、制御回路29は、計測結果表示領域に所定の通知を表示させるように、画像合成回路23またはモニタ7を制御する。モニタ7は、計測ROIが重畳された減衰重畳画像の表示に加えて、所定の通知と計測ROIの名称とを、計測結果表示領域に表示する。
【0154】
図7は、計測ROI1における代表値の計測が適切であると判定され、計測ROI2における代表値の計測が不適であると判定された場合において、計測ROIの名称に対応する代表値および所定の通知と、計測ROIが重畳された減衰重畳画像とがモニタ7に表示される一例を示す図である。
【0155】
図7に示すように、計測ROI1は、一様な肝臓の実質を含む領域上に設定され、計測ROI1内では減衰定量画像が表示されている。このような場合には、計測ROI1内には構造物がほとんど存在しないため、計測ROI1内において精度よく減衰定数を算出することができる。このため、
図7に示すように、計測結果表示領域MDRには、計測ROIの名称とともに算出された代表値が表示される。
【0156】
一方、
図7に示すように、計測ROI2は、血管領域を含む領域に設定され、計測ROI2内では過半数の領域で減衰定量画像が表示されていない。このような場合には、計測ROI2において精度よく減衰定数を算出することができないため、代表値は算出されない。このため、
図7に示すように、計測結果表示領域MDRには、計測ROIの名称とともに、所定の通知「Not appropriate!」(不適)が表示される。
【0157】
(代表値計算機能)
代表値計算機能とは、計測ROIにおける減衰定数の代表値の信頼性を判定し、判定結果に応じて代表値を計算して表示する機能である。代表値計算機能は、上述した設定機能291、解析機能299および表示機能を包括的に実現する機能を有する。なお、代表値計算機能を実現する制御回路29(プロセッサ)は、代表値計算部として機能してもよい。
【0158】
図8は、本応用例に係る代表値計算機能に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、
図5におけるフローチャートまたは
図6におけるフローチャートの続きとして実行される処理手順である。
【0159】
計測開始指示が入力装置5により入力される(ステップSc1)。計測開始指示の入力に応答して、モニタ7に表示された減衰重畳画像上に、計測ROIが表示される。確定指示の入力に応答して、減衰重畳画像上に、計測ROIが設定される(ステップSc2)。設定された計測ROI内において構造物が占める面積の割合(構造物面積比)割合が算出される(ステップSc3)。構造物面積比に基づいて信頼度が決定される(ステップSc4)。
【0160】
信頼度が信頼性判定閾値より大きければ(ステップSc5)、計測ROIにおける減衰定数の代表値が算出される(ステップSc6)。次いで、計測結果表示領域に代表値が表示される(ステップSc7)。信頼度が信頼性判定閾値より小さければ(ステップSc5)、計測結果表示領域に計測不可であることを示す通知が表示される(ステップSc8)。計測ROIが設定されるごとに、ステップSc3乃至ステップSc8の処理が繰り返される。なお、複数の計測ROIが減衰重畳画像上に設定された場合、複数の計測ROI各々に対して、ステップSc3乃至ステップSc8の処理が繰り返される。
【0161】
以上に述べた構成によれば、本実施形態および本変形例に係る効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本応用例に係る超音波診断装置1によれば、操作者により指定された計測ROIにおける減衰量の代表値を表示する際、計測ROIに含まれる構造物が多い場合および計測ROIに含まれる構造物が大きい場合、すなわち計測ROIにおける組織性状を示す数値の代表値の信頼性を示す信頼度が信頼性判定閾値より小さい場合、代表値を表示せずに、計測不可と表示することができる。すなわち、本応用例に係る超音波診断装置1によれば、計測ROI内に含まれる構造物が多い場合や大きい場合は、計測ROIにおける減衰定数の代表値は信頼できないとして表示せず、計測ROIを再設定するように、操作者を促すことが可能となる。
【0162】
以上のことから、本応用例に係る超音波診断装置1によれば、信頼性のある定量結果(組織性状を示す減衰定数などの代表値)が表示されるため、表示された代表値が妥当か否かを操作者が判断する必要がなく、操作者の時間的・精神的な負担が軽減し、加えて、組織性状の計測の再現性や精度を向上させることができる。
【0163】
(第2の応用例)
第1の応用例との相違は、計測ROI内における構造物の有無または構造物の面積等に応じた信頼度によらずに計測ROIに対応する代表値を計算し、計測ROIに対応する信頼度と代表値とを表示することにある。
【0164】
記憶回路25は、信頼度をランク付けするための少なくとも一つの閾値(以下、ランク閾値と呼ぶ)を記憶する。ランク閾値の数は、ランクの数より1小さい。記憶回路25は、信頼度のランク付けに関するプログラム(以下、ランク付けプログラムと呼ぶ)を記憶する。なお、信頼度そのものを表示する場合には、ランク閾値およびはランク付けプログラム不要となる。
【0165】
解析機能299を実現する制御回路29は、信頼度によらずに代表値を計算する。制御回路29は、計測ROIに対応する信頼度を算出する。制御回路29は、ランク閾値とランク付けプログラムを、記憶回路25から読み出す。制御回路29は、ランク付けプログラムしたがって、信頼度とランク閾値とを比較することにより、信頼度をランク付けする。以下、説明を簡単にするために、ランク閾値は2つ(以下、高ランク閾値および低ランク閾値と呼ぶ)であるものとする。このとき、ランクの数は、3(例えば、A、B,Cの3ランク)となる。なお、ランク閾値の数は、2に限定されない。すなわち、ランクの数は、3に限定されず、任意に設定可能である。
【0166】
制御回路29は、信頼度が高ランク閾値より大きい場合、計測ROIに関する信頼度のランクを、「A」として決定する。制御回路29は、信頼度が高ランク閾値以下であって低ランク閾値より大きい場合、計測ROIに関する信頼度のランクを、「B」として決定する。制御回路29は、信頼度が低ランク閾値以下である場合、計測ROIに関する信頼度のランクを、「C」として決定する。制御回路29は、決定したランクを、信頼度に関連する計測ROIに対応付けて、記憶回路25に記憶させる。制御回路29は、モニタ7における計測結果表示領域に代表値とランクとを表示させるように、画像合成回路23またはモニタ7を制御する。
【0167】
モニタ7は、計測ROIが重畳された減衰重畳画像の表示に加えて、代表値とランクと計測ROIの名称とを、計測結果表示領域に表示する。なお、モニタ7は、信頼度そのものを、代表値および計測ROIの名称とともに計測結果表示領域に表示してもよい。このとき、モニタ7は、例えば、式(2)で計算された分散比、または非構造物面積比、1から構造物面積比を差分した差分値などを、信頼度として表示する。
【0168】
図9は、計測ROIの名称に対応する代表値および信頼度のランクと、計測ROIが重畳された減衰重畳画像とがモニタ7に表示される一例を示す図である。
図9は、信頼度を、A、B、Cと三段階で表示する例を示している。
図9に示すように、計測ROI1は、一様な肝臓の実質を含む領域上に設定され、計測ROI1内では減衰定量画像が表示されている。このような場合には、計測ROI1内には構造物がほとんど存在しないため、信頼度のランクは、Aとして決定され、計測ROI1に関する代表値とともに計測結果表示領域MDRに表示される。
【0169】
図9に示すように、計測ROI2は、血管領域を含む領域に設定され、計測ROI2内では過半数の領域で減衰定量画像が表示されていない。このような場合には、計測ROI2における過半数の領域において構造物が存在するため、信頼度のランクは、Cとして決定され、計測ROI2に関する代表値とともに計測結果表示領域MDRに表示される。
【0170】
(信頼度表示機能)
信頼度表示機能とは、信頼度もしくは信頼度のランクを、計測ROI内における構造物の有無または構造物の面積等に応じた信頼度によらずに計算された代表値とともに、計測結果表示領域MDRに表示する機能である。信頼度表示機能は、第1の応用例における設定機能291、解析機能299および表示機能を包括的に実現する機能を有する。
【0171】
図10は、本応用例に係る信頼度表示機能に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10に示すフローチャートは、
図5におけるフローチャートまたは
図6におけるフローチャートの続きとして実行される処理手順である。ステップSd1乃至ステップSd4、およびステップSd6の処理は、
図8におけるステップSc1乃至ステップSc4、およびステップSc6の処理とそれぞれ同様なため、説明は省略する。
【0172】
ステップSd4の処理の後、信頼度とランク閾値とを比較することにより、信頼度のランクが決定される(ステップSd5)。なお、信頼度そのものを代表値とともに表示する場合には、ステップSd5の処理は不要となる。
【0173】
ステップSd6の処理の後、計測結果表示領域に減衰定数の代表値と信頼度のランクとが、計測ROIの名称とともに表示される(ステップSd7)。計測ROIが設定されるごとに、ステップSd3乃至ステップSd7の処理が繰り返される。なお、複数の計測ROIが減衰重畳画像上に設定された場合、複数の計測ROI各々に対して、ステップSd3乃至ステップSd6の処理が繰り返され、複数の計測ROIにそれぞれ対応する複数の代表値および複数のランクが、計測結果表示領域に一覧表示される。
【0174】
以上に述べた構成によれば、本実施形態および本変形例に係る効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本応用例に係る超音波診断装置1によれば、計測ROIに含まれる減衰量の代表値を表示する際、計測ROIに含まれる構造物の大きさや程度に対応する信頼度を併せて表示することができる。すなわち、本応用例に係る超音波診断装置1によれば、計測ROIにおいて対象組織の組織性状によって信頼性のある結果が得られる場所がほとんど見つからない場合においても、何らかの定量結果(代表値)を得ることができる。例えば、線維化が進行した症例などの肝臓全体が不均一になっている症例などでは、どの場所においても減衰定量結果(代表値)を、信頼度とともに表示することができる。
【0175】
以上のことから、本応用例に係る超音波診断装置1によれば、定量結果の信頼性の程度を表示することができるため、操作者は、安心して、定量結果を参考情報として参照して、診断に用いることができる。
【0176】
(第3の応用例)
本実施形態、本変形例、第1の応用例および第2の応用例との相違は、医用診断装置として、MRI装置を適用することにある。不図示のMRI装置における計算機は、画像生成回路19、画像メモリ21、画像合成回路23、記憶回路25、インターフェース回路27、制御回路29、不図示のシーケンサ等を有する。計算機には、入力装置5、モニタ7等が接続される。
【0177】
計算機における制御回路29は、上述したように、各種機能を実行する。計算機における記憶回路25は、制御回路29で実行される各種機能に関するプログラムなどの各種データを記憶する。
【0178】
本応用例における推定機能293を実現する制御回路29は、磁気共鳴現象を利用したMRスキャンにより得られたデータ(以下、MRデータと呼ぶ)に基づいて、MRスキャンに対応する断面において、上述したように構造物の位置を推定する。
【0179】
本応用例における解析機能299を実現する制御回路29は、核磁気共鳴現象を利用したMRスキャンにより得られたデータに基づいて、断面において推定機能293により推定された構造物の位置を除く被検体内の複数位置の組織性状を解析する。本応用例における組織性状とは、例えば、減衰量、弾性率(ヤング率)、粘性率、歪みなどの診断対象組織の性状を示す量である。本応用例において、例えば、組織性状は、MRエラストグラフィー(MR elastography:MRE)により取得される。このとき、組織性状の解析に関するデータは、MREスキャンにより得られたMREデータに対応する。
【0180】
以下、説明を簡単にするために、MREは、被検体Pの外部に設けられた非磁性な加振機構による振動に基づき、被検体Pの内部を伝播する波を、プロトンの位相を画像化した位相画像を用いて観測するエラストグラフィー法とする。
【0181】
計算機における画像生成回路19は、被検体Pに対してシーケンサによる制御のもとで実行されたMRスキャンにより取得されたMRデータに基づいて、MR画像を生成する。また、画像生成回路19は、被検体Pに対してシーケンサによる制御のもとで実行されたMREスキャンにより取得されたMREデータに基づいて、MRE画像を生成する。MR画像またはMRE画像は、設定機能291、推定機能293に用いられる。また、MRE画像は、解析機能299に用いられる。
【0182】
本応用例においてモニタ7に表示される減衰重畳画像は、
図4における背景画像がMR画像であって、減衰定量画像がMRE画像に対応する。本応用例に係る構造物推定機能および組織性状解析機能に関する処理手順は、ほぼ
図5と同様なため、異なる処理について説明する。なお、MR画像とMRE画像は、重畳表示されず、個別に表示されても良い。
【0183】
本応用例において、
図5のステップSa2に対応する処理は、MRデータを収集するための撮像シーケンスにしたがって被検体Pに対してMRスキャンを実行する処理となる。本応用例において、
図5のステップSa3に対応する処理は、MREデータを収集するための撮像シーケンスにしたがって被検体に対してMREスキャンを実行する処理となる。
【0184】
本応用例において、
図5のステップSa4に対応する処理は、MREデータに基づいて構造物の位置を推定する処理となる。本応用例において、
図5のステップSa5に対応する処理は、構造物の位置を除く複数の位置におけるMREデータに基づいて減衰定数を計算する処理となる。
【0185】
本応用例において、
図5のステップSa7に対応する処理は、MR画像を生成する処理となる。本応用例において、
図5のステップSa8に対応する処理は、MR画像に減衰定量画像を重畳して表示する処理となる。
【0186】
なお、本応用例に係るMRI装置によれば、本実施形態における変形例、第1の応用例、および第2の応用例についても同様に実行することができる。
【0187】
以上に述べた構成によれば、本実施形態および本変形例に係る効果と同様に、以下の効果を得ることができる。
本応用例に係るMRI装置によれば、構造物の有無を判定することにより、組織性状を非構造物領域に関して表示することができる。すなわち、本MRI装置によれば、組織性状をカラー画像として表示する際、構造物ありと判定された領域ではカラー非表示となり、背景のMR画像を表示することができる。あるいは、本MRI装置によれば、組織性状をカラー画像として表示する際、構造物ありと判定された領域では、カラー画像とは異なる所定の色相でマスクして組織性状を表示することができる。
【0188】
以上のことから、本応用例に係るMRI装置によれば、表示された画像や組織性状の解析結果の数値が妥当であるか否かを操作者が判断することなく、推定された構造物の位置を除く領域において信頼性のある解析結果が表示されるため、得られた解析結果の精度や再現性などが向上させることができる。加えて、本応用例に係るMRIによれば、解析結果の表示画像において、表示された画像が妥当であるか否かという判断を操作者が判断する必要がないため、操作者にとって、時間的・精神的な負担を軽減させることでき、診断精度を向上させることができる。
【0189】
加えて、実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0190】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。