(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、インクが初めて前記インクジェットヘッドに充填された場合若しくはインクカートリッジが交換された場合に、前記供給室内の圧力と、前記回収室内の圧力と、の差が最大となるように前記駆動波形を制御する請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のインクジェットプリンタを、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、筐体2内に送りテーブル3と、キャリッジ4と、メンテナンスユニット5と、制御部10と、を備える。なお、
図1の紙面における上下方向を、以降は特に断りなく上下方向と記す。
送りテーブル3は、筐体2内に設置された送り用ガイドレール6にスライド可能に保持されている。送り用ガイドレール6は、略水平方向に直線状に延びている。送りテーブル3は、図示しない送りモータによって、送り用ガイドレール6に沿う方向に移動される。また、送りテーブル3には、負圧発生装置7が取り付けられている。負圧発生装置7は、枚葉紙等のシート状の記録媒体Sを送りテーブル3上に吸着固定する。
送りテーブル3、送り用ガイドレール6、前記送りモータ、及び負圧発生装置7は、搬送部8を構成する。搬送部8は、記録媒体Sを後述するインクジェットヘッド16に搬送する。なお、記録媒体Sは、紙に限らず、樹脂や金属のフィルム、木材の板等であってもよい。
【0009】
キャリッジ4は、筐体2内に設置された図示しない走査用ガイドレールにスライド可能に保持されている。走査用ガイドレールは、送り用ガイドレール6と直交する略水平方向に直線状に延びている。キャリッジ4は、搬送ベルト9により、走査用ガイドレールに沿う方向に移動される。搬送ベルト9は、図示しないキャリッジモータによって駆動される。
キャリッジ4には、キャリッジ4の走査方向に沿って配列された複数のインクジェットユニット15が搭載されている。インクジェットユニット15は、キャリッジ4とともに走査用ガイドレールに沿って移動する。
【0010】
キャリッジ4には、記録媒体Sに噴射するインクIの種類に応じた数のインクジェットユニット15が搭載される。各インクジェットユニット15から噴射するインクIは、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック、ホワイト等の色の異なるものを用いることができる。インクIとしては、この他に、透明の光沢インクや、赤外線又は紫外線を照射したときに発色する特殊インク等を用いることができる。
【0011】
図1及び
図2に示すように、インクジェットユニット15は、循環式のインクジェットヘッド16と、インク循環装置17と、を備える。インクジェットヘッド16はインクIを記録媒体Sに吐出する。インク循環装置17は、インクジェットヘッド16の上側に配置されている。インク循環装置17は、接続部40を介してインクジェットヘッド16に接続され、インクジェットヘッド16内のインクを循環させる。接続部40は、インク供給管52及びインク戻し管53を有する。
図3に示すように、インクジェットヘッド16とインク循環装置17は制御部10に電気的に接続され、制御部10に制御される。
図2に示すように、インク循環装置17には、補給口28aが備えられている。補給口28aには、不図示の可撓性のチューブを介して、不図示のインクカートリッジに接続されている。これらのインクカートリッジは、筐体2内に設置されている。
【0012】
各インクジェットヘッド16は、記録媒体SにインクIを噴射する図示しない複数のノズル部と、各ノズル部に対向して配置された図示しないアクチュエータと、を備えている。アクチュエータは、例えば、圧電セラミックを用いた圧電振動板等によって構成されている。制御部10がアクチュエータに信号を入力すると、アクチュエータがインクIの圧力を高め、各ノズル部からインクIが噴射される。この噴射されたインクIにより、記録媒体Sが印刷される。
【0013】
メンテナンスユニット5は、複数のインクジェットユニット15がキャリッジ4とともにインクジェットヘッド16からインクIの噴射を行わない待機位置に戻ったときに、各インクジェットヘッド16のインクIの噴射部を覆ってインクIの蒸発を防止する。また、メンテナンスユニット5は、複数のインクジェットユニット15が待機位置に戻ったときに、インクジェットヘッド16の記録媒体Sとの接触部を適宜清掃する。
【0014】
図3に示すように、前記送りモータ、負圧発生装置7、メンテナンスユニット5は、制御部10に電気的に接続され、制御部10に制御される。
【0015】
(インクの流路)
インク循環装置17は、インク供給管52を介してインクジェットヘッド16へとインクを供給する。インクジェットヘッド16で吐出されなかったインクは、インク戻し管53を介してインク循環装置17に回収される。
図4に示すように、インク循環装置17は、ケーシング21A、21B、21Cと、ベースプレート34と、圧電ポンプである圧電振動板36A、36Bと、弁体38A、38B、39A、39Bと、を備えている。
ケーシング21A、21B、21Cは、例えばアルミニウムを金型鋳造(ダイキャスティング)することで形成されている。
ケーシング21A、21B、21Cが組み合わされて、
図4に示す供給室22、回収室23、供給ポンプ収容室24、循環ポンプ収容室25、インク室26、連通路27、補給路28、及び流入口29が形成される。以降、ケーシング21A、21B、21Cが組み合わされたものを単にケーシング21と記す。
【0016】
図4に示すように、補給路28の一端部は、ケーシング21の外面に設けられた補給口28aの管路となって、ケーシング21の外部に開口している。補給路28と供給ポンプ収容室24とは、補給路28と供給ポンプ収容室24とを仕切る壁部を貫通する流通孔24aを介して連通している。この壁部に、公知の逆止弁である弁体38Aが取付けられている。弁体38Aは、流通孔24aを開閉することで、流通孔24aを通して補給路28から供給ポンプ収容室24へのインクIの流れを許容し、供給ポンプ収容室24から補給路28へのインクIの流れを規制する。
【0017】
供給ポンプ収容室24とインク室26とは、供給ポンプ収容室24とインク室26とを仕切る壁部を貫通する流通孔24bを介して連通している。この壁部に、弁体38Bが取付けられている。弁体38Bは、流通孔24bを開閉することで、流通孔24bを通して供給ポンプ収容室24からインク室26へのインクIの流れを許容し、インク室26から供給ポンプ収容室24へのインクIの流れを規制する。
【0018】
インク室26と連通路27とは、フィルタ30を介して連通している。フィルタ30は、インク室26から連通路27へと通過するインクに混入している異物や気泡をトラップする。連通路27は、供給室22に連通する。供給室22は
図2に示すインク供給管52の上端部に連通する。インク供給管52の下端部はインクジェットヘッド16の各ノズル部に連通する。各ノズル部はインク戻し管53の下端部に連通する。インク戻し管53の上端部は
図4に示す回収室23に連通する。回収室23は、流入口29に連通する。
【0019】
流入口29と循環ポンプ収容室25とは、流入口29と循環ポンプ収容室25とを仕切る壁部を貫通する流通孔25aを介して連通している。この壁部に、弁体39Aが取付けられている。弁体39Aは、流通孔25aを開閉することで、流通孔25aを通して流入口29から循環ポンプ収容室25へのインクIの流れを許容し、循環ポンプ収容室25から流入口29へのインクIの流れを規制する。
循環ポンプ収容室25とインク室26とは、循環ポンプ収容室25とインク室26とを仕切る壁部を貫通する流通孔25bを介して連通する。この壁部に、弁体39Bが取付けられている。弁体39Bは、流通孔25bを開閉することで、流通孔25bを通して循環ポンプ収容室25からインク室26へのインクIの流れを許容し、インク室26から循環ポンプ収容室25へのインクIの流れを規制する。
【0020】
(ポンプ)
圧電振動板36A及び圧電振動板36Bはそれぞれ、圧電素子と金属板を備えている。
圧電素子としては、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の上下面にNi/Auメッキ電極を施し、分極処理によって圧電性を与えたものを用いることができる。金属板としては、例えば黄銅を用いることができる。
図4に示すように、圧電振動板36A、36Bは平板状に形成され、厚さ方向の両側に移動可能にベースプレート34に固定されている。ベースプレート34は、ケーシング21A、21Cに挟持されている。圧電振動板36A、36Bは、ベースプレート34のケーシング21C側の面に取り付けられている。
【0021】
圧電振動板36Aは、循環ポンプ収容室25内に圧電振動板36Aの厚さ方向の両側に移動可能となるように取付けられている。圧電振動板36Aと、ベースプレート34との間には循環用圧力室25cが形成されている。循環用圧力室25cは、流通孔25a、25bと連通する。圧電振動板36Aは、循環用圧力室25cの壁面の一部を構成する。圧電振動板36Aと、循環用圧力室25cと、弁体39A、39Bと、により、循環ポンプ48が構成される。
【0022】
同様に、圧電振動板36Bは、供給ポンプ収容室24内に圧電振動板36Bの厚さ方向の両側に移動可能となるように取付けられている。圧電振動板36Bと、ベースプレート34との間には供給用圧力室24cが形成されている。供給用圧力室24cは、流通孔24a、24bと連通する。圧電振動板36Bは、供給用圧力室24cの壁面の一部を構成する。圧電振動板36Bと、供給用圧力室24cと、弁体38A、38Bと、により、供給ポンプ49が構成される。
【0023】
なお、本実施形態では循環用圧力室25cに2つの流通孔25a、25bが連通するが、循環用圧力室25cに連通する流通孔の数は特に限定されず、3つ以上でもよい。供給用圧力室24cについても同様である。
また、インク循環装置17は、弁体38B、39Bを備えなくてもよい。このように構成しても、インクIを一方向にのみ流すことができるからである。
【0024】
(センサ)
図4に示すように、供給室22内には、供給室22内のインクIの液面を検出する公知の液面センサ31Bが取付けられている。回収室23内には、回収室23内のインクIの液面を検出する公知の液面センサ31Aが取付けられている。
液面センサ31A、31Bは、制御部10に接続され、インクIの液面の検出結果を制御部10に送信する。
【0025】
図2に示すように、インク循環装置17には、圧力センサ32及び圧力調整部33が取付けられている。圧力センサ32は、2つの圧力検出部32A、32B(
図3参照)を有する。図示はしないが、供給室22のインクIの液面の上部と、回収室23のインクIの液面の上部とは、それぞれ空気室になっている。圧力検出部32Aは、供給室22の空気室と連通していて、供給室22内の圧力を検出する。同様に、圧力検出部32Bは、回収室23の空気室と連通していて、回収室23内の圧力を検出する。
図3に示すように、圧力センサ32は、制御部10に電気的に接続されている。圧力センサ32は、圧力検出部32Aが検出した供給室22内の空気圧と、圧力検出部32Bが検出した回収室23内の空気圧と、を検出する。そして供給室22内の空気圧および回収室23内の空気圧の検出値をそれぞれ電気信号として制御部10に出力する。なお、圧力センサ32は1チップに2つの圧力検出部32A、32Bを有し、供給室22内及び回収室23内の圧力をそれぞれ検出することができる。
圧力調整部33は、圧力センサ32の検出値に基づいて、インクジェットヘッド16の各ノズル部の面圧を適正に保つように、ケーシング21内部の圧力を調整する。
【0026】
ケーシング21の外部には、不図示のヒータ51が設けられている。ヒータ51は、ケーシング21内のインクIを加熱してインク粘度を調整する。ヒータ51はケーシング21に熱伝導性の高い接着剤で貼り付けられている。ケーシング21におけるヒータ51の近傍には、インク温度センサ50が取り付けられている。
図3に示すように、インク温度センサ50およびヒータ51は制御部10に電気的に接続されている。
【0027】
(制御部)
図3に示すように、制御部10はマイクロコンピュータ11と、メモリ11aと、AD変換回路11bと、駆動回路12a〜12hと、を有している。また、マイクロコンピュータ11は図示しない演算回路等を有している。メモリ11aには、マイクロコンピュータ11の制御プログラムや、圧電振動板36A、36Bに印加する交流電流のパラメータ表(
図8参照)等が記憶されている。
駆動回路12aは、圧電振動板36Aに印加する交流電流を生成する。駆動回路12aは、圧電振動板36Aに電気的に接続され、圧電振動板36Aを制御する。
駆動回路12bは、圧電振動板36Bに印加する交流電流を生成する。駆動回路12bは、圧電振動板36Bに電気的に接続され、圧電振動板36Bを制御する。
AD変換回路11bは、インク温度センサ50及び液面センサ31A、31Bから送信されたアナログ波形による電圧信号をデジタル波形に変換し、マイクロコンピュータ11に送信する。
インクジェットプリンタ1はユーザが操作するキーボード60を備えており、キーボード60は制御部10にユーザの操作に基づいた信号を送信する。
【0028】
次に、以上のように構成されたインクジェットプリンタ1の作用について説明する。
マイクロコンピュータ11は、インクジェットヘッド16のアクチュエータを適宜制御して各ノズル部からインクIを噴射させ、記録媒体Sに印刷させる。インクジェットユニット15内のインクIが減少すると、インクIが減少したことが例えば液面センサ31A、31Bにより検出され、検出結果が制御部10に送信される。すると、マイクロコンピュータ11は、駆動回路12bにより供給ポンプ49の圧電振動板36Bを駆動させる。駆動回路12bが圧電振動板36Bに交流電流を印加すると、圧電振動板36Bが厚さ方向に移動し、供給用圧力室24cの容積が増減する。供給用圧力室24cの容積が増えると、弁体38Aが移動して流通孔24aが開き、補給路28から供給用圧力室24cへとインクIが流入する。このとき、弁体38Bにより流通孔24bは閉じられる。供給用圧力室24cの容積が減ると、弁体38Bが移動して流通孔24bが開き、
図4の矢印A2に示すように供給用圧力室24cからインク室26へとインクIが流入する。
【0029】
インクIが流通孔24aから吸引されることで、前記インクカートリッジから前記接続チューブ及び補給路28を介して供給用圧力室24c内にインクIが供給される。
一方で、流通孔24bから吐出されたインクIは、インク室26を通りフィルタ30を通過した後で、連通路27を通り供給室22内に流入する。そして、矢印A1に示したインクIと合流する。
上記の動作を繰り返すことにより、供給ポンプ49は、先述のインクカートリッジからインク循環装置17内にインクIを供給する。
【0030】
このように、供給ポンプ49により、外部のインクカートリッジからインク循環装置17内にインクIを供給する。インクジェットユニット15内のインクIが一定以上の量になると、インクIの量が一定以上になったことが液面センサ31A、31Bにより検出され、制御部10に送信される。すると、マイクロコンピュータ11は、駆動回路12bによる供給ポンプ49の圧電振動板36Bの駆動を停止させる。
【0031】
一方、マイクロコンピュータ11は、駆動回路12aにより循環ポンプ48の圧電振動板36Aを駆動させる。
図9(a)は、駆動回路12aが生成して圧電振動板36Aに印加する交流電流の一例を示している。
図9(a)中のV1は、駆動回路12aにより圧電振動板36Aの圧電素子に出力されるパルス電圧である。
図9(a)中のV2は、駆動回路12aにより圧電振動板36Aの金属板に出力されるパルス電圧である。
図9(a)中のA−Bは、駆動回路12aから圧電振動板36Aの圧電素子と金属板とに出力される駆動電圧を合成した駆動電圧波形を示している。
【0032】
駆動回路12aが、圧電振動板36Aに
図9(a)のような交流電流を印加すると、圧電振動板36Aが厚さ方向に移動し、循環用圧力室25cの容積が増減する。循環用圧力室25cの容積が増えると、弁体39Aが移動して流通孔25aが開き、流入口29から循環用圧力室25cへとインクIが流入する。このとき、弁体39Bにより流通孔25bは閉じられる。循環用圧力室25cの容積が減ると、弁体39Bが移動して流通孔25bが開き、循環用圧力室25cからインク室26へとインクIが流入する。そして、インクIは連通路27及び供給室22を介してインクジェットヘッド16に供給される。インクジェットヘッド16に供給されたインクIのうち、ノズル孔から吐出されなかったインクIは、インク戻し管53及び回収室23を介して流入口29に戻される。
【0033】
インクIの流れ整理すると、循環ポンプ48が作動することにより、インクIは流入口29から流通孔25aを介して循環用圧力室25cに流入する。そして、インクIは流通孔25b、インク室26、連通路27、供給室22、インク供給管52を順に通過してインクジェットヘッド16に流入する。インクジェットヘッド16で吐出されなかったインクIは、インク戻し管53、回収室23、流入口29、流通孔25aを順に通過して循環用圧力室25cに流入する。
【0034】
このようにして、インクIはインクジェットユニット15内を循環する。ここで、インクジェットヘッド16に流入するインクIは供給室22を通過する。また、インクジェットヘッド16から吐出されなかったインクIは回収室23に流入する。圧電振動板36Aは回収室23から供給室22へとインクIを輸送する。上記の動作を繰り返すことにより、循環ポンプ48は、インク循環装置17及びインクジェットヘッド16内でインクIを循環させる。
【0035】
ここで、循環ポンプ48のインク輸送量の関係について、
図5を用いて説明する。
図5に示すグラフの横軸は循環ポンプ48に印加する交流電流の駆動周波数を示す。グラフの縦軸は、循環ポンプ48によるインク輸送量を示す。グラフ中の曲線はそれぞれ物性が異なるインクを表している。ここでいうインクの物性とは、例えば粘度や比重等である。
図5に示す例では、インクα、インクβ、インクγの順に粘度が小さい。
図5に示す例では、駆動周波数とインク輸送量に相関がある。そして、インクの粘度に応じて、インク輸送量が最大となる駆動周波数が異なる。
【0036】
従来、循環用ポンプに印加する駆動周波数はプリント画質によって決定していた。一般的には、駆動周波数が小さいと循環用ポンプが生じる振動がインクジェットヘッド等に伝わりやすく、インクジェットヘッドが振動してプリント画質に影響を及ぼしやすい。
ところが、プリント画質のみによって駆動周波数を決定すると、インク輸送量に対しては最適な駆動周波数にならない場合がある。例えば、インクの物性は温度やプリンタの使用状況によって変化する。このため、プリンタの出荷時に適切な駆動周波数であったとしても、その後にインクの物性が変化してインク輸送量が低下する場合がある。インク輸送量が低下すると、インクジェットヘッドから吐出されるインクの量が不安定になる。その結果、プリント画質の低下につながるおそれがあった。
【0037】
そこで本実施形態では、インクIの物性が変化しても輸送量を確保するための最適な駆動周波数を設定できるようにする。
図6に示すグラフの横軸は、循環ポンプ48によるインク輸送量を示す。グラフの縦軸は、供給室22内の圧力と、回収室23内の圧力と、の差(以降、単に圧力差と記す)を示す。
図6に示すように、インク輸送量は圧力差に比例している。従って、圧力差が最大となる駆動周波数を設定すると、インク輸送量も最大となる。
【0038】
そこで、制御部10は、
図7に示すフローチャートにより最適な駆動周波数を設定する。
図7に示す通り、制御部10は循環ポンプ48に印加する交流電流のパラメータ(以降、単に駆動波形と記す)を調整する必要があるか否かを判断する(ステップS1)。例えば、ユーザが初めてインクIをインクジェットユニット15に充填した場合に、制御部10は駆動波形の調整が必要であると判断する。あるいは、制御部10は、インクカートリッジが交換された場合若しくはヒータ51のON/OFFの設定が変更された場合に駆動波形の調整が必要であると判断してもよい。または、制御部10は、ユーザのキーボード60の操作によって送信された信号に基づいて、駆動波形の調整が必要であると判断してもよい。
【0039】
制御部10が駆動波形の調整が必要であると判断した場合、ステップS2に進み、N=1とする。そして、駆動回路12aによる圧電振動板36Aへの駆動波形の印加を停止して、循環ポンプ48の動作を停止する(ステップS3)。そして、制御部10はメモリ11aに記憶されたパラメータ表(
図8)を参照して、Nの値に応じたパラメータ(第1実施形態では駆動周波数)を選択して設定する(ステップS4)。例えば、N=1の場合は、制御部10は駆動周波数を10Hzに設定する。なお、
図8に記載した駆動周波数は一例であり、適宜変更してもよい。
【0040】
次に、制御部10はステップS4で設定した駆動周波数に基づいた駆動波形を駆動回路12aにより生成して、圧電振動板36Aに印加する。これにより、循環ポンプ48の動作が開始する(ステップS5)。
そして、制御部10は圧力センサ32が検知した供給室22内及び回収室23内の圧力をそれぞれ取得し(ステップS6)、圧力差を算出する(ステップS7)。
【0041】
次に、制御部10はNの値が1であるか否かを判断する(ステップS8)。Nの値が1である場合、制御部10はNの値を1だけ増加する(ステップS9)。従って、N=2となる。
次に、制御部10は再び循環ポンプ48の動作を停止する(ステップS3)。そして、制御部10はN=2の値に応じた駆動周波数である20Hz(
図8参照)を選択して設定する(ステップS4)。
【0042】
次に、ステップS5〜S7を経て、制御部10はNの値が1であるか否かを判断する。Nの値が1ではない場合、制御部10は前回取得した圧力差と今回取得した圧力差とを比較する(ステップS8)。圧力差が前回よりも今回の方が大きかった場合には、制御部10はNの値をさらに1だけ増加する(ステップS9)。
【0043】
以降、制御部10はステップS3〜S9を繰り返し実行する。すると、圧電振動板36Aに印加される駆動波形の周波数が徐々に増加する。駆動周波数を増加させると、
図9(a)に示す駆動波形から
図9(b)に示す駆動波形のように波形が変化していく。
そして、ステップS8において前回の圧力差よりも今回の圧力差が大きくなかった場合には、ステップS10に進む。ここで、
図5及び
図6に示すグラフは、前回の圧力差よりも今回の圧力差が大きくなかった場合には、圧力差が最大値であることを示す。したがって、そのときの駆動周波数はインク輸送量が最大値となる最適な周波数である。なお、圧力差の変化の傾き(微分値)が所定範囲内にある場合の駆動周波数を、インク輸送量が最大値となる最適な駆動周波数と規定してもよい。
前回の圧力差よりも今回の圧力差が大きくなかった場合には、制御部10はそのときのNの値に基づいた駆動周波数を、デフォルト値として設定する(ステップS10)。
【0044】
上記のように、制御部10は、駆動周波数を徐々に変化させて循環ポンプ48を動作させ、圧力差の増加が止まったときの駆動周波数を取得し、デフォルト値に設定する。これにより、制御部10は圧力センサ32が検出した検出値に基づいて、圧力差が最大となる最適な駆動周波数を設定することが可能となる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によるインクジェットプリンタ1の制御部10は、圧電振動板36Aに印加する駆動波形の駆動周波数を変化させる。そして、制御部10は、供給室22内の圧力と、回収室23内の圧力と、の差が最大となるように、駆動回路12aが生成する駆動波形の駆動周波数を制御する。これにより、インクIの物性に応じた最適な駆動周波数を設定して、循環ポンプ48によるインクIの輸送量を大きくすることができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
第1実施形態では駆動波形の駆動周波数を変化させたが、本実施形態では圧電振動板36Aの圧電素子及び金属板に印加する電圧を変化させる。
図5に示したインクIの物性と輸送量の関係は、駆動波形の電圧にも相関がある。このため、制御部10は、駆動波形の電圧を変化させることにより最適な電圧値を取得することができる。
【0047】
本実施形態における制御部10のメモリ11aは、
図8に示すようなパラメータ表に代えて、Nの値に対応する電圧の値を定めたパラメータ表を記憶している。
本実施形態における駆動回路12aでは、N=1の場合には、例えば
図10(a)に示すような駆動波形を生成する。
図10(a)に示す駆動波形では、V1の値とV2の値との大きさが同等である。そして、Nの値を増加させると、
図10(b)に示すようにV1の値及びV2の値が変化していく。
【0048】
制御部10は、Nの値に応じて駆動波形の電圧を変化させながら、ステップS2及びステップS3〜S9のループを実行する。そして、ステップS8において前回の圧力差よりも今回の圧力差が大きくなかった場合には、そのときのNの値に基づいた電圧をデフォルト値として設定する(ステップS10)。
【0049】
上記のように、制御部10は、駆動波形の電圧を徐々に変化させて循環ポンプ48を動作させ、圧力差の増加が止まったときの電圧を取得し、デフォルト値に設定する。このようにして、制御部10は圧力差が最大となる最適な電圧を設定することが可能となる。これにより、インクIの物性に応じた最適な電圧を設定して、循環ポンプ48によるインクIの輸送量を大きくすることができる。
【0050】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
第1実施形態では駆動波形の駆動周波数を変化させたが、本実施形態では圧電振動板36Aに印加する駆動波形の立ち上がりカーブを変化させる。
図5に示したインクIの物性と輸送量の関係は、駆動波形の立ち上がりカーブにも相関がある。このため、駆動波形の立ち上がりカーブを変化させることにより、最適な立ち上がりカーブを取得することができる。
【0051】
本実施形態の制御部10は、圧電振動板36Aに印加する駆動波形を、例えば
図11(a)に示す波形から
図11(b)に示す波形のように変化させる。
図11(b)に示す波形では、時刻t1において圧電振動板36Aの圧電素子に電圧の印加を開始している。そして、時刻t1からΔtの時間が経過した後に、電圧値が規定値であるV1に達している。圧電振動板36Aの金属板に印加する電圧に関しても同様に、時刻t2からΔtの時間が経過した後に、電圧値が規定値であるV2の値に達している。
一方、
図11(a)に示す波形では、Δtの値が0に設定されている。このため、時刻t1において圧電振動板36Aの圧電素子に電圧を印加してからすぐに電圧が規定の値であるV1に達している。圧電振動板36Aの金属板に印加する電圧に関しても同様に、時刻t2からすぐに電圧値が規定値であるV2に達している。
このように、本実施形態では駆動波形の電圧値が規定値になるまでの時間(Δt)を変化させる。
【0052】
本実施形態における制御部10のメモリ11aは、
図8に示すようなパラメータ表に代えて、Nの値に対応するΔtの値を定めたパラメータ表を記憶している。
本実施形態における駆動回路12aは、N=1の場合には、例えば
図10(a)に示すような駆動波形を生成する。
図10(a)に示す波形では、Δt=0と設定されている。そして、Nの値を増加させるとΔtの値が増加し、
図10(b)に示す波形のように立ち上がりカーブが変化していく。
【0053】
制御部10は、Nの値に応じてΔtの値を変化させながら、ステップS2及びステップS3〜S9のループを実行する。そして、ステップS8において前回の圧力差よりも今回の圧力差が大きくなかった場合には、そのときのNの値に基づいたΔtの値をデフォルト値として設定する(ステップS10)。
【0054】
上記のように、制御部10は、駆動波形の電圧値が規定値になるまでの時間(Δt)を徐々に変化させて循環ポンプ48を動作させる。そして、圧力差の増加が止まったときのΔtの値を取得し、デフォルト値に設定する。このようにして、制御部10は圧力差が最大となる最適なΔtの値を設定することが可能となる。これにより、インクIの物性に応じた最適なΔtの値を設定して、循環ポンプ48によるインクIの輸送量を大きくすることができる。
【0055】
以上述べた少なくともひとつの実施形態のインクジェットプリンタによれば、最適な駆動波形の電流を圧電アクチュエータに印加することができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えてもよい。また、上記した第1実施形態1〜第3実施形態を適宜組み合わせてもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。