特許第6734105号(P6734105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6734105
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】ロック機構
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20200728BHJP
【FI】
   E03C1/22 C
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-78756(P2016-78756)
(22)【出願日】2016年4月11日
(65)【公開番号】特開2017-190563(P2017-190563A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩平
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−017383(JP,A)
【文献】 特開2009−256883(JP,A)
【文献】 特開2009−103321(JP,A)
【文献】 特開平11−293734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/22
E03C 1/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被係合突部を有するとともに、自身の回転軸方向に沿って往復移動可能に構成され、かつ、復動方向への付勢力が付与された回転リングと、
前記回転リングの往復移動方向に対し傾斜する傾斜部を有してなる案内歯と、
前記回転リングの往復移動方向に沿って前記案内歯と対向状に設けられ、前記被係合突部が係合可能な係合歯とを備え、
前記回転リングの内側には、前記回転リングの前記往復移動方向に沿って移動又は変形可能であり、この移動又は変形に伴い所定の第一状態又は当該第一状態と異なる第二状態となるように構成された機構部が配置されるととともに、
前記回転リングに対しその往動方向へと力を加えることで、前記被係合突部が前記傾斜部に接触しつつ前記傾斜部を摺動して前記回転リングが回転し、この状態で前記回転リングに加えられていた前記往動方向への力を解除することにより、前記回転リングが前記付勢力により復動して前記係合歯に対し前記被係合突部が係合され、前記機構部が前記第一状態で保持されること、及び、
前記回転リングに対しその往動方向へと力を加えることで、前記被係合突部が前記傾斜部に接触しつつ前記傾斜部を摺動して前記回転リングが回転し、この状態で前記回転リングに加えられていた前記往動方向への力を解除することにより、前記回転リングが前記付勢力により復動して前記係合歯に対する前記被係合突部の係合が解除され、前記機構部が前記第二状態で保持されること
が交互に行われるように構成されたロック機構であって、
前記機構部が挿通されるとともに前記係合歯が自身の外周に複数突出形成されてなる円筒部を具備してなる外歯部を備え、かつ、前記案内歯が環状に複数配設されてなるベース部材と、
前記円筒部の外周側に配置されるとともに、前記往復移動方向に沿って往復移動可能であり、自身の往復移動に伴い前記機構部が移動又は変形するように構成された筒状のリング保持部材とを有し、
前記回転リングは、前記リング保持部材に対し相対回転可能である一方、前記往復移動方向に沿って相対移動不能な状態で前記リング保持部材の内周に配置されるとともに、自身の内周から前記被係合突部が前記回転軸側に突出した状態で設けられてなることを特徴とするロック機構。
【請求項2】
前記回転リングは、自身の回転軸方向に沿って前記円筒部に対し相対移動可能な状態で前記円筒部の外周に配置されており、
前記回転リングの最内周部と前記円筒部の外周との間に形成される隙間が、前記回転リングの外周と前記リング保持部材の内周との間に形成される隙間よりも小さなものとされることを特徴とする請求項1に記載のロック機構。
【請求項3】
前記リング保持部材は、
一端部の開口側内周に設けられ、内側に向けて突出する支持突部と、
前記支持突部よりも他端側の内周に設けられた段部と、
内側から外側に貫通するスリット部とを具備するとともに、
前記スリット部が拡幅するように変形することで、一端部の開口が拡径可能に構成されており、
前記回転リングは、前記支持突部及び前記段部に挟まれることで、前記リング保持部材に対し相対回転可能である一方、前記往復移動方向に沿って相対移動不能な状態とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロック機構。
【請求項4】
前記リング保持部材は、前記回転リングが内周に配置されるとともに、少なくとも一端部が開口する筒状の内側部材を有し、
前記内側部材は、
一端部の開口側内周に設けられ、内側に向けて突出する支持突部と、
前記支持突部よりも他端側の内周に設けられた段部と、
内側から外側に貫通するスリット部とを具備するとともに、
前記スリット部が拡幅するように変形することで、一端部の開口が拡径可能に構成されており、
前記回転リングは、前記支持突部及び前記段部に挟まれることで、前記リング保持部材に対し相対回転可能である一方、前記往復移動方向に沿って相対移動不能な状態とされており、
前記内側部材の外周に配置可能な筒状の外側部材が設けられており、
前記内側部材の外周に前記外側部材が配置されていない状態において、前記スリット部が拡幅するように前記内側部材を変形させることで、前記内側部材の一端部の開口を拡径可能であるとともに、
前記内側部材の外周に前記外側部材が配置された状態において、前記外側部材により、前記スリット部の拡幅が規制され、前記内側部材における一端部の開口の拡径が規制されるように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のロック機構。
【請求項5】
前記外側部材の内周には、凸状及び凹状の一方をなす被係止部が設けられ、
前記内側部材の外周には、凸状及び凹状の他方をなす係止部が設けられ、
前記外側部材の内周に前記内側部材が挿通され、前記被係止部に対し前記係止部が係止された状態となることで、前記内側部材に対し前記外側部材が取付けられており、
前記被係止部に対する前記係止部の係止は、スナップフィットにより実現されていることを特徴とする請求項4に記載のロック機構。
【請求項6】
前記ベース部材は、前記機構部が挿通される筒状の被固定部を有し、
前記外歯部は、前記被固定部とは別体の筒状部品であって、前記被固定部に取付けられており、
前記外歯部の内周には、凸状及び凹状の一方をなす第二被係止部が設けられ、
前記被固定部の外周には、凸状及び凹状の一方をなす第二係止部が設けられ、
前記外歯部の内周に前記被固定部が挿通され、前記第二被係止部に対し前記第二係止部が係止された状態となることにより、前記案内歯及び前記係合歯の相対位置関係が所定の位置関係となり、かつ、前記被固定部に対する前記外歯部の相対回転が規制された状態で、前記被固定部に対し前記外歯部が取付けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のロック機構。
【請求項7】
金属線が螺旋状に捲回されてなり、前記回転リングに対し前記付勢力を付与するばね部材を備え、
前記回転リングは、前記ばね部材の内側又は外側に位置していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のロック機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の機構部を第一状態又は第二状態にて保持可能なロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水回りの分野などでは、所定の押ボタンなどが押圧される度に移動又は変形する所定の機構部を、所定の第一状態(例えば、前進状態や圧縮状態)及び第二状態(例えば、後退状態や圧縮解除状態)にて交互に保持(ロック)するように構成されたロック機構が知られている。このようなロック機構は、例えば、栓蓋の開閉を交互に切換える操作装置や、止水状態及び吐水状態を交互に切換える水栓などに用いられる。ロック機構としては、例えば、スラストロック機構が挙げられる。
【0003】
スラストロック機構は、前後方向(往復方向)に移動可能であるとともに回転可能な回転リングを備えており、回転リングに対し往動方向への力を加える度に、回転リングが所定量だけ回転するように構成することで、所定の係合歯に対する、回転リングに設けられた被係合突部の係合(ロック)と係合解除(ロック解除)とが交互に切換えられるようにしたものである。
【0004】
ここで、スラストロック機構としては、回転リング(回転子)と、所定の被押圧部材(駆動子)と、回転リングに対し復動方向への付勢力を与える付勢手段と、回転リングの外周に配置された筒状部材(ロック部)とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。回転リングは、その端面に周方向に並ぶ山型の突部(第1従動カム面)を複数備えるとともに、自身の外周から突出する複数の被係合突部を備えている。被押圧部材は、筒状をなし、その端面に、前記回転リングの突部に接触可能な山型の突部(駆動カム面)を備えている。筒状部材は、その内周に周方向に沿って間隔をあけて配設された複数の係合歯を備えている。そして、ロックが解除されている状態(係合歯に被係合突部が係合されていない状態)において、被押圧部材を押圧すると、被押圧部材の突部(駆動カム面)により回転リングの突部(第1従動カム面)が押圧されることで、回転リングが所定角度だけ回転する。この状態で被押圧部材に対する押圧力を解除すると、付勢手段からの付勢力により、係合歯に対し被係合突部が係合され、ロック状態となる。一方、このロック状態で被押圧部材を押圧すると、被押圧部材の突部(駆動カム面)により回転リングの突部(第1従動カム面)が押圧されることで、回転リングが所定角度だけ回転する。この状態で、被押圧部材に対する押圧力を解除すると、付勢手段からの付勢力により、隣接する係合歯間の隙間へと被係合突部が入り込んで、係合歯に対する被係合突部の係合が解除され、ロックが解除された状態となる。
【0005】
また、スラストロック機構としては、筒状部材の係合歯と相対する位置に、前記回転リングの突部(第1従動カム面)に相当する案内歯を設け、被押圧部材の押圧に伴い回転リングが往動したときに、被係合突部が案内歯に接触することで、回転リングを所定の回転角度だけ回転させるものも提案されている(例えば、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−315091号公報
【特許文献2】特開2002−88854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したロック機構においては、回転リングの外周から被係合突部が外側に突出している。そのため、回転リングの最外周部の外径(より詳しくは、回転リングの回転軸を中心とし、被係合突部の先端を通過する仮想円の直径)が比較的大きなものとなってしまい、ひいてはロック機構の大型化を招いてしまうおそれがある。また、被係合突部が外側に突出する構成では、被係合突部のサイズが大きなものとなりやすい。そのため、回転リングが移動する際に、被係合突部とこれに接触する部位との間で生じる摺動抵抗が比較的大きなものとなりやすく、より円滑な動作を実現する際の支障となってしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化を図ることができるとともに、より円滑な動作を実現することができるロック機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.複数の被係合突部を有するとともに、自身の回転軸方向に沿って往復移動可能に構成され、かつ、復動方向への付勢力が付与された回転リングと、
前記回転リングの往復移動方向に対し傾斜する傾斜部を有してなる案内歯と、
前記回転リングの往復移動方向に沿って前記案内歯と対向状に設けられ、前記被係合突部が係合可能な係合歯とを備え、
前記回転リングの内側には、前記回転リングの前記往復移動方向に沿って移動又は変形可能であり、この移動又は変形に伴い所定の第一状態又は当該第一状態と異なる第二状態となるように構成された機構部が配置されるととともに、
前記回転リングに対しその往動方向へと力を加えることで、前記被係合突部が前記傾斜部に接触しつつ前記傾斜部を摺動して前記回転リングが回転し、この状態で前記回転リングに加えられていた前記往動方向への力を解除することにより、前記回転リングが前記付勢力により復動して前記係合歯に対し前記被係合突部が係合され、前記機構部が前記第一状態で保持されること、及び、
前記回転リングに対しその往動方向へと力を加えることで、前記被係合突部が前記傾斜部に接触しつつ前記傾斜部を摺動して前記回転リングが回転し、この状態で前記回転リングに加えられていた前記往動方向への力を解除することにより、前記回転リングが前記付勢力により復動して前記係合歯に対する前記被係合突部の係合が解除され、前記機構部が前記第二状態で保持されること
が交互に行われるように構成されたロック機構であって、
前記機構部が挿通されるとともに前記係合歯が自身の外周に複数突出形成されてなる円筒部を具備してなる外歯部を備え、かつ、前記案内歯が環状に複数配設されてなるベース部材と、
前記円筒部の外周側に配置されるとともに、前記往復移動方向に沿って往復移動可能であり、自身の往復移動に伴い前記機構部が移動又は変形するように構成された筒状のリング保持部材とを有し、
前記回転リングは、前記リング保持部材に対し相対回転可能である一方、前記往復移動方向に沿って相対移動不能な状態で前記リング保持部材の内周に配置されるとともに、自身の内周から前記被係合突部が前記回転軸側に突出した状態で設けられてなることを特徴とするロック機構。
【0011】
尚、「機構部」としては、例えば、自身の軸方向に移動する伝達部材や水栓バルブ、自身の軸方向に変形するばねなどを挙げることができる。「伝達部材」とは、例えば、栓蓋を上下動させることで排水口を開閉する操作装置にロック機構が内蔵されている場合において、リング保持部材(例えば、押ボタン等の被押圧部を備えたもの)の変位による駆動力を、自身の移動により栓蓋側へと伝達するもの(例えば、コアコイル等のワイヤーや、押ボタンに取付けられた棒状の操作軸など)である。また、「水栓バルブ」とは、所定の弁体を所定の前進位置及び後退位置に交互に配置することで、止水状態及び吐水状態を切換可能な水栓にロック機構が内蔵されている場合において、リング保持部材の変位による駆動力を自身の移動により前記弁体側へと伝達するもの(例えば、棒状の軸部材など)や弁体そのものである。さらに、「ばね」とは、例えば、回転リングに対し付勢力を付与する付勢部材などである。
【0012】
上記手段1によれば、回転リングにおいて、被係合突部は、回転リングの内周から回転軸側(内側)に突出した状態で設けられている。従って、回転リング(被係合突部を除いた部分)の径を一定とした場合、被係合突部が外周から外側に突出する回転リングと比べて、回転リングの最外周部の外径をより小さなものとしやすくなる。これにより、ロック機構の小型化をより確実に図ることができ、ロック機構が設けられる装置(例えば、操作装置や水栓など)のコンパクト化を図ることができる。また、ロック機構の小型化が図られることで、機構やこれを備えた装置の製造に係るコストを低減することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0013】
さらに、被係合突部が回転リングの内周から突出する形状であるため、被係合突部が回転リングの外周から突出する形状である場合と比較して、被係合突部と傾斜部との接触面積を小さなものとしやすくなる。従って、被係合突部が傾斜部を摺動するときに生じる摩擦抵抗をより容易に小さなものとすることができ、回転リングをスムーズに回転させることができる。その結果、より円滑な動作を実現することができる。
【0014】
また、機構部が回転リング及び円筒部の内側に配置されるため、回転リング等の移動方向に沿った、ロック機構を備えてなる装置の長さを比較的小さくすることができる。その結果、装置をより小型化させることができ、コストの低減や生産性の向上を一段と図ることができる。
【0015】
手段2.前記回転リングは、自身の回転軸方向に沿って前記円筒部に対し相対移動可能な状態で前記円筒部の外周に配置されており、
前記回転リングの最内周部と前記円筒部の外周との間に形成される隙間が、前記回転リングの外周と前記リング保持部材の内周との間に形成される隙間よりも小さなものとされることを特徴とする手段1に記載のロック機構。
【0016】
尚、「回転リングの最内周部」とあるのは、回転リングの回転軸側に位置する被係合突部の先端部ということができる。また、「回転リングの最内周部と円筒部の外周との間に形成される隙間」とあるのは、回転リングと円筒部とを同軸に配置した状態における、両者の間に形成される隙間ということができる。さらに、「回転リングの外周とリング保持部材の内周との間に形成される隙間」とあるのは、回転リングとリング保持部材とを同軸に配置した状態における、両者の間に形成される隙間ということができる。
【0017】
上記手段2によれば、回転リングは、その外周がリング保持部材の内周にほとんど接触せず、主としてその最内周部のみが円筒部の外周と接触することとなる。これにより、回転リングは、主としてその最内周部、つまり、最も径の小さい部分が被ガイド部として円筒部に接触することで、その回転移動やその回転軸方向に沿った往復移動がガイドされる。従って、比較的大径となる回転リングの外周を被ガイド部とする場合と比較して、回転リングの移動時における、被ガイド部とガイド部(回転リングをガイドする部分)との間で生じる接触抵抗を低減することができる。さらに、回転リングの最内周部は被係合突部により構成されるため、回転リングの最内周部が環状面により構成される場合と比較して、回転リング及び被ガイド部の接触面積を格段に小さくすることができる。これらの結果、回転リングをスムーズに移動させることができ、より一層円滑な動作を実現することができる。
【0018】
手段3.前記リング保持部材は、
一端部の開口側内周に設けられ、内側に向けて突出する支持突部と、
前記支持突部よりも他端側の内周に設けられた段部と、
内側から外側に貫通するスリット部とを具備するとともに、
前記スリット部が拡幅するように変形することで、一端部の開口が拡径可能に構成されており、
前記回転リングは、前記支持突部及び前記段部に挟まれることで、前記リング保持部材に対し相対回転可能である一方、前記往復移動方向に沿って相対移動不能な状態とされていることを特徴とする手段1又は2に記載のロック機構。
【0019】
上記手段3によれば、スリット部の存在により、リング保持部材の一端部開口を容易に拡径することができる。そして、一端部開口を拡径した上で、当該開口を通して回転リングをリング保持部材の内周に配置し、その後、内側部材の変形を解除することで、支持突部及び段部間に回転リングを配置することができる。すなわち、上記手段3によれば、リング保持部材の内周の所定位置へと回転リングをより容易に配置することができる。その結果、組立作業性をより高めることができ、生産性の一層の向上を図ることができる。
【0020】
加えて、上記手段3によれば、回転リングは、一部材(リング保持部材)により挟み込まれることで支持される。そのため、部品点数の削減を図ることができ、製造コストをより低減させることができる。
【0021】
手段4.前記リング保持部材は、前記回転リングが内周に配置されるとともに、少なくとも一端部が開口する筒状の内側部材を有し、
前記内側部材は、
一端部の開口側内周に設けられ、内側に向けて突出する支持突部と、
前記支持突部よりも他端側の内周に設けられた段部と、
内側から外側に貫通するスリット部とを具備するとともに、
前記スリット部が拡幅するように変形することで、一端部の開口が拡径可能に構成されており、
前記回転リングは、前記支持突部及び前記段部に挟まれることで、前記リング保持部材に対し相対回転可能である一方、前記往復移動方向に沿って相対移動不能な状態とされており、
前記内側部材の外周に配置可能な筒状の外側部材が設けられており、
前記内側部材の外周に前記外側部材が配置されていない状態において、前記スリット部が拡幅するように前記内側部材を変形させることで、前記内側部材の一端部の開口を拡径可能であるとともに、
前記内側部材の外周に前記外側部材が配置された状態において、前記外側部材により、前記スリット部の拡幅が規制され、前記内側部材における一端部の開口の拡径が規制されるように構成したことを特徴とする手段1又は2に記載のロック機構。
【0022】
上記手段4によれば、内側部材の外周に外側部材を配置していない状態では、スリット部の存在により、内側部材の一端部開口を容易に拡径することができる。そして、一端部開口を拡径した上で、当該開口を通して回転リングを内側部材の内周に配置し、その後、内側部材の変形を解除することで、支持突部及び段部間に回転リングを配置することができる。すなわち、上記手段4によれば、内側部材の内周の所定位置へと回転リングをより容易に配置することができる。その結果、組立作業性をより高めることができ、生産性の更なる向上を図ることができる。
【0023】
一方、内側部材の外周に外側部材を配置した状態においては、外側部材により、スリット部の拡幅ひいては内側部材の一端部開口の拡径が規制される。従って、支持突部が回転リングから外れてしまうことを抑制でき、内側部材の内周において、回転リングをより安定した状態で支持することができる。これにより、装置の動作安定性の向上や故障の発生抑制をより確実に図ることができる。
【0024】
また、上記手段4によれば、回転リングは、一部材(内側部材)により挟み込み支持される。そのため、部品点数の削減を図ることができ、製造コストを一層低減させることができる。
【0025】
手段5.前記外側部材の内周には、凸状及び凹状の一方をなす被係止部が設けられ、
前記内側部材の外周には、凸状及び凹状の他方をなす係止部が設けられ、
前記外側部材の内周に前記内側部材が挿通され、前記被係止部に対し前記係止部が係止された状態となることで、前記内側部材に対し前記外側部材が取付けられており、
前記被係止部に対する前記係止部の係止は、スナップフィットにより実現されていることを特徴とする手段4に記載のロック機構。
【0026】
上記手段5によれば、スナップフィットにより内側部材に対し外側部材が取付けられるため、組立作業性を一層高めることができ、生産性をより向上させることができる。
【0027】
手段6.前記ベース部材は、前記機構部が挿通される筒状の被固定部を有し、
前記外歯部は、前記被固定部とは別体の筒状部品であって、前記被固定部に取付けられており、
前記外歯部の内周には、凸状及び凹状の一方をなす第二被係止部が設けられ、
前記被固定部の外周には、凸状及び凹状の一方をなす第二係止部が設けられ、
前記外歯部の内周に前記被固定部が挿通され、前記第二被係止部に対し前記第二係止部が係止された状態となることにより、前記案内歯及び前記係合歯の相対位置関係が所定の位置関係となり、かつ、前記被固定部に対する前記外歯部の相対回転が規制された状態で、前記被固定部に対し前記外歯部が取付けられていることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載のロック機構。
【0028】
上記手段6によれば、外歯部の内周に被固定部を挿通し、第二被係止部に対し第二係止部が係止されることにより、案内歯及び係合歯の相対位置関係が所定の位置関係となる。つまり、単に第二被係止部に対し第二係止部を係止しさえすれば、案内歯及び係合歯の相対位置関係は自ずと所定の相対位置関係になる。従って、組立作業性を一段と高めることができ、一層良好な生産性を得ることができる。
【0029】
また、第二被係止部に対し第二係止部が係止されることにより、被固定部に対する外歯部の相対回転も規制される。従って、案内歯及び係合歯の相対位置関係をより確実に所定の位置関係にて維持することができ、装置の動作安定性を一段と向上させることができる。
【0030】
手段7.金属線が螺旋状に捲回されてなり、前記回転リングに対し前記付勢力を付与するばね部材を備え、
前記回転リングは、前記ばね部材の内側又は外側に位置していることを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載のロック機構。
【0031】
尚、「ばね部材」は、機構部として設けられたものであってもよいし、機構部とは別に設けられたものであってもよい。すなわち、「ばね部材」が、回転リングの内側に配置され、かつ、円筒部に挿通されている場合、当該「ばね部材」は、機構部として設けられたものであるということができる。一方、「ばね部材」が、回転リングの外側に配置されていたり、円筒部に挿通されていなかったりする場合、当該「ばね部材」は機構部とは別のものであるということができる。
【0032】
上記手段7によれば、回転リングは、ばね部材の内側又は外側に位置する状態となっている。すなわち、往復移動方向において、ばね部材及び回転リングがオーバーラップした状態となっている。従って、ばね部材及び回転リングが直列的に並んで配置される場合と比較して、往復移動方向に沿ったロック機構の小型化(短尺化)を図ることができる。その結果、ロック機構を備えた装置をよりコンパクトなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】排水口を閉状態としたときにおける操作装置の断面図である。
図2】排水口を閉状態としたときにおける操作装置の断面斜視図である。
図3】排水口を閉状態としたときにおけるベース部材及び回転リングを示す一部破断斜視図である。
図4】回転リング及びリング保持部材を示す分解斜視図である。
図5】排水口が閉状態であるときに被押圧部を最大限押し込んだときにおける操作装置の断面図である。
図6】排水口が閉状態であるときに被押圧部を最大限押し込んだときにおける操作装置の断面斜視図である。
図7】排水口が閉状態であるときにおける被係合突部の位置及び係合歯や案内歯の構成を示すための外歯部等の拡大展開図である。
図8】排水口が閉状態であるときに被押圧部を最大限押し込んだときにおけるベース部材及び回転リングを示す一部破断斜視図である。
図9】排水口が閉状態であるときにおいて、被押圧部を押し込んだときにおける被係合突部の移動態様を説明するための外歯部等の拡大展開図である。
図10】排水口が閉状態であるときにおいて、被押圧部を押し込んだ後、押圧力を解除したときにおける被係合突部の移動態様を説明するための拡大展開図である。
図11】排水口を開状態としたときにおける操作装置の断面図である。
図12】排水口を開状態としたときにおける操作装置の断面斜視図である。
図13】排水口を開状態としたときにおけるベース部材及び回転リングを示す一部破断斜視図である。
図14】排水口が開状態であるときにおいて、被押圧部を押し込んだときにおける被係合突部の移動態様を説明するための外歯部等の拡大展開図である。
図15】排水口が開状態であるときにおいて、被押圧部を押し込んだ後、押圧力を解除したときにおける被係合突部の移動態様を説明するための拡大展開図である。
図16】排水口が開状態であるときにおいて、被押圧部を押し込んだ後、押圧力を解除したときにおける被係合突部の移動態様を説明するための拡大展開図である。
図17】第2実施形態における水栓の一部破断正面図である。
図18図17のJ−J線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔第1実施形態〕
まず、第1実施形態において、操作装置1に対しロック機構9が適用される場合について説明する。
【0035】
図1に示すように、操作装置1は、浴室の浴槽に取付けられた板状のエプロン100に取付けられている。尚、浴槽は、所定の排水口が形成された底壁部(図示せず)を備えており、前記排水口を通った排水は、所定の排水管(図示せず)に流れ落ちるようになっている。また、エプロン100の上部には、その表面から裏面へと貫通する貫通孔102が形成されている。
【0036】
図1及び図2図2では、エプロン100を不図示)に示すように、操作装置1は、挿通部材2、取付部材3及び装置本体4を備えている。
【0037】
挿通部材2は、ほぼ直角に屈曲した筒状をなしており、貫通孔102に挿通されている。挿通部材2は、水平方向に延びるとともに、一端側が円筒状をなし、他端側(浴室における洗い場側に位置する側であって、図1における左側)が矩形筒状をなす収容部21と、鉛直方向に延びるとともに、収容部21よりも小径に形成され、かつ、収容部21の一端部に連なる通水部22とを備えている。
【0038】
収容部21は、内部に装置本体4の大部分が収容される部位である。通水部22は、収容部21内に浸入した水が流れ落ちる部位である。尚、通水部22の下端部は、前記排水管に接続された図示しない配管へと接続されており、通水部22を流れ落ちた水は、前記配管を通って前記排水管へと案内されるようになっている。すなわち、挿通部材2内に浸入した水は、挿通部材2の外部へと漏れ出さないようになっている。
【0039】
また、収容部21は、その他端部に、外側に突出する鍔部23を備えている。さらに、収容部21は、鍔部23よりも一端側の外表部であって矩形筒の角に相当する部位のそれぞれに、雄ねじ部21A(図2参照)を備えている。尚、本実施形態では、外観品質の向上を図るべく、鍔部23の外周から収容部21の内周他端部にかけての表面部分が、薄肉金属などからなる被覆部24で構成されている。
【0040】
取付部材3は、挿通部材2をエプロン100へと取付けるために用いられる部材である。取付部材3は、円環状をなすとともに、内周に雌ねじ部31を有している。そして、貫通孔102に挿通部材2を挿通した上で、挿通部材2の前記雄ねじ部21Aが雌ねじ部31へと螺合されるように挿通部材2の外側に取付部材3をねじ止めし、鍔部23及び取付部材3によってエプロン100を挟み込んだ状態とすることで、挿通部材2がエプロン100へと取付けられている。尚、鍔部23及びエプロン100間や取付部材3及びエプロン100間に、弾性変形可能な環状のシール部材を設けることで、鍔部23及びエプロン100間や取付部材3及びエプロン100間を水密にシールすることとしてもよい。
【0041】
装置本体4は、その大部分が挿通部材2の内部に配置されており、挿通部材2に対し相対移動不能な状態で固定された固定部材5と、ばね部材6と、前記洗い場側からの押圧操作及びばね部材6からの付勢力により収容部21の軸方向に沿って往復移動可能な移動部材7と、機構部としての伝達部材8とを備えている。尚、本実施形態においては、ばね部材6も機構部に相当する。
【0042】
固定部材5は、ベース部材51、チューブ部材52及びチューブ固定部材53を備えている。
【0043】
ベース部材51は、装置本体4を挿通部材2に固定するとともに、移動部材7の移動をガイドする役割などを有する。ベース部材51は、内周側に位置する第一構成部511と、第一構成部511の外周側に位置する第二構成部512とが組合わされることで構成されている。
【0044】
第一構成部511は、円筒状をなす内筒部511Aと、内筒部511Aの外側においてこれと隙間をあけた状態で同心円状に配置された外歯部511Bとを備えている。内筒部511Aの内周に形成された貫通孔には、伝達部材8や後述する軸部材721が配置されている。また、内筒部511A及び外歯部511B間には、前記貫通孔と同心円状に形成されるとともに、後述する被押圧部73側に向けて開口する環状の溝が形成されている。当該溝には、ばね部材6が配置されており、ばね部材6の一端部はベース部材51(第一構成部511)によって支持された状態となっている。また、前記溝にばね部材6が配置されることで、外歯部511B(次述する円筒部511H)に対し機構部としてのばね部材6が挿通(挿入)された状態となっている。
【0045】
さらに、図3に示すように、外歯部511Bは、円筒状の円筒部511Hと、当該円筒部511Hの外周において外側に突出形成された、円筒部511Hの軸方向に延びる複数の係合歯511Cとを備えている。係合歯511Cは、円筒部511Hの周方向に沿って等間隔に複数設けられている。また、隣接する係合歯511C間には、円筒部511Hの軸方向に沿って延びる溝部511Dが形成されている。
【0046】
加えて、各係合歯511Cは、その一端面に、円筒部511Hの周方向に沿って、第一斜面部511E、直交面部511F及び第二斜面部511Gをこの順序で備えている。第一斜面部511E及び第二斜面部511Gは、それぞれ円筒部511Hの軸方向(後述する回転リング71の往復移動方向)に対し傾斜する面であり、同じ向きに傾斜している。直交面部511Fは、両斜面部511E,511G間において両者を連接するようにして円筒部511Hの軸方向(回転リング71の往復移動方向)に沿って延びている。
【0047】
第二構成部512は、外歯部511Bよりも大径な大径部512Aと、当該大径部512Aの一端部から内周側に突出し、中心に孔の形成された環状突部512Bとを備えた形状となっている。
【0048】
大径部512Aは、その他端部に、外側に向けて突出する突起部512Cを有している。突起部512Cは、大径部512Aの周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では、4つ)設けられている。また、大径部512Aの外周面には、突起部512Cから、大径部512Aの軸方向に沿って大径部512Aの一端側へと延びるガイド溝512Dが形成されている。ガイド溝512Dに関しても、突起部512Cと同様に、大径部512Aの周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では、4つ)設けられている。
【0049】
環状突部512Bは、図1及び図2に示すように、その中心に位置する前記孔に対し第一構成部511が挿通された状態となっており、これにより、両構成部511,512は同軸となっている。尚、前記環状突部512Bは、前記孔を形成する部位に段差を備えており、前記孔に挿通された第一構成部511は前記段差に係止された状態となっている。これにより、後述する被押圧部73に対して押圧力が付与されたときに、第二構成部512から第一構成部511が抜けないようになっている。
【0050】
図3に戻り、環状突部512Bのうち係合歯511Cの一端面と相対する部位には、環状に配設された複数の案内歯512Eが等間隔に形成されている。案内歯512Eは、環状突部512Bの周方向に沿って、第一直交面部512F、第一傾斜部512G、第二直交面部512H及び第二傾斜部512Jをこの順序で備えている。本実施形態では、第一傾斜部512G及び第二傾斜部512Jが傾斜部に相当する。
【0051】
第一直交面部512F及び第二直交面部512Hは、それぞれ円筒部511Hの軸方向(回転リング71の往復移動方向)に沿って延びている。また、第一傾斜部512G及び第二傾斜部512Jは、前記第一斜面部511E及び第二斜面部511Gと同じ向きに傾斜するように構成されている。
【0052】
そして、第一傾斜部512Gが溝部511D及び第一斜面部511Eと対向し、第二傾斜部512Jが第一斜面部511E及び第二斜面部511Gと対向するように、第一構成部511及び第二構成部512の相対位置関係が設定されている。
【0053】
図1及び図2に戻り、チューブ部材52は、長尺筒状をなしており、伝達部材8が内周に配置されている。また、チューブ部材52の端部には、径方向外側に膨出する鍔状部分が設けられており、当該鍔状部分が第一構成部511の一端部中心に形成された窪み部分に配置されている。尚、第一構成部511における前記窪み部分を形成する部位の内周面には、所定の雌ねじが形成されている。
【0054】
チューブ固定部材53は、中心に前記チューブ部材52の挿通される孔を備えた円筒状をなしており、その外周に所定の雄ねじを備えている。チューブ固定部材53は、自身の孔にチューブ部材52が挿通された状態で、前記窪み部分の開口を塞ぐようにして、自身の雄ねじが前記窪み部分における雌ねじへと螺合された状態となっている。これにより、チューブ部材52がベース部材51に対し固定された状態となっている。
【0055】
ばね部材6は、金属線が螺旋状に捲回されてなり、上述の通り、その一端部がベース部材51によって支持された状態となっている。一方、ばね部材6の他端部は、後述するリング保持部材72に接触した状態となっている。ばね部材6は、排水口が閉状態であるとき(図1,2参照)に、移動部材7(回転リング71)の往復移動方向に沿って自然長よりも若干圧縮された状態となるように構成されている。本実施形態では、この状態がばね部材6における第二状態に相当する。
【0056】
また、ばね部材6は、排水口が開状態であるとき(図11,12参照)に、前記排水口が閉状態であるときよりも移動部材7(回転リング71)の往復移動方向に沿ってより圧縮された状態となるように構成されている。本実施形態では、この状態がばね部材6における第一状態に相当する。
【0057】
そして、ばね部材6によって、前記移動部材7に対しその復動方向に沿った付勢力が常に付与された状態となっている。
【0058】
移動部材7は、収容部21の内部に配置され、収容部21の軸方向に沿って往復移動可能な状態とされている。ここで、往動方向とは、移動部材7が収容部21の奥側へと押し込まれることとなる方向(図1における右方向)を意味し、復動方向は、前記押し込まれることとなる方向の逆方向(図1における左方向)を意味する。
【0059】
移動部材7は、回転リング71と、リング保持部材72と、被押圧部73とを備えている。
【0060】
回転リング71は、図3及び図4に示すように、環状をなしており、自身の中心軸側に突出する複数の被係合突部711を備えている。各被係合突部711は、回転リング71の周方向に沿って等間隔に設けられており、それぞれ同一形状とされている。本実施形態において、各被係合突部711は、それぞれ内側への突出量が同一であるとともに、回転リング71の中心軸から見たときに、台形状をなすように構成されている。尚、本実施形態では、ベース部材51及び回転リング71によってロック機構9が構成されている。
【0061】
また、回転リング71は、自身の中心軸を回転軸として回転可能であるとともに、その回転軸方向に沿って往復移動可能な状態で円筒部511Hの外周に配置されている。そして、回転リング71、円筒部511H及びリング保持部材72を同軸に配置した状態において、回転リング71の最内周部(被係合突部711における前記回転軸側の面)と円筒部511Hの外周面との間に形成される隙間は、回転リング71の外周面とリング保持部材72(後述する内側部材722の内周面)との間に形成される隙間よりも小さくなるように構成されている。換言すれば、回転リング71、円筒部511H及びリング保持部材72を同軸に配置した状態において、回転リング71の回転軸を中心とした回転リング71の最内周部を通過する仮想円の直径と、円筒部511Hの外周の直径との径差が、回転リング71の外周の直径と、リング保持部材72における回転リング71の配置される部位の内周の直径との径差よりも小さくなるように構成されている。つまり、回転リング71は、その外周がリング保持部材72の内周とほとんど接触することはなく(各部の状態により接触することも稀にあり得る)、主としてその最内周部(被係合突部711)のみが円筒部511Hの外周と接触するようになっている。
【0062】
さらに、回転リング71は、ばね部材6の外側に位置している(図1,2参照)。つまり、移動部材7の移動方向において、ばね部材6及び回転リング71はオーバーラップした状態となっている。また、回転リング71の内側には、ばね部材6及び伝達部材8が配置された状態となっている。
【0063】
リング保持部材72は、軸部材721、内側部材722及びガイド部材723を備えている。
【0064】
軸部材721は、リング保持部材72の中心に位置し、その中心軸方向に延びる棒状をなしている。また、軸部材721は、一端面にて開口する凹み部分を備えており、当該凹み部分に対し伝達部材8の端部が挿通されている。そして、軸部材721における前記凹み部分の底部に対し、伝達部材8の端部が接触可能となっている。
【0065】
内側部材722は、一端部が開口する円筒状をなしており、軸部材721の外側においてこれと同軸に設けられている。また、内側部材722の一端部の開口内周には、内側に向けて突出する支持突部722Aが形成されている。支持突部722Aは、内側部材722の周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では、4つ)設けられている。さらに、支持突部722Aのうち内側部材722の一端側に位置する面は、内側部材722の一端から他端に向けて徐々に内側への突出量が大きくなる傾斜面となっている。一方、支持突部722Aのうち内側部材722の他端側に位置する面は、内側部材722の中心軸とほぼ直交する方向に延びる形状となっている。
【0066】
さらに、内側部材722の内周であって支持突部722Aよりも他端側には、段部722Bが設けられている。段部722Bは、内側部材722の周方向に沿って支持突部722Aからずれた位置において、内側部材722の周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では、4つ)設けられている。各段部722Bは、内側部材722の中心軸とほぼ直交する方向に延びる面状をなしている。
【0067】
加えて、内側部材722は、その軸方向に沿って延びるとともに、その内側から外側へと貫通する、複数のスリット部722Cを備えている。各スリット部722Cは、段部722Bから内側部材722の一端へと貫通する形状をなしており、隣接する各支持突部722Aの中間に設けられている。スリット部722Cが拡幅するように内側部材722が変形(弾性変形)することにより、内側部材722の一端部の開口が拡径可能となっている。
【0068】
また、本実施形態では、内側部材722の内周に回転リング71が配置され、支持突部722Aと段部722Bとによって回転リング71が挟まれた状態とされている。その結果、回転リング71は、リング保持部材72に対し相対回転可能である一方、回転リング71の軸方向(移動部材7の往復移動方向)に沿ってリング保持部材72に対し相対移動不能となっている。ここで、相対移動不能とあるのは、厳密に相対移動不能となっている状態のみならず、ほんの少しだけ相対移動可能となっている状態も含む。
【0069】
尚、内側部材722の内周に回転リング71を配置する際には、内側部材722と回転リング71とを同軸に配置した上で、内側部材722の内部へと押し込むように回転リング71に対し力を加えればよい。これにより、回転リング71によって支持突部722Aの前記傾斜面が押圧され、スリット部722Cが拡幅していく(内側部材722の一端部開口が拡径していく)。そして、回転リング71を通過可能な程度まで内側部材722の一端部開口が拡径すると、回転リング71が支持突部722Aを過ぎて、支持突部722A及び段部722B間に回転リング71が配置されるとともに、内側部材722が元の形状に戻る。その結果、支持突部722Aと段部722Bとによって回転リング71を挟んだ状態で、内側部材722の内周に回転リング71が配置される。従って、内側部材722の一端部開口を意識的に拡径しようとせずとも、内側部材722の内周に回転リング71を容易に配置することできる。
【0070】
ガイド部材723は、円筒状をなしており、内側部材722の外側においてこれと同軸に設けられている。ガイド部材723の内周面と内側部材722の外周面との間には、環状の隙間が形成されており、当該隙間は大径部512Aの配置空間(移動空間)となっている。
【0071】
尚、本実施形態において、内側部材722の外周に大径部512Aが配置された状態では、大径部512Aによりスリット部722Cの拡幅が規制され、ひいては内側部材722における一端部開口の拡径が規制されるようになっている。つまり、本実施形態において、大径部512Aは外側部材に相当する。尚、上述した内側部材722の内周に対する回転リング71の配置は、内側部材722の外周に大径部512Aが配置されていない状態で行われる。
【0072】
また、ガイド部材723の一端部内周には、内側に向けて突出する抜け止め突部723Aが設けられている。本実施形態において、抜け止め突部723Aは、ガイド部材723の周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では、4つ)設けられており、前記ガイド溝512Dに配置されている。そして、移動部材7の移動時には、抜け止め突部723Aがガイド溝512Dに沿って移動することで、移動部材7の移動がガイドされるようになっている。また、ばね部材6からの付勢力によって移動部材7が復動した場合には、抜け止め突部723Aが突起部512Cと接触することで、移動部材7のそれ以上の復動が規制され、移動部材7が挿通部材2から外れないようになっている。
【0073】
尚、抜け止め突部723Aにおける突起部512Cと接触する面は、移動部材7の移動方向に対しほぼ直交する方向に延びる形状となっており、挿通部材2からの移動部材7の外れをより確実に防止できるようになっている。一方、抜け止め突部723Aにおける一端側の面は、ガイド部材723の一端から他端に向けて徐々に突出量が大きくなる傾斜面とされている。
【0074】
さらに、ガイド部材723は、その軸方向に沿って延びるとともに、その内側から外側へと貫通する、複数の取付用スリット部723Bを備えている。各取付用スリット部723Bは、ガイド部材723の一端へと貫通する形状をなしており、隣接する各抜け止め突部723Aの中間に設けられている。そして、取付用スリット部723Bが拡幅するようにガイド部材723が変形(弾性変形)することにより、ガイド部材723の一端部の開口が拡径可能となっている。
【0075】
尚、本実施形態では、固定部材5及び移動部材7間にねじ部材6を配置した上で、ガイド部材723の内周に大径部512Aが収まるように、ガイド部材723内へと大径部512Aを押し込むことで、固定部材5に対し移動部材7を取付けることができる。具体的に説明すると、まず、抜け止め突部723Aの前記傾斜面を大径部512Aに接触させつつ、ガイド部材723内へと大径部512Aを押し込む。これにより、大径部512Aによって抜け止め突部723Aの前記傾斜面が押圧され、取付用スリット部723Bが拡幅していく(ガイド部材723の一端部開口が拡径していく)。そして、突起部512Cが通過可能な程度までガイド部材723の一端部開口が拡径すると、突起部512Cが抜け止め突部723Aを過ぎるとともに、ガイド部材723が元の形状に戻り、ガイド溝512Dに対し抜け止め突部723Aが配置された状態になる。その結果、移動部材7が固定部材5に対し取付けられることとなる。このように本実施形態では、特に工具などを用いることなく、固定部材5に対し移動部材7を取付けることができ、良好な取付作業性を実現可能となっている。
【0076】
被押圧部73は、正面視矩形状をなす有底筒状をなしており、リング保持部材72の他端部が内側に嵌め込まれた状態となっている。被押圧部73の表面は、洗い場側に配置されており、前記排水口を開閉する際に押圧操作される。また、被押圧部73の表面は、前記排水口が閉状態であるときに、鍔部23の表面と面一となるように構成されている。
【0077】
図1及び図2に戻り、伝達部材8は、例えばワイヤーなどによって構成されており、チューブ部材52の内周において往復移動可能な状態とされている。伝達部材8は、上記の通り、その端部が軸部材721に接触可能とされており、被押圧部73の押圧操作に伴い往動する。この往動に伴い前記排水口に設けられている栓蓋(図示せず)が持ち上げられることで、前記排水口が開状態とされる。一方、この状態で被押圧部73の押圧操作に伴い、ばね部材6からの付勢力によって被押圧部73が復動すると、伝達部材8が元の位置に戻るとともに、前記栓蓋が下動し、前記排水口が閉状態とされる。
【0078】
本実施形態では、前記排水口が開状態とされているときの状態が、伝達部材8における第一状態に相当する。一方、前記排水口が閉状態とされているときの状態が、伝達部材8における第二状態に相当する。
【0079】
また、伝達部材8の端部は、第一構成部511に対し挿通された状態となっている。すなわち、円筒部511Hには、機構部に相当するばね部材6及び伝達部材8の双方が挿通(挿入)された状態となっている。
【0080】
次いで、上述した操作装置1の動作について説明する。まず、前記排水口が閉状態から開状態とされるときの操作装置1の動作について説明する。
【0081】
前記排水口が閉状態であるときには、被押圧部73の表面は鍔部23の表面と面一となっており(図1,2参照)、また、溝部511Dに対し被係合突部711が入り込んだ状態となっている(図7参照)。さらに、ばね部材6は、自然長よりも若干圧縮された状態である第二状態となっている。このような状態で、図5及び図6に示すように、被押圧部73が押し込まれ、回転リング71に対しその往動方向に沿った力が加えられると、図8に示すように、回転リング71が往動する。そして、図9に示すように、被係合突部711が第一傾斜部512Gへと接触するとともに、被係合突部711が第一傾斜部512Gを摺動することで、被係合突部711が第二直交面部512Hに接触するまで回転リング71が回転する。
【0082】
この状態で、被押圧部73に対する押圧力が解除されると、つまり、回転リング71に対して加えられていた往動方向への力が解除されると、ばね部材6からの付勢力により回転リング71等(移動部材7)が復動する。これにより、図10に示すように、被係合突部711が第一斜面部511Eに接触するとともに、付勢力により第一斜面部511Eを摺動し、ひいては回転リング71が若干回転する。そして、被係合突部711が直交面部511Fに接触すると、回転リング71の回転が停止するとともに、被係合突部711が係合歯511Cへと係合された状態となる。これにより、図13に示すように、回転リング71は最大限押し込まれた位置から若干戻った位置で停止した状態となる。また、図11及び図12に示すように、ばね部材6及び伝達部材8が第一状態とされ、かつ、被押圧部73が挿通部材2内に押し込まれた状態で移動部材7が保持(ロック)され、排水口が開状態で維持される。
【0083】
次いで、前記排水口が開状態から閉状態とされるときの操作装置1の動作について説明する。前記排水口が開状態であるときに、被押圧部73が押し込まれ、回転リング71に対しその往動方向に沿った力が加えられると、回転リング71が往動し、図14に示すように、被係合突部711が第二傾斜部512Jへと接触する。そして、被係合突部711が第二傾斜部512Jを摺動することで回転リング71が若干回転する。
【0084】
この状態で、被押圧部73に対する押圧力が解除されると、つまり、回転リング71に対して加えられていた往動方向への力が解除されると、ばね部材6からの付勢力により回転リング71等(移動部材7)が復動する。これにより、図15に示すように、被係合突部711が第二斜面部511Gに接触するとともに、付勢力により第二斜面部511Gを摺動し、ひいては回転リング71が若干回転する。そして、第二斜面部511Gから被係合突部711が外れると、図16に示すように、溝部511Dへと被係合突部711が配置され、突起部512Cに対し抜け止め突部723Aが接触するまで、ばね部材6からの付勢力により回転リング71等が復動する。これにより、ばね部材6及び伝達部材8が第二状態とされ、かつ、被押圧部73と鍔部23とが面一となった状態で移動部材7が保持(ロック)され、排水口が閉状態で維持される。
【0085】
以上詳述したように、本実施形態によれば、回転リング71において、被係合突部711は、回転リング71の内周から回転軸側(内側)に突出した状態で設けられている。従って、回転リング71(被係合突部711を除いた部分)の径を一定とした場合、被係合突部が外周から外側に突出する回転リングと比べて、回転リング71の最外周部の外径をより小さなものとしやすくなる。これにより、ロック機構9の小型化をより確実に図ることができ、ロック機構9が設けられる装置(本実施形態では、操作装置1)のコンパクト化を図ることができる。また、ロック機構9の小型化が図られることで、機構やこれを備えた装置の製造に係るコストを低減することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0086】
さらに、被係合突部711が回転リング71の内周から突出する形状であるため、被係合突部711が回転リング71の外周から突出する形状である場合と比較して、被係合突部711と第一傾斜部512G及び第二傾斜部512Jとの接触面積を小さなものとしやすくなる。従って、被係合突部711が傾斜部512G,512Jを摺動するときに生じる摩擦抵抗をより容易に小さなものとすることができ、回転リング71をスムーズに回転させることができる。その結果、より円滑な動作を実現することができる。
【0087】
また、機構部としてのばね部材6及び伝達部材8が回転リング71及び円筒部511Hの内側に配置されるため、回転リング71等の移動方向に沿った装置(操作装置1)の長さを比較的小さくすることができる。その結果、装置をより小型化させることができ、コストの低減や生産性の向上を一段と図ることができる。
【0088】
加えて、回転リング71は、その外周がリング保持部材72の内周にほとんど接触せず、主としてその最内周部のみが円筒部511Hの外周と接触するように構成されている。これにより、回転リング71は、主としてその最内周部、つまり、最も径の小さい部分が被ガイド部として円筒部511Hに接触することで、その回転移動やその回転軸方向に沿った往復移動がガイドされる。従って、比較的大径となる回転リング71の外周を被ガイド部とする場合と比較して、回転リング71の移動時における、被ガイド部とガイド部(回転リング71をガイドする部分)との間で生じる接触抵抗を低減することができる。さらに、回転リング71の最内周部は被係合突部711により構成されるため、回転リングの最内周部が環状面により構成される場合と比較して、回転リング71及び被ガイド部(円筒部511H)の接触面積を格段に小さくすることができる。これらの結果、回転リング71をスムーズに移動させることができ、より一層円滑な動作を実現することができる。
【0089】
また、回転リング71は、一部材(リング保持部材72)により挟み込まれることで支持される。そのため、部品点数の削減を図ることができ、製造コストをより低減させることができる。
【0090】
さらに、本実施形態では、スリット部722Cの存在により、内側部材722の外周に大径部512Aを配置していない状態では、リング保持部材72(内側部材722)の一端部開口を容易に拡径することができる。これにより、リング保持部材72(内側部材722)の内周の所定位置へと回転リング71をより容易に配置することができる。その結果、組立作業性をより高めることができ、生産性の一層の向上を図ることができる。
【0091】
一方、内側部材722の外周に大径部512Aを配置した状態においては、大径部512Aにより、スリット部722Cの拡幅ひいては内側部材722の一端部開口の拡径が規制される。従って、支持突部722Aが回転リング71から外れてしまうことを抑制でき、内側部材722の内周において、回転リング71をより安定した状態で支持することができる。これにより、装置の動作安定性の向上や故障の発生抑制をより確実に図ることができる。
〔第2実施形態〕
次いで、第2実施形態について上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態において、ロック機構9は操作装置1に対し適用されている。これに対し、本第2実施形態において、ロック機構19は、図17及び図18に示すように、水栓11に対し適用されている。
【0092】
水栓11は、槽体(例えば、浴槽や洗面器、流し台等)又はその近傍の構造物など(勿論、槽体とは無関係な構造物などであってもよい)に取付けられており、図示しない所定の吐水部(例えば、蛇口など)において吐水状態及び止水状態を切換えるために用いられるものである。水栓11は、槽体等に対し相対移動不能な状態で取付けられた固定部材12と、機構部としての水栓バルブ13と、ばね部材14と、押圧操作及びばね部材14からの付勢力により往復移動可能な移動部材15とを備えている。
【0093】
固定部材12は、ベース部材121及びケース部材122を備えている。
【0094】
ベース部材121は、第一構成部1211及び第二構成部1212を備えており、両者が組立てられることで構成されている。本実施形態において、第一構成部1211は、被固定部に相当する。
【0095】
第一構成部1211は、水栓バルブ13の挿通可能な孔を備えた蓋状部分が他端部内周に形成された円筒状をなしており、その内側に水栓バルブ13が配置されている。また、第一構成部1211の外周には、凸状をなす第二係止部1211Aが形成されている。第二係止部1211Aは、第一構成部1211の周方向に沿って間隔をあけた状態で複数設けられている。
【0096】
第二構成部1212は、水栓バルブ13の挿通可能な孔を備えた蓋状部分が他端部内周に形成された円筒状をなす外歯部1212Aと、当該外歯部1212Aの一端外周から突出形成する鍔状の環状突部1212Bとを備えている。
【0097】
外歯部1212Aは、上記第一実施形態と同様に、水栓バルブ13が内側に配置された円筒部1212Hと、当該円筒部1212Hの外側に突出形成された、円筒部1212Hの軸方向に延びる複数の係合歯1212Cとを備えている。係合歯1212Cは、円筒部1212Hの周方向に沿って等間隔に複数設けられており、各係合歯1212Cは、上記第1実施形態と同様と構成を備えている。すなわち、各係合歯1212Cは、その一端面に第一斜面部、直交面部及び第二斜面部を備えている。
【0098】
また、外歯部1212A(円筒部1212H)の内周には、凹状をなす第二被係止部1212Dが形成されている。第二被係止部1212Dは、円筒部1212Hの周方向に沿って間隔をあけた状態で複数設けられており、各第二被係止部1212Dに対し第二係止部1211Aが係止可能となっている。そして、第二構成部1212の一端部の開口からその内側へと第一構成部1211が挿通され、第二被係止部1212Dに対し第二係止部1211Aが係止されるとともに、第一構成部1211の他端部が外歯部1212Aの前記蓋状部分と接触することで、第一構成部1211及び第二構成部1212が一体となるように組み立てられている。
【0099】
さらに、本実施形態においては、第二被係止部1212Dに対し第二係止部1211Aを係止した状態とすることによって、第一構成部1211に対する外歯部1212Aの相対回転が規制された状態となっている。尚、第二係止部1211Aを凹状とし、第二被係止部1212Dを凸状としてもよい。
【0100】
さらに、環状突部1212Bのうち係合歯1212Cの一端面と相対する部位には、上記第1実施形態と同様に、案内歯1212Eが形成されている。案内歯1212Eは、上記第1実施形態と同様に、第一直交面部、第一傾斜部、第二直交面部及び第二傾斜部を備えている。尚、係合歯1212Cにおける第一斜面部等と、案内歯1212Eにおける第一傾斜部等との相対位置関係についても上記第1実施形態と同様である。また、本実施形態では、第二被係止部1212Dに対し第二係止部1211Aを係止した状態とすることによって、案内歯1212E及び係合歯1212Cの相対位置関係が上記のように設定されるように構成されている。
【0101】
ケース部材122は、円筒状をなしており、ベース部材121の外周に取付けられている。また、ケース部材122の端部には、内側に突出する突起部122Aが形成されている。
【0102】
水栓バルブ13は、棒状をなし、所定の緩衝機構(例えば、ばね)が設けられた軸部、及び、当該軸部の端部(図18の右側端部)に設けられた弁体とを備えている。尚、前記弁体は、ダイヤフラム弁におけるパイロット弁(例えば、特開2012−145144におけるパイロット弁32)を想定している。水栓バルブ13は、第一構成部1211の内周に挿通され、自身の中心軸方向に沿って往復移動可能とされている。水栓バルブ13の移動による動力は、前記弁体へと伝達されるようになっており、水栓バルブ13の移動に伴い、前記弁体は、所定の前進位置又は所定の後退位置に配置されるようになっている。その結果、前記吐水部における止水状態及び吐水状態を切換可能となっている。本実施形態では、前記弁体が前記後退位置に配置されているときにおける水栓バルブ13の状態(図18参照)が第二状態に相当する。この第二状態においては、前記弁体が図示しない座面から離間した状態となり、前記吐水部が吐水状態とされる。一方、前記弁体が前記前進位置に配置されているときにおける水栓バルブ13の状態(図18において、水栓バルブ13及び移動部材15を右側に移動させるとともに、ばね部材14をより圧縮させた状態)が第一状態に相当する。この第一状態においては、前記座面へと弁体が接触することで、前記吐水部が止水状態とされる。
【0103】
そして、本第2実施形態においては、移動部材15(後述する外側部材1522)を押圧する度に、前記吐水部における吐水状態及び止水状態が交互に切換えられることとなる。尚、前記止水状態(前記第一状態)としたときには、前記緩衝機構が圧縮されることで、水栓バルブ13を若干ではあるが前進させることが可能となっている。そのため、前記吐水部を止水状態から吐水状態へと切換える際に、移動部材15を押圧移動させることができるようになっている。
【0104】
ばね部材14は、上記第1実施形態と同様に、移動部材15に対しその復動方向に沿った付勢力を付与するものである。
【0105】
移動部材15は、その一部がケース部材122の内部に配置されており、ケース部材122の軸方向に沿って往復移動可能な状態とされている。ここで、往動方向は、移動部材15がケース部材122の奥側へと押し込まれることとなる方向(図17及び図18における右方向)であり、復動方向は、前記押し込まれることとなる方向の逆方向(図17及び図18における左方向)である。
【0106】
移動部材15は、回転リング151及びリング保持部材152を備えている。
【0107】
回転リング151は、上記第1実施形態と同様に、環状をなしており、自身の中心軸(回転軸)側に突出する複数の被係合突部151Aを備えている。本第2実施形態では、ベース部材121及び回転リング151によってロック機構19が構成されている。
【0108】
さらに、回転リング151は、ばね部材14の外側に位置している。つまり、移動部材15の移動方向において、ばね部材14及び回転リング151はオーバーラップした状態となっている。
【0109】
リング保持部材152は、内側部材1521及び外側部材1522を備えている。
【0110】
内側部材1521は、一端部が開口する一方、他端部内側に水栓バルブ13の先端部が取付けられる被取付部1521Aの形成された円筒状をなしている。被取付部1521Aは、中心に水栓バルブ13の先端部が挿通される貫通部を備えた板状をなしている。そして、前記貫通部に対し水栓バルブ13の先端部に形成されたくびれ部分が配置されるとともに、当該くびれ部分に対しC字状のワッシャー1523が配置されることで、水栓バルブ13の先端部が内側部材1521に取付けられた状態となっている。
【0111】
また、内側部材1521の外周には、凸状及び凹状の一方(本実施形態では、凸状)をなす係止部1521Bが形成されている。係止部1521Bは、内側部材1521の周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では、2つ)設けられている。尚、内側部材1521には、その軸方向に沿って延びる図示しないスリット部が設けられている。これにより、スリット部が拡幅するように内側部材1521を変形(弾性変形)させることで、内側部材1521の一端部の開口を拡径可能となっている。また、係止部1521Bは、内側部材1521の径方向に沿って弾性変形可能となっている。さらに、係止部1521Bのうち内側部材1521の他端側に位置する面は、内側部材1521の一端から他端に向けて徐々に内側への突出量が小さくなる傾斜面となっている。
【0112】
加えて、内側部材1521の一端部の開口内周には、内側に向けて突出する支持突部1521Cが形成されている。また、内側部材1521の内周であって支持突部1521Cよりも他端側には、段部1521Dが設けられている。そして、上記第1実施形態と同様に、内側部材1521の内周に回転リング151が配置され、支持突部1521Cと段部1521Dとによって回転リング151が挟まれた状態とされている。その結果、回転リング151は、リング保持部材152に対し相対回転可能である一方、回転リング151の軸方向(移動部材15の往復移動方向)に沿ってリング保持部材152に対し相対移動不能となっている。尚、本実施形態においても、支持突部1521Cのうち内側部材1521の一端側に位置する面は、内側部材1521の一端から他端に向けて徐々に内側への突出量が大きくなる傾斜面となっている。そのため、上記第1実施形態と同様の手法によって、内側部材1521の内周に回転リング151を容易に配置することできるようになっている。
【0113】
外側部材1522は、使用者によって押圧操作される部位であり、一端部が開口する一方、他端部が閉塞した有底円筒状をなしている。外側部材1522は、内側部材1521の外周に配置されており、その内周には、凸状及び凹状の一方(本実施形態では、凹状)をなす被係止部1522Aが形成されている。被係止部1522Aは、外側部材1522の周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では、2つ)設けられている。尚、本実施形態における被係止部1522Aは、外側部材1522を貫通する形状となっているが、必ずしも貫通形状とする必要はない。
【0114】
そして、外側部材1522の内周に内側部材1521が挿通され、被係止部1522Aに対し係止部1521Bが係止された状態となることで、内側部材1521に対し外側部材1522が取付けられている。詳述すると、外側部材1522の内周に対しその一端部の開口から内側部材1521を挿入していくと、外側部材1522に対し前記係止部1521Bの前記傾斜面が接触する。この状態で、外側部材1522の内周へと内側部材1521をさらに押し込むと、係止部1521Bが径方向内側に向けで弾性変形し、係止部1521Bが外側部材1522内に入り込む。そして、外側部材1522内へと内側部材1521をさらに押し込んでいき、係止部1521Bが被係止部1522Aに至ると、係止部1521Bの弾性変形が解除され、被係止部1522Aに対し係止部1521Bが係止される。その結果、内側部材1521に対し外側部材1522が取付けられることとなる。すなわち、本第2実施形態において、被係止部1522Aに対する係止部1521Bの係止は、スナップフィットにより実現されている。尚、内側部材1521に対する外側部材1522の取付前に、内側部材1521の内周に回転リング151が配置される。
【0115】
さらに、内側部材1521に対し外側部材1522を取付けた状態では、外側部材1522により内側部材1521の前記スリット部の拡幅が規制され、ひいては内側部材1521における一端部開口の拡径が規制されるようになっている。
【0116】
また、外側部材1522の外周には、その周方向に沿って延びる段差部1522Bが形成されている。段差部1522Bは、ケース部材122の内部に配置されており、移動部材15の移動方向に沿って突起部122Aに対し係止された状態となっている。これにより、ばね部材14からの付勢力によって移動部材15が復動した際に、段差部1522Bが突起部122Aと接触することで、移動部材15がケース部材122から外れないようになっている。
【0117】
以上、本第2実施形態によれば、基本的には、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0118】
加えて、スナップフィットにより内側部材1521に対し外側部材1522が取付けられるため、組立作業性を一層高めることができ、生産性をより向上させることができる。
【0119】
さらに、第二構成部1212(外歯部1212A)の内周に第一構成部1211を挿通し、第二被係止部1212Dに対し第二係止部1211Aが係止されることにより、案内歯1212E及び係合歯1212Cの相対位置関係が所定の位置関係となる。つまり、単に第二被係止部1212Dに対し第二係止部1211Aを係止しさえすれば、案内歯1212E及び係合歯1212Cの相対位置関係は自ずと所定の相対位置関係になる。従って、組立作業性を一段と高めることができ、一層良好な生産性を得ることができる。
【0120】
また、第二被係止部1212Dに対し第二係止部1211Aが係止されることにより、第一構成部1211に対する外歯部1212Aの相対回転も規制される。従って、案内歯1212E及び係合歯1212Cの相対位置関係をより確実に所定の位置関係にて維持することができ、装置の動作安定性を一段と向上させることができる。
【0121】
加えて、回転リング151は、ばね部材14の内側に位置しており、回転リング151等の往復移動方向において、ばね部材14及び回転リング151がオーバーラップした状態となっている。従って、ばね部材14及び回転リング151が直列的に並んで配置される場合と比較して、往復移動方向に沿ったロック機構19の小型化(短尺化)を図ることができる。その結果、ロック機構19を備えた装置(水栓11)をよりコンパクトなものとすることができる。
【0122】
さらに、機構部としての水栓バルブ13が回転リング151及び円筒部1212Hの内側に配置されるため、回転リング151等の移動方向に沿った装置(水栓11)の長さを比較的小さくすることができる。その結果、装置をより小型化させることができ、コストの低減や生産性の向上を一段と図ることができる。
【0123】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0124】
(a)上記第1実施形態では、それぞれ機構部に相当するばね部材6及び伝達部材8の双方が円筒部511Hの内側に配置されるように構成されているが、ばね部材6及び伝達部材8のうちの一方のみが円筒部511Hの内側に配置されるように構成してもよい。
【0125】
(b)上記実施形態では、挿通部材2において、収容部21及び通水部22が一体とされているが、収容部21及び通水部22を別体とし、例えば、両者がねじ止め等により接続されるように構成してもよい。尚、この場合には、収容部21に対する通水部22のねじ止めに伴い、鍔部23及び通水部22でエプロン100を挟み込むことにより、挿通部材2をエプロン100に対し取付けることとしてもよい。すなわち、取付部材3を省略することとしてもよい。
【0126】
(c)上記第1実施形態において、操作装置1はエプロン100に取付けられているが、操作装置1をエプロン100以外に取付けることとしてもよい。例えば、槽体や槽体近傍の構造物(カウンタなど)に対し操作装置1を取付けることとしてもよい。
【0127】
(d)上記第1実施形態では、内側部材722の外側に、大径部512A(外側部材に相当する)が配置され、上記第2実施形態では、内側部材1521の外側に外側部材1522が配置されるように構成されているが、内側部材の外側に外側部材を配置しないように構成してもよい。
【符号の説明】
【0128】
1…操作装置、6…ばね部材(機構部)、8…伝達部材(機構部)、9,19…ロック機構、13…水栓バルブ(機構部)、14…ばね部材、51,121…ベース部材、71,151…回転リング、72,152…リング保持部材、511B,1212A…外歯部、511C,1212C…係合歯、511H,1212H…円筒部、512A…大径部(外側部材)、512E,1212E…案内歯、512G…第一傾斜部(傾斜部)、512J…第二傾斜部(傾斜部)、151A,711…被係合突部、722,1521…内側部材、722A…支持突部、722B…段部、722C…スリット部、1211…第一構成部(被固定部)、1211A…第二係止部、1212D…第二被係止部、1521C…係止部、1522…外側部材、1522A…被係止部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18