特許第6734106号(P6734106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6734106
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】車載用熱交換器
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20200728BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20200728BHJP
   F28F 3/00 20060101ALI20200728BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20200728BHJP
   F25B 39/04 20060101ALI20200728BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20200728BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20200728BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20200728BHJP
   H01M 10/6565 20140101ALI20200728BHJP
【FI】
   B60K11/04 H
   F28D9/02
   F28F3/00 311
   F25B1/00 399Y
   F25B39/04 H
   H01M10/613
   H01M10/625
   H01M10/6556
   H01M10/6565
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-87959(P2016-87959)
(22)【出願日】2016年4月26日
(65)【公開番号】特開2017-196966(P2017-196966A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 幸克
(72)【発明者】
【氏名】内田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】川上 芳昭
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−220712(JP,A)
【文献】 特開2005−121319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
F25B 1/00
F25B 39/04
F28D 9/02
F28F 3/00
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6556
H01M 10/6565
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数枚の伝熱プレートを備え、蓄電池を冷却することにより排出された熱をラジエータ水に放熱する車載用熱交換器であって、
複数枚の前記伝熱プレートは、隣り合う2枚の前記伝熱プレートの間に形成された冷媒流路に冷媒を流入させる冷媒流入口と、前記冷媒流路から冷媒を流出させる冷媒流出口とを有し、
前記冷媒流路の底面部分は、前記冷媒流入口が位置している側から前記冷媒流出口が位置している側に向かって高さが低くなるように傾斜しており、
前記伝熱プレートは、角部が丸みを帯びた、台形または平行四辺形の外形形状を有しており、側方に配置される一対の辺が、鉛直方向に対して平行となるように配置されている、車載用熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート式熱交換器に関し、特に、蓄電池を冷却することにより排出された熱をラジエータ水に放熱する車載用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平05−126478号公報(特許文献1)に開示されているように、プレート式熱交換器が知られている。プレート式熱交換器は、通路孔と伝熱面とが形成された複数枚の伝熱プレートを備えている。隣り合う2枚の伝熱プレート間には、異種作動媒体(熱交換媒体)を通流させるための流路が形成される。異種作動媒体のうちの一方は、たとえば相変化を伴わないものであり、他方は、相変化を伴い熱交換器で凝縮するものである。たとえばプレート式熱交換器においては、複数枚の伝熱プレートが積層されることによって、水の流路と冷媒の流路とが交互に形成されており、伝熱プレートの伝熱面を介して、水と冷媒との間で熱交換が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−126478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開平05−126478号公報(特許文献1)に開示されたプレート式熱交換器においては、凝縮した冷媒の出口となる通路孔が、熱交換器(冷媒流路)の底面部分よりも上方に形成されている。当該構成の場合、熱交換器の中に(より具体的には、冷媒流路内の空間のうち、冷媒出口よりも下方の部分に)、凝縮した冷媒が溜まりやすい。
【0005】
熱交換器内に多くの凝縮冷媒が溜まると、凝縮冷媒で伝熱面が覆われることによって熱交換性能が低下したり、サイクル制御の安定性が低下したり、より多くの冷媒封入量が必要となったりする可能性が高くなる。これらのうち、サイクル制御の安定性が低下することについては、車載用熱交換器に特有の課題である。
【0006】
すなわち、凝縮した冷媒の液面は、車両が動くことで変動する。液面が変動した場合、水冷媒熱交換器から流出される冷媒が気相になったり液相になったりする。液面の変動は、水冷媒熱交換器から流出する冷媒の乾き度の変動を招き、ひいては膨張弁(減圧装置)の流路抵抗が変動することになる。また、車両が坂道に停車して液面が冷媒出口から離れるような場合では、乾き度の大きな冷媒が連続的に熱交換器から流出することで、冷却能力の低下を招くこととなる。
【0007】
本発明は、凝縮した冷媒が冷媒流路内に滞留することを抑制可能な車載用熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づく車載用熱交換器は、積層された複数枚の伝熱プレートを備え、蓄電池を冷却することにより排出された熱をラジエータ水に放熱する車載用熱交換器であって、複数枚の上記伝熱プレートは、隣り合う2枚の上記伝熱プレートの間に形成された冷媒流路に冷媒を流入させる冷媒流入口と、上記冷媒流路から冷媒を流出させる冷媒流出口とを有し、上記冷媒流路の底面部分は、上記冷媒流入口が位置している側から上記冷媒流出口が位置している側に向かって高さが低くなるように傾斜している。
【0009】
上記の構成によれば、冷媒流路の底面部分が、冷媒流入口が位置している側から冷媒流出口が位置している側に向かって高さが低くなるように傾斜しているため、凝縮した冷媒は、冷媒流路の底面部分の傾斜形状に従って冷媒流出口に向かって移動し、冷媒流出口を通して排出されることが可能となる。結果として、凝縮した冷媒が冷媒流路内に滞留することを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成によれば、凝縮した冷媒が冷媒流路内に滞留することを抑制可能な車載用熱交換器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1における車載用熱交換器7が取り付けられた電池冷却システム10を示す模式図である。
図2】実施の形態1における車載用熱交換器7を示す斜視図である。
図3】実施の形態1における車載用熱交換器7の分解した状態を示す斜視図である。
図4】実施の形態1における車載用熱交換器7が車両内に搭載された様子を示す正面図である。
図5】実施の形態1における車載用熱交換器7が動作している様子を示す正面図である。
図6】比較例における車載用熱交換器7を示す正面図である。
図7】実施の形態2における車載用熱交換器7を示す正面図である。
図8】実施の形態2における車載用熱交換器7が動作している様子を示す正面図である。
図9】傾斜角度θと、(傾斜角度θに設定されたときの液溜まり量)/(真横に設置したときの液溜まり量)との関係を示すグラフである。
図10】実施の形態3における車載用熱交換器7を示す正面図である。
図11】実施の形態3における車載用熱交換器7が動作している様子を示す正面図である。
図12】実施の形態4における車載用熱交換器7を示す斜視図である。
図13】実施の形態5における車載用熱交換器7を示す側面図である。
図14】実施の形態6における車載用熱交換器7を示す側面図である。
図15】実施の形態7における車載用熱交換器7を示す正面図である。
図16】実施の形態8における車載用熱交換器7を示す正面図である。
図17】実施の形態9における車載用熱交換器7を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態における車載用熱交換器について、以下、図面を参照しながら説明する。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0013】
[実施の形態1]
(電池冷却システム10)
図1は、実施の形態1における車載用熱交換器7が取り付けられた電池冷却システム10を示す模式図である。電池冷却システム10は、冷凍サイクル40と、水が循環するサイクル50と、蓄電池61が収納されて空気が還流する空気ダクト60とから構成される。冷凍サイクル40は、圧縮機41、車載用熱交換器7(水冷媒熱交換器)、膨張弁42、および蒸発器43から構成される。車載用熱交換器7は、凝縮器として機能できるものである。
【0014】
水が循環するサイクル50は、ポンプ51、ラジエータ52、および車載用熱交換器7から構成される。空気ダクト60内には、蓄電池61、送風機62、蒸発器43が配置されており、送風機62の作動によって空気が空気ダクト60内を循環することで、蓄電池61が冷却される。蓄電池61を冷却することにより排出された熱は、冷凍サイクル40を介して、サイクル50内のラジエータ水に放熱される。
【0015】
(車載用熱交換器7)
図2は、車載用熱交換器7を示す斜視図である。図3は、車載用熱交換器7の分解した状態を示す斜視図である。図2および図3に示すように、車載用熱交換器7は、複数枚の伝熱プレート1と、端板2,3とを備える。隣り合う2枚の伝熱プレート1間には、熱交換媒体を通流させるための流路が形成される。複数枚の伝熱プレート1が積層されることによって、水を通流させるための水流路と、冷媒を通流させるための冷媒流路(図4中の冷媒流路715を参照)とが交互に形成される。これらの冷媒流路は、いずれも扁平で厚みの薄い略直方体状の空間を呈している。
【0016】
各々の伝熱プレート1には、冷媒流入口101、冷媒流出口102、水流入口111、水流出口112が形成されている。冷媒流入口101は、隣り合う2枚の伝熱プレート1間に形成された冷媒流路(図4中の冷媒流路715)に冷媒を通流させる。冷媒流出口102は、冷媒流路から冷媒を流出させる。水流入口111は、隣り合う2枚の伝熱プレート1間に形成された水流路に水を通流させる。水流出口112は、水流路から水を流出させる。
【0017】
複数の伝熱プレート1を積層した積層体の両端に、端板2,3がそれぞれ設けられる。端板2には、冷媒流入口21、水流入口22が形成されている。端板3には、冷媒流出口31、水流出口32が形成されている。複数枚の伝熱プレート1と、端板2,3とは、ろう付けなどによって互いに接合される。本実施の形態においては、複数枚の伝熱プレート1と、端板2,3とは、積層され互いに接合されることによって、車載用熱交換器7は、角部が丸みを帯びた(Rが付いた)略直方体の外形形状を呈している(図3参照)。
【0018】
図3に示すように、冷媒は、端板2の冷媒流入口21を通して、端板2と伝熱プレート1(1A)との間の冷媒流路(図4中の冷媒流路715を参照)に流入し(矢印R1)、この冷媒流路内を流れ(矢印R2)、伝熱プレート1(1A)の冷媒流出口102を通して流出し、最終的に、端板3の冷媒流出口31から排出される(矢印R3)。端板2の冷媒流入口21からの冷媒は、伝熱プレート1(1B)と伝熱プレート1(1C)との間の冷媒流路(図4中の冷媒流路715を参照)にも流入し、この冷媒流路内を流れ(矢印R2)、伝熱プレート1(1C)の冷媒流出口102を通して流出し、最終的に、端板3の冷媒流出口31から排出される(矢印R3)。
【0019】
温媒としての水は、端板2の水流入口22を通して、伝熱プレート1(1A)と伝熱プレート1(1B)との間の水流路に流入し(矢印W1)、この水流路内を流れ(矢印W2)、伝熱プレート1(1B)の水流出口112を通して流出し、最終的に、端板3の水流出口32から排出される(矢印W3)。端板2の水流入口22からの水は、伝熱プレート1(1C)と伝熱プレート1(1D)との間の水流路にも流入し、この水流路内を流れ(矢印W2)、伝熱プレート1(1D)の水流出口112を通して流出し、最終的に、端板3の水流出口32から排出される(矢印W3)。
【0020】
温媒の流路と冷媒の流路とを交互に形成することにより、伝熱プレート1の各々の伝熱面を介して両媒体間で熱交換を行なわせることが可能となる。蓄電池61を冷却することにより排出された熱は、冷凍サイクル40を介して、サイクル50内のラジエータ水に放熱されることが可能となる。
【0021】
図4は、車載用熱交換器7が図示しない車両内に搭載された様子を示す正面図である。車載用熱交換器7が車両(水平な地面上に置かれた車両)に搭載された状態において、伝熱プレート1の各々は、鉛直方向に沿って起立した状態を形成している。冷媒流出口31および冷媒流出口102は、同軸状に配置され、水平方向に対して平行である。水流出口32および水流出口112、冷媒流入口21および冷媒流入口101、ならびに、水流入口22および水流入口111についても同様である。
【0022】
略直方体の外形形状を呈している車載用熱交換器7を正面から見た場合(換言すると、端板3に対して直交する方向から車載用熱交換器7を見た場合)、車載用熱交換器7の外形形状は、辺710,711および辺720,721を有している。辺710,711,720,721は、いずれも直線形状を有している。
【0023】
車載用熱交換器7を立体視した場合、車載用熱交換器7の辺710,711,720,721に対応する部分は、いずれも平坦な面形状を有している。辺710,711は、車載用熱交換器7の外形形状のうちの長辺を構成しており、辺720,721は、車載用熱交換器7の外形形状のうちの短辺を構成している。辺710は、車載用熱交換器7の底面を構成している。
【0024】
本実施の形態においては、車載用熱交換器7に形成された冷媒流路715の底面部分716は、辺710の内側(上方側)に位置しており、冷媒流入口21が位置している側から冷媒流出口31が位置している側に向かって高さが低くなるように傾斜している。以下、当該構成についてより具体的に説明する。
【0025】
辺710,720によって描かれる直線同士の交点、辺720,711によって描かれる直線同士の交点、辺711,721によって描かれる直線同士の交点、辺721,710によって描かれる直線同士の交点を、それぞれ、点A,B,C,Dとする。
【0026】
冷媒流出口31および冷媒流出口102は、いずれも、車載用熱交換器7の鉛直方向における中心位置よりも下方に位置している。以下詳述するが、本実施の形態では、点A〜Dのうちの冷媒流出口31に最も近いものを点Dとすると、冷媒流出口31の中心点は、点D以外の点A〜Cのうちの最も低い位置にある点Aと同じ高さである。これに限られず、冷媒流出口31の中心点は、点D以外の点A〜Cのうちの最も低い位置にある点Aよりも下方に位置していても構わない。
【0027】
車載用熱交換器7は、便宜上、冷媒流出口31の中心軸の周りに回転可能であるものとする。辺710が水平となるように設置されたときに、冷媒流出口31の中心点を通る水平な平面を基準水平面L1とし、辺710を通る平面を平面L2としたとする。図4中に示される傾斜角度θは、反時計回り方向を正として、基準水平面L1に対する平面L2の角度として表される値である。
【0028】
本実施の形態においては、冷媒流出口31の中心点の高さ位置と、点Aの高さ位置とが同一となるように構成されている。すなわち、点Aは、冷媒流出口31の中心点を通る水平な基準水平面L1上に位置している。この状態を形成しているときの傾斜角度θを、角度θ1と定義する。本実施の形態においては、基準水平面L1と平面L2との間の傾斜角度θが、角度θ1となるように構成されている。
【0029】
図5を参照して、車載用熱交換器7が上記のように構成されていることによって、冷媒流路715内で凝縮した冷媒Rは、冷媒流路715の底面部分716の傾斜形状に従って冷媒流出口102および冷媒流出口31に向かって移動し、冷媒流出口31を通して排出されることが可能となる。凝縮した冷媒R(液溜まり)が冷媒流路715内に滞留することを効果的に抑制することができ、ひいては、凝縮した冷媒Rで伝熱面が覆われることによって熱交換性能が低下したり、サイクル制御の安定性が低下したり、より多くの冷媒封入量(コスト増)が必要となったりすることを抑制可能となり、地球温暖化に対する影響も軽減可能となる。
【0030】
[比較例]
図6は、比較例における車載用熱交換器7を示す正面図である。比較例と実施の形態1とは、以下の点において相違している。比較例における車載用熱交換器7は、辺710が水平(地面に対して平行)となるように設置されている。図4中に示される傾斜角度θに相当する値はゼロである。すなわち、比較例における車載用熱交換器7では、冷媒流路715の底面部分716は、冷媒流入口21が位置している側から冷媒流出口31が位置している側に向かって高さが低くなるように傾斜してはおらず、水平である。
【0031】
当該構成の場合、冷媒流路715内の空間のうち、冷媒流出口31よりも下方の部分に凝縮した冷媒Rが溜まりやすい。車載用熱交換器7内に多くの凝縮冷媒が溜まると、凝縮した冷媒Rで伝熱面が覆われることによって熱交換性能が低下したり、サイクル制御の安定性が低下したり、より多くの冷媒封入量が必要となったりする。
【0032】
冒頭で述べたとおり、凝縮した冷媒Rの液面は、車両が動くことで変動する。液面が変動した場合、車載用熱交換器7から流出される冷媒Rが気相になったり液相になったりする。液面の変動は、車載用熱交換器7から流出する冷媒の乾き度の変動を招き、ひいては膨張弁42(図1参照)の流路抵抗が変動することになる。また、車両が坂道に停車して液面が冷媒流出口31から離れるような場合では、乾き度の大きな冷媒が連続的に車載用熱交換器7から流出することで、冷却能力の低下を招くこととなる。
【0033】
[実施の形態2]
図7は、実施の形態2における車載用熱交換器7を示す正面図である。実施の形態2と実施の形態1とは、以下の点において相違している。実施の形態2における車載用熱交換器7は、冷媒流出口31の中心点の高さ位置と、点Cの高さ位置とが同一となるように構成されている。すなわち、点Cは、冷媒流出口31の中心点を通る水平な基準水平面L1上に位置している。
【0034】
本実施の形態では、点A〜Dのうちの冷媒流出口31に最も近いものを点Dとすると、冷媒流出口31の中心点は、点D以外の点A〜Cのうちの最も低い位置にある点Cと同じ高さである。これに限られず、冷媒流出口31の中心点は、点D以外の点A〜Cのうちの最も低い位置にある点Cよりも下方に位置していても構わない。
【0035】
冷媒流出口31の中心点と点Cとが同じ高さであるときの傾斜角度θを、角度θ2と定義する。本実施の形態においては、基準水平面L1と平面L2との間の傾斜角度θが、角度θ2となるように構成されている。本実施の形態においては、車載用熱交換器7に形成された冷媒流路715の底面部分717は、辺721の内側(上方側)に位置しており、冷媒流入口21が位置している側から冷媒流出口31が位置している側に向かって高さが低くなるように傾斜している。
【0036】
図8を参照して、車載用熱交換器7が上記のように構成されていることによって、冷媒流路715内で凝縮した冷媒Rは、冷媒流路715の底面部分717の傾斜形状に従って冷媒流出口102および冷媒流出口31に向かって移動し、冷媒流出口31を通して排出されることが可能となる。結果として、凝縮した冷媒R(液溜まり)が冷媒流路715内に滞留することを効果的に抑制することができる。
【0037】
[実施の形態3]
(θ1≦傾斜角度θ≦θ2)
図9中の線L3は、傾斜角度θと、(車載用熱交換器7が傾斜角度θに設定されたときの冷媒流路715内の液溜まり量)/(車載用熱交換器7を真横に設置したとき、すなわち車載用熱交換器7が傾斜角度θ=0°に設定されたときの冷媒流路715内の液溜まり量)との関係を示すグラフである。
【0038】
傾斜角度θ=0°から傾斜角度θが徐々に大きくなると、冷媒流路715内の液溜まり量が減少していく。傾斜角度θが0°に近い値(0°≦傾斜角度θ<θ1)に設定されることで液面が辺720に接触しているときや、あるいは、傾斜角度θが90°に近い値(θ2<傾斜角度θ≦90°)に設定されることで液面が辺711に接触しているとき、冷媒流路715内で凝縮した冷媒Rの断面形状は、長方形状や台形状を呈する。
【0039】
図10および図11を参照して、上記に対して、θ1≦傾斜角度θ≦θ2である場合には、冷媒流路715内で凝縮した冷媒Rの断面形状は、三角形状を呈することになる。このため、図9中の線L3に示すように、0°≦傾斜角度θ<θ1やθ2<傾斜角度θ≦90°の場合に比べて、θ1≦傾斜角度θ≦θ2である場合の方が、線L3の傾きが緩やかとなる。
【0040】
換言すると、0°≦傾斜角度θ<θ1やθ2<傾斜角度θ≦90°の場合に比べて、θ1≦傾斜角度θ≦θ2である場合には、傾斜角度θの変化に対して、(車載用熱交換器7が傾斜角度θに設定されたときの冷媒流路715内の液溜まり量)/(車載用熱交換器7を真横に設置したときの冷媒流路715内の液溜まり量)の変化が小さくなる。
【0041】
すなわち、車両が加速あるいは減速したり、車両が坂道を走行したり、車両がカーブ道を走行した場合には、凝縮した冷媒の液面が変動することとなるが、車載用熱交換器7がθ1≦傾斜角度θ≦θ2に設定されることで、凝縮した冷媒の液面の変動を小さく抑えることが可能となり、冷媒流路715内の液溜まり量も少なくすることが可能となり、ひいてはサイクル制御の安定性を向上させることが可能となる。したがって好ましくは、車載用熱交換器7はθ1≦傾斜角度θ≦θ2となるように構成されるとよい。
【0042】
[実施の形態4]
図12は、実施の形態4における車載用熱交換器7を示す斜視図である。図中に示す矢印Zは、鉛直方向(重力方向)を示している。矢印X−Yにより示される平面は、水平(地面に対して平行)である。実施の形態4と実施の形態1とは、以下の点において相違している。
【0043】
実施の形態1においては、車載用熱交換器7が車両(水平な地面上に置かれた車両)に搭載された状態において、伝熱プレート1の各々は、鉛直方向に沿って起立した状態を形成している。本実施の形態においては、伝熱プレート1の各々が、鉛直方向に対して傾くように設定されている。
【0044】
本実施の形態においても、車載用熱交換器7に形成された冷媒流路715の底面部分716は、冷媒流入口21が位置している側から冷媒流出口31が位置している側に向かって高さが低くなるように傾斜している。辺710,720によって描かれる直線(平面)同士の交点のうち、端板3の側に位置する部分を点Aとし、端板2の側に位置する部分を点Eとすると、車載用熱交換器7の底面(辺710)の点Eは、冷媒流出口31の中心点の高さよりも高くなるように配置されている。
【0045】
当該構成によれば、冷媒流路715内で凝縮した冷媒は、冷媒流路715の底面部分716の傾斜形状に従って冷媒流出口102および冷媒流出口31に向かってより移動しやすくなり、冷媒流出口31を通してより多く排出されることが可能となる。結果として、凝縮した冷媒(液溜まり)が冷媒流路715内に滞留することをよりいっそう抑制することが可能となる。
【0046】
ここで、辺710,721によって描かれる直線(平面)同士の交点のうち、端板3の側に位置する部分を点Dとし、端板2の側に位置する部分を点Fとする。本実施の形態では、点A,D,E,Fのうちの冷媒流出口31から最も遠いものを点Eとすると、冷媒流出口31の中心点は、点Eの高さよりも低くなるように配置されている。これに限られず、冷媒流出口31の中心点は、点Eの高さと同じ高さ位置となるように配置されていても構わない。
【0047】
[実施の形態5]
図13は、実施の形態5における車載用熱交換器7を示す側面図である。実施の形態5と実施の形態1とは、以下の点において相違している。実施の形態1においては、冷媒流出口31の中心点の高さ位置と、点Aの高さ位置とが同一となるように構成されている(図4参照)。実施の形態1においては、冷媒流出口31および冷媒流出口102は、同軸状に配置され、水平方向に対して平行である。
【0048】
本実施の形態においては、冷媒流出口31の中心点の高さ位置は、点Aの高さ位置よりも上方に位置するように構成されている(図13参照)。辺710(点Aを通る部分)は、水平方向に対して平行である。一方、車載用熱交換器7に形成された冷媒流路715の底面部分716は、冷媒流入口21が位置している側から冷媒流出口31が位置している側に向かって高さが低くなるように傾斜している。冷媒流出口31および冷媒流出口102の中心軸も、端板2の側が高く、端板3の側が低くなるように傾斜している。
【0049】
冷媒流出口31の中心点を通る水平な平面を基準水平面L4とし、冷媒流路715の底面部分716に対して平行な平面を平面L5としたとする。図13では、便宜上、平面L5が冷媒流出口31、冷媒流出口102の中心軸と一致するように描かれている。図13中に示される傾斜角度θ’は、反時計回り方向を正として、基準水平面L4に対する平面L5の角度として表される値である。
【0050】
本実施の形態においては、冷媒流出口31の中心点の高さ位置と、点Eの高さ位置とが同一となるように構成されている。すなわち、点Aは、冷媒流出口31の中心点を通る水平な基準水平面L4上に位置している。この状態を形成しているときの傾斜角度θ’を、角度θ1’と定義する。本実施の形態においては、基準水平面L4と平面L5との間の傾斜角度θ’が、角度θ1’となるように構成されている。
【0051】
車載用熱交換器7が上記のように構成されていることによっても、冷媒流路715内で凝縮した冷媒は、冷媒流路715の底面部分716の傾斜形状に従って冷媒流出口102および冷媒流出口31に向かって移動し、冷媒流出口31を通して排出されることが可能となる。結果として、凝縮した冷媒(液溜まり)が冷媒流路715内に滞留することを効果的に抑制することができる。
【0052】
[実施の形態6]
図14は、実施の形態6における車載用熱交換器7を示す側面図である。実施の形態6と実施の形態5とは、以下の点において相違している。実施の形態6における車載用熱交換器7は、基準水平面L4と平面L5との間の傾斜角度θ’が、角度θ2’(=90°−35°=55°)となるように構成されている。
【0053】
当該構成によれば、車両が35°未満の角度で傾いた場合に(たとえば、車両が35°未満の坂道を登るような場合に)、伝熱プレート1が水平になることはない。車両がこのような状況に置かれた場合であっても、本実施の形態によれば、冷媒流路715内で凝縮した冷媒は、冷媒流路715の底面部分716の傾斜形状に従って冷媒流出口102および冷媒流出口31に向かって移動し、冷媒流出口31を通して排出されることが可能となる。結果として、凝縮した冷媒(液溜まり)が冷媒流路715内に滞留することを効果的に抑制することができる。好ましくは、車載用熱交換器7はθ1’≦傾斜角度θ’≦θ2’となるように構成されるとよい。
【0054】
[実施の形態7]
図15は、実施の形態7における車載用熱交換器7を示す正面図である。実施の形態1では、伝熱プレート1の各々を正面から見た場合、伝熱プレート1の各々は、角部が丸みを帯びた(Rが付いた)略長方形の外形形状を呈している(図4参照)。
【0055】
図15に示すように、本実施の形態においては、伝熱プレート1の各々を正面から見た場合、伝熱プレート1の各々は、角部が丸みを帯びた(Rが付いた)略台形の外形形状を呈している。冷媒流出口31の中心点の高さ位置と、点Aの高さ位置とが同一となるように構成されており、冷媒流出口31の中心点を通る水平な平面を基準水平面L1とすると、点Dは基準水平面L1よりも下方に位置している。
【0056】
当該構成によっても、車載用熱交換器7に形成された冷媒流路715の底面部分716は、辺710の内側(上方側)に位置しており、冷媒流入口21が位置している側から冷媒流出口31が位置している側に向かって高さが低くなるように傾斜している。当該構成によっても、凝縮した冷媒(液溜まり)が冷媒流路715内に滞留することを効果的に抑制することができる。
【0057】
[実施の形態8]
図16は、実施の形態8における車載用熱交換器7を示す正面図である。実施の形態7では、伝熱プレート1の各々を正面から見た場合、伝熱プレート1の各々は、角部が丸みを帯びた(Rが付いた)略台形の外形形状を呈している(図15参照)。
【0058】
本実施の形態においては、伝熱プレート1の各々を正面から見た場合、伝熱プレート1の各々は、角部が丸みを帯びた(Rが付いた)略平行四辺形の外形形状を呈している。冷媒流出口31の中心点の高さ位置と、点Aの高さ位置とが同一となるように構成されており、冷媒流出口31の中心点を通る水平な平面を基準水平面L1とすると、点Dは基準水平面L1よりも下方に位置している。当該構成によっても、凝縮した冷媒(液溜まり)が冷媒流路715内に滞留することを効果的に抑制することができる。
【0059】
[実施の形態9]
図17は、実施の形態9における車載用熱交換器7を示す正面図である。実施の形態7では、伝熱プレート1の各々を正面から見た場合、伝熱プレート1の各々は、角部が丸みを帯びた(Rが付いた)略台形の外形形状を呈している(図15参照)。実施の形態7では、辺711が水平である。
【0060】
図17に示すように、辺711は、水平でなくてもよい。本実施の形態では、点Cが点Bの高さ位置よりも高くなるように、辺711が構成されている。当該構成によっても、車載用熱交換器7に形成された冷媒流路715の底面部分716が、冷媒流入口21が位置している側から冷媒流出口31が位置している側に向かって高さが低くなるように傾斜していることで、凝縮した冷媒(液溜まり)が冷媒流路715内に滞留することを効果的に抑制することができる。
【0061】
以上、実施の形態について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 伝熱プレート、2,3 端板、7 車載用熱交換器、10 電池冷却システム、21,101 冷媒流入口、22,111 水流入口、31,102 冷媒流出口、32,112 水流出口、40 冷凍サイクル、41 圧縮機、42 膨張弁、43 蒸発器、50 サイクル、51 ポンプ、52 ラジエータ、60 空気ダクト、61 蓄電池、62 送風機、710,711,720,721 辺、715 冷媒流路、716,717 底面部分、A,B,C,D,E,F 点、L1,L4 基準水平面、L2,L5 平面、L3 線、R 冷媒、R1,R2,R3,W1,W2,W3,X,Z 矢印。
図1
図2
図3
図4
図5
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図17