特許第6734151号(P6734151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6734151
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】X線コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20200728BHJP
【FI】
   A61B6/03 321B
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-165985(P2016-165985)
(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公開番号】特開2018-29909(P2018-29909A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】辻田 和彦
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−005319(JP,A)
【文献】 特開2011−115325(JP,A)
【文献】 特開平09−056710(JP,A)
【文献】 特開2003−260048(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0235377(US,A1)
【文献】 特開2007−61634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源とX線検出器とが取り付けられた回転フレームと、
前記回転フレームを回転軸周りに回転可能に支持する固定フレームと、
前記回転フレームと前記固定フレームとの間に設けられたカバーと、
前記カバーと前記回転フレームとの間に設けられ、前記回転フレームの回転に伴い発生する空気の流れを、前記回転フレームの外周側から内周側に向ける整流板と、
を具備するX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記整流板は、前記回転フレームの回転時における、前記回転フレームの外縁よりも内側にある前記カバーと前記回転フレームとの間の空間の空気圧を、前記外縁よりも外側にある空間の空気圧に比して低下させる、請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記整流板は、前記回転フレームと前記カバーとの間の空間の外縁を覆うように前記カバーに取付けられる、請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記カバーは、円周方向に沿って複数の小カバーに分割され、
前記複数の小カバーは、前記円周方向に沿って互いに間隙を空けて配置される、
請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記整流板は、前記複数の小カバーにそれぞれ対応する複数の整流板を有し、
前記複数の整流板各々は、前記間隙を挟んで前記空気の流れの上流側に設けられた第1の整流板と、前記間隙を挟んで下流側に設けられた第2の整流板とを有し、
前記第1の整流板の前記間隙側の部分は、前記回転フレームの内周側へ折れ曲っている、
請求項4記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記整流板は、前記回転フレームと前記カバーとの間の空間の外縁よりも内周側に設けられる複数の整流板を有し、
前記複数の整流板各々は、前記空気の流れを前記回転フレームの内周側に向けるように配置される、
請求項4記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記固定フレームのうちの、前記複数の小カバーのうちの隣り合う2つの小カバーの間の前記間隙に対向する位置に取付けられた留め具を更に備え、
前記隣り合う2つの小カバーは、前記留め具に取付けられる、
請求項4記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記整流板は、前記複数の小カバーにそれぞれ対応する複数の整流板を有し、
前記複数の整流板各々は、前記空気の流れの上流側に設けられた第1の整流板と、下流側に設けられた第2の整流板とを有し、
前記第1の整流板の前記留め具側の部分は、前記留め具よりも上流側において内周側へ折れ曲り、
前記第2の整流板の前記留め具側の部分は、前記留め具の外周側においてオーバラップする、
請求項7記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影装置は、連続的に回転する回転部に電力を供給するためのスリップリングを有している。固定部から回転部に電力を供給するためスリップリングに摺り接触するブラシが設けられているが、スリップリングとブラシとの摺り接触に伴い導電性の摩耗粉が発生する。そのため定期的な清掃が必要になっている。また、摩耗粉が架台内に飛散すると電気的絶縁が悪化し、故障や誤動作が生じる可能性があり、架台内の広範囲の清掃が必要となる。冷却ファンを介して架台内から撮影室内に摩耗粉が放出された場合、被験者や操作者への影響も懸念される。このため、摩耗粉が架台内もしくは架台外へ飛散すると、定期的な清掃又はメンテナンスは装置の稼働率を下げると共に、操作者に対するメンテナンスコストを増大させてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−115325号公報
【特許文献2】特開2010−005319号公報
【特許文献3】特表2010−509741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、摩耗粉の飛散防止及び架台のメンテナンスの簡便化を可能とするX線コンピュータ断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、X線源とX線検出器とが取り付けられた回転フレームと、前記回転フレームを回転軸周りに回転可能に支持する固定フレームと、前記回転フレームと前記固定フレームとの間に設けられたカバーと、前記カバーと前記回転フレームとの間に設けられ、前記回転フレームの回転に伴い発生する空気の流れを、前記回転フレームの外周側から内周側に向ける整流板と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る架台の模式的な斜視図である。
図3図3は、図2の回転フレームに取付けられたスリップリングを模式的に示す図である。
図4図4は、図2の回転フレームの回転に伴い発生する空気の流れを模式的に示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る架台の内部を背面から見た図である。
図6図6は、図5の模式的な6−6断面図である。
図7図7は、図5の間隙Gaを含む局所領域Aを背面から見た斜視図(摩耗粉飛散防止カバーを含む)である。
図8図8は、図5の間隙Gaを含む局所領域Aを背面から見た斜視図(摩耗粉飛散防止カバーを含まず)である。
図9図9は、図5の間隙Gaを含む局所領域Aを背面から見た平面図(摩耗粉飛散防止カバーを含まず)である。
図10図10は、本実施形態に係る整流板による空気の流れの変化と圧力の変化とを模式的に示す図である。
図11図11は、本実施形態の変形例に係る第2の整流板を示し、図5の局所領域Aを背面から見た平面図である。
図12図12は、変形例に係る第2の整流板を示し、図5の局所領域Aを正面から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるX線コンピュータ断層撮影装置を説明する。
【0008】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、架台10とコンソール100とを有する。例えば、架台10はCT撮影室に設置され、コンソール100はCT撮影室に隣接する制御室に設置される。架台10とコンソール100とは互いに通信可能に接続されている。架台10は、被検体PをX線CTスキャンするためのスキャン機構を搭載する。コンソール100は、架台10を制御するコンピュータである。
【0009】
図2は、本実施形態に係る架台10の斜視図である。なお、図2においては、外装カバーが取り外された架台10が示されている。図2に示すように、架台10は、架台回転部50と架台固定部52とを有している。図2に示すように、架台回転部50は、中央に開口(ボア)が形成された略円筒形の回転フレーム51を有している。回転フレーム51は、アルミニウム等の金属により形成される。回転フレーム51には、X線源13やX線検出器15、高電圧発生器17、データ収集回路27等の各種機器が取付けられる。X線源13やX線検出器15、高電圧発生器17、データ収集回路27等の各種機器は、架台固定部52からの電力の供給を受けて作動する。X線管13とX線検出器15とはボアを挟んで対向するように回転フレーム51に取り付けられる。
【0010】
図2に示すように、架台固定部52は、架台回転部50を回転軸R1回りに回転可能に支持する。具体的には、架台固定部52は、固定フレーム53、立設フレーム55、ベーススタンド57及び架台アーム59を有している。固定フレーム53は、アルミニウム等の金属により形成され、中央にボアが形成された金属枠である。固定フレーム53は、図示しない軸受けを介して、回転軸R1周りに回転フレーム51を回転可能に支持している。回転フレーム51は、回転駆動装置21からの駆動信号の供給を受けて回転軸R1周りに回転する。なお、固定フレーム53は、図2に示す形状に限定されず、回転フレーム51を回転可能に支持可能であれば、任意の形状に形成可能である。また、固定フレーム53には、各種部材を支持等するための種々の鋳物が取付けられても良い。
【0011】
固定フレーム53の両側面側には一対の立設フレーム55が取付けられている。一対の立設フレーム55の他端側にはベーススタンド57が取付けられている。ベーススタンド57には一対の立設フレーム55が立設して設けられている。ベーススタンド57は、CT撮影室の床面に据え付けられている。ベーススタンド57は、立設フレーム55を介して固定フレーム53を床面から離反して支持する。ベーススタンド57は、アルミニウム等の金属により形成される。
【0012】
二つの架台アーム59は、回転軸R1に直交し床面に平行する水平軸(以下、チルト軸と呼ぶ)R2回りに傾斜(チルト)可能に固定フレーム53を支持している。各架台アーム59は、ベーススタンド57の上部に取り付けられ、ベーススタンド57と固定フレーム53とを結合している。固定フレーム53のチルトにより、回転軸R1及び水平軸R2に直交する垂直軸R3が床面に対して傾斜する。架台アーム59は、図示しない駆動装置からの駆動信号の供給を受けて固定フレーム53をチルトする。架台アーム59は、アルミニウム等の金属により形成される。
【0013】
ここで、回転軸R1に平行する軸をZ軸に規定し、Z軸に水平に直交しチルト軸R2に平行する軸をX軸に規定し、X軸及びZ軸に鉛直に直交する軸をY軸に規定する。X軸、Y軸及びZ軸は直交座標系を成す。また、回転フレーム51に対してX線管13等が取付けられている側を正面側、固定フレーム53側を背面側と呼ぶことにする。Z軸に沿って正面側から背面側への方向を+Z軸方向、Z軸に沿って背面側から正面側への方向を−Z軸方向、架台10を正面から見てX軸に沿って左側から右側への方向を+X軸方向、右側から左側への方向を−X軸方向、Y軸に沿って下方から上方への方向を+Y軸方向、上方から下方への方向を−Y軸方向とする。
【0014】
図1に示すように、X線源13は、高電圧発生器17に接続されている。本実施形態に係るX線源13としては、X線管やX線発生素子が利用可能である。以下、本実施形態に係るX線源13は、真空容器に陽極と陰極とを装備したX線管であるものとする。高電圧発生器17は、例えば、回転フレーム51に取付けられている。高電圧発生器17は、架台の電源装置(図示せず)からスリップリング及びブラシを介して供給された電力から、架台制御回路29による制御に従いX線管13に印加する高電圧を発生しフィラメント加熱電流を供給する。高電圧発生器17とX線管13とは高圧ケーブル(図示せず)を介して接続されている。高電圧発生器17により発生された高電圧は、高圧ケーブルを介して、X線管13に収容された陽極と陰極との間に印加される。また、高電圧発生器17により発生されたフィラメント加熱電流は、高圧ケーブルを介して、X線管13の陰極に供給される。
【0015】
回転フレーム51は、回転駆動装置21からの動力を受けて回転軸R1回りに一定の角速度で回転する。回転駆動装置21としてダイレクトドライブモータやサーボモータ等の任意のモータが用いられる。回転駆動装置21は、例えば、架台10に収容されている。回転駆動装置21は、架台制御回路29からの駆動信号を受けて回転フレーム51を回転させるための動力を発生する。
【0016】
回転フレーム51の開口にはFOV(field of view)が設定される。回転フレーム51のボア内には寝台23に支持された天板が挿入される。天板には被検体Pが載置される。寝台23は、天板を移動自在に支持する。寝台23には寝台駆動装置25が収容されている。寝台駆動装置25は、架台制御回路29からの駆動信号を受けて寝台23を前後、昇降及び左右に移動させるための動力を発生する。天板は、載置された被検体Pの撮像部位がFOV内に含まれるように位置決めされる。
【0017】
X線検出器15は、X線管13から発生されたX線を検出する。具体的には、X線検出器15は、2次元湾曲面上に配列された複数の検出器素子を有している。各検出器素子は、シンチレータと光電変換素子とを有する。シンチレータは、X線を蛍光に変換する物質により形成される。シンチレータは、入射X線を、当該入射X線の強度に応じた個数の蛍光光子に変換する。光電変換素子は、蛍光を増幅して電気信号に変換する回路素子である。光電変換素子としては、例えば、光電子増倍管やフォトダイオード等が用いられる。なお、検出器素子は、上記の通りX線を光に変換してから検出する間接検出型でも良いし、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型であっても良い。直接検出型の検出器素子としては、例えば、半導体の両端に電極が取り付けられてなる半導体ダイオードを含むタイプが適用可能である。
【0018】
図1に示すように、X線検出器15にはデータ収集回路27が接続されている。データ収集回路27は、X線検出器15により検出されたX線の強度に応じた電気信号をX線検出器15から読み出し、ビュー期間に亘るX線の線量に応じたデジタル値を有する生データを収集する。
【0019】
架台制御回路29は、コンソール100のシステム制御回路115からのスキャン条件に従いX線CTスキャンを実行するために高電圧発生器17、回転駆動装置21、寝台駆動装置25及びデータ収集回路27を同期的に制御する。本実施形態において架台制御回路29は、CTスキャンを実行するために高電圧発生器17、回転駆動装置21、寝台駆動装置25及びデータ収集回路27を同期的に制御する。ハードウェア資源として、架台制御回路29は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の処理装置(プロセッサ)とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置(メモリ)とを有する。また、架台制御回路29は、ASICやフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Logic Device:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されても良い。
【0020】
図1に示すように、コンソール100は、前処理回路101、再構成回路103、画像処理回路105、表示回路109、入力回路111、主記憶回路113及びシステム制御回路115を有する。前処理回路101、再構成回路103、画像処理回路105、表示回路109、入力回路111、主記憶回路113及びシステム制御回路115間のデータ通信は、バス(bus)を介して行われる。
【0021】
前処理回路101は、ハードウェア資源として、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等の記憶装置とを有する。前処理回路101は、架台10から伝送された生データに対数変換等の前処理を施す。前処理後の生データは投影データとも呼ばれている。
【0022】
再構成回路103は、ハードウェア資源として、CPUあるいはMPU、GPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。再構成回路103は、前処理後の生データに基づいて被検体Pに関するCT値の空間分布を表現するCT画像を発生する。また、再構成回路103は、位置決めスキャンにより収集された生データに基づいて、被検体Pの位置決め等のために用いられる位置決め画像を発生する。画像再構成アルゴリズムとしては、FBP(filtered back projection)法やCBP(convolution back projection)法等の解析学的画像再構成法や、ML−EM(maximum likelihood expectation maximization)法やOS−EM(ordered subset expectation maximization)法等の統計学的画像再構成法等の既存の画像再構成アルゴリズムが用いられれば良い。
【0023】
画像処理回路105は、再構成回路103により再構成されたCT画像に種々の画像処理を施す。例えば、画像処理回路105は、当該CT画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して表示画像を生成する。画像処理回路105は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。また、画像処理回路105は、ASICやFPGA、CPLD、SPLDにより実現されても良い。
【0024】
表示回路109は、2次元のCT画像や表示画像等の種々のデータを表示する。具体的には、表示回路109は、表示インタフェース回路と表示機器とを有する。表示インタフェース回路は、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換する。表示信号は、表示機器に供給される。表示機器は、表示対象を表すビデオ信号を表示する。表示機器としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
【0025】
入力回路111は、ユーザからの各種指令を入力する。具体的には、入力回路111は、入力機器と入力インタフェース回路とを有する。入力機器は、ユーザからの各種指令を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェース回路は、入力機器からの出力信号をバスを介してシステム制御回路115に供給する。
【0026】
主記憶回路113は、種々の情報を記憶するHDD(hard disk drive)やSSD(solid state drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、主記憶回路113は、CD−ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。例えば、主記憶回路113は、CT画像や表示画像のデータを記憶する。また、主記憶回路113は、本実施形態に係る方向性変調スキャンに関する制御プログラム等を記憶する。
【0027】
システム制御回路115は、ハードウェア資源として、CPUやMPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。また、システム制御回路115は、ASICやFPGA、CPLD、SPLDにより実現されても良い。システム制御回路115は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の中枢として機能する。具体的には、システム制御回路115は、主記憶回路113に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線コンピュータ断層撮影装置の各部を制御する。
【0028】
以下、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の詳細について説明する。
【0029】
図3は、回転フレーム51に取付けられたスリップリング71を模式的に示す図である。図3は、架台10を背面から見た図である。なお、図3においては、スリップリング71及びブラシ73よりも+Z軸方向(背面側)にある部材の図示は省略されている。図3に示すように、回転フレーム51の背面にはスリップリング71が取付けられている。スリップリング71は、銅や銀等の金属を材料として、回転軸R1を中心とする同心円状に形成される。例えば、スリップリング71は、外周側から第一相のスリップリング711、第二相のスリップリング712、第三相のスリップリング713及びグランド用のスリップリング714を有している。スリップリング71に摺り接触するようにブラシ73が固定フレーム53に取付けられている。例えば、ブラシ73は、バネを介して固定フレーム53に取付けられており、当該バネの弾性力によりスリップリング71に押さえつけられている。回転フレーム51の回転と共にスリップリング71も回転する。ブラシ73は、固定フレーム53に取付けられているので回転せず固定されている。
【0030】
図4は、回転フレーム51の回転に伴い発生する空気の流れを模式的に示す図である。図4に示すように、回転フレーム51は、回転軸R1を中心として、背面側から見て反時計回りに回転する。この際、回転フレーム51の回転方向に関し内周側から外周側に向かう空気の流れが発生する。スリップリング71とブラシ73との摺り接触によりスリップリング71とブラシ73とから摩耗粉が発生する。摩耗粉は、回転フレーム51の回転に伴い発生する空気により内周側から外周側へ飛散する。
【0031】
本実施形態に係る架台10は、摩耗粉の飛散の防止及び架台10の清掃の簡便化を実現可能な構造を有する。
【0032】
図5は、本実施形態に係る架台10の内部を背面から見た図である。図6は、図5の模式的な6−6断面図である。なお6−6断面は、後述の留め具77に交差せずに回転軸R1を通る架台10の縦断面図である。図5及び図6に示すように、回転フレーム51と固定フレーム53との間に摩耗粉の飛散防止のためのカバー(以下、摩耗粉飛散防止カバーと呼ぶ)75が設けられている。摩耗粉飛散防止カバー75は、回転フレーム51のスリップリング71の配列面側に設けられている。例えば、摩耗粉飛散防止カバー75は、スリップリング71を覆うため、回転フレーム51のスリップリング71の配列面と同様、円環形状を有している。摩耗粉飛散防止カバー75は、例えば、樹脂等により形成される。外部からのスリップリング71の視認性を高めるため、摩耗粉飛散防止カバー75は、透明に形成されると良い。
【0033】
図6に示すように、固定フレーム53は、回転フレーム51を背面側から支持するだけでなく、回転フレーム51の外周を取り囲んでいる。以下、固定フレーム53のうちの回転フレーム51の背面側に位置する部分を主要部531と呼び、回転フレーム51の外周を取り囲む部分を外周部533と呼ぶことにする。外周部533には図示しない軸受けが設けられ、当該軸受けを介して回転フレーム51が回転軸R1回りに回転可能に支持されている。図5及び図6に図示されていないが、摩耗粉飛散防止カバー75は、スリップリング71を背面側から覆うように固定フレーム53の主要部531に螺子等の締結具により取付けられている。スリップリング71と主要部531との間に摩耗粉飛散防止カバー75が設けられることにより、スリップリング71と摩耗粉飛散防止カバー75との間の空間に摩耗粉を留めることができる。よって架台10内への摩耗粉の飛散を防止することができる。
【0034】
図5に示すように、摩耗粉飛散防止カバー75は、取外しの簡便等のため、円周方向に沿って分割されている。具体的には、隣り合う二つの摩耗粉飛散防止カバー75は、所定の間隙Gaを空けて配置される。
【0035】
図7は、間隙Gaを含む局所領域Aを背面から見た斜視図(摩耗粉飛散防止カバー75を含む)である。図8は、局所領域Aを背面から見た斜視図(摩耗粉飛散防止カバー75を含まず)である。図9は、局所領域Aを背面から見た平面図(摩耗粉飛散防止カバー75を含まず)である。
【0036】
図7図8及び図9に示すように、固定フレーム53の外周部533の、間隙Gaに対向する位置に留め具77が取付けられている。留め具77は、板金等により形成される。留め具77の幅が間隙Gaよりも広くなるように設計され、隣り合う二つの摩耗粉飛散防止カバー75各々は留め具77に背面側から重ね合わせて、螺子等の締結具により取付けられている。より詳細には、留め具77はZ形状に曲げ加工され、一端部771は外周部533に締結され、他端部773は最外周のスリップリング711から最内周のスリップリング714まで延在する。
【0037】
図7図8及び図9に示すように、摩耗粉飛散防止カバー75と回転フレーム51との間には整流板79が設けられている。より詳細には、整流板79は、回転フレーム51と摩耗粉飛散防止カバー75との間の空間の外縁を覆うように摩耗粉飛散防止カバー75の外縁部に縁取られている。整流板79が設けられることにより、スリップリング71と摩耗粉飛散防止カバー75との間の空間に摩耗粉を留めることが可能になり、架台外への摩耗粉の飛散を防止することが可能になる。整流板79は、例えば、細長い薄板形状を有し、金属等により形成される。
【0038】
具体的には、整流板79は、複数の摩耗粉飛散防止カバー75各々について設けられる。複数の整流板79各々は、間隙Gaを挟んで空気の流れの上流側に設けられた整流板(以下、上流側整流板と呼ぶ)791と、間隙Gaを挟んで下流側に設けられた整流板(以下、下流側整流板と呼ぶ)793とを有する。上流側整流板791と下流側整流板793とは、細長い薄板形状を有している。下流側整流板793の間隙Ga側の先端部分7931は、留め具77の折れ曲がり部775にオーバラップする。これにより、留め具77と下流側整流板793との隙間を低減することができる。なお、下流側整流板793の先端部分7931は、下流側整流板793の破損防止等のため、折れ曲がり部775に締結されなくて良い。なお、破損の虞がない場合、当該隙間を更に低減するため、先端部分7931は折れ曲がり部775に締結されても良い。
【0039】
上流側整流板791は、回転フレーム51の回転に伴い発生する空気の流れを回転フレーム51の外周側から内周側に向けるため、折れ曲がり形状を有している。より詳細には、上流側整流板791の間隙Ga側の先端部分7911は、回転フレーム51の内周側へ折れ曲っている。
【0040】
ここで、図10を参照しながら、上流側整流板791が有する折れ曲がり構造の効果について説明する。図10は、整流板79による空気の流れの変化と圧力の変化とを模式的に示す図である。図10の(a)は、折れ曲がり構造を有さない整流板90による空気の流れの変化と圧力の変化とを示す、図10の(b)は、折れ曲がり構造を有する本実施形態に係る整流板79による空気の流れの変化と圧力の変化とを示す。なお、以下の説明において、摩耗粉飛散防止カバー75と回転フレーム51との間の空間であって整流板79又は整流板90よりも内側の空間を内側空間と呼び、整流板79又は整流板90よりも外側の空間を外側空間と呼ぶことにする。
【0041】
図10の(a)に示すように、回転フレーム51の回転に伴い発生した風は内周側から外周側へ向かいながら整流板90に沿って流れる。整流板90が折れ曲がり構造を有さない場合、内側空間において空気の流速は空間的に略均一であり、回転フレーム51の回転に伴う風は、整流板90間の隙間を介して外側空間に漏れ出る。すなわち、この場合、摩耗粉は隙間を介して外側空間に飛散することとなる。
【0042】
図10の(b)に示すように、回転フレーム51の回転に伴い発生した風は内周側から外周側へ向かいながら整流板79に沿って流れる。上流側整流板791が折れ曲がり構造を有することにより、上流側整流板791の内壁に沿って流れる空気は内周側へ流れ込む。この外周側から内周側への空気の流れにより、上流側整流板791よりも内周空間の空気の流速分布が乱されることとなり、当該内側空間の空気の流速が局所的に高まる。流速が局所的に高まる空間領域の空気圧は、他の空間領域の空気圧に比して低下する。すなわち、上側整流板791は、回転フレーム51の回転時における内側空間の空気圧を外側空間の空気圧に比して低下させる。これにより内側空間に負圧が生じ、隙間を介して外側空間から内側空間に空気が入り込む。よって内側空間から外側空間に摩耗粉は飛散せず、内側空間に摩耗粉を留めることができる。すなわち、保守点検の簡便化のために摩耗粉飛散防止カバー75を分割する場合であっても、整流板79を設けることにより摩耗粉飛散防止カバー75間の間隙GAから摩耗粉が飛散することを防止できる。よって摩耗粉飛散防止カバー75の分割に係るサービス性を維持することができる。
(変形例)
上記の説明において整流板79は、内側空間の外縁を覆うように、摩耗粉飛散防止カバー75を縁取るように設けられるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。回転フレーム51の回転に伴い発生する空気の流れを内周側に向けることができるのであれば、整流板79の形状及び配置については特に限定されない。
【0043】
図11は、本実施形態の変形例に係る第2の整流板81を示し、図5の局所領域Aを背面から見た平面図である。図12は、変形例に係る第2の整流板81を示し、局所領域Aを正面から見た平面図である。図11及び図12に示すように、複数の整流板81は、摩耗粉飛散防止カバー75に取付けられる。各整流板81は、回転フレーム51と摩耗粉飛散防止カバー75との間の空間の外縁を取り囲む整流板90よりも内周側、すなわち、内側空間に設けられる。より詳細には、整流板81は、回転フレーム51のスリップリング71の配列面に対向する位置ではなく、図11に示すように、内側空間であって、回転フレーム51のスリップリング71の配列面よりも外周側にオフセットした位置、換言すれば、整流板90と回転フレーム51との間の位置に設けられると良い。このように配置することにより、整流板81とスリップリング71との接触を回避し、また、スリップリング71と摩耗粉飛散防止カバー75との間隔を狭めることが可能になる。
【0044】
図11及び図12に示すように、各整流板81は、空気の流れを回転フレーム51の内周側に向けるように、回転フレーム51の回転に伴う空気の流れに対して斜めに配置される。これにより、回転フレーム51の回転時における内側空間の空気圧を外側空間の空気圧に比して低下させることができる。よって内側空間に負圧が生じ、間隙Gaを介して外側空間から内側空間に空気が入り込むので、第2の整流板81であっても、内側空間から外側空間に摩耗粉は飛散せず、内側空間に摩耗粉を留めることができる。
【0045】
なお、図11及び図12に示すように、第2の整流板81が設けられる場合、第1の整流板79の代わりに上記の折れ曲がり構造を有さない整流板90が摩耗粉飛散防止カバー75に設けられても良いし、第2の整流板81が設けられる場合であっても第1の整流板79が設けられても良い。
【0046】
上記の説明の通り、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、少なくとも回転フレーム51、固定フレーム53、摩耗粉飛散防止カバー75及び整流板79,81を有する。回転フレーム51にはX線管13とX線検出器15とが取り付けられている。固定フレーム53は、回転フレーム51を回転軸R1周りに回転可能に支持する。摩耗粉飛散防止カバー75は、回転フレーム51と固定フレーム53との間に設けられる。整流板79,81は、摩耗粉飛散防止カバー75と回転フレーム51との間に設けられ、回転フレーム51の回転に伴い発生する空気の流れを、回転フレーム51の外周側から内周側に向ける。
【0047】
上記の構成により、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、摩耗粉飛散防止カバー75と回転フレーム51との間の空間の外縁よりも内周側の空間(内側空間)において負圧が生じるので、回転フレーム51の回転時において、摩耗粉飛散防止カバー75と回転フレーム51との間の空間の外縁よりも外周側の空間(外側空間)から内側空間への空気の流れが発生する。外側空間から内側空間へ空気が流れるので、摩耗粉を内側空間に留めることができる。摩耗粉飛散防止カバー75と回転フレーム51との間の内側空間に留まった摩耗粉は、回転フレーム51の停止時等において重力により摩耗粉飛散防止カバー75の内壁を伝い架台10の下方に集積する。ユーザは、集積した摩耗粉を収集すれば良い。このように本実施形態によれば、ユーザは、架台10内の広範囲を清掃する必要がなくなり、サービス性が向上する。
【0048】
上記の通り、本実施形態によれば、摩耗粉が摩耗粉飛散防止カバー75と回転フレーム51との間の内側空間に留まるので、摩耗粉の架台内における飛散を防止することができる。よって摩耗粉が架台内に飛散することに起因する電気的絶縁の悪化を防止し、故障や誤動作が生じる可能性を低減することも可能となる。また、摩耗粉が摩耗粉飛散防止カバー75と回転フレーム51との間の内側空間に留まるので、冷却ファン等を介して架台内から撮影室内に摩耗粉が放出されることも防止できる。よって本実施形態によれば、架台10のメンテナンスが従来に比し手容易となりメンテナンスコストも低減される。また、摩耗粉による被験者や操作者への影響を懸念する必要性もなくなる。
【0049】
かくして、本実施形態によれば、摩耗粉の飛散防止及び架台のメンテナンスの簡便化が可能となる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
10…架台、13…X線源、15…X線検出器、17…高電圧発生器、21…回転駆動装置、23…寝台、25…寝台駆動装置、27…データ収集回路、29…架台制御回路、50…架台回転部、51…回転フレーム、52…架台固定部、53…固定フレーム、55…立設フレーム、57…ベーススタンド、59…架台アーム、71…スリップリング、73…ブラシ、75…摩耗粉飛散防止カバー、77…留め具、79,81…整流板、100…コンソール、101…前処理回路、103…再構成回路、105…画像処理回路、109…表示回路、111…入力回路、113…主記憶回路、115…システム制御回路。
図1
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図6
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図10
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図12