【文献】
Emine Ulku Saritas et al.,DWI of the spinal cord with reduced FOV single-shot EPI,Magnetic Resonance in Medicine,2008年 8月,vol.60, no.2,pp.468-473
【文献】
Claudia A.M. Wheeler-Kingshott et al., ADC mapping of the human optic nerve: increased resolution, coverage, and reliability with CSF-suppressed ZOOM-EPI,Magnetic Resonance in Medicine,2002年 1月,vol.47, no.1,pp.24-31
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
同一のスライスを励起する励起パルス同士の間隔である1TR(Repetition Time)に、複数のスライスをそれぞれ励起する複数の励起パルスを印加して複数スライスの収集を行うシーケンス制御部を備え、
前記シーケンス制御部は、前記複数の励起パルスの間隔が一定になる印加時刻で、前記複数の励起パルスを印加し、
前記シーケンス制御部は、1TRでの前記複数スライスの収集を1セットの収集として、各セット間で前記印加時刻ごとに励起するスライスを変化させながら前記複数の励起パルスを印加して複数セットの収集を行い、
前記励起パルスは、組織の縦磁化を、正値から負値へ、または負値から正値へと転じさせるパルスであり、
前記シーケンス制御部は、前記複数セットの収集により、TI(Inversion Time)が異なる複数のデータを収集する、磁気共鳴イメージング装置。
前記シーケンス制御部が収集したデータに基づいてADC(Apparent Diffusion Coefficient)マップを生成する生成部を更に備える、請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(以下、適宜「MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置」)及び磁気共鳴イメージング方法を説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、各実施形態において説明する内容は、原則として、他の実施形態においても同様に適用することができる。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石101と、静磁場電源102と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御回路106と、送信コイル107と、送信回路108と、受信コイル109と、受信回路110と、シーケンス制御回路120と、コンピュータ130(「画像処理装置」とも称される)とを備える。なお、磁気共鳴イメージング装置100に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、
図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、シーケンス制御回路120及びコンピュータ130内の各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
【0010】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等であり、静磁場電源102から電流の供給を受けて励磁する。静磁場電源102は、静磁場磁石101に電流を供給する。なお、静磁場磁石101は、永久磁石でもよく、この場合、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場電源102を備えなくてもよい。また、静磁場電源102は、磁気共鳴イメージング装置100とは別に備えられてもよい。
【0011】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、及びZの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及びリードアウト用傾斜磁場Grである。傾斜磁場電源104は、傾斜磁場コイル103に電流を供給する。
【0012】
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御回路106による制御の下、天板105aを、被検体Pが載置された状態で、傾斜磁場コイル103の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台105は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御回路106は、コンピューター130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0013】
送信コイル107は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、送信回路108からRF(Radio Frequency)パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。送信回路108は、対象とする原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア(Larmor)周波数に対応するRFパルスを送信コイル107に供給する。
【0014】
受信コイル109は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴信号を受信する。受信コイル109は、MR信号を受信すると、受信した磁気共鳴信号を受信回路110へ出力する。
【0015】
なお、上述した送信コイル107及び受信コイル109は一例に過ぎない。送信機能のみを備えたコイル、受信機能のみを備えたコイル、若しくは送受信機能を備えたコイルのうち、1つ若しくは複数を組み合わせることによって構成されればよい。
【0016】
受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴データを生成する。具体的には、受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによって磁気共鳴データを生成する。また、受信回路110は、生成した磁気共鳴データをシーケンス制御回路120へ送信する。なお、受信回路110は、静磁場磁石101や傾斜磁場コイル103等を備える架台装置側に備えられてもよい。
【0017】
シーケンス制御回路120は、コンピューター130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路108が送信コイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路110が磁気共鳴信号を検出するタイミング等が定義される。例えば、シーケンス制御回路120は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路である。
【0018】
なお、シーケンス制御回路120は、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路110から磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データをコンピューター130へ転送する。コンピューター130は、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御や、画像の生成等を行う。コンピューター130は、記憶回路132、入力装置134、ディスプレイ135、処理回路150を備える。処理回路150は、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136及び受付機能137を備える。
【0019】
第1の実施形態では、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136、受付機能137にて行われる各処理機能は、コンピューターによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路132へ記憶されている。処理回路150はプログラムを記憶回路132から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の処理回路150は、
図1の処理回路150内に示された各機能を有することになる。なお、
図1においては単一の処理回路150にて、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136、受付機能137にて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0020】
換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。
【0021】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD),及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路132に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0022】
なお、記憶回路132にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路106、送信回路108、受信回路110等も同様に、上記のプロセッサ等の電子回路により構成される。
【0023】
なお、シーケンス制御回路120、生成機能136、受付機能137は、それぞれシーケンス制御部、生成部、受付部の一例である。
【0024】
処理回路150は、インタフェース機能131により、シーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信し、シーケンス制御回路120から磁気共鳴データを受信する。また、インタフェース機能131を有する処理回路150は、磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データを記憶回路132に格納する。記憶回路132に格納された磁気共鳴データは、制御機能133によってk空間に配置される。この結果、記憶回路132は、k空間データを記憶する。
【0025】
記憶回路132は、インタフェース機能131を有する処理回路150によって受信された磁気共鳴データや、制御機能133を有する処理回路150によってk空間に配置されたk空間データ、生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像データ等を記憶する。例えば、記憶回路132は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。
【0026】
入力装置134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力装置134は、例えば、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスである。ディスプレイ135は、制御機能133を有する処理回路150による制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像等を表示する。ディスプレイ135は、例えば、液晶表示器等の表示デバイスである。
【0027】
処理回路150は、制御機能133により、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御を行い、撮像や画像の生成、画像の表示等を制御する。例えば、制御機能133を有する処理回路150は、撮像条件(撮像パラメータ等)の入力をGUI上で受け付け、受け付けた撮像条件に従ってシーケンス情報を生成する。また、制御機能133を有する処理回路150は、生成したシーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信する。
【0028】
処理回路150は、画像生成機能136により、k空間データを記憶回路132から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、画像を生成する。
【0029】
処理回路150は、受付機能137により、例えば入力装置134等を通じて、ユーザからの入力を受け付ける。受付機能137の詳細については後述する。
【0030】
続いて、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の背景を、簡単に説明する。
【0031】
図2は、第1の実施形態における技術背景を説明するための図である。
図2は、複数のスライスを収集するパルスシーケンスの例であり、例えば2次元スピンエコーEPI(Echo Planar Imaging)撮像のシーケンスなどが挙げられる。横軸は時刻を表す。
図2において、まずはじめに上段のシーケンスが印加され、続いて中段のシーケンスが印加され、続いて下段のシーケンスが印加される。それぞれの段は、例えば同一のスライスを励起する励起パルス同士の間隔である1TR(Repetion Time)のシーケンスに対応する。
【0032】
IRパルス10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hは、組織の縦磁化を反転させる励起パルスであるIR(Inversion Recovery)パルスである。脂肪飽和パルス11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11hは、脂肪の信号を抑制するための脂肪飽和パルスである。90度パルス12a、12b、12c、12d,12e、12f、12g、12hは、90度パルスであり、180度パルス13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hは、180度パルスである。これらの90度パルスと180度パルスの組み合わせにより、例えばエコーが生成され、エコーが生成されている間、収集が行われる。データ収集14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g、14hは、データ収集を表す。例えば2次元スピンエコーEPIの場合、上述の一つのデータ収集において、一つのスライスの2次元k空間平面が、連続的に変化する傾斜磁場及びブリップ傾斜磁場によりスイープされ、一つのスライスの2次元k空間データが収集される。
【0033】
まず、
図2の上段において、シーケンス制御回路120は、IRパルス10aを印加することにより、第1のスライスを励起する。脂肪飽和パルス11aの後、シーケンス制御回路120は、第1のスライスについて、90度パルス12a、180度パルス13aを印加し、スピンエコーを生成する。シーケンス制御回路120は、スピンエコーが生成されている間、スライス1について、データ収集14aを行う。
【0034】
続いて、シーケンス制御回路120は、IRパルス10bを印加することにより、第2のスライスを励起する。脂肪飽和パルス11bの後、シーケンス制御回路120は、第2のスライスについて、90度パルス12b、180度パルス13bを印加し、スピンエコーを生成する。シーケンス制御回路120は、スピンエコーが生成されている間、スライス2について、データ収集14bを行う。このようにして、シーケンス制御回路120は、すべてのスライスについてデータ収集を繰り返すと、1TRのデータ収集が終了する。
【0035】
次に、シーケンス制御回路120は、
図2の中段に示されるように、スライス1について、IRパルス10cを印加することにより、第1のスライスを励起し、第1のスライスの縦磁化を反転する。脂肪飽和パルス11c、90度パルス12c、180度パルス13c、データ収集14cは、例えばダミーである。
【0036】
続いて、シーケンス制御回路120は、スライス2について、IRパルス10dを印加することにより、第2のスライスを励起し、第2のスライスの縦磁化を反転する。
【0037】
続いて、脂肪飽和パルス11dの後、シーケンス制御回路120は、第1のスライスについて、90度パルス12d、180度パルス13dを印加し、スピンエコーを生成する。シーケンス制御回路120は、スピンエコーが生成されている間、スライス1について、データ収集14dを行う。この時、第1のスライスについて、TI(Inversion Time)は、IRパルス10cの印加時刻から、データ収集14dまでの時間となる。
【0038】
なお、IRパルス10d、90度パルス12d、180度パルス13d等は、第2のスライスに係るものであるので、これらのパルスは、第1のスライスに影響を与えない。
【0039】
続いて、シーケンス制御回路120は、第3のスライスについて、IRパルス10eを印加することにより、第3のスライスを励起し、第3のスライスの縦磁化を反転する。脂肪飽和パルス11eの後、シーケンス制御回路120は、第2のスライスについて、90度パルス12e、180度パルス13eを印加し、スピンエコーを生成する。その後、データ収集14eにおいて、第2のスライスについてのデータを行う。
【0040】
1TRの収集が終了すると、
図2の下段に示されるように、スライス1について、IRパルス10cにより、第1のスライスが励起される。脂肪飽和パルス11f、90度パルス12f、180度パルス13f、データ収集14fは、同様にダミーである。次に、スライス2について、IRパルス10gにより、第2のスライスが励起される。脂肪飽和パルス11g、90度パルス12g、180度パルス13g、データ収集14gは、ダミーである。次に、第3のスライスについて、IRパルス10hにより、第3のスライスが励起される。脂肪飽和パルス11h、について、シーケンス制御回路120は、第1のスライスについて、90度パルス12h、180度パルス13hを印加し、第1のスライスについて、データ収集14hを行う。
【0041】
複数のスライスについてデータ収集を行う場合、上述のように、シーケンス制御回路120は、「入れ子」になるようなパルスシーケンスを実行してもよい。このことで、シーケンス制御回路120は、複数のTIについて、収集時間を節約しながらデータ収集を行うことができる。
【0042】
しかしながら、このような構成では、IRパルスの印加間隔がばらばらになってしまう。例えば、IRパルス10aの印加時刻からIRパルス10bの印加時刻までの時間、IRパルス10cの印加時刻からIRパルス10dの印加時刻までの時間、IRパルス10fの印加時刻からIRパルス10gの印加時刻までの時間は、それぞれ異なる。
【0043】
第1に、IRパルスの印加間隔が異なると、単位時間あたりのIRパルスの印加回数が変わる。従って、単位時間あたりのIRパルスの印加回数が少ないときと多いときでMTC効果の起こる大きさが異なり、画像に誤差を生じる原因となる。従って、IRパルスの印加間隔を揃えることが望ましい。
【0044】
第2に、IRパルスの印加間隔を揃えないと、それらのIRパルスを一つのプロトコル(撮像条件の設定管理単位)で管理することができないので、IRパルス一つ一つについて撮像条件の設定をすることになり、わずらわしい。
【0045】
かかる背景に鑑みて、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100の有するシーケンス制御回路120は、励起するスライスを順次変えながら、複数の励起パルスの間隔が一定になる印加時刻で、励起パルス(例えばインバージョンパルス)を印加する。これにより、画質を向上させることができる。加えて、ユーザビリティを向上させることができる。
【0046】
かかる構成について、
図3〜
図8を用いて説明する。まず、
図3及び
図4を用いて、シーケンス制御回路120が実行するパルスシーケンスの概略について説明する。
図3は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行するパルスシーケンスについて説明した図である。
図4は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
【0047】
図3において、IRパルス15a、15b、15c、15dは、組織の縦磁化を反転させる(組織の縦磁化を、正値から負値へ、また負値から正値へと転じさせる)励起パルスであるIRパルスである。脂肪飽和パルス16a、16b、16c、16d、脂肪の信号を抑制するための脂肪飽和パルスである。90度パルス17a、17b、17c、17dは、90度パルスであり、180度パルス18a、18b、18c、18dは、180度パルスである。これらの90度パルスと180度パルスの組み合わせにより、エコーが生成され、エコーが生成されている間、収集が行われる。データ収集19a、19b、19c、19dは、データ収集を表す。
【0048】
まず、
図3の上段において、シーケンス制御回路120は、IRパルス15aを印加することにより、第1のスライスを励起する。脂肪飽和パルス16aの後、シーケンス制御回路120は、第1のスライスについて、90度パルス17a、180度パルス18aを印加し、スピンエコーを生成する。シーケンス制御回路120は、スピンエコーが生成されている間、スライス1について、データ収集19aを行う。
【0049】
続いて、シーケンス制御回路120は、IRパルス15bを印加することにより、第2のスライスを励起する。脂肪飽和パルス16bの後、シーケンス制御回路120は、第2のスライスについて、90度パルス17b、180度パルス18bを印加し、スピンエコーを生成する。シーケンス制御回路120は、スピンエコーが生成されている間、第2のスライスについて、データ収集19bを行う。このようにして、シーケンス制御回路120は、すべてのスライスについてデータ収集を繰り返すと、1TRのデータ収集が終了する。ここで、1TRとは、例えば、第1のスライスを励起するIRパルス15aが印加されてから、次に第1のスライスを励起するIRパルス15cが印加されるまでの間隔を意味する。このように、シーケンス制御回路120は、同一のスライスを励起する励起パルス同士の間隔である1TRに、複数のスライスをそれぞれ励起する複数の励起パルスを印加して複数スライスの収集を行う。例えば、
図3の例では、シーケンス制御回路120は、1TRに、第1のスライス及び第2のスライスを励起する複数のIRパルスを印加する。シーケンス制御回路120は、それらを基に、第1のスライス及び第2のスライスの収集を行う。
【0050】
次に、1TRのデータ収集が終了すると、シーケンス制御回路120は、
図3の下段に示されるように、第1のスライスについて、IRパルス15cを印加することにより、第1のスライスを励起し、第1のスライスの縦磁化を反転する。脂肪飽和パルス16c、90度パルス17c、180度パルス18c、データ収集19cは、例えばダミーである。
【0051】
続いて、シーケンス制御回路120は、第2のスライスについて、IRパルス15dを印加することにより、第2のスライスを励起し、第2のスライスの縦磁化を反転する。
【0052】
続いて、脂肪飽和パルス16dの後、シーケンス制御回路120は、第1のスライスについて、90度パルス17d、180度パルス18dを印加し、スピンエコーを生成する。シーケンス制御回路120は、スピンエコーが生成されている間、第1のスライスについて、データ収集19dを行う。この時、第1のスライスについて、TIは、IRパルス15cの印加時刻から、データ収集19dまでの時間となる。
【0053】
なお、IRパルス15d、90度パルス17d、180度パルス18dは、第2のスライスに係るものであるので、これらのパルスは、第1のスライスに影響を与えない。
【0054】
ここで、
図3においては、
図2とは異なり、励起パルスの間隔が一定になっている。換言すると、シーケンス制御回路120は、複数の励起パルスの間隔が一定になる印加時刻で、複数の励起パルスを印加する。具体的には、シーケンス制御回路120は、IRパルス15aの印加時刻からIRパルス15bの印加時刻までの時間と、IRパルス15cの印加時刻からIRパルス15dの印加時刻までの時間が一定になる印加時刻で、IRパルスを印加する。従って、単位時間あたりのIRパルスの印加回数は、
図3の上段と下段で等しくなっている。従って、
図3の上段と下段では、MTC効果の影響が等しくなる。一方で、IRパルス15bは第1のスライスを励起するIRパルスであり、IRパルス15dは第2のスライスを励起するIRパルスであり、またIRパルス15cが第1のスライスを励起する。従って、
図3の上段では、IRパルス15aの印加時刻からデータ収集19aまでの時間が第1のスライスに関するTIであり、
図3の下段では、IRパルス15cの印加時刻からデータ収集19dまでの時間が第1のスライスに関するTIである。このように、シーケンス制御回路120は、MTC効果の影響が等しくなるという条件を維持しながら、複数のTIについてのデータを収集することができる。
【0055】
図4は、かかるパルスシーケンスを模式的に示したものである。IRパルス50a、51a、52a、53a、54a、55a、56a、57a、58aはIRパルスである。IRパルス50a、53a、56aは、第1のスライスを励起する。IRパルス51a、54a、57aは、第2のスライスを励起する。IRパルス52a、55a、58aは、第3のスライスを励起する。データ収集50b、51b、52b、53b、54b、55b、56b、57b、58b、59gはデータ収集である。データ収集50b、53b、56bにおいては、第1のスライスに関するデータが収集される。データ収集51b、54b、57bにおいては、第2のスライスに関するデータが収集される。データ収集52b、55b、58bにおいては、第3のスライスに関するデータが収集される。ダミーパルス59a、59b、59c、59d、59e、59fはダミーパルスである。ダミー収集59g、59h、59i、59j、59k、59lは、ダミー収集である。なお、ダミーパルスにおいては、ダミーでパルスが印加されても良いし、何も印加されなくともよい。ダミー収集においては、ダミーで収集が行われてもよいし、何も収集されなくてもよい。
【0056】
なお、以下の例では、シーケンス制御回路120が、第1のスライス、第2のスライス、第3のスライスの3つのスライスについて収集を行う場合について説明する。
【0057】
図4の上段のように、はじめに、シーケンス制御回路120は、第1のスライスについて、IRパルス50aを印加し、データ収集50bで収集を行う。同様に、シーケンス制御回路120は、第2のスライスについて、IRパルス51aを印加し、データ収集51bで収集を行う。シーケンス制御回路120は、第3のスライスについて、IRパルス52aを印加し、データ収集52bで収集を行う。
【0058】
IRパルス50aの印加時刻がt0、データ収集50bの時刻をt0+Δ、IRパルスの印加間隔がxとすると、シーケンス制御回路120は、一例として、IRパルス50aを時刻t0で、IRパルス51aを時刻t0+xで、IRパルス52aを時刻t0+2xで印加する。
【0059】
また、シーケンス制御回路120は、一例として、データ収集50bを時刻t0+Δで、データ収集51bを時刻t0+Δ+xで、データ収集52bを時刻t0+Δ+2xで実行する。従って、TIはいずれの場合もΔとなる。
【0060】
続いて、シーケンス制御回路120は、ダミーパルス59aを、時刻t0+3xで印加し、ダミー収集59gを、時刻t0+Δ+3xで実行する。続いて、シーケンス制御回路120は、ダミーパルス59bを、時刻t0+4xで印加し、ダミー収集59hを、時刻t0+Δ+4xで実行する。
【0061】
次に、
図4の中段のように、シーケンス制御回路120は、第1のスライスについて、IRパルス53aを印加し、データ収集53bで収集を行う。同様に、シーケンス制御回路120は、第2のスライスについて、IRパルス54aを印加し、データ収集54bで収集を行う。シーケンス制御回路120は、第3のスライスについて、IRパルス55aを印加し、データ収集55bで収集を行う。IRパルス53aの印加時刻がt1、IRパルスの印加間隔がx、データ収集53bの時刻をt1+Δ+xとすると、シーケンス制御回路120は、一例として、IRパルス53aを時刻t1で、IRパルス54aを時刻t1+xで、IRパルス55aを時刻t1+2xで印加する。また、シーケンス制御回路120は、一例として、データ収集53bを時刻t1+Δ+xで、データ収集54bを時刻t1+Δ+2xで、データ収集55bを時刻t1+Δ+3xで実行する。この時、TIはいずれの場合もΔ+xとなる。
【0062】
また、シーケンス制御回路120は、ダミーパルス59c及び59dをそれぞれ時刻t1+3x、t1+4xでそれぞれ印加し、ダミー収集59i及び59jをそれぞれ時刻t1+Δ、t1+Δ+4xでそれぞれ実行する。
【0063】
次に、
図4の下段のように、シーケンス制御回路120は、第1のスライスについて、IRパルス56aを印加し、データ収集56bで収集を行う。同様に、シーケンス制御回路120は、第2のスライスについて、IRパルス57aを印加し、データ収集57bで収集を行う。シーケンス制御回路120は、第3のスライスについて、IRパルス58aを印加し、データ収集58bで収集を行う。同様に計算すると、TIはいずれの場合もΔ+2xとなる。
【0064】
また、シーケンス制御回路120は、ダミーパルス59e及び59f、ダミー収集59i及び59jを、それぞれ
図4に示されたタイミングで印加及び実行する。
【0065】
このように、シーケンス制御回路120は、1TRでの複数スライスの収集を1セットの収集として、複数セットの収集を行う。例えば、
図4の上段、中段、下段は、それぞれ1セットの収集である。これらの図からわかるように、シーケンス制御回路120は、1TRでの複数スライスの収集を1セットの収集として、各セット間でそれぞれの印加時刻ごとに励起するスライスを変化させながら複数の励起パルスを印加して複数セットの収集を行う。
【0066】
また、シーケンス制御回路120は、複数セットの収集により、TIが異なる複数のデータを収集する。より具体的には、シーケンス制御回路120は、IRパルスの印加間隔xを法として、所定のパラメーターΔと合同なTIについてのデータについて収集を行うことができる。例えば、Δ=100msec、x=500msecである場合、シーケンス制御回路120は、TI=100msec、600msec、1100msec、1600msec、2100msecにおける収集を行うことができる。
【0067】
なお、収集できるTIの値は、上述の例に限られない。例えば、パルスシーケンスには、待機時間等設計上の余裕がいくらか含まれているので、それらの時間を調整することにより、シーケンス制御回路120は、上述のTIの値とは異なるTIについて、データを収集することができる。
【0068】
なお、スライスの収集の順番や、ダミーパルスやダミー収集の入れ方については、上述の実施形態に限られない。
図5〜
図7を用いて、これらの具体例について説明する。
図5〜
図7は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
【0069】
まず、
図5の例を説明する。
図5では、ダミーパルスやダミー収集の代わりに、「前のTI」に関する収集を行うことにより、撮像時間を短縮する場合について説明する。
【0070】
図5において、IRパルス40a、41a、42a、43a、44a、45a、46a、47a、48aはIRパルスである。IRパルス40a、43a、46aは、第1のスライスを励起する。IRパルス41a、44a、47aは、第2のスライスを励起する。IRパルス42a、45a、48aは、第3のスライスを励起する。データ収集40b、41b、42b、43b、44b、45b、46b、47b、48bはデータ収集である。データ収集40b、43b、46bにおいては、第1のスライスに関するデータが収集される。データ収集41b、44b、47bにおいては、第2のスライスに関するデータが収集される。データ収集42b、45b、48bにおいては、第3のスライスに関するデータが収集される。ダミーパルス49a、49bはダミーパルスである。ダミー収集59c、59dは、ダミー収集である。
【0071】
図5と
図4を比較すると、
図5においてIRパルス46a及びデータ収集45bが
図4のパターンと異なり、その他の部分は
図4と同じである。従って、それら
図4と同様の処理を行う部分については繰り返しての説明を省略する。
【0072】
シーケンス制御回路120は、
図5の上から三段目において、IRパルス46aを印加して第1のスライスを励起し、データ収集46bにおいてデータを収集する。これは、
図4において、シーケンス制御回路120が、IRパルス56aを印加して第1のスライスを励起して、データ収集56bにおいてデータを収集する場合に対応する。しかし、
図4において、シーケンス制御回路120が、ダミーパルス59a、データ収集55b、IRパルス56a、ダミー収集59eを印加/実行するのとは異なり、
図5においては、シーケンス制御回路120は、IRパルス46aを印加し、続いてデータ収集45bを実行する。すなわち、シーケンス制御回路120が、IRパルス45aを印加して第3のスライスを励起し、第1のスライスを励起する46aに入れ込まれるタイミングで、データ収集45bを実行する。このことにより、
図5のパルスシーケンスは、
図4のパルスシーケンスと比較して、ダミーパルスの印加が1回減少し、撮像時間の短縮につながる。
【0073】
さらに、実施形態は前述の例に限られず、スライスの入れ子のパターンを工夫することにより、更なる撮像時間の短縮をすることもできる。
図6は、かかる場合の一例を表している。
【0074】
図6は、シーケンス制御回路120が印加するパルスシーケンスの別の例を模式的に示したものである。IRパルス60a、61a、62a、63a、64a、65a、66a、67a、68aはIRパルスである。IRパルス60a、63a、66aは、第1のスライスを励起する。IRパルス61a、64a、67aは、第2のスライスを励起する。IRパルス62a、65a、68aは、第3のスライスを励起する。データ収集60b、61b、62b、63b、64b、65b、66b、67b、68bはデータ収集である。データ収集60b、63b、66bにおいては、第1のスライスに関するデータが収集される。データ収集61b、64b、67bにおいては、第2のスライスに関するデータが収集される。データ収集62b、65b、68bにおいては、第3のスライスに関するデータが収集される。ダミーパルス69dはダミーパルスである。ダミー収集69bは、ダミー収集である。
【0075】
すなわち、シーケンス制御回路120は、第1のスライスについて、それぞれIRパルス60a、63a、66aを印加し、データ収集60b、63b、66bで収集を行う。シーケンス制御回路120は、第2のスライスについて、IRパルス61a、64a、67aを印加し、データ収集61b、64b、67bで収集を行う。シーケンス制御回路120は、第3のスライスについて、IRパルス62a、63b、66bを印加し、データ収集62b、65b、68bで収集を行う。
図6よりわかるように、これら一連のパルスシーケンスで、それぞれのスライスについて、シーケンス制御回路120は、互いに異なる3つのTIについてのデータを収集することができる。加えて、
図5と比較してダミーパルスの印加回数が減少しているため、更に撮像時間を短縮することができる。
【0076】
なお、シーケンス制御回路120が印加するパルスシーケンスは、2次元スピンエコーEPIシーケンスに限られない。すなわち、パルスシーケンスはEPIシーケンスに限られない。また、パルスシーケンスはスピンエコーに限られず、例えばグラジエントエコーのパルスシーケンスでもよい。また、IRパルスのフリップ角は180度に限られず、また、90度パルス、180度パルスのフリップ角は、それぞれ90度、180度に限られない。また、脂肪飽和パルスは、選択的パルスであってもよく非選択的パルスであってもよく、また省略されてもよい。
【0077】
続いて、
図7を用いて、パルスシーケンスのパラメータの設定から、パルスシーケンスの実行、T
1マップの生成まで、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100が実行する処理の流れを説明する。
図7は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順の一例について説明したフローチャートである。
【0078】
はじめに、処理回路150は、受付機能137により、例えば入力装置134を通じて、TI時間設定のための情報の入力を受け付ける(ステップS100)。かかる処理において、ディスプレイ135に表示されるGUIの一例が、
図8に示されている。
図8は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置に係るGUIの一例である。
【0079】
図8において、表示領域70は、ユーザからTI時間設定のための情報の入力を受け付けるための表示領域である。これに対して、表示領域71は、ユーザに、実行するパルスシーケンスのシーケンスチャート等、実行するパルスシーケンスの情報を表示するための表示領域である。
【0080】
表示領域70において、ボタン72a及び72bは、TI時間設定のための入力モードの選択を受け付けるためのボタンである。ボタン72aは、TI時間設定のために、第1のTIの値と第2のTIの値との入力を受け付ける第1の入力モードの選択を受け付けるためのボタンである。ボタン72bは、TI時間設定のために、第1のTIの値と、IRパルスの印加間隔の入力とを受け付ける第2の入力モードの選択を受け付けるためのボタンである。
【0081】
表示領域73は、第1の入力モードにおいて、ユーザからの入力を受け付けるための表示領域である。入力フィールド75aは、第1の入力モードにおいて、ユーザから第1のTIの値の入力を受け付けるための入力フィールドである。ボタン75b、75cは、第1のTIの値の変更を受け付けるためのボタンである。また、入力フィールド75bは、第1の入力モードにおいて、ユーザから第2のTIの値の入力を受け付けるための入力フィールドである。ボタン76b、76cは、第2のTIの値の変更を受け付けるためのボタンである。
【0082】
表示領域74は、第2の入力モードにおいて、ユーザからの入力を受け付けるための表示領域である。入力フィールド77aは、第2の入力モードにおいて、ユーザから第1のTIの値の入力を受け付けるための入力フィールドである。ボタン77b及び77cは、第1のTIの値の変更を受け付けるための入力フィールドである。また、入力フィールド78aは、第2の入力モードにおいて、ユーザからIRパルスの印加間隔の値の入力を受け付けるための入力フィールドである。ボタン78b、78cは、IRパルスの印加間隔の値の変更を受け付けるためのボタンである。
【0083】
また、これに加えて、例えば、収集するTIの数や、スライス数などの値の変更を受け付けるための入力フィールド等が備えられても良い。
【0084】
図7のフローチャートに戻り、ステップS100において、ユーザがボタン72aを選択した場合(第1の入力モード)、処理回路150は、受付機能137により、例えば表示領域73において、TI時間設定のための情報の入力を受け付ける。具体的には、処理回路150は、受付機能137により、入力フィールド75aを通じて、第1のTIの値の入力を、入力フィールド76aを通じて、第2のTIの値の入力を受け付ける。ここで、第1のTIの値とは、例えばデータ収集を行うTIのうち最も小さい値であり、第2のTIの値とは、例えばデータ収集を行うTIのうち2番目に小さい値である。一方、ユーザがボタン72bを選択した場合(第2の入力モード)、処理回路150は、受付機能137により、例えば表示領域74において、TI時間設定のための情報の入力を受け付ける。具体的には、処理回路150は、受付機能137により、入力フィールド77aを通じて、第1のTIの値の入力を、入力フィールド78aを通じて複数の励起パルスの間隔(例えばIRパルスの間隔)の値の入力を受け付ける。また、別の例として、撮像対象の部位毎にTI時間の組のデフォルト値が予め定められ、処理回路150が、ユーザから、撮像対象の部位の入力を受け付けてもよい。かかる場合、処理回路150は、入力された部位に対応するTI時間の組を基に、ステップS110以降の処理を行う。
【0085】
続いて、処理回路150は、ステップS100においてユーザから受け付けた情報に基づいて、励起パルス(IRパルス)の印加タイミング(印加時刻)及びデータ収集のタイミングを算出する(ステップS110)。例えば、ステップS100において、第1の入力モードが算出され、入力された第1のTIの値が「100msec」であり、入力された第2のTIの値が「500msec」である場合、処理回路150は、複数の励起パルスの間隔を、500msec−100msec=400msecと判断する。従って、処理回路150は、TIの値を、「100msec、500msec、900msec、1300msec、…」と判断する。処理回路150は、続いて、例えば、
図3〜
図6です説明したそれぞれのパルスシーケンスのシーケンスチャートに基づいて、励起パルスの印加タイミング及びデータ収集のタイミングを算出する。処理回路150は、このようにして算出され以降のステップで実行されるパルスシーケンスのパターン及び印加時刻、TIの値等を、例えば表示領域71に表示する。
【0086】
また、例えば、ステップS100において、第2の入力モードが算出され、入力された第1のTIの値が「100msec」であり、入力されたIRパルスの間隔が「400msec」である場合、処理回路150は、TIの値を、IRパルスの間隔の整数倍を第1のTIの値に順次加算した値である「100msec、500msec、900msec、1300msec、…」と判断し、同様の処理を行う。
【0087】
続いて、シーケンス制御回路120は、受付機能137によりステップS110で受け付けた情報に基づいて算出された印加時刻で、複数の励起パルスを印加する。すなわち、シーケンス制御回路120は、ステップS110で処理回路150により算出されたIRパルスの印加タイミング及びデータ収集のタイミングに基づいて、例えば
図3〜
図6で説明したパルスシーケンスを実行し、異なるTIに関するデータを収集する(ステップS120)。
【0088】
続いて、処理回路150は、生成機能136により、シーケンス制御回路120によりステップS120で収集された異なるTIに関するデータを基に、T
1マップを生成する(ステップS130)。
【0089】
このように、第1の実施形態では、シーケンス制御回路120は、励起パルスの間隔が一定になる印加時刻で、複数スライスに関する異なるTIのデータを収集する。このことで、第1に、励起パルスの単位時間あたりの回数が異なることによるTIごとのMTC効果のばらつきを抑えることができる。第2に、パルスシーケンスが同一のシーケンスチャートで管理することができることから、パルスシーケンス全体を、同一プロトコル(装置上の設置を行う単位)で管理することができ、ユーザの利便性が向上する。例えば、各プロトコルごとに必要なプレスキャンを省略することができ、撮像時間の短縮につながる。また、同一のプロトコルを利用できることで、設定項目の数が減少することから、例えばミスレジストレーションの軽減などが期待できる。
【0090】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、シーケンス制御回路120が、IRパルスの間隔が一定になる印加時刻でIRパルスを印加して、複数スライスに関する異なるTIのデータを収集し、処理回路150が、それを基にT
1マップを生成する場合について説明した。第2の実施形態では、シーケンス制御回路120が、第1の実施形態に係るパルスシーケンスに加えて、TE(Echo Time)の異なる複数のパルスシーケンスを印加し、それを基に処理回路150がT
2マップを生成する場合について、
図9及び
図10を用いて説明する。
【0091】
図9は、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順の一例について説明したフローチャートである。
図10は、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行するパルスシーケンスについて説明した図である。
【0092】
まず、
図10を用いて、第2の実施形態において、第1の実施形態で説明したパルスシーケンスに追加で用いられるパルスシーケンスについて説明する。
図10は、追加で用いられるパルスシーケンスの一例である。以下、第1の実施形態のパルスシーケンスを第1のパルスシーケンス、
図10のパルスシーケンスを第2のパルスシーケンスと呼ぶ。
【0093】
図10において、脂肪飽和パルス80a、80b、80c、80d、脂肪の信号を抑制するための脂肪飽和パルスである。90度パルス81a、81b、81c、81dは、90度パルスであり、180度パルス82a、82b、82c、82dは、180度パルスである。これらの90度パルスと180度パルスの組み合わせにより、エコーが生成され、エコーが生成されている間、収集が行われる。データ収集83a、83b、83c、83dは、データ収集を表す。待機時間84a、84bは、データ収集終了から、次のサイクルの収集開始までの時間を表す。
【0094】
まず、
図10の上段において、シーケンス制御回路120は、脂肪飽和パルス80aの後、第1のスライスについて、90度パルス81a、180度パルス82aを印加し、スピンエコーを生成する。シーケンス制御回路120は、スピンエコーが生成されている間、スライス1について、データ収集83aを行う。データ収集が完了後、シーケンス制御回路120は、待機時間84aだけ待機する。続いて、シーケンス制御回路120は、脂肪飽和パルス80bの後、第2のスライスについて、90度パルス81b、180度パルス82bを印加し、スピンエコーを生成する。シーケンス制御回路120は、スピンエコーが生成されている間、スライス1について、データ収集83bを行う。
【0095】
次に、
図10の下段において、シーケンス制御回路120は、脂肪飽和パルス80cの後、同様に、第1のスライスについて、90度パルス81c、180度パルス82cを印加し、スピンエコーを生成する。シーケンス制御回路120は、スピンエコーが生成されている間、スライス1について、データ収集83cを行う。シーケンス制御回路120は、
図10の上段とは、TEを変えてデータの収集を行う。ここで、TEは、
図10の上段においては90度パルス81aからデータ収集83aまでの時間であり、
図10の下段においては90度パルス81cからデータ収集83cまでの時間である。データ収集が完了後、シーケンス制御回路120は、待機時間84bだけ待機する。ここで、待機時間84bは、待機時間84aと異なった時間に設定される。具体的には、シーケンス制御回路120が待機する待機時間84bは、脂肪飽和パルス80aから脂肪飽和パルス80bの間隔(又は90度パルス81aと90度パルス81bの間隔)と、脂肪飽和パルス80cから脂肪飽和パルス80dの間隔が同じになるように設定される。続いて、シーケンス制御回路120は、脂肪飽和パルス80dの後、第2のスライスについて、90度パルス81d、180度パルス82dを印加し、データ収集83dを、第1のスライスと同じTEで行う。
【0096】
このように、第2の実施形態では、シーケンス制御回路120は、TEを変化させた複数の収集を更に行う。TEを変化させたデータが得られることで、処理回路150は、T
2マップを生成することができる。
【0097】
図9に戻り、まずはじめに、処理回路150は、実行するパルスシーケンスに関する情報の入力を受け付ける(ステップS200)。実行するパルスシーケンスに関する情報とは、例えば第1の実施形態で述べたTI時間設定のための情報及び、変化させるTEに関する情報である。処理回路150は、受付機能137により、入力装置134から、第1の実施形態において説明したT1時間設定のための情報に加えて、例えばTEに関する情報の入力を受け付ける。TEに関する情報とは、例えば、TEが200msec、400msec、600msecであるといった情報である。
【0098】
続いて、処理回路150は、受け付けた情報に基づいて、実行するパルスシーケンスの詳細を決定する(ステップS210)。処理回路150は、第1のパルスシーケンスにおける
図7のステップS110に対応する処理に加え、TEを変化させるパルスシーケンスである第2のパルスシーケンスにおける、例えば待機時間の設定を行う。続いて、処理回路150は、例えば第1の実施形態で説明した第1のパルスシーケンスを実行し、異なるTIにおけるデータを収集する(ステップS220)。続いて、シーケンス制御回路150は、TEを変化させるパルスシーケンスを実行し、異なるTEにおけるデータを収集する(ステップS230)。処理回路150は、生成機能136により、ステップS220でシーケンス制御回路120により収集された異なるTIにおけるデータと、ステップS230で収集された異なるTEにおけるデータを基に、T
2マップを生成する(ステップS240)。また、第1の実施形態において述べたように、処理回路150は、生成機能136により、ステップS220でシーケンス制御回路120により収集された異なるTIにおけるデータを基に、T
1マップを生成する。
【0099】
なお、ステップS220とステップS230の順番はこの順番に限られない。シーケンス制御回路120は、ステップS230の処理を行った後ステップS220の処理を行っても良い。
【0100】
第2の実施形態における磁気共鳴イメージング装置100は、第1の実施形態で述べた利点を保ちながら、T
2マップを生成することができる。
【0101】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、インバージョンパルスを印加して、シーケンス制御回路120が異なるTIについてデータを収集する場合について説明した。第3の実施形態では、これに加えて、シーケンス制御回路120が、インバージョンパルスを印加しないシーケンスを加えて、データを収集する。インバージョンパルスを印加しないシーケンスは、インバージョンパルスを印加するシーケンスにおいて、TIを無限大にしたものと同一視することができる。シーケンス制御回路120は、インバージョンパルスを印加しないシーケンスをも実行することで、より画質を向上することができる。
【0102】
図11は、第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行するパルスシーケンスについて説明した図である。
【0103】
図11において、IRパルス91a、91b、91c、91d、91e、91fは、組織の縦磁化を反転させる励起パルスであるIRパルスである。脂肪飽和パルス90a、90b、90c、90d、脂肪の信号を抑制するための脂肪飽和パルスである。90度パルス91a、91b、91c、91d、91e、91fは、90度パルスであり、180度パルス93a、93b、93c、93d、93e、93fは、180度パルスである。これらの90度パルスと180度パルスの組み合わせにより、エコーが生成され、エコーが生成されている間、収集が行われる。データ収集94a、94b、94c、94d,94e、94fは、データ収集を表す。
【0104】
ここで
図11の中段は、
図3の上段に対応し、
図11の下段は、
図3の下段に対応する。従って、繰り返しての説明は省略する。
図11のパルスシーケンスは、
図3のシーケンスの例えば冒頭に、インバージョンパルスを含まないシーケンスが追加されたものと考えることができる。すなわち、シーケンス制御回路120は、まずはじめに、脂肪飽和パルス91aの後、第1のスライスについて、90度パルス92a、180度パルス93aを印加し、スピンエコーを生成する。シーケンス制御回路120は、スピンエコーが生成されている間、スライス1について、データ収集94aを行う。続いて、シーケンス制御回路120は、脂肪飽和パルス91bの後、シーケンス制御回路120は、第2のスライスについて、90度パルス92b、180度パルス93bを印加し、スピンエコーを生成する。シーケンス制御回路120は、スピンエコーが生成されている間、第2のスライスについて、データ収集94bを行う。このような収集を全てのスライスについて繰りかえしたのち、シーケンス制御回路120は、
図3に示されるパルスシーケンスを実行する。すなわち、シーケンス制御回路120は、インバージョンパルスを印加する収集と、インバージョンパルスを印加しない収集とを含んで、複数のスライスの収集を行う。
【0105】
このように、シーケンス制御回路120は、インバージョンパルスを印加しないシーケンスをも実行することで、より画質を向上することができる。
【0106】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第2の実施形態に加え、シーケンス制御回路120がMPG(Motion Probe Gradient)パルスを含んだパルスシーケンスをb値を変化させて実行することで、同一プロトコルでADC(ApparanetDiffusion Coefficient)マップを生成することができる場合について、
図12及び
図13を用いて説明する。
図12は、第4の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順の一例について説明したフローチャートである。また、
図13は、第4の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
【0107】
まずはじめに、
図13を用いて、シーケンス制御回路120が実行するパルスシーケンスについて説明する。
【0108】
シーケンス151a、151b、…151zそれぞれは、第1の実施形態で説明した、TIを変化させてデータを収集するパルスシーケンスの1セットを表し、それぞれのパルスシーケンスのより詳細な構成は、括弧170に図示されている。例えば、括弧170の「TI
1」にて示されたシーケンスが、シーケンス151aであり、括弧170の「TI
2」にて示されたシーケンスが、シーケンス151bである。これらのパルスシーケンスを、第1のパルスシーケンスと呼ぶ。
【0109】
シーケンス150a、150b、…150zそれぞれは、第2の実施形態で説明した、TEを変化させてデータを収集するパルスシーケンスの1セットを表し、それぞれのパルスシーケンスのより詳細な構成は、括弧160に図示されている。例えば、括弧160の「TE
1」にて示されたシーケンスが、シーケンス150aであり、括弧160の「TE
2」にて示されたシーケンスが、シーケンス150bである。ここで、シンボル「W」は、パルスシーケンスにおけるデータ収集以外の部分を模式的に表す。これらのパルスシーケンスを、第2のパルスシーケンスと呼ぶ。
【0110】
シーケンス152a、152b、…150zそれぞれは、b値を変化させたMPGパルスを印加してデータを収集するパルスシーケンスの1セットを表す。例えば、シーケンス152a、152b…152zは、MPGパルスのb値以外は同一のパルスシーケンスであり、MPGパルスのb値のみが異なるシーケンスである。ここで、b値は、印加するパルスの強度を変えればよくシーケンスチャートを変える必要がないため、シーケンス制御回路120は、同一のプロトコルで異なるb値のパルスシーケンスを管理することができる。これらのパルスシーケンスを、第3のパルスシーケンスと呼ぶ。
【0111】
シーケンス制御回路120は、後述する
図12のステップS320〜340において、150a、150b、…、150z、151a、151b、…、151z、152a、152b、…、152zのパルスシーケンスを、例えば順次実行する。
【0112】
図12に戻り、まずはじめに、処理回路150は、実行するパルスシーケンスに関する情報の入力を受け付ける(ステップS300)。実行するパルスシーケンスに関する情報とは、例えば第1の実施形態で述べたTI時間設定のための情報、第2の実施形態でのべた、変化させるTEに関する情報の他に、MPGパルスのb値に関する情報である。
【0113】
続いて、処理回路150は、受け付けた情報に基づいて、実行するパルスシーケンスの詳細を決定する(ステップS310)。処理回路150は、第1のパルスシーケンスにおける
図7のステップS110に対応する処理に加え、TEを変化させるパルスシーケンスである第2のパルスシーケンスにおける、例えば待機時間の設定を行う。また、処理回路150は、ステップS300で入力されたb値に関する情報をもとに、第3のパルスシーケンスの詳細を決定する。続いて、処理回路150は、例えば第1の実施形態で説明した第1のパルスシーケンスを実行し、異なるTIにおけるデータを収集する(ステップS320)。続いて、シーケンス制御回路150は、第2の実施形態で説明した、TEを変化させるパルスシーケンスを実行し、異なるTEにおけるデータを収集する(ステップS330)。続いて、シーケンス制御回路150は、MPGパルスのb値を変化させた複数の収集である第3のパルスシーケンスを更に実行し、対応するデータを収集する(ステップS340)。処理回路150は、生成機能136により、ステップS320〜340でシーケンス制御回路120により収集されたデータを基に、ADCマップを生成する(ステップS350)。また、処理回路150は、生成機能136により、T
1マップ及びT
2マップも、併せて生成する。
【0114】
なお、ステップS320、ステップS330とステップS340の順番はこの順番に限られない。
【0115】
このように、第4の実施形態における磁気共鳴イメージング装置100は、第1の実施形態で述べた利点を保ちながら、一つのプロトコルでADCマップを生成することができる。
【0116】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の磁気共鳴イメージング装置によれば、画質を向上させる、またはユーザビリティを向上させることができる。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。