特許第6734215号(P6734215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6734215
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】精白米の製法
(51)【国際特許分類】
   B02B 1/08 20060101AFI20200728BHJP
   B02B 3/00 20060101ALI20200728BHJP
   A01F 25/00 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   B02B1/08
   B02B3/00 D
   B02B3/00 E
   A01F25/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2017-52714(P2017-52714)
(22)【出願日】2017年3月17日
(62)【分割の表示】特願2016-90059(P2016-90059)の分割
【原出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-140615(P2017-140615A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2019年3月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-93423(P2015-93423)
(32)【優先日】2015年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-129148(P2015-129148)
(32)【優先日】2015年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-168526(P2015-168526)
(32)【優先日】2015年8月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-198859(P2015-198859)
(32)【優先日】2015年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(72)【発明者】
【氏名】藤村 洋
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−105918(JP,A)
【文献】 特開2002−35619(JP,A)
【文献】 特開昭63−39641(JP,A)
【文献】 特開平2−56255(JP,A)
【文献】 特開2002−330711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 1/00 − 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
℃以上15℃以下の工場内で玄米を精米した後、9℃以上15℃以下の工場内で精米後の精白米を冷却して保管する精白米の製法であって、
9℃以上15℃以下の工場内で精米直前まで1晩玄米を保管することを特徴とする精白米の製法。
【請求項2】
前記精白米の冷却保管後に、9℃以上15℃以下の工場内で前記精白米を包装する請求項1に記載の精白米の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精白米の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
玄米の糠及び胚芽を精米により除去したものを精白米(白米)という。精白米は、野菜やくだもの等と同じように生鮮食品であり、酸化等によって保存中にどんどん劣化していく。従来、精白米は、玄米を室温環境下で保存し、これを精米機により精米することにより製造されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
しかしながら、室温環境下で保存した玄米を精米してなる精白米は、甘みやうま味が劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−292293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、甘みやうま味に優れた、精白米の製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る精白米の製法は、℃以上15℃以下の工場内で玄米を精米した後、9℃以上15℃以下の工場内で精米後の精白米を冷却して保管する精白米の製法であって、9℃以上15℃以下の工場内で精米直前まで1晩玄米を保管することを特徴とする。
【0007】
本明細書に記載の精白米は、精米直前まで室温よりも低温で保管した玄米を精米してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製法により得られる精白米は、通常の精白米に比べて格別に食味(甘み、うま味等)に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1及び比較例1について、炊飯食味値を評価したグラフである。
図2】実施例1及び比較例1について、外観、硬さ、粘り、バランスを評価したグラフである。
図3】実施例9〜12及び比較例10〜13について、還元糖量を評価したグラフである。
図4】実施例9〜12及び比較例10〜13について、炊飯食味計による炊飯食味値を評価したグラフである。
図5】実施例9〜12及び比較例10〜13について、テンシプレッサーよる硬さを評価したグラフである。
図6】実施例15〜22及び比較例16〜23について、プロテアーゼ量を評価したグラフである。
図7】実験例1〜5及び比較実験例1〜5について、α−アミラーゼ活性を評価したグラフである。
図8】実験例7〜13について、脂肪酸(リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸)を評価したグラフである。
図9】実験例6〜12について、ヘキサナールを評価したグラフである。
図10】実験例6〜9について、香りを評価したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者は、甘みやうまみに優れた精白米を得るため、デンプン分解酵素(特にα−アミラーゼ)やプロテアーゼ等の酵素に着目し研究を重ねた。通常、米を精米するときには、米と精米機との摩擦や、米どうしをこすり合わせる際の摩擦等により糠を除去しているが、この摩擦によって熱(摩擦熱)が発生し、米表面に局所的に熱が加わることにより、米表面は部分的に100℃以上の高温になる。これにより、特に米表面に存在するα−アミラーゼやプロテアーゼが変性、失活するため、α−アミラーゼ活性やプロテアーゼ活性が低くなるという知見を得た。そこで、この知見に基づき研究を重ねた結果、精米直前まで室温よりも低温で玄米を保管すると、精米時の摩擦熱の影響が小さくなり、温度上昇を抑制することができるため、α−アミラーゼやプロテアーゼの変性、失活が抑制される。そのため、α−アミラーゼ活性やプロテアーゼ活性が高くなり、糖やアミノ酸の生成が促進され、甘みやうまみを引き出すことができることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
<概要>
本発明の一態様に係る精白米の製法は、精米直前まで玄米を保管する第1の工程と、前記玄米を精米する第2の工程と、前記精米した精白米を冷却して保管する第3の工程と、を備え、前記第1の工程、第2の工程および第3の工程を、いずれも室温よりも低温環境下で行う精白米の製法であって、前記第3の工程は、前記精米した精白米を低温環境下で急冷して保管することを特徴とする。
【0012】
本明細書に記載の精白米は、精米直前まで室温よりも低温で保管した玄米を精米してなることを特徴とする。
本明細書に記載の精白米は、通常の精白米に比べて格別に食味(甘み、うま味等)に優れている。
【0013】
本明細書に記載の精白米において、α−アミラーゼ活性が0.028Unit/g以上である。
デンプン分解酵素であるα−アミラーゼが高活性であると、糖の生成が促進され、精白米の甘みを引き出すことができる。
【0014】
本明細書に記載の精白米において、プロテアーゼ活性が92μg/ml以上である。
タンパク質分解酵素であるプロテアーゼが高活性であると、アミノ酸の生成が促進され、精白米のうま味を引き出すことができる。
【0015】
本明細書に記載の精白米において、還元糖量が45mg/100g以上である。なお、本明細書において、還元糖量とは、特に限定のない限り、精白米を炊飯したごはん100g当りの還元糖量(mg)を示す。
このように、還元糖量が多いと、柔らかく炊け、甘みや食感が向上する。
【0016】
本明細書に記載の精白米において、精米直前まで室温よりも低温で保管した玄米を精米してなる精白米についてのプロテアーゼ活性(P1)と、室温以上の温度で保管した玄米を精米してなる精白米についてのプロテアーゼ活性(P2)との比〔(P1)/(P2)〕が1.2以上である。
通常の精白米に比べてプロテアーゼが1.2倍以上高活性であるため、アミノ酸の生成が促進され、精白米のうま味を引き出すことができる。
【0017】
また、本明細書に記載の精白米の製法は、精米直前まで室温よりも低温環境下で保管した玄米を、室温よりも低温環境下で精米することを特徴とする。
これにより、通常の精白米に比べて食味(甘み、うま味等)に優れた精白米を得ることができる。
【0018】
また、本明細書に記載の精白米の製法は、得られた精白米を冷却し、室温よりも低温環境下で保管する。
これにより、α−アミラーゼ活性が向上する。
【0019】
また、本明細書に記載の精白米の製法は、得られた精白米を室温よりも低温環境下で包装する。
これにより、通常の精白米に比べてさらに食味(甘み、うま味等)に優れた精白米を得ることができる。
【0020】
また、本明細書に記載の精白米の製法は、脱酸素剤を同封した高気密性素材の袋に包装する。
これにより、袋内に脂肪酸を封じ込め、古米臭の原因となるヘキサナールの生成を抑制することができる。
【0021】
また、本明細書に記載の精白米の製法は、得られた精白米を室温よりも低温環境下で包装した状態で、室温よりも低温環境下で保管する。
これにより、通常の精白米に比べてさらに食味(甘み、うま味等)に優れた精白米を得ることができる。
【0022】
また、本明細書に記載の精白米の製法は、玄米の保管時の低温環境下温度が、15℃以下である。
また、本明細書に記載の精白米の製法は、精米時の低温環境下温度が、15℃以下である。
また、本明細書に記載の精白米の製法は、精白米の保管時の低温環境下温度が、15℃以下である。
また、本明細書に記載の精白米の製法は、精白米の梱包時の低温環境下温度が、15℃以下である。
また、本明細書に記載の精白米の製法は、精米時の米温度が、玄米の保管時の低温環境下温度よりも高温である。
また、本明細書に記載の精白米の製法は、精米時の米温度が、玄米の保管時の低温環境下温度より+21℃以内の範囲である。
これらにより、精白米の甘み、うま味をさらに引き出すことができる。
【0023】
<実施形態>
つぎに、本発明の実施形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施形態に限られるものではない。
【0024】
本明細書に記載の精白米は、精米直前まで室温よりも低温で保管した玄米を精米してなるものである。
【0025】
また、本明細書に記載の精白米の製法は、精米直前まで室温よりも低温環境下で保管した玄米を、室温よりも低温環境下で精米するものである。
【0026】
なお、本明細書において、「室温よりも低温環境下」のことを、単に「低温環境下」と称する場合もある。
【0027】
<玄米>
本実施形態における玄米の種類は特に限定はなく、例えば、こしひかり、あきたこまち、ひとめぼれ、ゆめぴりか、ななつぼし、つや姫等が使用できる。また、玄米の産地や生産年度等も問わず使用できる。
【0028】
<精米>
通常、精米という語は、米を精白する行為、もしくはそれによって得られた精白米(白米)の2通りの意味で使用されている。本実施形態においては、前者の行為を「精米」と称し、精米によって得られた白米を「精白米」と称する。
【0029】
精米は、玄米の糠層及び胚芽を除去する行為をいう。精米後の胚芽残存率は、通常5.1%以下である。
【0030】
<精白米>
本実施形態における精白米の白度は、通常40前後である。なお、本実施形態における精白米には、無洗米加工した無洗米も含む。
【0031】
なお、無洗米加工は、通常の方法により行うことができる。例えば、精白米に精白米に対して5%ほどの水を加えた後、加圧して攪拌を行い、攪拌の後、高温にした粒状のタピオカを精白米の重量の50%〜100%程度加え、精白米に残っている肌糠を水とともに吸着させる。肌糠が除去された米を乾燥させ無洗米に加工する。熱付着剤で表面の糠を取り、無洗米加工する。なお、肌糠を精白米から除去するのに、上記以外の方法を使用しても構わない。
【0032】
<保管温度>
本実施形態における玄米の保管温度は、室温よりも低温環境下であれば特に限定はないが、具体的には15℃以下が好ましく、より好ましくは5℃以上15℃以下であり、最も好ましくは9℃以上15℃以下である。玄米の保管温度が、室温と同じ、もしくは室温より高温であると、精米時にα−アミラーゼやプロテアーゼが変性、失活し、甘みやうま味が劣る。
【0033】
以下、本実施形態にかかる精白米を「低温精米」と称する場合がある。また、精米直前まで室温と同じ、もしくは室温よりも高温で保管した玄米を精米してなる精白米を「通常精米」と称する場合がある。
【0034】
<室温>
本実施形態において室温とは、通常、1〜30℃であり、好ましくは15〜25℃である。工場等の施設で玄米を保管する場合は、施設内の温度をいう。なお、室温は季節や湿度等の諸条件によって変動することがある。
【0035】
<精米直前まで>
本実施形態において精米直前までとは、精米するまさに直前までという時間的に厳密な意味ではなく、精米する前に玄米を一定時間(好ましくは1晩)、室温よりも低温で保管すればよいとの意味である。
【0036】
<精米時の環境温度>
本実施形態における精米時の環境温度は、室温よりも低温環境下であれば特に限定はないが、具体的には15℃以下が好ましく、より好ましくは5℃以上15℃以下であり、最も好ましくは9℃以上15℃以下である。精米時の環境温度が、室温と同じ、もしくは室温より高温であると、精米時にα−アミラーゼやプロテアーゼが変性、失活し、甘みやうま味が劣る。
【0037】
<精米時の米温度>
本実施形態における精米時の米温度(以下、単に「米温度」と称する場合もある。)は、特に限定はないが、玄米の保管時の低温環境下温度よりも高温であることが好ましく、より好ましくは低温環境下温度より+21℃以内、特に好ましくは低温環境下温度より+15℃以内の範囲である。低温環境下温度より21℃を超えて高温になると、精米時にα−アミラーゼやプロテアーゼが変性、失活し、甘みやうま味が劣る傾向がみられる。
精米時の米温度は、具体的には20〜32℃の範囲が好ましく、より好ましくは24〜30℃の範囲であり、最も好ましくは25〜29℃の範囲である。
なお、本実施形態における米温度は、精米時の環境温度とは異なる意味である。
【0038】
本実施形態においては、玄米の保管及び精米を低温環境下、例えば、15℃以下の工場内で一貫して行うことが好ましい。これにより、精白米の甘み、うま味をさらに引き出すことができる。
【0039】
<精白米の冷却>
本実施形態における精白米は、精米直後に冷却することが好ましい。具体的には、精米直後の精白米を低温環境下で広げて冷却(以下、「急冷」と称する場合もある。)することが好ましい。このように精白米を冷却することにより、α−アミラーゼ活性を向上させることができる。
【0040】
<精白米の保管温度>
本実施形態における精白米の保管温度は、室温よりも低温環境下が好ましく、具体的には15℃以下が好ましく、より好ましくは5℃以上15℃以下であり、最も好ましくは9℃以上15℃以下である。精白米の保管温度が、室温と同じ、もしくは室温より高温であると、α−アミラーゼやプロテアーゼが変性、失活し、甘みやうま味が劣る傾向がみられる。
【0041】
<包装>
本実施形態における精白米の包装は、室温よりも低温環境下で行うことが好ましい。本実施形態における包装時の温度は、室温よりも低温環境下が好ましく、具体的には15℃以下が好ましく、より好ましくは5℃以上15℃以下であり、最も好ましくは9℃以上15℃以下である。包装時の温度が、室温と同じ、もしくは室温より高温であると、α−アミラーゼやプロテアーゼが変性、失活し、甘みやうま味が劣る傾向がみられる。
【0042】
本実施形態に係る精白米の包装については特に限定はないが、高気密性素材の袋に包装することが好ましく、脱酸素剤を同封した高気密性素材の袋に包装することが特に好ましい。これにより、精白米の酸化を外気からも、袋の中の空気からも防いで、精白米の美味しさを長く保つことができる。
【0043】
また、包装のサイズは特に限定はないが、使いやすく、冷蔵庫での保存にも便利な使い切りサイズ(3合、150g)が好ましい。
【0044】
本実施形態においては、玄米の保管、精米及び包装を同一温度の環境下、例えば、15℃以下の工場内で一貫して行うことが好ましい。これにより、精白米の甘み、うま味を保ったまま保存することができる。
【0045】
<包装米飯>
また、本実施形態に係る精白米は、包装米飯として保存することもできる。包装米飯は、初めから無菌室内で炊飯・包装を行う無菌化包装米飯と、包装後に加圧・加熱(炊飯、殺菌)を行うレトルト米飯とがあるが、食味の良さから無菌化包装米飯が好ましい。
包装米飯のサイズは、特に限定はないが、180〜200g程度(概ね小ぶりの茶碗1杯分程度)の個食用パックが好ましい。
【0046】
<α−アミラーゼ活性>
本実施形態における精白米は、α−アミラーゼ活性が0.028Unit/g以上であることが好ましく、特に好ましくは0.029Unit/g以上、最も好ましくは0.030Unit/g以上である。これにより、精白米の甘みを引き出すことができる。
【0047】
α−アミラーゼは、デンプンを分解して糖を生成する働きをする。α−アミラーゼの活性が高いと、デンプンの長い鎖がランダムに切断されやすく、鎖が短くなる。そのため、炊飯時に吸水しやすくなり、デンプンのアルファ化が促進されることで、ご飯が柔らかくなる。炊飯時に米を水に浸す際に、α−アミラーゼが働き、デンプンから糖が生成される。炊飯の加熱によって、α−アミラーゼは最終的には活性を失うが、糖は炊きあがったごはんに残り、最終的には、ご飯がより甘くなると考えられる。このように、α−アミラーゼは炊飯時に作用して食味を向上させる効果がある。
【0048】
なお、本実施形態におけるα−アミラーゼ活性は、精米直後(保温時間0分)から保温時間240分までの平均値を示す。α−アミラーゼ活性は、例えば、Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmで測定した値である。1Unitの酵素活性は、α−アミラーゼが1分間に1μMのブドウ糖を生産することを示す。
【0049】
<プロテアーゼ活性>
本実施形態における精白米は、プロテアーゼ活性が92μg/ml以上であることが好ましく、特に好ましくは100μg/ml以上、最も好ましくは110μg/ml以上である。これにより、精白米のうま味を引き出すことができる。
【0050】
プロテアーゼ活性は、例えば、プロテアーゼ測定キット(Thermo Scientific社製、QuantiCleaveTM Protease Assay Kit)を用いて、吸光度450nmで、トリプシン量(TPCK処理済みトリプシン)に換算して測定した値を示している。
【0051】
精米直前まで室温よりも低温で保管した玄米を精米してなる本実施形態における精白米(低温精米:R)についてのプロテアーゼ活性(P)と、本実施形態以外の精白米、すなわち室温以上の温度で保管した玄米を精米してなる精白米(通常精米:R)についてのプロテアーゼ活性(P)との比〔(P)/(P)〕は、1.2以上が好ましく、特に好ましくは1.5以上である。これにより、精白米のうま味を引き出すことができる。
【0052】
上記プロテアーゼ活性(P)及び(P)は、例えば、以下のようにして測定することができる。すなわち、精白米(R)及び(R)について、精米直後のプロテアーゼ活性(μg/g)を、プロテアーゼ測定キット(Pierce社製、Colorimetric Protease Assay Kit)を用いて、以下のように測定する。
【0053】
(1)検量線
トリプシン溶液で調整する。50μg/mlから2倍希釈を繰り返して調整する。
【0054】
(2)抽出
抽出は、例えば、プロテアーゼ測定キットの説明書の記載に準じて行う。
【0055】
(3)測定
測定は、例えば、プロテアーゼ測定キットの説明書の記載に準じて行う。
【0056】
(4)評価
3時間後のデータを使用する。サンプル吸光度からBlank2吸光度を引いたものを検量線(-Blank1)から計算し、米1g中のトリプシン量(μg/g)に換算する。
【0057】
<還元糖量>
本実施形態における精白米は、還元糖量が45mg/ご飯100g(以下、単に「mg/100g」と示す。)以上であることが好ましく、特に好ましくは50mg/100g以上、最も好ましくは55mg/100g以上である。これにより、柔らかく炊け、甘みや食感が向上する。
【0058】
還元糖量は、例えば、精白米を炊飯したご飯をホモジナイズした後、エタノールで抽出し、遠心分離して固形分を取り除き、ソモギーネルソン法より還元糖量(ブドウ糖として)として定量した値を示している。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例におけるアミラーゼ活性及びプロテアーゼ活性の評価は、以下のようにして行った。すなわち、玄米の保管温度(実施例1では9.5℃)の環境で精米機を一昼夜置き、その環境下で精米した後、精米時の米温度(実施例1では30.0℃)から10分程度の短時間で10℃下げたサンプル(実施例1では20.0℃)を使用して、アミラーゼ活性及びプロテアーゼ活性の評価を行った。
【0060】
〔実施例1〕
<保管条件>
玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の冷蔵庫(9.5℃)で保管した。
【0061】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)40.0になるように調整しながら、米温度30.0℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は5.1%であった。
【0062】
<保温条件>
前記条件にて精米した精白米を30.0℃のインキュベータで保温した。保温時間は30分、60分、120分、180分、240分とし、240分経過後はインキュベータをOFFにして翌日まで放置した。
【0063】
〔比較例1〕
<保管条件>
実施例1と同一の玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)1kgを、精米直前まで室温(23.4℃)で保管した。
【0064】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)40.0になるように調整しながら、米温度43.0℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は5.0%であった。
【0065】
<保温条件>
前記条件にて精米した精白米を43.0℃のインキュベータで保温した。保温時間は30分、60分、120分、180分、240分とし、240分経過後はインキュベータをOFFにして翌日まで放置した。
【0066】
〔比較例2〕
<保管条件>
実施例1と同一の玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)1kgを、精米直前まで室温(26.2℃)で保管した。
【0067】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)40.0になるように調整しながら、米温度47.5℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は5.0%であった。
【0068】
<保温条件>
前記条件にて精米した精白米を47.5℃のインキュベータで保温した。保温時間は30分、60分、120分、180分、240分とし、240分経過後はインキュベータをOFFにして翌日まで放置した。
【0069】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実施例1及び比較例1,2で精米した精白米を用い、保温時間0分(精米直後)、30分、60分、120分、180分、240分について、α−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmでα−アミラーゼ活性(Unit/g)を算出した。これらの結果を、下記の表1に示した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の結果から、α−アミラーゼ活性(平均)は、実施例1が0.028Unit/g以上であるのに対して、比較例1,2は0.028Unit/g未満であった。
また、比較例2のα−アミラーゼ活性(平均)を1とすると、比較例1のα−アミラーゼ活性(平均)は1.0872倍、実施例1のα−アミラーゼ活性(平均)は1.2017倍であった。このことから、精米時の米温度が低いほどα−アミラーゼ活性が高くなることがわかる。
【0072】
この理由は明らかではないが、以下のように推察される。すなわち、実施例1の低温精米では、精米時の摩擦熱の影響が小さく温度上昇を抑制することができるため、α−アミラーゼの変性、失活が抑制され、α−アミラーゼ活性が高くなる。これに対して、比較例1,2のように玄米を室温で保管した場合、精米時の摩擦熱の影響により温度上昇が大きくなり、α−アミラーゼが変性、失活するため、α−アミラーゼ活性が低くなる。
【0073】
<炊飯食味値>
実施例1及び比較例1で得た精白米について、炊飯食味値を評価した。すなわち、実施例1及び比較例1で得た精白米250gを1.4倍の加水量でふつうモードにて炊飯を行った。炊飯後、炊飯食味計(サタケ社製)により、炊飯食味値を評価した。その結果を、図1に示した。
【0074】
図1の結果から、実施例1の低温精米は、比較例1の通常精米に対して炊飯食味値が高いことがわかった。
【0075】
<外観、硬さ、粘り、バランス>
実施例1及び比較例1で得た精白米について、外観、硬さ、粘り、バランスを評価した。すなわち、実施例1及び比較例1で得た精白米250gを1.4倍の加水量でふつうモードにて炊飯を行った。炊飯後、炊飯食味計(サタケ社製)により、外観、硬さ、粘り、バランスを評価した。その結果を、図2に示した。
【0076】
図2の結果から、実施例1の低温精米は比較例1の通常精米に対して、外観が良く、硬くなりにくく、粘りがあり、全体のバランスに優れていることがわかった。
これは、上述のように実施例1の低温精米ではα−アミラーゼの変性、失活が抑制され、α−アミラーゼ活性が高いことに起因すると推察される。
【0077】
〔実施例2〕
<保管条件>
玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15℃で保管した。
【0078】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)40.0になるように調整しながら、米温度30℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は5.0%であった。
【0079】
〔比較例3〕
<保管条件>
実施例2と同一の玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)1kgを、精米直前まで室温(22℃)で保管した。
【0080】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)40.0になるように調整しながら、米温度40℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は5.0%であった。
【0081】
≪評価≫
<プロテアーゼ活性>
実施例2及び比較例3で得た精白米について、精米直後のプロテアーゼ活性(μg/ml)を測定した。すなわち、プロテアーゼ測定キット(Thermo Scientific社製、QuantiCleaveTM Protease Assay Kit)を用い、吸光度450nmで、トリプシン量(TPCK処理済みトリプシン)に換算して、プロテアーゼ活性(μg/ml)を測定した。これらの結果を、下記の表2に示した。
【0082】
【表2】
【0083】
表2の結果から、プロテアーゼ活性は、実施例2が92μg/ml以上であるのに対して、比較例3は92μg/ml未満であった。
また、比較例3のプロテアーゼ活性を1とすると、実施例2のプロテアーゼ活性は1.2422倍であった。このことから、精米時の米温度が低いほどプロテアーゼ活性が高くなることがわかる。
【0084】
この理由は明らかではないが、以下のように推察される。すなわち、実施例2の低温精米では、精米時の摩擦熱の影響が小さく温度上昇を抑制することができるため、プロテアーゼの変性、失活が抑制され、プロテアーゼ活性が高くなる。これに対して、比較例3のように玄米を室温で保管した場合、精米時の摩擦熱の影響により温度上昇が大きくなり、プロテアーゼが変性、失活するため、プロテアーゼ活性が低くなる。
【0085】
<アミノ酸分析>
実施例2及び比較例3で得た精白米について、アミノ酸分析を行った。すなわち、実施例2及び比較例3で得た精白米250gを1.4倍の加水量でふつうモードで炊飯を行った。炊飯後、アミノ酸分析システム(HPLC)を用いて、アミノ酸分析を行った。その結果、実施例2の低温精米は比較例3の通常精米に対して、アスパラギン酸、グルタミン酸がより多く生成した。
これは、上述のように実施例2の低温精米ではプロテアーゼの変性、失活が抑制され、プロテアーゼ活性が高いことに起因すると推察される。
【0086】
<包装>
実施例1及び実施例2で得た精白米(低温精米)を、脱酸素剤を同封した高気密性素材の袋(3合、150g)に包装し、食味官能評価及び炊飯食味値を評価した。その結果、精米後12ケ後でも食味上問題がなかった。また、ビタミンEの低下を抑制することができた。このことから、アンチエイジング効果が期待できる。
【0087】
〔実施例3〕
<保管条件>
玄米(平成26年産新潟県産こしひかり)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15.0℃で保管した。
【0088】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)41.2になるように調整しながら、米温度28.3℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は5.8%であった。
【0089】
〔比較例4〕
<保管条件>
実施例3と同一の玄米(平成26年産新潟県産こしひかり)1kgを、精米直前まで室温(22.0℃)で保管した。
【0090】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)41.2になるように調整しながら、米温度40.0℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は5.8%であった。
【0091】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実施例3及び比較例4で精米した精白米について、精米直後のα−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmでα−アミラーゼ活性(Unit/g)を算出した。これらの結果を、下記の表3に示した。
【0092】
【表3】
【0093】
表3の結果から、比較例4のα−アミラーゼ活性を1とすると、実施例3のα−アミラーゼ活性は1.20倍であった。このことから、低温精米による実施例3は、通常精米による比較例4に比べて、α−アミラーゼ活性が20%も高くなることがわかる。
【0094】
〔実施例4〕
<保管条件>
玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15.0℃で保管した。
【0095】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)38.6になるように調整しながら、米温度24.6℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は6.1%であった。
【0096】
〔比較例5〕
<保管条件>
実施例4と同一の玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)1kgを、精米直前まで室温(22.0℃)で保管した。
【0097】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)38.6になるように調整しながら、米温度40.0℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は6.1%であった。
【0098】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実施例4及び比較例5で精米した精白米について、精米直後のα−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmでα−アミラーゼ活性(Unit/g)を算出した。これらの結果を、下記の表4に示した。
【0099】
【表4】
【0100】
表4の結果から、比較例5のα−アミラーゼ活性を1とすると、実施例4のα−アミラーゼ活性は1.23倍であった。このことから、低温精米による実施例4は、通常精米による比較例5に比べて、α−アミラーゼ活性が23%も高くなることがわかる。
【0101】
〔実施例5〕
<保管条件>
玄米(平成26年産秋田県産あきたこまち)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15.0℃で保管した。
【0102】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)40.7になるように調整しながら、米温度25.7℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は6.2%であった。
【0103】
〔比較例6〕
<保管条件>
実施例5と同一の玄米(平成26年産秋田県産あきたこまち)1kgを、精米直前まで室温(22.0℃)で保管した。
【0104】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)40.7になるように調整しながら、米温度40.0℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は6.2%であった。
【0105】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実施例5及び比較例6で精米した精白米について、精米直後のα−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmでα−アミラーゼ活性(Unit/g)を算出した。これらの結果を、下記の表5に示した。
【0106】
【表5】
【0107】
表5の結果から、比較例6のα−アミラーゼ活性を1とすると、実施例5のα−アミラーゼ活性は1.26倍であった。このことから、低温精米による実施例5は、通常精米による比較例6に比べて、α−アミラーゼ活性が26%も高くなることがわかる。
【0108】
〔実施例6〕
<保管条件>
玄米(平成26年産山形県産つや姫)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15.0℃で保管した。
【0109】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)40.6になるように調整しながら、米温度28.8℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は6.3%であった。
【0110】
〔比較例7〕
<保管条件>
実施例6と同一の玄米(平成26年産山形県産つや姫)1kgを、精米直前まで室温(22.0℃)で保管した。
【0111】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)40.6になるように調整しながら、米温度40.0℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は6.3%であった。
【0112】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実施例6及び比較例7で精米した精白米について、精米直後のα−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmでα−アミラーゼ活性(Unit/g)を算出した。これらの結果を、下記の表6に示した。
【0113】
【表6】
【0114】
表6の結果から、比較例7のα−アミラーゼ活性を1とすると、実施例6のα−アミラーゼ活性は1.36倍であった。このことから、低温精米による実施例6は、通常精米による比較例7に比べて、α−アミラーゼ活性が36%も高くなることがわかる。
【0115】
〔実施例7〕
<保管条件>
玄米(平成26年産北海道産ななつぼし)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15.0℃で保管した。
【0116】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)41.4になるように調整しながら、米温度28.8℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は5.8%であった。
【0117】
〔比較例8〕
<保管条件>
実施例6と同一の玄米(平成26年産北海道産ななつぼし)1kgを、精米直前まで室温(22.0℃)で保管した。
【0118】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)41.4になるように調整しながら、米温度40.0℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は5.8%であった。
【0119】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実施例7及び比較例8で精米した精白米について、精米直後のα−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmでα−アミラーゼ活性(Unit/g)を算出した。これらの結果を、下記の表7に示した。
【0120】
【表7】
【0121】
表7の結果から、比較例8のα−アミラーゼ活性を1とすると、実施例7のα−アミラーゼ活性は1.19倍であった。このことから、低温精米による実施例7は、通常精米による比較例8に比べて、α−アミラーゼ活性が19%も高くなることがわかる。
【0122】
〔実施例8〕
<保管条件>
玄米(平成26年産北海道産ゆめぴりか)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15.0℃で保管した。
【0123】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)42.8になるように調整しながら、米温度31.4℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は6.1%であった。
【0124】
〔比較例9〕
<保管条件>
実施例6と同一の玄米(平成26年産北海道産ゆめぴりか)1kgを、精米直前まで室温(22.0℃)で保管した。
【0125】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)42.8になるように調整しながら、米温度40.0℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。精米後の胚芽残存率は6.1%であった。
【0126】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実施例8及び比較例9で精米した精白米について、精米直後のα−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmでα−アミラーゼ活性(Unit/g)を算出した。これらの結果を、下記の表8に示した。
【0127】
【表8】
【0128】
表8の結果から、比較例9のα−アミラーゼ活性を1とすると、実施例8のα−アミラーゼ活性は1.14倍であった。このことから、低温精米による実施例8は、通常精米による比較例9に比べて、α−アミラーゼ活性が14%も高くなることがわかる。
【0129】
〔実施例9〕
<保管条件>
玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15.0℃で保管した。
【0130】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度29.7℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。得られた精米300gを炊飯器(アイリスオーヤマ社製、IHうまみ炊飯鍋)で炊飯(加水量は米重量の1.4倍)した。炊飯後、鍋中央部から直径50mm×長さ80mmのアルミ缶で還元糖定量用サンプル(ご飯)を採取した。残りをほぐした後、炊飯食味計用サンプル(ご飯)、テンシプレッサー用サンプル(ご飯)をそれぞれ採取した。
【0131】
〔比較例10〕
<保管条件>
実施例9と同一の玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)1kgを、精米直前まで室温(22.0℃)で保管した。
【0132】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度48.4℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。得られた精米300gを炊飯器(アイリスオーヤマ社製、IHうまみ炊飯鍋)で炊飯(加水量は米重量の1.4倍)した。炊飯後、鍋中央部から直径50mm×長さ80mmのアルミ缶で還元糖定量用サンプル(ご飯)を採取した。残りをほぐした後、炊飯食味計用サンプル(ご飯)、テンシプレッサー用サンプル(ご飯)をそれぞれ採取した。
【0133】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実施例9及び比較例10で精米した精白米について、精米直後のα−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmでα−アミラーゼ活性(Unit/g)を算出した。これらの結果を、下記の表9に示した。
【0134】
実施例9及び比較例10の各サンプル(ご飯)を用いて、還元糖量、テンシプレッサー及び炊飯食味計の評価を行った。これらの結果を、下記の表9に示した。また、還元糖量の評価を図3に示し、炊飯食味値の評価を図4に示し、テンシプレッサーによる硬さの評価を図5に示した。
【0135】
<還元糖量>
実施例9及び比較例10の還元糖定量用サンプル(ご飯)50gをホモジナイズした後、80%エタノールで抽出し、遠心分離して固形分を取り除き、ソモギーネルソン法にて還元糖量(ブドウ糖として)を定量した。
【0136】
<炊飯食味計>
実施例9及び比較例10の炊飯食味計用サンプル(ご飯)を、炊飯完了後、30分間室温に慣らした後、炊飯食味計(サタケ社製)により、炊飯食味値、外観、硬さ、粘り、バランスを評価した。
【0137】
<テンシプレッサー>
実施例9及び比較例10のテンシプレッサー用サンプル(ご飯)を、炊飯完了後、3時間室温に慣らした後、食感測定器(タケトモ電機社製、TENSIPRESSER)で、米飯2×3測定の条件にて食感(硬さ、こし、付着、粘り)測定を行った。
【0138】
【表9】
【0139】
表9の結果から、比較例10の還元糖量を1とすると、実施例9の還元糖量は1.43倍であった。このことから、低温精米による実施例9は、通常精米による比較例10に比べて、還元糖量が43%も高くなることがわかる。
また、実施例9は比較例10と比べて、α−アミラーゼ活性が23%も高くなることがわかる。
実施例9は比較例10と比べて、炊飯食味計による炊飯食味値の評価が特に優れていた。
実施例9は比較例10と比べて、テンシプレッサーよる硬さ、こしの評価が特に優れていた。
【0140】
〔実施例10〕
<保管条件>
玄米(平成26年産山形県産つや姫)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15.0℃で保管した。
【0141】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度28.7℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。得られた精米300gを炊飯器(アイリスオーヤマ社製、IHうまみ炊飯鍋)で炊飯(加水量は米重量の1.4倍)した。炊飯後、鍋中央部から直径50mm×長さ80mmのアルミ缶で還元糖定量用サンプル(ご飯)を採取した。残りをほぐした後、炊飯食味計用サンプル(ご飯)、テンシプレッサー用サンプル(ご飯)をそれぞれ採取した。
【0142】
〔比較例11〕
<保管条件>
実施例10と同一の玄米(平成26年産山形県産つや姫)1kgを、精米直前まで室温(22.0℃)で保管した。
【0143】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度47.3℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。得られた精米300gを炊飯器(アイリスオーヤマ社製、IHうまみ炊飯鍋)で炊飯(加水量は米重量の1.4倍)した。炊飯後、鍋中央部から直径50mm×長さ80mmのアルミ缶で還元糖定量用サンプル(ご飯)を採取した。残りをほぐした後、炊飯食味計用サンプル(ご飯)、テンシプレッサー用サンプル(ご飯)をそれぞれ採取した。
【0144】
≪評価≫
実施例10及び比較例11について、実施例9と同様にして、α−アミラーゼ活性、還元糖量、炊飯食味計及びテンシプレッサーによる評価を行った。これらの結果を、下記の表10、図3図4及び図5に示した。
【0145】
【表10】
【0146】
表10の結果から、比較例10の還元糖量を1とすると、実施例10の還元糖量は1.23倍であった。このことから、低温精米による実施例10は、通常精米による比較例11に比べて、還元糖量が23%も高くなることがわかる。
また、実施例10は比較例11と比べて、α−アミラーゼ活性が36%も高くなることがわかる。
実施例10は比較例11と比べて、炊飯食味計による炊飯食味値の評価が特に優れていた。
実施例10は比較例11と比べて、テンシプレッサーよる硬さ、こしの評価が特に優れていた。
【0147】
〔実施例11〕
<保管条件>
玄米(平成26年産秋田県産あきたこまち)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15.0℃で保管した。
【0148】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度25.7℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。得られた精米300gを炊飯器(アイリスオーヤマ社製、IHうまみ炊飯鍋)で炊飯(加水量は米重量の1.4倍)した。炊飯後、鍋中央部から直径50mm×長さ80mmのアルミ缶で還元糖定量用サンプル(ご飯)を採取した。残りをほぐした後、炊飯食味計用サンプル(ご飯)、テンシプレッサー用サンプル(ご飯)をそれぞれ採取した。
【0149】
〔比較例12〕
<保管条件>
実施例11と同一の玄米(平成26年産秋田県産あきたこまち)1kgを、精米直前まで室温(22.0℃)で保管した。
【0150】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度45.0℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。得られた精米300gを炊飯器(アイリスオーヤマ社製、IHうまみ炊飯鍋)で炊飯(加水量は米重量の1.4倍)した。炊飯後、鍋中央部から直径50mm×長さ80mmのアルミ缶で還元糖定量用サンプル(ご飯)を採取した。残りをほぐした後、炊飯食味計用サンプル(ご飯)、テンシプレッサー用サンプル(ご飯)をそれぞれ採取した。
【0151】
≪評価≫
実施例11及び比較例12について、実施例9と同様にして、α−アミラーゼ活性、還元糖量、炊飯食味計及びテンシプレッサーによる評価を行った。これらの結果を、下記の表11、図3図4及び図5に示した。
【0152】
【表11】
【0153】
表11の結果から、比較例12の還元糖量を1とすると、実施例11の還元糖量は1.19倍であった。このことから、低温精米による実施例11は、通常精米による比較例12に比べて、還元糖量が19%も高くなることがわかる。
また、実施例11は比較例12と比べて、α−アミラーゼ活性が27%も高くなることがわかる。
実施例11は比較例12と比べて、炊飯食味計による炊飯食味値の評価が特に優れていた。
実施例11は比較例12と比べて、テンシプレッサーよる硬さ、こしの評価が特に優れていた。
【0154】
〔実施例12〕
<保管条件>
玄米(平成26年産北海道産ななつぼし)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15.0℃で保管した。
【0155】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度31.1℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。得られた精米300gを炊飯器(アイリスオーヤマ社製、IHうまみ炊飯鍋)で炊飯(加水量は米重量の1.4倍)した。炊飯後、鍋中央部から直径50mm×長さ80mmのアルミ缶で還元糖定量用サンプル(ご飯)を採取した。残りをほぐした後、炊飯食味計用サンプル(ご飯)、テンシプレッサー用サンプル(ご飯)をそれぞれ採取した。
【0156】
〔比較例13〕
<保管条件>
実施例12と同一の玄米(平成26年産北海道産ななつぼし)1kgを、精米直前まで室温(22.0℃)で保管した。
【0157】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度46.6℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。得られた精米300gを炊飯器(アイリスオーヤマ社製、IHうまみ炊飯鍋)で炊飯(加水量は米重量の1.4倍)した。炊飯後、鍋中央部から直径50mm×長さ80mmのアルミ缶で還元糖定量用サンプル(ご飯)を採取した。残りをほぐした後、炊飯食味計用サンプル(ご飯)、テンシプレッサー用サンプル(ご飯)をそれぞれ採取した。
【0158】
≪評価≫
実施例12及び比較例13について、実施例9と同様にして、α−アミラーゼ活性、還元糖量、炊飯食味計及びテンシプレッサーによる評価を行った。これらの結果を、下記の表12、図3図4及び図5に示した。
【0159】
【表12】
【0160】
表12の結果から、比較例13の還元糖量を1とすると、実施例12の還元糖量は1.39倍であった。このことから、低温精米による実施例12は、通常精米による比較例13に比べて、還元糖量が39%も高くなることがわかる。
また、実施例12は比較例13と比べて、α−アミラーゼ活性が19%も高くなることがわかる。
実施例12は比較例13と比べて、炊飯食味計による炊飯食味値の評価が特に優れていた。
実施例12は比較例13と比べて、テンシプレッサーよる硬さ、こしの評価が特に優れていた。
【0161】
〔実施例13〕
<保管条件>
玄米(平成26年産新潟県産こしひかり)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15.0℃で保管した。
【0162】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度29.6℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。得られた精米300gを炊飯器(アイリスオーヤマ社製、IHうまみ炊飯鍋)で炊飯(加水量は米重量の1.4倍)した。炊飯後、鍋中央部から直径50mm×長さ80mmのアルミ缶で還元糖定量用サンプル(ご飯)を採取した。残りをほぐした後、炊飯食味計用サンプル(ご飯)、テンシプレッサー用サンプル(ご飯)をそれぞれ採取した。
【0163】
〔比較例14〕
<保管条件>
実施例13と同一の玄米(平成26年産新潟県産こしひかり)1kgを、精米直前まで室温(22.0℃)で保管した。
【0164】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度31.7℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。得られた精米300gを炊飯器(アイリスオーヤマ社製、IHうまみ炊飯鍋)で炊飯(加水量は米重量の1.4倍)した。炊飯後、鍋中央部から直径50mm×長さ80mmのアルミ缶で還元糖定量用サンプル(ご飯)を採取した。残りをほぐした後、炊飯食味計用サンプル(ご飯)、テンシプレッサー用サンプル(ご飯)をそれぞれ採取した。
【0165】
≪評価≫
実施例13及び比較例14について、実施例9と同様にして、α−アミラーゼ活性、還元糖量、炊飯食味計及びテンシプレッサーによる評価を行った。これらの結果を、下記の表13に示した。
【0166】
【表13】
【0167】
表13の結果から、比較例14の還元糖量を1とすると、実施例13の還元糖量は1.22倍であった。このことから、低温精米による実施例13は、通常精米による比較例14に比べて、還元糖量が22%も高くなることがわかる。
また、実施例13は比較例14と比べて、α−アミラーゼ活性が15%も高くなることがわかる。
実施例13は比較例14と比べて、炊飯食味計による炊飯食味値の評価が特に優れていた。
実施例13は比較例14と比べて、テンシプレッサーよる硬さ、こしの評価が特に優れていた。
【0168】
〔実施例14〕
<保管条件>
玄米(平成26年産北海道産ゆめぴりか)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15.0℃で保管した。
【0169】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度31.7℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。得られた精米300gを炊飯器(アイリスオーヤマ社製、IHうまみ炊飯鍋)で炊飯(加水量は米重量の1.4倍)した。炊飯後、鍋中央部から直径50mm×長さ80mmのアルミ缶で還元糖定量用サンプル(ご飯)を採取した。残りをほぐした後、炊飯食味計用サンプル(ご飯)、テンシプレッサー用サンプル(ご飯)をそれぞれ採取した。
【0170】
〔比較例15〕
<保管条件>
実施例14と同一の玄米(平成26年産北海道産ゆめぴりか)1kgを、精米直前まで室温(22.0℃)で保管した。
【0171】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度46.8℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。得られた精米300gを炊飯器(アイリスオーヤマ社製、IHうまみ炊飯鍋)で炊飯(加水量は米重量の1.4倍)した。炊飯後、鍋中央部から直径50mm×長さ80mmのアルミ缶で還元糖定量用サンプル(ご飯)を採取した。残りをほぐした後、炊飯食味計用サンプル(ご飯)、テンシプレッサー用サンプル(ご飯)をそれぞれ採取した。
【0172】
≪評価≫
実施例14及び比較例15について、実施例9と同様にして、α−アミラーゼ活性、還元糖量、炊飯食味計及びテンシプレッサーによる評価を行った。これらの結果を、下記の表14に示した。
【0173】
【表14】
【0174】
表14の結果から、比較例15の還元糖量を1とすると、実施例14の還元糖量は1.45倍であった。このことから、低温精米による実施例14は、通常精米による比較例15に比べて、還元糖量が45%も高くなることがわかる。
また、実施例14は比較例15と比べて、α−アミラーゼ活性が13%も高くなることがわかる。
実施例14は比較例15と比べて、炊飯食味計による炊飯食味値の評価が特に優れていた。
実施例14は比較例15と比べて、テンシプレッサーよる硬さ、こしの評価が特に優れていた。
【0175】
<まとめ>
低温精米による実施例9〜14は、通常精米による比較例10〜15に比べて、還元糖量が19%〜45%も上昇し、柔らかく炊け、炊飯食味値が向上することがわかる。
【0176】
〔実施例15〕
<保管条件>
玄米(平成26年産新潟県産こしひかり)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15℃で保管した。
【0177】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度30℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0178】
〔比較例16〕
<保管条件>
実施例15と同一の玄米(平成26年産新潟県産こしひかり)1kgを、精米直前まで室温(22℃)で保管した。
【0179】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度50℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0180】
≪評価≫
<プロテアーゼ活性>
実施例15及び比較例16で得た精白米について、精米直後のプロテアーゼ活性(μg/g)を、プロテアーゼ測定キット(Pierce社製、Colorimetric Protease Assay Kit)を用いて、以下のように測定した。これらの結果を、下記の表15及び図6に示した。
【0181】
(1)検量線
トリプシン溶液で調整した。50μg/mlから2倍希釈を繰り返して調整した。
【0182】
(2)抽出
(2−1)米50gをミルサーに量りとり、冷蔵庫で10℃以下に冷やした。
(2−2)ミルサーで1分間粉砕した後、3.0gを遠沈管に量りとり、50mM Tris-HCl bufferを10.0ml加えた。
(2−3)振とう機を用い室温で100rpm×10分間振とうした後、40℃で20分間抽出した。
(2−4)高速冷却遠心機を用い4℃で15,000G×5分間遠心した。
(2−4)0.2μmフィルターでろ過した。
【0183】
(3)測定
(3−1)
検量線:スクシニルカゼイン溶液100μlと検量線シリーズ50μlを加えた。
サンプル:スクシニルカゼイン溶液100μlと抽出溶液50μlを加えた。
Blank1:スクシニルカゼイン溶液100μlとAssay buffer50μlを加えた。
Blank2:スクシニルカゼイン溶液100μlと50mM Tris-HCl buffer50μlを加えた。
(3−2)40℃で20分間反応させた。
(3−3)セルに50μlのTNBSA溶液を加えた。
(3−4)室温で20分間放置した。
(3−5)450nmの吸光度をマイクロプレートリーダで30分おきに測定した。
【0184】
(4)評価
3時間後のデータを使用した。サンプル吸光度からBlank2吸光度を引いたものを検量線(-Blank1)から計算し、米1g中のトリプシン量(μg/g)に換算した。
【0185】
【表15】
【0186】
表15の結果から、比較例16のプロテアーゼ活性(μg/g)を1とすると、実施例15のプロテアーゼ活性(μg/g)は1.34倍であった。このことから、低温精米による実施例15は、通常精米による比較例16に比べて、プロテアーゼ活性(μg/g)が34%も高くなることがわかる。
【0187】
〔実施例16〕
<保管条件>
玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15℃で保管した。
【0188】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度30℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0189】
〔比較例17〕
<保管条件>
実施例16と同一の玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)1kgを、精米直前まで室温(22℃)で保管した。
【0190】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度50℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0191】
≪評価≫
<プロテアーゼ活性>
実施例16及び比較例17で得た精白米について、実施例15と同様にして、精米直後のプロテアーゼ活性(μg/g)を測定した。これらの結果を、下記の表16及び図6に示した。
【0192】
【表16】
【0193】
表16の結果から、比較例17のプロテアーゼ活性(μg/g)を1とすると、実施例16のプロテアーゼ活性(μg/g)は1.49倍であった。このことから、低温精米による実施例16は、通常精米による比較例17に比べて、プロテアーゼ活性(μg/g)が49%も高くなることがわかる。
【0194】
〔実施例17〕
<保管条件>
玄米(平成26年産山形県産つや姫)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15℃で保管した。
【0195】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度30℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0196】
〔比較例18〕
<保管条件>
実施例17と同一の玄米(平成26年産山形県産つや姫)1kgを、精米直前まで室温(22℃)で保管した。
【0197】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度50℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0198】
≪評価≫
<プロテアーゼ活性>
実施例17及び比較例18で得た精白米について、実施例15と同様にして、精米直後のプロテアーゼ活性(μg/g)を測定した。これらの結果を、下記の表17及び図6に示した。
【0199】
【表17】
【0200】
表17の結果から、比較例18のプロテアーゼ活性(μg/g)を1とすると、実施例17のプロテアーゼ活性(μg/g)は1.65倍であった。このことから、低温精米による実施例17は、通常精米による比較例18に比べて、プロテアーゼ活性(μg/g)が65%も高くなることがわかる。
【0201】
〔実施例18〕
<保管条件>
玄米(平成26年産秋田県産あきたこまち)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15℃で保管した。
【0202】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度30℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0203】
〔比較例19〕
<保管条件>
実施例18と同一の玄米(平成26年産秋田県産あきたこまち)1kgを、精米直前まで室温(22℃)で保管した。
【0204】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度50℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0205】
≪評価≫
<プロテアーゼ活性>
実施例18及び比較例19で得た精白米について、実施例15と同様にして、精米直後のプロテアーゼ活性(μg/g)を測定した。これらの結果を、下記の表18及び図6に示した。
【0206】
【表18】
【0207】
表18の結果から、比較例19のプロテアーゼ活性(μg/g)を1とすると、実施例18のプロテアーゼ活性(μg/g)は1.32倍であった。このことから、低温精米による実施例18は、通常精米による比較例19に比べて、プロテアーゼ活性(μg/g)が32%も高くなることがわかる。
【0208】
〔実施例19〕
<保管条件>
玄米(平成26年産北海道産ななつぼし)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15℃で保管した。
【0209】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度30℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0210】
〔比較例20〕
<保管条件>
実施例19と同一の玄米(平成26年産北海道産ななつぼし)1kgを、精米直前まで室温(22℃)で保管した。
【0211】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度50℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0212】
≪評価≫
<プロテアーゼ活性>
実施例19及び比較例20で得た精白米について、実施例15と同様にして、精米直後のプロテアーゼ活性(μg/g)を測定した。これらの結果を、下記の表19及び図6に示した。
【0213】
【表19】
【0214】
表19の結果から、比較例20のプロテアーゼ活性(μg/g)を1とすると、実施例19のプロテアーゼ活性(μg/g)は1.23倍であった。このことから、低温精米による実施例19は、通常精米による比較例20に比べて、プロテアーゼ活性(μg/g)が23%も高くなることがわかる。
【0215】
〔実施例20〕
<保管条件>
玄米(平成26年産宮城県産ササニシキ)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15℃で保管した。
【0216】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度30℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0217】
〔比較例21〕
<保管条件>
実施例20と同一の玄米(平成26年産宮城県産ササニシキ)1kgを、精米直前まで室温(22℃)で保管した。
【0218】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度50℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0219】
≪評価≫
<プロテアーゼ活性>
実施例20及び比較例21で得た精白米について、実施例15と同様にして、精米直後のプロテアーゼ活性(μg/g)を測定した。これらの結果を、下記の表20及び図6に示した。
【0220】
【表20】
【0221】
表20の結果から、比較例21のプロテアーゼ活性(μg/g)を1とすると、実施例20のプロテアーゼ活性(μg/g)は1.74であった。このことから、低温精米による実施例20は、通常精米による比較例21に比べて、プロテアーゼ活性(μg/g)が74%も高くなることがわかる。
【0222】
〔実施例21〕
<保管条件>
玄米(平成26年産青森県産つがるロマン)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15℃で保管した。
【0223】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度30℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0224】
〔比較例22〕
<保管条件>
実施例21と同一の玄米(平成26年産青森県産つがるロマン)1kgを、精米直前まで室温(22℃)で保管した。
【0225】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度50℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0226】
≪評価≫
<プロテアーゼ活性>
実施例21及び比較例22で得た精白米について、実施例15と同様にして、精米直後のプロテアーゼ活性(μg/g)を測定した。これらの結果を、下記の表21及び図6に示した。
【0227】
【表21】
【0228】
表21の結果から、比較例22のプロテアーゼ活性(μg/g)を1とすると、実施例21のプロテアーゼ活性(μg/g)は2.29であった。このことから、低温精米による実施例21は、通常精米による比較例21に比べて、プロテアーゼ活性(μg/g)が129%も高くなることがわかる。
【0229】
〔実施例22〕
<保管条件>
玄米(平成26年産北海道産ゆめぴりか)1kgを、精米直前まで室温よりも低温の15℃で保管した。
【0230】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度30℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0231】
〔比較例23〕
<保管条件>
実施例22と同一の玄米(平成26年産北海道産ゆめぴりか)1kgを、精米直前まで室温(22℃)で保管した。
【0232】
<サンプル作製>
前記条件にて保管した玄米を、米温度50℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0233】
≪評価≫
<プロテアーゼ活性>
実施例22及び比較例23で得た精白米について、実施例15と同様にして、精米直後のプロテアーゼ活性(μg/g)を測定した。これらの結果を、下記の表22及び図6に示した。
【0234】
【表22】
【0235】
表22の結果から、比較例23のプロテアーゼ活性(μg/g)を1とすると、実施例22のプロテアーゼ活性(μg/g)は1.38であった。このことから、低温精米による実施例22は、通常精米による比較例23に比べて、プロテアーゼ活性(μg/g)が38%も高くなることがわかる。
【0236】
次に、精米直後の冷却効果について実験を行った。すなわち、精米直前まで室温よりも低温環境下で保管した玄米を、室温よりも低温環境下で精米して得られた精白米について、精米直後に急冷した場合(実験例)と、精米後に自然冷却した場合(比較実験例)のα−アミラーゼ活性を比較した。
【0237】
〔実験例1〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成26年産新潟県産こしひかり)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(22.5℃)で保管した。
【0238】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、搗精度90.7%になるように調整しながら、室温よりも低温環境下(22.5℃)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0239】
<精白米の保管条件>
上記で得られた精米直後の精白米を、室温よりも低温環境下(15℃)でアルミパッドに広げて冷却(急冷)した状態で12時間放置した。
【0240】
〔比較実験例1〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成26年産新潟県産こしひかり)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(23.4℃)で保管した。
【0241】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、搗精度90.7%になるように調整しながら、室温よりも低温環境下(23.4℃)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0242】
<精白米の保管条件>
上記で得られた精白米を、室温よりも低温環境下(23℃)で12時間放置(自然冷却)した。
【0243】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実験例1及び比較実験例1で保管した精白米について、α−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmでα−アミラーゼ活性(Unit/g)を算出した。これらの結果を、下記の表23及び図7に示した。
【0244】
【表23】
【0245】
〔実験例2〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(22.8℃)で保管した。
【0246】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、搗精度91.7%になるように調整しながら、室温よりも低温環境下(22.8℃)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0247】
<精白米の保管条件>
上記で得られた精米直後の精白米を、室温よりも低温環境下(15℃)でアルミパッドに広げて冷却(急冷)した状態で12時間放置した。
【0248】
〔比較実験例2〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(22.7℃)で保管した。
【0249】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、搗精度91.7%になるように調整しながら、室温よりも低温環境下(22.7℃)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0250】
<精白米の保管条件>
上記で得られた精白米を、室温よりも低温環境下(23℃)で12時間放置(自然冷却)した。
【0251】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実験例2及び比較実験例2で保管した精白米について、α−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmでα−アミラーゼ活性(Unit/g)を算出した。これらの結果を、下記の表24及び図7に示した。
【0252】
【表24】
【0253】
〔実験例3〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成26年産秋田県産あきたこまち)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(21.9℃)で保管した。
【0254】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、搗精度90.4%になるように調整しながら、室温よりも低温環境下(21.9℃)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0255】
<精白米の保管条件>
上記で得られた精米直後の精白米を、室温よりも低温環境下(15℃)でアルミパッドに広げて冷却(急冷)した状態で12時間放置した。
【0256】
〔比較実験例3〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成26年産秋田県産あきたこまち)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(23.5℃)で保管した。
【0257】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、搗精度90.4%になるように調整しながら、室温よりも低温環境下(23.5℃)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0258】
<精白米の保管条件>
上記で得られた精白米を、室温よりも低温環境下(23℃)で12時間放置(自然冷却)した。
【0259】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実験例3及び比較実験例3で保管した精白米について、α−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmでα−アミラーゼ活性(Unit/g)を算出した。これらの結果を、下記の表25及び図7に示した。
【0260】
【表25】
【0261】
〔実験例4〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成26年産山形県産つや姫)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(22.3℃)で保管した。
【0262】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、搗精度90.8%になるように調整しながら、室温よりも低温環境下(22.3℃)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0263】
<精白米の保管条件>
上記で得られた精米直後の精白米を、室温よりも低温環境下(15℃)でアルミパッドに広げて冷却(急冷)した状態で12時間放置した。
【0264】
〔比較実験例4〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成26年産山形県産つや姫)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(23.7℃)で保管した。
【0265】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、搗精度90.8%になるように調整しながら、室温よりも低温環境下(23.7℃)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0266】
<精白米の保管条件>
上記で得られた精白米を、室温よりも低温環境下(23℃)で12時間放置(自然冷却)した。
【0267】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実験例4及び比較実験例4で保管した精白米について、α−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmでα−アミラーゼ活性(Unit/g)を算出した。これらの結果を、下記の表26及び図7に示した。
【0268】
【表26】
【0269】
〔実験例5〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成26年産北海道産ななつぼし)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(22.1℃)で保管した。
【0270】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、搗精度90.5%になるように調整しながら、室温よりも低温環境下(22.1℃)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0271】
<精白米の保管条件>
上記で得られた精米直後の精白米を、室温よりも低温環境下(15℃)でアルミパッドに広げて冷却(急冷)した状態で12時間放置した。
【0272】
〔比較実験例5〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成26年産北海道産ななつぼし)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(23.5℃)で保管した。
【0273】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、搗精度90.5%になるように調整しながら、室温よりも低温環境下(23.5℃)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて精米(搗精)した。
【0274】
<精白米の保管条件>
上記で得られた精白米を、室温よりも低温環境下(23℃)で12時間放置(自然冷却)した。
【0275】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実験例5及び比較実験例5で保管した精白米について、α−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、吸光度400nmでα−アミラーゼ活性(Unit/g)を算出した。これらの結果を、下記の表27及び図7に示した。
【0276】
【表27】
【0277】
<まとめ>
精米直後に急冷した実験例1〜5は、自然冷却した比較実験例1〜5に比べて、α−アミラーゼ活性(Unit/g)が5%〜15%も上昇することがわかった。
【0278】
次に、精米後の精白米を、脱酸素剤を同封した高気密性素材の袋に包装して保管した場合について、脂肪酸、ヘキサナール、香りの評価を行った。
【0279】
〔実験例6〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成27年産山形県産つや姫)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(15℃)で約4ケ月間保管した。
【0280】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)41になるように調整しながら、米温度35℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて、室温よりも低温環境下(15℃)で精米(搗精)した。
【0281】
〔実験例7〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成25年産山形県産つや姫)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(15℃)で約4ケ月間保管した。
【0282】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)41になるように調整しながら、米温度35℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて、室温よりも低温環境下(15℃)で精米(搗精)した。
【0283】
<精白米の保管条件>
上記で得られた精米直後の精白米を、室温よりも低温環境下(15℃)で脱酸素剤(一般名:サンソカット)を同封した高気密性素材(ハイバリア仕様)の袋(3合サイズ)に包装し、室温よりも低温環境下(15℃)にて約2年間保管した。
【0284】
〔実験例8〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成25年産山形県産つや姫)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(15℃)で約1年間保管した。
【0285】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)41になるように調整しながら、米温度35℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて、室温よりも低温環境下(15℃)で精米(搗精)した。
【0286】
<精白米の保管条件>
上記で得られた精米直後の精白米を、室温よりも低温環境下(15℃)で脱酸素剤(一般名:サンソカット)を同封した高気密性素材(ハイバリア仕様)の袋(3合サイズ)に包装し、室温よりも低温環境下(15℃)にて約1年間保管した。
【0287】
〔実験例9〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成25年産山形県産つや姫)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(15℃)で約2年間保管した。
【0288】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)40になるように調整しながら、米温度35℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて、室温よりも低温環境下(15℃)で精米(搗精)した。
【0289】
〔実験例10〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成25年産山形県産つや姫)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(15℃)で約2年間保管した。
【0290】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)41になるように調整しながら、米温度35℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて、室温よりも低温環境下(15℃)で精米(搗精)した。
【0291】
〔実験例11〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成25年産山形県産つや姫)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(15℃)で約2年間保管した。
【0292】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)42になるように調整しながら、米温度35℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて、室温よりも低温環境下(15℃)で精米(搗精)した。
【0293】
〔実験例12〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成25年産山形県産つや姫)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(15℃)で約2年間保管した。
【0294】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)43になるように調整しながら、米温度35℃(放射温度計で測定)で精米機(サタケ社製、ワンパス)にて、室温よりも低温環境下(15℃)で精米(搗精)した。
【0295】
〔実験例13〕
<玄米の保管条件>
玄米(平成25年産山形県産つや姫)を、精米直前まで室温よりも低温環境下(15℃)で約2年間保管した。
【0296】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、白度(白度計で測定)43になるように調整しながら、室温よりも低温環境下(15℃)で精米(搗精)した。
【0297】
<無洗米加工>
上記で得られた精白米に、精白米に対して5%ほどの水を加えた後、加圧して攪拌を行い、攪拌の後、高温にした粒状のタピオカを精白米の重量の50%〜100%程度加え、精白米に残っている肌糠を水とともに吸着させた。肌糠が除去された米を乾燥させ無洗米に加工した。熱付着剤で表面の糠を取り、無洗米加工した。
【0298】
≪評価≫
実験例7〜13について、以下のようにして脂肪酸(リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸)を測定した。その結果を、図8に示した。
【0299】
<脂肪酸(リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸)の測定>
9−アンスリルジアゾメタン(ADAM)試薬で誘導体化して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。すなわち、米粒50gを粉砕した後、3gを取り分けメタノール10mlで20分、100rpmで振とうした。4℃、15,000rpm、10分遠心し、抽出液25μlをADAM試薬メタノール溶液25μl(0.1w/v%)と1時間反応させた。反応後、950μlのメタノールで希釈した後、20μlをHPLCで測定、定量した。
0分(CHCN100%)−15分(CHCN/HO=95/5)−40分(CHCN/HO=95/5)
カラム温度25℃、使用カラムLaChromC18(5μm)4.6mmI.D.×250mml
検出器 蛍光検出器E×365nm Em412nm
【0300】
≪評価≫
実験例6〜12について、以下のようにしてヘキサナールを測定した。その結果を、図9に示した。
【0301】
<ヘキサナールの測定>
2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)試薬で誘導体化してHPLCで分析した。すなわち、米粒50gを粉砕した後、5gを取り分けエタノール10mlで30分、100rpmで振とうした。4℃、15,000rpm、10分遠心し、抽出液500μlをDNPH試薬溶液500μl(0.05w/v%)と45℃、40分反応させた。反応後、HPLCに20μl注入し、測定、定量した。
0分−13分(CHCN/HO=83/17),13.1分−20分(CHCN100%)
カラム温度30℃、使用カラムLaChromC18(5μm)4.6mmI.D.×250mml
検出器 DAD検出器365nm
【0302】
図8図9の結果から、実験例7,8は実験例9〜12に対して、脂肪酸(リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸)の値が高く、ヘキサナールの値が小さかった。このことから、脱酸素剤を同封した高気密性素材の袋に包装した場合は、脂肪酸(リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸)の酸化を抑制して、古米臭の原因と言われるヘキサナールの生成を抑制できることがわかった。
【0303】
また、実験例12,13の対比から、無洗米加工すると、脂肪酸(特にオレイン酸、パルミチン酸)の値が小さくなることもわかった(図8参照)。
【0304】
≪評価≫
実験例6〜9について、以下のようにして香りの評価を行った。その結果を、図10に示した。
【0305】
<食味官能試験>
実験例6〜9の精白米を炊飯器(象印社製、NP−NV10、炊飯モード:ふつう)にて炊飯し、パネル11名による香りの評価を行った。評価は実験例6を基準として相対評価で示した。
【0306】
図10の結果から、実験例7は香りの評価が最も高かった。また、実験例8は実験例9よりも香りの評価が高かった。このことから、脱酸素剤を同封した高気密性素材の袋に包装した場合は、香りの評価が高いことがわかった。
【0307】
〔実験例14〜21〕
下記の表28に示すように、玄米の保管温度、精米時の環境温度、精米時の米温度、精白米の保管温度等を変化させた場合の酵素活性を評価した。
【0308】
<保管条件>
玄米(平成26年産新潟県産こしひかり)を精米直前まで室温よりも低温(表28に示す玄米の保管温度)で保管した。
【0309】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、室温よりも低温(表28に示す精米時の環境温度)で、サタケ社製テスト精米機(ダイヤル4)で3回精米(搗精)し、所定の搗精度(表28に示す搗精度)になるように調整した。
【0310】
<精白米の保管>
下記の急冷もしくは自然冷却により、精白米を保管した。
(急冷)
上記で得られた精米直後の精白米を、室温よりも低温環境下(15℃)でアルミパッドに広げて冷却した状態で12時間放置した。
【0311】
(自然冷却)
上記で得られた精米直後の精白米をステンレスボウルに受けて、25℃で12時間放置した。
【0312】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実験例14〜21で保管した精白米について、α−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、波長450nmにおける吸光度(A450)、Δ450、比率を算出した。これらの結果を、下記の表28に示した。
【0313】
【表28】
【0314】
表28の結果から、玄米の保管温度が低い方が酵素活性は高くなる傾向にあることがわかった。また、精米時の環境温度が低い方が酵素活性は高い傾向にあることがわかった。特に実験例20は、玄米の保管温度および精米時の環境温度が低く、しかも急冷しているため、酵素活性が最も高くなる傾向にあることがわかった。
【0315】
〔実験例22〜29〕
下記の表29に示すように、玄米の保管温度、精米時の環境温度、精米時の米温度、精白米の保管温度等を変化させた場合の酵素活性を評価した。
【0316】
<保管条件>
玄米(平成26年産宮城県産ひとめぼれ)を精米直前まで室温よりも低温(表29に示す玄米の保管温度)で保管した。
【0317】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、室温よりも低温(表29に示す精米時の環境温度)で、サタケ社製テスト精米機(ダイヤル4)で3回精米(搗精)し、所定の搗精度(表29に示す搗精度)になるように調整した。
【0318】
<精白米の保管>
下記の急冷もしくは自然冷却により、精白米を保管した。
(急冷)
上記で得られた精米直後の精白米を、室温よりも低温環境下(15℃)でアルミパッドに広げて冷却した状態で12時間放置した。
【0319】
(自然冷却)
上記で得られた精米直後の精白米をステンレスボウルに受けて、25℃で12時間放置した。
【0320】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実験例22〜29で保管した精白米について、α−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、波長450nmにおける吸光度(A450)、Δ450、比率を算出した。これらの結果を、下記の表29に示した。
【0321】
【表29】
【0322】
表29の結果から、玄米の保管温度が低い方が酵素活性は高くなる傾向にあることがわかった。また、精米時の環境温度が低い方が酵素活性は高い傾向にあることがわかった。特に実験例28は、玄米の保管温度および精米時の環境温度が低く、しかも急冷しているため、酵素活性が最も高くなる傾向にあることがわかった。
【0323】
〔実験例30〜37〕
下記の表30に示すように、玄米の保管温度、精米時の環境温度、精米時の米温度、精白米の保管温度等を変化させた場合の酵素活性を評価した。
【0324】
<保管条件>
玄米(平成26年産秋田県産あきたこまち)を精米直前まで室温よりも低温(表30に示す玄米の保管温度)で保管した。
【0325】
<精米条件>
前記条件にて保管した玄米を、室温よりも低温(表30に示す精米時の環境温度)で、サタケ社製テスト精米機(ダイヤル4)で3回精米(搗精)し、所定の搗精度(表30に示す搗精度)になるように調整した。
【0326】
<精白米の保管>
下記の急冷もしくは自然冷却により、精白米を保管した。
(急冷)
上記で得られた精米直後の精白米を、室温よりも低温環境下(15℃)でアルミパッドに広げて冷却した状態で12時間放置した。
【0327】
(自然冷却)
上記で得られた精米直後の精白米をステンレスボウルに受けて、25℃で12時間放置した。
【0328】
≪評価≫
<α−アミラーゼ活性>
実験例30〜37で保管した精白米について、α−アミラーゼ活性を測定した。Megazyme社製のアミラーゼ測定キットを用いて、波長450nmにおける吸光度(A450)、Δ450、比率を算出した。これらの結果を、下記の表30に示した。
【0329】
【表30】
【0330】
表30の結果から、玄米の保管温度が低い方が酵素活性は高くなる傾向にあることがわかった。また、精米時の環境温度が低い方が酵素活性は高い傾向にあることがわかった。特に実験例36は、玄米の保管温度および精米時の環境温度が低く、しかも急冷しているため、酵素活性が最も高くなる傾向にあることがわかった。
【0331】
以上、実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限られるものではなく、実施形態に記載していない例や、要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0332】
本発明の精白米は、冷蔵庫での保存に便利な使い切りサイズ(3合、150g)に包装した場合には、家庭用に最適である。また、本発明の精白米は、家庭用のみならず、業務用にも利用することができ、大量に米を消費する施設、例えば、寿司店(回転寿司)、ファミリーレストラン等の外食産業への応用が期待される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10