(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行体、前記走行体の上部に旋回可能に設けた旋回体、及び前記旋回体に取り付けた作業機を備え、前記旋回体が、前記作業機の油圧アクチュエータを駆動する圧油を吐出する油圧ポンプ、前記油圧ポンプを駆動する原動機、後端に設けたカウンタウェイト、旋回中心に対して左右方向の一方側でかつ後側にオフセットして配置された運転席、及び前記運転席の上方を覆うキャノピを備えており、前記キャノピが、前記運転席より前側でかつ左右方向の他方側の位置から立ち上がる第1支柱、前記運転席より後側でかつ左右方向の他方側の位置から立ち上がる第2支柱、前記運転席の後側の位置から立ち上がる第3支柱、並びに前記第1支柱、前記第2支柱及び第3支柱で支持されて前記運転席の上方に配置されたルーフを備えた油圧ショベルにおいて、
前記走行体が、前記旋回体を支持するセンタフレーム、前記センタフレームに対して回動可能に連結されて互いの前部の間隔を拡大してV字型に開脚可能な左右の走行装置、及び前記左右の走行装置を開脚及び閉脚させるシリンダを備え、
前記走行装置の前後方向の寸法が、前記旋回体の前後方向の長さ以下で、かつ前記左右の走行装置が平行なときの前記走行体の車幅方向の長さとなるように設定され、
前記第1支柱は前記ルーフの右前の角、前記第2支柱は前記ルーフの右後の角、前記第3支柱は前記ルーフの左後の角を支持しており、
前記第3支柱が、上方から見て前記旋回体の外縁より内側に収まっており、上方に向かって左右方向の一方側で且つ前側に傾斜して延び、前記第2支柱が、前記第3支柱と共に前傾している
ことを特徴とする油圧ショベル。
請求項1に記載の油圧ショベルにおいて、前記第3支柱が屈曲部で折れ曲がっており、下部が基部から前記屈曲部まで左右方向の一方側に傾斜して延び、上部が前記屈曲部から前記ルーフとの接続部まで前側に傾斜して延びていることを特徴とする油圧ショベル。
請求項2に記載の油圧ショベルにおいて、前記第3支柱の前記屈曲部から前記基部までの距離が前記屈曲部から前記接続部までの距離よりも短いことを特徴とする油圧ショベル。
請求項1に記載の油圧ショベルにおいて、上方から見て、前記運転席の後部の外縁と前記旋回体の後部の外縁との最小距離が、前記第3支柱の太さよりも短いことを特徴とする油圧ショベル。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
1.油圧ショベル
図1及び
図2は本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの全体構成を表す側面図である。なお、
図1はアタッチメントとしてバケットを装着した状態を、
図2はアタッチメントとしてブレーカを装着した状態を表している。以下の説明において油圧ショベル100の運転席の前方(同図では左)を前方とする。
【0011】
図1及び
図2に例示した油圧ショベル100は例えば深礎工法で深礎杭(不図示)を挿し込む縦孔(深礎杭孔)Hに投入され、縦孔Hの底部で走行体12によって小刻みに位置を変えながら掘削作業をし、縦孔Hを掘り進める作業機械である。ここで例示する油圧ショベル100は特に、履帯式の左右の走行装置12における前側の間隔を開いてV字型に開脚し、これら左右の走行装置12の間の領域を掘削することができる開脚型である。縦孔Hの底部で閉脚して作業する油圧ショベル100の様子を表す平面図を
図3に、縦孔Hの底部で開脚して作業する油圧ショベル100の様子を表す平面図を
図4に示した。
【0012】
例えば山岳地の送電線等の鉄塔の建て替えの際に新しい鉄塔の深礎杭(基礎)を地中深く施工するような深礎工法では、深礎杭を挿し込むための小径の縦孔を掘削する。しかし山岳地における縦孔の掘削工事では搬入経路や広い足場が確保できず大掛かりな機械設備が使えないことが多い。そのような場合に、例えばヘリコプターで輸送することができる分解型のショベルや超小型の油圧ショベル等を用いることがある。分解型ショベルを現地で組み立てて地表から一定深さまで縦孔を掘削し、超小型の油圧ショベルをクレーン等で縦孔に投入し縦孔を掘り進めていく工法である。ただ小径(例えば直径2.5m程度)の縦孔の内部では、いかに超小型の油圧ショベルであっても縦孔の底部に接地する自らの走行体が邪魔で実際に掘削できる領域は狭く、小刻みに走行体の位置や向きを変えなければならず効率的に作業を進めることができない。例示した油圧ショベル100は、このような場面で
図4のように左右の走行装置12をV字型に開脚し、左右の走行装置12の間まで掘削領域を広げることで狭隘な現場において効率的に掘削作業を行うことができる。また走行装置12をV字型に開脚し、左右の履帯23を逆回転させることで縦孔Hの底部で円弧状に横移動したりすることができる。この油圧ショベル100は、走行体10、旋回体30及び作業機(フロント作業機)40を備えている。
【0013】
2.走行体
走行体10は油圧ショベル100が自力走行するための履帯式(クローラ式)の走行体であり、トラックフレーム11、左右の走行装置12及びアウトリガー13を備えている。トラックフレーム11は走行体10のフレームをなすもので、センタフレーム(不図示)、左右のリンク(不図示)及び左右のサイドフレーム16からなり、閉脚時に平面視でH型になるように形成されている。センタフレームの後部(
図1では右側部分)に上記アウトリガー13が設けられている。掘削作業の邪魔になり得るためセンタフレームの前部にアウトリガーは設けられておらず、アウトリガー13は後部のみに存在する。アウトリガー13は図示しないシリンダによって上下に揺動し、場面に応じて高さを調節することで作業中における油圧ショベル100の後傾を抑制することができる。
【0014】
左右の走行装置12は、従動輪21、駆動輪22、履帯(クローラ)23及び走行駆動装置24を備えている。従動輪21はトラックフレーム11の左右のサイドフレーム16の各前端(
図1では左端)に、駆動輪22は左右のサイドフレーム16の各後端(
図1では右端)にそれぞれ回転自在に支持されている。左右のサイドフレーム16は、それぞれ左右の走行装置12のフレームを兼ねる。履帯23は左右の走行装置12についてそれぞれ従動輪21及び駆動輪22に掛け回されている。左右の走行装置12についてそれぞれ駆動輪22の回転軸に走行駆動装置24の出力軸が連結されている。走行駆動装置24が駆動されると従動輪21と駆動輪22に掛け回された履帯23が循環駆動され、油圧ショベル100の走行動作等が行われる。走行駆動装置24は油圧モータを含む。
【0015】
ここで、左右のサイドフレーム16は、その後部がセンタフレームに対して上下に延びる軸(不図示)を介して回動可能に連結されており、前部がそれぞれ上記リンクを介してセンタフレームに連結されている。左右のリンクはシリンダ(不図示)で連結されており、シリンダを伸ばすと左右のサイドフレーム16が上記の軸を支点に回動する。これにより左右の走行装置12が前部の間隔を広げて、
図3に示した閉脚した状態から
図4に示したようにV字型に開脚する。左右の走行装置12の開脚角度は例えば最大約90度(左右の走行装置12についてそれぞれ45度)に制限されている。
図4に示したように左右の走行装置12を最大限開脚しても走行装置12がアウトリガー13に干渉しないようになっている。またアウトリガー13の接地部も最大開脚時の左右の走行装置12の後縁に合わせて直角三角形状に形成されている。
【0016】
また本実施形態の油圧ショベル100の場合、小径の縦孔Hの底部で動き回る都合上、走行装置12の長手方向の長さ(少なくともサイドフレーム16の長さ)は一般的な油圧ショベルよりも短く、旋回体30の前後方向の長さと同程度かそれよりも短い。特に本実施形態においては、左右の走行装置12が平行な状態では(
図3に示したような閉脚時には)平面視で左右の走行装置12の車幅方向の外側の辺がほぼ正方形の対辺となるように走行装置12の間隔や長さが調整されている。これにより短い走行装置12ながら安定性が確保されている。
【0017】
3.旋回体
図5は旋回体30のフレーム構造を表した斜視図である。ここでは
図5を先の各図と共に参照する。旋回体30は、旋回フレーム31、運転席32、カウンタウェイト33及び機械室34等を備えている。旋回フレーム31は旋回体30のベースフレームであり、旋回輪25を介してトラックフレーム11(センタフレーム)の上部に設けられている。旋回フレーム31には旋回輪25の付近に旋回モータ(不図示)が搭載され、旋回モータの出力軸が旋回輪25に設けた歯車と噛み合うことで、走行体10に対して旋回体30が鉛直な旋回中心Cを軸にして旋回する。旋回モータには電動モータを用いることもできるが、本実施形態では油圧モータが用いてある。
【0018】
また旋回フレーム31の上部には、後部カバー31a、シートベース31b、支柱ブラケット31c、仕切り板31d及び作業機ブラケット31eが設けられている。後部カバー31aは旋回体30における機械室34の後部の外壁を形成するプレートであり、旋回フレーム31の半円形状の後縁に合わせて上方から見て後に凸の円弧状に湾曲し、鉛直に起立した姿勢で旋回フレーム31の後部にボルト等で下部が固定されている。シートベース31bは運転席32を支持するフレームであり、左方から見てアルファベットのLを上下反転させたような形状で左右に並んだ2本のバーを含む。シートベース31bは旋回フレーム31の旋回中心Cに対して全体として左側でかつ後側にオフセットした位置に配置されており、一端(下端)が旋回フレーム31に、他端(後端)が後部カバー31aに固定される。
【0019】
支柱ブラケット31cはキャノピ50(後述)を支持する水平なプレートであって後部カバー31aの内壁に沿って後縁が円弧状に形成されており、後部カバー31a及びシートベース31bで支持されている。また支柱ブラケット31cは上記カウンタウェイト33の上側に位置し、カウンタウェイト33の上方をカバーしている。この支柱ブラケット31cには、仕切り板31dの延長線上又はその付近に位置するように複数(この例では4つ)のボルト穴31yが上下に開口して設けられている。加えて、支柱ブラケット31cには、運転席32の中心の後側に位置するように複数(この例では2つ)のボルト穴31zが上下に開口して設けられている。
【0020】
作業機ブラケット31eは作業機40の基部を回動可能に支持する部位であり、旋回フレーム31の前部における右側に配置されている。仕切り板31dは旋回フレーム31の前部を左右に仕切って運転スペースと作業機40の動作スペースを隔てるプレートであり、旋回フレーム31の上部で前後に延びた姿勢で起立している。仕切り板31dには、旋回体31の前端付近に位置するように複数(この例では4つ)のボルト穴31xが左右に開口して設けられている。また仕切り板31dからは頂部付近に貫通孔の開いた吊り板31fが上方に延在しており、油圧ショベル100をクレーン等で吊る際に吊り具(不図示)の取り付け部の1つとして吊り板31fに設けた貫通孔が利用される。
【0021】
運転席32はシートベース31bの上部に支持され、旋回体30の旋回中心Cに対して左右方向の一方側(本実施形態では左側)でかつ後側にオフセットした位置に配置されている。また旋回フレーム31の前部(前縁に沿った部位)には運転席32の前側に位置するように操作装置36が配置されている。操作装置36は、作業機40、走行体10及び旋回体30の動作を指示するレバー装置やペダル類等の複数の操作装置である。特に旋回体30の半径が小さな本実施形態の油圧ショベル100においては、運転席32の前方に配置した操作装置36(例えばレバーの基部)から運転席32の背凭れまでの距離が旋回体30の前後長(最大値)の半分以上(例えば7割以上)になる。カウンタウェイト33は作業機40との重量のバランスをとるための錘であり、旋回フレーム31の後端に設けられている。本実施形態のカウンタウェイト33は機械室34の後部カバー31aと一体となっており、機械室34に収容された各機器の後方を覆っている。
【0022】
詳しく図示していないが、機械室34には、電動機37の他、油圧ポンプや冷却ファン、バルブユニット、作動油タンク、燃料タンク、コントローラ38等が収容されている。電動機37は油圧ポンプを駆動する原動機であり、例えば油圧ショベル100とは別置きの発電機からケーブル(不図示)を介して供給される電力で駆動される。但し、外部電源からの電力供給を受ける構成ではなく、機械室34に電源(発電機、バッテリ等)を搭載する構成としても良い。電動機37によって駆動された油圧ポンプは、作動油タンクの作動油を吸い込んで圧油として吐出する。油圧ポンプから吐出された圧油は、操作装置36の操作に応じて作動するバルブユニットによって制御されて対応する油圧アクチュエータに供給される。コントローラ38は電装品を制御する制御装置である。
【0023】
上記の通り油圧ショベル100は超小型であり、コントローラ38及び電動機37を運転席32(シートベース31b)の下部に上下に並べて収容する等、機械室34の収容機器のレイアウトを工夫して立体的にすることで旋回体30を極めて小径に構成してある。通常の小型ショベルと比べて走行体10が小型であるにも関わらず、本実施形態では旋回体30(作業機40は含まず)の最大旋回半径が走行体10の車幅程度に抑えられている。また本実施形態では電動機37より上側にコントローラ38を配置してある。特には図示していないが、運転席32は前部を支点として後部が上下に回動する構造になっており、運転席32の後部を持ち上げて傾斜させるとコントローラ38の上側が開放され、コントローラ38にアクセスできるようになっている。
【0024】
4.作業機
作業機40は作業腕41及びアタッチメントである作業具44を含む多関節型のフロント作業機である。この作業機40は、旋回体30上における旋回体30の中央より右側であって後述するキャノピ50の側方位置に回動基端が位置するように取り付けられている。作業腕41は、ブーム42、アーム43、ブームシリンダ(不図示)、アームシリンダ46及び作業具シリンダ47を備えている。ブーム42は旋回体30の前部(上記作業機ブラケット31e)に回動可能に連結され、アーム43はブーム42の先端に、作業具44はアーム43の先端に、それぞれ回動可能に連結されている。ブーム42、アーム43及び作業具44はいずれも左右に水平に延びる回転軸を支点にして回動する。
図1では作業具44としてバケットを、
図2では作業具44としてブレーカを装着した例を表しているが、装着されるアタッチメントの種類はこれらに限られない。また、ブームシリンダは旋回体30及びブーム42に、アームシリンダ46はブーム42及びアーム43に、それぞれ両端が連結されている。作業具シリンダ47は、基端がアーム43に連結される一方、先端がリンク48を介してアーム43の先端部及び作業具44に連結されている。ブームシリンダ、アームシリンダ46及び作業具シリンダ47はいずれも油圧アクチュエータであり、油圧ポンプから吐出される圧油で駆動され、伸縮動作により作業機40を駆動する。
【0025】
5.キャノピ
図6は旋回体30の要部の側面図、
図7は後面図、
図8は平面図、
図9は第1支柱の取り付け部の斜視図、
図10は旋回体におけるキャノピの支柱の基部の位置を表した模式平面図である。旋回体30の上部にはキャノピ50が設けられており、このキャノピ50によって運転席32の上方が覆われている。キャノピ50は、第1支柱51、第2支柱52、第3支柱53及びルーフ54を備えている。第1支柱51、第2支柱52及び第3支柱53は断面円形で中空のパイプ材で形成された柱であり、第1支柱51はルーフ54の右前の角、第2支柱52はルーフ54の右後の角、第3支柱55はルーフ54の左後の角を支持している。
【0026】
第1支柱51は、仕切り板31dに取り付けたブラケット61(
図9)によって基部(下端部)が支持されている。ブラケット61は上記ボルト穴31x(
図5)を利用して仕切り板31dの運転席32側の面にボルト(不図示)等で固定されている。これにより第1支柱51は、運転席32より前側でかつ左右方向の他方側(本実施形態では右側)の位置P1(
図10)から立ち上がり、全体として後傾(上方に向かって後側に傾斜)した姿勢で延在している。なお、ブラケット61は上向きに突き出した円柱状のポスト55を備えており、ポスト55に第1支柱51の下端部が被さる(第1支柱51にポスト55が挿し込まれる)ことによって第1支柱51がポスト55に装着される。詳しく図示していないがポスト55には段差があり、第1支柱51に挿し込まれる上部は第1支柱51の内径よりやや外形が小さく、下部(
図9で見えている部分)は第1支柱51の内径より外形が大きく形成されている。第1支柱51はこのポスト55の段差により支持される。そして第1支柱51とポスト55を貫通してピン56を挿し込むことによって、第1支柱51がポスト55に抜け止めされる。ピン56を抜き差しすることで第1支柱51はブラケット61に対して脱着可能である。またピン56は止めピン(不図示)によって抜け止めされ、更に抜き差しの際に利用するグリップ57を備えている。
【0027】
第2支柱52は、支柱ブラケット31cに取り付けたブラケット62(
図8)によって基部(下端部)が支持されている。ブラケット62は上記ボルト穴31y(
図5)を利用して支柱ブラケット31cの上面にボルト(不図示)等で固定されている。これにより第2支柱52は、運転席32より後側でかつ右側の位置P2(
図10)から立ち上がり、全体として前傾(上方に向かって前側に傾斜)した姿勢で延在している。ブラケット62はブラケット61と同じく上向きに突き出した円柱状のポスト55を備えている。第2支柱52をポスト55に装着する構造は、ポスト55、ピン56の構造を含め、第1支柱51をポスト55に装着する構造と同じである。第1支柱51と第2支柱52の間には金網58(
図6)が張ってある。
【0028】
第3支柱53は、支柱ブラケット31cに取り付けたブラケット63(
図8)によって基部(下端部)が支持されている。ブラケット63は上記ボルト穴31z(
図5)を利用して支柱ブラケット31cの上面にボルト(不図示)等で固定されている。支柱ブラケット31cは運転席32と後部カバー31aとの間にカウンタウェイト33の上方をカバーするようにして介在しており、上記の通りボルト穴31zはこの支柱ブラケット31cにおける運転席32の中心の後側に位置している。従って第3支柱53は、運転席32の後側であって旋回体30上における運転席32と後部カバー31aとの間の位置P3(
図10)から立ち上がっている。また第3支柱53は、全体として運転席32の前後方向から見て上方に向かって左側へ傾斜し、かつ全体として運転席32の左右方向から見て上方に向かって前側に傾斜して延びている。これにより運転席32の後側に居住空間が広がっている。ブラケット63もブラケット61と同じく上向きに突き出した円柱状のポスト55を備えている。第3支柱53をポスト55に装着する構造も、ポスト55、ピン56の構造を含め、第1支柱51をポスト55に装着する構造と同じである。
【0029】
ルーフ54は、以上の第1支柱51、第2支柱52及び第3支柱53の3本の支柱のみで支持され、運転室32の上方に配置されて運転室32の上方を覆っている(正確には運転席32に座ったオペレータの頭部が来る位置の上方を覆うように構成されている)。
図8に示したようにルーフ54は上から見て正方形状であり、本実施形態ではルーフ54の一辺の長さは旋回体30の左右の幅(最大値)の半分よりも少し短い程度である。
【0030】
本実施形態に係る油圧ショベル100の最も大きな特徴は、キャノピ50の上記第3支柱53の形状である。
図7及び
図8に示したように第3支柱53は、屈曲部53aで折れ曲がっている。第3支柱53におけるブラケット63に連結した基部から屈曲部53aまでの部分を下部53b、屈曲部53aからルーフ54に接続する上端までの部分を上部53cとする。下部53bも上部53cも直線的に延びている。下部53bは鉛直線に対して上方に向かうに連れてやや前側に傾斜しつつ主に左側に傾斜する方向に延びている。上部53cは鉛直線に対して上方に向かうに連れてやや左側に傾斜しつつ主に前側に傾斜する方向に延びている。
【0031】
図7に示したように、後方から見て下部53bの方が上部53cよりも鉛直に対してなす角度(<90度)が大きい(寝ている)。屈曲部53aは、第3支柱53cにおける支柱ブラケット31cとの接続部(基部)とルーフ54との接続部(上端部)とを結んだ線よりも下側に位置している。つまり第3支柱53は、屈曲部53aから支柱ブラケット31cとの接続部(基部)までの距離が、屈曲部53aからルーフ54との接続部(上端部)までの距離よりも短くなるように形成されている。従って屈曲部53aは第3支柱53の高さの中間点よりも低位置にあり、本実施形態では運転席32の背凭れの上縁かそれよりやや高い程度の高さに位置する。また屈曲部53aは、上方から見て旋回体30の後部の円弧状の外縁に近接しており、旋回体30の後部の外縁と屈曲部53aとの距離は第3支柱53の太さ(外径)よりも短い。
【0032】
加えて、
図8に示したように、上方から見て上部53cの方が下部53bよりも前後に延びる線に対してなす角度(<90度)が小さい。屈曲部53aは第3支柱53cにおける支柱ブラケット31cとの接続部(基部)とルーフ54との接続部(上端部)とを結んだ線よりも左側に位置している。こうして第3支柱53は上方から見て旋回体30の外縁より内側に収まりつつ、第3支柱53は旋回体30の後縁に沿うようにして屈曲している。
【0033】
運転席32が旋回中心に対して左側にオフセットして配置されていることは説明したが、その上で本実施形態では
図10に示したように運転席32を極力後側に配置してある。小型機種なりに運転席32に座るオペレータの居住性をなるべく良くするためである。従って、上方から見て運転席32の後部の外縁(左後のコーナー部)と旋回体30の後部の外縁との最小距離D(
図10)が短く、本実施形態では第3支柱53の太さ(外径)よりも短い(
図8も参照)。旋回体30において運転席32よりも左後にはスペースは殆どない。
図10に示した通り、第3支柱53の基部の位置P3は運転席32の中心Sの後方(中心Sを通って走行装置12と平行に延びる線L上又はその付近)に位置する。第3支柱53はこのような位置P3から立ち上がって上記の通り三次元的に屈曲し、
図7に示したように後方から見て運転席32に座ったオペレータの頭部Aと重ならないようになっている。
【0034】
またキャノピ50の支柱のうち後部に配置された第2支柱52及び第3支柱53は、カウンタウェイト33の上方に位置する支柱ブラケット31c、つまり旋回体30の後端付近から立ち上がる。上記の通りこれら第2支柱52及び第3支柱53は前傾しており、作業中に
図11に示したように油圧ショベル100が後傾しても縦孔Hの壁面に当たらないようになっている。
【0035】
6.動作
山岳地で鉄塔の深礎杭孔として縦孔Hを掘削する場合、例えば現地で組み立てた分解型油圧ショベルで地表面から一定の深さまで縦孔Hを掘削し、その後クレーン等で油圧ショベル100を縦孔Hの内部に投入する。油圧ショベル100を操作する際、オペレータは運転席32に座って操作装置36を適宜操作する。これにより走行体10によって油圧ショベル100を移動させたり、作業機40によって掘削作業をしたり旋回体30を旋回させたりすることができる。掘削作業は、例えば
図1に示したように作業具44としてバケットを用いて縦孔Hの底部を掘削したり、必要に応じて
図2のように作業具44としてブレーカを用いて縦孔Hの底面の岩盤を破砕したりする。掘削した土砂や礫等はバケットで掬って別途用意した容器に積み込み、クレーン等で容器を吊り上げて縦孔Hの外に運び出す。また
図4に示したように開脚して左右の走行装置12の間の領域を掘削する必要がある場合、開脚用のシリンダ(不図示)を伸長させる。
【0036】
7.効果
(1)仮に旋回体30における左右方向の中央に運転席32が配置されていれば、支柱ブラケット31cが運転席32よりも左右両側に長く伸びる。この場合は位置P3を運転席32よりも左側に配置する余裕があり、第3支柱53を運転席32の左側に配置することができる。従って後方から見て第3支柱53が運転席32と重なることがなく、運転席からの後方の視界性にはさほど影響しない。
【0037】
しかし旋回体30上のスペースは狭く、他の機器のレイアウトの都合上旋回体30の中央に運転席32を配置することは難しく、運転席32は左右方向の一方側(ここでは左側とする)に配置するのが通常である。その場合、運転席32の位置を支柱ブラケット31cに沿って左側に移動させると、旋回体30の後部が円弧上であることから運転席32の左側後方にスペースがなくなる。第3支柱53を省略して第1支柱51及び第2支柱52の2本の支柱でルーフ54を支持する構造とすることもできるが、キャノピ50の構造強度が低下する。運転席32の位置を前方に少し移動させれば運転席32の左側後方にスペースができるので、運転席32の左側後方に位置P3を配置することができ、運転席32の中心からずらして第3支柱53を立ち上げることができる。しかしこの場合には、運転席32が前方に移動した分だけ居住空間(運転席32と操作装置36との間隔)が狭まって居住性が悪くなってしまう。
【0038】
そこで本実施形態では上記の通り、第3支柱53を上方から見て旋回体30の外縁より内側に収まるように上方に向かって左前方に傾斜した方向に延ばしている。この場合、運転席32を支柱ブラケット31cに沿って極力左側に配置すると、
図10に示したように第3支柱53の基部の位置P3が運転席32の中心Sの後方(線L上)になり得る。しかし第3支柱53は基部から左斜め上に傾斜して延びるので、
図7に示したように後から見て運転席32に座ったオペレータの頭部Aと重ならない。このようにキャノピ50を採用した小型機種ながら、本例では旋回体30の外縁との最小距離Dが第3支柱53の断面の径寸法よりも短くなるほど左側に運転席32をオフセットさせても運転席32を極力後方に配置することができる。これにより運転席32に座ったオペレータの居住空間が広がるので、居住性が改善できる。その上で、後方から見て運転席32に座ったオペレータの頭部Aが第3支柱53に重ならないので、運転席32からの後方の視界性を向上させることができる。またオペレータは、運転席32に座った状態で無理なく後に頭部Aを倒したり体を反らせたりすることができる。
【0039】
なお、3本の支柱でルーフ54を支持することでキャノピ50の十分な構造強度を確保できることは言うまでもない。また第3支柱53は前側にも傾斜しており、上から見て旋回体30の外縁の外側にはみ出さないように這い回してある。よって第3支柱53を左斜め上に傾斜させたことによる旋回体30の旋回半径が拡大されることもない。
【0040】
加えて、掘削等の作業中に例えば作業機40による掘削反力によって油圧ショベル100が
図11に示したように後傾した場合、第2支柱52及び第3支柱53は前傾しているので縦孔Hの内壁に衝突しないようになっている。反面、第3支柱53は前傾しているので、仮に左に傾斜していなければ運転席32に座ったオペレータの頭部Aの直ぐ後を第3支柱53が通ることになる。その場合、運転中の揺れで後方への慣性が働いた場合に頭部Aが第3支柱53に当たりはしないかと、オペレータは必要以上に第3支柱53を気にしなければならない。それに対し本実施形態では、後から見て第3支柱53が運転席32に座ったオペレータの頭部Aに重ならないので、オペレータは第3支柱53を気にする必要がなく、掘削等の作業に集中することができる。
【0041】
(2)上記効果(1)を得る限りにおいては、例えば第3支柱53を弧状に形成し左斜め前に立ち上がる構成とすることもできるが、パイプ材の曲げ加工が必要になる。それに対し本実施形態においては、第3支柱53を屈曲部53aで1回だけ折れ曲がった形状とすることで、パイプ材の曲げ加工も不要となり、構成の簡素化により容易に製作することができるメリットがある。
【0042】
(3)第3支柱53は屈曲部53aより下の下部53bが屈曲部53bより上の上部53cよりも短い。つまり短いながら主として左に傾斜した下部53bによって運転席32の中心Sから外れた屈曲部53aの位置を低くすることができ、上部53cの全部が後から見て運転席32の中心Sから外れた構成とすることができる。主に前傾し運転席32に座ったオペレータと干渉し易い上部53cの全部が運転席32の中心Sから外れるので、居住性をより良いものとすることができる。
【0043】
8.変形例
以上の実施形態では、運転席32が旋回体30における左側にオフセットして配置された構成を例に挙げて説明したが、運転席32は旋回体30における左右方向の一方側にオフセットした位置に配置されていれば良い。従って運転席32は旋回体30における右側に配置されていても良い。この場合、第3支柱53は第1支柱51及び第2支柱52よりも右側に配置され、上方に向かって右側に傾斜して延びる構成となる。
【0044】
また、第2支柱52及び第3支柱53を支柱ブラケット31cで支持した構成を例示したが、カウンタウェイト33の上面に第2支柱52及び第3支柱53の基部を固定し、第2支柱52及び第3支柱53をカウンタウェイト33で支持する構成としても良い。この場合、不要であれば支柱ブラケット31cを省略しても良い。
【0045】
また左右の走行装置12をV字型に開脚する開脚型の油圧ショベル100に発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明の適用対象はこの種の油圧ショベルに限定されない。左右の走行装置の位置関係が変化しない一般的な走行体を備えた油圧ショベルや、左右の走行装置の間隔が可変な走行装置を備えた油圧ショベルにも本発明は適用可能である。
【0046】
また油圧ポンプを駆動する原動機として電動機37を搭載した油圧ショベル100に発明を適用する場合を例示して説明した。しかし油圧ショベル100が遠隔操作可能な場合、或いは稼働現場で排気ガスが問題にならないような場合等には、電動機37に代えてエンジン(内燃機関)を原動機として用いても良い。