特許第6734294号(P6734294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6734294線維症及び線維症に関連する状態の処置のための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6734294
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】線維症及び線維症に関連する状態の処置のための組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 39/15 20060101AFI20200728BHJP
   C07C 47/546 20060101ALI20200728BHJP
   C07C 59/52 20060101ALI20200728BHJP
   C07C 215/48 20060101ALI20200728BHJP
   C07C 239/20 20060101ALI20200728BHJP
   C07D 207/26 20060101ALI20200728BHJP
   C07D 207/38 20060101ALI20200728BHJP
   C07D 207/40 20060101ALI20200728BHJP
   C07D 207/444 20060101ALI20200728BHJP
   C07D 233/78 20060101ALI20200728BHJP
   C07D 261/14 20060101ALI20200728BHJP
   C07D 263/38 20060101ALI20200728BHJP
   C07D 263/44 20060101ALI20200728BHJP
   A61K 31/047 20060101ALI20200728BHJP
   A61K 31/131 20060101ALI20200728BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20200728BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20200728BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20200728BHJP
   A61K 31/4015 20060101ALI20200728BHJP
   A61K 31/4035 20060101ALI20200728BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20200728BHJP
   A61K 31/42 20060101ALI20200728BHJP
   A61K 31/421 20060101ALI20200728BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20200728BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20200728BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20200728BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20200728BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20200728BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   C07C39/15CSP
   C07C47/546
   C07C59/52
   C07C215/48
   C07C239/20
   C07D207/26
   C07D207/38
   C07D207/40
   C07D207/444
   C07D233/78
   C07D261/14
   C07D263/38
   C07D263/44
   A61K31/047
   A61K31/131
   A61K31/135
   A61K31/137
   A61K31/192
   A61K31/4015
   A61K31/4035
   A61K31/4166
   A61K31/42
   A61K31/421
   A61P1/16
   A61P3/06
   A61P9/00
   A61P13/12
   A61P21/00
   A61P43/00 107
【請求項の数】32
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2017-548980(P2017-548980)
(86)(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公表番号】特表2018-512406(P2018-512406A)
(43)【公表日】2018年5月17日
(86)【国際出願番号】AU2016000095
(87)【国際公開番号】WO2016145479
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年2月28日
(31)【優先権主張番号】2015900979
(32)【優先日】2015年3月18日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】516079202
【氏名又は名称】ヴェクタス バイオシステムズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダガン,カレン アネット
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−012376(JP,A)
【文献】 特表2009−518316(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/039173(WO,A1)
【文献】 CHEMISTRY-A EUROPEAN JOURNAL,2013年,Vol. 19,pp. 2442-2449
【文献】 Journal of the American Chemical Society,2001年,Vol. 123, No. 22,pp. 5382-5383
【文献】 Angewandte Chemie. International Edition,2005年,Vol. 44,pp. 4130-4163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
[式中、
Aは、場合により置換された飽和、部分飽和、若しくは不飽和5員若しくは6員ヘテロシクリル、場合により置換されたC1〜6アルコキシルアミン、場合により置換されたC1〜6アルキルアミン、場合により置換されたC0〜6アルキルカルボン酸、場合により置換されたC1〜6アルキルヒドロキシル、場合により置換された飽和若しくは不飽和C0〜6アルキル二環式ヘテロシクリル、及び場合により置換された飽和若しくは不飽和C1〜6アルコキシル二環式ヘテロシクリルから選択される]の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項2】
前記飽和、部分飽和、又は不飽和5員又は6員ヘテロシクリルが、1つ以上のオキソ、C1〜6アルキル、アミノ、ヒドロキシル、又はハロ置換基で場合により置換されたN、S、又はOのうちの1つ以上を含有する、請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項3】
前記飽和、部分飽和、又は不飽和5員又は6員ヘテロシクリルが、1つ以上のオキソ、C1〜6アルキル、アミノ、ヒドロキシル、又はハロ置換基で場合により置換されたピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、イミダゾリジニル、ピロリジニル、ピロリジニリデン、ジヒドロピロリル、イソオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリジニル、及びオキサゾリルから選択される、請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項4】
前記C1〜6アルコキシルアミンがアミノオキシメチルである、請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項5】
前記C1〜6アルキルアミンが、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、ヒドロキシル、又はハロのうちの1つ以上で場合により置換されている、請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項6】
前記C1〜6アルキルアミンが、一置換、二置換、若しくは三置換ハロアルキルで場合により置換されている、請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項7】
前記C1〜6アルキルアミンが、トリフルオロメタンで場合により置換されている、請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項8】
前記C0〜6アルキルカルボン酸がカルボン酸である、請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項9】
前記C1〜6アルキルヒドロキシルがメチルヒドロキシルである、請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項10】
前記C0〜6アルキル二環式ヘテロシクリルが、1つ以上のオキソで場合により置換されたインドリル、イソインドリル、インソリニル、及びイソインドリニルから選択される、請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項11】
前記C0〜6アルキル二環式ヘテロシクリルが、ジオキソで場合により置換されたインドリル、イソインドリル、インソリニル、及びイソインドリニルから選択される、請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項12】
前記C1〜6アルコキシル二環式ヘテロシクリルが、1つ以上のオキソで場合により置換されたインドリル、イソインドリル、インソリニル、及びイソインドリニルから選択され、前記C1〜6アルコキシルがメトキシ又はエトキシである、請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項13】
Aが、
【化2】
から選択される、請求項1に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項14】
【化3】
からなる群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物を含む、線維症の予防的又は治療的処置のための医薬組成物。
【請求項17】
前記処置が、線維症の進行を予防、軽減、又は遅延する、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記処置が既存の線維症を軽減する、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記処置が正常な組織構造を回復させる、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記線維症が、心筋線維症、腎線維症、及び/又は肝線維症である、請求項16から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
線維症の処置のための医薬を製造するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物の使用。
【請求項22】
前記医薬が線維症の進行を予防、軽減、又は遅延する、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記医薬が既存の線維症を軽減する、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
前記医薬が正常な組織構造を回復させる、請求項21に記載の使用。
【請求項25】
前記線維症が、心筋線維症、腎線維症、及び/又は肝線維症である、請求項21から23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物を含む、肝臓における脂肪蓄積を予防、軽減、又は遅延するための医薬組成物。
【請求項27】
請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物を含む、腎尿細管細胞死を予防、軽減、又は遅延するための医薬組成物。
【請求項28】
請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物を含む、正常な組織構造を回復させるための医薬組成物。
【請求項29】
肝臓における脂肪蓄積を予防、軽減、又は遅延するための医薬を製造するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物の使用。
【請求項30】
腎尿細管細胞死を予防、軽減、又は遅延するための医薬を製造するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物の使用。
【請求項31】
正常な組織構造を回復するための医薬を製造するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、若しくは溶媒和物の使用。
【請求項32】

【化4】
の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、並びに線維症及び線維症に関連する状態の予防的及び/又は治療的処置におけるその使用に関する。
【0002】
本発明は、主として線維症の処置のために開発されたものであり、この用途に関連して以下に記載される。しかしながら、本発明がこの特定の使用分野に限定されないことは理解されるであろう。
【背景技術】
【0003】
本明細書の全体にわたる従来技術のいかなる考察もそのような従来技術が当分野において周知である、又は共通の一般知識の一部をなすとして承認するものと決してみなされるべきではない
【0004】
損傷組織の修復は、基本的な生物学的過程である。この修復過程は、損傷細胞が同じ種類の正常細胞によって置き換えられる再生期、及び結合組織が正常な実質組織によって置き換えられ線維化として知られる時期の2つの異なる段階を伴う。ほとんどの場合、傷害物質によって引き起こされる損傷を遅延又は反転させるためには、両段階が必要とされる。しかしながら、最初は有益であっても、この治癒過程は、抑制されないままであれば病因となり得、相当な組織再構築及び永久的な瘢痕組織の形成につながる。線維性瘢痕化は、失敗した創傷治癒反応としてしばしば定義される。
【0005】
線維性変化は、心臓、腎臓、及び肝臓を含め、全ての主要な組織系及び器官系に生じる可能性があり、米国政府は、米国における死亡の45%が線維性障害に起因し得ると推定している(Wynn、Nat Rev Immunol、2004、4(8):583〜594頁)。例えば、
・心臓における線維性変化は、心臓弁の肥厚及び心筋の柔軟性の喪失をもたらし、これは心不全につながる可能性があり、
・腎臓における線維性変化は、腎機能の進行性喪失につながる、腎尿細管及び間質毛細血管の破壊をもたらす可能性があり、
・脂肪性肝疾患(トリグリセリドの大型液胞が肝細胞に蓄積する)は、肝硬変、肝不全、及び門脈圧亢進症につながる、肝臓における線維化の蓄積をもたらす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wynn、Nat Rev Immunol、2004、4(8):583〜594頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
線維症及び線維症に関連する状態を予防又は処置する物質が必要とされている。具体的には、線維症の進行を予防、軽減、若しくは遅延し、既存の線維症を軽減し、腎尿細管細胞死を予防、軽減、若しくは遅延し、肝臓における脂肪蓄積を予防、軽減、若しくは遅延し、及び/又は正常な組織構造を回復させる物質が必要とされている。
【0008】
本発明の目的は、従来技術の欠点のうちの少なくとも1つを克服又は改善するか、又は有用な代替物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様によると、本発明は、式
【化1】
[式中、
Aは、場合により置換された飽和、部分飽和、若しくは不飽和5員若しくは6員ヘテロシクリル、場合により置換されたC1〜6アルコキシルアミン、場合により置換されたC1〜6アルキルアミン、場合により置換されたC0〜6アルキルカルボン酸、場合により置換されたC1〜6アルキルヒドロキシル、場合により置換された飽和若しくは不飽和C0〜6アルキル二環式ヘテロシクリル、及び場合により置換された飽和若しくは不飽和C1〜6アルコキシル二環式ヘテロシクリルから選択される]の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、及び/若しくは溶媒和物を提供する。
【0010】
一実施形態では、飽和、部分飽和、又は不飽和5員又は6員ヘテロシクリルは、1つ以上のオキソ、C1〜6アルキル、アミノ、ヒドロキシル、又はハロ置換基で場合により置換されたN、S、又はOのうちの1つ以上を含有する。
【0011】
一実施形態では、飽和、部分飽和、又は不飽和5員又は6員ヘテロシクリルは、1つ以上のオキソ、C1〜6アルキル、アミノ、ヒドロキシル、又はハロ置換基で場合により置換されたピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、イミダゾリジニル、ピロリジニル、ピロリジニリデン、ジヒドロピロリル、イソオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリジニル、及びオキサゾリルから選択される。
【0012】
一実施形態では、C1〜6アルコキシルアミンはアミノオキシメチルである。
【0013】
一実施形態では、C1〜6アルキルアミンは、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、ヒドロキシル、又はハロ、好ましくは一置換、二置換、若しくは三置換ハロアルキル、最も好ましくはトリフルオロメタンのうちの1つ以上で場合により置換されている。
【0014】
一実施形態では、C0〜6アルキルカルボン酸はカルボン酸である。
【0015】
一実施形態では、C1〜6アルキルヒドロキシルはメチルヒドロキシルである。
【0016】
一実施形態では、C0〜6アルキル二環式ヘテロシクリルは、1つ以上のオキソ、好ましくはジオキソで場合により置換されたインドリル、イソインドリル、インソリニル(insolinyl)、及びイソインドリニルから選択される。
【0017】
一実施形態では、C1〜6アルコキシル二環式ヘテロシクリルは、1つ以上のオキソで場合により置換されたインドリル、イソインドリル、インソリニル、及びイソインドリニルから選択され、C1〜6アルコキシルがメトキシ又はエトキシである。
【0018】
一実施形態では、Aは、
【化2】
から選択される。
【0019】
一実施形態では、化合物は、
【化3】
又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、及び/若しくは溶媒和物からなる群より選択される。
【0020】
別の態様によると、本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0021】
別の態様によると、本発明は、本発明による化合物又は医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象における線維症の治療的処置のための方法に関する。
【0022】
別の態様によると、本発明は、本発明による化合物又は医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象における線維症の予防的処置のための方法に関する。
【0023】
別の態様によると、本発明は、線維症の治療的処置のための方法において使用するための、本発明の化合物又は医薬組成物に関する。
【0024】
別の態様によると、本発明は、線維症の予防的処置のための方法において使用するための、本発明の化合物又は医薬組成物に関する。
【0025】
別の態様によると、本発明は、線維症の治療的処置のための医薬を製造するための、本発明の化合物の使用に関する。
【0026】
別の態様によると、本発明は、線維症の予防的処置のための医薬を製造するための、本発明の化合物の使用に関する。
【0027】
一実施形態では、本発明の化合物、医薬組成物、又は医薬は、線維症の進行を予防、軽減、又は遅延する。
【0028】
一実施形態では、本発明の化合物、医薬組成物、又は医薬は、既存の線維症を軽減する。
【0029】
一実施形態では、本発明の化合物、医薬組成物、又は医薬は、正常な組織構造を回復させる。
【0030】
一実施形態では、線維症は心筋線維症である。
【0031】
一実施形態では、線維症は腎線維症である。
【0032】
一実施形態では、線維症は肝線維症である。
【0033】
別の態様によると、本発明は、本発明による化合物又は医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象の肝臓における脂肪蓄積を予防、軽減、又は遅延するための方法に関する。
【0034】
別の態様によると、本発明は、本発明による化合物又は医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象における腎尿細管細胞死を予防、軽減、又は遅延するための方法に関する。
【0035】
別の態様によると、本発明は、本発明による化合物又は医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象における正常な組織構造を回復させるための方法に関する。
【0036】
別の態様によると、本発明は、肝臓における脂肪蓄積を予防、軽減、又は遅延するための方法において使用するための、本発明の化合物又は医薬組成物に関する。
【0037】
別の態様によると、本発明は、腎尿細管細胞死を予防、軽減、又は遅延するための方法において使用するための、本発明の化合物又は医薬組成物に関する。
【0038】
別の態様によると、本発明は、正常な組織構造を回復させるための方法において使用するための、本発明の化合物又は医薬組成物に関する。
【0039】
別の態様によると、本発明は、肝臓における脂肪蓄積を予防、軽減、又は遅延するための医薬を製造するための、本発明の化合物の使用に関する。
【0040】
別の態様によると、本発明は、腎尿細管細胞死を予防、軽減、又は遅延するための医薬を製造するための、本発明の化合物の使用に関する。
【0041】
別の態様によると、本発明は、正常な組織構造を回復させるための医薬を製造するための、本発明の化合物の使用に関する。
【0042】
別の態様によると、本発明は、式
【化4】
の化合物に関する。
【0043】
文脈上明らかに別の解釈を要する場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲全体にわたり、「含む」、「含んでいる」等の語は、排他的又は網羅的な意味とは対照的な包括的な意味で、すなわち、「〜を含むが、それに限定されない」という意味で解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】A32の合成スキームである。
図2】A6の合成スキームである。
図3】A30の合成スキームである。
図4】A56f、A56g、及びA56の合成スキームである。
図5】A56kの合成スキームである。
図6】中間体A31-4の合成スキームである。
図7】A26及びA27の合成スキームである。
図8】A31の合成スキームである。
図9】A35の合成スキームである。
図10】A45の合成スキームである。
図11】A79の合成スキームである。
図12】A81の合成スキームである。
図13】62.5μM(白色バー)、125μM(灰色バー)、及び250μM(黒色バー)の3種の濃度の試験化合物で処理したウシ大動脈内皮細胞における細胞インピーダンスを示す図である。
図14】シス-ジアンミンジクロロ白金(III)(シスプラチン)5μg/ml単独(黒色バー)、シスプラチン5μg/ml及び32μMのA32(斜線バー)、シスプラチン5μg/ml及び63μMのA32(白色バー)と共にインキュベートしたヒト腎近位尿細管細胞における細胞死、並びにシスプラチン12.5μg/ml単独(黒色バー)、シスプラチン12.5μg/ml及び32μMのA32(斜線バー)、シスプラチン12.5μg/ml及び63μMのA32(白色バー)と共にインキュベートしたラット腎近位尿細管細胞における細胞死を示す図である。全てのインキュベーションは、24時間行った。
図15】2.2%食塩食及び5%エタノール飲用溶液摂取SHRの腎臓における間質性線維症に対する、4週間のA32 500pmol/kg/分の効果を示す図である。
図16】2.2%食塩食及び5%エタノール飲用溶液摂取SHRの心筋線維症に対する、4週間のA32 500pmol/kg/分の効果を示す図である。
図17】高脂肪食及び10%エタノール飲用溶液摂取SHRの肝線維症に対する、6週間のA32 500pmol/kg/分の効果を示す図である。
図18】対照ラット(A)、並びにA32(B)、A6(C)、A27(D)、A56(E)、及びA56f(F)で処置したラットの門脈路を示す、マッソントリクローム染色切片の図である。
図19】対照ラット(A)及びA32で処置したラット(B)の心臓組織を示す、マッソントリクローム染色切片の図である。
図20】化合物を加えた飲用溶液(10%エタノール)又は飲用溶液単独での6週間の処置後の、高脂肪高食塩食摂取SHRの肝臓における脂肪蓄積に対する試験化合物の効果を示す図である。
図21】高脂肪食及び10%エタノール飲用溶液摂取SHRの血漿アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルに対する、試験化合物での6週間の処置の効果を示す図である。
図22】試験化合物で処理したウシ大動脈内皮細胞における細胞インピーダンスと試験化合物で処理した高脂肪食摂取SHRにおける肝線維症のレベルとの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、抗線維化効果及び関連効果を示す化合物に関する。本発明はまた線維症の進行を予防、軽減、若しくは遅延し、既存の線維症を軽減し、腎尿細管細胞死を予防、軽減、若しくは遅延し、肝臓における脂肪蓄積を予防、軽減、若しくは遅延し、及び/又は正常な組織構造を回復させるのに有効な化合物にも関する。
【0046】
本発明の化合物は、式
【化5】
[式中、
Aは、場合により置換された飽和、部分飽和、若しくは不飽和5員若しくは6員ヘテロシクリル、場合により置換されたC1〜6アルコキシルアミン、場合により置換されたC1〜6アルキルアミン、場合により置換されたC0〜6アルキルカルボン酸、場合により置換されたC1〜6アルキルヒドロキシル、場合により置換された飽和若しくは不飽和C0〜6アルキル二環式ヘテロシクリル、及び場合により置換された飽和若しくは不飽和C1〜6アルコキシル二環式ヘテロシクリルから選択される]の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、及び/若しくは溶媒和物によって表される。
【0047】
以下の化合物は、本発明の化合物の具体的ではあるが非限定的な例である。
【0048】
【化6】

【0049】
本明細書において使用する際、「アルキル」という用語は、単独又は組み合わせで、式-CnH(2n+1)の直鎖又は分岐鎖アルキル基を意味する。アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル等が挙げられる。
【0050】
本明細書において使用する際、「アルコキシ」という用語は、単独又は組み合わせで、酸素に結合したアルキルを意味し、このときアルキルという用語は、上記に定義した通りである。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ等が挙げられる。
【0051】
本明細書において使用する際、「ハロ」という用語は、-F、-Cl、-Br、又は-Iを示す。
【0052】
本明細書において使用する際、「ヒドロキシ」という用語は、-OHを示す。
【0053】
本明細書において使用する際、「アミノ」又は「アミン」という用語は、-NH2を示す。
【0054】
本明細書において使用する際、「カルボン酸」という用語は、-C(O)OHを示す。
【0055】
本明細書において使用する際、「オキシ」という用語は、-O-を示す。
【0056】
本明細書において使用する際、「オキソ」という用語は、=Oを示す。
【0057】
本明細書において使用する際、略語Me、Et、Ph、Msは、それぞれメチル、エチル、フェニル、及びメタンスルホニルを表す。当技術分野の通常の技能を有する有機化学者により使用される略語のより包括的なリストは、Journal of Organic Chemistryの各巻の初号に掲載されており、このリストは、典型的には、「Standard List of Abbreviations」と表題が付けられた表として提示される。上記のリストに含まれる略語、及び当技術分野の通常の技能を有する有機化学者により使用される全ての略語は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
本発明の化合物は、特定の幾何学的形態又は立体異性体形態で存在してもよい。本発明は、シス及びトランス異性体、(R)-及び(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(d)-異性体、(l)-異性体、それらのラセミ混合物、並びにそれらの他の混合物を含め、そのような全ての化合物を本発明の範囲に含まれるものとして企図している。そのような全ての異性体及びそれらの混合物は、本発明に含まれるよう意図される。
【0059】
例えば、本発明の化合物の特定エナンチオマーを所望する場合、これは不斉合成によって、又はキラル補助基での誘導体化によって調製することができるが、この場合には得られるジアステレオマー混合物を分離し、補助基を切断して、純粋な所望のエナンチオマーを得る。或いは、適当な光学活性酸又は塩基を用いてジアステレオマー塩を形成し、続いてそのようにして形成されたジアステレオマーを当該技術分野で周知の分別結晶化又はクロマトグラフィー手段により分割し、その後純粋なエナンチオマーを回収してもよい。
【0060】
一般に、本発明の化合物は、例えば下記に記載する一般的な反応スキームに示される方法によって、又はその修正形態によって、容易に入手可能な出発物質、試薬、及び従来の合成手順を用いて調製することができる。これらの反応では、それ自体知られているが本明細書において言及されていない変形形態を使用することも可能である。
【0061】
記述がある場合を除き、化合物合成法は、例えば、Michael B. Smithによる、March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure (2013)、Francis A. Carey及びRichard J. Sunbergによる、Advanced Organic Chemistry, Part A: Structure and Mechanisms (2008)、及びAdvanced Organic Chemistry: Part B: Reaction and Synthesis (2010)、並びにPeter G. M. Wutsによる、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis (2014)に記載されている十分に確立された方法に基づく。
【0062】
本発明はまた、化合物の薬学的に許容される塩も企図している。「薬学的に許容される塩」という用語は、酸付加塩及び塩基付加塩を両方とも含み、遊離塩基又は遊離酸の生物学的効果及び特性を保持し、生物学的に、又は他の形で望ましくないものでない塩を指す。薬学的に許容される塩は、無機酸若しくは有機酸又は無機塩基若しくは有機塩基と形成され、化合物の最終単離及び精製中にその場で調製することができ、或いは精製化合物をその遊離塩基又は有機酸の形態で、適切な有機酸若しくは無機酸又は有機塩基若しくは無機塩基と別途反応させ、そのようにして形成された塩を単離することによって調製することができる。
【0063】
「線維症」という用語は、本発明の関連で使用する際、器官又は組織における、過剰な線維性結合組織の形成を指し、心筋線維症、腎線維症、及び/又は肝線維症が含まれる。
【0064】
全ての器官は、正常な機能を特有であるが異なる組織の配置(構造)に依存している。疾患及び/又は線維性沈着物は、器官の機能不全又は機能不良を引き起こす可能性がある。したがって、正常な組織構造を回復することで、器官がその正常な機能を取り戻せるようになる。
【0065】
既存の線維症の処置に加え、本発明の化合物は、線維症を発症するリスクがある対象に予防的に使用することもできる。線維症を発症するリスク範疇に入る対象の例としては、高血圧症、糖尿病、心筋炎、虚血性心疾患、コーン症候群、褐色細胞腫、悪性腫瘍(骨髄腫又はリンパ腫等)、遺伝的素因(アルポート症候群、ウィルソン病、α1抗トリプシン欠乏症、ヘモクロマトーシス)、感染症(B型肝炎、C型肝炎)、高塩分の食習慣を有する対象、及び/又は癌化学療法に使用される薬物(ダウノルビシン、シスプラチン、ブレオマイシン等)、軽躁病の処置のための薬物(リチウム)、移植片拒絶反応の処置のための薬物(シクロスポリン、タクロリムス)、関節炎状態の処置のための薬物(NSAID、ペニシラミン、金)を摂取している対象、並びに鉛及びカドミウム等の重金属に曝露した対象が挙げられる。「予防的な」という用語は、本発明の関連で使用する際、リスク群における線維症の発症を予防するため、又は遅らせるために使用される処置をとりわけ包含するよう意図される。
【0066】
本発明はまた、本発明の化合物を、許容される医薬品賦形剤と共に含む医薬組成物も企図している。本発明の関連で使用する際、「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、組成物の任意の薬学的に許容される不活性成分を意味する。当該技術分野で周知のように、賦形剤には、希釈剤、緩衝剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、抗酸化剤/保存剤、pH調整剤等が含まれる。賦形剤は、例えば、迅速に分散可能であり容易に飲み込める、所望の硬度及び脆弱性を有する錠剤を得る等、最終形態の所望の物理的態様に基づいて選択される。組成物摂取後の組成物からの活性物質の所望の放出速度も賦形剤の選択に関与する。医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、粉剤、液剤、遅延又は持続放出剤、貼付剤、嗅剤、点鼻薬等、どのようなタイプの剤型も含み得る。企図される医薬組成物の物理的形態及び内容は、医薬製剤分野の当業者によって製剤化が可能であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版、1995、British Pharmacopoeia 2000、及び同様の製剤教材及びマニュアルに記載されている十分に確立された原理及び組成に基づく従来の調製物である。
【0067】
例えば、化合物若しくは組成物が経口投与される場合、それらは錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、若しくはシロップ剤として製剤化してもよく、又は非経口投与の場合には、それらは注射剤(静脈内、筋肉内、又は皮下)、輸液製剤、若しくは坐剤として製剤化してもよい。眼粘膜経路による適用の場合、それらは点眼剤又は眼軟膏として製剤化してもよい。これらの製剤は、従来の手段によって調製することができ、所望であれば、活性成分を任意の従来の添加剤、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、矯味剤、可溶化剤、懸濁助剤、乳化剤、又はコーティング剤と混合してもよい。
【0068】
本発明の化合物が医薬品としてヒト及び動物に投与されるとき、それらはそのまま投与しても、又は例えば、0.1〜99.5%(より好ましくは、0.5〜90%)の活性成分を薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する医薬組成物として投与してもよい。
【0069】
また、使用すべき化合物の投与量及び投与頻度は、所望の反応をもたらすために臨床医によって容易に決定することができる。
【0070】
投与量は、患者の症状、年齢、及び体重、処置又は予防すべき障害の性質及び重症度、投与経路、並びに薬物の形態に応じて変化するが、一般に、本発明の化合物0.0001mg〜200mgの一日投与量が、ヒト成人患者に適切な有効量であり得、これは単一用量又は分割用量として投与することができる。
【0071】
本方法によって処置される「患者」又は「対象」は、ヒト又はヒト以外の対象のいずれも意味し得る。
【0072】
処置の方法に関する本化合物の「有効量」とは、所望の投与計画の一環として適用したときに、特定の障害の処置又は予防の臨床的に許容される基準による利益をもたらす調製物中の治療薬の量を指す。
【0073】
これから、具体的な組成物及び使用方法を説明する具体的ではあるが非限定的な例を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、具体的な手順、組成物、及び方法の詳細な説明は、本発明を例示する目的でのみ記載されていることを理解されたい。これは決して、上述の発明概念の一般的な説明に対する制限として理解すべきではない。
【実施例】
【0074】
[実施例1]
A32の合成
A32を調製するために使用した合成経路を図1に示す。簡単に述べると、5-ブロモ-2-ヒドロキシベンズアルデヒドとフェニルボロン酸との間の鈴木クロスカップリング反応によって2-ヒドロキシ-5-フェニルベンズアルデヒド13を生じ、次いでそれをN-フェニルトリフルアミドと反応させて、2-ホルミルアリールトリフレート14を調製した。2-ホルミルアリールトリフレート14と3-ベンジルオキシフェニルボロン酸との間の別の鈴木反応により、テルフェニルアルデヒド15を得、これをジエチル5-ヒダントイルホスホネート(diethyl 5-hydantoylphosphonate)を用いたホーナー・ワズワース・エモンズ(HWE)反応に供して、不飽和ヒダントイン16を形成した。水素及びPd/Cの存在下、化合物16を同時のオレフィン還元及びフェノール脱保護に供して、A32を生成した。
【0075】
2-ヒドロキシ-5-フェニルベンズアルデヒド(13)の生成
5-ブロモサリチルアルデヒド(2.49g、12.4mmol)、フェニルボロン酸(1.51g、12.4mmol)、酢酸パラジウム(II)(14mg、0.5mol%)、及び炭酸カリウム(5.14g、37.2mmol)を脱気水(75mL)に加え、アルゴン雰囲気下、周囲温度で2時間撹拌した。TLC(1:1 ジクロロメタン/ペンタン)により反応をモニターした。水(75mL)を添加し、反応混合物を10% HClで酸性(pH6)にしてから、酢酸エチルで抽出(3回)した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水で洗浄してから、乾燥させ、濃縮した。この粗物質をシリカショートカラムに通し、1:1 ジクロロメタン/ペンタンで溶出し、次いで酢酸エチル/ペンタンから再結晶して、2-ヒドロキシ-5-フェニルベンズアルデヒド(1.89g、77%)を暗黄色の結晶として得た(所望であれば、再結晶する代わりに、ペンタンと共に粉砕してもよい)。融点100〜101℃。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 10.99 (s, 1H); 9.97 (s, 1H); 7.78-7.73 (m, 2H); 7.56-7.52 (m, 2H); 7.47-7.41 (m, 2H); 7.37-7.32 (m, 1H); 7.09-7.04 (m, 1H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ196.9, 161.2, 139.6, 136.0, 133.6, 132.1, 129.2, 127.6, 126.8, 121.0, 118.4. EIMS: m/z 198 [M]+. HRMS: C13H10O2の計算値198.0675, 実測値198.0677.
【0076】
3-ホルミルビフェニル-4-イルトリフルオロメタンスルホネート(14)の生成
2-ヒドロキシ-5-フェニルベンズアルデヒド(100mg、0.50mmol)、N-フェニルトリフルイミド(180.0mg、0.51mmol)、及び炭酸カリウム(209mg、1.51mmol)を封管に入った無水THFに加えて撹拌し、マイクロ波照射を用いて120℃で6分間加熱した。減圧下で溶媒を除去し、水及びジクロロメタンを添加し、層を分離した。水層をジクロロメタンで更に抽出(2回)した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水で洗浄(1回)してから、乾燥させ、濃縮した。ラジアルクロマトグラフィーにより、1: 1 ジクロロメタン/ペンタンで溶出して精製して、3-ホルミルビフェニル-4-イル-トリフルオロメタンスルホネート(143mg、86%)を無色澄明の油として得た。1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 10.32 (s, 1H); 8.17 (d, 1H, J=2.4 Hz); 7.89 (dd,1H, J=8.6, 2.5 Hz); 7.63-7.36 (m, 6H). 13C NMR (125 MHz, CDCL3) δ 186.5, 149.1, 142.3, 138.0, 134.1, 129.2, 129.1, 128.8, 128.6, 127.2, 122.9, 118.7 (q, JCF-=320.9 Hz). 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -73.2. ElMS: m/z 330 [M]+. HRMS: C14H9F3O2Sの計算値330.0168, 実測値330.0163.
【0077】
2'-[3-ベンジルオキシ-(1,1':4',1"テルフェニル)]カルバルデヒド(15)の生成
3-ホルミルビフェニル-4-イルトリフルオロメタンスルホネート(153mg、0.463mmol)、3-ベンジルオキシフェニルボロン酸(116mg、0.51mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(13mg、2.5 mol%)、及び無水リン酸カリウム(147mg、0.695mmol)をアルゴン雰囲気下でシュレンクフラスコに入れた。脱気1,4-ジオキサン(2mL)を添加し、混合物をアルゴンでパージした。この反応混合物を完全変換が観察されるまで(GCMSによりモニターした)85℃で加熱したが、これは概して一晩の反応時間を要した。この反応混合物をベンゼン(4mL)で希釈し、30%過酸化水素水溶液(10mL)で処理した。この生成物をジエチルエーテルで抽出(3回)し、合わせた有機抽出物を飽和食塩水で洗浄してから、乾燥させ、濃縮した。ラジアルクロマトグラフィーにより、1:1 ジクロロメタン/ペンタンで溶出して精製して、2'-[3-ベンジルオキシ-(1,1':4',1"-テルフェニル)]カルバルデヒド(122mg、72%)を無色澄明の粘性油として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 10.02 (s, 1H); 8.24 (dd, 1H, J=2.1, 0.3 Hz); 7.86 (dd, 1H, J=8.0, 2.1 Hz); 7.68-7.64 (m, 2H); 7.56-7.30 (m, 10H); 7.08-7.02 (m, 2H); 7.01-6.97 (m, 1H); 5.11 (s, 2H). 13C NMR (100 MHz, CCl3) δ 192.6, 159.0, 144.8, 141.0, 139.7, 139.1, 136.9, 134.2, 132.2, 131.4, 129.8, 129.2, 128.9, 128.4, 128.2, 127.8, 127.3, 126.1, 123.2, 116.9, 114.9, 70.4. EIMS: m/z 364 [M]+. HRMS: C26H20O2の計算値: 364.1458, 実測値364.1450.
【0078】
(E/Z)-5-((3-(ベンジルオキシ)-[1,1':4',1"-テルフェニル]-2'-イル)メチレン)イミダゾリジン-2,4-ジオン(16)の生成
2'-[3-ベンジルオキシ-(1,1':4',1"-テルフェニル)]カルバルデヒド(15)(978mg、2.7mmol)、ジエチル5-ヒダントイルホスホネート(949mg、4.0mmol)、粉末水酸化カリウム(301mg、5.4mmol)、エタノール(20mL)、及び水(0.5mL)を20mLの反応バイアル中で混ぜ合わせ、マイクロ波照射(300ワット)を用いて150℃で1時間加熱した。この混合物を水に注ぎ入れ、ワットマン542硬質無灰濾紙を用いた濾過によって固体を回収し、水でよく洗浄した。この固体を温エタノールに溶解し、再び撹拌しながら水にゆっくりと注ぎ入れて、微細沈殿物を生成した。この固体を濾過(ワットマン542硬質無灰濾紙)により回収し、水でよく洗浄してから、真空中、40℃で乾燥させて、(E/Z)-5-((3-(ベンジルオキシ)-[1,1':4',1"-テルフェニル]-2'-イル)メチレン)イミダゾリジン-2,4-ジオン(16)(1.04g、87%)を淡黄色の固体として得た。さらなる精製は必要なかった。1H NMR (200 MHz, DMSO-d6) δ 10.99 (br s, 2H); 7.90 - 7.21 (m, 14H), 7.17 - 6.89 (m, 3H), 6.21 (s, 1H), 5.14 (s, 2H). 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6) δ 165.5, 158.3, 155.9, 141.0, 140.5, 139.8, 139.6, 137.0, 131.2, 130.5, 129.5, 129.2, 128.8, 128.4, 127.8, 127.6 (2つのシグナルは一致), 127.1, 126.9, 122.1, 115.9, 114.2, 106.8, 69.4 (1つのシグナルは認められず). EIMS: m/z 実測値: M+・ 446.1619, C29H22N2O3計算値446.1625. EIMS: m/z 446 (M+・, 8%), 383 (5), 356 (15), 355 (57), 313 (10), 312 (42), 284 (13), 258 (6), 257 (24), 228 (6), 92 (8), 91 (100).
【0079】
5-((3-ヒドロキシ-[1,1':4',1"-テルフェニル]-2'-イル)メチル)イミダゾリジン-2,4-ジオン(A32)の生成
(E/Z)-5-((3-(ベンジルオキシ)-[1,1':4',1"-テルフェニル]-2'-イル)メチレン)イミダゾリジン-2,4-ジオン(16)(1.02g、2.3mmol)及びメタノール(50mL)中の10%パラジウム炭素(H2O中50質量%、200mg)を50psiの水素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。メタノールを除去し、残渣をDCMに溶解し、GF紙で重力濾過した。ラジアルクロマトグラフィー(3:97 メタノール:DCM→5:95 メタノール:DCM)及び分取HPLC(化合物をChromatorex C18シリカに予め吸着させる、45% ACN/H2O、80mL/分、240nm、300×40mm Deltaprep C18カラム)により精製して、5-((3-ヒドロキシ-[1,1':4',1"-テルフェニル]-2'イル)メチル)イミダゾリジン-2,4-ジオン(A32)(285mg、35%)を白色の微粉末として得た。融点214〜216℃。1H NMR (200 MHz, DMSO-d6) δ 10.59 (br s, 1H), 9.54 (br s, 1H), 7.90 (m, 1H), 7.80 - 7.31 (m, 7H), 7.30 - 7.15 (m, 2H), 6.84 - 6.67 (m, 3H), 4.22 (m, 1H), 3.12 (dd, 1H, J 4.5, 14.6 Hz), 2.81 (dd, 1H, J 9.0, 14.6 Hz). 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6) δ 175.4, 157.3, 157.1, 141.8, 141.3, 139.9, 139.1, 134.4. 130.3, 129.2, 128.8, 128.0, 127.4, 126.8, 124.8, 119.8, 116.0, 114.1, 57.9, 34.8. EIMS: m/z 実測値: M+・ 358.1306, C22H18N2O3計算値358.1312. EIMS: m/z 358 (M+・, 50%), 260 (23), 259 (100). HPLC純度 (40% ACN / H2O, 263 nm): 99.26%.
【0080】
[実施例2]
A6の合成
A6を調製するために使用した合成経路を図2に示す。
【0081】
ジエチル[2-アミノ-3,3,3-トリフルオロプロパ-1-エン-1-イル]ホスホネートの生成
無水テトラヒドロフラン(33mL)中のジエチルメチルホスホネート(1.000g、6.57mmol)の溶液を窒素下で調製し、-80℃の冷却浴中で冷却した。ジエチルエーテル中の1.21Mのメチルリチウム溶液(5.5mL、6.6mmol)を滴加した。この混合物を窒素下、-80℃で1時間撹拌した。
【0082】
トリフルオロ酢酸(0.71mL、9.6mmol)を無水ピリジン(11.7mL、145mmol)に窒素下で滴加した。窒素流下で、雲状の蒸気を除去した。50mLの丸底フラスコにトリフルオロアセトアミド(3.177g、33.4mmol)を入れ、窒素下で、ピリジン/トリフルオロ酢酸混合物に溶解させた。この溶液上の頭隙にカニュラを挿入し、このカニュラの他端はホスホネート溶液中に挿入した。トリメチルアセチルクロリド(7.3mL、59.3mmol)をトリフルオロアセトアミド溶液に80分間かけて滴加した。ホスホネート溶液は、添加中-80℃で撹拌し、その後更に4時間撹拌してから、一晩室温に戻した。
【0083】
この反応混合物をジクロロメタン(20mL)と水(60mL)とに分配した。相を分離した。水層をジクロロメタン(10mL)で抽出した。合わせたジクロロメタン層を飽和食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、表題化合物を淡黄色の粉末として得た(638mg、39%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 5.71 (br. s, 2H), 4.46 (d, J=8.6 Hz, 1H), 3.98 - 4.15 (m, 4H), 1.34 (t, J=7.0 Hz, 6H).[参考文献: F. Palaciosら、J. Org. Chem. 2004、69、8767〜8774頁]。
【0084】
1,1,1-トリフルオロ-4-[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]ブタ-3-エン-2-アミンの生成
無水テトラヒドロフラン(7.7mL)中のジエチル[2-アミノ-3,3,3-トリフルオロプロパ-1-エン-1-イル]ホスホネート(638mg、2.58mmol)の溶液及び無水テトラヒドロフラン(7.7mL)中の3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1''-テルフェニル-2'-カルバルデヒド(944mg、2.59mmol)の溶液を窒素下で調製した。ホスホネート溶液を-5℃に冷却した。ヘキサン中の1.47Mのブチルリチウム溶液(1.8mL、2.65mmol)を滴加した。この混合物を窒素下、-5℃で1時間撹拌した。アルデヒド溶液をシリンジで滴加した。この混合物を窒素下、-5℃で15分間撹拌してから、室温で70分間撹拌した。
【0085】
反応混合物を-78℃に冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(196mg、5.18mmol)を添加し、続いてメタノール(15mL)を滴加した。この混合物を-78℃で80分間撹拌してから、一晩室温に戻した。
【0086】
塩酸(1M、5mL)を慎重に添加した。この混合物を室温で45分間撹拌し、水酸化ナトリウム(253mg、6.33mmol)を添加してpH11(万能指示薬)に調整し、酢酸エチル(30mL)で抽出した。水層を酢酸エチル(10mL)と水(10mL)とに分配し、相を分離した。合わせた酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し(2×20mL)、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン)により精製して、標題化合物(72mol%)と出発アルデヒドの還元に由来するベンジルアルコール(28mol%)の混合物を得た(467mg、39%)。1H NMR (400MHz、CDCl3;選択した共鳴)標題化合物C(3)H:6.14(dd、J=15.8、6.8 Hz、1 H) 、ベンジルアルコールArCH2OH:4.65(d、J=5.7 Hz、2H)。
【0087】
2'-(3-アミノ-4,4,4-トリフルオロブチル)-1,1':4',1"-テルフェニル-3-オール(A6)の生成
酢酸(20mL)中の粗1,1,1-トリフルオロ-4-[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]ブタ-3-エン-2-アミン(576mg、1.25mmol)の溶液を10%パラジウム炭素(Pdに関して、131mg、0.12mmol)に添加した。この混合物を2.1バールで18時間水素化した。この混合物をセライトで濾過した。濾過ケーキを酢酸で洗浄した(2×20mL)。合わせた濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣を酢酸エチル(20mL)と飽和炭酸水素ナトリウム溶液(20mL)とに分配した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(20mL)及び飽和食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、表題化合物を淡橙褐色の油として得、これは静置時に凝固した(323mg、69%)。この生成物を7.5%ジクロロメタン/ヘキサンに懸濁させ、濾過によって単離して、オフホワイトの粉末を得た。1H NMR (400MHz, CDCl3) 7.58 - 7.67 (m, 2H), 7.42 - 7.55 (m, 4H), 7.33 - 7.40 (m, 1H), 7.27 - 7.33 (m, 2H), 6.88 - 6.95 (m, 1H), 6.79 - 6.87 (m, 2H), 5.26 (br. s, 1H), 2.93 - 3.08 (m, 2H), 2.69 - 2.82 (m, 1H), 1.85 - 1.98 (m, 1H), 1.48 - 1.61 (m, 1H), 1.17 (br. s, 2H); HPLC (水/ACN + 0.1% TFA勾配) 220nmに99.40%; LCMS [M+H]+ = 372.2.
【0088】
[実施例3]
A30の合成
A30を調製するために使用した合成経路を図3に示す。
【0089】
3-(トリフェニル-l5-ホスファニリジン)ピロリジン-2,5-ジオンの生成
アセトン(165mL)中のマレイミド(3.17g、32.7mmol)及びトリフェニルホスフィン(8.56g、32.6mmol)の懸濁液を窒素下、1時間加熱還流した。この反応混合物を室温に冷まし、濾過した。濾過ケーキをアセトンで洗浄し(3×20mL)、真空下で乾燥させて、表題化合物を白色の粉末として得た(7.21g、61%)。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) 9.73 (br. s, 1H), 7.66 - 7.75 (m, 3H), 7.53 - 7.65 (m, 12H), 2.89 (s, 2H).
【0090】
上記からの濾液を合わせ、濃縮して約120mLの溶媒を除去した。残った物質を窒素下で2時間加熱還流し、室温に冷まし、濾過した。濾過ケーキをアセトンで洗浄し(3×10mL)、真空下で乾燥させて、さらなる収量の表題化合物を白色の粉末として得た(2.63g、22%)。[参考文献: G. Brackmanら、Bioorg. Med. Chem. 2013、21、660〜667頁]。
【0091】
3-{[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]メチリデン}ピロリジン-2,5-ジオンの生成
【0092】
メタノール(15mL)の3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-カルバルデヒド(1.71g、4.69mmol)及び3-(トリフェニル-l5-ホスファニリジン)ピロリジン-2,5-ジオン(1.69g、4.69mmol)の混合物を窒素下で1.5時間加熱還流した。この反応混合物を熱いまま濾過した。濾過ケーキをメタノールで洗浄し(2×25mL)、風乾して、表題化合物を黄色の粉末として得た(1.05g、50%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) 8.18 (s, 1H), 7.67-7.69 (m, 3H), 7.61 (d, J=8.0 Hz, 2H), 7.33 - 7.51 (m, 10H), 7.02 (dd, J=8.0, 2.0 Hz, 1H), 6.95 (s, 1H), 6.92 (d, J=7.6 Hz, 1H), 5.10 (s, 2H), 3.56 (s, 2H); LCMS [M+H]+ = 446.3, [M+Na]+ = 468.2, [M-H]- = 444.2.
【0093】
3-[(3-ヒドロキシ-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル)メチル]ピロリジン-2,5-ジオン(A30)の生成
3-{[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]メチリデン}ピロリジン-2,5-ジオン(2.25g、5.05mmol)、酢酸エチル(200mL)、及びトリエチルアミン(40滴)の混合物を通して窒素(2L)を5〜10分間バブリングすることにより、この混合物を脱気した。10%パラジウム炭素(0.23g)を窒素下で添加した。この混合物を還流状態で大気圧で一晩水素化した。この熱い反応混合物をセライトで濾過し、濾過ケーキを酢酸エチルで洗浄した(3×50mL)。合わせた濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)により精製した。この生成物をエタノール(100mL)から濃縮し、高真空下で3日間乾燥させて、表題化合物を無色のガラスとして得た(1.61g、89%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) 7.89 (br. s, 1H), 7.61 (d, J=6.8 Hz, 2H), 7.53 (dd, J=8.0, 2.0 Hz, 1H), 7.44 - 7.48 (m, 3H), 7.37 (t, J=7.2 Hz, 1H), 7.31 (t, J=7.2 Hz, 2H), 6.81 - 6.90 (m, 3H), 5.40 (br. s, 1H), 3.51 (dd, J= 14.0, 4.8 Hz, 1H), 3.01 (m, 1H), 2.87 (dd, J=14.0, 10.4 Hz, 1H), 2.56 (dd, J=18.4, 9.2 Hz, 1H), 2.25 (dd, J= 18.4, 5.6 Hz, 1H); HPLC 220nmに99.01%; LCMS [M+H]+ = 358.2, [M+Na]+ = 380.1, [M-H]- = 356.2.
【0094】
[実施例4]
A56f、A56g、及びA56の合成
A56f、A56g、及びA56を調製するために使用した合成経路を図4に示す。
【0095】
2-[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]-1-(メチルスルファニル)エテニルメチルスルホキシドの生成
3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-カルバルデヒド(5.330g、14.6mmol)をテトラヒドロフラン(65mL)に溶解させた。メチル(メチルスルフィニル)メチルスルフィド(2.745g、22.1mmol)及び水酸化ナトリウム(654mg、16.4mmol)を添加した。この混合物を窒素下で一晩加熱還流した。この反応混合物を酢酸エチル(400mL)と水(200mL)とに分配した。水層を酢酸エチルで抽出した(2×200mL)。合わせた酢酸エチル層を水(2×200mL)及び飽和食塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ジクロロメタン)により精製して、表題化合物を淡橙色の油として得た(3.733g、54%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 8.14 (d, J=1.4 Hz, 1H), 7.62 - 7.72 (m, 4H), 7.42 - 7.53 (m, 5H), 7.39 (t, J=7.3 Hz, 3H), 7.29 - 7.36 (m, 2H), 6.90 - 7.01 (m, 3H), 5.10 (s, 2H), 2.70 (s, 3H), 2.28 (s, 3H).
【0096】
エチル[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]アセテートの生成
2-[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]-1-(メチルスルファニル)エテニルメチルスルホキシド(3.733g、7.93mmol)をエタノール(70mL)に溶解させた。濃塩酸(6.6mL)を添加し、混合物を5日間加熱還流した。この反応混合物を酢酸エチル(500mL)と水(250mL)とに分配した。酢酸エチル層を水(200mL)及び飽和食塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン)により精製して、表題化合物を黄橙色の油として得た(2.129g、64%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 7.60 - 7.68 (m, 2H), 7.59 (br. s, 1H), 7.55 (dd, J=8.0, 1.6 Hz, 1H), 7.42 - 7.50 (m, 4H), 7.29 - 7.42 (m, 6H), 6.92 - 7.04 (m, 3H), 5.09 (s, 2H), 4.10 (q, J=7.0 Hz, 2H), 3.65 (s, 2H), 1.21 (t, J=7.1 Hz, 3H); LCMS [M+H]+ = 423.1.
【0097】
2-[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]エタノールの生成
エチル[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]アセテート(2.129g、5.04mmol)を無水テトラヒドロフラン(20mL)に窒素下で溶解させた。無水テトラヒドロフラン(10mL)中の水素化アルミニウムリチウム(306mg、8.06mmol)の懸濁液を窒素下で調製し、氷/水浴中で冷却した。エステル溶液を水素化アルミニウムリチウム懸濁液に滴加した。この混合物を窒素下、室温で一晩撹拌した。この反応混合物を氷/水浴中で冷却した。水(0.37mL)、15%水酸化ナトリウム溶液(0.37mL)、及び水(1.5mL)を滴加することによって、過剰量の水素化アルミニウムリチウムをクエンチした。この混合物を30分間撹拌した。酢酸エチル(60mL)を添加し、混合物をセライトで濾過した。濾過ケーキを酢酸エチルで洗浄した(2×30mL)。合わせた濾液を乾燥するまで蒸発させて、表題化合物を淡橙色の油として得た(2.046g、107%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 7.59 - 7.67 (m, 2H), 7.55 (d, J=1.6 Hz, 1H), 7.50 (dd, J=7.9, 1.9 Hz, 1H), 7.43 - 7.48 (m, 4H), 7.28 - 7.42 (m, 6H), 6.92 - 7.03 (m, 3H), 5.11 (s, 2H), 3.66 - 3.74 (m, 2H), 2.92 (t, J=6.8 Hz, 2H), 1.21 (t, J=5.9 Hz, 1H); LCMS [M+H-H2O]+ = 363.3, [2M+H]+ = 761.6.
【0098】
2-{2-[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]エトキシ}-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオンの生成
2-[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]エタノール(2.046g、5.38mmol)、トリフェニルホスフィン(1.707g、6.51mmol)、及びN-ヒドロキシフタルイミド(1.053g、6.45mmol)の混合物を無水テトラヒドロフラン(30mL)に窒素下で懸濁させた。この混合物を氷/水浴中で冷却した。アゾジカルボン酸ジエチル(1.130g、6.49mmol)を滴加した。この混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサン)により精製して、表題化合物を淡黄色のろう状固体として得た(2.509g、89%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 7.75 - 7.82 (m, 2H), 7.69 - 7.74 (m, 2H), 7.61 - 7.68 (m, 3H), 7.43 - 7.53 (m, 5H), 7.32 - 7.43 (m, 4H), 7.28 (d, J=8.0 Hz, 1H), 7.21 (t, J=7.9 Hz, 1H), 6.86 - 6.96 (m, 2H), 6.79 (dd, J=8.3, 1.9 Hz, 1H), 5.06 (s, 2H), 4.26 (t, J=7.6 Hz, 2H), 3.19 (t, J=7.5 Hz, 2H).
【0099】
O-{2-[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]エチル}ヒドロキシルアミンの生成
2-{2-[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]エトキシ}-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン(1.769g、3.37mmol)を無水エタノール(65mL)に懸濁させた。ヒドラジン水和物(230μL、3.69mmol)を添加し、混合物を窒素下、65℃で8時間加熱してから、室温で一晩静置した。この反応混合物を濾過した。濾過ケーキをエタノールで洗浄した(2×30mL)。合わせた濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をジクロロメタン(60mL)に懸濁させ、混合物を濾過した。濾過ケーキをジクロロメタンで洗浄した(2×30mL)。合わせた濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ジクロロメタン)により精製して、表題化合物を澄明油として得た(1.317g、99%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 7.59 - 7.68 (m, 2H), 7.55 (d, J=1.8 Hz, 1H), 7.42 - 7.52 (m, 5H), 7.27 - 7.42 (m, 6H), 6.93 - 7.03 (m, 3H), 5.22 (br. s, 2H), 5.11 (s, 2H), 3.77 (t, J=6.9 Hz, 2H), 2.96 (t, J=6.9 Hz, 2H).
【0100】
2'-(2-ヒドロキシエチル)-1,1':4',1"-テルフェニル-3-オール(A56f)の生成
酢酸エチル(40mL)中のO-{2-[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]エチル}ヒドロキシルアミン(1.317g、3.33mmol)の溶液を10%パラジウム炭素(Pdに関して、346mg、0.33mmol)に添加した。この混合物を2.1バールで65時間水素化した。この混合物をセライトで濾過した。濾過ケーキを酢酸エチルで洗浄した(2×40mL)。合わせた濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(メタノール/ジクロロメタン)により精製して、表題化合物を白色の粉末として得た(864mg、89%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 7.59 - 7.68 (m, 2H), 7.53 - 7.58 (m, 1H), 7.41 - 7.53 (m, 3H), 7.33 - 7.40 (m, 1H), 7.26 - 7.33 (m, 2H), 6.88 - 6.96 (m, 1H), 6.79 - 6.87 (m, 2H), 5.14 (br. s, 1H), 3.71 - 3.84 (m, 2H), 2.97 (t, J=6.8 Hz, 2H), 1.35 - 1.48 (m, 1H); HPLC (水/ACN + 0.1% TFA勾配) 220nmに99.19%; LCMS [M+H-H2O]+ = 273.2, [M+Na]+ = 313.2.
【0101】
2-[2-(3-ヒドロキシ-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル)エトキシ]-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン(A56g)の生成
2'-(2-ヒドロキシエチル)-1,1':4',1"-テルフェニル-3-オール(864mg、2.98mmol)、トリフェニルホスフィン(946mg、3.61mmol)、及びN-ヒドロキシフタルイミド(587mg、3.60mmol)の混合物を無水テトラヒドロフラン(30mL)に窒素下で懸濁させた。この混合物を氷/水浴中で冷却した。アゾジカルボン酸ジエチル(626mg、3.59mmol)を滴加した。この混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ジクロロメタン)により精製して、表題化合物を白色の粉末として得た(1.265g、98%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 7.79 - 7.88 (m, 2H), 7.71 - 7.79 (m, 2H), 7.56 - 7.68 (m, 3H), 7.41 - 7.54 (m, 3H), 7.31 - 7.40 (m, 2H), 7.23 (t, J=7.9 Hz, 1H), 6.93 - 7.00 (m, 1H), 6.88 (d, J=7.6 Hz, 1H), 6.75 (dd, J=8.1, 2.1 Hz, 1H), 5.72 (s, 1H), 4.40 (t, J=7.7 Hz, 2H), 3.21 (t, J=7.7 Hz, 2H); HPLC (水/ACN + 0.1% TFA勾配) 220nmに98.52%; LCMS [M+Na]+ = 458.1.
【0102】
2'-[2-(アミノオキシ)エチル]-1,1':4',1"-テルフェニル-3-オール(A56)の生成
2-[2-(3-ヒドロキシ-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル)エトキシ]-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン(999mg、2.29mmol)を無水エタノール(45mL)に懸濁させた。ヒドラジン水和物(150μL、2.40mmol)を添加した。この混合物を窒素下、65℃で4時間加熱してから、一晩室温で静置した。この反応混合物を濾過した。濾過ケーキをエタノールで洗浄した(2×20mL)。合わせた濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をジクロロメタン(40mL)に懸濁させ、混合物を濾過した。濾過ケーキをジクロロメタンで洗浄した(2×20mL)。合わせた濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(メタノール/ジクロロメタン)により精製して、表題化合物を白色の粉末として得た(648mg、92%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 7.60 - 7.66 (m, 2H), 7.54 (d, J=1.6 Hz, 1H), 7.41 - 7.51 (m, 3H), 7.33 - 7.39 (m, 1H), 7.26 - 7.32 (m, 2H), 6.89 - 6.96 (m, 1H), 6.79 - 6.87 (m, 2H), 5.29 (br. s, 3H), 3.82 (t, J=6.9 Hz, 2H), 2.98 (t, J=7.0 Hz, 2H); HPLC (水/ACN + 0.1% TFA勾配) 220nmに95.36%; LCMS [M+H]+ = 306.2, [M+Na]+ = 328.1.
【0103】
[実施例5]
A56kの合成
A56kを調製するために使用した合成経路を図5に示す。
【0104】
2-[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]-1-(メチルスルファニル)エテニルメチルスルホキシドの生成
3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-カルバルデヒド(5.330g、14.6mmol)をテトラヒドロフラン(65mL)に溶解させた。メチル(メチルスルフィニル)メチルスルフィド(2.745g、22.1mmol)及び水酸化ナトリウム(654mg、16.4mmol)を添加した。この混合物を窒素下で一晩加熱還流した。この反応混合物を酢酸エチル(400mL)と水(200mL)とに分配した。水層を酢酸エチルで抽出した(2×200mL)。合わせた酢酸エチル層を水(2×200mL)及び飽和食塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ジクロロメタン)により精製して、表題化合物を淡橙色の油として得た(3.733g、54%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 8.14 (d, J=1.4 Hz, 1H), 7.62 - 7.72 (m, 4H), 7.42 - 7.53 (m, 5H), 7.39 (t, J=7.3 Hz, 3H), 7.29 - 7.36 (m, 2H), 6.90 - 7.01 (m, 3H), 5.10 (s, 2H), 2.70 (s, 3H), 2.28 (s, 3H).
【0105】
エチル[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]アセテートの生成
2-[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]-1-(メチルスルファニル)エテニルメチルスルホキシド(3.733g、7.93mmol)をエタノール(70mL)に溶解させた。濃塩酸(6.6mL)を添加し、混合物を5日間加熱還流した。この反応混合物を酢酸エチル(500mL)と水(250mL)とに分配した。酢酸エチル層を水(200mL)及び飽和食塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン)により精製して、表題化合物を黄橙色の油として得た(2.129g、64%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 7.60 - 7.68 (m, 2H), 7.59 (br. s, 1H), 7.55 (dd, J=8.0, 1.6 Hz, 1H), 7.42 - 7.50 (m, 4H), 7.29 - 7.42 (m, 6H), 6.92 - 7.04 (m, 3H), 5.09 (s, 2H), 4.10 (q, J=7.0 Hz, 2H), 3.65 (s, 2H), 1.21 (t, J=7.1 Hz, 3H); LCMS [M+H]+ = 423.1.
【0106】
[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]酢酸の生成
エチル[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]アセテート(414mg、0.98mmol)をエタノール(15mL)に溶解させた。水酸化ナトリウム溶液(1M、3mL、3mmol)を添加し、混合物を70℃で1時間加熱した。この反応混合物を酢酸エチル(45mL)と塩酸(1M、15mL)とに分配した。酢酸エチル層を水(15mL)及び飽和食塩水(15mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を乾燥するまで蒸発させて、表題化合物を薄茶色の粉末として得た(350mg、91%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 7.59 - 7.65 (m, 2H), 7.53 - 7.59 (m, 2H), 7.40 - 7.48 (m, 4H), 7.27 - 7.39 (m, 6H), 6.96 - 7.02 (m, 2H), 6.91 - 6.96 (m, 1H), 5.08 (s, 2H), 3.68 (s, 2H).
【0107】
(3-ヒドロキシ-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル)酢酸(A56k)の生成
[3-(ベンジルオキシ)-1,1':4',1"-テルフェニル-2'-イル]酢酸(350mg、0.89mmol)を酢酸(9mL)及び濃塩酸(2.2mL)中に懸濁させた。この混合物を100℃で2.25時間加熱した。この反応混合物を水(60mL)に注ぎ入れ、混合物を酢酸エチル(60mL)で抽出した。酢酸エチル層を水(2×30mL)及び飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をトルエン(20mL)に懸濁させ、乾燥するまで蒸発させた。この工程を繰り返した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ジクロロメタン)により精製して、表題化合物を茶色のろう状固体として得た(189mg、70%)。この生成物を7.5%ジクロロメタン/ヘキサンに懸濁させ、濾過によって単離して、薄ベージュ色の粉末を得た。1H NMR (400MHz, CDCl3) 7.58 - 7.65 (m, 2H), 7.51 - 7.58 (m, 2H), 7.40 - 7.48 (m, 2H), 7.31 - 7.39 (m, 2H), 7.26 - 7.30 (m, 1H), 6.87 - 6.92 (m, 1H), 6.79 - 6.86 (m, 2H), 3.69 (s, 2H); HPLC (水/ACN + 0.1% TFA勾配) 220nmに95.58%; LCMS [M-H]- = 303.1, [2M-H]- = 607.3.
【0108】
[実施例6]
中間体A31-4の合成
A31-4を調製するために使用した合成経路を図6に示す。
【0109】
メチル2-ブロモ-5-ヨードベンゾエートの生成
2-ブロモ-5-ヨード安息香酸(20.070g、61.4mmol)及び炭酸カリウム(12.698g、91.9mmol)の混合物をDMF(45mL)に懸濁させた。ヨードメタン(11.373g、80.1mmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物をジエチルエーテル(400mL)と水(250mL)とに分配した。エーテル層を水(2×120mL)及び飽和食塩水(120mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を乾燥するまで蒸発させて、表題化合物を橙色の油として得た(20.451g、98%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 8.10 (d, J=2.0 Hz, 1H), 7.62 (dd, J=8.4, 2.1 Hz, 1H), 7.38 (d, J=8.2 Hz, 1H), 3.93 (s, 3H).
[参考文献: WO 2004/048314]。
【0110】
メチル4-ブロモビフェニル-3-カルボキシレートの生成
メチル2-ブロモ-5-ヨードベンゾエート(10.019g、29.4mmol)、フェニルボロン酸(3.571g、29.3mmol)、及び炭酸カリウム(8.112g、58.7mmol)をトルエン(200mL)、無水エタノール(50mL)、及び水(25mL)の混合物に溶解した。反応フラスコを窒素でパージし、混合物を通して30分間窒素をバブリングした。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(3.401g、2.94mmol)を窒素流下で添加した。この反応混合物を通して15分間窒素をバブリングした。この混合物を12時間加熱還流してから、室温で静置した。この反応混合物をトルエン(100mL)と水(300mL)とに分配した。水層をトルエン(100mL)で抽出した。合わせたトルエン層を飽和食塩水(150mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサン)により精製して、表題化合物を橙色の油として得た(8.092g、84%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 8.01 (d, J=2.3 Hz, 1H), 7.72 (d, J=8.4 Hz, 1H), 7.52 - 7.60 (m, 3H), 7.43 - 7.49 (m, 2H), 7.36 - 7.42 (m, 1H), 3.96 (s, 3H).
【0111】
(4-ブロモビフェニル-3-イル)メタノールの生成
無水テトラヒドロフラン(80mL)中のメチル4-ブロモビフェニル-3-カルボキシレート(6.992g、24.0mmol)の溶液を窒素下で調製した。無水テトラヒドロフラン(60mL)中の水素化アルミニウムリチウム(692mg、18.2mmol)の懸濁液を窒素下で調製し、氷/水浴中で冷却した。エステル溶液をカニュラを介して水素化アルミニウムリチウム懸濁液に移した。この混合物を氷/水浴中で40分間撹拌した。水(1.75mL)、15%水酸化ナトリウム溶液(1.75mL)、及び水(7mL)を滴加することによって、過剰量の水素化アルミニウムリチウムをクエンチした。この混合物を室温で40分間撹拌した。酢酸エチル(290mL)を添加し、混合物をセライトで濾過した。濾過ケーキを酢酸エチルで洗浄した(2×140mL)。合わせた濾液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をメチル4-ブロモビフェニル-3-カルボキシレート(1.024g、3.51mmol)を用いた同様の反応から得た粗生成物と合わせ、混合物をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサン)により精製して、表題化合物を淡橙色の油として得、これは静置時に凝固した(6.729g、93%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 7.71 (d, J=2.1 Hz, 1H), 7.53 - 7.64 (m, 3H), 7.41 - 7.48 (m, 2H), 7.32 - 7.41 (m, 2H), 4.82 (d, J=6.4 Hz, 2H), 2.01 (t, J=6.4 Hz, 1H).
【0112】
4-ブロモビフェニル-3-カルバルデヒド(A31-4)の生成
活性酸化マンガン(IV)(19.279g、222mmol)をトルエン(90mL)中の(4-ブロモビフェニル-3-イル)メタノール(5.844g、22.2mmol)の溶液に添加した。この混合物を窒素下、60℃で16時間撹拌した。この反応混合物をセライトで濾過した。濾過ケーキをトルエンで洗浄した(2×20mL)。合わせた濾液を乾燥するまで蒸発させて、表題化合物を淡黄色の油として得、これは静置時に凝固した(4.782g、82%)。1H NMR (400MHz, CDCl3) 10.41 (s, 1H), 8.14 (d, J=2.1 Hz, 1H), 7.70 - 7.74 (m, 1H), 7.65 - 7.70 (m, 1H), 7.56 - 7.63 (m, 2H), 7.43 - 7.51 (m, 2H), 7.36 - 7.43 (m, 1H).
【0113】
[実施例7]
A26及びA27の合成
A26及びA27を調製するために使用した合成経路を図7に示す。
【0114】
ステップ1 - i)1-カルボエトキシシクロプロピルトリフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート、DMF、2時間、80℃、ii)A31-4、18時間、80℃(Chungら、Org. Letts、2011 Vol. 13、No. 19、5338〜5341頁に基づく)。
ステップ2 - TFA、DCM(WO2009/89359に基づく)。
ステップ3 - 3-ヒドロキシベンゼンボロン酸、K2CO3、H2O、1,4-ジオキサン、Pd(PPh3)4、18時間、75℃。
ステップ4 - H2(バルーン)、MeOH中5mol% Pd/C、18時間、50℃(WO2005/90300に基づく)。
【0115】
[実施例8]
A31の合成
A31を調製するために使用した合成経路を図8に示す。
【0116】
ステップ1 - N-アシルグリシン、Ac2O、AcONa、加熱、6時間。
ステップ2 - 3M HCl、加熱。
ステップ3 - MeI、DBU、DMF、加熱。
ステップ5 - メトキシカルボニルメチルトリフェニルホスホラン、トルエン、E及びZ-異性体の混合物を得る。
ステップ5 - NaOH、加熱。
(ステップ1〜5は、Wongら、Synthesis、1992、793〜797頁及びQueffe’lecら、Eur. J. Chem.、2008、43(10)、2268〜2271頁に基づく)。
ステップ6 - 尿素、トルエン、加熱。(E-異性体は未反応のまま-WO2008/15139に記載の通り)
ステップ7 - 3-ヒドロキシベンゼンボロン酸、K2CO3、H2O、1,4-ジオキサン、Pd(PPh3)4、18時間、75℃。
【0117】
[実施例9]
A35の合成
A35を調製するために使用した合成経路を図9に示す。
【0118】
ステップ1 - NaBH4、MeOH、室温。
ステップ2 - PBr3、THF(Yuら、Org. Letts、2009、vol.11(2)、469〜472頁に記載の通り)。
ステップ3 - (4-ホルミル-5-メチル-イソオキサゾール-3-イル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル、nBuLi、THF(Konoikeら、Tet. Letts、Vol. 37、No. 19、3339〜3342頁、1996に記載の通り)。
ステップ4 - TFA、DCM、室温。
ステップ5 - 3-ヒドロキシベンゼンボロン酸、K2CO3、H2O、1,4-ジオキサン、Pd(PPh3)4、18時間、75℃。
【0119】
[実施例10]
A45の合成
A45を調製するために使用した合成経路を図10に示す。
【0120】
ステップ1 - HNMeOMe.HCl、CDI、DIPEA、DCM(WO2011/119518に基づく)
ステップ2 - ベンゼンボロン酸、Pd(PPh3)4、K2CO3、トルエン:エタノール:水、加熱、12時間。
ステップ3 - MeMgBr、THF、0℃(EP2455380に記載の通り)
ステップ4 - Br2、EtOH、室温(WO2008/157726に記載の通り)
ステップ5 - 1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン、K2CO3、TBAI、DMF、室温、2時間(Nagarapuら、Euro. J. Med. Chem. 71、(2014)、91〜97頁に基づく)。
ステップ6 - MeOH中のNaOH又はEtOH中のNEt3(Shvaikaら、J. Org. Chem. USSR、1983、vol. 19、# 8、1533〜1543頁に基づく)。
ステップ7 - 3-ヒドロキシベンゼンボロン酸、K2CO3、H2O、1,4-ジオキサン、Pd(PPh3)4、18時間、75℃。
【0121】
[実施例11]
A79の合成
A79を調製するために使用した合成経路を図11に示す。
【0122】
ステップ1 - 4-オキサゾリジノン-2-チオン、NaOAc、HOAc。
ステップ2 - MeI、(i-Pr)2NEt
ステップ3 - HCl、EtOH、H2O
(ステップ1〜3は、Unangstら、J. Med. Chem. 1994、37、322〜328頁に基づく)。
ステップ4 - 3-ヒドロキシベンゼンボロン酸、K2CO3、H2O、1,4-ジオキサン、Pd(PPh3)4、18時間、75℃
ステップ5 - H2(バルーン)、MeOH中5mol% Pd/C、18時間、50℃。
【0123】
[実施例12]
A81の合成
A81を調製するために使用した合成経路を図12に示す。
【0124】
ステップ1:
i)5.02gのA31-3は、所望の生成物A31-4を生じた(5.027g、収率96%)。
ii)20.1g,molのA31-3は、所望の生成物A31-4を生じた(20.451g、収率98%)。
ステップ2:
i)0.984gA31-4(1.0当量のPhB(OH)2、0.05当量のPd(dppf)Cl2、2当量のK2CO3、ジオキサン/エタノール/水、85℃、16時間)。TLCによりA31-4の完全消費が観察された。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分画した。純粋な試料は得られなかったが、A31-5と一致するビフェニルを含む少なくとも4種の生成物が1H NMR分析により検出された。
ii)10gのA31-4は、所望の生成物A31-5を生じた(8.1g、84%)。
ステップ3:
i)0.809gのA31-5(1.5当量のLiAlH4、室温、16時間)は、所望の生成物A31-6(0.340g、47%)及び望ましくない脱ブロモ化合物(ビフェニル-3-イルメタノール)(0.208g、41%)を生じた。
ii)0.510gのA31-5(1.5当量のLiAlH4、0℃、50分)は、所望の生成物(粗)A31-6を生じた(0.435g、95%)。1H NMRによると、10mol%の脱ブロモ化合物を含有。大規模バッチでの精製は保留中。
iii)0.514gのA31-5(0.75当量のLiAlH4、0℃、50分)は、所望の生成物(粗)A31-6を生じた(0.453g、98%)。1H NMRによると、5.5mol%の脱ブロモ化合物を含有。
iv)6.992gのA31-5(0.75当量のLiAlH4、0℃、40分)は、1H NMRによると5.5mol%の脱ブロモ化合物を含有する粗生成物A31-6(6.183g)を生じた。2回の試験反応から得られた生成物と合わせて、カラムクロマトグラフィーで精製し、A31-6を得た(6.729g、93%)。
ステップ4:
0.102gのA31-6(1.2当量の3-(HO)C6H4B(OH)2、0.1当量のPd(PPh3)4、3当量のK2CO3、トルエン/エタノール/水、Δ、17時間)は、所望の生成物A81を生じた(0.054g、50%収率)。
【0125】
[実施例13]
化合物のin vitroスクリーニング
xCELLigence SPシステム(Roche社)を用いて、ウシ大動脈内皮細胞(European Collection of Cell Cultures)を試験化合物で処理したあとの細胞インピーダンス(細胞指数)の変化を測定した。このin vitro細胞ベース実験系では、負のインピーダンスプロファイルが、ラットでの血圧低下と相関する。インピーダンスの減少は血管拡張と関連し、インピーダンスの増加は血管収縮と関連する(Stallaert W、Dorn JF、van der Westhuizen E、Audet M、及びBouvier M. Impedance responses reveal β-adrenergic signaling pluridensitometry and allow classification of ligands with distinct signalling profiles PLoS ONE 2012; 7(1):e29420、doi:10.1371/journal.pone.0029420)。
【0126】
簡単に述べると、50μlの細胞培養培地(37℃の15%ウシ胎児血清を補充したDMEM低グルコース)をE-Plate 96(Roche社)の各ウェルに添加し、各ウェルのバックグラウンドインピーダンスを測定した。次に、50μlのウシ大動脈内皮細胞懸濁液(10,000細胞/ウェル)をE-Plate 96の適当なウェルに添加した。細胞培養インキュベーター内で、RTCA SP StationのE-Plate 96の各ウェルについて、細胞指数をモニターした。一晩インキュベーション(16〜20時間、5% CO2及び湿度95%)後、100μlの試験化合物溶液(DMSO中の試験化合物を調製し、細胞培養培地で試験化合物を62.5μM、125μM、又は250μMの濃度まで希釈し、最終DMSO濃度0.25%とした)をE-Plate 96の適当なウェルに添加し、化合物処理後即座に、細胞指数値を20秒ごとに3時間にわたり測定した。細胞指数値は、ビヒクルで処理した細胞の細胞指数を引くことによってベースライン補正し、化合物添加直前の時点での細胞指数で割ることによって正規化した。時間の関数としてのベースライン正規化細胞指数を、Roche RTCAソフトウェアを用いてプロットする。
【0127】
ウシ大動脈内皮細胞の負のインピーダンス応答が、A6、A26、A27、A30、A32、A35、A56、A56f、A56g、A56k、及びA81で観察され(図13)、これらの化合物が血管拡張剤であることを示した。
【0128】
(それぞれKeratinocyte Medium II+Keratinocyte Growth Supplement+5ng/mlのヒト組み換え型上皮成長因子+5% FBS+2mMのグルタミン又はDMEM+10% FBS+1% NEAA+2mMのグルタミン)で成長させたヒト(HPCT-wt-05)及びラット(NRK-52E)の腎近位尿細管細胞を10,000細胞/ウェルで96ウェルプレートに入れ、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。濃度32μM又は63μMの試験化合物をヒト又はラットの腎近位尿細管細胞と共に、37℃及び5%CO2で2時間インキュベートした。次に、シス-ジアンミンジクロロ白金(III)(シスプラチン)をヒト細胞には濃度5μg/mlで、ラット細胞には濃度12.5μg/mlで添加した。次に、それぞれの細胞集団を37℃、5% CO2で24時間インキュベートした。試験化合物A32は、その元の濃度を維持した。ヒト及びラットの腎近位尿細管細胞に対するシスプラチンの細胞毒性効果を評価するために、細胞中のデヒドロゲナーゼによって還元されて水溶性の黄色の指示染料ホルマザンを生成する高水溶性テトラゾリウム塩WST-8を、製造業者の指示に従って使用した(具体的には、Sigma社製Cell Count Kit-8(CCK-8)アッセイ)。次に、Thermo Scientific Multiskan EXプレートリーダーを使用して、WST-8(CCK-8)試薬のプレート吸光度を450nmで測定した。
【0129】
32μM又は63μMのA32で24時間処理したヒト及びラットの腎近位尿細管細胞の培養物におけるシスプラチン誘導細胞死は減少し(図14)、この化合物が腎近位尿細管細胞死を減少させることを示した。
【0130】
[実施例14]
化合物のin vivoスクリーニング
2.2%食塩食(Glen Forrest Stockfeeders社)摂取14週齢SHRをゼロ時間対照、飲用溶液に加えた試験化合物で処置(500pmol/kg/分)、又は対照飲用溶液(5%エタノールを加えた脱イオン蒸留水)に無作為に割り当てた(各群n=5)。ゼロ時間対照群に割り当てられたラット(14週齢ラット)は、麻酔をかけて腎臓及び心臓を摘出し、対照及び試験化合物処置に割り当てられたラットは、週2回秤量し、その飲用溶液の摂取をモニターすることにより、4週間の試験期間(18週齢ラット)にわたり一定用量が維持されるよう飲用溶液中の試験化合物濃度を調節した。試験期間終了時に、ラットに麻酔をかけて腎臓及び心臓を摘出した。
【0131】
高脂肪食(Glen Forrest Stockfeeders社)摂取14週齢SHRを試験化合物飲用溶液(10%エタノールを加えた脱イオン蒸留水中の500pmol/kg/分の試験化合物)、又は対照飲用溶液(10%エタノールを加えた脱イオン蒸留水)に無作為に割り当てた。4週間後、ラットに麻酔をかけて、血漿アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルの分析のために血液試料を採取し、肝臓を摘出した。
【0132】
組織の線維化及び/又は脂肪含有量を定量化するために、厚さ3mm以下の組織の薄片を10%緩衝ホルマリンで24時間固定し、処理し、パラフィンに包埋した。3ミクロンの横断切片を、マッソントリクローム染色法を用いて染色した。横断切片(2つのレベルそれぞれで5個)からの倍率20倍でのランダム視野を最低20個デジタル化し、Image-Pro Plus V.7(Media Cybernetics社、米国メリーランド州ベセスダ)を使用して、それぞれのデジタル化画像の視野面積の百分率として、線維化の程度を決定し、次いで平均化して各ラットの線維化のレベル及び/又は脂肪含有量を決定した。
【0133】
機器によって認識される磁気アッセイ識別子を含む消耗型ストリップを用いるRefloVET Plus(Roche社)機器を使用して、血漿ASTレベルを測定した。使用前に毎回較正標準物質を使用し、製造業者の指示に従って装置を操作した。結果を1L当たりの国際単位(IU/L)として提示する。
【0134】
500pmol/kg/分のA32での4週間の処置後の腎臓の線維症は、18週齢の対照と比較して減少しており(図15)、この化合物が腎線維症の発症を予防することが示された。
【0135】
500pmol/kg/分のA32での4週間の処置後の心筋線維症は、14週齢及び18週齢の対照と比較して減少しており(図16)、この化合物が心筋線維症の発症を予防し、既存の心筋線維症を反転させることが示された。
【0136】
500pmol/kg/分のA6、A27、A32、及びA56fでの6週間の処置後の肝線維症は、対照と比較して減少しており(図17、*p<0.025、**p<0.01、***p<0.005)、これらの化合物が肝線維症の発症を予防することが示された。
【0137】
門脈路を示すマッソントリクローム染色切片では、対照において、線維帯が門脈路から延び(矢印)、組織構造を乱しているのが見られる(図18A)。A32(図18B)、A6(図18C)、A27(図18D)、A56(図18E)、及びA56f(図18F)で処置したラットの切片では、正常な組織構造が回復していた。
【0138】
対照ラットの心臓組織を示すマッソントリクローム染色切片では(図19A)、線維化は、筋線維間に散在して切片全体に存在し、場合によっては、筋線維を取り囲み、筋線維に取って代わっている(矢印)。A32(図19B)で処置したラットの心臓組織を示す切片では、ごくわずかな線維性組織が存在し、正常な組織構造が回復していた。
【0139】
500pmol/kg/分のA27、A32、及びA56での4週間の処置後の肝臓中の脂肪は、18週齢の対照と比較して減少しており(図20、*p<0.05)、これらの化合物が肝脂肪の蓄積を減少させることが示された。
【0140】
血漿ASTレベルは、A32及びA56fで処置したラットで、対照と比較して減少しており(図21、*p<0.025)、これらの化合物が肝臓障害を予防することが示された。
【0141】
[実施例15]
化合物のin vitroスクリーニングとin vivoスクリーニングとの比較
さまざまな試験化合物で処理したウシ大動脈内皮細胞における細胞インピーダンスと、さまざまな試験化合物で処置したSHRにおける肝線維症のレベルとの比較は、in vitroアッセイが試験化合物の肝臓線維症を減少させる能力を予測することを示した(図22、R2=0.925)。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(実施形態1)
式:
【化7】
[式中、
Aは、場合により置換された飽和、部分飽和、若しくは不飽和5員若しくは6員ヘテロシクリル、場合により置換されたC1〜6アルコキシルアミン、場合により置換されたC1〜6アルキルアミン、場合により置換されたC0〜6アルキルカルボン酸、場合により置換されたC1〜6アルキルヒドロキシル、場合により置換された飽和若しくは不飽和C0〜6アルキル二環式ヘテロシクリル、及び場合により置換された飽和若しくは不飽和C1〜6アルコキシル二環式ヘテロシクリルから選択される]の化合物、又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、及び/若しくは溶媒和物。
(実施形態2)
前記飽和、部分飽和、又は不飽和5員又は6員ヘテロシクリルが、1つ以上のオキソ、C1〜6アルキル、アミノ、ヒドロキシル、又はハロ置換基で場合により置換されたN、S、又はOのうちの1つ以上を含有する、実施形態1に記載の化合物。
(実施形態3)
前記飽和、部分飽和、又は不飽和5員又は6員ヘテロシクリルが、1つ以上のオキソ、C1〜6アルキル、アミノ、ヒドロキシル、又はハロ置換基で場合により置換されたピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、イミダゾリジニル、ピロリジニル、ピロリジニリデン、ジヒドロピロリル、イソオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリジニル、及びオキサゾリルから選択される、実施形態1に記載の化合物。
(実施形態4)
前記C1〜6アルコキシルアミンがアミノオキシメチルである、実施形態1に記載の化合物。
(実施形態5)
前記C1〜6アルキルアミンが、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、ヒドロキシル、又はハロ、好ましくは一置換、二置換、若しくは三置換ハロアルキル、最も好ましくはトリフルオロメタンのうちの1つ以上で場合により置換されている、実施形態1に記載の化合物。
(実施形態6)
前記C0〜6アルキルカルボン酸がカルボン酸である、実施形態1に記載の化合物。
(実施形態7)
前記C1〜6アルキルヒドロキシルがメチルヒドロキシルである、実施形態1に記載の化合物。
(実施形態8)
前記C0〜6アルキル二環式ヘテロシクリルが、1つ以上のオキソ、好ましくはジオキソで場合により置換されたインドリル、イソインドリル、インソリニル、及びイソインドリニルから選択される、実施形態1に記載の化合物。
(実施形態9)
前記C1〜6アルコキシル二環式ヘテロシクリルが、1つ以上のオキソで場合により置換されたインドリル、イソインドリル、インソリニル、及びイソインドリニルから選択され、前記C1〜6アルコキシルがメトキシ又はエトキシである、実施形態1に記載の化合物。
(実施形態10)
Aが、
【化8】
から選択される、実施形態1に記載の化合物。
(実施形態11)
【化9】
又はその薬理学的に許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、水和物、及び/若しくは溶媒和物からなる群から選択される、実施形態1から10のいずれか一項に記載の化合物。
(実施形態12)
実施形態1から11のいずれか一項に記載の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
(実施形態13)
実施形態1から11のいずれか一項に記載の化合物又は実施形態12に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象における線維症の予防的又は治療的処置のための方法。
(実施形態14)
前記処置が、線維症の進行を予防、軽減、又は遅延する、実施形態13に記載の方法。
(実施形態15)
前記処置が既存の線維症を軽減する、実施形態13に記載の方法。
(実施形態16)
前記処置が正常な組織構造を回復させる、実施形態13に記載の方法。
(実施形態17)
前記線維症が、心筋線維症、腎線維症、及び/又は肝線維症である、実施形態13から15のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態18)
線維症の処置のための医薬を製造するための、実施形態1から11のいずれか一項に記載の化合物の使用。
(実施形態19)
前記医薬が線維症の進行を予防、軽減、又は遅延する、実施形態18に記載の使用。
(実施形態20)
前記医薬が既存の線維症を軽減する、実施形態18に記載の使用。
(実施形態21)
前記医薬が正常な組織構造を回復させる、実施形態18に記載の使用。
(実施形態22)
前記線維症が、心筋線維症、腎線維症、及び/又は肝線維症である、実施形態18から20のいずれか一項に記載の使用。
(実施形態23)
実施形態1から11のいずれか一項に記載の化合物又は実施形態12に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象の肝臓における脂肪蓄積を予防、軽減、又は遅延するための方法。
(実施形態24)
実施形態1から11のいずれか一項に記載の化合物又は実施形態12に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象における腎尿細管細胞死を予防、軽減、又は遅延するための方法。
(実施形態25)
実施形態1から11のいずれか一項に記載の化合物又は実施形態12に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象における正常な組織構造を回復させるための方法。
(実施形態26)
肝臓における脂肪蓄積を予防、軽減、又は遅延するための医薬を製造するための、実施形態1から11のいずれか一項に記載の化合物の使用。
(実施形態27)
腎尿細管細胞死を予防、軽減、又は遅延するための医薬を製造するための、実施形態1から11のいずれか一項に記載の化合物の使用。
(実施形態28)
正常な組織構造を回復するための医薬を製造するための、実施形態1から11のいずれか一項に記載の化合物の使用。
(実施形態29)

【化10】
の化合物。
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