【実施例】
【0031】
実施例1
配合物中の不飽和脂肪酸の安定化の有効性−TBARSアッセイ
脂質は、脂肪、ワックス、ステロール、ビタミン、及びグリセリドなどの天然分子の群である。脂質の生物学的機能は、エネルギーを蓄積し、シグナル伝達し、細胞膜構成成分として作用する。脂質の一般的な損傷は、過酸化である。酸化は、連鎖反応機構を介して脂質上で起こる。不飽和脂質または脂肪酸は、フリーラジカル攻撃に対して脆弱であり、その結果細胞が損傷する。リノール酸及びリノレン酸は、ヒト及び動物にとって2つの不可欠な脂肪酸である。脂肪酸過酸化防止に対する発明の化合物の有効性を調べるために、リノレン酸を対象として選択した。Van−IPHA及びpHBz−IPHAの有効性は、Trolox、フェニル−α−tert−ブチルニトロン(PBN)、ビタミンC、及びビタミンEなどの他の一般的な抗酸化剤と比較された。
【0032】
マロンジアルデヒド(MDA)は、不飽和脂肪酸過酸化の天然において発生する生成物であり、チオバルビツル酸(TBA)反応性物質(TBARS)アッセイは、MDAの生成をモニターすることにより過酸化を評価する十分に確立された方法である。サンプル中のMDAが増加すると、MDA−TBA付加物のシグナルが増加する。AAPHで処理した本発明及び比較サンプルは、表2に列挙した構成成分を含有する。
【0033】
【表2】
【0034】
LA(リノレン酸)は、Sigma−Aldrichから入手可能である。
AAPH(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)は、Sigma−Aldrichから入手可能である。
Trolox(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸)は、Sigma−Aldrichから入手可能である。
ビタミンCは、Fisher Scientificから入手可能である。
PBN(フェニル−α−tert−ブチルニトロン)は、Fisher Scientificから入手可能である。
*比較
【0035】
532nmにおける各サンプルのUV吸光度を測定して、AAPHを用いて37℃で24時間処理した後のサンプル中のMDA濃度を判定した。サンプルを96ウェルプレートにロードし、SpectraMax Plus 384 UV−Vis Readerを用いて室温で測定した。
図1は、AAPHをリノレン酸溶液に添加すると、UVシグナルが約0.05から0.4を超えて増加することを示す。Trolox及びVan−IPHAを有するサンプルは、約0.2のシグナル増加を有し、これは陽性対照のシグナルの半分である。ビタミンCはまた、約0.3までのシグナル増加を伴う保護を示すが、PBNはこの試験において有意な保護を示さない。したがって、TBARSアッセイは、Van−IPHAがAAPHによる過酸化に対する脂肪酸の保護の増加を示すことを示している。
【0036】
配合物中の不飽和脂肪酸の安定化の有効性−LC−UV/MS
TBARSアッセイは、脂肪酸自体を調べずに、1つの酸化生成物(MDA)を測定するので、脂肪酸の過酸化を測定する間接的な方法と考えられている。このようにサンプル中の脂肪酸及び全ての潜在的な酸化生成物のレベルを測定するLC−UV/MS法を開発し、AAPHで各サンプルを37℃で24時間処理した後に種々のサンプルのLCクロマトグラムを取得した。Agilent1290SLバイナリグラジエント液体クロマトグラフシステムと組み合わせたデュアルスプレーESIインターフェースを介したAgilent6538四重極飛行時間型質量分析システムを使用した。150×3mm ID2.5μm Waters CSH Xselect C18のカラムを50℃に保った。移動相Aは水中0.1体積%のギ酸からなっており、Bはイソプロパノール中の0.1体積%のギ酸からなっていた。グラジエントは、20分で5%Bから100%Bに増加し、流速は0.6mL/分であった。Agilent DADをUV検出に使用した。
図2は、種々のサンプルのLCクロマトグラムを示しており、14.4分で溶出するピークはリノレン酸であり、
図2におけるピークの隣にある数字は、3回繰り返された平均ピーク面積(214nmでのUV)及び標準偏差である。AAPHによって開始された過酸化に伴い、リノレン酸のピーク面積は1621から1026に減少し、これは分解が起こったことを示している。リノレン酸から誘導された生成物を表す新しいピークが7〜10分に出現する。TroloxまたはVan−IPHAを含有するサンプルでは、Troloxではほとんど変化が観察されず、Van−IPHAでは、リノレン酸のピーク面積に関してわずかな低下しか観察されなかった。ビタミンCは次善の抗酸化物質であることが観察されたが、ビタミンCの不安定性は欠点である。ビタミンEは、おそらく試験溶媒系との不適合性のためにうまく機能しない。PBNはリノレン酸に対する保護をほとんど示さなかった。リノール酸の直接分析による観察は、TBARSアッセイの結果と一致する。両方の方法は、Van−IPHAが不飽和脂肪酸の酸化を防止するための有効な代替物であり有利であることを示した。
【0037】
実施例2
配合物中の不飽和脂肪酸の安定化の有効性
本発明の抗酸化剤を用いたスキンケア配合物中の不飽和脂肪酸の安定化の有効性を調べた。リノール酸を保護標的として選択した。安定性について評価された本発明及び比較サンプルの水溶液は、表3に列挙した構成成分を含有する。
【0038】
【表3】
【0039】
キサンタンガムは、CP Kelcoから入手可能である。
グリセリンは、Spectrum Chemicalから入手可能であるから入手可能である。
レチノールは、Spectrum Chemicalから入手可能である。
Troloxは、Sigma−Aldrichから入手可能である。
*比較
【0040】
上記の表3の各水性配合物を50mLジャー中で調製した。サンプルを室温及び45℃で3か月間保持した。Van−IPHA/pHBz−IPHA/TroloxのレベルをモニターするためにLC−UV法を開発し、配合物中のリノール酸のレベルをモニターするためにLC−MS SIM法を使用した。Agilent1260 Infinity液体クロマトグラフシステムに接続され、デュアルスプレーESIインターフェースを介した、Agilent6410三連四重極型質量分析システムを使用した。Waters CSH Xselect C18 150×3mm ID2.5μmカラムを70℃に保った。移動相Aは水中0.1体積%のギ酸からなっており、Bはイソプロパノール中の0.1体積%のギ酸からなっていた。グラジエントを25分で5%Bから100%Bに増加させ、流速は0.6mL/分であった。300nmのAgilentDADを抗酸化剤、Van−IPHA、pHBz−IPHA、及びTroloxのUV検出に使用した。リノール酸を、m/z279.2の負イオン化モードでSIM LC−MSによって検出した。分析は0日、7日、33日、48日、74日、及び89日に行った。最終結果を
図3に示した。リノール酸の保護については、3か月間保存後の対照サンプル(抗酸化剤なし)でわずか3分の1残されたのと比較して、Van−IPHA、pHBz−IPHA、及びTroloxの存在下ではほとんど分解が見られなかった。45℃での加速試験を使用して、室温での2年間の貯蔵寿命を予測した。45℃のサンプルでは、Van−IPHA、pHBz−IPHA、及びTroloxを含むリノール酸のレベルは対照(抗酸化剤なし)のレベルより高かった。本発明のVan−IPHA及びpHBz−IPHAの両方が、従来の抗酸化物質と比較して、不飽和脂肪酸の安定化及び関連するスキンケア製品の貯蔵寿命の延長を示す。
【0041】
実施例3
油を含有する配合物中の不飽和脂肪酸の安定化の有効性
多くのボディウォッシュまたはボディローション製品は、不飽和脂肪酸を含有するヒマワリ種子油(SSO)を成分として使用する。ヘキサナールは、これらの製品から生成される主要な酸化生成物のうちの1つであり、強い臭いは非常に不快であり、消費者によって好まれない。このような製品の配合者は、長期にわたって様々な温度で保存した後の特定の製品の受容を確認するための主要な基準としてヘキサナールの臭いを使用する。抗酸化剤は、検出可能な閾値下にヘキサナールの生成を低下させ、油の酸化/分解を防止または減速させるために、配合物中に必要とされている。Van−IPHA及びpHBz−IPHAを、配合物中の不飽和脂肪酸を含有する油の安定化の有効性について調べた。
【0042】
SSОを含有する配合物中のpHBz−IPHA及びVan−IPHAによる不飽和脂肪酸の安定化
SSO、及びpHBz−IPHAまたはVan−IPHAを含有する例示及び比較組成物には、表4に列挙した構成成分が含まれる。
【0043】
【表4】
【0044】
キサンタンガムは、CP Kelcoから入手可能である。
グリセリンは、Spectrum Chemicalから入手可能であるから入手可能である。
Tween20は、Sigma−Aldrichから入手可能である。
SSO(ヒマワリ種子油)は、Sigma−Aldrichから入手可能である。
【0045】
最初の日の0日後、2週間後、1か月後、2か月後、及び3か月後のヘキサナール生成をモニターするために、ヘッドスペースGC−MS法を社内で開発した。各配合物のサンプルをヘッドスペースバイアルに入れ、80℃で5分間加熱した。各サンプルからのヘッドスペース1mLを、85℃に加熱した加熱気密ニードルを備えたGerstel MultiPurpose Samplerを用いてGCに注入した。分離は、Agilent30m×250μm×0.25μmカラムで行った。ヘキサナールの検出は、m/z56、m/z72、及びm/z82についてSIMを用いてMSで行った。
【0046】
3重量%、5重量%、10重量%、及び95重量%のSSOを含有するpHBz−IPHAを含む及び含まない配合物からのヘキサナール生成の最終結果を
図4に示す。室温では、分解または酸化が遅く、すべてのサンプルにおいて3か月後にヘキサナールは検出されなかった。45℃での加速試験では、3か月後に3重量%、5重量%、または10重量%のSSOを含有する配合物中に様々な量(10〜40ppm)のヘキサナールが生成された。対照的に、0.1重量%のpHBzを含有するサンプルでは、ヘキサナールの生成量がはるかに少なかった。95重量%SSOの組成差が大きいため、改善は他のものほど顕著ではなかった。結果は、パーソナルケア製品におけるヘキサナール生成を減少させるために、pHBz−IPHAがSSOを安定させるのに有効な代替物であり、有利であることを示している。
【0047】
Van−IPHAを含む及び含まない3重量%、5重量%、10重量%、及び95重量%のSSOを含有する配合物からのヘキサナール生成の最終結果を、
図5に示す。Van−IPHAを含有する配合物では、上記のpHBz−IPHAの効果と同様の結果が観察された。結果は、Van−IPHAがパーソナルケア製品のヘキサナール生成を減少させるため、SSOを安定化させるのに有効な代替物であり、有利であることを示している。
【0048】
SBOを含有する配合物中のpHBz−IPHA及びVan−IPHAによる不飽和脂肪酸の安定化
大豆油(SBO)は、その中の多価不飽和脂肪酸の濃度が高く、また低コストであるためにスキンケア市場でSBOを使用するニーズが顕著であるので、SBOを使用して作製された配合物も調製した。SBO、及びpHBz−IPHAまたはVan−IPHAを含有する、例示及び比較組成物は、表5に列挙された構成成分を含む。
【0049】
【表5】
【0050】
キサンタンガムは、CP Kelcoから入手可能である。
グリセリンは、Spectrum Chemicalから入手可能であるから入手可能である。
Tween20は、Sigma−Aldrichから入手可能である。
SBO(大豆油)は、Fisher Scientificから入手可能である。
【0051】
図6及び
図7は、室温及び45℃で、2か月後の、pHBz−IPHAまたはVan−IPHAを含有するSBO配合物からのヘキサナール生成の結果を示す。SSO配合物と同様に、室温ではヘキサナールはほとんど生成されず、45℃で保持された3重量%、5重量%、及び10重量%のSBO配合物においては生成されたヘキサナールが大きく減少している。これらのデータはSSOデータと共に、pHBz−IPHA及びVan−IPHAが、トリグリセリドを含有する多価不飽和脂肪酸を酸化から保護する能力を有することを示唆している。