特許第6734295号(P6734295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6734295
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】不飽和脂肪の酸化のニトロン抑制
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/41 20060101AFI20200728BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20200728BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20200728BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200728BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20200728BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20200728BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   A61K8/41
   A61K8/36
   A61K8/37
   A61Q19/00
   A61Q1/02
   A61Q5/00
   A61Q11/00
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-549179(P2017-549179)
(86)(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公表番号】特表2018-513847(P2018-513847A)
(43)【公表日】2018年5月31日
(86)【国際出願番号】US2016023177
(87)【国際公開番号】WO2016154018
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2019年3月4日
(31)【優先権主張番号】62/136,131
(32)【優先日】2015年3月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カッシー・ファナー
(72)【発明者】
【氏名】キンジャルバーヘン・ジョシ
(72)【発明者】
【氏名】ユージン・タン
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−513875(JP,A)
【文献】 特表2015−507608(JP,A)
【文献】 国際公開第95/011227(WO,A1)
【文献】 VELASCO Joaquin, et al.,Electron Spin Resonance Spin Trapping for Analysis of Lipid Oxidation in Oils: Inhibiting Effect of the Spin Trap α-Phenyl-N-tert-butylnitrone on Lipid Oxidation,Journal of Agricultural and Food Chemistry,2005年 2月11日,Vol.53, No.5,page.1328-1336
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
C07C 291/00−291/14
A61K 47/00− 47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和脂肪の酸化を抑制するための方法であって、前記不飽和脂肪を有効量の酸化化合物とブレンドすることを含み、
前記不飽和脂肪は、不飽和脂肪油または不飽和脂肪酸であり、前記抗酸化化合物は、(Z)−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジリデン)プロパン−2−アミンオキシド及び(Z)−N−(4−ヒドロキシベンジリデン)プロパン−2−アミンオキシドからなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記不飽和脂肪は、リノール酸またはリノレン酸のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不飽和脂肪は、98:0.1〜5:1の重量比で前記抗酸化化合物とブレンドされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記不飽和脂肪は、48:0.1〜7:1の重量比で前記抗酸化化合物とブレンドされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記不飽和脂肪は、20:1〜10:1の重量比で前記抗酸化化合物とブレンドされる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、パーソナルケア配合物中の抗酸化剤として有用な化合物及び組成物に関する。本化合物は、ニトロン官能基及びフェノール官能基の両方を含有する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルケア組成物は、組成物に幅広い利点をもたらす種々の添加剤を含有する。不飽和脂肪酸は、そのような添加剤のうちの1つであり、皮膚のバリア機能及び皮膚の含水量の保存にとって重要であることが知られている。それらの構造によって、不飽和脂肪酸は細胞膜の流動性を高めることができ、より潤った滑らかな皮膚をもたらす。しかしながら、不飽和脂肪酸は、不飽和脂肪酸の二重結合が酸素及びフリーラジカルの存在下で開裂を受ける、自動酸化として知られている化学変化を受け、揮発性アルデヒド及びケトンを放出する。そのような自動酸化は、しばしば、不快な臭い及び色に関連する物質の酸敗をもたらし得る。したがって、配合者は、不飽和脂肪酸の過酸化を減少させるために抗酸化カクテル及び窒素パッケージングプロセスを利用してきた。
【0003】
多価不飽和脂質の酸化抑制は、当技術分野で扱われている。例えば、米国特許第6,428,461号は、多価不飽和脂質を、食品加工用途において、スペルミジン、プトレシン、またはそれらの混合物などのポリアミンの組み合わせと混合することを開示している。しかしながら、この先行技術は、パーソナルケア組成物中の不飽和脂肪酸のための最適な抗酸化剤の開示には及んでいない。
【0004】
したがって、パーソナルケア組成物中の不飽和脂肪酸の酸化を抑制する新しい方法を開発する必要性が引き続き存在している。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様は、不飽和脂肪を有効量の式Iの抗酸化化合物とブレンドすることを含む、不飽和脂肪の酸化を抑制するための方法を提供し、
【0006】
【化1】
【0007】
式中、Rは、C−C10アルキル、C−C12シクロアルキル、アリール、またはアリール−アルキルであり、R、R、R、R、及びRは、独立して、H、C−C10アルキル、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、−COOH、−COO、または−Oであり、式中、Mは、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウムイオンであるが、但し、R、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはヒドロキシであり、Rは、H、C−C10アルキル、C−C12シクロアルキル、またはフェニルである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】リノレン酸対照、AAPHを含むリノレン酸、ならびに比較及び本発明の抗酸化剤の存在下でのAAPHを含むリノレン酸の532nmにおけるUV吸光度によって示される、不飽和脂肪酸過酸化生成物MDAの存在を示す。
図2】リノレン酸対照、AAPHを含むリノレン酸、ならびに比較及び本発明の抗酸化剤の存在下でのAAPHを含むリノレン酸の液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。
図3】比較及び本発明の抗酸化剤の存在下で、室温及び45℃の両方で、3か月間を超えて保護された活性物質の割合を示す。
図4】室温(RT)及び45℃の両方での3か月の培養後の、pHBz−IPHAを含む及び含まない、3重量%、5重量%、10重量%、及び95重量%のヒマワリ油を含有する配合物からのヘキサナール生成を示す。
図5】室温(RT)及び45℃の両方での3か月の培養後の、Van−IPHAを含む及び含まない、3重量%、5重量%、10重量%、及び95重量%のヒマワリ油を含有する配合物からのヘキサナール生成を示す。
図6】室温(RT)及び45℃の両方での2か月の培養後の、pHBz−IPHAを含む及び含まない、3重量%、5重量%、10重量%、及び95重量%の大豆油を含有する配合物からのヘキサナール生成を示す。
図7】室温(RT)及び45℃の両方での2か月の培養後の、Van−IPHAを含む及び含まない、3重量%、5重量%、10重量%、及び95重量%の大豆油を含有する配合物からのヘキサナール生成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、構造の一部としてニトロン官能基及びフェノール官能基を含有する式Iのニトロン化合物が、従来の抗酸化剤と比較して、より低い濃度での不飽和脂肪の酸化の抑制剤として同等の有効性、または同等の濃度でのより高い有効性を提供することを見出した。ニトロンの能力は、2つの異なる抗酸化剤、例えば1つがフェノール官能基を有し及びもう1つがニトロン官能基を有する抗酸化剤を単に添加することによっては達成することができないことも見出された。むしろ、同じ分子内に両方の官能基が存在することが、それらの好ましい能力の重要な側面である。
【0010】
本発明において、「パーソナルケア」とは、化粧品及びスキンケア組成物(すなわち、例えばボディウォッシュ及びクレンザーを含む皮膚へ適用するためのもの、ならびにローション、クリーム、ゲル、ゲルクリーム、シェービングジェル、シェービングクリーム、シェービングフォーム、美容液、トナー、ワイプ、液体ファンデーション、メイクアップ、着色モイスチャライザー、オイル、フェイス/ボディスプレー、局所用医薬品、及び日焼け止めのような皮膚へのリーブオン適用のための)、ヘアケア組成物(例えば、シャンプー、洗い流し及びリーブオンコンディショナー、スタイリングジェル、ヘアスプレー、ムース、ならびにヘアカラー製品)、ならびに口腔ケア組成物(例えば、練り歯磨き、うがい薬、及びチューインガム)を指すことが意図される。好ましくは、パーソナルケア組成物は、化粧品的に許容可能である。「パーソナルケア」は、局所的に投与される(すなわち、摂取ではない)組成物に関する。好ましくは、パーソナルケア組成物は、化粧品的に許容可能である。「化粧品的に許容可能」とは、パーソナルケア組成物において典型的に使用される成分を指し、パーソナルケア組成物中に典型的に見られる量で存在する場合に毒性である材料は、本発明の一部として検討されないことを強調することが意図される。本発明の組成物は、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、乳化、被包、封入、または凍結乾燥プロセスによる、当技術分野で周知のプロセスによって製造することができる。
【0011】
特に指示がない限り、例えば「2〜10まで」のような数値範囲は、範囲を定義する数字(例えば、2及び10)を含む。特に指示がない限り、比率、割合、部などは、重量による。本明細書中で使用される「室温」は、周囲温度、例えば20〜25℃である。
【0012】
本明細書で使用される「アルキル」は、示された数の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖脂肪族炭化水素基を包含する。数字が示されていない場合、1〜6個のアルキル炭素が考えられる。特に指示がない限り、アルキル基は、本明細書に記載の合成に適合する1、2、または3、好ましくは1または2、より好ましくは1個の置換基で任意に置換されていてもよい。そのような置換基には、ニトロ、ハロゲン、カルボン酸(例えば、C−C−COOH)、C−Cアルケン、シアノ、アミド、及び/またはエステルが含まれるが、これらに限定されない。特に指示がない限り、上記の置換基は、それ自体がさらに置換されていない。
【0013】
用語「シクロアルキル」は、示された数の環炭素原子を有する飽和及び部分不飽和環状炭化水素基を指す。数が指定されない場合、3〜12個の炭素、好ましくは3〜8個の炭素、より好ましくは3〜7個の炭素が考えられる。好ましいシクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが含まれるが、これらに限定されない。特に指示がない限り、シクロアルキル基は、本明細書に記載の合成に適合する1、2、または3、好ましくは1または2、より好ましくは1個の置換基で任意に置換されていてもよい。そのような置換基には、C−Cアルキル、ニトロ、ハロゲン、カルボン酸(例えばC−C−COOH)、C−Cアルケン、シアノ、アミド、及び/またはエステルが含まれるが、これらに限定されない。好ましい置換基は、C−Cアルキルである。特に指示がない限り、前述の置換基は、それ自体がさらに置換されていない。
【0014】
「アリール」基は、1〜3個の芳香環を含むC−C19芳香族部分である。好ましくは、アリール基は、C−C10アリール基である。好ましいアリールとしては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。フェニル及びナフチルがより好ましい。特に指示がない限り、アリール基は、本明細書に記載の合成に適合する1、2、または3、好ましくは1または2、より好ましくは1個の置換基で任意に置換されていてもよい。そのような置換基には、C−Cアルキル、ニトロ、ハロゲン、カルボン酸(例えば、C−C−COOH)、C−Cアルケンシアノ、アミド、及び/またはエステルが含まれるが、これらに限定されない。特に指示がない限り、上記の置換基は、それ自体がさらに置換されていない。
【0015】
一般に、本発明は、得られた処理済み不飽和脂肪が、酸化安定性の増加を経験するような、有効量の式Iの化合物とのそれらの直接的な物理的混合により、同じ不飽和脂肪を他の従来の抗酸化剤とブレンドすることによって可能性を超えることで、パーソナルケア組成物中の不飽和脂肪を処理するための方法を提供する。
【0016】
したがって、上記のように、一態様では、本発明は、不飽和脂肪を有効量の式Iの抗酸化化合物とブレンドすることを含む、不飽和脂肪の酸化を抑制するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、式Iの化合物中のRは、C−Cアルキル、代替としてはC−Cアルキル、または代替としてはC−Cアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、t−ブチル、i−プロピル、n−プロピル、エチル、またはメチルである。いくつかの実施形態では、Rは、2,4,4−トリメチルペンチルである。いくつかの実施形態では、式Iの化合物中のRは、C−C12シクロアルキル、代替としてはC−Cシクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、シクロヘキシルである。いくつかの実施形態では、Rは、アリール、好ましくはフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは、アリール−アルキル、好ましくはベンジルである。いくつかの実施形態では、Rは、H、OH、またはOである。いくつかの実施形態では、Rは、HまたはC−C10アルキル(すなわち、メチル)である。いくつかの実施形態では、Rは、Hである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRは、同時にHである。いくつかの実施形態では、Rは、OHである。いくつかの実施形態では、Rは、H、C−C10アルキル、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、−COOH、または−COOであり、式中、Mはナトリウムである。
【0017】
本発明の組成物のいくつかの実施形態では、式Iの化合物は、表1に示す通りである。
【0018】
【表1-1】
【0019】
【表1-2】
【0020】
【表1-3】
【0021】
本発明の目的のための不飽和脂肪は、炭素原子間に1つ以上の二重結合を有する長鎖脂肪族尾部を有する脂肪油または脂肪酸(すなわち、カルボン酸)である。特定の実施形態では、不飽和脂肪は、10〜30個の炭素原子、好ましくは12〜24個の炭素原子、より好ましくは16〜22個の炭素原子を含有する。不飽和脂肪は、直鎖、分枝、または環構造であり得る。特定の実施形態では、脂肪鎖は、主鎖に沿った炭素−炭素二重結合にシス構造を有する直鎖炭化水素鎖である。本発明における使用に好適な不飽和脂肪は、天然源から得ることができ、または合成的に調製することができる。好適な不飽和脂肪の天然源には、例えば、長鎖不飽和脂肪酸を含有する植物油、動物油、及び海産油が挙げられ、これらに限定されないが、亜麻仁油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、綿実油、キャノーラ油、大豆油、桐油、ラード、タラ肝油、カペリン油、メンハーデン油などが含まれる。特定の実施形態では、不飽和脂肪酸は、メチル末端から3、6、または9個の炭素が除去された1つ以上の二重結合、すなわちそれぞれオメガ−3、オメガ−6、及びオメガ−9脂肪酸を有する必須脂肪酸である。特定の好ましい実施形態では、本発明の方法により処理される不飽和脂肪酸は、リノレン酸、リノール酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0022】
当業者は、本明細書に記載される利益(例えば、不飽和脂肪の酸化の抑制)を提供するために、適用分野に関する一般的な知識と、必要に応じて日常的な実験を組み合わせることによって、特定の組成物において使用されるべき式Iの抗酸化化合物の有効量を、容易に判定することができる。非限定的な実施例として、不飽和脂肪は、組成物の総重量を基準にして、0.01〜1重量%、好ましくは0.03〜0.5重量%、より好ましくは0.5〜0.1重量%の範囲の式Iの化合物を含有する組成物とブレンドされる。特定の実施形態では、不飽和脂肪は98:0.1〜5:1、好ましくは48:0.1〜7:1、より好ましくは20:1〜10:1の重量比で式Iの化合物とブレンドされる。
【0023】
式Iの化合物は、PCT公開出願第WO2013/081778号に開示されているように、既知の合成技術を用いて当業者によって容易に調製することができる。例えば、化合物は、フェニルアルデヒド化合物(4−ヒドロキシベンズアルデヒドなどのフェニル上に1つ以上のヒドロキシル基を含有する)とアルキルヒドロキシルアミン化合物との反応、続いて所望の生成物の単離及び精製によって調製することができる。
【0024】
本発明の組成物はまた、皮膚科学的に許容される担体を含むことができる。このような物質は、典型的には、皮膚に有意な刺激を引き起こさず、組成物中の活性物質(単数または複数)の活性及び性質を打ち消さない担体または希釈剤として特徴付けられる。皮膚科学的に許容される担体の例としては、エマルジョン、クリーム、水溶液、油、軟膏、ペースト、ゲル、ローション、ミルク、フォーム、懸濁液、粉末、またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、約99.99〜約50重量%の皮膚科学的に許容される担体を含有する。
【0025】
本発明の皮膚科学的に許容される担体は、例えば、水、増粘剤、皮膚軟化剤、乳化剤、保湿剤、界面活性剤、懸濁化剤、フィルム形成剤、泡形成剤、防腐剤、消泡剤、芳香剤、低級モノアルコールポリオール、高沸点溶媒、噴射剤、着色剤、顔料、グリセリン、鉱油、シリコン感触調整剤、防腐剤、皮膚軟化剤、またはそれらの混合物もまた含み得る。
【0026】
本発明の組成物には、限定されるものではないが、研磨剤、吸収剤、香料などの審美的構成成分、顔料、着色剤(colorings)/着色剤(colorants)、精油、皮膚感覚剤、収れん剤など(例えば、クローブ油、メントール、しょうのう、ユーカリ油、オイゲノール、メンチルラクテート、マンサク留出物)、固結防止剤、消泡剤、抗菌剤(例えば、ヨードプロピルブチルカーバメート)、他の抗酸化剤、結合剤、生物学的添加物、緩衝剤、充填剤、キレート剤、化学的添加剤、着色剤(colorants)、化粧用収れん剤、化粧用殺生剤、変性剤、薬物収れん剤、外用鎮痛剤、フィルム形成剤または材料、例えば組成物のフィルム形成特性及び持続性を助けるためのポリマー(例えば、エイコセンとビニルピロリドンとのコポリマー)、不透明化剤、pH調整剤、噴射剤、還元剤、金属イオン封鎖剤、皮膚漂白及びライトニング剤(例えばヒドロキノン、コウジ酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコサミン)、スキンコンディショニング剤(例えば、多種及び閉塞性を含む湿潤剤)、皮膚鎮静及び/または治癒剤(パンテノール及びその誘導体(例えば、エチルパンテノール)、アロエベラ、パントテン酸及びその誘導体、アラントイン、ビサボロール、ならびにグリチルリチン酸二カリウム)、皮膚治療剤、増粘剤、ならびにビタミン(例えば、ビタミンC)及びその誘導体、が挙げられる。
【0027】
本発明の組成物は、例えば、油、ゲル、固形スティック、ローション、クリーム、ミルク、エアゾール、スプレー、フォーム、ムース、軟膏もしくは脂肪軟膏、または粉末の形態であってよい。本発明の組成物は、化粧品及びスキンケア(例えば、ローション、クリーム、オイル、局所用医薬品、及び日焼け止め)などの様々なパーソナルケア用途に使用することができる。本発明の組成物は、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、乳化、被包、封入、または凍結乾燥プロセスによって、当技術分野で周知の方法によって製造することができる。
【0028】
本発明の組成物は特にパーソナルケア製品に適しているが、必ずしもこれらに限定されるものではない。それらはまた、例えば、医薬品の軟膏、ローション、及びクリーム、ならびに食品及び飲料製品、または酸化を受け易い他の物質を含む不飽和脂肪酸を含む他の用途に使用することもできる。
【0029】
上記のように、式Iの化合物は、ラジカルスカベンジャーとして非常に有効である。それらは、以前から知られている不飽和脂肪の酸化を抑制するための抗酸化剤と比較して、著しく良好な抗酸化特性を示し、高度に酸化的な分子(例えば、グリコール酸またはビタミンCから生成されたもの)から生成されるヒドロキシルラジカルを安定化することもできる。有利には、ニトロン及びフェノール官能基の存在により、再生メカニズムが起こることができると考えられている。さらに、フェノール基を有するニトロンの能力は、1つがフェノール官能基を有し及びもう1つがニトロン官能基を有する、2つの異なる抗酸化剤を単に添加することによって達成することはできないことが見出されている。むしろ、同じ分子内に両方の官能基が存在することが、それらの好ましい能力の重要な側面である。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0031】
実施例1
配合物中の不飽和脂肪酸の安定化の有効性−TBARSアッセイ
脂質は、脂肪、ワックス、ステロール、ビタミン、及びグリセリドなどの天然分子の群である。脂質の生物学的機能は、エネルギーを蓄積し、シグナル伝達し、細胞膜構成成分として作用する。脂質の一般的な損傷は、過酸化である。酸化は、連鎖反応機構を介して脂質上で起こる。不飽和脂質または脂肪酸は、フリーラジカル攻撃に対して脆弱であり、その結果細胞が損傷する。リノール酸及びリノレン酸は、ヒト及び動物にとって2つの不可欠な脂肪酸である。脂肪酸過酸化防止に対する発明の化合物の有効性を調べるために、リノレン酸を対象として選択した。Van−IPHA及びpHBz−IPHAの有効性は、Trolox、フェニル−α−tert−ブチルニトロン(PBN)、ビタミンC、及びビタミンEなどの他の一般的な抗酸化剤と比較された。
【0032】
マロンジアルデヒド(MDA)は、不飽和脂肪酸過酸化の天然において発生する生成物であり、チオバルビツル酸(TBA)反応性物質(TBARS)アッセイは、MDAの生成をモニターすることにより過酸化を評価する十分に確立された方法である。サンプル中のMDAが増加すると、MDA−TBA付加物のシグナルが増加する。AAPHで処理した本発明及び比較サンプルは、表2に列挙した構成成分を含有する。
【0033】
【表2】
【0034】
LA(リノレン酸)は、Sigma−Aldrichから入手可能である。
AAPH(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)は、Sigma−Aldrichから入手可能である。
Trolox(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸)は、Sigma−Aldrichから入手可能である。
ビタミンCは、Fisher Scientificから入手可能である。
PBN(フェニル−α−tert−ブチルニトロン)は、Fisher Scientificから入手可能である。
比較
【0035】
532nmにおける各サンプルのUV吸光度を測定して、AAPHを用いて37℃で24時間処理した後のサンプル中のMDA濃度を判定した。サンプルを96ウェルプレートにロードし、SpectraMax Plus 384 UV−Vis Readerを用いて室温で測定した。図1は、AAPHをリノレン酸溶液に添加すると、UVシグナルが約0.05から0.4を超えて増加することを示す。Trolox及びVan−IPHAを有するサンプルは、約0.2のシグナル増加を有し、これは陽性対照のシグナルの半分である。ビタミンCはまた、約0.3までのシグナル増加を伴う保護を示すが、PBNはこの試験において有意な保護を示さない。したがって、TBARSアッセイは、Van−IPHAがAAPHによる過酸化に対する脂肪酸の保護の増加を示すことを示している。
【0036】
配合物中の不飽和脂肪酸の安定化の有効性−LC−UV/MS
TBARSアッセイは、脂肪酸自体を調べずに、1つの酸化生成物(MDA)を測定するので、脂肪酸の過酸化を測定する間接的な方法と考えられている。このようにサンプル中の脂肪酸及び全ての潜在的な酸化生成物のレベルを測定するLC−UV/MS法を開発し、AAPHで各サンプルを37℃で24時間処理した後に種々のサンプルのLCクロマトグラムを取得した。Agilent1290SLバイナリグラジエント液体クロマトグラフシステムと組み合わせたデュアルスプレーESIインターフェースを介したAgilent6538四重極飛行時間型質量分析システムを使用した。150×3mm ID2.5μm Waters CSH Xselect C18のカラムを50℃に保った。移動相Aは水中0.1体積%のギ酸からなっており、Bはイソプロパノール中の0.1体積%のギ酸からなっていた。グラジエントは、20分で5%Bから100%Bに増加し、流速は0.6mL/分であった。Agilent DADをUV検出に使用した。図2は、種々のサンプルのLCクロマトグラムを示しており、14.4分で溶出するピークはリノレン酸であり、図2におけるピークの隣にある数字は、3回繰り返された平均ピーク面積(214nmでのUV)及び標準偏差である。AAPHによって開始された過酸化に伴い、リノレン酸のピーク面積は1621から1026に減少し、これは分解が起こったことを示している。リノレン酸から誘導された生成物を表す新しいピークが7〜10分に出現する。TroloxまたはVan−IPHAを含有するサンプルでは、Troloxではほとんど変化が観察されず、Van−IPHAでは、リノレン酸のピーク面積に関してわずかな低下しか観察されなかった。ビタミンCは次善の抗酸化物質であることが観察されたが、ビタミンCの不安定性は欠点である。ビタミンEは、おそらく試験溶媒系との不適合性のためにうまく機能しない。PBNはリノレン酸に対する保護をほとんど示さなかった。リノール酸の直接分析による観察は、TBARSアッセイの結果と一致する。両方の方法は、Van−IPHAが不飽和脂肪酸の酸化を防止するための有効な代替物であり有利であることを示した。
【0037】
実施例2
配合物中の不飽和脂肪酸の安定化の有効性
本発明の抗酸化剤を用いたスキンケア配合物中の不飽和脂肪酸の安定化の有効性を調べた。リノール酸を保護標的として選択した。安定性について評価された本発明及び比較サンプルの水溶液は、表3に列挙した構成成分を含有する。
【0038】
【表3】
【0039】
キサンタンガムは、CP Kelcoから入手可能である。
グリセリンは、Spectrum Chemicalから入手可能であるから入手可能である。
レチノールは、Spectrum Chemicalから入手可能である。
Troloxは、Sigma−Aldrichから入手可能である。
比較
【0040】
上記の表3の各水性配合物を50mLジャー中で調製した。サンプルを室温及び45℃で3か月間保持した。Van−IPHA/pHBz−IPHA/TroloxのレベルをモニターするためにLC−UV法を開発し、配合物中のリノール酸のレベルをモニターするためにLC−MS SIM法を使用した。Agilent1260 Infinity液体クロマトグラフシステムに接続され、デュアルスプレーESIインターフェースを介した、Agilent6410三連四重極型質量分析システムを使用した。Waters CSH Xselect C18 150×3mm ID2.5μmカラムを70℃に保った。移動相Aは水中0.1体積%のギ酸からなっており、Bはイソプロパノール中の0.1体積%のギ酸からなっていた。グラジエントを25分で5%Bから100%Bに増加させ、流速は0.6mL/分であった。300nmのAgilentDADを抗酸化剤、Van−IPHA、pHBz−IPHA、及びTroloxのUV検出に使用した。リノール酸を、m/z279.2の負イオン化モードでSIM LC−MSによって検出した。分析は0日、7日、33日、48日、74日、及び89日に行った。最終結果を図3に示した。リノール酸の保護については、3か月間保存後の対照サンプル(抗酸化剤なし)でわずか3分の1残されたのと比較して、Van−IPHA、pHBz−IPHA、及びTroloxの存在下ではほとんど分解が見られなかった。45℃での加速試験を使用して、室温での2年間の貯蔵寿命を予測した。45℃のサンプルでは、Van−IPHA、pHBz−IPHA、及びTroloxを含むリノール酸のレベルは対照(抗酸化剤なし)のレベルより高かった。本発明のVan−IPHA及びpHBz−IPHAの両方が、従来の抗酸化物質と比較して、不飽和脂肪酸の安定化及び関連するスキンケア製品の貯蔵寿命の延長を示す。
【0041】
実施例3
油を含有する配合物中の不飽和脂肪酸の安定化の有効性
多くのボディウォッシュまたはボディローション製品は、不飽和脂肪酸を含有するヒマワリ種子油(SSO)を成分として使用する。ヘキサナールは、これらの製品から生成される主要な酸化生成物のうちの1つであり、強い臭いは非常に不快であり、消費者によって好まれない。このような製品の配合者は、長期にわたって様々な温度で保存した後の特定の製品の受容を確認するための主要な基準としてヘキサナールの臭いを使用する。抗酸化剤は、検出可能な閾値下にヘキサナールの生成を低下させ、油の酸化/分解を防止または減速させるために、配合物中に必要とされている。Van−IPHA及びpHBz−IPHAを、配合物中の不飽和脂肪酸を含有する油の安定化の有効性について調べた。
【0042】
SSОを含有する配合物中のpHBz−IPHA及びVan−IPHAによる不飽和脂肪酸の安定化
SSO、及びpHBz−IPHAまたはVan−IPHAを含有する例示及び比較組成物には、表4に列挙した構成成分が含まれる。
【0043】
【表4】
【0044】
キサンタンガムは、CP Kelcoから入手可能である。
グリセリンは、Spectrum Chemicalから入手可能であるから入手可能である。
Tween20は、Sigma−Aldrichから入手可能である。
SSO(ヒマワリ種子油)は、Sigma−Aldrichから入手可能である。
【0045】
最初の日の0日後、2週間後、1か月後、2か月後、及び3か月後のヘキサナール生成をモニターするために、ヘッドスペースGC−MS法を社内で開発した。各配合物のサンプルをヘッドスペースバイアルに入れ、80℃で5分間加熱した。各サンプルからのヘッドスペース1mLを、85℃に加熱した加熱気密ニードルを備えたGerstel MultiPurpose Samplerを用いてGCに注入した。分離は、Agilent30m×250μm×0.25μmカラムで行った。ヘキサナールの検出は、m/z56、m/z72、及びm/z82についてSIMを用いてMSで行った。
【0046】
3重量%、5重量%、10重量%、及び95重量%のSSOを含有するpHBz−IPHAを含む及び含まない配合物からのヘキサナール生成の最終結果を図4に示す。室温では、分解または酸化が遅く、すべてのサンプルにおいて3か月後にヘキサナールは検出されなかった。45℃での加速試験では、3か月後に3重量%、5重量%、または10重量%のSSOを含有する配合物中に様々な量(10〜40ppm)のヘキサナールが生成された。対照的に、0.1重量%のpHBzを含有するサンプルでは、ヘキサナールの生成量がはるかに少なかった。95重量%SSOの組成差が大きいため、改善は他のものほど顕著ではなかった。結果は、パーソナルケア製品におけるヘキサナール生成を減少させるために、pHBz−IPHAがSSOを安定させるのに有効な代替物であり、有利であることを示している。
【0047】
Van−IPHAを含む及び含まない3重量%、5重量%、10重量%、及び95重量%のSSOを含有する配合物からのヘキサナール生成の最終結果を、図5に示す。Van−IPHAを含有する配合物では、上記のpHBz−IPHAの効果と同様の結果が観察された。結果は、Van−IPHAがパーソナルケア製品のヘキサナール生成を減少させるため、SSOを安定化させるのに有効な代替物であり、有利であることを示している。
【0048】
SBOを含有する配合物中のpHBz−IPHA及びVan−IPHAによる不飽和脂肪酸の安定化
大豆油(SBO)は、その中の多価不飽和脂肪酸の濃度が高く、また低コストであるためにスキンケア市場でSBOを使用するニーズが顕著であるので、SBOを使用して作製された配合物も調製した。SBO、及びpHBz−IPHAまたはVan−IPHAを含有する、例示及び比較組成物は、表5に列挙された構成成分を含む。
【0049】
【表5】
【0050】
キサンタンガムは、CP Kelcoから入手可能である。
グリセリンは、Spectrum Chemicalから入手可能であるから入手可能である。
Tween20は、Sigma−Aldrichから入手可能である。
SBO(大豆油)は、Fisher Scientificから入手可能である。
【0051】
図6及び図7は、室温及び45℃で、2か月後の、pHBz−IPHAまたはVan−IPHAを含有するSBO配合物からのヘキサナール生成の結果を示す。SSO配合物と同様に、室温ではヘキサナールはほとんど生成されず、45℃で保持された3重量%、5重量%、及び10重量%のSBO配合物においては生成されたヘキサナールが大きく減少している。これらのデータはSSOデータと共に、pHBz−IPHA及びVan−IPHAが、トリグリセリドを含有する多価不飽和脂肪酸を酸化から保護する能力を有することを示唆している。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7