特許第6734300号(P6734300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6734300積層グレージングユニットの電子部品に電力を供給する方法、および前記方法を実施するための積層グレージングユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6734300
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】積層グレージングユニットの電子部品に電力を供給する方法、および前記方法を実施するための積層グレージングユニット
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20200728BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20200728BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20200728BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20200728BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20200728BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   C03C27/12 L
   C03C27/12 N
   B32B17/10
   B32B7/025
   B32B9/00 A
   B60J1/00 H
   H05K1/18 Z
   H05K1/18 J
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-561825(P2017-561825)
(86)(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公表番号】特表2018-525303(P2018-525303A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】EP2016060973
(87)【国際公開番号】WO2016192968
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年4月22日
(31)【優先権主張番号】15170141.4
(32)【優先日】2015年6月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴィエ, ジョナサン
【審査官】 中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01970195(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02197245(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0275599(US,A1)
【文献】 特開2012−089885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/025
B32B 9/00
B32B 17/10
B60J 1/00
C03C 27/00− 29/00
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層グレージングの電子部品に電力を供給する方法であって、前記積層グレージングが、少なくとも2枚の重ね合わされるガラス板(2、10)とそれらの間に挿入される少なくとも1つの熱可塑性中間層(12)とを含み、前記電子部品(8)が、前記2枚のガラス板の間に収容されており、前記電子部品(8)が、前記ガラス板の間に収容される導電性回路(6a、6b)によって電流源(11)に連結されている場合において、前記方法が、前記電流源(11)から前記電子部品(8)に印加される電圧が正電圧と負電圧の間で時間的に交互に変化するようにマイクロコントローラによって前記電流源(11)を制御することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記導電性回路(6a、6b)が少なくとも1種類の金属酸化物を含有し、前記熱可塑性中間層(12)が金属イオンを含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性中間層(12)の前記金属イオンが、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のイオンを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱可塑性中間層(12)の前記金属イオンが、ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンおよび/またはリチウムイオンおよび/またはマグネシウムイオンおよび/またはカルシウムイオンを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記導電性回路(6a、6b)の前記金属酸化物が二酸化スズを含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
フッ素および/またはアンチモンでドーピングされることによって、前記二酸化スズが導電性となることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記導電性回路(6a、6b)がスズおよび酸化インジウムの導電性混合物を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記導電性回路(6a、6b)が、少なくとも1つの層が導電性である層のスタックを含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記導電性回路(6a、6b)の前記導電性である層が導電性金属の層であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記導電性回路(6a、6b)が層TiO/ZnO/Ag/Ti/ZnO/SnOのスタックを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記熱可塑性中間層(12)がポリエステルのフィルムを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記熱可塑性中間層(12)の前記ポリエステルが、ポリビニルブチラール、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、およびポリエチレンテレフタレートから選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
正電圧の持続時間および負電圧の持続時間がそれぞれ最大32時間であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
正電圧の持続時間および負電圧の持続時間がそれぞれ最大12時間であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記電流源(11)が矩形波型であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記電子部品(8)がオプトエレクトロニクス部品を含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記オプトエレクトロニクス部品が、発光ダイオード、フォトレジスタ、フォトダイオード、および視覚センサから選択されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記熱可塑性中間層(12)と前記ガラス板の一方(2、10)との間に、導電性ではないストリップ(4)によってセグメント化された導電性フィルムを挿入することによって、前記導電性回路(6a、6b)が得られることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法を実施するための積層グレージングであって、一方で、2枚の重ね合わされるガラス板(2、10)とそれらの間に挿入される熱可塑性中間層(12)とを含み、他方で、前記ガラス板の間に収容され、同様に前記2枚のガラス板の間に収容される導電性回路(6a、6b)に接続される発光ダイオード(8a)と保護ダイオード(8b)とで構成される電子部品を含む積層グレージングにおいて、前記2つのダイオード(8a、8b)が前記導電性回路(6a、6b)に並列でヘッドトゥテール位置で接続されることを特徴とする積層グレージング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層グレージングに関し、特に、電子部品を含む積層グレージングに関する。
【0002】
本発明は、特に、そのような積層グレージングの電子部品に電力を供給する方法、およびこの方法を実施するために特に適合される積層グレージングに関する。
【背景技術】
【0003】
積層グレージングは、自動車産業において自動車両の風防を製造するため、ならびに建築産業において特に安全グレージング、アトリウムの窓、およびバルコニーもしくは陸屋根の防護材を製造するために一般に使用されている。
【0004】
積層グレージングユニットは、複合積層組立体である。これらは、通常、重ね合わされた複数のガラス板を含み、それらの間に熱可塑性中間層が挿入される。熱可塑性中間層は、2枚のガラス板を互いに固定する機能を果たす接着フィルムである。ポリビニルブチラール(PVB)またはエチレンとビニルアセテートとのコポリマー(EVA)が一般に使用されるが、別の接着材料が適切となる場合もある。
【0005】
文献の国際公開第2004/062908号パンフレット(GLAVERBEL)には、電子部品が組み込まれ、それとともに前記電子部品を電流源に接続するための導電性回路を有する積層グレージングが開示されている。
【0006】
電子部品(たとえば発光ダイオード)および導電性回路は、ガラス板の間、または前記板の1つと熱可塑性中間層との間に収容される。
【0007】
ある使用条件では、これらの周知のグレージングユニットは、導電性回路が徐々に腐食することを特徴とする老化の発生が確認されている。この腐食は、茶色がかった色の形成により美的品質に影響が生じるだけでなく、導電性回路の電気的性質にも影響が生じる。たとえば、これらのグレージングに電力が供給されると、これらの温度が85℃に到達することがあり、次にこのような腐食は、早期にわずか3日後に現れることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在では、上述の周知のグレージングユニットの腐食は、それらの電子部品の電力供給を適切に選択することによって、大幅に遅らせ、またはさらには皆無にすることができることが分かった。
【0009】
したがって、本発明は、前述の周知のグレージングユニットの電子部品に電力を供給するための新規で独創的な方法を提供することが目的であり、この方法によって、使用中のグレージングの導電性回路の腐食が回避される。
【0010】
したがって、本発明の目的の1つは、これらのグレージングユニットの老化を遅らせ、またはさらには皆無にする、積層グレージングの電子部品に電力を供給する方法を提供することでもある。
【0011】
本発明の別の目的の1つは、上記方法の実施に特に適している新規なグレージングを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的の1つは、一方では電子部品が組み込まれた積層グレージングを含み、他方では前記電子部品に連結した電流源を含む装置であって、グレージングの前述の定義の老化を遅らせる、またはさらには皆無にする様に設計される装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の主題は、積層グレージングの電子部品に電力を供給する方法であって、前記積層グレージングが、少なくとも2枚の重ね合わされたガラス板と、それらの間に挿入される少なくとも1つの熱可塑性中間層とを含み、電子部品は、上記2枚のガラス板の間に収容され、それによって、電子部品は、ガラス板の間に収容される導電性回路により電流源に連結される方法であり、本発明によると、この方法は、電流源がマイクロコントローラによって時間的に制御されることを特徴とする。
【0014】
本発明による方法に使用される積層グレージングは、前述の規定の技術用途に一般に使用される種類のものである。これは、一般に、少なくとも1組のガラス板を含み、それらの間に熱可塑性材料でできた中間層が挟まれる。グレージングの寸法および形状は、本発明の定義には重要ではない。同様に、グレージングは、平坦でもくぼんでいてもよく、その用途に適合するあらゆる形状を有することができる。
【0015】
本出願人らの探求によると、平坦なガラス、着色ガラス、艶消しガラス、サンドブラストされたガラス、スクリーン印刷されたガラス、またはあらゆる他の適切な種類のガラスの板を非実質的に使用できる。
【0016】
熱可塑性中間層の機能は、2枚のガラス板を互いに接合させることである。これは一般に、ポリエステルでできたフィルムを含み、ポリエステルは有利にはポリビニルブチラール(PVB)、エチレンとビニルアセテートとのコポリマー(EVA)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)から選択することができる。中間層は、ポリエステルでできた1枚のフィルムを含むことができる。一変形形態として、中間層は、前述の種類のポリエステルでできた数枚のフィルムのスタックを含むことができる。熱可塑性中間層の厚さは、本発明の定義には重要ではない。最適な厚さは、種々の要因、特にグレージングの寸法、その用途、および前記中間層の組成により、それぞれの個別の場合で当業者が決定する必要がある。熱可塑性中間層の厚さは一般に3.5mm未満であるが、この寸法は、単なる一例として示されるものであり、本発明の範囲に関しては非限定的である。
【0017】
一変形形態として、グレージングは、3枚以上の重ね合わされたガラス板を含むことができ、熱可塑性中間層を交互に有することができる。
【0018】
電子部品の機能は、グレージングに1つ以上の特定の機能を付与することである。これは通常は、ガラス板の間に挿入可能であり、グレージングの性質に悪影響を与えない寸法を有するべきである。電子部品の寸法の最も適切な選択は、種々の要因、特にグレージングの形状、寸法、および構成、ならびにその用途により、それぞれの個別の場合で当業者が行う必要がある。実際には、電子部品は一般に、非常に薄い厚さを有し、通常は3mm未満、たとえば0.1〜1.2mmの間である。しかし、これらの電子部品の寸法は、単なる一例として示されるものであり、本発明の範囲に関して限定するものではない。
【0019】
電子部品の選択は、要求される機能によって決定される。特に、発光ダイオード(LED)、フォトレジスタ、フォトダイオード、ならびにたとえばCCD型(CCD電荷結合素子を意味する)およびCMOS型(CMOSは、相補型金属酸化物半導体を意味する)の視覚センサなどのオプトエレクトロニクス部品は、それらがグレージングの光学的特徴と直接調和するので、特に有用である。しかし、完全な電子回路を形成するために、別の電子部品を挿入することもできる。使用される部品および導電体の種類によるが、これらの回路は目に見える場合もあるし、見えない場合もある。
【0020】
本発明に使用されるグレージングは、1つの電子部品を含む場合がある。しかし数個の電子部品を含む場合もあり、これは最もよくある場合である。
【0021】
グレージングが数個の電子部品を含む場合、これらはすべてが同一であってよい。一変形形態として、グレージングは、異なる機能を実行する複数の異なる電子部品を含むことができる。
【0022】
以下の本明細書において、「電子部品」という表現は、個別の電子部品を意味するか、または全体的に数個の電子部品の組を意味する。
【0023】
一般に、本発明は、積層ガラス中に挿入されるあらゆる種類の電子部品、特に、これらの同じグレージングユニット中に一体化された電磁アンテナから得られた信号のフォーマットおよび増幅のための回路、ならびに詳細を前述した照明制御回路およびセンサに関する。
【0024】
グレージングの電子部品は、その機能を実行するために電流を供給できる必要がある。このために、グレージングは、本来周知の方法で、2枚のガラス板の間、またはガラス板と熱可塑性中間層との間に収容される導電性回路を含む。このために、導電性回路は、電子部品を電流源に連結する導電性材料のワイヤ、ストリップ、または1つ以上の層を含むことができる。これは、通常、グレージングの性質に悪影響を与えることなくガラス板の間に挿入できる寸法を有するべきである。典型的な導電層は、一般に0.02〜1μmの間、好ましくは0.02〜0.5μmの間、さらにより好ましくは0.2〜0.4μmの間の厚さを有し、0〜80Ω/□の間、好ましくは4〜50Ω/□の間、さらにより好ましくは4〜20Ω/□の間の表面抵抗を有する。要求される用途によるが、導電性回路は、目に見える、目に見えない、透明、半透明、または不透明となることがある、またはそのようになるべきである。
【0025】
本発明の第1の実施形態では、導電性回路は、中間層の熱可塑性材料中に積層された、または積層されたガラス板の内面上にスクリーン印刷によって堆積された導電性ワイヤのネットワークを含む。
【0026】
本発明の第2の実施形態では、導電性回路は、ガラス板と熱可塑性中間層との界面においてガラス板を覆う透明導電層を含む。本発明のこの変形形態では、狭い幅にわたって層を燃焼させるレーザー光線の作用によって、この導電層中に導電性トラックまたはストリップを切り取ることができ、それによって層の残りの部分でトラックを画定する非導電性の溝を形成することができる。これらの非導電性の溝は、一般に幅が0.01〜3mmの間であり、好ましくは0.05〜1.5mmの間であり、さらにより好ましくは0.1〜0.8mmの間である。このようにして、導電性層がわずかに着色させている場合でさえもほとんど見えない電気的接続を得ることができる。
【0027】
本発明のこの第2の実施形態では、導電性回路は、一方のガラス板の上に堆積された導電層を含む。2つの異なる工業的方法を使用して、この導電層を堆積することができる。
【0028】
第1の方法では、導電層は、500〜750℃の範囲の温度のガラス表面上に堆積された熱分解層を含む。好ましくは、この導電性熱分解層は、570〜660℃の温度で堆積される。この種類の層は、周知のフロートガラス製造方法において、溶融ガラスが液体金属スズ浴の表面上に浮かべられるステップの後の高温ガラスのリボン上に直接堆積することができる。堆積は、微細な液滴の噴霧によって、または化学蒸着によって行うことができる。有利には、熱分解層は化学蒸着された層である。熱分解層は、少なくとも1種類の導電性酸化物で構成される。一般に導電性は、少ない比率のドーピング元素が酸化物層中に存在することによって得られる。このような熱分解層は、たとえば、インジウムもしくはアルミニウムがドープされた酸化亜鉛、フッ素もしくがアンチモンドープされた酸化スズ、またはスズがドープされた酸化インジウム(スズがドープされた酸化インジウムは、一般にITOの略語で知られている)を含む。熱分解プロセスは、フッ素および/またはアンチモンがドープされた二酸化スズの層の形成に非常に適している。
【0029】
第2の方法では、導電層は、真空中のカソードマグネトロンスプレー(「マグネトロンスパッタリング」としてよりよく知られている)によって得られる。この導電層は、たとえば、以下の個別の層:
TiO/ZnO/Ag/Ti/ZnO/SnO
のスタックからなる精密な層であってよい。
【0030】
これらの精密な層の表面抵抗は、一般に1〜20Ω/□であり、好ましくは1〜10Ω/□である。5Ω/□の表面抵抗値によって、優れた結果が得られている。
【0031】
マグネトロン導電層は、アルミニウムがドープされた亜鉛の導電層、またはさらにはスズがドープされたインジウムの層(「ITO」層)を含むスタックからなることもできる。これらの層の表面抵抗は、約4〜50Ω/□、好ましくは約4〜15Ω/□である。
【0032】
機械的ひっかき抵抗性がより高いので、一般に熱分解層がマグネトロン層よりも好ましい。
【0033】
本発明による方法に使用される積層グレージングに関するさらなる情報は、文献の国際公開第2004/062908号パンフレット(GLAVERBEL)に見ることができる。
【0034】
本発明によると、電子部品への電力供給は、マイクロコントローラによって制御された電流源によって行われる。
【0035】
電流源の電気的仕様は、電子部品によって異なり、それぞれの個別の場合で当業者が決定する必要がある。一般に、発光ダイオード(LED)の場合、1〜5Vの間、理想的には2〜4Vの間に定められたピーク電圧を有する電流源の使用が推奨される。
【0036】
電流源は、電子部品のスイッチがオンになるときに電子部品に順電圧で供給でき、電子部品のスイッチがオフになるときには逆電圧で供給することができる。
【0037】
この電流源に関連するマイクロコントローラによって、電子部品のスイッチがオンのままとなる時間の長さを測定することができる。電子部品のスイッチがオフになると、マイクロコントローラは、正バイアスモードと同じ時間の間、逆バイアスモードで電流源を作動させる。
【0038】
たとえばある種の電子部品が動作する場合に到達する温度である85℃の温度では、グレージングの不可逆的な破壊を回避するためには、正バイアスモードの作動時間を36時間、好ましくは12時間に制限することが推奨される。グレージングを85℃未満の温度で使用する場合、正バイアスモードでの作動時間を大幅に増加させることができる。当然ながら、作動時間は電子部品の種類および所望の最高温度に適合させることができる。
【0039】
本発明による方法は、有利には、導電性回路が金属酸化物(特に二酸化スズ)を含有し、熱可塑性中間層が金属イオン、特にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のイオンを含有するグレージングに適用可能である。このようなグレージングに直流源から供給することによって、電子部品の近傍で導電性回路の段階的な腐食が確認され、この腐食は導電性回路の茶色がかった着色によって明らかとなる。グレージングの温度が高い場合に、この腐食はますます速くなる。電流源が、本発明によるマイクロコントローラによって制御される電流源である場合には、この腐食は確認されていない。
【0040】
したがって、本発明による方法は、導電性回路が二酸化スズを含有し、熱可塑性中間層がナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムから選択される少なくとも1種類の金属のイオンを含有する積層グレージングに特に適用可能である。本発明のこの実施形態では、導電性を得るためにフッ素および/またはアンチモンがドープされた二酸化スズ、または二酸化スズとインジウムとの導電性混合物を使用することができる。
【0041】
一変形形態として、少なくとも1つの層が導電性である層のスタックを導電性回路に使用することもできる。本発明のこの変形形態では、層のスタックは、たとえば、良好な導電体である金属(有利には銀)の層を含むことができる。層TiO/ZnO/Ag/Ti/ZnO/SnOのスタックが非常に適切となる。
【0042】
本発明は、一方で、2枚の重ね合わされたガラス板と、それらの間に挿入された熱可塑性中間層とを含み、他方で、上記ガラス板の間に収容され、同様に上記2枚のガラス板の間に収容される導電性回路に接続される少なくとも2つのダイオードを含むグレージングであって、2つのダイオードが並列で、ヘッドトゥテール(head−to−tail)位置で導電性回路に接続されることを特徴とするグレージングにも関する。
【0043】
本発明によるグレージングは、「ヘッドトゥテール位置にある」という表現は、電流源の一方の同じ端子が、一方のダイオードのアノード、および他方のダイオードのカソードに接続されるように、2つのダイオードの電流源の端子への接続が配置されることを意味する。この電気的接続の結果、2つのダイオードによって電流が交互に流れる。
【0044】
本発明によるグレージングでは、電子部品がこれら2つのダイオードを含み、第1が光ダイオードであり、第2が保護ダイオードである、電子部品が有利に選択される。
【0045】
本発明による方法およびグレージングは、種々の工業用途、特に民間もしくは専門部門での建築産業、自動車産業、造船業、鉄道産業、および航空産業において種々の工業用途を有する(この限定的な一覧は代表的なものである)。
【0046】
本発明による方法およびグレージングは、非実質的に、公共もしくは私有の建物もしくは乗り物の内部もしくは外部のパーティションに使用されるグレージングに適用することができ、または建物もしくは乗り物の内側もしくは外側に配置される装飾用グレージングに適用することもできる。
【0047】
したがって、本発明は、電流源に連結された電子部品を含む積層グレージングを含む装置であって、前記積層グレージングが、2枚の重ね合わされたガラス板と、それらの間に挿入された熱可塑性中間層とを含み、電子部品が、上記2枚のガラス板の間に収容され、上記2枚のガラス板の間に収容される導電性回路によって電流源に連結される装置にも関し、本発明によると、この装置は、マイクロコントローラによって制御される電流源を特徴とする。
【0048】
本発明による装置は、たとえば、グレージングが窓に取り付けられる、または内部パーティションとして、もしくは装飾用パーティションとして使用される公共または私有の建物を構成する。本発明による装置は、グレージングが窓または外を見るための舷窓、または場合により装飾用である内部パーティションを構成する陸地、海、または空の自動車両を構成することもできる。
【0049】
本発明による装置の積層グレージングは、一般に、文献の国際公開第2004/062908号パンフレット(GLAVERBEL)に記載の種類のものである。
【0050】
本発明による装置の特定の一実施形態では、前記装置の積層グレージングは、前述の規定の本発明によるグレージングである。
【0051】
本発明による装置は1つのグレージングを含むことができる。一変形形態として、本発明による装置は、電子部品を含む数個の同一または異なる積層グレージングユニットを含むことができる。本発明による装置が、それぞれが電子部品を含む数個の積層グレージングユニットを含む場合、装置は、すべてのグレージングユニットに接続された1つの電流源を含む場合もあるし、個別のグレージングユニットにそれぞれ接続される数個の電流源を含む場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
本発明の特定の特徴および詳細は、本発明のいくつかの特定の実施形態を表す添付の図面の以下の説明に示される。
【0053】
図1】本発明による装置の特定の一実施形態を図で示している。
図2】本発明によるグレージングの詳細の図である。
図3】本発明による別のグレージングの詳細を示している。
【0054】
これらの図において、同じ参照番号は同じ要素を示している。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1に図示される装置は、以下のように製造した板2の上に積層された積層グレージングを含む。グレージングの外側のガラス板となることが意図される厚さ2.1mmの透明ソーダ石灰ガラスのいた2の上に、導電層6(約2Ω/□の導電率)が積層されている。導電層6は、幅が約0.15mmの細いストリップまたは溝4の上でレーザーによって除去され、それによって導電性トラック6a、6bが画定される。この場合はLEDである電子部品は、細いストリップ4のいずれかの側に導電性接着剤で接着され、それによってその電極は導電性ストリップ6aおよび6bと電気的に接触する。典型的な導電性接着剤は、たとえば、銀を含む接着剤である。
【0056】
次に、二重熱可塑性シート12を間に挿入することによって、コーティングされた面が最も内側となるようにガラス板2を透明ソーダ石灰ガラスの第2の板10と従来方法で積層する。
【0057】
LED8をストリップ6aおよび6bに固定するために使用する接着剤は、積層グレージングの製造に必要な高い温度および圧力に対するその抵抗性によって選択する必要がある。積層プロセス中に絶縁性ストリップ4まで広がるのが回避されるように、その粘度により選択する必要もある。
【0058】
導電性ストリップ6aおよび6bは、本発明によりマイクロコントローラによって制御される電流源11に接続される。
【0059】
LED8によって放出される光束は矢印で示されている。これはグレージングの内側のガラス板10に向かっている。
【0060】
図2のグレージングにおいて、このグレージングは、2つの導電性ストリップ6aおよび6bに並列で接続される2つのダイオード8aおよび8bからなるLEDを含む。本発明によると、2つのダイオード8aおよび8bは、LED8内部でヘッドトゥテールで配置され、それによってダイオード8aのアノードおよびダイオード8bカソードが導電性ストリップ6aに接続され、一方、ダイオード8bのアノードおよびダイオード8aのカソードが導電性ストリップ6bに接続される。
【0061】
ストリップ6aおよび6bが電流源に接続されると、ダイオード8aおよび8bによって、電流源と同相で交互に電流が流れる。
【0062】
図3のグレージングにおいて、このグレージングは、直列に配置された3つのLEDを含む。本発明によると、それぞれのLEDは、ヘッドトゥテールに配置されたダイオード8aおよび8bを含む。ストリップ6aおよび6bが電流源に接続されると、ダイオード8aおよび8bによって、電流源と同相で交互に電流が流れる。
【実施例】
【0063】
以下の2つの実施例によって、本発明により得られる向上が示される。
【0064】
2つの実施例のそれぞれにおいて、以下のようにして得られた積層グレージングを使用した:
− 厚さ2.1mmのガラス板上に、厚さ300nmおよび約2Ω/□のフッ素がドープされた酸化スズを主成分とする導電層を堆積した;
− レーザー光線を使用して、非導電性の溝によって分離された2つの別個の導電性領域を導電層中に画定した;
− 非導電性の溝のいずれかの側に、所望の照明効果を得るために十分な数の発光ダイオード(LED)を接着し、各LEDのアノードを2つの前述の導電性領域の一方に接触させ、各LEDのカソードを他方の導電性領域と接触させた;
− 適切に得られた組立体上に、合計の厚さが1.14mmとなる3枚の透明PVBのシートを配置し、続いて厚さ2.1mmの透明ガラスを配置した。
【0065】
適切に形成された組立体について、高い温度および圧力(125℃および8bar)における少なくとも35分を含む120のサイクルでオートクレーブによる処理を行った。
【0066】
この実施形態では、LEDは直列に配置される。この実施形態は、2枚の透明ガラス板を使用する場合でさえも全体的に目に見えない単一の結合回路が提供されるという利点を有する。
【0067】
実施例1(本発明によるものではない):
この実施例では、前述の2つの導電性領域を直流源の2つの端子にそれぞれ接続し、それによってLEDのアノードが電流源の正端子に連結され、カソードが前記電流源の負端子に連結された。
【0068】
以下の条件の老化試験をグレージングに対して行った:
− LED中の電流:25mA;
− 周囲温度:85℃;
− 試験時間:72時間。
【0069】
試験終了後、直流源の負端子に接続されたグレージングの導電性領域に茶色がかった着色が観察された。この着色は、LEDの近傍で非導電性の溝に沿って茶色がかった色の形態、およびLEDから数ミリメートルで茶色がかった半円形の形態となった。
【0070】
実施例2(本発明による):
マイクロコントローラによって制御される電流源を用いて実施例1の試験を繰り返した。
【0071】
老化試験の終了後、グレージング中に茶色の着色は記録されなかった。
図1
図2
図3