特許第6734345号(P6734345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6734345
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】燃料電池の陽極のための金属合金触媒
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/90 20060101AFI20200728BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20200728BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20200728BHJP
   C22C 19/07 20060101ALI20200728BHJP
   C22C 5/04 20060101ALI20200728BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20200728BHJP
【FI】
   H01M4/90 M
   H01M4/92
   B01J23/89 M
   C22C19/07 Z
   C22C5/04
   !H01M8/10 101
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-205409(P2018-205409)
(22)【出願日】2018年10月31日
(62)【分割の表示】特願2016-516240(P2016-516240)の分割
【原出願日】2014年5月28日
(65)【公開番号】特開2019-67766(P2019-67766A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2018年11月14日
(31)【優先権主張番号】1309513.8
(32)【優先日】2013年5月28日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515189520
【氏名又は名称】イリカ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ヘイデン ブライアン エリオット
(72)【発明者】
【氏名】デービス ジョナサン コンラッド
(72)【発明者】
【氏名】オフィン ローラ ジェーン
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−260909(JP,A)
【文献】 特表2009−512128(JP,A)
【文献】 特開2008−305561(JP,A)
【文献】 特開2013−243154(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0029252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/90
H01M 4/92
B01J 23/89
C22C 5/04
C22C 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の陽極のための触媒であって、
触媒は20〜70at.%(原子%)のPd、10〜70at.%のCo、および、30at.%まで(0を含まない)のWからなる合金である
触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の触媒であって、
Pd、CoおよびWから実質的になる、
触媒。
【請求項3】
請求項2に記載の触媒であって、
50at.%のPd、43at.%のCo、および、7at.%のWを含む、
触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒であって、
支持体上に支持される、
触媒。
【請求項5】
請求項4に記載の触媒であって、
前記支持体がカーボンである、
触媒。
【請求項6】
基質および請求項1から5のいずれかに記載の触媒を含む、
燃料電池の陽極。
【請求項7】
請求項6に記載の、水素を酸化させる燃料電池の陽極。
【請求項8】
燃料電池であって:
請求項6または7の陽極;
陰極;
電解質;
燃料供給;および、
酸化剤の供給、
を含む、
燃料電池。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池であって、
前記燃料供給が水素ガスを供給する、
燃料電池。
【請求項10】
請求項8または9に記載の燃料電池であって、
前記電解質がプロトン交換膜を含む、
燃料電池。
【請求項11】
請求項6または7に記載の陽極を製造する方法であって、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒を導電性の基質に適用するステップを含む、
方法。
【請求項12】
請求項6または7に記載の陽極を製造する方法であって、
請求項4または5に規定されるように支持された請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒を、導電性の基質に適用するステップを含む、
方法。
【請求項13】
請求項1から5のいずれかに記載の触媒の使用であって、
燃料電池での燃料の酸化のための、
使用。
【請求項14】
請求項13に記載の触媒の使用であって、
請求項8から10のいずれかに記載の燃料電池での水素の酸化のための、
使用。
【請求項15】
請求項1から5のいずれかに記載の触媒の使用であって、
陽極の製造での、
使用。
【請求項16】
請求項15に記載の使用であって、
請求項6または7に記載の陽極の製造のための、
使用。
【請求項17】
請求項15または16に記載の使用であって、
請求項8から10のいずれかに記載の燃料電池の陽極の製造のための、
使用。
【請求項18】
燃料電池において燃料を酸化する方法であって、
燃料電池の陽極に燃料を供給するステップを含み、
前記陽極は、請求項6または7に記載の陽極である、
方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記燃料が水素である、
方法。
【請求項20】
請求項8から10のいずれかに記載の燃料電池において電気を発生させる方法であって、
陽極に燃料を供給し、陰極に酸化剤を供給するステップを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の陽極のための金属合金触媒に関し、そのような触媒を含む陽極および燃料電池、そのような陽極の製造方法、陽極の製造および燃料の酸化のためのそのような金属合金触媒の使用、そのような陽極を含む燃料電池において燃料を酸化する方法、および、それにより電気エネルギーを産生する方法に関する。特に、触媒は、パラジウムと、少なくともパラジウムと同じくらいに強く水素および/または一酸化炭素に個々に結合する金属との合金であり、触媒は、水素酸化反応(HOR)のための陽極に適用される。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、陽極(ここで燃料が酸化される)および陰極(ここで酸素などの酸化種が還元される)を含む。電解質は、電極間のイオンの輸送を可能にする。燃料および酸化剤は、各電極に別々に供給される。燃料が陽極で酸化されると、電子が放出され、外部回路を通って陰極へ行き、そこでそれらは酸化種の還元で消費される。高分子電解質膜燃料電池(PEMFC)では、使われる燃料は通常、水素であり、酸化種は通常、酸素であり;高分子電解質は、陽極から陰極への陽子の流れを可能にすることができる。
【0003】
水素は燃料電池において最も一般的な燃料であり、HORは陽極での最も一般的な反応である。他の燃料は、メタノールなどを、例えば直接型メタノール燃料電池において用いることができ、それは特に携帯機器に有用であり、その場合、メタノール酸化反応が陽極で起きるが、本発明は、主にHORのための触媒を目的とする。
【0004】
触媒は、酸素還元反応(ORR)および水素酸化反応(HOR)をそれぞれ生じさせるために、陰極および陽極の両方で必要である。白金は両方の反応に良い触媒であり、一般に、白金または白金合金のいずれかに基づく材料が、反応を促進するために用いられている。通常、特定の反応に理想的な触媒のためには、反応物、生産物および/または反応中間体は、強過ぎずまたは弱過ぎずに触媒表面に結合すべきである(反応内の速度を決定するステップに影響し得るため)。
【0005】
「Norskov et al」(Norskov,J.K.,et al.,Journal of The Electrochemical Society,2005.152(3):p.J23−J26.)および「Greeley et al」(Greeley,J.,et al.,Nat Mater,2006.5(11):p.909−913.)は、様々な遷移金属に関する水素結合エネルギーを、水素発生反応(水素酸化反応の逆)に関するそれらの活性に対して比較している。白金は、より強くまたはより弱く水素に結合する他の金属と比較して、これらの反応に関する理想的な金属であることが明らかである。しかしながら、白金は希少かつ高価な金属であり、白金を置き換える、または、関連する反応に関する白金の活性を高めてより少ないローディングを可能にするための、代替の燃料電池触媒の発見に、より多くの努力がなされている。
【0006】
燃料電池における制限反応は、一般に、陰極で発生する酸素還元反応である。酸素還元反応のための大きな過電圧は、表面の酸化白金の存在に起因する触媒表面の毒作用に起因して見られる。燃料電池における酸素還元反応のための代替の触媒を特定するために、より多くの研究がなされている。燃料電池における代替の陰極触媒として、パラジウムおよびパラジウム合金に関心が示されている。パラジウムは、白金よりも強く酸素に結合し、したがって、より効果の低い酸素還元触媒であるが、反応に関してなお相対的に高い活性を有し、白金よりも安価である。したがって、ORRに用いられる触媒の費用を潜在的に低減することができる。他の金属をパラジウムと合金して、酸素還元反応に関するパラジウムの活性を増大させる試みがされている。
【0007】
パラジウムとともにコバルトを含む合金は、酸素還元反応に関するパラジウムの活性を改善することが示されている(例えば、Fernandez,J.L.,D.A.Walsh,and A.J.Bard,Journal of the American Chemical Society,2004.127(1):p.357−365)。コバルトは、酸素と優先的に結合および解離し、還元プロセスを行なうためにパラジウム上をより自由な表面部位にしておくことにより、パラジウムの活性を高めることが示唆されている。しかしながら、二元合金としてのパラジウムコバルトは、燃料電池の操作条件下で特に安定でないこと、および、第三の合金元素の追加により安定性が高められることも示されている。燃料電池環境で陰極に用いられる合金に安定性を追加する様々な元素が同定されている(WO2007042841におけるタングステンを含む)。
【0008】
水素酸化反応は燃料電池において制限反応ではないので、陽極における白金触媒のローディングを著しく減少させることができる。したがって、水素酸化反応に関する代替の触媒の発見にはあまり焦点が置かれていなかった(陰極触媒と比べて陽極触媒の費用はより低いことによる)。しかしながら、燃料流内の汚染物質(一酸化炭素など)による白金表面の毒作用を低減するために、他の金属と白金の合金に焦点が置かれている。白金−ルテニウム合金が現在のところ、PEM燃料電池における選択の標準的な陽極触媒である。
【0009】
一部の研究(例えば、Pattabiraman,R.,Applied Catalysis A:General,1997.153(1−2):p.9−20)は、陽極触媒としてパラジウムに焦点を置いているが、パラジウムは、白金よりも強く水素に結合し、その構造中に水素を吸収することもできる。したがって、陽極触媒がPEM燃料電池において作動しなければならない電位(potential)においては、水素吸収のせいでパラジウム格子が受ける膨張および収縮に起因して、パラジウムは安定しにくい。
【0010】
以下に記載のように、様々なパラジウム合金触媒が、水素酸化または水素発生触媒として示唆されている。水素発生/酸化反応は非常に可逆的であるので、触媒が水素発生に関して活性である場合は、一般に、水素酸化反応に関して活性であることが示されている(例えばAl−Odail,F.A.,A.Anastasopoulos,and B.E.Hayden,Physical Chemistry Chemical Physics,2010.12(37):p.11398−11406)。
【0011】
「Norskov et al」および「Greeley et al」は、水素に強く結合する金属が水素に弱く結合する金属と合金されると、その合金は、2つの元の金属に勝る水素発生に関する活性を有することを示唆している。したがって、文献において水素発生または水素酸化触媒に関して考察されるパラジウム合金の多くが、Norskovらが水素とより弱い相互作用を有すると示唆している金属(例えばAu,Rh,Pt,BiまたはIr)とパラジウムを合金していることは、驚くべきことではない。Pdの合金およびこれらの金属は、以下の論文および特許に記載される:
【0012】
Schmidt,T.J.,et al..Journal of Electroanalytical Chemistry,2001.501(1−2):p.132−140.
Al−Odail,F.,A.Anastasopoulos,and B.Hayden,Topics in Catalysis,2011.54(1−4):p.77−82. Al−Odail,F.A.,A. Anastasopoulos,and B.E.Hayden,Physical Chemistry Chemical Physics,2010.12(37):p.11398−11406.
Bonnefont,A.,et al.,Catalysis Today,2013.202(0):p.70−78.
Gibbs,C.,F.Liu,and D.Papageorgopoulos,GB2481309 A,2011.
Hayden,B.E.and A.Anastasopoulos,GB2478981B, 2012.
Lukaszewski,M.,K.Hubkowska,and A.Czerwinski,Physical Chemistry Chemical Physics,2010.12(43):p.14567−14572.
Schmidt,T.J.,et al.,Electrochimica Acta,2003.48(25−26):p.3823−3828.
Simonov,A.N.,et al.,Electrochimica Acta,2012.76(0):p.344−353.
Alcaide,F.,et al.,International Journal of Hydrogen Energy,2010.35(20):p.11634−11641.
【0013】
読者は、HORおよびORRの両方に関するパラジウムに基づく電解触媒における最近の発展を記載し上述の多くの合金について言及するShao,M.,Journal of Power Sources,2011.196(5):p.2433−2444にも興味を持つであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
この背景に対し、本発明の第一の態様は、Pdおよび少なくとも2つの他の遷移金属を含む、燃料電池の陽極のための触媒を提供し、その少なくとも1つは、少なくともPdと同じくらい強く水素および/または一酸化炭素に結合する。少なくとも2つの「他の」遷移金属は、その2つの他の遷移金属はPdではなく、互いに同一でもないことを要することが理解されよう。
【0015】
好ましくは、前記の少なくとも2つの他の遷移金属のうちの少なくとも1つは、少なくともPdと同じくらい強く水素に結合する。あるいは、前記の少なくとも2つの他の遷移金属のうちの少なくとも1つは、少なくともPdと同じくらい強く一酸化炭素に結合する。第三の代替では、前記の少なくとも2つの他の遷移金属のうちの少なくとも1つは、少なくともPdと同じくらい強く一酸化炭素および水素に結合する。
【0016】
より好ましくは、前記の他の遷移金属の少なくとも1つは、水素および/または一酸化炭素にPdよりも強く結合する。
【0017】
好ましくは、前記の少なくとも2つの他の遷移金属のうちの少なくとも1つは、水素にPdよりも強く結合する。あるいは、前記の少なくとも2つの他の遷移金属のうちの少なくとも1つは、一酸化炭素にPdよりも強く結合する。第三の代替では、前記の少なくとも2つの他の遷移金属のうちの少なくとも1つは、一酸化炭素および水素にPdよりも強く結合する。
【0018】
驚くべきことに、そのような触媒(ORRに関して前に、例えばWO2007042841において提唱されているが、反応中間体に最適な結合エネルギーを獲得するために、より弱く水素または一酸化炭素に結合する金属とPdを合金するHOR触媒を得ることに関して、慣習に逆らう)は、HORに関して良い活性を有し、Pd触媒による水素吸収の問題を克服することが見いだされている。
【0019】
好ましくは、前記の少なくとも2つの他の遷移金属の2つは、水素および/または一酸化炭素にPdよりも強く結合する。明らかに、この「および/または」という形式(formulation)は、以下のいずれかに限定することができる:(i)前記の少なくとも2つの他の遷移金属の2つが、水素にPdよりも強く結合する;(ii)前記の少なくとも2つの他の遷移金属の2つが、一酸化炭素にPdよりも強く結合する;または、(iii)前記の少なくとも他の2つの遷移金属の2つが、一酸化炭素および水素にPdよりも強く結合する。
【0020】
水素および一酸化炭素の結合の相対的強度を判定する方法は、当技術分野でよく知られている。好ましい実施態様では、本発明に係る相対的な結合強度は、Toyoshima and Somorjai(I.Toyoshima and G.A.Somorjai,Catalysis Rev.−Sci.Eng.19(1979)105)の方法を用いて実験的に測定してよい。代替の実施態様では、Sandersonにより開発され、K.W.Frese,Surface Science.182(1987)85−97に示される値を得るためにKarl W Frese Jr.により用いられた、Polar Covelance法を用いてよい。最も好ましくは、水素結合の相対的な強度は、「Norskovら」の表1に示されるとおりである。
【0021】
水素および/またはCOにPdよりも強く結合する前記の2つの他の遷移金属の1つの好ましい定義は、COに関する親和性に基づく。Christoffersenら(Christoffersen,E.,et al.,Journal of Catalysis,2001.199(1):p.123−131)は、一般に、COに関する結合エネルギーは、水素に関する結合エネルギーに従うこと、および、一般に、周期表の左にいけばいくほど、COとの相互作用が強いことを示唆している。したがって、パラジウムよりも強くCOに結合する遷移金属は、上述と同一の金属(それらは全てPdの左であり、すなわち、3〜9族に属する)、および、周期表でPdの左の任意の他の遷移金属であると予想することができる。
【0022】
これらの定義に基づき、遷移金属の特定の好ましい族を定義することができる。CO結合が周期表の左に向かって増大する傾向に基づく最も単純な定義は、周期表でパラジウムの左の全ての遷移金属からなる他の金属に関して好ましい族である。別の好ましい族は、4族から9族の全ての金属である。別の好ましい族は、マンガンおよびテクネチウム以外の、4族から9族の全ての遷移金属である。より好ましい族は、Mn、Tc、OsおよびIr以外の、4族から9族の遷移金属である。さらにより好ましいのは、Mn、Tc、Os、Irおよび他の2つの白金族金属、RuおよびRh以外の、4族から9族の遷移金属である。RuおよびRhは、Pdよりも強くCOに結合し、そして、Freseは、Ruは水素にもより強く結合すると言及するが、それらは両方とも高価であり、標準的なPt/Ru陽極触媒に対してより安価な代替を提供する本発明の目的を考慮すれば、費用、および有用性を考慮すべきである。したがって、白金族とかなり異なる特性を有し、より強く水素および/または一酸化炭素に結合する、好ましい金属の族は、請求項6および7に示される。最も好ましいのはCoおよびWである。
【0023】
HORに関する触媒としての良好な活性の驚くべき効果および非合金Pdの吸収問題の克服に加えて、Pdよりも強くCOに結合する金属を含むことは、水素燃料流において一酸化炭素不純物の改善された耐性をもたらすはずである。
【0024】
好ましくは、触媒は、Pdおよび2つの他の遷移金属から本質的になるが、そのような三元触媒に加えて、特許請求の範囲に記載される特性を含む四元触媒、および5以上の金属を含む合金さえ、本発明により構想される。
【0025】
さらに好ましい本発明の特性、例えば、遷移金属の特に望ましい組み合わせは、従属請求項に示される。
【0026】
本発明の第二の態様では、基質と、Pdおよび少なくとも2つの他の遷移金属(その少なくとも1つは、少なくともPdと同じくらい強く水素および/または一酸化炭素に結合する)を含む触媒とを含む、燃料電池の陽極が提供される。好ましくは、触媒は、従属請求項に定義されるとおりである。
【0027】
好ましくは、陽極は、水素酸化燃料電池の陽極である。本発明の触媒は、メタノールまたはギ酸などを酸化するのとは対照的に、燃料として水素を酸化するのに特に適していると考えられる。
【0028】
本発明の第三の態様では、基質と、Pdおよび少なくとも2つの他の遷移金属(その少なくとも1つは、少なくともPdと同じくらい強く水素および/または一酸化炭素に結合する)を含む触媒とを含む陽極;陰極;電解質;燃料供給;および、酸化剤の供給を含む、燃料電池を提供する。好ましくは、燃料は水素ガスであり、好ましくは、電解質は高分子電解質膜を含む。
【0029】
本発明の第四の態様では、Pdおよび少なくとも2つの他の遷移金属(その少なくとも1つは、少なくともPdと同じくらい強く水素および/または一酸化炭素に結合し、場合により支持体上に支持される)を含む触媒を、導電性の基質に適用するステップを含む、陽極の製造方法を提供する。
【0030】
本発明の第五の態様は、燃料電池での燃料の酸化のための、Pdおよび少なくとも2つの他の遷移金属(その少なくとも1つは、少なくともPdと同じくらい強く水素および/または一酸化炭素に結合する)を含む触媒の使用を提供する。
【0031】
好ましくは、その使用は、上記に示した燃料電池での水素の酸化のためである。
【0032】
本発明の第六の態様は、陽極の製造での、Pdおよび少なくとも2つの他の遷移金属(その少なくとも1つは、少なくともPdと同じくらい強く水素および/または一酸化炭素に結合する)を含む触媒の使用を提供する。好ましくは、その使用は、上記に示した陽極の製造での使用であり;より好ましくは、陽極は、上記に示した燃料電池のための陽極である。
【0033】
本発明の第七の態様は、燃料電池の陽極に燃料を供給するステップを含む、燃料電池において燃料を酸化する方法を提供し、ここで陽極は、Pdおよび少なくとも2つの他の遷移金属(その少なくとも1つは、少なくともPdと同じくらい強く水素および/または一酸化炭素に結合する)を含む触媒を含む。好ましくは、燃料は水素である。より好ましくは、その方法は電気を発生する。
【0034】
ここで本発明を図に関して詳細に説明する:
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】インク:C上70wt.%のPt、C上40wt.%のPdCoW、および、Arパージされた0.1M HClO中の(20mV s−1)、Pdブラックを有するガラス状カーボンRDE電極に関する、RHEに対しておよそ−0.025Vと0.5〜0.6Vとの間の、サイクリックボルタモグラム(CV)を示す(全ての電位はRHEに対する)。
図1a図1の同一プロットを示すが、C上70wt.%のPtおよびC上40wt.%のPdCoWのみを示す。
図2】各触媒のインクを有するガラス状カーボンRDE電極に関する、Arパージされた0.1M HClO中の(20mV s−1)、図1と同一領域でのCVのポジティブゴーイングスイープを示し、スイープは、400rpmで回転して、および回転せずに、比較される。
図3】C上70wt.%のPt、C上40wt.%のPdCoW、および、H飽和0.1M HClO中のPdブラックのインクを有するガラス状カーボンRDE電極に関する、サイクリックボルタンメトリー実験のポジティブゴーイングスイープを示す(20mV s−1、400rpm)。
図3a】電流が最初に正になるところ(すなわち、水素酸化が起き始めるとき)の図3における領域の拡大図である。
図4】水素酸化実験を行なった前後の、C上40wt.%のPdCoWおよびArパージされた0.1M HClO中の(100mV s−1)、Pdブラックのインクを有する電極に関する、RHEに対しておよそ0〜1V間のサイクリックボルタモグラムを示す。
図5】陽極(0.31mgのPdCoW合金cm−2のローディングを有する)での40wt.%のPdCoW触媒、および、陰極での標準的なPt触媒に関して、様々な圧力(説明文に示す圧力)で80℃において、膜電極接合体(MEA)に関してH−Oにおいて得られる分極プロットを示す。0.3mg cm−2の陽極Ptローディングを有するPt/Cの陽極触媒を含むMEAに関する分極曲線(iR補正)も比較のために示す(9psiの背圧)。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明およびその有効性は、以下の実施例にさらに説明される。
【0037】
本研究において、3つの異なる触媒が、研究および比較されている。Pdブラックパウダーの第一の比較例、カーボンパウダー上70wt.%(重量%)のPtの第二の比較例、および、カーボンパウダー上の40wt.%のPdCoWからなる本発明の実施例が存在する。PdCoW触媒は、50at.%(原子%)のPd、43at.%のCo、および、7at.%のWの組成物を有する。
【0038】
PdブラックパウダーはAldrichから得て、カーボン上の白金はAlfa Aesarから得た。カーボン上のPdCoWは、様々のよく知られた技術に従って合成することができるので、詳細はここに提供しない。WO2007042841;Fernandez,J.L.,D.A.Walsh,and A.J.Bard,.Journal of the American Chemical Society,2004.127(1):p.357−365;および、Raghuveer,V.,A.Manthiram, and A.J. Bard, The Journal of Physical Chemistry B,2005.109(48):p.22909−22912は、それらの全てが参照により援用され、そのような触媒の生産についての指示を提供する。
【0039】
7mlの脱イオン水および80μlの5%ナフィオン溶液と混合することにより、少量の各触媒(40mg)をインクにした。混合物を超音波浴中で2時間超音波処理した。5μlのインクを、研磨したばかりのガラス状カーボン回転円盤電極(RDE)上にピペットした(0.5cmの直径)。インクの沈着の前に、研磨パッドおよび2つの異なるグレードのアルミナ懸濁液(0.3および0.05μmの直径のアルミナ粒子)を用いて電極を研磨した。3分の研磨をはじめに0.3μmのアルミナ上で行なって任意の以前の物質を除去し、それから、0.3μmのアルミナを用いて別のパッド上でさらに3分、そして最後に0.05μmのアルミナ上で3分の研磨を行なった。インクをそのままにして一晩乾燥させ、それから、電極を回転軸に取り付け、分析のために3区画電気化学セル中に入れた。白金ガーゼ電極を対電極として用い、市販のMercury−Mercury Sulphate照合電極を用いた。全ての電位は変換されていて、可逆水素電極(RHE)に対して見積もられる。全ての実験は、0.1M HClO4(aq)中で行なった。社内で製造されたポテンシオスタットを用いて、電極を回転して、および回転せずに、サイクリックボルタンメトリー実験を行なった。
【0040】
各サンプルについて行なった電気化学スクリーニング手順を以下の表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
図1は、パラジウムブラックおよびカーボン上70wt.%のPtの比較例、および、水素吸着/脱着および水素発生/酸化領域(すなわち、RHEに対しておよそ−0.025〜0.6Vの間)での、Arパージされた0.1M HClO中の(20mV s−1)、カーボン上40wt.%のPdCoWの実施例での、電極に関するサイクリックボルタモグラム(CV)を示す。
【0043】
RHEに対しておよそ0〜0.4Vの間では、全ての触媒が、水素の吸着(還元電流−負)、および、水素の脱着(酸化電流−正)に関する特性を示す。全ての触媒について、RHEに対しておよそ0Vよりも下では、水素発生の開始は、急な開始の還元電流として見ることができ、これは図1aにおいてPtおよびPdCoW触媒に関して、より明確に見ることができる(図1aは、得られる電流に合わせて調整されているため)。Pdブラック触媒については、より大きな還元電流が、RHEに対して0Vよりも下で見られ、これは、水素発生だけでなくパラジウムのバルク構造中への水素の吸収にも起因すると考えられる。また、Pdブラック触媒は、他の触媒よりも潜在的に大きな表面積の活性触媒も有し、より大きな電流をもたらす。逆スイープ(reverse sweep)で見られる大きな酸化ピークは、表面から発生した水素の酸化だけでなく、パラジウムのバルク内に吸収された水素の酸化にも起因する。PtおよびPdCoW触媒については、RHEに対して0Vの真上に酸化ピークが見られ、これは、電極表面で発生した水素の酸化に起因する。PdCoW触媒の特性がPt触媒において見られたものと非常に似ていること、および、水素の吸収および吸収された水素の酸化に関するピークが存在するように見えないことは、重大な水素吸収はパラジウム合金内で生じないことを示唆すると考えることができる。上述したように、吸着とは対照的に吸収は、触媒にダメージを与える大きなボリューム変化をもたらす。したがって、吸収の不存在は有利である。
【0044】
図2は、Arパージされた0.1M HClO中で電極を回転して、および回転せずに、各触媒に関して図1と同じ領域において、CVのポジティブゴーイングスイープを示す。白金電極(比較例)に関して、電極が回転されると、見られる電流は低減し、電極表面で発生した水素の酸化に関する0Vの真上のピークはもはや存在しない。これは、発生した水素が、回転中に電極から離れることを示唆する。見られる残りの電流は、電極表面上に吸着された水素の脱着に起因する。
【0045】
同様の効果が本発明のPdCoW触媒でも見られ、これは、電極が水素を著しく吸収しないことを確証する。対照的に、Pdブラック電極(比較例)はかなり異なる特性を有する。電極が回転されると、見られる電流も他の2つの電極と同様に低減し;これは、回転による、電極表面上またはその付近に発生した水素の除去に起因すると推測される。しかしながら、大きな酸化電流がなお、物質のバルクで吸収された水素の酸化に起因して見られる。
【0046】
Pdが、従来技術においてAu、Pt、RhまたはPtおよびAuと合金されていると、より少ない水素吸収、および、吸収、脱着プロセスのより速いカイネティクスが見られている(Lukaszewski,M.,K.Hubkowska,and A.Czerwinski,Physical Chemistry Chemical Physics,2010.12(43):p.14567−14572)。この効果は、合金に起因する格子構造の変化と関連しているだけでなく、電子効果に起因する(すなわち、水素との、より低い結合エネルギー−選択される全ての合金元素は、Pdよりも弱く水素に結合する)。しかしながら、CoおよびWの両方とも、少なくともPdと同じくらい強く水素に結合し、したがって、ここで驚くべき結果は、合金上のパラジウムの格子構造の変化により説明し得て、それは水素化物を形成させ得ない。
【0047】
図3は、H飽和0.1M HClO中の(20mV s−1、400rpm)、3つの異なる触媒(すなわち、パラジウムブラックおよびカーボン上70wt.%のPtの比較例、および、カーボン上40wt.%のPdCoWの実施例)に関するサイクリックボルタンメトリー実験のポジティブゴーイングスイープを示す。図3aは、電流が最初に正になるところ(すなわち、水素酸化が起き始めるとき)の領域の拡大図である。RHEに対しておよそ0.4Vよりも上では、全ての触媒は平らな電流プロファイルを示す。この領域では、水素酸化反応は、溶液から電極の表面への水素の輸送により制限される。異なる電極に関するこの領域での電流間の違いは、主に、インク沈着のわずかに異なる幾何学的表面積に起因すると考えられる。インク沈着は、電極表面の領域全体を覆わず、したがって、異なる形状およびサイズの沈着を形成している。表面に到達する水素は全てこの電位領域に到達し、したがって、電流の違いは、特定の触媒の任意の効果よりむしろ、インク沈着のサイズの違いにより説明することができる。
【0048】
図3aのプロットは、どの触媒がより活性であるかについて、より多くの情報を与える。RHEに対して0〜0.005Vの間の非常に低い電位では、Pt(比較例)およびPdCoW(実施例)の触媒トレースは、非常に似た勾配を示すが、Pdブラック(比較例)触媒は、わずかにより急でない開始勾配を有する。これは、PdブラックよりもPtおよびPdCoW触媒のわずかにより速い反応を示唆し得るが、違いはほんの少しであり、水素酸化反応は非常に早く生じるので、これらの違いは定量化が困難である。3つの触媒間の最も顕著な違いは、物質のバルクから吸収した水素の酸化に起因する、Pdブラック触媒に見られる大きな酸化ピークである。
【0049】
図4は、PdCoW触媒(本発明)およびPdブラック触媒(比較例)に関して、水素酸化実験が行われた前後の、Arパージされた0.1M HClO中の(100mV s−1)、サイクリックボルタンメトリー間の比較を示す。全てのボルタモグラムは、水素の吸着および脱着(RHEに対しておよそ0〜0.4Vの間)およびパラジウムオキシドの形成および還元(reduction)(RHEに対しておよそ0.6〜1Vの間)に関する特性を示す。水素の吸着および脱着の特性における電荷(charge)は、触媒のパラジウム表面積の大まかな示度を与える。PdCoW触媒でのこれらの特性における電荷は、水素酸化実験が行われた後、わずかに減少している。これは、パラジウム表面積のわずかな減少を示唆し、それは、物質からのパラジウムのわずかな喪失に起因し得て、または、物質の再構成に起因し得る。しかしながら、これらの変化は、Pdブラック触媒に関してさらにより著しく、パラジウム表面積の著しい変化を示唆する。これはおそらく、水素の吸収および脱着による構造の膨張および収縮に起因する、実験中の物質の著しい喪失に起因する。
【0050】
陰極での標準的なPt触媒、および、陽極でのカーボン上に支持された40wt.%のPdCoW合金(25wt.%のナフィオンを含むインクを有する、0.31mg(合金)cm−2の陽極ローディングを有する)を用いて、MEA(膜電極接合体)を生産した。
【0051】
MEAは、80℃および7psi、15psi、25psiおよび30psiの圧力で、陽極および陰極においてそれぞれ水素および酸素供給(λH=1.5、λO=2.5)を用いて行なった。活性電極領域は50cmであり、用いた膜は標準的なIRD高分子電解質膜(PFSA 30μm)であった。図5は、最適化されていないMEAによる分極曲線を示し、全ての圧力において1V付近の見込みのある開路電位を示す。これは、燃料電池スタック中への取り込みに適切な完全な電池(complete cell)における陽極での触媒の使用の直接的な証拠を提供するので、この結果は、触媒が水素燃料電池に関する陽極触媒として実際に適切であることの例証を提供する。
【0052】
また、図5は、比較のために、陽極および陰極の両方においてカーボン触媒上に標準的な白金を含む分極曲線も示す(30wt.%のナフィオンを含むインクを有する0.3mgのPt cm−2の陽極ローディングを有する。9psiで操作、他の条件は全て上記のとおり)。この標準的な触媒に関して示されるデータは、iR補正されている。Pd−合金陽極触媒に関して得られたデータと比較して、同様の開路電位がPt陽極触媒に関して見られ、2つの陽極触媒に関する同様の活性を示唆する。より高い電流密度でMEAを含むPd−合金触媒陽極に関する性能の喪失は、内部抵抗およびマストランスポート制限に起因する可能性がある。これらの因子は、触媒インクの最適化により改善することができる可能性がある。
【0053】
上記に示した結果は、本発明に係る触媒が水素酸化反応に関して良好な活性を有することを明らかにする。その触媒は、著しく水素を吸収せず、したがって、水素酸化に必要な電位で大きなボリューム変化を受けないという点で、純粋なパラジウム触媒に勝る利点を有することが示されている。この利点、および、実施例のものと同様の触媒は燃料電池で見られる広範囲の電位にわたって安定であることがすでに示されているという事実(WO2007042841)は、これらの触媒が、燃料電池(特にPEM燃料電池および水素酸化反応)での陽極のための白金電極の、より安い代替としての適用を見いだすことができることを示唆する。
【0054】
触媒は効果的な酸素還元触媒として以前に示されているが(WO2007042841)、良好な水素発生(したがって水素酸化)触媒を生産するためには、パラジウムを、より弱く水素に結合する元素と合金すべきであることが示唆されている。CoおよびWは両方とも、少なくともパラジウムと同じくらい強く水素に結合し、したがって、触媒が活性を現わして水素吸収を減衰させるという驚くべき効果がある。パラジウムによる水素吸収の低減は、合金元素によるパラジウムの格子構造の変化に起因し得ると考えられる。
【0055】
電流の研究に示される結果から、パラジウムを、少なくともPdと同じくらい強く水素およびCOに結合する他の元素と合金して、有望な水素酸化(および発生)触媒を提供することができることが期待され得る。これは、制限されないが、燃料電池環境において安定であることが既に示されまたは示唆されている三元パラジウム合金、例えば、PdCoAu、PdCoMo、PdCoCr、PdFeCrを含んでよい。したがって、本発明は、上記に示す実施例の範囲に制限されないが、以下の特許請求の範囲を参照することにより決定すべきである。
【0056】
本発明に係る触媒は、燃料電池の陽極で使用される。
【0057】
PEM燃料電池の詳細な構造は、そのような技術に精通する者によく知られている。EG&G Technical Services,Inc.による燃料電池ハンドブック(第7版)は、National Technical Information Service,U.S.Department of Commerce,5285 Port Royal Road,Springfield,VA 22161,U.S.A.から公衆に利用可能であり、参照により援用され、当分野にあまり精通しない者にとって有用な情報を提供し;セクション3、高分子電解質燃料電池が特に関連がある。典型的に、燃料電池は、陽極、陰極、陽極と陰極との間のプロトン交換膜、および、水素含有燃料の触媒酸化のためおよび酸素還元のための触媒を含む。
【0058】
典型的な水素燃料電池は、水素電極(燃料電極または陽極)および空気電極(酸化電極または陰極)を有する。電極間では、プロトン交換膜が電解質としての役割を果たす。プロトン交換膜、陽極、および陰極は、一般に、一体に組み込まれていて、したがって、電極とプロトン交換膜との間に接触抵抗がない。電気は、陽極に対して開かれた水素燃料チャンバー中に水素を導入することによる水素酸化により生産され、一方で酸素は、好ましくは空気として、陰極に対して開かれた空気チャンバー中に導入される。水素は陽極で酸化されて水素イオン(陽子)(PEMを通る)および電子を産生する。電流は、電極と接触している電流コレクタによって燃料電池から外部回路へ引き出される。水素イオンは、酸性プロトン交換膜を通って移行し、陰極で外部回路からの電子および酸素と反応して、水を形成する。
【0059】
触媒は、制限されないが、カーボンなどの市販の支持体上に支持されることができ;カーボン支持体を用いることにより触媒の表面積が非常に増大し、そして、カーボンは燃料電池の操作条件下で十分な電子伝導性および化学安定性を有するため、カーボンに支持された触媒が燃料電池に通常用いられる。代替の支持体は、金属酸化物などを含む。カーボン支持体上の分散した合金の調製は、多くの方法で達成され得る。例えば、合金触媒は、構成金属の化合物の混合物の還元、または、カーボンに支持されたPdの加熱処理によって形成され得て、ここで、他の金属塩は、表面上に沈殿または吸着される。あるいは、合金粒子は、物理的沈着、例えばスパッタリング、物理的蒸発、および、化学的蒸着により、カーボン支持体上に形成し得る。
【0060】
燃料電池は、プロトン交換膜(例えば、Du Pontより入手可能なナフィオン(登録商標))などの電解質を含み、合金触媒は、電流コレクタとの接触のために、プロトン交換膜の表面上に直接沈着され得る。あるいは、合金触媒は、陽極支持体の表面上に、または、膜と接触して置かれるカーボン構造のような多孔質性の陽極支持体のポア内に、沈着され得る。
図1
図1a
図2
図3
図3a
図4
図5