(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6734501
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】マイクロニードル用アプリケータ
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20200728BHJP
【FI】
A61M37/00 510
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-524259(P2020-524259)
(86)(22)【出願日】2020年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2020010070
【審査請求日】2020年5月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176626
【氏名又は名称】三島光産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】中 利明
(72)【発明者】
【氏名】松尾 正昭
(72)【発明者】
【氏名】東島 敦弘
(72)【発明者】
【氏名】田代 康典
【審査官】
北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−539010(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第109529187(CN,A)
【文献】
国際公開第2017/179979(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0345638(US,A1)
【文献】
特開2018−191702(JP,A)
【文献】
特表2016−517707(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0235958(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2010−0064669(KR,A)
【文献】
特開2019−58829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−29/04、
35/00−36/08、
37/00、
99/00
A61F 2/82−2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロニードルアレイを皮膚に押付ける際に用いられるマイクロニードル用アプリケータであって、
筒状のケースと、先側が該ケースの基側内部に挿通され、基側が前記ケースの基側から突出して、該ケースの軸方向に摺動可能に保持されたトリガー部材と、基側が前記ケースの先側内部に挿通され、先側が前記ケースの先側から突出して、該ケースの軸方向に摺動可能に保持されたノッカーピンと、前記ケースの内部で前記トリガー部材と前記ノッカーピンとの間に収容され、前記ケースの軸方向に摺動可能なハンマー部材と、前記トリガー部材の先側と前記ハンマー部材の基側との間に配置された第1のコイルバネと、前記ハンマー部材の先側と前記ノッカーピンの基側との間に配置された第2のコイルバネとを有し、前記ノッカーピンの先端部に装着される前記マイクロニードルアレイ又は前記皮膚の表面に予め載置される前記マイクロニードルアレイを前記皮膚に押付けることを特徴とするマイクロニードル用アプリケータ。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記トリガー部材は、先側が開口し、前記第1のコイルバネが収容される筒状部を有し、前記ハンマー部材は、前記第1のコイルバネの先側に内挿される基側軸部と、該基側軸部の先側で該ハンマー部材の先側に向かって拡径したテーパ部と、該テーパ部の先側に形成された胴部と、該胴部の先側で前記第2のコイルバネに内挿される先側軸部とを有することを特徴とするマイクロニードル用アプリケータ。
【請求項3】
請求項2記載のマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記ケースの内部に、前記ハンマー部材の先側と前記ノッカーピンの基側との間を仕切る仕切り部が設けられ、該仕切り部の中央部に、前記先側軸部が進退可能に挿通される貫通孔が形成されていることを特徴とするマイクロニードル用アプリケータ。
【請求項4】
請求項3記載のマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記ハンマー部材の軸心は、初期状態で前記ケースの軸心に対して傾斜しており、使用時に、前記トリガー部材が、前記ケースの先側に向かって移動し、前記第1のコイルバネを介して前記ハンマー部材を押圧した際に、該ハンマー部材の前記先側軸部の先側端部が、前記貫通孔の基側周縁で前記仕切り部に係合して前記第1のコイルバネが圧縮され、さらに前記トリガー部材が前記ケースの先側に移動し、前記筒状部の先側の開口周縁が前記ハンマー部材の前記テーパ部に係合して、該ハンマー部材の軸心が前記ケースの軸心と一致することにより、前記第1のコイルバネが伸張すると共に、前記胴部と前記仕切り部との間で前記第2のコイルバネが圧縮され、前記先側軸部が、前記貫通孔に進入して前記ノッカーピンに打撃を加えることを特徴とするマイクロニードル用アプリケータ。
【請求項5】
請求項4記載のマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記ハンマー部材は、前記胴部の長手方向の途中で二分割されていることを特徴とするマイクロニードル用アプリケータ。
【請求項6】
請求項4又は5記載のマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記ハンマー部材は、前記先側軸部の基側外周で前記第2のコイルバネの基側端部に当接するバネ受面を有し、該バネ受面は、該ハンマー部材の軸方向と直交する面に対して傾斜していることを特徴とするマイクロニードル用アプリケータ。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1記載のマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記ケースは、前記仕切り部の先側に形成されたノッカーピン保持部を有し、前記ノッカーピンは、前記ノッカーピン保持部に摺動可能に保持される基端部と、該基端部の先側に該基端部の外径より小径に形成され、先側が前記ケースの先側から突出する軸部とを有することを特徴とするマイクロニードル用アプリケータ。
【請求項8】
請求項7記載のマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記ノッカーピンの前記軸部の先端部には、前記マイクロニードルアレイが装着されるアダプタ部材が着脱可能に取付けられることを特徴とするマイクロニードル用アプリケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療目的又は美容目的で、従来使用されている注射器の代わりに、マイクロニードルアレイを使用して体内への投薬を行う際に用いられるマイクロニードル用アプリケータに関する。
【背景技術】
【0002】
今後、少子高齢化が進むにつれ、医療の果たす役割は増大し、病院及び医師等の不足を招くものと考えられる。
医療行為には、外科的治療の他に投薬治療があり、投薬治療の中では、注射器による体内投薬が大きな比率を占める。この注射器による投薬は、通常、医師や看護師のような有資格者が病院で施行するが、糖尿病に対するインシュリン投与のように、中には患者自身が在宅で施行することを認められているものもある。
そこで、医師の処方に基づいて在宅で投薬を行う在宅投薬を普及させることができれば、患者の通院頻度が低くなり、医師及び患者(特に老齢者や勤労者)の負担を軽減することができるため、このような在宅投薬への関心が高まっている。特に、病院不足や医師不足の問題を抱える過疎地では、在宅投薬に対するニーズは大きい。
【0003】
しかし、注射器による投薬には、皮下や血管に直接投薬できるという長所がある一方で、痛みを伴い、投薬回数の増加と共に皮膚が傷付いたり、腫れたりするという欠点がある。
そこで、注射器の代わりに、先端が尖ったマイクロニードル(微小針)を平板上に複数有する樹脂製のマイクロニードルアレイを使用することが考えられている。このマイクロニードルアレイの特徴は、マイクロニードルが、皮下の無痛点の深さに到達可能な長さを有することにより、無痛で投薬を行うことができ、また、パッチ式に表皮に貼り当てるだけで患者自身が手軽に投薬できる点にあり、患者の負担を大幅に軽減することができる。そして、このようなマイクロニードルアレイは、医療目的だけでなく、美容目的でも使用が期待される。
以上のことから、マイクロニードルアレイの普及を目的として、マイクロニードルアレイを皮膚に押し付ける際に用いられるアプリケータが検討されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−191702号公報
【特許文献2】特開2018−102680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のアプリケータは、筒状のハウジングの側部に設けられたボタン機構をハウジングの半径方向(ハウジングの軸方向と直交方向)に押圧することにより、ハウジングの内部に保持されたプランジャーのロック状態を解除し、プランジャーを弾性部材で付勢してハウジングの軸方向に摺動させ、プランジャーの先端に取付けた押圧部材で粘着テープとマイクロニードルアレイを押圧して、皮膚に押付けるという複雑な動作を行うものである。このため、部品点数が多く、構造も複雑で、各部を初期状態(使用可能状態)に復帰させて、粘着テープ及びマイクロニードルアレイをそれぞれテープカットリッジ及びアレイカットリッジに取付けるにも手間がかかり、作業性に欠けるという問題がある。また、アプリケータ本体に対し、テープカットリッジ及びアレイカットリッジを着脱して使用するため、これらを紛失するおそれがあり、取扱い性に欠けるという問題もある。特許文献2のアプリケータは、作動ボタンを押し下げることにより、ピストンを周方向に回転させてピストンの係止状態(ロック)を解除し、さらにピストンをコイルばねによって付勢して軸方向に摺動させ、ピストンの先端(下端)に取付けたマイクロニードルデバイス(マイクロニードルアレイ)を皮膚に衝突させるという複雑な動作を行うものである。このため、部品点数が多く、各部品の形状及び全体構造も複雑で、動作の安定性及び作業性に欠けるという問題がある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、簡素な構造で部品点数が少なく、動作の安定性に優れ、故障も発生し難く、マイクロニードルによる穿刺を簡単かつ確実に行うことができる実用性及び機能性に優れたマイクロニードル用アプリケータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係るマイクロニードル用アプリケータは、マイクロニードルアレイを皮膚に押付ける際に用いられるマイクロニードル用アプリケータであって、
筒状のケースと、先側が該ケースの基側内部に挿通され、基側が前記ケースの基側から突出して、該ケースの軸方向に摺動可能に保持されたトリガー部材と、基側が前記ケースの先側内部に挿通され、先側が前記ケースの先側から突出して、該ケースの軸方向に摺動可能に保持されたノッカーピンと、前記ケースの内部で前記トリガー部材と前記ノッカーピンとの間に収容され、前記ケースの軸方向に摺動可能なハンマー部材と、前記トリガー部材の先側と前記ハンマー部材の基側との間に配置された第1のコイルバネと、前記ハンマー部材の先側と前記ノッカーピンの基側との間に配置された第2のコイルバネとを有し、前記ノッカーピンの先端部に装着される前記マイクロニードルアレイ又は前記皮膚の表面に予め載置される前記マイクロニードルアレイを前記皮膚に押付ける。
【0007】
本発明に係るマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記トリガー部材は、先側が開口し、前記第1のコイルバネが収容される筒状部を有し、前記ハンマー部材は、前記第1のコイルバネの先側に内挿される基側軸部と、該基側軸部の先側で該ハンマー部材の先側に向かって拡径したテーパ部と、該テーパ部の先側に形成された胴部と、該胴部の先側で前記第2のコイルバネに内挿される先側軸部とを有することができる。
【0008】
本発明に係るマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記ケースの内部に、前記ハンマー部材の先側と前記ノッカーピンの基側との間を仕切る仕切り部が設けられ、該仕切り部の中央部に、前記先側軸部が進退可能に挿通される貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0009】
本発明に係るマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記ハンマー部材の軸心は、初期状態で前記ケースの軸心に対して傾斜しており、使用時に、前記トリガー部材が、前記ケースの先側に向かって移動し、前記第1のコイルバネを介して前記ハンマー部材を押圧した際に、該ハンマー部材の前記先側軸部の先側端部が、前記貫通孔の基側周縁で前記仕切り部に係合して前記第1のコイルバネが圧縮され、さらに前記トリガー部材が前記ケースの先側に移動し、前記筒状部の先側の開口周縁が前記ハンマー部材の前記テーパ部に係合して、該ハンマー部材の軸心が前記ケースの軸心と一致することにより、前記第1のコイルバネが伸張すると共に、前記胴部と前記仕切り部との間で前記第2のコイルバネが圧縮され、前記先側軸部が、前記貫通孔に進入して前記ノッカーピンに打撃を加えることができる。
【0010】
本発明に係るマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記ハンマー部材は、前記胴部の長手方向の途中で二分割されていることが好ましい。
【0011】
本発明に係るマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記ハンマー部材は、前記先側軸部の基側外周で前記第2のコイルバネの基側端部に当接するバネ受面を有し、該バネ受面は、該ハンマー部材の軸方向と直交する面に対して傾斜していることが好ましい。
【0012】
本発明に係るマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記ケースは、前記仕切り部の先側に形成されたノッカーピン保持部を有し、前記ノッカーピンは、前記ノッカーピン保持部に摺動可能に保持される基端部と、該基端部の先側に該基端部の外径より小径に形成され、先側が前記ケースの先側から突出する軸部とを有するものでもよい。
【0013】
本発明に係るマイクロニードル用アプリケータにおいて、前記ノッカーピンの前記軸部の先端部には、前記マイクロニードルアレイが装着されるアダプタ部材が着脱可能に取付けられてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るマイクロニードル用アプリケータは、トリガー部材を押して第1、第2のコイルバネを圧縮することにより、ノッカーピンの先端部に装着されたマイクロニードルアレイ又は皮膚の表面に予め載置されたマイクロニードルアレイをノッカーピンで押圧して所定の力で皮膚に押付け、マイクロニードルによる穿刺や薬剤注入を行うので、簡素な構成で動作の安定性に優れると共に、第1のコイルバネと第2のコイルバネのバネ定数の組合せ(バランス)により、トリガー部材を押す力と穿刺速度(穿刺深さ)を容易に調整することができる。また、使用後は、圧縮された第2のコイルバネが伸張(復元)することにより、ハンマー部材及びトリガー部材がケースの基側に押し戻され、自動的に初期状態に復帰して、次の使用に備えることができる。
【0015】
トリガー部材が、先側が開口し、第1のコイルバネが収容される筒状部を有し、ハンマー部材が、第1のコイルバネの先側に内挿される基側軸部と、基側軸部の先側でハンマー部材の先側に向かって拡径したテーパ部と、テーパ部の先側に形成された胴部と、胴部の先側で第2のコイルバネに内挿される先側軸部とを有する場合、トリガー部材とハンマー部材との間及びハンマー部材とノッカーピンとの間で、第1のコイルバネ及び第2のコイルバネをそれぞれ確実に圧縮して、トリガー部材からの押圧力をノッカーピンに伝達することができる。
【0016】
ケースの内部に、ハンマー部材の先側とノッカーピンの基側との間を仕切る仕切り部が設けられ、仕切り部の中央部に、先側軸部が進退可能に挿通される貫通孔が形成されている場合、貫通孔で先側軸部を案内してハンマー部材(先側軸部)の先端を確実にノッカーピンの基側に押し当てることができ、動作の安定性に優れる。
【0017】
ハンマー部材の軸心が、初期状態でケースの軸心に対して傾斜しており、使用時に、トリガー部材が、ケースの先側に向かって移動し、第1のコイルバネを介してハンマー部材を押圧した際に、ハンマー部材の先側軸部の先側端部が、貫通孔の基側周縁で仕切り部に係合して第1のコイルバネが圧縮され、さらにトリガー部材がケースの先側に移動し、筒状部の先側の開口周縁がハンマー部材のテーパ部に係合して、ハンマー部材の軸心がケースの軸心と一致することにより、第1のコイルバネが伸張すると共に、胴部と仕切り部との間で第2のコイルバネが圧縮され、先側軸部が、貫通孔に進入してノッカーピンに打撃を加える場合、一旦、第1のコイルバネに蓄えた弾性エネルギーを瞬時にハンマー部材を介してノッカーピンに伝達し、ノッカーピンをケースの先側に向かって移動させて、マイクロニードルアレイを所定の力と速度で皮膚に押付けることができ、無痛で投薬を行うことができる。
【0018】
ハンマー部材が、胴部の長手方向の途中で二分割されている場合、先側軸部を含むハンマー部材の先側が、先側軸部の軸心回りに回転することができ、貫通孔の基側周縁で仕切り部に係合する先側端部の位置が随時移動(変化)するので、先側端部の特定位置が摩耗することを防止して、ハンマー部材の耐久性及び動作の安定性を向上させることができる。
【0019】
ハンマー部材が、先側軸部の基側外周で第2のコイルバネの基側端部に当接するバネ受面を有し、バネ受面が、ハンマー部材の軸方向と直交する面に対して傾斜している場合、第2のコイルバネで支持されるハンマー部材が自動的(強制的)に傾くので、マイクロニードル用アプリケータを初期状態に戻すために特別な作業を行う必要がなく、作業性に優れる。
【0020】
ケースが、仕切り部の先側に形成されたノッカーピン保持部を有し、ノッカーピンが、ノッカーピン保持部に摺動可能に保持される基端部と、基端部の先側に基端部の外径より小径に形成され、先側がケースの先側から突出する軸部とを有する場合、軸部をケースの先側から突出させた状態で、ノッカーピンの先端部に装着されるマイクロニードルアレイを目視で確認しながら皮膚に対する位置合せを行うことができる。
【0021】
ノッカーピンの軸部の先端部に、マイクロニードルアレイが装着されるアダプタ部材が着脱可能に取付けられている場合、アダプタ部材を交換するだけで、様々な種類(形態)のマイクロニードルアレイに対応することができ、汎用性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施例に係るマイクロニードル用アプリケータの構成を示す正断面図である。
【
図2】(A)〜(C)は同マイクロニードル用アプリケータの動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照して本発明を具体化した実施例について説明する。
図1及び
図2(A)〜(C)に示す本発明の一実施例に係るマイクロニードル用アプリケータ10は、マイクロニードルアレイ11を皮膚12に押付けて体内への投薬を行う際に用いられるものである。
マイクロニードル用アプリケータ10は、筒状(ここでは円筒状)のケース14を有している。そして、マイクロニードル用アプリケータ10は、先側がケース14の基側内部に挿通され、基側がケース14の基側から突出して、ケース14の軸方向に摺動可能に保持されたトリガー部材15を有する。また、マイクロニードル用アプリケータ10は、基側がケース14の先側内部に挿通され、先側がケース14の先側から突出して、ケース14の軸方向に摺動可能に保持され、先端部にマイクロニードルアレイ11が着脱可能に装着されるノッカーピン16を有する。さらに、マイクロニードル用アプリケータ10は、ケース14の内部でトリガー部材15とノッカーピン16との間に収容され、ケース14の軸方向に摺動可能なハンマー部材17を有しており、トリガー部材15の先側とハンマー部材17の基側との間には第1のコイルバネ18が配置され、ハンマー部材17の先側とノッカーピン16の基側との間には第2のコイルバネ19が配置されている。
【0024】
トリガー部材15は、先側が開口した筒状部20を有しており、この筒状部20に第1のコイルバネ18が収容されている。そして、筒状部20の基側に延設されたトリガー軸21がケース14の基側から突出しており、トリガー軸21の基端には、トリガー軸21よりも大径の押圧部21aが形成されている。
ハンマー部材17は、第1のコイルバネ18の先側に内挿される基側軸部22を有しており、基側軸部22の先側には、ハンマー部材17の先側に向かって拡径したテーパ部23が形成されている。そして、テーパ部23の先側には円柱状の胴部24が形成され、さらに胴部24の先側には、第2のコイルバネ19に内挿される先側軸部25が形成されている。
また、ケース14の内部には、ハンマー部材17の先側とノッカーピン16の基側との間を仕切る仕切り部27が設けられ、仕切り部27の中央部には、ハンマー部材17の先側軸部25が進退可能に挿通される貫通孔28が形成されている。
【0025】
ハンマー部材17は胴部24で最大径となるが、この胴部24の外径がケース14の内径より小さく、基側軸部22及び先側軸部25の外径もそれぞれ第1のコイルバネ18及び第2のコイルバネ19の内径より小さくなっている。そして、ハンマー部材17が、先側軸部25の基側外周で第2のコイルバネ19の基側端部に当接するバネ受面29を有し、バネ受面29が、ハンマー部材17の軸方向と直交する面に対して傾斜しているので、初期状態では、
図1に示すように、第2のコイルバネ19の基側端部がバネ受面29に当接し、第2のコイルバネ19の基側端部で支持されるハンマー部材17を確実かつ自動的(強制的)に傾斜させる(ハンマー部材17の軸心をケース14の軸心に対して傾斜させる)ことができる。なお、必ずしもハンマー部材のバネ受面を傾斜させなくてもよく、必要に応じて、マイクロニードル用アプリケータ10を振ったり、ケース14の軸方向を鉛直方向から一旦、傾けて鉛直方向に戻したりして、ハンマー部材の軸心をケースの軸心に対して傾斜させることもできる。
【0026】
また、ケース14の仕切り部27の先側にはノッカーピン保持部30が形成されており、ノッカーピン16は、ノッカーピン保持部30に摺動可能に保持される基端部31と、基端部31の先側に基端部31の外径より小径に形成され、先側がケース14の先側から突出する軸部32とを有している。この軸部32の先端部には、マイクロニードルアレイ11が装着されるアダプタ部材34が着脱可能に取付けられており、マイクロニードルアレイの種類(形状)に応じてアダプタ部材を交換することにより、多種多様なマイクロニードルアレイに対応することができる。なお、本実施例では、ホルダー35を介してアダプタ部材34にマイクロニードルアレイ11を装着したが、ホルダーの形状及び構造は適宜、選択することができ、ホルダーを用いずに、アダプタ部材に直接、マイクロニードルアレイを装着することも可能である。
また、ケース14の基側及び先側の端部には、それぞれ第1、第2のキャップ部材37、38が着脱可能に取付けられており、ケース14から第1、第2のキャップ部材37、38を取外すだけで、マイクロニードル用アプリケータ10を簡単に分解することができ、必要に応じて、第1のコイルバネ18を交換し、マイクロニードルの穿刺速度(穿刺深さ)を調整することができる。
なお、第1、第2のキャップ部材の形状は、適宜、選択することができる。また、ケースの材質は金属でも合成樹脂でもよいが、ケースを合成樹脂で形成する場合は、ケースを長手方向に沿う切断面で半分割して形成することも可能である。
【0027】
以上のように構成されたマイクロニードル用アプリケータ10の使用方法について説明する。
ノッカーピン保持部30には、ノッカーピン16の摺動を制約するバネ等がないので、マイクロニードルアレイ11が下向きとなるようにケース14を傾けると、ノッカーピン16がケース14の先側に移動し、
図1のように、マイクロニードルアレイ11が第2のキャップ部材38から突出した状態となる。よって、マイクロニードル用アプリケータ10の使用者は、マイクロニードルアレイ11を目視で確認しながら皮膚12の所定の位置に接触させることができる。そして、ケース14を皮膚12に向かって移動させると、ノッカーピン16の基端部31がノッカーピン保持部30の内部をケース14の基側に摺動し、
図2(A)のように、マイクロニードルアレイ11が第2のキャップ部材38の中に引っ込んで、第2のキャップ部材38の先端が皮膚12の表面に当接した状態となる。このとき、ノッカーピン16は、ほとんど無負荷で摺動するので、使用者が痛みを感じることはない。
【0028】
使用者が、手の平でケース14を握った状態で、親指で押圧部21aをケース14の先側に向かって押すと、トリガー部材15とハンマー部材17は第1、第2のコイルバネ18、19を圧縮しながらケース14の先側に向かって移動する。このとき、先に説明したように、ハンマー部材17の軸心がケース14の軸心に対して傾斜しているため、
図2(A)に示すように、ハンマー部材17の先側軸部25の先側端部が、貫通孔28の基側周縁で仕切り部27に係合し、ハンマー部材17が停止する。さらに押圧部21aを押し続けると、ケース14の先側に向かって移動するトリガー部材15と、停止したハンマー部材17との間で第1のコイルバネ18が圧縮される。そして、移動を続けるトリガー部材15の筒状部20の先側の開口周縁がハンマー部材17のテーパ部23に係合すると、
図2(B)に示すように、ハンマー部材17の姿勢が矯正されて、ハンマー部材17の軸心がケース14の軸心と一致する。これにより、ハンマー部材17の先側軸部25が、貫通孔28に進入可能となり、
図2(C)に示すように、第1のコイルバネ18が伸張してハンマー部材17をケース14の先側に移動させると共に、胴部24と仕切り部27との間で第2のコイルバネ19を圧縮する。そして、貫通孔28に進入したハンマー部材17の先側軸部25が、ノッカーピン16の基端部31に衝突して打撃を加える。このとき、先側軸部25が貫通孔28の先側から突出する突出量が僅かであっても、第1のコイルバネ18に蓄えられた弾性エネルギーで打撃が加えられたノッカーピン16は、その勢いによって
図2(C)に示すように基端部31の先側端面がノッカーピン保持部30の先端面に当接するまで移動可能であり、皮膚12を凹ませるようにしてマイクロニードルアレイ11を皮膚12に強く押付けることができる。なお、第1のコイルバネ18に蓄えられた弾性エネルギーを利用してノッカーピン16を移動させる(ケース14の先側から突出させる)ことにより、マイクロニードルアレイ11を皮膚12に押付けるので、ノッカーピン16が下向きである必要はなく、様々な姿勢で使用可能であり、横向き又は上向きで使用することもできる。
使用者が押圧部21aから親指を離すと、第2のコイルバネ19が伸張(復元)し、自動的に初期状態(
図1参照)に戻るので、ノッカーピン16の先端部に新たなマイクロニードルアレイ11を装着して、次の使用に備えることができる。
【0029】
ハンマー部材については、
図1、
図2(A)〜(C)に二点鎖線で示したように、胴部の長手方向の途中で二分割することもできる。その場合、先側軸部を含むハンマー部材の先側が、先側軸部の軸心回りに回転することができ、貫通孔の基側周縁で仕切り部に係合する先側端部の位置が随時移動(変化)するので、先側端部の特定位置が摩耗することを防止して、ハンマー部材の耐久性及び動作の安定性を向上させることができる。
また、本実施例では、マイクロニードルアレイをノッカーピンの先端部(アダプタ部材)に装着して使用する場合について説明したが、マイクロニードルアレイをノッカーピンの先端部(アダプタ部材)に装着して使用する代わりに、皮膚の表面に予め載置してテープ等で固定しておき、ノッカーピンの先端をマイクロニードルアレイに当てて皮膚に押付けることもできる。
【0030】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は何ら上記した実施例に記載の構成に限定されるものではなく、請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施例や変形例も含むものである。
例えば、上記実施例では、ケースを円筒状に形成したが、手の平で握り易いように、適宜、ケースの外表面を湾曲させたり、ケースの外表面に凹凸を形成したりしてもよい。
ケースを第1、第2の分割ケースに半割可能に形成する場合、ケースの基側及び先側の端部を第1、第2のキャップ部材で固定する代わりに、第1、第2の分割ケースに、互いに係合する係合凸部と係合凹部を形成して固定することもできる。また、ケースは、内部にトリガー部材、ノッカーピン、ハンマー部材及び第1、第2のコイルバネを収容して所定の動作を行わせることができればよく、その分割形状及び分割数は適宜、選択することができる。
トリガー部材の押圧部の形状は、適宜、選択することができ、指で押し易いように、基端面を凹ませて(湾曲させて)もよい。さらに、上記実施例では、トリガー部材の筒状部の先側の開口周縁(内周)を、先側に向かって拡径するテーパ状に形成したが、ストレートに形成してもよい。ハンマー部材の形状も、適宜、選択することができる。例えば、上記実施例では、基側軸部とテーパ部の間に円柱部を形成したが、例えば円柱部を省略してもよい。また、上記実施例では、ノッカーピンの軸部にアダプタ部材を螺子止めする構成としたが、アダプタ部材はノッカーピンに対して着脱可能であればよく、固定方法は適宜、選択することができ、例えば両者を嵌合(嵌着)により固定してもよいし、一方に形成した凸部と、他方に形成した凹部を係合させて固定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係るマイクロニードル用アプリケータは、マイクロニードルによる穿刺を簡単かつ確実に行うことができ、医療分野又は美容分野でのマイクロニードルの普及に貢献できる。
【符号の説明】
【0032】
10:マイクロニードル用アプリケータ、11:マイクロニードルアレイ、12:皮膚、14:ケース、15:トリガー部材、16:ノッカーピン、17:ハンマー部材、18:第1のコイルバネ、19:第2のコイルバネ、20:筒状部、21:トリガー軸、21a:押圧部、22:基側軸部、23:テーパ部、24:胴部、25:先側軸部、27:仕切り部、28:貫通孔、29:バネ受面、30:ノッカーピン保持部、31:基端部、32:軸部、34:アダプタ部材、35:ホルダー、37:第1のキャップ部材、38:第2のキャップ部材
【要約】
筒状のケース14と、先側がケース14の基側内部で軸方向に摺動可能に保持され、基側がケース14の基側から突出したトリガー部材15と、基側がケース14の先側内部で軸方向に摺動可能に保持され、先側がケース14の先側から突出したノッカーピン16と、ケース14の内部でトリガー部材15とノッカーピン16との間に収容され、ケース14の軸方向に摺動可能なハンマー部材17と、トリガー部材15とハンマー部材17の間に配置された第1のコイルバネ18と、ハンマー部材17とノッカーピン16の間に配置された第2のコイルバネ19とを有する。