(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0009】
以下に、まず本発明のロック機構8について簡単に説明する。尚、本段落での「上下」は
図9の上下に基づいて記載する。
ロック機構8は、
図9に示したように、略円筒形状を成すロック機構本体部10と、該ロック機構本体部10内に進退自在に挿入されてなるロック軸9と、から構成される。尚、以下本段落での説明では、
図9の上下に基づいて説明を行う。
更に詳述すると、ロック軸9は、略棒状にして、ロック機構8本体内部の後述する溝部10a内に収納される突起部9bを備えた歯車部9aを、回動自在且つロック軸9に対して上下方向には移動できないように備えられてなる。
ロック機構本体部10は、略円筒形状であって、その内部に溝部10aを備えてなる。また、溝部10aの間には、歯車部9aの突起と歯合する段部10bを備えてなると共に、溝部10a及び段部10bの上方には、歯車部9aの突起部9bに歯合して歯車部9aを若干回転させる傾斜面10cを備えてなる。
尚、
図9に示したロック機構8では、ロック軸9はロック機構本体部10を常に上下に貫通する長さを備えてなる。
次に、上記ロック機構8の動作について説明する。
上記ロック機構8において、
図9に示したように、ロック軸9がロック機構本体部10に対し降下した状態とする。この状態では、歯車部9aの突起部9bがロック機構8の溝部10aに収納されてなり、これによってロック軸9がロック機構本体部10に対し最も下方に降下してなる。この状態において、ロック軸9を上方に移動させ、ロック機構本体部10内部の上端に当接させると、突起部9bが傾斜面10cに当接することで、歯車部9aは若干回転する。その後ロック軸9の上昇を終了させ、ロック軸9を降下させると、歯車部9aが回転したことで、歯車部9aの突起部9bは、溝部10aと溝部10aの間の段部10bに歯合して停止し、これによりロック軸9がこれ以上降下することなく固定される。この時、ロック軸9はロック機構本体部10に対し上昇した状態で固定されている。
このロック軸9が上昇した状態から、再度ロック軸9を上方に移動させると、再び歯車部9aの突起部9bが傾斜面10cに当接して若干回転する。その後ロック軸9の上昇を終了させ、ロック軸9を降下させることで、再度歯車部9aの突起部9bが溝部10a内に収納されて、当初のロック軸9がロック機構本体部10に対し最も下方に降下した状態に戻る。以降、ロック軸9をロック機構本体部10に対し上下動させる毎に、ロック軸9をロック機構本体部10に対し、ロック軸9を上昇した状態で固定/固定を解除してロック軸9を降下、を交互に繰り返すことができる。
また、必要に応じ、ロック機構8には、次の1.乃至3.の様に、使用する方向や一部の構成を適宜変更することができる。
1.必要に応じ、ロック軸9の長さを調整し、
図12のように、ロック軸9が上方にのみ突出したロック機構8としたり、逆に
図13のように、ロック軸9が下方にのみ突出したロック機構8とすることができる。以下、
図12のように、ロック軸9が上昇した状態で固定/固定を解除し下方に降下するロック機構8において、ロック軸9が上方にのみ突出したロック機構8を上方型ロック機構8、
図13のようにロック軸9が上昇した状態で固定/固定を解除し下方に降下するロック機構8において、ロック軸9が下方にのみ突出したロック機構8を下方型ロック機構8と記載する。尚、上方型ロック機構8、下方型ロック機構8は、単にロック軸9が上方にのみ突出している/下方にのみ突出している、だけで定まるものではなく、その動作や固定の機能によって定まるものである。例えば、ロック軸9が降下した状態で固定/固定を解除し上方に上昇するロック機構8において、ロック軸9が上方にのみ突出したロック機構8は、「上方型ロック機構8」ではなく、後述するような、「上下を反転させた下方型ロック機構8」である。
2.上記説明においては、ロック軸9の降下を、ロック軸9の自重によって行っているが、必要に応じて、
図14に示したように、ロック機構8にスプリング等の弾性部材11を追加し、自重では無く、弾性部材11によって降下するように構成しても構わない。このようにすることで、ロック機構8を
図14の様態から、横転させた状態としたり、上下反転した状態として使用することができる。尚、ロック機構8を上下反転させた場合は、当然に、ロック軸9をロック機構本体部10に対し操作によって降下させ、弾性部材11によって上昇させる毎に、ロック軸9をロック機構本体部10に対し、ロック軸9を降下した状態で固定/固定を解除してロック軸9を上昇、を交互に繰り返す構成となる。
3.上記説明においては、便宜上ロック機構本体部10を固定し、ロック軸9を動作させるようにしてロック機構8を動作させているが、ロック機構8においては、必ずしもそのように構成する必要は無く、ロック軸9を機器に対して固定させ、ロック機構本体部10側を上下動するように構成しても構わない。
【0010】
以下に本発明の第一実施例を、図面を参照しつつ説明する。
図1乃至
図3に示した、本発明の第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下に記載する、槽体を備えた排水機器である浴槽Bに施工されるものであって、以下に記載する、排水口本体1、継手部材12、操作伝達部材としてのレリースワイヤ7、弁部材2、支持部材13、操作部3、ガイド管15、より構成されてなる。
浴槽Bは、上方が開口した箱体であって、底面には排水口本体1を取り付ける取付孔を、側面には操作部3を取り付ける操作部取付孔を、それぞれ備えてなる。
排水口本体1は、内部に排水流路を形成する略円筒形状の部材であって、その内部に排水口1aを、上縁に外方向に突出したフランジ部1bを、フランジ部1b下方の側面に雄ネジを、それぞれ備えてなる。また排水口1a内部には周縁方向に沿って凸部が複数設けられてなる。
継手部材12は、上記排水口本体1が接続される、略90度に屈曲した管体であって、上方の開口には排水口本体1の雄ネジと螺合する雌ネジを備えてなり側面方向には下水側の配管と接続するための排出口12aを備えてなる。また、排水口本体1の側面には、後述するレリースワイヤ7を挿入するための枝管部12bを備えてなる。
レリースワイヤ7は、操作部3に加えられた操作を、弁部材2に伝達するための部材であって、筒状にして軸方向に剛性を、側面方向に可撓性を備えたアウターチューブ7aと、上記アウターチューブ7a内を摺動自在に動作する、軸方向に剛性を、側面方向に可撓性を備えたインナーワイヤ7bと、インナーワイヤ7bを操作部3側に付勢する戻りスプリング7cと、インナーワイヤ7bの排水口1a側端部に備えた、弁部材2の昇降をガイドする為の弁軸7eと、インナーワイヤ7bの操作部3側端部に備えた、インナーワイヤ7b端部が使用時に屈曲したり傾斜しないようにガイドする為のロッド部7dと、から構成される。
弁部材2は、略円盤状を成す部材であって、その下面中央にはレリースワイヤ7の弁軸7eと嵌合する嵌合部2aを、側面部には排水口1aと水密に接続する為のパッキングPKを備え、レリースワイヤ7のインナーワイヤ7bの進退に対応して、排水口1aに対して上下動するように構成され、降下時においては排水口1aの上端部分を覆うことで排水口1aを閉口する。
支持部材13は、排水口本体1内部の凸部と嵌合することで、排水口1aに配置固定される部材であって、後述するレリースワイヤ7のアウターチューブ7a端部を固定する排水口側ワイヤ固定部13aと、リング状にして排水口1a内部の凸部と嵌合する第一リング部13bと、第一リング部13bと接続部を連絡するアーム部13cと、から構成される。排水口側ワイヤ固定部13aは、第一リング部13bの中央に配置され、施工が完了した場合には、弁軸7eが排水口1aの中央に配置されて上下動するように構成される。
操作部3は、浴槽Bの操作部取付孔に取り付けられ、弁部材2の上下動を操作する部材であって、以下に記載する、操作部本体4、エルボ部材5、操作体6、操作部側支持部材14、から構成される。
操作部本体4は、略円筒形状にして端部外側面に鍔部4aを、筒部分の外側面に雄ネジを、それぞれ備えてなり、更に内部に後述する操作体6が進退する筒状空間を形成してなる。また排水口1a内部には周縁方向に沿って凸部が複数設けられてなる。
エルボ部材5は、上記操作部本体4が接続される、略90度に屈曲した管体であって、上方の開口には操作部本体4の雄ネジと螺合する雌ネジを備えてなり、下方にはレリースワイヤ7が挿通される接続管部5aを備えてなる。
操作体6は、操作部本体4内部を進退する、略円盤状の部材であって、その中央部分にて、後述するロック機構8のロック軸9端部とネジを利用した螺合によって接続固定される。
操作部側支持部材14は、操作部本体4内部の凸部と嵌合することで、操作部本体4に配置固定される部材であって、ロック機構8を内蔵したロック機構本体部10と、リング状にして操作部本体4内部の凸部と嵌合する第二リング部14bと、第二リング部14bとロック機構本体部10を連絡する連結部14cと、から構成される。また操作部側支持部材14の連結部14cには、後述するレリースワイヤ7のアウターチューブ7a端部を固定する操作部側ワイヤ固定部14aを備えてなる。
本実施例のロック機構8は、段落0010に記載したロック機構8の内、
図13に示した下方型ロック機構8であって、更に内部に
図14と同様の位置にスプリングからなる弾性部材11を備えてなる。
本実施例では、
図13のロック機構8を、
図1乃至
図3に示したように、右方向に90度回転させたようにして接続固定する。また、弾性部材11によって、ロック軸9は
図1の左方向(槽体である浴槽Bの内部方向)に常時付勢されてなる。
また、ロック軸9の軸方向視、ロック軸9は操作部側支持部材14の第二リング部14bに対して中央部分に配置され、操作部側ワイヤ固定部14aは中央より若干偏芯した位置に配置される。また、側面視において、操作部側ワイヤ固定部14aによって、アウターチューブ7aの操作部3側端部は、ロック機構本体部10の浴槽B内部に近い側の端部と略同一となる位置に配置される。当然ながら、この「ロック機構本体部10の浴槽B内部に近い側の端部」は、「ロック機構本体部10の弁部材2側端部よりも操作部3側(=浴槽B内部)に近い側」である。
即ち、本実施例では、ロック機構8が操作部3側に配置されると共に、レリースワイヤ7の操作部3側のアウターチューブ7a端部が、操作部3側のインナーワイヤ7bの軸方向において、ロック機構本体部10の弁部材2側端部よりも操作部3側、つまり浴槽B内部側に接続固定される。
また、操作部側支持部材14の操作部側ワイヤ固定部14aにアウターチューブ7a端部を接続固定した場合、操作部3側のインナーワイヤ7bは、ロック機構8のロック軸9と平行となる位置関係に配置されるように構成されてなる。即ち、ロック機構8のロック軸9は、レリースワイヤ7のロック機構8が備えられる操作部3側のインナーワイヤ7b端部に対して、平行且つ偏芯した位置に配置される。
ガイド管15は軟質樹脂から構成される、可撓性を備えたチューブ管であって、一端は継手部材12の枝管部12bに、他端はエルボ部材5の接続管部5aに、それぞれ接続される。
【0011】
上記のように構成した第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のようにして、槽体である浴槽Bに施工される。尚、特に記載しない場合でも、必要に応じて接着剤やパッキングを用いたネジ接続などにより、各部材の接続箇所は水密的に接続される。
まず、事前に、ガイド管15の一端を継手部材12の枝管部12bに、他端をエルボ部材5の接続管部5aに、それぞれ接続しておく。
次に、排水口本体1を、浴槽B底面に設けられた取付孔に挿通し、フランジ部1bの下面を、取付孔の周縁上面に当接した状態とする。
次に、継手部材12の排出口12aを下水側配管に接続した上で、浴槽Bの下方から配置し、排水口本体1の雄ネジを、継手部材12の雌ネジと螺合させ、取付孔周縁をフランジ部1b下面と継手部材12の雌ネジの開口の上端部分とで挟持させて、浴槽Bに固定する。
次に、操作部本体4を、浴槽B側面に設けられた操作部取付孔に挿通し、鍔部4aの背面を、操作部取付孔の周縁に当接した状態とする。
次に、エルボ部材5を浴槽Bの背面に配置し、操作部本体4の雄ネジを、エルボ部材5の雌ネジと螺合させ、操作部取付孔周縁を鍔部4a下面とエルボ部材5の雌ネジの開口の端部部分とで挟持させて、浴槽Bに固定する。
次に、レリースワイヤ7のアウターチューブ7aの操作部3側端部を、操作部側支持部材14の操作部側ワイヤ固定部14aに接続固定する。
次に、レリースワイヤ7の排水口1a側端部を操作部本体4の開口に挿通し、操作部本体4、エルボ部材5、ガイド管15、枝管部12b、継手部材12、の順に挿通した上で、操作部側支持部材14の第二リング部14bを操作部本体4の凸部に嵌合させて、操作部側支持部材14を操作部本体4に固定する。
次に、ロック軸9に操作体6をネジ接続により接続する。この接続は、ネジによる接続であるため、ネジの軸方向に対しては、進退いずれの方向に対しても固定されていて、ネジの軸方向に加えられる応力に対しては、操作体6がロック軸9から外れることは無い。
次に、継手部材14内部のレリースワイヤ7端部を排水口1aから浴槽B内に引き上げ、排水口1a側のアウターチューブ7a端部を、支持部材13の排水口側ワイヤ固定部13aに接続固定する。
この際には、レリースワイヤ7のアウターチューブ7a端部は、ロック機構8では無く支持部材13に直接接続するため、特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置の場合に比べ、ロック機構8の長さ分、浴槽B内に長く引き上げることができ、施工作業が容易になる。
次に、支持部材13の第一リング部13bを排水口1a内部の凸部に嵌合させて、支持部材13を排水口本体1に固定し、更に弁部材2の嵌合部2aをインナーワイヤ7b端部の弁軸7eに嵌合固定されて、本実施例の遠隔操作式排水栓装置の施工が完了する。
【0012】
以下に、上記第一実施例の遠隔操作式排水栓装置の動作について説明する。
上記第一実施例の遠隔操作式排水栓装置を使用する場合、
図2のように、まず操作部3の操作体6に操作を加え、排水口1aを弁部材2が覆って排水口1aを閉口した状態とする。
この時、操作部3の操作体6は浴槽Bの内面側(
図2中の左側)に移動し、浴槽B内面と面一の状態となっている。
これは、
・戻りスプリング7cの作用によってインナーワイヤ7bが操作体6側に付勢されていること
・ロック軸9が弾性部材11の作用によって操作体6側に付勢され、且つ固定を解除されていることによって、レリースワイヤ7のインナーワイヤ7bが操作部3側に後退している為である。
この状態において、浴槽B内に吐水を行うと、排水口1aが閉口しているために、浴槽B内に吐水を溜めることができる。
この状態から操作体6に押し込み操作を行い、操作体6及びロック軸9を、
図2中右側に移動させると、
図3に示したように、ロック機構8が作用し、ロック軸9を図中右側に移動した状態で固定する。
これにより、操作体6の裏面に、インナーワイヤ7bの操作部3側端部にあるロッド部7d端部が当接して、ロッド部7dを右側に移動させるため、インナーワイヤ7bが排水口1a側に前進し、弁軸7eと共に弁部材2が上昇して排水口1aより弁部材2が離間し、排水口1aを開口させる(前述のように、ロック軸9と操作体6はネジ接続によって接続されているため、戻りスプリング7cの応力によっても接続が解除されることは無く、支障なくインナーワイヤ7bを前進させる)。
この状態から再度操作体6に押し込み操作を行い、操作体6及びロック軸9を、
図3中右側に移動させると、ロック機構8が作用し、ロック軸9の固定が解除される。これにより、ロック軸9が弾性部材11の付勢によって浴槽B内部側に移動すると共に、インナーワイヤ7bの排水口1a側への前進を固定していた操作体6も槽体側(図中左側)に移動するため、インナーワイヤ7bは弁部材2の自重、及び戻りスプリング7cの作用により、操作部3側に後退し、
図2示した、浴槽B排水口1aが閉口した状態に戻る。
以降、上記したように、操作体6に押し込み操作を繰り返す毎に、インナーワイヤ7bが弁部材2を押し上げて排水口1aを開口/インナーワイヤ7b端部の後退に伴って自重等により弁部材2が降下し排水口1aを閉口、を交互に行い、排水口1aを遠隔操作式排水栓装置により自在に開閉することができる。
【0013】
上記第一実施例においては、ロック軸9とインナーワイヤ7bを直線的に接続せず、方向は平行ではあるが偏芯した位置関係、即ち並列な位置関係に配置した上で、操作体6を利用して両者を連動するように、つまりロック軸9が
図3のように図中右側に移動して固定された際にはインナーワイヤ7bの操作部3側端部もロック軸9に連動して右側に移動して固定され、
図2のようにロック軸9の固定が解除されて図中左側に移動した際にはインナーワイヤ7bの操作部3側端部もロック軸9に連動して左側に移動するように構成されてなる。即ち操作体6がインナーワイヤ7bとロック軸9を連動させる連動部として機能する。
また、上記第一実施例において、ロック軸9とインナーワイヤ7bを直線的に接続せず、方向は平行ではあるが偏芯した位置関係、即ち並列な位置関係に配置したことで、ロック機構8を備えた操作部3側において、レリースワイヤ7端部をロック機構8端部に接続する必要がなくなった。操作部3では、操作部3側のインナーワイヤ7bの軸方向において、レリースワイヤ7のアウターチューブ7a端部と、ロック機構8のロック機構本体部10の操作部3側の端部は略同一となる位置、即ちロック機構本体部10の弁部材2側端部よりも操作部3側に固定されている。このように構成したことで、操作部3側にロック機構8を配置しつつ、レリースワイヤ7の操作部3側の取り付け位置は操作部3側にロック機構8が無い場合とほぼ同じ位置とすることができた。従来のように、ロック機構8の端部にレリースワイヤ7を接続していた場合、「ロック機構8の軸方向長さ」と「レリースワイヤ7の最小曲げ半径」を合計した長さが、操作部3側のロック軸9の軸方向に必要であったが、本実施例では操作部3側にロック機構8を配置しつつ「ロック機構8の軸方向長さ」か「レリースワイヤ7の最小曲げ半径」のいずれか長い方の幅があれば施工が可能となっている。このため、本実施例のように操作部3を浴槽B等槽体の内側面上に配置し、槽体の側面と建物の壁面との狭隘な部分でレリースワイヤ7を屈曲させなければならないような場合に特に好適である。
【0014】
次に本発明の第二実施例を、図面を参照しつつ説明する。
図4乃至
図6に示した、本発明の第二実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下に記載する、槽体を備えた排水機器である浴槽Bに施工されるものであって、以下に記載する、排水口本体1、継手部材12、操作伝達部材としてのレリースワイヤ7、弁部材2、支持部材13、操作部3、ガイド管15、より構成されてなる。
浴槽Bは、上方が開口した箱体であって、底面には排水口本体1を取り付ける取付孔を、側面には操作部3を取り付ける操作部取付孔を、それぞれ備えてなる。
排水口本体1は、内部に排水流路を形成する略円筒形状の部材であって、その内部に排水口1aを、上縁に外方向に突出したフランジ部1bを、フランジ部1b1下方の側面に雄ネジを、それぞれ備えてなる。また排水口1a内部には周縁方向に沿って凸部が複数設けられてなる。
継手部材12は、上記排水口本体1が接続される、略90度に屈曲した管体であって、上方の開口には排水口本体1の雄ネジと螺合する雌ネジを備えてなり側面方向には下水側の配管と接続するための排出口12aを備えてなる。また、排水口本体1の側面には、後述するレリースワイヤ7を挿入するための枝管部12bを備えてなる。
レリースワイヤ7は、操作部3に加えられた操作を、弁部材2に伝達するための部材であって、筒状にして軸方向に剛性を、側面方向に可撓性を備えたアウターチューブ7aと、上記アウターチューブ7a内を摺動自在に動作する、軸方向に剛性を、側面方向に可撓性を備えたインナーワイヤ7bと、インナーワイヤ7bを操作部3側に付勢する戻りスプリング7cと、インナーワイヤ7bの操作部3側端部に備えた、インナーワイヤ7b端部が使用時に屈曲したり傾斜しないようにガイドすると共に、操作体6の裏面中央部分に嵌合接続されるロッド部7dと、インナーワイヤ7bの排水口1a側端部に備えた、弁部材2を昇降させる為の軸部7fと、から構成される。
弁部材2は、略円盤状を成す部材であって、その下面中央にはロック軸9の端部とネジ接続するネジ接続部2bを、側面部には排水口1aと水密に接続する為のパッキングPKを備え、レリースワイヤ7のインナーワイヤ7b及びロック機構8のロック軸9によって昇降すると共に、ロック機構8の固定が解除されて降下した際においては、排水口1aの上端部分を覆うことで排水口1aを閉口する。
支持部材13は、排水口本体1内部の凸部と嵌合することで、排水口1a内に配置固定される部材であって、ロック機構8を内蔵したロック機構本体部10と、リング状にして操作部本体4内部の凸部と嵌合する第一リング部13bと、第一リング部13bとロック機構本体部10を連絡するアーム部13cと、から構成される。また支持部材13のアーム部13cには、後述するレリースワイヤ7のアウターチューブ7a端部を固定する排水口側ワイヤ固定部13aを備えてなる。
本実施例のロック機構8は、段落0010に記載したロック機構8の内、
図12に示した上方型ロック機構8である。該ロック機構8においては、
図12と同様に、その内部には弾性部材11を備えることなく構成されてなる。
また、ロック軸9の軸方向視、ロック軸9は支持部材13の第一リング部13bに対して中央部分に配置され、排水口側ワイヤ固定部13aは中央より若干偏芯した位置に配置される。また、側面視において、排水口側ワイヤ固定部13aによって、アウターチューブ7aの排水口1a側端部は、ロック機構本体部10の上端側の端部と略同一となる位置に配置される。当然ながら、この「ロック機構本体部10の上端側端部」は、「ロック機構本体部10の操作部3側端部(=ロック機構8下端)よりも弁部材2側(=上方側)に近い側」である。
即ち、本実施例では、ロック機構8が弁部材2側に配置されると共に、レリースワイヤ7の排水口1a側のアウターチューブ7a端部が、排水口1a側のインナーワイヤ7bの軸方向において、ロック機構本体部10の操作部3側端部(=ロック機構8下端側)よりも弁部材2側(=ロック機構8上端側)に固定される。
また、操作部側支持部材14の排水口側ワイヤ固定部13aにアウターチューブ7a端部を接続固定した場合、排水口1a側のインナーワイヤ7bは、ロック機構8のロック軸9と平行となる位置関係に配置されるように構成されてなる。即ち、ロック機構8のロック軸9は、レリースワイヤ7のロック機構8が備えられる排水口1a側のインナーワイヤ7b端部に対して、平行且つ偏芯した位置に配置される。
操作部3は、浴槽Bの操作部取付孔に取り付けられ、弁部材2の上下動を操作する部材であって、以下に記載する、操作部本体4、エルボ部材5、操作体6、操作部側支持部材14、から構成される。
操作部本体4は、略円筒形状にして端部外側面に鍔部4aを、筒部分の外側面に雄ネジを、それぞれ備えてなり、更に内部に後述する操作体6が進退する筒状空間を形成してなる。また排水口1a内部には周縁方向に沿って凸部が複数設けられてなる。
エルボ部材5は、上記操作部本体4が接続される、略90度に屈曲した管体であって、上方の開口には操作部本体4の雄ネジと螺合する雌ネジを備えてなり、下方にはレリースワイヤ7が挿通される接続管部5aを備えてなる。
操作体6は、操作部本体4内部を進退する、略円盤状の部材であって、その中央部分が、レリースワイヤ7のロッド部7d端部と嵌合によって接続固定されるように構成されてなる。
操作部側支持部材14は、操作部本体4内部の凸部と嵌合することで、排水口1aに配置固定される部材であって、レリースワイヤ7のアウターチューブ7a端部を固定する操作部側ワイヤ固定部14aと、リング状にして排水口1a内部の凸部と嵌合する第二リング部14bと、第二リング部14bと操作部側ワイヤ固定部14aを連絡する連結部14cと、から構成される。操作部側ワイヤ固定部14aは、第二リング部14bの中央に配置され、施工が完了した場合には、ロッド部7dが操作部本体4の中央に配置されて上下動するように構成される。
ガイド管15は軟質樹脂から構成される、可撓性を備えたチューブ管であって、一端は継手部材12の枝管部12bに、他端はエルボ管部の接続管部5aに、それぞれ接続される。
【0015】
上記のように構成した第二実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のようにして、槽体である浴槽Bに施工される。尚、特に記載しない場合でも、必要に応じて接着剤やパッキングを用いたネジ接続などにより、各部材の接続箇所は水密的に接続される。
まず、事前に、ガイド管15の一端を継手部材12の枝管部12bに、他端をエルボ管部の接続管部5aに、それぞれ接続しておく。
次に、排水口本体1を、浴槽B底面に設けられた取付孔に挿通し、フランジ部1bの下面を、取付孔の周縁上面に当接した状態とする。
次に、継手部材12の排出口12aを下水側配管に接続した上で、浴槽Bの下方から配置し、排水口本体1の雄ネジを、継手部材12の雌ネジと螺合させ、取付孔周縁をフランジ部1b下面と継手部材12の雌ネジの開口の上端部分とで挟持させて、浴槽Bに固定する。
次に、操作部本体4を、浴槽B側面に設けられた操作部取付孔に挿通し、鍔部4aの背面を、取付孔の周縁に当接した状態とする。
次に、エルボ部材5を浴槽Bの背面に配置し、操作部本体4の雄ネジを、エルボ部材5の雌ネジと螺合させ、操作部取付孔周縁を鍔部4a下面とエルボ部材5の雌ネジの開口の端部部分とで挟持させて、浴槽Bに固定する。
次に、レリースワイヤ7のアウターチューブ7aの操作部3側端部を、操作部側支持部材14の操作部側ワイヤ固定部14aに接続固定する。
次に、レリースワイヤ7の排水口1a側端部を操作部本体4の開口に挿通し、操作部本体4、エルボ部材5、ガイド管15、枝管部12b、継手部材12、の順に挿通した上で、操作部側支持部材14の第二リング部14bを操作部本体4の凸部に嵌合させて、操作部側支持部材14を操作部本体4に固定し、更にロッド部7dに操作体6を嵌合接続させる。
次に、排水継手内部のレリースワイヤ7端部を排水口1aから浴槽B内に引き上げ、排水口1a側のアウターチューブ7a端部を、支持部材13の排水口側ワイヤ固定部13aに接続固定する。
この際には、レリースワイヤ7のアウターチューブ7a端部は、ロック機構8では無く支持部材13に直接接続するため、特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置の場合に比べ、ロック機構8の長さ分、浴槽B内に長く引き上げることができ、施工作業が容易になる。
次に、ロック軸9に弁部材2をネジ接続により接続することで、本実施例の遠隔操作式排水栓装置の施工が完了する。尚、この弁部材2とロック軸9の接続は、ネジによる接続であるため、ネジの軸方向に対しては、進退いずれの方向に対しても固定されていて、ネジの軸方向に加えられる応力に対しては、弁部材2がロック軸9から外れることは無い。
【0016】
以下に、上記第二実施例の遠隔操作式排水栓装置の動作について説明する。
上記第二実施例の遠隔操作式排水栓装置を使用する場合、
図5のように、まず操作部3の操作体6に操作を加え、排水口1aを弁部材2が覆って排水口1aを閉口した状態とする。
この時、操作部3の操作体6は、戻りスプリング7cの作用によって浴槽Bの内面側(
図5中の左側)に移動し、浴槽B内面と面一の状態となっている。
この状態において、浴槽B内に吐水を行うと、排水口1aが閉口しているために、浴槽B内に吐水を溜めることができる。
この状態から操作体6に押し込み操作を行うと、インナーワイヤ7bは排水口1a方向に前進し、インナーワイヤ7bの排水口1a側端部にある軸部7fが突出して弁部材2の下面に当接し、更に弁部材2を押し上げる。この操作により弁部材2にネジ接続にて接続されているロック軸9も上昇する。結果、
図6に示したように、ロック機構8が動作し、ロック軸9がその先端に接続されている弁部材2と共に上昇した状態で固定されて排水口1aより弁部材2が離間し、排水口1aを開口させる(前述のように、ロック軸9と弁部材2はネジ接続によって接続されているため、インナーワイヤ7bに弁部材2が押し上げられれば、ロック軸9が弁部材2から脱着することなく弁部材2によって引き上げられる)。インナーワイヤ7bは特に弁部材2やロック軸9によって固定されているわけでは無いため、操作体6への押し込み操作が解除されれば戻りスプリング7cの作用により操作部3側に
後退する。
この状態から再度操作体6に押し込み操作を行い、インナーワイヤ7bの軸部7fを弁部材2下面に押し当てて弁部材2を再度上昇させると、弁部材2に伴われてロック軸9も上昇し、ロック軸9の固定が解除される。これにより、操作体6への押し込み操作が解除され、戻りスプリング7cの作用によって操作部3側にインナーワイヤ7bとインナーワイヤ7b端部の軸部7fが後退すると、ロック軸9が弁部材2の重量及びロック軸9自体の自重によって降下し、
図5示した、排水口1aが閉口した状態に戻る。
以降、上記したように、操作体6に押し込み操作を繰り返す毎に、インナーワイヤ7bが弁部材2を押し上げて排水口1aを開口/インナーワイヤ7b端部の後退に伴って自重等により弁部材2が降下し排水口1aを閉口、を交互に行い、排水口1aを遠隔操作式排水栓装置により自在に開閉することができる。
【0017】
上記第二実施例においては、ロック軸9とインナーワイヤ7bを直線的に接続せず、方向は平行ではあるが偏芯した位置関係、即ち並列な位置関係に配置した上で、弁部材2を利用して両者を連動するように、つまりインナーワイヤ7bが
図6のように弁部材2を押し上げた際には、ロック軸9も連動して上昇するように構成してなる。即ち弁部材2がインナーワイヤ7bとロック軸9を連動させる連動部として機能する。
また、上記第二実施例において、ロック軸9とインナーワイヤ7bを直線的に接続せず、方向は平行ではあるが偏芯した位置関係、即ち並列な位置関係に配置したことで、ロック機構8を備えた排水口1a側において、レリースワイヤ7端部をロック機構8端部に接続する必要がなくなった。排水口1aでは、排水口1a側のインナーワイヤ7bの軸方向において、レリースワイヤ7のアウターチューブ7a端部と、ロック機構8のロック機構本体部10の上端は略同一となる位置、即ちロック機構本体部10の操作部3側端部(=ロック機構8下端)よりも弁部材2側(=上端側)に固定されている。このように構成したことで、排水口1a側にロック機構8を配置しつつ、レリースワイヤ7の排水口1a側の取り付け位置は排水口1a側にロック機構8が無い場合とほぼ同じ位置とすることができた。従来のように、ロック機構8の端部にレリースワイヤ7を接続していた場合、「ロック機構8の軸方向長さ」と「レリースワイヤ7の最小曲げ半径」を合計した長さが排水口1a側のロック軸9の軸方向に必要であったが、本実施例では排水口1a側にロック機構8を配置しつつ「ロック機構8の軸方向長さ」か「レリースワイヤ7の最小曲げ半径」のいずれか長い方の幅があれば施工が可能となっている。このため、排水口1aの下方の配管を従来よりも上下方向に幅狭にでき、配管を床下空間に配置する場合には、その分床下空間の上下幅を狭くし、また配管をキャビネット内等に配置する場合には、その分収納空間を上下に幅広に得ることができる。
【0018】
本発明の実施例は以上のようであるが、本発明は上記実施例に限定される物ではなく、主旨を変更しない範囲において自由に変更が可能である。
例えば上記実施例では遠隔操作式排水栓装置は全て浴槽Bに施工されてなるが、本発明は上記実施例に限定されるものでは無く、槽体としての洗面ボウルを備えた洗面台、槽体としてのシンクを備えた流し台等、排水口1aを備えた槽体であれば、どのような排水機器のどのような槽体に採用しても構わない。
【0019】
また、上記実施例では、排水口1a又は操作部3のいずれかにロック機構8を備えた場合、ロック機構8のロック軸9を排水口1a又は操作部本体4の開口の中心に、レリースワイヤ7のインナーワイヤ7bを中心から外れた偏芯位置に配置しているが、本発明は上記実施例に限定されるものでは無く、レリースワイヤ7のインナーワイヤ7bを排水口1a又は操作部本体4の開口の中心に、ロック機構8とロック軸9を中心から外れた偏芯位置に配置して構成しても構わない。
【0020】
また、上記実施例では、ロック機構8を歯車部9aを備えた機械式のロック機構8、いわゆるスラストロック式のロック機構8により構成してなるが、本発明は上記実施例に限定されるものでは無く、他の歯車部9aを用いない機械式のロック機構8や、ロック軸9の側面にパッキングを配置しパッキングと他の部材との摩擦により位置を保持するようなロック機構8等を用いて構成しても構わない。
【0021】
また、上記実施例では、排水口本体1や操作部本体4等、槽体である浴槽Bに固定される部材の側にロック機構本体部10を備え、操作体6や弁部材2等、動作する部材の側にロック軸9を固定して構成してなるが、本発明は上記実施例に限定されるものでは無い。
例えば、操作部3側にロック機構8を備える場合、
図7に示した操作部3のように、ロック機構本体部10を操作体6に、ロック軸9を操作部本体4に、それぞれ固定乃至一体の部材として構成しても良い(排水口1a側の構成は第一実施例と同様とする)。この
図7の場合には、ロック機構8は下方型ロック機構8を用い、内部に
図14の図示と同様の弾性部材11を備えて構成する。ロック機構8の方向は、
図7の実施例のようにロック軸9を上下に進退させる場合には
図14の上下をそのまま使用する。
このように操作体6にロック機構本体部10を備えた実施例の場合、ロック機構本体部10と操作部3側のアウターチューブ7a端部との位置関係は操作体6が動作する都度変化するが、少なくとも弁部材2の上昇時に、操作部3側のインナーワイヤ7bの軸方向において、ロック機構本体部10の弁部材2側端部よりも操作部3側にアウターチューブ7aの操作部3側端部が固定されていれば、「ロック機構8の軸方向長さ」と「レリースワイヤ7の最小曲げ半径」を合計した長さよりも狭い幅で施工が可能となり、ロック軸9の軸方向にあまり幅を取ることができない狭隘な部分に施工を行う場合好適である。
【0022】
また、排水口1a側にロック機構8を備える場合、
図8に示した排水口1aのように、ロック機構本体部10を弁部材2に、ロック軸9を排水口本体1に、それぞれ固定乃至一体の部材として構成しても良い(操作部4側の構成は第二実施例と同様とする)。この
図8の場合には、ロック機構8は上方型ロック機構8を用い、ロック機構8の方向は、
図12の上下を反転させて使用する。また、ロック機構8の内部には弾性部材11等は配置しないように構成する。
このように弁部材2にロック機構本体部10を備えた実施例の場合、ロック機構本体部10と排水口1a側のアウターチューブ7a端部との位置関係は弁部材2が昇降する都度変化するが、少なくとも弁部材2の降下時に、排水口1a側のインナーワイヤ7bの軸方向において、ロック機構本体部10の操作部3側端部(=下端側)よりも弁部材2側(=上端側)に固定されていれば、「ロック機構8の軸方向長さ」と「レリースワイヤ7の最小曲げ半径」を合計した長さよりも狭い幅で施工が可能となり、排水口1a側の部材の上下幅を狭くすることができ好適である。