(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6734512
(24)【登録日】2020年7月14日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】動物捕獲装置
(51)【国際特許分類】
A01K 69/08 20060101AFI20200728BHJP
A01M 23/08 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
A01K69/08
A01M23/08
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-74780(P2016-74780)
(22)【出願日】2016年4月2日
(65)【公開番号】特開2017-184644(P2017-184644A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】501126630
【氏名又は名称】東北興商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 清孝
【審査官】
田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第01438816(US,A)
【文献】
米国特許第04819369(US,A)
【文献】
実開昭52−001762(JP,U)
【文献】
特開2005−278486(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3010163(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 69/00−69/10
A01M 23/00−23/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕獲部と隔離部とを有し、
前記捕獲部は、動物を収容可能な透光性の捕獲室と、外部への脱出を阻止する外部から前記捕獲室への動物の進入口とを有し、
前記隔離部は、動物を収容可能な遮光性の収容室と、前記捕獲室への後退を阻止する前記捕獲室から前記収容室への動物の収容口とを有し、
前記捕獲室および前記収容室はネット状であって、前記進入口は内部側口径が外部側口径より小さく窄まったネット状の筒体から成り、前記収容口は収容室側口径が捕獲室側口径より小さく窄まったネット状の筒体から成り、水中に設置されることを、
特徴とする動物捕獲装置。
【請求項2】
前記収容室は前記捕獲室の下部に隣接して設けられていることを、特徴とする請求項1記載の動物捕獲装置。
【請求項3】
前記捕獲室は前記収容室の側部に隣接して設けられていることを、特徴とする請求項1記載の動物捕獲装置。
【請求項4】
前記捕獲室の内部に定期的に給餌する自動給餌装置を有することを、特徴とする請求項1,2または3記載の動物捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アメリカザリガニその他の動物を捕獲するための動物捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アメリカザリガニは、生態系に極めて深刻な影響を与えるため、環境省と農水省が作成したわが国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リストによって緊急対策外来種に指定されており、駆除が求められている。
従来、ブリキから成る筒状の基体に、出入口を有する網筒体を取り付けて成り、暗い所を好む魚類を捕獲する魚類捕獲装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−31452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の魚類捕獲装置では、捕獲された魚類が内部の餌を食べ尽くしてしまうため、餌に誘引される外部からの新たな獲物を捕獲しにくくなるという課題があった。また、アメリカザリガニの場合、捕獲装置内が高密度になると進入尾数が減少し、捕獲効率が悪くなるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、外部から新たな獲物を集めやすく、高密度収容が可能となり、捕獲効率が良好な動物捕獲装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る動物捕獲装置は、捕獲部と隔離部とを有し、前記捕獲部は、動物を収容可能な透光性の捕獲室と、外部への脱出を阻止する外部から前記捕獲室への動物の進入口とを有し、前記隔離部は、動物を収容可能な遮光性の収容室と、前記捕獲室への後退を阻止する前記捕獲室から前記収容室への動物の収容口とを有
し、前記捕獲室および前記収容室はネット状であって、前記進入口は内部側口径が外部側口径より小さく窄まったネット状の筒体から成り、前記収容口は収容室側口径が捕獲室側口径より小さく窄まったネット状の筒体から成り、水中に設置されることを、特徴とする。
【0007】
本発明に係る動物捕獲装置では、捕獲室に餌を入れ、進入口を通して動物を外部から捕獲室内に誘引する。捕獲室内に餌がなくなると、暗い場所を好む習性をもつ捕獲室内の動物は内部が暗い収容室に移動する。捕獲室に再び餌を入れれば、外部から新たに動物を捕獲室内に誘引することができる。これを繰り返すことにより、外部から新たな獲物を集めやすく、高密度収容が可能となり、捕獲効率が良好となる。
【0008】
本発明において、捕獲する動物
は、魚介類が好ましく、アメリカザリガニが特に好ましい。
【0009】
本発明に係る動物捕獲装置において、前記収容室は前記捕獲室の下部に隣接して設けられていることが好ましい。この場合、獲物に重力が働き、また、特に濁った水域では上部に比べて下部が暗くなるため、収容室に獲物をさらに集めやすい。
本発明に係る動物捕獲装置において、前記捕獲室は前記収容室の側部に隣接して設けられていてもよい。
【0010】
本発明に係る動物捕獲装置は、前記捕獲室の内部に定期的に給餌する自動給餌装置を有することが好ましい。この場合、捕獲室の内部に餌がなくなり、捕獲室の獲物が収容室に移動したタイミングで定期的に給餌することが好ましい。それにより、自動的に収容室に獲物を集めることができ、給餌の省力化を図ることができる。
【0011】
収容室が捕獲室の下部に隣接して設けられている場合には、自動給餌装置は捕獲室の上部から捕獲室内に給餌する構成を有し、収容口が捕獲室の下方に設けられていることが好ましい。この場合、餌に誘引された捕獲室内の獲物を重力で収容室内に収容しやすい。
【0012】
本発明に係る動物捕獲装置において、前記捕獲室および前記収容室はネット状であって、前記進入口は内部側口径が外部側口径より小さく窄まったネット状の筒体から成り、前記収容口は収容室側口径が捕獲室側口径より小さく窄まったネット状の筒体から成
り、水中に設置され
る。この
ため、アメリカザリガニを効率良く捕獲することができる。進入口および収容口は、横断面が細長いスリット状であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外部から新たな獲物を集めやすく、高密度収容が可能となり、捕獲効率が良好な動物捕獲装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態の動物捕獲装置の概略斜視図である。
【
図2】本発明の他の実施の形態の動物捕獲装置の概略斜視図である。
【
図3】アメリカザリガニの捕獲実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、動物捕獲装置は、アメリカザリガニを捕獲するためのものであり、捕獲部10と隔離部20と自動給餌装置30とを有している。
【0016】
捕獲部10は、捕獲室11と進入口12とを有している。捕獲室11は、全体が透光性の直方体状のカゴを透光性ネットで覆って成り、アメリカザリガニを収容可能な大きさを有している。進入口12は、かえり網から成り、ロート状に内部側口12aの口径が外部側口12bの口径より小さく窄まったネット状の筒体をなしている。進入口12は、外部側口12bが捕獲室11の側面と同じ平面上に配置されて、捕獲室11の側面に接続されている。内部側口12aは、捕獲室11の内部に配置されている。進入口12は、アメリカザリガニが外部から捕獲室11に進入するのは容易であるが、外部へ脱出するのは阻止するようになっている。
【0017】
隔離部20は、収容室21と収容口22とを有している。収容室21は、直方体状のカゴを遮光ネットで覆って成り、アメリカザリガニを収容可能な大きさを有している。収容室21は、微細な穴を穿った多穴性板材で構成しても良い。収容室21は、捕獲室11の下部に隣接して固定されている。収容室21の上面は、捕獲室11の下面と共通であることが好ましい。収容口22は、かえり網から成り、ロート状に収容室側口22aの口径が捕獲室側口22bの口径より小さく窄まったネット状の筒体をなしている。収容口22は、捕獲室側口22bが収容室21の上面と同じ平面上に配置されて、収容室21の上面に接続されている。収容室側口22aは、収容室21の内部に配置されている。収容口22は、アメリカザリガニが捕獲室11から収容室21に進入するのは容易であるが、捕獲室11へ後退するのは阻止するようになっている。
【0018】
自動給餌装置30は、給餌用パイプ31により捕獲室11の上面に接続され、給餌用パイプ31を通して捕獲室11の内部に定期的に給餌するようになっている。給餌用パイプ31の下面には、ネットが設けられている。収容室側口22aは、給餌用パイプ31の真下に配置されている。餌は、ペレット状のものが好ましく、例えばペットフードを用いることができる。給餌回数は、自由に設定可能であるが、1週間に1〜6回が好ましく、2日に1回が特に好ましい。自動給餌装置30は、支柱32または架台に固定されて水面上に配置される。
【0019】
次に、作用について説明する。
動物捕獲装置を用いて、以下の方法でアメリカザリガニを捕獲する。
アメリカザリガニを駆除しようとする湖沼やため池などに動物捕獲装置を設置する。設置時期は、水温が10℃以上となる4月から11月頃が好ましい。
【0020】
自動給餌装置30により捕獲室11に定期的に餌を入れ、進入口12を通してアメリカザリガニを外部から捕獲室11内に誘引する。アメリカザリガニは、餌に誘引されやすい性質を有する。捕獲室11内に餌がなくなると、アメリカザリガニは暗い場所を好む習性をもつため、捕獲室11内から内部が暗い収容室21に移動する。給餌用パイプ31の下面のネットにアメリカザリガニが取り付いた場合、ネットから離れたアメリカザリガニは重力で下方の収容口22に落ちやすく、収容室21内に収容しやすい。
【0021】
設定した期間、例えば2日が経過すると、自動給餌装置30は捕獲室11に再び餌を入れ、外部から新たにアメリカザリガニを捕獲室11内に誘引することができる。定期的な給餌により、自動的に収容室21にアメリカザリガニを集めることができ、給餌の省力化を図ることができる。これを繰り返すことにより、外部から新たな獲物を集めることができ、高密度収容が可能となり、捕獲効率が良好となる。こうして、アメリカザリガニを効率良く捕獲することができる。
【0022】
図2に示すように、動物捕獲装置において、捕獲室は収容室の側部に隣接して設けられていてもよい。この場合、動物捕獲装置は、捕獲部40と隔離部50と自動給餌装置60とを有している。
【0023】
捕獲部40は、捕獲室41と進入口42とを有している。捕獲室41は、全体が透光性の筒状のカゴの側面を透光性ネットで覆って成り、アメリカザリガニを収容可能な大きさを有している。進入口42は、かえり網から成る。進入口42は、外部側口42bが捕獲室41の端面周囲に接続されている。内部側口42aは、捕獲室41の内部に配置されている。進入口42は、アメリカザリガニが外部から捕獲室41に進入するのは容易であるが、外部へ脱出するのは阻止するようになっている。
【0024】
隔離部50は、収容室51と収容口52とを有している。収容室51は、捕獲室41と同じ径の筒状のカゴの側面および一方の端面を遮光ネットで覆って成り、アメリカザリガニを収容可能な大きさを有している。収容室51は、開放した端面周囲が捕獲室41の進入口42と反対側の端面周囲に接続されている。
【0025】
収容口52は、かえり網から成り、ロート状に収容室側口52aの口径が捕獲室側口52bの口径より小さく窄まったネット状の筒体をなしている。収容口52は、捕獲室側口52bが収容室51の端面周囲に接続されている。収容室側口52aは、収容室51の内部に配置されている。収容口52は、アメリカザリガニが捕獲室41から収容室51に進入するのは容易であるが、捕獲室41へ後退するのは阻止するようになっている。
【0026】
自動給餌装置60は、給餌用パイプ61により捕獲室41の上面に接続され、給餌用パイプ61を通して捕獲室41の内部に定期的に給餌するようになっている。自動給餌装置60は、支柱62または架台に固定されて水面上に配置される。
【0027】
[実験1]
図2に示す動物捕獲装置を用いて、アメリカザリガニの捕獲実験を行った。
動物捕獲装置をため池に6日間設置し、設置時と2日後と4日後の3回給餌を行った。
その結果、捕獲室41で平均10尾、収容室51で平均73尾、合計で平均83尾のアメリカザリガニを捕獲することができた。
【0028】
比較のため、
図2に示す動物捕獲装置で、収容室51に遮光ネットの代わりに透光性ネットを用い、収容口52を取り除いたもの(比較例)を準備し、設置時にのみ給餌を行った。結果は、平均22.5尾であった。
アメリカザリガニは餌に誘引されて捕獲室41に進入するが、高密度になると進入尾数は減少する。収容室51は遮光ネットで内部が暗いため、捕獲室41に進入したアメリカザリガニは収容室51へ移動する。これにより、高密度収容が可能になった。
【0029】
[実験2]
(A)
図2に示す動物捕獲装置で捕獲室41の長さを60cm、収容室51の長さを60cmとし、100gの餌を設置時と2日後と5日後にそれぞれ給餌したもの、(B)(A)の条件で収容室51の長さを90cmとしたもの、(C)(B)の条件で収容室51に遮光ネットの代わりに透光性ネットを用い、収容口52を取り除いたもの、(D)(C)の条件で給餌しなかったものの4種類の条件で、アメリカザリガニの捕獲実験を行った。
(A)〜(D)の各動物捕獲装置をため池に8日間設置した。
その結果、
図3に示すように、収容室51の長さを伸ばすことにより、捕獲数を増やすことができた。
【符号の説明】
【0030】
10,40 捕獲部
11,41 捕獲室
12,42 進入口
12a,42a 内部側口
12b,42b 外部側口
20,50 隔離部
21,51 収容室
22,52 収容口
22a,52a 収容室側口
22b,52b 捕獲室側口
30,60 自動給餌装置
31,61 給餌用パイプ
32,62 支柱