特許第6734594号(P6734594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6734594ヒートシンク及び該ヒートシンクの製造方法並びに該ヒートシンクを用いた電子部品パッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6734594
(24)【登録日】2020年7月14日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】ヒートシンク及び該ヒートシンクの製造方法並びに該ヒートシンクを用いた電子部品パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20200728BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20200728BHJP
   B21J 5/06 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   H01L23/36 Z
   H05K7/20 B
   B21J5/06 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-131967(P2016-131967)
(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公開番号】特開2018-6582(P2018-6582A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000123608
【氏名又は名称】かがつう株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】松浦 宗佑
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−051168(JP,A)
【文献】 特開2010−129774(JP,A)
【文献】 国際公開第03/061001(WO,A1)
【文献】 特表2013−500580(JP,A)
【文献】 特開2002−184922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
B21J 5/06
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品に接触させるための電子部品接触面を有する伝熱金属部と、該伝熱金属部における前記電子部品接触面以外の部分に面接触するとともにこの接触面以外の部分を露出した放熱金属部とを一体的に備え、前記伝熱金属部が、前記放熱金属部よりも熱伝導率の高い金属材料によって形成されているヒートシンクであって、
板状の基部と、該基部から厚み方向へ突出した筒状の放熱部とを有し、
これら基部及び放熱部が、前記放熱金属部と前記伝熱金属部とからなる二層状に構成されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記放熱金属部用の第1の板状素材と、前記伝熱金属部用の第2の板状素材とを圧着せずに重ね合わせ、これら二枚の板状素材の一部分に、厚み方向への塑性加工を施すことで、その塑性変形部分を前記放熱部とし、他の部分を前記基部とすることを特徴とする請求項1記載のヒートシンクの製造方法。
【請求項3】
前記塑性加工では、円筒状の内周面を有する成形型と、角筒状の外周面を有するパンチとが用いられ、前記成形型の内周面と前記パンチの外周面との間で、前記放熱部の周壁部を形成することを特徴とすることを特徴とする請求項2記載のヒートシンクの製造方法。
【請求項4】
電子部品に接触させるための電子部品接触面を有する伝熱金属部と、該伝熱金属部における前記電子部品接触面以外の部分に面接触するとともにこの接触面以外の部分を露出した放熱金属部とを一体的に備え、前記伝熱金属部が、前記放熱金属部よりも熱伝導率の高い金属材料によって形成されているヒートシンクであって、
前記放熱金属部は、一方側の面を前記熱金属部に接した板状の基部と、前記基部の他方側の面から突出してその突端側を開口した筒状の放熱部とを有し、
前記放熱部内の空間は、前記基部を厚み方向へ貫通して前記熱金属部を部分的に外部に露出していることを特徴とするヒートシンク。
【請求項5】
前記電子部品接触面に電子部品を接触させていることを特徴とする請求項1又は4記載のヒートシンクを用いた電子部品パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の熱を放熱するようにしたヒートシンク及び該ヒートシンクの製造方法並びに該ヒートシンクを用いた電子部品パッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば引用文献1の図10及び図11に記載されるように、上下のパンチ、上型及び下型等を備えた鍛造装置を用いて、平板上の基板に、その厚み方向の一方へ突出するように、有底筒状の凸部を多数形成してなる鍛造成形物がある。
この従来技術によれば、上下のパンチ間を狭めながら上型及び下型を同方向へ移動する独特の工法により、比較的薄肉で突出量の大きい有底筒状の凸部を形成することができ、電子部品用のヒートシンクとして用いるのに好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−223647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来技術の鍛造成形物を電子部品用のヒートシンクに用いる場合には、電子部品の熱をなるべく早く伝達して放熱するために、該鍛造成形物を熱伝導率の高い金属材料(例えば、銅等)によって形成するのが好ましい。
しかしながら、このような金属材料は、一般的に、熱伝導率の低い金属材料(例えば、アルミニウム等)に比較して重量単価が高価である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
電子部品に接触させるための電子部品接触面を有する伝熱金属部と、該伝熱金属部における前記電子部品接触面以外の部分に面接触するとともにこの接触面以外の部分を露出した放熱金属部とを一体的に備え、前記伝熱金属部が、前記放熱金属部よりも熱伝導率の高い金属材料によって形成されているヒートシンクであって、板状の基部と、該基部から厚み方向へ突出した筒状の放熱部とを有し、これら基部及び放熱部が、前記放熱金属部と前記伝熱金属部とからなる二層状に構成されていることを特徴とするヒートシンク。
また、本発明の他例としては、以下の構成を具備する。
電子部品に接触させるための電子部品接触面を有する伝熱金属部と、該伝熱金属部における前記電子部品接触面以外の部分に面接触するとともにこの接触面以外の部分を露出した放熱金属部とを一体的に備え、前記伝熱金属部が、前記放熱金属部よりも熱伝導率の高い金属材料によって形成されているヒートシンクであって、前記放熱金属部は、一方側の面を前記熱金属部に接した板状の基部と、前記基部の他方側の面から突出してその突端側を開口した筒状の放熱部とを有し、前記放熱部内の空間は、前記基部を厚み方向へ貫通して前記熱金属部を部分的に外部に露出していることを特徴とするヒートシンク。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、熱伝導率の高い金属材料の量を節約して、熱伝導性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るヒートシンク及び電子部品パッケージの一例を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図2】同ヒートシンク及び電子部品パッケージの製造工程を示す断面図であり、(a)は平板状素材の所定箇所を塑性加工した状態、(b)は鍔部を除去して放熱金属部を残した状態、(c)は放熱金属部に伝熱金属部を嵌め合せようとしている状態、(d)は電子部品にヒートシンクを装着した状態を示す。
図3】本発明に係るヒートシンク及び電子部品パッケージの他例を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図4】同ヒートシンク及び電子部品パッケージの製造工程を示す断面図であり、(a)は平板状素材の所定箇所を塑性加工した状態、(b)は鍔部を除去して放熱金属部を残した状態、(c)は放熱金属部に伝熱金属部を嵌め合せようとしている状態、(d)は電子部品にヒートシンクを装着した状態を示す。
図5】本発明に係るヒートシンク及び電子部品パッケージの他例を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図6】同ヒートシンクの製造工程を示す断面図であり、(a)は二種類の板状素材を重ね合せようとしている状態、(b)は二種類の板状素材を上下の成形型及びパンチにより挟んだ状態、(c)は上下の成形型及びパンチにより放熱部を塑性加工した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態のヒートシンクについて、第1の特徴は、電子部品に接触させるための電子部品接触面を有する伝熱金属部と、該伝熱金属部における前記電子部品接触面以外の部分に面接触するとともにこの接触面以外の部分を露出した放熱金属部とを一体的に備え、前記伝熱金属部が、前記放熱金属部よりも熱伝導率の高い金属材料によって形成されている(図1図6参照)。
【0009】
第2の特徴は、前記放熱金属部における露出部分に、複数の放熱部が突出している(図1及び図5参照)。
【0010】
第3の特徴として、前記放熱金属部は、前記伝熱金属部との接触面側に凹部を有し、この凹部内に前記伝熱金属部を嵌め合せている(図2及び図4参照)。
【0011】
第4の特徴は、ヒートシンクの製造方法であって、前記放熱金属部における前記凹部を塑性加工により形成し、前記凹部内に、前記凹部内面と略同形状の前記伝熱金属部を嵌め合せるようにした(図2及び図4参照)。
【0012】
第5の特徴は、ヒートシンクであって、板状の基部と、該基部から厚み方向へ突出した筒状の放熱部とを有し、これら基部及び放熱部が、前記放熱金属部と前記伝熱金属部とからなる二層状に構成されている(図5及び図6参照)。
【0013】
第6の特徴は、ヒートシンクの製造方法であって、前記放熱金属部用の第1の板状素材と、前記伝熱金属部用の第2の板状素材とを圧着せずに重ね合わせ、これら二枚の板状素材の一部分に、厚み方向への塑性加工を施すことで、その塑性変形部分を前記放熱部とし、他の部分を前記基部とする(図6参照)。
【0014】
第7の特徴は、前記塑性加工では、円筒状の内周面を有する成形型と、角筒状の外周面を有するパンチとが用いられ、前記成形型の内周面と前記パンチの外周面との間で、前記放熱部の周壁部を形成する(図6参照)。
【0015】
第8の特徴は、前記電子部品接触面に電子部品を接触させて電子部品パッケージを構成した(図1図2図4及び図5参照)。
【0016】
<第1の実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
ヒートシンクAは、電子部品aに接触させるための電子部品接触面10aを有する伝熱金属部10と、該伝熱金属部10における電子部品接触面10a以外の部分に面接触するとともにこの接触面以外の部分を露出した放熱金属部20とを一体的に備え、伝熱金属部10が、放熱金属部20よりも熱伝導率の高い金属材料によって形成されている(図1図2参照)。
【0017】
伝熱金属部10は、板状の部品であり、図示例によれば、矩形平板状に形成されている。
この伝熱金属部10を構成する金属材料は、放熱金属部20よりも熱伝導率が高いものであればよく、例えば、銅、又は銅を主成分に含む合金を用いる。
本実施態様によれば、伝熱金属部10の熱伝導率は、386〜402W/(m・K)である。
【0018】
放熱金属部20は、板状の基部21と、基部21における伝熱金属部10との接触面側に設けられた凹部22と、基部21から厚み方向の一方へ突出するとともに他方側を開口した筒状の放熱部23とを有する。
この放熱金属部20を構成する金属材料は、伝熱金属部10よりも熱伝導率が低いものであり、例えば、アルミニウム、又はアルミニウムを主成分に含む合金を用いる。
本実施態様によれば、放熱金属部20の熱伝導率は、150〜230W/(m・K)である。
【0019】
基部21は、矩形平板状の部位であり、その厚み方向の一方側の面を外気に露出し、その他方側である伝熱金属部10との接触面側に凹部22を形成している。
凹部22は、平面視矩形状且つ断面略凹状に形成され、その底面(図2によれば上面)の略全面を、伝熱金属部10との接触面としている。
【0020】
放熱部23は、基部21の露出側の面に、XY方向へ所定の間隔を置いて複数設けられる(図1(a)参照)。
各放熱部23は、一端側及び他端側を開口した筒状を呈し、基部21の露出側の面から略垂直に突出している。この放熱部23内の空間は、基部21を貫通している(図2参照)。
【0021】
次に、ヒートシンクAの製造方法について説明する。
伝熱金属部10は、平板状の素材(例えば、銅板等)を、プレス加工によりカットすることで、所定寸法の矩形板状に形成される。
【0022】
一方、放熱金属部20は、伝熱金属部10とは別の工程により形成される。
詳細に説明すれば、先ず、平板状の素材(例えば、アルミニウム合金板等)に対し、上下の金型及びパンチ等を用いた塑性加工が施されることで、凹部22の周囲に鍔部24を有する平面視矩形状且つ断面ハット状の部材に形成され、さらに、この部材に同様の塑性加工が施されることで、凹部22の底壁に複数の放熱部23が形成される。そして、ドリル加工又はプレス加工等によって、各放熱部23の突端に、開口が形成される(図2(a)参照)。
【0023】
この後、凹部22周囲の鍔部24がプレス加工等の除去加工によって除去され、その内側に、放熱金属部20が残される(図2(b)参照)
【0024】
次に、図2(c)に示すように、放熱金属部20の凹部22内に、伝熱金属部10が嵌め合せられ、放熱金属部20の凹部22底面と、伝熱金属部10の一方の面の略全面とが接触した状態で、これら伝熱金属部10と放熱金属部20が接続固定される。
伝熱金属部10と放熱金属部20を接続固定する手段は、例えば、溶着や、接着、圧入嵌合、ネジ止め等とすればよい。
【0025】
そして、上記構成のヒートシンクAは、伝熱金属部10の電子部品接触面10aの略全面に、電子部品aが接触固定されて、電子部品パッケージを構成する(図2(d)参照)。なお、ヒートシンクAを電子部品接触面10aに固定する手段は、接着剤を用いた接着や、ネジ止め、あるいは嵌合等とすることが可能である。
【0026】
よって、上記構成のヒートシンクAによれば、電子部品aによる発熱を、比較的熱伝導率の高い伝熱金属部10によって速やかに熱伝導して、放熱金属部20へ熱伝達し、この熱を、放熱金属部20の放熱部23によって外気に放出することができ、良好な放熱性能を得ることができる。
しかも、このヒートシンクAでは、ヒートシンク全体を銅等の高伝導率金属により形成した場合と比較し、材料コストを低減することができる。
また、例えば、ヒートシンク全体を銅のみによって形成さた場合は、長期使用された場合等に、銅表面の酸化により外観上の体裁を著しく低下させてしまうが、本実施態様では、露出側の放熱金属部20にアルミニウムを含むため、酸化による見栄えの低下を防ぐことができる。
【0027】
<第2の実施態様>
次に、本発明に係るヒートシンク及び電子部品パッケージの他の実施態様について説明する。なお、以下に示す実施態様は、上述した実施態様を一部変更したものであるため、主にその変更部分について詳述し、共通部分の説明は同一符号を用いる等して適宜省略する。
【0028】
図3図4に示すヒートシンクBは、先に説明したヒートシンクAから放熱部23を省いた構成としている。
詳細に説明すれば、ヒートシンクBは、電子部品aに接触させるための電子部品接触面10aを有する伝熱金属部10と、該伝熱金属部10における前記電子部品接触面10a以外の部分に面接触するとともにこの接触面以外の部分を露出した放熱金属部30とを一体的に備え、伝熱金属部10が、放熱金属部30よりも熱伝導率の高い金属材料によって形成されている。
【0029】
放熱金属部30は、上記放熱金属部20から放熱部23を省いた形状を呈し、その厚み方向の一方の面を放熱部31とし、他方の面に凹部32を有する。放熱部31は、図示例によれば、凹凸や孔ない平坦状の面としている。
この放熱金属部30は、凹部32の底面を、伝熱金属部10における電子部品接触面10aと反対側の面に略全面にわたって接触させて、該凹部32内に伝熱金属部10を嵌め合せている。伝熱金属部10を放熱金属部30に接続固定する手段は、ヒートシンクAと同様に、溶着や接着、圧入嵌合、ネジ止め等とすることができる。
【0030】
次に、ヒートシンクBの製造方法について説明する。
伝熱金属部10は、ヒートシンクAと同様にして、平板状の素材(例えば、銅板等)から所定寸法の矩形板状に形成される。
【0031】
一方、放熱金属部20は、伝熱金属部10とは別の工程により形成される。
詳細に説明すれば、先ず、平板状の素材(例えば、アルミニウム合金板等)に対し、上下の金型及びパンチ等を用いた塑性加工により、凹部32の周囲に鍔部34を有する平面視矩形状且つ断面ハット状の部材が形成される(図4(a)参照)。
そして、前記部材について、凹部32周囲の鍔部34がプレス加工等の除去加工によって除去され、その内側に、放熱金属部30が残される(図4(b)参照)
【0032】
次に、図4(c)に示すように、放熱金属部30の凹部32内に、伝熱金属部10が嵌め合せられ、放熱金属部30の凹部32底面と、伝熱金属部10の一方の面の略全面とが接触した状態で、これら伝熱金属部10と放熱金属部30が、溶着や、接着、圧入嵌合、ネジ止め等により、接続固定される。
【0033】
そして、上記構成のヒートシンクBは、伝熱金属部10における反放熱金属部側の面である電子部品接触面10aに、略全面にわたって、電子部品aが接触固定されて、電子部品パッケージを構成する。
伝熱金属部10に電子部品aを固定する手段は、接着やネジ止め、あるいは嵌合等とすればよい。
【0034】
よって、上記構成のヒートシンクBによれば、ヒートシンクAと同様に、良好な放熱性能を得ることができる上、ヒートシンク全体を銅等の高伝導率金属により形成した場合と比較し、材料コストを低減することができる。
しかも、このヒートシンクBによれば、設置状況等に応じて、平坦状の放熱部31上に放熱フィン等を設け、より放熱効率を向上することが可能である。
【0035】
<第3の実施態様>
図5図6に示すヒートシンクCは、基部51と、この基部51から厚み方向の一方側(図5(b)によれば上方側)へ突出した複数の筒状の放熱部52と、他方側へ突出した複数の筒状の伝熱部53とを有し、これら基部51、放熱部52及び伝熱部53が、前記放熱金属部と前記伝熱金属部とからなる二層状に構成されている。
【0036】
基部51は、平板状を呈する部分であり、その厚み方向の一方側(図示例によれば上方側)を前記放熱金属部とし、他方側を前記伝熱金属部としている。
【0037】
各放熱部52は、筒状の周壁部52aと、該周壁部52aの突端側の底壁52bとを有する有底筒状に形成される。
周壁部52a及び底壁52bは、外側の層が前記放熱金属部であり、内側の層が前記伝熱金属部になっている。
周壁部52aは、前記放熱金属部である外周面が、円筒状の面(言い換えれば、横断面円形)に形成され、前記伝熱金属部である内周面が、入隅部52cを有する角筒状(図5(a)に示す一例によれば六角筒状)の面に形成されている。
【0038】
各伝熱部53は、円筒状の周壁部53aと、該周壁部53aの突端側の底壁53bとを有し、放熱部52と略同形状の有底筒状に形成される。
周壁部53a及び底壁53bは、外側の層が前記伝熱金属部であり、内側の層が前記放熱金属部になっており、底壁53bの外面が、電子部品接触面になっている(図5(b)参照)。
周壁部53aは、前記伝熱金属部である外周面が、円柱の外周面(言い換えれば、横断面円形)に形成され、前記放熱金属部である内周面が、入隅部53cを有する角筒状(図5(a)に示す一例によれば六角筒状)の面に形成される。
【0039】
前記放熱金属部は、基部51、周壁部52a、底壁52b、周壁部53a及び底壁53bにわたって連続している(図6(c)参照)。
同様に、前記伝熱金属部も、基部51、周壁部52a、底壁52b、周壁部53a及び底壁53bにわたって連続している。
【0040】
そして、図6(c)に示すように、基部51の厚みt1よりも、周壁部52a,53aの厚みt2が小さくなっており、さらに、周壁部52a,53aの厚みt2よりも、底壁52b,53bの厚みt3が小さくなっている。
【0041】
上記構成のヒートシンクCは、電子部品接触面(底壁53b)を電子部品aに接触し固定して電子部品パッケージを構成する(図5(b)参照)。
ヒートシンクCと電子部品aを固定する手段は、例えば、接着やネジ止め、あるいは嵌合等とすればよい。
【0042】
次に、ヒートシンクCの製造方法について説明する。
先ず、上記放熱金属部になる板状素材50aと、上記伝熱金属部になる板状素材40aとが、重ね合わせられる(図6(a)参照)。
この際、これら板状素材50aと板状素材40aは、接着や圧着、溶接等により接合されることなく、引き離すことが可能な状態で、単に重ね合わせられる。
すなわち、放熱部52及び伝熱部53を加工する前の板状素材50a,40aは、複数枚の金属製板材を重ね合わせて圧着し原子間接合したクラッド材とは異なる。
【0043】
次に、前記のように重ね合わせられた二枚の板状素材50a,40aには、円筒状の貫通孔を有する第1成形型M1と、この第1成形型M1の前記貫通孔に挿通された円柱状の第1パンチP1と、角筒状の貫通孔を有する第2成形型M2と、この第2成形型M2の前記貫通孔に挿通された角筒状の第2パンチP2とを用いて塑性加工が行われる(図6(b)(c)参照)。
【0044】
詳細に説明すれば、先ず、重ね合わされた二枚の板状素材50a,40aが、第1成形型M1及び第1パンチP1と、第2成形型M2及び第2パンチP2とによって挟まれる(図6(b)参照)。
次に、第1パンチP1と第2パンチP2の間を狭めながら、第1成形型M1及び第2成形型M2を、基部51の厚み方向の一方(図示例によれば下方)へ移動する(図6(c)参照)
これらの工程によれば、周壁部52a及び底壁52bが薄く延ばされて、比較的突出量の大きな放熱部52を形成することができる。
【0045】
また、伝熱部53についても、第1成形型M1、第2成形型M2、第1パンチP1及び第2パンチP2を、相対的に上下を逆にして用い、同様の工程によって形成される。
【0046】
よって、上記構成のヒートシンクCによれば、ヒートシンクA,Bと同様に、良好な放熱性能を得ることができる上、ヒートシンク全体を銅等の高伝導率金属により形成した場合と比較し、材料コストを低減することができる。
しかも、上記塑性加工の際に、第2パンチP2外周の角部P21と第1成形型M1の内周面との間で、放熱部52(又は伝熱部53)周壁に局部的な力が作用し入隅部52c(又は53c)が形成されるため、この入隅部52c(又は53c)でのアンカー効果によって、放熱金属部50と伝熱金属部40とを強力に接続することができる。
【0047】
なお、上記構成のヒートシンクCによれば、特に好ましい態様として、伝熱部53を電子部品a側へ突出させて、この伝熱部53にも放熱作用を持たせるようにしたが、他例としては、突起状の伝熱部53を省いて、伝熱金属部40の平坦状の面に電子部品aを接触し固定した態様とすることも可能である。
【0048】
また、上記ヒートシンクCでは、放熱部52及び伝熱部53を有底筒状に形成したが、他例としては、これらの底壁(頂部)に開口を設けて、放熱部52と伝熱部53の一方又は双方を、内部を貫通した筒状に形成することも可能である。
【0049】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
10,40:伝熱金属部
10a:電子部品接触面
20,30,50:放熱金属部
21,51:基部
22,32:凹部
23,31,52:放熱部
53:伝熱部
53b:底壁(電子部品接触面)
a:電子部品
A,B,C:ヒートシンク
M1:第1成形型
M2:第2成形型
P1:第1パンチ
P2:第2パンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6