【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に関わる合成樹脂の成形材料の表面が金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われた該成形材料の集まりが、液体の有機化合物に分散した懸濁液を製造する製造方法は、
熱分解で金属を析出する金属化合物をアルコールに分散し、該金属化合物が分子状態でアルコールに分散したアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度が前記アルコールの粘度より20倍以上高い第二の性質と、融点が20℃より低い第三の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より高い第四の性質とからなる4つの性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合し、該有機化合物が前記アルコールに溶解ないしは混和し、該有機化合物が前記アルコール分散液と均一に混ざり合った混合液を作成する、さらに、該混合液に合成樹脂の成形材料の集まりを混合し、該混合液の粘度に応じた厚みで該混合液が前記成形材料に付着した混合物を作成する、この後、該混合物から前記アルコールを気化させる、これによって、前記成形材料の表面に前記金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、該金属化合物の微細結晶の集まりが
表面に析出した成形材料の集まりが、前記有機化合物に分散した第一の懸濁液が製造される、さらに、該第一の懸濁液を熱処理し、前記金属化合物の微細結晶を熱分解
させ、粒状の金属のナノ粒子が前記成形材料の表面に一斉に析出し、隣接する前記粒状の金属のナノ粒子同士が接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属のナノ粒子の集まりが前記成形材料の表面を覆う、これによって、該金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われた成形材料の集まりが、前記有機化合物に分散した第二の懸濁液が製造され、合成樹脂の成形材料の表面が金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われた該成形材料の集まりが、液体の有機化合物に分散した懸濁液が製造される懸濁液の製造方法。
【0007】
つまり、本製造方法における5つの処理を連続して実施すると、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが成形材料の表面に析出し、この成形材料の集まりが液体の有機化合物に分散した第二の懸濁液が製造される。第二の懸濁液から有機化合物を気化すれば、全ての成形材料が金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われる。この金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、一定の結合強度を有する被膜を形成し、この被膜は成形材料が外界から遮断される気密性を有する。これによって、5段落に記載した第一の課題を解決する成形体が製造される。
すなわち、第一に、金属化合物をアルコールに分散すると、金属化合物が分子状態でアルコールに分散し、金属の原料が液相化される。第二に、有機化合物をアルコール分散液に混合すると、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和するため、有機化合物は金属化合物のアルコール分散液と均一に混ざり合って混合液を形成する。第三に、混合液に合成樹脂の成形材料の集まりを混合させると、有機化合物の粘度がアルコールの粘度より20倍以上高いため、混合液の粘度に応じた厚みで混合液が成形材料に付着し、混合液が付着した成形材料の集まりからなる混合物が形成される。第四に、混合物からアルコールを気化させると、金属化合物はアルコールに分散するが有機化合物に分散しないため、金属化合物の微細結晶が、成形材料の表面に一斉に析出する。この結果、金属化合物の微細結晶の集まりが成形材料の表面に析出し、この成形材料の集まりが液体の有機化合物に分散した第一の懸濁液が製造される。第五に、第一の懸濁液を熱処理し金属化合物を熱分解すると、金属化合物の微細結晶の大きさに応じた40−60nmの大きさからなる粒状の金属のナノ粒子が、成形材料の表面に一斉に析出する。金属のナノ粒子は不純物を持たない活性状態で析出するため、隣接した金属のナノ粒子は接触する部位で互いに金属結合し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが成形材料の表面に析出し、この成形材料の集まりが液体の有機化合物に分散した第二の懸濁液が作成される。なお、金属のナノ粒子は有機化合物と反応せず、金属結合した金属のナノ粒子の集まりを形成した後は、安定した金属のナノ粒子の集まりとして有機化合物と共に第二の懸濁液を構成する。また、有機化合物は吸湿性がないため、液体の有機化合物で外界から遮断された金属結合した金属のナノ粒子の集まりは経時変化しない。従って、第二の懸濁液から有機化合物を気化すれば、全ての成形材料が金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われる。この金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、金属のナノ粒子が積み重なり合った積層構造を形成して成形材料を覆うため、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、一定の結合強度を有し、また、気密性の被膜を形成して成形材料を覆う。これによって、5段落の第一の課題が解決される。
また、第二の懸濁液における有機化合物の粘度と混合割合とを変え、さらに、成形材料の混合割合を変えれば、第二の懸濁液における成形材料の滑り性と第二の懸濁液の粘り性とが自在に変わる。さらに、有機化合物の沸点を変えれば、第二の懸濁体に加熱と加圧とを加えて成形体を加工する際に、第二の懸濁液における成形材料の滑り性と第二の懸濁液の粘り性とが自在に変えられ、成形体を加工する際の成形機の制約を受けない。
なお、熱可塑性樹脂の成形材料と一部の熱硬化性樹脂の成形材料は、長さが2ないし3mm程度のペレットで、金属のナノ粒子より5桁も大きい。また、残りの熱硬化性樹脂の成形材料は、粒径が数十μm以上の粉粒体で、金属のナノ粒子より3桁以上も大きい。従って、成形材料に比べて3桁以上も小さい金属のナノ粒子が金属結合し、金属のナノ粒子の集まりとなって、成形材料の表面に析出する。
また、金属化合物の熱分解反応は、最初に金属化合物が金属と無機物ないしは有機物とに分解する。次に、無機物ないしは有機物が気化熱を奪いながら気化し、気化が完了した後に、金属が析出して熱分解反応が完了する。この析出した金属は不純物を含まない。
なお、本製造方法における原料は、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと高沸点の有機化合物とからなり、いずれも汎用的な工業用薬品である。また、本製造方法における処理は、第一に金属化合物をアルコールに分散する処理と、第二にアルコール分散液に有機化合物を混合する処理と、第三に混合液に合成樹脂の成形材料の集まりを混合する処理と、第四に混合物からからアルコールを気化させる処理と、第五に第一の懸濁液を熱処理する処理とからなり、これら5つの簡単な処理を連続して実施すると、第二の懸濁液が製造される。このため、第二の懸濁液は、極めて安価な費用で大量に製造できる。
いっぽう、アルコールの沸点と、金属化合物の熱分解で生成される無機物ないしは有機物の沸点とは、各々に温度差があり、気化したアルコールと、気化した無機物ないしは有機物とは、回収機で分離して個別に回収できる。
【0008】
前記した懸濁液を製造する製造方法
において、前記した金属化合物が、無機物の分子ないしは
無機物のイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体であり、前記したアルコールがメタノールであり、前記した有機化合物が、芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに属するいずれか一種類の有機化合物であり、
前記金属化合物として前記無機金属化合物からなる錯体を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、前記有機化合物として前記一種類の有機化合物とを用い、前記した
懸濁液を製造する製造方法に従って懸濁液を製造する、前記した懸濁液を製造する製造方法。
【0009】
つまり、本懸濁液の製造方法における無機金属化合物からなる錯体は、還元雰囲気の180−220℃の比較的低い温度で熱分解が完了して金属を析出する。また、最も汎用的なアルコールであるメタノールに、10重量%に近い割合で分散する。このため、無機金属化合物からなる錯体は、6段落に記載した懸濁液の製造方法において、懸濁液を製造する際の原料になる。
すなわち、無機物の分子ないしは
無機物のイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体を、還元雰囲気で熱処理すると、配位結合部が最初に分断され、無機物と金属とに分解される。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、すべての無機物の気化が完了した後に金属が析出する。つまり、錯体を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きい。このため、金属イオンと配位子との距離が最も長い。従って、錯体を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、気化が完了した後に金属が析出する。この際、無機物が低分子量であるため、無機物の分子量に応じた180−220℃の低い温度で無機物の気化が完了する。このような錯体として、アンモニアNH
3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、塩素イオンCl
−が、ないしは塩素イオンCl
−とアンモニアNH
3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、シアノ基CN
−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するシアノ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、臭素イオンBr
−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するブロモ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、沃素イオンI
−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するヨード金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体などがある。また、このような分子量が小さい無機金属化合物からなる錯体は、合成が容易で最も安価な金属錯イオンを有する金属錯体である。
また、本懸濁液の製造方法における芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに、メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度がメタ―ノールの粘度より20倍以上高い第二の性質と、融点が20℃より低い第三の性質と、沸点が無機金属化合物からなる錯体の熱分解温度より高い第四の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は、いずれも汎用的な工業用薬品である。このため、このような有機化合物は、6段落に記載した懸濁液の製造方法において、懸濁液を製造する際の安価な原料になる。
従って、無機金属化合物からなる錯体のメタノール分散液に、前記した有機化合物のいずれかを混合すると、錯体と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液に、合成樹脂の成形材料の集まりを混合して混合物を作成すると、有機化合物の粘度がメタノールの粘度より20倍以上高いため、混合液の粘度に応じた厚みで混合液が成形材料の表面に付着する。この後、混合物からメタノールを気化させると、錯体はメタノールに分散するが有機化合物に分散しないため、錯体の微細結晶が、成形材料の表面に一斉に析出する。この結果、錯体の微細結晶の集まりが表面に析出した成形材料の集まりが、液体の有機化合物に分散した第一の懸濁液が製造される。この第一の懸濁液を熱処理し、錯体を熱分解すると、錯体の微細結晶の大きさに応じた40−60nmの大きさからなる金属の粒状のナノ粒子が、成形材料の表面に一斉に析出する。この金属のナノ粒子は不純物を持たない活性状態で析出するため、隣接した金属のナノ粒子は接触する部位で互いに金属結合し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが表面に析出した成形材料の集まりが、液体の有機化合物に分散した第二の懸濁液が製造される。従って、本懸濁液の製造方法における錯体とメタノールと有機化合物とは、6段落に記載した懸濁液の製造方法において、懸濁液を製造する際の第一の安価な原料になる。
なお、熱硬化性樹脂の成形材料を用いる場合は、成形材料の軟化点が無機金属化合物の錯体の熱分解温度より低い。このため、第二の懸濁液を製造する際に、軟化したペレットないしは粉粒体の表面に、錯体の熱分解で金属のナノ粒子の集まりが一斉に析出し、このペレットないしは粉粒体の集まりが有機化合物に分散した第二の懸濁液が製造される。
また、非晶性の熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、ガラス転移温度が無機金属化合物の錯体の熱分解温度より低い成形材料を用いる。このため、第二の懸濁液を製造する際に、軟化したペレット表面に、錯体の熱分解で金属のナノ粒子の集まりが一斉に析出し、このペレットの集まりが有機化合物に分散された第二懸濁液が製造される。
さらに、結晶性の熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、融点が無機金属化合物の錯体の熱分解温度より低い成形材料を用いる。このため、第二の懸濁液を製造する際に、融解したペレットの表面に、錯体の熱分解で金属のナノ粒子の集まりが一斉に析出し、このペレットの集まりが有機化合物に分散した第二懸濁液が製造される。
以上に説明したように、本懸濁液の製造方法に依れば、安価な工業用薬品である無機金属化合物からなる錯体と、最も汎用的なアルコールであるメタノールと、汎用的な工業用薬品である有機化合物とを原料として用い、さらに、様々な材質の合成樹脂の成形材料を用いて第一の懸濁液を製造し、さらに、第一の懸濁液を還元雰囲気の180−220℃の温度で熱処理するだけで、6段落に記載した懸濁液が大量に安価な費用で製造される。
【0010】
前記した懸濁液を製造する製造方法
において、前記した金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物であり、前記したアルコールがメタノールであり、前記した有機化合物が、芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに属するいずれか一種類の有機化合物であり、
前記金属化合物として前記カルボン酸金属化合物を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、前記有機化合物として前記一種類の有機化合物とを用い、前記した
懸濁液を製造する製造方法に従って懸濁液を製造する、前記した懸濁液を製造する製造方法。
【0011】
つまり、本懸濁液の製造方法における二つの特徴を持つカルボン酸金属化合物は、大気雰囲気の290−430℃で熱分解が完了し金属を析出する。また、最も汎用的なアルコールであるメタノールに対し、10重量%に近い濃度で分散する。このため、カルボン酸金属化合物は、6段落に記載した懸濁液の製造方法において、懸濁液を製造する際の原料になる。
すなわち、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物においては、金属イオンが最も大きいイオンであり、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸の分子量と数とに応じて、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了すると金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などがある。なお、オクチル酸の沸点は228℃であり、ラウリン酸の沸点は296℃であり、ステアリン酸の沸点は361℃である。従って、これらのカルボン酸金属化合物は、290−430℃の大気雰囲気で熱分解が完了する。また、メタノールに10重量%に近い割合で分散する。
さらに、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、カルボン酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。このため、9段落で説明した無機金属化合物からなる錯体より熱処理温度が高いが、錯体より安価な金属化合物である。
また、本懸濁液の製造法における芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに、メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度がメタノールの粘度より20倍以上高い第二の性質と、融点が20℃より低い第三の性質と、沸点がカルボン酸金属化合物の熱分解温度より高い第四の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は、汎用的な工業用薬品である。このため、このような有機化合物は、6段落に記載した懸濁液の製造方法において、懸濁液を製造する際の安価な原料になる。
従って、カルボン酸金属化合物のメタノール分散液に、前記した有機化合物のいずれかを混合すると、カルボン酸金属化合物と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液に、合成樹脂の成形材料の集まりを混合して混合物を作成すると、有機化合物の粘度がメタノールの粘度より20倍以上高いため、混合液の粘度に応じた厚みで混合液が成形材料に付着する。この混合物からメタノールを気化させると、カルボン酸金属化合物はメタノールに分散するが有機化合物に分散しないため、カルボン酸金属化合物の微細結晶が、成形材料の表面に一斉に析出する。この結果、カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが成形材料の表面に析出し、この成形材料の集まりが、液体の有機化合物に分散した第一の懸濁液が製造される。さらに、第一の懸濁液を熱処理して、カルボン酸金属化合物を熱分解すると、カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じた40−60nmの大きさからなる金属の粒状のナノ粒子が、成形材料の表面に一斉に析出する。この金属のナノ粒子は不純物を持たない活性状態で析出するため、隣接した金属のナノ粒子は接触する部位で互いに金属結合し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが成形材料の表面に析出し、この成形材料の集まりが、液体の有機化合物に分散した第二の懸濁液が製造される。従って、本懸濁液の製造方法におけるカルボン酸金属化合物とメタノールと有機化合物とは、6段落に記載した懸濁液の製造方法において、懸濁液を製造する第二の安価な原料になる。
なお、非晶性の熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、ガラス転移温度が、無機金属化合物からなる錯体の熱分解温度より高く、かつ、オクチル酸金属化合物の熱分解温度より低い成形材料を用いる。この際、金属のナノ粒子の原料として、オクチル酸金属化合物を用いる。従って、第二の懸濁液を製造する際に、オクチル酸金属化合物の熱分解で金属のナノ粒子の集まりが、軟化したペレット表面に一斉に析出し、こうしたペレットの集まりが有機化合物に分散した第二懸濁液が製造される。
また、結晶性の熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、融点が無機金属化合物からなる錯体の熱分解温度より高く、かつ、オクチル酸金属化合物の熱分解温度より低い成形材料を用いる。この際、金属のナノ粒子の原料として、オクチル酸金属化合物を用いる。従って、第二の懸濁液を製造する際に、融解したペレットの表面に、オクチル酸金属化合物の熱分解で、金属のナノ粒子の集まりが一斉に析出し、こうしたペレットの集まりが、有機化合物に分散した第二懸濁液が製造される。
さらに、融点がオクチル酸金属化合物の熱分解温度より高い結晶性の熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、ラウリン酸金属化合物を金属のナノ粒子の原料として用いる。従って、第二の懸濁液を製造する際に、融解したペレットの表面に、ラウリン酸金属化合物の熱分解で、金属のナノ粒子の集まりが一斉に析出し、こうしたペレットの集まりが有機化合物に分散した第二の懸濁液が製造される。
以上に説明したように、本懸濁液の製造方法に依れば、安価な工業用薬品であるカルボン酸金属化合物と、汎用的なアルコールのメタノールと、汎用的な工業用薬品である有機化合物とを原料として用い、さらに、様々な材質の合成樹脂の成形材料を用いて第一の懸濁液を製造し、さらに、第一の懸濁液を大気雰囲気の290−430℃の温度で熱処理するだけで、6段落に記載した懸濁液が大量に安価な費用で製造される。
【0012】
前記した製造方法に従って製造した懸濁液を用いて圧縮成形法に依って成形体を製造する製造方法は、前記した製造方法に従って製造した懸濁液を充填するキャビティを、予め前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に昇温し、前記懸濁液を圧縮する成形機を、予め前記キャビティより高い温度に昇温し、この後、前記キャビティに前記懸濁液を充填し、該懸濁液から前記有機化合物を気化させる、さらに、前記キャビティに前記成形機を下ろし、該成形機によって、前記キャビティ内に充填された前記懸濁液を昇温するとともに、徐々に増大する加圧力を加え、前記懸濁液に残存した
前記有機化合物を気化させ、さらに、
前記懸濁液を構成する成形材料を熱融解もしくは熱軟化させ、この後、該成形材料を圧縮変形させる、この後、前記成形機による加圧を一旦中止し、
残存した前記有機化合物の
気体をキャビティと成形機とから抜け出させる、さらに、前記成形機によって、
再度、前記キャビティ内に充填された前記懸濁液を昇温するとともに、前記加圧力より大きい加圧力を加える、これによって、圧縮変形した前記成形材料が、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われるとともに、隣接する
前記金属のナノ粒子同士が金属結合することで、該圧縮変形した成形材料同士が結合され、前記キャビティと前記成形機とで形成される間隙に成形体が製造される、前記した製造方法に従って製造した懸濁液を用いて圧縮成形法に依って成形体を製造する製造方法。
【0013】
つまり、本成形体の製造方法に依れば、前記した製造方法で製造した懸濁液を用い、従来の圧縮成形法に近い方法で、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ合成樹脂の成形体が、キャビティと成形機とで形成される間隙に製造される。
すなわち、予めキャビティを、6段落に記載した第二の懸濁液を構成する有機化合物の沸点に昇温する。また、予め成形機をキャビティより高い温度に昇温する。なお、第二の懸濁液は、有機化合物の存在によって滑り性と粘り性とを兼備する。このため、キャビティに第二の懸濁液が容易に充填され、この後、第二の懸濁液から有機化合物の多くが気化する。いっぽう、残存した有機化合物の粘度が高いため、成形材料から有機化合物は離脱せず、成形材料に滑り性をもたらし、成形材料の移動を容易にする。なお、気化した有機化合物は、回収機をキャビティの近くに設置し、回収機で吸引して再利用する。この後、成形機をキャビティに下し、成形機によって第二の懸濁液を昇温させ、また、徐々に増大する加圧力を加える。この際、最初に第二の懸濁液から残りの有機化合物が気化し、第二の懸濁液は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われた成形材料の集まりになる。次に、成形材料が熱融解もしくは熱軟化し、徐々に増大する加圧力によって、成形材料が圧縮変形される。いっぽう、有機化合物の気体は、徐々に増大する加圧力によって、成形材料の集まりに留まれず、成形材料の集まりとキャビティとの隙間と、成形材料の集まりと成形機との隙間とに吐き出る。この後、成形機による加圧を一旦中止し、有機化合物の気体をキャビティと成形機とから抜け出させ、抜け出た気体を回収機で吸引して再利用する。このため、キャビティ内の成形材料の集まりに気体は存在せず、成形体の内部に空胞が形成されない。この後、成形機で前記した加圧力より大きな加圧力を成形材料の集まりに加え、成形材料を昇温しながらさらに圧縮変形する。この結果、圧縮変形した成形材料は金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われる。また、成形材料が金属のナノ粒子が析出した温度より高い温度に昇温されるため、金属結合した金属のナノ粒子が活性状態になって僅かに粗大化し、僅かに粗大化した金属のナノ粒子が再度金属結合する。このため、成形材料を覆っていた金属のナノ粒子の集まりが再度金属結合することで、圧縮変形した成形材料が互いに結合され、成形材料の集まりからなる成形体がキャビティと成形機とで形成される間隙に形成される。この金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、金属のナノ粒子が積み重なり合った積層構造を形成して成形材料を覆うため、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、一定の結合強度を有し、気密性の被膜を形成して成形材料を覆う。このため、成形体は内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。また、成形体は金属に近い性質を持つため、例えば、熱伝導性に優れた放熱基材を圧縮成形法で製造できる。
すなわち、金属化合物が熱分解して金属のナノ粒子を析出した温度は、有機化合物の沸点より低いため、有機化合物が気化する際と、熱融解もしくは熱軟化した成形材料が圧縮変形する際とを通じて、金属のナノ粒子の集まりが継続して昇温される。このため、金属のナノ粒子の集まりに、継続して熱エネルギーが供給され、金属のナノ粒子が再び活性状態になる。いっぽう、有機化合物で外界と遮断されていた金属のナノ粒子の集まりは経時変化せず、不純物を持たないため、活性状態になった金属のナノ粒子は、隣接する金属のナノ粒子を取り込んで成長し、僅かに粗大化した金属のナノ粒子が、再び接触部位で互いに金属結合し、改めて金属結合した金のナノ粒子の集まりとなる。こうした金属のナノ粒子が昇温され、活性化され、ナノ粒子が僅かに成長し、僅かに成長したナノ粒子が再度金属結合する過程を、成形材料が昇温されるたびに、キャビティ内で繰り返す。この結果、圧縮変形された成形材料が、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、成形材料を覆う金属のナノ粒子の集まりが金属結合して成形材料が互いに結合し、成形体が形成される。従って、成形体を構成する全ての成形材料が、一定の結合強度を有する金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる被膜で覆われ、全ての成形材料が外界の雰囲気を遮断する気密性の被膜で覆われる。このため、成形体は不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。
なお、成形材料として熱硬化性樹脂を用いる場合は、有機化合物の沸点に昇温されたキャビティ内に第二の懸濁液を充填すると、有機化合物が気化し、また、成形材料が軟化した後に重合反応が始まる。さらに、成形機によって成形材料を昇温させて加圧すると、残存した有機化合物が最初に気化し、次に軟化した成形材料が圧縮変形される。従って、有機化合物が気化した後は、成形材料は金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われる。さらに、成形材料より3桁以上も小さい金属のナノ粒子の集まりが、成形材料の変形に追従して変形し、圧縮変形した成形材料を覆い続ける。また、金属のナノ粒子が析出した温度より高い温度に昇温されるため、金属結合した金属のナノ粒子が成長して僅かに粗大化し、粗大化した金属のナノ粒子が再度金属結合する。このため、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、重合反応が進んだ成形材料を覆い、成形材料を覆う金属のナノ粒子の集まりが金属結合して成形材料が互いに結合し、熱硬化性樹脂からなる成形体が製造される。
また、熱硬化性樹脂は、昇温するほど重合反応が進み、熱硬化も同時に進むため、熱硬化が進み過ぎた成形材料を圧縮するには過大な加圧力が必要になる。いっぽう、熱硬化性樹脂の軟化点が、無機金属化合物からなる錯体が熱分解する温度より低い。このため、第二の懸濁液を加熱して圧縮する成形機の温度を、錯体が熱分解する温度より高いが、軟化点に応じて錯体の熱分解温度に近づける。これによって、熱硬化が進み過ぎる前の軟化状態にある成形材料が圧縮され、圧縮された成形材料は成形機でさらに昇温されて重合反応が進み、重合反応が進んだ成形材料の集まりからなる熱硬化性樹脂の成形体が製造される。
さらに、成形材料として非晶性の熱可塑性樹脂を用いる場合は、成形機の温度を非晶性樹脂のガラス転移温度より高く、かつ、金属のナノ粒子が析出した温度より高いが、ガラス転移温度に応じて、金属のナノ粒子が析出した温度に近づける。こうして、成形機によって第二の懸濁液に熱と圧力とを同時に加えると、最初に有機化合物が気化し、この後、ペレットの粘性が低下する前に軟化したペレットが圧縮変形する。従って、有機化合物が気化した後は、ペレットは金属結合した金属のナノ粒子の集まりで継続して覆われる。さらに、ペレットより5桁も小さい金属のナノ粒子の集まりが、ペレットの変形に追従して変形し、変形したペレットを覆い続ける。また、金属のナノ粒子が析出した温度より高い温度に昇温されるため、金属結合した金属のナノ粒子が成長して僅かに粗大化し、粗大化した金属のナノ粒子が再度金属結合する。この結果、ペレットが再度金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、ペレットを覆う金属のナノ粒子の集まりが再度金属結合してペレットが互いに結合し、非晶性の熱可塑性樹脂からなる成形体が製造される。
また、成形材料として結晶性の熱可塑性樹脂を用いる場合は、成形機の温度を結晶性樹脂の融点より高く、かつ、金属のナノ粒子が析出した温度より高いが、融点に応じて金属のナノ粒子が析出した温度に近づける。こうして、成形機によって第二の懸濁液に熱と圧力とを同時に加えると、最初に有機化合物が気化し、この後、ペレットの粘性が低下する前に融解したペレットが圧縮変形する。従って、有機化合物が気化した後は、ペレットは金属結合した金属のナノ粒子の集まりで継続して覆われる。さらに、ペレットより5桁も小さい金属のナノ粒子の集まりが、ペレットの変形に追従して変形し、変形したペレットを覆い続ける。また、金属のナノ粒子が析出した温度より高い温度に昇温されるため、金属結合した金属のナノ粒子が成長して僅かに粗大化し、粗大化した金属のナノ粒子が再度金属結合する。この結果、ペレットが再度金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、ペレットを覆う金属のナノ粒子の集まりが再度金属結合して成形材料が互いに結合し、結晶性の熱可塑性樹脂からなる成形体が製造される。
この後、成形機を引き上げ、キャビティから成形体を取り出すと、固化した成形材料の集まりからなる成形体が得られる。この固化した成形材料は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、外界の雰囲気から遮断される。従って、固化した成形材料が結合した成形体は、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。
なお、成形体は内部に空胞がないため、火災時に高温に昇温されても、空胞の体積膨張が起こらず、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが破壊されない。また、成形体が高温に昇温されても、金属のナノ粒子の大きさが3桁以上も小さいため、合成樹脂の体積膨張に、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが追従して変形し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは破壊されない。このため、不燃性と自己発火しない性質とが維持される。
さらに、成形体のリサイクルの際は、金属のナノ粒子を構成する金属の融点と、熱可塑性樹脂の融点、ないしは、熱硬化樹脂の反応温度とは大きく乖離し、かつ、金属の比重と合成樹脂の比重とが大きく乖離するため、リサイクルの際に成形体から金属ナノ粒子の集まりを分離させることは容易で、合成樹脂とナノ粒子の金属とは再利用できる。
以上に説明したように、本成形体の製造方法に依れば、5段落で説明した第2から第5の4つの課題を解決して、圧縮成形法によって、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ合成樹脂の成形体が製造される。
【0014】
前記した製造方法で製造した懸濁液を用いてトランスファ成形法に依って成形体を製造する製造方法は、前記した製造方法で製造した懸濁液を充填するポットを、予め前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に昇温し、前記懸濁液が押し込まれるキャビティを、予め前記ポットより高い温度に昇温し、前記ポットに前記懸濁液を充填し、該懸濁液から前記有機化合物を気化させる、この後、前記ポットに設置されたプランジャーによって、前記ポットに充填された前記懸濁液を昇温するとともに加圧し、前記懸濁液に残存した
前記有機化合物を気化させ、さらに、
前記懸濁液を構成する成形材料を熱融解もしくは熱軟化させ、この後、該成形材料を前記キャビティ内に押し込む、この後、前記プランジャーに依る加圧を一旦中止し、残存した前記有機化合物の気体を前記キャビティから抜け出させる、さらに、前記プランジャーによって、
再度、前記キャビティ内に押し込まれた前記懸濁液を加熱するとともに、徐々に増大する加圧力を加える、これによって、圧縮変形した前記成形材料が、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われるとともに、隣接する
前記金属のナノ粒子同士が金属結合することで、該圧縮変形した成形材料同士が結合され、前記キャビティ内に成形体が製造される、前記した製造方法に従って製造した懸濁液を用いてトランスファ成形法に依って成形体を製造する製造方法。
【0015】
つまり、本成形体の製造方法に依れば、前記した製造方法で製造した懸濁液を用い、従来のトランスファ成形法に近い方法で、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ合成樹脂の成形体が、キャビティ内に製造される。
すなわち、予めポットを、6段落に記載した第二の懸濁液を構成する有機化合物の沸点に昇温する。また、予めキャビティをポットより高い温度に昇温する。なお、第二の懸濁液は、有機化合物の存在によって滑り性と粘り性とを兼備する。このため、ポットに第二の懸濁液が容易に充填され、この後、第二の懸濁液から有機化合物の多くが気化する。いっぽう、残存した有機化合物の粘度が高いため、成形材料から有機化合物は離脱せず、成形材料に滑り性をもたらし、成形材料の移動を容易にする。なお気化した有機化合物は、回収機をポットの近くに設置し、回収機で吸引して再利用する。この後、ポットに充填された第二の懸濁液を、プランジャーで加圧し、スプール、ランチ、ゲートを通過させた後に、キャビティ内に押し込む。キャビティに押し込まれた第二の懸濁液は昇温され、また一定の加圧力が作用する。この際、最初に残りの有機化合物が気化し、第二の懸濁液は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われた成形材料の集まりになる。さらに、成形材料が融解もしくは軟化し、加圧力で圧縮変形する。なお、気化した有機化合物は、加圧力で成形材料の集まりの内部に留まれず、成形材料の集まりとキャビティとの隙間と、成形材料の集まりとプランジャーとの隙間とに吐き出される。この後、プランジャーの加圧を一旦中止し、気体をキャビティから抜け出させ、回収機で吸引して再利用する。このため、キャビティ内の成形材料の集まりに気体は存在せず、成形体の内部に空胞が形成されない。この後、プランジャーによって、スプール、ランチ、ゲートを介して、キャビティ内に押し込まれた成形材料の集まりを、加熱しながら徐々に増大する加圧力で再度圧縮する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われた成形材料がさらに変形する。また、成形材料が金属のナノ粒子が析出した温度より高い温度に昇温されるため、金属結合した金属のナノ粒子が活性状態になって僅かに粗大化し、僅かに粗大化した金属のナノ粒子が再度金属結合する。このため、成形材料を覆っていた金属のナノ粒子の集まりが再度金属結合することで、変形した成形材料同士が互いに結合され、成形体がキャビティ内に形成される。この金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、金属のナノ粒子が積み重なり合った積層構造を形成して成形材料を覆うため、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、一定の結合強度を有し、また、気密性の被膜を形成して成形材料を覆う。このため、成形体は内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。また、成形体は金属に近い性質を持つため、例えば、熱伝導性に優れた放熱基材をトランスファ成形法で製造できる。
また、13段落で説明したように、金属化合物が熱分解して金属のナノ粒子を析出した温度は、有機化合物の沸点より低いため、有機化合物が気化する際と、熱融解もしくは熱軟化した成形材料が圧縮変形する際とを通じて、金属のナノ粒子の集まりが継続して昇温される。従って、金属のナノ粒子が昇温され、活性化され、ナノ粒子が僅かに成長し、僅かに成長したナノ粒子が再度金属結合する過程を、成形材料が昇温されるたびに、ポット内とキャビティ内とで繰り返す。この結果、圧縮変形された成形材料が、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、成形材料を覆う金属のナノ粒子の集まりが金属結合して成形材料同士が互いに結合し、成形材料の集まりからなる成形体が形成される。従って、成形体を構成する全ての成形材料が、一定の結合強度を有する金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる被膜で覆われ、全ての成形材料が、外界の雰囲気を遮断する気密性の被膜で覆われる。これによって、成形体は不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。
なお、成形材料として熱硬化性樹脂を用いる場合は、13段落で説明したように、第二の懸濁液を加熱して圧縮するキャビティの温度を、無機金属化合物の錯体が熱分解する温度より高いが、熱硬化性樹脂の軟化点に応じて錯体の熱分解温度に近づける。また、キャビティ内で圧縮変形した成形材料が、軟化した固体のペレットないしは粉粒体であるため、成形材料より3桁以上も小さい金属のナノ粒子の集まりが、成形材料の変形に追従して変形し、成形材料を金属結合した金属のナノ粒子の集まりが覆い続ける。この結果、重合反応が進んだ成形材料が金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、金属のナノ粒子の金属結合を介して成形材料が結合され、熱硬化性樹脂からなる成形体が製造される。
また、非晶性の熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、13段落で説明したように、第二の懸濁液を加熱して圧縮するキャビティの温度を、非晶性樹脂のガラス転移温度より高く、かつ、金属のナノ粒子が析出した温度より高いが、ガラス転移温度に応じて金属のナノ粒子が析出した温度に近づける。また、軟化したペレットより5桁も小さい金属のナノ粒子の集まりが、ペレットの変形に追従して変形し、圧縮変形したペレットを金属結合した金属のナノ粒子の集まりが覆い続ける。この結果、金属のナノ粒子の金属結合を介して成形材料が結合され、非晶性の熱可塑性樹脂からなる成形体が製造される。
さらに、結晶性の熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、13段落で説明したように、第二の懸濁液を加熱して圧縮するキャビティの温度を、ペレットの融点より高く、かつ、金属のナノ粒子が析出した温度より高いが、融点に応じて金属のナノ粒子が析出した温度に近づける。また、熱融解したペレットより5桁も小さい金属のナノ粒子の集まりが、ペレットの変形に追従して変形し、変形したペレットを金属結合した金属のナノ粒子の集まりが覆い続ける。この結果、金属のナノ粒子の集まりの金属結合を介して成形材料が結合され、結晶性の熱可塑性樹脂からなる成形体が製造される。
この後、プランジャーを引き上げ、キャビティから成形体を取り出すと、固化した成形材料の集まりからなる成形体が得られる。固化した成形材料は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、外界の雰囲気を遮断する気密性を持つ。従って、固化した成形材料が結合した成形体は、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。
なお、成形体は内部に空胞がないため、火災時に高温に昇温されても、空胞の体積膨張が起こらず、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが破壊されない。また、成形体が高温に昇温されても、金属のナノ粒子の大きさが3桁以上も小さいため、合成樹脂の体積膨張に、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが追従して変形し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは破壊されない。このため、不燃性と自己発火しない性質とが維持される。
さらに、成形体のリサイクルの際は、金属のナノ粒子を構成する金属の融点と、熱可塑性樹脂の融点、ないしは、熱硬化樹脂の反応温度とは大きく乖離し、かつ、金属の比重と合成樹脂の比重とが大きく乖離するため、リサイクルの際に成形体から金属ナノ粒子の集まりを分離させることは容易で、合成樹脂とナノ粒子の金属とは再利用できる。
以上に説明したように、本成形体の製造方法に依れば、5段落で説明した第2から第5の4つの課題を解決して、トランスファ成形法に依って、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ合成樹脂の成形体が製造される。
【0016】
前記した製造方法で製造した懸濁液を用いて射出成形法に依って成形体を製造する製造方法は、請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、予め前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に昇温し、前記懸濁液が射出される金型を、予め前記シリンダーより高い温度に昇温し、前記シリンダーに前記懸濁液を充填し、該懸濁液から前記有機化合物を気化させる、この後、前記シリンダー内に設置されたスクリューによって、前記シリンダーに充填された前記懸濁液を昇温するとともに加圧し、該懸濁液を前記金型内に射出し、前記懸濁液に残存した
前記有機化合物を気化させ、さらに、
前記懸濁液を構成する成形材料を熱融解もしくは熱軟化させ、この後、該成形材料を圧縮変形させる、この後、前記スクリューに依る加圧を一旦中止し、残存した前記有機化合物の気体を前記金型から抜け出させる、さらに、前記スクリューによって、
再度、前記金型内に射出された前記懸濁液に徐々に増大する加圧力を加える、これによって、圧縮変形した前記成形材料が、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われるとともに、隣接する
前記金属のナノ粒子同士が金属結合することで、該圧縮変形した成形材料同士が結合され、前記金型内に成形体が製造される、前記した製造方法で製造した懸濁液を用いて射出成形法に依って成形体を製造する製造方法。
【0017】
つまり、本成形体の製造方法に依れば、前記した製造方法で製造した懸濁液を用い、従来の射出成形法に近い方法で、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ合成樹脂の成形体が、金型内に製造される。
すなわち、予めシリンダーを、6段落に記載した第二の懸濁液を構成する有機合物の沸点に昇温する。また、金型を予めシリンダーより高い温度に昇温する。なお、第二の懸濁液は、有機化合物の存在によって滑り性と粘り性とを兼備する。このため、シリンダーに第二の懸濁液が容易に充填され、この後、第二の懸濁液から有機化合物の多くが気化する。いっぽう、残存した有機化合物の粘度が高いため、成形材料から有機化合物は離脱せず、成形材料に滑り性をもたらし、成形材料の移動を容易にする。なお、気化した有機化合物は、シリンダーの外に配置した回収機で吸引して再利用する。次に、シリンダー内に設置されたスクリューの回転移動で、徐々に増大する加圧力を第二の懸濁液に加え、シリンダー内でスムースに金型側に移動させ、この後、スクリューをより高速回転させ、より大きな加圧力で第二の懸濁液を金型に射出する。金型に射出された第二の懸濁液は昇温され、一定の加圧力が作用する。この際、最初に残りの有機化合物が気化し、第二の懸濁液は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われた成形材料の集まりになる。次に、成形材料が融解もしくは軟化し、さらに、加圧力で圧縮変形される。なお、気化した有機化合物は、加圧力で成形材料の集まりに留まれず、成形材料の集まりと金型との隙間に吐き出される。この後、スクリューに依る加圧を一旦中止し、有機化合物の気体を、金型からシリンダーに移動させ、シリンダーから吐き出させ、吐き出た気体を回収機で吸引して再利用する。このため、金型内の成形材料の集まりに気体は存在せず、成形体の内部に空胞が形成されない。この後、再びスクリューを回転移動させ、徐々に増大する加圧力を金型内の成形材料の集まりに加え、加熱してさらに圧縮変形させる。この結果、圧縮変形した成形材料は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われる。また、成形材料が金属のナノ粒子が析出した温度より高い温度に昇温されるため、僅かに粗大化した金属のナノ粒子が再度金属結合する。このため、成形材料を覆っていた金属のナノ粒子の集まりが再度金属結合することで、圧縮変形した成形材料が互いに結合され、成形材料の集まりからなる成形体が金型内に形成される。この金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、金属のナノ粒子が積み重なり合った積層構造を形成して成形材料を覆うため、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、一定の結合強度を有し、また、気密性の被膜を形成して成形材料を覆う。このため、成形体は内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。また、成形体は金属に近い性質を持つため、例えば、熱伝導性に優れた放熱基材を射出成形法で製造できる。
また、13段落で説明したように、金属化合物が熱分解して金属のナノ粒子を析出した温度は、有機化合物の沸点より低いため、有機化合物が気化する際と、熱融解もしくは熱軟化した成形材料が圧縮変形する際とを通じて、金属のナノ粒子の集まりが継続して昇温される。従って、金属のナノ粒子が昇温され、活性化され、ナノ粒子が僅かに成長し、僅かに成長したナノ粒子が再度金属結合する過程を、成形材料が昇温されるたびに、シリンダー内と金型内とで繰り返す。この結果、圧縮変形された成形材料が、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、成形材料を覆う金属のナノ粒子の集まりが金属結合して成形材料が互いに結合し、成形材料の集まりからなる成形体が形成される。従って、成形体を構成する全ての成形材料が、一定の結合強度を有する金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる被膜で覆われ、全ての成形材料が、外界の雰囲気を遮断する気密性の被膜で覆われる。これによって、成形体は、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。
なお、成形材料として熱硬化性樹脂を用いる場合は、13段落で説明したように、第二の懸濁液を加熱して圧縮する金型の温度を、錯体が熱分解する温度より高いが、熱硬化性樹脂の軟化点に応じて錯体の熱分解温度に近づける。また、金型内で圧縮変形した成形材料が、軟化した固体のペレットないしは粉粒体であるため、成形材料より3桁以上も小さい金属のナノ粒子の集まりが、成形材料の変形に追従して変形し、成形材料を金属結合した金属のナノ粒子の集まりが覆い続ける。この結果、重合反応が進んだ成形材料が金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、金属のナノ粒子の金属結合を介して成形材料が結合し、熱硬化性樹脂からなる成形体が製造される。
また、非晶性の熱可塑性樹脂の成形材料を用いて成形体を製造する場合は、13段落で説明したように、第二の懸濁液を加熱して圧縮する金型の温度を、非晶性樹脂のガラス転移温度より高く、かつ、金属のナノ粒子が析出した温度より高いが、ガラス転移温度に応じて、金属のナノ粒子が析出した温度に近づける。また、軟化したペレットより5桁も小さい金属のナノ粒子の集まりが、ペレットの変形に追従して変形し、圧縮変形したペレットを金属結合した金属のナノ粒子の集まりが覆い続ける。この結果、成形材料が金属のナノ粒子の金属結合で結合された非晶性の熱可塑性樹脂からなる成形体が製造される。
さらに、結晶性の熱可塑性樹脂の成形材料を用いて成形体を製造する場合は、13段落で説明したように、第二の懸濁液を加熱して圧縮する金型の温度を、成形材料の融点より高く、かつ、金属のナノ粒子が析出した温度より高いが、融点に応じて金属のナノ粒子が析出した温度に近づける。また、熱融解したペレットより5桁も小さい金属のナノ粒子の集まりが、ペレットの変形に追従して変形し、圧縮変形したペレットを金属結合した金属のナノ粒子の集まりが覆い続ける。この結果、成形材料が金属のナノ粒子の金属結合で結合された結晶性の熱可塑性樹脂からなる成形体が製造される。
この後、金型を開き、金型から成形体を取り出すと、固化した成形材料の集まりからなる成形体が得られる。固化した成形材料は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、外界の雰囲気から遮断される気密性を持つ。従って、固化した成形材料が結合した成形体は、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。さらに、成形体から不要となるランナーを切断し成形品を得る。
なお、成形体は内部に空胞がないため、火災時に高温に昇温されても、空胞の体積膨張が起こらず、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが破壊されない。また、成形体が高温に昇温されても、金属のナノ粒子の大きさが3桁以上も小さいため、合成樹脂の体積膨張に、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが追従して変形し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは破壊されない。このため、不燃性と自己発火しない性質とが維持される。
さらに、成形体のリサイクルの際は、金属のナノ粒子を構成する金属の融点と、熱可塑性樹脂の融点、ないしは、熱硬化樹脂の反応温度とは大きく乖離し、かつ、金属の比重と合成樹脂の比重とが大きく乖離するため、リサイクルの際に成形体から金属ナノ粒子の集まりを分離させることは容易で、合成樹脂とナノ粒子の金属とは再利用できる。
以上に説明したように、本成形体の製造方法に依れば、5段落で説明した第2から第5の4つの課題を解決して、射出成形法に依って、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ合成樹脂の成形体が製造される。
【0018】
前記した製造方法で製造した懸濁液を用いて押出成形法に依って成形体を製造する製造方法は、請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、予め前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に昇温し、前記シリンダーの前方に設置されたダイを、予め前記シリンダーより高い温度に昇温し、前記シリンダーに前記懸濁液を充填し、該懸濁液から前記有機化合物を気化させる、この後、前記シリンダー内に設置されたスクリューによって、前記シリンダー内に充填された前記懸濁液を加圧し、該懸濁液を前記ダイの内側の溝を通過させ、該溝の出口から前記懸濁液を押し出す、これによって、残存した前記有機化合物の気体が前記ダイの出口から気化し、さらに、
前記懸濁液を構成する成形材料が熱融解もしくは熱軟化し、この後、該成形材料が圧縮変形し、圧縮変形した前記成形材料が、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われるとともに、隣接する
前記金属のナノ粒子同士が金属結合することで、該圧縮変形した成形材料同士が結合され、該成形材料同士が結合された成形体が、前記ダイの溝の出口から押し出される、前記した製造方法で製造した懸濁液を用いて押出成形法に依って成形体を製造する製造方法。
【0019】
つまり、本成形体の製造方法に依れば、前記した製造方法で製造した懸濁液を用い、従来の押出成形法に近い方法で、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ合成樹脂の成形体が、ダイ(金型)から押し出される。
すなわち、シリンダーを、6段落に記載した第二の懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温する。また、シリンダーの前方に設置されるダイは、予めシリンダーより高い温度に昇温する。なお、第二の懸濁液は、有機化合物の存在によって滑り性と粘り性とを兼備する。このため、シリンダーに第二の懸濁液が容易に充填され、この後、第二の懸濁液から有機化合物の多くが気化する。いっぽう、残存した有機化合物の粘度が高いため、成形材料から有機化合物は離脱せず、成形材料に滑り性をもたらし、成形材料の移動を容易にする。なお、気化した有機化合物は、シリンダーの外に配置した回収機で吸引して再利用する。この後、シリンダー内に設置されたスクリューの回転移動で第二の懸濁液を加圧し、シリンダーの前方に設置された所定の長さを持つダイの内側に形成された狭い体積からなる溝を、加圧された第二の懸濁液を通過させる。これによって、所定の長さを持ち、かつ、断面積が狭い溝を第二の懸濁液が通過するため、第二の懸濁液に継続して加圧力が加わり、また、第二の懸濁液が徐々に昇温される。この際、最初に残りの有機化合物が気化し、第二の懸濁液は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われた成形材料の集まりになる。次に、成形材料が融解もしくは軟化し、さらに、加圧力で圧縮変形される。なお、気化した有機化合物は継続して加圧力を受け、成形材料の集まりに留まれず、成形材料の集まりから吐き出され、ダイの出口から放出され、回収機で回収する。このため、成形材料の集まりに気体は存在せず、成形体の内部に空胞が形成されない。また、成形材料が金属のナノ粒子が析出した温度より高い温度に昇温されるため、僅かに粗大化した金属のナノ粒子が再度金属結合する。このため、成形材料を覆っていた金属のナノ粒子の集まりが再度金属結合することで、圧縮変形した成形材料が互いに結合され、ダイの溝の断面形状からなるシートやチューブやパイプなどの成形体として、溝の出口から押し出される。この金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、金属のナノ粒子が積み重なり合った積層構造を形成して成形材料を覆うため、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、一定の結合強度を有し、また、気密性の被膜を形成して成形材料を覆う。このため、成形体は内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。また、成形体は金属に近い性質を持つため、例えば、電磁波を反射するシールド基材や、静電気を帯電させない帯電防止基材を、押出成形法によって製造できる。
また、13段落で説明したように、金属化合物が熱分解して金属のナノ粒子を析出した温度は、有機化合物の沸点より低いため、有機化合物が気化する際と、熱融解もしくは熱軟化した成形材料が圧縮変形する際とを通じて、金属のナノ粒子の集まりが継続して昇温される。従って、金属のナノ粒子が昇温され、活性化され、ナノ粒子が僅かに成長し、僅かに成長したナノ粒子が再度金属結合する過程を、成形材料が昇温されるたびに、シリンダー内とダイ内とで繰り返す。この結果、圧縮変形された成形材料が、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、成形材料を覆う金属のナノ粒子の集まりが金属結合して成形材料が互いに結合し、成形材料の集まりからなる成形体が形成される。従って、成形体を構成する全ての成形材料が、一定の結合強度を有する金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる被膜で覆われ、全ての成形材料が、外界の雰囲気を遮断する気密性の被膜で覆われる。これによって、成形体は、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。
なお、成形材料がダイの内側を通過する際に加えられる加圧力は、ダイの出口が開放されているため他の成形方法より小さい。従って、非晶性の熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、第二の懸濁液を加熱して圧縮するダイの温度を、ガラス転移温度より十分に高くする。これによって、軟化したペレットが容易に圧縮変形する。なお、軟化したペレットは固体であるため粘性が高く、有機化合物が気化した後は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで継続して覆われる。また、ペレットより5桁も小さい金属のナノ粒子の集まりが、ペレットの変形に追従して変形し、変形したペレットを金属結合した金属のナノ粒子の集まりが覆い続ける。この結果、変形したペレットが金属のナノ粒子の金属結合で互いに結合され、非晶性の熱可塑性樹脂の成形体がダイの出口から押し出される。
さらに、結晶性の熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、第二の懸濁液を加熱して圧縮するダイの温度を、結晶性樹脂の融点より高くする。なお、融解したペレットは粘性が高く、有機化合物が気化した後は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで継続して覆われる。また、融解したペレットより5桁も小さい金属のナノ粒子の集まりが、融解したペレットの変形に追従して変形し、変形したペレットを金属結合した金属のナノ粒子の集まりが覆い続ける。この結果、変形したペレットが金属のナノ粒子の金属結合で結合し、結晶性の熱可塑性樹脂からなる成形体がダイの出口から押し出される。
この後、成形体を引き取り機で引き取り、また、ローラーで巻き取ると、固化した成形材料の集まりからなる成形体が得られる。この固化した成形材料は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、外界の雰囲気を遮断する気密性を持つ。従って、固化した成形材料が結合した成形体は、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。
なお、成形体は内部に空胞がないため、火災時に高温に昇温されても、空胞の体積膨張が起こらず、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが破壊されない。また、成形体が高温に昇温されても、金属のナノ粒子の大きさが3桁以上も小さいため、合成樹脂の体積膨張に、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが追従して変形し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは破壊されない。このため、不燃性と自己発火しない性質とが維持される。
さらに、成形体のリサイクルの際は、金属のナノ粒子を構成する金属の融点と、熱可塑性樹脂の融点、ないしは、熱硬化樹脂の反応温度とは大きく乖離し、かつ、金属の比重と合成樹脂の比重とが大きく乖離するため、リサイクルの際に成形体から金属ナノ粒子の集まりを分離させることは容易で、合成樹脂とナノ粒子の金属とは再利用できる。
以上に説明したように、本成形体の製造方法に依れば、5段落で説明した第2から第5の4つの課題を解決して、押出成形法に依って、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ合成樹脂の成形体が製造される。
【0020】
前記した製造方法で製造した懸濁液を用いて
エアブロー成形法に依って成形体を製造する製造方法は、請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、予め前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に昇温し、チューブ状に押し出された前記懸濁液を挟む一対の金型を、予め前記シリンダーより高い温度に昇温し、前記シリンダーに前記懸濁液を充填し、該懸濁液から前記有機化合物を気化させる、この後、前記シリンダー内に設置されたスクリューによって、前記シリンダー内に充填された前記懸濁液を加圧し、該懸濁液を前記シリンダーの前方に設置されたダイの内側の溝を通過させ、該溝の出口からチューブ状の前記懸濁液として押し出し、該チューブ状の懸濁液を前記一対の金型で挟み、該一対の金型を閉じた後に、エアブロー装置によって前記チューブ状の懸濁液の内側に、徐々に空気圧が増大する圧縮空気を供給し、該チューブ状の懸濁液を前記一対の金型内で膨らませる、これによって、
残存した前記有機化合物の
気体が前記チューブから気化し、さらに、
前記懸濁液を構成する成形材料が熱融解もしくは熱軟化し、この後、該成形材料が圧縮変形し、
該圧縮変形した
成形材料が、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われるとともに、隣接する
前記金属のナノ粒子同士が金属結合することで、該圧縮変形した成形材料同士が結合され、該成形材料同士が結合された成形体が、前記一対の金型内に、中空の成形体として製造される、前記した製造方法で製造した懸濁液を用いてエアブロー成形法に依って成形体を製造する製造方法。
【0021】
本成形体の製造方法に依れば、前記した製造方法で製造した懸濁液を用い、従来のエアブロー成形法に依って中空の成形体を製作する方法に近い方法で、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ中空の成形体が金型内に製造される。
すなわち、シリンダーを、6段落に記載した第二の懸濁液を構成する有機合物の沸点に予め昇温する。一対の金型をシリンダーより高い温度に予め昇温する。なお、第二の懸濁液は、有機化合物の存在によって滑り性と粘り性とを兼備する。このため、シリンダーに第二の懸濁液が容易に充填され、この後、第二の懸濁液から有機化合物の多くが気化する。いっぽう、残存した有機化合物の粘度が高いため、成形材料から有機化合物は離脱せず、成形材料に滑り性をもたらし、成形材料の移動を容易にする。なお、気化した有機化合物は、シリンダーの外に配置した回収機で吸引して再利用する。この後、シリンダー内に設置されたスクリューの回転移動で第二の懸濁液を加圧し、シリンダーの前方に設置されたダイの内側に形成された溝を通過させてチューブ状に押し出す。次に、チューブ状に押し出された第二の懸濁液を一対の金型で挟む。この後、金型を閉じ、金型で挟まれたチューブの内側に、徐々に空気圧が増大する圧縮空気を供給してチューブを膨らませ、チューブを金型の内側に密着させて中空の成形体を形成する。この際、チューブが金型に密着するにつれ昇温され、また、金型に密着させる圧縮応力が増大する。このため、最初に残りの有機化合物が気化し、気化した有機化合物は増大する圧縮応力でチューブ内に留まれず、チューブから吐き出る。従って、チューブの内部に気体は存在せず、中空の成形体の内部に空胞が形成されない。このため、第二の懸濁液は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われた成形材料の集まりになる。次に、成形材料が融解もしくは軟化し、さらに圧縮変形する。また、成形材料が金属のナノ粒子が析出した温度より高い温度に昇温され、僅かに粗大化した金属のナノ粒子が再度金属結合する。これによって、再度金属結合した金属のナノ粒子の集まりで成形材料が互いに結合され、成形材料の集まりからなる中空の成形体が金型内に形成される。この金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、金属のナノ粒子が積み重なり合った積層構造を形成して成形材料を覆うため、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、一定の結合強度を有し、また、気密性の被膜を形成して成形材料を覆う。従って、中空の成形体は内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。また、中空の成形体は金属に近い性質を持つため、中空の成形体は導電性と熱伝導性に優れた性質を持つ。
また、13段落で説明したように、金属化合物が熱分解して金属のナノ粒子を析出した温度は、有機化合物の沸点より低いため、有機化合物が気化する際と、熱融解もしくは熱軟化した成形材料が圧縮変形する際とを通じて、金属のナノ粒子の集まりが継続して昇温される。従って、金属のナノ粒子が昇温され、活性化され、ナノ粒子が僅かに成長し、僅かに成長したナノ粒子が再度金属結合する過程を、成形材料が昇温されるたびに、シリンダー内と金型内とで繰り返す。この結果、圧縮変形された成形材料が、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、成形材料を覆う金属のナノ粒子の集まりが金属結合して成形材料が互いに結合し、成形材料の集まりからなる成形体が形成される。従って、成形体を構成する全ての成形材料が、一定の結合強度を有する金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる被膜で覆われ、全ての成形材料が、外界の雰囲気を遮断する気密性の被膜で覆われる。これによって、成形体は、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。
なお、圧縮空気に依る加圧力は、19段落で説明した押出成形方法と同様に、他の成形方法に依る加圧力より小さい。従って、非晶性の熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、一対の金型の温度を、ガラス転移温度より十分に高い温度にする。なお、軟化したペレットは固体であるため、有機化合物が気化した後は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで継続して覆われる。また、軟化したペレットより5桁も小さい金属のナノ粒子の集まりが、ペレットの変形に追従して変形し、変形したペレットを金属結合した金属のナノ粒子の集まりが覆い続ける。この結果、変形したペレットが金属のナノ粒子の金属結合で結合され、非晶性の熱可塑性樹脂からなる成形体が金型内に製造される。
さらに、結晶性の熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、一対の金型の温度を、結晶性樹脂の融点より高い温度にする。なお、融解したペレットは粘性が高く、有機化合物が気化した後は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで継続して覆われる。また、融解したペレットより5桁も小さい金属のナノ粒子の集まりが、融解したペレットの変形に追従して変形し、変形したペレットを金属結合した金属のナノ粒子の集まりが覆い続ける。この結果、変形したペレットが金属のナノ粒子の金属結合で結合され、結晶性の熱可塑性樹脂からなる中空の成形体が、金型内に製造される。
この後、金型を開き、最初に有機化合物の気体を回収し、次に金型から中空の成形体を取り出し、固化した成形材料の集まりからなる成形体を得る。この固化した成形材料は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、外界の雰囲気を遮断する気密性を持つ。従って、中空の成形体は、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。
なお、成形体は内部に空胞がないため、火災時に高温に昇温されても、空胞の体積膨張が起こらず、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが破壊されない。また、成形体が高温に昇温されても、金属のナノ粒子の大きさが3桁以上も小さいため、合成樹脂の体積膨張に、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが追従して変形し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは破壊されない。このため、不燃性と自己発火しない性質とが維持される。
さらに、成形体のリサイクルの際は、金属のナノ粒子を構成する金属の融点と、熱可塑性樹脂の融点、ないしは、熱硬化樹脂の反応温度とは大きく乖離し、かつ、金属の比重と合成樹脂の比重とが大きく乖離するため、リサイクルの際に成形体から金属ナノ粒子の集まりを分離させることは容易で、合成樹脂とナノ粒子の金属とは再利用できる。
以上に説明したように、本成形体の製造方法に依れば、5段落で説明した第2から第5の4つの課題を解決して、エアブロー成形法に依って、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ合成樹脂の中空の成形体が製造される。
【0022】
前記した製造方法で製造した懸濁液を用いて
サーモフォーミング成形法に依って成形体を製造する製造方法は、請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、予め前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に昇温し、前記懸濁液を圧縮する上方の金型と、真空ポンプの吸引ホースが繋がる下方の金型を、予め前記シリンダーより高い温度に昇温し、前記シリンダーに前記懸濁液を充填し、該懸濁液から前記有機化合物を気化させる、この後、前記シリンダー内に設置されたスクリューによって、前記シリンダー内に充填された前記懸濁液を加圧し、該懸濁液を前記シリンダーの前方に設置されたダイの内側の溝を通過させ、該溝の出口からシート状の前記懸濁液として押し出し、該シート状の懸濁液を、前記上方の金型と前記下方の金型との間に挟み、前記真空ポンプを稼働させるとともに、前記上方の金型を前記下方の金型に下ろし、該上方の金型によって、徐々に増大する加圧力を前記シート状の懸濁液に加え、該シート状の懸濁液を、前記下方の金型に密着させるとともに、前記上方の金型で圧縮する、これによって、残存した前記有機化合物の気体が
、前記懸濁液を構成する成形材料から気化し、さらに、前記成形材料が熱融解もしくは熱軟化し、この後、該成形材料が圧縮変形し、圧縮変形した前記成形材料が、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われるとともに、隣接する
前記金属のナノ粒子同士が金属結合することで、該圧縮変形した成形材料同士が結合され、該成形材料同士が結合した成形体が、前記上方の金型と前記下方の金型とで形成される間隙に製造される、前記した製造方法で製造した懸濁液を用いてサーモフォーミング成形法に依って成形体を製造する製造方法。
【0023】
つまり、本成形体の製造方法に依れば、前記した製造方法で製造した懸濁液を用い、従来のサーモフォーミング成形法に近い方法で、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ合成樹脂の成形体が、上方の金型と下方の金型とで形成される間隙に製造される。なお、本特徴手段は、第四特徴手段で記載した圧縮成形法に近い製法であるが、真空ポンプで成形材料の集まりを金型に密着させるため、圧縮成形法に依る成形体より肉厚が薄い成形体を製造するのに適している。
すなわち、シリンダーを、6段落に記載した第二の懸濁液を構成する有機合物の沸点に予め昇温する。また、一対の金型をシリンダーより高い温度に予め昇温する。なお、第二の懸濁液は、有機化合物の存在によって滑り性と粘り性とを兼備する。このため、シリンダーに第二の懸濁液が容易に充填され、この後、第二の懸濁液から有機化合物の多くが気化する。いっぽう、残存した有機化合物の粘度が高いため、成形材料から有機化合物は離脱せず、成形材料に滑り性をもたらし、成形材料の移動を容易にする。なお、気化した有機化合物は、回収機をシリンダーの近くに設置し、回収機で吸引して再利用する。この後、シリンダー内に設置されたスクリューの移動で第二の懸濁液を加圧し、シリンダーの前方に設置されたダイの内側に形成された溝を通過させ、溝の出口からシート状に押し出す。次に、シート状に押し出された第二の懸濁液を移動させ、一対の金型で挟む。この後、真空ポンプを稼働させ、第二の懸濁液を下方の金型に密着させ、また、上方の金型を下方の金型に下ろし、上方の金型によって徐々に増大する加圧力を第二の懸濁液に加える。この際、最初に残りの有機化合物が気化し、気化した有機化合物は増大する加圧力で成形材料の集まりに留まれず、成形材料の集まりから吐き出る。このため、成形材料の集まりに気体は存在せず、成形体の内部に空隙は形成されない。また、第二の懸濁液は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われた成形材料の集まりになる。次に、成形材料が融解もしくは軟化し、さらに圧縮変形される。また、成形材料が金属のナノ粒子が析出した温度より高い温度に昇温され、僅かに粗大化した金属のナノ粒子が再度金属結合する。これによって、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで成形材料が結合され、上方の金型と下方の金型とで形成される間隙に成形体が形成される。この金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、金属のナノ粒子が積み重なり合った積層構造を形成して成形材料を覆うため、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、一定の結合強度を有し、また、気密性の被膜を形成して成形材料を覆う。このため、成形体は、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。また、成形体は金属に近い性質を持つため、例えば、電磁波を反射するシールド基材や、静電気を帯電させない帯電防止基材などが、サーモフォーミング成形法で製造できる。
また、13段落で説明したように、金属化合物が熱分解して金属のナノ粒子を析出した温度は、有機化合物の沸点より低いため、有機化合物が気化する際と、熱融解もしくは熱軟化した成形材料が圧縮変形する際とを通じて、金属のナノ粒子の集まりが継続して昇温される。従って、金属のナノ粒子が昇温され、活性化され、ナノ粒子が僅かに成長し、僅かに成長したナノ粒子が再度金属結合する過程を、成形材料が昇温されるたびに、シリンダー内と金型内とで繰り返す。この結果、圧縮変形された成形材料が、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、成形材料を覆う金属のナノ粒子の集まりが金属結合して成形材料が互いに結合し、成形材料の集まりからなる成形体が形成される。従って、成形体を構成する全ての成形材料が、一定の結合強度を有する金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる被膜で覆われ、全ての成形材料が、外界の雰囲気を遮断する気密性の被膜で覆われる。これによって、成形体は、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。
なお、熱硬化性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、13段落で説明したように、第二の懸濁液を加熱して圧縮する一対の金型の温度を、熱硬化性樹脂の軟化点より高く、かつ、錯体が熱分解する温度より高いが、軟化点に応じて錯体の熱分解温度に近づける。また、金型で圧縮変形された成形材料が、固体のペレットないしは粉粒体であるため、成形材料より3桁以上も小さい金属のナノ粒子の集まりが、成形材料の変形に追従して変形し、成形材料を金属結合した金属のナノ粒子の集まりが覆い続ける。この結果、重合反応が進んだ成形材料が金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、金属のナノ粒子の金属結合を介して成形材料が結合され、熱硬化性樹脂からなる成形体が製造される。
また、非晶性の熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、13段落で説明したように、第二の懸濁液を加熱して圧縮する一対の金型の温度を、非晶性樹脂のガラス転移温度より高く、かつ、金属のナノ粒子が析出した温度より高いが、ガラス転移温度に応じて金属のナノ粒子が析出した温度に近づける。また、軟化したペレットより5桁も小さい金属のナノ粒子の集まりが、ペレットの変形に追従して変形し、変形したペレットを金属結合した金属のナノ粒子の集まりが覆い続ける。この結果、変形したペレットが金属のナノ粒子の金属結合で結合され、非晶性の熱可塑性樹脂からなる成形体が製造される。
さらに、結晶性の熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いる場合は、13段落で説明したように、第二の懸濁液を加熱して圧縮する一対の金型の温度を、成形材料の融点より高く、かつ、金属のナノ粒子が析出した温度より高いが、融点に応じて金属のナノ粒子が析出した温度に近づける。また、融解したペレットより5桁も小さい金属のナノ粒子の集まりが、ペレットの変形に追従して変形し、変形したペレットを金属結合した金属のナノ粒子の集まりが覆い続ける。この結果、変形したペレットが金属のナノ粒子の金属結合で結合され、結晶性の熱可塑性樹脂からなる成形体が製造される。
この後、金型を開き、最初に有機化合物の気体を回収し、次に金型から成形体を取り出し、成形材料が固化した成形体を得る。この固化した成形材料は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで覆われ、外界の雰囲気を遮断する気密性を持つ。従って、固化した成形材料が結合した成形体は、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ。
なお、成形体は内部に空胞がないため、火災時に高温に昇温されても、空胞の体積膨張が起こらず、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが破壊されない。また、成形体が高温に昇温されても、金属のナノ粒子の大きさが3桁以上も小さいため、合成樹脂の体積膨張に、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが追従して変形し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは破壊されない。このため、不燃性と自己発火しない性質とが維持される。
さらに、成形体のリサイクルの際は、金属のナノ粒子を構成する金属の融点と、熱可塑性樹脂の融点、ないしは、熱硬化樹脂の反応温度とは大きく乖離し、かつ、金属の比重と合成樹脂の比重とが大きく乖離するため、リサイクルの際に成形体から金属ナノ粒子の集まりを分離させることは容易で、合成樹脂とナノ粒子の金属とは再利用できる。
以上に説明したように、本成形体の製造方法に依れば、5段落で説明した第2から第5の4つの課題を解決して、サーモフォーミング成形法に依って、内部に空胞がなく、不燃性を有し自己発火しない性質を持つ合成樹脂の成形体が製造される。