特許第6734725号(P6734725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6734725
(24)【登録日】2020年7月14日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】車両用空気流制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 35/00 20060101AFI20200728BHJP
   B62D 37/02 20060101ALI20200728BHJP
   B60B 3/04 20060101ALI20200728BHJP
   B60B 19/00 20060101ALN20200728BHJP
【FI】
   B62D35/00 Z
   B62D37/02 B
   B60B3/04 B
   !B60B19/00 K
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-151051(P2016-151051)
(22)【出願日】2016年8月1日
(65)【公開番号】特開2018-20582(P2018-20582A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】小林 竜也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 巧
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−126088(JP,A)
【文献】 特開2006−327548(JP,A)
【文献】 特開2008−265415(JP,A)
【文献】 実開平6−65045(JP,U)
【文献】 特開2011−131669(JP,A)
【文献】 米国特許第8979102(US,B1)
【文献】 特開平6−144296(JP,A)
【文献】 特開2007−182144(JP,A)
【文献】 実開昭63−173801(JP,U)
【文献】 実開昭63−123302(JP,U)
【文献】 特開平5−105124(JP,A)
【文献】 特開2009−227159(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0195053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 35/00
B60B 3/04
B62D 37/02
B60B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のホイールに伴って回転することのない車体側の部品に取り付けられ、制御部によってホイール開口部を開放する開位置と、該ホイール開口部を閉鎖する閉位置とに移動制御可能な開口部開閉手段を備えた車両用空気流制御装置において、
前記開口部開閉手段は、前記閉位置の場合に、前記ホイールにおける所定の高さ位置から下方側の第1領域及び該第1領域よりも上方に位置する第2領域のうち、前記第1の領域にある前記ホイール開口部の少なくとも一部を閉鎖し、他方の領域にある前記ホイール開口部の少なくとも一部を開放し、
前記所定の高さ位置は、前記ホイールより前方の車体下端位置であることを特徴とする車両用空気流制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、車両の速度に応じて前記開口部開閉手段を開位置又は閉位置に移動させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空気流制御装置。
【請求項3】
車両用のホイールに伴って回転することのない車体側の部品に取り付けられ、制御部によってホイール開口部を開放する開位置と、該ホイール開口部を閉鎖する閉位置とに移動制御可能な開口部開閉手段を備えた車両用空気流制御装置において、
前記ホイールを収容するホイールハウスの前方における車体の下面から下方へ突出するとともに、突出寸法を変更可能なフラップを備え、
前記開口部開閉手段は、前記閉位置の場合に、前記ホイールにおける所定の高さ位置から下方側の第1領域及び該第1領域よりも上方に位置する第2領域のうち、一方の領域にある前記ホイール開口部の少なくとも一部を閉鎖し、他方の領域にある前記ホイール開口部の少なくとも一部を開放し、
前記制御部は、前記フラップの突出寸法に応じて、前記開口部開閉手段を開位置又は閉位置に移動させることを特徴とする車両用空気流制御装置。
【請求項4】
前記ホイールには、前記第1領域と前記第2領域との間であって上下方向において前記フラップが配置される第3領域にある前記ホイール開口部を開閉可能な中間開口部開閉手段が設けられ、
前記制御部は、前記フラップの突出寸法に応じて、前記中間開口部開閉手段を開位置又は閉位置に移動させることを特徴とする請求項3に記載の車両用空気流制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、車両の速度に応じて前記フラップの突出寸法を変更することを特徴とする請求項3又は4に記載の車両用空気流制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空気流制御装置に関し、特に、車両用のホイールに設けられ、ホイール開口部を開閉可能な開口部開閉手段を備えた車両用空気流制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行時に車両を流れる空気流には、車両前方のバンパー側からエンジンルーム内に入り、ホイール開口部を通過して車両側面を流れる空気流がある。走行時には、この空気流によって、ブレーキ冷却作用が得られる一方、高速走行時には、この空気流がホイールの外側において車両側面を流れる空気流と干渉して、空気抵抗となり、燃費の低下を招いてしまうことも知られている。
【0003】
このような空気抵抗による燃費低下を解消するために、特許文献1には、車両用のホイールに設けられ、ホイール開口部の全部を開放する開位置と、ホイール開口部の全部を閉鎖する閉位置とに移動可能な開口部開閉手段を備えた車両用空気流制御装置が記載されている。この装置では、高速走行時に、開口部開閉手段を閉位置に移動させ、全ホイール開口部を閉鎖することにより、ホイール開口部から車両外部へ流出する空気流を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−327548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両用空気流制御装置では、高速走行時に、ホイール開口部を通過する空気流を遮断して、車両側面を流れる空気流との干渉を抑制することにより、空気抵抗を低減して低燃費化を図ることができる。
【0006】
しかしながら、ホイール開口部の全部を閉鎖すると、ホイールハウス内の空気圧が上昇し、これによって車体に作用する揚力(リフト)が上昇して車両姿勢が不安定になるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、空気流の干渉の抑制による燃費の向上を図りつつ、車両に作用する揚力の上昇を抑えることができる車両用空気流制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用空気流制御装置は、車両用のホイールに伴って回転することのない車体側の部品に取り付けられ、制御部によってホイール開口部を開放する開位置と、該ホイール開口部を閉鎖する閉位置とに移動制御可能な開口部開閉手段を備えた車両用空気流制御装置において、前記開口部開閉手段は、前記閉位置の場合に、前記ホイールにおける所定の高さ位置から下方側の第1領域及び該第1領域よりも上方に位置する第2領域のうち、前記第1の領域にある前記ホイール開口部の少なくとも一部を閉鎖し、他方の領域にある前記ホイール開口部の少なくとも一部を開放し、前記所定の高さ位置は、前記ホイールより前方の車体下端位置であることを特徴とする。
また、本発明は、前記車両用空気流制御装置において、前記制御部は、車両の速度に応じて前記開口部開閉手段を開位置又は閉位置に移動させることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、開口部開閉手段が閉位置の場合に、第1領域及び第2領域のうち、一方の領域にあるホイール開口部の少なくとも一部を閉鎖することにより、ホイール開口部から流出される空気流を低減して、車両側方を通る空気流との干渉を抑制することができる。これにより、空気抵抗の発生を抑制することによる燃費の向上が達成される。また、開口部開閉手段は、同時に他方の領域にあるホイール開口部の少なくとも一部を開放するので、開放状態にあるホイール開口部からホイールハウス内の空気を排出させることができる。これにより、ホイールハウス内の空気圧の上昇を抑制し、車両に作用する揚力の上昇を抑えることができる。
【0011】
この構成によれば、車体下端より低い位置にあるホイール開口部からは、空気が流出しやすくなるため、開口部開閉手段によって、この領域(すなわち、車体の下端から下方側に位置する第1領域)にあるホイール開口部を閉鎖することにより、ホイール開口部から流出する空気流による空気抵抗を抑制する効果を高めることができる。
また、この構成によれば、車体に作用する走行風は車両の速度によって変化するため、速度に応じて開口部開閉手段を移動制御することにより、低速走行時や高速走行時に良好な空力性能を得ることができる。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る車両用空気流制御装置は、車両用のホイールに伴って回転することのない車体側の部品に取り付けられ、制御部によってホイール開口部を開放する開位置と、該ホイール開口部を閉鎖する閉位置とに移動制御可能な開口部開閉手段を備えた車両用空気流制御装置において、前記ホイールを収容するホイールハウスの前方における車体の下面から下方へ突出するとともに、突出寸法を変更可能なフラップを備え、前記開口部開閉手段は、前記閉位置の場合に、前記ホイールにおける所定の高さ位置から下方側の第1領域及び該第1領域よりも上方に位置する第2領域のうち、一方の領域にある前記ホイール開口部の少なくとも一部を閉鎖し、他方の領域にある前記ホイール開口部の少なくとも一部を開放し、前記制御部は、前記フラップの突出寸法に応じて、前記開口部開閉手段を開位置又は閉位置に移動させることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ホイールハウスの前方に配置されたフラップによって、車体の下側に発生する空気流を整流して空力性能を向上することができるとともに、このフラップの突出寸法に応じて開口部開閉手段の開閉移動を制御することで、空気流の整流効果、すなわち、空気抵抗を減少させる効果を高めることができる。
【0014】
また、発明は、前記車両用空気流制御装置において、前記ホイールには、前記第1領域と前記第2領域との間であって上下方向において前記フラップが配置される第3領域にある前記ホイール開口部を開閉可能な中間開口部開閉手段が設けられ、前記制御部は、前記フラップの突出寸法に応じて、前記中間開口部開閉手段を開位置又は閉位置に移動させることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第3領域に生じる空気流をフラップと中間開口部開閉手段とによって適切にコントロールして、空力性能を向上させることができる。
【0016】
また、発明は、前記車両用空気流制御装置において、前記制御部は、車両の速度に応じて前記フラップの突出寸法を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車両用空気流制御装置によれば、燃費の向上を図りながら、車両に作用する揚力の上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態である車両用空気流制御装置の概要説明図。
図2】車両の前部の模式的側面図。
図3図2のIII−III線断面図であって、シャッタが開位置にある状態を示す図。
図4図2の要部拡大図。
図5】コントロールユニットが行う処理を示すフローチャート図。
図6】シャッタの変形例1を示す図3と同様の図。
図7】シャッタの変形例2を示す図3と同様の図。
図8】第2実施形態の車両用空気流制御装置を示す図2と同様の側面図。
図9図8のIX−IX線断面図であって、第1のシャッタと第2のシャッタとが閉位置にある状態を示す図。
図10】コントロールユニットが行う処理を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である車両用空気流制御装置1の概要説明図である。車両用空気流制御装置1は、ホイールハウス3の内部を通る空気流を調節するものであり、ホイールハウス3の内部に配設される車両用のホイール20と、ホイール開口部24を開閉可能なシャッタ(開口部開閉手段)30とを備える。ホイールハウス3の前方には、図2に示すように、車体の下面から突出するフラップ40が設けられる。車両用空気流制御装置1は、また、車両2の速度を検出する車速センサ11と、切替スイッチ12と、開閉スイッチ13と、フラップ検知センサ14と、コントロールユニット(制御部)15と、シャッタ30を移動させる駆動部33とを備える。
【0021】
図2に示すように、ホイール20は、ホイールセンタ部21と、タイヤ29が装着されるリム部22と、ホイールセンタ部21とリム部22とを接続する複数のスポーク23とを有する。図1及び図3に示すように、ホイールセンタ部21は、ドライブシャフト51の端部に連結されたハブ52に接続、固定される。複数のスポーク23は、ホイールセンタ部21から放射状に延在しており、先端部がリム部22の内周面に接続される。
【0022】
ドライブシャフト51には、トランスミッションTMを介してエンジンEGの動力が伝達される。また、ドライブシャフト51の端部に取付けられたハブ52には、車輪を支持するサスペンション装置が接続される。サスペンション装置は、ハブ52を回転自在に支持するハウジング56と、ハウジング56に接続されるロアアーム57及びストラット(図示せず)等を備える。また、ハウジング56には、ブレーキディスク53を挟み込んで制動力を発生させるブレーキキャリパやステアリングシステムのタイロッド(図示せず)が接続される。
【0023】
図2に示すように、ホイールハウス3の前方には、車体下面から下方へ突出するフラップ40が配設される。フラップ40は、車両走行時に発生する走行風のうち、車体下部を通る空気流が、前輪の回転によって乱れて空気抵抗が大きくなるのを防止するための整流構造を構成するものである。フラップ40は、タイヤ29よりも幅広となるように車両2の幅方向に延在する略矩形板状の部材であり、図示していない電動モータ等の駆動部によって、下方への突出寸法Lが変更可能に構成されている。このフラップ40は、例えば、図示していないフラップ制御部によって、車両2の速度に応じて突出寸法Lが変更するように構成することができる。一例として、車両2の速度が所定の閾値以上の場合に、突出寸法Lが大きくなり、速度が所定の閾値未満の場合に、突出寸法Lが小さくなるようにすることができる。
【0024】
ホイール20は、便宜上、設置状態において、所定の高さ位置から下方側に位置する第1領域61と、第1領域61と隣接してその上方に位置する(すなわち、第1領域61よりも上方に位置する)第2領域62とに区分される。図2において、第1領域61は、符号31が付された破線で囲まれた領域であり、第2領域62は二点鎖線で囲まれた領域である。本実施形態では、所定の高さ位置をホイール20より前方の車体下端位置としている。ここで、車体下端位置とは、車両停止時におけるホイール20の前方に配置されたフラップ40の下端40aの位置であり、本実施形態では、特に、フラップ40の突出寸法Lが最大となった時(以下、最大寸法Lという)の下端40aの位置を車体下端位置としている。なお、車両2がフラップ40を有していない場合、車体下端位置は、ホイール20よりの前方の車体下面5の位置とすることができる。ホイール20の裏面側(車両2の内側)には、第1領域61にあるホイール開口部24を開閉可能なシャッタ30が設けられる。なお、シャッタ30は、図2に示す側方投影図において、ホイール開口部24を閉鎖可能な構造であればよく、閉鎖状態で、車幅方向におけるホイール開口部24とシャッタ30との間に隙間が形成されていてもよい。
【0025】
シャッタ30は、第1領域61にあるホイール開口部24を開放する開位置と、ホイール開口部24を実質的に閉鎖する閉位置とに移動可能に構成される。図3及び図4に示すように、シャッタ30は、シャッタ部31と、支持部32と、駆動部33とを備える。
【0026】
シャッタ部31は、板状の部材で構成されており、第1領域61にあるホイール開口部24の全部を閉鎖可能となるように、略弓形に形成されている。支持部32は、シャッタ部31を支持する棒状の部材であり、基端が駆動部33に接続され、先端がシャッタ部31に接続される。
【0027】
駆動部33は、ハウジング56に取り付けられており、シャッタ部31及び支持部32がホイール20の周方向に回動可能となるように、これらを駆動するものであり、例えば、電動モータ等によって構成することができる。また、駆動部33自体がハウジング56の外周部を円弧状に移動する構成としてもよい。なお、図示例では、駆動部33をハウジング56の外周部に取り付けているが、駆動部33をハウジング56の内部に格納し、ハウジング56の外周部から延在する支持部32と、支持部32に連結されたシャッタ部31とを回動可能に取り付ける構成としてもよい。また、駆動部33は、ハウジング56に限られず、ホイール20のリム部22の内側に配置されて走行時に回転しない部品、例えば、ブレーキキャリパ等に設置することができる。
【0028】
図4に示すように、このシャッタ30は、シャッタ部31の略弓形の平面が車両外側面を向いた状態で設置される。矢印で示すように、シャッタ部31及び支持部32は、駆動部33によってホイール20の周方向に回動可能であり、具体的には、図4において破線で示す、シャッタ部31が第1領域61に位置する閉位置と、図4において一点鎖線で示す、シャッタ部31が第2領域62に位置する開位置との間を回動可能である。シャッタ30は、開位置に移動した場合に、第1領域61にあるホイール開口部24の全部と、第2領域62にあるホイール開口部24の一部を開放し、閉位置に移動した場合に、第1領域61にあるホイール開口部24の全部を実質的に閉鎖し、第2領域にあるホイール開口部24の全部を開放する。このようなシャッタ30は、少なくとも左右の前輪のホイール20に設けられており、さらに、左右の後輪のホイール20に対して設けることも可能である。
【0029】
切替スイッチ12は、シャッタ30の移動を手動で制御する手動制御モードと、コントロールユニット15が制御する自動制御モードとに切り替えるスイッチである。
【0030】
開閉スイッチ13は、切替スイッチ12によって手動制御モードが選択された場合に、シャッタ30を開位置にさせる開モードと、シャッタ30を閉位置にさせる閉モードとを選択するスイッチである。
【0031】
フラップ検知センサ14は、フラップ40の突出寸法Lを検知するものであり、フラップ40の近傍に設置される。車速センサ11、切替スイッチ12、開閉スイッチ13及びフラップ検知センサ14は、それぞれ、コントロールユニット15と接続されている。
【0032】
コントロールユニット15は、自動制御モードの場合に車速センサ11によって検出された車速と、フラップ検知センサ14によって検知されたフラップ40の突出寸法とに基づいて、駆動部33を作動させる。また、手動制御モードの場合に、開閉スイッチ13からの信号に基づいて駆動部33を作動させる。具体的には、開閉スイッチ13から開モードを選択する信号を受信した場合にシャッタ30を開位置にし、閉モードを選択する信号を受信した場合にシャッタ30を閉位置にするように、駆動部33を作動させる。コントロールユニット15には、車両2が、所定の速度以上となる高速走行であるか否かを判断するための速度閾値Vが設定されている。また、フラップ40の突出寸法が所定の寸法以上であるか否かを判断するための寸法閾値Lが設定されている。ここでは、寸法閾値Lをフラップ40の最大寸法Lとしている。
【0033】
次に、コントロールユニット15によるシャッタ30の移動制御について説明する。図5は、コントロールユニット15が行う処理を示すフローチャート図である。
【0034】
まず、コントロールユニット15は、切替スイッチ12からの信号により、シャッタ30の移動制御が、自動制御モードであるか判別する(ステップS101)。
【0035】
自動制御モードである場合(ステップS101:Yes)、コントロールユニット15は、車速センサ11の検出値に基づき、車両2の車速Vが閾値V以上であるか判別する(ステップS102)。
【0036】
車速Vが、閾値Vより低い場合(ステップS102:No)、コントロールユニット15は、駆動部33を作動させてシャッタ30を開位置に移動させる(ステップS103)。その後、処理を終了(リターン)する。
【0037】
車速Vが、閾値V以上の場合(ステップS102:Yes)、フラップ検知センサ14の検知結果に基づき、フラップ40の突出寸法が所定の寸法閾値L以上であるか判別する(ステップS104)。
【0038】
突出寸法が寸法閾値L以上の場合(ステップS104:Yes)、コントロールユニット15は、駆動部33を作動させてシャッタ30を閉位置に移動させる(ステップS105)。その後、処理を終了(リターン)する。
【0039】
突出寸法が寸法閾値Lより小さい場合(ステップS104:No)、コントロールユニット15は、駆動部33を作動させてシャッタ30を開位置に移動させる(ステップS103)。その後、処理を終了(リターン)する。
【0040】
一方、ステップS101において、選択されているモードが手動制御モードの場合(ステップS101:No)、コントロールユニット15は、開閉スイッチ13からの信号が開モードであるか判別する(ステップS106)。信号が開モードである場合(ステップS106:Yes)、駆動部33を作動させてシャッタ30を開位置に移動させ(ステップS103)、処理を終了(リターン)する。信号が閉モードである場合(ステップS106:No)、駆動部33を作動させてシャッタ30を閉位置に移動させ(ステップS105)、処理を終了(リターン)する。
【0041】
上述した車両用空気流制御装置1では、シャッタ30によって、ホイール開口部24の一部を開放するとともに、ホイール開口部24の一部を閉鎖することにより、ホイール開口部24から流出する空気流と、車両側方を通る空気流との干渉を抑制することができる。走行時には、車体下端から上方側のホイール開口部24(すなわち、第2領域62のホイール開口部24)に比べて、車体下端より低い位置にあるホイール開口部24(すなわち、第1領域61のホイール開口部24)から空気が流出しやすくなる。そのため、高速走行時に、シャッタ30を閉位置に移動制御し、第1領域61にあるホイール開口部24を閉鎖することにより、ホイール開口部24から流出する空気流による空気抵抗を抑制する効果を高めて、燃費を向上させることができる。また、このとき、第2領域62にあるホイール開口部24は開放状態となるため、ホイールハウス3内に空気が溜って空気圧が上昇するのを防止することができる。その結果、車両2に作用する揚力の上昇が抑えられる。一方、低速走行時には、第1領域61にあるホイール開口部24を開放状態とすることで、ブレーキの冷却作用を高めることができる。
【0042】
また、空気流の整流効果を有するフラップ40の突出寸法に応じてシャッタ30を作動させることで、より空気抵抗の減少効果を高めることができる。フラップ40は、通常、高速走行時に突出寸法Lが大きくなるように制御されるので、この時に、第1領域61のホイール開口部24を閉鎖することで、燃費を大幅に向上させることができる。
【0043】
なお、フラップ40の突出寸法Lを車速に応じて変更する場合、車速センサ11の検出結果のみ、又はフラップ検知センサ14の検知結果のみに基づいて、シャッタ30を移動制御させる構成としてもよい。
【0044】
(変形例1)
図6は、上述したシャッタ30の変形例1を示す。変形例1のシャッタ30は、支持部32が屈曲しており、支持部32の先端に取り付けられたシャッタ部31はブレーキディスク53の車幅方向外側に位置する。シャッタ部31及び支持部32は、駆動部33によって回動可能であり、シャッタ部31が第1領域61に位置する閉位置と、シャッタ部31が第2領域62に位置する開位置とに移動可能に構成される。変形例1では、シャッタ部31がホイール開口部24により近接した位置に配置されることにより、閉位置に移動した際に、第1領域61のホイール開口部24から流出する空気流を抑制する効果を高めることができる。
【0045】
(変形例2)
図7は、上述したシャッタ30の変形例2を示す。変形例2のシャッタ30は、駆動部33によって、シャッタ部31が車幅方向に移動可能に構成される。具体的には、シャッタ部31が車幅方向外側へ移動して、第1領域61のホイール開口部24を実質的に閉鎖する閉位置(図7において実線で示す位置)と、シャッタ部31がホイール開口部24から離れるように車幅方向内側へ移動し、第1領域61及び第2領域62にあるホイール開口部24が開放された開位置(図7において二点鎖線で示す位置)とに移動可能に構成される。変形例2のシャッタ30では、開位置に移動した際に、第1領域61及び第2領域62に位置するホイール開口部24の全部を開放することができ、ブレーキ冷却効果を高めることができる。
【0046】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の車両用空気流制御装置1を示す図2と同様の側面図であり、図9は、図8のIX−IX線断面図である。以下に説明する第2実施形態において、第1実施形態と対応する部位には同一の符号を付しており、ここでは、第1実施形態と同一の構成についての詳細を省略する。第2実施形態の車両用空気流制御装置1は、ホイール開口部24を開閉可能な2つのシャッタ、すなわち、第1のシャッタであるシャッタ(開口部開閉手段)30と、第2のシャッタである中間部シャッタ(中間開口部開閉手段)35とを備える。
【0047】
本実施形態において、ホイール20には、第1領域61及び第2領域62の他に、第1領域61と第2領域62との間に位置する第3領域63が設定されている。第3領域63は、車両2の上下方向において、フラップ40が配置される位置に設定されており、図8において第3領域63は、符号36が付された破線で囲まれた領域である。なお、本実施形態において、第1領域61は、第1実施形態と同様に設定されており、第2領域62は、第3領域63と隣接して、その上方側に位置する領域である。
【0048】
シャッタ30は、第1領域61にあるホイール開口部24を開閉可能なものであり、本実施形態では変形例1と同様の構成を有する。
【0049】
中間部シャッタ35は、シャッタ部36と、シャッタ部36を支持する支持部37と、駆動部38とを備える。シャッタ部36は板状の部材であって、図8において破線で示すように、平面視において第3領域63におけるホイール開口部24を閉鎖可能な形状に形成される。中間部シャッタ35は、ハウジング56に取り付けられた駆動部38の駆動力によって、シャッタ部36及び支持部37がホイール20の周方向へ回動可能であり、シャッタ部36が第3領域63に位置して第3領域63のホイール開口部24を実質的に閉鎖する閉位置(図9において実線で示す位置)と、シャッタ部36が第1領域61に移動して第3領域63のホイール開口部24が開放された開位置(図9において一点鎖線で示す位置)とに移動可能に構成されている。駆動部38は、コントロールユニット15と接続されており、コントロールユニット15からの指示によって、シャッタ部36及び支持部37を開位置又は閉位置へ移動させる。
【0050】
次に、コントロールユニット15によるシャッタ30及び中間部シャッタ35の移動制御について説明する。図10は、コントロールユニット15が行う処理を示すフローチャート図である。
【0051】
まず、コントロールユニット15は、切替スイッチ12からの信号により、シャッタ30の移動制御が、自動制御モードであるか判別する(ステップS201)。
【0052】
自動制御モードである場合(ステップS201:Yes)、コントロールユニット15は、車速センサ11の検出値に基づき、車両2の車速Vが閾値V以上であるか判別する(ステップS202)。
【0053】
車速Vが、閾値Vより低い場合(ステップS202:No)、コントロールユニット15は、駆動部33,38を作動させてシャッタ30及び中間部シャッタ35を開位置に移動させる(ステップS203)。その後、処理を終了(リターン)する。
【0054】
車速Vが、閾値V以上の場合(ステップS202:Yes)、フラップ検知センサ14の検知結果に基づき、フラップ40の突出寸法が所定の寸法閾値L以上であるか判別する(ステップS204)。
【0055】
突出寸法が寸法閾値L以上の場合(ステップS204:Yes)、コントロールユニット15は、各駆動部33,38を作動させてシャッタ30及び中間部シャッタ35を閉位置に移動させる(ステップS205)。その後、処理を終了(リターン)する。
【0056】
突出寸法が寸法閾値Lより小さい場合(ステップS204:No)、コントロールユニット15は、駆動部33を作動させてシャッタ30を閉位置に移動させ、駆動部38を作動させて中間部シャッタ35を開位置に移動させる(ステップS206)。その後、処理を終了(リターン)する。
【0057】
一方、ステップS201において、選択されているモードが手動制御モードの場合(ステップS201:No)、コントロールユニット15は、開閉スイッチ13からの信号が開モードであるか判別する(ステップS207)。信号が開モードである場合(ステップS207:Yes)、駆動部33,38を作動させてシャッタ30及び中間部シャッタ35を開位置に移動させ(ステップS203)、処理を終了(リターン)する。信号が閉モードである場合(ステップS207:No)、駆動部33,38を作動させてシャッタ30及び中間部シャッタ35を閉位置に移動させ(ステップS205)、処理を終了(リターン)する。
【0058】
本実施形態の車両用空気流制御装置1では、第1実施形態と同様の効果を有するとともに、第3領域63に生じる空気流の乱れをフラップ40と中間部シャッタ35とによって適切にコントロールすることで、空力性能をより向上させることができる。具体的には、フラップ40の突出寸法Lが小さくなって、車体下端位置が高くなった場合には、シャッタ30及び中間部シャッタ35を閉位置にし、フラップ40の突出寸法Lが大きくなって、車体下端位置が低くなった場合には、シャッタ30のみを閉位置にすることで、車体下端位置が変更した場合であっても、車体下端位置から下方側のホイール開口部24を適切に閉鎖し、燃費向上を図ることができる。
【0059】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、シャッタ30は、閉位置の場合に、第1領域61及び第2領域62のうち、一方の領域にあるホイール開口部24の少なくとも一部を閉鎖し、他方の領域にあるホイール開口部24の少なくとも一部を開放することができるものであればよい。例えば、シャッタ30が閉位置の場合に、第1領域61のホイール開口部24の一部を閉鎖し、かつ第2領域62のホイール開口部24の一部を閉鎖する(つまり、一部を開放する)構成、また、シャッタ30が閉位置の場合に、第1領域61のホイール開口部24の一部を閉鎖し、かつ第2領域62のホイール開口部24の全部を開放する構成等を採用することができる。この場合、シャッタ部31の形状は、閉鎖する範囲に合わせて、適宜設定することができる。
【0060】
また、中間部シャッタ35は、変形例1,2のシャッタ30と同様に、シャッタ部36の配置位置や、移動方向を変更することが可能である。例えば、変形例2のように、シャッタ部36が車幅方向内側へ移動することによって第3領域63にあるホイール開口部24を開状態とし、車幅方向外側へ移動することによって第3領域63にあるホイール開口部24を閉状態とするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 車両用空気流制御装置
3 ホイールハウス
11 車速センサ
12 切替スイッチ
13 開閉スイッチ
14 フラップ検知センサ
15 コントロールユニット(制御部)
20 ホイール
24 ホイール開口部
30 シャッタ(開口部開閉手段)
33,38 駆動部
35 中間部シャッタ(中間開口部開閉手段)
40 フラップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10