(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である車両用制御装置10を備えたハイブリッド車両11を示す概略図である。
図1に示すように、ハイブリッド車両11に搭載されるパワーユニット12には、動力源としてエンジン13およびモータジェネレータ(走行用モータ)14が設けられている。また、パワーユニット12には、プライマリプーリ15およびセカンダリプーリ16からなる無段変速機17が設けられている。プライマリプーリ15の一方側にはトルクコンバータ18を介してエンジン13が連結されており、プライマリプーリ15の他方側にはモータジェネレータ14が連結されている。また、セカンダリプーリ16には、駆動輪出力軸19やデファレンシャル機構20等を介して車輪21が連結されている。このように、車輪21にはモータジェネレータ14が連結されており、車輪21にはエンジン13が連結されている。
【0010】
また、モータジェネレータ14には、インバータ30を介してバッテリ(蓄電デバイス)31が接続されている。電力変換機器であるインバータ30は、直流電力と交流電力とを相互に変換する機能を有している。モータジェネレータ14を力行状態に制御する際には、インバータ30によって直流電力が交流電力に変換され、バッテリ31からインバータ30を介してモータジェネレータ14に電力が供給される。一方、モータジェネレータ14を発電状態つまり回生状態に制御する際には、インバータ30によって交流電力が直流電力に変換され、モータジェネレータ14からインバータ30を介してバッテリ31に電力が供給される。
【0011】
トルクコンバータ18とプライマリプーリ15との間、つまりエンジン13と車輪21との間には、締結状態と解放状態とに切り替えられる入力クラッチ(クラッチ機構)32が設けられている。入力クラッチ32を締結状態に切り替えることにより、プライマリプーリ15に対してトルクコンバータ18が接続され、車輪21に対してエンジン13を接続することができる。一方、入力クラッチ32を解放状態に切り替えることにより、プライマリプーリ15からトルクコンバータ18が切り離され、車輪21からエンジン13を切り離すことができる。なお、入力クラッチ32を解放状態に切り替えることにより、車輪21からエンジン13を切り離した場合であっても、車輪21とモータジェネレータ14との接続状態は維持される。すなわち、入力クラッチ32を解放状態に切り替えることにより、車輪21とモータジェネレータ14とを互いに接続した状態のもとで、車輪21とエンジン13とを互いに切り離すことが可能である。
【0012】
また、ハイブリッド車両11には、車輪21を制動するブレーキ装置(ブレーキ機構)33が設けられている。ブレーキ装置33は、乗員に踏み込まれるブレーキペダル34と、ブレーキペダル34の踏み込みに応じてブレーキ液圧を発生させるマスターシリンダ35と、を有している。また、ブレーキ装置33は、車輪21に固定されるディスクロータ36と、ディスクロータ36を制動するキャリパ37と、を有している。さらに、マスターシリンダ35とキャリパ37とは、ブレーキ液圧を制御するブレーキアクチュエータ38を介して連結されている。ブレーキアクチュエータ38は、図示しない電動ポンプ、アキュムレータおよび電磁バルブ等によって構成される。
【0013】
[制御系]
続いて、車両用制御装置10の制御系について説明する。
図1に示すように、車両用制御装置10には、パワーユニット12の作動状態を制御するため、コンピュータ等によって構成される各種コントローラ40〜45が設けられている。各種コントローラとして、エンジン13を制御するエンジンコントローラ40、無段変速機17等を制御するミッションコントローラ41、モータジェネレータ14を制御するモータコントローラ42、バッテリ31を制御するバッテリコントローラ43、ブレーキ装置33を制御するブレーキコントローラ44、および各コントローラ40〜44を統合的に制御するメインコントローラ45がある。これらのコントローラ40〜45は、CANやLIN等の車載ネットワーク46を介して互いに通信自在に接続されている。
【0014】
メインコントローラ45は、各コントローラ40〜44に制御信号を出力し、パワーユニット12を構成するエンジン13やモータジェネレータ14等を互いに協調させて制御する。メインコントローラ45には、アクセルペダルの踏み込み状況を検出するアクセルセンサ50、ブレーキペダル34の踏み込み状況を検出するブレーキセンサ51、車両の走行速度である車速を検出する車速センサ52、クランク軸の回転速度であるエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ53等が接続されている。そして、メインコントローラ45は、センサやコントローラから送信される情報に基づいてエンジン13やモータジェネレータ14等の制御目標を設定し、設定された制御目標に基づいて各コントローラに制御信号を出力する。
【0015】
メインコントローラ45から制御信号を受信した各コントローラ40〜44は、以下のように、エンジン13やモータジェネレータ14等を制御する。つまり、エンジンコントローラ40は、スロットルバルブ54やインジェクタ55等に制御信号を出力し、エンジントルクやエンジン回転数等を制御する。ミッションコントローラ41は、作動油を調圧するバルブユニット56に制御信号を出力し、無段変速機17、入力クラッチ32およびトルクコンバータ18等の作動状態を制御する。また、モータコントローラ42は、インバータ30に制御信号を出力し、モータジェネレータ14のモータトルクやモータ回転数等を制御する。ブレーキコントローラ44は、ブレーキアクチュエータ38に制御信号を出力し、ブレーキ装置33による車輪21の制動力を制御する。そして、バッテリコントローラ43は、バッテリ31の充放電を監視するとともに、必要に応じてバッテリ31内のリレー等を制御する。
【0016】
このように、メインコントローラ45および各種コントローラ40〜44によって、エンジン13、モータジェネレータ14、入力クラッチ32およびブレーキ装置33等が制御されている。つまり、メインコントローラ45およびミッションコントローラ41は、入力クラッチ32を制御するクラッチ制御部として機能している。また、メインコントローラ45およびブレーキコントローラ44は、ブレーキ装置33を制御するブレーキ制御部として機能している。なお、バッテリコントローラ43は、バッテリ31の充放電電流や開放電圧等に基づいて、バッテリ31の充電状態SOCを演算する機能を有している。バッテリ31の充電状態SOC(state of charge)とは、バッテリ31の設計容量に対する蓄電量の比率である。つまり、充電状態SOCが高いということは、バッテリ31の蓄電量が多いことを意味しており、充電状態SOCが低いということは、バッテリ31の蓄電量が少ないことを意味している。
【0017】
[車両減速制御]
続いて、コースト走行時の車両減速制御について説明する。なお、コースト走行時とは、アクセルペダルおよびブレーキペダル34の踏み込みが共に解除される車両減速時、つまり乗員によるアクセル操作とブレーキ操作との双方が解除される車両減速時である。
【0018】
図2(a)〜(c)は、コースト走行時におけるパワーユニット12の作動例を示す説明図である。
図2(a)〜(c)に示した白抜きの矢印は、エネルギーの流れ方向を示している。
図3(a)〜(c)は、ハイブリッド車両11の目標減速トルクTvbを示すとともに、この目標減速トルクTvbの内訳を示す説明図である。また、
図2(a)は
図3(a)に対応し、
図2(b)は
図3(b)に対応し、
図2(c)は
図3(c)に対応している。なお、
図3(a)〜(c)に示した目標減速トルクTvb、目標モータトルクTmbおよびエンジントルクTebは、車輪21に作用する大きさで示されている。
【0019】
図2(a)に示すように、アクセルペダルの踏み込みが解除されるコースト走行においては、エンジン13の燃料カットによってエンジンブレーキを作動させ、モータジェネレータ14が回生状態に制御される。すなわち、
図2(a)に白抜きの矢印で示すように、車輪21からパワーユニット12に入力される運動エネルギーは、その一部がエンジン13によって消費されるとともに、その一部がモータジェネレータ14によって電気エネルギーに変換される。このコースト走行時の車両減速度は、モータジェネレータ14の回転抵抗つまり回生トルクによる調整が可能である。
【0020】
ここで、
図3(a)に示すように、コースト走行時においては、車速等に基づきハイブリッド車両11の目標減速トルクTvbが設定される。この目標減速トルクTvbとは、コースト走行時に乗員に対して違和感を与えることなく、ハイブリッド車両11を減速させるためのトルクである。そして、目標減速トルクTvbからエンジントルクTebを減算することで目標モータトルクTmbが設定され、この目標モータトルクTmbに基づいてモータジェネレータ14の回生トルクが制御される。これにより、ハイブリッド車両11を目標減速トルクTvbで減速させることでき、乗員に違和感を与えることなくハイブリッド車両11を減速させることができる。
【0021】
図3(a)に示した例では、エンジン13に対する燃料カットが実施され、エンジンブレーキが作動するため、エンジントルクTebが減速側に出力される。しかしながら、エンジン13の運転状況によっては、燃料カットの禁止によって燃料噴射が継続され、エンジントルクTebが加速側に出力される場合がある。例えば、コースト走行時であっても、エンジン回転数が所定の回転閾値を上回る場合には、排出ガスに含まれる窒素酸化物を抑制する観点から、燃料カットが禁止されて燃料噴射が継続される。また、コースト走行時であっても、エンジン13の冷却水温が所定温度を上回る場合には、エンジン13の過度な温度上昇を抑制する観点から、燃料カットが禁止されて燃料噴射が継続される。このように、エンジン13に対する燃料噴射が継続された場合には、
図3(b)および(c)に示すように、エンジントルクTebが加速側に出力される。
【0022】
このように、エンジントルクTebが加速側に出力された場合であっても、ハイブリッド車両11を目標減速トルクTvbで減速させるため、目標減速トルクTvbからエンジントルクTebを減算して得られた目標モータトルクTmbに基づいて、モータジェネレータ14の回生トルクを制御することが必要である。前述したように、エンジントルクTebが加速側に出力された場合には、
図2(b)に示すように、車輪21とエンジン13との双方から、モータジェネレータ14に対して運動エネルギーが入力される。つまり、
図3(b)に示すように、ハイブリッド車両11を目標減速トルクTvbで減速させるためには、モータジェネレータ14の回生トルクを増加させることが必要であった。このように、モータジェネレータ14の回生トルクを増加させることにより、加速側のエンジントルクTebを打ち消すことができるため、ハイブリッド車両11を目標減速トルクTvbで減速させることでき、乗員に違和感を与えることなくハイブリッド車両11を減速させることができる。
【0023】
しかしながら、モータジェネレータ14によって制御可能な回生トルクの大きさは、バッテリ31の充電状態SOCやモータジェネレータ14の出力制限の有無等によって制限されることになる。例えば、バッテリ31の充電状態SOCが所定の判定値(蓄電閾値)を上回る場合には、バッテリ31に対する充電が制限されることから、モータジェネレータ14の回生トルクが制限される。また、例えば、モータジェネレータ14の温度が所定の温度閾値を上回る場合であっても、モータジェネレータ14を保護する観点から、モータジェネレータ14の回生トルクが制限される。
【0024】
このように、モータジェネレータ14の回生トルクが制限された場合、つまりモータジェネレータ14の回生トルクを立ち上げるだけでは、目標減速トルクTvbを確保することが困難である場合には、
図2(c)に示すように、入力クラッチ32が締結状態から解放状態に切り替えられる。これにより、入力クラッチ32によってエンジントルクTebを遮断することができるため、
図3(c)に示すように、エンジントルクTeb分だけ目標モータトルクTmbを削減することができる。このように、モータジェネレータ14の回生トルクが制限された場合であっても、入力クラッチ32の解放によって目標モータトルクTmbを下げることができるため、ハイブリッド車両11を目標減速トルクTvbで減速させることでき、乗員に違和感を与えることなくハイブリッド車両11を減速させることができる。
【0025】
前述したように、モータジェネレータ14の回生トルクが制限されることにより、目標減速トルクTvbを確保することが困難である場合には、入力クラッチ32が解放状態に切り替えられる。しかしながら、入力クラッチ32を解放することで目標モータトルクTmbを下げた場合であっても、モータジェネレータ14の出力制限等によっては回生トルクが不足することも想定される。この場合には、モータジェネレータ14を補助する観点から、メインコントローラ45によってブレーキ装置33が作動状態に制御される。続いて、コースト走行時にブレーキ装置33を作動させるブレーキ制御について説明する。
【0026】
図4(a)および(b)は、コースト走行時におけるパワーユニット12の作動例を示す説明図である。
図4(a)および(b)に示した白抜きの矢印は、エネルギーの流れ方向を示している。また、
図5(a)および(b)は、ハイブリッド車両11の目標減速トルクTvbを示すとともに、この目標減速トルクTvbの内訳を示す説明図である。また、
図4(a)は
図5(a)に対応し、
図4(b)は
図5(b)に対応する。なお、
図5(a)および(b)に示した目標減速トルクTvb、目標モータトルクTmb、エンジントルクTebおよびブレーキトルクTBは、車輪21に作用する大きさで示されている。
【0027】
前述したように、入力クラッチ32を解放することで目標モータトルクTmbを下げた場合であっても、モータジェネレータ14の出力制限等によっては回生トルクが不足する場合がある。このように、モータジェネレータ14の回生トルクが不足する場合には、
図4(a)に示すように、ブレーキ装置33を作動させて車輪21を制動することにより、車輪21から入力される運動エネルギーの一部は、ブレーキ装置33のキャリパ37から熱エネルギーとして放出される。つまり、
図5(a)に示すように、目標モータトルクTmbをブレーキトルクTBによって補うことができるため、モータジェネレータ14の回生トルクが制限されていた場合であっても、ハイブリッド車両11の目標減速トルクTvbを確保することができる。これにより、ハイブリッド車両11を目標減速トルクTvbで減速させることでき、乗員に違和感を与えることなくハイブリッド車両11を減速させることができる。
【0028】
図4(a)および
図5(a)に示す例では、入力クラッチ32を解放するとともにブレーキ装置33を作動させているが、これに限られることはなく、
図4(b)および
図5(b)に示すように、入力クラッチ32の締結状態を維持したままブレーキ装置33を作動させても良い。つまり、前述の説明では、モータジェネレータ14の回生トルクが制限された場合に、入力クラッチ32を解放することで目標モータトルクTmbを下げているが、これに限られることはなく、モータジェネレータ14の回生トルクが制限された場合に、ブレーキ装置33を作動させることで目標モータトルクTmbを下げても良い。
【0029】
すなわち、
図4(b)に示すように、入力クラッチ32を解放状態に切り替える前であっても、ブレーキ装置33を作動させて車輪21を制動することにより、車輪21から入力される運動エネルギーの一部は、ブレーキ装置33のキャリパ37から熱エネルギーとして放出される。つまり、
図5(b)に示すように、目標モータトルクTmbをブレーキトルクTBによって補うことができるため、モータジェネレータ14の回生トルクが制限されていた場合であっても、ハイブリッド車両11の目標減速トルクTvbを確保することができる。これにより、ハイブリッド車両11を目標減速トルクTvbで減速させることでき、乗員に違和感を与えることなくハイブリッド車両11を減速させることができる。
【0030】
[車両減速制御(フローチャート)]
続いて、前述した車両減速制御の実行手順をフローチャートに沿って説明する。
図6および
図7は車両減速制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図6および
図7においては、符号A〜Cの箇所で互いに接続されている。
【0031】
図6に示すように、ステップS10では、アクセル操作およびブレーキ操作が共に解除されるコースト走行であるか否かが判定される。ステップS10において、コースト走行であると判定された場合には、ステップS11に進み、以下の式(1)に基づいて、モータジェネレータ14の目標モータトルクTmbが算出される。すなわち、ハイブリッド車両11の目標減速トルクTvbからエンジントルクTebが減算され、モータジェネレータ14の目標モータトルクTmbが算出される。なお、
図3(a)に示すように、エンジントルクTebが減速側(−側)に出力される場合には、目標モータトルクTmbが減速側(−側)に小さく算出される。一方、
図3(b)に示すように、エンジントルクTebが加速側(+側)に出力される場合には、目標モータトルクTmbが減速側(−側)に大きく算出される。
Tmb=Tvb−Teb ・・(1)
【0032】
続いて、ステップS12では、燃料カットフラグが解除されているか否かが判定される。ここで、燃料カットフラグとは、エンジン13に対する燃料カットが実行される場合に設定されるフラグ、つまりエンジン13の燃料噴射が止められる場合に設定されるフラグである。ステップS12において、燃料カットフラグが解除されていないと判定された場合、つまりエンジン13の燃料カットが実行されていると判定された場合には、ステップS13に進み、入力クラッチ32が解放状態であるか否かが判定される。ステップS13において、入力クラッチ32が解放状態であると判定された場合には、ステップS14に進み、入力クラッチ32が締結状態に制御される。そして、ステップS13において入力クラッチ32が締結状態であると判定された場合や、ステップS14において入力クラが締結状態に切り替えられた場合には、ステップS15に進み、目標モータトルクTmbに基づいてモータジェネレータ14の回生トルクが制御される。
【0033】
このように、コースト走行時に燃料カットが実行されている場合には、
図3(a)に示すように、エンジントルクTebが減速側に出力されるため、目標減速トルクTvbからエンジントルクTebを減算することで目標モータトルクTmbが設定され、この目標モータトルクTmbに基づいてモータジェネレータ14の回生トルクが制御される。これにより、ハイブリッド車両11を目標減速トルクTvbで減速させることでき、乗員に違和感を与えることなくハイブリッド車両11を減速させることができる。
【0034】
一方、ステップS12において、燃料カットフラグが解除されていると判定された場合、つまりエンジン13の燃料カットが禁止されていると判定された場合には、ステップS16に進み、バッテリ31の充電状態SOCが所定の判定値(蓄電閾値)を下回るか否かが判定される。また、ステップS17では、モータジェネレータ14の出力制限が実行されているか否かが判定される。ステップS16において充電状態SOCが判定値を下回り、かつステップS17においてモータジェネレータ14の出力制限が実施されていない場合とは、モータジェネレータ14の回生トルクが制限されていない状況である。この場合には、ステップS18に進み、目標モータトルクTmbに基づいてモータジェネレータ14が制御される。
【0035】
図7に示すように、続くステップS19では、モータジェネレータ14の回生トルクを目標モータトルクTmbに制御可能であるか否かが判定される。ステップS19において、目標モータトルクTmbへの制御が不可能であると判定された場合には、ステップS20に進み、以下の式(2)に基づいて、ブレーキ装置33のブレーキトルクTBが算出される。すなわち、目標モータトルクTmbから実回生トルクTmb'が減算され、ブレーキ装置33のブレーキトルクTBが算出される。なお、実回生トルクTmb'とは、モータジェネレータ14から実際に出力される回生トルクである。そして、ステップS21に進み、ブレーキトルクTBに基づいてブレーキ装置33が制御される。
TB=Tmb−Tmb' ・・(2)
【0036】
このように、コースト走行時の燃料カットが禁止されている場合には、
図3(b)に示すように、エンジントルクTebが加速側に出力されるため、エンジントルクTebを打ち消すように目標モータトルクTmbが減速側に拡大され、この目標モータトルクTmbに基づきモータジェネレータ14の回生トルクが制御される。これにより、ハイブリッド車両11を目標減速トルクTvbで減速させることでき、乗員に違和感を与えることなくハイブリッド車両11を減速させることができる。また、万一、モータジェネレータ14の回生トルクが不足する場合には、
図5(b)に示すように、目標モータトルクTmbの不足分がブレーキトルクTBによって補われるため、ハイブリッド車両11を目標減速トルクTvbで減速させることでき、乗員に違和感を与えることなくハイブリッド車両11を減速させることができる。
【0037】
一方、ステップS16において、バッテリ31の充電状態SOCが判定値以上であると判定された場合や、ステップS17において、モータジェネレータ14の出力制限が実行されていると判定された場合とは、モータジェネレータ14の回生トルクが制限される場合である。このように、モータジェネレータ14の回生トルクが制限される場合には、ステップS22に進み、入力クラッチ32が解放状態であるか否かが判定される。ステップS22において、入力クラッチ32が締結状態であると判定された場合には、ステップS23に進み、入力クラッチ32が締結状態から解放状態に切り替えられる。そして、ステップS22において入力クラッチ32が解放状態であると判定された場合や、ステップS23において入力クラッチ32が解放状態に切り替えられた場合には、ステップS24に進み、以下の式(3)に基づいて、目標モータトルクTmbが修正される。すなわち、入力クラッチ32が解放されてエンジントルクTebが遮断されることから、車輪21に向けて伝達されるエンジントルクTebを「0」と見なし、目標減速トルクTvbがそのまま目標モータトルクTmbとして算出される。
Tmb=Tvb−0 ・・(3)
【0038】
そして、ステップS18では、修正された目標モータトルクTmbに基づいてモータジェネレータ14が制御され、
図7に示すように、続くステップS19では、目標モータトルクTmbに制御可能であるか否かが判定される。ステップS19において、目標モータトルクTmbへの制御が不可能であると判定された場合には、ステップS20に進み、ブレーキ装置33のブレーキトルクTBが算出され、ステップS21に進み、ブレーキトルクTBに基づいてブレーキ装置33が制御される。一方、ステップS19において、目標モータトルクTmbに制御可能であると判定された場合には、ブレーキ装置33を制御することなくルーチンを抜ける。
【0039】
このように、コースト走行時の燃料カットが禁止されている場合には、
図3(c)に示すように、エンジントルクTebが加速側に出力されるため、エンジントルクTebの伝達を遮断するように入力クラッチ32が解放され、エンジントルクTeb分だけ目標モータトルクTmbが下げられる。そして、修正された目標モータトルクTmbに基づいて、モータジェネレータ14の回生トルクが制御される。これにより、ハイブリッド車両11を目標減速トルクTvbで減速させることでき、乗員に違和感を与えることなくハイブリッド車両11を減速させることができる。また、入力クラッチ32の解放によってエンジントルクTebの伝達を遮断した場合であっても、モータジェネレータ14の回生トルクが不足する場合には、
図5(a)に示すように、目標モータトルクTmbの不足分がブレーキトルクTBによって補われるため、ハイブリッド車両11を目標減速トルクTvbで減速させることでき、乗員に違和感を与えることなくハイブリッド車両11を減速させることができる。
【0040】
[車両減速制御(タイミングチャート)]
続いて、前述した車両減速制御をタイミングチャートに沿って説明する。
図8は車両減速制御の実行状況の一例を示すタイミングチャートである。なお、
図8において、アクセルペダルONとはアクセルペダルの踏み込みを意味し、アクセルペダルOFFとはアクセルペダルの踏み込み解除を意味している。また、燃料カットフラグONとは燃料カットの実行を意味しており、燃料カットフラグOFFとは燃料カットの禁止を意味している。
【0041】
図8に示すように、アクセルペダルの踏み込みが解除されると(符号a1)、目標減速トルクTvbが減速側に設定され(符号b1)、目標モータトルクTmbが減速側に設定され(符号c1)、ブレーキトルクTBが減速側に設定される(符号d1)。また、エンジン13の燃料カットが禁止されるため(符号e1)、エンジントルクTebは加速側に出力される(符号f1)。このように、コースト走行時にはモータジェネレータ14の回生制動が行われるため、時間経過に伴ってバッテリ31の充電状態SOCは徐々に増加する。
【0042】
そして、充電状態SOCが所定の判定値(蓄電閾値)X1に到達すると(符号g1)、入力クラッチ32が解放状態に切り替えられる(符号h1)。入力クラッチ32の解放に伴ってエンジントルクTebが遮断されるため(符号f2)、エンジントルクTebを打ち消していた分だけブレーキトルクTBが縮小される(符号d2)。さらに、車速低下に伴って目標減速トルクTvbが下げられると(符号b2)、目標減速トルクTvbの縮小に伴ってブレーキトルクTBが解消される(符号d3)。そして、エンジン回転数が所定の回転閾値X2を下回ると(符号i1)、エンジン13の燃料カットによって燃料噴射が止められる(符号e2)。これにより、入力クラッチ32が締結状態に切り替えられ(符号h2)、エンジントルクTebは減速側に出力され(符号f3)、目標モータトルクTmbが引き下げられる(符号c2)。
【0043】
図8に示すタイミングチャートにおいては、モータジェネレータ14の回生トルクが制限される例として、バッテリ31の充電状態SOCが判定値X1を上回る例を挙げているが、これに限られることはない。例えば、
図8に破線αで示すように、モータジェネレータ14の温度が所定の温度閾値を上回ることにより、モータジェネレータ14の出力制限が開始された場合には(符号j1)、モータジェネレータ14の回生トルクが制限される。このように、モータジェネレータ14の出力制限が開始された場合であっても、加速側に出力されるエンジントルクTebを遮断するため、入力クラッチ32が解放状態に切り替えられる(符号h1)。
【0044】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。本発明の一実施の形態である車両用制御装置10が適用されるハイブリッド車両としては、図示する構成のハイブリッド車両11に限られることはなく、エンジンおよび走行用モータを備えるハイブリッド車両であれば、如何なるハイブリッド車両であっても良い。また、前述の説明では、クラッチ機構として摩擦クラッチである入力クラッチ32を用いているが、これに限られることはなく、クラッチ機構として噛合クラッチを用いても良い。また、前述の説明では、蓄電デバイスとしてバッテリ31を用いているが、これに限られることはなく、蓄電デバイスとしてキャパシタを用いても良い。